JP2015223811A - 発泡樹脂成形品の製造方法およびその方法により製造された発泡樹脂成形品 - Google Patents

発泡樹脂成形品の製造方法およびその方法により製造された発泡樹脂成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】内部が繊維化された発泡樹脂成形品およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】物理発泡剤および熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融および混練し、固定型と可動型からなる金型内に射出した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性組成物を発泡させつつ成形する発泡樹脂成形品の製造方法であって、熱可塑性樹脂組成物の冷却速度19℃/秒での結晶化温度をTccf(℃)としたとき、コアバックを、熱可塑性樹脂組成物の温度がTccf−10℃〜Tccf+20℃であるときに開始する発泡樹脂成形品の製造方法、およびその方法により製造された発泡樹脂成形品。
【選択図】図1B

Description

本発明は、射出成形法に基づく発泡樹脂成形品の製造方法およびその方法により製造された発泡樹脂成形品、詳しくは内部が繊維化された繊維質発泡樹脂成形品の製造方法およびその方法により製造された繊維質発泡樹脂成形品に関する。
自動車の内装品および家電の筐体および部品などの分野では、様々な樹脂成形品が使用されている。このような樹脂成形品は、従来では内部が中実のものが主流であったが、最近では成形品の軽量化と消費原料の節約の観点から、内部にセル構造を有する発泡樹脂成形品に置き換わっている。
発泡樹脂成形品の製造方法としては、射出成形法に基づく方法が知られている。詳しくは、発泡剤および熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融および混練し、固定型と可動型からなる型内に射出した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性組成物を発泡させつつ成形する(特許文献1,2)。
特開2008−299201号公報 特開2012−20544号公報
一方、本発明の発明者等が成形品内部の繊維化に着目したところ、繊維化により、成形品のさらなる軽量化および消費原料のさらなる節約が達成されるだけでなく、柔軟性、断熱性、吸音性などの特性が成形品に付与されることが期待される。
しかしながら、上記のような従来の発泡樹脂成形品の製造方法においては、内部を繊維化することは不可能であった。詳しくは、従来の方法において各種条件を制御しても、セルの合一が進んでセル径が比較的大きな発泡体が得られたり、隣接するセル間のセル壁厚みが比較的大きな発泡体が得られるだけで、内部を密に繊維化することはできなかった。
本発明は、内部が繊維化された発泡樹脂成形品およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、物理発泡剤および熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融および混練し、固定型と可動型からなる金型内に射出した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性組成物を発泡させつつ成形する発泡樹脂成形品の製造方法であって、
熱可塑性樹脂組成物の冷却速度19℃/秒での結晶化温度をTccf(℃)としたとき、コアバックを、熱可塑性樹脂組成物の温度がTccf−10℃〜Tccf+20℃であるときに開始する発泡樹脂成形品の製造方法、およびその方法により製造された発泡樹脂成形品に関する。
本発明に係る発泡樹脂成形品の製造方法によれば、内部が繊維化された発泡樹脂成形品を製造できる。
本発明で使用される発泡射出成形装置の一例を示す概略図である。 本発明の発泡成形品のコアバック方向に対する垂直断面の一例を示す概略図である。 実施例1で得られた発泡樹脂成形品におけるコアバック方向に対して平行な断面写真であって、内部の繊維化を表す顕微鏡写真(SEM写真)である。 実施例1で得られた発泡樹脂成形品におけるコアバック方向に対して垂直な断面写真であって、内部の繊維化を表す顕微鏡写真(SEM写真)である。 実施例2で得られた発泡樹脂成形品におけるコアバック方向に対して平行な断面写真であって、内部の繊維化を表す顕微鏡写真(SEM写真)である。 実施例3で得られた発泡樹脂成形品におけるコアバック方向に対して平行な断面写真であって、内部の繊維化を表す顕微鏡写真(SEM写真)である。 実施例4で得られた発泡樹脂成形品におけるコアバック方向に対して平行な断面写真であって、内部の繊維化を表す顕微鏡写真(SEM写真)である。 比較例1で得られた発泡樹脂成形品におけるコアバック方向に対して平行な断面写真であって、内部のセル化を表す顕微鏡写真(SEM写真)である。 比較例1で得られた発泡樹脂成形品におけるコアバック方向に対して垂直な断面写真であって、内部のセル化を表す顕微鏡写真(SEM写真)である。
