JP2015516144A - 癌におけるマイクロサテライト不安定性を検出しdna塩基除去修復経路の阻害による合成致死性を決定するための新規なマーカー - Google Patents
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Abstract
Description
興味深いことに、変異は、相同組換え(HR)経路による二本鎖切断(DSB)修復に優先的に影響を及ぼし、DSB修復は、MMR欠損腫瘍において機能的に障害されている。これらの腫瘍は、酵素ポリADPリボースポリメラーゼの薬理学的阻害(PARP阻害)による一本鎖切断の誘導に感受性であることが、本明細書に示されている。したがって、MMRとPARPの間の合成致死性相互作用に基づく、MMR欠損腫瘍に対する新規な処置法が提供される。
MMR欠損は、子宮内膜(EM)または結腸直腸(CRC)癌の2%〜5%を占める癌感受性の常染色体優性遺伝性疾患であるリンチ症候群の、良好に証明された原因を表す。リンチ症候群は、MMR経路遺伝子(MLH1、MSH2、MSH3、MSH6またはPMS2)(Jiricny, 2006)における突然変異または欠失によって引き起こされる。さらに、MLH1のエピジェネティックなサイレンシングは、しばしば「散発」リンチ症候群と呼ばれ、これらの腫瘍の別の15%に寄与する(Kuismanen et al., 2002)。MMR欠損はまた、卵巣、膵臓、胃、白血病、およびいくつかの他の癌の少数においても記載されている。
MMR欠損腫瘍は、標準的な化学療法、例えば5−フルオロウラシルおよびテモゾロミドなどのアルキル化剤の後に、異なる予後および治療結果を示す(de la Chapelle and Hampel, 2010)。MMR欠損腫瘍を有する未処置のCRC患者はやや良好な予後を有するが、CRCに対する第一選択化学療法である5−フルオロウラシルに基づくアジュバント化学療法からの恩恵を受けていないようにみえる。特に、MMR欠損腫瘍において、5−フルオロウラシルによって誘導されたミスマッチは耐容され、細胞死の誘導の機能不全につながる(Hewish et al., 2010)。MMR欠損腫瘍はまた、EMにおいてよく使用される化学療法のシスプラチンとカルボプラチンに対して抵抗性である(Hewish et al., 2010)。さらに、MMR欠損腫瘍は、抗EGFRおよび抗VEGF療法を含む標的療法にも抵抗性となり得るが、その理由は、代替的または下流のシグナル伝達経路を活性化する遺伝子において、二次変異を獲得するからである。例えば、MMR(−)腫瘍は、二本鎖切断修復遺伝子(例えば、MRE11、ATRおよびRAD50)、既知の癌遺伝子または腫瘍抑制因子(例えば、PIK3CAまたはPTEN)において突然変異を獲得することができる。別の可能性は、MLH1のエピジェネティックなサイレンシングは、BRAFのV600E突然変異などの特定の変異と一致するということであり(Ogino et al., 2012)、これは、進行したCRCにおける標的抗EGFR療法に対する応答の、確立された負の予測因子を表す(De Roock et al., 2010)。
MSIを検出する最も一般的な方法は、マイクロサテライト全体を含むポリメラーゼ連鎖反応アンプリコンの長さを測定することである。これには、DNA、1対のプライマーでその1つが多くの場合末端蛍光標識されたもの、シーケンサー、および適切なソフトウェアが必要である。代替的に、アンプリコンが配列決定されている場合は、反復単位の数を簡単にカウントすることができる。MSIはまた、ミスマッチ修復遺伝子の1つの、免疫組織化学(IHC)染色の喪失を検出することにより、これがミスマッチ修復の異常を指しているので、間接的に診断することができる。免疫組織化学的および遺伝的方法は両方とも、相当数の偽陰性によっても特徴付けられ、そしてこのために、免疫組織化学および遺伝子レベルでの組み合わせの評価が、日常的な診断設定において行われている。
ベセスダパネルは現在でも標準と考えられるが、これはかなり低い感度を有することが知られている(どのMMR遺伝子が変異しているかにも依存する)。例えば、MLH1変異を有する患者に対して感度は80%であるが、MSH6変異を有する患者に対して感度はわずか55%である10。これは、さらにマーカーを追加することによって改善することができるが10、それでも実際のMSI−H患者がMSI−LまたはMSSと表される場合がある。これは重要性がないわけではなく、その理由は、MSIの状態はいくつかの癌(例えばリンチ症候群のもの)の予後(特にMSI−H患者について11)、処置(フルオロウラシル(FU)改変DNAによって細胞のアポトーシスを誘導するためには無傷のMMR系が必要であるため、MSI−H腫瘍はFUに基づくアジュバント療法に反応しない11〜13)、および診断に重要であるからであり、新しく診断された結腸直腸癌(CRC)患者は、MSI状態について定期的にスクリーニングされる。
さらなる欠点は、技術的な性質のものである。ベセスダマーカーパネルはかなり長い反復を含み(例えば、BAT26マーカーは26ヌクレオチドのA反復を含有する)、MSI状態を決定するために使用される典型的なPCR産物は、100bpよりはるかに大きい。これらの断片を正確に配列決定し、反復の正確な長さを決定するために、マルチキャピラリーゲル電気泳動法と組み合わせたサンガーに基づく配列決定法が一般的に使用されている。しかし、より多くの研究室が、大規模並列配列決定技術を使用するいわゆる「次世代」シーケンシングと呼ばれるものを用いている。安価ではあるが、これらの技術はより短いリードを利用し、ベセスダマーカーパネル上のマイクロサテライト不安定性を検出するために使用することはできない。その結果、研究室は2つのシーケンサーを維持する必要がある:1つはベセスダマーカーパネルスクリーニングのためであり、もう1つはその他の実験のためである。MSIの状態を決定するために特別のシーケンサーが必要ではなければ、そしてこの決定が一般に使用される装置上で実施できるならば、非常に便利である。
さらに、MMR特異的な治療法をさらに最適化する、例えば、標的療法に対するその反応をより合理的に予測する、大きな必要性も存在する。また、一般的に使用される治療法に対する抵抗性を克服する方法を見出すことが必要であり、例えば、標準的な処置に抵抗性であっても、MMR欠損腫瘍が感受性である治療法を同定することなどによる。
本発明の目的は、特定の癌のMSI状態を決定するための、より優れたマーカーを提供することである。検出にバイアスがないことを保証するために、我々はここに初めて、ミスマッチ修復欠損腫瘍の次世代シーケンシングを報告する。マーカーは、その検出がサンガー配列決定法に依存しないような様式で、長いマイクロサテライト中には存在しないように選択される。さらに、マーカーの適用性を拡大するために、マーカーを異なる腫瘍タイプにおいて評価して、それらが癌タイプ特異的マーカーではなく、種々の癌にわたるマイクロサテライト不安定性のマーカーを表すようにした。最後に、マーカーを、腫瘍において反復的に発生するように選択した。興味深いことに、反復(ホットスポット)変異の多くはDNA二本鎖切断修復経路に影響を与える遺伝子においてクラスター化しており、この経路も機能的に影響を受けることを示すことができた。その結果、これらのマーカーについて陽性の腫瘍は、PARP阻害剤などのDNA塩基除去修復酵素の阻害剤による阻害に感受性であり、これは合成致死性相互作用をもたらすことを実証することができた。
同定されたマーカーは、2つのクラスに分けることができる:特定遺伝子の、コード領域(すなわちエクソン)のマイクロサテライト領域に存在するインデル、および非コード領域(最も特に5’および3’UTR領域)に存在するインデルである。
したがって、腫瘍のMSI状態を診断する方法が本明細書に提供され、該方法は、腫瘍DNAの試料中の少なくとも2つのマイクロサテライト領域中のインデルの存在を決定することを含み、ここで少なくとも2つのマイクロサテライト領域は、
− 表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在する、少なくとも2つのマイクロサテライト領域、または
− 表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するもの、および/または表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するものから選択される、少なくとも3つのマイクロサテライト領域であり、
ここで少なくとも1つのインデルの存在が、MSIの指標である。
特定の態様によれば、UTRに存在するマイクロサテライト領域は、表1の代わりに表4から選択することができる。別の特定の態様によれば、これらのマイクロサテライト領域は、表1の代わりに表6から選択することができる。
代替的であるが非排他的な特定の態様によれば、遺伝子のエクソンに存在するマイクロサテライト領域は、表2の代わりに表5から選択することができる。別の特定の態様によれば、領域は、表2の代わりに表7から選択することができる。
非常に特定の態様によれば、マイクロサテライト領域は、表8に列挙された遺伝子から選択することができる。
非コード領域(例えば、5’および3’UTR領域など)のマイクロサテライトのインデルは、コード領域のインデルよりも選択圧が低いため(これにより、後者はフレームシフト突然変異を引き起こし、元のものとは完全に異なる翻訳がもたらされる)、非コード領域からのマイクロサテライトのインデルが、癌タイプにわたってMSIのより信頼性の高いマーカーであることを実証することができた。実際、本明細書で同定された非コードマーカーの50%以上は、証明されたMSIを有するMMR欠損腫瘍で試験された場合に、陽性スコアを有する。エクソンマーカーについては、これらの腫瘍で試験された場合に、3分の1をはるかに超えるものが陽性スコアを有する。このことは、マーカーの少なくとも一部がエクソンの領域にある場合に、少なくとも3つのマーカーを使用することが想定されている理由を説明する。
また、エクソン領域のマーカーと非コード領域のマーカーの組み合わせを使用することも、特に想定される。例えば、特定の態様によれば、インデルの存在が決定される少なくとも2つのマイクロサテライト領域は、表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するものから選択される、少なくとも2つのマイクロサテライト領域、および表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するものから選択される、少なくとも2つのマイクロサテライト領域である。
代替の具体的態様によれば、使用される少なくとも1つのマーカーは、5’または3’UTR領域に位置する10〜15反復塩基のホモポリマー中のインデルである。
特定の態様によれば、MSIの状態は、以下のようにさらに特徴付けることができる:試験したマイクロサテライト領域の17%以上がインデルを含む場合、腫瘍はMSI−Hであり、2%〜17%のマイクロサテライト領域がインデルを含む場合、腫瘍はMSI−Lであり、2%未満のマイクロサテライト領域がインデルを含む場合、腫瘍はマイクロサテライト安定(MSS)である。一例として、56のマーカーのパネルに対して、0または1つのマーカーが陽性である場合、腫瘍はMSSとして分類され、2〜9の陽性マーカーの場合、腫瘍はMSI−Lであり、10以上の陽性マーカーに対して、腫瘍はMSI−Hと分類される。代替的に、ベセスダパネルから範囲を推定することができる(10の内0の陽性マーカーはMSSであり、10の内1または2の陽性マーカーはMSI−Lであり、3以上の陽性マーカーはMSI−Hである;これは、MSSとMSI−Lの区別に対して1〜9%の間の陽性マーカーの境界に、およびMSI−Hの分類に対して20%を超える陽性マーカーに対応する)。
別の側面によれば、腫瘍試料中のMSIを決定するための、バイオマーカーパネルが提供される。かかるバイオマーカーパネルは、表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するもの、および表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するものから選択される、少なくとも8つのマイクロサテライト領域を含む。非常に特定の態様によれば、バイオマーカーパネルは、表3に列挙されているマイクロサテライト領域の少なくとも半分を含む。さらに特定の態様によれば、バイオマーカーパネルは、表3に列挙された56のマイクロサテライト領域により表される。
したがって、本明細書に記載のバイオマーカーパネルは、医薬としての使用のために提供される。より特に、本明細書に記載のバイオマーカーパネルは、診断薬としての使用のために提供される。さらにより特に、本明細書に記載のバイオマーカーパネルは、癌におけるマイクロサテライト不安定性の診断における使用のために提供される。
さらに別の態様によれば、腫瘍試料中のMSIを決定するための、バイオマーカーパネル(すなわち、表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するもの、および表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するものから選択される、少なくとも8つのマイクロサテライト領域)の遺伝子型を決定するためのツールを含むキットが提供される。最も具体的には、キットは、特に想定されるバイオマーカーパネル(単数または複数)に適合される。具体的な態様によれば、キットはまた、マーカーのベセスダパネル、またはマーカーの拡張ベセスダパネルの遺伝子型を決定するためのツールを含んでもよい。かかるキットは、マーカーをベセスダパネルと対照比較するために特に適している。
したがって、さらなる側面において、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤による処置に対する、癌細胞の感受性をスクリーニングするための、癌細胞におけるMSI状態を決定することを含む方法が提供される。特定の態様によれば、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤は、PARP阻害剤である。具体的な態様によれば、癌細胞は、次のリスト:結腸直腸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、胃癌、白血病、およびリンチ症候群の腫瘍から選択される癌からのものである。これらの方法は、原理的にin vivo、ex vivoおよびin vitroで行うことができるが、in vitroでの実施が特に想定される。
具体的な態様によれば、癌細胞は、対象から得た細胞であり、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤による処置に対する感受性のスクリーニングは、対象の処置をガイドするために使用される。代替的な態様によれば、感受性のスクリーニングは、対象を臨床試験について階層化または分類するのに使用される。
