JP2015506665A - 癌の治療および診断の標的遺伝子としてのsmyd2 - Google Patents
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Abstract
Description
本出願は、2011年12月2日に出願された米国仮出願第61/566,193号の恩典を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
本発明者らは、特定のヒストンメチルトランスフェラーゼ(histone methyltransferase)(HMT)が、正常な細胞バイオロジーに加えて、ヒト癌の病因において重要な役割を果たすことを実証した[特許文献1〜2、非特許文献11〜13]。HMTはまた、ヒト細胞の悪性化に関与すると示唆されている[非特許文献14〜16]。
総合すると、このデータは、SMYD2分子を標的とすることが、癌の臨床管理における新たな診断治療戦略の開発に有望であり得ることを示唆している。
[1]対象由来の生体試料におけるSMYD2遺伝子の発現レベルを決定する段階を含む、対象における癌を検出もしくは診断するかまたは癌を発症する素因を検出するための方法であって、前記遺伝子の正常対照レベルと比較した前記発現レベルの上昇が、前記対象が癌に罹患しているかまたは癌を発症するリスクを有することを示し、前記発現レベルが、以下からなる群より選択される任意の方法によって決定される、方法:
(a)SMYD2遺伝子のmRNAを検出すること;
(b)SMYD2遺伝子によってコードされるタンパク質を検出すること;および
(c) SMYD2遺伝子によってコードされるタンパク質の生物学的活性を検出すること、
[2]前記上昇が、前記正常対照レベルよりも少なくとも10%大きい、[1]に記載の方法、
[3]前記対象由来の生体試料が、生検標本、唾液、痰、血液、血清、血漿、胸水または尿試料を含む、[1]に記載の方法、
[4]以下からなる群より選択される試薬を含む、対象における癌の存在または癌を発症する素因を検出または診断するためのキット:
(a)SMYD2遺伝子のmRNAを検出するための試薬;
(b)SMYD2遺伝子によってコードされるタンパク質を検出するための試薬、および
(c)SMYD2遺伝子によってコードされるタンパク質の生物学的活性を検出するための試薬、
[5]前記試薬が、SMYD2遺伝子のmRNAに結合するプローブまたはプライマーセットである、[4]に記載のキット、
[6]前記試薬が、SMYD2遺伝子によってコードされるタンパク質に対する抗体または該タンパク質の断片に対する抗体である、[4]に記載のキット、
[7]前記生物学的活性が、細胞増殖促進活性またはメチルトランスフェラーゼ活性である、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法、または[4]〜[6]のいずれかに記載のキット、
[8]以下の段階を含む、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)試験物質を、SMYD2ポリペプチドまたはSMYD2ポリペプチドの機能的等価物と接触させる段階;
(b)前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的等価物と前記試験物質との間の結合活性を検出する段階;および
(c)前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的等価物に結合する試験物質を選択する段階、
[9]以下の段階を含む、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)試験物質を、SMYD2遺伝子を発現する細胞と接触させる段階;および
(b)SMYD2遺伝子の発現レベルを前記試験物質の非存在下の発現レベルと比較して低下させる試験物質を選択する段階、
[10]以下の段階を含む、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)試験物質を、SMYD2ポリペプチドまたはSMYD2ポリペプチドの機能的等価物と接触させる段階;
(b)段階(a)のポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能的等価物の生物学的活性を検出する段階;および
(c)前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的等価物の生物学的活性を前記試験物質の非存在下で検出された生物学的活性と比較して抑制する試験物質を選択する段階、
[11]前記生物学的活性が、細胞増殖促進活性またはメチルトランスフェラーゼ活性である、[10]に記載の方法、
[12]以下の段階を含む、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)試験物質を、SMYD2遺伝子の転写調節領域と前記転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とを含むベクターが導入された細胞と、接触させる段階、
(b)前記レポーター遺伝子の発現または活性レベルを測定する段階;および
(c)前記レポーター遺伝子の発現または活性レベルを前記試験物質の非存在下のレベルと比較して低下させる試験物質を選択する段階、
[13]以下の段階を含む、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)SMYD2ポリペプチドまたはSMYD2ポリペプチドの機能的等価物を、メチル化されるべき基質と、前記基質のメチル化が可能な条件下において試験物質の存在下で接触させる段階;
(b)前記基質のメチル化レベルを検出する段階;および
(c)前記基質のメチル化レベルを前記試験物質の非存在下で検出されたメチル化レベルと比較して低下させる試験物質を選択する段階、
[14]前記基質が、ヒストンタンパク質、または少なくとも1つのメチル化部位を含むヒストンタンパク質の断片である、[13]に記載の方法、
[15]前記ヒストンが、ヒストンH4またはヒストンH3である、[14]に記載の方法、
[16]前記基質が、HSP90AB1ポリペプチド、または少なくとも1つのメチル化部位を含むHSP90AB1ポリペプチドの断片である、[13]に記載の方法、
[17]前記メチル化部位が、配列番号65のリジン531および/またはリジン574である、[16]に記載の方法、
[18]前記基質が、RB1ポリペプチド、または少なくとも1つのメチル化部位を含むRB1ポリペプチドの断片である、[13]に記載の方法、
[19]前記メチル化部位が、配列番号68のリジン810である、[18]に記載の方法、
[20]以下の段階を含む、癌を治療もしくは予防するかまたは癌細胞成長を阻害するための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)SMYD2ポリペプチドのHSP90AB1結合ドメインを含むポリペプチドを、HSP90AB1ポリペプチドのSMYD2結合ドメインを含むポリペプチドと、試験物質の存在下で接触させる段階;
(b)前記ポリペプチド間の結合を検出する段階;
(c)段階(b)で検出された結合レベルを、前記試験物質の非存在下で検出されたものと比較する段階;および
(d)前記ポリペプチド間の結合を阻害する試験物質を、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質として選択する段階、
[21]前記HSP90AB1結合ドメインを含むポリペプチドが、配列番号63の100位〜247位のアミノ酸残基を含む、[20]に記載の方法、
[22]前記SMYD2結合ドメインを含むポリペプチドが、配列番号65の500位〜724位のアミノ酸残基を含む、[20]に記載の方法、
[23]以下の段階を含む、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)SMYD2ポリペプチドのRB1結合ドメインを含むポリペプチドを、RB1ポリペプチドのSMYD2結合ドメインを含むポリペプチドと、試験物質の存在下で接触させる段階;
(b)前記ポリペプチド間の結合を検出する段階;および
(c)段階(b)で検出された結合レベルを、前記試験物質の非存在下で検出されたものと比較する段階;および
(d)前記ポリペプチド間の結合を阻害する試験物質を、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質として選択する段階、
[24]前記RB1結合ドメインを含むポリペプチドが、配列番号63の330位〜433位のアミノ酸残基を含む、[23]に記載の方法、
[25]前記SMYD2結合ドメインを含むポリペプチドが、配列番号68の773位〜813位のアミノ酸残基を含む、[23]に記載の方法、
[26]以下の段階を含む、癌を治療もしくは予防するかまたは癌細胞成長を阻害するための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)試験物質を、SMYD2遺伝子およびRB1遺伝子を発現する細胞と接触させる段階;
(b)段階(a)のRB1ポリペプチドまたは該RB1ポリペプチドの機能的等価物のリン酸化レベルを検出する段階;および
(c)前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的等価物のリン酸化レベルを前記試験物質の非存在下で検出されたリン酸化レベルと比較して低下させる試験物質を選択する段階、
[27]RB1ポリペプチドのリン酸化レベルが、配列番号68のセリン807および/またはセリン811でリン酸化されたRB1に対する抗体によって検出される、[26]に記載の方法、
[28]以下の構成要素を含む、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングするためのキット:
(a)SMYD2ポリペプチドまたはSMYD2ポリペプチドの機能的等価物;
(b)(i)〜(iii)からなる群より選択される構成要素
(i)ヒストンタンパク質、または少なくとも1つのメチル化部位を含むヒストンタンパク質の断片、
(ii)HSP90AB1ポリペプチドまたはHSP90AB1ポリペプチドの機能的等価物;
(iii)RB1ポリペプチドまたはRB1ポリペプチドの機能的等価物;
(c)(i)〜(iii)からなる群より選択される試薬;
(i)ヒストンタンパク質またはヒストンタンパク質の機能的等価物のメチル化レベルを検出するための試薬;
(ii)HSP90AB1ポリペプチドまたはHSP90AB1ポリペプチドの機能的等価物のメチル化レベルを検出するための試薬;
(iii)RB1ポリペプチドまたはRB1ポリペプチドの機能的等価物のメチル化レベルを検出するための試薬;および
(d)メチル供与体、
[29]ヒストンタンパク質が、ヒストンH4またはヒストンH3である、[28]に記載のキット、
[30]段階(c)(i)の試薬が、メチル化ヒストンH4タンパク質またはメチル化ヒストンH3タンパク質に対する抗体である、[28]に記載のキット、
[31]段階(c)(ii)の試薬が、配列番号65のリジン531および/またはリジン574でメチル化されたHSP90AB1ポリペプチドに対する抗体である、[28]に記載のキット、
[32]段階(c)(iii)の試薬が、配列番号68のリジン810でメチル化されたRB1ポリペプチドに対する抗体である、[28]に記載のキット、ならびに
[33]前記メチル供与体が、S−アデノシルメチオニンである、[28]〜[32]のいずれかに記載のキット。
本明細書に記載されるものと類似または等価な任意の方法および材料を、本発明の態様の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法、装置および材料をこれから説明する。しかしながら、本材料および本方法を説明する前に、本発明が、本明細書に記載される特定のサイズ、形、寸法、材料、方法論、プロトコルなどに限定されず、これらがルーチンな実験法および最適化にしたがって変動し得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の形式または態様を記載するためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図していないことも理解されるべきである。
特に定義がない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾が生じた場合には、定義を含む本明細書が優先される。加えて、材料、方法、および実施例は例証に過ぎず、限定を意図するものではない。
「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単語は、本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、「少なくとも1つの」を意味する。
