JP2015526466A - 酢酸製造プロセスから過マンガン酸塩還元性化合物を回収する方法 - Google Patents

酢酸製造プロセスから過マンガン酸塩還元性化合物を回収する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、酢酸を製造する方法、特にカルボニル化触媒の存在下でメタノールをカルボニル化して酢酸を製造する際に形成される過マンガン酸塩還元性化合物を回収するための改良された方法に関する。回収される過マンガン酸塩還元性化合物から、アルキルハロゲン化物を除去又は減少させる。【選択図】なし

Description

[0001]本出願は、2012年8月21日出願の米国出願13/590,389(参照として本明細書中に包含する)に対する優先権を主張する。
[0002]本発明は酢酸の製造方法に関する。具体的には、本発明は、カルボニル化触媒の存在下でメタノールをカルボニル化して酢酸を製造する際に形成される過マンガン酸塩還元性化合物(permanganate reducing compound, PRC)を回収するための改良された方法に関する。より具体的には、これは、回収されるPRCからヨウ化メチルのようなアルキルハロゲン化物を取り出すための改良された方法に関する。
[0003]酢酸を合成するための広範囲に用いられて成功している商業的プロセスは、一酸化炭素によるメタノールの接触カルボニル化を含む。触媒反応は、ロジウム及び/又はイリジウム、並びにハロゲン促進剤、通常はヨウ化メチルを含む。反応は、その中に触媒を溶解させた液体反応媒体を通して一酸化炭素を連続的にバブリングすることによって行う。反応媒体はまた、酢酸メチル、水、ヨウ化メチル、及び触媒も含む。メタノールをカルボニル化するための従来の商業的プロセスとしては、米国特許3,769,329;5,001,259;5,026,908;及び5,144,068(これらの全体の内容及び開示事項を参照として本明細書中に包含する)に記載されているものが挙げられる。他の従来のメタノールカルボニル化プロセスとしては、Jones, J.H. (2002), "The Cativa Process for the Manufacture of Acetic Acid", Platinum Metals Review, 44 (3): 94-105(その全体の内容及び開示事項を参照として本明細書中に包含する)において議論されているCativa(登録商標)プロセスが挙げられる。
[0004]反応器からの粗酢酸生成物は、精製セクションにおいて処理して、不純物を除去して酢酸を回収する。微量で存在する可能性があるこれらの不純物は、特に反応プロセスを通して不純物を循環させる(これはとりわけ、時間とともにこれらの不純物の蓄積を引き起こす可能性がある)際に酢酸の品質に影響を与える。これらの不純物を除去するための従来の精製方法は、酢酸生成物流を、酸化剤、オゾン、水、メタノール、活性炭、アミンなどで処理することを含む。また、この処理を粗酢酸生成物の蒸留と組み合わせることもできる。しかしながら、最終生成物の更なる処理はプロセスのコストを増大させ、処理された酢酸生成物の蒸留によって更なる不純物が形成される可能性がある。
[0005]これらの不純物を除去する方法によって、ハロゲン促進剤のような反応媒体中の化合物も取り出すことができる。ハロゲン促進剤を回収するために、放出流の処理及び抽出などの幾つかの方法が教示されている。
[0006]排出流の処理によってハロゲン促進剤を回収することができる。例えば、米国公開2009/0270651においては、排気ガス流を回収し、スクラバー溶媒を用いてそれからヨウ化メチルを取り出すように適合されており、異なる第1及び第2のスクラバー溶媒を供給することができる第1及び第2のスクラバー溶媒供給源に接続されている吸収塔を含むメタノールカルボニル化システムが開示されている。バルブを含む切り替えシステムによって、第1又は第2のスクラバー溶媒が吸収器に二者択一的に供給され、使用された溶媒及び吸収された物質がカルボニル化システムに戻されて、異なる運転モードに適合される。
[0007]抽出によってまた、カルボニル化生成物からハロゲン促進剤を回収することもできる。例えば、米国特許4,908,477においては、非芳香族炭化水素を用いる液相抽出によってヨウ素化合物を除去するプロセスによって、メタノール、酢酸メチル、及びジメチルエーテルのカルボニル化生成物から、及びかかるカルボニル化生成物の混合物から有機ヨウ素化合物を分離することが開示されている。
[0008]ハロゲン促進剤を回収する方法では、他の不純物を取り出すことはできない。特に、酢酸の過マンガン酸塩時間を減少させる不純物は、ハロゲン促進剤を回収する際には取り出されない。過マンガン酸塩時間は、酢酸生成物中に存在する不純物の量を求めるために酢酸産業において通常用いられている品質試験である。これらの不純物としては、一般に過マンガン酸塩還元性化合物(PRC)と呼ばれる飽和及び不飽和カルボニル化合物が挙げられる。PRCとしては、例えばアセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒドなど、及びこれらのアルドール縮合生成物のような化合物を挙げることができる。これらの化合物は、1以上のカラム及び抽出ユニットを通して取り出される。
[0009]当該技術において、粗酢酸生成物流中に存在するPRCは、一般に軽質留分カラムからの塔頂流中に濃縮されることが開示されている。したがって、軽質留分カラム塔頂流は、カルボニル化合物と反応して、蒸留によって残りの塔頂流から分離することができる誘導体を形成するアミン化合物(例えばヒドロキシルアミン)で処理して、それによって向上した過マンガン酸塩時間を有する酢酸生成物を得ている。
[0010]米国特許6,143,930及び6,339,171(その全体を参照として本明細書中に包含する)において、軽質留分カラム塔頂流に対して多段階精製を行うことによって、酢酸生成物中の望ましくない不純物を大きく減少させることができることが開示されている。これらの特許においては、軽質留分塔頂流を2回蒸留し、それぞれの場合においてアセトアルデヒド塔頂物を回収してヨウ化メチルに富む残渣を反応器に戻す精製プロセスが開示されている。2回の蒸留工程の後に得られるアセトアルデヒドに富む留出物は、場合によっては水で抽出してアセトアルデヒドの大部分を廃棄するために取り出し、ラフィネート中に非常により低い濃度のアセトアルデヒドを残留させて、これを反応器に再循環する。