特定の態様によれば、MSIの存在は、本明細書に記載の方法によって、すなわち、腫瘍DNAの試料中の少なくとも2つのマイクロサテライト領域中のインデルの存在を決定することを含む方法によって証明され、ここで少なくとも2つのマイクロサテライト領域は、
− 表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在する、少なくとも2つのマイクロサテライト領域、または
− 表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するもの、および/または表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するものから選択される、少なくとも3つのマイクロサテライト領域であり、
ここで少なくとも1つのインデルの存在は、MSIの指標である。
したがって、癌細胞の感受性をスクリーニングする方法を提供するだけでなく、癌を有する対象の、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤による処置に対する感受性を診断する方法であって、以下のステップを含む方法が提供される:
− 対象から得た癌細胞の試料中のMSI状態を決定すること;
− MSI状態を、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤による処置に対する感受性と相関させること、ここで、MSIの存在は、処置に対する感受性の指標である。
任意に、これらの方法は、対象から癌細胞の試料を取得する追加のステップを含む(決定するステップの前に)。MSI状態を決定することは、典型的には得られた試料の細胞内で行われる。癌細胞の試料中のMSI状態の決定をin vitroで実施することが、特に想定される。
− 表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在する、少なくとも2つのマイクロサテライト領域、または
− 表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するもの、および/または表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するものから選択される、少なくとも3つのマイクロサテライト領域であり、
ここで少なくとも1つのインデルの存在は、MSIの指標である。
また、この側面による方法は、対象をDNA塩基除去修復酵素の阻害剤で処置するさらなるステップを含んでもよい(対象が、MSIの状態によって決定されるように、かかる処置に対して感受性である場合)。
したがって、必要とする対象においてMSIを有する癌を処置する方法であって:
− 癌におけるMSIの存在を証明すること;
− 対象に対して、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤を投与すること、
を含む前記方法が提供される。
癌は、対象に対して阻害剤を投与することによって処置することが想定される。前記方法は任意に、対象から癌細胞の試料を取得する追加のステップを含んでもよい(MSIを決定するステップ、およびMSIの存在を証明するステップの前に)。
− 表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在する、少なくとも2つのマイクロサテライト領域、または
− 表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するもの、および/または表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するものから選択される、少なくとも3つのマイクロサテライト領域であり、
ここで少なくとも1つのインデルの存在は、MSIの指標である。
さらなる特定の態様によれば、MSIの存在は、本明細書に記載のバイオマーカーパネルを使用して、すなわち、表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するもの、および表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するものから選択される、少なくとも8つのマイクロサテライト領域を含むバイオマーカーパネルを使用して証明される。
定義
本発明を特定の態様に関し特定の図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。請求項における任意の参照符号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。記載した図面は、概略的かつ非限定的である。図面において、いくつかの要素のサイズは誇張されている場合があり、説明目的のため縮尺通りには描かれていない。「含む」という用語は、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、他の要素またはステップを除外するものではない。単数名詞を参照するときに不定冠詞または定冠詞、例えば「a」または「an」、「the」が使用される場合、別のことが明確に述べられていない限り、これはその名詞の複数形を含む。
さらに、本明細書および特許請求の範囲において第1、第2、第3等の用語は、同様の要素を識別するために用いられ、必ずしも順次的または時間の順番を記述するためには用いられない。このように用いられる用語は適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される発明の態様は、本明細書で説明または図示した以外の他の順序で動作可能であることが、理解されるべきである。
本明細書で使用する用語「マイクロサテライト」または「マイクロサテライト領域」とは、少なくとも2つの反復単位から構成された、6塩基の最小の長さのモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタまたはヘキサヌクレオチド反復を指す。マイクロサテライトの特定のサブクラスは、ホモポリマーを含む。本明細書で使用する「ホモポリマー」は、少なくとも6塩基のモノヌクレオチド反復である、マイクロサテライト領域を意味する;換言すれば、DNAレベルで見る場合、少なくとも6つの連続したA、C、TまたはG残基のストレッチである。最も具体的には、マイクロサテライトを決定する場合、対象のゲノムDNA(または対象に存在する癌のゲノムDNA)を見る。
「単形マイクロサテライト」は、全ての個体、特に所与の集団の全ての個体が、同数の反復単位を共有するものである。これは、所与の集団の1%より多くが反復単位数についてヘテロ接合性を示すところのマイクロサテライトを指すのに用いられる「多型マイクロサテライト」とは対照的である。一例として、BAT26マーカーは、ヨーロッパ民族の99%以上において26のアデニンから構成され、一方この位置における異なるアデニン数のアレル(例えば15、20、22、23)は、25%までのアフリカ民族(アフリカ系アメリカ人含む)にみられる。したがって、BAT26は、ヨーロッパ人においては単形マイクロサテライトであり、アフリカ人においては多型マイクロサテライトである。
本明細書で使用する用語「リンチ症候群」とは、結腸または結腸直腸癌、ならびに子宮内膜、卵巣、胃、小腸、肝胆管、上部尿路、脳および皮膚癌を含む他の癌の高いリスクを有する、常染色体優性遺伝状態を指す。これらの癌のリスク増加は、DNAミスマッチ修復を損なう遺伝性突然変異に起因する。この状態の古い名前はHNPCCである。
PARP阻害剤の例としては、限定されないが、イニパリブ、オラパリブ、ルカパリブ、ベリパリブ、CEP9722、MK4827、BMN−673、および3−アミノベンズアミドが挙げられる。
ミスマッチ修復(MMR)欠損細胞で起こるDNA複製のエラーは、ミスマッチ変異として存続し、一定範囲の腫瘍の素因となる。ここでは、MMR欠損腫瘍から最初のゲノムを配列決定し、DNA複製エラーのバイアスのない評価を可能にした。突然変異率は、MMR熟達腫瘍と比較して急激に増加したことが観察された。挿入または欠失(インデル)の変異が最も頻繁に発生し、大部分はホモポリマーストレッチに限定され、一方単一塩基対置換は主にA:T>G:CおよびG:C>A:T転位から構成され、これらはより頻繁にインデルの近くに位置していた。置換率は体細胞インデルの近くでより高いので、これは、インデル変異がDNA複製中に変異原性部位として作用することを示唆している。ネガティブなクローン選択により、体細胞突然変異率は、ゲノムの残りの部分よりもエクソームにおいて低く、一方ポジティブな選択により、いくつかのエクソン変異は、いくつかのMMR欠損腫瘍において発生した。これらの反復変異は、正常な対応する組織において発現される遺伝子に特異的に影響を与え、これらがMMR欠損腫瘍の進行のドライバーを表すことを示唆した。
表1.16例のMMR欠損腫瘍試料について、5’および3’UTR領域中の最も一般的な反復インデル(16例の腫瘍試料の少なくとも4つに存在する)。後ろの2列は、ホモポリマーが、挿入または欠失によってそれぞれどの程度頻繁に影響を受けるかを示す。
重要なことには、また、エクソン領域のホモポリマーも、MMR欠損腫瘍においてインデルの影響をより頻繁に受けている。例えば例4で説明するように、これは配列の長さには基づかず、ポジティブなクローン選択による。したがって通常はより少なく反復的に変異するにも関わらず、これらの変異は、腫瘍進行のドライバーとなる可能性がある。エクソン領域のインデルに最も頻繁に影響される31の遺伝子のリストを、表2に提供する。
したがって、腫瘍のMSI状態を診断する方法であって、腫瘍DNAの試料中の少なくとも2つのマイクロサテライト領域中のインデルの存在を決定することを含み、ここで少なくとも2つのマイクロサテライト領域が、
− 表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在する、少なくとも2つのマイクロサテライト領域、または
− 表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するもの、および/または表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するものから選択される少なくとも3つのマイクロサテライト領域であり、
ここで少なくとも1つのインデルの存在が、MSIの指標である、前記方法が提供される。
特に、マイクロサテライト領域は、ホモポリマー領域である。これらは、表1または2に列挙されているホモポリマー領域と、最も特には同一である。
代替的に、表1の代わりに、マーカーを表4から、または表6から、または表8から選択することができる。表2の代わりに、マーカーを表5から、または表7から、または表8から選択することができる。
具体的な態様によれば、使用される少なくとも1つのマーカーは、以前に癌と関連されていなかった遺伝子、または以前にMMR欠損腫瘍に影響を受けることが知られていなかった遺伝子中における、エクソンマーカーである。したがって、表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するものから選択されるマイクロサテライト(単数または複数)は、次のリストから選択される遺伝子に存在する少なくとも1つのマイクロサテライトを含むことが想定される:SETD1B、RBMXL1、CCDC150、OR7E24、C15orf40、KIAA2018、LTN1、SLC22A9、CDH26、DDX27、EXOSC9、FAM111B、KIAA0182、KIAA1919、MIS18BP1、PRRT2、TMEM60、AQP7、ARV1、CCDC168、ELAVL3、F8、FETUB、HPS1、NBEAL1、P4HTM、PIGB、RBM43、RG9MTD1、SRPR、およびTMEM97。さらにより具体的な態様によれば、少なくとも1つのマイクロサテライトは、次のリストから選択される遺伝子に存在する:SETD1B、TMEM60、DDX27、EXOSC9、FAM111B、およびKIAA1919。代替的な態様によれば、SEC31A、CNOT2、RNF145、RNPC3、SLC35F5、TMBIM4、CD3G、DOCK3、MYO10およびPRRG1もまたこれらのリストで使用することができる。
表1および表2からとった56マーカーの選択からなるバイオマーカーパネルを設計した(例のセクションを参照)。特定の態様によれば、これらのマーカーは、MSI状態を診断するために使用される。これらの56のマーカーを、表3に列挙する。
非常に具体的な態様によれば、56マーカーパネルには、MSH6(エクソンインデル)および/またはSULF2(3’UTR欠失)からマイクロサテライトを補充することができる。
代替的な態様によれば、MSH6のインデルは評価されず、その理由はこれが既知のMMR欠損遺伝子だからである。MSH3もまたMMR欠損遺伝子として知られているが、この遺伝子の欠損は、一般的にMSIに関連付けられていない27。それにもかかわらず、特定の態様によれば、MSH3のインデルはマーカーとして使用されない。
実施例のセクションで詳述するように、追加のフィルタリングステップを、独自のゲノムデータベースの生殖細胞系のバリアントとして存在するマーカーを除く、表1のマーカーに適用することができる。これらはdbSNPまたは1000ゲノムのデータベースに存在しないことから、全て希少バリアントであることに留意すべきである。このマーカーのリストを、表4に示す(16例の腫瘍試料のうち4例における最小の反復)。
表5.追加のフィルタリングステップ後の、16例のMMR欠損腫瘍試料についてのエクソン領域中の最も一般的な反復インデル。
1つよりも多くのインデルにより反復的に影響を受けるエクソン領域を有する遺伝子も、マーカーとして特に想定される。したがって、具体的な態様によれば、CASP5、MIAT、TROVE2およびTSIXは、エクソンマーカーとして特に想定される;最も特に、CASP5およびTSIXが想定される。
想定されるUTRマーカーの別の特定のリストは、最初の11例の固体MMR欠損腫瘍において同定されたものである。このリストは表6に提供され、共通の反復インデルは、11試料中の少なくとも3つの試料で生じるものとして定義される。
表7.11例のMMR欠損腫瘍試料についてのエクソン中の最も一般的な反復インデル。後の3列は、遺伝子が癌センサス遺伝子(cancer census gene)であるかどうか、これが以前にMMR欠損腫瘍において影響を受けたことが報告されているかどうか、および遺伝子の変異が他の癌と関連することが知られているかどうかを示す。
表8.MMR欠損腫瘍試料についての5’および3’UTR領域およびエクソン中の反復インデル。