本発明に係る発泡樹脂成形品の製造方法を実施するのに適した発泡射出成形装置の一例として、図1Aに、発泡射出成形装置1の構成の概略全体図を示す。この装置1 は、シリンダ11及びスクリュー軸12が備えられたスクリューフィーダ10を有し、該フィーダ10の後端部(図1Aにおける右側)近傍に、原料を投入するためのホッパ13が設けられた構造を有している。前記スクリュー軸12の先端部には、チェックリング14及び円錐形状のヘッド15が設けられ、前記シリンダ11の先端部は該ヘッド15の形状に呼応して円錐形状に絞られており、その先端にはノズル16が設けられている。シリンダ11におけるホッパ13からノズル16までの間にはガスを供給するための高圧ガス供給装置17が設けられており、シリンダ11内の溶融混練物にガス状の物理発泡剤を供給できるようになっている。
前記シリンダ11の先端側には、金型装置20が配設されている。前記金型装置20は、固定型21と、該固定型21に対して移動可能とされた可動型22とからなる金型を有すると共に、可動型22を駆動させるための駆動機構(図示しない)を有している。金型装置20の固定型21と可動型22との間には、型締めされたときに成形品の形状となるキャビティ23が形成される。可動型22には、キャビティ23内に射出された熱可塑性樹脂組成物の温度および圧力を測定するための温度圧力センサー24および固定型21と可動型22を冷却するための冷却機構25が設けられている。前記固定型21には前記ノズル16が接続されていると共に、該ノズル16の接続部からキャビティ23に連通する通路(ホットランナー)21aが形成されている。
本発明に係る発泡樹脂成形品の製造方法は、溶融混練工程、射出工程およびコアバック工程を含む。
(溶融混練工程)
本工程は、物理発泡剤および熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融および混練する工程である。詳しくは、物理発泡剤以外の原料、例えば、後述する熱可塑性樹脂および添加剤等を図1Aの発泡射出成型装置1のホッパ13からシリンダ11内に投入し、溶融および混練を行いながら、高圧ガス供給装置17により物理発泡剤を注入する。
熱可塑性樹脂は、繊維化の観点から、物理発泡剤および熱可塑性樹脂などの発泡樹脂成形品を構成する全ての材料を含有する熱可塑性樹脂組成物が、該熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsにおいて1×10〜5×10Pa、特に1×10〜1×10Paの貯蔵弾性率を有するように選択されることが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsは以下の方法により測定することができる。
熱可塑性樹脂組成物を、融点以上の温度に加熱して10℃/分にて冷却したときの熱流−温度曲線を、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製)により求める。この熱流−温度曲線が吸熱ピークを示す温度を結晶化温度Tccs(℃)とする。
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsは好ましくは100〜220℃であり、より好ましくは100〜210℃である。熱可塑性樹脂が、後述するようにポリプロピレンの場合、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsは、さらに好ましくは100〜155℃である。
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsでの貯蔵弾性率は以下の方法により測定することができる。
熱可塑性樹脂組成物を融点以上の温度に加熱して2℃/分にて冷却するとき、Tccsでの貯蔵弾性率を回転式粘度計(レオメトリック社製)により測定する。
熱可塑性樹脂としては、90〜210℃、好ましくは90〜200℃の結晶化温度Tcpsを有し、かつ当該Tcpsにおいて1×10〜1×10Pa、好ましくは1×10〜5×10Paの貯蔵弾性率を有するポリマーが使用されることが好ましい。熱可塑性樹脂が、後述するようにポリプロピレンの場合、当該熱可塑性樹脂の結晶化温度Tcpsは、さらに好ましくは95〜135℃である。熱可塑性樹脂のTcpsが高すぎたり、上記温度での貯蔵弾性率が高すぎたりすると、隣接するセル間のセル壁厚みが比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。熱可塑性樹脂のTcpsが低すぎたり、上記温度での貯蔵弾性率が低すぎたりすると、セルの合一が進んでセル径が比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。
