JP2015229200A - 研磨パッド及びガラス板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ショアD硬度が50以上の研磨パッドを使用して研磨加工筋等の欠点を発生させることなく、安定した研磨レートでガラス板を研磨することができる研磨パッド及びガラス板の製造方法を提供する。【解決手段】ショアD硬度が50以上の研磨パッド10Aを使用する。研磨パッド10Aの複数本の第1の溝14は、同一方向のみに平行に備えられているので、ガラス板Gの被研磨面G2に第1の溝14のパターンは転写せず、研磨加工筋等の欠点は発生しない。研磨パッド10Aのランド部18に備えられた細溝20、22によって、スラリ中の研磨粒子の保持力が向上するので、研磨パッド10の浮き上がり量が減少する。この結果、研磨パッド10Aの周速を上げても、研磨粒子による研磨力をガラス板Gの被研磨面G2に安定して伝えることができるので、研磨レートが向上する。【選択図】図1
Description
本発明は、研磨パッド及びガラス板の製造方法に関する。
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等に使用されるFPD(Flat Panel Display)用のガラス板は、例えばフロート法と称される製法により溶融ガラスを板状に成形し、これを所定のサイズに切断した後、特許文献1、2等に開示された研磨装置によって、表面の微小な凹凸やうねりが研磨除去される。これらの工程を経ることにより、FPD用のガラス板として要求される平坦度を満足した薄板状のガラス板に製造される。
特許文献1には、1枚のガラス板を1枚の研磨パッドによって研磨するバッチ式の研磨装置が開示され、特許文献2には、ガラス板を搬送路に沿って搬送しながら、搬送路の上方に設置された複数の研磨パッドによって研磨する連続式の研磨装置が開示されている。
これらの研磨装置では、自転軸を中心に研磨パッドを回転させながら、公転軸を中心に研磨パッドを公転させてガラス板を研磨することが一般的に行われている。
また、研磨装置によるガラス板の研磨時には、コロイダルシリカ又は酸化セリウム等の研磨粒子が含有されたスラリを研磨パッドの研磨面に供給し、研磨の安定化を図っている。
一方、研磨パッドとしては、特許文献3に硬質のウレタン製の研磨パッドが開示されている。特許文献3の研磨パッドは、半導体ウェーハを研磨対象としているが、その研磨面に複数本の第1の溝が格子状に備えられるとともに、隣接する第1の溝の間のランド部に複数本の第2の溝が備えられている。第1の溝の溝幅は、研磨粒子を保持するために1mmであること、第2の溝の溝幅は、研磨パッドに適当な可撓性を与えるために0.1mmであることが特許文献3に開示されている。つまり、特許文献3の第2の溝は、研磨粒子を保持する機能を備えていないことが開示されている。
ショアD硬度が50以上の例えばウレタン製の研磨パッドは、硬度が50未満の研磨パッドと比較して、硬度が高いことから、つまり変位量が少ないことから、優れた平坦性を得ることができる。
そこで、特許文献3のウレタン製の研磨パッドを、ガラス板の研磨パッドとして使用した場合、ガラス板の被研磨面に研磨加工筋(欠点)が発生するという問題があった。この問題は、格子状の第1の溝に起因して発生したものであり、すなわち、格子状の第1の溝のパターン(形状、模様)がガラス板の被研磨面に転写することにより発生したものである。特に、連続式の研磨装置では、研磨の方向に指向性があるため、格子状の溝を備えることは、研磨加工筋の発生原因となる。
格子状の第1の溝のみでは、スラリを行き渡らせる能力、ないし排水性が低いと考えられるため、ガラス板に対し偏当たりが生じ、これに起因した研磨加工筋が発生するという問題がある。この問題は、特にD硬度が50以上の硬質研磨パッドに顕著に発生していた。
そこで、ショアD硬度が50以上の硬質の研磨パッドであって、一方向のみに平行な複数本の溝を備えた研磨パッドを使用すれば、研磨加工筋等の欠点を発生させることなく、ガラス板の被研磨面を平坦度よく加工できると考えられる。
しかしながら、この研磨パッドでは、研磨パッドの周速を上げると、研磨レートが不安定になり、研磨レートが低下するという現象が発生した。