特に、いくつかの態様において、マーカーとして使用されるホモポリマーの長さは、15ヌクレオチド、14ヌクレオチド、13ヌクレオチド、12ヌクレオチド、さらには11ヌクレオチドを超えない。一方、特定の態様によれば、想定されるホモポリマーは、少なくとも6ヌクレオチド、少なくとも7ヌクレオチド、少なくとも8ヌクレオチド、少なくとも9ヌクレオチド、またはさらには少なくとも10ヌクレオチドの長さである。特定の具体的な態様によれば、少なくとも1つのマーカー(および使用される全てのマーカー)の長さは、7〜15ヌクレオチドの間、8〜15ヌクレオチドの間、8〜14ヌクレオチドの間、8〜13ヌクレオチドの間、9〜13ヌクレオチドの間、10〜13ヌクレオチドの間、8〜12ヌクレオチドの間、9〜12ヌクレオチドの間、8〜11ヌクレオチドの間、または9〜11ヌクレオチドの間である。
MSI状態を診断することは典型的には、MSIの存在を検出したか否かの結論を引き出すことを意味する(これはMSIの不在の検出と等価である)。典型的には、MSIの存在の検出は、調査中のマイクロサテライト領域内の1または2以上のインデルの検出に基づく。マイクロサテライト領域内にインデルを有する本明細書の表1〜3に示されたマーカー遺伝子の数が多いほど、腫瘍は、マイクロサテライト不安定性を特徴とする可能性が高い。
したがって、いくつかの特定の態様によれば、本明細書に提示されるように、腫瘍のMSI状態を診断する方法は、MSI状態に基づく(すなわち、腫瘍がMSI−H、MSI−LまたはMSSと見出されたかどうかに基づく)処置レジメンを選択するステップを、さらに含んでよい。
本方法の全ては、ゲノムのマイクロサテライト領域でのインデルの検出に依存する。インデルを検出するための、核酸試料の解析に頻繁に使用される方法論を簡単に説明するが、しかし、当分野で知られている任意の方法を本発明で用いて、インデルの存在を検出することができる。
一般にアレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション(ASO)と呼ばれるこの技術(例えば、Stoneking et al., Am. J. Hum. Genet. 48:70-382, 1991;Saiki et al., Nature 324, 163-166, 1986;EP 235,726;およびWO 89/11548)は、一塩基が異なる2つのDNA分子間の識別を、バリアントの1つに特異的なオリゴヌクレオチドプローブを、核酸試料の増幅から得られた増幅産物にハイブリダイズすることにより行うことに依存する。この方法は、典型的には、例えば15〜20塩基の短いオリゴヌクレオチドを用いる。プローブは、1つのバリアントに他とは差別的にハイブリダイズするように設計されている。かかるプローブを設計するための原則と指針は、当技術分野において、例えば本明細書に引用された参考文献に利用可能である。ハイブリダイゼーション条件は、アレル間のハイブリダイゼーション強度に有意差があるほどに十分ストリンジェントでなければならず、本質的にバイナリ応答を生成し、これによりプローブは、アレルの一方のみにハイブリダイズする。いくつかのプローブは、多型部位が中心位置とアラインメントするような様式で、標的DNAのセグメントにハイブリダイズするように設計されているが(例えば、15塩基のオリゴヌクレオチドの7位において;16塩基のオリゴヌクレオチドの8または9位において)、この設計は必須ではない。
アレルの量および/または存在は、試料にハイブリダイズするアレル特異的オリゴヌクレオチドの量を測定することによって決定される。典型的に、オリゴヌクレオチドは、蛍光標識などの標識で標識される。例えば、アレル特異的オリゴヌクレオチドは、異なるマイクロサテライト長さを有する配列を表す固定化されたオリゴヌクレオチドに適用される。ストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件の後、蛍光強度を、各マイクロサテライトオリゴヌクレオチドについて測定する。
ドットブロット形式においては、増幅された標的DNAを、例えば、ナイロン膜などの固体支持体上に固定化する。膜−標的複合体を適当なハイブリダイゼーション条件下で標識プローブとインキュベートし、ハイブリダイズしなかったプローブは、適切なストリンジェントな条件下で洗浄することによって除去し、膜を、結合したプローブの存在についてモニタリングする。
逆ドットブロット(またはラインブロット)形式においては、プローブを、ナイロン膜またはマイクロタイタープレートなどの固体支持体上に固定化する。標的DNAは、典型的には、標識プライマーの取り込みによる増幅中に標識される。プライマーの一方または両方を標識することができる。膜−プローブ複合体を適当なハイブリダイゼーション条件下で、標識され増幅された標的DNAとインキュベートし、ハイブリダイズしなかった標的DNAは、適切なストリンジェントな条件下で洗浄することによって除去し、膜を、結合した標的DNAの存在についてモニタリングする。逆ラインブロット検出アッセイは、実施例に記載されている。
インデルはまた、アレル特異的増幅法またはプライマー伸長法を用いて検出することができる。これらの反応は、典型的には、プライマーの3’末端のミスマッチを介して多型を特異的に標的とするように設計されたプライマーの使用を含む。ミスマッチの存在は、ポリメラーゼがエラー修正活性を欠いている場合に、プライマーを伸長するポリメラーゼの能力に影響を与える。例えば、アレル特異的増幅または伸長に基づく方法を用いてアレル配列を検出するために、マイクロサテライトの正常なアレル(すなわちインデルなし)に相補的なプライマーは、3’末端ヌクレオチドが、正しい数の反復を含む配列とハイブリダイズするように設計される。特定のアレルの存在は、伸長を開始するプライマーの能力によって決定することができる。3’末端がミスマッチの場合は、伸長は妨げられる。
いくつかの態様において、プライマーは、増幅反応において第2のプライマーと共に使用される。第2のプライマーは、マイクロサテライトとは無関係の部位にハイブリダイズする。増幅は、特定の対立形質の存在を表す検出可能な生成物をもたらす、2つのプライマーから進行する。アレル特異的増幅または伸長に基づく方法は、例えば、WO 93/22456;米国特許第5,137,806号;第5,595,890号;第5,639,611号;および第4,851,331号に記載されている。
代替のプローブレス法では、増幅された核酸は、反応混合物中の二本鎖DNAの総量の増加をモニターすることにより検出され、これは例えば、米国特許第5,994,056号;および欧州特許公開第487,218号および第512,334号に記載されている。二本鎖標的DNAの検出は、二本鎖DNAに結合した場合の、SYBR GreenなどのさまざまなDNA結合色素の蛍光の増加に依存する。
当業者が理解するように、アレル特異的増幅法は、特定のアレルを標的化するために、複数のアレル特異的プライマーを使用する反応において実施することができる。かかる多重用途のためのプライマーは、一般的に識別可能な標識で標識されるか、またはアレルから産生される増幅産物がサイズによって識別可能であるように選択される。したがって、単一試料中の両方のアレルが、増幅産物のゲル分析により単一の増幅を用いて同定することができる。
アレル特異的プローブの場合と同様に、アレル特異的オリゴヌクレオチドプライマーは、ハイブリダイズ領域における多型アレルの1つに厳密に相補的であってもよく、または、オリゴヌクレオチドの3’末端以外の位置でいくつかのミスマッチを有していてもよく、このミスマッチは、両方のアレルの配列中の非多型部位で生じる。
i)5’−ヌクレアーゼアッセイプローブ
遺伝子型決定はまた、「TaqMan(登録商標)」または「5’−ヌクレアーゼアッセイ」を用い、米国特許第5,210,015号;第5,487,972号;および第5,804,375号;およびHolland et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280に記載のようにして行うことができる。TaqMan(登録商標)アッセイでは、増幅された領域内でハイブリダイズする標識された検出プローブが、増幅反応中に添加される。プローブは修飾されて、プローブがDNA合成のプライマーとして作用するのを防止するようにされる。増幅は、5’−から3’−エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを用いて行われる。増幅の各合成ステップの間、伸長されたプライマーから下流の標的核酸にハイブリダイズする任意のプローブは、DNAポリメラーゼの5’−から3’−エキソヌクレアーゼ活性によって分解される。したがって、新しい標的鎖の合成はまた、プローブの分解をもたらし、分解産物の蓄積は標的配列の合成の測度を提供する。
分解産物の検出に適した任意の方法を、5’−ヌクレアーゼアッセイで使用することができる。多くの場合、検出プローブは2つの蛍光色素で標識され、そのうちの1つは、他の色素の蛍光を消光することができるものである。色素はプローブに付着され、通常、1つは5’末端に、他方は内部部位に付着し、プローブがハイブリダイズしていない状態にあるときに消光が起こるように、およびDNAポリメラーゼの5’−から3’−エキソヌクレアーゼ活性によるプローブの切断が2つの色素の間で起きるようにする。増幅により、色素の間でプローブの切断が起き、同時に消光の消失および、最初に消光された染料からの観察可能な蛍光の増加がもたらされる。分解産物の蓄積は、反応蛍光の増加を測定することによってモニターされる。米国特許第5,491,063号および第5,571,673号には、増幅と同時に起こるプローブの分解を検出するための代替方法が記載され、これらの両方は、参照により本明細書に組み込まれる。
二次構造変化の際に検出可能なプローブも、インデルを含む多型の検出に適している。例示の二次構造またはステムループ構造のプローブとしては、分子ビーコンまたはScorpion(登録商標)プライマー/プローブを含む。分子ビーコンプローブは、フルオロフォアおよびクエンチャーがオリゴヌクレオチドの反対側に通常配置された、ヘアピン構造を形成できる一本鎖オリゴ核酸プローブである。プローブの両端において、短い相補的な配列が分子内ステムの形成を可能にし、これがフルオロフォアとクエンチャーが近接することを可能にする。分子ビーコンのループ部分は、目的の標的核酸に対して相補的である。このプローブの目的の標的核酸への結合は、ステムを強制的に遠ざけるハイブリッドを形成する。これは、フルオロフォアとクエンチャーを互いに離すよう移動させるコンフォメーション変化を引き起こして、より強い蛍光シグナルをもたらす。分子ビーコンプローブはしかし、プローブ標的における小さな配列変化に高度に感受性である(Tyagi S. and Kramer F. R., Nature Biotechnology, Vol. 14, pages 303-308 (1996);Tyagi et al., Nature Biotechnology, Vol. 16, pages 49-53(1998);Piatek et al., Nature Biotechnology, Vol. 16, pages 359-363 (1998);Marras S. et al., Genetic Analysis: Biomolecular Engineering, Vol. 14, pages 151-156 (1999);Tpp I. et al, BioTechniques, Vol 28, pages 732-738 (2000))。Scorpion(登録商標)プライマー/プローブは、プライマーに共有結合で連結されたステムループ構造プローブを含む。
インデルはまた、直接的な配列決定によって検出することができる。方法としては、例えば、含まれるジデオキシ配列決定に基づく方法や、マクサム・ギルバート配列決定などの他の方法が挙げられる(例えば、上記Sambrook et al.を参照)。
他の検出方法としては、オリゴヌクレオチド長の産物のパイロシーケンシング(Pyrosequencing)(商標)を含む。かかる方法は多くの場合、PCRなどの増幅技術を用いる。例えば、パイロシーケンシングでは、配列決定プライマーを一本鎖PCR増幅のDNA鋳型にハイブリダイズさせ;酵素、DNAポリメラーゼ、ATPスルフリラーゼ、ルシフェラーゼおよびアピラーゼ、および基質、アデノシン5’ホスホ硫酸(APS)およびルシフェリンとともにインキュベートする。4種のデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の最初の1つを反応に添加する。DNAポリメラーゼは、デオキシヌクレオチド三リン酸のDNA鎖への取り込みを、もしこれが鋳型鎖中の塩基に相補的である場合に、触媒する。各取り込みイベントには、取り込まれたヌクレオチドの量に対して等モル量のピロリン酸(PPi)の放出が伴う。ATPスルフリラーゼは、アデノシン5’ホスホ硫酸の存在下でPPiをATPに定量的に変換する。このATPは、ATPの量に比例する量で可視光を生じさせるオキシルシフェリンへの、ルシフェリンのルシフェラーゼ媒介性の変換を駆動する。ルシフェラーゼ触媒反応において生成される光は、電荷結合素子(CCD)カメラによって検出され、パイログラム(Pyogram)(商標)におけるピークとして観察される。各光シグナルは、取り込まれたヌクレオチドの数に比例する。ヌクレオチド分解酵素であるアピラーゼは、取り込まれなかったdNTPおよび過剰ATPを継続的に分解する。分解が完了すると、別のdNTPが添加される。
インデルを特徴づけるための別の類似の方法は、完全なPCRの使用を必要としないが、一般には、調査されるヌクレオチドに相補的な、単一の蛍光標識されたジデオキシリボ核酸分子(ddNTP)によるプライマーの伸長のみを使用する。多型部位のヌクレオチドは、1つの塩基によって伸長され蛍光標識されたプライマーの検出によって、同定することができる(例えば、Kobayashi et al, Mol. Cell. Probes, 9:175-182, 1995)。
ポリメラーゼ連鎖反応を用いて生成された増幅産物は、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動を用いて分析することができる。異なるアレルは、溶液中のDNAの異なる配列依存性融解特性および電気泳動に基づいて特定することができる(例えばErlich, ed., PCR Technology, Principles and Applications for DNA Amplification, W. H. Freeman and Co, New York, 1992, Chapter 7を参照)。
