JP7391877B2 - 癌におけるマイクロサテライト不安定性を検出するためのバイオマーカーパネル及び方法 - Google Patents

癌におけるマイクロサテライト不安定性を検出するためのバイオマーカーパネル及び方法 Download PDF

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Description

BCCM LMBP 12278CB
本発明は、包括的には、癌の分野、特にマイクロサテライト不安定性(MSI)及び/又はミスマッチ修復(MMR-)欠損を有する癌に関する。そのような癌の例には、多くの結腸直腸腫瘍、胃腫瘍及び子宮内膜腫瘍が含まれる。したがって、本発明は、MSI遺伝子座を分析するための新規の診断マーカーパネルと共に、マイクロサテライト不安定性(MSI)及び/又はミスマッチ修復(MMR-)欠損を有する癌の検出において上記パネルを使用する方法及びキットを提供する。
毎年欧米では、およそ440000人の患者が結腸直腸癌(CRC)と診断されている。患者向けのNCCNガイドライン:結腸癌版1.2017(NCCN Guidelines for Patients: Colon Cancer Version 1.2017)及び家族性リスク結腸直腸癌に関するESMO臨床診療ガイドライン(ESMO Clinical Practice Guidelines on familial risk-colorectal cancer)等の最近のガイドラインでは、全てのCRC患者においてDNAミスマッチ修復(MMR)欠損(deficiency)及び/又はMSIステータスに関する腫瘍検査を推奨している。しかし今日でも、これらの検査はその背後にある技術的複雑さのため、まだ広くは活用されていない。特に、MMR欠損の根底をなす考えられる全ての突然変異を検査することは困難であり、それをスクリーニングする代替的なアプローチは存在するものの、目下のアッセイは依然として研究室で長い操作時間を必要とするため、診断ルーチンとなるには相応しくない。
上記の障害は当然管理に影響するため、潜在的に多くの癌患者の生存率にも影響する。実際、結腸直腸癌(CRC)症例の実質的なサブセットでは、MMR遺伝子における欠損が腫瘍形成及び疾患進行のために重要であることが分かっている。例えば、MMR遺伝子MLH1のエピジェネティックサイレンシングは、CRCの約12%を占める。更なる2%~5%の症例は、MMR遺伝子MLH1、MSH2、PMS2又はMSH6の1つに常染色体優性遺伝性の機能喪失型突然変異によって引き起こされる。この家族性癌感受性障害は、リンチ症候群又は遺伝性非ポリポーシスCRC(HNPCC)として知られており、更に胃癌及び子宮内膜癌(数ある中で)のリスク増加につながる。
MMR経路には、かなり多くの遺伝子が関与し、多くの多様な遺伝子病変及び後成的病変がMMR経路に影響を与えることが確認されている。他の幾つかは、どうやら未確認のままである。したがって、直接的な結果をスクリーニングすることによって、MMR機構における欠損を診断する方がより現実的である。その欠損は、DNA複製エラーのゲノム全体での蓄積であり、単一ヌクレオチドリピート配列又はジヌクレオチドリピート配列、例えば(A)n又は(CA)n内の欠失又は挿入によるヌクレオチド数の変化として観察され得る。この現象はマイクロサテライト不安定性すなわちMSIとして知られている。MMR欠損がコーディング領域にMSIをもたらすと、それにより最も頻繁にプロモーター突然変異又はフレームシフト突然変異が引き起こされ、発現の欠如、短縮タンパク質及び/又はネオアンチゲンを含む広範な新規配列を含むタンパク質の発現につながる。さらに、イントロン-エクソン境界領域でのMSIは、RNAスプライシング機序に影響を与えるため、タンパク質の翻訳を妨げることも示されている。全体として、MSI表現型はゲノム不安定性、より高い突然変異率と、したがって、種々の腫瘍の挙動及び予後において相関している。
MSI-high(MSI-H)腫瘍は一般に、マイクロサテライト安定性(MSS)腫瘍と比較して、予後に優れ、転移の可能性が低下する。さらに、これらの2つの腫瘍型はまた、異なる治療に対して異なる反応を示す。例えば、早期のMSI CRCは一般に、現在CRC治療での至適基準である5-フルオロウラシルベースの化学療法に応答しない(例えば、非特許文献1)。一方で、MSI腫瘍は、現在臨床試験が行われている治療用阻害剤のための標的である少なくとも5つの免疫チェックポイント分子のレベルの上昇を示す(非特許文献2)。例えば、ミスマッチ修復欠損を伴う結腸直腸癌患者は、T細胞上のPD-1受容体と腫瘍細胞上のPD-L1受容体及びPD-L2受容体との間の相互作用を遮断して、腫瘍細胞の免疫系回避機構を無効にすることにより作用する抗PD-1免疫療法に対して特に良く応答すると予想される(非特許文献3)。カンプトテシン又はイリノテカン等の多数の他の化合物及び生理活性物質は、MSIのユニークな分子フットプリントに基づいて標的腫瘍療法について現在も試験されている。
したがって、腫瘍におけるMSIステータスの特定が治療結果に、したがって多くの癌患者の生活の質及び平均余命にも大きな影響を与え得ることは既に認識されている。これは、多くの公式ガイドラインが結腸癌及びリンチ症候群のMSI検査を既に公に推奨しているという事実によって最もよく裏付けられている。それらの公式ガイドラインには、例えば、結腸癌に関するNCCNガイドライン(NCCN Guidelines for Colon Cancer)、家族性リスク結腸直腸癌に関するESMO臨床診療ガイドライン、改訂されたBethesdaガイドライン、アムステルダムII臨床基準(Amsterdam II clinical criteria)、結腸直腸癌における米国多学会共同作業部会(US Multisociety Task Force on Colorectal Cancer)等が含まれる。
現在、MSI検査のためには、免疫組織化学(IHC)及びキャピラリー電気泳動の2つの手法が最も頻繁に使用されている。IHCは、高価で、大きな労働力を要し、かつ時間がかかる偽陰性の結果の比率が高い手法である。キャピラリー電気泳動では、腫瘍細胞及び正常細胞のヌクレオチドリピートを含む特定のゲノム領域を増幅させるために蛍光PCRが使用され、その後に、増幅産物の長さを比較することによって、不安定性の存在が決定される。MSI分析に使用され得る可能性のあるマイクロサテライト遺伝子座は、ゲノム全体で数十万個存在する(非特許文献4)。
例えば、1997年に確立されたBethesdaパネルとして知られるコンセンサスMSIパネルには、25ヌクレオチド及び26ヌクレオチドの長さの2つのモノヌクレオチドリピート又はホモヌクレオチドリピート(それぞれBAT25及びBAT26)と、3つのジヌクレオチドリピート(D2S123、D5S346、D17S250)とを含む5つのマイクロサテライトマーカーが含まれている(非特許文献5)。Bethesdaパネルで検査された試料は、マーカーの30%以上(5マーカーパネル中で少なくとも2つ)が不安定であると検査された場合に、高頻度のMSIすなわち「MSI-H」の表現型を有するものと指定される。5つのマーカーのうち1つのマーカー(又は腫瘍マーカーの30%未満)がMSI陽性とスコア付けされた場合に、試料はMSI-lowすなわち「MSI-L」と指定される。最後に、改変されたマーカーが見られない場合に、試料はMSI安定すなわち「MSS」とみなされる(非特許文献5)。
しかしながら、Bethesdaパネルは、現在のMSI検査標準であるにもかかわらず、異なる人種集団及び異なる腫瘍型における遺伝子座の一貫しない有病率等の幾つかの不利点に悩まされている。特に、Bethesdaパネルは、最初に開発されたことから考えて、特に結腸直腸癌以外の癌においては、低い感度を示す傾向がある(非特許文献5)。これらの要因及び他の要因により、個別の臨床医及び研究所によって追加のマーカーによる拡張及び/又は多様化がもたらされたが、標準化が失われ、再現性が不十分となった。上記の例としては、例えば、非特許文献6及び特許文献1(Promega社)が挙げられる。あるいは、どのBethesdaパネルとも重複しない完全に新しいマイクロサテライトマーカーも、例えば、特許文献2(VIB社)及び非特許文献7(eLife社)に記載された。
現在知られているアプローチの別の不利点は、それらの複雑さの程度、標準的な研究室用のサーモサイクラーを逸脱する特殊な機器の必要性、及び自動化に関する限られた実現可能性である。旧来のBethesdaパネル検査自体は、クロスコンタミネーションの可能性を高めるオープンチューブ型試験である。さらに、Bethesdaパネル検査には、専門の研究室職員が必要であり、時間がかかり、高価で、大きな労働力を要する。一般的に、MSIの現存する検出技術には、以下の原理の1つが適用される:(i)蛍光標識されたプライマーを使用してBethesdaパネルマーカーを検出することに続いてのキャピラリー電気泳動、(ii)dsDNAインターカレーション色素を使用した5つのBethesdaパネルマーカーの高解像度融解曲線分析、(iii)異なる長さのアレルの質量分析による検出、及び(iv)大きなDNA領域(例えばエクソーム)の次世代シーケンシング(NGS)に続いての、非マッチ設定での突然変異の数又はホモポリマー領域の数のカウント(非特許文献8)。
(i)では、例えば、最初のPCRベースのBethesdaスクリーニング方略は、効率的で簡単な自動化を妨げる熟練した観察者の解釈を必要とする。次に(ii)に関しては、dsDNAインターカレーション色素を用いた高解像度融解曲線分析は、1回の実行で幾つかの異なるMSIマーカーをスクリーニングするための多重化能力が非常に限られているということに悩まされる。それというのも、各マーカーアンプリコンの融解温度は、重複するシグナルを生成しないために十分に異なる必要があるからである。さらに、この方略は正常な長さのアレルと突然変異長さのアレルとの間のヘテロ二本鎖の形成に頼っているため、他の選択肢と比較して感度もより低くなる。次に(iii)に関しては、質量分析に基づく方法(非特許文献7)は、原則的に自動化に変えることもできるが、データの解釈には専用の機器及び高度に熟練した人員を必要とする。最後に(iv)については、NGSは確かに選択マーカーだけでなく、ゲノム又はエクソームにおいて非常に多数のMSIを示す位置を見つけられるという利点を有しているが、この方法も原則的に少なくとも部分的には自動化可能であるものの、現在でも非常に高価であり、専用のNGSハードウェアが必要である。ホモポリマーのスコア付けに関して、NGSは依然として個々のホモポリマーリピートを繰り返しスコア付けするのに十分にロバストではない。それというのも、NGSは依然として、反復ヌクレオチドの列における単一ヌクレオチドインデルについての情報を失う傾向があるからである。さらに、大量のデータが生成されるため、NGSは相変わらず時間がかかり、複雑であり、高度に熟練した分析者を必要とする。
結論として、MSI検査は、現在技術的な制約のため既存の診断方法では部分的にしか満たされていない非常に高い医療ニーズを表す。これらの医療ニーズには、限定的な検出能力、高いコスト及び/又は長い所要時間、専用の機器の必要性、及び/又は高度に熟練した専門家の解釈が含まれることが重要である。上記の不利点は、本発明によれば、特許文献2に記載される種類のわずか少数の短いホモポリマーMSIマーカーの高感度のセットと共に、それらの配列内のホモヌクレオチド挿入又は欠失(インデル)を検出する極めてロバストな方法を提供することによって解決される。この方法は非常に自動化に適しており、特定の分子インフラストラクチャを必要とせず、コンピューターに接続された単純なサーモサイクラー等の標準的な研究室用の装置を使用して実施することができる。さらに、選択されたマーカーの簡単な二重化又は更により高度な多重化が可能となり、それにより、必要とされる研究室用の材料がなおも更に限定されることから、既存のPCRベースのプラットフォームへの実装が容易となるという利点が得られる。重要なことに、該方法は非常に一貫した結果をもたらし、出力として直接的なレポートを伴う簡単かつ完全自動的な解釈を可能とする。現在の設定で、本発明者らは、患者の組織試料を受け取ってから、インデルのステータスのそのような完全なリードアウトを3時間以内で取得可能であることを示している。したがって、本明細書に示される新規マーカーパネル及びその検出方法は、CRCにおいて、更にその早期段階(以下に示されるように)において、そして卵巣癌、子宮内膜癌及び胃癌等の他の癌試料において、同様に免疫療法の文脈における予測研究及び追跡研究のためにMSIを検出するための非常に有利な新たな選択肢を提供する。これらの利点及び他の利点並びに本発明の使用を引き続き示す。
国際公開第2006047412号 国際公開第2013153130号
Webber et al., 2015 Llosa et al. 2014 Le et al., 2015 Ellegren, Nat Rev Genet. 2004 Boland et al, 1998 Murphy et al, 2006 Zhao et al, 2014 Campbell et al., 2017, Cell
本発明は、添付の独立形式請求項に規定される。好ましい実施の形態は、従属形式請求項に規定される。特に本発明は、GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた、以下のホモポリマーリピート領域:
ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
を含む、生体試料におけるMSI遺伝子座を分析するためのバイオマーカーパネルに関する。
同様に重要なことには、本発明は、
GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた、以下のホモポリマーリピート:
ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
におけるヌクレオチドの数を決定する工程を含む、生体試料におけるMSI遺伝子座を分析する方法に関する。
上記に関連して、本発明はまた、少なくとも上述のホモポリマーリピートを含む核酸領域を増幅させるためのツールを含む、生体試料におけるMSI遺伝子座を分析するためのキットに関する。
最後に、更に重要なことには、本発明はまた、上述のホモポリマーリピートのそれぞれ及び幾つかの有利な他のホモポリマーリピートにおいて1つのホモヌクレオチド欠失を含む細胞系統HTC116 cl.110268743に由来する細胞又は任意の他の物質、特に遺伝物質に関する。細胞系統HTC116 cl.110268743系統は、ブダペスト条約に従ってベルギーのBCCM/GeneCorner寄託当局にアクセッション番号LMBP 12278CBとして無事に寄託された。