[0011]更に、米国公開2006/0247466(その全体を参照として本明細書中に包含する)においては、軽質留分塔頂流を単一の蒸留にかけて塔頂流を得ることによって、酢酸生成物中の望ましくない不純物を減少させることができることが開示されている。塔頂流は、次にPRCを選択的に除去し及び/又は減少させる抽出にかける。
[0012]米国特許7,223,886(その全体を参照として本明細書中に包含する)においては、(a)軽質相を蒸留して、PRCが富化された塔頂流を得て;そして(b)塔頂流を、少なくとも2つの連続段階で水によって抽出して、PRCを含む1以上の水性流をそれから分離する;ことを含む、凝縮された軽質留分塔頂流の軽質相からPRCを取り出すことによってアルキルヨウ化物及びC〜Cカルボン酸の形成を減少させる方法が開示されている。
[0013]米国特許7,855,306(その全体を参照として本明細書中に包含する)においては、(a)カルボニル化生成物を分離して蒸気塔頂流を与え;(b)蒸気塔頂流を蒸留して低沸点の塔頂蒸気流を得て;(c)低沸点の塔頂蒸気流を凝縮及び分離して凝縮された軽質液相を形成し;(d)単一の蒸留カラム内において、凝縮された軽質液相を蒸留して、PRCが富化された第2の蒸気相流を形成し;そして(e)第2の蒸気相流を水で抽出して、PRCを含む水性アセトアルデヒド流を得る;ことによって、カルボニル化生成物からPRCを減少及び/又は取り出す方法が開示されている。
[0014]米国公開2012/0090981(その全体を参照として本明細書中に包含する)においては、(a)軽質相を抽出して、少なくとも1種類のPRCを含む水性流を得て;そして(b)蒸留カラム内において、水性流を分離してPRCが富化された塔頂流を得る;ことによって、粗酢酸組成物からPRCを取り出す方法が開示されている。
[0015]抽出ユニットの流出流は、酢酸製造プロセスから取り出されたPRCを含む。流出流はまた不純物も含む可能性があり、これにより反応器内における化合物の損失がもたらされ、より高価で処理するのが困難な流出流が与えられる可能性がある。
米国特許3,769,329 米国特許5,001,259 米国特許5,026,908 米国特許5,144,068 米国公開2009/0270651 米国特許4,908,477 米国特許6,143,930 米国特許6,339,171 米国公開2006/0247466 米国特許7,223,886 米国特許7,855,306 米国公開2012/0090981
Jones, J.H. (2002), "The Cativa Process for the Manufacture of Acetic Acid", Platinum Metals Review, 44 (3): 94-105
[0016]上記記載のプロセスはカルボニル化システムからPRCを減少及び/又は取り出すことに成功しているが、PRCを回収するための更なる改良をなお行うことができる。
[0017]一態様においては、本発明は、軽質留分カラム内において、粗酢酸組成物を塔頂流及び酢酸生成物流に分離する工程を含む、粗酢酸組成物から過マンガン酸塩還元性化合物(PRC)を回収する方法に関する。好ましくは、塔頂流は、ヨウ化メチル、水、酢酸メチル、及び少なくとも1種類のPRC、並びに酢酸生成物流を含む。PRCとしては、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、これらのアルドール縮合生成物、又はこれらの混合物を挙げることができる。この方法は、第1の蒸留カラムを用いて、塔頂流の一部を分離して少なくとも1種類のPRCが富化された流れを得る工程を更に含み、ここで富化流は塔頂流からのヨウ化メチルの少なくとも一部を更に含む。この方法は、第2の蒸留カラム内において、富化流の一部を分離して、ヨウ化メチルを含む留出物、並びに少なくとも1種類のPRCを含む残渣を得ることを更に含む。好ましくは、残渣中におけるヨウ化メチル/PRCの比は、富化流中におけるヨウ化メチル/PRCの比よりも小さい。
[0018]残渣は、1重量%未満、例えば0.01重量%未満のヨウ化メチルを含んでいてよい。PRC流の一部の中におけるヨウ化メチルの少なくとも80%、より好ましくは少なくとも95%は留出物中に分離される。PRC流中の一部の中における少なくとも1種類のPRCの少なくとも80%、より好ましくは少なくとも95%は残渣中に分離される。
[0019]一態様においては、この方法は、第2の蒸留カラム、例えば抽出蒸留カラム内において、抽出剤を用いて少なくとも1種類のPRCを残渣中に抽出する工程を更に含む。好ましくは、抽出剤は、水、グリコール、グリセロール、高沸点アルコール、又はこれらの混合物からなる群から選択される。一態様においては、PRC流の一部と抽出剤との質量流量比は、少なくとも1:1である。抽出剤は、抽出蒸留カラムの上半分内に供給される水であってよい。一態様においては、この方法は、残渣から抽出剤を回収して、含水量が減少したPRC生成物を得る工程を更に含む。抽出剤を残渣から除去すると、本発明の方法によって、10重量%未満の水の減少した含水量を有するPRC生成物が得られる。
[0020]この方法は、液−液抽出器内において抽出溶媒を用いて富化流を抽出して、PRC流、及びヨウ化メチルを含むラフィネートを得る工程を更に含む。抽出溶媒は水を含んでいてよい。一態様においては、PRC流は、少なくとも1種類のPRC及び0.01〜5重量%のヨウ化メチルを含む。