「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」、および「核酸分子」という用語は、核酸残基のポリマーを指すのに本明細書において互換的に使用され、かつ特記しない限り、その一般に認められている1文字コードで呼ばれる。これらの用語は、1つまたは複数の核酸がエステル結合によって結合している核酸(ヌクレオチド)ポリマーに適用される。核酸ポリマーは、DNA、RNA、またはそれらの組み合わせから構成されてもよく、天然に存在する核酸ポリマーおよび天然に存在しない核酸ポリマーの両方を包含する。ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、または核酸分子は、DNA、RNAまたはそれらの組み合わせから構成され得る。
アミノ酸は、本明細書において、IUPAC−IUB 生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)によって推奨された、それらの一般的に公知の3文字記号または1文字記号により言及される場合もある。
本発明は、SMYD2(SET and MYND domain containing 2)、HSP90AB1(熱ショックタンパク質90kDa α(細胞質性)、クラスBメンバー1)、およびRB1(網膜芽細胞腫1)の遺伝子、ならびにこれらの遺伝子によってコードされるタンパク質に関する。
本発明の関心対象である遺伝子の典型的な核酸およびアミノ酸配列を以下の番号で示す。しかしながら、本発明は、これらの特定の配列に限定されない:
SMYD2:配列番号62および63;
HSP90AB1:配列番号64および65;
RB1:配列番号67および68。
上記配列データは、以下のGenBankアクセッション番号でも利用可能である:
SMYD2:NM_020197およびNP_064582;
HSP90AB1:NM_007355およびNP_031381;
RB1:NM_000321およびNP_000312。
本発明との関連において、ポリペプチドは、それを作製するために使用される細胞もしくは宿主、または利用される精製法に応じて、アミノ酸配列、分子量、等電点、糖鎖の有無、または形態における変動を有することができる。それでもなお、それが、関心対象であるヒトタンパク質のものと等価な機能を有する限り、それは、SMYD2(またはHSP90ABもしくはRB1)ポリペプチドの機能的等価物の範囲内である。
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins 1984を参照されたい)。
天然に存在する関心対象である遺伝子またはタンパク質と同一の特定配列から構成される機能的等価物は、当技術分野における従来の技術、例えばハイブリダイゼーション技術(Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Lab. Press, 2001)を使用して、同定および単離することができる。当業者であれば、関心対象である遺伝子の機能的等価物をコードするDNAを単離するために適切なハイブリダイゼーション条件を慣用的な手法で選択することができる。
関連DNAの配列情報に基づいて合成されたプライマーを使用して、関心対象であるヒトポリペプチドの機能的等価物をコードするDNAを単離するために、ハイブリダイゼーションに代えて、遺伝子増幅法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を利用することができる。例示的なプライマー配列の例は、実施例のセクションの半定量的RT−PCRにおいて示す。
本発明は、SMYD2が癌の診断マーカーとして役立ち得るという発見に関し、したがって、それに関連する癌の検出において有用性を見出すものである。本明細書において実証されたように、SMYD2遺伝子の発現は、膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病および前立腺癌で特異的かつ有意に上昇している(図1)。したがって、本明細書において同定された遺伝子、ならびにそれらの転写産物および翻訳産物は、膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病および前立腺癌のマーカーとしての診断有用性が見出され、細胞試料におけるSMYD2遺伝子の発現を測定することによって、膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病または前立腺癌を診断することができる。具体的には、本発明は、対象由来の生体試料におけるSMYD2遺伝子の発現レベルを決定することによって、膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病または前立腺癌の存在またはこれらを発症する素因を検出、診断および/または決定するための方法を提供する。
[1]以下の段階を含む、対象における癌の存在または癌を発症する素因を検出または診断する方法:
(A)対象由来の生体試料におけるSMYD2遺伝子の発現レベルを決定する段階であって、前記遺伝子の正常対照レベルと比較した前記レベルの上昇が、前記対象が癌に罹患しているかまたは癌を発症するリスクを有することを示し、該発現レベルが、以下からなる群より選択される方法のいずれか1つによって決定される、段階:
(a)SMYD2遺伝子のmRNAを検出すること;
(b)SMYD2遺伝子によってコードされるタンパク質を検出すること;および
(c) SMYD2遺伝子によってコードされるタンパク質の生物学的活性を検出すること、
または
(B)
(i)対象由来の生体試料を単離または採取する段階、
(ii)SMYD2遺伝子の発現レベルを測定または決定するために、該対象由来の生体試料を、SMYD2遺伝子のmRNAにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドと、またはSMYD2遺伝子によってコードされるタンパク質に結合する抗体と接触させる段階、および
(iii)前記接触に基づいてSMYD2遺伝子の発現レベルを測定または決定する段階であって、SMYD2遺伝子の正常対照レベルと比較した該レベルの上昇が、該対象が癌に罹患しているかまたは癌を発症するリスクを有することを示す、段階;
[2]測定された試料の発現レベルが、該正常対照レベルよりも少なくとも10%大きい、[1]に記載の方法;
[3]該生物学的活性が、細胞増殖促進活性またはメチルトランスフェラーゼ活性である、[1]に記載の方法;
[4]該癌が、膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病および前立腺癌からなる群より選択される、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法;
[5]該発現レベルが、該遺伝子のmRNAに対するプローブのハイブリダイゼーションを検出することによって決定される、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法;
[6]該発現レベルが、該遺伝子によってコードされるタンパク質に対する抗体の結合を検出することによって決定される、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法;
[7]該対象由来の生体試料が、生検標本、痰、血液、胸水および尿を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法;
[8]該対象由来の生体試料が、上皮細胞を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法;
[9]該対象由来の生体試料が、癌細胞を含む、[8]に記載の方法;および
[10]該対象由来の生体試料が、癌性上皮細胞を含む、[1]に記載の方法。
[11]該癌が膀胱癌である場合、該対象由来の生体試料が該対象由来の膀胱組織であり;該癌が肺癌である場合、該対象由来の生体試料が肺組織であり;該癌が乳癌である場合、該対象由来の生体試料が乳房組織であり;該癌が子宮頸癌である場合、該対象由来の生体試料が子宮頸部組織であり;該癌が大腸癌である場合、該対象由来の生体試料が大腸組織であり;該癌が腎臓癌である場合、該対象由来の生体試料が腎臓組織であり;該癌が肝臓癌である場合、該対象由来の生体試料が肝臓組織であり;該癌が頭頸部癌である場合、該対象由来の生体試料が頭頸部組織であり;該癌が精上皮腫である場合、該対象由来の生体試料が精巣組織であり;該癌が皮膚癌である場合、該対象由来の生体試料が皮膚組織であり;該癌が膵臓癌である場合、該対象由来の生体試料が膵臓組織であり;該癌がリンパ腫である場合、該対象由来の生体試料が血液試料またはリンパ節組織であり;該癌が卵巣癌である場合、該対象由来の生体試料が卵巣組織であり;該癌が白血病である場合、該対象由来の生体試料が血液試料または骨髄組織であり;該癌が前立腺癌である場合、該対象由来の生体試料が前立腺組織である、[4]に記載の方法。
本方法によって診断されるべき対象は、好ましくは、哺乳動物である。例示的な哺乳動物には、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシが含まれるが、これらに限定されない。
膀胱:膀胱癌用、
肺:肺癌用、
乳房:乳癌用、
子宮頸部:子宮頸癌用、
大腸:大腸癌用、
腎臓:腎臓癌用、
肝臓:肝臓癌用、
頭頸部:頭頸部癌用、
精巣:精上皮腫用、
皮膚:皮膚癌用、
膵臓:膵臓癌用、
血液またはリンパ節:リンパ腫用、
卵巣:卵巣癌用、
血液または骨髄:白血病用、
前立腺:前立腺癌用。
本方法に関連して使用するために適切なプローブまたはプライマーは、ストリンジェントな条件、中程度のストリンジェントな条件、または低ストリンジェントな条件下で、SMYD2遺伝子のmRNAにハイブリダイズするであろう。「ストリンジェントな条件」の詳細は、「遺伝子およびタンパク質」という表題のセクションに記載されている。
本発明は、癌を検出もしくは診断するため、および/または癌治療の有効性をモニタリングするためのキットを提供する。好ましくは、癌は、膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病または前立腺癌である。具体的には、キットは、対象由来の生体試料におけるSMYD2の発現を検出するための少なくとも1つの試薬であって、以下からなる群より選択され得る試薬を含む:
(a)SMYD2遺伝子のmRNAを検出するための試薬;
(b)SMYD2タンパク質を検出するための試薬;および
(c)SMYD2タンパク質の生物学的活性を検出するための試薬。
SMYD2遺伝子、SMYD2ポリペプチドもしくはそれらの機能的等価物、または該遺伝子の転写調節領域を使用して、SMYD2遺伝子の発現またはSMYD2ポリペプチドの生物学的活性を変化させる物質をスクリーニングすることが可能である。このような物質は、癌を治療または予防するための薬剤候補として使用してもよい。したがって、本発明は、SMYD2遺伝子、SMYD2ポリペプチドもしくはそれらの機能的等価物、またはSMYD2遺伝子の転写調節領域を使用して、癌の治療および予防のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法を提供する。
すなわち、本方法によってスクリーニングされる物質は、臨床的利益を有すると考えられ、動物モデルまたは試験対象において癌細胞成長を制限または予防する能力についてさらに試験することができる。
あるいは、本発明は、癌の治療もしくは予防または癌細胞成長の阻害に対する試験物質の治療効果を評価する方法を提供する。
本スクリーニング方法のいずれか1つによってスクリーニングされる物質の構造の一部が、付加、欠失、および/または置換によって変換された化合物は、本発明のスクリーニング方法によって得られる物質に含まれる。
試験物質ライブラリの構築は当技術分野において周知であるが、試験物質の同定および本スクリーニング方法のためのこのような物質のライブラリ構築についてのさらなる指針を本明細書において以下に提供する。
(a)SMYD2遺伝子の発現低下、
(b)対象における癌のサイズ、有病率、成長もしくは転移能の低減、
(c)癌形成の予防、または
(d)癌の臨床症状の予防もしくは緩和。
試験物質ライブラリの構築は、求められる特性を有することが公知の物質の分子構造、および/またはSMYD2タンパク質の分子構造の知識によって容易になる。さらなる評価のために適切な試験物質を予備スクリーニングするための1つのアプローチは、試験物質とSMYD2タンパク質との間の相互作用のコンピュータモデリングを利用する。
コンピュータモデリング技術により、選択された分子の三次元原子構造の可視化、およびその分子と相互作用する新たな物質の合理的設計が可能になる。三次元コンストラクトは、典型的には、選択された分子のX線結晶学的分析またはNMRイメージングからのデータに依存する。分子動力学は力場データを必要とする。コンピュータグラフィックスシステムは、新たな物質が標的分子にどのように結合するかを予測可能にし、結合特異性を完全にするための物質および標的分子の構造の実験的操作を可能にする。一方または両方に軽微な変化が加えられた場合に、分子−物質相互作用がどのようになるかを予測するには、分子力学ソフトウェアおよび計算集約型コンピュータが必要とされ、それらは、通常、分子設計プログラムと使用者との間のユーザーフレンドリなメニュー方式のインターフェースと連結される。