熱可塑性樹脂の結晶化温度Tcpsは、熱可塑性樹脂を加熱すること以外、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsと同様の方法により測定することができる。
熱可塑性樹脂のTcps(℃)での貯蔵弾性率は、熱可塑性樹脂を加熱すること、および貯蔵弾性率の測定温度をTcps(℃)とすること以外、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsでの貯蔵弾性率と同様の方法により測定することができる。
熱可塑性樹脂は、あらゆる種類のポリマーが使用され、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリ乳酸(PLA))などのポリエステル系樹脂、PA6、PA66、PA11、PA12、PA6T、PA9T、MXD6などのポリアミド系樹脂(PA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などのポリエーテル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)が使用される。Tcps、貯蔵弾性率および組成(種類)等が異なる2種類以上の熱可塑性樹脂が含有されてもよく、その場合、それらの混合樹脂における各熱可塑性樹脂がそれぞれ上記結晶化温度および貯蔵弾性率を有していることが好ましい。好ましい熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリアミド系樹脂(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)である。
物理発泡剤は、熱可塑性樹脂中において、物理的に発泡を起こすものであり、例えば、窒素ガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。
物理発泡剤の含有量は通常、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜3.0重量部であり、好ましくは0.1〜2.0重量部である。
熱可塑性樹脂組成物には、結晶核剤、補強用繊維等の添加剤をさらに含有させてもよい。繊維化の観点から、結晶核剤を含有させることが好ましい。
結晶核剤とは、弾性率などの機械特性の向上や成形サイクルタイムの短縮のための薬剤であり、自動車部品や家電部品の分野で使用されるあらゆる結晶核剤が使用可能である。
結晶核剤の具体例として、例えば、芳香族環含有ソルビトール系化合物および脂肪族環含有ソルビトール系化合物などのソルビトール系化合物が挙げられる。結晶核剤としては、ソルビトール系化合物が好ましく、芳香族環含有ソルビトール系化合物がより好ましい。結晶核剤は予め、熱可塑性樹脂とともに溶融混練および冷却されてなるペレットの形態で使用されることが好ましい。
芳香族環含有ソルビトール系化合物として、市販のゲルオールMD(新日本化学社製)、ゲルオールE−200(新日本化学社製)、RiKAFAST AC(新日本化学社製)が入手可能である。
結晶核剤の含有量は通常、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜1.0重量部であり、好ましくは0.3〜0.8重量部である。
溶融混練温度、すなわちシリンダ温度、は熱可塑性樹脂組成物が十分に溶融する限り特に制限されず、好ましくは、後述する熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfに対して、Tccf+70〜Tccf+130℃であり、より好ましくはTccf+80〜Tccf+120℃である。
(射出工程)
本工程は、溶融混練工程で得られた熱可塑性樹脂組成物の溶融物を金型内に射出する工程である。詳しくは、溶融物を、図1Aの発泡射出成型装置1のノズル16から固定型21と可動型22からなる金型内のキャビティ23に射出する。図1A中、キャビティ23は直方体形状を有しているが、これに限定されるものではなく、目的とする成形品形状に基づく所望の形状を有していればよい。
金型温度は、後述する熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfに対して、Tccf−70〜Tccf−20℃が好ましく、より好ましくはTccf−70〜Tccf−40℃である。
射出速度は特に限定されず、通常20〜200mm/秒であり、好ましくは30〜150mm/秒である。射出量は、キャビティ23が充満される量である。
キャビティ23の厚み方向の最大厚みは通常1〜10mmであり、好ましくは1〜5mmである。厚み方向とは、後述するコアバック工程における可動型22の移動方向、すなわちコアバック方向と平行な方向を意味する。