[0021]他の態様においては、本発明は、軽質留分カラム内において、粗酢酸組成物を、ヨウ化メチル、水、酢酸メチル、及び少なくとも1種類のPRCを含む塔頂流、並びに酢酸生成物流に分離し;1以上の蒸留カラムを用いて、塔頂流の一部(その有機部分又は水性部分のいずれか)を分離して少なくとも1種類のPRCが富化された流れを得て、ここで富化流は塔頂流からのヨウ化メチルの少なくとも一部を更に含み;液−液抽出器内において、抽出溶媒を用いて富化流を抽出して、PRC流、及びヨウ化メチルを含むラフィネートを得て、ここでPRC流は少なくとも1種類のPRC及び0.01〜5重量%のヨウ化メチルを含み;そして、抽出蒸留カラム内において、抽出剤を用いてPRC流の一部を分離して、ヨウ化メチルを含む留出物、並びに少なくとも1種類のPRC及び抽出剤を含む残渣を得て、ここで残渣中におけるヨウ化メチル/PRCの比はPRC流中におけるヨウ化メチル/PRCの比よりも小さい;工程を含む、粗酢酸組成物から過マンガン酸塩還元性化合物(PRC)を回収することを含む。
[0022]本発明は添付の非限定的な図面を考慮してより良好に理解されるであろう。
[0023]図1は、本発明の一態様による代表的なPRC回収システム(PRS)を示す。 [0024]図2は、本発明の一態様による液−液抽出と抽出蒸留カラムの組み合わせを有する代表的なPRSを示す。
[0025]本発明は、概して、アセトアルデヒドのようなPRCを回収すること、及びPRC残渣流からその中のハロゲン促進剤のようなアルキルハロゲン化物の量を減少させることに関する。好ましい態様においては、アルキルハロゲン化物はヨウ化メチル(MeI)である。反応条件及び反応媒体によって、PRCは、酢酸を製造する際に不純物を形成する副生成物として形成される可能性がある。粗酢酸生成物からPRCを除去する際には、ハロゲン促進剤がパージ流中に導入される可能性があり、そのために得られるPRC流はハロゲン促進剤を含む。パージ流中のハロゲン促進剤の量は比較的少ない可能性があるが、ハロゲン促進剤のパージに関係するコストは大きい可能性がある。本発明の幾つかの態様は、PRC流から除去することができるハロゲン促進剤の量を有利に増加させて精製PRC流を得て、これによってコストを減少させ、効率を向上させ、パージ流を処理する必要性を減少させる。ハロゲン促進剤の減少したレベルを有する精製PRC流は、他のプロセスのための原材料として用いることができる。更に、これから回収されるハロゲン促進剤は、カルボニル化プロセスに再循環することができる。
[0026]本発明の一態様においては、PRCは、好ましくは1以上の蒸留カラムを含むPRC回収システム(PRS)を用いて回収する。PRCとしては、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、これらのアルドール縮合生成物、又はこれらの混合物を挙げることができる。代表的なPRSとしては、米国特許7,855,306;7,223,886;7,855,306;6,143,930;及び6,339,171;並びに米国公開2012/0090981(これらの全体の内容及び開示事項を参照として本明細書中に包含する)に記載されているものが挙げられる。PRCが富化された流れを、酢酸製造プロセスから分離してPRSに導入することができる。この流れはまた、アルキルハロゲン化物も含む可能性がある。
[0027]一態様においては、アルキルハロゲン化物はPRSの1以上の処理流から回収することができる。一般に、これらの処理流はシステムからパージされる。有利なことに、この態様はパージ流からアルキルハロゲン化物を取り出し、パージ流の処理のためのコストを減少させることができる。
[0028]反応器に戻すためにヨウ化メチルを回収することが好ましいが、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシル、及びこれらの異性体のような他のアルキルハロゲン化物も、PRSの処理流から取り出すことができる。ハロゲン促進剤などのアルキルハロゲン化物は、ハロゲン促進剤のヨウ化メチルが関与する幾つかの反応において示されるように、PRSの蒸留部分においてヨウ化水素(HI)酸を形成することによってシステム内に腐食を引き起こす可能性がある。例として、
Figure 2015526466
[0029]一態様においては、1以上の蒸留カラムを用いてPRCを回収する。好ましくは、2つの蒸留カラムを用いてPRCを回収する。一態様においては、相当量の酢酸メチルを第1の蒸留カラムの残渣中に取り出して、反応区域に戻す。更に、留出物はPRCが富化されており、酢酸メチル、メタノール、及び/又は酢酸が貧化されている。留出物流は第2の蒸留カラムに送って、残留するヨウ化メチルを更に取り出して残渣中にPRC流を与える。
[0030]他の態様においては、液−液抽出器内において抽出溶媒を用いてアルキルハロゲン化物を取り出すことができ、PRCが富化される抽出剤は、抽出蒸留カラム内において抽出剤を用いて更に精製する。抽出器と抽出蒸留カラムの組み合わせによって、アルキルハロゲン化物の回収及びPRC流の精製が大きく向上する。液−液抽出溶媒は、水、ジメチルエーテル、及びこれらの混合物を含む。一態様においては、好適な抽出剤は、水、グリコール、グリセロール、高沸点アルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。好ましくは、抽出溶媒及び抽出剤は水であってよい。
[0031]他の態様においては、抽出剤は第2の蒸留カラムに関して用いることができる。水のような抽出剤を用いることによって、PRC富化流からヨウ化メチルを取り出して、それによって更に富化されたPRC流を与えることができる。抽出剤は、抽出剤回収カラム内で回収して、使用するために第2の蒸留カラムに戻すことができる。
[0032]本発明は、酢酸の製造方法、特に第VIII族金属カルボニル化触媒の存在下でメタノールをカルボニル化する際に形成される過マンガン酸塩還元性化合物(PRC)を回収するための改良された方法に関する。PRCとしては、例えば、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、及び2−エチルブチルアルデヒドなど、並びにこれらのアルドール縮合生成物のような化合物を挙げることができる。より具体的には、本発明は、粗酢酸生成物を精製するために用いる酢酸分離システムからPRC又はそれらの前駆体を取り出し及び回収するための改良された方法に関する。より具体的には、本発明はヨウ化メチルを取り出し及び回収するための改良された方法に関する。