試験物質のコンビナトリアルライブラリは、公知の阻害剤に存在しているコア構造の知識を使用する合理的薬物設計プログラムの一部として作製され得る。このアプローチにより、ハイ・スループット・スクリーニングを容易にする適度のサイズにライブラリを維持することが可能になる。あるいは、ライブラリを構成する分子ファミリーの全順列を簡便に合成することによって、単純な、特に短い、重合体分子ライブラリを構築することもできる。この後者のアプローチの一例は、6アミノ酸長の全ペプチドのライブラリである。このようなペプチドライブラリは、6アミノ酸配列のあらゆる順列を含み得る。この種類のライブラリは、線形コンビナトリアル・ケミカル・ライブラリと呼ばれる。
別のアプローチは、ライブラリを作製するために組換えバクテリオファージを使用する。「ファージ法」(Scott & Smith, Science 1990, 249: 386-90;Cwirla et al., Proc Natl Acad Sci USA 1990, 87: 6378-82;Devlin et al., Science 1990, 249: 404-6)を使用して、極めて大きいライブラリを構築することができる(例えば、106〜108個の化学物質)。第2のアプローチは、主として化学的な方法を使用し、Geysenの方法(Geysen et al., Molecular Immunology 1986, 23: 709-15;Geysen et al., J Immunologic Method 1987, 102: 259-74);およびFodorらの方法(Science 1991, 251: 767-73)がその例である。Furkaら(14th International Congress of Biochemistry 1988, Volume #5, Abstract FR: 013; Furka, Int J Peptide Protein Res 1991, 37: 487-93)、Houghten(米国特許第4,631,211号)、およびRutterら(米国特許第5,010,175号)は、アゴニストまたはアンタゴニストとして試験され得るペプチドの混合物を作製する方法を記載している。
本発明との関連において、正常な器官では発現されていないにもかかわらず、SMYD2遺伝子の過剰発現が、膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病および前立腺癌で検出された(図1A〜F)。さらに、siRNAによるSMYD2のノックダウンおよびSMYD2の不活性化は、癌細胞成長の阻害をもたらした(図2)。膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病および前立腺癌におけるSMYD2遺伝子の発現レベルの上昇、およびsiRNAによるSMYD2のノックダウン効果により、SMYD2ポリペプチドに結合する物質は、癌細胞増殖を抑制するので、膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病および前立腺癌を含む癌の治療または予防に有用であると予想される。したがって、本発明はまた、SMYD2ポリペプチドに対する結合活性を指標として使用して、癌細胞増殖を抑制する候補物質をスクリーニングする方法、ならびに癌、特に膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病および前立腺癌を治療または予防するための候補物質をスクリーニングする方法を提供する。このスクリーニング方法の特定の一実施形態は、以下の段階を含む:
(a)試験物質を、SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物と接触させる段階;
(b)SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物と試験物質との間の結合活性を検出する段階;および
(c)SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物に結合する試験物質を、癌を治療または予防するための候補物質として選択する段階。
(a)試験物質を、SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物と接触させる段階;
(b)SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物と該試験物質との間の結合活性を検出する段階;および
(c)該試験物質の潜在的な治療効果を、段階(b)で検出された結合活性と相関させる段階であって、該試験物質が、癌を治療または予防するための候補物質として該ポリペプチドまたはその機能的等価物に結合する場合に、潜在的な治療効果が示される段階。
スクリーニングに使用されるべきSMYD2ポリペプチドは、組換えポリペプチドもしくは天然由来のタンパク質、またはそれらの部分ペプチドであり得る。試験物質と接触させるべきポリペプチドは、例えば、精製されたポリペプチド、可溶性タンパク質、担体と結合した形態、または他のポリペプチドと融合した融合タンパク質であり得る。好ましい実施形態において、ポリペプチドを、SMYD2を発現する細胞から単離するか、または化学合成して、試験物質とインビトロで接触させる。
免疫沈降したタンパク質の分析には、SDS−PAGEが一般に使用され、結合したタンパク質は、適切な濃度を有するゲルを使用して、タンパク質の分子量によって分析され得る。SMYD2ポリペプチドに結合したタンパク質は、クーマシー染色または銀染色などの一般の染色法によって検出することが困難であるため、細胞を、放射性同位体35S−メチオニンまたは35S−システインを含有する培養培地中で培養し、細胞内のタンパク質を標識し、タンパク質を検出することによって、タンパク質の検出感度を改善することができる。タンパク質の分子量が明らかである場合には、標的タンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲルから直接精製し、その配列を決定することができる。
SMYD2ポリペプチドまたはその断片は、該ポリペプチドまたは機能的等価物が少なくとも1つの生物学的活性を保持している限り、他の物質にさらに連結させてもよい。使用可能な物質には、ペプチド、脂質、糖および糖鎖、アセチル基、天然および合成のポリマーなどが含まれる。これらの種類の修飾を行って、さらなる機能を付与すること、または該ポリペプチドまたは機能的等価物を安定化することができる。
1)Peptide Synthesis, Interscience, New York, 1966;
2)The Proteins, Vol. 2, Academic Press, New York, 1976;
3)ペプチド合成(日本語),丸善,1975;
4)ペプチド合成の基礎と実験(日本語),丸善,1985;
5)医薬品の開発 続第14巻(ペプチド合成)(日本語),広川書店,1991
6)WO99/67288;および
7)Barany G.& Merrifield R.B., Peptides Vol. 2,「Solid Phase Peptide Synthesis」,Academic Press, New York, 1980, 100-118。
試験物質と接触させるべきSMYD2ポリペプチドは、例えば、精製されたポリペプチド、可溶性タンパク質、または他のポリペプチドと融合した融合タンパク質であり得る。
本方法によって、SMYD2ポリペプチドに結合する物質としてスクリーニングされる試験物質は、癌を治療または予防する潜在能力を有する候補物質であり得る。これらの候補物質が癌を治療または予防する潜在能力を、第2のおよび/またはさらなるスクリーニングによって評価して、癌に対する該物質の治療効果をさらに同定または確認してもよい。例えば、物質を、SMYD2遺伝子を過剰発現する癌細胞と接触させることによって、これらの候補物質を、癌細胞増殖の抑制についてさらに検査してもよい。
本発明の間に、SMYD2遺伝子は、膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病および前立腺癌で特異的かつ有意に過剰発現していることが明らかになった(図1D、F)。さらに、低分子干渉RNA(siRNA)によるSMYD2遺伝子の抑制は、癌細胞の成長阻害および/または細胞死をもたらした(図2A、B、D、E、F)。さらに、SMYD2タンパク質の不活性化は、コロニー形成活性を低下させた(図2C)。
これらの結果は、SMYD2ポリペプチドが癌細胞の生存に関与することを明確に実証しているので、SMYD2ポリペプチドの生物学的活性を阻害する物質は、癌治療に適切な候補物質として役立ち得る。
したがって、本発明はまた、SMYD2ポリペプチドの生物学的活性を指標として使用して、癌の治療および予防のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングするための方法を提供する。
例示的な癌には、膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病および前立腺癌が含まれる。
以下の段階を含む、癌の治療および予防のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)試験物質を、SMYD2ポリヌクレオチドまたはその機能的等価物と接触させる段階;
(b)段階(a)のSMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物の生物学的活性を検出する段階;
(c)段階(b)で検出された生物学的活性を、該試験物質の非存在下で検出されたものと比較する段階;
(d)SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物の生物学的活性を低下させるかまたは阻害する試験物質を選択する段階。
(a)試験物質を、SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物と接触させる段階;および
(b)段階(a)のポリペプチドまたはその機能的等価物の生物学的活性を検出する段階、および
(c)(b)の生物学的活性を試験物質の治療効果と相関させる段階。
(a)試験物質を、SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物と接触させる段階;
(b)段階(a)のポリペプチドまたはその機能的等価物の生物学的活性を検出する段階;および
(c)潜在的な治療効果と該試験物質とを相関させる段階であって、物質が、SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物の生物学的活性を、該試験物質の非存在下で検出された該ポリペプチドの生物学的活性と比較して抑制する場合に、潜在的な治療効果が示される、段階。
任意のポリペプチドは、それらがSMYD2ポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を保持している限り、本発明のスクリーニング方法に使用することができる。このような生物学的活性の例には、SMYD2ポリペプチドの細胞増殖促進活性およびメチルトランスフェラーゼ活性が含まれる。例えば、SMYD2ポリペプチドを使用することもできるし、SMYD2ポリペプチドと機能的に等価なポリペプチドを使用することもできる。このようなポリペプチドは、細胞によって内因的または外因的に発現されてもよい。SMYD2ポリペプチドの機能的等価物の詳細については、「遺伝子およびタンパク質」の項目を参照されたい。例えば、SETドメインを保持するSMYD2ポリペプチドの断片、例えば、配列番号63の17番目から247番目のアミノ酸のアミノ酸配列を含有する断片は、SMYD2ポリペプチドの機能的等価物であり得る。
(a)試験物質を、SMYD2遺伝子を過剰発現する細胞と接触させる段階;
(b)細胞増殖促進活性を測定する段階;および
(c)細胞増殖促進活性を該試験物質の非存在下の細胞増殖促進活性と比較して低下させる試験物質を選択する段階。
好ましい実施形態において、本発明の方法は、以下の段階をさらに含んでもよい:
(d)SMYD2遺伝子を全く発現しないかまたはほとんど発現しない細胞に対して効果を有しない試験物質を選択する段階。
[1]以下の段階を含む、癌の治療および予防のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)試験物質を、SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物、基質および補因子と、該基質のメチル化に適切な条件下で接触させる段階;
(b)該基質のメチル化レベルを検出する段階;および
(c)該基質のメチル化レベルを該試験物質の非存在下のメチル化レベルと比較して低下させる試験物質を選択する段階;
[2]該基質が、ヒストンタンパク質、または少なくとも1つのメチル化部位を含むその断片である、[1]に記載の方法;