マイクロサテライト多型の識別は、キャピラリー電気泳動を用いて行うことができる。キャピラリー電気泳動は、特定のマイクロサテライトアレルの反復数を、便利に同定することができる。キャピラリー電気泳動の、DNA多型解析への適用は、当業者に知られている(例えば、Szantai, et al, J Chromatogr A. (2005) 1079(1-2):41-9; Bjorheim and Ekstrom, Electrophoresis (2005) 26(13):2520-30およびMitchelson, Mol Biotechnol. (2003) 24(1):41-68を参照)。
標的配列のアレルは一本鎖高次構造多型解析を用いて識別することができ、これは、例えばOrita et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 86, 2766-2770 (1989)に記載のように、一本鎖PCR産物の電気泳動移動度の変化によって塩基の相違を識別する。増幅PCR産物は上述のように生成することができ、加熱または他の方法で変性されて、一本鎖増幅産物を形成する。一本鎖核酸は、リフォールディングまたは塩基配列に部分的に依存する二次構造を形成することができる。一本鎖増幅産物の異なる電気泳動移動度は、標的遺伝子のアレル間の塩基配列の相違に関連付けることができる。
融解曲線分析は、加熱時の二本鎖DNAの解離特性の評価である。温度が上昇すると二本鎖は解離し始め、吸光度の強度の上昇、濃色性につながる。DNAの50%が変性される温度は、融点として知られている(物理学で使用される用語の融点と混同しないこと)。DNAの二本鎖の間の塩基−塩基水素結合を破壊するのに必要なエネルギーは、それらの長さ、GC含量およびそれらの相補性に依存する。G−C塩基対が、それらの間に3つの水素結合を有し、一方A−T塩基対は2つのみの水素結合を有するという事実により、より高いGC含量を有するDNAは、AT含量が高いDNAよりも高い融解温度を有するであろう。二本鎖DNA配列を含有する反応混合物を加熱し、温度に対する解離を測定することによって、一塩基多型(SNP)の存在および同一性を決定することができる。
もともと、鎖解離はUV吸光度測定を用いて観察されたが、蛍光測定に基づく技術は、現在最も一般的なアプローチである。2つのDNA鎖の間の温度依存性解離は、SYBR Green、EvaGreenまたはフルオロフォア標識DNAプローブなどのDNAにインターカレートするフルオロフォアを用いて測定することができる。
インデル検出方法は、多くの場合、標識されたオリゴヌクレオチドを使用する。オリゴヌクレオチドは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段により検出可能な標識を組み込むことによって標識することができる。有用な標識には以下を含む:蛍光色素、放射性標識、例えば32P、電子密度試薬、酵素、例えばペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ、ビオチン、または抗血清もしくはモノクローナル抗体が利用可能なハプテンおよびタンパク質。標識技術は当技術分野で知られている(例えば上記Sambrook et al.参照)。
本明細書で提供されるマイクロサテライトインデルマーカーは、これらの技術のいずれかを、または他を用いて検出することができ、マーカーパネルは、使用する技術とは無関係である。しかしながら、インデルの存在の決定は、サンガー配列決定に基づく方法を介して行われないことが想定される。これはベセスダマーカーパネルを使用してマイクロサテライト不安定性を検出するプロセスが、通常、非常に面倒であると証明されたプロトコルであるサンガー配列決定を介して行われるためである。さらなる態様によれば、インデルの存在を、単一塩基対伸長法(例えば、Sequenom MassARRAYなど)、DNAハイブリダイゼーション技術(例えばTaqman)、融解曲線分析、または同様の技術によって決定することが、特に想定されている。
より少ないマーカーの使用も明示的に想定されるが、腫瘍試料中のMSIの決定に特に適したバイオマーカーパネルは、少なくとも8つのマーカー(マイクロサテライト領域)を含むバイオマーカーパネルである。かかるバイオマーカーパネルは、表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するもの、および表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するものから選択される、少なくとも8つのマイクロサテライト領域を含む。少なくとも8つのマーカーは、少なくとも10のマーカー、少なくとも12のマーカー、少なくとも16のマーカー、少なくとも20のマーカー、少なくとも25のマーカー、またはそれ以上であってよい。非常に特定の態様によれば、バイオマーカーパネルは、表3に列挙されたマイクロサテライト領域の少なくとも半分を含む。よりさらなる特定の態様によれば、バイオマーカーパネルは、表3に列挙された56マイクロサテライト領域によって表される。
さらに他の態様によれば、腫瘍試料中のMSIを決定するための、バイオマーカーパネル(表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するもの、および表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するものから選択される、少なくとも8つのマイクロサテライト領域)の遺伝子型を決定するためのツールを含むキットが提供される。最も具体的には、キットは、特に想定されるバイオマーカーパネル(単数または複数)に適合させることができる。具体的な態様によれば、キットはまた、マーカーのベセスダパネル、またはマーカーの拡張ベセスダパネルの遺伝子型を決定するためのツールを含むことができる。かかるキットは、マーカーとベセスダパネルの対照比較を行うのに特に適している。キットは、マーカーのベセスダパネルのサブセットのみ(例えば、全10の代わりに1〜5のマーカー)をとることも、想定される。かかるケースにおいて、BAT25およびBAT26マーカーは、これらが一般的に最も信頼できるとみなされるので、明示的に含まれることが想定される。言うまでもなくこのことは、本明細書に記載のMSIを診断する方法はさらに、拡張ベセスダマーカーパネルの1または2以上のマーカーの状態を決定するステップを含んでよいことを意味する(本明細書に記載のマーカーの使用に加えて)。
したがって、さらなる側面において、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤による処置に対する癌細胞の感受性をスクリーニングするための、癌細胞におけるMSI状態を決定することを含む、方法が提供される。特定の態様によれば、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤は、PARP阻害剤である。具体的な態様によれば、癌細胞は、以下のリスト:結腸直腸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、胃癌、白血病、およびリンチ症候群の腫瘍、から選択される癌からの癌細胞である。さらなる具体的な態様によれば、癌細胞は、標準療法に抵抗性の癌からのものである。かかる標準療法は、以下から選択されることが特に想定される:5−FU(5−フルオロウラシル、Efudex)、カルボプラチン、シスプラチン、または標的療法(特にEGFR(例えばゲフィチニブ、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ)に対する、またはBrafに対する標的療法)。これらの方法は、原理的にin vivoで、ex vivoでおよびin vitroで行うことができるが、特に、それらがin vitroで実施されることが想定される。
特定の態様によれば、癌細胞は対象から得た細胞であり、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤による処置に対する感受性のスクリーニングは、対象の処置をガイドするのに使用される。代替的な態様によれば、感受性のスクリーニングは、対象を臨床試験のために階層化または分類するのに使用される。
特定の態様によれば、MSIの存在は、本明細書に記載の方法によって、すなわち、腫瘍DNAの試料中の少なくとも2つのマイクロサテライト領域中のインデルの存在を決定することを含む方法によって証明され、ここで少なくとも2つのマイクロサテライト領域は、
− 表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在する、少なくとも2つのマイクロサテライト領域、または
− 表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するもの、および/または表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するものから選択される少なくとも3つのマイクロサテライト領域であり、
ここで少なくとも1つのインデルの存在は、MSIの指標である。
非常に具体的な態様によれば、方法はまた、相同組換え経路に関与する遺伝子の配列決定のステップを含んでいてもよい。
したがって、癌細胞の感受性をスクリーニングする方法を提供するだけでなく、癌を有する対象の、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤による処置に対する感受性を診断する方法であって、以下のステップ:
− 対象から得た癌細胞の試料中のMSI状態を決定すること;
− MSI状態を、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤による処置に対する感受性と相関させること、ここで、MSIの存在は、処置に対する感受性の指標である、
を含む方法が提供される。
特定の態様によれば、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤は、PARP阻害剤である。具体的な態様によれば、癌細胞は、以下のリスト:結腸直腸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、胃癌、白血病、およびリンチ症候群(またはリンチ症候群スペクトルの任意の他の腫瘍)の腫瘍、から選択される癌からのものである。特定の態様によれば、MSIの存在は、本明細書に記載の方法によって、すなわち、腫瘍DNAの試料中の少なくとも2つのマイクロサテライト領域中のインデルの存在を決定することを含む方法によって証明され、ここで少なくとも2つのマイクロサテライト領域は、
− 表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在する、少なくとも2つのマイクロサテライト領域、または
− 表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するもの、および/または表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するものから選択される少なくとも3つのマイクロサテライト領域であり、
ここで少なくとも1つのインデルの存在は、MSIの指標である。
また、この側面による方法は、対象をDNA塩基除去修復酵素の阻害剤で処置するさらなるステップを含んでもよいことが想定される(MSI状態によって決定されるように、対象がかかる処置に対して感受性である場合)。
したがって、必要とする対象において、MSI(または同等に、MMR欠損)を有する癌を処置する方法が提供され、該方法は、
− 癌におけるMSIの存在を証明すること;
− 対象に対する、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤の投与、
を含む。
癌は、対象に阻害剤を投与することによって処置されることが想定される。前記方法は任意に、対象から癌細胞の試料を得る追加のステップを有してもよい(MSIを決定し、MSIの存在を証明するステップの前に)。
特定の態様によれば、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤は、PARP阻害剤である。具体的な態様によれば、癌細胞は、以下のリスト:結腸直腸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、胃癌、白血病、およびリンチ症候群の腫瘍、から選択される癌からのものである。特定の態様によれば、MSIの存在は、本明細書に記載の方法によって、すなわち、腫瘍DNAの試料中の少なくとも2つのマイクロサテライト領域中のインデルの存在を決定することを含む方法によって証明され、ここで少なくとも2つのマイクロサテライト領域は、
− 表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在する、少なくとも2つのマイクロサテライト領域、または
− 表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するもの、および/または表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するものから選択される少なくとも3つのマイクロサテライト領域であり、
ここで少なくとも1つのインデルの存在は、MSIの指標である。
特定の態様、具体的な構成、ならびに材料および/または分子について、本発明による細胞および方法に対して本明細書で説明してきたが、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、形態および詳細におけるさまざまな変更または修正がなされ得ることが理解されるべきである。以下の実施例は、特定の態様をより良好に例示するために提供されており、これらは本出願を限定するものと考えるべきではない。本出願は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
例1.MMR欠損を有する子宮内膜腫瘍の全ゲノム配列決定
全ゲノム配列決定用のMMR欠損腫瘍を選択するために、MMRタンパク質(MLH1、MSH2およびMSH6)の免疫組織化学、拡張ベセスダパネルを用いたマイクロサテライト不安定性(MSI)の評価(Pinol et al., 2005)、およびMLH1プロモーターのメチル化プロファイリングを含む、標準的な診断テストを使用した。免疫組織化学およびMLH1プロモーターの高メチル化の結果を、表9の上の3行に示す。マイクロサテライト不安定性(MSI)状態の解析を、モノまたはジヌクレオチド反復配列(それぞれ2および8のマーカー)を含む10の異なる遺伝子座で、MSIの評価について国際的なガイドラインにより推奨されたパネル、すなわち改訂ベセスダパネル(Boland et al., 1998; Dietmaier et al., 1997)を使用して行った。PCR増幅は、2つのペンタプレックス(pentaplexes)で行った:マルチプレックスA(BAT25、BAT26、D5S346、D17S250、D2S123)およびマルチプレックスB(BAT40、D17S787、D18S58、D18S69、TGFβ−RII)。フォワードプライマーは、6−FAM、HEX、VICまたはTETで標識した。腫瘍および同じ患者の正常DNAからのアンプリコンは、ABI 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)上で解析した。腫瘍1は、8つの成功したマーカーのうち7つについて強く陽性であり、一方、他の2つの腫瘍は陰性であった。これは腫瘍1がMMR欠損であることを確認する。結果を、表10にまとめる。腫瘍試料についてのさらなる情報は、表11に含まれている。
