JP2015513895A - 標的配列の多様化のための組成物および方法 - Google Patents

標的配列の多様化のための組成物および方法 Download PDF

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Abstract

本開示は一般に免疫グロブリン(抗体)重鎖遺伝子座への遺伝子の標的化およびその中に上記遺伝子を組み込むことに関する。特に本明細書に記載される方法は免疫グロブリン多様性を生成するためのシステムにおいてB細胞リンパ腫の1回再構成された重鎖V、DおよびJ遺伝子(例えばDT40)を独立して再構成されたニワトリのVH−D−JH遺伝子で置換することを企図する。また免疫グロブリン多様性を生成するためのシステムにおいて、国際公開第2009/029315号A2において開示されかつ特許請求されるいずれの置換をも除いて、上記ニワトリVH−D−JHを再構成された他の脊椎動物(ヒトを含む)のVH−D−JH遺伝子で置換することが企図される。上記再構成されたVH遺伝子の上流にある領域および上記再構成されたJH遺伝子の下流にある領域が同定され効率的な遺伝子置換のための免疫グロブリン重鎖遺伝子標的化ベクターに組みこまれる。

Description

(関連出願の相互参照)
本出願は、2012年3月15日に出願された現在係属中の米国特許仮出願第61/611,446号における米国特許法§119(e)の下で利益を請求し、本出願は、その全体が参照によって本開示に援用される。
(配列表)
本願と関連する配列表は、紙での写しの代わりに、テキスト形式で提供され、それによって、本明細書に参考として援用される。配列表を含むテキストファイルの名称は、980087_402WO_SEQUENCE_LISTING.txtである。上記テキストファイルは、約17KBであり、2013年3月13日に作製された。そして、EFS−Webを介して電子的に提出されている。
(政府の利益に関する声明)
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された助成金R01 GM41712およびU54 AI081680の国庫補助によってなされた。政府は本発明における特定の権利を有する。
(技術分野)
本開示は、免疫グロブリン重鎖遺伝子座に遺伝子を標的化すること、およびその中に上記遺伝子を組みこむことに関する。本明細書で開示されるベクター、組成物、および方法は、エキソビボ加速抗体進化のために特に有用である。
(関連技術の説明)
モノクローナル抗体(mAbs)は、治療学、診断学、および研究用試薬として十分に確立されているが、それらの使用は、所望の標的に対して必要とされる親和性および特異性を有するmAbを同定することに関連する困難およびコストによって、現在制限されている。多くの目的の標的は、非常に保存されたタンパク質であり、免疫調節の機構が生理学的免疫応答から得られ得る抗体の多様性を制限している。さらに、多くの重要な治療標的は、細胞表面タンパク質であり、このことは、それらの生理学的に活性なコンホメーションが特定の抗体を誘発するための免疫化に使用される精製タンパク質もしくは膜調製物によっては容易に再現されないので、mAbの開発に対する特別な挑戦を示す。これらの細胞表面成分は、特定の臨床上有用な状況に対するいくつかの特に価値の高い標的(例えば、サイトカインレセプターおよびGタンパク質共役レセプター)を含む。
mAbの発見に対しての大部分の現在のストラテジーは、インビボおよび/もしくはインビトロアプローチを使用する。インビボアプローチは、免疫化による特定の抗体生成B細胞の活性化および選択、その後のハイブリドーマの生成を含む(Kohler et al., 1975; Chiarella et al., 2008)。このプロセスは、コストがかかり、時間を浪費する。なぜなら、広範なスクリーニング、および多くの場合には、その後の、親和性成熟を含む工程は、所望の特性を有するmAbを得るために必要とされるからである。それはまた、免疫寛容によっても制限され、いくつかの抗原を特異的に認識する抗体が得られるのを困難にもしくは不可能にする。さらに、mAbがいったん同定されても、その親和性もしくは機能性のさらなる最適化に対する手っ取り早い路はない。インビトロアプローチは、しばしば、多数の合成の一本鎖抗体(典型的には、ファージ上でディスプレイされる)のスクリーニングに依存する(Winter et al., 1994; Bratkovic et al., 2010)。これら抗体は、免疫レパートリーに由来する、しばしば、回復期個体に由来する連結された免疫グロブリン重鎖可変(V)領域および軽鎖可変(V)領域をコードするクローニングされた遺伝子によって発現される(Grandea et al., 2010; Hammond et al., 2010)。それらは、インビトロでの選択が付随する反復PCRベースの変異誘発によって、ハイスループットアプローチを使用して、さらに最適化され得る。しかし、結局の成功は、出発ライブラリーおよびそれらの供給源の品質に依存し、全ての一本鎖抗体が実用的な応用のために天然の抗体に容易に置換され得るわけではない。
mAbの発見はまた、不死化B細胞でエキソビボで行われ得る。B細胞は、免疫グロブリン(Ig)分子をその細胞表面に提示し、抗原認識のための選択を促進する。いくつかのB細胞株では、免疫グロブリン(Ig)遺伝子多様化の生理学的経路は、活性なままであり、培養物中での高親和性抗体の進化を可能にする。ニワトリB細胞株DT40は、このような目的に特に適合し得ることが判明した(Cumbers et al., 2002; Seo et al., 2005; Kajita et al., 2010)。DT40は、嚢リンパ腫に由来し、DT40細胞は、それらの免疫グロブリン重鎖可変(V)領域および軽鎖可変(V)領域遺伝子を構成的に多様化させる(Arakawa et al., 2004)。進行中の多様化は、2つの経路、遺伝子変換および体細胞超変異によって起こっている(Maizels et al., 2005)。簡潔には、大部分の変異はテンプレートとなり、遺伝子変換の結果として生じ、非機能的偽V領域は、上記再構成され転写されたV遺伝子への配列の移入のためのドナーとして働く。さずかな変異がテンプレートにならず、体細胞超変異(抗原活性化ヒトB細胞およびマウスB細胞のIg遺伝子における点変異を発生させる変異誘発経路)の結果として生じる。DT40細胞は、(ヒトB細胞株の20〜24時間と比較すると)8〜10時間という倍加時間で急速に増殖し、磁性活性化セルソーティング(MACS)、蛍光活性化セルソーティング(FACS)および単一細胞クローニングを含む実験操作に対して強い。最も重要なことには、DT40細胞は、非常に効率的な相同遺伝子標的化を支援する(Buerstedde et al., 1991)ので、ゲノム領域は、多くの場合、適切に設計された相同組換えストラテジーを使用して、所望される場合に置換もしくは改変され得る。
抗体進化に関するDT40細胞のかなりの潜在能力にも拘わらず、それらの有用性は、実際にはこれまで制限されてきた。なぜなら、他の形質転換されたB細胞株のように、Ig遺伝子多様化が1%未満の生理学的割合で起こるからである。DT40細胞での多様化を加速するために、いくつかのアプローチが使用されてきた。これは、相同組換え経路を無力にすることによって達成され得る(Cumbers et al., 2002)が、そのように操作された細胞は、遺伝子標的化を行う能力もしくはそれらのIg遺伝子を遺伝子変換によって多様化する能力を失っており、多様化は、ヒトもしくはマウスにおける抗原駆動の体細胞超変異の間に生じるもののようなテンプレートとならない点変異を生じさせる。多様化はまた、ヒストンデアセチラーゼインヒビターであるトリコスタチンAでの細胞の処理によって加速され得る(Seo et al., 2005)。このアプローチは、遺伝子変換の速度を増大させるが、点変異誘発を促進せず、潜在的な多様性を制限する。目的の標的遺伝子(例えば、抗体コード遺伝子)におけるコード配列の多様性のより迅速でかつ効率的な生成が、未だ明らかに必要である。ここに記載される組成物および方法は、この必要性に対処し、他の関連する利点を提供する。
Kohler G, Milstein C (1975) Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity. Nature 256: 495−497 Chiarella P, Fazio VM (2008) Mouse monoclonal antibodies in biological research: strategies for high−throughput production. Biotechnol Lett 30: 1303−1310 Winter G, Griffiths AD, Hawkins RE, Hoogenboom HR (1994) Making antibodies by phage display technology. Annu Rev Immunol 12: 433−455 Bratkovic T (2010) Progress in phage display: evolution of the technique and its application. Cell Mol Life Sci 67: 749−767 Grandea AG, 3rd, Olsen OA, Cox TC, Renshaw M, Hammond PW, et al. (2010) Human antibodies reveal a protective epitope that is highly conserved among human and nonhuman influenza A viruses. Proc Natl Acad Sci U S A 107: 12658−12663 Hammond PW (2010) Accessing the human repertoire for broadly neutralizing HIV antibodies. MAbs 2: 157−164 Cumbers SJ, Williams GT, Davies SL, Grenfell RL, Takeda S, et al. (2002) Generation and iterative affinity maturation of antibodies in vitro using hypermutating B−cell lines. Nat Biotechnol 20: 1129−1134 Seo H, Masuoka M, Murofushi H, Takeda S, Shibata T, et al. (2005) Rapid generation of specific antibodies by enhanced homologous recombination. Nat Biotechnol 23: 731−735 Maizels N (2005) Immunoglobulin gene diversification. Annu Rev Genet 39: 23−46 Buerstedde JM, Takeda S (1991) Increased ratio of targeted to random integration after transfection of chicken B cell lines. Cell 67: 179−188
本明細書で記載される特定の実施形態によれば、標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座へ組みこむための組換えポリヌクレオチドベクターが提供され、上記ベクターは、(a)ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域;(b)ニワトリファブリキウス嚢細胞の集団から単離された再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子を含む標的遺伝子;および(c)ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域を含み、ここで上記標的遺伝子は、DT40細胞の上記ニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座に組みこまれる際に、(i)免疫グロブリンV領域コード配列における体細胞超変異、および(ii)再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列とDT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方を受け得る。特定の実施形態において、上記標的遺伝子は、マーカータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含み、これは、特定のさらなる実施形態において、緑色蛍光タンパク質(GFP)および青色蛍光タンパク質(BFP)から選択される。他の実施形態において、上記体細胞超変異は、免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列および免疫グロブリンVフレームワーク領域コード配列のうちのいずれかもしくはその両方で起こる。
特定の実施形態において、複数の標的遺伝子を複数のニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座へ組みこむための複数の組換えポリヌクレオチドベクターを含む組成物が提供され、上記ベクターの各々は、(a)ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域;(b)ニワトリファブリキウス嚢細胞の集団から単離された再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子を含む標的遺伝子;および(c)ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域を含み、ここで上記標的遺伝子は、DT40細胞のニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座に組みこまれる際に、(i)免疫グロブリンV領域コード配列における体細胞超変異、および(ii)上記再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列とDT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換、のうちのいずれかもしくはその両方を受け得、そしてここで上記再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子は、ニワトリファブリキウス嚢細胞の集団から単離された複数の再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子から得られる。特定の実施形態において、上記標的遺伝子は、マーカータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含み、これは、特定のさらなる実施形態において、緑色蛍光タンパク質(GFP)および青色蛍光タンパク質(BFP)から選択される。特定の実施形態において、上記体細胞超変異は、免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列および免疫グロブリンVフレームワーク領域コード配列のうちのいずれかもしくはその両方で起こる。
別の実施形態において、(a)上記のベクター;および(b)第2の標的遺伝子を免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座へ組みこむための第2のベクターを含む組成物が提供され、上記第2のベクターは、(1)ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域;(2)必要に応じてニワトリファブリキウス嚢細胞の集団から単離された再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子を含む第2の標的遺伝子;および(3)ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域を含み、ここで上記第2の標的遺伝子は、DT40細胞のニワトリ免疫グロブリン軽鎖遺伝子座に組みこまれる際に、(i)免疫グロブリンV領域コード配列における体細胞超変異、および(ii)再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列とDT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方を受け得る。別の実施形態において、(1)上記の組成物;および(2)複数の標的遺伝子を複数のニワトリ免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座へと組みこむための1または複数の組換えポリヌクレオチドベクターを含む組成物が提供され、上記ベクターの各々は、(a)ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域;(b)必要に応じてニワトリファブリキウス嚢細胞の集団から単離された再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子を含む第2の標的遺伝子;および(c)ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域を含み、ここで上記第2の標的遺伝子は、DT40細胞のニワトリ免疫グロブリン軽鎖遺伝子座に組みこまれる際に、(i)免疫グロブリンV領域コード配列における体細胞超変異、および(ii)再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列とDT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方を受け得、そしてここで必要に応じて、上記再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子は、ニワトリファブリキウス嚢細胞の集団由来の複数の単離された、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子から得られる。特定の実施形態において、上記第2の標的遺伝子は、第2のマーカータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含み、これは、特定のなおさらなる実施形態において、緑色蛍光タンパク質(GFP)および青色蛍光タンパク質(BFP)から選択される。特定の実施形態において、上記体細胞超変異は、免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列および免疫グロブリンVフレームワーク領域コード配列のうちのいずれかもしくはその両方で起こる。
本明細書で記載される本発明の特定の実施形態は、上記のベクターもしくは組成物のうちのいずれかを含む宿主細胞を提供する。特定の実施形態において、上記宿主細胞は、細菌細胞である。特定の実施形態において、上記宿主細胞は、ニワトリ細胞由来であるか、もしくはニワトリ嚢リンパ腫細胞であるか、またはDT40細胞であり、特定のさらなる実施形態において、上記宿主細胞における免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座は、重合ラクトースオペレーターを含み、そして/または上記宿主細胞における免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座は、重合ラクトースオペレーターを含む。特定の他の実施形態によれば、本明細書で記載される宿主細胞のライブラリーが提供される。
本発明の別の実施形態に話を変えると、標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座へと組みこむための方法が提供され、上記方法は、(a)ニワトリB細胞を上記ベクターのうちの1つでトランスフェクトする工程もしくはニワトリB細胞を上記組成物のうちの1つでトランスフェクトする工程;および(b)上記標的遺伝子が上記免疫グロブリン重鎖遺伝子座に組みこまれたニワトリB細胞を同定する工程を包含する。別の実施形態において、第1の標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座に組み込み、第2の標的遺伝子を免疫グロブリン軽鎖遺伝子座に組みこむための方法が提供され、上記方法は、(a)1または複数のニワトリB細胞を、上記の組成物のうちの1つでトランスフェクトして、1または複数のトランスフェクトされたB細胞を得る工程;および(b)再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子を含む上記標的遺伝子が上記免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座に組みこまれ、上記第2の標的遺伝子が上記免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座に組みこまれた、トランスフェクトされたニワトリB細胞を(a)から同定する工程を包含する。別の実施形態において、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子を含む標的遺伝子によってコードされる標的ポリペプチドのニワトリ免疫グロブリン重鎖ポリペプチド配列改変体のレパートリーを生成するための方法が提供され、上記方法は、上記ベクターのうちの1つを含むニワトリB細胞を、複数のB細胞が得られるまで、上記B細胞の増殖を可能にする条件下で培養する工程を包含し、ここで上記B細胞は、(i)免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列における体細胞超変異、および(ii)再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列とV偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方の能力があり、それによって、上記標的ポリペプチドのニワトリ免疫グロブリン重鎖ポリペプチド配列改変体のレパートリーを生成する能力がある。特定の関連実施形態において、上記ニワトリB細胞は、第2の標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座へと組みこむための第2のベクターをさらに含み、上記第2のベクターは、(a)ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域;(b)必要に応じてニワトリファブリキウス嚢細胞の集団から単離された再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子を含む第2の標的遺伝子;および(c)ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域を含み、ここで上記第2の標的遺伝子は、DT40細胞のニワトリ免疫グロブリン軽鎖遺伝子座に組みこまれる際に、(i)免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列における体細胞超変異、および(ii)再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列とDT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくは両方を受け得る。特定のさらなる実施形態において、上記ニワトリ免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座は、重合ラクトースオペレーターを含む。特定の他のさらなる実施形態において、上記ニワトリ細胞は、DT40およびDTLacOから選択される。特定の他の実施形態によれば、上記方法は、抗原への結合に関して上記複数のニワトリB細胞をスクリーニングする工程をさらに包含する。