(コアバック工程)
本工程は、可動型22をコアバックさせることにより、射出工程で射出された溶融物を発泡させる工程である。詳しくは、熱可塑性樹脂組成物の溶融物を射出後、金型内で保圧し、特定のタイミングで可動型22をコアバックさせ、発泡を行う。コアバックとは、キャビティ23の体積を増大させるために、可動型22を固定型21とは反対方向に移動させることをいう。これにより、キャビティ23内の圧力が低減され、溶融物の発泡が促進される。
本工程において、コアバックは、熱可塑性樹脂組成物の冷却速度19℃/秒での結晶化温度をTccf(℃)としたとき、射出された熱可塑性樹脂組成物(溶融物)の温度がTccf−10〜Tccf+20℃、好ましくはTccf−5〜Tccf+20℃、好ましくはTccf〜Tccf+20℃であるときに開始する。このようなタイミングでコアバックを開始することにより、コアバック初期において、発泡によりセルを十分に形成しつつ、形成されたセルの合一を防止することができる。このため、コアバック初期に十分な数のセルの微分散が達成されるので、その後のコアバックにより、セル壁をコアバック方向に延伸させつつ、コアバック方向に対する垂直方向で破断させることができる。これらの結果として、繊維化が達成されるものと考えられる。コアバック開始温度が低すぎると、コアバック初期においてセルを十分に形成できないので、隣接するセル間のセル壁厚みが比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。コアバック開始温度が高すぎると、コアバック初期においてセルの合一が進むので、セル径が比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。
本発明において、コアバックのタイミングを、比較的遅い冷却速度で測定された結晶化温度に基づいて決定しても、十分な繊維化は達成されない。コアバック初期の十分な数のセルの微分散は、熱可塑性樹脂組成物の結晶化に基づくものと考えられる。そこで、例えば、100℃/分以下の冷却速度で測定された結晶化温度に基づいてコアバックのタイミングを表しても、冷却速度がコアバックを伴う発泡射出成形の実情に全く合っていないために、結晶化は十分に起こらず、結果として繊維化は十分に達成されないものと考えられる。
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfは以下の方法により測定することができる。
熱可塑性樹脂組成物を、融点以上の温度に加熱して19℃/秒にて冷却したときの熱流−温度曲線を、高速示差走査熱量計(METTLER TOLEDO社製)により求める。この熱流−温度曲線が吸熱ピークを示す温度を結晶化温度Tccf(℃)とする。
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfは好ましくは80〜190℃であり、より好ましくは80〜180℃である。熱可塑性樹脂がポリプロピレンの場合、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfは、さらに好ましくは80〜135℃である。
保圧時において、熱可塑性樹脂組成物の温度を温度圧力センサー24により観測しておくことにより、コアバック開始のタイミングを計ることができる。
保圧の圧力および保圧の時間は、コアバックを上記タイミングで開始できれば特に限定されない。保圧の圧力は通常、10〜80MPaであり、好ましくは20〜60MPaである。保圧の時間は通常、1〜10秒であり、好ましくは2〜7秒である。
コアバック開始時において、熱可塑性樹脂組成物中のセル径は、微細繊維化の観点から、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
コアバック開始時における熱可塑性樹脂組成物中のセル径は、コアバックさせないこと以外、本発明に係る発泡樹脂成形品の製造方法と同様の方法により、溶融混練工程および射出工程を実施した後、金型内において熱可塑性樹脂組成物の溶融物をそのまま冷却して得られた試料を用いて測定することができる。詳しくは、上記試料を、コアバック方向に対して垂直方向で切断し、得られた断面の顕微鏡写真を撮影する。当該写真において、スキン層から500μm以上離れた領域において、任意の100個のセルの直径(最大径)を測定し、最大値を求める。
コアバックさせる量は所定の発泡倍率が達成される量である。
発泡倍率は好ましくは1.1〜10倍であり、より好ましくは1.1〜5倍である。
コアバックにかける時間は通常、0.1〜2秒であり、好ましくは0.2〜1.5秒である。
本工程において金型温度は、射出工程時と同様の温度範囲内において維持することが好ましい。
(冷却工程)
コアバック完了後は、発泡体をそのまま金型内で保持することにより、冷却し、その後、金型を開いて発泡樹脂成形品を得ることができる。
(発泡樹脂成形品)