[3]該ヒストンが、ヒストンH4またはヒストンH3である、[2]に記載の方法;
[4]該基質が、HSP90AB1ポリペプチド、または少なくとも1つのメチル化部位を含むその断片である、[1]に記載の方法;
[5]該メチル化部位が、HSP90AB1ポリペプチド(配列番号65)のリジン531および/またはリジン574である、[4]に記載の方法;
[6]該基質が、RB1ポリペプチド、または少なくとも1つのメチル化部位を含むその断片である、[1]に記載の方法;
[7]該メチル化部位が、RB1ポリペプチド(配列番号68)のリジン810である、[6]に記載の方法、
[8]該補因子が、S−アデノシルメチオニンである、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法;
[9]該ポリペプチドを該基質および補因子とメチル化促進剤の存在下で接触させる、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法;および
[10]該メチル化促進剤が、S−アデノシルホモシステインヒドロラーゼ(SAHH)である、[9]に記載の方法。
より具体的には、方法は、以下の段階を含む:
[1]試験物質を、SMYD2遺伝子を発現する細胞と接触させる段階;
[2]ヒストンH4タンパク質のリジン20、ヒストンH3タンパク質のリジン36(H3K9)、HSP90AB1タンパク質のリジン531および/もしくはリジン574、またはRB1タンパク質のリジン810のメチル化を検出する段階;および
[3]メチル化レベルを該試験物質の非存在下のメチル化レベルと比較して低下させる試験物質を選択する段階。
(a)試験物質の存在下または非存在下でSMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物を発現する細胞、および該試験物質の存在下でSMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物を発現しない対照細胞を培養する段階;
(b)SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物を発現する細胞、および対照細胞の生物学的活性(例えば、細胞成長)を検出する段階;および
(c)SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物を発現する細胞の生物学的活性を前記試験物質の非存在下で検出された生物学的活性と比較して阻害し、該対照細胞の生物学的活性を阻害しない試験物質を、選択する段階。
本明細書において実証されたように、siRNAによるSMYD2遺伝子発現の低下は、癌細胞増殖の阻害をもたらす(図2)。したがって、SMYD2遺伝子発現の抑制(低下、阻害)は、細胞成長を抑制する(低下させる、阻害する)ことが本明細書において明らかにされている。したがって、レポーター遺伝子の発現または活性を低下させる候補物質をスクリーニングすることによって、癌を治療または予防する潜在能力を有する候補物質を同定することができる。これらの候補物質が癌を治療または予防する潜在能力を、第2のおよび/またはさらなるスクリーニングによって評価して、癌の治療物質を同定してもよい。
(a)試験物質を、SMYD2遺伝子を発現する細胞と接触させる段階;
(b)該細胞におけるSMYD2遺伝子の発現レベルを検出する段階;および
(c)SMYD2遺伝子の発現レベルを該試験物質の非存在下で検出された発現レベルと比較して低下させる試験物質を選択する段階。
(a)試験物質を、SMYD2遺伝子を発現する細胞と接触させる段階;
(b)該細胞におけるSMYD2遺伝子の発現レベルを検出する段階;および
(c)潜在的な治療効果と該試験物質とを相関させる段階であって、試験物質が、SMYD2遺伝子の発現レベルを、該試験物質の非存在下で検出された発現レベルと比較して低下させる場合に、潜在的な治療効果が示される、段階。
SMYD2遺伝子を発現する細胞には、例えば、膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病もしくは前立腺癌から樹立された細胞株、またはSMYD2遺伝子発現ベクターをトランスフェクトされた細胞株が含まれる;このような細胞のいずれかは、本発明の上記スクリーニング方法に使用されることができる。SMYD2遺伝子の発現レベルは、当業者に周知の方法、例えば、RT−PCR、ノーザンブロットアッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、免疫染色、およびフローサイトメトリー分析によって推定することができる。本発明との関連において、「発現レベルを低下させる」という語句は、SMYD2遺伝子の発現レベルの、物質の非存在下の発現レベルと比較した好ましくは少なくとも10%の低下、より好ましくは少なくとも25%、50%、または75%のレベル低下、および最も好ましくは95%のレベル低下と定義される。本明細書における物質には、化学物質、二本鎖ヌクレオチドなどが含まれる。二本鎖ヌクレオチドの調製は、上記説明の中にある。スクリーニング方法の過程において、SMYD2遺伝子の発現レベルを低下させる物質を、膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病および前立腺癌などの癌の治療または予防に使用されるべき候補物質として選択することができる。いくつかの実施形態において、SMYD2遺伝子を発現する細胞は、SMYD2遺伝子をインビトロで外因的または内因的に発現する単離された培養細胞である。
(a)試験物質を、SMYD2遺伝子の転写調節領域と該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とを含むベクターが導入された細胞と、接触させる段階;
(b)該レポーター遺伝子の発現または活性レベルを測定する段階;および
(c)該レポーター遺伝子の発現または活性レベルを低下させる候補物質を選択する段階。
(a)試験物質を、SMYD2遺伝子の転写調節領域と該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とを含むベクターが導入された細胞と、接触させる段階;
(b)該レポーター遺伝子の発現または活性レベルを測定する段階;および
(c)潜在的な治療効果と該試験物質とを相関させる段階であって、試験物質が、該レポーター遺伝子の発現または活性レベルを低下させる場合に、潜在的な治療効果が示される、段階。
(a)試験物質を、SMYD2遺伝子の転写調節領域と、該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とから構成されるベクターが導入された細胞と接触させる段階;
(b)該レポーター遺伝子の発現または活性レベルを検出する段階;および
(c)(b)の発現または活性レベルを該試験物質の治療効果と相関させる段階。
本明細書において実証されたように、SMYD2とHSP90AB1タンパク質との直接的な相互作用が、プルダウンアッセイによって示された(図3B、C)。抗Flag抗体を使用してSMYD2タンパク質のプルダウンを行い、HAタグ付HSP90AB1およびFlagタグ付SMYD2タンパク質の混合物をインキュベートした。続いて、HSP90AB1タンパク質に対する抗体を使用してウエスタンブロッティングによって、SMYD2結合HSP90AB1タンパク質を検出した。したがって、本発明は、SMYD2タンパク質とHSP90AB1タンパク質との間の結合を阻害する物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明にとって特に興味深いのは、以下の[1]〜[7]の方法である:
[1]以下の段階を含む、SMYD2ポリペプチドとHSP90AB1ポリペプチドまたはRB1ポリペプチドとの間の結合を妨げる物質をスクリーニングする方法:
(a)SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物を、HSP90AB1ポリペプチドもしくはその機能的等価物またはRB1ポリペプチドもしくはその機能的等価物と、試験物質の存在下で接触させる段階;
(b)該ポリペプチド間の結合レベルを検出する段階;
(c)段階(b)で検出された結合レベルを、該試験物質の非存在下で検出されたものと比較する段階;および
(d)該結合レベルを低下させる試験物質を選択する段階。
[2]以下の段階を含む、癌の治療および/もしくは予防、または癌細胞成長の阻害に有効な候補物質をスクリーニングする方法:
(a)SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物を、HSP90AB1ポリペプチドもしくはその機能的等価物またはRB1ポリペプチドもしくはその機能的等価物と、試験物質の存在下で接触させる段階;
(b)該ポリペプチド間の結合レベルを検出する段階;
(c)段階(b)で検出された結合レベルを、該試験物質の非存在下で検出されたものと比較する段階;および
(d)該結合レベルを低下させる試験物質を選択する段階。
[3]SMYD2ポリペプチドの機能的等価物が、SMYD2ポリペプチドのHSP90AB1結合ドメインを含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4]HSP90AB1ポリペプチドの機能的等価物が、HSP90AB1ポリペプチドのSMYD2結合ドメインを含む、[1]または[2]に記載の方法。
[5]SMYD2ポリペプチドの機能的等価物が、SMYD2ポリペプチドのRB1結合ドメインを含む、[1]または[2]に記載の方法。
[6]RB1ポリペプチドの機能的等価物が、RB1ポリペプチドのSMYD2結合ドメインを含む、[1]または[2]に記載の方法。
[7]該癌が、膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病および前立腺癌からなる群より選択される、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
(a)SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物を、HSP90AB1ポリペプチドもしくはその機能的等価物またはRB1ポリペプチドもしくはその機能的等価物と、試験物質の存在下で接触させる段階;
(b)該ポリペプチド間の結合レベルを検出する段階;
(c)段階(b)で検出された結合レベルを、該試験物質の非存在下で検出されたものと比較する段階;および
(d)潜在的な治療効果と該試験物質とを相関させる段階であって、試験物質が該結合レベルを低下させる場合に、潜在的な治療効果が示される、段階。
(a)SMYD2ポリペプチドのHSP90AB1結合ドメインを含むポリペプチドを、HSP90AB1ポリペプチドのSMYD2結合ドメインを含むポリペプチドと、試験物質の存在下で接触させる段階;
(b)該ポリペプチド間の結合を検出する段階;および
(c)潜在的な治療効果と該試験物質とを相関させる段階であって、試験物質が該ポリペプチド間の結合を阻害する場合に、潜在的な治療効果が示される、段階。
(a)SMYD2ポリペプチドのRB1結合ドメインを含むポリペプチドを、RB1ポリペプチドのSMYD2結合ドメインを含むポリペプチドと、試験物質の存在下で接触させる段階;
(b)該ポリペプチド間の結合を検出する段階;および
(c)潜在的な治療効果と該試験物質とを相関させる段階であって、試験物質が該ポリペプチド間の結合を阻害する場合に、潜在的な治療効果が示される、段階。
スクリーニングに使用されるべきポリペプチドは、組換えポリペプチドもしくは天然起源由来のタンパク質、またはそれらの部分ペプチドであり得る。好ましい実施形態において、ポリペプチドを、SMYD2、HSP90AB1もしくはRB1を発現する細胞から単離するか、または化学合成して、試験物質とインビトロで接触させる。任意の上記試験物質をスクリーニングに使用することができる。
(a)SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物を、HSP90AB1ポリペプチドもしくはその機能的等価物またはRB1ポリペプチドもしくはその機能的等価物と、試験物質の存在下で接触させる段階;
(b)該ポリペプチド間の結合レベルを検出する段階;
(c)段階(b)で検出された結合レベルを、該試験物質の非存在下で検出されたものと比較する段階;および
(d)(c)の結合レベルを該試験物質の治療効果と相関させる段階。
本発明において、治療効果は、SMYD2ポリペプチドとHSP90AB1ポリペプチドまたはRB1ポリペプチドとの間の結合レベルと相関させてもよい。例えば、試験物質が、該ポリペプチド間の結合レベルを、該試験物質の非存在下で検出されたレベルと比較して抑制する場合、該試験物質を、治療効果を有する候補物質として同定または選択してもよい。あるいは、試験物質が、該ポリペプチド間の結合レベルを、該試験物質の非存在下で検出されたレベルと比較して抑制または阻害しない場合、該試験物質を、有意な治療効果を有しない物質として同定してもよい。
