JP6872856B2 - 発泡樹脂成形品の製造方法および発泡樹脂成形品 - Google Patents

発泡樹脂成形品の製造方法および発泡樹脂成形品 Download PDF

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Description

本発明は、発泡樹脂成形品の製造方法および発泡樹脂成形品に関する。
自動車の内装品および家電の筐体および部品などの分野では、様々な樹脂成形品が使用されている。このような樹脂成形品は、従来では内部が中実のものが主流であったが、最近では成形品の軽量化と消費原料の節約の観点から、内部にセル構造を有する発泡樹脂成形品に置き換わっている。
発泡樹脂成形品の製造方法としては、射出成形法に基づく方法が知られている。詳しくは、発泡剤および熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融および混練し、固定型と可動型からなる型内に射出した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性組成物を発泡させつつ成形する(特許文献1,2)。特に、特許文献1においては、直径1〜60μmの繊維状物質を含有させる技術が開示されている。
一方、成形品内部において発泡とともに繊維化することにより、成形品のさらなる軽量化および消費原料のさらなる節約を達成する技術が開示されている(特許文献3)。
特開2008−299201号公報 特開2012−20544号公報 特開2015−223811号公報
本発明の発明者等は、従来の発泡樹脂成形品では、吸音性、特に高周波音および中周波音に対する吸音性、が十分ではないことを見い出した。
本発明は、吸音性、特に高周波音および中周波音に対する吸音性、が十分に優れた発泡樹脂成形品およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、
発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂およびナノ繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物を、固定型と可動型からなる金型内に充填した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性樹脂組成物を溶融状態で発泡させつつ成形する発泡樹脂成形品の製造方法に関する。
本発明はまた、
発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂およびナノ繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる発泡樹脂成形品に関する。
本発明の発泡樹脂成形品は、吸音性、特に高周波音および中周波音に対する吸音性、が十分に優れている。
本発明で使用される発泡射出成形装置の一例を示す概略図である。 本発明の発泡成形品が繊維質発泡樹脂成形品である場合のコアバック方向に対する垂直断面の一例を示す概略図である。 実施例および比較例で得られた発泡樹脂成形品の吸音性の評価結果を示すグラフである。 実施例および比較例で得られた発泡樹脂成形品の吸音性の評価結果を示すグラフである。 実施例1の発泡樹脂成形品のコアバック方向に対する平行断面の顕微鏡写真(SEM)を示す。
[発泡樹脂成形品の製造方法]
本発明の発泡樹脂成形品(以下、単に「成形品」ということがある)の製造方法においては、発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂およびナノ繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物を、固定型と可動型からなる金型内に充填した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性樹脂組成物を溶融状態で発泡させつつ成形する。以下、その中でも特に射出成形法を採用する場合について説明するが、熱可塑性樹脂組成物を単に充填して発泡成形する方法においても、ナノ繊維を用いる限り、本発明の効果が得られることは明らかである。本発明の方法で製造される成形品は内部で連続気泡を有していてもよいし、または繊維化されていてもよい。
本発明に係る成形品の製造方法を実施するのに適した発泡射出成形装置の一例として、図1に、発泡射出成形装置1の構成の概略全体図を示す。この装置1 は、シリンダ11及びスクリュー軸12が備えられたスクリューフィーダ10を有し、該フィーダ10の後端部(図1における右側)近傍に、原料を投入するためのホッパ13が設けられた構造を有している。前記スクリュー軸12の先端部には、チェックリング14及び円錐形状のヘッド15が設けられ、前記シリンダ11の先端部は該ヘッド15の形状に呼応して円錐形状に絞られており、その先端にはノズル16が設けられている。シリンダ11におけるホッパ13からノズル16までの間にはガスを供給するための高圧ガス供給装置17が設けられており、シリンダ11内の溶融混練物にガス状の物理発泡剤を供給できるようになっている。
前記シリンダ11の先端側には、金型装置20が配設されている。前記金型装置20は、固定型21と、該固定型21に対して移動可能とされた可動型22とからなる金型を有すると共に、可動型22を駆動させるための駆動機構(図示しない)を有している。金型装置20の固定型21と可動型22との間には、型締めされたときに成形品の形状となるキャビティ23が形成される。可動型22には、キャビティ23内に射出された熱可塑性樹脂組成物の温度および圧力を測定するための温度圧力センサー24および固定型21と可動型22を冷却するための冷却機構25が設けられている。前記固定型21には前記ノズル16が接続されていると共に、該ノズル16の接続部からキャビティ23に連通する通路(ホットランナー)21aが形成されている。
本発明に係る成形品の製造方法は、溶融混練工程、射出工程およびコアバック工程を含む。
(溶融混練工程)
本工程は、発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂およびナノ繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融および混練する工程である。詳しくは、原料、例えば、発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂、ナノ繊維およびその他の添加剤等を図1の発泡射出成型装置1のホッパ13からシリンダ11内に投入し、溶融および混練を行う。発泡剤として特に物理発泡剤を用いる場合は、溶融および混練を行いながら、高圧ガス供給装置17により物理発泡剤を注入してもよい。
