(詳細な説明)
(導入)
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)及び百日咳菌(パータシス)によって引き起こされる疾患から乳児を防御する、安全且つ有効なワクチンの開発における特定の挑戦は、非常に幼い乳児における、罹病及び死に関する最も高い発生率及び重篤度である。これ自体が、大きな挑戦を提示する。幼い乳児、特に未熟児で生まれた乳児は、未熟な免疫系を有し得る。非常に幼い乳児において、ワクチン接種による母性抗体の干渉の潜在的な危険性もまた存在する。過去において、RSVに対する幼い乳児のワクチン接種によるRSV疾患の増大の問題、並びに、自然感染及び免疫によって惹起された免疫の漸減から生じたチャレンジの問題があった。本開示は、若年、例えば生後から6ヶ月までの間の月齢の乳児を、RSV及びパータシスの両方によって引き起こされる疾患から、RSV Fタンパク質の類似体及びパータシス抗原を含む免疫原性組成物で妊婦を能動的に免疫することによって防御する方法に関する。Fタンパク質類似体及びパータシス抗原は、好ましくは、胎盤を介して在胎児に移行する抗体を惹起し、生後並びにRSV及びパータシスの両方によって引き起こされる感染及び重度の疾患の危険期を通じて続く、乳児の受動免疫防御をもたらす。
本開示の1つの態様は、RSV及びパータシスの両方によって引き起こされる感染又は疾患から乳児(新生児を含む)を防御するワクチン接種レジメンに関する。ワクチン接種レジメンは、RSV及びパータシスに対する体液性免疫応答(例えば、抗体応答)を追加刺激する(又は誘導する若しくは惹起する)ことができる少なくとも1種の免疫原性組成物を、妊婦に投与することを含む。好ましくは、この少なくとも1種の免疫原性組成物は、Fタンパク質類似体を含む組換えRSV抗原及び全細胞パータシス抗原又は無細胞パータシス抗原のいずれかであるパータシス抗原を含む。少なくとも1種の免疫原性組成物の投与の際、この免疫原性組成物によって惹起されたRSV及びパータシスについて特異的な母性抗体の少なくとも1つのサブセットが、胎盤を介して在胎児に移行し、それによって、RSV及びパータシスの両方によって引き起こされる感染又は疾患から乳児を防御する。
本開示の別の態様は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)及びパータシスによって引き起こされる感染又は疾患から乳児を防御する方法に関し、この方法は、在胎児を有する妊婦に、Fタンパク質類似体及びパータシス抗原を含む少なくとも1種の免疫原性組成物を投与することを含み、この免疫原性組成物によって惹起された母性抗体の少なくとも1つのサブセットは、胎盤を介して在胎児に移行し、それによって、この乳児をRSVによって引き起こされる感染又は疾患から防御する。
別の態様において、本開示は、RSV及びパータシスによって引き起こされる感染又は疾患からの乳児の防御に使用するための、Fタンパク質類似体を含む組換えRSV抗原及び少なくとも1つのパータシス抗原を含む1つ又は複数の免疫原性組成物に関し、この免疫原性組成物は、妊婦への投与のために製剤化される。妊婦への投与の際に、この免疫原性組成物は、RSV及びパータシスに特異的な母性抗体の少なくとも1つのサブセットの体液性免疫応答を追加刺激する(例えば、誘導する、惹起する又は増強する)ことを可能にする。母性抗体は、胎盤を介して在胎児に移行し、それによって、RSV及びパータシスによって引き起こされる感染及び/又は疾患に対する防御を付与する。
別の態様において、本開示は、妊婦への投与のために製剤化された複数(例えば、2以上)の免疫原性組成物を含むキットに関する。このキットは、(a)RSVに特異的な体液性免疫応答を誘導する、惹起する又は追加刺激することができるFタンパク質類似体を含む第1の免疫原性組成物、並びに(b)百日咳菌に特異的な体液性応答を誘導する、惹起する又は追加刺激することができる少なくとも1種のパータシス抗原を含む第2の免疫原性組成物を含む。この免疫原性組成物は、必要に応じて、1つ以上の事前充填シリンジ、例えば、二重(若しくは多重)チャンバシリンジに含まれていてもよい。妊婦への投与の際、このキットの少なくとも第1及び第2の免疫原性組成物は、RSV特異的抗体の少なくとも1つのサブセット、及びパータシス特異的抗体の少なくとも1つのサブセットを、誘導する、惹起する又は追加刺激し、この抗体は、胎盤を介して妊婦の孕む在胎児に移行する。母性抗体の胎盤を介した移行は、RSV及びパータシスの両方によって引き起こされる感染及び/又は疾患に対する防御を付与する。
特定の実施形態において、ワクチン接種レジメン、方法、若しくは使用又はキットは、Fタンパク質の融合前立体構造を安定化させる少なくとも1つの修飾を含む融合前F若しくは「PreF」抗原であるFタンパク質類似体の免疫原性組成物(例えば、及びその投与)を含む。あるいは、F類似体は、融合後立体構造(「PostF」)において安定化されるか、又は、本明細書中で記載される方法において使用され得る立体構造に関して不安定である。一般的に、Fタンパク質類似体(例えば、PreF、PostFなど)抗原は、膜貫通ドメインを欠き、可溶性であり、すなわち、(例えば、Fタンパク質類似体の発現及び精製を容易にするために)膜結合していない。
例示的な実施形態において、ワクチン接種レジメン、方法、使用若しくはキットは、N末端からC末端の方向で、RSV Fタンパク質ポリペプチドのF2ドメイン及びF1ドメインの少なくとも一部分若しくは実質的に全てを、必要に応じて異種三量体化ドメインと共に含むFタンパク質類似体の投与を含む。1つの実施形態において、F2ドメインとF1ドメインとの間にフーリン切断部位はない。特定の例示的実施形態において、F2ドメインは、配列番号2の参照Fタンパク質前駆体ポリペプチド(F0)のアミノ酸26〜105に対応するRSV Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも一部分を含み、及び/又はF1ドメインは、配列番号2の参照Fタンパク質前駆体ポリペプチド(F0)のアミノ酸137〜516に対応するRSV Fタンパク質ポリペプチドの少なくとも一部分を含む。
例えば、特定の実施形態において、Fタンパク質類似体は、以下の群から選択される:
a) 配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号18、配列番号20及び配列番号22の群から選択されるポリペプチドを含むポリペプチド、
b) 配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号17、配列番号19及び配列番号21の群から選択されるポリヌクレオチドによって、又は配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号17、配列番号19及び配列番号21の群から選択されるポリヌクレオチドに実質的にその全長にわたってストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によってコードされ、天然に存在するRSV株に少なくとも部分的に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド、
c) 配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号18、配列番号20及び配列番号22の群から選択されるポリペプチドに対し少なくとも95%の配列同一性を有し、天然に存在するRSV株に対応しないアミノ酸配列を含むポリペプチド。
必要に応じて、Fタンパク質類似体は、シグナルペプチドをさらに含む。必要に応じて、Fタンパク質類似体は、「タグ」若しくは精製を容易にする配列、例えば、多ヒスチジン配列を、さらに含む。
異種三量体化ドメインを含む実施形態において、このようなドメインは、コイルドコイルドメイン、例えばイソロイシンジッパーを含んでもよく、又は、別の三量体化ドメイン、例えば、バクテリオファージT4フィブリチン(fibritin)(「フォルドン(foldon)」)又はインフルエンザHAに由来するものを含んでもよい。
特定の例示的実施形態において、Fタンパク質は、以下から選択される少なくとも1つの修飾を含む:
(i)グリコシル化を改変する修飾、
(ii)少なくとも1つの非フーリン切断部位を消去する修飾、
(iii)pep27ドメインの1以上のアミノ酸を欠失する修飾、並びに
(iv)Fタンパク質細胞外ドメインの疎水性ドメイン中に親水性アミノ酸を置換するか又は付加する修飾。
特定の実施形態において、Fタンパク質類似体は、ポリペプチドの多量体、例えば、ポリペプチドの三量体を含む。
パータシス抗原に関して、この抗原は、1以上の無細胞パータシスタンパク質を含んでも、又は全細胞パータシス抗原を含んでもよい。例えば、無細胞パータシスタンパク質は、パータシストキソイド(PT)、糸状赤血球凝集素(FHA)、パータクチン(PRN)、2型線毛(fimbrae)(FIM2)、3型線毛(FIM3)及びBrkAからなる群より選択され得る。PTは、化学的にトキソイド化されても、又は(例えば、変異R9K及びE129Gのうちの一方若しくは両方によって)遺伝的にトキソイド化されてもよい。特定の好ましい実施形態において、パータシス抗原は、パータシスタンパク質の組み合わせ、例えば、PT及びFHA;PT、FHA及びPRN;又はPT、FHA、PRN及び必要に応じてFIM2とFIM3の一方若しくは両方を含む。
全細胞(Pw)パータシス抗原を含む実施形態において、Pw抗原は、低減した内毒素含量を有し得る。低減した内毒素含量は、リポオリゴ糖(LOS)の化学的抽出によって、又は例えば3−O−デアシラーゼの過剰発現若しくは異種発現を誘導する、内毒素産生の遺伝子操作によって達成されてもよい。特定の好ましい実施形態において、Pw抗原は、少なくとも部分的に3−O−脱アシル化されたLOSを含む百日咳菌細胞を含む。
特定の実施形態において、Fタンパク質類似体及び/又はパータシス抗原は、薬学的に許容される担体若しくは賦形剤、例えば緩衝液を含む免疫原性組成物中に製剤化(配合)される。必要に応じて、この免疫原性組成物はまた、アジュバント、例えば3D−MPL、QS21(例えば、無毒化形態)、水中油エマルジョン(例えば、免疫刺激分子、例えばα−トコフェロールを含有若しくは非含有)、鉱物油、例えばミョウバンなどのアルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム)、又はこれらの組み合わせを含むアジュバントをも含む。好ましくは、免疫原性組成物がアジュバントを含む場合、このアジュバントは、抗体、特にIgG1サブクラスのIgG抗体の産生によって特徴付けられる体液性免疫を増強又は増大する。あるいは、免疫原性組成物は、アジュバントの非存在下で(すなわち、含まずに)製剤化される。
典型的には、Fタンパク質類似体及びパータシス抗原を含む免疫原性組成物は、妊娠(懐胎)後期の間に投与されるが、(特に、早期産の危険性が高い妊娠の場合)有益効果は、妊娠後期の開始の前に得られ得る。従って、Fタンパク質類似体は、(最後の生理周期の開始から数えて)妊娠26週又はそれ以降、例えば、妊娠26週〜38週の間、又は妊娠28週〜34週の間に投与することができ、Fタンパク質類似体はまた、妊娠26週より前に投与されてもよい。
ワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットの特定の実施形態において、RSV抗原(組換えFタンパク質類似体)及びパータシス抗原は、同じ免疫原性組成物中に共配合される。別の実施形態において、RSV抗原(組換えFタンパク質類似体)及びパータシス抗原は、異なる(例えば、2つの異なる)免疫原性組成物中に配合され、これは、同時投与(近い時間若しくは同時に、すなわち同日に投与される)されてもよく、又は、典型的には、両免疫原性組成物が妊娠後期の間、例えば、妊娠26週の後若しくは妊娠28週の後、及び典型的に妊娠34週の前若しくは妊娠38週の前に投与される限り、異なる日に投与されてもよい。妊婦への投与は、任意の種々の経路、例えば、筋肉内、皮膚(cutaneous)若しくは皮内投与経路によって、達成され得る。
好ましくは、ワクチン接種レジメン、方法、使用若しくはキットに含まれる免疫原性組成物の投与は、妊婦(好ましくは、ヒト妊婦)において免疫応答を惹起し、これは、その在胎児に胎盤を通して受動的に移行する場合、その乳児を、例えば、出生から少なくとも約6ヶ月齢まで防御する。従って、本明細書中で開示される方法によって防御される乳児は、免疫学的に未成熟な乳児、例えば、6ヶ月に満たない月齢の乳児、例えば、2ヶ月齢に満たない乳児、例えば、1ヶ月の月齢に満たない乳児、例えば、新生児(neonate)又は新生児(newborn)である。好ましくは、抗体の少なくとも1つのサブセット、例えば、IgG抗体、例えばIgG1抗体は、胎盤を介して移行する。また、母性抗体のサブセットが、RSVに対する中和抗体を含むことも、利点と考えられる。
特定の実施形態において、抗体の少なくとも1つのサブセットの胎盤を介した移行は、免疫学的方法(例えば、ELISA)によって測定され得る。例えば、特定の好ましい実施形態において、RSV特異的抗体は、出生時において、乳児の血清中30mcg/ml以上のレベルにて検出され得る。同様に、特定の好ましい実施形態において、パータシス特異的抗体は、出生時において、乳児の血清中10 ELISA単位/ml(EU)以上のレベルにて検出され得る。好ましくは、RSV及びパータシスに特異的な抗体は、乳児に免疫へのその後の応答を付与する(すなわち、曝露する)ことなく、RSV及びパータシスによって引き起こされる感染に対して防御し(すなわち阻害し)、そして疾患を低減若しくは予防するレベルで、出生時において乳児の血清中に存在する。
必要に応じて、6ヶ月齢を超えて免疫応答の持続性を確実にするために、このワクチン接種レジメン、方法若しくは使用(及びキットの組成物の投与)は、(妊婦の出産した)乳児に対し、この乳児においてRSV及び/又はパータシスに対する活性な免疫応答をプライミングする又は誘導する1以上の組成物を投与することを含んでもよい。この乳児に投与した組成物は、妊婦に投与したものと同じであっても、異なっていてもよい。例えば、乳児に投与した組成物は、Fタンパク質類似体であるRSV抗原性成分、又は1以上のRSV抗原をコードする核酸であるRSV抗原性成分、例えば、生弱毒化ウイルス、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター若しくはMVAベクター)、又はウイルスレプリコン粒子若しくは他の自己複製核酸を含んでもよい。この組成物は、本明細書中で記載される無細胞パータシス抗原(Pa、例えば1以上のパータシスタンパク質)、又は全細胞パータシス抗原(Pw)であるパータシス抗原性成分を、代替的に、又は追加で含んでもよい。RSV抗原性成分とパータシス抗原性成分との両方が乳児に投与される場合、RSV抗原性成分及びパータシス抗原性成分は、同じ免疫原性組成物中に共配合されてもよい。あるいは、RSV抗原性成分及びパータシス抗原性成分は、同時(同時若しくは同日に)投与されるか、又は異なるスケジュールに従って(例えば、種々の認可された及び/又は推奨された小児科免疫スケジュールに従って)投与されてもよい、2つ(以上)の異なる免疫原性組成物中に配合されてもよい。必要に応じて、乳児に投与される組成物(1又は複数)は、RSV若しくはパータシス以外の病原体の1以上のさらなる抗原を含んでもよい(例えば、種々の小児科免疫スケジュールに従って一般的に投与されるワクチン中に配合されてもよい)。製剤に応じて、この免疫原性組成物は、種々の確立された経路によって、例えば、筋肉内、皮膚、皮内及び/又は粘膜(例えば、鼻腔内)で、乳児に投与され得る。
本明細書中で開示されるワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットは、RSV及びパータシスによって引き起こされる感染又は疾患の発生又は重篤度を低減し得る。例えば、ワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットは、RSV疾患、例えばLRTIの発生若しくは重篤度を低減し得るか、又は重度のRSV疾患、例えばLRTIの発生を低減することによる。同様に、ワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットは、百日咳菌による感染によって引き起こされる疾患の発生及び重篤度(例えば、「ぜいぜいする」咳若しくは肺炎、又は関連症状の持続時間若しくは重篤度)を低減し得る。乳児の防御は、好ましくは、この乳児を、RSV及び/又はパータシスによって引き起こされる重度の疾患及び入院から防御することを含む。それ自体、本明細書中で開示される方法及び使用は、ワクチン接種を受けていない母の乳児と比較して、ワクチン接種した母の乳児のコホートにおいて、重度のLRTI及び/又は入院の割合、及び/又は肺炎の割合を50%以上、又は60%以上、又は70%以上低減させることにより測定されるように、RSV及びパータシスの両方によって引き起こされる重度の疾患の発生を、50%以上、又は60%以上、又は70%以上、低減し得る。
(用語)
本開示の種々の実施形態の検討を円滑にするために、以下に用語の説明を提供する。本開示の文脈で追加の用語及び説明を提供することもある。
特に説明されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語はすべて本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。分子生物学での一般用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V, Oxford University Pressより出版, 1994 (ISBN 0-19-854287-9); Kendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, Blackwell Science Ltd. より出版, 1994 (ISBN 0-632-02182-9); 及びRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, Inc.より出版, 1995 (ISBN 1-56081-569-8)に見い出すことができる。
単数用語「a」、「an」及び「the」は文脈が明瞭に示さない限り、複数の指示対象を含む。同様に、語「又は」は、文脈が明瞭に示さない限り、「及び」を含む。用語「複数の」は、2以上を指す。核酸又はポリペプチドに対して与えられる塩基のサイズ、アミノ酸のサイズはすべて、及び分子量又は分子質量はすべて近似であり、説明のために提供されることを理解されたい。さらに、抗原のような物質の濃度又はレベルに関して与えられる数値限定は近似であることが意図される。従って、濃度が少なくとも(たとえば)200pgであると示される場合、濃度は少なくともおよそ(又は「約」又は「〜」)200pgであると理解される。
本明細書で記載されるものに類似の又は均等の方法及び物質が本開示の実践又は試験で使用され得るが、好適な方法及び物質は以下に記載される。用語「comprises」は「includes」を意味する。従って、文脈が必要としない限り、用語「comprises」及びその変形「comprise」及び「comprising」は、言及された化合物若しくは組成物(たとえば、核酸、ポリペプチド、抗原)若しくは工程、又は化合物若しくは工程の群の包含を暗示するように理解されるが、他の化合物、組成物、工程、又はそれらの群の排除を暗示しないように理解される。略記「e.g.」はラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では非限定例を指すように使用される。従って、略記「e.g.」は用語「たとえば」と同義である。
用語「Fタンパク質」又は「融合タンパク質」又は「Fタンパク質ポリペプチド」又は「融合タンパク質ポリペプチド」は、RSVの融合タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全部又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。多数のRSVの融合タンパク質が記載されており、当業者に公知である。WO2008114149は、例示的なFタンパク質の変異体(たとえば、天然に存在する変異体)を示している。
「Fタンパク質類似体」とは、Fタンパク質の構造又は機能を改変する修飾を含んでいるが、Fタンパク質の免疫学的性質を保持しており、その結果、Fタンパク質類似体に対して生起された免疫応答が天然Fタンパク質を認識することになるようなFタンパク質を指す。WO2010149745(参照によりその全文を本明細書に組み入れる)は、例示的なFタンパク質類似体を示している。WO2011008974(参照によりその全文を本明細書に組み入れる)もまた例示的なFタンパク質類似体を示している。Fタンパク質類似体としては、例えばFタンパク質の融合前立体構造を安定化させる少なくとも1つの修飾を含み、一般的には可溶性の(すなわち膜に結合しない)PreF抗原が挙げられる。Fタンパク質類似体としてはまた、RSV Fタンパク質の融合後立体構造をとる融合後F(postF)抗原、好ましくはそのような立体構造で安定化されたものが挙げられる。F類似体としてはさらに、中間の立体構造をとるFタンパク質、好ましくはそのような立体構造で安定化されたものが挙げられる。このような代替物もまた一般的に可溶性である。