本明細書に記載される発明のこれらの局面および他の局面、ならびに実施形態は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照すれば明らかである。本明細書で言及され、そして/または出願データシートに列挙されている米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物の全ては、各々が個々に援用されるかのように、それらの全体において本明細書に参考として援用される。本発明の局面および実施形態は、種々の特許、出願および刊行物の概念を使用して、なおさらなる実施形態を提供するために、必要であれば改変され得る。
図1は、加速されたクローン多様化(accelerated clonal diversification)を操作する2工程の模式図を示す。上の模式図は、可変(VDJ)領域、定常(Cμ)領域、および上流ψVアレイを含む、再構成され発現されたIg重鎖遺伝子座(IgH)を示す。IgHは、DT40 PolyLacO−λ細胞(これは、上記再構成され発現されたIg軽鎖もしくはλ遺伝子座(Igλ)に標的化されたPolyLacOを有する)における上記ψVアレイ内にPolyLacOを挿入することによって最初に改変された(Cummings et al., 2007; Cummings et al., 2008; Yabuki et al., 2009)。次に、この遺伝子座を、内因性V(VDJ)領域をナイーブなニワトリ由来のV領域で置換することによってさらに改変した。
図2は、DTLacO細胞における加速されたクローン多様化速度を示す。(A)3つの代表的クローン性DTLacO LacI−HP1トランスフェクタントの表面IgM(sIgM)喪失アッセイ。各培養物中のsIgM細胞の割合を、各パネルの右下に示す。(B)sIgM喪失アッセイのまとめ。各白丸は、トランスフェクションの3週間後に分析した1つのクローン性トランスフェクタントにおけるsIgM細胞のパーセンテージを表す。分析した細胞は、以下のとおりであった: DT40 PolyLacO−λ GFP−LacIコントロールトランスフェクタント(n=27); DT40 PolyLacO−λ LacI−HP1トランスフェクタント(n=16)、およびDTLacO LacI−HP1トランスフェクタント(n=20)。(C)GFP−LacIコントロールトランスフェクタントに対する、DT40 PolyLacO−λ LacI−HP1およびDTLacO LacI−HP1トランスフェクタントのsIgM喪失の中央値。
図3は、DTLacO細胞における抗ストレプトアビジン(SAv)抗体の迅速な進化を示す。(A)DTLacO細胞(左)もしくはDTLacO E47−LacI細胞(右)の連続的に選択された細胞集団のSAv結合プロフィール。選択を、平均して1週間間隔で行った。細胞数を、SAv−PE蛍光シグナルに対してプロットした。連続的な選択回の集団を、ピークの上に明示した(S0−S7)。「プレ」は、いかなるソーティングをも行う前の集団を明示する(灰色部分)。(B)DTLacO E47−LacI S7集団の飽和結合速度論。(C)生殖系列と比較した、高親和性選択した抗SAv mAbの配列(Reynaud et al., 1987; Reynaud et al., 1989)。相補性決定領域(CDR)は、ボックスでの囲みによって同定される。上記抗SAv mAbのVλのCDR1中の18残基挿入/重複は、抗SAv mAbsを、いかなる遺伝的操作をも受けなかったDT40細胞から選択する、他者によって報告された軽鎖CDR1における挿入を再現した(Seo et al., 2005)。生殖系列VHおよびVλ配列は、それぞれ、配列番号17および19に示される。上記抗SAv mAbのVHおよびVλ配列は、それぞれ、配列番号18および20に示される。
図4は、DTLacO細胞から選択された高親和性mAbを示す。(A)上は、細胞表面レセプターであるVEGFR2、TIE2およびTROP2の認識に関して選択された連続的なDTLacO LacI−HP1集団の結合プロフィール。選択回は、ピークの上に明示した(S0−S8)。下は、みかけのkを示す飽和結合速度論。(B)選択されたDTLacO集団の特異性。組換えVEGFR2、TIE2、TROP2、SAvもしくはオボアルブミン(OVA)に対するVEGFR2、TIE2もしくはTROP2の高親和性認識に関して選択された細胞集団の結合のFACS分析。実線のピークは、陰性参照コントロール(2次抗体のみ)を表し、太い実線は、示された抗原の線色を表す。(C)VEGFR2、TIE2およびTROP2への結合について選択されたmAbのVおよびVλ領域の模式的アラインメント。細い平行線は、ニワトリフレームワーク領域を表し、ボックス内の囲まれている太い平行線は、CDRを同定し、垂線は、最も共通するDTLacO配列に対する1残基差異を示し、三角形は、挿入を示す。 図4は、DTLacO細胞から選択された高親和性mAbを示す。(A)上は、細胞表面レセプターであるVEGFR2、TIE2およびTROP2の認識に関して選択された連続的なDTLacO LacI−HP1集団の結合プロフィール。選択回は、ピークの上に明示した(S0−S8)。下は、みかけのkを示す飽和結合速度論。(B)選択されたDTLacO集団の特異性。組換えVEGFR2、TIE2、TROP2、SAvもしくはオボアルブミン(OVA)に対するVEGFR2、TIE2もしくはTROP2の高親和性認識に関して選択された細胞集団の結合のFACS分析。実線のピークは、陰性参照コントロール(2次抗体のみ)を表し、太い実線は、示された抗原の線色を表す。(C)VEGFR2、TIE2およびTROP2への結合について選択されたmAbのVおよびVλ領域の模式的アラインメント。細い平行線は、ニワトリフレームワーク領域を表し、ボックス内の囲まれている太い平行線は、CDRを同定し、垂線は、最も共通するDTLacO配列に対する1残基差異を示し、三角形は、挿入を示す。 図4は、DTLacO細胞から選択された高親和性mAbを示す。(A)上は、細胞表面レセプターであるVEGFR2、TIE2およびTROP2の認識に関して選択された連続的なDTLacO LacI−HP1集団の結合プロフィール。選択回は、ピークの上に明示した(S0−S8)。下は、みかけのkを示す飽和結合速度論。(B)選択されたDTLacO集団の特異性。組換えVEGFR2、TIE2、TROP2、SAvもしくはオボアルブミン(OVA)に対するVEGFR2、TIE2もしくはTROP2の高親和性認識に関して選択された細胞集団の結合のFACS分析。実線のピークは、陰性参照コントロール(2次抗体のみ)を表し、太い実線は、示された抗原の線色を表す。(C)VEGFR2、TIE2およびTROP2への結合について選択されたmAbのVおよびVλ領域の模式的アラインメント。細い平行線は、ニワトリフレームワーク領域を表し、ボックス内の囲まれている太い平行線は、CDRを同定し、垂線は、最も共通するDTLacO配列に対する1残基差異を示し、三角形は、挿入を示す。
図5は、抗FN14 mAbおよび抗FZD10 mAbの選択およびヒト化を示す。(A)抗FN14 mAbおよび抗FZD10 mAbの選択過程の模式図。選択工程はSによって示され、組換えキメラmAbの見かけの親和性(k)は、下に示す。(B)FN14およびFZD10への結合について選択されたmAbのVおよびVλ領域の模式的アラインメント。細い平行線は、ニワトリフレームワーク領域を表し、ボックスで囲まれた太い平行線は、CDRを同定し、垂線は、最も共通するDTLacO配列に対する1残基差異を示し、三角形は、挿入を示す。(C)抗体ヒト化。ヒト化mAbs hFS24およびhFZ2のVおよびVλ領域は、ヒトV−IIIもしくはVλ−IIIコンセンサス(一番上の線)に対して模式的にアラインした。細い平行線は、ヒトフレームワーク領域を表す;*は、軽鎖のN末端から排除した2残基を示す;ボックスの外側にある垂線は、ヒト化mAbに示されるバーニアゾーン残基を同定する;他の記号は、パネルBと同様である。(D)ヒト化および前駆FZ2(抗FZD10) mAbの見かけの親和性(k)。 図5は、抗FN14 mAbおよび抗FZD10 mAbの選択およびヒト化を示す。(A)抗FN14 mAbおよび抗FZD10 mAbの選択過程の模式図。選択工程はSによって示され、組換えキメラmAbの見かけの親和性(k)は、下に示す。(B)FN14およびFZD10への結合について選択されたmAbのVおよびVλ領域の模式的アラインメント。細い平行線は、ニワトリフレームワーク領域を表し、ボックスで囲まれた太い平行線は、CDRを同定し、垂線は、最も共通するDTLacO配列に対する1残基差異を示し、三角形は、挿入を示す。(C)抗体ヒト化。ヒト化mAbs hFS24およびhFZ2のVおよびVλ領域は、ヒトV−IIIもしくはVλ−IIIコンセンサス(一番上の線)に対して模式的にアラインした。細い平行線は、ヒトフレームワーク領域を表す;*は、軽鎖のN末端から排除した2残基を示す;ボックスの外側にある垂線は、ヒト化mAbに示されるバーニアゾーン残基を同定する;他の記号は、パネルBと同様である。(D)ヒト化および前駆FZ2(抗FZD10) mAbの見かけの親和性(k)。 図5は、抗FN14 mAbおよび抗FZD10 mAbの選択およびヒト化を示す。(A)抗FN14 mAbおよび抗FZD10 mAbの選択過程の模式図。選択工程はSによって示され、組換えキメラmAbの見かけの親和性(k)は、下に示す。(B)FN14およびFZD10への結合について選択されたmAbのVおよびVλ領域の模式的アラインメント。細い平行線は、ニワトリフレームワーク領域を表し、ボックスで囲まれた太い平行線は、CDRを同定し、垂線は、最も共通するDTLacO配列に対する1残基差異を示し、三角形は、挿入を示す。(C)抗体ヒト化。ヒト化mAbs hFS24およびhFZ2のVおよびVλ領域は、ヒトV−IIIもしくはVλ−IIIコンセンサス(一番上の線)に対して模式的にアラインした。細い平行線は、ヒトフレームワーク領域を表す;*は、軽鎖のN末端から排除した2残基を示す;ボックスの外側にある垂線は、ヒト化mAbに示されるバーニアゾーン残基を同定する;他の記号は、パネルBと同様である。(D)ヒト化および前駆FZ2(抗FZD10) mAbの見かけの親和性(k)。 図5は、抗FN14 mAbおよび抗FZD10 mAbの選択およびヒト化を示す。(A)抗FN14 mAbおよび抗FZD10 mAbの選択過程の模式図。選択工程はSによって示され、組換えキメラmAbの見かけの親和性(k)は、下に示す。(B)FN14およびFZD10への結合について選択されたmAbのVおよびVλ領域の模式的アラインメント。細い平行線は、ニワトリフレームワーク領域を表し、ボックスで囲まれた太い平行線は、CDRを同定し、垂線は、最も共通するDTLacO配列に対する1残基差異を示し、三角形は、挿入を示す。(C)抗体ヒト化。ヒト化mAbs hFS24およびhFZ2のVおよびVλ領域は、ヒトV−IIIもしくはVλ−IIIコンセンサス(一番上の線)に対して模式的にアラインした。細い平行線は、ヒトフレームワーク領域を表す;*は、軽鎖のN末端から排除した2残基を示す;ボックスの外側にある垂線は、ヒト化mAbに示されるバーニアゾーン残基を同定する;他の記号は、パネルBと同様である。(D)ヒト化および前駆FZ2(抗FZD10) mAbの見かけの親和性(k)。
(詳細な説明)
本開示は、一部、組換えポリヌクレオチドベクター、ならびに関連組成物、宿主細胞、ライブラリーおよび標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座に組み込むための方法に関する。特に、本明細書に記載される方法は、ニワトリB細胞での相同組換えを介して、ニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子を標的遺伝子で置換することを企図する。上記ニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座は、特徴付けが極めて困難であった(Reynaud et al., Cell 59:171−83, 1989を参照のこと)。よって、標的遺伝子をこの遺伝子座に首尾よく組みこむことは、以前は予測できず、今や驚くべきことに、本明細書で見いだされる開示に従って初めて達成された。この遺伝子座への標的遺伝子の組み込みは、有利なことには、ニワトリB細胞における体細胞超変異および遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方を介して、組みこまれた標的遺伝子の加速した多様化を可能にする。
好ましい実施形態において、独立して再構成されたニワトリ免疫グロブリン重鎖可変(V)領域、多様性(D)領域および連結(J)領域(V−D−J)遺伝子(例えば、ニワトリファブリキウス嚢細胞の集団に由来する既に再構成されたV−D−J領域のVライブラリー)は、B細胞リンパ腫(例えば、DT40)における内因性ニワトリV−D−J遺伝子を置換するために使用される。このような置換は、体細胞超変異および遺伝子変換機構と組み合わせて、B細胞によるV配列多様性の加速された生成を促進する。本明細書で開示される方法は、所望の標的抗原に対して特異的に結合し得る抗体を同定および回収するためにスクリーニングされ得る免疫グロブリン(Ig)の多様なライブラリーを生成するのに有用である。
(ベクター)
特定の実施形態において、本開示は、標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座に組みこむための組換えポリヌクレオチドベクターを提供する。上記組換えポリヌクレオチドベクターは、(a)ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域;(b)標的遺伝子;および(c)ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域を含む。好ましい実施形態において、上記標的遺伝子は、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子であり、これは、DT40細胞のニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座に組みこまれる際に、(i)免疫グロブリンV領域コード配列における体細胞超変異、および(ii)上記再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列とDT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくは両方を受け得る。特定の実施形態において、上記体細胞超変異は、免疫グロブリンV相補性決定領域(CDR)コード配列で起こり得、特定の実施形態においては、上記体細胞超変異は、免疫グロブリンVフレームワーク領域(FW)コード配列で起こり得、特定の実施形態においては、上記体細胞超変異は、免疫グロブリンV相補性決定領域(CDR)コード配列および免疫グロブリンVフレームワーク領域(FW)コード配列の両方で起こり得る。
「組換えポリヌクレオチドベクター」とは、宿主細胞にコード情報を移行するために有用な非天然ポリヌクレオチド分子をいう。このようなベクターは、DNA組換え技術を使用して生成される。
「ニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座」とは、ニワトリゲノム中の免疫グロブリン重鎖残基をコードする遺伝子がある遺伝子座をいう。それは、単一のJ遺伝子および15kb上流(約15 D遺伝子が間にある)に特有の機能的V遺伝子を含む。Reynaud et al., Cell 59: 171−83, 1989を参照のこと。この遺伝子座はまた、60〜80kbにわたり、V遺伝子から7kb上流で始まる偽遺伝子のクラスタ(ψV)、ならびに上記J遺伝子の下流にある免疫グロブリン定常領域をコードするC遺伝子のクラスタを含む。
上記ニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座は、特徴付けまたは配列決定するのが著しく困難であることが長く公知であった(Reynaud et al., Cell 59: 171−83, 1989)。このような困難は、GCが豊富であること(すなわち、対になったG−Cヌクレオチドの頻度が高くかつ優勢である)および/もしくはこの遺伝子座における多くの反復ヌクレオチド配列が存在することに起因し得る。
「標的遺伝子」とは、目的のタンパク質をコードする遺伝子をいう。好ましい実施形態において、標的遺伝子は、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子である。
「再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子」とは、V、D、およびJ遺伝子が、他の細胞におけるように、他の配列によって分離されるのではなく、一緒に結合されるように、Bリンパ球系統の体細胞において再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子をいう。「免疫グロブリンV−D−J遺伝子」は、「Ig VDJ遺伝子」もしくは「免疫グロブリンVDJ遺伝子」と本明細書で交換可能に使用される。特定の実施形態において、上記再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子は、ニワトリファブリキウス嚢細胞から単離される。
「標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座に組みこむ」とは、相同組換えを介して、標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座へと組みこむことをいう。より具体的には、このような組み込みは、B細胞(例えば、DT40細胞)の内因性ニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子と、ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域およびニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域の両方を含む組換えポリヌクレオチドベクターとの間の相同組換えによって達成される。上記ベクターは、上記ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域と、上記ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域との間に上記標的遺伝子をさらに含む。
「ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域」とは、特定の実施形態において、ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子の開始コドンから上流にある(例えば、配向に関してコード鎖もしくはセンス鎖を使用する場合に、開始コドンに対して5’側に位置する)ニワトリゲノムの領域をいう。このような領域はまた、「天然ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域」といわれる。この領域は、ニワトリB細胞の内因性V−D−J遺伝子との相同組換えを可能にするために、組換えポリヌクレオチドベクターの中で十分長くなければならない。特定の実施形態において、この領域は、少なくとも100〜2000もしくは少なくとも500〜2000(その範囲にある整数の全てを含み、例えば、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000、もしくは少なくとも1500)ヌクレオチド長である。特定の実施形態において、上記領域の3’末端は、ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子の開始コドンから1〜1000(この範囲の整数の全てを含む)ヌクレオチドである。特定の実施形態において、ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域は、上記ψVアレイ中のいかなる配列をも含まない。特定の他の実施形態において、ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域は、上記ψVアレイからの配列を含み得る。
特定の他の実施形態において、「ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域」とはまた、ニワトリB細胞の内因性V−D−J遺伝子との相同組換えを可能にするために、天然ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域に対して十分相同である配列を含み得る。このような領域は、天然ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域と少なくとも80.0〜99.9もしくは少なくとも90.0〜99.9(この範囲の値の全てを含み、例えば、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、もしくは少なくとも99)%同一性を共有し得る。
用語「作動可能に連結される」とは、上記用語が適用される構成要素が、それらが適切な条件下でそれらの本質的機能を行うことが可能な関係にあることを意味する。例えば、タンパク質コード配列に対して「作動可能に連結された」転写制御配列は、上記タンパク質コード配列の発現が、上記制御配列の転写活性と適合する条件下で達成されるように、上記タンパク質コード配列に連結される。
用語「制御配列」とは、本明細書で使用される場合、それらが連結されるかもしくは作動可能に連結されるコード配列の発現、プロセシングもしくは細胞内位置に影響を及ぼし得るポリヌクレオチド配列をいう。このような制御配列の性質は、宿主生物に依存し得る。特定の実施形態において、原核生物の転写制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含み得る。他の特定の実施形態において、真核生物の転写制御配列は、転写因子に関する1または複数の認識部位を含むプロモーター、転写エンハンサー配列、転写終結配列およびポリアデニル化配列を含み得る。特定の実施形態において、「制御配列」は、リーダー配列および/もしくは融合パートナー配列を含み得る。
用語「ポリヌクレオチド」とは、本明細書でいわれる場合、一本鎖もしくは二本鎖核酸ポリマーを意味する。特定の実施形態において、上記ポリヌクレオチドを構成するヌクレオチドは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドまたはヌクレオチドのいずれかのタイプの改変形態であり得る。上記改変は、塩基改変(例えば、ブロモウリジン)、リボース改変(例えば、アラビノシドおよび2’,3’−ジデオキシリボース)およびヌクレオチド間連結改変(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデート(phoshoraniladate)およびホスホロアミデート)を含む。用語「ポリヌクレオチド」は、具体的にはDNAの一本鎖もしくは二本鎖形態を含む。