研磨パッドの周速と研磨レートとは比例関係にあるので、一般的には周速を上げるに従い研磨レートも上がるが、前記研磨パッドでは、その逆の現象が発生した。この現象を検証した結果、研磨レートが低下する時に、ガラス板に対して研磨パッドが浮き上がり、いわゆる潤滑状態になることを確認した。なお、研磨圧を高めに設定すれば研磨パッドの浮き上がりを防止できるが、その研磨圧によってガラス板が破損する虞があるので得策ではない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ショアD硬度が50以上の研磨パッドを使用して研磨加工筋等の欠点を発生させることなく、研磨レートを向上させることができる研磨パッド及びガラス板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、前記目的を達成するために、ガラス板の被研磨面を研磨面によって研磨する研磨パッドにおいて、前記研磨パッドはショアD硬度が50以上であり、前記研磨面には、同一方向のみに平行な複数本の第1の溝と、隣接する2本の前記第1の溝の間の前記研磨面に備えられ、前記第1の溝よりも幅の狭い複数本の第2の溝と、が備えられていることを特徴とするガラス板の研磨パッドを提供する。
本発明の一態様によれば、ショアD硬度(JIS K6253 2012年)が50以上の研磨パッドを使用するので、ガラス板の被研磨面を平坦度よく加工できる。また、研磨パッドの複数本の第1の溝は、同一方向のみに平行に備えられているので、ガラス板の被研磨面に第1の溝のパターンは転写せず、研磨加工筋等の欠点は発生しない。更に、研磨パッドの研磨面に備えられた第2の溝によって、スラリ中の研磨粒子の保持力が向上するので、研磨パッドの浮き上がり量が減少する。この結果、研磨パッドの周速を上げても、研磨粒子による研磨力をガラス板の被研磨面に安定して伝えることができるので、研磨レートが向上する。更にまた、研磨粒子の保持力が向上するので、研磨圧を低圧に設定できる。これにより、高圧な研磨圧に起因するガラス板の損傷を防止できる。
本発明の一態様の研磨パッドは、複数本の第1の溝が同一方向のみに平行に備えられている形態なので、複数本の溝が格子状に備えられた、特許文献3の研磨パッドを発明の対象から除いている。特許文献3の研磨パッドは、格子状の溝のパターンがガラス板の被研磨面に転写して研磨加工筋が発生するので、被研磨面の品質が低下するが、本発明の研磨パッドでは、研磨加工筋は発生しないので、被研磨面の品質が向上する。
本発明の一態様は、前記研磨パッドの前記研磨面は、スラリ供給孔を備えることが好ましい。
本発明の一態様によれば、スラリ供給孔から供給されるスラリによって、研磨パッドの研磨面にスラリが行き渡る。
本発明の一態様は、前記第2の溝は、前記第1の溝と平行な方向に延在する溝を備えることが好ましい。
本発明の一態様によれば、第2の溝によって、研磨粒子の保持力が向上する。
本発明の一態様は、前記第2の溝は、前記第1の溝と交差する方向に延在する溝を備えることが好ましい。
本発明の一態様によれば、第2の溝によって、研磨粒子の保持力が向上する。また、第1の溝と平行な方向に延在する溝と、第1の溝と交差する方向に延在する溝との組み合わせによって、研磨粒子の保持力がより一層向上する。
本発明の一態様は、前記第2の溝の溝幅は0.1mm〜0.7mmであることが好ましい。
本発明の一態様によれば、第2の溝の溝幅が0.1mm以上なので研磨粒子を保持でき、また、第2の溝の溝幅が0.7mm以下なので研磨加工筋の発生を防止できる。この場合、第1の溝の溝幅は、1mm〜2mmであることが好ましい。
本発明の一態様は、前記研磨パッドは、ウレタン製であることが好ましい。
本発明の一態様によれば、研磨パッドとして実績のあるウレタン製の研磨パッドを提供できる。なお、研磨パッドの材質はウレタンに限定されるものではなく、ショアD硬度が50以上のポリアミド、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックでもよい。
本発明の一態様は、前記研磨パッドの研磨面は複数の分割研磨面に分割され、隣接する前記分割研磨面のそれぞれの前記第1の溝は、延在する方向が異なることが好ましい。
本発明の一態様によれば、方向の異なる複数の第1の溝からなる複合溝によって、ガラス板の被研磨面を研磨するので、研磨レートがより一層向上する。
本発明の一態様は、前記研磨パッドの研磨面は円形状であり、前記隣接する前記分割研磨面の境界部分が、前記研磨面の中心から放射状に沿った位置に配置されることが好ましい。
本発明の一態様によれば、研磨パッドの研磨面が円形状の場合には、隣接する分割研磨面の境界部分を、研磨面の中心から放射状に沿った位置に配置すればよい。
本発明の一態様は、前記隣接する前記分割研磨面の境界部分に沿って第3の溝が備えられ、前記研磨面の中心に、前記第3の溝に連通されたスラリ供給孔が備えられることが好ましい。
本発明の一態様によれば、研磨面の中心に備えられたスラリ供給孔から供給されたスラリは、研磨パッドの回転動作による遠心力により第3の溝を介して研磨面に行き渡る。