[0033]本発明は、例えば、反応溶媒、メタノール及び/又はその反応性誘導体、第VIII族触媒、少なくとも限定濃度の水、及び場合によってはヨウ化物塩を含む均一接触反応系中での一酸化炭素によるメタノールのカルボニル化に関して好ましい可能性がある。
[0034]好適な第VIII族触媒としては、ロジウム及び/又はイリジウム触媒が挙げられる。ロジウム触媒を用いる場合には、ロジウム触媒は、当該技術において周知なように、ロジウムが触媒溶液中に[Rh(CO)アニオンを含む平衡混合物として存在するような任意の好適な形態で加えることができる。本明細書に記載するプロセスの反応混合物中に場合によって保持されるヨウ化物塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の可溶性塩、或いは第4級アンモニウム又はホスホニウム塩、或いはこれらの混合物の形態であってよい。幾つかの態様においては、触媒共促進剤は、ヨウ化リチウム、酢酸リチウム、又はこれらの混合物である。塩共促進剤は、ヨウ化物塩を生成させる非ヨウ化物塩として加えることができる。ヨウ化物触媒安定剤は、反応システム中に直接導入することができる。或いは、反応システムの運転条件下においては、広範囲の非ヨウ化物塩前駆体が反応媒体中のヨウ化メチル又はヨウ化水素酸と反応して対応する共促進剤ヨウ化物塩安定剤を生成させるので、ヨウ化物をin-situで生成させることができる。幾つかの態様においては、液体反応媒体中におけるロジウム触媒の濃度は、100wppm〜6000wppmの範囲であってよい。ロジウム触媒反応及びヨウ化物塩の生成に関する更なる詳細に関しては、米国特許5,001,259;5,026,908;5,144,068;及び7,005,541(これらの全体を参照として本明細書中に包含する)を参照。
[0035]イリジウム触媒を用いる場合には、イリジウム触媒に、液体反応組成物中に可溶の任意のイリジウム化合物を含ませることができる。イリジウム触媒は、液体反応組成物中に溶解するか或いは可溶性形態に転化させることができる任意の好適な形態で、カルボニル化反応のための液体反応組成物に加えることができる。液体反応組成物に加えることができる好適なイリジウム含有化合物の例としては、IrCl、IrI、IrBr、[Ir(CO)I]、[Ir(CO)Cl]、[Ir(CO)Br]、[Ir(CO)、[Ir(CO)Br、[Ir(CO)、[Ir(CH)I(CO)、Ir(CO)12、IrCl・3HO、IrBr・3HO、Ir(CO)12、イリジウム金属、Ir、Ir(acac)(CO)、Ir(acac)、酢酸イリジウム、[IrO(OAc)(HO)][OAc]、及びヘキサクロロイリジウム酸[HIrCl]が挙げられる。酢酸塩、シュウ酸塩、及びアセト酢酸塩のようなイリジウムの塩素を含まないコンプレックスが、出発材料として通常用いられる。液体反応組成物中におけるイリジウム触媒の濃度は、100〜6000wppmの範囲であってよい。イリジウム触媒を用いるメタノールのカルボニル化は周知であり、米国特許5,942,460;5,932,764;5,883,295;5,877,348;5,877,347;及び5,696,284(これらの全体を参照として本明細書中に包含する)に概して記載されている。
[0036]一般に、第VIII族金属触媒成分と組み合わせてハロゲン促進剤が用いられる。ハロゲン促進剤としてはヨウ化メチルが好ましい。好ましくは、液体反応組成物中におけるハロゲン促進剤の濃度は、1〜50重量%、好ましくは2〜30重量%の範囲である。
[0037]ハロゲン促進剤は、第IA族又は第IIA族の金属の塩、第4級アンモニウム、ホスホニウム塩、或いはこれらの混合物を含んでいてよい塩安定剤/共促進剤化合物と組み合わせることができる。ヨウ化物又は酢酸塩、例えばヨウ化リチウム又は酢酸リチウムが特に好ましい。
[0038]米国特許5,877,348(その全体を参照として本明細書中に包含する)に記載されている他の促進剤及び共促進剤を、本発明の触媒系の一部として用いることができる。好適な促進剤は、ルテニウム、オスミウム、タングステン、レニウム、亜鉛、カドミウム、インジウム、ガリウム、水銀、ニッケル、白金、バナジウム、チタン、銅、アルミニウム、スズ、アンチモンから選択され、より好ましくはルテニウム及びオスミウムから選択される。具体的な共促進剤は、米国特許6,627,770(その全体を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
[0039]促進剤は、液体反応組成物、及び/又は酢酸回収段階からカルボニル化反応器に再循環される任意の液体プロセス流中におけるその溶解度限界以下の有効な量で存在させることができる。用いる場合には、促進剤は、好適には、0.5:1〜15:1、好ましくは2:1〜10:1、より好ましくは2:1〜7.5:1の促進剤と金属触媒とのモル比で液体反応組成物中に存在させる。好適な促進剤濃度は400〜5000wppmである。
[0040]一態様においては、カルボニル化反応の温度は、好ましくは、150℃〜250℃、例えば155℃〜235℃、又は160℃〜220℃である。カルボニル化反応の圧力は、好ましくは、10〜200bar、好ましくは10〜100bar、最も好ましくは15〜50barである。酢酸は、通常は、160〜220℃の温度及び20〜50barの全圧において液相反応で製造される。
[0041]分離システムは、好ましくは反応器内及びシステム全体の水及び酢酸の含量を制御し、場合によってはPRCの除去を制御する。PRCとしては、例えば、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒドなど、及びこれらのアルドール縮合生成物を挙げることができる。
[0042]図1を参照すると、粗酢酸生成物100を反応セクション(図示せず)から得て、精製セクション102に送る。酢酸を製造するための反応セクションは当該技術において公知であり、米国特許5,942,460;5,932,764;5,883,295;5,877,348;5,877,347;及び5,696,284(これらの全体の内容及び開示事項を参照として本明細書中に包含する)において開示されている。精製セクション102は、軽質留分カラム106、塔頂デカンター108、及びPRC回収システム(PRS)104を含む。更なる態様においては、精製セクション102には、乾燥カラム、保護床、排気スクラバー、及び/又は重質留分カラムを含ませることができる。保護床は、米国特許4,615,806、4,894,477,及び6,225,498(これらの全体の内容及び開示事項を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