本発明の本質をより完全に理解するために、以下の詳細な説明が参照され、添付の図面と併せて解釈される。
128個のMSI-H結腸直腸癌試料における7つのマイクロサテライトマーカー(BTBD7、RYR3、SEC31A、ACVR2A、DIDO1、MRE11及びSULF2)のMSIステータスを示す図である。種々のパネルは、試料を最小セットのA)4つのマーカーと、最小セットの4つのマーカーに1つのマーカーが順次追加されたB)、C)及びD)とについて評価した場合のMSIステータス(白色、MSS、暗灰色、MSI-H)を示す。個々の試料についてのマーカーのステータスは、野生型(淡い灰色)又は突然変異型(灰色)として示される。 15個のMSI-H胃癌試料及び19個の子宮内膜癌試料における7つのマイクロサテライトマーカー(BTBD7、RYR3、SEC31A、ACVR2A、DIDO1、MRE11及びSULF2)のMSIステータスを示す図である。種々のパネルは、試料を最小セットのA)4つのマーカーと、最小セットの4つのマーカーに1つのマーカーが順次追加されたB)、C)及びD)とについて評価した場合のMSIステータス(白色、MSS、暗灰色、MSI-H)を示す。個々の試料についてのマーカーのステータスは、野生型(淡い灰色)、突然変異型(灰色)又は結果なし(斜線)として示される。 33個のMSI-H試料対89個のMSS試料における突然変異負荷(置換の数(左のパネル)、インデルの数(中央のパネル)又は全ての突然変異(右のパネル)によって測定される)を示す図である。 癌型に応じたMSI-H試料対MSS試料における突然変異負荷(体細胞イベント(置換及びインデル)の数によって測定される)を示す図である。EM-子宮内膜、CRC-結腸直腸。 1から6までの突然変異型マイクロサテライトマーカー(BTBD7、RYR3、SEC31A、ACVR2A、DIDO1及びMRE11)の数と、(A)体細胞置換の数(インデルにより補正するうちに、置換の数及び突然変異型マーカーの数は、1.92×10-7のp値と相関する)又は(B)体細胞インデルの数(置換により補正するうちに、インデルの数及び突然変異型マーカーの数は、7.1×10-7のp値と相関する)によって測定されるMSI試料における突然変異負荷との間の相関プロット、(C)MSI-H試料における体細胞置換と体細胞インデルとの間での高い相関を示す、MSI腫瘍における体細胞置換と体細胞インデルとの間の相関を示す図である。相関は、EM MSI腫瘍及びCRC MSI腫瘍の両方で一致しているが、MSS腫瘍では一致しない。 上記図5Aに示される突然変異型マイクロサテライトマーカーの数と突然変異負荷との間の、もう1つのマーカー(SULF2)についてのデータを用いて完成させた相関プロットを示す図である。(A)では、体細胞置換の数との相関が示されており、もう1つのマーカーを追加すると、p値が6.5×10-5に変化した。(B)では、体細胞インデルの数との相関が示されており、もう1つのマーカーが追加されると、p値は2×10-16に変化した。(C)では、体細胞置換とインデルとの間の相関が示されており、もう1つのマーカーが追加されると、MSI-H試料における相関有意性が更に改善することが分かる。 腫瘍突然変異荷重(TMB)の予測変数としての陽性マーカーの数を示す図である。平均して、1つの陽性マーカーの増加に伴い、更に348個の置換及び更に119個のインデルが観察された(図5Bに示される7つのマーカーについて示されたデータ)。 IHC分析と比較した、Biocartis社のIdyllaプラットフォームで実装された本発明のMSI検査方法に関する有効、無効、エラー及び不一致の結果に関連するCRC腫瘍病期分類の概要を示す図である。
本発明は、包括的に、新規のMSIバイオマーカーパネル、該パネルの活用方法、上記方法を実施するための自動化システム及びキットに関し、ここで、該キットは、好ましくは上記自動化システムと適合可能なカートリッジの形で含み得て又は提供され得て、上記パネルにおけるインデルを検出するためのツール、好ましくはまたポジティブコントロール材料を含み得る。
好ましい実施形態では、本発明は、GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた、以下のホモポリマーリピート領域又はその突然変異型(ここで、該突然変異はホモポリマーリピート配列における少なくとも1つのインデルの存在である):
ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
を少なくとも含む、生体試料におけるMSI遺伝子座を分析するためのバイオマーカーパネルを提供する。
本発明者らは、特許文献2(VIB社)に開示されている型のランダムに選択された、Bethesdaパネルのマーカーよりも著しく短いホモポリマーである多くのマーカーを検査した。そこに開示された56個のマーカーの好ましいセットからより少ない数のマーカーをランダムに選択しても、最小限の最も基礎的な研究室のリソースで広範囲のヒト癌試料にわたってMSI-H表現型を繰り返し検出することができるロバストなアッセイは得られなかった。どのマーカーも多重反応又は二重反応でさえ検出することができなかった又は異なる人種間でヌクレオチド数は異なっていた。ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる8個の連続したアデニンを含むエクソンホモポリマーリピート(これは、特許文献2における56個の好ましいセットには開示されていない)及びヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むエクソンホモポリマーリピート(これは、特許文献2に全く開示されていない)の偶然の選択により、驚くべきことに、ヒトMMR欠損腫瘍におけるMSI検出のための高性能なパネルを得ることにつながる。
本発明者らは、本明細書に示された4つのマーカーのみの最小のパネルの性能が、MSI-Hで検証されたヒト結腸直腸癌試料の正確な特定に関して、95%に設定された最低の許容可能な性能を上回ることを確認した。以下の例示の節に示されるように、本発明者らは、本発明の上記の最小のパネルにより、128個のMSI-H CRC試料のプールから123個のMSI-H陽性試料をうまく回収することができたことを示しており、それはMSI-Hとして正確に特定される試料の96%を占める。したがって、好ましい実施形態では、MSI-H腫瘍試料の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%を正確に特定する性能を有するパネルが提供される。
当然、更にマーカーを追加すると、この性能は次第に向上し得る。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた、以下の3つのホモポリマーリピート領域又はその突然変異型:
ヒトBTBD7遺伝子に局在化された、chr14:93241685の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート、
ヒトSEC31A遺伝子に局在化された、chr4:82864412の位置から始まる9個の連続したチミンを含むホモポリマーリピート、
ヒトRYR3遺伝子に局在化された、chr15:33865341の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート、
のいずれか1つ、2つ又は全てを更に含む、上記の実施形態によるパネルを提供する。
本明細書に示される、本発明のバイオマーカーパネルを構成するホモポリマーリピートマーカーは、最大で11個の反復ホモヌクレオチド、例えばDIDO1 3'UTR中の11個の連続したアデニンのわずかな短い列である。当業者により理解されるように、その列に対する相補的配列、例えば、DIDO1 3'UTR配列における11個の連続したアデニンに相補的な11個の連続したチミンも、本明細書で使用される上記用語の範囲内に含まれると解釈されるべきである。
特に好ましい実施形態では、GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた、以下の5つのホモポリマーリピート領域又はその突然変異型:
ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトBTBD7遺伝子に局在化された、chr14:93241685の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
を含むパネルが提供される。
5つのマーカーのこのコアセットを使用すると、128個のうち124個、つまり腫瘍試料の97%をMSI-Hとして特定することができた。
別の好ましい実施形態では、GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた、以下の6つのホモポリマーリピート領域又はその突然変異型:
ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトBTBD7遺伝子に局在化された、chr14:93241685の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトSEC31A遺伝子に局在化された、chr4:82864412の位置から始まる9個の連続したチミンを含むホモポリマーリピートと、
を含むパネルが提供される。
SEC31A遺伝子に局在化された追加のマーカーをマーカーのコアセットに更に追加することで、128個の全ての試料をMSI-Hとしてスコア付けすることができたことから、該パネルは、MSIステータスの規定においてより一層効果的となった。
更に別の好ましい実施形態では、GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた、以下の7つのホモポリマーリピート領域又はその突然変異型:
ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトBTBD7遺伝子に局在化された、chr14:93241685の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトSEC31A遺伝子に局在化された、chr4:82864412の位置から始まる9個の連続したチミンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトRYR3遺伝子に局在化された、chr15:33865341の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
を含むパネルが提供される。
上記の7つのマーカーのセットは、潜在的な偽陰性率を約1/1900に削減すると見積もられる。したがって、上記の実施形態のパネルと適合可能な更に別のマーカーを追加することで、特に卵巣、子宮内膜又は胃等の結腸直腸以外の癌におけるMSIの検出に該パネルを実装するための更なる性能保証が提供される。
好ましい実施形態では、生体試料は、腫瘍を有する疑いのある個体に由来する。別の実施形態では、生体試料は、腫瘍試料であり、新鮮な組織又は固定された腫瘍試料、例えば、凍結試料又はFFPE試料であり得る。特に好ましい実施形態では、腫瘍は結腸直腸腫瘍、卵巣腫瘍、子宮内膜腫瘍又は胃腫瘍から選択される。別の可能な実施形態では、試料は液体生検試料である。別の可能な実施形態では、試料は、リンチ症候群に罹患している疑いのある患者からの、末梢血単核細胞(PBMC)若しくは他の白血球又は皮膚組織等の任意の組織試料である。
本発明の更なる課題は、上記実施形態のバイオマーカーパネルにおけるヌクレオチドの数を決定する工程を含む、生体試料におけるMSI遺伝子座を分析する方法を提供することである。
したがって、本発明の一実施形態では、GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた、以下のホモポリマーリピート:
ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
におけるヌクレオチドの数を決定する工程を含む、生体試料におけるMSI遺伝子座を分析する方法が提供される。
上記と同じ理由から、好ましい実施形態では、本発明の方法は、GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた、以下のホモポリマーリピート領域:
ヒトBTBD7遺伝子に局在化された、chr14:93241685の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート、
ヒトSEC31A遺伝子に局在化された、chr4:82864412の位置から始まる9個の連続したチミンを含むホモポリマーリピート、
ヒトRYR3遺伝子に局在化された、chr15:33865341の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート、
のいずれか1つ、2つ又は全てにおいてもヌクレオチドの数を決定することを更に含む。
特定の実施形態では、GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた、以下の5つのホモポリマーリピート:
ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトBTBD7遺伝子に局在化された、chr14:93241685の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
におけるヌクレオチドの数を決定する工程を含む方法が提供される。
更に具体的な実施形態では、GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた、以下の6つのホモポリマーリピート:
ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトBTBD7遺伝子に局在化された、chr14:93241685の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトSEC31A遺伝子に局在化された、chr4:82864412の位置から始まる9個の連続したチミンを含むホモポリマーリピートと、
におけるヌクレオチドの数を決定する工程を含む方法が提供される。
別の具体的な実施形態では、GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた、以下の7つのホモポリマーリピート:
ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトBTBD7遺伝子に局在化された、chr14:93241685の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトSEC31A遺伝子に局在化された、chr4:82864412の位置から始まる9個の連続したチミンを含むホモポリマーリピートと、