用語「天然ヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。用語「改変ヌクレオチド」は、改変もしくは置換された糖類など有するヌクレオチドを含む。用語「オリゴヌクレオチド結合」は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデート、ホスホロアミデートなどのようなオリゴヌクレオチド結合を含む。例えば、LaPlanche et al., 1986, Nucl. Acids Res., 14:9081; Stec et al., 1984, J. Am. Chem. Soc., 106:6077; Stein et al., 1988, Nucl. Acids Res., 16:3209; Zon et al., 1991, Anti−Cancer Drug Design, 6:539; Zon et al., 1991, OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES: A PRACTICAL APPROACH, pp. 87−108 (F. Eckstein, Ed.), Oxford University Press, Oxford England; Stec et al., U.S. Pat. No. 5,151,510; Uhlmann and Peyman, 1990, Chemical Reviews, 90:543(それらの開示は、あらゆる目的のために参考として援用される)を参照のこと。オリゴヌクレオチドは、上記オリゴヌクレオチドもしくはそのハイブリダイゼーションの検出を可能にするように、検出可能な標識を含み得る。
用語「ベクター」とは、宿主細胞へコード情報を移行するために使用される任意の分子(例えば、核酸、プラスミド、もしくはウイルス)をいうために使用される。用語「発現ベクター」とは、宿主細胞の形質転換に適切であり、挿入される異種核酸配列の発現を指向および/もしくは制御する核酸配列を含むベクターをいう。発現としては、転写、翻訳、およびRNAスプライシング(イントロンが存在する場合には)のようなプロセスが挙げられるが、これらに限定されない。
当業者によって理解されるように、ポリヌクレオチドは、ゲノム配列、ゲノム外配列およびプラスミドにコードされた配列、ならびにタンパク質、ポリペプチド、ペプチドなどを発現するかまたは発現するように適合され得るより小さな操作された遺伝子セグメントを含み得る。このようなセグメントは、当業者によって天然から単離され得るか、合成により改変され得る。
当業者によっても認識されるように、ポリヌクレオチドは、一本鎖(コードもしくはアンチセンス)もしくは二本鎖であり得、DNA(ゲノムDNA、cDNAもしくは合成DNA)もしくはRNA分子であり得る。RNA分子は、hnRNA分子(これは、イントロンを含み、1対1様式でDNA分子に対応する)、およびmRNA分子(これは、イントロンを含まない)を含み得る。さらなるコード配列もしくは非コード配列は、本開示によれば、ポリヌクレオチド内に存在し得るが、存在する必要はなく、ポリヌクレオチドは、他の分子および/もしくは支持物質に連結され得るが、連結される必要はない。ポリヌクレオチドは、天然配列を含み得るか、またはこのような配列の改変体もしくは誘導体をコードする配列を含み得る。
ポリヌクレオチド配列を比較する場合、2つの配列が最大に対応するようにアラインされる場合、上記2つの配列の各々におけるヌクレオチドの配列が同じであれば、2つの配列は「同一」であるといわれる。2つのヌクレオチド配列の間の同一性のパーセンテージは、本明細書で記載される場合(例えば、ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域およびニワトリ免疫グロブリンJH遺伝子下流核酸配列領域に関して)、当該分野で受容されている実施および基準(例えば、Altschul et al., Nucl. Acids Res. 25:3389−3402 (1977)およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403−410 (1990)にそれぞれ記載されるBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズム)に従って決定され得る。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを介して公に利用可能である。1つの例証的な例において、累積スコアは、ヌクレオチド配列に関しては、パラメーターM(マッチする残基の対に関するリワードスコア(reward score);常に>0)およびN(ミスマッチ残基に関するペナルティースコア;常に<0)を使用して計算され得る。各方向におけるワードヒットの伸長は、以下の場合に中止される:累積アラインメントスコアは、達成されたその最大値から量Xだけ減る;上記累積スコアは、1以上の負のスコア付け残基アラインメントの累積に起因して、ゼロ以下になる;またはいずれかの配列の末端に達する。上記BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXは、上記アラインメントの感度および速度を決定する。上記BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に関して)は、11のデフォルトワード長(W)、および10の予測(E)、および50のBLOSUM62スコア付けマトリクス(Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照のこと)アラインメント(B)、10の予測(E)、M=5、N=−4ならびに両鎖の比較を使用する。
「ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域」とは、特定の実施形態において、ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子のスプライス部位から下流にある(例えば、配向に関してコード鎖もしくはセンス鎖を使用する場合に、上記スプライス部位に対して3’側に位置する)領域をいう。このような領域はまた、「天然ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域」といわれる。この領域は、ニワトリB細胞の内因性V−D−J遺伝子との相同組換えを可能にするために、組換えポリヌクレオチドベクターにおいて十分に長くなければならない。特定の実施形態において、この領域は、少なくとも100〜2000もしくは少なくとも500〜2000(この範囲の中の整数の全てを含み、例えば、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000、もしくは少なくとも1500)ヌクレオチド長である。特定の実施形態において、上記領域の5’末端および上記領域の3’末端のうちの少なくとも一方は、ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子のスプライス部位から1〜1000(この範囲の中の整数の全てを含む)ヌクレオチドである。特定の実施形態において、ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域は、免疫グロブリン重鎖の定常領域をコードするC遺伝子のクラスタ中のいかなる配列をも含まない。
特定の他の実施形態において、「ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域」とはまた、ニワトリB細胞の内因性V−D−J遺伝子との相同組換えを可能にするために、天然ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域に対して十分に相同である配列を含み得る。このような領域は、天然ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域と、少なくとも80.0〜99.9もしくは少なくとも90.0〜99.9(この範囲の中の値の全てを含み、例えば、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、もしくは少なくとも99)%同一性を共有し得る。
上記DT40ニワトリB細胞株は、トリ白血病ウイルス誘導性嚢リンパ腫に由来する。それは、分化の嚢B細胞ステージに停止状態であり、培養物中でその重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子を構成的に変異させることが公知である。他のB細胞と同様に、この構成的変異誘発は、免疫グロブリン(Ig)遺伝子の可変(V)領域、および従って発現された抗体分子の相補性決定領域(CDR)に対する変異を標的にする。DT40細胞における構成的変異誘発は、ドナー配列として各機能的V領域の上流に位置した非機能的V遺伝子(偽V遺伝子;ψV)のアレイを使用する遺伝子変換によって起こる。上記軽鎖遺伝子座におけるψV領域の欠失は、多様化の機構(この機構は、ヒトB細胞において共通して認められる)における遺伝子変換から体細胞超変異への切り替えを引き起こすことが以前に示された。DT40はまた、特定の遺伝子が改変されるか、欠失されるか、もしくは挿入される、あるいは目的の特定の遺伝子が内因性遺伝子(特に、内因性の再構成されたIg遺伝子)に取って代わる改変細胞の作出を可能にする、効率的な相同組換えを支持することが示されてきた。
「体細胞超変異」とは、バックグラウンドを上回る速度での(例えば、統計的に有意な様式での)体細胞での核酸の変異をいう。好ましくは、超変異は、生理学的レベルにおいて10−5〜10−3 bp−1 世代−1の変異速度をいう。これは、10−9および10−10 bp−1世代−1程度であるバックグラウンド変異速度より非常に高い。体細胞超変異は、当該分野で公知の任意の適切な方法によって検出され得る。例えば、体細胞(例えば、B細胞)由来の免疫グロブリン重鎖もしくは軽鎖可変遺伝子(例えば、免疫グロブリン重鎖もしくは軽鎖可変遺伝子の相補性決定領域コード配列)の配列は、最も相同な生殖系列可変遺伝子配列と比較され得る。特定の実施形態において、体細胞由来の配列は、その対応する生殖系列の配列から少なくとも1〜10(この範囲の中の整数の全てを含み、例えば、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも5、もしくは少なくとも10)%異なる。
「遺伝子変換」とは、一方の相同な対立遺伝子から他方への一方向様式での、配列情報の移行をいう。例えば、遺伝子変換は、非機能的偽V領域(例えば、VもしくはV偽遺伝子)が、上記再構成されかつ転写されたV遺伝子(例えば、再構成されかつ転写されたVもしくはV遺伝子)に対してヌクレオチド配列部分を移行するためのドナーとして働くプロセスを含む。遺伝子変換は、再構成されたV遺伝子の配列と、偽V領域の配列とを比較することを包含する、当該分野で公知の任意の適切な方法によって検出され得る。
体細胞超変異および遺伝子変換は、B細胞の免疫グロブリンVDJおよびVJ遺伝子内で天然の多様性を生成させる。体細胞超変異は、抗原刺激後に、胚中心で起こる。遺伝子変換は、抗原刺激とは無関係に、ニワトリおよび他のトリ種におけるファブリキウス嚢のような一次リンパ器官で起こる。ニワトリにおいて、上記上流偽V遺伝子からの拡がりは、上記再構成されたV−D−J遺伝子もしくはV−J遺伝子へと移行される。
特定の実施形態において、上記標的遺伝子は、再構成された哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、もしくはウサギ)免疫グロブリンV−D−J遺伝子もしくはヒト化免疫グロブリンV−D−J遺伝子であり得る。本明細書で記載される組成物をニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座へと組みこむことによって、上記再構成された哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、もしくはウサギ)免疫グロブリンV−D−J遺伝子もしくは上記ヒト化免疫グロブリンV−D−J遺伝子は、ニワトリB細胞(例えば、DT40細胞)において、体細胞超変異、遺伝子変換もしくはその両方を介して多様化され得る。
特定の実施形態において、上記標的遺伝子は、国際公開2009/029315号に開示される、再構成されたV−D−J遺伝子を含まない。
特定の実施形態において、上記標的遺伝子は、マーカータンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)および青色蛍光タンパク質(BFP))をコードする遺伝子である。さらなる例示的遺伝子としては、抗生物質(例えば、ネオマイシン、ブラストサイジン、ヒスチジノール、ハイグロマイシン、ゼオシン、ゼオマイシン(zeomycin)、およびピューロマイシン)への耐性をコードするものが挙げられる。さらなる例示的標的遺伝子としては、マーカーエピトープ(例えば、FLAG、Myc、もしくはHAタグ)のコード配列と融合した、再構成されたV−D−J遺伝子が挙げられる。
マーカータンパク質をコードする遺伝子を含む組換えポリヌクレオチドベクターは、ニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座における他の標的遺伝子の組み込みを促進するために使用され得る。例えば、ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域、GFP遺伝子、およびニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域を含む組換えポリヌクレオチドベクターは、上記GFP遺伝子をニワトリB細胞の免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座に最初に組みこむために使用され得る。上記GFP遺伝子が組みこまれたニワトリB細胞は、細胞で発現されたGFPによって生成される蛍光に基づいて、容易に検出され得る。次に、このようなB細胞は、第2の標的遺伝子(例えば、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子)以外はニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域およびニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域を同様に含む第2の組換えポリヌクレオチドベクターでトランスフェクトされ得る。相同組換えを介して、上記GFP遺伝子は、トランスフェクトされたB細胞(これら細胞は、GFPによって生成される蛍光の喪失によって容易に検出され得る)のうちのいくつかにおいて、上記第2の標的遺伝子によって置換され得る。
特定の実施形態において、上記標的遺伝子は、目的の酵素をコードする遺伝子である。このような標的遺伝子を含む組換えポリヌクレオチドベクターは、改変された特性(例えば、触媒活性、基質特異性、および/もしくは熱安定性)を有する上記酵素の改変体が得られ得るように、上記酵素を多様化することにおいて有用である。例示的な標的遺伝子としては、レセプター、リガンド、プロテアーゼ、リパーゼ、グリコシダーゼ、ホスファターゼ、キナーゼおよびヌクレアーゼをコードするものが挙げられる。
特定の実施形態において、本開示の組換えポリヌクレオチドベクターは、2種以上の標的遺伝子を含む。例えば、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子を含む組換えポリヌクレオチドベクターは、マーカータンパク質をコードする別の遺伝子をさらに含み得る。
本開示の組換えポリヌクレオチドベクターは、特定の実施形態において、1種以上の調節配列(プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および/もしくは適切な場合には他の配列が挙げられる)を含み得る。ベクターは、適切な場合、プラスミド、ウイルス、例えば、ファージ、もしくはファージミドであり得る。さらなる詳細に関しては、例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual: 2nd edition, Sambrook et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照のこと。核酸を操作するための多くの公知の技術およびプロトコル(例えば、核酸構築物を調製すること、変異誘発、配列決定、細胞へのDNAの導入など)は、Current Protocols in Molecular Biology, Second Edition, Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons, 1992、もしくはその後のそれらの改訂版に詳細に記載される。
(組成物)
本開示はまた、特定の実施形態に従って、本明細書で開示される組換えポリヌクレオチドベクターを含む組成物を提供する。
特定の実施形態において、本明細書で開示されるような複数の組換えポリヌクレオチドベクターを含む組成物が提供される。例えば、本明細書で記載されるように、このような組成物は、複数の標的遺伝子を複数のニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座へと組みこむための複数の組換えポリヌクレオチドベクターを含み得る。上記ベクターの各々は、(a)ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域;(b)標的遺伝子;および(c)ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域を含む。上記組成物の種々のベクター中の標的遺伝子は、種々のヌクレオチド配列を有し得、1または複数の標的タンパク質および/もしくは1または複数のその改変体をコードし得る。
標的タンパク質の「改変体」は、上記標的タンパク質と、少なくとも60〜99.5(上記範囲の中の値の全てを含み、例えば、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、もしくは少なくとも99)%配列相同性を有するタンパク質である。
本明細書で使用される場合、2つのアミノ酸配列の%相同性はまた、AltschulらのBLASTプログラム(J. Mol. Biol. 215: 403−10, 1990)とそれらのデフォルトパラメーターとを使用して決定される。
好ましい実施形態において、上記標的遺伝子は、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子であり、これは、DT40細胞のニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座に組みこまれる際に、(i)免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列および/もしくは免疫グロブリンVフレームワーク領域コード配列における体細胞超変異を含み得る、免疫グロブリンVコード配列における体細胞超変異、ならびに(ii)上記再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列とDT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方を受け得る。さらに好ましい実施形態において、上記再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子は、ニワトリファブリキウス嚢細胞の集団から単離された複数の再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子から得られる。ファブリキウス嚢細胞が得られるニワトリの年齢は、胚性15日目〜孵化後180日目(この範囲の中の全ての整数を含む)であり得る。ニワトリファブリキウス嚢細胞から単離された、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子は、インビボでの体細胞超変異および遺伝子変換を介して既に多様化されていると思われる。それらは、本明細書で提供されるベクターを介してニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座へと再び組みこまれる場合に、さらに多様化され得る。
本明細書で記載される特定の実施形態によれば、複数の再構成された免疫グロブリンV−D−J遺伝子をニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座へと組みこむための複数の組換えポリヌクレオチドベクターを含む組成物が企図される。このような組成物は、以下で記載されるように、免疫グロブリン重鎖可変領域のライブラリーを調製するために有用である。
特定の実施形態において、第1の標的遺伝子を本明細書で開示されるようにニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座に組みこむための第1の組換えポリヌクレオチドベクター、および第2の標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座に組みこむための第2の組換えポリヌクレオチドベクターを含む組成物が提供される。上記第2の組換えポリヌクレオチドベクターは、(a)ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域;(b)第2の標的遺伝子;および(c)ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域を含む。
上記第1の標的遺伝子に関して上記に記載されるものに類似の様式で、上記第2の標的遺伝子は、目的の任意のタンパク質(例えば、免疫グロブリン、マーカータンパク質および酵素)をコードする遺伝子であり得る。
特定の実施形態において、上記第1の標的遺伝子および第2の標的遺伝子は、互いに結合して、タンパク質複合体を形成する1種のタンパク質もしくは2種のタンパク質のサブユニットをコードする。このような実施形態における組成物は、得られる複合体の特徴(例えば、結合親和性もしくは特異性)を改変するために、サブユニットもしくはタンパク質の両方を多様化することにおいて有用である。例えば、上記第1の標的遺伝子は、免疫グロブリン重鎖可変領域(例えば、哺乳動物(ヒト、マウス、もしくはウサギを含む)もしくはヒト化免疫グロブリン重鎖可変領域)をコードし得、上記第2の標的遺伝子は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(例えば、哺乳動物(ヒト、マウス、もしくはウサギを含む)もしくはヒト化免疫グロブリン軽鎖可変領域)をコードし得る。この例における組成物は、両方の標的遺伝子をニワトリB細胞(例えば、DT40細胞)のゲノムへと組み込み、免疫グロブリン重鎖可変領域および軽鎖可変領域の両方を多様化して、抗原に対して変化した親和性および/もしくは特異性を有する免疫グロブリン可変領域を作り出すことにおいて有用である。
好ましい実施形態において、上記第1の標的遺伝子は、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子であり、上記第2の標的遺伝子は、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子である。DT40細胞のニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座に組みこまれる際に、上記第1の標的遺伝子は、(i)免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列および/もしくは免疫グロブリンVフレームワーク領域コード配列における体細胞超変異を含み得る、免疫グロブリンVコード配列における体細胞超変異、ならびに(ii)上記再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列とDT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくは両方を受け得;そして上記第2の標的遺伝子は、(i)免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列および/もしくは免疫グロブリンVフレームワーク領域コード配列における体細胞超変異を含み得る、免疫グロブリンVコード配列における体細胞超変異、ならびに(ii)上記再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列とDT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方を受け得る。