本発明は、前記目的を達成するために、本発明の研磨パッドを用いてガラス板の被研磨面を研磨する研磨工程を備えたことを特徴とするガラス板の製造方法を提供する。
本発明の一態様によれば、ガラス板の被研磨面に研磨加工筋等の欠点を発生させることなく、研磨レートを上げて被研磨面を平坦度よく加工できる。
本発明の一態様は、平均粒径が0.5〜1.5μmの研磨粒子を含有するスラリを用いて前記ガラス板を研磨することが好ましい。
本発明の一態様によれば、スラリ中の研磨粒子を第2の溝によって良好に保持できる。
以上説明したように本発明の研磨パッド及びガラス板の製造方法によれば、ショアD硬度が50以上の研磨パッドを使用して研磨加工筋等の欠点を発生させることなく、研磨レートを向上させることができる。
以下、添付図面に従って本発明に係る研磨パッド及びガラス板の製造方法の好ましい実施形態について説明する。
図1(A)は、実施形態の研磨パッド10Aの平面図であり、図1(B)は、図1(A)に示した研磨パッド10Aのa−a´線に沿う断面図である。図2(A)は、従来の研磨パッド100の平面図であり、図2(B)は、図2(A)に示した研磨パッド100のb−b´線に沿う断面図である。
研磨パッド10A、100の研磨面12、102は、ともに矩形状に構成されており、ショアD硬度が50以上のウレタン製である。また、研磨パッド10A、100の研磨面12、102には、ともに同一方向のみに平行な複数本の第1の溝14、104が備えられるとともに、所定の位置に複数のスラリ供給孔16、106が備えられている。なお、研磨面12、102は、矩形状に限定されるものではなく、円形状であってもよい。
研磨パッド10Aの研磨面12には、隣接する2本の第1の溝14、14の間に突起状のランド部18が形成されている。ランド部18の上面には、第1の溝14よりも幅の狭い第2の溝である細溝20、22が備えられている。これに対して、研磨パッド100の研磨面102のランド部108には、これらの細溝20、22は備えられていない。すなわち、研磨パッド10Aと研磨パッド100との構成の相違点は、細溝20、22を備えているか否かの点にある。
なお、図1、図2に示した研磨パッド10A、100は、研磨面12、102の特徴を分かり易く説明するために誇張して示したものである。
次に、本発明の着眼点について、図を用いて説明する。
図2に示した従来の研磨パッド100を自転させ、スラリを供給しながらガラス板Gを研磨した場合には、研磨パッド100の周速を上げてもガラス板の被研磨面の研磨レートが比例的に上がらない。この原因は、研磨パッド100が持つ研磨力がガラス板に効率よく伝達せず、何等かの現象が研磨力の伝達を阻害していると考えられる。
そこで、ガラス板の被研磨面に対する研磨パッド100の浮き上がり現象が、研磨力の伝達を阻害している、という推測を立て、検証実験を実施した。
図3は、検証実験機50の要部構成図である。
検証実験機50は、下定盤52に吸着シート54を介してガラス板Gの下面G1を吸着保持し、ガラス板Gの上面の被研磨面G2を、研磨パッド100の研磨面102によって研磨する装置である。研磨パッド100は、研磨面102がガラス板Gの被研磨面G2と対向するように自転及び公転する上定盤56に保持される。
検証実験機50の下定盤52に渦電流センサ58を、その検出面60を上に向けて取り付け、渦電流センサ58によって下定盤52と上定盤56との距離の変位を測定することで、ガラス板Gの被研磨面G2に対する研磨パッド100の研磨面102の浮き上がり量を測定した。
前記浮き上がり量とは、研磨パッド100が無回転(回転数が0rpm)のときに研磨パッド100とガラス板Gとを当接させたときの下定盤52の上面と上定盤56の下面との距離D0を基準にして、研磨パッド100の回転数を上げていったときの下定盤52と上定盤56との距離D1の変位D(D=D1−D0)をいう。また、検証実験機50によるガラス板Gの研磨時には、スラリが研磨パッド100に供給されている。
研磨パッド100の自転回転数に対する浮き上がり量の実験結果を図4のグラフに示す。図4の横軸は、研磨パッド100の自転回転数((Rotation Revolution)rpm:周速に相当)であり、縦軸は、ガラス板Gの被研磨面G2に対する研磨パッド100の研磨面102の浮き上がり量((Floating Amount)μm)を示している。また、前記自転回転数を一定にして、所定時間経過の浮き上がり量を、浮き上がり量として規定した。