ヒトRYR3遺伝子に局在化された、chr15:33865341の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
におけるヌクレオチドの数を決定する工程を含む方法が提供される。
可能な実施形態では、本発明の方法は、少なくとも2つのホモポリマーリピートにおいてインデルが検出される場合に、生体試料のMSIステータスを診断する工程を更に含み得る。
好ましくは、被験体から得られた生体試料が腫瘍試料又は潜在的腫瘍試料である、本発明の方法が提供される。原則として、本明細書に開示される方法は、任意の確認された腫瘍試料又は潜在的腫瘍試料を使用して実施することができる。好ましい実施形態では、腫瘍は、結腸直腸腫瘍、胃腫瘍、卵巣腫瘍又は子宮内膜腫瘍である。
当業者により理解されるように、本発明のホモポリマーリピートマーカーパネルの性質は、本発明の方法が、好ましくは生体試料中に存在するゲノムDNAを使用して行われることを決定する。試料の種類に応じて、好ましい実施形態では、本発明の方法の前に、以下の工程:
核酸の供給源から標的配列を潜在的に含む核酸を遊離させる及び/又は単離する工程、
上記標的を潜在的に含む上記遊離及び/又は精製された核酸を、上記核酸を増幅させる工程に提供する工程、
のいずれかが行われる。
ゲノムDNAは豊富で複雑な核酸物質であるため、上記で規定されたホモポリマーリピート領域に隣接する配列を増幅させてから、その中のヌクレオチドの数を決定する工程を行うことが有利である。したがって、好ましい実施形態では、以下の工程:
上記のホモポリマーリピートを含む核酸領域を増幅させる工程、
を更に含む方法が提供される。当業者には明らかであるように、そのような増幅は、そのMSIステータスにかかわらず、ホモポリマーリピート配列を含む増幅産物をもたらすこととなる。すなわち、そのような増幅産物は、所与のホモポリマーリピートの野生型(WT)又はそのMSI変異体、すなわち、ホモポリマーリピート配列中に少なくとも1つのホモヌクレオチドのインデルを含む突然変異体を含み得る。
当然ながら、明白な実施形態では、増幅は、好ましくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、例えばPCRを実施するための手段、例えば、適切な試薬及び/又はサーモサイクラーを含む装置を使用して行われる。しかしながら、当該技術分野で知られる他の増幅技術を使用することもできる。これらの技術には、限定されるものではないが、ループ媒介等温増幅(LAMP)、核酸配列に基づいた増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、多重置換増幅(MDA)、ローリングサークル増幅(RCA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)又は分岐増幅法(Ramification amplification method)(RAM)が含まれる。
好ましい実施形態では、増幅工程が、以下の配列番号1~配列番号14のいずれかによって特定される配列を有する少なくとも1つのプライマーの使用を含む方法が提供される:
DIDO1マーカー用:
配列番号1 - TAGCGTGTGAATCGGACAT
配列番号2 - TTGACTGGGCAGATAGGGGA
MRE11マーカー用:
配列番号3 - ATAGTTCACCCATGGAAACC
配列番号4 - GGAGGAGAATCTTAGGGAAA
BTBD7マーカー用:
配列番号5 - ACTGGACTCCCGCTGG
配列番号6 - CGCTCAGCCTCCATAAATC
SULF2マーカー用:
配列番号7 - CAACTTCATTTCTTTTCAGTACCTT
配列番号8 - CTGTCCAGATACCATTTCTC
ACVR2Aマーカー用:
配列番号9 - AGCATCCATCTCTTGAAGACAT
配列番号10 - GCATGTTTCTGCCAATAATCTCT
SEC31Aマーカー用:
配列番号11 - CAACTTCAGCAGGCTGT
配列番号12 - AGTCTGAGAAGCATCAATTTT
RYR3マーカー用:
配列番号13 - CATTTTCTAAATGCCTCCCTTAAA
配列番号14 - GTCCATTAGGCACAAAAAG
より詳細な実施形態では、増幅工程は、以下の配列番号1及び配列番号2、配列番号3及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6、配列番号7及び配列番号8、配列番号9及び配列番号10、配列番号11及び配列番号12、又は配列番号13及び配列番号14から選択される少なくとも1つのプライマーペアの使用を含む。
当業者により理解されるように、増幅条件に応じて、上記のプライマー配列は、1つ、2つ又は場合によっては更に3つのヌクレオチドが改変された場合にも、すなわち異なるヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドによって付加、欠失又は置換された場合にも機能する可能性が高い。したがって、可能な実施形態では、本発明はまた、上記の配列番号1~配列番号14のいずれかによって特定される少なくとも1つのプライマー配列であって、1つ、2つ又は3つのヌクレオチドが改変されているプライマー配列を提供する。代替的な実施形態では、本発明はまた、上記の配列番号1~配列番号14のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも95%同一である少なくとも1つのプライマー配列を提供する。当業者により理解されるように、対象のホモポリマーリピート領域を範囲に含めたアンプリコンを生成するために、代替的なプライマーは、上記のプライマーペアの位置に対して5ヌクレオチド、10ヌクレオチド、20ヌクレオチド、50ヌクレオチド又は100ヌクレオチド上流又は下流で設計され得る。したがって、そのような代替的なプライマーペアもまた、本発明の代替的な明白な実施形態とみなされるべきである。
本明細書で提供される方法は完全自動化が可能であり、任意の標準的な定量的PCRサーモサイクリング機器に適合可能であるという利点を有し、それにより専門の訓練を必要とせずに通常の研究室職員が実施することを可能にする。上記に加えて、該方法は非常に高感度であり、多重化に適しており、検出されたホモポリマーヌクレオチドリピート配列及びその変異体の相対量の推定をもたらすことができる。したがって、可能な実施形態では、PCRは定量的PCR又は半定量的PCRであり得る。
本発明の方法は、非常に短い(すなわち、12ヌクレオチド未満)ホモヌクレオチドリピート配列の列におけるホモヌクレオチドの数の変化の検出に関連するので、該検出は特異性が高いことが有利である。例えば、ホモポリマーリピート領域の増幅の間に、ポリメラーゼスリップが起こることが知られている。これは、反復ヌクレオチドの本来の数をコピーする際の誤りにつながり、こうして増幅されたPCR産物に人為的な欠失又は挿入の蓄積が引き起こされる。したがって、好ましい実施形態では、増幅工程は、プルーフリーディングポリメラーゼ、すなわち3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用して行われる。そのようなPCRグレードのポリメラーゼは数多く知られており、市販されている。例としては、限定されるものではないが、Q5、Pfx、Pfu、Ex Taq等のようなポリメラーゼが挙げられる。
最も好ましい実施形態では、ヌクレオチドの数を決定する工程において、増幅された核酸産物の融解曲線分析が使用される。したがって、本発明の方法の特に有利な実施形態では、増幅工程により融解曲線データの作成がもたらされる。
融解又は融解曲線分析は、温度変動の間の二本鎖核酸分子の解離特性又は会合特性の評価である。したがって、融解曲線データは、核酸増幅の標的産物等の調査される核酸分子の解離特性又は会合特性のいずれかを表す任意のキャプチャされたデータとして理解されるべきである。融解曲線データは、調査される試料に適切な蛍光部を含め、該試料をサーマルサイクリング、PCR、定量的PCR等のような増幅を行うための任意の機器又は方法によって処理することによって取得することができる。融解曲線データは、試料温度をDNA試料の融解温度より高く調整する手段を備え、既知の蛍光分析手段又は分光測光手段を備えた任意の装置から取得することができる。そのような機器の例には、限定されるものではないが、qPCRのために一般的に使用される通常の光学的サーモサイクラー又は温度制御部を備えた蛍光光度計等が含まれる。
融解曲線分析及び高解像度融解(HRM)分析は、試料中の核酸配列の存在を検出及び分析するために一般的に使用される方法である。核酸の解離特性及び会合特性を監視する1つの方法は、色素の補助で行われる。qPCR及び融解曲線分析に使用される検出化学物質は、(a)通常、標的に結合する色素、例えばLC Green、LC Green+、Eva Green、SYTO9 CYBR Green等のDNA結合性蛍光体の蛍光を検出する化学物質、又は(b)通常、例えばビーコンプローブ等の蛍光体標識されたDNAプローブ及び/又は、例えばスコーピオンプライマー等のプライマーを利用する標的特異的化学物質に頼っている。当該技術分野では、融解曲線分析に他の検出化学物質を適用することができることはよく知られている。
本発明の一実施形態では、増幅産物は、融解曲線試験手順の間に1つ以上のインターカレーション色素の存在下で加熱される。加熱中のDNAの解離は、生ずる蛍光の大幅な減少によって測定可能である。別の特定の実施形態では、増幅産物は、融解曲線試験手順の間に1つ以上の色素標識された核酸、例えば1つ以上のプローブの存在下で加熱される。プローブに基づく蛍光融解曲線分析の場合に、核酸における変動の検出は、プローブ-標的ハイブリッドの熱変性によって生成される融解温度に基づく。生成されたアンプリコンの加熱が進むにつれ、シグナルの強度における変化が、典型的には或る温度間隔にわたって温度に対して検出され、こうして生の融解曲線データが取得される。
本発明の方法の好ましい実施形態では、増幅はプローブの使用を含む。原則として、可能な実施形態では、融解曲線分析を行うのに適した任意の標的特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用することができる。好ましい既知のプローブは、蛍光体及びクエンチャーからなる組を含むことができ、また有利には、ループ又はヘアピン等の二次構造を形成することもできる。
特に好ましいのは、標的核酸配列に結合すると蛍光が回復する内部消光蛍光体を有するヘアピン型分子である分子ビーコンプローブ又は分子ビーコンである。この理由のため、分子ビーコンはポリメラーゼの作用によって分解されず、融解曲線コーリングを介してそれらの標的へのハイブリダイゼーション動態を研究する際に使用することができる。典型的な分子ビーコンプローブは、約20ヌクレオチド長、好ましくは25ヌクレオチド長又はそれより長い。典型的には、標的配列に相補的で該配列に結合する領域は、18塩基対~30塩基対の長さである。分子ビーコンの構造及び動作機構は、当該技術分野でよく知られている。
したがって、特に好ましい実施形態では、増幅工程が少なくとも1つの分子ビーコンプローブの使用を含む方法が提供される。
上記の実施形態の好ましい実施形態では、分子ビーコンプローブは、標的ホモポリマーヌクレオチドリピート配列において少なくとも1つのホモヌクレオチドの欠失を含む突然変異型ホモポリマーヌクレオチドリピート配列と同一又は該配列と相補的な配列を含む。そのような分子ビーコンの設計により、同時に野生型(すなわち予想される)マーカーに対して十分な感度を維持しながら、選択された突然変異型MSIマーカーを高い感度及び特異度で検出することが可能となる。「標的ホモポリマーヌクレオチドリピート配列」という用語は、MSIが存在しない条件で予想されるような野生型ホモポリマーリピート配列又は参照ホモポリマーリピート配列を意味することに留意すべきである。それに対して、「突然変異型ホモポリマーヌクレオチドリピート配列」とは、ホモポリマーリピート配列において少なくとも1つのホモヌクレオチドの挿入又は欠失を含むホモポリマーヌクレオチドリピート配列を意味する。その際、野生型の生の融解データと突然変異体の生の融解データとの間で変動が測定され、それは融解曲線生データに特徴的である。
特定の実施形態では、少なくとも1つの分子ビーコンプローブが、以下の配列番号のいずれか1つによって特定される配列を有する方法が提供される。
可能な実施形態では、上記の配列番号15~配列番号21に対して或る程度の配列変動を有する少なくとも1つの分子ビーコンプローブが提供される。そのような変動は、種々のビーコンステム配列の使用を説明することができ(上記の下線を引いたイタリック体)、又は検出されるべき配列に特異的なビーコンのハイブリダイズ部分に対するヌクレオチドの除去若しくは追加によるものであり得る(上記の太字の表示)。後者は、ホモポリマーリピート配列から1つ又は2つのヌクレオチドを追加若しくは除去すること又は上記リピートの隣接配列により多くの若しくはより少ないヌクレオチドを含めることを含み得る。
1つのホモポリマーリピートマーカー及びその不安定な(突然変異体)変異体に対する所与の分子ビーコンプローブのこうして与えられた特異性のため、少なくとも2つの分子ビーコンプローブ、あるいはより多くの分子ビーコンプローブが1つの反応チューブ又は反応区画で使用される多重化アッセイを設計することも可能である。
したがって、別の好ましい実施形態では、前記増幅工程は、ホモポリマーリピートのペアの少なくとも1つの二重増幅を含み、前記ペアは、以下の組合せ:
ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと共に、
ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートの二重増幅、
ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと共に、
ヒトSEC31A遺伝子に局在化された、chr4:82864412の位置から始まる9個の連続したチミンを含むホモポリマーリピートの二重増幅、及び、
ヒトBTBD7遺伝子に局在化された、chr14:93241685の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと共に、
ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートの二重増幅、
から選択される方法が提供される。
本発明の方法のロバスト性を大幅に改善する特に有利な実施形態では、特に多重化が使用される場合に、ウェーブレット変換関数を生の融解曲線データに適用する新しいアプローチが使用される。