「ニワトリ免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座」とは、遺伝子が、ニワトリゲノム中の免疫グロブリン軽鎖残基をコードする遺伝子座をいう。それは、単一のJ遺伝子および上流の機能性V遺伝子を含む。Reynaud et al., Cell 40: 283−91, 1985、米国特許出願公開第2007/0186292号、および国際公開第2009/029315号を参照のこと。この遺伝子座はまた、上記V遺伝子から上流にある偽遺伝子(ψV)のクラスタおよび上記J遺伝子の下流にある免疫グロブリン軽鎖定常領域をコードするC遺伝子を含む。
「再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子」とは、上記VおよびJ遺伝子が、他の細胞(例えば、生殖系列の細胞)におけるように他の配列によって分離されるよりむしろ一緒に結合されるように、Bリンパ球系統の体細胞で再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子をいう。「免疫グロブリンV−J遺伝子」は、「Ig VJ遺伝子」もしくは「免疫グロブリンVJ遺伝子」と本明細書で交換可能に使用される。特定の実施形態において、上記再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子は、ニワトリファブリキウス嚢細胞から単離される。
「標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座に組みこむ」とは、標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座へと、相同組換えを介して組みこむことをいう。より具体的には、このような組み込みは、B細胞(例えば、DT40細胞)の内因性ニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子と、ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域およびニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域の両方を含む組換えポリヌクレオチドベクターとの間の相同組換えによって達成される。上記ベクターは、上記ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域とニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域との間に上記標的遺伝子をさらに含む。
「ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域」とは、特定の実施形態において、ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子の開始コドンから上流にある(例えば、配向に関してコード鎖もしくはセンス鎖を使用する場合に、開始コドンに対して5’側に位置する)ニワトリゲノム中の領域をいう。このような領域はまた、「天然ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域」といわれる。この領域は、ニワトリB細胞の内因性V−J遺伝子との相同組換えを可能にするように、組換えポリヌクレオチドベクターにおいて十分に長くなければならない。特定の実施形態において、この領域は、少なくとも100〜2000もしくは少なくとも500〜2000(この範囲の中の整数の全てを含み、例えば、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000、もしくは少なくとも1500)ヌクレオチド長である。特定の実施形態において、上記領域の3’末端は、ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子の開始コドンから1〜1000(この範囲の中の整数の全てを含む)ヌクレオチドである。特定の実施形態において、ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域は、ψVアレイ中のいかなる配列をも含まない。しかし、特定の他の実施形態において、ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域は、上記ψVアレイに由来する配列を含み得る。例えば、特定のV標的化ベクターは、上流の相同性アームにおいて1種、2種もしくはより多くのV偽遺伝子を含むニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域を含み得る。一例として、V標的化ベクターは、上記ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域に、Vコード領域と、最も近い上流のV偽遺伝子との間の配列距離(約2.4kb)の結果として(これは、上記IgH遺伝子座における対応エレメント間の間隔と比較して、比較的短い距離であった)、2種のV偽遺伝子を含んだ。
特定の他の実施形態において、「ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域」はまた、ニワトリB細胞の内因性V−J遺伝子との相同組換えを可能にするために、天然ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域に対して十分相同である配列を含み得る。このような領域は、天然ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域と、少なくとも80.0〜99.9もしくは少なくとも90.0〜99.9(この範囲の中の値の全てを含み、例えば、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、もしくは少なくとも99)%同一性を共有し得る。
「ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域」とは、ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子のスプライス部位から下流にある(例えば、配向に関してコード鎖もしくはセンス鎖を使用する場合に、スプライス部位に対して3’側に位置する)領域をいう。このような領域はまた、「天然ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域」といわれる。この領域は、ニワトリB細胞の内因性V−J遺伝子との相同組換えを可能にするために、組換えポリヌクレオチドベクター中で十分に長くなければならない。特定の実施形態において、この領域は、少なくとも100〜2000もしくは少なくとも500〜2000(この範囲の中の整数の全てを含み、例えば、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000、もしくは少なくとも1500)ヌクレオチド長である。特定の実施形態において、上記領域の3’末端は、ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子のスプライス部位から1〜1000(この範囲の中の整数の全てを含む)ヌクレオチドである。特定の実施形態において、ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域は、免疫グロブリン軽鎖の定常領域をコードするC遺伝子中のいかなる配列をも含まない。
特定の他の実施形態において、「ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域」とはまた、ニワトリB細胞の内因性V−J遺伝子との相同組換えを可能にするために、天然ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域に対して十分相同である配列を含み得る。このような領域は、天然ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域と、少なくとも80.0〜99.9もしくは90.0〜99.9(この範囲の中の値の全てを含み、例えば、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、もしくは少なくとも99)%同一性を共有し得る。
特定の他の実施形態によれば、本開示は、(1)複数の第1の標的遺伝子を複数のニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座へと組みこむための複数の第1の組換えポリヌクレオチドベクター、および(2)複数の第2の標的遺伝子を複数のニワトリ免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座へと組みこむための複数の第2の組換えポリヌクレオチドベクターを含む組成物を提供する。上記第1の組換えポリヌクレオチドベクターの各々は、(a)ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域;(b)第1の標的遺伝子;および(c)ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域を含む。上記第2の組換えポリヌクレオチドベクターの各々は、(a)ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域;(b)第2の標的遺伝子;および(c)ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域を含む。種々の第1の組換えポリヌクレオチドベクターの中の上記第1の標的遺伝子は、種々のヌクレオチド配列を有し得、第1の標的タンパク質もしくはその改変体をコードし得る。同様に、種々の第2の組換えポリヌクレオチドベクターの中の上記第2の標的遺伝子は、種々のヌクレオチド配列を有し得、第2の標的タンパク質もしくはその改変体をコードし得る。
特定の実施形態において、上記第1の標的遺伝子および第2の標的遺伝子は、1種のタンパク質もしくは2種のタンパク質のサブユニットをコードし、これらは互いに結合して、タンパク質複合体もしくはこのようなサブユニットもしくはタンパク質の改変体を形成する。例えば、上記第1の標的遺伝子は、免疫グロブリン重鎖可変領域(例えば、哺乳動物(ヒト、マウス、もしくはウサギを含む)もしくはヒト化免疫グロブリン重鎖可変領域)をコードし得、そして上記第2の標的遺伝子は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(例えば、哺乳動物(ヒト、マウス、もしくはウサギを含む)もしくはヒト化免疫グロブリン軽鎖可変領域)をコードし得る。
好ましい実施形態において、上記第1の標的遺伝子は、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子であり、上記第2の標的遺伝子は、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子である。DT40細胞のニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座に組みこまれる際に、上記第1の標的遺伝子は、(i)免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列および/もしくは免疫グロブリンVフレームワーク領域コード配列における体細胞超変異を含み得る、免疫グロブリンV領域コード配列における体細胞超変異、ならびに(ii)上記再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列とDT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方を受け得;そして上記第2の標的遺伝子は、(i)免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列および/もしくは免疫グロブリンVフレームワーク領域コード配列における体細胞超変異を含み得る、免疫グロブリンV領域コード配列における体細胞超変異、ならびに(ii)上記再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列とDT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方を受け得る。さらに好ましい実施形態において、上記再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子および/もしくは上記再構成されたV−J遺伝子は、複数の再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子および/もしくはニワトリファブリキウス嚢細胞の集団から単離された再構成されたV−J遺伝子から得られる。複数の第1の組換えポリヌクレオチドベクターおよび複数の第2の組換えポリヌクレオチドベクターを含む組成物は、免疫グロブリンの多様なライブラリー(これは、以下に記載されるように、所望の標的抗原に特異的に結合し得る抗体を同定および回収するためにスクリーニングされ得る)を生成するために有用である。
(抗体およびその抗原結合フラグメント)
「抗体」とは、免疫グロブリン分子であって、免疫グロブリン分子の可変領域(本明細書では可変ドメインともいわれる)に位置する少なくとも1つのエピトープ認識部位を介して、標的(例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなど)に特異的に結合し得るものである。本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、インタクトなポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体のみならず、それらのフラグメント(例えば、単一可変領域抗体(single variable region antibody)(dAb)、または他の公知の抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fvなど)、一本鎖(ScFv)、その合成改変体、天然改変体、必要とされる特異性の抗原結合フラグメントを有する抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ならびに必要とされる特異性の抗原結合部位もしくはフラグメント(エピトープ認識部位)を含む、任意の他の操作されるかもしくは改変された立体配置の免疫グロブリン分子)もまた包含する。「二重特異性抗体」(遺伝子融合によって構築された多価もしくは多重特異性フラグメント(国際公開第94/13804号; Holliger et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 6444−6448, 1993))はまた、本明細書で企図される抗体の特定の形態である。CH3ドメインに結合されたscFvを含む低分子抗体(minibody)はまた、本明細書において含まれる(Hu et al, Cancer Res., 56, 3055−3061, 1996;例えば、Ward et al., Nature 341, 544−546 (1989); Bird et al, Science 242, 423−426, 1988; Huston et al, PNAS USA, 85, 5879−5883, 1988; PCT/US92/09965; 国際公開第94/13804号; Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 6444−6448, 1993; Reiter et al., Nature Biotech 14, 1239−1245, 1996; Hu et al, Cancer Res. 56, 3055−3061, 1996もまた参照のこと)。ナノ抗体およびマキシ抗体(maxibodies)もまた、企図される(例えば、米国特許第6,765,087号;米国特許第6,838,254号;国際公開第06/079372号;国際公開第2010/037402号を参照のこと)。
用語「抗原結合フラグメント」とは、本明細書で使用される場合、目的の抗原に結合する免疫グロブリン重鎖および/もしくは軽鎖の少なくとも1個のCDRを含むポリペプチドフラグメントをいう。この点に関して、本明細書で記載される抗体の抗原結合フラグメントは、本明細書で示されるVHおよび/もしくはVL配列の1個、2個、3個、4個、5個もしくは6個全てのCDRを含み得る。
用語「抗原」とは、選択的結合剤(例えば、抗体)によって結合され得、さらにその抗原のエピトープに結合し得る抗体を生成するために動物で使用され得る分子もしくは分子の一部をいう。抗原は、1以上のエピトープを有し得る。
用語「エピトープ」とは、免疫グロブリンもしくはT細胞レセプターに特異的に結合し得る任意の決定基、好ましくは、ポリペプチド決定基を含む。エピトープは、抗体によって結合される抗原の領域である。特定の実施形態において、エピトープ決定基は、分子の化学的に活性なグループ(例えば、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリルもしくはスルホニル)を含み、特定の実施形態において、特定の三次元構造の特徴、および/もしくは特定の電荷の特徴を有し得る。特定の実施形態において、抗体は、これがタンパク質および/もしくは高分子の複雑な混合物中のその標的抗原を優先的に認識する場合に、抗原に特異的に結合するといわれる。抗体は、特定の実施形態によれば、抗体−抗原結合の平衡解離定数が10−6M以下、もしくは10−7M以下、もしくは10−8M以下である場合に、抗原を特異的に結合するといわれ得る。いくつかの実施形態において、上記平衡解離定数は、10−9M以下もしくは10−10M以下であり得る。
タンパク質分解酵素であるパパインは、IgG分子を優先的に切断して、いくつかのフラグメントが生じ、そのうちの2つ(上記F(ab)フラグメント)は、各々、インタクトな抗原結合部位を含む共有結合したヘテロダイマーを含む。酵素ペプシンは、IgG分子を切断して、いくつかのフラグメント(両方の抗原結合部位を含むF(ab’)フラグメントを含む)を提供し得る。本発明の特定の実施形態による使用のためのFvフラグメントは、IgMの優先的なタンパク質切断、および希に、IgGもしくはIgA免疫グロブリン分子のタンパク質切断によって生成され得る。しかし、Fvフラグメントは、より一般的には、当該分野で公知の組換え技術を使用して得られる。上記Fvフラグメントは、非共有結合のV::Vヘテロダイマー(抗原認識の大部分および天然抗体分子の結合能力を保持する抗原結合部位を含む)を含む(Inbar et al. (1972) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 69:2659−2662; Hochman et al. (1976) Biochem 15:2706−2710; and Ehrlich et al. (1980) Biochem 19:4091−4096).
特定の実施形態において、一本鎖FvもしくはscFV抗体が企図される。例えば、κ抗体(Ill et al., Prot. Eng. 10:949−57 (1997));低分子抗体(Martin et al., EMBO J 13:5305−9 (1994));二重特異性抗体(Holliger et al., PNAS 90:6444−8 (1993));もしくはJanusins(Traunecker et al., EMBO J. 10:3655−59 (1991)およびTraunecker et al. Int. J. Cancer Suppl. 7:51−52 (1992))は、所望の特異性を有する抗体を選択することに関して本願の教示に従って、標準的分子生物学技術を使用して調製され得る。さらに他の実施形態において、本開示のリガンドを含む二重特異性抗体もしくはキメラ抗体が、作製され得る。例えば、キメラ抗体は、種々の抗体に由来するCDRおよびフレームワーク領域を含み得る一方で、1つの結合ドメインを介して所望の抗原に、および第2の結合ドメインを介して第2の分子に特異的に結合する二重特異性抗体が、生成され得る。これら抗体は、組換え分子生物学技術を介して生成され得るか、または物理的に一緒に結合体化され得る。
一本鎖Fv(sFv)ポリペプチドは、ペプチドコードリンカーによって連結されたVコード遺伝子およびVコード遺伝子を含む遺伝子融合物から発現される共有結合で連結されたV::Vヘテロダイマーである。Huston et al. (1988) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 85(16):5879−5883。多くの方法が、抗体V領域由来の自然に集合するが化学的に分離される軽鎖ポリペプチドおよび重鎖ポリペプチドを、抗原結合部位の構造に実質的に類似した三次元構造へと折りたたまれるsFv分子へと変換するための化学構造を識別するのに記載されてきた。例えば、米国特許第5,091,513号および米国特許第5,132,405号(Huston et al.);ならびに米国特許第4,946,778号(Ladner et al.)を参照のこと。
抗体のdAbフラグメントは、VHドメインからなる(Ward, E. S. et al., Nature 341, 544−546 (1989))。
特定の実施形態において、本明細書で開示される抗体は、二重特異性抗体の形態にある。二重特異性抗体は、ポリペプチドのマルチマーであり、各ポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖の結合領域を含む第1のドメインおよび免疫グロブリン重鎖の結合領域を含む第2のドメインを含み、この2個のドメインは、(例えば、ペプチドリンカーによって)連結されているが、互いに会合して、抗原結合部位を形成することはできない;抗原結合部位は、上記マルチマー内の1つのポリペプチドの第1のドメインと、上記マルチマー内の別のポリペプチドの第2のドメインとの会合によって形成される(国際公開第94/13804号)。
二重特異性抗体が使用される予定である場合、これらは、従来の二重特異性抗体であり得、これは種々の方法で製造され得(Holliger, P. and Winter G. Current Opinion Biotechnol. 4, 446−449 (1993))、例えば、化学的に調製されてもよいし、もしくはハイブリッドハイブリドーマを形成してもよいし、または上述の二重特異性抗体フラグメントのうちのいずれかであってもよい。二重特異性抗体およびscFvは、可変領域のみを使用して、潜在的にはこのような抗体の投与を受ける被験体で誘発された免疫応答(例えば、抗イディオタイプ反応)の可能性もしくは重篤度を低下させて、Fc領域なしで構築され得る。
二重特異性抗体はまた、二重特異性完全抗体とは対照的に、特に有用であり得る。なぜならそれらは、容易に構築され、E.coliにおいて発現され得るからである。適切な結合特異性の二重特異性抗体(および多くの他のポリペプチド(例えば、抗体フラグメント))は、ファージディスプレイ(国際公開第94/13804号)を使用してライブラリーから容易に選択され得る。上記二重特異性抗体の一方のアームを一定のまま、例えば、特異性が抗原Xに対して指向される状態で維持される場合、ライブラリーは、他方のアームが変化し、適切な特異性の抗体が選択されて作製され得る。二重特異性完全抗体は、knobs−into−holes工学(Ridgeway et al, Protein Eng., 9, 616−621, 1996)によって作製され得る。