本明細書において実証されたように、SMYD2タンパク質はRB1タンパク質をメチル化し、LC−MS/MS分析により、RB1のリジン810がSMYD2によってメチル化されることが明らかになった(図7B)。さらに、SMYD2によるRB1のリジン810のメチル化は、セリン807および/またはセリン811におけるRB1のリン酸化を促進した(図9、10)。さらに、SMYD2によってメチル化されたRB1は、E2F転写活性を加速させ、細胞周期進行を促進する(図10C、図12)。
これらの結果は、SMYD2によるRB1のメチル化を介したRB1のリン酸化が癌細胞成長に関与することを実証している。したがって、SMYD2によるRB1のメチル化を介したRB1ポリペプチドのリン酸化レベルを低下させる物質は、癌を治療もしくは予防するか、または癌細胞成長を阻害するための候補物質になり得る。
したがって、本発明はまた、SMYD2によるRB1のメチル化を介したRB1のリン酸化を指標として使用して、癌の治療および予防のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明との関連において、このようなスクリーニング方法は、例えば、以下の段階を含んでもよい:
(a)試験物質を、SMYD2遺伝子およびRB1遺伝子を発現する細胞と接触させる段階;
(b)(a)の細胞におけるRB1ポリペプチドのリン酸化レベルを検出する段階;および
(c)RB1ポリペプチドのリン酸化レベルを該試験物質の非存在下で検出されたリン酸化レベルと比較して低下させる試験物質を選択する段階。
(a)試験物質を、SMYD2遺伝子およびRB1遺伝子を発現する細胞と接触させる段階;
(b)(a)の細胞におけるRB1ポリペプチドのリン酸化レベルを検出する段階;および
(c)潜在的な治療効果と該試験物質とを相関させる段階であって、試験物質が、RB1ポリペプチドのリン酸化レベルを、該試験物質の非存在下で検出されたリン酸化レベルと比較して低下させる場合に、潜在的な治療効果が示される、段階。
SMYD2遺伝子およびRB1遺伝子を発現する細胞には、例えば、膀胱癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、精上皮腫、皮膚癌、膵臓癌、リンパ腫、卵巣癌、白血病もしくは前立腺癌から樹立された細胞株、またはSMYD2遺伝子発現ベクターおよびRB1発現ベクターの両方をトランスフェクトされた細胞株が含まれる;このような細胞のいずれかは、本発明の上記スクリーニング方法に使用されることができる。いくつかの実施形態において、SMYD2遺伝子およびRB1遺伝子を発現する細胞は、SMYD2およびRB1遺伝子をインビトロで外因的または内因的に発現する単離された培養細胞である。
RB1ポリペプチドのリン酸化は、配列番号68のセリン807および/またはセリン811アミノ酸残基でリン酸化されたRB1に対する抗体を使用して、ウエスタンブロッティング分析によって検出することができる。
本発明はさらに、SMYD2ポリペプチドのメチルトランスフェラーゼ活性を測定するためのキットを提供する。キットは、癌を治療もしくは予防するか、または癌細胞成長を阻害するための候補基質をスクリーニングするために使用することができる。本発明の間に、公知の基質であるヒストンタンパク質(好ましくは、H3またはH4)に加えて、HSP90AB1タンパク質およびRB1タンパク質を、SMYD2ポリペプチドの新規な基質として同定した。したがって、本発明は、SMYD2ポリペプチドのメチルトランスフェラーゼ活性を測定するためのキットであって、SMYD2ポリペプチドの基質としてヒストンポリペプチドもしくはその機能的等価物、HSP90AB1ポリペプチドもしくはその機能的等価物、またはRB1ポリペプチドもしくはその機能的等価物を含有するキットを提供する。このようなキットは、SMYD2ポリペプチド、または試料から精製もしくは単離されたSMYD2ポリペプチドを含有する試料におけるSMYD2媒介性のメチルトランスフェラーゼ活性を測定するために使用することができる。
本発明の上記キットは、SMYD2ポリペプチドによるヒストン、HSP90AB1またはRB1ポリペプチドのメチル化レベルを調節する物質を同定するための用途を見出すものである。さらに、本発明のキットは、癌を治療もしくは予防するか、または癌細胞成長を阻害するための候補物質をスクリーニングするために有用である。
[1]以下の構成要素(a)〜(d)を含む、癌を治療もしくは予防するか、または癌細胞成長を阻害するための候補物質をスクリーニングするためのキット:
(a)SMYD2ポリペプチドまたはその機能的等価物;
(b)(i)〜(iii)からなる群より選択される構成要素
(i)ヒストンタンパク質、または少なくとも1つのメチル化部位を含むその断片、
(ii)HSP90AB1ポリペプチド、または少なくとも1つのメチル化部位を含むその機能的等価物、
(iii)RB1ポリペプチド、または少なくとも1つのメチル化部位を含むその機能的等価物
(c)(i)〜(iii)からなる群より選択される試薬;
(i)ヒストンタンパク質またはその断片のメチル化レベルを検出するための試薬、
(ii)HSP90AB1ポリペプチドまたはその機能的等価物のメチル化レベルを検出するための試薬、
(iii)RB1ポリペプチドまたはその機能的等価物のメチル化レベルを検出するための試薬;および
(d)メチル供与体。
[2]該ヒストンタンパク質が、ヒストンH4またはヒストンH3である、[1]に記載のキット。
[3]段階(c)(i)の試薬が、メチル化ヒストンH4タンパク質またはメチル化ヒストンH3タンパク質に対する抗体である、[1]に記載のキット。
[4]段階(c)(ii)の試薬が、リジン531および/またはリジン574でメチル化されたHSP90AB1ポリペプチドに対する抗体である、[1]に記載のキット。
[5]段階(c)(iii)の試薬が、リジン810でメチル化されたRB1ポリペプチドに対する抗体である、[1]に記載のキット。
[6]該メチル供与体が、S−アデノシルメチオニンである、[1]〜[5]のいずれかに記載のキット。
本発明のキットに含まれるヒストンH3タンパク質またはH4タンパク質は、H3タンパク質またはH4タンパク質の全長でもよいし、またはそれらの機能的等価物、例えば、ヒストンH3タンパク質またはH4タンパク質の全長の断片でもよい。本明細書において、ヒストンH3タンパク質またはH4タンパク質の機能的等価物は、SMYD2ポリペプチドによってメチル化され得る、ヒストンH3タンパク質またはH4タンパク質の全長の修飾ポリペプチド、断片または修飾断片を指す。好ましくは、ヒストンH3タンパク質またはH4タンパク質の機能的等価物は、SMYD2ポリペプチドによってメチル化され得る少なくとも1つのメチル化部位を保持する。このようなメチル化部位には、ヒストンH4タンパク質のリジン20、およびヒストンH3タンパク質のリジン36が含まれる。
本発明のキットは、緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、注射器、および使用のための説明を含む添付文書(例えば、文書、テープ、CD−ROMなど)を含む、商業的見地および使用者の見地から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。これらの物質などは、ラベルを有する容器に入っていてもよい。適切な容器には、ボトル、バイアル、および試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成されてもよい。
膀胱組織試料およびRNA調製。
膀胱組織試料およびRNA調製は、以前に記載された(Wallard, M.J. et al. Br J Cancer 94, 569-577 (2006))。簡単に説明すると、膀胱切除術または経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)のいずれかの際に、原発性尿路上皮癌の外科的標本125例を採取し、液体窒素中で急速凍結させた。正常膀胱尿路上皮組織の標本28例を、悪性病変の証拠がない患者の巨視的に正常な膀胱尿路上皮の区域から採取した。ビメンチンは、間葉系由来細胞で主として発現しており、間質マーカーとして使用した。ウロプラキンは、尿路上皮分化のマーカーであり、最大90%の上皮由来腫瘍で保存されている(Olsburgh, J. et al. The Journal of pathology 199, 41-49 (2003))。本研究における組織の使用は、Cambridgeshire Local Research Ethics Committee(Ref03/018)によって承認された。正常組織(脳、乳房、大腸、食道、眼、心臓、肝臓、肺、膵臓、胎盤、腎臓、直腸、脾臓、胃および精巣)のRNA試料は、BioChainから購入した。
CCD−18Co、HFL1、5637、SW780、SCaBER、UMUC3、RT4、T24、HT−1197、HT−1376、A549、H2170、SW480、HCT116、LoVoおよび293T細胞は、2001年および2003年にAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手し、SW780以外は、多型ショート・タンデム・リピート(STR)マーカーのDNAプロファイリングによって試験および確認した。SW780株は、1974年に、A.Leibovitzによって悪性度Iの移行細胞癌腫から樹立された。RERF−LC−AIおよびSBC5細胞は、2001年にJapanese Collection of Research Bioresources(JCRB)から入手し、多型ショート・タンデム・リピート(STR)マーカーのDNAプロファイリングによって試験および確認した。253J、253J−BVおよびSNU−475細胞は、2001年にKorean Cell Line Bank(KCLB)から入手し、多型ショート・タンデム・リピート(STR)マーカーのDNAプロファイリングによって試験および確認した。EJ28細胞は、2003年にCell Line Service(CLS)から入手し、多型ショート・タンデム・リピート(STR)マーカーのDNAプロファイリングによって試験および確認した。ACC−LC−319細胞は、2003年に愛知県がんセンターから入手し、SNP、変異および欠失分析のDNAプロファイリングによって試験および確認した。すべての細胞株を次の適切な培地において単層で増殖させた:EJ28、RERF−LC−AI、HeLa、COS−7および293T細胞にはダルベッコ変法イーグル培地(D−MEM);CCD−18Co、WI−38、253J、253J−BV、HT−1376、SCaBER、UMUC3およびSBC5細胞にはイーグル最小必須培地(EMEM);SW480およびSW780細胞にはLeibovitz's L−15;RT4、T24およびHCT116p53+/+細胞にはMcCoy's 5A培地;5637、A549、H2170、ACC−LC−319およびSNU−475細胞にはRPMI1640培地。LoVo細胞は、10%ウシ胎仔血清および1%抗生物質/抗真菌溶液(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA)が補足された20%ウシ胎仔A549細胞が補足されたHam's F−12培地で培養した。すべての細胞を、37℃で、5%CO2条件を含むか(SAEC、5637、253J、253J−BV、EJ28、HT−1197、HT−1376、J82、RT4、SCaBER、T24、UMUC3、A549、H2170、ACC−LC−319、RERF−LC−AI、SBC5および293T RT4、A549、SBC5、293T、HCT116p53+/+、HeLaおよびCOS−7)またはCO2を含まない(SW480およびSW780)湿潤空気中で維持した。製造業者のプロトコルにしたがって、FuGENE6(商標)(Roche Applied Science,Penzberg,Germany)を用いて、細胞をトランスフェクトした。
上記のように、膀胱癌組織125例および正常膀胱組織28例をAddenbrooke's Hospital,Cambridgeで調製した。定量的RT−PCR反応のために、ヒトGAPDH(ハウスキーピング遺伝子)、SDH(ハウスキーピング遺伝子)、SMYD2のすべてに対する特異的プライマーを設計した(表1のプライマー配列)。製造業者のプロトコルにしたがってLightCycler(登録商標)480 System(Roche Applied Science)を使用して、PCR反応を実施した。