ウェーブレットは、データを異なる周波数成分に分割した後に、そのスケールに一致する解像度で各成分を調べる数学的関数である。これらの基底関数は、限られた期間の短い波である。ウェーブレット変換の基底関数は、周波数に対してスケーリングされる。基底関数として使用することができる多くの様々なウェーブレットが存在する。マザーウェーブレットとも呼ばれる基底関数~(t)は、変換関数である。マザーという用語は、変換過程で使用される種々のサポート領域を有する関数が1つのメイン関数又はマザーウェーブレットから導出されることを意味する。つまり、マザーウェーブレットは、他の窓関数を生成するためのプロトタイプである。一般に、ウェーブレットΨ(t)は複素数値関数である。一般的なウェーブレット関数は、以下の通りに定義される:
このシフトパラメーター「τ」は、時間の窓の位置を決定し、したがってシグナルx(t)のどの部分が分析されているかを定義する。ウェーブレット変換分析では、周波数変数「ω」はスケール変数「s」に置き換えられ、時間シフト変数は「τ」によって表される。
ウェーブレット変換はこれらのマザーウェーブレット関数を利用して、シグナルx(t)をスケーリングされたウェーブレット関数Ψ(t)の重み付けされたセットへの分解を行う。ウェーブレットを使用する主な利点は、データの損失をもたらさずに、所与のより大きくより複雑なデータセットの特徴的でユニークなシグネチャーをキャプチャすることができることである。
例えば、長さが1ヌクレオチドだけしか相違しない2つの増幅産物から取得された2つの大きな生の融解曲線データセットは非常に類似しているが、ウェーブレット変換を適用した後に2つの異なるシグネチャーが生成される。増幅産物の1つに挿入又は欠失が存在したことを一貫して結論付けるために、そのようなシグネチャーを互いに比較することがより容易になる。結論として、ウェーブレット関数を適用すると、大規模で類似したデータセットを処理する場合にノイズが削減され、計算効率及び計算速度が向上する。したがって、ウェーブレット処理されたデータは、1つの実験内で幾つかの多重化された標的の分析を組み合わせることを必要とする試料の分類に、特に、微小なデータ変動の識別を必要とする大きな生データセットが生成されている場合に特に適している。
現存のMSI検出方法は、以下の不利点に悩まされている:
(a)リピート長さを決定するために、PCR後分析を実行するための追加の専用の機器が必要となること、及び/又は典型的には、高度に熟練した専門家によってこの分析が解釈される必要があること、又は、
(b)dsDNAインターカレーション色素を用いた高解像度融解曲線の場合に、種々のアンプリコンからの重複した融解シグナルを避けるために非常に限られた多重化能が不利点であり、更に安定な(野生型)配列に対する不安定な(突然変異型)配列の相対量を定量化する能力がもたらされない。融解曲線データに離散ウェーブレット変換を適用すると、非常にロバストで一貫した結果の解釈が完全に自動化された方式で得られるため、上記の不利点が克服されることが確認された。
したがって、好ましい実施形態では、本発明の方法は、
(a)融解曲線データにウェーブレット変換を適用する工程と、
(b)(a)から得られた結果を、上記のホモポリマーリピートのいずれかにおけるヌクレオチドの数の決定に使用する工程と、
を更に含む。すなわち、一実施形態では、ウェーブレット変換関数を適用して、試験試料から核酸の融解曲線データを分析し、選択したバイオマーカーパネルからホモポリマーリピートのそれぞれにおけるインデルの存在又は不存在を決定し、その情報を使用することで、上記検査試料をMSIあり又はMSIなしと分類することができる方法が提供される。
好ましい実施形態では、融解曲線データは、生の融解(melting)曲線データ、すなわち、核酸の解離実験又は会合実験から取得されたシグナルの生のメトリックを表すデータである。すなわち、そのような生のメトリックは、例えば一次導関数融解曲線分析又は二次導関数融解曲線分析を適用することによって数学的に処理されない。それというのも、該分析は当該技術分野では頻繁に行われるが、生のメトリックを検出器により収集した後に、それらはコンピューターに送信され、そこでウェーブレット変換関数が適用されるからである。
最も好ましい実施形態では、ウェーブレット変換は、離散ウェーブレット変換すなわち「DWT」である。DWTは、ウェーブレットが離散的にサンプリングされる任意のウェーブレット変換である。他のウェーブレット変換と同様に、フーリエ変換を上回る主な利点は時間分解能であり、それにより周波数情報及び位置情報(時間の位置)の両方がキャプチャされる。生のメトリックに離散ウェーブレット変換を適用すると、種々のスケールで再構成出力ウェーブレット係数のセットが生成される:(a)一方は、入力シグナル成分の低周波成分である近似出力であり、(b)他方は、様々なレベルでの入力シグナルの詳細である高周波数成分を与える多次元出力である。さらに、これらの係数は、離散ウェーブレット変換係数すなわちdwt係数と呼ばれる。特徴を異なるスケール(又は周波数)に分離することで、オペレーター又はコンピューターアルゴリズムは、或る特定の決定又は分析に最も関連するdwt係数を選択することが可能となり、このプロセスはしばしば、ウェーブレットフィルタリングと呼ばれる。このプロセスを繰り返し適用することで、シグナルを複数の周波数帯に分割することができる。融解曲線データに適用した場合に、最も高い周波数のウェーブレット係数は殆どがノイズであるのに対して、最も低い解像度係数は、先行する増幅反応における機器のゲイン又は増幅効率に関連する情報をキャプチャする。両者とも融解曲線分析を受ける試料における特定のオリゴヌクレオチドの特定自体には、殆ど関連性を有しない又は全く関連性を有しないが、そのような特定の信頼性に関しては潜在的な関連性を有する。DWTの計算及びプロットに必要な全ての関数を含むパッケージは記載されており(Aldrich, 2015)、熟練したプログラマー及び数学者に知られている。
本方法の好ましい実施形態では、融解曲線データに対して離散ウェーブレット変換を実施してdwt係数を生成する工程は、特定の設定で、生データ又は削減データの1次元(1D)ウェーブレット変換を、Daubechiesファミリーからのマザーウェーブレットを使用して計算することとなる。マザーウェーブレットは、離散ウェーブレット変換の基礎として選択される未修正のウェーブレットである(Daubechies, 1992)。DB8マザーウェーブレットを使用した場合に良い結果が得られた。DB4マザーウェーブレット及びHaarマザーウェーブレットを用いた追加の検査によっても、非常に満足のいく性能が得られ、その結果は要求に応じて得ることができる。このことに基づき、他の既存のマザーウェーブレットも適切であり得ると考えられる。マザーウェーブレットを、好ましくは引き続きピラミッドdwtアルゴリズムを使用して拡張し、シフトさせ、スケーリングすることで、分析されるべき蛍光融解曲線シグナルを最もよく表す一連の子ウェーブレットを生成し、ここで、該アルゴリズムから得られた一連のウェーブレット及びスケール係数が離散ウェーブレット変換の結果である。特定の例では、DWTの境界条件は周期的である。該変換に対する生データ入力は、測定されたデータ全体又は所与の実験の全ての重要なイベントを対象に含めるそのサブセットであり得る。
上記に即して、dwt係数を生成するために、本発明の方法では、生の融解曲線データ又は数学的に変換された融解曲線データ若しくは削減された融解曲線データに対して、すなわち生データの選択に対してのみ、離散ウェーブレット変換が適用され得る。
さらに、ヌクレオチドの数の最終決定のために全てのdwt係数を常に使用する必要があるわけではない。計算速度を上げるために、dwt係数の選択だけで十分である場合もある。好ましくは、離散ウェーブレット変換は生の融解曲線データに対して行われる。しかしながら、任意に生データの選択を生成するために、当該技術分野で知られる任意の数学的方法に従って、生データに対してデータ削減を行うことができる。後者の場合に、dwt係数を生成するためにも、上記生データの選択に離散ウェーブレット変換が適用されることとなる。まとめると、特定の実施形態では、(a)から得られた結果は、生の融解曲線データから得られたdwt係数であり得る。代替的な実施形態では、(a)から得られた結果は、生の融解曲線データの選択から得られたdwt係数であり得る。更に別の特定の実施形態では、(a)から得られた結果は、上記の代替的な実施形態のいずれかから得られたdwt係数の選択であり得る。
特定の一実施形態では、離散ウェーブレット変換は、1D離散ウェーブレット変換である。更により詳細な実施形態では、1D離散ウェーブレット変換は、1D Daubechiesウェーブレット変換である。
離散ウェーブレット変換を適用するためには、マザーウェーブレットを選択する必要がある。更に好ましい実施形態では、Daubechiesファミリーからのマザーウェーブレットを使用するDaubechies離散ウェーブレット変換が適用され、最も好ましいのは、DB8マザーウェーブレット又はDB4若しくはHaarマザーウェーブレットである。
原則として、代替的な可能な実施形態では、単一ヌクレオチドレベルでの識別を可能にする情報をキャプチャする有意係数を生成するのに適した任意のウェーブレット変換関数を本発明の方法で使用することができる。可能な例には、Haarウェーブレット(これはDaubechiesファミリーの一部とみなすこともできる)、最小非対称ウェーブレット、coifletウェーブレット又はbest localizedウェーブレットが含まれる。代替的な実施形態では、リフティングアルゴリズム又は双対木複素ウェーブレット変換を含むdwtを計算するための代替的なアルゴリズムを使用することができる。離散ウェーブレット変換の他の形式には、ダウンサンプリングが省略された非間引きウェーブレット変換(non- or undecimated wavelet transform)、又はウェーブレットの正規直交基底が周波数空間で適切に構築されたトップハットフィルターから形成されるNewland変換が含まれる。他の例が存在する可能性があり、適切な当業者であれば、その例を本明細書に開示された方法に容易に適用することができるであろう。
本発明の方法の主な利点の1つは、特に既知の標準的なqPCRシステムに対するそれらの簡単な自動化及び適合化である。したがって、特定の実施形態では、上記のホモポリマーリピートにおけるヌクレオチドの数の決定が、自動化された方式で、例えばソフトウェアによって実行される方法が提供される。この方法は、例えば、本発明の方法から取得されたシグナルを読み取り、該シグナルを分析し、所与の試料からの選択されたマーカーにおけるインデルの存在又は不存在に関する結論を提供することができる適切なハードウェア及びソフトウェア構成を備えた自動化システムで行うことが可能である。そのような自動化に特に適したシステムは、Biocartis社のIdylla(商標)プラットフォームであり、これによりPCRの実施及びその結果の解釈の提供に加えて、試料処理及び核酸単離のワークフロー全体も完全に自動化される。したがって、可能な実施形態では、本発明は、MSI遺伝子座を分析するための完全自動化されたサンプル・ツー・リザルト(sample-to-result)方法を提供する。
本発明の更に別の興味深い実施形態では、上記のホモポリマーリピートのいずれかにおけるヌクレオチドの数の決定が、コントロール生体試料においても更に行われる方法が実施される。そのようなコントロール試料又は参照標準試料は、例えば、上記の選択されたホモポリマーリピートのいずれかにインデルを有することが確認されたMSI-H腫瘍に由来する物質又は合成の若しくは単離された核酸コンストラクト、例えばプラスミドであり得る。特に有利な参照標準は、例えば、合成DNA及びゲノムDNAの両方の混合物を含むAcrometrixの標準の1つであり得る。その技術では、非常に高度に特徴付けられ、シーケンシングされた細胞系統GM2438がゲノムバックグラウンドDNAとして使用され、そこにシーケンシングされた合成標的がスパイクインされる。Acrometrixのアプローチでは、これらの標的は、例えば、選択されるバイオマーカーと関連する改変を模擬した配列を含む線状合成DNA分子であり、本発明の文脈では、該配列は、好ましくはPCR目的のためにそれらの隣接配列と共にインデルを含む上記のホモポリマーリピートのいずれかの配列であり得る。該標的は、上記の改変(alteration)を模擬した配列に結合された「テール」配列を更に含み、それは同定及び定量化の目的に更に役立つ。得られる配列は、改変を模擬した配列とテール配列とを含むハイブリッド配列であるとみなされる。該テールは、例えば、検出アッセイが利用可能な遺伝子におけるSNP等の既知の改変を模擬していてもよく、したがって、この場合に、選択される1つ以上のマーカーにおけるインデルのような改変を模擬した配列を間接的又は絶対的に定量化するための追加の手段を提供し得る。そのような標準は、例えば検証及び妥当性確認の目的のために、例えば更なるNGS調査が想定され、特に現在のNGSアプローチが依然としてホモポリマーリピート配列におけるインデルについての情報を見逃す傾向にある場合に有用であり得る。
あるいは、本発明の好ましい実施形態では、コントロール生体試料は、本発明の目的のために作製され、ブダペスト条約に従って2017年11月28日にベルギーのBCCM/GeneCorner寄託当局にアクセッション番号LMBP 12278CBで寄託されたHTC116 cl.110268743細胞系統に由来する物質を含む。該細胞系統は、上記のホモポリマーリピートのそれぞれに1つのホモヌクレオチド欠失を含む。これは、該細胞系統のゲノムが、以下の突然変異型(すなわちMSI変異体)ホモポリマーリピート:
ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる10個のアデニンと、
ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる10個のアデニンと、
ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる9個のアデニンと、
ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる7個のアデニンと、
ヒトBTBD7遺伝子に局在化された、chr14:93241685の位置から始まる9個のアデニンと、
ヒトSEC31A遺伝子に局在化された、chr4:82864412の位置から始まる8個のチミンと、
ヒトRYR3遺伝子に局在化された、chr15:33865341の位置から始まる9個のアデニンと、
を含むことを意味する。
さらに、この細胞系統はまた、他の幾つかのMSI関連リピート、例えば、比較研究で使用することができるBethesdaパネルからのBAT25及びBAT26についてのインデルを含む。