特定の実施形態において、本明細書で記載される抗体は、UniBody(登録商標)の形態で提供され得る。UniBody(登録商標)は、ヒンジ領域が除去されたIgG4抗体である(GenMab Utrecht, The Netherlandsを参照のこと;例えば、米国特許出願第20090226421号もまた参照のこと)。この独自の抗体技術は、現在の小さな抗体形式より予測された長い治療領域を有する、安定な、より小さな抗体形式を作り出す。IgG4抗体は不活性であるとみなされるので、免疫系と相互作用しない。完全なヒトIgG4抗体は、対応するインタクトなIgG4に対して異なる安定性の特性を有する半分子(half molecular)フラグメントを得るために、上記抗体のヒンジ領域を排除することによって改変され得る(GenMab, Utrecht)。上記IgG4分子を二分割することによって、同族抗原(例えば、疾患標的)に結合し得るUniBody(登録商標)上のただ1つの領域を残しておき、上記UniBody(登録商標)は、従って、標的細胞上のただ1つの部位を一価として結合する。特定の癌細胞表面抗原に関して、この一価の結合は、同じ抗原特異性を有する二価抗体を使用して認められ得るとおりに増殖するようには癌細胞を刺激しないと思われるので、UniBody(登録商標)技術は、従来の抗体での処置に抵抗性であり得る癌のいくつかのタイプについての処置選択肢を提供し得る。上記UniBody(登録商標)は、通常のIgG4抗体のサイズの約半分である。この小さなサイズは、より大きな固形腫瘍にわたる分子のよりよい分布を可能にし、効力を潜在的に増大させて、癌のいくつかの形態を処置する場合に大きな利益となり得る。
特定の実施形態において、本開示の抗体は、ナノ抗体の形態をとり得る。ナノ抗体は、単一の遺伝子によってコードされ、ほぼ全ての原核生物宿主および真核生物宿主(例えば、E.coli(例えば、米国特許第6,765,087号を参照のこと)、糸状菌(例えば、AspergillusもしくはTrichoderma)および酵母(例えば、Saccharomyces、Kluyvermyces、HansenulaもしくはPichia(例えば、米国特許第6,838,254号を参照のこと)))において効率よく生成される。この生成プロセスは、スケール調整可能であり、複数キログラム量のナノ抗体が生成されてきた。ナノ抗体は、長期の貯蔵期間を有する使用準備のできた溶液として処方され得る。ナノクローン法(例えば、国際公開第06/079372号を参照のこと)は、B細胞の自動化ハイスループット選択に基づいて、所望の標的に対するナノ抗体を生成するための独自の方法である。
特定の実施形態において、本明細書で記載される抗体およびその抗原結合フラグメントは、重鎖および軽鎖のCDRセットを含み、それぞれ、CDRに対する支持を提供し、互いに関連したCDRの空間的関係を規定する重鎖および軽鎖のフレームワーク領域(FR)セットの間に挿入される。本明細書で使用される場合、用語「CDRセット」とは、重鎖もしくは軽鎖V領域の3つの超可変領域をいう。重鎖もしくは軽鎖のN末端から始まって、これら領域は、それぞれ、「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」といわれる。従って、抗原結合部位は、6個のCDRを含み、これらは、重鎖および軽鎖V領域の各々に由来するCDRセットを含む。単一のCDR(例えば、CDR1、CDR2もしくはCDR3)を含むポリペプチドは、「分子認識ユニット」と本明細書でいわれる。多くの抗原−抗体複合体の結晶分析は、CDRのアミノ酸残基が、結合した抗原と広範囲な接触を形成することを実証した。ここで最も広範囲な抗原接触は、重鎖CDR3との接触である。従って、上記分子認識ユニットは、抗原結合部位の特異性に主に関与している。
本明細書で使用される場合、用語「FRセット」とは、重鎖もしくは軽鎖V領域のCDRセットのうちのCDRを組み立てる4つの隣接するアミノ酸配列をいう。いくつかのFR残基が、結合した抗原と接触し得る;しかし、FRは、上記V領域を上記抗原結合部位、特に、上記CDRに直接隣接するFR残基へと折りたたむことに主に関与している。FR内では、特定のアミノ酸残基および特定の構造特徴が、非常によく保存されている。この点に関して、全てのV領域配列は、約90アミノ酸残基の内部ジスルフィドループを含む。上記V領域が結合部位へと折りたたまれる場合、CDRは、抗原結合表面を形成する突き出たループモチーフとして提示される。正確なCDRアミノ酸配列には無関係に、特定の「標準」構造へと上記CDRループの折りたたまれた形状に影響を及ぼすFRの保存された構造領域があることが、一般に認識されている。さらに、特定のFR残基は、抗体重鎖および軽鎖の相互作用を安定化させる非共有結合のドメイン間接触に関与することが公知である。
免疫グロブリン可変領域の構造および位置は、Kabat, E. A. et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 4th Edition, US Department of Health and Human Services, 1987、およびその改訂版(現在、インターネット上で利用可能(immuno.bme.nwu.edu))を参照することによって決定され得る。
「モノクローナル抗体」とは、均質な抗体集団をいい、上記モノクローナル抗体は、エピトープの選択的結合に関わるアミノ酸(天然および非天然)から構成される。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一のエピトープに対して指向される。用語「モノクローナル抗体」は、インタクトなモノクローナル抗体および全長モノクローナル抗体のみならず、それらのフラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、一本鎖(ScFv)、これらの改変体、抗原結合部分を含む融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ならびに必要とされる特異性の抗原結合フラグメント(エピトープ認識部位)およびエピトープに結合する能力を含む、任意の他の改変された立体配置の免疫グロブリン分子をも包含する。抗体の供給源もしくはそれが作製される様式(例えば、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、トランスジェニック動物などによる)の点では限定されるとは意図されない。この用語は、完全な免疫グロブリン、ならびに上記で記載されるフラグメントなどを含む。
「ヒト化」抗体とは、一般には、組み換え技術を使用して調製され、非ヒト種の免疫グロブリンに由来する抗原結合部位ならびにヒト免疫グロブリンの構造および/もしくは配列に基づいて分子の残りの免疫グロブリン構造を有する、キメラ分子をいう。上記抗原結合部位は、完全な可変領域が定常ドメインに融合されたもの、またはCDRのみが可変ドメイン中の適切なフレームワーク領域にグラフト化(graft)されたもののいずれかを含み得る。エピトープ結合部位は、野生型であってもよいし、1以上のアミノ酸置換によって改変されていてもよい。このキメラ構造は、ヒト個体での免疫原としての非ヒト起源の定常領域を排除するが、外来の可変領域に対する免疫応答の可能性は残っている(LoBuglio, A. F. et al., (1989) Proc Natl Acad Sci USA 86:4220−4224; Queen et al., PNAS (1988) 86:10029−10033; Riechmann et al., Nature (1988) 332:323−327)。
別のアプローチは、ヒト由来定常領域を提供することに焦点を当てるのみならず、上記可変領域をも改変して、それらをヒト形態に可能な限り近く作り直すようにすることにも焦点を当てる。上記でも述べたように、重鎖および軽鎖の両方の可変領域は、問題のエピトープに応じて変化し、結合能力を決定する3個の相補性決定領域(CDR)を含み、上記CDRは、所定の種において比較的保存されており、推定するに上記CDRのための足場を提供する4個のフレームワーク領域(FR)が隣接していることは公知である。非ヒト抗体が、特定のエピトープについて調製される場合、可変領域は、非ヒト抗体由来のCDRを、改変されるヒト抗体に存在するFRに対してグラフト化することによって、「作り直され」得るか、もしくは「ヒト化」され得る。種々の抗体へのこのアプローチの適用は、Sato, K., et al., (1993) Cancer Res 53:851−856; Riechmann, L., et al., (1988) Nature 332:323−327; Verhoeyen, M., et al., (1988) Science 239:1534−1536; Kettleborough, C. A., et al., (1991) Protein Engineering 4:773−3783; Maeda, H., et al., (1991) Human Antibodies Hybridoma 2:124−134; Gorman, S. D., et al., (1991) Proc Natl Acad Sci USA 88:4181−4185; Tempest, P. R., et al., (1991) Bio/Technology 9:266−271; Co, M. S., et al., (1991) Proc Natl Acad Sci USA 88:2869−2873; Carter, P., et al., (1992) Proc Natl Acad Sci USA 89:4285−4289;およびCo, M. S. et al., (1992) J Immunol 148:1149−1154によって報告されている。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、全てのCDR配列(例えば、マウス抗体由来の6個全てのCDRを含むヒト化マウス抗体)を保存する。他の実施形態において、ヒト化抗体は、1個以上のCDR(1個、2個、3個、4個、5個、もしくは6個)を有し、これらは、元の抗体に対して変化しており、元の抗体の1個以上のCDRに「由来する」1個以上のCDRとも称される。
特定の実施形態において、本開示の抗体は、キメラ抗体であり得る。この点に関して、キメラ抗体は、作動可能に連結されたか、もしくは他の方法で異なる抗体の異種Fc部分に融合された、所望の結合特異性の抗体の抗原結合フラグメントから構成される。特定の実施形態において、上記異種Fcドメインは、ヒト起源のものである。他の実施形態において、上記異種Fcドメインは、親抗体の種々のIgクラス(IgA(IgA1およびIgA2サブクラスを含む)、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4サブクラスを含む)、およびIgMを含む)に由来し得る。さらなる実施形態において、上記異種Fcドメインは、種々のIgクラスのうちの1種以上に由来するCH2およびCH3ドメインから構成され得る。ヒト化抗体に関して上記で述べられるように、キメラ抗体の抗原結合フラグメントは、本明細書で記載される抗体のCDRのうちの1個以上(例えば、本明細書で記載される抗体の1個、2個、3個、4個、5個、もしくは6個のCDR)を含むだけでもよいし、可変ドメイン全体(VL、VHもしくはその両方)を含んでもよい。
特定の実施形態において、所望の抗原結合特異性を有する抗体は、本明細書で記載される抗体のCDRのうちの1個以上を含む。この点に関して、いくつかの例において、抗体のVHCDR3のみの移行は、所望の特異的結合をなお保持しながら行われ得ることが示された(Barbas et al., PNAS (1995) 92: 2529−2533)。McLane et al., PNAS (1995) 92:5214−5218、Barbas et al., J. Am. Chem. Soc. (1994) 116:2161−2162もまた参照のこと。
Marksら(Bio/Technology, 1992, 10:779−783)は、可変ドメイン領域の5’末端にもしくはこれに隣接して指向されるコンセンサスプライマーがヒトVH遺伝子の第3のフレームワーク領域に対するコンセンサスプライマーとともに使用されて、CDR3を欠くVH可変ドメインのレパートリーを提供する、抗体可変ドメインのレパートリーを生成するための方法を記載する。Marksらはさらに、特定の抗体のCDR3とこのレパートリーをどのように合わせ得るかを記載する。類似の技術を使用して、ここで記載される抗体のCDR3由来配列は、CDR3を欠くVHもしくはVLドメインのレパートリーとシャッフルされ得、シャッフルされた完全なVHもしくはVLドメインは、同族VLもしくはVHドメインと組み合わされて、所望の抗原と結合する抗体もしくはその抗原結合フラグメントを提供し得る。上記レパートリーは、次いで、適切な抗体もしくはその抗原結合フラグメントが選択され得るように、適切な宿主システム(例えば、国際公開第92/01047号のファージディスプレイシステム)において提示され得る。レパートリーは、少なくとも約10の個々のメンバーおよび数桁多く(例えば、約10〜10もしくは1010またはより多く)のメンバーからなり得る。類似のシャッフリングもしくはコンビナトリアル技術はまた、Stemmer(Nature, 1994, 370:389−391)によって開示される。彼は、β−ラクタマーゼ遺伝子に関連する技術を記載するが、このアプローチが、抗体の生成に使用され得ると述べている。
さらなる選択肢は、可変ドメイン全体の中で変異を生成するために、1種以上の選択されたVHおよび/もしくはVL遺伝子のランダム変異誘発を使用して、本明細書に記載される発明の実施形態の1個以上のCDR由来配列を有する新規VHもしくはVL領域を生成することである。このような技術は、Gramら(1992 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3576−3580)によって記載される。彼らは、エラープローンPCRを使用した。使用され得る別の方法は、VHもしくはVL遺伝子のCDR領域に対する変異誘発を指向することである。このような技術は、Barbasら(1994 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3809−3813)およびSchierら(1996 J. Mol. Biol. 263:551−567)によって開示されている。
特定の実施形態において、本明細書で記載される抗体の特定のVHおよび/もしくはVLは、相補的な可変ドメインのライブラリーをスクリーニングして、所望の特性(例えば、所望の抗原に対する増大した親和性)を有する抗体を同定するために使用され得る。このような方法は、例えば、Portolano et al., J. Immunol. (1993) 150:880−887; Clarkson et al., Nature (1991) 352:624−628に記載される。
他の方法はまた、CDRを混合し適合させて、所望の結合活性を有する抗体を同定するために使用され得る。例えば: Klimka et al., British Journal of Cancer (2000) 83: 252−260は、マウスVLおよびヒトVHライブラリーと、マウスVHから保持されたCDR3およびFR4とを使用するスクリーニングプロセスを記載する。抗体を得た後、上記VHを、抗原を結合した抗体を得るために、ヒトVLライブラリーに対してスクリーニングした。Beiboer et al., J. Mol. Biol. (2000) 296:833−849は、マウス重鎖全体およびヒト軽鎖ライブラリーを使用するスクリーニングプロセスを記載する。抗体を得た後、1つのVLを、マウスのCDR3が保持されたヒトVHライブラリーと組み合わせた。抗原に結合し得る抗体が得られた。Rader et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA (1998) 95:8910−8915は、上記のBeiboerらのものに類似のプロセスを記載する。
これら直前に記載された技術は、それ自体が当該分野で公知の技術である。しかし、本開示に基づけば、当業者は、本明細書で記載される本発明のいくつかの実施形態に従って、当該分野で慣用的な方法論を使用して、抗体もしくはその抗原結合フラグメントを得るためにこのような技術を使用し得る。
抗体もしくはポリペプチドに「特異的に結合する」もしくは「優先的に結合する」(本明細書で交換可能に使用される)エピトープは、当該分野で十分に理解された用語であり、このような特異的もしくは優先的な結合を決定するための方法はまた、当該分野で周知である。分子は、代わりの細胞もしくは物質と反応もしくは会合するより、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間および/もしくはより大きな親和性で、特定の細胞もしくは物質と反応もしくは会合する場合に、「特異的結合」もしくは「優先的結合」を示すといわれる。抗体は、他の物質に結合するより大きな親和性、結合力で、より容易におよび/もしくはより長い持続時間で結合する場合、標的に「特異的に結合する」か、または「優先的に結合する」。例えば、第1の標的に特異的にもしくは優先的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)が、第2の標的に特異的にもしくは優先的に結合してもよいし、またはしなくてもよいということはまた、この定義を読めば理解される。よって、「特異的結合」もしくは「優先的結合」は、排他的な結合を必ずしも要しない(が、含んでもよい)。しかし必ずしもではないが、一般に、結合への言及は、優先的結合を意味する。
免疫学的結合は、一般に、例えば、例示の目的であって限定の目的ではないが、静電気、イオン、親水性および/もしくは疎水性の引力もしくは斥力、立体的な力、水素結合、ファン・デル・ワールス力、および他の相互作用の結果として、免疫グロブリン分子と、免疫グロブリンが特異的である抗原との間で起こるタイプの非共有結合的相互作用をいう。免疫学的結合の相互作用の強さ、もしくは親和性は、相互作用の解離定数(K)によって表され得る。ここでより小さなKは、より大きな親和性を表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性は、当該分野で周知の方法を使用して定量され得る。1つのこのような方法は、抗原結合部位/抗原複合体形成および解離の速度を測定することを要し、ここでそれら速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、および両方の方向で等しく速度に影響を及ぼす幾何的パラメーターに依存する。従って、「オン速度定数(on rate constant)」(Kon)および「オフ速度定数(off rate constant)」(Koff)はともに、濃度の計算、ならびに会合および解離の実際の速度によって決定され得る。Koff/Konの比は、親和性に関連しない全てのパラメーターを相殺することを可能にし、従って、解離定数Kに等しい。一般には、Davies et al. (1990) Annual Rev. Biochem. 59:439−473を参照のこと。
存在するエピトープを参照して用語「免疫学的に活性」、または「免疫学的に活性なまま」とは
抗体が、種々の条件下で(例えば、エピトープが還元条件および変性条件に供された後に)エピトープに結合する能力に言及する。
(宿主細胞およびライブラリー)
他の実施形態において、本開示は、組換えポリヌクレオチドベクターまたは本明細書で開示されるようなベクターを含む組成物を含む宿主細胞を提供する。
特定の関連実施形態において、上記宿主細胞は、本明細書で記載される組換えポリヌクレオチドベクターを増殖させ得る。このような目的での例示的な宿主細胞としては、細菌細胞(例えば、E.coli)が挙げられる。
特定の実施形態において、上記宿主細胞は、標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座もしくは軽鎖遺伝子座に組みこむことを可能にするニワトリ細胞である。好ましい実施形態において、上記宿主細胞は、ニワトリB細胞もしくはニワトリB細胞に由来する細胞(例えば、ニワトリ嚢リンパ腫細胞)である。さらに好ましい実施形態において、上記宿主細胞は、DT40細胞である。
特定の実施形態において、上記宿主細胞は、標的配列の多様化をさらに促進する国際公開第2009/029315号および米国特許出願第20100093033号に記載されるシステムの使用を可能にするために、それらの免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座および/もしくはそれらの免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座において「cis調節エレメント」(例えば、重合ラクトースオペレーター配列)をさらに含むニワトリB細胞(例えば、DT40細胞)である。簡潔には、そこには、標的遺伝子の多様化の可逆性の誘導を可能にする改変B細胞が記載されている。上記細胞は、目的の標的遺伝子(例えば、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子)に作動可能に連結された「cis調節エレメント」を含むように改変される。上記細胞は、「テザリング因子(tethering factor)」に融合されている「多様化因子」を含むようにさらに改変される。テザリング因子の機能は、cis調節エレメントに結合し、それによって、多様化因子を標的遺伝子の発現および/もしくは変異誘発を制御する領域にもたらすことである。多様化因子の役割は、標的配列の多様化(変異)を加速もしくは調節することである。標的遺伝子は、Ig遺伝子座に挿入されるので、変異は、そのコード領域に標的化され、多様化因子−テザリング因子融合タンパク質の使用によって制御される。一般に、cis調節エレメントは、テザリング因子が配列特異的様式でそれに結合し、遺伝子(例えば、目的の遺伝子(例えば、標的遺伝子))の発現もしくは多様化を制御する領域に位置づけられることを可能にする任意のDNA配列であり得る。cis調節エレメントは、重合ラクトースオペレーター(PolyLacO)(例えば、20塩基対LacO結合部位の約100反復を含むもの)を含み得る。cis調節エレメントは、Igλ軽鎖およびIgH遺伝子座のψV領域内に位置づけられる。テザリング因子は、LacOに対して高い親和性で結合するLacリプレッサー(LacI)を含む。cis調節エレメントのこの挿入は、改変DT40細胞株におけるテンプレート化した変異誘発(遺伝子変換)の通常のプロセスに影響を及ぼさない。
国際公開第2009029315号および米国特許出願第2010093033号のシステムの誘導局面は、テザリング因子(LacI)−多様化因子融合タンパク質の発現およびイソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)(LacOからのLacIの放出を引き起こす小分子)の使用を介して起こる。改変DT40細胞を10μM程度のIPTGとともに培養すると、PolyLacOからのLacIの放出が引き起こされ、細胞増殖に影響を及ぼさない。多くの異なる多様化因子が企図され、クロマチン構造に影響を及ぼす因子、転写活性化因子、ならびに他の遺伝子調節因子、デアミナーゼ、DNA修復および複製に関わるタンパク質、レゾルバーゼおよびヘリカーゼ、細胞周期調節因子、核膜孔複合体のタンパク質、ならびにユビキチン化に関わるタンパク質を含む。例示的なテザリング因子−多様化因子構築物としては、LacI−HP1が挙げられる。この構築物において、ヘテロクロマチンタンパク質であるHP1は、隣り合う遺伝子の閉じたクロマチン構造を促進する。従って、LacIが改変DT40細胞でPolyLacOに結合する場合、テザリングしたHP1タンパク質が、開いたクロマチン状態から非許容性クロマチン状態へのドナーψV配列の移行を引き起こす。これは、ψV領域の欠失に機能的に等しく、下流Ig Vλ遺伝子座のテンプレート化された変異誘発からこの標的化領域の体細胞超変異への切り替えを同様に生じさせる。PolyLacOとの組み合わせにおいて有用なさらなるテザリング因子−多様化因子構築物はまた、国際公開第2009029315号および米国特許出願第2010093033号に記載される。
特定の実施形態において、上記宿主細胞は、ニワトリIg重鎖定常領域をコードする遺伝子および/もしくはニワトリIg軽鎖定常領域をコードする遺伝子が、ヒトIg重鎖および/もしくは軽鎖定常領域をコードする遺伝子で置換されたニワトリ細胞(例えば、DT40細胞)である。このような置換はまた、置換されるニワトリ遺伝子から上流および下流にある領域で、相同組換えを介してなされ得る。このような宿主細胞は、キメラ抗体を生成し、従って、それら細胞において生成される所望の抗体のヒト化を促進し得る。