核酸又はポリペプチド(たとえば、RSVのF又はGタンパク質の核酸又はポリペプチド、あるいはF類似体核酸又はポリペプチド)を指す場合の「変異体」は、参照の核酸又はポリペプチドとは異なる核酸又はポリペプチドである。通常、変異体と参照の核酸又はポリペプチドとの間の差異は、該参照に比べて比率的に少数の差異を構成する。
ポリペプチド又はタンパク質の「ドメイン」は、ポリペプチド又はタンパク質の中で構造的に定義された要素である。たとえば、「三量体化ドメイン」は、ポリペプチドの三量体への集合を促進するポリペプチド内のアミノ酸配列である。たとえば、三量体化ドメインは他の三量体化ドメイン(同一の又は異なるアミノ酸配列を持つ追加のポリペプチドのもの)との会合を介して三量体への集合を促進することができる。用語は、そのようなペプチド又はポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指すのにも使用される。
用語「天然の」及び「天然に存在する」は、天然のままと同一状態で存在する、たとえばタンパク質、ポリペプチド、又は核酸のような要素を指す。すなわち、要素は人工的に修飾されていない。この開示の文脈で、たとえば、RSVの天然に存在する株又は分離株から得られるような、RSVタンパク質又はポリペプチドの多数の天然の/天然に存在する変異体があることが理解されるであろう。WO2008114149(参照によりその全文が本明細書に組み入れられる)は、例示的なRSV株、タンパク質及びポリペプチドを含んでおり、例えば図4を参照されたい。
用語「ポリペプチド」は、モノマーがアミド結合を介して互いに連結されるアミノ酸残基であるポリマーを指す。用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は本明細書で使用されるとき、アミノ酸配列を包含し、糖タンパク質のような修飾された配列を含むことが意図される。用語「ポリペプチド」は特に、組換え的に又は合成的に製造されるものと同様に天然に存在するタンパク質を網羅することが意図される。用語「断片」は、ポリペプチドに関して、ポリペプチドの一部(すなわち、部分配列)を指す。用語「免疫原性断片」は、完全長の参照のタンパク質又はポリペプチドの少なくとも1つの優勢な免疫原性エピトープを保持するポリペプチドのあらゆる断片を指す。ポリペプチド内の方向は、個々のアミノ酸のアミノ部分とカルボキシ部分の方向によって定義される、N末端からC末端方向に向かうものとして一般に言及される。ポリペプチドは、N末端又はアミノ末端からC末端又はカルボキシ末端に向かって翻訳される。
「シグナルペプチド」は、膜、たとえば小胞体の膜に対して及びそれを介して新しく合成された分泌タンパク質又は膜タンパク質を指示する短いアミノ酸配列(たとえば、およそ18〜25アミノ酸の長さ)である。シグナルペプチドはポリペプチドのN末端に位置することが多いが、普遍的ではなく、タンパク質が膜を交差した後、シグナルペプチダーゼによって切断されることが多い。シグナル配列は通常、3つの一般的な特徴:N末端の極性塩基性領域(n−領域)、疎水性コア及び親水性c−領域を含有する。
用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸配列」は、少なくとも10塩基の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド又はいずれかのヌクレオチドの修飾された形態であり得る。該用語は、DNAの一本鎖形態及び二本鎖形態を含む。「単離されたポリヌクレオチド」とは、それが由来する生物の天然に存在するゲノムにおいて直接隣接する(一方は5’末端で一方は3’末端)コード配列の双方と直接隣接しないポリヌクレオチドを意味する。一実施形態では、ポリヌクレオチドはポリペプチドをコードする。核酸の5’及び3’の方向は、個々のヌクレオチド単位の接続性を参照して定義され、デオキシリボース(又はリボース)糖鎖の炭素部分に従って指定される。ポリヌクレオチド配列の情報(コード)内容は5’から3’の方向で読み取られる。
「組換え」核酸は、天然に存在しない配列を有し、又は配列の2つの分離した断片の人工的な組み合わせによって作製された配列を有するものである。この人工的な組み合わせは、化学的な合成によって、又は、さらに一般的には、たとえば、遺伝子操作技法による核酸の単離された断片の人工的な操作によって達成することができる。「組換え」タンパク質は、たとえば、細菌細胞又は真核細胞のような宿主細胞に導入された異種(たとえば、組換え)の核酸によってコードされるものである。核酸は、導入された核酸によってコードされるタンパク質を発現することが可能であるシグナルを有する発現ベクターに導入することができ、又は核酸は宿主細胞の染色体に組み込むことができる。
用語「異種の」は、核酸、ポリペプチド又は別の細胞成分に関して、通常天然に見出されない場合、及び/又は異なる供給源若しくは種を起源とする成分が存在することを示す。
「抗原」は、対象に注射される、吸収される又はさもなければ導入される組成物を含む、対象にて抗体の産生及び/又はT細胞反応を刺激することができる化合物、組成物又は物質である。用語「抗原」は、関連する抗原性エピトープすべてを含む。用語「エピトープ」又は「抗原決定基」は、B細胞及び/又はT細胞が応答する抗原の部位を指す。「優勢な抗原性エピトープ」又は「優勢なエピトープ」は、それに対して機能的に有意な宿主の免疫応答、たとえば、抗体反応又はT細胞反応が為されるエピトープである。従って、病原体に対する防御免疫応答に関して、優勢な抗原性エピトープは、宿主の免疫系によって認識されると病原体が原因で生じる疾患からの防御を生じる抗原性部分である。用語「T細胞エピトープ」は、適切なMHC分子に結合すると、T細胞によって(T細胞受容体を介して)特異的に結合されるエピトープを指す。「B細胞エピトープ」は、抗体(又はB細胞受容体分子)によって特異的に結合されるエピトープである。
「アジュバント」は、非抗原特異的に免疫応答の産生を高める剤である。一般的なアジュバントには、抗原が吸着した鉱物(ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム)の懸濁液;油中水及び水中油(及びその変異体、二重エマルション及びリバーシブルエマルションを含む)を含むエマルション、リポ糖、リポ多糖、免疫刺激性核酸(たとえば、CpGオリゴヌクレオチド)、リポソーム、Toll様受容体作動薬(特に、TLP2、TLR4、TLR7/8、及びTLR9作動薬)、並びにそのような成分の種々の組み合わせが挙げられる。
「抗体」又は「免疫グロブリン」は、抗原に特異的に結合する4つのポリペプチドから構成される血漿タンパク質である。抗体分子は、ジスルフィド結合によって互いに保持される2つの重鎖ポリペプチド及び2つの軽鎖ポリペプチド(又はそれらの複数)から構成される。ヒトでは、抗体は、5つのアイソタイプ又はクラス、すなわちIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEに定義され、IgG抗体はさらに4つのサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)に分けることができる。「中和」抗体は、ウイルスの感染性を阻害することができる抗体である。したがって、RSVに特異的な中和抗体は、RSVの感染性を阻害又は低下させることができる。
「免疫原性組成物」は、たとえば、RSV又は百日咳菌のような病原体に対して特異的な免疫応答を誘発することが可能である、ヒト又は動物対象(たとえば、実験又は臨床設定で)に投与するのに好適な組成物である。そのようなものとして、免疫原性組成物は、1以上の抗原(たとえば、ポリペプチド抗原)又は抗原性エピトープを含む。免疫原性組成物はまた、たとえば、賦形剤、担体及び/又はアジュバントのような、免疫応答を誘発する又は高めることが可能である追加の1以上の成分を含むことができる。特定の例では、免疫原性組成物を投与して、病原体によって誘導される症状又は状態に対して対象を防御する免疫応答を誘発する。場合によっては、病原体により引き起こされる症状又は疾患は、病原体に対する対象の曝露に続く病原体の複製又は細胞感染を阻害ずることによって防がれる(又は低減される若しくは改善される)。本開示の文脈では、用語、免疫原性組成物は、RSV又は百日咳菌(パータシス)に対する防御的、予防的又は緩和的な免疫応答を誘発する目的で対象又は対象の集団への投与を意図される組成物を包含することが理解されるであろう(すなわち、ワクチン組成物又はワクチン)。
「免疫応答」は、免疫系の細胞、たとえば、B細胞、T細胞、又は単球の、病原体又は抗原(免疫原性組成物又はワクチンとして製剤化されている)などの刺激に対する応答である。免疫応答は、抗原特異的な中和抗体のような特異的抗体の産生を生じるB細胞の応答であることができる。免疫応答は、たとえば、CD4+応答又はCD8+応答のようなT細胞の応答であることもできる。B細胞及びT細胞応答は、「細胞性」免疫応答の態様である。免疫応答はまた、抗体により媒介される「液性」免疫応答であってもよく、これは、例えばELISAアッセイによって検出及び/又は測定することができる。場合によっては、応答は特定の抗原に特異的である(すなわち、「抗原特異的応答」)。抗原が病原体に由来するのであれば、抗原特異的応答は、「病原体特異的応答」である。「防御免疫応答」は、病原体の有害な機能又は活性を抑え、病原体による感染を低減し、あるいは病原体による感染の結果生じる症状(死亡を含む)を低減する免疫応答である。防御免疫応答は、たとえば、プラーク低減アッセイ若しくは中和アッセイにおけるウイルス複製若しくはプラーク形成の阻害によって、又は生体内での病原体チャレンジに対する耐性を測定することによって測定することができる。免疫原性刺激、例えば病原体又は抗原(例えば免疫原性組成物又はワクチンとして製剤化されたもの)への対象の曝露は、該刺激に特異的な一次免疫応答を惹起又は誘導し、すなわちその曝露が免疫応答を「プライミング」する。その後の該刺激に対する曝露、例えば免疫による曝露は、その特異的免疫応答の程度(若しくは持続期間、又は両方)を増大、すなわち「追加刺激(ブースト)」することができる。したがって、免疫原性組成物の投与による既に存在する免疫応答の「追加免疫(ブースト)」は、抗原(又は病原体)特異的応答の程度を増大する(例えば、抗体力価及び/又はアフィニティの増大により、抗原特異的B又はT細胞の頻度の増大により、成熟エフェクター機能の誘導により、あるいはこれらの任意の組み合わせにより)。
形容詞「薬学的に許容される」は、指示対象が対象(たとえば、ヒト又は動物対象)への投与に好適であることを指す。Remington’s Pharmaceutical Sciences, E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition (1975)は、免疫原性組成物を含む、治療用及び/又は予防用の組成物の薬学送達に好適な組成物及び製剤(希釈剤を含む)を記載している。
用語「低減(軽減、低下)する」は、剤の投与に続いて応答又は状態が定量的に低下するならば、又は参照剤に比べて剤の投与に続いてそれが低下するのであれば、剤が応答又は状態を低減するように、相対的な用語である。同様に用語「防御する」は、応答又は状態の少なくとも1つの特徴が実質的に又は有意に低減又は除去される限り、剤が感染のリスク又は感染によって生じる疾患を完全に除去することを必ずしも意味しない。従って、感染又は疾患若しくはその症候を防御する又は低減する免疫原性組成物は、感染の発生若しくは重篤度又は疾患の発生若しくは重篤度が、剤の非存在下での又は参照剤と比べた感染又は応答の、たとえば、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%測定上低下する限り、すべての対象における感染又は疾患を防御又は除去することができるが、必ずしもそうでなくてもよい。特定の場合において、低減は、下気道感染(LRTI)の発生、又は重篤なLRTIの発生、又はRSV疾患による入院、又はRSVによって引き起こされる疾患の重篤度の低減である。他の場合において、低減は、肺炎の発生、又は百日咳菌(B. pertussis)により引き起こされる疾患による入院の低減である。
「対象」は、生きている多細胞の脊椎生物である。本開示の文脈では、対象は、たとえば、非ヒト動物、たとえば、マウス、コットンラット、モルモット、ウシ又は非ヒト霊長類のような実験用対象であり得る。或いは、対象はヒト対象であり得る。同様に、妊娠女性及び乳児は、それぞれ非ヒト動物又はヒトの女性(雌)及び乳児であることができる。
(母体免疫)
下気道感染(LRTI)は、下気道の組織のいずれかの感染であり、気管支炎及び肺炎を含む最も重度の形態を有する。ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、6ヶ月齢未満の乳児及び妊娠35週以下の未熟児における下気道感染(LRTI)の、最も一般的な世界的病因である。RSV疾患スペクトルは、鼻炎及び耳炎から肺炎及び気管支炎まで広きにわたる気管症状を含み、後の二者の疾患は、無視できない罹病及び死を伴う。
細菌百日咳菌(パータシス)は、深刻な合併症である続発性肺炎、無呼吸並びに呼吸促迫及び呼吸不全によって乳児及び若齢児童において重篤になり得る、気管疾患である百日咳についての病原体である。抗生物質による処置が利用可能であるが、この疾患が診断される時点までに、細菌毒素は、重度の損傷を引き起こし得る。RSVの自然感染及びパータシスワクチンによる免疫の両方が、時間経過に従って減衰する免疫をもたらすので、その結果、青年及び成人が、これらの非常に伝染性の高い接触伝染病の保有者として行動し得る。このことは、新生児を、感染の結果が最も重篤となる生後数ヶ月以内に、大きな危険にさらす。
脆弱な新生児をパータシス感染及び疾患から防御するための戦略は、「繭化(cocooning)」、すなわち、新生児に接触する可能性のある青年及び成人(産後の女性を含む)にワクチン接種をすることを含む。現在、パータシスに対する妊婦のワクチン接種(母体免疫)は、幾つかの国で推奨されており、それにより、抗パータシス抗体が、胎盤を通じて移行し、乳児が直接接種可能になるまでの防御を提供する。それでもなお、RSV及び百日咳菌の両方の感染及び関連疾患に対する防御を付与する混合ワクチンについての満たされない需要が存在し、これは、新生児及び幼い乳児を大きな危険にさらす。
乳児をRSV及びパータシスによって引き起こされる疾患から防御する安全且つ有効なワクチンの開発における特定の挑戦は、最も高い発生並びに最も大きな罹病及び死亡が、非常に幼い乳児において存在することである。幼い乳児、特に未熟児で生まれた乳児は、未熟な免疫系を有し得る。生理学的に、乳児は、より大きな児童よりも、下気道の疾患に感染し易い場合がある。従って、幼い乳児をRSV疾患、百日咳、及び特に重度のLRTI、肺炎並びに呼吸促迫及び呼吸不全から防御することは、特に重要である。また、胎盤を介して乳児に移行した抗体(「母性抗体」)の乳児のワクチン接種に対する干渉の潜在的な危険性もあり、従って、乳児期のワクチン接種は、例えば、完全に防御的な中和抗体応答を惹起するために十分に有効ではない場合がある。
本開示は、RSV Fタンパク質の類似体及び無細胞若しくは全細胞パータシス抗原を含む安全且つ有効な免疫原性組成物によって妊婦を能動免疫することにより、RSV及びパータシスによって引き起こされる疾患から幼い乳児を防御するために好適な、ワクチン接種レジメン、方法及び免疫原性組成物の使用、並びにキットに関する。Fタンパク質類似体は、好適に、RSVへの自然な曝露(若しくはこれに対する以前のワクチン接種によって)以前にプライミングされた体液性応答の規模を追加刺激するか又は増大することによって、抗体(例えば、中和抗体)を惹起する。同様に、パータシス抗原は、パータシスへの自然な曝露(若しくはこれに対する以前のワクチン接種によって)以前にプライミングされた体液性応答の規模を追加刺激するか又は増大することによって、抗体を惹起する。Fタンパク質類似体及びパータシス抗原に対する応答において産生された抗体は、胎盤を介して在胎児に移行し、生後に乳児に受動免疫防御をもたらし、RSV及びパータシスにより引き起こされる感染及び重度の疾患の危険期を通して持続する(例えば、乳児のワクチン接種前は完全に防御される)。典型的には、この方法によって付与される受動免疫防御は、出生と少なくとも2ヶ月齢との間、例えば、約6ヶ月齢まで、又はなおそれより長くすら、持続する。
本明細書中で記載される、Fタンパク質類似体及び/又はパータシス抗原を含む免疫原性組成物は、強い抗体応答(例えば、中和抗体)を誘導するように設計される。妊婦は、典型的に、その人生で1回以上RSVに曝されているので、彼女らは、RSVに対する既存のプライミング応答を有する。成人までにRSV感染に曝される集団の割合は、本質的に100%である。百日咳に対して防御し予防するように設計された小児科免疫プログラムは、広まっている。しかし、広範な免疫にも拘らず、百日咳菌による自然感染もまた一般的である。従って、パータシスに対するプライミングもまた広まっている。従って、生後すぐからの乳児及びその後の重要な最初の数ヶ月のためのRSV及びパータシスからの防御の提供は、これらのプライミング応答を、母親においてRSV及びパータシスに対し、好ましくは、胎盤を通り乳児に防御を提供することができる特定の抗体サブクラス(サブタイプ)、例えばIgG1に関して、できる限り有効に追加刺激して血清抗体応答(レベル)を増大することによって達成され得る。1つの実施形態において、本明細書中での使用のための免疫原性組成物は、アジュバントを含まないか、又は強いIgG1応答を支持するアジュバント、例えばアルミニウム塩若しくはカルシウム塩などの鉱物塩、詳細には水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム若しくはリン酸カルシウムを含み得る。従って、特定の実施形態において、本明細書に記載の方法及び使用のためのFタンパク質類似体は、好ましくは、鉱物塩、好ましくはミョウバンと共に製剤化される。別の実施形態において、強いIgG1応答を支持するアジュバントは、水中油エマルジョン、又はサポニン、例えばQS21(若しくはその無毒化形態)であり、以下でより詳細に記載される。
妊婦は、ヒト妊婦であり得、従って、乳児若しくは在胎児は、ヒト乳児であり得る。ヒト妊婦について、発生胎児の在胎齢は、最後の月経周期の開始から数える。受胎後の週数は、最後の月経周期の開始の14日後から数えられる。従って、ヒト妊婦は、受胎後24週といえる場合、最後の月経周期の開始の26週後、すなわち妊娠26週と同じである。妊娠が、生殖技術の補助によって達成されている場合、発生胎児の在胎の段階は、受胎の日の2週間前から計算される。
用語「在胎児」は、本明細書中で使用される場合、妊婦の胎児すなわち発育中の胎児を意味する。用語「在胎齢」は、妊娠の週数、すなわち、最後の月経周期の開始からの週数を意味するように使用される。ヒトの妊娠は、典型的には、最後の月経の開始から約40週間であり、便宜上、3つの期に分けられ、前期は最後の月経周期の開始日から妊娠の13週目まで続き、中期は妊娠の14週目から27週目までに及び、そして後期は28週目から始まって出生まで続く。従って、後期は、受胎後26週で開始し、児の出生まで続く。
用語「乳児」は、ヒトについて言う場合、0歳から2歳までである。本明細書中で記載される方法及び使用によって提供される防御は、乳児から2歳から11歳までの児童期、又は例えば2歳から5歳までの児童期の初期、又は、なお12歳から18歳までの青年期までについての防御を提供する可能性があってもよい。しかし、これは、重度のRSV疾患及び百日咳(パータシス)の合併症に対し個体が最も脆弱である乳児期の間であり、従って、本開示の焦点である(例えば、生後約6ヶ月齢まで)。
ヒト乳児は、生後数ヶ月の間、免疫学的に未熟である。特に、未熟児で、例えば、妊娠35週齢より前に生まれた場合、病原体によって引き起こされる感染又は疾患を、同じ病原体に対して発達した免疫系が応答できるのと同じ方法で予防することができる免疫応答を起こすために十分に免疫系が発達していない。免疫学的に未熟な乳児は、より発達した若しくは成熟した免疫系を有する乳児よりも、病原体によって引き起こされる感染及び疾患に罹り易い。ヒト乳児はまた、生理学的及び発達上の理由で、例えば、気道が小さく、児童及び成人よりも発達が低く未熟であるから、生後数ヶ月の間、LRTI(肺炎を含む)に対し増大した脆弱性を有し得る。これらの理由のために、本明細書中で、乳児期の最初の6ヶ月を、40週未満、又は38週未満、又は35週未満の在胎齢で失われた時間の量に従って、未熟乳児若しくは産後乳児について延長し得る。
別の実施形態において、妊婦及びその乳児は、任意の種由来であってよく、例えば、これらは、上で「対象」と記載される。妊娠動物、例えば妊娠モルモット若しくは妊娠ウシは、受胎後の時間が、交尾からの時間で数えられる。ヒトにおいて、及び幾つかの動物、例えばモルモットにおいて、抗体は、母親から在胎児へ胎盤を介して渡される。幾つかの抗体アイソタイプは、胎盤を通じて優先的に移行され得る。例えばヒトIgG1抗体は、胎盤を通って最も効率的に移行するアイソタイプである。実験動物、例えばモルモット及びマウスにおいて、サブクラスが存在するが、種々のサブクラスは、必ずしも同じ機能を果たす必要はなく、ヒトのサブクラスと動物のサブクラスとの間の直接関連性は、容易には作られ得ない。