[0043]軽質留分カラム106においては、粗酢酸生成物100を、塔頂蒸気流110、好ましくは側流112によって取り出される精製酢酸生成物、及び場合によっては軽質留分残渣流114に分離する。側流112によって取り出される酢酸は、好ましくは、米国特許6,627,770(その全体の内容及び開示事項を参照として本明細書中に包含する)に記載されているような水から酢酸を選択的に分離するための乾燥カラム(図示せず)及び/又は場合によっては重質留分カラム(図示せず)、並びに場合によっては保護床(図示せず)などにおける更なる精製にかける。場合によっては、分離を向上させるために、側流112の一部を、軽質留分カラムの、好ましくは側流112を軽質留分カラムから取り出す位置よりも下方の位置に再循環することができる(図示せず)。
[0044]軽質留分残渣流114は、通常は、重質成分、酢酸、水、及び同伴された触媒を含み、軽質留分残渣流114の全部又は一部を再循環流116によってプロセスに再循環することが有益である可能性がある。
[0045]1以上の再循環供給流116を、反応器セクション又はカルボニル化プロセスにおける任意の他の箇所に供給することができる。図1においては1つの再循環供給流116が示されているが、反応器及び/又はプロセスに別々に供給される複数の流れを存在させることができる。下記において議論するように、再循環供給流116は、反応媒体の成分、並びに残留及び/又は同伴された触媒及び酢酸を含む可能性がある。
[0046]塔頂流110は、アルキルハロゲン化物、酢酸メチル、水素、水、メタノール、PRC、酢酸、又はこれらの混合物を含む可能性がある。米国特許6,143,930及び6,339,171において、軽質留分カラム106から排出される塔頂流中においては、一般に軽質留分カラム106から排出される残渣流114中におけるよりも高い濃度のPRC、特にアセトアルデヒドが存在することが開示されている。
[0047]塔頂流110は、好ましくは凝縮して、塔頂デカンター108として示される塔頂相分離ユニットに送る。望ましくは、塔頂流110がデカンター108中に入ったら軽質相(水性)及び重質相(有機)に二相分離されるような条件をプロセス内において維持する。一般に、塔頂流110は、アルキルハロゲン化物、酢酸メチル、PRC、他のカルボニル成分、及び水を凝縮して2つの相に分離するのに十分な温度に冷却する。非凝縮性の気体は排気流(図示せず)によって除去することができる。一態様においては、軽質留分カラム106からの塔頂蒸気流は、凝縮器及びデカンター108を迂回させて、蒸留カラム122に直接供給することができる。
[0048]デカンター108内の凝縮された重質相は、一般に、アルキルハロゲン化物、酢酸メチル、PRC、又はこれらの混合物を含む。デカンター108内の凝縮された重質液相は、好都合には、流れ118によってプロセスに直接か又は間接的のいずれかで再循環して、再循環ライン116によって反応セクションに戻すことができる。下記において議論するように、幾つかの随意的な態様においては、重質液相の一部又は全部をPRS104に供給することができる。これは、流れ120中の軽質液相の一部又は全部と組み合わせることができる。
[0049]デカンター108内の凝縮された軽質相は、好ましくは、水、酢酸、及びPRC、並びに一定量のアルキルハロゲン化物、例えばヨウ化メチル、酢酸メチル、メタノール、及び/又はアルキルヨウ化物を含む。軽質相は流れ120によってデカンター108から排出される。軽質相流の一部、例えばアリコート部分は、還流120’として軽質留分カラム106の頂部に再循環する。軽質相流の第2の部分、例えばアリコート部分は、場合によっては、反応器において更なる水が所望であるか又は必要な場合には、再循環流(図示せず)によって示されるように反応器に再循環することができる。
[0050]一態様においては、軽質相流120の一部又は全部を、PRS104に直接又は間接的に導入する。場合によっては、重質相流118’の一部又は全部を、PRS104に直接又は間接的に導入することができる。図1においては、PRS104は、蒸留カラム122及び124を含む。図2においては、PRS104は、液/液抽出器138、抽出蒸留カラム124’、及び回収カラム148を更に含む。更なる態様においては、PRSに2以上の蒸留カラム及び1以上の抽出器を含ませることができる。1以上の抽出器を含む代表的な2段階蒸留PRSは、米国特許7,223,886(その全体を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。図1に示すものと同様の代表的な単一段階PRSは、米国特許7,855,306(その全体を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
[0051]図1に示されるように、軽質相流120は蒸留カラム122に送って、塔頂PRC流126及び塔底流128を生成させる。塔頂PRC流126は、PRC、例えばアセトアルデヒドが富化されており、残渣流128はヨウ化メチルが富化されている。塔頂PRC流126は、軽質相120に対して、酢酸メチル、メタノール、及び/又は酢酸が貧化されており、より好ましくは3つ全てが貧化されている。塔底流128は、塔頂PRC流126に対して、酢酸メチル、メタノール、及び/又は酢酸(望ましくは3つ全て)が富化されている。塔底流128は、デカンター108を通して軽質留分カラム106に再循環して戻すことができ、好ましくはそのようにする。一態様においては、塔底流128は、500wppm未満、例えば200wppm未満又は100wppm未満のアルキルハロゲン化物を含む。