パラフィン包埋組織のスライドは、BioChain(Hayaward,CA,USA)から購入した。免疫組織化学は、VECTASTAIN(登録商標)ABC REAGENT(PK−7100,Vector Laboratories,CA,USA)およびDAB SUBSTRATE KIT FOR PEROXIDASE(登録商標)(SK−4100,Vector Laboratories,CA,USA)を使用して実施した。パラフィン包埋した膀胱腫瘍標本および正常ヒト組織のスライドをキシレンで脱パラフィン処理し、続いて99%エタノールで再水和した。1×PBS(−)で洗浄した後、スライドを、抗原賦活液、高pH9(S2367;Dako Cytomation,Carpinteria,CA,USA)において高圧下で処理し(125℃、30秒間)、0.3%過酸化水素(H2O2)メタノール溶液によって、反応停止を15分間実施した。3%BSAによってブロッキングした後、組織切片を希釈比1:250のヤギ抗SMYD2ポリクローナル抗体(sc−79084,Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA,USA)と共に一晩インキュベートし、続いて、抗ヤギビオチン化IgGと共に1時間反応させた。VECTASTAIN(登録商標)ABC REAGENTと共にインキュベートした後、DAB SUBTRATE KIT FOR PEROXIDASE(登録商標)を使用して、発色現像を実施した。最後に、マイヤーヘマトキシリン(Muto pure chemicals,Tokyo,Japan Hematoxylin QS,Vector Laboratories)によって組織標本を20秒間染色して、細胞質から核を識別した。
ヒトSMYD2の転写物を標的とするためのsiRNAオリゴヌクレオチド二重鎖は、Sigma−Aldrichから購入した。3種の異なるオリゴヌクレオチド二重鎖の混合物であるsiNegative対照(siNC)を、対照siRNAとして使用した。siRNA配列を表2に記載する。siRNA二重鎖(最終濃度100nM)を、Lipofectamine 2000(Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)によって、膀胱癌細胞株および肺癌細胞株にトランスフェクトした。
DMEM 10%FBSで培養したCOS−7細胞に、p3xFLAG−Mock、p3xFLAG−SMYD2野生型(WT)またはp3xFLAG−SMYD2酵素失活変異体ベクター(ΔNHSC/ΔGEEV)をトランスフェクトした。トランスフェクトしたCOS−7細胞を2日間培養し、10cmディッシュあたり細胞10000個の密度で10cmディッシュにトリプリケートで播種した。続いて、0.4(mg/ml)ジェネテシン/G−418を含有するDMEM 10%FBS中、コロニーが見られるまで、細胞を2週間培養した。Giemsa(MERCK,Whitehouse station,NJ,USA)でコロニーを染色し、コロニー・カウンタ・ソフトウェアによってカウントした。
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動のタンパク質バンドを切り出し、ジチオスレイトールで還元し、ヨード酢酸によってカルボキシメチル化した。ゲルを洗浄した後、アクロモバクター(Achrmobacter)プロテアーゼI(API、Lys−C、茨城大学、正木博士より寄贈)を用いて、バンドを37℃で一晩消化した(Masaki T, et al (1981). Biochim Biophys Acta 660, 44-50.)。LCQ Deca XP plus(Thermo Fisher Scientific,San Jose,CA)を使用するナノLC−MS/MSによって、消化物のアリコートを分析した。逆相材(Inertsil ODS−3、3マイクロメートル、GL Science,Tokyo,Japan)を充填したナノESIスプレーカラム(100マイクロメートルi.d.x50mmL)を使用して、ペプチドを流量200nl/分で分離した。陽イオンモードで質量分析計を作動させ、データ依存MS/MSモードでスペクトルを得た。ローカルMASCOTサーバ(バージョン:2.2.1,Matrix Sciences,UK)を使用して、社内データベースに対して、MS/MSスペクトルを検索した。エンドプロテアーゼAsp−N(Roche Applied Science)を用いて、還元およびカルボキシメチル化したゲルバンドも37℃で一晩消化した。消化物のアリコートを脱塩処理し、Ultraflex(Bruker Daltonik GmbH,Bremen,Germany)を使用するMALDI−TOF−MSにアプライした。そして、選択したピークをLIFTモードのMALDI−TOF/TOFタンデム質量分析で分析した。
内部標準として50pmolのノルバリンを含有する清潔な6mmX32mmガラス管に、PVDF膜上にブロッティングされ切り出されたタンパク質バンドを個々に挿入し、110℃の6N HCl蒸気で20時間加水分解した。蛍光体検出のために、6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(AQC)によって、加水分解した試料をインサイチューで誘導体化した。C18逆相カラム(Inertsil ODS−3、4.6mmi.d.X150mm、3マイクロメートル、GL Sciences,Tokyo,Japan)でのイオン対クロマトグラフィーによって、AQC−アミノ酸を分離した。モノメチル化リジンの存在を明らかにするために、レーザー誘起蛍光検出器(LIF726,GL Sciences)、およびXeフラッシュランプを備える蛍光検出器(G1312A,Agilent Technologies,Santa Clara,CA)の両方を使用した(Masuda, A. et al. Anal Chem 82, 8939-8945(2010))。
4%パラホルムアルデヒドを含有するPBS(−)で細胞を30分間固定し、0.1%Triton X−100を含有するPBS(−)を用いて室温で2分間透過化処理した。続いて、細胞を、室温で1時間、3%ウシ血清アルブミンを含有するPBS(−)で覆って、非特異的ハイブリダイゼーションをブロックし、次いで、ウサギ抗Rb(sc−102,Santa Cruz Biotechnology)、抗p−Rb(セリン807/811)−R(sc−16670−R,Santa Cruz Biotechnology)、ヤギ抗SMYD2(sc−79084,Santa Cruz Biotechnology)、希釈比1:500のマウス抗FLAG(Sigma−Aldrich)、希釈比1:1000のマウス抗HSP90抗体(sc−13119,Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA,USA)および希釈比1:500のヤギ抗SMYD2(sc−79084,Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA,USA)と共にインキュベートした。PBS(−)で洗浄した後、Alexa Fluor(登録商標)488結合抗ウサギ二次抗体(Life Technologies)、または希釈比1:500のAlexa Fluor(登録商標)594結合抗マウス二次抗体(Life Technologies)によって、細胞を染色した。4',6'−ジアミジン−2'−フェニルインドール二塩酸塩(DAPI)で核を対比染色した。TCS SP2 AOBS顕微鏡(Leica Mycrosystems,Wetzlar,Germany)下で、蛍光画像を得た。
293TまたはCOS−7細胞を、細胞5x105個の密度で100mmディッシュ上に播種した。翌日、製造業者の推奨にしたがってFuGENE6(Roche Applied Science)を使用して、細胞に発現ベクターコンストラクトをトランスフェクトした。48時間後、トランスフェクトした293T細胞をPBSで洗浄し、コンプリートプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Applied Science)を含有するCelLytic(商標)M Cell Lysis Reagent(Sigma−Aldrich)に溶解した。500マイクログラムの全細胞抽出物を抗FLAG M2アガロース(Sigma−Aldrich)と共に4℃で1時間インキュベートした。ビーズを1mlのTBS緩衝液(pH7.6)で3回洗浄した後、Lane Marker Sample Buffer(Thermo Scientific Thermo Fisher Scientific,Hudson,NH)中で煮沸することによって、ビーズに結合したFLAGタグ付タンパク質を溶出した。次いで、試料をSDS−PAGEに供し、銀染色またはウエスタンブロットによって検出した。
コンプリートプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Applied Science)を含有するRIPA様緩衝液またはCelLytic(商標)M Cell Lysis Reagent(Sigma−Aldrich)を用いて、細胞から全細胞ライセートを調製し、全タンパク質または免疫沈降試料をニトロセルロース膜に転写した。抗SMYD2(sc−79084,Santa Cruz Biotechnology)、抗Rb(sc−102,Santa Cruz Biotechnology)、抗ホスホ−Rb(セリン807/811)−R(sc−16670−R,Santa Cruz Biotechnology)、抗ホスホ−Rb(セリン780)(C84F6,Cell Signaling Technology,Denvers,MA)、抗HSP90(sc−13119,Santa Cruz Biotechnology)、抗ACTB(I−19,Santa Cruz Biotechnology)、抗FLAG(Sigma−Aldrich)、抗HA(Santa Cruz Biotechnology)、抗His(631212,Clontech Laboratories,Mountain View,CA)、抗HOP(Stressgen Bioreagents)、抗Cdc37(Santa Cruz Biotechnology)および抗p23(abcam)抗体で、膜をプローブした。抗モノメチル化HSP90AB1K574抗体は、Sigma−Aldrich製であった。西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗体(GE Healthcare,Little Chalfont,UK)と共にインキュベートし強化化学発光(GE Healthcare)で可視化することによってタンパク質バンドを検出した。抗モノメチル化RB1K810抗体は、Sigma−Aldrich製であった。MemCode(商標)Reversible Protein Stain Kit(24580,Thermo Fisher Scientific)によって、タンパク質バンドを検出した。
インビトロのメチル化アッセイでは、His−WT−RB1、His−K810A−RB1、His−HSP90AB1およびHis−SMYD2を上記のように使用した。1.0M Tris−HCl(pH8.8)、1.0マイクロ−Ci/mlL−[メチル−3H]メチオニン(Perkin Elmer)およびMilliQ水の中で、1マイクログラムのHSP90AB1 RB1を1マイクログラムのSMYD2と共に1時間インキュベートした。試料緩衝液中で煮沸した後、試料をSDS−PAGEに供し、続いてフルオログラフィーによって可視化した。
40mM MOPS(pH7.0)、1mM EDTA、20mM ATPを含有する反応緩衝液中、30℃で10分間にわたるキナーゼアッセイのために、CDK4/サイクリンD1(ab55695,Abcam,Cambridge,UK)を使用した。試料緩衝液中で煮沸した後、試料をSDS−PAGEに供した。
以前に記載されているように(Cho, H.S. et al. Cancer Res (2010))、インビボの標識を実施した。シクロヘキシミド(100マイクログラム/ml)およびクロラムフェニコール(40マイクログラム/ml)を含む無メチオニン培地で、細胞を1時間飢餓状態にさせた。次いで、それらをL−[メチル−3H]メチオニン(10マイクロ−Ci/ml、Perkin Elmer)で5時間標識した。抗HSP90抗体(Santa Cruz Biotechnology)を用いてFLAG−mock、SMYD2(WT)またはSMYD2(ΔNHSC/ΔGEEV)を免疫沈降し、メチル化HSP90をフルオログラフィーによって可視化した。
以前に記載されているように(Allan, R.K., Mok, D., Ward, B.K. & Ratajczak, T. J Biol Chem 281, 7161-7171 (2006))、インビトロの架橋アッセイを実施した。SMYD2の存在下または非存在下におけるインビトロのメチルトランスフェラーゼアッセイの後、HSP90AB1を94.7mM PBS(pH7.4)および10mM BS3(Thermo Scientific)と共に室温で30分間インキュベートした。1M Tris−HClを添加することによって、架橋反応を停止した。試料緩衝液中で煮沸した後、各反応混合物を、SDS−PAGE、および抗HSP90抗体(Santa Cruz Biotechnology)を使用するWBに供した。WBの後、ポンソーSによって膜を染色した。