本発明の上記方法により製造された発泡樹脂成形品は、内部において、繊維化が達成されている。繊維化は、形成される繊維体がコアバック方向に対して略平行に配向するように達成される。
内部とは、成形品表面のスキン層から100μm以上、好ましくは200μm以上離れた領域である。
本発明において繊維化とは、セル壁がコアバック方向に延伸されつつ、コアバック方向に対する垂直方向で破断され、繊維体が形成されるという意味である。
繊維体は、発泡成形品のコアバック方向に対する垂直断面を示す図1Bに示されるように、繊維状物30だけでなく、セル壁が破断されてなる非環状のセル壁痕31および32を包含するものとし、破断されることなく残存する環状のセル壁33を包含するものではない。本発明において繊維状物30および非環状のセル壁痕31および32は、発泡成形品のコアバック方向に対する垂直断面において中実であり、中空のものではない。
本発明の発泡樹脂成形品は、内部の全てが必ずしも繊維化されていなければならないというわけではなく、例えば、図1Bに示されるように、一部に環状のセル壁33を有することを妨げるものではない。
本発明の発泡樹脂成形品は、繊維体が、発泡樹脂成形品のコアバック方向に対して垂直な断面において10μm以下、特に0.5〜10μm、好ましくは1〜10μmの平均径を有する。
繊維体の平均径は、発泡成形品をコアバック方向に対して垂直に切断した断面の顕微鏡写真から算出された値を用いている。詳しくは、当該写真において任意の100個の繊維体における繊維径を測定し、それらの平均値を求める。繊維体の繊維径は、繊維体が、図1Bに示すように、繊維状物30の場合は、最長径d1であり、繊維体が非環状セル壁痕31および32の場合は、当該セル壁痕の最大厚みd2、d3である。
本発明の発泡樹脂成形品は、発泡樹脂成形品のコアバック方向に対して垂直な断面において、繊維体の数が好ましくは40個/100μm以上、特に40〜2000個/100μmであり、より好ましくは100〜2000個/100μmである。
単位面積あたりの繊維体の数は、発泡成形品をコアバック方向に対して垂直に切断した断面の顕微鏡写真に基づく値を用いている。詳しくは、図1Bに示すように、任意の領域において繊維体30,31および32の総数を求め、当該総数を当該領域の面積で除することにより求める。本発明においては、10個の任意の領域における「単位面積あたりの繊維体の数」の平均値を用いている。
[実施例1]
(溶融混練工程)
熱可塑性樹脂としてのポリプロピレンペレット(プライムポリマー社製;MFR3g/10分(230℃)、Tcps112℃)100重量部および結晶核剤としてのゲルオールMD(新日本化学社製)3.0重量部を溶融混練および冷却して結晶核剤含有ポリプロピレンペレットを得た。結晶核剤含有ポリプロピレンペレットおよびポリプロピレンペレット(プライムポリマー社製)を、ポリプロピレン:結晶核剤の重量比率が100:0.5となる割合でドライブレンドし、図1Aの発泡射出成型装置1のホッパ13からシリンダ11内に投入した。これらの混合物をシリンダ11内で210℃にて溶融および混練しながら、高圧ガス供給装置17により物理発泡剤としての窒素ガスを熱可塑性樹脂100重量部に対して0.2重量部注入した。得られた熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度TccfおよびTccsを測定したところ、それぞれ97℃および129℃であり、Tccsでの貯蔵弾性率は1×10Paであった。
(射出工程)
シリンダ11内の溶融物を、固定型21および可動型22からなる金型間のキャビティ23内に射出した。金型温度は40℃(=Tccf−57℃)であり、射出速度は40mm/秒であり、キャビティの厚みは2mmであった。
(コアバック工程)
射出後、金型キャビティ内で溶融物を40MPaで5.0秒保圧した後、可動型22を8mmだけ0.4秒かけて固定型21とは反対方向にコアバックさせることにより、発泡させた。コアバック開始時において、溶融物の温度は116℃(=Tccf+19℃)であり、溶融物中のセル径は20μm以下であった。発泡倍率は5倍であった。本工程において金型は40℃(=Tccf−57℃)に維持した。
(冷却工程)
コアバック後、発泡体をそのまま40℃の金型内で保持することにより、冷却した。その後、金型を開いて発泡成形品を得た。
(断面撮影)
発泡成形品をコアバック方向に対して平行および垂直に切断し、それらの断面の顕微鏡写真を撮影した。平行断面の顕微鏡写真を図2Aに、垂直断面の顕微鏡写真を図2Bに示す。
[実施例2〜4および比較例1〜2]
表1に示す成形条件を採用したこと以外、実施例1と同様の方法により、発泡成形品を製造し、それらの断面を撮影した。
実施例2〜4で得られた発泡樹脂成形品におけるコアバック方向に対して平行な断面の顕微鏡写真(SEM写真)をそれぞれ図3〜図5に示す。