[0052]塔頂PRC流126の一部を、流れ130によって蒸留カラム122に還流して戻すことができる。図1においては、塔頂PRC流の第2の部分132は、第2の蒸留カラム124の中央部と底部との間に導入することができる。図示してはいないが、第2の蒸留カラム124は抽出カラムであってよい。塔頂PRC流132を分離して、留出物流134及び残渣流136を生成させる。留出物流134は、PRCが貧化されており、ヨウ化メチル及び酢酸メチルが富化されている。残渣流136はPRCが富化されており、好ましくはアルキルハロゲン化物を実質的に含まず、例えば200wppm未満、100wppm未満、又は50wppm未満である。
[0053]一態様においては、残渣流136中におけるヨウ化メチル/PRCの比は、PRC流132中におけるヨウ化メチル/PRCの比よりも小さい。このように、残渣136中におけるヨウ化メチルの量は、PRC流132中におけるヨウ化メチルの量よりも少ない。言い換えれば、PRC流132中のヨウ化メチルの大部分は、ライン134内の留出物に取り出される。
[0054]第2の蒸留カラム124は塔頂留出物を形成し、これはライン134内で排出し、これは凝縮して、例えば、30:1〜1:30、例えば25:1〜1:25又は1:5〜5:1の比で還流することができる。塔頂留出物流134は、流れ136内の残渣に対して、ヨウ化メチル、酢酸メチル、ジメチルエーテル、メタノール、水、及び/又は酢酸が富化されている。ライン134内の留出物は、PRC流132中のハロゲン促進剤及び/又はアルキルヨウ化物の大部分、例えばPRC流132中のハロゲン促進剤及び/又はアルキルヨウ化物の少なくとも85%、例えば少なくとも90%又は少なくとも95%を含む。範囲に関しては、ライン134内の留出物は、PRC流中の70〜99.9%、例えば80〜99.8%又は85〜99.5%のハロゲン促進剤及び/又はアルキルヨウ化物を含む可能性がある。
[0055]蒸留カラム124においては、PRC流132からPRCの大部分を回収し、好ましくは連続的にライン136内の残渣として排出する。例えば、残渣流は、PRC流132中のPRCの少なくとも85%、例えば少なくとも90%又は少なくとも95%を含む。範囲に関しては、残渣流136は、PRC流中の70〜99.9%、例えば80〜99.8%又は85〜99.5%のPRCを含む可能性がある。好ましい態様においては、残渣流136は、アルキルハロゲン化物(ヨウ化メチル)を実質的に含まず、例えば1重量%未満、0.5重量%未満、又は0.1重量%未満を含む。
[0056]留出物流134は、PRC流132中の残りのハロゲン促進剤及び/又はアルキルヨウ化物を含み、凝縮してカルボニル化プロセスに戻す。留出物流134は、主としてハロゲン促進剤を含み、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシル、並びにこれらの異性体及び混合物からなる群から選択される1種類以上のアルキルヨウ化物も含む可能性がある。
[0057]PRC流132中のヨウ化メチルの量によって、PRSにおいて液−液抽出器を用いてヨウ化メチルを取り出すことができる。これにより、液−液抽出と抽出蒸留プロセスを組み合わせて、回収されるPRCからアルキルハロゲン化物を取り出すことを可能にすることができる。図2に示されるように、塔頂PRC流の第2の部分132を液−液抽出器138に供給する。塔頂PRC流132を抽出溶媒供給流144で抽出して、主としてアルキルハロゲン化物を含むラフィネート140、並びに水、少なくとも1種類のPRC、アルキルハロゲン化物、又はこれらの混合物を含む水性流142を生成させる。ヨウ化メチルなどのアルキルハロゲン化物の相対割合は、水性流142よりもラフィネート140中においてより大きい。ヨウ化メチルに加えて、水性流142は1種類以上のC2+アルキルハロゲン化物も含む可能性がある。水性流142中におけるヨウ化メチルの量は低い可能性があり、好ましくは6重量%未満、例えば3重量%未満又は0.5重量%未満である。抽出溶媒は、抽出溶媒供給流144によって液−液抽出器138に供給する。幾つかの態様においては、抽出溶媒は水である。ラフィネート140は、再循環流116によってプロセスに再循環して戻すことができる。幾つかの態様においては、ラフィネート140はデカンター108又は流れ118に送る。幾つかの態様においては、ラフィネート140は下流の蒸留システム(図示せず)に送る。
[0058]したがって、液−液抽出は、抽出器の内容物を液体状態に保持することができる温度と圧力の組み合わせで行うことが望ましい。更に、水性流142が曝露される温度を最小にして、アセトアルデヒドが関与する重合及び縮合反応の可能性を最小にすることが望ましい。幾つかの態様においては、抽出は10℃〜40℃の温度で行う。
[0059]水性流142の具体的な組成は広く変化する可能性があるが、流れ132中のアルキルハロゲン化物の大部分がラフィネート140に導入されることが好ましい。一態様においては、流れ132中のアルキルハロゲン化物の少なくとも70%、例えばより好ましくは少なくとも85%又は少なくとも95%がラフィネート140に導入される。特にヨウ化メチルに関しては、流れ132中のヨウ化メチルの少なくとも70%、例えばより好ましくは少なくとも85%又は少なくとも95%がラフィネート140に導入される。更に、ラフィネート140は、好ましくは、低い重量%、例えば10重量%未満、又はより好ましくは5重量%未満のPRCを含む。一態様においては、水性流142は、好ましくは、流れ132中のPRCの実質的に全部、例えば流れ132中のPRCの少なくとも90%又は少なくとも99%を含む。
[0060]水性流142は流れ132中のPRCの実質的に全部を含むが、少量のアルキルハロゲン化物がその中に残留している。一態様においては、水性流142は、5重量%未満、3重量%未満、又は2重量%未満のヨウ化メチルを含む可能性がある。一態様においては、水性流144は、5重量%未満、例えば3重量%未満、又は1重量%未満の酢酸メチルを含む可能性がある。水性流144はまた、10重量%未満、8重量%未満、又は5重量%未満のジメチルエーテルを含む可能性もある。而して、水性流からアルキルハロゲン化物を更に回収して、これらをカルボニル化反応区域に再循環することができるようにすることが有益である。更に、残りの量のアルキルハロゲン化物を除去することによって、精製したPRC流を他のプロセスにおいて用いることが可能になる。