図4のグラフの◇マークは、研磨パッド100を、ある所定の自転回転数、当該自転回転数を2倍、3倍、4倍したときの浮き上がり量であり、実線Aは各◇点を結んだ近似曲線である。実線Aに示すように、浮き上がり量は、研磨パッド100の自転回転数に比例して増加することを確認できた。
〔比較実験〕
そこで、浮き上がり量を抑制する研磨パッドとして、図1(A)、(B)の如く、ランド部18に微細な細溝20、22を備えた実施形態の研磨パッド10Aを製造し、その研磨パッド10Aでの浮き上がり量を比較するために、同様の実験を実施した。
そこで、浮き上がり量を抑制する研磨パッドとして、図1(A)、(B)の如く、ランド部18に微細な細溝20、22を備えた実施形態の研磨パッド10Aを製造し、その研磨パッド10Aでの浮き上がり量を比較するために、同様の実験を実施した。
その結果を図4のグラフに示す。図4のグラフの□マークは、研磨パッド10Aを、研磨パッド100と同様の所定の自転回転数、当該自転回転数を2倍、3倍、4倍したときの浮き上がり量であり、実線Bは各□点を結んだ近似曲線である。実線Bによれば、研磨パッド10Aの自転回転数に比例して浮き上がり量も増加していくが、実線Aで示した研磨パッド100の浮き上がり量と比較して、浮き上がり量が減少したことを確認できた。
また、実施形態の研磨パッド10Aと従来の研磨パッド100との研磨レートを比較した。その実験結果を図5のグラフの実線C、Dに示す。図5のグラフの横軸は研磨パッド10A、100の自転回転数(rpm)であり、縦軸は研磨レート((Polishing Rate)μm/min)である。また、実線Cが研磨パッド100のデータであり、実線Dが研磨パッド10Aのデータである。なお、実線Cは、各◇点を結んだ近似曲線であり、実線Dは、各□点を結んだ近似曲線である。
図5の実験結果に示すように、低周速領域においては、双方の研磨レートに差はないが、高周速領域では、研磨パッド10Aの研磨レートが、研磨パッド100の研磨レートと比較して増加したことを確認できた。
つまり、従来の研磨パッド100では、周速が上がるに従って、スラリに含有されている研磨粒子が、研磨パッド100の第1の溝104に確実に保持されなくなることから、浮き上がり量が増大していくことを実証できた。これによって、従来の研磨パッド100では、研磨粒子による研磨力(研磨パッド100の回転によって発生した研磨粒子による剪断力)をガラス板Gの被研磨面G2に効果的に伝達させることができず、研磨レートを上げることができないことを実証できた。
一方で、研磨粒子の保持を高めるために、溝を格子状に配置して溝の本数を増加させることが考えられる(例えば特許文献3の研磨パッド)。しかしながら、この研磨パッドでは、溝のパターン(形状)がガラス板の被研磨面に転写して研磨筋が発生するので、被研磨面の品質が低下してしまう。
これに対し、実施形態の研磨パッド10Aでは、ランド部18に備えた細溝20、22によって研磨粒子の保持力が向上するので、研磨パッド10Aの浮き上がり量が減少する。この結果、研磨粒子による研磨力をガラス板Gの被研磨面G2に効果的に伝達させることができるので、研磨レートが図5の実線Dの如く向上することを実証できた。
次に、研磨パッド10A、研磨パッド10Aによって研磨されるガラス板G、及び研磨パッド10Aを使用した研磨装置の一例を説明する。
〔研磨パッド10A〕
図1(A)、(B)に示したように、研磨パッド10Aの研磨面12には、同一方向のみに平行な複数本の第1の溝14と、第1の溝14の底面に設けられている複数のスラリ供給孔16と、細溝20、22とが備えられている。なお、スラリ供給孔16によって研磨パッド10Aの内部からスラリを供給するようにしたが、研磨パッド10Aの外部から研磨パッド10Aの内部にスラリを供給してもよい。
図1(A)、(B)に示したように、研磨パッド10Aの研磨面12には、同一方向のみに平行な複数本の第1の溝14と、第1の溝14の底面に設けられている複数のスラリ供給孔16と、細溝20、22とが備えられている。なお、スラリ供給孔16によって研磨パッド10Aの内部からスラリを供給するようにしたが、研磨パッド10Aの外部から研磨パッド10Aの内部にスラリを供給してもよい。
スラリ供給孔16は、直径が1mm未満の円形状であるが、直径は1mm未満に限定されるものではなく、形状も円形に限定されるものでもない。スラリ供給孔16から供給されたスラリは、第1の溝14に流入し、さらに研磨パッド10Aの自転及び公転により研磨面12の全面に行き渡る。
図6(A)は、研磨パッド10Aのランド部18の要部拡大斜視図であり、ランド部18に備えられた細溝20、22が示されている。