HeLa細胞を、細胞5x105個の密度で100mmディッシュ上に播種した。翌日、細胞をsiSMYD2#2で処理した。siRNA処理の24時間後、細胞にpCAGGS−n3FC−HSP90AB1(WT)またはpCAGGS−n3FC−HSP90AB1(K531A/K574A)をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、EMEMを、L−フォト−ロイシンおよびL−フォト−メチオニン(Thermo Scientific)を含有するダルベッコ変法イーグル制限培地(DMEM−LM)(Thermo Scientific)と交換し、UV照射(Stratalinker(登録商標)UV Crosslinker,American Laboratory Trading,10800 J)に供した。次いで、細胞を回収し、全タンパク質(5マイクログラム)をニトロセルロース膜に転写し、続いて、SDS−PAGE、ならびに、抗FLAG(Sigma−Aldrich)、抗SMYD2(Santa Cruz Biotechnologies)および抗ACTB(Santa Cruz Biotechnologies)抗体を使用するWBを行った。上記のように、タンパク質バンドを検出した。
哺乳動物発現ベクターおよび大腸菌(E.coli)における組換えタンパク質用発現ベクターを構築するためのオリゴヌクレオチドをそれぞれ表3−1、表3−2および表4に記載する。
本発明者らは最初に、臨床膀胱試料の小サブセットにおいて多数のヒストンメチルトランスフェラーゼの発現レベルを調べ、正常細胞と癌細胞との間でSMYD2遺伝子の発現レベルに有意差があることを見出した。その結果として、膀胱癌試料125例および正常対照試料28例(イギリス人)を分析し、腫瘍細胞では、SMYD2発現が正常細胞と比較して有意に上昇していることを見出した(P<0.0001、マンホイットニーU検定)(図1Aおよび表5:患者の特徴)。膀胱腫瘍と様々な種類の正常組織との間のSMYD2発現レベルも比較し、膀胱腫瘍組織におけるSMYD2発現レベルは、心臓、肺、肝臓および腎臓を含む正常な器官組織のものよりも有意に高いことが見出された(図1B)。加えて、免疫組織化学により、SMYD2は、膀胱癌切片においてタンパク質レベルで過剰発現していることが示された(図1C)。さらに、Oncomineデータベースにより、SMYD2は、膀胱癌に加えて、大腸癌および前立腺癌のような様々な種類のヒト癌で過剰発現していることが実証された(図1F)。
SMYD2が癌細胞成長をどのように促進するのかを明らかにするために、本発明者らは、SMYD2の相互作用パートナーの同定を試みた。293T細胞にFLAG−mockまたはFLAG−SMYD2ベクターをトランスフェクトし、免疫沈降(IP)および質量分析(MS)分析を行った。その結果として、HSP90AB1をSMYD2の相互作用パートナーとして同定した(図3A)。HSP90タンパク質は、多くの癌タンパク質をシャペロニングしかつそれらの機能を促進することを介して、ヒト癌における重要な役割を果たすと考えられているので(Trepel, J., Mollapour, M., Giaccone, G. & Neckers, L. Nat Rev Cancer 10, 537-549 (2010))、SMYD2とHSP90AB1との間の機能的な関係を調べた。免疫共沈降分析によって、SMYD2とHSP90AB1との間の相互作用を確認した(図3Bおよび3C)。HSP90AB1に対するSMYD2の結合領域を決定するために、様々な割合のSMYD2を発現するように設計したプラスミドクローンをコトランスフェクトし、免疫共沈降分析を実施した(図3D)。次いで、SMYD2は、SETドメインの一部を含む中央領域を介してHSP90AB1に結合することが見出された(図3E)。SMYD2に対するHSP90AB1の結合領域に関しては、C末端領域がSMYD2との相互作用に重要であり得ることが見出された(図3Fおよび3G)。加えて、免疫細胞化学的分析により、それらは、細胞質で共局在していることが明らかになった(図3H)。これらの結果は、SMYD2がHSP90AB1と複合体を形成することを示している。
HSP90タンパク質は複数の翻訳後修飾(PTM)を受けることが公知であるが、メチル化に関する報告はない(Scroggins, B.T. et al. Mol Cell 25, 151-159 (2007), Martinez-Ruiz, A. et al. Proc Natl Acad Sci U S A 102, 8525-8530 (2005), Mollapour, M. et al. Mol Cell 37, 333-343 (2010), Mollapour, M. et al. Mol Cell 41, 672-681 (2011))。したがって、SMYD2がHSP90AB1をメチル化し、その機能に影響を与えることができるかを調べた。最初に、インビトロのメチルトランスフェラーゼアッセイを実施し、HSP90AB1がSMYD2によって用量依存的にメチル化されることを見出した(図4A)。次いで、本発明者らは、HSP90AB1が、細胞内でもSMYD2によってメチル化されるかを検証した。293T細胞にFLAG−mockベクター、FLAG−SMYD2(WT)ベクターまたはFLAG−SMYD2(ΔNHSC/ΔGEEV)をトランスフェクトし、続いて、実施例1に記載したようにインビボの標識実験を行った。その結果、メチル化HSP90AB1に対応する特異的シグナルが観察され、メチル化は、SMYD2の酵素活性に依存していた(図4B)。次に、HSP90AB1のどの部分がSMYD2によってメチル化されるかを決定するために、本発明者らは、組換えHSP90AB1タンパク質の欠失変異体をいくつか調製し、インビトロのメチルトランスフェラーゼアッセイを実施した(図4Cおよび図4H)。このデータにより、GST−HSP90AB1のC末端部分(500〜724aa)がSMYD2によってメチル化されることが明らかになった。続いて、本発明者らは、LC−MS/MS分析によってHSP90AB1のメチル化部位の同定を試み、リジン531および574がSMYD2によってメチル化されることを同定した(図4Dおよび4E)。K574をアラニンに置換することにより、SMYD2依存性のHSP90AB1メチル化のシグナルが減少し、K531およびK574の両方を置換したHSP90AB1タンパク質を使用すると、メチル化シグナルはより減少した(図4F)。この結果は、部分的なHSP90AB1(500〜724aa)を使用しても確認された(図4G)。これらのメチル化部位は、ダニオ・レリオからホモ・サピエンスまで高度に保存されているので、これらの部位のメチル化は、HSP90AB1機能の調節に重要であり得る可能性がある(図4I)。
本発明者らは次に、HSP90AB1機能に対するSMYD2依存性のメチル化の効果をより詳細に分析する。SMYD2のメチルトランスフェラーゼ反応の後、架橋試薬であるビス[スルホスクシンイミジル]スベレート(BS3)を使用して、二量体化アッセイを実施し、続いてSDS−PAGEおよびウエスタンブロットを行った。その結果、本発明者らは、HSP90AB1のメチル化依存性の二量体化を見出したが(図5F)、これは、SMYD2依存性のHSP90AB1がその二量体化形成を促進し得ることを暗示している。続いて、本発明者らは、SMYD2によるメチル化依存性の二量体化が培養細胞で観察されるかを検証した。内因性SMYD2の効果を排除するためにsiSMYD2処理した後、FLAG−HSP90AB1(WT)ベクターおよびHA−mockベクターまたはHA−SMYD2ベクターを293T細胞にコトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、インビボの架橋アッセイを実施し、SMYD2がHSP90AB1の架橋を促進することを見出した(図5A)。免疫共沈降分析により、二重置換(K531A/K574A)は、HSP90AB1の二量体化プロセスに負の影響を与えたことが示された(図5B、レーン5と6との間を比較されたい)。どちらの残基がこのプロセスにより重要であるかを決定するために、単一置換(それぞれK531A、K574A)を含有する変異体発現ベクターを調製し、HA−HSP90AB1のK531AではなくK574Aが、FLAG−HSP90AB1(WT)に対する親和性の低下をもたらしたことを見出した(図5C、レーン7と8との間を比較されたい)。この結果は、K574のメチル化がHSP90AB1の二量体化により重要であり得ることを示している。
Hisタグ付SMYD2(配列番号63のアミノ酸配列からなるHisタグ付ポリペプチド)を、メチルトランスフェラーゼ緩衝液(50mM Tris−HCl、100mM NaCl、4mM MgCl2、10mM DTT、pH8.8)中で、1.8マイクロMのビオチン化−ヒストンH4ペプチド、0.18マイクロMのS−アデノシル−L−[メチル−3H]メチオニンおよび50マイクログラムのストレプトアビジンコーティングPVTビーズと共に、総容量15マイクロリットルでインキュベートした。室温で30分間インキュベートした後、リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を添加することによって反応を停止させ、次いで、シンチレーションカウンタを使用して、ビーズから放出された光を測定する。
多数の化学合成した化合物を上記アッセイによって評価した結果、SMYD2のメチルトランスフェラーゼ活性を阻害するいくつかの化合物を同定した。
ヒトの発癌現象に関与する重要なSMYD2基質を同定するために、本発明者らは、様々な腫瘍関連タンパク質を基質として使用してインビトロのメチルトランスフェラーゼアッセイを実施し、RB1タンパク質を基質として使用した場合に強いメチル化シグナルを見出した(図6A)。RB1とSMYD2タンパク質との間の相互作用をさらに確認するために、本発明者らは、FLAG−SMYD2およびHA−RB1またはFLAG−RB1およびHA−SMYD2発現ベクターを293T細胞にコトランスフェクトした後に免疫共沈降アッセイを行い、それらの結合を確認した(図6BおよびC)。加えて、SMYD2の欠失変異体を使用する免疫沈降アッセイにより、SMYD2のC末端部分は、RB1と相互作用するために必須であることが示された(図6D)。さらに、本発明者らはまた、免疫細胞化学的分析によって、内因性のRB1およびSMYD2タンパク質が小細胞肺癌細胞株SBC5で共局在していることを確認した(図6E)。
リン酸化はRB1機能の調節において重要な役割を果たすことが周知であることから(Weinberg RA .Cell 81, 323-330(1995), Sherr CJ, et al.Cancer Cell 2, 103-112.(2002))、本発明者らは、RB1のリン酸化状態に対するリジン810のメチル化の効果を調べた。本発明者らは最初に、セリン807/811におけるRB1のリン酸化状態を調べるために、2種の非癌性細胞株および7種の癌細胞株のウエスタンブロット分析を実施し、RB1のより高いリン酸化状態と高SMYD2発現との間にある程度の相関関係を見出した(図8A)。SMYD2がリジン810のメチル化を介してRB1のリン酸化状態に影響を与えるかを明らかにするために、本発明者らは、機能獲得実験および機能喪失実験を行った。FLAG−SMYD2を293T細胞に導入した後、本発明者らは、セリン807/811におけるRB1のリン酸化状態が、mockベクターをトランスフェクトした細胞と比較して有意に上昇していることを検出した(図8B)。続いて、免疫細胞化学的分析により、HeLa細胞において、WT−SMYD2の過剰発現は、セリン807/811におけるRB1のリン酸化を促進したことが検出された(図8C)。それと一致して、セリン807/811におけるRB1のリン酸化は、SMYD2のノックダウン後に有意に減少した(図8D)。RB1のリン酸化状態に対するSMYD2のメチルトランスフェラーゼ活性の効果を調べるために、本発明者らは、部分的なRB1(FLAG−RB1(773〜813))を発現するように設計したベクターを、野生型SMYD2発現ベクター(HA−SMYD2)または酵素失活SMYD2発現ベクター(HA−SMYD2(ΔNHSC/GEEV))と共に293T細胞にトランスフェクトし、抗FLAG M2アガロースを使用して免疫沈降を行った。図7Eに示されているように、WT−SMYD2をトランスフェクトした細胞では、セリン807/811におけるRB1のリン酸化レベルは、酵素失活SMYD2を有する細胞のものよりも有意に高かった。したがって、SMYD2依存性のRB1メチル化は、セリン807/811におけるRB1のリン酸化状態を促進すると思われる。
インビボにおけるRB1のリン酸化状態に対するメチル化の効果をさらに評価するために、本発明者らは、FLAG−WT−RB1ベクターまたはFLAG−K810A−RB1ベクターを、HA−WT−SMYD2ベクターと共に293T細胞にトランスフェクトし、抗FLAG M2アガロースを用いて免疫沈降を行った(図10A)。先のデータと一致して、WT−RB1は、リジン810置換RB1(K810A−RB1)よりも高い、セリン807/811におけるRB1のリン酸化レベルを示し、この結果は、部分的なRB1(773〜813)を使用しても確認された(図10B)。総合すると、リジン810におけるRB1のメチル化はまた、RB1のリン酸化状態をインビボで促進するようである。