好ましくは、RSV及びパータシスによって引き起こされる感染を阻害し、疾患の発生及び重篤度を低減することによって乳児を防御することは、少なくとも、新生児期及び非常に幼い乳児、例えば、乳児が、妊娠約40週齢以降に生まれた正期産児であった場合に、例えば、生後最初の数週間、例えば生後1ヶ月又は2ヶ月、又は最初の3ヶ月、又は最初の4ヶ月、又は最初の5ヶ月、又は生後最初の6ヶ月、又はそれ以上に及ぶ。重度のRSV及び百日咳の影響に対し乳児がより脆弱ではなくなる最初の数ヶ月の後、これらの感染に対する防御は、減衰し得る。従って、致命的な防御は、最も必要とされる期間の間、提供される。正期産前の乳児の場合、好ましくは、防御は、出生からより長い期間、例えば、乳児の出生と妊娠35週になるまでの間の時間間隔と少なくとも同等のさらなる期間(すなわち、さらに約5週間)、又は妊娠38週になるまでの間の時間間隔と少なくとも同等のさらなる期間(すなわち、さらに約2週間)、又は出生時の乳児の妊娠(在胎)週数に応じてより長い期間、提供される。
乳児の防御が、RSVによるか若しくはパータシスによる感染に対する100%の防御を必ずしも意味しないことは、明らかである。感染又は疾患の発生及び重篤度の低減が存在する限り、防御が提供されたと認識される。乳児の防御は、好ましくは、RSV及びパータシスによって引き起こされる重度の疾患及び入院から乳児を防御することを含む。このように、本明細書中で開示される方法及び使用は、RSV及びパータシスによって引き起こされる疾患、例えばLRTI、肺炎若しくは他の症候若しくは疾患の、発生又は重篤度を低減する。例えば、本明細書中で開示されるFタンパク質類似体を含む免疫原性組成物の投与は、LRTIの発生を、(ワクチン接種した母親の乳児のコホートにおいて)ワクチン接種していない母の乳児と比較して、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は60〜70%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、低減し得る。好ましくは、このような投与は、LRTIの重篤度を、ワクチン接種していない母の乳児の感染と比較して、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は60〜70%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、低減する。好ましくは、このような投与は、重度のRSV疾患による入院の必要性を、このようなコホートにおいて、ワクチン接種していない母の乳児の感染と比較して、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は60〜70%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、低減する。重度のLRTIによる入院の必要性があると考えられるか否か、又は特定のLRTIの症例が入院されるか否かは、国によって変動し得、従って、当該分野で周知の規定の臨床症候に従って判定されたLRTIの重篤度は、入院を必要とするものよりもよい程度であり得る。パータシスに関して、本明細書中で開示されるとおり無細胞若しくは全細胞のパータシス抗原を含む免疫原性組成物の投与は、重度の疾患(例えば、肺炎及び/又は呼吸促迫及び呼吸不全)の(ワクチン接種した母親の乳児のコホートにおいて)、ワクチン接種していない母の乳児の感染と比較して、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は60〜70%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、発生を低減し得る。好ましくは、このような投与は、肺炎の重篤度を、ワクチン接種していない母の乳児の感染と比較して、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は60〜70%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、低減する。好ましくは、このような投与は、パータシスの重度の合併症による入院の必要性を、このようなコホートにおいて、ワクチン接種していない母の乳児の感染と比較して、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は60〜70%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、低減する。
典型的には、ワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットに従い、Fタンパク質類似体及びパータシス抗原は、妊娠(懐胎)の後期の間に、妊婦に投与される。母体免疫のタイミングは、母性抗体の産生及びこの母性抗体の胎児への移行が可能であるように設計される。従って、好ましくは、免疫と出生との間に、胎盤を通った母性抗体の最適な移行が可能であるために充分な時間が経過する。抗体移行は、ヒトにおいて、一般的に、妊娠の約25週から始まり、28週まで増大し、妊娠の約30週から最適となり、これを維持する。RSV Fタンパク質及びパータシス抗原(例えば、パータシストキソイド(PT)、糸状赤血球凝集素(FHA)、パータクチン(PRN)、2型線毛(FIM2)、3型線毛(FIM3)及びBrkAの1以上又は全細胞パータシス抗原)に対する母性抗体の胎児への有効な移行を可能にするために、本明細書中で記載される母体免疫と出生との間に、最低約2〜4週間が必要であると考えられる。従って、母体免疫は、妊娠25週の後の任意の時点、例えば、妊娠25、26、27、28、29、30、31、32、33若しくは34週(受胎後23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35若しくは36週)以降、又は妊娠38、37、36、35、34、33、32、31若しくは30週(受胎後36、35、34、33、32、31、29若しくは28週)以前に、行われ得る。好ましくは、母体免疫は、妊娠26週〜38週の間、例えば、28週〜34週の間に行われる。
好ましくは、母体免疫は、乳児の出産予定日よりも少なくとも2週間、又は少なくとも3週間、又は少なくとも4週間、又は少なくとも5週間、又は少なくとも6週間前に行われる。投与のタイミングは、早産の危険のある妊婦の場合、抗体の産生及び胎児への移行のための充分な時間を提供するために、調整する必要がある場合がある。
好ましくは、Fタンパク質類似体及びパータシス抗原又はそれらの製剤は、上述の期間の間に、単回用量で妊婦に投与される。本明細書中で記載される、RSV及びパータシスに対する母体免疫は、RSV及びパータシスに対する既存の母体免疫についての「追加刺激」であると考えられ、これは、以前に、例えば自然曝露若しくはワクチン接種によってプライミングされたRSV及びパータシスに対する免疫応答を増大する。従って、単回用量のみが必要であると予測される。第2の用量が投与される場合、これもまた、第1の用量についての投与期間内に、好ましくは、第1と第2の用量との間の時間間隔を、例えば、1〜8週間、若しくは2〜6週間、例えば、2週間若しくは4週間若しくは6週間あける。Fタンパク質類似体及びパータシス抗原の妊婦への投与は、母性抗体力価における追加刺激をもたらし、例えば、好適にはIgG1サブクラスの、血清(例えば、中和)抗体の力価を増大する。母体において増大した抗体力価は、胎盤を通り、Fcレセプターによって媒介される能動輸送メカニズムを介して、例えば、絨毛膜絨毛の合胞栄養芽層において、RSV特異的抗体及びパータシス特異的抗体(例えば中和エフェクター機能を有する)の在胎児への受動移行をもたらす。本明細書中で開示された免疫方法からもたらされたRSV特異的IgG1抗体及びパータシス特異的IgG1抗体の胎盤を通った輸送は、効率的であり、出生時若しくはそれに近い時期の乳児において、母体循環における力価と近い、それと同等若しくはそれを超える力価をもたらす。例えば、RSV特異的抗体の力価は、好ましくは、出生時に少なくとも30mcg/mLのレベルである。典型的には、正規産での健康な乳児の出生時において、この力価は、このレベル以上、例えば、40mcg/mL、50mcg/mL、60mcg/mL又はそれ以上、例えば75mcg/mL、80mcg/mL、90mcg/mL、100mcg/mL又は120mcg/mLまで若しくはそれ以上ですらあり得る。
パータシス(例えば、PT)に特異的な抗体の力価は、典型的に、Meade et al.,“Description and evaluation of serologic assays used in a multicenter trial of acellular pertussis vaccines", Pediatrics (1995) 96:570-5に記載されるように、ELISAにより測定され、ELISA単位/ml(EU)で表される。簡潔にいうと、例えば、マイクロタイタープレート(例えば、Immulon 2、VWR International、West Chester、PA、USA)を、標準量のPT、FHA、FIM若しくはPRNでコーティングする。血清の連続希釈物を、およそ2時間にわたって28℃にてインキュベートし、アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgGの適当な希釈物を添加する。この反応を発色させ、そして405nmにて読み取る。各特異的抗体の希釈の下限を、各抗原についての連続希釈した参照物質の多重測定によって決定し、PT、FHA及びPRNについて1ELISA単位(EU)を、そしてFIMについて2EUを設定する。好ましくは、本明細書中で開示されるワクチン接種レジメン、方法、使用に従うか、又はキット内に含まれる、パータシス抗原を含む免疫原性組成物の投与の後に、パータシス特異的抗体力価は、出生時に少なくとも10EUのレベルである。典型的には、この力価は、このレベル以上、例えば、20EU、30EU、40EU、50EU、60EU、70EU、80EU、90EU又は100EU以上であり得る。これらの値は、個々に基づいても、集団平均に基づいてもよい。好ましくは、出生時に観察される抗体のレベルは、上述の閾値を超え、そして出生後数ヶ月にわたって持続する。
移行した抗体のエフェクター機能、例えば、中和能力(中和力価)もまた評価され得、そして、防御に相関する抗体の機能的属性の測定値を提供する。例えば、RSVの場合、特定の量の複製可能なRSVウイルス及び血清の所定の希釈物が、混合され、インキュベートされる。次いで、このウイルス−血清反応混合物を、ウイルス複製に許容的な宿主細胞(例えば、HEp−2細胞)上に移し、細胞増殖及びウイルス複製に好適な条件下で、好適な時間にわたってインキュベートする。非中和ウイルスは、宿主細胞に感染し、そしてそこで複製することができる。このことは、細胞単層上に所定数のプラーク形成単位(PFU)の形成をもたらし、これは、蛍光色素でタグ化した抗RSV抗体を用いて検出され得る。中和力価は、ウイルスに感染したのみで血清を含まない細胞単層と比較して、PFUにおける特定のレベルの阻害(例えば、50%阻害又は60%阻害)を誘導する血清希釈を計算することによって決定される。例えば、パリビズマブ抗体は、未処理ウイルス感染細胞と比較したRSV抗原の検出を50%低減させる抗体濃度として示される中和力価(50%有効濃度[EC50])を、臨床的RSV A及びRSV B単離物に対し、それぞれ1mLあたり0.65mcg(1mLあたり平均0.75±0.53mcg;n=69,1mLあたり0.07〜2.89mcgの範囲)及び1mLあたり0.28mcg(1mLあたり平均0.35±0.23mcg;n=35,1mLあたり0.03〜0.88mcgの範囲)で有することが示されている。従って、特定の実施形態において、胎盤を介して在胎児へ移行する抗体の中和力価は、出生後の乳児において測定され得、(集団中央値に基づき)RSV A株に対し少なくとも約0.50mcg/mL(例えば、少なくとも約0.65mcg/mL)又はそれを超えるEC50、及びRSV B株に対し少なくとも約0.3mcg/mL(例えば、少なくとも約0.35mcg/mL)又はそれを超えるEC50を有する。好ましくは、中和抗体力価は、出生後、数週間から数ヶ月にわたって、上述の閾値を上回り続ける。
所望の場合、パータシス毒素に特異的な抗体のトキシン中和エフェクター機能もまた、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中和アッセイにおいて、例えばGillenius et al.,“The standardization of an assay for pertussis toxin and antitoxin in microplate culture of Chinese hamster ovary cells". J. Biol. Stand. (1985) 13:61-66において記載されるように測定され得る。しかし、このアッセイにおける中和活性は、防御とあまり相関しない。
必要に応じて、本明細書中で開示されるワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットに従い、RSV及びパータシスに対する防御を、受動的に移行した母性抗体が防御を提供する間である出生後数ヶ月を超えて延長させるために、乳児は、RSV及び/又はパータシスに特異的な後天免疫応答を惹起するために、能動的に免疫されてもよい。乳児のこのような能動免疫は、RSV抗原及び/又はパータシス抗原を含む1又はそれ以上の組成物を投与することによって、達成され得る。例えば、この(1以上の)組成物は、必要に応じて抗原により惹起される免疫応答を増大するためにアジュバントと共に製剤化されたFタンパク質類似体を含み得る。以前にRSVに曝されていない乳児への投与のために、Fタンパク質類似体は、Th1サイトカインプロフィールを提示するT細胞の産生によって特徴付けられる(又はTh1及びTh2サイトカインプロフィールを提示するT細胞の平衡によって特徴付けられる)免疫応答を惹起するアジュバントと共に製剤化され得る。
あるいは、Fタンパク質類似体若しくは他のタンパク質サブユニットワクチンを投与するよりむしろ、RSVに対して防御する後天的免疫応答を惹起する組成物は、弱毒化生ウイルスワクチン若しくは1以上のRSV抗原(例えば、F抗原、G抗原、N抗原若しくはM2抗原又はこれらの一部分)をコードする核酸を含み得る。例えば、核酸は、ベクター、例えば組換えウイルスベクター、例えばアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、MVAベクター、麻疹ベクターなどに存在させうる。例示的なウイルスベクターは、WO2012 089231に開示され、これは、1以上のRSV抗原をコードするウイルスベクターを含む免疫原性組成物を説明する目的で、本明細書中に組み込まれる。あるいは、この核酸は、自己複製型核酸、例えば自己複製型RNA、例えば、アルファウイルスレプリコンなどのウイルスレプリコンの形態で(例えば、ウイルス構造タンパク質と共にパッケージングされたウイルスレプリコン粒子の形態で)あってもよい。このような自己複製型RNAレプリコンの例は、WO2012/103361に記載され、これは、RSVタンパク質をコードするRNAレプリコン及び免疫原性組成物としてのその製剤を開示する目的で、本明細書中に組み込まれる。
さらに、又はあるいは、パータシス抗原を含む1以上の組成物が、乳児に投与され得る。例えば、この組成物は、パータシストキソイド(PT)、糸状赤血球凝集素(FHA)、パータクチン(PRN)、2型線毛(FIM2)、3型線毛(FIM3)及びBrkA、又はこれらの組み合わせ(例えば、PT及びFHA;PT、FHA及びPRN;又はPT、FHA、PRN及びFIM2とFIM3のいずれか若しくは両方)からなる群より選択される無細胞パータシス抗原を含み得る(例えば、本明細書中以下で記載されるようにPTが化学的に若しくは遺伝的にトキソイド化されている)。あるいは、組成物は本明細書中以下で記載されるように、全細胞パータシス抗原を含み得る。
特定の実施形態において、RSV抗原性成分(例えば、組換えタンパク質、例えばFタンパク質類似体)及びパータシス抗原性成分は、単一の免疫原性組成物中に共配合されて、本明細書中で記載されるワクチン接種レジメン、方法又は使用に従って投与される。あるいは、RSV抗原性成分及びパータシス抗原性成分は、2(又はそれ以上)の異なる免疫原性組成物中に配合され、これは、同時若しくは異なる時点で、例えば、種々の認可され且つ推奨された小児科免疫スケジュールに従って、投与され得る。
後天的RSV免疫応答及び/又は後天的パータシス免疫応答を惹起する組成物は、本明細書中で開示されるRSVワクチンを妊娠中に受けた母に生まれた乳児に投与され、この組成物は、1回以上投与されてもよい。最初の投与は、出生時若しくはそれに近い時点であってもよく(例えば、出生日若しくはその翌日)、又は出生の1週間以内若しくは2週間以内であってもよい。あるいは、最初の投与は、出生の約4週間後、出生の約6週間後、出生の約2ヶ月後、出生の約3ヶ月後、出生の約4ヶ月後、又はそれ以降、例えば出生の約6ヶ月後、出生の約9ヶ月後、又は出生の約12ヶ月後であり得る。例えば、パータシス抗原(例えば、Pa若しくはPw)を含む組成物の場合、出生の約2、4及び6ヶ月後にワクチンを投与することが一般的である(さらなる用量を12〜18ヶ月に、及び必要に応じて4〜7歳の間に行う)。従って、1つの実施形態において、本開示は、その乳児を妊娠していた間にFタンパク質類似体及びパータシス抗原を含む免疫原性組成物を投与された女性に生まれた乳児に、RSV及び/又はパータシスに特異的な免疫応答を惹起する1以上の組成物を投与することにより、RSV及びパータシスによって引き起こされる疾患から乳児を防御するための方法を提供する。
(RSV Fタンパク質類似体)
本明細書に開示し、ワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットに使用するために好適な組換えRSV抗原は、RSV Fタンパク質から誘導された(すなわち、免疫学的にそれの全体又は一部に相当する)Fタンパク質類似体である。それらは、Fタンパク質の構造又は機能を改変する1以上の修飾を含むが、Fタンパク質の免疫学的性質を保持し、結果として、Fタンパク質類似体に対して生起された免疫応答は天然のFタンパク質を認識し、したがってRSVを認識するものである。本明細書に記載するFタンパク質類似体は免疫原として有用である。
当該技術で広く受け入れられている用語及び指示を参照してRSV Fタンパク質の構造の詳細を本明細書で提供し、図1Aで模式的に説明する。Fタンパク質ポリペプチドの一次アミノ酸配列を参照して(図1A)、以下の用語を利用してFタンパク質類似体の構造的特徴を説明する。
用語F0は、完全長の翻訳されたFタンパク質前駆体を指す。F0ポリペプチドは、pep27と命名された介在ペプチドによって分離されるF2ドメインとF1ドメインにさらに分割される。成熟の間に、F0ポリペプチドは、F2とF1と隣接pep27の間に配置されている2つのフーリン部位でタンパク分解切断を受ける。議論を確実にする目的で、F2ドメインは、アミノ酸1〜109の少なくとも一部及び最大で全部を含み、F1ドメインの可溶性部分は、Fタンパク質のアミノ酸137〜526の少なくとも一部及び全部までを含む。上で示したように、これらアミノ酸の位置(及び本明細書で指定される後に続くアミノ酸の位置すべて)は、配列番号2の例示的なFタンパク質前駆体ポリペプチド(F0)を参照して与えられる。
本来は、RSV Fタンパク質は、F0と命名された単一のポリペプチド前駆体、長さ574のアミノ酸として発現される。生体内で、F0は、小胞体にてオリゴマー化され、2つの保存されたフーリンコンセンサス配列(フーリン切断部位)、RARR109(配列番号15)とRKRR136(配列番号16)にてフーリンプロテアーゼによってタンパク分解処理を受けて、2つのジスルフィド結合断片から成るオリゴマーを生成する。これら断片の小さい方はF2と呼ばれ、F0前駆体のN末端部分を起源とする。略記、F0、F1及びF2は科学文献では一般にF0、F1及びF2と示されることが当業者によって認識されるであろう。大きい方のC末端F1断片は、24アミノ酸の細胞質尾部に隣接する疎水性アミノ酸の配列を介して膜にFタンパク質を固定する。3つのF2−F1二量体が会合して成熟Fタンパク質を形成し、それは、標的細胞膜との接触の際、立体構造変化を受けるきっかけとなる準安定的な前融合型(「融合前」)の立体構造を取る。この立体構造変化は、融合ペプチドとして知られる疎水性配列を露出させ、それは、宿主細胞の膜と会合し、標的細胞膜とのウイルス又は感染細胞の膜の融合を促進する。
F1断片は、HRA及びHRBと命名され、それぞれ融合ペプチド及び膜貫通アンカードメインの近傍に位置する少なくとも2つの7個(heptad)反復ドメインを含有する。融合前立体構造では、F2−F1二量体は、球形の頭部と茎構造を形成し、そこでHRAドメインは球形の頭部における断片化(伸長した)立体構造にある。それに対して、HRBドメインは、頭部領域から伸びる三本鎖のコイルドコイルの茎を形成する。融合前から融合後立体構造への転移の間、HRAドメインは崩壊し、HRBドメインの近傍にもたらされ、逆平行の6らせん束を形成する。融合後の状態で、融合ペプチドと膜貫通ドメインは、並置されて膜の融合を円滑にする。