第1の溝14は、溝幅(w)1〜2mm、深さ(q)1〜2mm、ピッチ幅(p)4〜5mmである。これらの数値は、特に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
細溝20は、幅2〜4mmのランド部18の中央に第1の溝14と平行に備えられる。細溝20は、溝幅0.3mm〜0.5mm、深さ1〜2mm、ピッチ幅4〜5mmである。なお、細溝20は、ランド部18の中央に備えられている形態に限定されるものではなく、第1の溝14と平行に備えられていればよい。
細溝22は、第1の溝14と直交する方向に延在する溝であり、ランド部18の長手方向に沿って所望のピッチで複数本備えられている。
細溝22は、溝幅0.3mm〜0.5mm、深さ1〜2mm、ランド部18の長手方向におけるピッチ幅4〜5mmである。
細溝20、22においては、溝幅を0.3mm以上としたので研磨粒子を良好に保持でき、溝幅を0.5mm以下としたので研磨加工筋の発生を確実に防止できる。なお、溝幅を0.1mm以上とし、0.7mm以下としても、同様の効果を得ることができる。また、深さとピッチ幅の数値は、特に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。更に、細溝22の方向は、前記直交(第1の溝14と細溝22とが成す角度が90度)に限定されるものではなく、第1の溝14と交差(直交除く)する方向であってもよい。
図6(B)は、ランド部18に、細溝22のみが備えられた他の実施形態の研磨パッド10Bの要部拡大斜視図であり、細溝20が除外されていること以外は、図6(A)と同じである。
図6(C)は、ランド部18に、細溝24のみが備えられた他の実施形態の研磨パッド10Cの要部拡大斜視図であり、複数本の細溝24のランド部18の長手方向に沿ったピッチが、図6(B)の細溝22のピッチよりも狭いこと以外は、図6(A)と同じである。
図6(D)は、従来の研磨パッド100のランド部108の要部拡大斜視図であり、研磨パッド100は、研磨パッド10Aに対して細溝20、22を除いたものなので、説明は省略する。
〔ガラス板G〕
ガラス板Gは、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、及び有機ELディスプレイ等のFPD(Flat Panel Display)に使用される厚さの薄い(0.1〜2.5mm)ガラス板である。
ガラス板Gは、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、及び有機ELディスプレイ等のFPD(Flat Panel Display)に使用される厚さの薄い(0.1〜2.5mm)ガラス板である。
ガラス板Gは、溶融ガラスを帯状ガラス板に成形する成形工程、帯状ガラス板を所定サイズのガラス板に切断する切断工程、及びガラス板の表面を研磨する研磨工程を備えたガラス板製造工程における前記研磨工程にて、ガラス板Gの被研磨面G2が研磨パッド10Aにより研磨される。これによって、FPD用ガラス板として要求される平坦度を満足したガラス板Gに製造される。ガラス板Gの形状は矩形状であり、サイズとしては、第1世代(縦300mm×横400mm〜縦330mm×横450mm)から第10世代(縦2880mm×横3130mm)のものを例示できる。
〔研磨装置30の構成〕
図7は、研磨装置30の側面図である。
図7は、研磨装置30の側面図である。
この研磨装置30は、特許文献1に示したバッチ式の装置であるが、特許文献2に示した連続式の研磨装置であってもよい。連続式の研磨装置に配置される複数の研磨パッド10Aは、ガラス板の搬送方向に対して千鳥(zigzag)状に配置してもよく、搬送方向に沿って直線状に配置してもよい。
研磨装置30は、ガラス板Gの下面G1を不図示の吸着シートを介して保持するワーク定盤32、研磨パッド10Aが取り付けられた研磨定盤34、研磨定盤34を回転させる回転軸36、研磨パッド10Aのスラリ供給孔16にスラリを供給するスラリ供給部(Slurry Supply unit)38を備える。
回転軸36は、図示しない駆動手段により自転軸O1を中心に自転されるとともに、公転軸O2を中心に公転される。回転軸36の自転及び公転に伴って研磨定盤34が自転及び公転する。なお、研磨定盤34の回転は、公転のみであってもよい。また、円形状の研磨パッドの場合には、自転のみ又は自転及び公転してもよい。公転とは、研磨定盤34が公転軸O2の回りを円の軌道に沿って回る回転運動をいう。
スラリ供給部38は、研磨パッド10Aに設けられたスラリ供給孔16を介して、研磨パッド10Aの研磨面12とガラス板Gの被研磨面G2との間にスラリを供給する。スラリとしては、コロイダルシリカや酸化セリウム等の研磨粒子が含有されたものが用いられる。