関連する態様では、本発明はまた、細胞系統HTC116 cl.110268743に由来する細胞又は任意の他の物質、特に遺伝物質を提供する。そのような物質は、単離されたゲノムDNA又は細胞溶解物であり得る。そのような物質の他の適切な形は、本明細書に示される方法及び上記方法に基づくキットの最終設計に応じて、当業者には明らかであろう。
更なる態様では、本発明はまた、本発明のMSIバイオマーカーパネルにおけるインデルを検出するため又は本発明による方法を実施するためのキットを提供する。特定の実施形態では、本発明は、本発明のバイオマーカーパネルに提供される上記のホモポリマーリピートを含む核酸領域を検出するためのツールを含む、生体試料におけるMSI遺伝子座を分析するためのキットを提供する。好ましくは、上記ツールは、配列特異的であり、すなわち、選択された長さのそれらの隣接領域を有する上記ホモポリマーリピートを配列特異的に認識するように設計される。好ましい実施形態では、配列特異的なツールは、ホモポリマーリピートを含む領域にハイブリダイズすることができるプライマー又はプライマーペア又はプローブを含む。例えば、そのようなツールは、好ましくは、リピートの上流又は下流の領域にハイブリダイズし、増幅反応において、上記ホモポリマーリピート又は、例えば野生型ホモポリマーリピート型と比較して1つ又は2つだけ少ない又は多いホモヌクレオチドを含むそれらの突然変異型の少なくとも1つを含む増幅産物を生成するように設計されたプライマーを含み得る。別の例では、該ツールは、上記のホモポリマーリピート配列(又はそのインデルを含む突然変異型)のいずれか及び上記リピート配列の少なくとも1つの直接隣接する領域(すなわち、上流又は下流、しかし好ましくは両方)にハイブリダイズすることができるプローブを含み得る。特定の実施形態では、該ツールは、配列番号1~配列番号14から選択される少なくとも1つのプライマー又はプライマーペアを含む。代替的な特定の実施形態では、該ツールは、配列番号15~配列番号21から選択される少なくとも1つの分子ビーコンプローブを含む。可能な実施形態では、該ツールは、配列番号1~配列番号14から選択される少なくとも1つのプライマー又はプライマーペア及び配列番号15~配列番号21から選択される少なくとも1つの分子ビーコンプローブを含む。該ツールは、例えば、プルーフリーディングポリメラーゼ、適切な緩衝系、dNTP、適合可能なクエンチャーを有し得る各種色素等を更に含み得る。更なる実施形態では、好ましくはHTC116 cl.110268743細胞系統に由来する物質であるコントロール生体試料物質を含むキットが提供される。
好ましい実施形態では、カートリッジを更に含むキットが提供される。あるいは、キットは、カートリッジの形で提供され得る。したがって、有利には、本発明は、上記のバイオマーカーパネルのホモポリマーリピートを含む核酸領域を検出するための上記ツールが、自動化システムと嵌合可能なカートリッジで提供されるキットを提供する。上記のように、カートリッジ及びこれと嵌合可能な自動化システムの適切な例は、Biocartis社のIdylla(商標)プラットフォームである。本発明に同様に適用可能なこのシステムの更なる詳細は、国際公開第2007004103号、欧州特許第1896180号、欧州特許第1904234号及び欧州特許第2419705号に見出すことができる。本明細書で引用された文献から理解され得るように、有利なカートリッジは、PCRを実施するための手段を備えるだけでなく、核酸供給源又は試料を直接的に受け入れ、上記核酸供給源から核酸を単離又は遊離させ、こうして遊離された核酸を後続のPCRベースのアッセイのために(例えばポンプ圧送により)供給するよう設計することもできる。
好ましい実施形態では、プライマー、プローブ及び/又はプルーフリーディングポリメラーゼを含む他の試薬等のツールは、保存寿命の増加に寄与するスポッティングされた形式で上記カートリッジに提供され得る。
更なる関連の態様では、本発明はまた、本発明の方法によるMSIバイオマーカーパネルにおけるインデルを検出するための及び/又は本発明によるキットを処理するための自動化システムを提供する。
可能な実施形態では、そのような自動化システムは、コンソール及び本発明の再利用可能なカートリッジと適合可能な機器を備え得る。この機器は、アッセイを実施するための制御モジュールを備える。コンソールは、アッセイの間の機器の動作及びカートリッジの状態を制御及び監視するためのコンピューターである。アッセイは、好ましくは全体的にカートリッジ内部で実行され、例えばリアルタイムPCRを含み得る。上記のように試薬が事前に装入された本発明のそのようなカートリッジに試料を挿入した後に、そのカートリッジは上記機器に装填され、この機器はカートリッジ内で自律的に実施されるアッセイを制御する。アッセイの実行後に、コンソールソフトウェアは結果を処理し、自動化システムのエンドユーザーがアクセス可能なレポートを作成する。
自動化システムは、開放型又は閉鎖型の自動化システムであり得る。試料がカートリッジ中に添加又は挿入された後に、そのカートリッジは上記システム内に供給され、該システムは閉鎖され、システムの動作の間に閉鎖されたままとなる。閉鎖型のシステムは機内に必要な試薬を全て収容しているため、閉鎖型の構成には、該システムがコンタミネーションのない検出を実行するという利点がある。あるいは、自動化システムにおいて開放型のアクセス可能なカートリッジが使用され得る。必要な試薬は、必要に応じて開放型のカートリッジに添加され、その後に試料をその開放型のカートリッジに挿入することができ、該カートリッジは閉鎖型の自動化システム内で実行され得る。
好ましくは、1つ以上の反応チャンバー及び1つ以上の流体チャンバーを含むカートリッジベースのシステムが使用される。流体チャンバーの幾つかは、試料から溶解物を生成するために使用される流体を保持することができる。他のチャンバーは、反応緩衝液、洗浄液及び増幅溶液等の流体を保持することができる。反応チャンバーは、洗浄、溶解及び増幅等の検出の種々の工程を実施するために使用される。
上記の実施形態による特に望ましい実施形態では、本発明による方法の結果の解釈を能率化及び促進するために、融解曲線の分析はまた、コンピューター実装方法によって自動化された方式で行われる。
最後に、本発明の課題はまた、腫瘍試料又は腫瘍物質を含むと予想される生体試料におけるMSI遺伝子座の分析における、本発明によるバイオマーカーパネル、方法、カートリッジを含むキット及び自動化システムの使用を提供することである。
好ましい実施形態では、腫瘍は結腸直腸腫瘍(CRC)である。代替的な実施形態では、腫瘍は卵巣癌又は子宮内膜癌である。更に別の実施形態では、腫瘍は胃癌である。
可能な実施形態では、本発明はまた、腫瘍試料におけるMSI遺伝子座の分析及び該腫瘍試料を得た被験体の免疫療法に対する応答の該分析に基づく予測における、本発明によるバイオマーカーパネル、方法、カートリッジを含むキット及び自動化システムの使用を提供する。この使用は、文献、特にゲノム中のインデルの蓄積の増加が、多量のネオアンチゲン配列をコードする新規のオープンリーディングフレームの発生と相関することが示されたTurajlic et al., 2017, Lancet Oncologyからの最近の報告から考えて想定することができる。これに即して、続けて本発明者らは、本発明のバイオマーカーパネルにおける少なくとも2つ又は3つのインデルの検出が、試料毎にスコア付けされたインデル及びネオアンチゲンの総数と強く相関することを実証する。本発明者のデータは更に、腫瘍の明確な免疫原性表現型が本発明の方法及び/又はキットによって予測され得ることを示している。このことは以下の理由から非常に有望である。免疫チェックポイント阻害剤は、最近、切除不能又は転移性の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)腫瘍の治療のために部位又は組織学を問わず承認された。観察された応答率は約40%であった。現在、MSIステータスを検出するためのFDAで承認された検査は存在しない。MSI-H腫瘍は、高いリンパ球浸潤及び高い腫瘍突然変異荷重等の組織病理学的特徴を共有している。具体的には、これらの腫瘍は、多数の挿入-欠失(インデル)突然変異を有し、該突然変異は抗原性が高く、多数のネオアンチゲンをもたらすことが知られている。本発明者らの知見によると、高いインデル率を有するMSI-H腫瘍は、PD-1、PD-L1又はPD-L2等の免疫チェックポイント分子を標的とする抗体による免疫療法に高い応答性を有する可能性が高いこととなる。したがって、別の可能な実施形態では、ホモポリマーリピートの数について取得された情報を使用して、生体試料を取得した人に免疫療法を受けさせることについて決定する工程を含む、本発明によるMSI遺伝子座を分析する方法が提供される。可能な実施形態では、該方法は、ホモポリマーリピートの数について取得された情報を使用して、腫瘍突然変異負荷又は腫瘍インデル負荷を推定する工程を含み得る。上記方法の好ましい実施形態では、推定された腫瘍突然変異負荷又は腫瘍インデル負荷は、突然変異の総数の推定値として提供される又はスコアとして提供される。特定の実施形態では、本発明の方法は、ホモポリマーリピートの数又は腫瘍突然変異負荷若しくは腫瘍インデル負荷又は突然変異の総数の推定値若しくはスコアについて取得された情報を使用して、生体試料を取得した人に免疫療法を受けさせることについて決定する工程を含み得る。上記で説明したように、そのような方法の好ましい実施形態では、免疫療法は、免疫チェックポイント因子を標的とする抗体による治療を含み、ここで、上記抗体は、最も好ましくは以下の標的:PD-1、PD-L1又はPD-L2のいずれかに特異的な抗体である。更なる態様では、本発明者らのデータはまた、高ネオアンチゲン保有腫瘍が、キメラ抗原T細胞又は治療ワクチン療法による、発生したネオアンチゲンを特異的に標的とするアプローチに応答性であることも示唆している。したがって、上記手段を実装する本発明の方法の可能な実施形態も想定され得る。さらに、被験体の診断、予後診断及び臨床経過観察における本発明のこれらの使用及び他の使用は、当業者にとっては容易に推論可能であろう。
1. 高感度のマーカーの新規のセットを用いた、癌試料におけるマイクロサテライト不安定性(MSI)の検出
任意の所与のマーカーのセットから、4つのマーカーの最小セットを導き出すことは自明ではない。例えば、非特許文献7(eLife社)によって記載された、59個のマーカーのパネルを使用する18個のMSI-H試料のSequenom社の分析により、平均して試料の44.26%のマーカーがいわゆる突然変異体であることが明らかになった。この大きなマーカーのパネルはMSIステータスの検出に非常に高性能であるが、そのパネルから得られた4つの選択されたマーカーのランダムなセットは、ACRV2A、DIDO1、MRE11、SULF2を含む本明細書で提案されたコアセットと比較してずっと悪い理論的性能を示す。さらに、そのようなランダムに選択されたパネルは、例えば、カリブ海地域(Caribbean)の分集団に関してマーカーTMEM65で確認されたような、該パネルがホモポリマー領域の人種依存的な違いを表すマーカーを含み得るという不利点に悩まされる傾向にある。そのような違いは、ロバストで高性能な少数のマーカーパネルの設計を非常に困難にする。それというのも、その違いがMSIによって引き起こされる変化の正しい解釈を損なう場合があるからである。このことは、少量の可変のマーカーをコールする場合に及び/又は、例えば、特にアフリカ人集団における広い個人の変動範囲及び多重の変異型アレルを有するMSIバイオマーカーの旧来のBethesdaセットで一般的に見られる適切な制御を欠いている場合に特に重要である(Buhard et al., 2006)。
CRC、胃癌及び子宮内膜癌におけるMSIプロファイリング
7つのマイクロサテライトマーカー(BTBD7、RYR3、SEC31A、ACVR2A、DIDO1、MRE11及びSULF2)のステータスを、128個のMSI-H結腸直腸癌試料においてプロファイリングした。マーカー選択のロバスト性を評価するために、幾つかの臨床現場及び異なる人種群を含めた。さらに、15個のMSI-H胃癌試料及び19個のMSI-H子宮内膜癌試料において、7つのマーカーのステータスを確認した。リピート長さをFFPE DNAでPCRによって決定し、それに続いて、分子ビーコンによる増幅産物の特性決定を行った。
材料及び方法
試料:全部で128個のヒトMSI-H CRC FFPE試料を、ケンブリッジ大学、Instituto Portugues de Oncologia do Porto、Cureline社、Boca Biolistics社、Trans-Hit社、Geneticist inc社、デンマーク国立病院、Origene社及びAsterand社を含む種々の供給源から取得した。15個のヒトMSI-H胃試料は、Cureline社及びTrans-Hit社から取得し、19個のヒトMSI-H子宮内膜試料は、IDIBELLから取得した。
試料処理:MSI-H FFPE試料のそれぞれを、Biocartis社の商標のIdylla(商標)流体カートリッジに挿入した。カートリッジを閉じて、自動化されたPCRベースの遺伝子分析のためのIdylla(商標)プラットフォームに装填し、その後に、完全自動化された試料処理を開始した。簡潔には、Biocartis社のFFPE液化プロトコルに従ってFFPE試料からDNAを放出させ、次いで、標準的なIdylla(商標)プロトコルに従ってカートリッジのPCR区間にポンプ圧送した。
PCR:以下に示されるように、プライマーペア又はプライマーペア二重鎖毎に、以下のPCRミックスを含むように、カートリッジのPCR区間に装入した。
マーカー毎のプライマーペア及びプローブの配列は、以下の通りであった:
PCR条件は、以下の通りであった:
アンプリコン融解:PCR産物をカートリッジ内にて92℃で2分間変性させた。次に、その混合物を0.3℃刻みで40℃から76.6℃まで加熱し(1サイクル当たり12秒)、同時に0.3℃毎の増加後に蛍光シグナルをモニタリングすることによって、融解曲線蛍光データを収集した。
後処理:データ分析の最初の工程で、融解曲線の生の蛍光測定値をIdylla(商標)機器から取得する。次の工程では、測定値のベクトルから最初の64サイクルのみを保持する。シグナルの最も重要な変化がこの窓内で観察されるので、このサブセットを「関心領域」すなわちROIと呼ぶ。後のサイクルでは、主としてビーコンの融解が観察される。後処理アルゴリズムの次の工程は、離散ウェーブレット変換(DWT)を測定ベクトル(ROI)に適用することである。ウェーブレットは、特定の温度域で生ずる低周波現象であるため、融解曲線の分析に特に十分に適している。ウェーブレットは、時間分析及び周波数分析を同時に行うことができる。つまり、ウェーブレットは、低周波数変化に関して何が起こっているのか及びこれがいつ起こっているのかの両者を解釈することができる。したがって、ウェーブレットは融解曲線過程を簡潔にまとめる。この具体的な場合では、DB8ウェーブレットが使用され、第3レベルの係数が保持される。この変換後に、スケール及びウェーブレット係数の両方が保持され、8つの係数の2つのセットが得られる。アッセイに存在する各マーカーについて、16個のウェーブレット係数の1つのセットを計算する。マーカー毎のこのウェーブレット係数のセットを、各マーカーについての後処理結果と呼ぶ。