上記で提供された立体構造の記載は、結晶学データの分子モデル化に基づくが、融合前と融合後立体構造の構造的な識別は、結晶学への手段なしでモニターできる。たとえば、その技術的教示の目的で、参照によって本明細書に組み入れられるCalder et al., Virology, 271:122-131 (2000)及びMorton et al., Virology, 311:275-288によって明らかにされたように、電子顕微鏡を用いて融合前と融合後(あるいは前融合型と融合型と称される)の立体構造の間を区別することができる。また、その技術的教示の目的で、参照によって本明細書に組み入れられるConnolly et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:17903-17908 (2006)により記載されたようなリポソーム会合アッセイによって融合前立体構造を融合型(融合後)立体構造から区別することができる。さらに、RSV Fタンパク質の融合前形態又は融合形態の1つ又はその他に存在するが、他の形態には存在しない立体構造エピトープを特異的に認識する抗体を用いて融合前の立体構造と融合型の立体構造を区別することができる。そのような立体構造のエピトープは、分子の表面における抗原決定基の優先的な曝露による。或いは、立体構造のエピトープは、直鎖ポリペプチドで隣接しないアミノ酸の並置から生じ得る。
典型的には、Fタンパク質類似体(PreF、PostFなど)は、膜貫通ドメイン及び細胞質尾部を欠損し、Fタンパク質細胞外ドメイン又は可溶性Fタンパク質細胞外ドメインとも称されることがある。
Fタンパク質類似体には、Fタンパク質の融合前立体構造、すなわち、宿主細胞の膜との融合に先立った成熟集合Fタンパク質の立体構造を安定化させるために修飾されているFタンパク質ポリペプチドが含まれる。これらのFタンパク質類似体は、明瞭性と単純性の目的で、「PreF類似体」、「PreF」又は「PreF抗原」と呼称され、一般的に可溶性である。本明細書で開示されるPreF類似体は、ヘテロの三量体ドメインの組み入れによって改変されている可溶性Fタンパク質類似体が改善された免疫的特徴を示し、生体内で対象に投与された場合安全で高度に防御的であるという予期しない発見にその基礎を置く。例示的なPreF抗原は、WO2010149745に開示されており、これをPreF抗原の例を提供する目的でその全文を参照により本明細書に組み入れる。
Fタンパク質類似体としてはまた、融合後Fタンパク質の立体構造を有し、PostF抗原又は融合後抗原とも称されるFタンパク質ポリペプチドが含まれる。PostF類似体はWO2011008974(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。PostF抗原は、天然の融合後Fタンパク質の構造又は機能を改変する少なくとも1つの修飾を含んでいる。
好ましい実施形態において、RSV疾患に対して乳児を防御するための母体免疫用の組成物は、細胞接着及び融合の前にウイルス上に見出される融合前立体構造で安定化されたRSV PreF類似体抗原を含む。例示的なPreF類似体の模式図は図1Bに提供する。RSV Fタンパク質は、本明細書で提供される教示に従って融合前立体構造を安定化させるために修飾できることが当業者によって理解されるであろう。従って、PreF(並びにPostF、及び他の立体構造)類似体の作出を導く原理の理解を円滑にするために、個々の構造的成分は、例示的なFタンパク質を参照して示し、そのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号1及び2に提供する。同様に、該当する場合、例示的なGタンパク質を参照してGタンパク質抗原が説明されるが、そのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号3及び4に提供する。
本明細書で開示されるPreF類似体は、発現されたタンパク質の集団にて、発現されたタンパク質の集団の実質的な部分が、前融合型(融合前)の立体構造にあるように(たとえば、構造的な及び/若しくは熱動態的なモデル化によって予測されるように又は上記で開示された方法の1以上によって評価されるように)、RSV Fタンパク質の融合前立体構造を安定化させ、維持するように設計される。Fタンパク質の融合前立体構造の主な免疫原性エピトープが、細胞環境又は細胞外環境(たとえば、対象への投与に続く生体内)へのPreF類似体の導入に続いて維持されるように、安定化する修飾は、天然(又は合成)のFタンパク質、たとえば、配列番号2の例示的なFタンパク質のような天然の(又は合成の)Fタンパク質に導入される。
先ず、F0ポリペプチドの膜アンカードメインを置き換えるためにヘテロ安定化ドメインを構築物のC末端に置くことができる。この安定化ドメインは、HRBの不安定性を代償し、融合前の配座異性体を安定化するのを助けると予測される。例示的な実施形態では、ヘテロ安定化ドメインはタンパク質多量体化ドメインである。そのようなタンパク質多量体化ドメインの特に好都合な一例は、三量体化ドメインである。例示的な三量体化ドメインは、コイルドコイルドメインを有する複数のポリペプチドの三量体への集合を促進するコイルドコイルに折り畳む。三量体化ドメインの例としては、インフルエンザヘマグルチニン、SARSスパイク、HIV gp41、修飾GCN4、バクテリオファージT4フィブリチン及びATCase由来の三量体化ドメインが挙げられる。三量体化ドメインの好都合な一例は、イソロイシンジッパーである。例示的なイソロイシンジッパーは、Harbury et al. Science 262:1401-1407 (1993)によって記載された操作された酵母GCN4イソロイシン変異体である。好適なイソロイシンジッパードメインの1つの配列は配列番号11で表されるが、コイルドコイル安定化ドメインを形成する能力を保持するこの配列の変異体も同様に好適である。代わりの安定化コイルドコイル三量体化ドメインには、TRAF2(GENBANK(登録商標)登録番号Q12933[gi:23503103];アミノ酸299−348);トロンボスポンジン1(登録番号PO7996[gi:135717];アミノ酸291−314);Matrilin−4(登録番号O95460[gi:14548117];アミノ酸594−618;CMP(matrilin−1)(受登録番号NP_002370[gi:4505111];アミノ酸463−496;HSF1(登録番号AAX42211[gi:61362386];アミノ酸165−191;及びCubilin(登録番号NP_001072[gi:4557503];アミノ酸104−138が挙げられる。好適な三量体ドメインは、発現されたタンパク質の実質的な部分の三量体への集合を生じることが期待される。たとえば、三量体化ドメインを有する組換えPreFポリペプチドの少なくとも50%が三量体へと集合する(たとえば、AFF−MALSによって評価されるように)。通常、発現されたポリペプチドの少なくとも60%、さらに好都合には少なくとも70%、最も望ましくは少なくとも約75%が三量体として存在する。
安定化変異の別の例は、Fタンパク質の疎水性ドメインへの親水性アミノ酸の付加又は置換である。典型的には、荷電アミノ酸、例えばリジンを、疎水性領域において、付加する、又は該領域において中性アミノ酸、例えばロイシンと置換する。例えば、Fタンパク質細胞外ドメインのHRBコイルドコイルドメイン内において、親水性アミノ酸を付加する、又は該ドメイン内の疎水性若しくは中性アミノ酸と置換する。例えば、荷電アミノ酸残基(リジンなど)で、Fタンパク質の512位に存在するロイシン(天然F0ポリペプチドに対して;配列番号6の例示的なPreF類似体ポリペプチドのL482K)を置換することができる。あるいは、又はさらに、Fタンパク質のHRAドメイン内において、親水性アミノ酸を付加する、又は該ドメイン内の疎水性若しくは中性アミノ酸と置換する。例えば、1以上の荷電アミノ酸(リジンなど)を、PreF類似体の105〜106位に又はその近傍(例えば、参照配列番号2の残基105に対応するアミノ酸の後ろ、例えばアミノ酸105と106の間など)に挿入することができる。任意により、HRA及びHRBドメインの両方において親水性アミノ酸を付加又は置換してもよい。あるいは、PreF類似体の全体の立体構造が有害な影響を受けない限り、1以上の疎水性残基を欠失してもよい。
第2に、pep27を取り除くことができる。融合前状態でのRSV Fタンパク質の構造モデルの解析は、pep27が、F1とF2の間で大きな非拘束ループを創ることを示唆している。このループは、融合前状態の安定化に寄与することはなく、フーリンによる天然タンパク質の切断に続いて取り除かれる。したがって、pep27はまた融合後(又は他の)立体構造類似体を含む実施形態から取り除かれる。
第3に、(天然F0タンパク質におけるF2ドメインとF1ドメインの間から)フーリン切断モチーフの一方又は双方を欠失させることができる。105〜109又は106〜109位及び133〜136位に位置するフーリン認識部位の一方又は両方を、フーリン認識部位の1以上のアミノ酸の欠失又は置換により、例えば1以上のアミノ酸の欠失、又は1以上のアミノ酸の置換、又は1以上の置換若しくは欠失の組み合わせにより消去することができ、あるいはプロテアーゼがPreF(又は他のFタンパク質類似体)ポリペプチドのその構成するドメインへの切断を不可能にするように修飾することによって消去することができる。任意により、介在pep27ペプチドもまた、例えばリンカーペプチドにより、除去又は置換することができる。さらに、又は場合により、融合ペプチドに近接する非フーリン切断部位(例えば、112〜113位におけるメタロプロテイナーゼ部位)を除去又は置換してもよい。
したがって、本発明に係る方法及び使用において使用するためのFタンパク質類似体は、1以上の改変されたフーリン切断部位を有する非切断型の細胞外ドメインで得ることができる。そのようなFタンパク質類似体ポリペプチドは、それらをアミノ酸101〜161の位置で切断されずに、例えば105〜109位及び131〜136位におけるフーリン切断部位において切断されずに分泌する宿主細胞において組換えにより産生される。特定の実施形態において、置換K131Q、131〜134位におけるアミノ酸の欠失、又は置換K131Q又はR133Q又はR135Q又はR136Qは、136/137における切断を阻害するために使用される。
例示的な設計において、融合タンパク質はF2から切断されず、融合前の配座異性体の球形頭部からの放出を妨げ、すぐ近くの膜への接近性を妨げる。融合ペプチドと膜界面との間の相互作用が融合前状態の不安定性における主な課題であると予測される。融合プロセスの間、融合ペプチドと標的膜の間の相互作用は、球形頭部構造内からの融合ペプチドの曝露を生じ、融合前状態の不安定性を高め、融合後の配座異性体に折り畳む。この立体構造の変化によって膜融合のプロセスが可能になる。フーリン切断部位の一方又は両方の除去は、融合ペプチドのN末端部分への膜接近性を妨げ、融合前状態を安定化させると予測される。従って、本明細書で開示される例示的な実施形態では、フーリン切断モチーフの除去は、インタクトな融合ペプチドを含むPreF類似体を生じ、それは、プロセシング及び集合の間又はそれに続いてフーリンによって切断されない。
任意で、たとえば、1以上のアミノ酸の置換によって少なくとも1つの非フーリン切断部位を取り除くことができる。たとえば、実験的証拠は、特定のメタロプロテイナーゼによる切断につながる条件下では、Fタンパク質類似体はアミノ酸110〜118の近傍で切断され得る(たとえば、Fタンパク質類似体のアミノ酸112と113の間;配列番号2の参照Fタンパク質ポリペプチドの142位のロイシンと143位のグリシンの間で切断が生じる)。従って、この領域内での1以上のアミノ酸の修飾は、Fタンパク質類似体の切断を低下させ得る。たとえば、112位のロイシンは、たとえば、イソロイシン、グルタミン又はトリプトファン(配列番号20の例示的な実施形態で示されるような)のような異なるアミノ酸で置換することができる。代わりに又はさらに、113位のグリシンは、セリン又はアラニンによって置換することができる。さらなる実施形態において、Fタンパク質類似体はさらに改変型トリプシン切断部位を含み、Fタンパク質類似体は、アミノ酸101と161との間の位置でトリプシンにより切断されない。
任意で、Fタンパク質類似体は、(たとえば、天然のFタンパク質ポリペプチドに存在する1以上のグリコシル化部位でグリコシル化された分子の比率を上げる又は下げることによって、)グリコシル化のパターン又は状況を改変する1以上の修飾を含むことができる。たとえば、配列番号2の天然Fタンパク質ポリペプチドは、27位、70位及び500位(配列番号6の例示的なPreF類似体の27位、70位及び470位に対応する)でのアミノ酸にてグリコシル化されると予測される。一実施形態では、修飾は、500位のアミノ酸(N470と命名)でのグリコシル化部位の近傍に導入される。たとえば、500位(参照配列の、例示的なPreF類似体の470位へのアライメントに対応する)のアスパラギンの代わりにグルタミン(Q)のようなアミノ酸を置換することによってグリコシル化部位を取り除くことができる。好都合には、このグリコシル化部位でグリコシル化効率を高める修飾が導入される。好適な修飾の例には、500〜502位にて以下のアミノ酸配列:NGS;NKS;NGT;NKTが挙げられる。興味深いことに、高いグリコシル化を生じるこのグリコシル化部位の修飾はまた実質的に高いPreF産生を生じることが見出された。従って、特定の実施形態では、PreF類似体は、参照PreF配列(配列番号2)のアミノ酸500に対応する位置で、たとえば、配列番号6によって例示されるPreF類似体の470位にて修飾されたグリコシル化部位を有する。好適な修飾には、参照Fタンパク質ポリペプチド配列の500〜502位に対応するアミノ酸での、配列:NGS;NKS;NGT;NKTが挙げられる。「NGT」の修飾を含む例示的な実施形態のアミノ酸は、配列番号18にて提供される。当業者は、対応するNGS、NKS及びNKTについての同様の修飾を容易に決定することができる。そのような修飾は、本明細書で開示される安定化変異(たとえば、イソロイシンジッパーのようなヘテロコイルドコイル、疎水性領域におけるドメイン及び/又は修飾、及び/又はpep27の除去、及び/又はフーリン切断部位の除去、及び/又は非フーリン切断部位の除去、及び/又は非フーリン切断部位の除去)のいずれかと好都合に組み合わせられる。たとえば、特定の一実施形態では、Fタンパク質類似体は非フーリン切断部位を消去させる置換とグリコシル化を高める修飾を含む。例示的なPreF類似体配列は、配列番号22(例示的な実施形態が、「NGT」の修飾と112位でのロイシンに代わるグルタミンの置換を含む)にて提供される。例えば、特定の例示的な実施形態において、グリコシル化修飾PreF類似体は、a)配列番号22を含む又はこれからなるポリペプチド;b)配列番号21により又は配列番号21に対して実質的にその全長にわたってストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド;c)配列番号22に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドからなる群より選択される。
さらに一般的には、本明細書で開示される安定化の修飾、たとえば、好ましくは可溶性Fタンパク質類似体のC末端に位置する、たとえば、コイルドコイル(たとえば、イソロイシンジッパードメイン)のような異種の安定化ドメインの付加;疎水性HRBドメインにおけるロイシンからリジンへのような残基の修飾;pep27の除去;フーリン切断モチーフの一方又は双方の除去;非フーリン切断部位、例えばトリプシン切断部位などの除去;並びに/あるいはグリコシル化部位の修飾のいずれか1つを、ほかの安定化修飾の1以上との組み合わせにて(又は任意の所望の組み合わせで全部まで)採用することができる。たとえば、ヘテロコイルドコイル(又はそのほかの異種安定化ドメイン)を単独で利用することができ、又は疎水性領域の修飾及び/又はpep27の除去及び/又はフーリン切断部位の除去及び/又は非フーリン切断部位の除去及び/又は非フーリン切断部位の除去のいずれかと組み合わせて利用することができる。特定の特殊な実施形態では、Fタンパク質類似体、例えばPreF類似体は、C末端のコイルドコイル(イソロイシンジッパー)ドメイン、HRB疎水性ドメインにおける安定化置換、及びフーリン切断部位の一方又は双方の除去を含む。そのような実施形態は、フーリン切断によって除去されないインタクトな融合ペプチドを含む。特定の一実施形態では、Fタンパク質類似体はまた500位のアミノ酸にて修飾されたグリコシル化部位を含む。
本明細書に記載する方法及び使用のためのFタンパク質類似体は、Fタンパク質類似体(例えばPreF類似体、PostF類似体、又は非切断型Fタンパク質細胞外ドメインなど)を含む生物学的材料を準備し、その類似体ポリペプチドの単量体若しくは多量体(例えば三量体)又はその混合物を生物学的材料から精製することを含む方法によって製造することができる。
Fタンパク質類似体は、ポリペプチド単量体若しくは三量体、又は平衡して存在しうる単量体と三量体の混合物の形態で存在することができる。単一形態の存在は、より予測可能な免疫応答及びより良好な安定性などの利点をもたらすだろう。
したがって、一実施形態において、本発明において使用するためのFタンパク質類似体は、単量体若しくは三量体又は単量体と三量体の混合物の形態で、実質的に脂質及びリポ多糖を含まない、精製されたFタンパク質類似体である。
Fタンパク質ポリペプチドは、RSVのA株若しくはRSVのB株又はその変異株(上記と同義)のFタンパク質から選択することができる。特定の例示的な実施形態では、Fタンパク質ポリペプチドは、配列番号2で表されるFタンパク質である。本開示の理解を円滑にするために、アミノ酸残基の位置はすべて、株にかかわりなく、例示的なFタンパク質のアミノ酸の位置(すなわち、対応するアミノ酸残基の位置)に関して与えられる。ほかのRSVのA株又はB株の匹敵するアミノ酸の位置は、容易に利用でき、周知のアライメントアルゴリズム(たとえば、BLAST、たとえば、デフォルトパラメータを用いて)を用いて例示的な配列と共に選択されたRSV株のアミノ酸配列をアライメントすることによって当業者によって容易に決定することができる。異なるRSV株に由来するFタンパク質ポリペプチドの多数の追加の例は、WO2008/114149(RSV F及びGタンパク質配列の追加の例を提供する目的で参照によって本明細書に組み入れられる)に開示されている。別の変異体は、遺伝的ドリフトによって生じることができ、又は部位特異的若しくは無作為の突然変異誘発を用いて人為的に作出することができ、又は2以上の既存の変異体の組換えによって作出することができる。そのような別の変異体も本明細書で開示される免疫方法の文脈で用いられるFタンパク質類似体の文脈で好適である。
本明細書に記載する方法及び使用に有用な別の実施形態において、組換えRSVタンパク質は、WO2011008974(別のFタンパク質類似体を説明する目的で参照により本明細書に組み入れられる)に記載されるようなFタンパク質類似体である。例えば、WO2011008974の図1及びWO2011008974の実施例1に記載されるFタンパク質類似体を参照されたい。
Fタンパク質のF2及びF1ドメインの選択では、当業者は、F2及び/又はF1ドメイン全体を厳格に含む必要はないことを認識するであろう。通常、F2ドメインの部分配列(又は断片)を選択する場合、立体構造の考慮が重要である。従って、F2ドメインは通常、ポリペプチドの集合と安定性を促進するF2ドメインの部分を含む。特定の例示的な変異体では、F2ドメインはアミノ酸26〜105を含む。しかしながら、長さのわずかな修飾(1以上のアミノ酸の付加又は欠失による)を有する変異体も可能である。
通常、F1ドメインの少なくとも部分配列(又は断片)は、Fタンパク質の免疫優勢エピトープを含む安定な立体構造を維持するように選択され、設計される。たとえば、アミノ酸262〜275(パリビズマブ中和)及び423〜436(Centocorのch101F MAb)の領域で中和抗体によって認識されるエピトープを含むF1ポリペプチドドメインの部分配列を選択することが一般に望ましい。さらに、たとえば、アミノ酸328〜355の領域でT細胞エピトープを含むことが望ましい。最も一般的には、F1サブユニット(たとえば、貫通アミノ酸262〜436)の単一の連続部分として、しかし、エピトープは安定な立体構造を形成する不連続な要素としてこれらの免疫優勢エピトープを含む合成配列で保持され得る。従って、F1ドメインポリペプチドは、RSV Fタンパク質ポリペプチドの少なくともおよそアミノ酸262〜436を含む。本明細書において提供する非限定的な一例では、F1ドメインは、天然Fタンパク質ポリペプチドのアミノ酸137〜516を含む。当業者は、追加のさらに短い部分配列を熟練者の裁量で使用できることを認識するであろう。