研磨粒子の平均粒径は、一例として0.5μm〜1.5μmである。研磨粒子の平均粒径は、レーザー回析散乱法により測定された平均粒径をいう。レーザー回析散乱法による粉粒体測定装置としては、日機装株式会社製のレーザー回析散乱式粒子径分布測定装置(製品名:マイクロトラック)を使用した。
この研磨装置30によれば、ガラス板Gの被研磨面G2に研磨パッド10Aの研磨面12が押し付けられ、研磨パッド10Aの自転動作、公転動作、及び研磨粒子による研磨力が被研磨面G2に伝達されて、被研磨面G2が研磨される。
なお、連続式の研磨装置に矩形状の研磨パッド10Aを適用する場合には、ガラス板の搬送方向に沿って複数の研磨パッド10Aを配置し、これらの研磨パッド10Aを、公転軸を中心に公転させながらガラス板の被研磨面を研磨する。この場合、第1の溝14にスラリを流れ易くするために、研磨パッド10Aは、第1の溝14の方向が、ガラス板の搬送方向に対して直交する方向に配置される。連続式の研磨装置としては、複数の研磨パッド10Aのみを、ガラス板の搬送方向に沿って配列した装置でもよく、複数の研磨パッド10Aと単数又は複数の円形の研磨パッドとを組み合わせて、これらの研磨パッドをガラス板の搬送方向に沿って配列した装置でもよい(WO2011/4764号公報参照)。
〔研磨レートの比較実験結果〕
図7に示した研磨装置30に、図6(A)〜(D)に示した研磨パッド10A、10B、10C、100をそれぞれ取り付けて、ガラス板Gの被研磨面G2を研磨し、それぞれの研磨レートを比較した。その比較結果を図8に示す。
図7に示した研磨装置30に、図6(A)〜(D)に示した研磨パッド10A、10B、10C、100をそれぞれ取り付けて、ガラス板Gの被研磨面G2を研磨し、それぞれの研磨レートを比較した。その比較結果を図8に示す。
図8のグラフ及び表には、研磨開始から5分経過時の研磨レート、20分経過時の研磨レート、及びそれらの相対値が示されている。また、図8の符号10Aは、研磨パッド10Aの実績、符号10Bは研磨パッド10Bの実績、符号10Cは研磨パッド10Cの実績、符号100は研磨パッド100の実績である。
ここでは、図6(D)に示した研磨パッド100の5分経過時の研磨レートを「1(基準値)」として、他の研磨パッド10A、10B、10Cと相対的に比較する。また、研磨パッド100の20分経過時の研磨レートは約「0.5」であり、5分経過時の研磨レートと比較して約50%低下した。時間の経過に伴う研磨レートの低下は、研磨時に発生したガラス粉等の研磨屑が、ガラス板Gの被研磨面G2と研磨パッドの研磨面との間に堆積することによって生じるものである。研磨レートの大幅な低下を防止するため、研磨パッドは定期的(所定時間毎)に洗浄され、研磨レートの回復が行われる。
図8の如く研磨パッド10Aによれば、5分経過時の研磨レートが約「1.9」であり、20分経過時の研磨レートが約「1.3」であった。また、20分経過時の研磨レートを、5分経過時の研磨レートに対して68%維持することができた。
研磨パッド10Bによれば、5分経過時の研磨レートが約「1.5」であり、20分経過時の研磨レートが約「0.9」であった。また、20分経過時の研磨レートを、5分経過時の研磨レートに対して60%維持することができた。
研磨パッド10Cによれば、5分経過時の研磨レートが約「1.7」であり、20分経過時の研磨レートが約「1.0」であった。また、20分経過時の研磨レートを、5分経過時の研磨レートに対して59%維持することができた。
以上の比較実験結果に基づき、実施形態の研磨パッド10A、10B、10Cによれば、従来の研磨パッド100と比較して、大幅に研磨レートが向上することを確認できた。また、実施形態の研磨パッド10A、10B、10Cのうちでも、2方向に細溝20、22を備えた研磨パッド10Aが、他の研磨パッド10B、10Cと比較して好適であることを確認できた。この原因は、2方向に細溝20、22を備えることによって、研磨粒子の保持力がより一層高められたと考えられる。
〔研磨時における負荷電流値の比較〕
図9(A)は、研磨パッド100を使用した場合における、サーボモータの負荷電流値の変動を示したグラフであり、図9(B)は、研磨パッド10Aを使用した場合における、サーボモータの負荷電流値の変動を示したグラフである。横軸は経過時間(t)を示し、縦軸は負荷電流値(A)を示している。
図9(A)は、研磨パッド100を使用した場合における、サーボモータの負荷電流値の変動を示したグラフであり、図9(B)は、研磨パッド10Aを使用した場合における、サーボモータの負荷電流値の変動を示したグラフである。横軸は経過時間(t)を示し、縦軸は負荷電流値(A)を示している。