関連実施形態において、本開示は、本明細書で記載される組換えポリヌクレオチドベクターを含む宿主細胞のライブラリーを提供する。
一実施形態において、本明細書で開示される組換えポリヌクレオチドベクターを増殖させるための宿主細胞のライブラリーが提供される。例えば、細菌細胞ライブラリーは、ニワトリファブリキウス嚢細胞から単離された、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子を組みこむための複数の組換えポリヌクレオチドベクターを含む組成物で、細菌細胞を形質転換することによって作製され得る。同様に、別の細菌細胞ライブラリーは、ニワトリファブリキウス嚢細胞から単離された再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子を組みこむための複数の組換えポリヌクレオチドベクターを含む組成物で、細菌細胞を形質転換することによって作製され得る。
別の実施形態において、標的遺伝子がニワトリ細胞の免疫グロブリン遺伝子重鎖および/もしくは軽鎖遺伝子座に組みこまれたニワトリ細胞ライブラリーが提供される。例示的ライブラリーは、1羽以上のニワトリのファブリキウス嚢細胞から単離された種々の重鎖可変領域遺伝子を含む組換えポリヌクレオチドベクターでトランスフェクトされたDT40細胞を含み得る。このようなライブラリーは、標的遺伝子を、本明細書で記載されるようにニワトリ免疫グロブリン重鎖および/もしくは軽鎖遺伝子座に組みこむための方法に従って作製され得る。
さらなる実施形態において、標的遺伝子がニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖および/もしくは軽鎖遺伝子座に組みこまれ、さらに多様化されたニワトリ細胞のライブラリーが提供される。例示的なライブラリーは、1羽以上のニワトリのファブリキウス嚢細胞から単離された種々のIg重鎖可変領域遺伝子を含む組換えポリヌクレオチドベクターでトランスフェクトされたDT40細胞の子孫を含み得る。それらは、本明細書で記載されるようにニワトリ免疫グロブリン重鎖および/もしくは軽鎖ポリペプチド配列改変体のレパートリーを生成するための方法に従って作製され得る。
本明細書で提供されるライブラリーは、標的遺伝子の配列改変体を含む少なくとも10〜1014(上記の範囲の中の整数の全てを含む(例えば、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも10,000、少なくとも10、10、10、10、10、1010など))の細胞、例えば、特定の実施形態において、標的遺伝子の配列改変体を含む少なくとも10〜10の細胞を含み得る。例えば、ライブラリーは、種々の免疫グロブリン重鎖可変領域遺伝子を含む少なくとも10〜1014のDT40細胞を有し得る。
(標的遺伝子を組みこむもしくは多様化するための方法)
本開示の特定の実施形態によれば、標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座へと組みこむための方法が提供される。このような方法は、(a)標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座へと組みこむための組換えポリヌクレオチドベクターまたは本明細書で提供されるような複数のこのような組換えポリヌクレオチドベクターを含む組成物で、ニワトリB細胞をトランスフェクトする工程;および(b)上記標的遺伝子が上記免疫グロブリン重鎖遺伝子座へと組みこまれたニワトリB細胞を同定する工程を包含する。
工程(a)は、組換えポリヌクレオチドベクターでニワトリ細胞をトランスフェクトするための、当該分野で公知の任意の方法(以下の実施例で使用される方法を含む)を使用して行われ得る。相同組換えを可能にする任意のニワトリB細胞は、トランスフェクトされ得る。このような細胞のさらなる記載は、宿主細胞に関連して上記で提供されている。
工程(b)は、当該分野で公知の任意の適切な方法を使用して行われ得る。例えば、上記標的遺伝子が上記免疫グロブリン重鎖遺伝子座へと組みこまれたB細胞は、プローブとして上記標的遺伝子を使用するサザンブロット分析によって、または上記ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域と上記ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域との間の核酸配列フラグメントを増幅し、続いて、上記増幅された核酸フラグメントを検出するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって同定され得る。特定の実施形態において、標的遺伝子が組みこまれるB細胞は、ニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座へと組みこまれたマーカー遺伝子(例えば、上記GFP遺伝子)を既に有し得る。このようなB細胞への上記標的遺伝子の組み込みは、上記マーカー遺伝子を上記標的遺伝子で置換し、従って、上記マーカー(例えば、GFPによって生成される蛍光)が喪失することによって、同定され得る。
別の実施形態において、本開示は、第1の標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座へと組み込み、かつ第2の標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン軽鎖遺伝子座へと組みこむための方法を提供する。このような方法は、(a)ニワトリB細胞を、(1)第1の標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座へと組みこむための第1の組換えポリヌクレオチドベクターまたは本明細書で提供される複数のこのような第1の組換えポリヌクレオチドベクターを含む第1の組成物、および(2)第2の標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座へと組みこむための第2の組換えポリヌクレオチドベクターまたは本明細書で提供される複数のこのような第2の組換えポリヌクレオチドベクターを含む第2の組成物で、トランスフェクトする工程;ならびに(b)上記第1の標的遺伝子が上記免疫グロブリン重鎖遺伝子座へと組みこまれ、かつ上記第2の標的遺伝子が上記免疫グロブリン軽鎖遺伝子座へと組みこまれたニワトリB細胞を同定する工程を包含する。
工程(a)は、先ず、第1の標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座へと組みこむための1以上の第1の組換えポリヌクレオチドベクターと、第2の標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座へと組みこむための1以上の第2の組換えベクターとを混合して、混合物を形成し、次いで、ニワトリB細胞をこのような混合物でトランスフェクトする工程によって行われ得る。あるいは、ニワトリB細胞は、1以上の第1の組換えポリヌクレオチドベクター、および1以上の第2の組換えポリヌクレオチドベクターで、別個にトランスフェクトされ得る。
工程(b)は、当該分野で公知の任意の適切な方法を使用して行われ得る。特定の好ましい実施形態において、第1の標的遺伝子および第2の標的遺伝子が組みこまれるB細胞は、既に、ニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座へと組みこまれた第1のマーカー遺伝子(例えば、上記GFP遺伝子)およびニワトリ免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座へと組みこまれた第2のマーカー遺伝子(例えば、上記BFP遺伝子)を有してもよい。このようなB細胞への上記第1の標的遺伝子および第2の標的遺伝子の両方の組み込みは、上記第1のマーカー遺伝子および第2のマーカー遺伝子を上記第1の標的遺伝子および第2の標的遺伝子で置換し、従って、第1のマーカーおよび第2のマーカーの両方(例えば、GFPおよびBFPによって生成される蛍光)が喪失することによって、同定され得る。
別の実施形態において、本開示は、再構成された免疫グロブリンV−D−J遺伝子を含む標的遺伝子によってコードされる標的ポリペプチドの免疫グロブリン重鎖ポリペプチド配列改変体のレパートリー(すなわち、ライブラリー)を生成するための方法を提供する。このような方法は、再構成された免疫グロブリンV−D−J遺伝子を含むベクターを含むB細胞を、複数のB細胞が得られるまで上記B細胞の増殖を可能にする条件下で培養する工程を包含する。上記B細胞は、(i)免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列においておよび/もしくは免疫グロブリンVフレームワーク領域コード配列において体細胞超変異を含み得る、免疫グロブリンV領域コード配列における体細胞超変異、ならびに(ii)再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列とV偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方の能力がある。上記B細胞の増殖は、上記再構成された免疫グロブリンV−D−J遺伝子を含む上記標的遺伝子によってコードされる上記標的ポリペプチドの免疫グロブリン重鎖ポリペプチド配列改変体のレパートリーを生じさせる。
特定の実施形態において、上記標的遺伝子は、再構成された哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、もしくはウサギ)もしくはヒト化免疫グロブリンV−D−J遺伝子を含む。特定の好ましい実施形態において、上記標的遺伝子は、ニワトリの再構成された免疫グロブリンV−D−J遺伝子を含む。
特定の実施形態において、増殖させるB細胞は、本明細書で開示されるように、再構成された免疫グロブリンV−J遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座へと組みこむための第2のベクターでトランスフェクトされており、従って、上記第2のベクターを含み得る。上記再構成された免疫グロブリンV−J遺伝子は、再構成された哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、もしくはウサギ)もしくはヒト化免疫グロブリンV−J遺伝子であり得る。好ましい実施形態において、上記再構成された免疫グロブリンV−J遺伝子は、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子である。
特定の実施形態において、増殖されるB細胞は、重合ラクトースオペレーターをその免疫グロブリン遺伝子重鎖もしくは軽鎖遺伝子座の中に含み得る。上記のように、上記重合ラクトースオペレーターは、標的遺伝子の多様化を促進する。
別の局面において、本開示は、所定の抗原に特異的に結合する抗体の生成についてB細胞をスクリーニングするための方法を提供する。上記のように、ニワトリB細胞(例えば、DT40細胞)は、再構成された免疫グロブリンV−D−J遺伝子を含む第1の組換えポリヌクレオチドベクターおよび再構成された免疫グロブリンV−J遺伝子を含む第2の組換えポリヌクレオチドベクターでトランスフェクトされて、上記再構成された免疫グロブリンV−D−J遺伝子がその免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座へと組みこまれ、そして上記再構成された免疫グロブリンV−J遺伝子がその免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座へと組みこまれたニワトリB細胞が得られ得る。このようなニワトリB細胞は、免疫グロブリン重鎖ポリペプチド配列改変体のレパートリーを生成する複数のB細胞、および免疫グロブリン軽鎖ポリペプチド配列改変体のレパートリーを得るためにさらに培養され得る。上記複数のB細胞は、それらによる特定の抗原に結合する抗体の生成についてスクリーニングされ得る。
B細胞を当該分野で公知のそれらによる抗原特異的抗体の生成についてスクリーニングするために適した任意の方法が使用され得る。例えば、特定の抗原への免疫グロブリン分子の結合は、フローイムノサイトフルオリメトリー(flow immunocytofluorimetry)によって分析される上記抗原の蛍光誘導体との相互作用として検出され得る;そして特定の抗原に結合するB細胞は、同じもしくは類似のフローサイトメトリー技術(例えば、蛍光活性化セルソーティング、FACS)によるソートの際に回収され得る。特定の抗原に結合するB細胞はまた、それら抗原を有する固体支持体(例えば、抗原被覆磁性ビーズ)上で選択され得る。逆に、固体支持体への結合はまた、適切に構成された技術(例えば、抗原被覆プレートでの「パニング」による細胞の除去)において不要な結合特異性を有するB細胞の除去を可能にし得る。特定の抗原に対して特異的な抗体を生成することについてB細胞をスクリーニングするための例示的方法としては、実施例で記載されるように、磁性活性化セルソーティング(MACS)および蛍光活性化セルソーティング(FACS)が挙げられる。複数回の選択が、上記特定の抗原に対して十分な結合親和性を有するB細胞を同定するために行われ得る。
特定の実施形態において、ニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖および軽鎖遺伝子座へとそれぞれ組みこまれる再構成された免疫グロブリンV−D−J遺伝子および再構成された免疫グロブリンV−J遺伝子は、ヒトの再構成された免疫グロブリンV−D−J重鎖遺伝子およびヒトの再構成された免疫グロブリンV−J軽鎖遺伝子である。上記の特定の抗原に対して特異的な抗体を生成することについてB細胞をスクリーニングするための方法は、従って、上記抗原に結合するヒト抗体を生成するB細胞を直接同定し得る。このようなB細胞は、ヒトの再構成された免疫グロブリンV−D−J遺伝子およびV−J遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖および軽鎖遺伝子座へと組みこむ前に、ヒト重鎖および軽鎖定常領域遺伝子によって置換されたニワトリ重鎖および軽鎖定常領域遺伝子を既に有していると思われる。
特定の実施形態において、ニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖および軽鎖遺伝子座へとそれぞれ組みこまれる、再構成された免疫グロブリンV−D−J遺伝子および再構成された免疫グロブリンV−J遺伝子は、ヒト化された再構成された免疫グロブリンV−D−J遺伝子(例えば、ヒト重鎖フレームワーク領域を含むもの)およびヒト化された再構成された免疫グロブリンV−J遺伝子(例えば、ヒト軽鎖フレームワーク領域を含むもの)である。上記の特定の抗原に対して特異的な抗体を生成することについてB細胞をスクリーニングするための方法は、従って、上記抗原に結合するヒト化抗体を生成するB細胞を直接同定し得る。
特定の実施形態において、ニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖および軽鎖遺伝子座へとそれぞれ組みこまれる再構成された免疫グロブリンV−D−J遺伝子および再構成された免疫グロブリンV−J遺伝子は、ニワトリの再構成された免疫グロブリンV−D−J遺伝子およびニワトリの再構成された免疫グロブリンV−J遺伝子である。好ましい実施形態において、上記再構成された免疫グロブリンV−D−J遺伝子および上記再構成された免疫グロブリンV−J遺伝子は、ニワトリファブリキウス嚢細胞の集団から得られる。本明細書で記載される特定の抗原に対して特異的な抗体を生成することについてB細胞をスクリーニングするための方法は、従って、上記抗原に結合するニワトリ抗体を生成するB細胞を同定し得る。得られたニワトリ抗体は、本明細書で記載され、当該分野で公知の方法を使用して、さらにヒト化され得る。
上記の方法によって得られる抗体は、診断適用および治療適用を有し得る。さらに、上記方法は、ハイスループットアプローチに適合し得、個別化された医療のためのモノクローナル抗体を開発するために特に適切であり得る。
標準的技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のために使用され得る。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様書に従って、または当該分野で一般的に達成されるかもしくは本明細書で記載されるとおりに行われ得る。これらの技術ならびに関連する技術および手順は、一般に、当該分野で周知の従来の方法に従って、ならびに本明細書全体を通じて引用されかつ考察される微生物学、分子生物学、生化学、分子遺伝学、細胞生物学、ウイルス学および免疫学の技術における種々の一般的なおよびより具体的な参考文献に記載されるように、行われ得る。例えば、以下を参照のこと:Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons, updated July 2008); Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley−Interscience; Glover, DNA Cloning: A Practical Approach, vol. I & II (IRL Press, Oxford Univ. Press USA, 1985); Current Protocols in Immunology (Edited by: John E. Coligan, Ada M. Kruisbeek, David H. Margulies, Ethan M. Shevach, Warren Strober 2001 John Wiley & Sons, NY, NY); Real−Time PCR: Current Technology and Applications, Edited by Julie Logan, Kirstin Edwards and Nick Saunders, 2009, Caister Academic Press, Norfolk, UK; Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes, (Academic Press, New York, 1992); Guthrie and Fink,Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology (Academic Press, New York, 1991); Oligonucleotide Synthesis (N. Gait, Ed., 1984); Nucleic Acid Hybridization (B. Hames & S. Higgins, Eds., 1985); Transcription and Translation (B. Hames & S. Higgins, Eds., 1984); Animal Cell Culture (R. Freshney, Ed., 1986); Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984); Next−Generation Genome Sequencing (Janitz, 2008 Wiley−VCH); PCR Protocols (Methods in Molecular Biology) (Park, Ed., 3rd Edition, 2010 Humana Press); Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press, 1986); the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press, Inc., N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Harlow and Lane,Antibodies, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1998); Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987);Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I−IV (D. M. Weir andCC Blackwell, eds., 1986); Riott,Essential Immunology,6th Edition, (Blackwell Scientific Publications, Oxford, 1988); Embryonic Stem Cells: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology) (Kurstad Turksen, Ed., 2002); Embryonic Stem Cell Protocols: Volume I: Isolation and Characterization (Methods in Molecular Biology) (Kurstad Turksen, Ed., 2006); Embryonic Stem Cell Protocols: Volume II: Differentiation Models (Methods in Molecular Biology) (Kurstad Turksen, Ed., 2006); Human Embryonic Stem Cell Protocols (Methods in Molecular Biology) (Kursad Turksen Ed., 2006); Mesenchymal Stem Cells: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology) (Darwin J. Prockop, Donald G. Phinney, and Bruce A. Bunnell Eds., 2008); Hematopoietic Stem Cell Protocols (Methods in Molecular Medicine) (Christopher A. Klug, and Craig T. Jordan Eds., 2001); Hematopoietic Stem Cell Protocols (Methods in Molecular Biology) (Kevin D. Bunting Ed., 2008) Neural Stem Cells: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology) (Leslie P. Weiner Ed., 2008)。
具体的な定義が提供されなければ、本明細書で記載される分子生物学、分析化学、合成有機化学、および医薬品化学および製薬化学に関連して利用される命名法、ならびにそれらの実験手順および技術は、当該分野で周知であり一般に使用されるものである。標準的技術は、組み換え技術、分子生物学、微生物学、化学合成、化学分析、薬学的調製物、処方物、および送達、ならびに患者の処置のために使用され得る。
本明細書全体を通して、文脈が別のことを要しなければ、語句「含む、包含する(comprise)」または「含む、包含する(comprises)」もしくは「含む、包含する(comprising)」のようなバリエーションは、示された要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の包含を暗示するが、いかなる他の要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群の排除も暗示しないと理解される。「からなる」とは、語句「からなる」の前にくるものを全て含み、典型的にはそれに限定されることを意味する。「から本質的になる」とは、上記語句の前に列挙される任意の要素を含み、この列挙される要素に関して本開示において特定される活性もしくは作用に干渉も寄与もしない他の要素に限定されることを意味する。従って、語句「から本質的になる」とは、列挙された要素が必要とされるもしくは必須であるが、他の要素は必要とされず、その列挙された要素の活性もしくは作用に影響を及ぼすか否かに依存して、存在してもしなくてもよいことを示す。