立体構造の考慮に加えて、F2又はF1ドメインの部分配列を選択する場合(例えば、特定のPreF−G類似体のGタンパク質成分に関して以下で議論するように)、追加の免疫原性エピトープの包含に基づいて配列(たとえば、変異体、部分配列など)を選択することが望ましいこともある。たとえば、当該技術で既知の、たとえば、神経網又は多項式決定のようなアンカーモチーフ又はそのほかの方法を用いて、追加のT細胞エピトープを特定することができ、たとえば、RANKPEP(ウエブサイト:mif.dfci.harvard.edu/Tools/rankpep.htmlで利用可能);ProPredI(ウエブサイト:imtech.res.in/raghava/propredI/index.htmlで利用可能);Bimas(ウエブサイト:www-bimas.dcrt.nih.gov/molbi/hla_bind/index.htmlで利用可能);及びSYFPEITH(ウエブサイト:syfpeithi.bmi-heidelberg.com/scripts/MHCServer.dll/home.htmで利用可能)を参照のこと。たとえば、アルゴリズムを用いてペプチドの「結合閾値」を決定し、特定の親和性で結合するMHC又は抗体の高い確率をそれらに与えるスコアを持つものを選択する。アルゴリズムは、特定の位置での特定のアミノ酸のMHC結合に対する効果、特定の位置での特定のアミノ酸の抗体結合に対する効果、又はモチーフを含有するペプチドの特定の置換の結合に対する効果のいずれかに基づく。免疫原性ペプチドの文脈の範囲内で、「保存された残基」は、ペプチドの特定の位置で無作為な分布で予想されるものより有意に高い頻度で出現するものである。アンカー残基はMHC分子との接触点を提供する保存された残基である。そのような予測方法で特定されるT細胞エピトープは、特定のMHCタンパク質への結合を測定することによって、及びMHCタンパク質の背景で提示される場合にはT細胞を刺激するその能力によって確認することができる。
好都合には、Fタンパク質類似体、例えばPreF類似体(以下で議論されるPreF−G類似体など)、Post F類似体、又は他の立体構造類似体は、発現系に対応するシグナルペプチド、たとえば、哺乳類又はウイルスのシグナルペプチド、たとえば、RSV F0の天然シグナル配列(たとえば、配列番号2のアミノ酸1〜25又は配列番号6のアミノ酸1〜25)を含む。通常、シグナルペプチドは、組換え発現に選択される細胞に適合するように選択される。たとえば、バキュロウイルスのシグナルペプチド又はメリチンシグナルペプチドのようなシグナルペプチドは、昆虫細胞における発現のために置換され得る。植物の発現系が好ましい場合には、好適な植物シグナルペプチドが当該技術で既知である。多数の例示的なシグナルペプチドが当該技術で既知であり(たとえば、多数のヒトのシグナルペプチドを記載しているZhang & Henzel, Protein Sci., 13:2819-2824(2004)を参照)、古細菌、原核生物及び真核生物のシグナル配列を含むSPdbシグナルペプチドデータベース(http://proline.bic.nus.edu.sg/spdb/)にてカタログ化されている。任意で、先行の抗原のいずれかが追加の配列又はタグ、例えば精製を促進するHisタグなどを含んでもよい。
任意で、Fタンパク質類似体(例えば、PreF若しくはPostF又は他の類似体)は追加の免疫原性成分を含むことができる。特定の特に好都合な実施形態では、Fタンパク質類似体はRSV Gタンパク質の抗原性成分を含む。PreF及びGの成分を有する例示的なキメラタンパク質には、以下のPreF_V1(配列番号7及び8で表される)及びPreF_V2(配列番号9及び10で表される)が挙げられる。
PreF−G類似体では、Gタンパク質の抗原性部分(たとえば、アミノ酸残基149〜229のような切断型Gタンパク質)を構築物のC末端に付加する。通常、Gタンパク質成分は、自由度のあるリンカー配列を介してFタンパク質成分に連結される。たとえば、例示的なPreF_V1の設計では、Gタンパク質は、-GGSGGSGGS-リンカー(配列番号14)によってPreF成分に連結される。PreF_V2の設計では、リンカーはさらに短い。-GGSGGSGGS-リンカー(配列番号14)の代わりに、PreF_V2は2つのグリシン(−GG−)をリンカーに有する。
存在する場合、Gタンパク質ポリペプチドドメインは、RSVのA株又はRSVのB株から選択されるGタンパク質のすべて又は一部を含むことができる。特定の例示的な実施形態では、Gタンパク質は、配列番号4で表されるGタンパク質である(又はそれと95%同一である)。好適なGタンパク質配列の別の例は、WO2008/114149(参照によって本明細書に組み入れられる)に見出すことができる。
Gタンパク質ポリペプチド成分は、例えばアミノ酸183〜197の領域で免疫優勢なT細胞エピトープを保持するGタンパク質の少なくとも部分配列(又は断片)、たとえば、天然のGタンパク質のアミノ酸151〜229、149〜229又は128〜229を含むGタンパク質の断片を含むように選択される。例示的な一実施形態では、Gタンパク質ポリペプチドは、天然のGタンパク質ポリペプチドのアミノ酸残基149〜229の全部又は一部を含む、天然のGタンパク質ポリペプチドの部分配列(又は断片)である。当業者は、選択される部分が、Fタンパク質類似体の発現、折り畳み又はプロセシングを構造的に不安定化又は破壊しない限り、Gタンパク質のさらに長い又は短い部分を使用できることを容易に十分に理解するであろう。任意で、ホルマリン不活化RSVワクチンと関連する好酸球増多を特徴とする増強された疾患を低減する及び/又は防ぐことが以前示された191位にて、Gタンパク質ドメインはアミノ酸置換を含む。天然に存在する及び置換された(N191A)Gタンパク質の特性の完全な記載は、例えば参照によって本明細書に組み入れられる米国特許公開第2005/0042230に見出すことができる。
あるいは、Fタンパク質類似体は、Gタンパク質成分を含む第2のポリペプチドをまた含有する免疫原性組成物中に配合されてもよい。Gタンパク質成分は典型的に、Gタンパク質の少なくともアミノ酸149〜229を含む。Gタンパク質のより小さい部分を使用することもできるが、そのような断片には、最小限でも、アミノ酸184〜198の免疫優勢エピトープが含まれる必要がある。あるいは、Gタンパク質は、Gタンパク質のより大きな部分、例えばアミノ酸128〜229又は130〜230、場合によりさらに大きいタンパク質の要素として、例えば全長Gタンパク質又はキメラポリペプチドを含んでもよい。
たとえば、天然に存在する株に対応する配列の選択に関して、1以上のドメインが、たとえば、A2若しくはLongと命名された一般の研究室単離株、又はそのほかの天然に存在する株若しくは単離株のようなRSVのA株又はB株に配列では対応し得る。RSVの多数の株が現在までに単離されている。GenBank及び/又はEMBLアクセッション番号により示される例示的な株はWO2008114149(本明細書に開示されるFタンパク質類似体に使用するのに好適なRSV Fの核酸及びポリペプチド配列を開示する目的で参照により本明細書に組み入れられる)に見出すことができる。RSVの別の株が単離される可能性があり、RSVの属に包含される。同様に、RSVの属は、天然に存在するもの(例えば以前に又はその後同定された株)から遺伝子ドリフト及び/又は組換えにより生じた変異株を包含する。
そのような天然に存在する及び単離される変異体に加えて、前述の配列と配列類似性を共有する操作された変異体もFタンパク質類似体、例えばPreF、PostF又は他の類似体(PreF−Gを含む)類似体の文脈で採用され得る。ポリペプチド(及び一般にヌクレオチド配列)に関してFタンパク質類似体ポリペプチド(及び以下に記載されるポリヌクレオチド配列)間の類似性は、配列同一性を参照して配列間での類似性という点で表現され得る。配列同一性は、同一性(又は類似性)比率という点で測定されることが多く;比率が高ければ高いほど、2つの配列の一次構造はより類似する。一般に、2つのアミノ酸(又はポリヌクレオチド)の配列の一次構造が似ていれば似ているほど、折り畳み及び集合の結果生じる高次構造も類似する。Fタンパク質、ポリペプチド(及びポリヌクレオチド)配列の変異体は通常、1又は少数のアミノ酸の欠失、付加又は置換を有するが、それでもなお、非常に高い比率でアミノ酸、一般にはそのポリヌクレオチド配列を共有する。さらに重要なことに、変異体は、本明細書で開示される参照配列の構造的な特性、従って立体構造の特性を保持する。
配列同一性を決定する方法は当該技術で周知であり、Fタンパク質類似体ポリペプチド、並びにそれをコードする核酸に適用可能である(たとえば、下記のように)。種々のプログラム及びアライメントアルゴリズムは、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981; Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970; Higgins and Sharp, Gene 73:237, 1988; Higgins and Sharp, CABIOS 5:151, 1989; Corpet et al., Nucleic Acids Research 16:10881, 1988; 及びPearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988に記載されている。Altschul et al., Nature Genet. 6:119, 1994は、配列アライメント法と相同性算出の詳細な考察を提示している。NCBIベーシックローカルアライメントサーチツール(BLAST)(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403, 1990)は、配列解析プログラム、blastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxと関連して使用するために、全米バイオテクノロジー情報センター(MD州、ベセスダ、NCBI)を含む幾つかの供給源、及びインターネットにて利用可能である。このプログラムを用いて配列同一性を決定する方法の記載はインターネットのNCBIウエブサイトで利用可能である。
一部の例では、Fタンパク質類似体は、それが由来する天然に存在する株のアミノ酸配列に比べて1以上のアミノ酸修飾を有する(たとえば、前述の安定化修飾に加えて)。そのような差異は、1以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換であり得る。変異体は通常、アミノ酸残基の約1%又は2%又は5%又は6%又は10%又は15%又は20%以下が異なる。たとえば、変異体Fタンパク質類似体、例えばPreF若しくはPostF又は他の類似体ポリペプチド配列は、参照Fタンパク質配列(例えば、配列番号6、8、10,18、20及び/又は22のPreF類似体ポリペプチド配列)の関連する部分と比べて、1又は2又は5までの又は約10までの、又は約15までの、又は約50までの又は約100までのアミノ酸の差異を含み得る。従って、RSV F又はGタンパク質又はFタンパク質類似体の文脈では、変異体は、通常、参照タンパク質、例えばPreF類似体の場合には配列番号2、4、6、8、10,18、20及び/又は22に示される参照タンパク質との、あるいは本明細書で開示される例示的なPreF類似体のいずれかとの、少なくとも80%、又は85%、さらに一般的には、少なくとも約90%以上、たとえば、95%又はさらに98%又は99%の配列同一性を共有する。本開示の特徴として含まれる別の変異体には、WO2008/114149で開示された天然に存在する変異体から選択されるヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の全部又は一部を含むFタンパク質類似体である。別の変異体は、遺伝的ドリフトによって生じることができ、又は部位特異的若しくは無作為の突然変異誘発を用いて人為的に作出することができ、又は2以上の既存の変異体の組換えによって作出することができる。そのような別の変異体も本明細書で開示されるFタンパク質類似体抗原の文脈で好適である。たとえば、修飾は、得られるFタンパク質類似体の立体構造又は免疫原性エピトープを変化させない1以上のアミノ酸(たとえば、2つのアミノ酸、3つのアミノ酸、4つのアミノ酸、5つのアミノ酸、10までのアミノ酸、又はそれ以上)の置換であり得る。
代わりに又はさらに、修飾は、1以上のアミノ酸の欠失及び/又は1以上のアミノ酸の付加を含むことができる。実際、所望であれば、1以上のポリペプチドドメインは、単一株に一致しないが、複数株、又はさらにRSVのウイルスポリペプチドの複数の株をアライメントすることによって推定されるコンセンサス配列に由来する成分の部分配列を含む合成ポリペプチドであり得る。特定の実施形態では、その後のプロセシング又は精製を円滑にするタグを構成するアミノ酸配列の付加によって1以上のポリペプチドドメインが修飾される。そのようなタグは抗原性タグ、又はエピトープタグ、酵素タグ又はポリヒスチジンタグであり得る。通常、タグは、たとえば、抗原又は融合タンパク質のC末端又はN末端のようなタンパク質の一方又は他方の末端に位置する。
本明細書に開示されるFタンパク質類似体(また可能であればG抗原も)は、組換えタンパク質の発現及び精製のための十分に確立された手順を用いて製造することができる。
簡単に説明すると、Fタンパク質類似体をコードする組換え核酸を、ベクター及び宿主細胞の選択に応じて、種々の周知の手法、例えばエレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈降、感染、トランスフェクションなどのいずれかにより宿主細胞に導入する。好ましい宿主細胞としては、原核(すなわち細菌)宿主細胞、例えば大腸菌、並びに多数の真核宿主細胞、例えば真菌(例として酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びピヒア・パストリス(Picchia pastoris))細胞、昆虫細胞、植物細胞、及び哺乳動物細胞(例えば3T3、COS、CHO、BHK、HEK293など)、又はBowesメラノーマ細胞が挙げられる。選択した宿主細胞における発現後、組換えFタンパク質類似体を当技術分野で周知の手法により単離及び/又は精製することができる。例示的な発現方法、並びにPreF類似体(PreF−G類似体など)をコードする核酸は、WO2010149745(Fタンパク質類似体の発現及び精製のために好適な方法を提供する目的で本明細書に組み入れられる)に提供されている。
(百日咳菌(パータシス)抗原)
本明細書中で開示されるワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットの文脈において、少なくとも1種の百日咳菌抗原は、パータシストキソイド(PT)、糸状赤血球凝集素(FHA)、パータクチン(PRN)、2型線毛(FIM2)、3型線毛(FIM3)からなる群より選択される少なくとも1種の無細胞パータシス(Pa)タンパク質である。このような無細胞抗原は、当該分野で周知である。この抗原は、部分的に若しくは高度に、精製される。
PTは、種々の方法で、例えば、(例えば、参照によって本明細書に組み込まれるWO91/12020において記載されるとおり)百日咳菌の培養からの毒素の精製とその後の化学的無毒化によって、又は代わりに、(例えば、PTの遺伝的改変を企図した開示の目的で参照によって本明細書に組み込まれるEP306318、EP322533、EP396964、EP322115、EP275689において記載されるとおり)PTの遺伝的無毒化類似体の精製によって、産生され得る。特定の実施形態において、PTは、遺伝的に無毒化される。より詳細には、遺伝的無毒化PTは、以下の置換のうち1つ又は両方を有する:R9K及びE129G。
パータシス抗原性成分は、無細胞パータシス抗原であるPT、FHA、PRN、FIM2及びFIM3の任意の1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つをこれらの組み合わせを含めて、含み得る。より詳細には、この組み合わせとしては、具体的に、以下が挙げられ得る(限定はしない):PT及びFHA;PT、FHA及びPRN;PT、FHA、PRN及びFIM2;PT、FHA、PRN及びFIM3;並びにPT、FHA、PRN、FIM2及びFIM3。
特定の実施形態において、PTは、2〜50μg(例えば、1用量あたり正確に又はおよそ2.5若しくは3.2μg)、5〜40μg(例えば、1用量あたり正確に又はおよそ5若しくは8μg)又は10〜30μg(例えば、1用量あたり正確に又はおよそ20若しくは25μg)の量で使用される。
特定の実施形態において、FHAは、2〜50μg(例えば、1用量あたり正確に又はおよそ2.5若しくは34.4μg)、5〜40μg(例えば、1用量あたり正確に又はおよそ5若しくは8μg)又は10〜30μg(例えば、1用量あたり正確に又はおよそ20若しくは25μg)の量で使用される。
特定の実施形態において、PRNは、0.5〜20μg、0.8〜15μg(例えば、1用量あたり正確に又はおよそ0.8若しくは1.6μg)又は2〜10μg(例えば、1用量あたり正確に又はおよそ2.5若しくは3若しくは8μg)の量で使用される。
特定の実施形態において、FIM2及び/又はFIM3は、合わせて0.5〜10μg(例えば、1用量あたり正確に又はおよそ0.8若しくは5μg)の量で使用される。
特定の実施形態において、パータシス抗原性成分は、PT及びFHAを1用量あたり等量で、例えば、1用量あたり正確に又はおよそ8若しくは20若しくは25μgのいずれかで、含む。あるいは、パータシス抗原性成分は、PT及びFHAを、それぞれ、正確に若しくはおよそ5及び2.5μg、又は正確に若しくはおよそ3.2及び34.4μg含む。さらなる実施形態において、免疫原性組成物は、PT、FHA及びPRNを、それぞれ、1用量あたり正確に又はおよその量で、25:5:8μg;8:8:2.5μg;20:20:3μg;2.5:5:3μg;5:2.5:2.5μg;又は3.2:34.4:1.6μg含む。
あるいは、又は上で議論した無細胞パータシス抗原のいずれかと組み合わせて、パータシス抗原性成分は、(参照によって本明細書に組み込まれるWO2005/032584及びMarr et al (2008), Vaccine, 26(34):4306-4311に記載されるとおり)百日咳菌「BrkA」抗原に由来する抗原を含み得る。
さらなる実施形態において、少なくとも1種のPa抗原は、参照によって本明細書に組み込まれるRoberts et al (2008), Vaccine, 26:4639-4646に開示されるとおり、百日咳菌から得られる外膜小胞(OMV)の形態を取り得る。詳細には、このようなOMVは、リピドA修飾酵素、例えば3−O−デアシラーゼ、例えばPagL(参照によって本明細書に組み込まれるAsensio et al (2011), Vaccine, 29:1649-1656)を発現する組換え百日咳菌株に由来し得る。
別の実施形態において、少なくとも1種の百日咳菌抗原は、全細胞パータシス(Pw)ワクチンであり、このようなPwワクチンは、当該分野で周知である。Pwは、水銀非含有方法を含む幾つかの公知の方法によって不活化され得る。このような方法としては、熱(例えば、55〜65℃若しくは56〜60℃、5〜60分間若しくは10〜30分間にわたる、例えば、60℃、30分間にわたる)、ホルムアルデヒド(例えば、0.1%、37℃にて、24時間)、グルタルアルデヒド(例えば、0.05%、室温にて10分間)、アセトン−I(例えば、室温にて3回処理)若しくはアセトン−II(例えば、室温にて3回処理及び37℃にて4回目の処理)の不活化が挙げられる(例えば、Gupta et al., 1987, J. Biol. Stand. 15:87; Gupta et al., 1986, Vaccine, 4:185を参照されたい)。本発明の免疫原性組成物における使用に適した殺傷した全細胞百日咳菌(Pw)を調製する方法は、WO93/24148において開示される。
より詳細には、本発明の免疫原性組成物は、5〜50、7〜40、9〜35、11〜30、13〜25、15〜21又はおよそ若しくは正確に20の1用量あたりの量(国際不透明単位、「IOU」で)にてPwを含む。
本発明のPw含有免疫原性組成物の特定の実施形態において、この組成物のPwワクチン成分は、低減した反応原性(reactogenicity)を惹起する。Pwワクチンの反応原性(疼痛、熱、腫れなど)は、主に、細菌外膜由来の内毒素であるリポオリゴ糖(「LOS」、百日咳菌に関してリポ多糖(「LPS」)の同義語;「LOS」は、本明細書中で使用される)によって起こる。LOSのリピドA部分が主に関与する。(例えば上で議論した不活化手順によって産生されるような「伝統的な」Pwワクチンに対して)より反応原性の低いPw含有ワクチンを産生するために、内毒素は、遺伝的に若しくは化学的に無毒化されるか、及び/又は外膜から抽出される。しかし、LOSは免疫系の強力なアジュバントであるので、これは、Pwワクチンの免疫原性を実質的に損なわない方法で行われなければならない。
1つの実施形態において、本発明の免疫原性組成物の少なくとも1種の百日咳菌抗原は、LOSが遺伝的に若しくは化学的に無毒化されている及び/又は抽出されている「低反応原性」Pwワクチンを含む。例えば、Pwワクチンは、LOSの化学的抽出を開示する目的で参照によって本明細書に組み込まれるWO2006/002502及びDias et al (2012), Human Vaccines & Immunotherapeutics, 9(2):339-348で開示されるように、ブタノールなどの有機溶媒及び水の混合物による処理を受け得る。