前記サーボモータとは、図7に示した研磨装置30において、回転軸36を回転させるモータである。サーボモータの負荷電流値と研磨レートとは比例関係にあり、負荷電流値が大きいことは、研磨レートが高いことを示している。また、図9(A)、(B)に示した各グラフは、間欠的に示されているが、これは、所定時間毎に研磨パッド10A、100を洗浄し、その後に研磨を再開していることを示している。
ここで、経験上において、良好な研磨レートで研磨されていると想定される負荷電流値をRef値と定め、Ref値に対するそれぞれの負荷電流値の変動を比較する。
研磨パッド100では、研磨開始直後から負荷電流値が急激に低下し、ほとんどの研磨時間帯において、Ref値以上を満足するのは短時間であった。
これに対して、研磨パッド10Aでは、研磨中において、負荷電流値は若干低下するが、ほとんどの研磨時間帯においてRef値以上を満足した。
図9の実験結果からでも、研磨パッド10Aを使用すれば、負荷電流値の変動が研磨パッド100よりも少ないため、安定した研磨レートでガラス板Gを研磨できることが実証できた。
〔他の実施形態の研磨パッド〕
図10は、他の実施形態の研磨パッド40を示した平面図である。
図10は、他の実施形態の研磨パッド40を示した平面図である。
同図に示す研磨パッド40の円形状の研磨面42は、同一サイズの4枚の分割研磨面42A、42B、42C、42Dに分割されて構成される。すなわち、分割研磨面42A〜42Dは、中心角が90度の扇形に構成され、研磨パッド40の円周方向に沿って配置されている。また、隣接する分割研磨面42A〜42Dの境界部分には、境界部分に沿って研磨面42の中心41を中心とする十字状のスラリ流路用溝(第3の溝)48A、48B、48C、48Dが備えられている。すなわち、前記境界部分は、研磨面42の中心41から放射状に沿った位置に配置され、スラリ流路用溝48A〜48Dは、研磨面42の中心41から放射状に配置される。スラリ流路用溝48A〜48Dには、スラリ供給孔16が所定の位置に配置され、研磨面42の中心41にもスラリ供給孔16が配置されている。
分割研磨面42A〜42Dの溝の構成は、図1に示した研磨パッド10Aの研磨面12と同一構成であり、第1の溝14と細溝20、22とを有している。また、隣接する分割研磨面42A〜42Dのそれぞれの第1の溝14は、延在する方向が異なるように配置されている。
図10の研磨面42によれば、分割研磨面42A〜42Dの各第1の溝14は、分割研磨面42A〜42Dの4本のスラリ流路用溝48A〜48Dに対して約45度の傾斜角を有し、かつ研磨パッド40の中心41から放射状に延びるように配置されている。
この研磨パッド40によれば、放射状に配置された方向の異なる複数の第1の溝14からなる複合溝によって、ガラス板Gの被研磨面G2を研磨するので、研磨レートがより一層向上する。また、研磨面42の中心のスラリ供給孔16から供給されたスラリは、他のスラリ供給孔16から供給されたスラリとともに、スラリ流路用溝48A〜48Dを介して研磨面42の全面に行き渡る。
図11は、他の実施形態の研磨パッド44を示した平面図である。
研磨パッド44の円形の研磨面46も同様に、同一サイズの4枚の分割研磨面46A、46B、46C、46Dに分割されて構成される。また、隣接する分割研磨面46A〜46Dの境界部分には、境界部分に沿って研磨面46の中心47を中心とする十字状のスラリ流路用溝48A、48B、48C、48Dが備えられている。スラリ流路用溝48A〜48Dには、スラリ供給孔16が所定の位置に配置され、研磨面46の中心47にもスラリ供給孔16が配置されている。
分割研磨面46A〜46Dの溝の構成も、図1に示した研磨パッド10Aの研磨面12と同一構成であり、第1の溝14と細溝20、22とを有している。また、図10の研磨パッド40と同様に、隣接する分割研磨面46A〜46Dにおいても、第1の溝14の方向が異なるように配置されている。
図11の研磨面46によれば、分割研磨面46Aの第1の溝14は、スラリ流路用溝48Aに対して直交する角度で配置され、分割研磨面46Bの第1の溝14は、スラリ流路用溝48Bに対して直交する角度で配置され、分割研磨面46Cの第1の溝14は、スラリ流路用溝48Cに対して直交する角度で配置され、分割研磨面46Dの第1の溝14は、スラリ流路用溝48Dに対して直交する角度で配置されている。すなわち、円周方向に隣接する分割研磨面46A〜46Dの各第1の溝14の方向が、互いに直交する方向に設定されている。
この研磨パッド44によっても、方向の異なる複数の第1の溝14からなる複合溝によって、ガラス板Gの被研磨面G2を研磨するので、研磨レートがより一層向上する。