本発明者らは以前に、特定のヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)が、正常な細胞バイオロジーに加えて、ヒト癌の病因において重要な役割を果たすことを実証した(Hamamoto, R. et al. Nat Cell Biol 6, 731-740 (2004), Takawa, M. et al. Cancer Sci (2011), Yoshimatsu, M. et al. Int J Cancer 128, 562-573 (2011))。加えて、他のグループは、HMTがヒト細胞の悪性化に関与すると提唱している(Portela, A. & Esteller, M. Nat Biotechnol 28, 1057-1068 (2010), Schneider, R., Bannister, A.J. & Kouzarides, T. Trends Biochem Sci 27, 396-402 (2002), Sparmann, A. & van Lohuizen, M. Nat Rev Cancer 6, 846-856 (2006))。総合すると、この証拠は、HMTの調節解除がヒトの発癌現象に有意に寄与することを明確に示唆しているが、HMTの異常とヒト癌との間の関係についてのより深い理解は、依然として不明である。
本発明はまた、SMYD2と相互作用する遺伝子としてHSP90AB1およびRB1を同定した。したがって、本発明はまた、SMYD2およびHSP90AB1またはRB1を利用する新規な抗癌剤スクリーニング戦略を提供する。
本明細書において実証されたように、SMYD2によるRB1のメチル化は、RB1リン酸化の増加を介して細胞周期進行を促進した。したがって、本発明はまた、SMYD2によるRB1メチル化を介したRB1リン酸化を阻害する抗癌剤を同定するための新規なスクリーニング戦略を提供する。
本発明を、その特定の態様を参照して詳細に説明したが、上記の詳細は本来的には例示および説明のためのものであり、本発明およびその好ましい実施形態を例証することを意図するものと理解されるべきである。当業者であれば、ルーチンな実験によって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明において様々な変更および修正を行うことができることを容易に認識するであろう。したがって、本発明は、上記説明ではなく、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって規定されることを意図する。
Claims (33)
- 対象由来の生体試料におけるSMYD2遺伝子の発現レベルを決定する段階を含む、対象における癌を検出もしくは診断するかまたは癌を発症する素因を検出するための方法であって、前記遺伝子の正常対照レベルと比較した前記発現レベルの上昇が、前記対象が癌に罹患しているかまたは癌を発症するリスクを有することを示し、前記発現レベルが、以下からなる群より選択される任意の方法によって決定される、方法:
(a)SMYD2遺伝子のmRNAを検出すること;
(b)SMYD2遺伝子によってコードされるタンパク質を検出すること;および
(c)SMYD2遺伝子によってコードされるタンパク質の生物学的活性を検出すること。 - 前記上昇が、前記正常対照レベルよりも少なくとも10%大きい、請求項1に記載の方法。
- 前記対象由来の生体試料が、生検標本、唾液、痰、血液、血清、血漿、胸水または尿試料を含む、請求項1に記載の方法。
- 以下からなる群より選択される試薬を含む、対象における癌の存在または癌を発症する素因を検出または診断するためのキット:
(a)SMYD2遺伝子のmRNAを検出するための試薬;
(b)SMYD2遺伝子によってコードされるタンパク質を検出するための試薬、および
(c)SMYD2遺伝子によってコードされるタンパク質の生物学的活性を検出するための試薬。 - 前記試薬が、SMYD2遺伝子のmRNAに結合するプローブまたはプライマーセットである、請求項4に記載のキット。
- 前記試薬が、SMYD2遺伝子によってコードされるタンパク質に対する抗体または該タンパク質の断片に対する抗体である、請求項4に記載のキット。
- 前記生物学的活性が、細胞増殖促進活性またはメチルトランスフェラーゼ活性である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法、または請求項4〜6のいずれか一項に記載のキット。
- 以下の段階を含む、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)試験物質を、SMYD2ポリペプチドまたはSMYD2ポリペプチドの機能的等価物と接触させる段階;
(b)前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的等価物と前記試験物質との間の結合活性を検出する段階;および
(c)前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的等価物に結合する試験物質を選択する段階。 - 以下の段階を含む、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)試験物質を、SMYD2遺伝子を発現する細胞と接触させる段階;および
(b)SMYD2遺伝子の発現レベルを前記試験物質の非存在下の発現レベルと比較して低下させる試験物質を選択する段階。 - 以下の段階を含む、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)試験物質を、SMYD2ポリペプチドまたはSMYD2ポリペプチドの機能的等価物と接触させる段階;
(b)段階(a)のポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能的等価物の生物学的活性を検出する段階;および
(c)前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的等価物の生物学的活性を前記試験物質の非存在下で検出された生物学的活性と比較して抑制する試験物質を選択する段階。 - 前記生物学的活性が、細胞増殖促進活性またはメチルトランスフェラーゼ活性である、請求項10に記載の方法。
- 以下の段階を含む、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)試験物質を、SMYD2遺伝子の転写調節領域と前記転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とを含むベクターが導入された細胞と、接触させる段階、
(b)前記レポーター遺伝子の発現または活性レベルを測定する段階;および
(c)前記レポーター遺伝子の発現または活性レベルを前記試験物質の非存在下のレベルと比較して低下させる試験物質を選択する段階。 - 以下の段階を含む、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)SMYD2ポリペプチドまたはSMYD2ポリペプチドの機能的等価物を、メチル化されるべき基質と、前記基質のメチル化が可能な条件下において試験物質の存在下で接触させる段階;
(b)前記基質のメチル化レベルを検出する段階;および
(c)前記基質のメチル化レベルを前記試験物質の非存在下で検出されたメチル化レベルと比較して低下させる試験物質を選択する段階。 - 前記基質が、ヒストンタンパク質、または少なくとも1つのメチル化部位を含むヒストンタンパク質の断片である、請求項13に記載の方法。
- 前記ヒストンが、ヒストンH4またはヒストンH3である、請求項14に記載の方法。
- 前記基質が、HSP90AB1ポリペプチド、または少なくとも1つのメチル化部位を含むHSP90AB1ポリペプチドの断片である、請求項13に記載の方法。
- 前記メチル化部位が、配列番号65のリジン531および/またはリジン574である、請求項16に記載の方法。
- 前記基質が、RB1ポリペプチド、または少なくとも1つのメチル化部位を含むRB1ポリペプチドの断片である、請求項13に記載の方法。
- 前記メチル化部位が、配列番号68のリジン810である、請求項18に記載の方法。
- 以下の段階を含む、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)SMYD2ポリペプチドのHSP90AB1結合ドメインを含むポリペプチドを、HSP90AB1ポリペプチドのSMYD2結合ドメインを含むポリペプチドと、試験物質の存在下で接触させる段階;
(b)前記ポリペプチド間の結合を検出する段階;
(c)段階(b)で検出された結合レベルを前記試験物質の非存在下で検出されたものと比較する段階;および
(d)前記ポリペプチド間の結合を阻害する試験物質を、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質として選択する段階。 - 前記HSP90AB1結合ドメインを含むポリペプチドが、配列番号63の100位〜247位のアミノ酸残基を含む、請求項20に記載の方法。
- 前記SMYD2結合ドメインを含むポリペプチドが、配列番号65の500位〜724位のアミノ酸残基を含む、請求項20に記載の方法。
- 以下の段階を含む、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)SMYD2ポリペプチドのRB1結合ドメインを含むポリペプチドを、RB1ポリペプチドのSMYD2結合ドメインを含むポリペプチドと、試験物質の存在下で接触させる段階;
(b)前記ポリペプチド間の結合を検出する段階;および
(c)段階(b)で検出された結合レベルを前記試験物質の非存在下で検出されたものと比較する段階;および
(d)前記ポリペプチド間の結合を阻害する試験物質を、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質として選択する段階。 - 前記RB1結合ドメインを含むポリペプチドが、配列番号63の330位〜433位のアミノ酸残基を含む、請求項23に記載の方法。
- 前記SMYD2結合ドメインを含むポリペプチドが、配列番号68の773位〜813位のアミノ酸残基を含む、請求項23に記載の方法。
- 以下の段階を含む、癌を治療もしくは予防するかまたは癌細胞成長を阻害するための候補物質をスクリーニングする方法:
(a)試験物質を、SMYD2遺伝子およびRB1遺伝子を発現する細胞と接触させる段階;
(b)段階(a)のRB1ポリペプチドまたは該RB1ポリペプチドの機能的等価物のリン酸化レベルを検出する段階;および
(c)前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的等価物のリン酸化レベルを前記試験物質の非存在下で検出されたリン酸化レベルと比較して低下させる試験物質を選択する段階。 - RB1ポリペプチドのリン酸化レベルが、配列番号68のセリン807および/またはセリン811でリン酸化されたRB1に対する抗体によって検出される、請求項26に記載の方法。
- 以下の構成要素を含む、癌の治療および予防または癌細胞成長の阻害のいずれかまたは両方のための候補物質をスクリーニングするためのキット:
(a)SMYD2ポリペプチドまたはSMYD2ポリペプチドの機能的等価物;
(b)(i)〜(iii)からなる群より選択される構成要素
(i)ヒストンタンパク質、または少なくとも1つのメチル化部位を含むヒストンタンパク質の断片、
(ii)HSP90AB1ポリペプチドまたはHSP90AB1ポリペプチドの機能的等価物;
(iii)RB1ポリペプチドまたはRB1ポリペプチドの機能的等価物;
(c)(i)〜(iii)からなる群より選択される試薬;
(i)ヒストンタンパク質またはヒストンタンパク質の機能的等価物のメチル化レベルを検出するための試薬;
(ii)HSP90AB1ポリペプチドまたはHSP90AB1ポリペプチドの機能的等価物のメチル化レベルを検出するための試薬;
(iii)RB1ポリペプチドまたはRB1ポリペプチドの機能的等価物のメチル化レベルを検出するための試薬;および
(d)メチル供与体。 - 前記ヒストンタンパク質が、ヒストンH4またはヒストンH3である、請求項28に記載のキット。
- 段階(c)(i)の試薬が、メチル化ヒストンH4タンパク質またはメチル化ヒストンH3タンパク質に対する抗体である、請求項28に記載のキット。
- 段階(c)(ii)の試薬が、配列番号65のリジン531および/またはリジン574でメチル化されたHSP90AB1ポリペプチドに対する抗体である、請求項28に記載のキット。
- 段階(c)(iii)の試薬が、配列番号68のリジン810でメチル化されたRB1ポリペプチドに対する抗体である、請求項28に記載のキット。
- 前記メチル供与体が、S−アデノシルメチオニンである、請求項28〜32のいずれか一項に記載のキット。
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