別の実施形態において、「低反応原性」は、低毒性LOSを産生するように遺伝的に操作された百日咳菌株からPwワクチンを得ることによって、達成される。WO2006/065139(参照によって本明細書に組み込まれる)は、遺伝的3−O−脱アシル化及び百日咳菌LOSの無毒化により、少なくとも部分的な3−O−脱アシル化LOSを含む株を得る。本発明の免疫原性組成物の少なくとも1種の百日咳菌抗原は、従って、デ−O−アシラーゼなどのリピドA修飾酵素を発現するように操作されている百日咳菌の株に由来するPwワクチンであり得る。詳細には、このような株は、全て参照によって本明細書に組み込まれるWO2006/065139、並びにGeurtsen et al (2006), Infection and Immunity, 74(10):5574-5585及びGeurtsen et al (2007), Microbes and Infection, 9:1096-1103において開示されるとおり、PagLを発現し得る。代わりに、又はさらに、Pwワクチンが由来する株は、天然に、又は操作の結果として、リピドAリン酸基をグルコサミンで修飾する能力を欠き、C−3’位においてC10−OH若しくはC12−OHで置換されたリピドAジグルコサミン骨格を有するか、及び/又は末端へプトースを欠く分子LOS種を発現する。このような株、18〜323は、Marr et al (2010), The Journal of Infectious Diseases, 202(12):1897-1906(参照によって本明細書に組み込まれる)において開示される。
(免疫原性組成物)
発現及び精製の後、Fタンパク質類似体は、典型的に、妊婦への投与のための免疫原性組成物中に、所望の場合は出生後の乳児への投与のための製剤中に配合される。このような製剤は、典型的に、薬学的に許容される担体若しくは賦形剤を含む。必要に応じて、別のRSV抗原(例えば、WO2010149745に記載されるとおりのGタンパク質抗原)、又はヒトメタニューモウイルス(hMPV)抗原、ジフテリア抗原、破傷風抗原若しくはインフルエンザ抗原などのさらなる抗原もまた、この製剤中に含まれ得る。WO2010149743は、RSV抗原と併用され得るhMPV抗原の実施例を記載し、これは、hMPV抗原の例を提供する目的で、本明細書中に参照として組み込まれる。Gall S.A. et al. Maternal Immunization with tetanus-diphtheria-pertussis vaccine: effect on maternal and neonatal serum antibody levels. Am J Obstet Gynecol 2011:204は、パータシス抗原であるパータクチン(PRN)、パータシス毒素(PT)、糸状赤血球凝集素(FHA)及び2/3型線毛(FIM)を含むジフテリア−破傷風−パータシス(Tdap)ワクチンによる、妊婦の免疫を記載し、パータシス抗原を用いる母体免疫におけるさらなる詳細を提供する目的で参照によって本明細書に組み込まれる。
薬学的に許容される担体及び賦形剤は当業者に周知であり、当業者によって選択され得る。たとえば、担体又は賦形剤は好都合には緩衝液を含むことができる。任意で、担体又は賦形剤は、溶解性及び/又は安定性を安定化させる少なくとも1つの成分も含有する。可溶化剤/安定剤の例には界面活性剤、たとえば、ラウレルサルコシン及び/又はツイーンが挙げられる。代替の可溶化剤/安定剤には、アルギニン及びガラス形成ポリオール(たとえば、スクロース、トレハロース等)が挙げられる。多数の薬学的に許容される担体及び/又は薬学的に許容される賦形剤が当該技術で既知であり、たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 5th Edition (975)に記載されている。
従って、好適な賦形剤及び担体が当業者によって選択され、選択された投与経路によって対象に送達するために好適な製剤を製造することができる。
好適な賦形剤には、限定されないが、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、ソルビトール、トレハロース、N−ラウロイルサルコシンナトリウム塩、L−プロリン、非界面活性剤スルホベタイン、塩酸グアニジン、尿素、酸化トリメチルアミン、KCl、Ca2+、Mg2+、Mn2+、Zn2+及びそのほかの二価のカチオン関連塩、ジチオスレイトール、ジチオエリトール、及びβ−メルカプトエタノールが挙げられる。そのほかの賦形剤は、界面活性剤(Tween80、Tween20、TritonX−100、NP−40、EmphigenBB、オクチルグルコシド、ラウロイルマルトシド、Zwittergent(両性洗浄剤)3−08、Zwittergent3−0、Zwittergent3−2、Zwittergent3−4、Zwittergent3−6、CHAPS、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムを含む)であり得る。
本明細書に記載するワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットのためのFタンパク質類似体及び/又はパータシス抗原を含む組成物において、該組成物は、強い血清(例えば中和)抗体応答を誘導するように設計される。母体は、(例えば自然感染又は免疫によって)RSV及びパータシスにすでに暴露されており、従って、既存のプライミング応答を有することとなり、乳児のための防御を提供するという目標は、高効率に胎盤を通過することができる抗体サブクラス(IgG1など)の観点から、このプライミングされた応答をできる限り効果的に追加刺激し、乳児に対する防御をもたらすことである。これは、アジュバントを含まずに、又は鉱物塩(アルミニウム塩若しくはカルシウム塩など、特に水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム若しくはリン酸カルシウム)のみを含むアジュバントを含むことによって達成することができる。あるいは、これは、油と水のエマルジョンアジュバント、又はIgG1サブクラスの抗体の産生を増強する別のアジュバントと共に製剤化することによって達成することもできる。したがって、本明細書に記載するワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットのためのFタンパク質類似体及び/又はパータシス抗原は、好ましくは、鉱物塩、好ましくはミョウバン(水酸化アルミニウム若しくはリン酸アルミニウム)と共に、又は油と水のエマルジョンアジュバントと共に製剤化される。
妊婦において安全かつ十分に耐容される任意のアジュバントを選択する。場合により、免疫原性組成物は、ミョウバン以外のアジュバントを含んでもよい。例えば、1以上の3D−MPL、スクワレン(たとえば、QS21)、リポソーム及び/又は油と水のエマルションなどのアジュバントが好都合に選択される。ただし、最終製剤は、所望の特性(例えばサブクラス及び中和機能)を有するRSV特異的抗体及びパータシス抗体の妊婦(及び典型的にはプライミングされた妊婦)における産生を増強するものである。
いくつかの場合には、アジュバント製剤はまた、たとえば、アルミニウム塩(ミョウバン)又はカルシウム塩、例えばリン酸カルシウム、リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウムのような鉱物塩を含む。ミョウバンが存在する場合には、それ単独で又は例えば3D−MPLと組み合わせて、その量は、典型的には用量あたり約100μg及び1mg、例えば約100μg又は約200μgから約750μg、例えば約500μgである。
一部の実施形態では、アジュバントは、油と水のエマルション、たとえば、水中油型エマルションを含む。水中油型エマルションの一例は、水性担体中に代謝可能な油、たとえば、スクアレン、トコフェロールのようなトコール、たとえば、α−トコフェロール、及びたとえば、トリオレイン酸ソルビタン(Span85(商標))又はモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween80(商標))のような界面活性剤を含む。水中油型エマルジョンの例はMF59である。特定の実施形態では、水中油型エマルションは、追加の免疫賦活剤を含有しない(特に3D−MPLのような非毒性リピドA誘導体又はQS21のようなサポニンを含有しない)。水性担体は、たとえば、リン酸緩衝生理食塩水であり得る。さらに、水中油型エマルションは、Span85及び/又はレシチン及び/又はトリカプリリンを含有することができる。
本発明の別の実施形態では、アジュバント組成物は、水中油型エマルションと任意で1以上のさらなる免疫賦活剤を含み、前記水中油型エマルションは、0.5〜10mgの代謝可能な油(好適にはスクアレン)、0.5〜11mgのトコール(好適には、α−トコフェロールのようなトコフェロール)及び0.4〜4mgの乳化剤を含む。
Fタンパク質類似体、例えばPreF類似体を含む免疫原性組成物、本明細書に記載のワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットのための免疫原性組成物において、それ自体で、又は3D−MPL若しくは本明細書に記載の他のアジュバントとの組み合わせで用いることができる他のアジュバントは、QS21のようなサポニンである。そのようなアジュバントは、典型的には、(それが望まれる場合に可能ではあるが)パータシス抗原と共に使用されない。
一実施形態において、本明細書に記載される方法及び使用のための組換えFタンパク質類似体、例えばPreF抗原は、サポニン、例えばQS21と共に製剤化され、特にPreF類似体とQS21の組み合わせが提供される。
別の実施形態において、本明細書に記載される方法及び使用のためのFタンパク質類似体、例えばPreF抗原は、QS21及び3D−MPLと共に製剤化される。
サポニンは、Lacaille-Dubois, M and Wagner H.(1996. A review of the biological and pharmacological activities of saponins. Phytomedicine vol 2 pp 363-386)にて教示されている。サポニンは、植物界及び海洋動物界に広く分布するステロイド又はトリテルペングリコシドである。サポニンは、振盪すると泡立つコロイド状水溶液を形成し、コレステロールを沈殿させることについて言及される。サポニンは細胞膜の近傍にあると、膜を破裂させる膜における孔様の構造を創る。赤血球の溶血はこの現象の例であり、それは、サポニンすべてではないが、特定のサポニンの特性である。
サポニンは、全身投与用のワクチンにおけるアジュバントとして知られる。個々のサポニンのアジュバント活性と溶血活性は当該技術で広範に研究されている(Lacaille-Dubois and Wagner、上記)。たとえば、QuilA(南米の樹木Quillaja Saponaria Molinaの樹皮に由来する)及びその分画は米国特許第5,057,540号及び“Saponins as vaccine adjuvants”, Kensil, C. R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12 (1-2):1-55;及びEP0362279B1に記載されている。QuilAの分画を含む免疫刺激複合体(ISCOMS)と呼ばれる粒子状の構造は、溶血性であり、ワクチンの製造に使用されている(Morein, B., EP 0 109 942 B1; WO96/11711;WO96/33739)。溶血性のサポニンQS21及びQS17(QuilAのHPLC精製した分画)は、強力な全身性アジュバントとして記載されており、その製造方法は、米国特許第5,057,540号及びEP0362279B1に記載されており、それらは参照によって本明細書に組み入れられる。全身性ワクチンの研究で使用されているそのほかのサポニンには、Gypsophila及びSaponaria(Bomford et al., Vaccine, 10(9):572-577, 1992)のような他の植物種に由来するものが挙げられる。
QS21は、Quillaja Saponaria Molinaの樹皮に由来するHPLC精製した非毒性の分画である。QS21の製造方法は、米国特許第5,057,540に開示されている。QS21を含有する非反応原性のアジュバント製剤はWO96/33739に記載されている。前述の参考文献は参照によって本明細書に組み入れられる。QS21のような免疫学的に活性のあるサポニンは、免疫原性組成物のヒト用量当たり1〜50μgの量で使用することができる。有利なことに、QS21は、約25μgのレベルで、たとえば、20〜30μgの間で、好適には21〜29μgの間で、又は22〜28μgの間で、又は23〜27μgの間で、又は24〜26μgの間で、又は25μgで使用することができる。別の実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、約10μgのレベルで、たとえば、5〜15μgの間で、好適には6〜14μgの間で、たとえば、7〜13μgの間で、又は8〜12μgの間で、又は9〜11μgの間で、又は10μgのレベルでQS21を含む。さらなる実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、約5μgのレベルで、たとえば、1〜9μgの間で、又は2〜8μgの間で、好適には3〜7μg又は4〜6μgの間で、又は5μgのレベルでQS21を含む。QS21とコレステロールを含むそのような製剤は、抗原と共に製剤化されると功を奏するTh1刺激性アジュバントであることが示されている。従って、たとえば、QS21とコレステロールの組み合わせを含むアジュバントを伴った免疫原性組成物にてPreFポリペプチドを好都合に採用することができる。
上で示したように、アジュバントは、たとえば、アルミニウム塩又はカルシウム塩、特に水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム及びリン酸カルシウムのような鉱物塩を含むことができる。そのようなアジュバントはまた3D−MPLを含むことができる。たとえば、アルミニウム塩(たとえば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム又は「ミョウバン」)との組み合わせで3D−MPLを含有するアジュバントは、ヒト対象に投与するためのFタンパク質類似体を含有する免疫原性組成物でのアジュバントに好適である。そのような製剤は典型的に、それが所望である場合に可能ではあるが、パータシス抗原と共に使用されない。
3D−MPLは、非毒性の細菌性リポ多糖類誘導体である。リピドAの好適な非毒性誘導体の例、すなわちモノホスホリルリピドA、又はさらに詳しくは3−脱アセチル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)である。3D−MPLは、MPLの名称のもとでGlaxoSmithKline Biologicals N.A.によって販売され、文書全体を通してMPL又は3D−MPLと呼ばれる。米国特許第4,436,727;同第4,877,611号;同第4,866,034号及び同第4,912,094号を参照のこと。3D−MPLは、IFN−γ(Th1)表現型を持つCD4+T細胞の応答を主に促進する。3D−MPLは、GB2220211Aで開示された方法に従って製造することができる。化学的には、それは、3,4,5又は6のアシル化鎖を持つ3−脱アセチル化モノホスホリルリピドAの混合物である。本発明の組成物では、小粒子3D−MPLを使用することができる。小粒子3D−MPLは、0.22μmのフィルターを介して無菌濾過できるような粒度を有する。そのような調製物はWO94/21292に記載されている。
3D−MPLのようなリポ多糖は、免疫原性組成物のヒト用量当たり1〜50μgの量で使用することができる。そのような3D−MPLは、約25μgのレベルで、たとえば、20〜30μgの間で、好適には21〜29μgの間で、又は22〜28μgの間で、又は23〜27μgの間で、又は24〜26μgの間で、又は25μgで使用することができる。別の実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、約10μgのレベルで、たとえば、5〜15μgの間で、好適には6〜14μgの間で、たとえば、7〜13μgの間で、又は8〜12μgの間で、又は9〜11μgの間で、又は10μgのレベルで3D−MPLを含む。さらなる実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、約5μgのレベルで、たとえば、1〜9μgの間で、又は2〜8μgの間で、好適には3〜7μgの間で、又は4μg若しくは5μgのレベルで3D−MPLを含む。
他の実施形態では、リポ多糖は、米国特許第6,005,099号及び欧州特許第0729473B1号に記載されたようにβ(1〜6)グルコサミン二糖であり得る。当業者は、これらの参考文献の教示に基づいて3D−MPLのような種々のリポ多糖を容易に製造することができる。それにもかかわらず、これら参考文献のそれぞれは、参照によって本明細書に組み入れられる。前述の免疫賦活剤(LPS又はMPL又は3D−MPLに似た構造の)に加えて、MPLの上記構造の一部であるアシル化された単糖類及び二糖類の誘導体も好適なアジュバントである。他の実施形態では、アジュバントはリピドAの合成誘導体であり、その一部は、TLR−4作動薬として記載され、OM174(2−デオキシ−6−o−[2−デオキシ−2−[(R)−3−ドデカノイルオキシテトラ−デカノイルアミノ]−4−o−ホスホノ−β−D−グルコピラノシル]−2−[(R)−3−ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]−β−D−グルコピラノシルジヒドロゲンホスフェート)、(WO95/14026);OM294DP(3S,9R)−3−[(R)−ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−4−オキソ−5−アザ−9(R)−[(R)−3−ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン−1,10−ジオール、1,10−ビス(ジヒドロゲノホスフェート)(WO99/64301及びWO00/0462);及びOM197MP−AcDP(3S−,9R)−3−(R)−ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−4−オキソ−5−アザ−9−[(R)−3−ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン−1,10−ジオール、1−ジヒドロゲノホスフェート10−(6−アミノヘキサノエート)(WO01/46127)が挙げられるが、これらに限定されない。
特定の一実施形態では、アジュバント製剤は、水中油型エマルションのようなエマルション形態で調製された3D−MPLを含む。場合によっては、エマルションはWO94/21292で開示されたように直径2μm未満の小さな粒度を有する。たとえば、3D−MPLの粒子は、0.22μmの膜を介して無菌濾過されるのに十分なくらい小さくてもよい(欧州特許第0689454号に記載されたように)。或いは、3D−MPLはリポソーム製剤に調製することができる。任意で、3D−MPL(又はその誘導体)を含有するアジュバントは、別の免疫賦活成分も含んでよい。
上述のもののような異なるアジュバントの組み合わせも、Fタンパク質類似体、例えばPreF類似体を含む組成物(及び場合により、所望であればパータシス抗原も含む組成物)で使用することができる。たとえば、すでに言及したように、QS21を3D−MPLと一緒に製剤化することができる。QS21:3D−MPLの比率は通常、たとえば、1:5〜5:1のような1:10〜10:1の桁であり、実質的に1:1であることが多い。通常、比率は、2.5:1〜1:1の3D−MPL:QS21の範囲である。別の組み合わせアジュバントの製剤には、3D−MPLと、たとえば、水酸化アルミニウムのようなアルミニウム塩が含まれる。
使用することができるそのほかのTLR4リガンドは、たとえば、WO98/50399又は米国特許第6,303,347号で開示された(AGPの調製方法も開示されている)もののようなアルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)であり、好適には、RC527若しくはRC529、又は米国特許第6,764,840号で開示されたようなAGPの薬学的に許容される塩である。一部のAGPはTLR4の作動薬であり、一部はTLR4の拮抗剤である。双方共アジュバントとして有用であると思われる。
TLR−4を介したシグナル伝達反応(Sabroe et al, JI 2003 p1630-5)を起こすことが可能であるそのほかの好適なTLR−4リガンドは、たとえば、グラム陰性細菌に由来するリポ多糖類及びその誘導体又はその断片、特にLPSの非毒性誘導体(たとえば、3D−MPL)である。そのほかの好適なTLR作動薬は、熱ショックタンパク質(HSP)10、60、65、70、75又は90;界面活性剤プロテインA、ヒアルロナンオリゴ糖、ヘパラン硫酸断片、フィブロネクチン断片、フィブリノーゲンペプチド及びb−デフェンシン−2、及びムラミルジペプチド(MDP)である。一実施形態では、TLR作動薬はHSP60、70又は90である。ほかの好適なTLR−4リガンドは、WO2003/011223及びWO2003/099195に記載されており、たとえば、WO2003/011223の4〜5ページ又はWO2003/099195の3〜4ページで開示された化合物I、化合物II及び化合物III、特にER803022、ER803058、ER803732、ER804053、ER804057、ER804058、ER804059、ER804442、ER804680及びER804764としてWO2003/011223で開示された化合物である。たとえば、好適なTLR−4リガンドの1つはER804057である。