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」および「上記、前記、該、この、その(the)」は、文脈が別のことを明示しなければ、複数形への言及を含む。本明細書で使用される場合、特定の実施形態において、用語「約(about)」もしくは「約、およそ(approximately)」とは、数値の前につく場合、その値±5%、6%、7%、8%もしくは9%の範囲を示す。他の実施形態において、用語「約」もしくは「約、およそ」は、数値の前につく場合、その値±10%、11%、12%、13%もしくは14%の範囲を示す。さらに他の実施形態において、用語「約」もしくは「およそ、約」は、数値の前につく場合、その値±15%、16%、17%、18%、19%もしくは20%の範囲を示す。
本明細書全体を通して「一実施形態」もしくは「ある実施形態」もしくは「ある局面」への言及は、上記実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、もしくは特徴が、本発明の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体の種々の箇所での語句「一実施形態において」もしくは「ある実施形態において」の出現は、必ずしも全て同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造もしくは特徴は、1以上の実施形態において任意の適切な様式で組み合わされ得る。
以下の実施例は、例示目的であり、限定するものではない。
以下の材料および方法を、本実施例において使用した:
(細胞培養および遺伝子標的化) DT40由来細胞株(Cummings et al., 2007; Cummings et al., 2008; Yabuki et al., 2009; および本明細書で記載されるとおり)を、以前に記載されるように(Yabuki et al., 2005)維持し、トランスフェクトした。FreeStyle 293−F細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、製造業者が特定するように、維持しトランスフェクトした。
PolyLacOを、DT40 PolyLacO−λ細胞(再構成されかつ発現される軽鎖対立遺伝子においてPolyLacOを有するように予め操作されている)(Cummings et al., 2007; Cummings et al., 2008; Yabuki et al., 2009)の再構成されかつ発現される重鎖対立遺伝子におけるψVアレイに標的化した。PolyLacO調節エレメント(Robinett et al., 1996)は、20マーラクトースオペレーター(LacO)の約100反復を含んだ。その標的化構築物(pPolyLacO−ψV)は、20μg/ml濃度のブラストサイジン(Invitrogen)中で約10日間の増殖後に安定なトランスフェクタントの選択を可能にするように、ブラストサイジン耐性遺伝子を有した。この構築物を生成するために、2.8kbおよび4.2kbの相同性アームを、DT40ゲノムDNAから以下のプライマー:5’−GGGGTCTCTATGGGGTCTAAGCGTGGCC−3’(配列番号1)と5’−GGCCGATTCTTTTCTCATGAGATCCCTCCAGAAG−3’(配列番号2)もしくは5’−TTCCCCACAACCAGGCCATGCGCCTCCTTG−3’(配列番号3)と5’−CCTGCAGACACCCAGAGGAGGGCTCAGC−3’(配列番号4)を使用して増幅したψVアレイフラグメントから得た。PolyLacO、ブラストサイジン耐性遺伝子、および2つの相同性アームを、pBluescript II KS(+)(Stratagene)へとサブクローニングした。上記構築物を、限定分析および部分配列決定によって確認し、組換え欠損E.coli株Stbl2(Invitrogen)中で増殖させ、反復安定性を維持した。標的化を、本質的には以前に記載されるように(Yabuki et al., 2009)行った。DT40 PolyLacO−λ細胞をトランスフェクトし、抗生物質の存在下での10日間の培養後に、安定なトランスフェクタントをゲノムPCRおよびサザンブロットによってスクリーニングして、相同的な組み込み体を同定した。
DTLacO細胞のV(VDJ)領域レパートリーを、2工程(その両方が標的化ベクターpVDJ3に依拠した)で高めた。pVDJ3を生成するために、2.2kbおよび1.8kbの相同性アームを、DT40ゲノムDNAから、以下のプライマー:5’−TGAATGCTTTGTTAGCCCTAATTAGGGATTGAATTGAGAG−3’(配列番号5)と5’−CCGTGAGACCCCCCGTTGACC−3’(配列番号6)もしくは5’−GCCCGACCGAAGTCATCGTCTCCTCCGGTG−3’(配列番号7)と5’−TTTGCCTTCAAATCACCCTA−3’(配列番号8)をそれぞれ使用して増幅し、リーダー−VDJ領域に融合し、pBluescript II KS(+)にクローニングした。pVDJ3−GFP標的化構築物誘導体を、リーダー−VDJ領域をGFP発現カセット(McConnell Smith et al., 2009)で置換することによって生成した。pVDJ3−Bin1標的化構築物プールを、V領域のライブラリーをpVDJ3のXcmI−PshAI部位に挿入することによって生成した。これらの配列は、2ヶ月齢白色レグホン雛の嚢から、以下のPCRプライマー:5’−GGGTCTGCGGGCTCTATGGGG−3’(配列番号9)と5’−ATCGCCGCGGCAATTTTGGGG−3’(配列番号10)とを使用して増幅した。この第1の工程で、内因性VDJ領域を、pVDJ3−GFPを使用してGFP発現カセットで置換した。第2の工程では、上記pVDJ3−Bin1標的化構築物プールをを使用して、以前に標的化したGFPを置換し、sIgM細胞を生成した。重鎖標的化のためのトランスフェクションを、Nucleofector(プログラムB−023; Lonza)を使用して行った。
sIgM細胞を、MACS、次いでFACSによって回収した。簡潔には、トランスフェクションの2日後に、細胞を1% BSA(Sigma, St. Louis, MO)を含むPBS中で洗浄し、sIgM細胞を、製造業者の指示に従って、抗ニワトリIgM(Southern Biotech)に組み合わせたプロテインG Dynabeads(Dynal)への結合によって富化した。培養して3日後、sIgM/GFP細胞を、FACSAria (BD Biosciences)を使用してソートし、DTLacO−2集団を生成した。
(VJ標的化構築物) 新たなVJ配列を標的とするために、pVJ1を構築した。VJ上流領域の3.2kbフラグメントを、PCRプライマー21−22(5’−GGGACACCTGAAGGCATGAGTGG−3’、配列番号21)および(5’−GGCGGAATCCCAGCAGCTGTGT−3’、配列番号22)を使用して増幅した;VJ下流領域の1.2kbフラグメントを、PCRプライマー23−24(5’−GTGAGTCGCTGACCTCGTCTCGGTC−3’、配列番号23)および(5’−GGGCTCTTTCTACCTCAAGGCATGT−3’、配列番号24)で増幅した;そして両方のフラグメントを、pCR2.1(Invitrogen)へとクローニングした。次いで、リーダー−VJ領域を、プラスミドのBmgBI−AvrII部位へと挿入した。構築物を、限定分析および配列決定によって確認した。新たなVJ配列もまた、BmgBI−AvrII部位に連結した。
BFPをDT40 VJ領域へと標的化するために、pVJ1−BFPを作製した。BFPおよびSV40ポリAシグナル配列を、pTagBFP−N(Evrogen)から増幅し;VJ上流領域の155bpを増幅産物に融合し;次いで、VJベクターのBmgBI−AvrII部位へと挿入した。
FLAGタグをVJに付加するために、pVJ1−FLAGλを作製した。短いFLAGタグ(DYKDE、配列番号25)を、部位特異的変異誘発によって成熟VJ領域の直ぐ上流に挿入した。
(C領域標的化構築物) ニワトリ−ヒトキメラ重鎖の発現構築物を、まず生成し(chVDJ−huCγ1−FLAG−TEV−chTMD)、この融合ポリペプチドがニワトリλ軽鎖と対合し、DT40細胞の表面に発現されることを確認した。
C領域置換構築物を生成するために、Cμ1上流領域の4kbフラグメントを、DT40ゲノムDNAから、XP0090(5’−AGCCTCATTATCCCCCTGAT−3’,配列番号26;GenBank No.AB029075.1に基づいて設計)およびXP0094(5’−TCTCTTTCCCTTCGCTTTGA−3’,配列番号27)で増幅し、Cμ1−Cμ2領域の6kbフラグメントを、XP0095(5’−ACAGTTCCGTTTCCGGTATG−3’,配列番号28)およびXP0099(5’−CACTCCATCCTCTTGCTGGT−3’,配列番号29)で増幅した。上流をpBluescript II KS(+)(Stratagene)のEcoRV部位へとクローニングし;huCγ1−FLAG−TEV−chTMDおよびBGHポリAシグナル配列を、QuikChangeTM部位特異的変異誘発(Stratagene)によって挿入された上流配列の直ぐ下流に融合した;次いで、下流を、プラスミドのHindIII−XhoI部位にクローニングした。改変されたloxP部位に隣接したゼオシンマーカーもまた、HindIII部位に挿入して、その後に必要であれば、安定なトランスフェクタントのために薬物選択機構を提供した。構築物を、限定分析および部分配列決定によって確認し、組換え欠損E.coli株Stbl2もしくはStbl3(Invitrogen)で増殖させて、S領域反復配列を維持した。
高親和性で標的抗原へ膜アンカーIgMが結合することに起因する考えられるB細胞レセプター(BCR)誘導性アポトーシスを防止するために、C領域置換構築物の変異バージョンを作製した。膜貫通ドメイン(TMD)内の2個のアミノ酸Ser−Thrは、シグナル伝達に重要であり(Shaw, A.C., Mitchell, R.N., Weaver, Y.K., Campos−Torres, J., Abbas, A.K. & Leder, P. Cell 63, 381−392 (1990))、これを、部位特異的変異誘発によってVal−Valへと置換した。
野生型および変異を標的とする構築物両方をまた、キメラ抗体が細胞から放出されるのに望ましくなる場合に、プロテアーゼ切断部位を有するように設計した。一方は、全長FLAGタグ(DYKDDDDK,配列番号30;これは、エンテロキナーゼによって切断され得る)、および他方は、TEV認識部位(ENLYFQG, 配列番号31;これは、TEVプロテアーゼによって切断され得る)であった。
重鎖C領域を置換するために、野生型DT40細胞を、Nucleofector(Lonza)を使用していずれかのC領域置換構築物でトランスフェクトした;トランスフェクションの3日後、ニワトリ−ヒトキメラ抗体発現細胞を、Dynabeads Protein G(Invitrogen)でMACSによって富化した。融合タンパク質の発現を、抗ヒトIgG(Southern Biotech)でFACSによって検出し、発現されたchVDJ−huCγ1−FLAG−TEV−chTMD融合物の配列をRT−PCRによって確認した。
chVDJ−huCγ1−FLAG−TEV−chTMDをコードするヌクレオチド配列は、配列番号32に示される(ここでchVDJ、huCγ1、FLAG、TEV、およびchTMDフラグメントをコードする構成成分のヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号33〜37に示される)。
(多様化率の定量) 多様化率を、多様化事象に起因して細胞表面上のIgMの発現を失った細胞の割合を測定する(Sale et al., 2001; Yabuki et al., 2005; Ordinario et al., 2009)sIgM喪失アッセイを使用して提供した。簡潔には、約20の独立したトランスフェクタントのパネル(panel)を、3週間にわたって増殖させ、次いで、各パネルメンバー(panel member)の細胞(約1×10)をR−PE結合体化抗ニワトリIgM(1:200; Southern Biotech)で染色し、CellQuestソフトウェア(BD Biosciences)を備えたFACScanで分析した。sIgM細胞のパーセンテージを、sIgM集団のPEに対して、PE強度の8倍以上の低下を有する細胞数の割合として計算した(Hatanaka et al., 2005; Sale et al., 2001)。
(V領域配列分析) V領域PCRおよび配列分析を、再構成されたVλ領域の増幅のためのプライマー 5’−CAGGAGCTCGCGGGGCCGTCACTGATTGCCG−3’(配列番号11)と5’−GCGCAAGCTTCCCCAGCCTGCCGCCAAGTCCAAG−3’(配列番号12)、および再構成されたV領域の増幅のためのプライマー 5’−GGGTCTGCGGGCTCTATGGGG−3’(配列番号13)と5’−ATCGCCGCGGCAATTTTGGGG−3’(配列番号14)を使用して、本質的に記載されるとおりに行った(Yabuki et al., 2005;Cummings et al., 2007)。必要な場合、Vλ領域のための第2回のプライマー 5’−TCACTGATTGCCGTTTTCTCCCCTCTCTCC−3’(配列番号15)もしくはV領域のための5’−GGTCAACGGGGGGTCTCACGG−3’(配列番号16)を使用して、半ネスト化(semi−nested)PCRを行った。PCR産物をQIAquickTM PCR精製キット(Qiagen, Valencia, CA)で精製し、直接配列決定した。
(抗原および抗原結合の選択) 最初の選択を、多様化したDTLacO集団を、抗原と複合体化した磁性ビーズへと結合させることによって行い、その後の選択を、わずかな変更を伴う以前に記載される手順(Cumbers et al., 2002; Seo et al., 2005)に従って、蛍光標識可溶性抗原を使用するFACSによって行った。SAv Dynabeads M−280(Dynal)およびSAv−PE(Southern Biotech)を使用して、SAvを認識する細胞を選択した。ヒト細胞表面タンパク質を認識する細胞の選択には、VEGFR2(残基20〜764;Cat.no.357−KD)、TIE2(残基23〜745;Cat.no.313−TI)、TROP2(残基88〜274;Cat.no.650−T2)、FN14(残基28〜79;Cat.no.1199−TW)もしくはFZD10(残基21〜161;Cat.no.3459−FZ)の細胞外ドメイン含むヒトIgG1 Fc(R&D Systems,Minneapolis,MN)との融合物として発現される、組換えヒトキメラタンパク質を使用した。キメラタンパク質を、MACS法に関して製造業者の推奨される条件を使用して、プロテインG Dynabeads(Dynal)に結合させ、FACS法に関してPE−Cy5標識抗ヒトIgG Fc(Southern Biotech;1:200)で検出した。キメラタンパク質を、MACS法に関して製造業者の推奨される条件を使用して、プロテインG Dynabeads(Dynal)に結合させ、FACS法に関してPE−Cy5標識抗ヒトIgG Fc(Southern Biotech;1:200)で検出した。選択のための抗原を、10μg/mlの濃度で使用し;選択を、3:1〜1:1の範囲のビーズ:細胞比において>10細胞で行った。いくつかの場合において、非特異的DTLacO細胞の予備洗浄は、抗原を欠くビーズを使用して行った。
(結合および親和性アッセイ) 飽和結合速度論を、細胞を種々の濃度の蛍光標識可溶性抗原で染色することによって決定し、みかけの親和性(k)を、GraphPadTM Prismソフトウェアを使用して非線形回帰によって計算した。細胞表面抗原へのmAbの結合を試験するために、組換えキメラニワトリ−ヒトmAbを、PCR増幅したVおよびVλセグメントを、pcDNA3.1(Invitrogen)誘導体であるpcDNA3.HG1およびpcDNA3.HLam(それぞれ、ヒトγ1およびλ定常領域を有する)へとインフレームでクローニングすることによって生成した。発現プラスミドを、FreeStyleTM 293−F細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)へと製造業者の説明書に従って一過性に共トランスフェクトした。2〜4日間培養した後、分泌された抗体をプロテインAクロマトグラフィー(MabSelect SuRe; GE Healthcare)によって上清から生成し、必要であれば、Ultracel限外濾過(Millipore)によって濃縮した。標的細胞を、抗原発現構築物(GeneCopoeia)での293−F細胞の一過性トランスフェクションによって生成した。
以下の結果を得た:
(DTLacO mAb発見プラットフォーム) 迅速なmAb選択および最適化のためのDTLacOプラットフォームを、2工程で操作した(図1)。第1は、強力な調節エレメントであるE.coliラクトースオペロンに由来するラクトースオペレーターDNAのマルチマー(「PolyLacO」)を、DT40 PolyLacO−λ細胞株(IgλのみにPolyLacOを有するように予め操作されている)中の再構成されかつ発現されるIgH遺伝子の下流に挿入した。次に、内因性V(VDJ)領域を、ニワトリ嚢B細胞から生成したVライブラリーで置換し、最初のVレパートリーを拡げた。両方の操作工程とも、ニワトリDT40 B細胞における遺伝子標的化の高効率を利用した。
PolyLacOがラクトースリプレッサータンパク質(LacI)に融合した別個の調節因子の発現の際にIgλ遺伝子多様化(体細胞超変異もしくは遺伝子変換)の速度および結果の誘導性調節を可能にし得ることは、以前実証された(Cummings et al., 2007; Cummings et al., 2008; Yabuki et al., 2009)。LacO/LacI調節ネットワークのこの使用は、LacOに対するLacIの高親和性(k=10−14M)、および低分子IPTGのLacI/LacO相互作用の感度を利用した。
(IgλおよびIgHの両方を標的としたPolyLacOによる多様化の相乗的加速) 多様化は、DT40 PolyLacO−λ細胞(IgλにおいてのみPolyLacOを有する)と比較して、「DTLacO」細胞(Igλ遺伝子およびIgH遺伝子の両方を標的とするPolyLacOを有するように操作)において上昇していると推測された。候補の操作された株の多様化率を、LacI−HP1調節因子でトランスフェクションした3週間後のsIgM細胞の割合をアッセイすることによって、決定した。代表的な候補は、親DT40 PolyLacO−λ LacI−HP1株の2.8%という特徴に対して、6.9%、12.6%および25.7%(例えば、図2A)という、2.5〜9.2倍上昇した多様化率を示した。加速した多様化は、個々のトランスフェクタントの揺動アッセイによって1つの株について再確認された(図2B)。sIgM細胞のパーセンテージは、2.5%〜52.5%の範囲、中央値は13.0%(図2B)であり、DT40 PolyLacO−λ LacI−HP1トランスフェクタント(2.8%)より4.6倍高く、コントロールDT40 PolyLacO−λ GFP−LacI細胞(0.6%)より21.7倍高く、DT40親株に匹敵した(Cummings et al., 2007)。いくつかの個々のクローンは、推測されるように、中央値とはかなり異なるsIgM喪失を示した。なぜならこの揺動アッセイは、蓄積するsIgM改変体を測定したからである。従って、重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の両方に標的化するPolyLacOエレメントは、DT40親細胞株と比較して、ほぼ22倍多様化を加速させた(図2C)。多様化はまた、LacI−VP16およびE47−LacIを含む他の因子のトランスフェクションの際に加速された(示さず)。
(抗ストレプトアビジン抗体のエキソビボ進化) エキソビボmAb進化に関してDTLacO細胞の有用性を試験するために、モデル抗原であるストレプトアビジン(SAv)に対するmAb(Cumbers et al., 2002; Seo et al., 2005)を、DTLacO−1集団から選択した(図1,工程1)。細胞を、E47−LacI発現構築物(これは、LacIおよび調節因子のE47アイソフォームであるE2Aの融合物をコードした)で安定にトランスフェクトした。E47は、いくらかの状況では公知の転写調節因子であったが、DT40細胞のIg遺伝子では、それは、転写ではなく多様化を促進した(Yabuki et al., 2009)。3×10個DTLacO E47−LacI細胞の多様化した集団を、SAv結合体化磁性ビーズへの結合のために2回富化し、次いで、SAv−PEへの結合について連続回のFACSによって選択した。細胞集団は、各回の選択後に増大した親和性を示した。5回目の選択後に30倍のシフトが明らかになり、7回目の選択で100倍のシフトが明らかになった(それぞれ、S5およびS7;図3A)。SAv−PE−Cy7に対するS7集団の結合親和性を、飽和結合速度論によって測定した。このFACSベースの方法では、細胞を、結合した抗原および結合していない抗原の平衡が確立されるまで漸増濃度の抗原で染色した;得られた平均蛍光強度(MFI)値を、Prismソフトウェア(GraphPad)で分析し;平衡時親和性(k)を決定した(図3B)。見かけの親和性は、7回の選択後に0.7nMであることが分かり、これは、培養ヒトB細胞株を使用してエキソビボで匹敵する親和性の抗体の選択のために必要とされる15〜19回の選択と好都合なことに匹敵した(Cumbers et al., 2002)。V領域およびVλ領域の配列を、単一細胞からのPCR増幅によって決定し、生殖系列と比較した(Reynaud et al., 1987; Reynaud et al., 1989)。顕著なことには、18残基挿入/重複を、VλのCDR1において同定した(図3C)。抗SAv mAbの軽鎖CDR1における挿入はまた、いかなる遺伝子操作をも受けなかったDT40細胞を使用して、他者によって報告された(Seo et al., 2005)。
(保存された細胞表面レセプターを認識する高親和性mAbの選択) LacI−HP1を安定して発現するDTLacO−1細胞を、治療目的の3つの細胞表面抗原:レセプターチロシンキナーゼであるVEGFR2およびTIE2(これは、生理的血管形成および病的血管形成において、最も顕著には、癌において本質的な役割を果たす(Huang et al., 2010; Ferrara et al., 2010));ならびに糖タンパク質TROP2(これは、多くの上皮癌において過剰発現される(Cubas et al., 2010))に対するmAbを同定するために選択した。これらレセプターの細胞外ドメインは非常に保存されており、ヒトおよびマウスのオルソログは、それぞれ、80%、90%、および83%同一性を示す。各細胞外ドメインを、ヒトIgG1 Fcドメインに融合した組換えタンパク質として発現させた。各抗原に対して特異的なDTLacO細胞を、磁性ビーズに結合した抗原に対する最初の選択による1×10細胞から、次いで、可溶性抗原への結合およびFACSを介するソートによって、富化した。8連続選択した集団を特徴付けたところ、各選択工程において増大した親和性を示すことが示された(図4A、上)。8回目の選択工程で、可溶性抗原であるVEGFR2、TIE2、およびTROP2の、それらの同族DTLacO集団への飽和結合速度論を分析したところ、それぞれ、6.0nM、1.4nM、および2.0nMというみかけの親和性値(k)が確立された(図4A、下)。個々の選択した集団の特異性を、抗原のパネル(VEGFR2、TIE2、TROP2、SAvおよびオボアルブミン)への結合をアッセイすることによって試験した。選択されたDTLacO細胞は、同族標的のみを認識し、交叉反応性はなかった(図4B)。