決定木:融解曲線データのデータ分析の2番目の工程を、決定木と呼ぶ。この工程で、後処理結果に基づいて有効な試料を分類するために、パターン認識アルゴリズムを適用する。このために、ニューラルネットワークである分類アルゴリズムを、各マーカーの後処理結果に適用する。このネットワークは、入力遺伝子型が既知のラベル付きデータでトレーニングされている。参照データの場合に、このラベル付けは、報告された入力遺伝子型に基づいている。臨床データの場合に、このラベル付けは、融解曲線の専門家による融解プロファイルの視覚的スコア付けから得られる。ニューラルネットワーク内の重みの反復最適化を通じて、上記アルゴリズムは野生型(WT)曲線と突然変異型曲線との間を区別するように学習することができる。上記アルゴリズムは、決定の確実性を反映する各マーカー遺伝子の出力として確率スコアを与える(突然変異型の場合は1、WTの場合は0)。少なくとも2つのマーカーが0.5より高い確率スコアを有する場合に、試料はMSI-Hとしてスコア付けされる。
結果
1. CRCにおけるMSIプロファイリング
1番目の分析:ACVR2A、DIDO1、MRE11及びSULF2を含む4つのマーカーのコアセットを、128個のMSI-H試料のプールからMSI-H陽性試料を回収する能力において評価した。後処理された融解曲線データの決定木により、インデルを含むと検出された少なくとも2つのマーカーが得られる場合に、試料は陽性とスコア付けされる。4つのマーカーのこのコアセットを使用すると、試料の96%をMSI-Hとして特定することができた。最小の許容可能な性能は、試料の少なくとも95%を回収することと定義されているので、上記で為された選択は、MSIマーカーのコアセットとして許容された。
マーカー数 マーカー MSI数 %MSI
4つのコア ACVR2A,DIDO1,MRE11,SULF2 123 96%
これらのマーカーの性能の更なる評価を与えるために、4つのマーカーのコアパネルからの3つのマーカーの全ての可能な順列を同じ性能分析にかけた。これらの結果は、どの可能な部分選択についても、83%から93%までの範囲で性能が悪いことを示している。より高いロバスト性を癌型全体にわたるアッセイに与えるために、少なくとも4つのマーカーを有する設計が好ましい。
マーカー数 マーカー MSI数 %MSI
サブ3 ACVR2A,DIDO1,SULF2 119 93%
サブ3 ACVR2A,DIDO1,MRE11 118 92%
サブ3 ACVR2A,MRE11,SULF2 109 85%
サブ3 DIDO1,MRE11,SULF2 106 83%
2番目の分析:4つのマーカーのコアセットに追加のマーカー(BTBD7)を追加することによって、もう1つの試料を、MSI-Hとしてスコア付けすることができ、これは正確にスコア付けされた試料の97%を占めるため、このパネルはMSIステータスの規定においてより効率的となる。
マーカー数 マーカー MSI数 %MSI
4つのコア+BTBD7 ACVR2A,DIDO1,MRE11,SULF2,BTBD7 124 97%
3番目の分析:上記5つのマーカーのセットに追加のマーカー(SEC31A)を追加することによって、検査された限られた試料セットにおける全ての試料を、MSI-Hとしてスコア付けすることができ、これにより更に一層の改善がもたらされる。
マーカー数 マーカー MSI数 %MSI
4つのコア+BTBD7+SEC31A ACVR2A,DIDO1,MRE11,SULF2,BTBD7,SEC31A 128 100%
4番目の分析:上記6つのマーカーのセットに更なるマーカー(RYR3)を追加することによって、当然ながら、なおも全ての試料がMSI-Hとしてスコア付けされる。本データからは直ちに認識することができないが、理論的には、7番目のマーカーを追加すると、より大きな試料セットが分析される場合に、アッセイの性能はなおも高められる可能性が高い。理論的には、MSI-H試料におけるこれらの突然変異したマーカーの実測頻度を踏まえると、7つのマーカーの場合に偽陰性率は、約1/1900程度の低さであると予測され、それはより大きな試料セットの場合には重要となり得る。
マーカー数 マーカー MSI数 %MSI
4つのコア+BTBD7+SEC31A ACVR2A,DIDO1,MRE11,SULF2,BTBD7,SEC31A,RYR3 128 100%
+RYR3
CRC試料分析の結果を図1に示す。
2. 胃癌及び子宮内膜癌におけるMSIプロファイリング
1番目の分析:CRCマーカー(ACVR2A、DIDO1、MRE11及びSULF2)における最高の性能の4つのコアセットを、次いで15個の胃癌試料及び19個の子宮内膜(EN)癌試料を含む34個の癌試料のプールでも評価した。
マーカー数 マーカー MSI数 %MSI
4つのコア ACVR2A,DIDO1,MRE11,SULF2 32 94%
これらの結果は、ACVR2Aにおけるホモポリマーリピートが他の癌型よりもCRCにおいてずっと有能なマーカーであることを示唆している。しかしながら、試料プールが非常に小さいにもかかわらず、胃癌及びEN癌におけるコアセットの結果は、95%の許容可能な閾値に非常に近くなっており、それは、より大きな試料プールにおいて、本明細書に示されるコアな4つのマーカーセットを一般的にCRCだけでなく、他のMMR欠損腫瘍型又はマイクロサテライト不安定性腫瘍型に適用することができるという良好な指標である。コアパネルの性能をより良好に観察するためには、より多くの試料をプロファイリングする必要がある。
2番目の分析:4つのマーカーのコアセットに追加のマーカー(BTBD7)を追加することによって、もう1つの試料を、MSI-Hとしてスコア付けすることができ、この小さな試料セットでは、既にそのような5つのマーカーパネルの性能は、正しくスコア付けされた試料の97%という非常に満足のいく値となっている。
マーカー数 マーカー MSI数 %MSI
4つのコア+BTBD7 ACVR2A,DIDO1,MRE11,SULF2,BTBD7 33 97%
3番目の分析:上記5つのマーカーのセットに追加のマーカー(SEC31A)を追加することによって、全ての試料をMSI-Hとしてスコア付けすることができる。
マーカー数 マーカー MSI数 %MSI
4つのコア+BTBD7+SEC31A ACVR2A,DIDO1,MRE11,SULF2,BTBD7,SEC31A 34 100%
3. Idylla(商標)MSI検査による7つのマーカーの自動化されたMSIプロファイリング
背景:マイクロサテライト不安定性(MSI)の検出は、結腸直腸癌(CRC)を有する全ての患者に推奨されている。現在の臨床的参照方法は、ミスマッチ修復タンパク質の免疫組織化学染色及び/又はDNAの高頻度に突然変異した短いタンデムリピート領域のPCR分析である。Idylla(商標)MSI検査は、全エクソーム配列データから偏りなく選択された短いホモポリマーの新たなセットを使用して開発され(非特許文献7;eLife社)、現在の方法と比べて高い特異性及び選択性でより素早く検出することができる。
方法:プロトタイプのIdylla(商標)MSI検査カートリッジを、最終設計まで開発した。7つのバイオマーカーの新規セットのリピート長さを、試料調製、DNA増幅、それに引き続いての融解曲線分析及び自動化された解釈を含む完全自動化されたワークフローを可能にするこれらのプロトタイプ検査を使用して、348個のホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)CRC試料について決定した。マーカー選択のロバスト性を評価するために、患者の試料の幾つかの臨床現場及び異なる人種群を含めた。全ての試料を、MSI検出の参照方法(Promega社のMSI分析システム)で更にスクリーニングした。
結果:それぞれIdylla(商標)及びPromega社によって、127個(36.5%)及び116個(33.3%)の試料がMSI-high(MSI-H)として分類され、209個(60.1%)及び220個(57.3%)の試料がマイクロサテライト安定性(MSS)として分類されたが、12個の試料(3.4%)は、どちらの方法によっても分類することができなかった。一致分析により、96.1%(93.4%~97.7% 95%のCI)の全体的な一致が明らかになった。14個の例は、Idylla(商標)によれば、MSI-Hであったが、Promega社によれば、MSS(11)又は無効(3)であり、Idylla(商標)では3/7の陽性マーカーの中央値を有する。
結論:この研究では、CRC試料の大きく多様なセットでMSI-HをMSSステータスから区別するために、新規のMSIバイオマーカーが妥当性確認された。それにより、MSI検査についての完全自動化された分析の可能性も実証された。プロトタイプのIdylla(商標)MSI検査は、たった1つのFFPE腫瘍切片から150分以内に正確で信頼性のある結果をもたらす完全に統合されたIdylla(商標)プラットフォームと適合可能である(参照試料は必要とされない)。
総合的結論
本明細書に示された、ACVR2A遺伝子、DIDO1遺伝子、MRE11遺伝子及びSULF2遺伝子のホモポリマーリピートを含むたった4つのコアマーカーのパネルが、CRC試料において非常に優れた性能を示す。そのパネルはまた、本発明者らがその非常にわずかにしか到達せず、非常にわずかしかプロファイリングすることができなかったにもかかわらず、胃癌試料及び子宮内膜癌試料においても非常に優れた性能を示す。CRC以外の起源のより多くのMSI-H試料をプロファイリングすることで、おそらく2つのマーカーの最小のコアパネルがより広い範囲の癌に適用可能であることの確証となる。現在では、ACVR2A遺伝子におけるホモポリマーは、CRCのための特に高性能で非常に特異的なMSIマーカーであるように思われる。したがって、本発明の代替的な実施形態として、他の癌型において、もしかすると他の最小のコアパネルを提案して検査することができるかもしれない。本明細書に示された予備データから、以下の3つのコアな4マーカーパネル:(1)DIDO1、SULF2、BTBD7及びSEC31A、(2)DIDO1、SULF2、BTBD7及びACVR2A、並びに(3)DIDO1、SULF2、SEC31A及びRYR3を提案することができると思われる。MMR欠損試料の種類にかかわらず、ACVR2A、DIDO1、MRE11、SULF2及びBTBD7を含むコアな5マーカーパネルは、種々の起源の試料の診断に一般的に適していることが示されたため、本発明の特に興味深い実施形態をなす。
2. MSIの検出のための7つのホモポリマーインデルの新規のセットは、子宮内膜癌及び結腸直腸癌における腫瘍突然変異荷重及び総インデル負荷と関連している
背景:免疫チェックポイント阻害剤は、最近、切除不能又は転移性の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)腫瘍の治療のために部位又は組織学を問わず承認された。観察された応答率は約40%であった。現在、MSIステータスを検出するためのFDAで承認された検査は存在しない。MSI-H腫瘍は、高いリンパ球浸潤及び高い腫瘍突然変異荷重等の組織病理学的特徴を共有している。具体的には、これらの腫瘍は、多数の挿入-欠失(インデル)突然変異を有し、該突然変異は、単一ヌクレオチド変異体とは対照的に、フレームシフトを引き起こすことが知られているため、抗原性が高い多数のネオアンチゲンをもたらす。したがって、MSI-H腫瘍における高いインデル率は、抗PD1療法に対する応答を予測することができる。
方法:本発明者らは、本発明者らによる以前のレポート(非特許文献7、eLife社)から全エクソームシーケンシングデータを入手可能なMSI腫瘍及びMSS腫瘍を選択した。これらは、子宮内膜癌由来の11個のMSI試料、結腸直腸癌由来の22個のMSI試料、及び89個のMSS試料を含んでいた。次いで、本発明者らは、全エクソームシーケンシングデータに基づいて、置換及びインデルに対して層別化された突然変異負荷を決定した。本明細書に記載される7つのマーカーを増幅し、Illumina HiSeq 4000でペアエンドのアンプリコンベースのシーケンシングを実施した。アンプリコンを、5000×の最小カバレッジ及び87000×の平均カバレッジでシーケンシングした。MSS試料を使用して、欠失を有するリードの平均パーセンテージを計算した。突然変異したリードのパーセンテージが6SDより大きい場合に(P値<1.0×10-5に相当)、マーカーを陽性とみなした。幾つかのマーカーは、ホモポリマー領域でのポリメラーゼスリップのため、高い突然変異体バックグラウンド率を示した。これは6.6%(ACVR2Aの場合)から36.0%(BTBD7の場合)の間の範囲であった。
結果:19個のMSI-H腫瘍は、技術的な問題のために最初にスクリーニングされた6個のうち少なくとも2個について(図5Aに示される)陽性であり、次に完全な7個(図5Bに示す)のインデルについて陽性であったが、MSS腫瘍はいずれにも陽性ではなかった。さらに、本発明者らは、全ての入手可能なMSI-H腫瘍(n=19+14)における陽性インデルの数を突然変異負荷と相関させた。これにより、非同義突然変異負荷及びインデル突然変異負荷の両方について陽性の相関が明らかになった(完全な7個のインデルの相関値:それぞれr=0.68 p<6.5×10-5及びr=0.75 p<2×10-16)。陽性であった追加のインデルマーカー毎に、3つのマーカーが陽性の時点の約250個のインデルの中央値から始まって、119個のインデルのインデル突然変異率における増加が観察された。これらの結果を添付の図3~図6に示す。
結論:7個のインデルの選択は、子宮内膜癌及び結腸直腸癌におけるMSI-Hを確実に検出する一方で、陽性インデルの数は、腫瘍突然変異負荷及び腫瘍総インデル負荷のための代理として機能するため、MSI-H腫瘍における抗PD-1療法に対する応答を予測する腫瘍ネオアンチゲン負荷のための検査として使用することができる。これらの7つのマーカーは、MSIステータスを検出するために完全自動化されたIdylla(商標)MSI検査として利用可能であり、MSI-H腫瘍における免疫療法成果を予測するためのコンパニオン診断として使用可能である。
3. Idylla(商標)MSI検査及びIHC分析に関する有効、無効、エラー及び不一致の結果に関連するCRC腫瘍病期分類の概要