陽性のMSI状態およびMSH6発現の不在を示す1例のMMR欠損EM腫瘍、および2例のMMR熟達EM腫瘍を選択した。Complete Genomics(登録商標)(CG)技術を用いて、腫瘍および対応する正常試料の高カバレッジの配列決定データを得(平均でそれぞれ95.2xおよび77.1x)、これを次に、以前に開発された、アノテーションおよびフィルタリングパイプラインを用いて解析した(Reumers et al., 2011)。MMR欠損腫瘍は、確認されたCGAtools(商標)calldiff法(http://cgatools.sourceforge.net)を用いて、他の腫瘍より有意に多くの新規な体細胞突然変異を含む(表12、calldiffを使った体細胞変異)、明確なハイパーミューテーターの表現型を示した。このアルゴリズムは、腫瘍−正常ペアなどの、同じ個体に由来する2つのゲノムの間の差を見つけるように設計されている。
全ての腫瘍は、Complete Genomics(CG)全ゲノム配列決定技術またはTruseqのエクソーム濃縮のいずれかを、イルミナシーケンステクノロジーと組み合わせて使用して、配列決定した。各腫瘍について、拡張ベセスダパネルを用いたマイクロサテライト不安定性(MSI)、MMRタンパク質(MLH1、MSH2およびMSH6)の標準免疫組織化学、およびMLH1プロモーターのメチル化状態が示されている。アスタリスク(*)は、腫瘍細胞の少数における、弱い陽性の核染色の存在を示す。
モデル生物および細胞株での研究は、MMRの欠損に起因する体細胞変異には、マイクロサテライト配列(6塩基の最小長さおよび少なくとも2つの反復単位のジ〜ヘキサヌクレオチド反復)およびホモポリマー(6塩基の最少長さのモノヌクレオチド反復)に影響を与える挿入/欠失(インデル)が主に関与することを明らかにした(Ellegren, 2004)。この仮説を試験するために、以下の定義を用いて、ゲノムを4つの異なるクラスに階層化した。
− マイクロサテライト領域:少なくとも2つの反復単位で構成され、6塩基の最小長さのジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、またはヘキサヌクレオチド反復。
− ホモポリマー領域:6塩基の最小長さのモノヌクレオチド反復。
− 短いホモポリマー領域:3、4または5塩基の長さのモノヌクレオチド反復。
− 非反復領域:ゲノムの残りの部分、すなわち、単純な反復配列の一部ではない全ての塩基。
これらの定義に従うゲノム領域を、配列ファイル(FASTA形式)をスキャンすることにより、「grepseq」ツール(http://code.google.com/p/grepseq/)を使用して決定した。全ゲノムレベルでは、全体の反復の組成は以下であった:マイクロサテライト(7.9%)、ホモポリマー(1.9%)、短いホモポリマー(19.8%)、および非反復領域(70.4%)。
さらに我々は、インデルが実際に、単一の塩基対置換よりも頻繁だったが(57.4%のインデルに対して42.6%の置換、図1b)、主にホモポリマーに影響し(81.3%)、マイクロサテライトには影響しない(図1c)ことを観察した。置換は、ホモポリマーまたはマイクロサテライトには選択的に影響しなかった(図1d)。変異は、イントロンにおいて、ゲノムの他の部分と同様に頻繁に発生したが、エクソンでは明らかに少なかった(5’および3’非翻訳領域(UTR)を除く)。インデルでは、この減少は、置換の場合よりも顕著であった(74.7%対14.3%;図1e、f)。エクソン、遺伝子間およびイントロン領域におけるホモポリマーの数またはホモポリマーの長さの補正により、この減少が、より少ないまたはより短いホモポリマーに帰することができなかったことを確認した。ほとんどのエクソンインデルは、ヘテロ接合性フレームシフト変異をもたらし(160のフレームシフトインデル対3つの非フレームシフトインデル)、それらがネガティブなクローン選択を受ける機能喪失型突然変異であることを示唆した。
UV光誘発性黒色腫における体細胞置換を評価する研究(Pleasance et al., 2010a)、およびタバコの煙によって誘発される肺腺癌を評価する研究(Pleasance et al., 2010b)はそれぞれ、G:C>A:T転位およびG:C>T:A転換がこれらの腫瘍において頻繁に発生することを明らかにした。我々のハイパーミューテーターにおける体細胞置換を評価する場合、明らかに異なるパターン、すなわち、MMR熟達腫瘍における50.1%と比較して、全ての置換の71.5%がA:T>G:CおよびG:C>A:T転位であるパターンが観察された(図2a)。注目すべきことに、ハイパーミューテーターにおいて、G:C>A:T転位はCGジヌクレオチドの文脈において最も頻繁に発生し(ここでCは置換を受けており、Gは、次のヌクレオチドを表す)、一方A:T>G:C転位はジヌクレオチドの文脈からは独立して発生し、MMR熟達腫瘍におけるよりも頻繁であった(図2b−c)。
次に、ハイパーミューテーターにおける体細胞インデルパターンを評価した。予想されるように、インデルの大部分はホモポリマーに位置していたので、単純な反復とインデル頻度との間に強い相関が観察された(図2g)。ほとんど全てのインデルは、AまたはTホモポリマーに影響を与えたが(94.0%;図2h)、ホモポリマーの92.2%はAまたはTの塩基から構成されているため、CまたはGホモポリマーは等しくインデルを蓄積しやすいようである。さらに、96.4%までのインデルは、1または2bpのフレームシフトから構成されていたため(図2i)、MSH6が1または2bpのインデルの修復に主に関与していることが確認された。欠失は、挿入よりもわずかに頻度が少なかった(47.7%対52.3%;P<10E−6)。全ての体細胞置換について最も近い体細胞インデルまでの距離を計算すると、置換およびインデルのランダムな分布に基づく予想よりもそれぞれ3.8および3.4倍高い頻度で、<5または<10bpの距離内に位置していた(図2j)。同様に、kataegis(体細胞ストーム)の証拠はなかったが(Nik-Zainal et al., 2012)、体細胞置換は、ランダムモデリングによる予測よりも7.6倍頻繁にクラスター化された(図2k)。置換の同じクラスタリングは、全体的により低い頻度ではあるがMMR熟達腫瘍でも観察され(示されず)、これらのクラスターの発生がMMRによって抑制されることを示唆した。注目すべきことに、これらの観察は、置換の数が他の置換およびインデルの近くで上昇している真核生物ゲノムと類似である(McDonald et al., 2011; Tian et al., 2008)。
我々は、MLH1、MSH2またはMSH6のいずれかが存在しないことを特徴とする追加の10例のMMR欠損EMおよびCRC腫瘍、ならびに4例のMMR熟達腫瘍を選択した(表9、表13)。したがって、11例の子宮内膜腫瘍(EM)およびそれらの対応する生殖細胞系試料と、3例の結腸直腸腫瘍(CRC)およびそれらの対応する生殖細胞系のペアを含む合計14の腫瘍−正常ペアを、エクソーム配列決定のために採取した。全ての腫瘍は、原発性で化学療法未処置の腫瘍であった。腫瘍DNAは、新鮮凍結腫瘍組織から抽出し、一方これらの試料についての対応する生殖細胞系DNAは、末梢白血球から抽出した。これらの試料についての詳細な臨床情報を表13に示す。さらに、MMR欠損の5例の原発性子宮内膜腫瘍細胞株を解析に含めて、合計16例のMMR欠損腫瘍試料となるようにした。
下記の表14および15は、配列決定された子宮内膜腫瘍および結腸腫瘍に対して実施された、MSI決定の標準的な診断テストの結果を記載する(MMR遺伝子MLH1、MSH2およびMSH6の免疫組織化学;MLH1プロモーター領域の過剰メチル化状態;8ヌクレオチドおよび2モノヌクレオチド反復マーカーの拡張ベセスダパネルを使用したマイクロサテライト不安定性)。免疫組織化学実験において、アスタリスク(*)は、少数の腫瘍細胞における弱い陽性核染色を示す。MMR欠損状態の分類は、主要なMMRタンパク質(MLH1、MSH2およびMSH6)の免疫組織化学を用いて行った。これらのタンパク質のいずれかが、腫瘍細胞の核内に存在しなかった場合には、腫瘍はMMR欠損として(MMR−)、それ以外はMMR熟達(MMR+)として分類した。
表15.拡張ベセスダパネルのデータ
独立した配列決定技術を使用した(イルミナ(Illumina)(登録商標))、腫瘍および対応する生殖細胞系DNAのエクソーム配列決定により、各MMR欠損腫瘍が平均して1,497の体細胞イベントを含み、これに対してMMR熟達腫瘍は39であることが明らかになった(38.9倍の増加;図3a)。MMR欠損腫瘍においては、これらの大多数(78.4%)は置換を表し(図3b)、そのほとんどはA:T>G:CおよびG:C>A:T転位であった(81.5%)。残りの変異は体細胞インデルを表し、これはホモポリマーにおいて高度に濃縮されていた(55.9%)。
簡潔に述べると、エクソームをイルミナのTruSeq Exome Enrichment Kit(8 rxns)を使用して捕獲し、濃縮後、濃縮されたライブラリーをイルミナ配列決定(HiSeq2000)に供した。ペアエンド配列決定(2x75bp)はTruSeq SBSキットを用いて行った。BWAを用いて、各配列決定レーン(fastq形式)からの生のリードを、デフォルトパラメータを用いてヒト参照ゲノム(NCBI37/ hg19)にアラインメントさせた。アラインメントさせたリードを処理し、SAMtools(v.0.1.13)でソートし、PCR重複をPicard MarkDuplicates(http://picard.sourceforge.net、V1.32)で除外した。塩基の再校正、インデルの周りの局所的再アラインメント、および単一ヌクレオチドバリアントコールを、GenomeAnalysisToolKit(GATK v1.0.4487)を用いて行った。さらに、体細胞変異リストから全ての一般的なバリアントをフィルタリングした。これは各種のデータトラックを用いて行い、これをBEDTools(Quinlan and Hall, 2010)のintersectBedコマンドを使用してバリアントリストに適用した。体細胞置換およびインデルは、Sequenom MassARRAY遺伝子型決定を使用して検証した。品質フィルタリングおよび検証後の全体的な変異データを、表16に示す。
同様に、MLH1またはMSH2欠損に応じた変異パターンの階層化は、明らかな違いを明らかにすることができなかった。特に、インデルはマイクロサテライトにやや多いことを観察したが(12.0%および11.2%対過剰突然変異子のエクソームにおいて5.4%)、ホモポリマーは依然として最も頻繁に影響を受け(図3e)、MLH1またはMSH2欠損腫瘍のインデルは、マイクロサテライトよりホモポリマーに優先的に影響を与えることを確認した。
4.1 反復的に影響を受けるホモポリマーの解析(ホットスポット変異)
MMR欠損腫瘍のエクソームで観察された変異頻度は、ネガティブな選択の証拠を明らかにしたが、いくつかの変異はポジティブな選択を受ける可能性がある。かかる変異は、ホットスポット(反復)突然変異として現れる可能性が高い。したがって我々は、何個のホモポリマーがMMR欠損腫瘍において反復的に影響を受けたかを評価した。そこで10のMMR欠損エクソームを、ハイパーミューテーターの全ゲノムから抽出したエクソームと共に、反復置換およびインデルの存在について解析した。2セットの反復変異が生成された:11例の腫瘍のうち少なくとも3例、または少なくとも4例における反復置換またはインデルについてのデータ。
ホットスポット変異は、11例のMMR欠損腫瘍において検出された。3(4)以上の試料で反復する変異についてのバリアントリストを生成した。我々は最初に、これらのホットスポット変異が配列決定エラーを表すという事実を除外することを目的とした。ホットスポット変異が偽陽性である可能性が存在しており、なぜならばこれらは、腫瘍における系統的な偽陽性のバリアントコール、または正常試料における系統的な偽陰性のコールのいずれかによって、発生可能だからである。そこで、追加のフィルタリングステップを実施した。特に、我々は、11の子宮内膜正常エクソームと3つの結腸直腸の正常エクソームのそれぞれにおいて、同定された全てのバリアントを収集した。これらのエクソームの少なくとも1つにおいて生殖細胞バリアントとしても存在していた各ホットスポット変異は系統誤差と考えられ、これをデータセットから除外した。これにより反復置換の大幅な減少をもたらし、一方反復インデルへの影響は非常に限定された(表17)。
MMR欠損腫瘍において、インデルは主にホモポリマーに限られていたため、解析はホモポリマー領域に反復的に影響を与えるインデルに限定した。我々は、11例のMMR欠損腫瘍のそれぞれにおいて、全て30,111のイルミナTruSeq捕獲のエクソンホモポリマーをスクリーニングした。表18は、MMR欠損腫瘍において反復的に影響を受けたホモポリマーの数を示す。
11例の腫瘍のうち少なくとも4例において影響を受けた44のホモポリマーのうち、21、18、1および4はそれぞれ、A、T、GまたはCのストレッチから成る。11例の腫瘍のうち少なくとも3例において影響を受けた82のホモポリマーのうち、34、31、7および10は、それぞれ、A、T、GまたはCのストレッチから成る(示されず)。反復的に影響を受けたホモポリマーの長さは、7ヌクレオチドから25ヌクレオチドまで変化した。しかし、11回のうち少なくとも3回影響を受けた、長さ7〜11ヌクレオチドのホモポリマーに対する強いバイアスを、観測することができる(示されず)。
MMR欠損腫瘍において、反復インデルがポジティブな選択の結果として発生するのか、増加したインデル頻度の結果としてランダムに発生するのかを評価するために、ハイパーミューテーターにおいて観察された全ゲノムのインデル頻度に基づいて、反復インデル数の予想値を算出した。複製中のポリメラーゼ滑りは長いホモポリマーで発生しやすいので、インデル変異は、長さの増加したホモポリマーに対してより容易に影響を与えることが予想される。したがって、エクソンのホモポリマーの大部分を表す6〜11塩基の間の各ホモポリマーについて、予想頻度(fe,ゲノム)を算出した(99.7%、図4a)。
表20.