[0061]アルキルハロゲン化物を除去するために、蒸留カラム124の代わりに抽出蒸留カラム124’を用いることができる。一態様においては、水性流142を、抽出剤146と一緒に蒸留カラム124に供給することができる。蒸留カラム124は、水性流142を、ライン134内の留出物、及びライン136内の残渣に分離する。ライン134内の留出物は、水性流142中のアルキルハロゲン化物の相当割合を含み、例えばアルキルハロゲン化物の大部分、80%超、90%超、又は95%超を含む。
[0062]ライン136内の残渣は、水性流142中のPRCの大部分、及び抽出剤を含む。ライン136内の残渣流はPRCを含み、カラム148内で更に分離して、ライン150内の精製PRC流、及びライン152内の抽出剤流を回収することができる。
[0063]水性流142は、抽出蒸留カラム124’の中央部と底部との間に導入することができる。上記に記載したように、抽出剤もライン146によって抽出蒸留カラム124’に導入して、PRC及びアルキルハロゲン化物の分離を助ける。抽出剤のタイプによって、ライン146内の抽出剤は水性流142の供給点の上方に導入することができる。或いは、抽出剤は、水性流142と混合して抽出蒸留カラム124’に共供給することができる。好ましくは、抽出剤は抽出蒸留カラムの上半分に供給する。抽出剤として水を用いる場合においては、カラムへの供給流中における含水量は抽出蒸留効果を達成するのに十分なものにすることができる。液−液抽出ユニットへの水供給量は、所望の含水量を達成するように変化させることができる。
[0064]抽出蒸留カラム124’へ供給される抽出剤の量は、水性流142中におけるPRCの濃度によって広く変化させることができる。質量流量に関しては、抽出蒸留カラム124’に供給するPRC流と抽出剤との比は、少なくとも0.01:1、例えば少なくとも1:1、又は少なくとも4:1である。幾つかの態様においては抽出剤のより高い濃度が許容される可能性がある。一態様においては、好適な抽出剤は、水、グリコール、グリセロール、高沸点アルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
[0065]抽出蒸留カラム124’を294kPaにおいて運転する場合には、ライン124’内に存在する(existing)留出物の温度は、好ましくは0℃〜60℃、例えば5℃〜40℃、又は10℃〜25℃である。ライン136内の残渣は、PRC及び抽出剤を含む可能性がある。ライン136内に排出される(exiting)残渣の温度は、好ましくは40℃〜140℃、例えば60℃〜120℃、又は80℃〜100℃である。幾つかの態様においては、抽出蒸留カラム128の圧力は、90kPa〜450kPa、例えば100kPa〜400kPaの範囲であってよい。抽出蒸留カラム124の留出物及び残渣に関する代表的な組成範囲を表1に示す。表1に示すもの以外の成分も、残渣及び留出物中に存在する可能性がある。
Figure 2015526466
[0066]一態様においては、留出物流134は、カルボニル化プロセスに戻す前に、ラフィネート流140又は塔底流128と混合することができる。
[0067]残渣136は回収カラム148に送って、ライン150内の精製PRC生成物流、及び抽出剤を含む第2の残渣流152を生成させる。第2の残渣流152は、抽出蒸留カラム124’に直接再循環することができ、或いは好ましくは抽出剤供給流146と混合して抽出蒸留カラム124’に供給する。
[0068]一態様においては、残渣136から抽出剤を回収して、減少した含水量を有するPRC生成物流を与える。残渣136は、好ましくは回収カラム148に供給して、塔頂PRC生成物流150及び塔底流152を生成させる。塔頂PRC生成物流150は、塔底流に対してPRC、好ましくはアセトアルデヒドが富化されている。塔頂PRC生成物流150は、流れ136、水性流142、又は流れ132に対して、酢酸メチル、メタノール、水、及び/又は酢酸が貧化されており、より好ましくは4つ全てが貧化されている。一態様においては、塔頂PRC生成物流150は、50重量%未満、例えば25重量%未満又は10重量%未満の水を含む。塔底流152は抽出剤を含み、水バランスを維持するために、抽出蒸留カラム124’又はカルボニル化プロセスに再循環して戻すことができ、好ましくはそのようにする。好ましくは、塔底流152は水を含む。
[0069]塔頂PRC生成物流150は凝縮して、例えば30:1〜1:30、例えば25:1〜1:25、又は1:5〜5:1の比で還流することができる。回収カラム148を102kPaで運転する場合には、ライン150内に存在する(existing)塔頂PRC流の温度は、好ましくは0℃〜60℃、例えば5℃〜40℃、又は10℃〜30℃である。ライン152内の残渣は抽出剤を含む可能性がある。ライン152内に排出される残渣の温度は、好ましくは40℃〜140℃、例えば60℃〜120℃、又は80℃〜100℃である。幾つかの態様においては、回収カラム148の圧力は、70kPa〜400kPa、例えば90kPa〜350kPa、又は100kPa〜300kPaの範囲であってよい。
[0070]上記に示すように、回収カラム148に供給されるライン136内の残渣は、水性流142よりも相当に減少した量のアルキルハロゲン化物を含み、而して塔頂PRC流150もアルキルハロゲン化物を少ししか含まないか又は全く含まない。一態様においては、塔頂PRC流は、10重量%未満、例えば5重量%未満又は1重量%未満のアルキルハロゲン化物を含む。一態様においては、塔頂PRC流150は、500wppm未満、例えば200wppm未満又は100wppm未満のアルキルハロゲン化物を含む。一態様においては、塔頂PRC流150は、PRCを必要とする他のプロセスにおいて用いることができる。
[0071]本明細書に開示する発明をより効率的に理解することができるように、下記に実施例を与える。これらの実施例は例示のみの目的であり、いかなるようにも発明を限定することは意図しないことを理解すべきである。
実施例1:
[0072]ASPEN(登録商標)ソフトウエアを用いて、図2の態様によるプロセスのシミュレーションを行った。シミュレーションは、上記で議論した水性供給流142を用いた。水を含む抽出剤を、水性供給流の供給点の上方に供給した。抽出蒸留カラム124’及び回収カラム148の種々の流れの組成を表2に示す。
Figure 2015526466
[0073]シミュレーションによって示されるように、精製PRC流は、98.9重量%のアセトアルデヒド、並びに1.1重量%未満の酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、及びジメチルエーテルの混合物を含む。而して、本発明にしたがって精製PRC流を有効に分離して、98重量%超のアセトアルデヒドを含む精製PRC流を達成することができる。
[0074]本発明を詳細に記載したが、発明の精神及び範囲内の修正は当業者に容易に明らかになるであろう。更に、上記及び/又は特許請求の範囲において示す本発明の複数の形態並びに種々の態様及び種々の特徴の複数の部分を、完全か又は部分的に結合又は交換することができると理解すべきである。当業者に認められるように、種々の態様の上記の記載においては、他の態様に関するこれらの態様を他の態様と適当に組み合わせることができる。更に、当業者であれば、上記の記載は例示のみの目的であり、発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。

Claims (15)

  1. 粗酢酸組成物から過マンガン酸塩還元性化合物(PRC)を回収する方法であって、
    軽質留分カラム内において、粗酢酸組成物を、ヨウ化メチル、水、酢酸メチル、及び少なくとも1種類のPRCを含む塔頂流と、酢酸生成物流とに分離し;
    第1の蒸留カラムを用いて、塔頂流の一部を分離して少なくとも1種類のPRCが富化された流れを得て、ここで当該富化流は塔頂流からのヨウ化メチルの少なくとも一部を更に含み;そして
    第2の蒸留カラム内において、当該富化流の一部を分離して、ヨウ化メチルを含む留出物と、少なくとも1種類のPRC、及び場合によっては1重量%未満のヨウ化メチルを含む残渣とを得て、ここで残渣におけるヨウ化メチル/PRCの比は当該富化流におけるヨウ化メチル/PRCの比よりも小さく、ここで、第2の蒸留カラム内において、場合によっては水、グリコール、グリセロール、高沸点アルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される抽出剤を場合によって用いて、少なくとも1種類のPRCを残渣中に抽出する;
    工程を含む、前記方法。
  2. 当該富化流の一部と抽出剤との質量流量比が少なくとも0.01:1である、請求項1に記載の方法。
  3. 残渣から抽出剤を回収して含水量が減少したPRC生成物を得て、及び/又は留出物の少なくとも一部を、粗酢酸組成物を製造するためのカルボニル化区域に戻すことを更に含む、請求項1に記載の方法。
  4. 留出物が、相対質量流量を基準として当該富化流よりも少ない少なくとも1種類のPRCを含む、請求項1に記載の方法。
  5. 塔頂流が、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシル、並びにこれらの異性体及び混合物からなる群から選択される少なくとも1種類のアルキルヨウ化物を更に含む、請求項1に記載の方法。
  6. 当該富化流の一部中のヨウ化メチルの少なくとも80%が留出物中に分離され、及び/又は当該富化流の一部中の少なくとも1種類のPRCの少なくとも80%が残渣中に分離される、請求項1に記載の方法。
  7. 少なくとも1種類のPRCが、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、これらのアルドール縮合生成物、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  8. 当該富化流の一部の分離が、液−液抽出器内において好ましくは水を含む抽出溶媒を用いて当該富化流を抽出して、PRC流と、ヨウ化メチルを含むラフィネートとを得ることを含み、ここでPRC流は少なくとも1種類のPRC及び0.01〜5重量%のヨウ化メチルを含む、請求項1に記載の方法。
  9. 塔頂流を凝縮し、重質相及び軽質相に二相分離することを更に含む、請求項1に記載の方法。
  10. 1以上の蒸留カラム内において、軽質相を分離して当該富化流を得ることを更に含む、請求項9に記載の方法。
  11. 1以上の蒸留カラム内において、重質相を分離して当該富化流を得ることを更に含む、請求項9に記載の方法。
  12. 粗酢酸組成物から過マンガン酸塩還元性化合物(PRC)を回収する方法であって、
    軽質留分カラム内において、粗酢酸組成物を、ヨウ化メチル、水、酢酸メチル、及び少なくとも1種類のPRCを含む塔頂流と、酢酸生成物流とに分離し;
    1以上の蒸留カラムを用いて、塔頂流の一部を分離して少なくとも1種類のPRCが富化された流れを得て、ここで当該富化流は塔頂流からのヨウ化メチルの少なくとも一部を更に含み;
    液−液抽出器内において、抽出溶媒を用いて当該富化流を抽出して、PRC流と、ヨウ化メチルを含むラフィネートとを得て、ここでPRC流は少なくとも1種類のPRC及び0.01〜5重量%のヨウ化メチルを含み;そして
    抽出蒸留カラム内において、抽出剤を用いてPRC流の一部を分離して、ヨウ化メチルを含む留出物と、少なくとも1種類のPRC及び抽出剤を含む残渣とを得て、ここで残渣におけるヨウ化メチル/PRCの比はPRC流におけるヨウ化メチル/PRCの比よりも小さい;
    工程を含む、前記方法。
  13. 塔頂流を凝縮し、重質相及び軽質相に二相分離することを更に含む、請求項12に記載の方法。
  14. 1以上の蒸留カラム内において、軽質相を分離して当該富化流を得ることを更に含む、請求項13に記載の方法。
  15. 1以上の蒸留カラム内において、重質相を分離して当該富化流を得ることを更に含む、請求項13に記載の方法。
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