別のTLR作動薬もアジュバントとして有用である。用語「TLR作動薬」は、直接的なリガンドとして又は内因性若しくは外因性のリガンドの生成を介して間接的に、TLRシグナル伝達経路を介したシグナル伝達反応を起こすことが可能である剤を指す。そのような天然の又は合成のTLR作動薬は、代わりの又は追加のアジュバントとして使用することができる。アジュバント受容体としてのTLRの役割の手短な概説は、Kaisho & Akira, Biochimica et Biophysica Acta 1589:1-13, 2002に提供されている。これらの潜在的なアジュバントには、TLR2、TLR3、TLR7、TLR8及びTLR9についての作動薬が挙げられるが、これらに限定されない。従って、一実施形態では、アジュバント及び免疫原性組成物はさらに、TLR−1作動薬、TLR−2作動薬、TLR−3作動薬、TLR−4作動薬、TLR−5作動薬、TLR−6作動薬、TLR−7作動薬、TLR−8作動薬、TLR−9作動薬又はこれらの組み合わせから成る群から選択されるアジュバントを含む。
本発明の一実施形態では、TLR−1を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−1を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、トリアシル化リポペプチド(LPs);フェノール可溶性モジュリン;結核菌(Mycobacterium tuberculosis)LP;S−(2,3−ビス(パルミトイルオキシ)−(2−RS)−プロピル)−N−パルミトイル−(R)−Cys−(S)−Ser−(S)−Lys(4)−OH、細菌性リポタンパク質のアシル化アミノ末端を模倣するトリヒドロクロリド(Pam3Cys)LP及びボレリア(Borrelia burgdorferi)由来のOspA LPから選択される。
別の実施形態では、TLR−2を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−2を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、結核菌(M tuberculosis)、ボレリア(B burgdorferi)又は梅毒トレポネーマ(T pallidum)に由来するリポタンパク質、ペプチドグリカン、細菌性リポペプチド;黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を含む種に由来するペプチドグリカン;リポタイコ酸、マンヌロン酸、ナイセリアポリン、細菌性線毛、エルシニア毒性因子、CMVビリオン、麻疹血液凝集素及び酵母由来のザイモサンの1以上である。
別の実施形態では、TLR−3を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−3を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、二本鎖RNA(dsRNA)又はポリイノシン−ポリシチジン酸(PolyIC)、ウイルス感染に関連する分子核酸パターンである。
別の実施形態では、TLR−5を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−5を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、細菌性フラジェリンである。
別の実施形態では、TLR−6を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−6を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、マイコバクテリアリポタンパク質、脱アシル化LP、及びフェノール可溶性モジュリンである。別のTLR6作動薬はWO2003/043572に記載されている。
別の実施形態では、TLR−7を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−7を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、一本鎖RNA(ssRNA)、ロキソリビン、N7位及びC8位におけるグアノシン類似体、又はイミダゾキノリン化合物若しくはその誘導体である。一実施形態では、TLR作動薬はイミキモドである。さらなるTLR7作動薬はWO2002/085905に記載されている。
別の実施形態では、TLR−8を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−8を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、一本鎖RNA(ssRNA)、抗ウイルス活性を持つイミダゾキノリン分子、たとえば、レシキモド(R848)であり;レシキモドはまたTLR−7による認識が可能である。使用することができるそのほかのTLR−8作動薬には、WO2004/071459に記載されたものが挙げられる。
別の実施形態では、TLR−9を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。一実施形態では、TLR−9を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、HSP90である。或いは、TLR−9を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、細菌性又はウイルス性のDNAであり、特にCpGモチーフとして知られる配列の状況にて非メチル化CpGヌクレオチドを含有するDNAである。CpGを含有するオリゴヌクレオチドはTh1反応を優勢に誘導する。そのようなオリゴヌクレオチドは周知であり、たとえば、WO96/02555、WO99/33488及び米国特許第6,008,200号及び同第5,856,462号に記載されている。好適には、CpGヌクレオチドはCpGオリゴヌクレオチドである。本発明の免疫原性組成物で使用するのに好適なオリゴヌクレオチドは、少なくとも3つ、好適には少なくとも6つ又はそれ以上のヌクレオチドによって分離される2以上のジヌクレオチドCpGモチーフを任意で含有してもよいCpG含有オリゴヌクレオチドである。CpGモチーフは、グアニンヌクレオチドが後に続くシトシンヌクレオチドである。本発明のCpGオリゴヌクレオチドは通常、デオキシヌクレオチドである。特定の実施形態では、ホスホジエステル結合及びそのほかのヌクレオチド間結合は本発明の範囲内であるが、オリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチド間はホスホロジチオエート結合又は好適にはホスホロチオエート結合である。また本発明の範囲内に含まれるのは混合されたヌクレオチド間結合を伴うオリゴヌクレオチドである。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド又はホスホロジチオエートを作製する方法は、米国特許第5,666,153号、同第5,278,302号及びWO95/26204に記載されている。
Fタンパク質類似体、例えばPreF類似体(及び場合により、所望であればパータシス抗原、例えば精製無細胞パータシスタンパク質と共に)と共に製剤化するのに使用するために好適なアジュバントの別のクラスには、OMPに基づく免疫賦活組成物が挙げられる。OMPに基づく免疫賦活組成物は、たとえば、鼻内投与用の粘膜アジュバントとして特に好適である。OMPに基づく免疫賦活組成物は、細菌性又はウイルス性抗原のような免疫原のためのキャリアとして又は組成物にて有用である、たとえば、Neisseria種(たとえば、Lowell et al., J. Exp. Med. 167:658, 1988; Lowell et al., Science 240:800, 1988; Lynch et al., Biophys. J. 45:104, 1984; Lowell, "New Generation Vaccines" 2nd ed., Marcel Dekker, Inc., New York, Basil, Hong Kong, page 193, 1997;米国特許第5,726,292号;同第4,707,543号を参照)のような、しかし、これらに限定されないグラム陰性細菌に由来する外膜タンパク質(一部のポリンを含むOMP)の調製物に属する。一部のOMPに基づく免疫賦活組成物は、「プロテオソーム」と呼ぶことができ、それは疎水性であり、ヒトでの使用に安全である。プロテオソームは、約20nm〜約800nmの小胞又は小胞様のOMPクラスターに自己集合する能力を有し、タンパク質抗原(Ag)、特に疎水性部分を有する抗原と非共有的に取り込み、配位し、会合し(たとえば、静電気的に又は疎水的に)、又はさもなければ共同する。複数の分子膜構造又は1以上のOMPの溶融球状OMP組成物を含む小胞形態又は小胞様形態で外膜タンパク質成分を生じる任意の調製方法は、プロテオソームの定義の範囲内に含まれる。たとえば、当該技術(たとえば、米国特許第5,726,292号又は同第5,985,284号)に記載されたようにプロテオソームを調製することができる。プロテオソームはまた、OMPポリンを製造するのに使用される細菌(たとえば、Neisseria種)を起源とする内因性のリポ多糖又はリポオリゴ糖(それぞれLPS又はLOS)を含有することができ、それらは一般にOMP調製物全体の2%未満である。
プロテオソームは髄膜炎菌(Neisseria menigitidis)から化学的に抽出された外膜タンパク質(OMP)(ほとんど、クラス4のOMPと同様にポリンA及びB)から主として構成され、界面活性剤によって溶液で維持される(Lowell GH. Proteosomes for Improved Nasal, Oral, or Injectable Vaccines.: Levine MM, Woodrow GC, Kaper JB, Cobon GS, eds, New Generation Vaccines. New York: Marcel Dekker, Inc. 1997; 193-206)。プロテオソームは、たとえば、透析濾過又は従来の透析工程によって、あるいは精製されたパータシス抗原性タンパク質と共に、本明細書で開示されるFタンパク質類似体、例えばPreFポリペプチドを含むウイルス供給源に由来する精製された又は組換えタンパク質のような種々の抗原と共に製剤化することができる。界面活性剤を徐々に取り除くことによって約100〜200nmの直径の粒子状疎水性複合体を形成することができる(Lowell GH. Proteosomes for Improved Nasal, Oral, or Injectable Vaccines.: Levine MM, Woodrow GC, Kaper JB, Cobon GS, eds, New Generation Vaccines. New York: Marcel Dekker, Inc. 1997; 193-206)。
「プロテオソーム:LPS又はプロトリン」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも1種のリポ多糖による外因性添加によって混合されてOMP−LPS組成物(免疫賦活組成物として機能することができる)を提供するプロテオソームの調製物を指す。従って、OMP−LPS組成物は、(1)たとえば、髄膜炎菌(Neisseria menigitidis)のようなグラム陰性細菌から調製されるプロテオソームの外膜タンパク質調製物(たとえば、プロジュバント(Projuvant))と(2)1以上のリポ糖の調製物を含む、プロトリンの2つの基本成分で構成することができる。リポオリゴ糖は、外因性であることができ(たとえば、OMPプロテオソーム調製物に天然に含有される)、外因性に調製されたリポオリゴ糖(たとえば、OMP調製物とは異なる培養物又は微生物から調製された)と混合することができ又は組み合わせることができ、又はそれらの組み合わせであることができる。そのような外因性に添加されるLPSは、OMP調製物が作製されたのと同じグラム陰性細菌に由来することができ、又は異なるグラム陰性細菌に由来することができる。プロトリンはまた、任意で脂質、糖脂質、糖タンパク質、小分子等、及びそれらの組み合わせを含むことが理解されるべきである。プロトリンは、たとえば、米国特許出願公開第2003/0044425号に記載されたように調製することができる。
選択されるアジュバントにかかわりなく、最終製剤の濃度は、標的の妊娠女性集団で安全且つ有効であるように算出されることに留意すべきである。
本明細書におけるワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットにおいて使用するための免疫原性組成物は通常、免疫防御量(又はその画分用量)の抗原、あるいは免疫された妊娠女性の乳児において免疫防御となるような抗体の受動移行をもたらす量の抗原を含有し、従来の技法によって調製することができる。ヒト対象への投与用のものを含む免疫原性組成物の調製は、一般に、Pharmaceutical Biotechnology, Vol.61 Vaccine Design-the subunit and adjuvant approach, Powell and Newman編, Plenurn Press, 1995. New Trends and Developments in Vaccines, Voller et al. 編, University Park Press, Baltimore, Maryland, U.S.A. 1978に記載されている。リポソーム内へのカプセル化は、Fullertonによる米国特許第4,235,877号に記載されている。高分子へのタンパク質のコンジュゲートは、たとえば、Likhiteによる米国特許第4,372,945号及びArmorらによる同第4,474,757号に開示されている。
通常、免疫原性組成物の各用量における抗原(例えばタンパク質)の量は、典型的な対象、すなわち妊娠女性又は在胎の乳児にて重大な有害な副作用なしで乳児において免疫防御の応答を誘導する量として選択される。この文脈での免疫防御は、感染に対する完全な防御を必ずしも意味するものではなく;症状又は疾患、特にウイルスに関連した重篤な疾患に対する防御を意味する。抗原の量は、どの特定の免疫原が採用されるかによって変化し得る。一般に、各ヒト用量は、1〜1000μgの各タンパク質又は抗原、たとえば、約1μg〜約100μg、たとえば、約1μg〜約60μg、たとえば、約1μg、約2μg、約5μg、約10μg、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約40μg、約50μg又は約60μgを含むことが予想される。一般に、ヒト用量は0.5mlの容量である。したがって、本明細書において記載される使用及び方法のための組成物は、例えば0.5mlのヒト用量において10μg、又は30μg、又は60μgとすることができる。免疫原性組成物で利用される量は、対象集団に基づいて選択される。特定の組成物の任意の量は、対象における抗体力価及びそのほかの応答の所見を含む標準的な検討によって確定することができる。最初のワクチン接種後、約4〜12週間で、又は乳児の出産前の任意の時点で、好ましくは出産予定日の少なくとも2週間前又は少なくとも4週間前に、対象に追加刺激を与えることができる。
さらなる製剤の詳細は、WO2010149745において見出され得、これは、Fタンパク質類似体、例えばPreF類似体を含む免疫原性組成物の製剤に関するさらなる詳細を提供する目的で、参照によって本明細書に組み込まれる。
必要に応じて、Fタンパク質類似体、例えばPreF類似体若しくはPostF類似体を含む免疫原性組成物は、RSV以外の病原性生物の少なくとも1種のさらなる抗原と共配合される。例えば、この病原性生物は、気道の病原体であり得る(例えば、気道感染を起こすウイルス)。特定の場合において、この免疫原性組成物は、RSV以外の病原性ウイルス、例えば気道の感染を起こすウイルス、例えばインフルエンザ若しくはパラインフルエンザに由来する抗原を含む。同様に、所望される場合、パータシス抗原もまた、RSV以外の病原性ウイルスの抗原と共配合され得る。
RSVタンパク質類似体と無細胞パータシス抗原若しくは全細胞パータシス抗原との共配合は、本明細書中で記載され、本明細書中で開示されるワクチン接種レジメン、方法及び使用の1つの好ましい実施形態である。
特定の実施形態において、本明細書中で開示されるワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットのために好適な免疫原性組成物は、さらに、RSV及び百日咳菌以外の少なくとも1つの病原性生物由来の少なくとも1つの抗原を含む。詳細には、この少なくとも1つの病原性生物は、コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriae)、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)、B型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型、髄膜炎菌C型、髄膜炎菌Y型、髄膜炎菌A型、髄膜炎菌W型、及び髄膜炎菌B型からなる群より選択され得る。より詳細には、上記少なくとも1つの抗原は、ジフテリアトキソイド(D)、破傷風トキソイド(T)、B型肝炎表面抗原(HBsAg)、不活化ポリオウイルス(IPV);キャリアタンパク質とコンジュゲートしたインフルエンザ菌b型(Hib)の莢膜糖;キャリアタンパク質とコンジュゲートした髄膜炎菌C型タンパク質の莢膜糖(MenC);キャリアタンパク質とコンジュゲートした髄膜炎菌Y型の莢膜糖(MenY);キャリアタンパク質とコンジュゲートした髄膜炎菌A型の莢膜糖(MenA);キャリアタンパク質とコンジュゲートした髄膜炎菌W型の莢膜糖(MenW);及び髄膜炎菌B型由来の抗原(MenB)からなる群より選択され得る。これら及び他の実施形態において、さらなる抗原が、投与を容易にするために、又は複数の感染性生物に対して対象を防御するために必要な接種の回数を減らすために、選択され得る。例えば、抗原は、とりわけ、任意の1以上のインフルエンザ、B型肝炎、ジフテリア、破傷風菌、百日咳菌、インフルエンザ菌、ポリオウイルス、hMPV、連鎖状球菌(Streptococcus)又は肺炎球菌(Pneumococcus)に由来し得る。
百日咳菌抗原(Pa若しくはPw)をD及びT並びに、IPV、HBsAg、Hib及びコンジュゲート髄膜炎菌莢膜糖から選択されるものなどの種々の他の抗原の組み合わせと共に含む混合ワクチンは、当該分野で周知であり、そして本明細書中のワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットの文脈において好適であり、例えば、製品Infanrix(商標)(例えば、DTPa−IPV−HBsAg−Hib)及びBoostrix(商標)(例えば、dTpa)である。このことに関して、WO93/024148、WO97/000697及びWO98/019702は、参照によって組み込まれ、WO02/00249は、DTPw−HepB−MenAC−Hib組成物を開示する。このような混合ワクチンは、本明細書中で開示されるワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットの文脈において好適である。
本明細書中で開示されるワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットにおいて好適な特定の免疫原性組成物は、少なくとも1つのRSV抗原及び少なくとも1つの百日咳菌抗原に加えて:D及びT;D,T及びIPV;D,T及びHBsAg;D,T及びHib;D,T,IPV及びHBsAg;D,T,IPV及びHib;D,T,HBsAg及びHib;又はD,T,IPV,HBsAg及びHibを含む。
特定の実施形態において、Dは、1用量あたり1〜10国際単位(IU)(例えば、正確に若しくはおよそ2IU)又は10〜40IU(例えば、正確に若しくはおよそ20若しくは30IU)の量で、あるいは1〜10リミットオブフロッキュレーション(Limit of flocculation)(Lf単位)(例えば、正確に若しくはおよそ2又は2.5又は9Lf)又は10〜30Lf(例えば、正確に若しくはおよそ15又は25Lf)の量で使用される。
特定の実施形態において、Tは、1用量あたり10〜30IU(例えば、正確に若しくはおよそ20IU)又は30〜50IU(例えば、正確に若しくはおよそ40IU)又は1〜15Lf(例えば、正確に若しくはおよそ5又は10Lf)の量で使用される。
例示的な実施形態において、ワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットに好適な免疫原性組成物は、少なくとも1つのRSV抗原及び少なくとも1つの百日咳菌抗原に加えて、D及びTを、それぞれ、1用量あたり、正確に又はおよその量で:30:40IU;25:10Lf;20:40IU;15:5Lf;2:20IU;2.5:5Lf;2:5Lf;25:10Lf;9:5Lf含む。例えば、このような組成物は、(少なくとも1つのRSV抗原に加えて)