したがって、3つの腫瘍において影響を受けるホモポリマーの予想確率は次のように計算される:
fe、3つで反復=(fe,ゲノム)3
4つの腫瘍において影響を受けるインデルについては:
fe、4つで反復=(fe,ゲノム)4
それぞれ、3および4の腫瘍における反復インデルの予想数を算出するには、予想頻度に、エクソーム中のホモポリマーの数と、11試料のうちのそれぞれ3および4試料を取り出し得る方法の数(すなわち、組み合わせの数C(3,11)およびC(4,11))を乗じる。したがって、11の腫瘍における予想反復インデルの数は、次のように計算される:
N3つで反復=C(3,11)*Nホモポリマー*fe、3つで反復
N4つで反復=C(4,11)*Nホモポリマー*fe、4つで反復
表21.11の腫瘍のうち3つで反復するホモポリマー中の予想および観察されたインデル
表22.11の腫瘍のうち4つで反復するホモポリマー中の予想および観察されたインデル
全体として、30,111のホモポリマーのうち1,238は1度影響を受け、一方173のホモポリマーは2度影響を受けた。さらに、82のホモポリマーは、少なくとも3例の腫瘍において同一インデルの影響を受けた。これらのうち、4または5例の腫瘍中に27および8のホモポリマーが存在し、6例の腫瘍には5つのホモポリマーが存在した(表7および表23)。対照的に、2例以上のMMR欠損腫瘍中には、単一の置換(KRAS中のG13D)のみが同定された。
表23.11例のMMR欠損腫瘍うち少なくとも3例においてインデルに影響される遺伝子。
5’および3’UTRは遺伝子発現を決定する上で非常に重要であるので、これらの領域における突然変異も評価した。特に、MMR欠損腫瘍からのエクソームデータを用いて、これらの領域の83.9%および91.9%までを、信頼性高く評価することができた。
5.1 調節領域における反復インデル
5’UTRおよび3’UTR領域のいずれかが反復変異により影響を受けたかどうかを評価するために、10例のMMR欠損腫瘍の、エクソームを捕獲した5’UTRおよび3’UTRに位置する、それぞれ5,367および59,259のホモポリマーをスクリーニングした。これらのホモポリマーはまた、全ゲノム配列決定したハイパーミューテーター試料の5’UTRおよび3’UTRにおいてもスクリーニングし、この時、5’UTRおよび3’UTRをスクリーニングすることができる腫瘍の総数が、11例のMMR欠損腫瘍であるようにした。11例のMMR欠損腫瘍試料の少なくとも1つにおいて生殖細胞系バリアントとしても存在していた各ホットスポット変異は除外した。
対照的に、反復置換は非常に稀であった:3つの反復置換が、11例の腫瘍のうち少なくとも4例において、また18の反復置換が、11例の腫瘍のうち少なくとも3例において見出され、一方、5’UTR領域においては、1つの反復置換が3例の試料中に観察され、4または5例以上の試料中には置換は見られなかった。
5’および3’UTR領域の反復インデルが、ポジティブなクローン選択に起因するのか、または単にホモポリマー含量によって起こるのかを評価するために、ホモポリマーの長さの分布を、それらのエクソン、5’UTRおよび3’UTRにおける位置の関数として評価した。3’UTRにはさらに多くのホモポリマーが、5’UTRにはさらに少ないホモポリマーが存在することを観察した。3’UTRのホモポリマーも、エクソームにおけるよりも長かった。例えば、エクソームは、長さが<9ヌクレオチドの29,733(98.7%)のホモポリマーを含み、一方5’UTRおよび3’UTRは、長さが<9ヌクレオチドのホモポリマーを、それぞれ4,857(90.5%)および49,769(84.0%)含む。3’UTRにはエクソームにおけるよりも長さの短い(6または7)のホモポリマーが多いにも関わらず(示されず)、3’UTRとエクソームにおいて影響を受けたホモポリマーの数は、多かれ少なかれ等しかった(示されず)。3’UTRには、多くのインデルが長いホモポリマー(ずなわち、長さ9、10、11、≧12塩基対)に位置していた。
エクソームにおいて反復的に影響を受ける長さ<9のホモポリマーの割合の増加が、異なる領域におけるホモポリマーの長さ分布の全体的な違いによるものではないことを確認するために、長さ<9のホモポリマー中のインデルの頻度(すなわち、影響を受けたホモポリマーの割合)を、異なる領域におけるこれらのホモポリマーの全体的発生について補正した。補正割合は、次のように計算される:
表24.長さの関数としてのホモポリマーの分布
我々は反復変異が、腫瘍の成長に有利であるためにポジティブな選択にリンクされているという仮説を立てているので、これらの反復変異の影響を受けた遺伝子は、少なくとも正常な子宮内膜組織で発現されるべきである。また、これらの遺伝子の少なくともサブセットが、他のミスマッチ修復欠損腫瘍において見出される可能性があり、またホットスポット変異は、影響を受けた遺伝子の発現を変化させることが予想される。したがって我々は、子宮内膜特異的発現の文脈および結腸直腸MMR欠損腫瘍において差別的に発現される遺伝子の文脈の両方で、反復変異によって影響された遺伝子の発現プロファイルを解析した。
正常な子宮内膜組織での遺伝子の発現データを、Gene Expression Atlas23(http://www.ebi.ac.uk/gxa/)から「all genes over/under/non-differentially expressed in Homo sapiens, endometrium」のクエリを使用してダウンロードした。このクエリにより14,664の遺伝子が得られ、そのうち9,021は正常な子宮内膜で過剰発現され、463は過少発現され、および5,180には差別的発現を示さなかった。過剰および過少発現は、異なる組織タイプにわたる一般的な遺伝子発現プロファイルに対して算出したので、過小発現遺伝子が効果的に存在しない(発現されない)のか、または単に低いレベルで発現されただけなのかどうかを評価することは困難である。しかし、子宮内膜組織において顕著に過剰発現された遺伝子については、これらが正常な子宮内膜内で少なくともある役割を果たしていると、安全に主張することができる。したがって、この解析においては、正常な子宮内膜で過剰発現された遺伝子のみに限定した。
異なるデータセットからの変異を、誘導された発現データと比較した:MMR熟達腫瘍において変異した全ての遺伝子(MMR+遺伝子)、MMR欠損腫瘍において変異した全ての遺伝子(MMR−遺伝子)、MMR欠損腫瘍において反復的に影響を受けた全ての遺伝子(11試料中の3として定義、反復遺伝子)、およびエクソン領域における全ての反復インデル(反復エクソン)。この解析は、反復(ホットスポット)変異が、正常な子宮内膜組織で過剰発現された遺伝子に過剰出現していることを示した。これらの解析のための完全なデータを表25に示す。
マイクロサテライト不安定(MSI−H)およびマイクロサテライト安定(MSS)な結腸直腸癌の間で差別的に発現した遺伝子は、Banerjea et al22からのものである。この研究において、133例の結腸直腸腫瘍を解析し、29(22%)の腫瘍はMSI−Hとして同定された。遺伝子発現データは、Affymetrix HG-U133Aチップからのものである。得られたデータセットは、マイクロサテライト不安定および安定な癌の間で差別的に発現する、4,874の遺伝子を含む((P<0.05、BenjaminiおよびHochbergの偽発見率))。
異なるデータセットからの変異を、得られた発現データと比較した:MMR熟達腫瘍において変異した全ての遺伝子(MMR+遺伝子)、MMR欠損腫瘍において変異した全ての遺伝子(MMR−遺伝子)、およびMMR欠損腫瘍において反復的に影響を受けた全ての遺伝子(11試料中の3として定義、反復遺伝子)、およびエクソン領域における全ての反復インデル(反復エクソン)。この解析は、ホットスポット変異が、マイクロサテライト不安定な腫瘍で差別的に発現されたセット遺伝子の間で濃縮されたことを明らかにした。
Gene Expression Atlas(Kapushesky et al., 2010)から公的に入手可能な発現データを使用して、少なくとも3例のMMR欠損腫瘍において同一の変異(以下、ホットスポット変異と呼ぶ)によって影響を受ける遺伝子が、正常なEM組織で発現されたかどうかを評価する。MMR熟達およびMMR欠損腫瘍において変異した全ての遺伝子のうち、58%および64%がEM組織で発現され、これをホットスポット変異の影響を受けた遺伝子の88%と比較した(表25)。同様のデータが、正常な粘膜組織について得られた(示されず)。さらに、MMR欠損対MMR熟達腫瘍の間の発現の差異を評価すると(Banerjea et al., 2004)、非ホットスポット変異により影響を受けた遺伝子の20%対、ホットスポット変異により影響を受けた遺伝子の32%が、差別的に発現されたことを観察した。したがって、ホットスポット変異は、正常組織において発現される遺伝子に優先的に影響を与えてそれらの発現を変化させており、ホットスポット変異が腫瘍におけるポジティブなクローン選択に起因することを示す。
8つのマイクロサテライトマーカーおよび2つのホモポリマーマーカーから構成される拡張ベセスダパネルは、現在、MSIをMMR欠損のマーカーとして診断的に評価するために使用されている9,15。これらのマーカーは、それらがMMR(−)腫瘍に影響を与える相対的な頻度に基づいて選択されていないので、このパネルは、時にはMMR(−)腫瘍の検出に失敗する24。そこで、反復変異がMSIの検出を改善することができるかどうかを評価した。
マイクロサテライト不安定性の検出に現在使用されている診断パネルの向上が可能であると考えられる、2つの基準がある。まず第1に、我々は、MMR欠損腫瘍における反復変異を、バイアスのない方法で決定した:これは、全ゲノムおよびエクソームの配列決定実験を行い、どの位置が反復的に影響を受けたかを単純に観察することによる。バイアスのない方法での検出は、最も頻繁なホットスポット変異が、MSIを検出するために最も感受性であることを示唆する。第2に、我々が同定した反復インデルの大部分は、3’UTRに位置していた。5’および3’UTRの反復インデルは、ストリンジェントなポジティブな選択を受けず、影響を受けたホモポリマーの長さによって主に決定され、組織特異的な濃縮が起こるとは考えにくい。これらの2つの基準は、i)それらの機能についての事前知識なしに、複数の腫瘍試料中で反復的に影響を受けているマーカーを選択したこと、ii)癌タイプに依存しない可能性が高い多数のマーカーを有すること、を保証する。後者については、5’および3’UTRから選択されたインデルが、最も有用であり得る。
最も高い感受性を得るために、4または5以上の試料中で生じる変異のみを使用した。5’および3’UTR反復インデルについては、優先度は、5または6以上の試料に影響を与えるインデルに与えられた。得られた44の反復エクソンインデル、1,142の反復3’UTRインデルおよび50の反復5’UTRインデルを用いて、MMR欠損を検出するためのSequqnomに基づくパネルを設計した。反復インデルはホモポリマー領域内に位置していたことから、SequqnomのマルチプレックスPCRのプライマー設計は複雑であった。大規模な最適化実験の後、56のホットスポット変異の遺伝子型を決定した6つのアッセイを、成功して生成した。56のホットスポット変異のうち、11個はエクソンに、40個は3’UTRに、および5個は5’UTRにそれぞれ位置していた。このパネルを、56マーカーパネルと呼ぶ。これら56の変異の完全な詳細を表3に示す。
次に、56マーカーパネルを、114例の未選択の外科的に切除された子宮内膜腫瘍の追加の系列(これは、7例の明細胞癌、69例の類内膜癌、18例の漿液性/類内膜癌の混合、10例の漿液性癌および10例の未分類の子宮内膜癌からなる)に適用した。全ての腫瘍は、原発性化学療法未処置の子宮内膜腫瘍であった。新鮮凍結組織が、これらの腫瘍の各々に対して利用可能であった。選択されたマーカーの遺伝子型判定成功率は高かった(平均98.7%)。1試料の陽性マーカーの数は0から33の間で変化し、全体平均で試料当たり6.5の陽性マーカーであった。ベセスダパネルと同様に、マイクロサテライト不安定性の3つのカテゴリーを定義した:マイクロサテライト安定(MSS、ベセスダにおいて10マーカーのうち0、56マーカーパネルにおいて56マーカーのうち0または1)、低マイクロサテライト不安定性(MSI−L、ベセスダパネルにおいて10マーカーのうち1〜2、56マーカーパネルにおいて2〜9マーカー)、および高マイクロサテライト不安定性(MSI−H、ベセスダにおいて10マーカーのうち3または4以上、56マーカーパネルにおいて56のうち10または11以上)。56マーカーパネルのこれらのカテゴリーに基づいて、65例の腫瘍(57.0%)はMSSとして定義され、33例の腫瘍(29.0%)および16例の腫瘍(14.0%)は、それぞれMSI−HおよびMSI−Lとして定義される。これらの33例のMSI−H腫瘍のうち、ベセスダでは、29例の腫瘍がMSI−H(>2のマーカーが陽性)、3例の腫瘍がMSI−L、および1例の腫瘍がMSSと識別された。逆に、ベセスダは、ホットスポット変異の我々のパネルで識別されなかったどのMSI−H腫瘍も、識別できなかった(図5に示すように)。この結果は、56マーカーパネルが、子宮内膜腫瘍のこの系列について、ベセスダパネルより優れていることを示す。結腸直腸腫瘍におけるデータもこれに匹敵する(示されず)。
56マーカーパネルをさらに、他の腫瘍タイプに適用した(卵巣腫瘍および白血病)。4例のMSI−H試料を選択し、これは、1例の卵巣腫瘍および3例の白血病細胞株試料(DND41、CCRF−CEMおよびSUPT1)を含む。MMR欠損子宮内膜/結腸直腸腫瘍における我々の観察が、他の腫瘍タイプに拡張可能であるかどうかを評価するために、MSI−H卵巣腫瘍、MSSと検出された2例の卵巣腫瘍、およびその対応する正常試料、ならびに3例のMSI−H白血病細胞株および1例のMSS白血病細胞株(RPMI−8402)を配列決定した。
3つの卵巣腫瘍−正常ペアは、手術中に収集された原発性化学療法未処置の腫瘍であった。MMR欠損卵巣腫瘍(MMR−卵巣1)とその対応する正常DNAを、イルミナのTruSeqキャプチャを使用して配列決定した。前述と同じ解析パイプラインを、これらのエクソームデータの解析のために使用した。2つのMMR+卵巣腫瘍(MMR+卵巣1および2)とそれらの対応する正常試料のエクソームデータを、既存の全ゲノムデータから抽出した。具体的には、両方のMMR熟達腫瘍−正常のペアは、別のプロジェクトからすでに入手可能であり、Complete Genomicsを用いて配列決定した。全ゲノム配列データは、European Genome-Phenome Archiveに、アクセッション番号EGAS00001000158として寄託した。本明細書の前の例において記載されたものと同じ解析を、これらのゲノムに使用した。
表27.卵巣および白血病の腫瘍についての臨床情報
上述のように、4例の白血病細胞株のエクソームを、イルミナHiSeq技術を用いて配列決定した。これらの細胞株に対して使用可能な、対応する正常なDNA試料がないため、体細胞または生殖細胞系の変異は識別できなかった。しかし、前述した一般的なバリアントフィルタリングパイプラインを使用して、最も頻繁に発生するバリアントを除外することができた。MMR欠損腫瘍において以前に観察されたように、インデルは主にMMR欠損白血病試料のホモポリマーに位置していた。一方、MMR熟達試料は、このパターンを示さなかった(示されず)。
置換について、MMR欠損とMMR熟達の試料のパターンは非常に類似していた(示されず)。特に、これらのパターンは、置換の大部分が反復領域内に位置しないことを明らかにした。子宮内膜/結腸直腸MMR欠損腫瘍におけるように、MMR欠損試料中の置換は、主に転位で構成されていた(73.0%対、転換27.0%)。