(高親和性mAbで特徴付けられるCDR標的化変異) 組換えキメラニワトリ−ヒトmAbを、VEGFR2、TIE2もしくはTROP2を認識したDTLacO細胞由来のV領域およびVλ領域を、ヒトγ1重鎖定常領域およびλ軽鎖定常領域に融合される発現のための構築物へとクローニングすることによって生成した。キメラmAbは、高親和性抗原認識を保存しており(データは示さず)、これは、B細胞レセプターは、選択された細胞による高親和性結合を付与したことを示す。クローニングされたV領域およびVλ領域の配列分析から、高親和性および特異性を付与する変異は、CDRに主に位置することが示された(図4C)。テンプレート化される変異およびテンプレート化されない変異の両方が、CDRにおいて明らかになった。
(拡大されたV多様性は、mAb選択をさらに加速させた) 最初の集団(DTLacO−1)もしくは本明細書で記載されるようなV置換によって操作された集団(DTLacO−2)のいずれか(図1)から調節性LacI−融合因子を発現するDTLacO細胞は、治療目的の2つの他の抗原、低分子TNFレセプターファミリーメンバーであるFN14(Winkles et al., 2008)、およびGタンパク質共役レセプターであるFZD10(Katoh et al., 2007)を認識するmAbの供給源であった。両方のタンパク質は、非常に保存された細胞外ドメインを有した(それぞれ、ヒトとマウスとの間で92%同一性および94%同一性)。米国特許出願第13/416,752号およびPCT/US2012/28584号に記載されるように、抗FN14 mAb(FS24)を、上記DTLacO−1集団から選択し、LacI−HP1駆動多様化によって成熟させた(図5A)。12週間にわたる17回の選択後に、サブナノモルの親和性(k=0.44nM)を達成し、親和性は、次の4週間にわたって7回のさらなる選択の過程で中程度に改善した(k=0.26nM)。
抗FZD10 mAb(FZ2)(米国特許出願第61/523,102号)を、本明細書で記載されるDTLacO−2集団から選択し、多様化は、テザリングされた因子HIRA−LacIによって加速した(Cummings et al., 2008)。8週間にわたるわずか4回の選択の後に集団はサブナノモルの親和性に達した(図5A)。このmAbは、みかけの親和性k=0.16nMでその標的を認識した。クローニングされたVおよびVλ領域の配列分析から、高い親和性および特異性を付与する変異は、CDRに主に位置することが示された(図5B)。
(ニワトリ抗体の容易なヒト化) マウスもしくは他の種で選択された抗体は、典型的には、治療的適用のためにヒト化される(Almagro et al., 2008)。抗FZD10 mAbを、ヒト化のために選択した。なぜならその高い親和性および明確な重鎖CDRが、mAb開発においてこの重要な工程の強固な試験を提供したからである。ニワトリV領域およびVλ領域は、それぞれ、ヒトVサブグループIIIおよびVλサブグループIIIに最も密接に関連した。これらは、ヒト化のために最も確立されたフレームワークであり、ニワトリの免疫化によって誘発されるmAbをヒト化するために以前から使用されてきた(Tsurushita et al., 2004; Nishibori et al., 2006)。CDRの構造を、CDR自体の一次配列のみならず、CDR構造を形作るのに寄与する少数の近くの「バーニアゾーン」残基によっても決定する(Foote et al., 1992)。CDRグラフト化のための足場を、その対応するニワトリV領域もしくはVλ領域のバーニアゾーン残基との同一性を達成するために必要な少数の位置においてヒトフレームワーク領域を改変することによって生成した。それによって生成されたフレームワーク足場は、ヒトフレームワーク配列に対して94〜96%同一であり、このことは、免疫原性の可能性を非常に低くしている。軽鎖の最初の2個のN末端残基をも除去した。なぜなら、これら残基は、哺乳動物抗体のCDR1の近位に位置し、原則として、抗体と抗原との相互作用に干渉し得るからである。次いで、ニワトリmAbのCDRを、改変した足場にグラフト化して、ヒト化V領域およびVλ領域を作り出した(図5C)。抗FZD10 mAbのニワトリバージョンおよびヒト化バージョンのみかけの結合親和性の比較は、ヒト化が親和性を喪失することなく達成されたことを示した(図5D)。この容易なヒト化は、かなりの経験的な最適化を要するマウス抗体とは対照をなした。
上記の結果は、DTLacO−2プラットフォームが、非常に保存された標的を認識するmAbの迅速なエキソビボでの発見を可能にすることを示した。DTLacOプラットフォームの力は、治療目的の5つの細胞表面抗原(レセプターチロシンキナーゼVEGFR2およびTIE2、糖タンパク質TROP2、およびGタンパク質共役レセプターFZD10(これらの全ては、本明細書で記載されるように、DTLacO−2を使用して得られた)ならびに低分子TNFレセプターファミリーメンバーFN14(これもまた、DTLacO−1を使用して得られた)に対して特異的かつ高親和性のmAbを生成することによって実証された。これら細胞表面レセプターの非常に保存された細胞外ドメインは、それらがインビボでのmAb発見のための標的になるのを困難にする可能性がある(それは、免疫寛容によって制限される)。最初の選択から高親和性mAb(<10nM)の同定までの時間は、4〜8週間程度であり、サブナノモルの親和性は、8〜12週間で達成された。所望の特異性の高親和性抗体の集団に関する時間枠は、mAb発見の他のエキソビボもしくはインビボのプラットフォームと非常に好都合に匹敵した。
DTLacOエキソビボmAb発見プラットフォームは、他のmAb発見アプローチと比較して、いくつかのさらなる利点を提供した。細胞は、所望の特性に関して直ぐに試験され得るインタクトな抗体を生成したのに対して、ファージディスプレイシステムのような多くのインビトロアプローチは、凝集もしくは不安定性に起因して全長mAbを活性化するために変換するにはしばしば困難である一本鎖抗体を生じる。DTLacO細胞は、抗原に直接接触するV領域のサブドメインである主にCDRに対する変異を標的とする生理学的経路(体細胞超変異および遺伝子変換)を使用してIg V領域を多様化した。さらに、この細胞は迅速に増殖し、それらは不死である。その結果、各選択工程においてこの細胞集団は、再生可能な抗体(もしくは組換え抗体の発現のためのVおよびV配列)供給源のみならず、さらなる最適化の出発点をも提供した。
DTLacOプラットフォームは、DT40細胞を使用する他のmAb発見プラットフォーム(Cumbers et al., 2002; Seo et al., 2005)から、記載された生理学的多様化機構である体細胞超変異および遺伝子変換の両方に到達する能力によって区別された。DTLacO細胞はまた、相同遺伝子標的化(これは、さらなる遺伝子操作を可能にした)を行う能力を保持した。DTLacO細胞の上記の特徴を、内因性V領域を再構成されたVライブラリーで置換して、拡大されたVレパートリーを有するDTLacO−2集団を作り出すことによってさらに活用した。第3の重鎖CDRであるCDR−H3は、VDJ接合部を含み、抗原認識の主な決定基であった(Xu et al., 2000)。CDR−H3多様性は、高親和性抗FZD10 mAbをDTLacO−2集団から迅速に選択するのに寄与した可能性がある。ヒトV領域をニワトリV領域に交換することもまた可能である(データは示さず)。このことは、他の方法によって発見されたmAbの親和性もしくは機能性の最適化、ならびにヒト治療用mAbの直接的な発見を可能にした。
DTLacO細胞において最適化されたニワトリmAbは、コンセンサスヒトVサブグループIIIおよびVλサブグループIIIフレームワーク領域(ここでは、バーニアゾーン残基はCDR構造を保存するために改変された)へのCDRグラフト化によって容易にヒト化されることが判明した。Igのヒト化は、親和性を喪失することなく行われ、フレームワーク領域内でヒトIgに対して>94%同一性を達成した。この結果は、現在クリニックにある多くのヒト化マウスmAbに匹敵するかもしくはこれより高く、免疫原性になる可能性を非常に低くした。mAbをヒト化する準備は、経験的な最適化を経なければならないマウスもしくはマウス細胞において発見される抗体とは対照的であった。VサブグループIIIおよびVλサブグループIIIフレームワーク領域は、多くの脊椎動物の間で保存されており、このことは、mAbフレームワークが他の種での慢性疾患の処置のために改変され得るという可能性を高める。
Figure 2015513895
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上記の種々の実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わされ得る。本明細書で言及される、そして/または出願データシート中に列挙される米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物の全ては、それらの全体において、本明細書に参考として援用される。実施形態の局面は、必要であれば、種々の特許、特許出願、および刊行物の概念を使用して、なおさらなる実施形態を提供するように改変され得る。
これらの変化および他の変更は、上記の詳細な説明に鑑みて、上記実施形態に対して行われ得る。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を本明細書において開示される具体的実施形態および特許請求の範囲に限定すると解釈されるべきではないが、このような特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の完全な範囲とともに、全ての考えられる実施形態を含むと解釈されるべきである。よって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。

Claims (28)

  1. 標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座へ組みこむための組換えポリヌクレオチドベクターであって、該ベクターは、
    (a)ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域;
    (b)ニワトリファブリキウス嚢細胞の集団から単離された再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子を含む標的遺伝子;および
    (c)ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域、
    を含み、
    ここで該標的遺伝子は、DT40細胞の該ニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座に組みこまれる際に、(i)免疫グロブリンV領域コード配列における体細胞超変異、および(ii)再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列と、DT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方を受け得る、ベクター。
  2. 前記標的遺伝子は、マーカータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1に記載のベクター。
  3. 前記マーカータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)および青色蛍光タンパク質(BFP)から選択される、請求項2に記載のベクター。
  4. 前記体細胞超変異は、免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列および免疫グロブリンVフレームワーク領域コード配列のうちのいずれかもしくはその両方で起こる、請求項1に記載のベクター。
  5. 複数の標的遺伝子を複数のニワトリ免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座に組みこむための複数の組換えポリヌクレオチドベクターを含む組成物であって、該ベクターの各々は、
    (a)ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域;
    (b)ニワトリファブリキウス嚢細胞の集団から単離された再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子を含む標的遺伝子;および
    (c)ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域、
    を含み、
    ここで該標的遺伝子は、DT40細胞の該ニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座に組みこまれる際に、(i)免疫グロブリンV領域コード配列における体細胞超変異、および(ii)該再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列と、DT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方を受け得、
    ここで該再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子は、ニワトリファブリキウス嚢細胞の集団から単離された、複数の再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子から得られる、
    組成物。
  6. 前記標的遺伝子は、マーカータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
  7. 前記マーカータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)および青色蛍光タンパク質(BFP)から選択される、請求項6に記載の組成物。
  8. 前記体細胞超変異は、免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列および免疫グロブリンVフレームワーク領域コード配列のうちのいずれかもしくはその両方で起こる、請求項5に記載の組成物。
  9. 組成物であって、
    (a)請求項1〜4のいずれか1項に記載のベクター;ならびに
    (b)第2の標的遺伝子を免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座に組みこむための第2のベクターであって、
    (1)ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域;
    (2)ニワトリファブリキウス嚢細胞の集団から単離された再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子を含む第2の標的遺伝子;および
    (3)ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域、
    を含む、第2のベクター;
    を含み、ここで該第2の標的遺伝子は、DT40細胞の該ニワトリ免疫グロブリン軽鎖遺伝子座に組みこまれる際に、(i)免疫グロブリンV領域コード配列における体細胞超変異、および(ii)再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列と、DT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方を受け得る、組成物。
  10. 組成物であって、
    (1)請求項5〜8のいずれか1項に記載の組成物;ならびに
    (2)複数の標的遺伝子を、複数のニワトリ免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座へ組みこむための1つまたは複数の組換えポリヌクレオチドベクターであって、該ベクターの各々は、
    (a)ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域;
    (b)ニワトリファブリキウス嚢細胞の集団から単離された、再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子を含む第2の標的遺伝子;および
    (c)ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域、
    を含み、ここで該第2の標的遺伝子は、DT40細胞の該ニワトリ免疫グロブリン軽鎖遺伝子座へ組みこまれる際に、(i)免疫グロブリンV領域コード配列における体細胞超変異、および(ii)再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列と、DT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方を受け得、そして
    ここで該再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子は、ニワトリファブリキウス嚢細胞の集団由来の複数の単離された再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子から得られる、
    組成物。
  11. 前記第2の標的遺伝子は、第2のマーカータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む、請求項9または10に記載の組成物。
  12. 前記第2のマーカータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)および青色蛍光タンパク質(BFP)から選択される、請求項11に記載の組成物。
  13. 前記体細胞超変異は、免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列および免疫グロブリンVフレームワーク領域コード配列のうちのいずれかもしくはその両方で起こる、請求項9または10のいずれかに記載の組成物。
  14. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のベクター、または請求項5〜8および9〜13のいずれか1項に記載の組成物を含む、宿主細胞。
  15. 前記細胞は、細菌細胞である、請求項14に記載の宿主細胞。
  16. 前記細胞は、ニワトリ細胞に由来する、請求項14に記載の宿主細胞。
  17. 前記細胞は、ニワトリ嚢リンパ腫細胞である、請求項14に記載の宿主細胞。
  18. 前記細胞は、DT40細胞である、請求項14に記載の宿主細胞。
  19. 前記宿主細胞における免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座は、重合ラクトースオペレーターを含む、請求項16〜18のいずれか1項に記載の宿主細胞。
  20. 前記宿主細胞における免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座は、重合ラクトースオペレーターを含む、請求項16〜19のいずれか1項に記載の宿主細胞。
  21. 請求項14〜20のいずれか1項に記載の宿主細胞のライブラリー。
  22. 標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座に組みこむための方法であって、該方法は、
    (a)ニワトリB細胞を請求項1〜3のいずれか1項に記載のベクターでトランスフェクトするか、またはニワトリB細胞を請求項5〜8のいずれか1項に記載の組成物でトランスフェクトする工程;および
    (b)該標的遺伝子が該免疫グロブリン重鎖遺伝子座に組みこまれたニワトリB細胞を同定する工程、
    を包含する、方法。
  23. 第1の標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン重鎖遺伝子座に組み込み、第2の標的遺伝子を免疫グロブリン軽鎖遺伝子座に組みこむための方法であって、該方法は、
    (a)1または複数のニワトリB細胞を、請求項9〜13のいずれか1項に記載の組成物でトランスフェクトして、1または複数のトランスフェクトしたB細胞を得る工程;ならびに
    (b)再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子を含む該標的遺伝子が該免疫グロブリン遺伝子重鎖遺伝子座に組みこまれ、該第2の標的遺伝子が該免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座に組みこまれた、トランスフェクトされたニワトリB細胞を(a)から同定する工程、
    を包含する、方法。
  24. 再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−D−J遺伝子を含む標的遺伝子によってコードされる標的ポリペプチドの、ニワトリ免疫グロブリン重鎖ポリペプチド配列改変体のレパートリーを生成するための方法であって、該方法は、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のベクターを含むニワトリB細胞を、複数のB細胞が得られるまで、該B細胞の増殖を可能にする条件下で培養する工程であって、ここで該B細胞は、(i)免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列における体細胞超変異、および(ii)再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列と、V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方が可能であり、そしてそれによって、該標的ポリペプチドのニワトリ免疫グロブリン重鎖ポリペプチド配列改変体のレパートリーを生成し得る、工程、
    を包含する、方法。
  25. 請求項24に記載の方法であって、前記ニワトリB細胞は、第2の標的遺伝子をニワトリ免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座に組みこむための第2のベクターをさらに含み、該第2のベクターは、
    (a)ニワトリ免疫グロブリンV遺伝子上流核酸配列領域;
    (b)ニワトリファブリキウス嚢細胞の集団から単離された再構成されたニワトリ免疫グロブリンV−J遺伝子を含む第2の標的遺伝子;および
    (c)ニワトリ免疫グロブリンJ遺伝子下流核酸配列領域、
    を含み、ここで該第2の標的遺伝子は、DT40細胞の該ニワトリ免疫グロブリン軽鎖遺伝子座へと組みこまれる際に、(i)免疫グロブリンV相補性決定領域コード配列における体細胞超変異、および(ii)再構成されたニワトリ免疫グロブリンVコード核酸配列と、DT40 V偽遺伝子核酸配列との間の遺伝子変換のうちのいずれかもしくはその両方を受け得る、
    方法。
  26. 前記ニワトリ免疫グロブリン遺伝子軽鎖遺伝子座は、重合ラクトースオペレーターを含む、請求項25に記載の方法。
  27. 前記ニワトリ細胞は、DT40およびDTLacOから選択される、請求項22〜26のいずれか1項に記載の方法。
  28. 抗原への結合について前記複数のニワトリB細胞をスクリーニングする工程をさらに包含する、請求項25または26に記載の方法。
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