(i) 20〜30μg、例えば、正確に又はおよそ25μgのPT、
(ii) 20〜30μg、例えば、正確に又はおよそ25μgのFHA、
(iii) 1〜10μg、例えば、正確に又はおよそ3若しくは8μgのPRN、
(iv) 10〜30Lf、例えば、正確に又はおよそ15若しくは25LfのD、及び
(v) 1〜15Lf、例えば、正確に又はおよそ5若しくは10LfのT
を含み得る。
別の例として、このような好適な組成物は、(少なくとも1つのRSV抗原に加えて)
(i) 2〜10μg、例えば、正確に又はおよそ2.5若しくは8μgのPT、
(ii) 2〜10μg、例えば、正確に又はおよそ5若しくは8μgのFHA、
(iii) 0.5〜4μg、例えば、2〜3μg、例えば、正確に又はおよそ2.5又は3μgのPRN、
(iv) 1〜10Lf、例えば、正確に又はおよそ2又は2.5又は9LfのD、及び
(v) 1〜15Lf、例えば、正確に又はおよそ5又は10LfのT
を、含み得る。
従って、本明細書中で開示されるワクチン接種レジメン、方法、使用及びキットに従い、免疫原性組成物は、医薬、詳細には、ヒト対象における感染の予防若しくは処置のための、又はRSV及び百日咳菌に関連する疾患の予防若しくは処置のための、医薬における使用を企図されることが、明らかである。他の病原体由来の抗原を含む特定の実施形態において、このような予防若しくは処置は、他の病原体に及ぶ。
本明細書中で記載される母体免疫は、RSVワクチン及びパータシスワクチンの投与のために好適な経路を介して実施される。この経路としては、筋肉内、鼻腔内、若しくは皮膚投与が挙げられる。好ましくは、本明細書中で記載されるRSV及び/又はパータシス母体免疫は、皮膚的に実施され、これは、この抗原が、皮膚の真皮及び/又は表皮に(例えば、皮内に)導入されることを意味する。特定の実施形態において、Fタンパク質類似体、例えばPreF抗原若しくはPostF抗原などの組換えRSV抗原及び/又は無細胞パータシスタンパク質若しくは全細胞パータシスを含むパータシス抗原が、妊婦に、皮膚的に若しくは皮内に送達される。特定の実施形態において、Fタンパク質、例えばPreF抗原若しくはpostF抗原は、本明細書中で記載されるアジュバント、例えば、サポニン、例えば3D−MPL含有又は非含有のQS21と共に、皮膚送達若しくは皮内送達のために製剤化される。別の実施形態において、Fタンパク質類似体、例えば、PreF若しくはPostF抗原は、免疫刺激剤、例えばQS21若しくは3D−MPL含有若しくは非含有の、鉱物塩、例えば水酸化アルミニウム若しくはリン酸アルミニウム又はリン酸カルシウムと共に、皮膚送達若しくは皮内送達のために製剤化される。パータシス抗原は、典型的に、アルミニウム塩と組み合わせて製剤化され、そして必要に応じて、皮膚経路若しくは皮内経路によって投与され得る。必要に応じて、Fタンパク質類似体及びパータシス抗原は、例えば、免疫刺激剤、例えばQS21若しくは3D−MPL含有若しくは非含有の鉱物塩、例えば水酸化アルミニウム若しくはリン酸アルミニウム又はリン酸カルシウムの存在下で、皮膚送達若しくは皮内送達のために製剤化される。
皮内経路を含む皮膚経路を介した送達は、筋肉内経路などの他の経路よりも低用量の抗原を必要とする、すなわちより低用量を可能にする場合がある。従って、皮膚送達若しくは皮内送達のための、低用量、例えば通常の筋肉内用量よりも低い用量、例えば通常の筋肉内用量の50%以下で、例えば、ヒトの1用量あたり50μg以下、又は20μg以下、又は10μg以下又は5μg以下で、Fタンパク質類似体を含む免疫原性組成物もまた、提供される。同様に、パータシス抗原を含む免疫原性組成物は、皮膚投与若しくは皮内投与についての用量範囲の下限(若しくはなおより低い用量)、例えば、(さらなる抗原性成分含有若しくは非含有で)1〜10μgの間のPT、1〜10μgの間のFHA、0.5〜4μgの間のPRNで製剤化され得る。必要に応じて、皮膚送達若しくは皮内送達のための免疫原性組成物はまた、アジュバント、例えば、アルミニウム塩又はQS21若しくは3D−MPL、又はこれらの組み合わせをも含む。
皮膚投与のためのデバイスとしては、短針デバイス(約1mmと約2mmとの間の長さの針を有する)が挙げられ、US4,886,499、US5,190,521、US5,328,483、US5,527,288、US4,270,537、US5,015,235、US5,141,496、US5,417,662及びEP1092444に記載されるものである。皮膚ワクチンはまた、参照によって本明細書に組み込まれるWO99/34850において記載されるように、皮膚への針の有効な進入長さを制限するデバイス及びその機能的均等物によって投与され得る。液体ジェット注射器を介して又は角質層を貫き真皮に達するジェットを生み出す針を介して液体ワクチンを真皮に送達するジェット注射デバイスもまた、好適である。ジェット注射デバイスは、例えば、US5,480,381、US5,599,302、US5,334,144、US5,993,412、US5,649,912、US5,569,189、US5,704,911、US5,383,851、US5,893,397、US5,466,220、US5,339,163、US5,312,335、US5,503,627、US5,064,413、US5,520,639、US4,596,556、US54,790,824、US4,941,880、US4,940,460、WO97/37705及びWO97/13537において記載される。
皮膚投与のためのデバイスとしてはまた、圧縮ガスを用いて粉末形態のワクチンを皮膚の外層を通って真皮へ加速させる弾道粉末/粒子送達デバイスが、挙げられる。さらに、慣用的なシリンジが、皮膚投与の古典的マントー法において使用され得る。しかし、慣用的シリンジの使用は、高度に熟練した技術者が必要であり、従って、高度に熟練した使用者がいなくても正確な送達を可能にするデバイスが好ましい。皮膚投与のためのさらなるデバイスとしては、本明細書中で記載される免疫原性組成物を含むパッチが挙げられる。皮膚送達パッチは、一般に、固体基板(例えば、閉塞性若しくは非閉塞性の外科用包帯)を備えた裏打ちプレートを備える。このようなパッチは、角質層に穴をあける微小突起を介して、真皮若しくは表皮に免疫原性組成物を送達する。微小突起は、一般に、10Dm〜2mmの間、例えば、20Dm〜500Dm、30Dm〜1mm、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700、800、800〜900、100Dm〜400Dm、詳細には、約200Dm〜300Dmの間若しくは約150Dm〜250Dmの間である。皮膚送達パッチは、一般に、複数の微小突起、例えば、2〜5000の間の微小針、例えば、1000〜2000の間の微小針を備える。微小突起は、角質層、表皮及び/又は真皮に穴をあけるために好適な任意の形状であってもよい。微小突起は、例えば、WO2000/074765及びWO2000/074766に開示されるような形状であってもよい。微小突起は、少なくとも3:1(高さ対直径に基づく)、少なくとも約2:1又は少なくとも約1:1の縦横比を有し得る。微小突起の1つの特定の形状は、多角形、例えば六角形若しくは菱形の形状の底を有する錐状である。他の可能性のある微小突起形状は、例えば、米国特許出願公開第2004/0087992号において示される。特定の実施形態において、微小突起は、基部に向かって太くなる形状を有する。アレイにおける微小突起の数は、典型的に、少なくとも約100、少なくとも約500、少なくとも約1000、少なくとも約1400、少なくとも約1600、又は少なくとも約2000である。微小突起の面密度は、その小さなサイズを前提に、特に高くなくてもよいが、例えば、1cm2あたりの微小突起の数は、少なくとも約50、少なくとも約250、少なくとも約500、少なくとも約750、少なくとも約1000、又は少なくとも約1500であり得る。本発明の1つの実施形態において、Fタンパク質類似体は、宿主の皮膚上にパッチを置いて5時間以内に、例えば、4時間、3時間、2時間、1時間若しくは30分間以内に、対象に送達される。特定の実施形態において、Fタンパク質類似体は、皮膚上にパッチを置いて20分間以内、例えば、30秒以内、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18若しくは19分間以内に送達される。
微小突起は、当業者に公知の任意の好適な材料で作られ得る。特定の実施形態において、微小突起の少なくとも一部、詳細には、微小突起の先端若しくは微小突起の最外層は、生分解性である。特定の実施形態において、微小突起の実質的に全てが生分解性である。用語「生分解性」は、本明細書中で、生分解のメカニズムにかかわらず、インビボ使用(例えば、皮膚への挿入)の予測される条件下で分解性であることを意味する。生分解の例示的なメカニズムとしては、崩壊、分散、溶解、侵食、加水分解及び酵素分解が挙げられる。
抗原を含む微小突起の例は、WO2008/130587及びWO2009/048607に開示される。代謝可能微小針の製造の方法は、WO2008/130587及びWO2010/124255に開示される。抗原による微小突起のコーティングは、当業者に公知の任意の方法、例えば、WO06/055844、WO06/055799において開示される方法によって、実施され得る。
本明細書中で記載される方法及び使用における皮内送達を含む皮膚送達のために好適な送達デバイスとしては、皮内投与のための微小針デバイスであるBD Soluvia(商標)デバイス、Corium MicroCor(商標)パッチ送達システム、Georgia Tech微小針ワクチンパッチ、Nanopass微小針送達デバイス及びDebiotech Nanoject(商標)微小針デバイスが挙げられる。また、本明細書中に記載されるRSV母体免疫のための免疫原性組成物、例えば、必要に応じて鉱物塩、例えばミョウバン又はQS21若しくは3D−MPLあるいはこれらの組み合わせなどのアジュバントと共に製剤化されたPreF抗原などの組換えFタンパク質類似体を含む、皮膚送達デバイス若しくは皮内送達デバイスもまた、提供される。
[実施例1]概念の証明−モルモットモデルにおける母体免疫
胎盤構造及びIgG移行が典型的げっ歯類モデルの場合よりもヒトに近いので、モルモットモデルを選択した(Pentsuk and van der Laan (2009) Birth Defects Research(part B) 86:328-344において概説される)。モルモットの相対的に長い妊娠期間(68日間)のため、妊娠の間の免疫及び免疫応答発生が可能になる。その人生を通してRSVに対する曝露を経験しており、RSV対する免疫応答が事前に存在している妊婦のRSV免疫状態を模倣するために、雌モルモットを、ワクチン接種の6週間前若しくは10週間前のいずれかにおいて、生RSVでプライミングした。
雌モルモット(N=5/群)を、ワクチン接種の6週間前若しくは10週間前(およそ、交配の時点若しくは交配の4週間前)に、生RSVウイルス(2.5×105pfu)で鼻腔内プライミングした。2群は、プライミングしないままにした。妊娠雌を、妊娠の開始約6週間後に水酸化アルミニウムと合わせた10μgのPreF抗原で免疫した。プライミングなしの1群の雌に、PBSを注射した。血清サンプルを、プライミング及び妊娠期間にわたって収集し、抗RSV結合及び中和抗体のレベルをモニタリングした。
後代(7〜16日齢)を、生RSVで1×107pfuにて鼻腔内チャレンジした。チャレンジの4日後、肺を採取し、7葉に分割した。7葉のうち6葉においてウイルスを力価測定し、肺1グラムあたりの全ウイルス粒子を計算した。
結果を、図2及び図3にグラフで示す。
モルモットを6週間若しくは10週間前にプライミングしようとしまいと、ワクチン接種の日に同様のレベルの抗体が観察された。プラトー力価に、プライミングの14日後に到達した。中和抗体力価は、プラトーに達した後、少なくとも約60日間、低下しなかった。従って、両時点でのプライミングは、このモデルにおいて等価であり、ヒトにおける母胎感染を模倣するために好適であった。
モルモット後代における肺ウイルス負荷からの結果は、プライミング及びワクチン接種された母に生まれた後代は、プライミングなし/ワクチン接種なし母に生まれた後代と比較して、RSVチャレンジから防御されたことを示す。対照的に、プライミングなし/ワクチン接種なし母に生まれた後代は、RSVチャレンジから防御されなかった。
[実施例2]混合ワクチンは、RSVによるチャレンジに対して防御する
本実施例は、RSV及び百日咳菌抗原(PT、FHA及びPRN)を含む混合ワクチンによって惹起されたRSVに対する防御を実証する。2用量の混合Pa−RSVワクチンの免疫原性(中和抗体力価)を、Balb/cマウスモデルにおいて評価し、その後、鼻腔内RSVチャレンジを行って、混合ワクチンの効力を測定した。
BALB/cマウス(n=14/群)を、表1に示される処方物により、3週間間隔で2回筋肉内に免疫した。
全てのマウス由来の血清を、0日目(1回目免疫の前)、21日目(2回目免疫の前)及び35日目(2回目免疫の2週間後)に個別に収集し、RSV中和抗体の存在を、プラーク減少アッセイを用いて試験した。簡潔にいうと、各血清の連続希釈物を、RSV A Long(1ウェルあたり100pfuを標的化)と共に37℃にて20分間にわたってインキュベートした。インキュベーション後、ウイルス−血清混合物を、Vero細胞を予め植菌し、増殖培地を空にしておいたプレートに移した。各ウェル上に、一列の細胞を、ウイルスのみと共にインキュベートし(100%の感染性)、2ウェルにはウイルスも血清も与えなかった(細胞対照)。プレートを、37℃にて2時間にわたってインキュベートし、培地を除去し、そして0.5%CMC(低粘度カルボキシメチルセルロース)を含むRSV培地を全てのウェルに添加した。このプレートを、3日間37℃にてインキュベートした後、免疫蛍光染色した。
染色のために、細胞単層を、PBSで洗浄し、そして1%パラホルムアルデヒドで固定した。RSV陽性細胞を、市販のヤギ抗RSV抗血清を用い、その後FITCにコンジュゲートしたウサギ抗ヤギIgGを用いて、検出した。1ウェルあたりの染色プラークの数を、自動画像化システムを用いて計数した。各血清の中和抗体力価を、血清なしの対照と比較してプラークの数の60%の減少を起こす血清希釈の逆関数(ED60)として決定した。結果を、図5Aに示す。
Al(OH)3のアジュバントが添加されたPreFベースのワクチンは、鼻腔内RSVチャレンジからマウスを防御する。従って、この動物モデルは、肺におけるウイルスクリアランスを媒介するRSVワクチンの能力を研究するために有用である。次いで、単一ワクチン中の百日咳菌(PT、FHA及びPRN)抗原とRSV(PreF)抗原との組み合わせを、鼻腔内RSVチャレンジマウスモデルにおける防御有効性について試験した。2回目のワクチン投与の2週間後、マウスを、50μl(1つの鼻腔あたり25μL)の生RSV A Long株(約1.45×106pfu/50μl)の点鼻によってチャレンジした。肺ウイルス負荷の評価のために、チャレンジの4日後、肺を採取した。チャレンジの4日後、マウスを安楽死させ、肺を、無菌的に採取し、個々に計量し、ホモジナイズした。各肺ホモジネートの連続希釈物(各8連)を、Vero細胞と共にインキュベートし、プラークを含むウェルを、植菌の6日後に免疫蛍光によって同定した。ウイルス力価を、TCID50計算のためにSpearman−Karber法を用いて決定し、肺1グラムあたりで示した。使用した統計学的方法は、log10値における分散分析(ANOVA 1)である。
結果を、図5Bに示す。予測されるとおり、Al(OH)3と混合した2μgのPreFは、Pa単独でワクチン接種したマウス(RSVチャレンジからの防御が予測されない対照群)と比較して、肺におけるウイルスクリアランスを効率的に促進した。PreF群における14匹のうち2匹の動物のみが、肺に検出可能なレベルのRSVを有し、他の12匹の動物は、RSVが検出可能ではなかった。Pa−RSV混合ワクチンは、14匹中1匹の動物のみが肺においてRSVが検出可能であり、残る13匹の動物においてRSVが検出不能であったことによって示されるとおり、RSVチャレンジに対しマウスを等しく防御することができた。全体で、PreF+Al(OH)3ワクチン又はPa抗原+PreF+Al(OH)3をワクチン接種した動物は、Pa単独でワクチン接種した対照動物よりも有意に低い肺ウイルス力価を有した(P<0.001)。アジュバントなしでPa抗原+PreFをワクチン接種した群において、肺ウイルス力価の有意な低下(P<0.001)があったが、しかし、全ての動物からの肺においてウイルスを定量したが、この群の動物に、RSVチャレンジに対して完全な防御を示した動物はなかった。
チャレンジ動物モデルを用い、我々は、Pa−RSV混合ワクチンが、RSVワクチンと同等の、RSVに対する防御的な免疫応答を惹起することを示した。この免疫応答は、RSV中和抗体の産生に関連していた。
[実施例3]混合ワクチンは、百日咳菌によるチャレンジに対して防御する
本実施例は、RSV及び百日咳菌抗原(PT、FHA及びPRN)を含む混合ワクチンによって惹起される、百日咳菌(Bordetella Pertussis)に対する防御を実証する。混合Pa−RSVワクチンの2用量の免疫原性(中和抗体力価)を、Balb/cモデルにおいて評価し、その後、感染性百日咳菌による鼻腔内チャレンジを行って、この混合ワクチンの有効性を測定した。
BALB/cマウス(n=20/群)の群を、皮下2回、3週間間隔で、表2に示した処方物によって免疫した。
全てのマウス由来の血清を、2回目免疫の7日後(d28−チャレンジの前日)に個別に回収し、そして抗PT抗体、抗FHA抗体及び抗PRN IgG抗体の存在について試験した。簡潔にいうと、96ウェルプレートを、炭酸重炭酸塩緩衝液(50mM)中のFHA(2μg/ml)、PT(2μg/ml)若しくはPRN(6μg/ml)にてコーティングし、4℃にて一晩インキュベートした。PBS−BSA 1%緩衝液による飽和ステップの後、マウス血清を、1/100にPBS−BSA 0.2%Tween0.05%中で希釈し、そしてプレートのウェル内に、連続的に希釈した(12希釈、ステップ1/2)。ペルオキシダーゼと結合した抗マウスIgGを添加した(1/5000希釈)。ペルオキシダーゼ基質(OPDA)添加後、呈色反応を観察し、そして吸光度測定法(波長:490〜620nm)による読み取りの前に、HCL 1Mで停止した。各プレート上に加えた試験した各血清及び標準について、4パラメーターロジスティック曲線を、ODと希釈との間の関係に適合させた(Softmaxpro)。これは、各サンプル力価の導出を、STD力価で示した。ワクチンによって誘導されたPa抗原(PT、FHA及びPRN)に特異的な血清学的抗体応答を、Paワクチンにおいて見出される個別の抗原に対してワクチンが抗体応答を惹起する能力を示すものである(しかし決定的なものではない)と考える。図6Aは、2回の免疫後、DTPaが、Pa単独及びPa−RSV混合でPT、FHA及びPRNに特異的なIgG応答を促進したことを示す。ワクチン接種しなかったマウス若しくはRSVワクチン接種したマウス由来の血清中で、抗原特異的抗体が検出されなかった(データは表示せず)。統計学的分析は、DTPa(Infanrix)及びPa−RSV混合によって誘導された抗PT抗体応答と抗FTA抗体応答との間が同等であることを実証した。Pa単独及びPa−RSV混合ワクチンによって誘導された抗PRN特異的抗体の量もまた、統計学的に同等であり、このことは、RSV抗原の存在が、抗パータシス抗体応答の産生に干渉しなかったことを実証した。
防御を実証するために、追加刺激の1週間後、マウスを、50μlの細菌懸濁液(約5E6 CFU/50μl)の左鼻腔への点鼻によってチャレンジした。各群5匹のマウスを、細菌チャレンジの2時間後、2日後、5日後及び8日後に、安楽死させた。肺を、無菌的に採取し、個別にホモジナイズした。肺細菌クリアランスを、Bordet−Gengouアガープレート上のコロニー増殖を計数することによって測定した。データを、各処置群における各採取時点について、1つの肺あたりのコロニー形成単位の数の平均(CFU−log10)に従って、プロットした。使用した統計学的方法は、異質分散モデルを用いた、2つの因子(処置及び日)によるlog10値に対する分散分析(ANOVA)である。
このモデルにおいて、無細胞百日咳菌ワクチン(Pa)は、マウスを、細菌による鼻腔内チャレンジから防御する。従って、この動物モデルは、百日咳菌ベースのワクチンが肺における細菌クリアランスを媒介する能力を研究するために、有用である。単一ワクチン中の百日咳菌(PT、FHA及びPRN)抗原及びRSV(Pre−F)抗原の組み合わせを、鼻腔内チャレンジマウスモデルにおける防御有効性について試験した。典型的結果を、図6Bに図示する。予測どおり、調製したヒト用量(市販のDTPaワクチンInfanrixの4分の1用量)は、ワクチン接種なしのマウスと比較して、細菌クリアランスを効果的に促進した。Pa単独及びPa−RSV混合ワクチンはまた、両方とも、細菌消滅に導く防御免疫応答を惹起し得る。予測どおり、Pre−F RSVワクチン単独では、この動物モデルを、百日咳菌から防御できなかった。
これらの結果は、上の実施例2において実証されたように、動物モデルにおいて、Pa−RSV混合ワクチンが、百日咳菌に対して及びRSVに対して、防御免疫応答を惹起したことを実証する。この免疫応答は、無細胞Paワクチン(PT、FHA及びPRN)において見出される3つのサブユニット抗原に対する特異的抗体の産生に関連していた。