エクソーム配列決定により同定した最も頻度の高い56のホットスポット変異を選択した:45はUTRにあり、これらはクローン選択を受けにくいため、異なる組織タイプの腫瘍においてMSIを検出でき、11はコード領域にあった。114例の外科的に切除されたEM腫瘍の、これら56の変異についての遺伝子型決定では、33例(29.0%)の腫瘍は≧10のマーカーについて陽性であり(MSI−高またはMSI−H)、16例(14.0%)の腫瘍は2~9個のマーカーについて陽性である(MSI−低またはMSI−L)ことが明らかになった。残りの65例(57.0%)の腫瘍は<2のマーカーについて陽性であり、マイクロサテライト安定(MSS)の腫瘍であった(図5)。33例のMSI−H腫瘍のうち、ベセスダは、29例の腫瘍のみをMSI−Hと同定した(>2のマーカーが陽性)。4例の不一致の腫瘍は、MSH6にフレームシフト変異を含むか、または組織病理でMSH6欠損であり、これにより、これらがMSI−Hであることが確認された。逆にベセスダは、我々のホットスポット変異パネルで同定されなかったいずれのMSI−H腫瘍も、同定できなかった。
MMR欠損腫瘍におけるホットスポット変異の生物学的関連性を探求するために、2種類のツール、すなわちIPA(登録商標)およびGenomeMuSiCを用いて、経路解析を行った。これら2つのツールは、4つの異なる経路データベース、すなわちIPA、KEGG、BioCartaおよびReactomeデータベースを使用する。複数のツールおよびデータベースの使用により、影響を受けた経路の詳細な印象を得ることが可能となった。
8.1. IPA(登録商標)およびGenomeMuSiCを用いた経路解析
Ingenuity Pathway Analysis(IPA(登録商標)、http://www.ingenuity.com/)は、目的の遺伝子に最も関連する生物学的経路の同定を可能にする。IPA(登録商標)を用いた、体細胞インデルを有する全ての遺伝子の経路解析により(MMR遺伝子のインデルを除く、2,231の遺伝子中の3,022のインデル、なぜならば、MMR欠損に起因する二次変異に興味があったため)、24の経路が大幅に濃縮されていることを明らかにした(P<0.05)(示されず)。「DNA損傷応答におけるBRCA1の役割」および「相同組換え(HR)によるDNA二本鎖切断(DSB)修復」が、それぞれトップ1位および3位にランクされた。目的の遺伝子のリストをホットスポット変異を有する遺伝子のみに限定すると(452遺伝子中の1,382のインデル)、13の顕著に濃縮された経路が、表29に示すように明らかにされた。「DNA損傷応答におけるBRCA1の役割」および「G2/M DNAチェックポイント制御」経路は、それぞれトップ1位および2位にランクされた。
同様の解析を、GenomeMuSiC(http://gmt.genome.wustl.edu/genome-music/0.3/index.html)を使用して、(MMR遺伝子上の全てのインデルを除く)全ての体細胞インデルを入力として用いて行った。GenomeMuSiCを使用した、MMR欠損腫瘍における全ての体細胞インデル(2,231の遺伝子の3,022インデル、MMR遺伝子のインデルは除外)の経路解析により、51の顕著に変異した経路(FDR<0.05)が明らかになった。「DNA修復」、「塩基除去修復」および「G2/M DNA損傷チェックポイント」経路は最高位にランクされ、これによりIPA(登録商標)解析からの結果を確認した。
さらに、遺伝子が、エクソン/イントロン境界に位置するホモポリマーに影響を与えるインデルによっても不活性化されることが知られているため、全てのエクソンの25塩基対上流および下流の配列中に発生したインデルに対して、我々の変異コールを延長した。同じ変異コールおよびフィルタリングパイプラインを、先に記載のようにして実施した。我々は、1,700の追加のインデルをエクソン/イントロン境界で検出したが、これには、ATMのイントロン7のホモポリマーにおける欠失および、MRE11のイントロン4のホモポリマーにおける欠失、およびFANCD2のイントロン5のホモポリマーにおける挿入を含む。これら3つのインデルは、それぞれ7、5および1つの試料に影響を与える。エクソン領域における3,022のインデルと共に、全4,722の変異のGenomeMuSiC解析は、54の顕著に変異した経路(FDR<0.05)を明らかにした。エクソン/イントロン境界におけるインデルを含めることで、DNA DSB修復についてのさらに強力なシグナルが、最高に濃縮された経路として生成された。
全ての解析を考慮すると、HR経路によるDSB修復に関与する11の遺伝子が存在する。次の表30は、これらの遺伝子および、これらの遺伝子中に変異を有するMMR欠損腫瘍を示す。
MMR欠損腫瘍におけるインデルは、ポジティブまたはネガティブなクローン選択を受けることができるため、特定の経路が、これらの突然変異について濃縮されているかどうかを評価した。平均して、各MMR欠損腫瘍は309のインデルを含み、そのうち30はホットスポット変異であった。IPA(登録商標)を使用した、体細胞インデルに影響される全ての遺伝子(ただし、MMR遺伝子は、これらの遺伝子のインデルがMMR欠損の原因となっているので除外する)の経路解析は、「DNA損傷応答におけるBRCA1の役割」および「相同組換え(HR)によるDNA二本鎖切断(DSB)修復」が、最高に濃縮された経路であることを明らかにした(それぞれP=6.5E−03、およびP=1.1E−02)。全てのホットスポット変異のIPA(登録商標)解析は、「DNA損傷応答におけるBRCA1の役割」に加えて(P=2.0E−03)、「G2/M DNA損傷チェックポイント制御」経路も濃縮されていることを明らかにした(P=3.1E−03)。これらの経路で最も頻繁に変異する遺伝子としては、なかでも特に、ATR、BLM、BRCA1、CHEK1およびFANCMが挙げられる(それぞれ4、2、2、2、および2の変異;表30)。GenomeMuSiCを使用した、MMR欠損腫瘍における全てのインデルの経路解析では、バックグラウンド突然変異率について補正しつつ、KEGG、BioCartaまたはReactomeデータベースに基づいて特異的に変異している経路を計算し、これにより、それぞれ「DNA修復」、「塩基切断修復」および「G2/M DNA損傷チェックポイント」経路が最高位にランクされた(それぞれP=6.3E−05、P=3.1E−04、およびP=9.8E−04)。さらに、DSB修復遺伝子はまた、エクソン/イントロン境界に位置するホモポリマー中の機能喪失インデルの影響も受ける可能性があるため(Ham et al., 2006)、我々の変異コールを、全てのエクソンの25bp上流および下流に発生するインデルに拡張した。全ての変異のGenomeMuSiC解析(1,700のエクソン/イントロン境界インデルおよび3,022のエクソンインデル)は、最高に濃縮された経路として、DNA DSB修復に対するより強いシグナルを生成した(例えば、BioCartaの「ATR/BRCA」経路についてP=6.8E−07、およびReactomeの「G2/M DNA損傷チェックポイント」経路についてP=3.0E−05)。全体として各MMR欠損腫瘍は、平均して3.0±0.5のインデルを、HR経路(図6)によるDSB修復において含む。
HR経路によるDSB修復が、MMR欠損腫瘍で機能的に不活性化されているかどうかを調べるために、8例のMMR欠損および4例のMMR熟達の原発腫瘍培養物および癌細胞株において、DSB修復活性を評価した。これらの細胞のMMR状態は、56マーカーパネルを用いて解析し、ベセスダパネルによって確認した。
9例の原発性子宮内膜および卵巣腫瘍細胞培養物は、ルーベン(ベルギー)のGasthuisberg大学病院の婦人科腫瘍部門で手術を受けた患者から樹立された。インフォームドコンセントを提供した場合にのみ、患者は研究に含められた。以下のプロトコルを用いて、原発腫瘍培養物を生成した。まず、腫瘍試料を、手術室から細胞培養実験室への移送のために、ペニシリン/ストレプトマイシン(1000U/ml)およびファンギゾン(0.5μg/ml)を補足した滅菌RPMI培地(全てLife Technologiesより)に入れた。細胞組織は、ペニシリン/ストレプトマイシンおよびファンギゾンを補足したPBSで洗浄し、殺菌した刃で組織を細かくした。腫瘍組織を、ペニシリン/ストレプトマイシンおよびファンギゾンを補足したRPMI培地(Life Technologies)中のコラゲナーゼIV型(1mg/ml;Roche)を用いて消化した。DNアーゼI(0.1mg/ml;Roche)を消化培地に添加した。消化は、37℃で3時間振盪しながら行った。その後、単一細胞懸濁液を70μmのフィルターを通した濾過により調製し、赤血球を、塩化アンモニウム溶液(Stem Cell Technologies)を用いて溶解した。単一細胞は最終的に、25cm2の培養フラスコに播種し、培地を翌日交換した。1〜3週間後、細胞が60〜70%の集密度に達した時、線維芽細胞をマウスの抗ヒトCD90(Clone AS02; Dianova)およびMouse Pan IgG Dynabeads(Life Technologies)によるネガティブな選択を用いて除去した。細胞培養物は、続いて70〜90%の集密性に継代し、細胞培養物を異なる継代における細胞バンク中に保存した。表31は、このプロトコルに従って生成された種々の原発腫瘍培養物のリストである。
MMR欠損腫瘍に、HR経路によるDSB修復に影響を与える機能喪失変異が濃縮されていることを証明したので、この経路も機能的に不活性化されるのかを検討した。このことは関連性があり、なぜならばこれらの変異は、その機能喪失効果を影響を受けないアレルによって補償することができる、ヘテロ接合インデルを表すからである。DNA複製中、一本鎖切断(SSB)はDSBに変換され、これによってHRによるDSB修復を活性化するため、8例のMMR欠損腫瘍および4例のMMR熟達腫瘍(9例の原発腫瘍培養物および3例の癌細胞株)を、SSB修復を阻害するPARP阻害剤オラパリブに暴露し、続いて、それぞれDNA損傷および活性HRの尺度としての、γH2AX−およびRAD51陽性病巣を有する細胞の相対数を定量化した。腫瘍はどれもエクソーム配列決定を行っておらず、MMR欠損腫瘍の独立したセットを表すために、MMR状態を我々の56マーカーパネルを使用して決定し、ベセスダパネルを用いて確認した。オラパリブなしのMMR欠損およびMMR熟達腫瘍培養物の間に、RAD51病巣形成の違いを観察しなかったが(10±2%の細胞対13±2%の細胞が、RAD51病巣形成を示した、P=0.74;図7a、b)、10μMのオラパリブへの曝露は、MMR欠損細胞において、MMR熟達細胞よりも有意に少ないRAD51病巣形成を引き起こした(19±3%対37±4%、P=0.02;図7a、b)。対照的に、未修復DNA損傷の程度をH2AX免疫蛍光により調べると、オラパリブは、MMR状態とは無関係に、全細胞においてγH2AX病巣の数を大幅に増加させ(示されず)、DNA損傷の程度は、両方の培養物の間で類似していたことを示した。BRCA1またはBRCA2欠損細胞において、RAD51病巣の形成はPARP阻害によって完全になくなるため(Farmer et al., 2005)、これらのデータは、MMR欠損細胞において、HR経路によるDSB修復が部分的にのみ不活性化されることを示唆する。
MMR欠損腫瘍はHR経路によるDSB修復活性の低下を特徴とするため、我々は、これらの腫瘍を、BRCA1欠損腫瘍と同様に(Farmer et al., 2005)、PARP阻害により選択的に標的とすることができるという仮説を立てた。全8例のMMR欠損および4例のMMR熟達培養物を、用量依存的(1、3および10μM)にオラパリブに暴露し、増殖への影響を評価した。6例のMMR欠損原発腫瘍培養物の各々を含む個別のMMR欠損培養物は、オラパリブに暴露されると、用量依存的な増殖の減少を示したが、一方いずれのMMR熟達細胞も、同様の応答を特徴としなかった。平均して、1、3、および10μMのオラパリブは、MMR欠損細胞の増殖をそれぞれ15%、20%および42%減少させ(未処置細胞に対して、それぞれP=0.02、P<0.001およびP<0.001;図7c)、一方、MMR熟達腫瘍では、48時間において効果は見られなかった(オラパリブの全濃度についてP=NS;図7d)。全体として、増殖はまた、MMR欠損とMMR熟達瘍の間で非常に有意に異なった(反復測定によりP<0.001)。それぞれ3μMおよび10μMのオラパリブに暴露されたBRCA1およびBRCA2欠損細胞は、生存率の78%および91%の減少によって特徴付けられるため(Farmer et al., 2005;Patel et al., 2012)、これらの「ex vivo」のデータは、MMR欠損細胞が、HR経路によるDSB修復の部分的不活性化と一致して、PARP阻害により感作されていることを確認する。
Real-Time Cell Analyzer (RTCA) xCELLigence System(Roche Applied Science, Mannheim, Germany)を用いて、細胞増殖速度を動的にモニターした。システムは、組織培養Eプレートの底面の微小電極を横切る電気インピーダンスを測定する。インピーダンス測定は、細胞数、生存率、形態および接着性についての定量的情報を提供する。5,000個の細胞/ウェルを、200μlの培地中のEプレート16(Roche)に播種した。播種の24時間後、細胞をオラパリブで所望の最終濃度(1、3、10μMオラパリブ)に処理した。全てのウェルにおける最終DMSOパーセントは0.1%であった。各処理条件はトリプリケートで測定した。動的な細胞指数値は、処置後48時間、5分間隔でモニターした。細胞指数値を、各セル用のビヒクル処理対照に対して正規化した。以下の図は、細胞培養物のそれぞれについて、細胞増殖率を示した(MMR欠損細胞は青色で、MMR熟達細胞は赤色で表示)。要約すると、MMR欠損細胞は、増殖の用量依存の減少を特徴とし、一方MMR熟達細胞は、オラパリブに応答しなかった(反復測定により、P=2.0E−7;図7cおよびe)。
ここでは、MMR欠損腫瘍の最初の全ゲノム配列を決定した。我々は、体細胞置換の大半はヌクレオチド転位から構成されていること、および隣接するヌクレオチドが、どのヌクレオチドが影響を受けるかを決定することに対して重要なコンテクスト依存性の効果を有したことを観察した。驚くべきことに、これらの置換パターンは、生殖細胞系DNAおよび他の真核生物においても観察され、これらのゲノムにおいて、同様の様式で重要なゲノム特徴と相関していた(Hodgkinson and Eyre-Walker, 2011)。特に我々は、メチル化CpG配列における多数の置換を観察して、メチル化シトシンの脱アミノ化の修復にMMR機構が関与し、非標準的MMRがゲノムの完全性を維持するために重要であることを実証した。
さらに、脱アミノ化は、ヒトの疾患に関連する変異および進化の基礎をなす最も重要なプロセスの1つである。その観点から、非常によく似たサインが、MMR欠損腫瘍からの10の追加のエクソームに、de novoの生殖細胞系置換に、ならびにヒトおよびマウスのSNPデータベースに観察されたことは興味深い。全体として、これらの観察は、細菌集団と同様に(Saint-Ruf and Matic, 2006)、ヒトにおける不完全なミスマッチ修復が、遺伝的適応を介して自然淘汰に寄与することを示している。
さらに、PARP阻害に対する臨床的抵抗性は、完全長BRCA1または2タンパク質を復元する二次変異に起因し、こうして腫瘍細胞においてその機能が再確立されるが(Barber et al., 2012)、かかるメカニズムは、体細胞変異によって影響を受けるDSB修復遺伝子の各々には生じにくい。これは、MMR欠損腫瘍がPARP阻害剤に対する抵抗性を発生しにくく、長期的および治療的に、阻害剤をより価値あるものにすることを示唆する。
ミスマッチ修復欠損の検出:腫瘍および対応する生殖細胞試料におけるMLH1、MSH2およびMSH6発現を評価するために、免疫組織化学を、以下のモノクローナル抗体を用いて実施した:MLH1(DAKO)に対してクローンES05、MSH2に対してクローンG219−1129(BD Pharmagen)、およびMSH6に対してクローンEP49(Epitomics)。MLH1プロモーター領域の過剰メチル化状態は、SALSA MS-MLPAキット(MRC-Holland)を用いて決定した。MSI状態は、拡張ベセスダパネルによって検出した。