また、研磨パッド44の自転方向は、図11において矢印Eで示す時計回り方向であることが好ましい。すなわち、図11の一点鎖線Fで示す第1の溝14の延在方向に対し、略直交する方向に研磨パッド10Aが自転するので、第1の溝14にスラリが流れ易くなるからである。
なお、図10、図11に示した研磨パッド40、44の第1の溝14にスラリ供給孔16を設けてもよい。また、図10、図11に示したスラリ流路用溝48A〜48Dは必須のものではないが、スラリ流路用溝48A〜48Dを備えれば、研磨面42、46の全面にスラリが行き渡り易くなるので、スラリ流路用溝48A〜48Dを備えることが好ましい。
なお、研磨面の分割は、円形の研磨パッド40、44に限定されるものではなく、図1に示した矩形状の研磨パッド10Aについても適用できる。この場合の分割方向は、研磨パッド10Aの長手方向に沿って分割してもよく、短手方向に分割してもよい。
そして、研磨パッド10Aを使用する研磨工程を備えたガラス板の製造方法によれば、ガラス板Gの被研磨面G2に研磨加工筋等の欠点を発生させることなく、研磨レートを上げて被研磨面G2を平坦度よく短時間で加工できる。
〔産業上の利用可能性〕
本発明の研磨パッドにおいては、ショアD硬度の下限値を50と定め、上限値を定めていないが、ガラス板の研磨に好適な硬度を考慮すれば、その上限値として80を例示する。
本発明の研磨パッドにおいては、ショアD硬度の下限値を50と定め、上限値を定めていないが、ガラス板の研磨に好適な硬度を考慮すれば、その上限値として80を例示する。
また、実施形態では、研磨パッドとして実績のある、ショアD硬度が50以上のウレタン製の研磨パッドを例示したが、研磨パッドの材質はウレタンに限定されるものではなく、ショアD硬度が50以上のポリアミド、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックでもよい。
G…ガラス板、G1…下面、G2…被研磨面、10A、10B、10C…研磨パッド、12…研磨面、14…第1の溝、16…スラリ供給孔、18…ランド部、20、22、24…細溝、30…研磨装置、32…ワーク定盤、34…研磨定盤、36…回転軸、38…スラリ供給部、40…研磨パッド、41…中心、42…研磨面、42A、42B、42C、42D…分割研磨面、44…研磨パッド、46…研磨面、46A、46B、46C、46D…分割研磨面、47…中心、48A、48B、48C、48D…スラリ流路用溝、50…検証実験機、52…下定盤、54…吸着シート、56…上定盤、58…渦電流センサ、100…研磨パッド、102…研磨面、104…第1の溝、106…スラリ供給孔
Claims (11)
- ガラス板の被研磨面を研磨面によって研磨する研磨パッドにおいて、
前記研磨パッドはショアD硬度が50以上であり、
前記研磨面には、同一方向のみに平行な複数本の第1の溝と、
隣接する2本の前記第1の溝の間の前記研磨面に備えられ、前記第1の溝よりも幅の狭い第2の溝と、
が備えられていることを特徴とする研磨パッド。 - 前記研磨パッドの前記研磨面は、スラリ供給孔を備える請求項1に記載の研磨パッド。
- 前記第2の溝は、前記第1の溝と平行な方向に延在する溝を備える請求項1又は2に記載の研磨パッド。
- 前記第2の溝は、前記第1の溝と交差する方向に延在する溝を備える請求項1、2又は3に記載の研磨パッド。
- 前記第2の溝の溝幅は0.1mm〜0.7mmである請求項1から4のいずれか1項に記載の研磨パッド。
- 前記研磨パッドは、ウレタン製である請求項1から5のいずれか1項に記載の研磨パッド。
- 前記研磨パッドの研磨面は複数の分割研磨面に分割され、隣接する前記分割研磨面のそれぞれの前記第1の溝は、延在する方向が異なる請求項1から6のいずれか1項に記載の研磨パッド。
- 前記研磨パッドの研磨面は円形状であり、前記隣接する前記分割研磨面の境界部分が、前記研磨面の中心から放射状に沿った位置に配置される請求項7に記載の研磨パッド。
- 前記隣接する前記分割研磨面の境界部分に第3の溝が備えられ、前記研磨面の中心に、前記第3の溝に連通されたスラリ供給孔が備えられる請求項7又は8に記載の研磨パッド。
- 請求項1から9のいずれか1項に記載の研磨パッドを用いてガラス板の被研磨面を研磨する研磨工程を備えたことを特徴とするガラス板の製造方法。
- 平均粒径が0.5〜1.5μmの研磨粒子を含有するスラリを用いて前記ガラス板を研磨する請求項10に記載のガラス板の製造方法。
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