材料:この研究は、オーフス大学病院(現場1)及びアントワープ大学病院(現場2)の2つの大学病院による通常の診断から得られた330個の残りのFFPE試料に対して行った。試料はCRC患者に由来し、ステージIを含むCRCの全てのステージの標本であった。MSI IHCデータは、両方の研究現場によって利用可能になっており、過去のFFPE切片での標準治療(SoC)IHC検査結果(既往病理学的データ)に基づくものであった。どちらの現場も、本明細書に記載される7つのマーカーを含むIdylla(商標)MSI検査を使用してMSI検査を実施した。両方の現場の構内で、それぞれ150個の試料及び180個の試料のセットで、検査を実施した。情報提供を目的として、Idylla(商標)MSI検査と過去のMSI免疫組織化学(IHC)データとの間の一致を行った。330個の試料のうち、16個の試料について病期分類情報を入手することができず(図7中の表を参照)、病理学的レポートで入手可能なデータに基づくものであった。幾つかの場合に、腫瘍、結節及び転移(TNM)病期分類(米国癌合同委員会の結腸癌及び直腸癌の病期分類(the American Joint Committee on Cancer, Colon and Rectum Cancer Staging)の第7版による)は、病理学的レポートあたりの限られた出典のため、Tパラメーター及びNパラメーターのみから導き出された。現在の研究集団では、図7の第1列に示されるように、6.7%(N=22)、19.4%(N=64)、43.3%(N=143)及び25.8%(N=85)が、それぞれステージI、ステージII、ステージIII及びステージIVであった。
方法:Idylla(商標)MSI検査を、FFPE試料に対して、Biocartisの商標のカートリッジベースのプラットフォームIdylla(商標)を使用して自動化された方式で実施した。FFPE試料を上記のように試薬を含む個々のカートリッジに挿入し、その後に、該カートリッジを、上記のプロトコルに従って自動化プラットフォームによって操作して分析した。次いで、Idylla(商標)MSI検査について得られた結果を、IHCによって評価されたFFPE試料のMSIステータス評価と並置した。2個のFFPE試料についての無効な結果が、製造業者の検証済みプロトコルに従うBethesdaパネルベースのPromega社のMSI分析システムv 1.2とのクロステストによって確認された。
結果:Idylla(商標)MSI検査データと過去の免疫組織化学(IHC)MSIデータとの間の比較は、情報提供を目的としてのみ利用可能であり、これは図7に示されている。これらの結果は、合計330個の試料の結果のうち2個だけがIdylla(商標)MSI検査で無効としてスコア付けされ、330回行われた実行全体でエラーが起きなかったので、該検査はロバスト性であることを示している。2個の試料についての検査の無効性は、おそらくそれらの不十分な品質によって引き起こされ、それはPromega社のMSI分析システムv 1.2によって確認され、該システムは上記試料の分析にも失敗した(データは示していない)。これらの結果は、一般にIdylla(商標)MSI検査の結果とIHCの結果との間で優れた一致を示す。重要なことには、IHCの結果と合致して、Idylla(商標)MSI検査は、ステージIのCRCの2個の試料においてMSI-H表現型も正確に識別した。これは、早期段階のMSI-H腫瘍を特定するために、タンパク質レベルでMMR経路における病変の存在を検査する必要があるだけでなく、DNAレベルでマイクロサテライト不安定性のシグネチャーを検出することもできることを裏付けている。
結論:これらの結果により、本発明によるMSI分析方法のロバスト性が確認され、分子MSIシグネチャー検査がステージIのCRCにおけるMSI-Hステータスを正確に特定することができるという、本発明者らの知る限り初めての臨床的証拠が得られた。これは、この検査により、他のステージIの癌型においてもMSI-Hステータスを正確に特定することができる可能性が最も高いことを示している。
定義
本明細書で使用される場合に、「生体試料」又は単に「試料」という用語は、それが生物から新鮮に得られたかどうか(すなわち、新鮮な組織サンプル)又は当該技術分野で知られる任意の方法で保存されたかどうか(例えば、凍結試料又はFFPE試料)にかかわらず、核酸及び/又は細胞物質を含む様々な生物学的供給源を含むことが意図される。生体試料の例には、哺乳動物細胞等の細胞の培養物だけでなく、真核微生物の培養物、体液、体液沈殿物、洗浄液検体、微細針吸引物、生検試料、組織試料、癌細胞、患者から得られた他の型の細胞、組織からの細胞、又は疾患若しくは感染症について試験及び/又は治療される個体からのin vitroで培養された細胞、又は法医学的試料が含まれる。体液試料の非限定的な例には、全血、骨髄、脳脊髄液(CSF)、腹膜液、胸膜液、リンパ液、血清、血漿、尿、乳糜、便、射出精液、痰、乳頭吸引物、唾液、スワブ検体、洗液若しくは洗浄液、及び/又はブラシ検体が含まれる。
本明細書で使用される「核酸」及びその同等の「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドモノマー間のホスホジエステル結合によって共に結合されたリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのポリマーを指す。(デオキシ)ヌクレオチドは、(デオキシ)ヌクレオシドのリン酸化型であり、最も一般的には、アデノシン、グアノシン、シチジン、チミジン又はウリジンが含まれる。これらのヌクレオシドは、リボース又はデオキシリボースである五炭糖と、(プリンである)アデニン、グアニン、(ピリミジンである)シトシン、チミン又はウラシルのいずれかである含窒素塩基(「核酸塩基」又は単に「塩基」)とからなる。これらの塩基(又はそれらのヌクレオシド若しくは該ヌクレオシドのヌクレオチド)が核酸鎖において続く配列は「核酸配列」と呼ばれ、慣例的に、核酸鎖の化学的方向を指す、いわゆる5'末端から3'末端の方向で示される。「5'」は、核酸配列の読み取りが始まる最初の(デオキシ)リボース環の5'炭素への参照に由来し、「3'」は、核酸配列の読み取りが終わる最後の(デオキシ)リボース環の3'炭素に由来する。核酸配列は、例えばATATGCCであってよく、それは、本明細書では5'-ATATGCC-3'の核酸配列を指すと解釈されるべきである。同じ規則の下で、最後に挙げた配列は、配列5'-GGCATAT-3'又は単にGGCATATに相補的である。核酸配列は、ホモポリマーリピート配列、すなわち、本明細書では「ホモヌクレオチド」とも呼ばれる、同じ含窒素塩基を含む或る特定の数の連続したヌクレオチドでできた配列であり得る。例えば、「8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート」という用語は、8個の連続したヌクレオチドを含む連続物でできた、該ヌクレオチドのそれぞれが含窒素塩基としてアデニンを含む核酸の少なくとも一部を指すと解釈されるべきである。そのような配列は、5'-AAAAAAAA-3'(又は単にAAAAAAAA)と指定され、一方で、その相補配列は、5'-TTTTTTTT-3'(又はTTTTTTTT)と指定される。「ホモポリマーリピートの突然変異型」又は「その突然変異型」という用語は、本明細書では、少なくとも1つのホモヌクレオチドの挿入又は欠失(すなわち「インデル」)を含む所与のホモポリマーリピートのMSI変異体を指すと解釈されるべきである。例えば、8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートの変異型は、7個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート又は9個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートであることとなる。核酸には、限定されるものではないが、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA又はmeDNA、cDNA、mRNA、rRNA、tRNA、hnRNA、microRNA、lncRNA、siRNA及びそれらの様々な修飾型を含むDNA及びRNAが含まれる。核酸は、最も一般的には、様々な種類の生物から得られる生体試料のような天然源から得ることができる。他方で、核酸はまた、既知のヒトにより編み出された方法(例えば、PCR)のいずれかにおいて合成、組換え、あるいは産生され得る。
本明細書では、「定量的PCR」又は単純に「qPCR」という用語には、標的DNA分子を増幅させると同時に該DNA分子を検出又は定量化するために使用される、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を基礎とする研究室用技術の定義が与えられる。反応産物がその終わりに、すなわちサーモサイクリングが完了した後に検出される標準的なPCRとは対照的に、qPCRの主な特徴は、DNA産物をサーモサイクリングの間に反応の進行に伴い「リアルタイム」で検出することであり、したがってqPCRの別名は「リアルタイムPCR」である。最近では、多くの様々な種類のqPCRが存在する。例えば、逆転写(RT)工程から開始する場合に、qPCRは、メッセンジャーRNAの数を定量化するために使用することができ、その際、逆転写酵素qPCRすなわちRT-qPCRと呼ばれる。本明細書で使用される場合に、「定量的PCR」又は単純に「qPCR」という用語は、しばしばRT-PCRとも略記される逆転写PCRとの混同を避けるために、好ましくは「リアルタイムPCR」すなわち「RT-PCR」という用語に関して使用される。殆どのqPCRは、産物増幅をリアルタイムで検出するための2つの最も一般的な方法:(a)非特異的蛍光色素の任意の二本鎖DNAでのインターカレーション、又は(2)プローブとその相補的標的配列とのハイブリダイゼーション後にのみ検出が可能となる蛍光性リポーターで標識されたオリゴヌクレオチドからなる配列特異的DNAプローブのうちの一方を使用する。サーモサイクリングの間に生成される蛍光シグナルは、適切な光学検出システムによって検出され、蛍光シグナルがバックグラウンド閾値を通り過ぎてから反応がプラトーに達するまでの時点から突き止められる。標的配列のコピー数は、相対的定量化又は絶対的定量化の方略のいずれかを使用して、典型的には、得られた増幅曲線の形状を解析すること(検量線方略)によって又はシグナルが幾つかの閾値より高く上昇する時点(しばしば、Ct値と呼ばれるが、時にCp値又はCq値と呼ばれる)を測定することによって推定することができる。相対的定量化においては、所与の試料でCt又は検量線解析を使用して推定された標的核酸レベルは、別の参照試料、例えば未処理のコントロール試料において同じ標的について得られた値と相対的に表現される。それに対して、絶対的定量化においては、qPCRシグナルは、検量線を使用して入力コピー数に関連付けられる又はより最近のデジタルPCR法に従って計算することもできる。当面のところは、最初の方略が依然としてより優勢であり、得られた値と事前に作成された検量線との比較による標的DNA量の推定を基礎とする。これらのqPCR定量化方略及びその他のqPCR定量化方略は、当該技術分野で広く知られており、それらの計算は、所与のアプリケーション及びqPCRシステムに応じて、多少は異なる場合がある。
本明細書で使用される場合に、「定量的PCRを実施するための手段」という用語は、qPCRを実施するための試薬及び要素の必要最低限の取合わせと理解されるものとする。定量的PCRを実施するための手段は、通常、核酸源から受容された核酸鋳型のリアルタイムPCRのサーモサイクリングにおいて検出可能にする任意の試薬を含む。そのような試薬は、PCRグレードのポリメラーゼ、少なくとも1つのプライマーセット、検出可能な色素又はプローブ、dNTP、PCRバッファー等を含むが、qPCRの種類に応じて、それらに限定されない。さらに、「定量的PCRを実施するための手段」は、通常、以下の(1)リアルタイムで検出可能なサーモサイクリングを行うことができる適切な区画(更に「サーモサイクリング用qPCR区画」とも呼ばれる)を通常含むが、それらに限定されない当該技術分野で既知の任意の標準的な部材の最小限の集成物も含む。そのような区画は、例えば、核酸を増幅させるのに適したチャンバー、すなわち十分な内部温度調節をもたらす適切な材料でできており、またそのような増幅の間に生成されるシグナルのリアルタイム検出を可能にする少なくとも1つの壁部、例えば透光性の壁部を含むチャンバーによって形成され得る。さらに、定量的PCRを実施するための手段は、(2)様々な既存のサーモサイクリング用装置から広範に知られるこのチャンバー又はその他の区画内の温度を変動させるための手段を含む。さらに、定量的PCRを実施するための手段は、(3)コンピューターに接続された光学検出器等のようなqPCRサーモサイクリングの間に生成されるシグナルを検出するための手段を含む。要するに、そのような最小限の集成物は、通常は、サーモサイクリング用qPCR区画内でのサーモサイクリング反応を開始及び維持し、温度を調整及び調節することで、その区間内での安定なサーモサイクリング条件を保証することができる、当該技術分野で既知の任意の1つ以上のシステム等を含む。さらに、上記集成物はまた、任意の適切な1つ以上の検出デバイス、データ処理のための手段(例えば、コンピューター、あるいはデータベースに接続されたコンピューター)及びqPCR反応のサーモサイクリングをリアルタイムに読み取り、監視することを可能にする出力システム(通常は、適切なグラフィックユーザインターフェースに反応の進捗を表示するコンピュータスクリーン)を含む。さらに、上記集成物はまた、機構を操作する、及び/又は得られた結果の解釈を表示し、あるいはその解釈を補助するのに適した任意のソフトウェアパッケージを含む。
本明細書で使用される場合に、「カートリッジ」という用語は、そのようなカートリッジを受容する又はそれと接続するのに適したより大きな機器の内側又は外側に嵌まるものとして移送又は移動することができる単独の物体として形成されるチャンバー及び/又はチャネルの自己充足型の集成物と理解されるべきである。カートリッジ内に含まれる幾つかの部材は、固く連結されていてよいが、その他はフレキシブルに連結されていてよく、カートリッジのその他のコンポーネントに対して可動であり得る。同様に、本明細書で使用される場合に、「流体カートリッジ」という用語は、流体、好ましくは液体を処置、処理、排出又は分析するのに適した少なくとも1つのチャンバー又はチャネルを含むカートリッジと理解されるものとする。そのようなカートリッジの一例は、国際公開第2007004103号に示されている。有利には、流体カートリッジは、マイクロ流体カートリッジであり得る。流体カートリッジの文脈では、「下流」及び「上流」という用語は、流体がそのようなカートリッジ中を流れる方向に対するものとして定義され得る。すなわち、流体が同じカートリッジ内の第2の区分に向かって流れるカートリッジ内の流体路の区分は、その第2の区分の上流に位置していると解釈されるべきである。同様に、流体がその後に到達する区分は、上記流体がその前に通過した区分に対して下流に位置している。