試料選択および調製:14例の子宮内膜、3例の結腸直腸および3例の卵巣の腫瘍−正常ペアを、配列決定用に選択した。腫瘍DNAは、新鮮凍結腫瘍組織から抽出した。全ての試料は、原発性化学療法未処置の腫瘍を表した。これらの20例の試料についての対応する正常なDNAは、末梢白血球から抽出した。インフォームドコンセントを全ての患者から得た。また、4つの商業的なT細胞急性リンパ芽球性白血病細胞株を配列決定した(DSMZ、http://www.dsmz.de/から入手したDND41、CCRF−CEM、SUPT1およびRPMI−8402)。DNAは、全ての試料についてQiagen DNAeasyキットを用いて抽出した。
全ゲノムおよびエクソームデータのアノテーションの付加:全ゲノム配列データに、ANNOVARおよびUCSC RefGene hg18アノテーショントラックを使用してアノテーションを付加した。反復領域は、「grepseq」(http://code.google.com/p/grepseq/)を用いて決定した。マイクロサテライトは、少なくとも2つの反復単位から構成され6塩基の最小長さの、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−およびヘキサヌクレオチド反復として定義され、ホモポリマーは、6塩基の最小長さのモノヌクレオチド反復として、短いホモポリマーは、3、4、または5塩基の長さのモノヌクレオチド反復として定義された。反復領域へのアノテーションの付加は、BEDtoolsのintersectBedコマンドを使用して行った。
原発腫瘍培養物および免疫蛍光:9例の原発性子宮内膜および卵巣腫瘍細胞培養物は、手術を受けた患者の腫瘍から樹立した。原発腫瘍細胞培養物を、20%のFBS、2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、1μg/mlのファンギゾンおよび10μg/mlのゲンタマイシンを補足したRPMI1640培地(Gibco)中で、20継代まで増殖させた。25,000細胞/ウェルを、400μlの培地中の8ウェルスライド(Nunc)上に播種し、24時間増殖させた。0または10μMのオラパリブへの曝露後に、スライドをPBSですすぎ、37℃のパラホルムアルデヒドで固定し、0.1%トリトンX−100で透過処理し、BSAでブロックした。細胞は、マウス抗ホスホ−ヒストンH2A.Xモノクローナル抗体(Millipore clone JBW301、1:100)またはウサギ抗Rad51(H−92)ポリクローナル抗体(Santa Cruz H-92、1:1000)で染色し、PBS中0.1%トリトンX−100で洗浄した。Alexa Fluor 488(Invitrogen)を使用して、スライドを、DAPIを含有するProlong Gold Antifade試薬(Molecular Probes)中にマウントした。病巣陽性細胞のパーセンテージ(核当たり>5の病巣)を、Plan-Neofluar40×/1.3油浸対物レンズを使用してZeiss LSM 510倒立共焦点顕微鏡で測定した。各実験について、少なくとも100個の核を分析した。
細胞増殖:Real-Time Cell Analyzer(RTCA)xCELLigence System(Roche)を用いて、細胞増殖速度を動的にモニターした。5,000個の細胞/ウェルを、200μlの培地中のE−プレート16(Roche)に播種した。オラパリブ(AZD-2281, JS Research Chemicals Trading)をDMSOに溶解した。播種の24時間後、細胞をオラパリブ(1、3、10μMのオラパリブ)で処理した。各条件はトリプリケートで測定し、全ての実験は、異なる時点においてデュプリケートで行った。動的な細胞指数値は、処理後48時間モニターした。
マウス抗ホスホ−ヒストンH2A.X(Ser139)モノクローナル抗体(クローンJBW301)はMillipore Corporation, Billerica, MA, USAから入手した。ウサギ抗Rad51(H−92)ポリクローナル抗体は、Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USAから入手した。オラパリブ(AZD−2281、バッチ3−8/10)は、JS Research Chemicals Trading, Schleswig Holstein, Germanyから購入し、DMSO中の原液として調製し、10アリコートを使用まで−20℃で保存した。オラパリブは、プレートのウェルにて1:20希釈の前に、それぞれの培地でさらに1:50に希釈した。
オラパリブ処理時の未修復のDNA損傷の程度は、γH2AX免疫蛍光で測定した。DNAに二本鎖切断がある場合に、H2AXはセリン139上でリン酸化され、γH2AXと呼ばれる。γH2AX免疫染色のために、25,000個の細胞/ウェルを400μlの培地中の8ウェルLab-tek Permanox Chamberスライド(Nunc)に播種し、37℃、5%CO2で24時間インキュベーションした。続いて、24時間のインキュベーション後、細胞を、0または10μMのオラパリブに暴露し、スライドをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)ですすぎ、4%パラホルムアルデヒド中37℃にて10分間固定し、0.1%トリトンX−100で5分間の透過処理および、5%ウシ血清アルブミン(BSA)で10分間のブロッキングを、両方とも室温で行った。細胞は、1:100希釈のマウス抗ホスホ−ヒストンH2A.X(Ser139)モノクローナル抗体(クローンJBW301、Millipore)で染色した。一次抗体は、Alexa Fluor-488ヤギ抗ウサギIgG(Alexa)で可視化し、DAPIを有するProlong Gold Antifade試薬(Molecular Probes)中にマウントした。10μMのオラパリブ処理は、γH2AX病巣の数を、MMR状態に関係なく全ての細胞におけるベースラインと比較して、4〜6倍増加させ、DSB DNA損傷の程度が、両方の培養物の間で類似していたことを示した。
RAD51タンパク質は、HR経路によるDSB修復復に重要な役割を果たし、RAD51陽性病巣の形成は、HRによる継続中のDSB修復のマーカーとして使用される。RAD51免疫染色を行うために、25,000細胞/ウェルを、400μlの培地中の8ウェルのLab-tek Permanox Chambeスライド(Nunc)上に播種し、37℃、5%のCO2で24時間、オラパリブによる処理までインキュベーションした。24時間のインキュベーションおよび0または10μMオラパリブへの暴露の後、細胞を室温にてPBSで洗浄し、PBS中の0.1%トリトンX−100を有する3%パラホルムアルデヒド中に、37℃で20分間固定した。スライドを、1:1000希釈のウサギ抗Rad51(H−92)ポリクローナル抗体(Santa Cruz H-92)で4℃にて16時間染色し、次にPBS中の0.1%トリトンX−100で15分間、4回洗浄した。一次抗体は、Alexa Fluor-488ヤギ抗ウサギIgG(Alexa)で可視化し、DAPIを有するProlong Gold Antifade試薬(Molecular Probes)中にマウントした。
共焦点顕微鏡法
γH2AXおよびRAD51病巣は、Plan-Neofluar40×/1.3油浸対物レンズおよび、488と750nmの励起波長(Chameleonコヒーレント二光子レーザー)を用いて、Zeiss LSM 510倒立共焦点顕微鏡で可視化した。焦点最大投影を介して、画像を、0.5μmの切片厚さの、1.20μm離れた光学的断面から取得した。画像は、LSM510ソフトウェアを用いて処理した。>5個の病巣を有する核は陽性とし、培養物および条件当たり、少なくとも100個の核をカウントした。
Claims (31)
- 腫瘍のMSI状態を診断する方法であって、腫瘍DNAの試料中の少なくとも2つのマイクロサテライト領域中のインデルの存在を決定することを含み、ここで少なくとも2つのマイクロサテライト領域が、
− 表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在する、少なくとも2つのマイクロサテライト領域、または
− 表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するもの、および/または表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するものから選択される少なくとも3つのマイクロサテライト領域
であり、ここで少なくとも1つのインデルの存在が、MSIの指標である、前記方法。 - マイクロサテライト領域がホモポリマー領域である、請求項1に記載の方法。
- マイクロサテライト領域が、表1または表2に同定されているマイクロサテライト領域と同一である、請求項1または2に記載の方法。
- 腫瘍が、結腸直腸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、胃癌、白血病、およびリンチ症候群の腫瘍から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 少なくとも2つのマイクロサテライト領域が、表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するものから選択される少なくとも2つのマイクロサテライト領域、および表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するものから選択される少なくとも2つのマイクロサテライト領域である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するものから選択される1または2以上のマイクロサテライトが、以下の遺伝子:SETD1B、RBMXL1、CCDC150、TMEM60、DDX27、EXOSC9、FAM111B、KIAA0182、KIAA1919、OR7E24、P4HTM、PRRT2、RNPC3、およびTMEM97、から選択される少なくとも1つのマイクロサテライトを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 少なくとも2つのマイクロサテライト領域が、少なくとも8つのマイクロサテライト領域である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 少なくとも2つのマイクロサテライト領域が、表3に示す56のマイクロサテライト領域である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- MSIが、さらに次のように特徴付けられる、請求項7または8に記載の方法:マイクロサテライト領域の17%以上がインデルを含む場合、腫瘍はMSI−Hであり、マイクロサテライト領域の2%〜17%がインデルを含む場合、腫瘍はMSI−Lであり、マイクロサテライト領域の2%未満がインデルを含む場合、腫瘍はマイクロサテライト安定である。
- インデルの存在を決定することが、サンガー配列決定に基づく方法を介して行われない、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
- インデルの存在を決定することが、単一塩基対伸長技術、DNAハイブリダイゼーション技術、または融解曲線分析を介して行われる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
- 腫瘍試料中のMSIを決定するためのバイオマーカーパネルであって、表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するもの、および表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するものから選択される、少なくとも8つのマイクロサテライト領域を含む、前記バイオマーカーパネル。
- 少なくとも8つのマイクロサテライト領域が、表3に列挙された遺伝子から選択される少なくとも8つの領域である、請求項12に記載のバイオマーカーパネル。
- 診断薬として使用するための、請求項12または13に記載のバイオマーカーパネル。
- 癌におけるマイクロサテライト不安定性の診断に使用するための、請求項12または13に記載のバイオマーカーパネル。
- 癌におけるマイクロサテライト不安定性の診断における、請求項12または13に記載のバイオマーカーパネルの使用。
- 腫瘍試料中のMSIを決定するためのキットであって、表1に列挙された遺伝子からの5’UTRまたは3’UTR領域に存在するもの、および表2に列挙された遺伝子のエクソンに存在するものから選択される、少なくとも8つのマイクロサテライト領域の遺伝子型を決定するツールを含む、前記キット。
- 必要とする対象においてMSIを有する癌を処置する方法であって:
− 癌におけるMSIの存在を証明すること;
− 対象に対して、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤を投与すること、
を含む、前記方法。 - DNA塩基除去修復酵素の阻害剤が、PARP阻害剤である、請求項18に記載の方法。
- MSIの存在が、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法により、および/または請求項12および13に記載のバイオマーカーパネルを使用して、証明される、請求項18または19に記載の方法。
- 癌が、結腸直腸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、胃癌、白血病、およびリンチ症候群の腫瘍から選択される、請求項20に記載の方法。
- 癌が、そのタイプの癌に対して使用される少なくとも1つの標準的な治療に抵抗性である、請求項21に記載の方法。
- 癌細胞の、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤による処置に対する感受性をスクリーニングする方法であって、前記細胞におけるMSI状態を決定することを含む、前記方法。
- 癌細胞が、結腸直腸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、胃癌、白血病、およびリンチ症候群の腫瘍から選択される癌からのものである、請求項23に記載の方法。
- DNA塩基除去修復酵素の阻害剤が、PARP阻害剤である、請求項23または24に記載の方法。
- MSIの存在が、処置に対する感受性の指標である、請求項23〜25のいずれか一項に記載の方法。
- 癌細胞が対象から得た細胞であり、感受性のスクリーニングが、対象の処置をガイドするか、対象を臨床試験について階層化または分類することにおいて使用される、請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。
- MSIの存在が、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法により、および/または請求項12および13に記載のバイオマーカーパネルを使用して証明される、請求項23〜27のいずれか一項に記載の方法。
- 癌を有する対象の、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤による処置に対する感受性を診断する方法であって、以下のステップ:
− 任意に、対象から癌細胞の試料を得ること;
− 対象から得た癌細胞の試料中のMSI状態を決定すること;
− MSI状態を、DNA塩基除去修復酵素の阻害剤による処置に対する感受性と相関させること、ここで、MSIの存在が、処置に対する感受性の指標である、
を含む、前記方法。 - 対象をDNA塩基除去修復酵素の阻害剤で処置するステップを、対象がかかる処置に感受性である場合にさらに含む、請求項29に記載の方法。
- MSIの存在が、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法により、および/または請求項12および13に記載のバイオマーカーパネルを使用して証明される、請求項29または30に記載の方法。
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