比較例1で得られた発泡樹脂成形品におけるコアバック方向に対して平行な断面の顕微鏡写真(SEM写真)を図6Aに、当該発泡樹脂成形品におけるコアバック方向に対して垂直な断面の顕微鏡写真(SEM写真)を図6Bに示す。
[測定]
溶融物の結晶化温度TccsおよびTccf、溶融物のTccs(℃)での貯蔵弾性率、熱可塑性樹脂の結晶化温度Tcps、熱可塑性樹脂のTcpsでの貯蔵弾性率、コアバック開始時における溶融物の温度、コアバック開始時における溶融物の貯蔵弾性率、コアバック開始時における溶融物中のセル径は、繊維体の平均径、繊維体の数を前記した方法により測定した。
なお、比較例においてセル壁の平均厚みは、コアバック方向に対して垂直な断面の顕微鏡写真(SEM写真)における任意の100点でのセル壁厚みの平均値である。
本発明に係る射出成形法に基づく発泡樹脂成形品の製造方法により製造される発泡樹脂成形品は、内部が繊維化されているため、衝撃吸収材、断熱材、吸音材として有用である。
30:繊維状物
31:32:非環状セル壁痕
33:環状セル壁

Claims (16)

  1. 物理発泡剤および熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融および混練し、固定型と可動型からなる金型内に射出した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性組成物を発泡させつつ成形する発泡樹脂成形品の製造方法であって、
    熱可塑性樹脂組成物の冷却速度19℃/秒での結晶化温度をTccf(℃)としたとき、コアバックを、熱可塑性樹脂組成物の温度がTccf−10℃〜Tccf+20℃であるときに開始する発泡樹脂成形品の製造方法。
  2. 熱可塑性樹脂組成物が、該熱可塑性樹脂組成物の冷却速度10℃/分での結晶化温度Tccsにおいて1×10〜5×10Paの貯蔵弾性率を有する請求項1に記載の方法。
  3. 熱可塑性樹脂組成物が結晶核剤をさらに含有する請求項1または2に記載の方法。
  4. 熱可塑性樹脂が、冷却速度10℃/分での結晶化温度Tcpsを90〜210℃に有し、かつTcpsにおいて1×10〜1×10Paの貯蔵弾性率を有するポリマーである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 熱可塑性樹脂組成物を金型内に射出した後、金型内で熱可塑性樹脂組成物を保圧し、可動型のコアバックを開始する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. コアバック開始時において金型内の熱可塑性樹脂組成物中のセル径が30μm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 発泡を1.1〜5倍の発泡倍率で行う請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 得られる発泡樹脂成形品が内部において繊維化されている請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 繊維化により繊維体が形成され、繊維体が、発泡樹脂成形品のコアバック方向に対して垂直な断面において10μm以下の平均径を有する請求項8に記載の方法。
  10. 繊維体が、繊維状物および非環状セル壁痕を含み、
    発泡樹脂成形品のコアバック方向に対して垂直な断面において、繊維体の数が40個/100μm以上である請求項9に記載の方法。
  11. 物理発泡剤および熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる発泡樹脂成形品であって、
    内部において繊維化されており、繊維化により形成された繊維体が、発泡樹脂成形品のコアバック方向に対して垂直な断面で10μm以下の平均径を有する発泡樹脂成形品。
  12. 熱可塑性樹脂組成物が、該熱可塑性樹脂組成物の冷却速度10℃/分での結晶化温度Tccsにおいて1×10〜5×10Paの貯蔵弾性率を有する請求項11に記載の発泡樹脂成形品。
  13. 繊維体が、繊維状物および非環状セル壁痕を含み、
    発泡樹脂成形品のコアバック方向に対して垂直な断面において、繊維体の数が40個/100μm以上である請求項11または12に記載の発泡樹脂成形品。
  14. 熱可塑性樹脂組成物が結晶核剤をさらに含有する請求項11〜13のいずれかに記載の発泡樹脂成形品。
  15. 熱可塑性樹脂が、冷却速度10℃/分での結晶化温度Tcpsを90〜210℃に有し、かつTcpsにおいて1×10〜1×10Paの貯蔵弾性率を有するポリマーである請求項11〜14のいずれかに記載の発泡樹脂成形品。
  16. 請求項11〜15のいずれかに記載の発泡樹脂成形品であって、請求項1〜10に記載の方法により製造された発泡樹脂成形品。
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