一般的に、本明細書で使用される場合に、「流体」又は時に「マイクロ流体」という用語は、小さいスケール、典型的には少なくとも1つ又は2つの次元(例えば、幅及び高さ又はチャネル)においてミリメートル未満のスケールに幾何学的に制約される流体の挙動、制御及び操作を扱うシステム及び装置を指す。そのような少ない容量の流体は、小さいサイズ及び低エネルギーの消費しか必要としないマイクロスケールで移動、混合、分離、あるいは処理される。マイクロ流体システムは、マイクロ空気圧システム等の構造物(圧力源、液体ポンプ、マイクロバルブ等)及びマイクロリットル、ナノリットル及びピコリットルの容量を取り扱うためのマイクロ流体構造物(マイクロ流体チャネル等)を含む。例示的な流体システムは、欧州特許第1896180号、欧州特許第1904234号及び欧州特許第2419705号に記載されており、したがって、本明細書に示される発明の或る特定の実施形態に適用され得る。
本明細書で使用される場合に、「DWT」という用語は、離散ウェーブレット変換を指し、「dwt係数」という用語は、離散ウェーブレット変換係数を示す。ウェーブレット変換とは、生データに対してプログラム又はサブルーチンを使用して計算することを意味する。したがって、dwt係数のセットは、ウェーブレット変換された値のセットである。核酸分析に最も関連するdwt係数は、実験の重要なイベントをキャプチャする係数であり、例えば、二本鎖核酸分子の融解実験の場合に、最も関連するdwt係数は、生データの融解曲線におけるピーク又はピークシフトであり得る。
本明細書で使用される場合に、融解曲線生データ、生データの融解曲線及び生の融解曲線データという用語は同等であり、区別なく使用される。それらは、核酸の解離実験又は会合実験の後に得られた識別子を示す。
図面訳
図1
128 colorectal cancer samples 128個の結腸直腸腫瘍試料
MSI status MSIステータス
marker status マーカーのステータス
mutant 突然変異型

図2
MSI-H cancer samples (non-CRC) MSI-H癌試料(非CRC)
15 gastric cancer samples 15個の胃癌試料
19 endometrium cancer samples 19個の子宮内膜癌試料
MSI status MSIステータス
marker status マーカーのステータス
wild type 野生型
mutant 突然変異型
no result 結果なし

図3
Substitutions 置換
Indels インデル
All mutations 全ての突然変異
All 全て

図4
Number of Somatic events 体細胞イベントの数
Substitution 置換
Indel インデル

図5A
Correlation 相関
Number of positive markers 陽性マーカーの数
Number of somatic substitutions 体細胞置換の数
Number of somatic indels 体細胞インデルの数
All MSI tumors 全てのMSI腫瘍

図5B
Correlation 相関
Number of positive markers 陽性マーカーの数
Number of somatic substitutions 体細胞置換の数
Number of somatic indels 体細胞インデルの数
All MSI tumors 全てのMSI腫瘍

図6
Number of Substitutions 置換の数

図7
Stage ステージ
IdyllaTM MSI Test Idylla(商標)MSI検査
Discordant IdyllaTM MSI Test versus IHC Idylla(商標)MSI検査対IHCの不一致
total Valid 総有効
Invalid 無効
Error エラー
Failed 失敗
Total 合計
Overall total 総計

Claims (21)

  1. 生体試料におけるMSI遺伝子座を分析する方法であって、
    前記生体試料が結腸直腸腫瘍、胃腫瘍又は子宮内膜腫瘍であり、
    GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた、以下のホモポリマーリピート:
    ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
    ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
    ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
    ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと、
    におけるヌクレオチドの数を決定する工程を含む、方法。
  2. GRCh38/hg38にマッピングされた、以下のホモポリマーリピート領域:
    ヒトSEC31A遺伝子に局在化された、chr4:82864412の位置から始まる9個の連続したチミンを含むホモポリマーリピート、
    ヒトBTBD7遺伝子に局在化された、chr14:93241685の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート、
    ヒトRYR3遺伝子に局在化された、chr15:33865341の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート、
    のいずれか1つ、2つ又は全てにおけるヌクレオチドの数を決定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
  3. 請求項1又は2に列記されるホモポリマーリピート又はその突然変異型を含む核酸領域を増幅させる工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記増幅工程により融解曲線データの作成がもたらされる、請求項3に記載の方法。
  5. (a)前記融解曲線データに対してウェーブレット変換を適用する工程と、
    (b)請求項1又は2に列記されるホモポリマーリピートのいずれかにおけるヌクレオチドの数の決定において(a)から得られた結果を使用する工程と、
    を更に含む、請求項4に記載の方法。
  6. 前記増幅工程は、少なくとも1つの分子ビーコンプローブの使用を含む、請求項3~5いずれかに記載の方法。
  7. 前記増幅工程は、以下の配列番号1~配列番号14のいずれかによって特定される配列を有する少なくとも1つのプライマーの使用を含む、請求項3~6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記増幅工程は、ホモポリマーリピート又はその突然変異型のペアの少なくとも1つの二重増幅を含み、前記ペアは、以下の組合せ:
    ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと共に、
    ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートの二重増幅、
    ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと共に、
    ヒトSEC31A遺伝子に局在化された、chr4:82864412の位置から始まる9個の連続したチミンを含むホモポリマーリピートの二重増幅、及び、
    ヒトBTBD7遺伝子に局在化された、chr14:93241685の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートと共に、
    ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピートの二重増幅、
    から選択される、請求項3~7のいずれかに記載の方法。
  9. 請求項1又は2に列記されるホモポリマーリピートのいずれかにおけるヌクレオチドの数の決定を、ベルギーのBCCM/GeneCorner寄託当局にアクセッション番号LMBP 12278CBとして寄託されたHTC116 cl.110268743細胞系統に由来する単離されたゲノムDNA又は細胞溶解物を含むコントロール生体試料においても更に行う、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
  10. 前記腫瘍試料はステージIの腫瘍であり、又はステージIの結腸直腸腫瘍である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記ホモポリマーリピートの数について取得された情報を使用して、腫瘍突然変異負荷又は腫瘍インデル負荷を推定する工程を更に含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
  12. 前記推定された腫瘍突然変異負荷又は腫瘍インデル負荷は、突然変異の総数の推定値として提供される又はスコアとして提供される、請求項11に記載の方法。
  13. 生体試料におけるMSI遺伝子座を分析するためのキットであって、
    前記生体試料が結腸直腸腫瘍、胃腫瘍又は子宮内膜腫瘍であり、
    GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた以下のホモポリマーリピート:
    ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート;
    ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる11個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート;
    ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート;及び
    ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる8個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート
    を含む核酸領域に特異的にハイブリダイズ又は増幅するために適合されたプローブ又はプライマーを含む、キット。
  14. GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた以下のホモポリマーリピート:
    ヒトSEC31A遺伝子に局在化された、chr4:82864412の位置から始まる9個の連続したチミンを含むホモポリマーリピート;
    ヒトBTBD7遺伝子に局在化された、chr14:93241685の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート;
    ヒトRYR3遺伝子に局在化された、chr15:33865341の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート
    の1つ、2つ、又は全てを含む核酸領域に特異的にハイブリダイズ又は増幅するために適合されたプローブ又はプライマーを更に含む、請求項13に記載のキット。
  15. 前記プライマーが、配列番号1~14から選択される少なくとも1つのプライマー又はプライマーペアを含む、請求項13または14に記載のキット。
  16. 前記プローブが、分子ビーコンプローブを含む、請求項13または14に記載のキット。
  17. 前記分子ビーコンプローブが、配列番号15~21から選択される、請求項16に記載のキット。
  18. 請求項1~12のいずれかに記載の方法におけるコントロール生体試料として使用するためのベルギーのBCCM/GeneCorner寄託当局にアクセッション番号LMBP 12278CBとして寄託された細胞系統HTC116cl.110268743に由来する単離されたゲノムDNA又は細胞溶解物を更に含む、請求項1317のいずれかに記載のキット。
  19. カートリッジを更に含む、請求項1318のいずれかに記載のキット。
  20. GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた、以下のホモポリマーリピート領域:
    ヒトDIDO1遺伝子に局在化された、chr20:62905340の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート;
    ヒトMRE11遺伝子に局在化された、chr11:94479765の位置から始まる10個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート;
    ヒトSULF2遺伝子に局在化された、chr20:47657577の位置から始まる9個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート;及び
    ヒトACVR2A遺伝子に局在化された、chr2:147926117の位置から始まる7個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート
    を含む核酸領域を含む請求項1~12のいずれかに記載の方法におけるコントロール生体試料として使用するためのベルギーのBCCM/GeneCorner寄託当局にアクセッション番号LMBP 12278CBとして寄託された細胞系統HTC116cl.110268743に由来する細胞又は単離されたゲノムDNA又は細胞溶解物。
  21. GRCh38/hg38ヒト参照ゲノムにマッピングされた以下のホモポリマーリピート:
    ヒトSEC31A遺伝子に局在化された、chr4:82864412の位置から始まる8個の連続したチミンを含むホモポリマーリピート;
    ヒトBTBD7遺伝子に局在化された、chr14:93241685の位置から始まる9個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート;
    ヒトRYR3遺伝子に局在化された、chr15:33865341の位置から始まる9個の連続したアデニンを含むホモポリマーリピート
    の1つ、2つ、又は全てを含む核酸領域を更に含む、請求項20に記載の細胞。
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