マトリクス用熱可塑性樹脂は、成形品内部の気泡形成の観点からは、熱可塑性を有するポリマーである限り特に限定されない。
成形品内部の繊維化の観点からは、マトリクス用熱可塑性樹脂は、発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂およびナノ繊維などの成形品を構成する全ての材料を含有する熱可塑性樹脂組成物が、該熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsにおいて1×10〜5×10Pa、特に1×10〜1×10Paの貯蔵弾性率を有するように選択されることが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsは以下の方法により測定することができる。
熱可塑性樹脂組成物を、融点以上の温度に加熱して10℃/分にて冷却したときの熱流−温度曲線を、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製)により求める。この熱流−温度曲線が吸熱ピークを示す温度を結晶化温度Tccs(℃)とする。
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsは、成形品内部の繊維化の観点からは、好ましくは100〜220℃であり、より好ましくは100〜210℃である。マトリクス用熱可塑性樹脂が、後述するようにポリプロピレンの場合、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsは、さらに好ましくは100〜155℃である。
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsでの貯蔵弾性率は以下の方法により測定することができる。
熱可塑性樹脂組成物を融点以上の温度に加熱して2℃/分にて冷却するとき、Tccsでの貯蔵弾性率を回転式粘度計(レオメトリック社製)により測定する。
マトリクス用熱可塑性樹脂としては、成形品内部の繊維化の観点からは、90〜210℃、好ましくは90〜200℃の結晶化温度Tcpsを有し、かつ当該Tcpsにおいて1×10〜1×10Pa、好ましくは1×10〜5×10Paの貯蔵弾性率を有するポリマーが使用されることが望ましい。マトリクス用熱可塑性樹脂が、後述するようにポリプロピレンの場合、当該マトリクス用熱可塑性樹脂の結晶化温度Tcpsは、さらに好ましくは95〜135℃である。マトリクス用熱可塑性樹脂のTcpsが高すぎたり、上記温度での貯蔵弾性率が高すぎたりすると、隣接するセル間のセル壁厚みが比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。マトリクス用熱可塑性樹脂のTcpsが低すぎたり、上記温度での貯蔵弾性率が低すぎたりすると、セルの合一が進んでセル径が比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。成形品内部の気泡形成の観点からは、マトリクス用熱可塑性樹脂の結晶化温度および当該温度での貯蔵弾性率は特に限定されない。
マトリクス用熱可塑性樹脂の結晶化温度Tcpsは、当該熱可塑性樹脂を加熱すること以外、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsと同様の方法により測定することができる。
マトリクス用熱可塑性樹脂のTcps(℃)での貯蔵弾性率は、当該熱可塑性樹脂を加熱すること、および貯蔵弾性率の測定温度をTcps(℃)とすること以外、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsでの貯蔵弾性率と同様の方法により測定することができる。
マトリクス用熱可塑性樹脂は、あらゆる種類のポリマーが使用され、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリ乳酸(PLA))などのポリエステル系樹脂、PA6、PA66、PA11、PA12、PA6T、PA9T、MXD6などのポリアミド系樹脂(PA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などのポリエーテル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)が使用される。成形品内部の繊維化の観点からは、Tcps、貯蔵弾性率および組成(種類)等が異なる2種類以上のマトリクス用熱可塑性樹脂が含有されてもよく、その場合、それらの混合樹脂における各マトリクス用熱可塑性樹脂がそれぞれ上記結晶化温度および貯蔵弾性率を有していることが好ましい。好ましいマトリクス用熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリアミド系樹脂(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)である。
マトリクス用熱可塑性樹脂のメルトフローレートは特に限定されず、例えば、3〜200g/分(230℃)であってもよい。吸音性のさらなる向上の観点からは、マトリクス用熱可塑性樹脂のメルトフローレートは好ましくは10〜100g/分(230℃)、より好ましくは20〜50g/分(230℃)である。
本明細書中、メルトフローレートは230℃での値であり、JIS K 7210に基づいて測定された値を用いている。
発泡剤としてはマトリクス用熱可塑性樹脂の発泡機能を有するあらゆる物質が使用可能であり、例えば物理発泡剤および化学発泡剤が挙げられる。成形品内部の繊維化の観点からは物理発泡剤が好ましい。成形品内部の気泡形成の観点からは、発泡剤は特に限定されない。
物理発泡剤は、マトリクス用熱可塑性樹脂中において、物理的に発泡を起こすものであり、例えば、窒素ガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。
化学発泡剤は、マトリクス用熱可塑性樹脂の分野で従来から化学発泡剤として使用されているあらゆる物質が使用可能である。
発泡剤、特に物理発泡剤の含有量は通常、マトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜3.0重量部であり、好ましくは0.1〜2.0重量部である。
ナノ繊維とは直径がナノオーダーの繊維のことである。ナノ繊維を含有することにより、吸音性(高周波音および中周波音に対する吸音性)が向上する。特に高周波音に対する吸音性は著しく向上する。
ナノ繊維の平均径は通常、1nm以上1000nm未満であり、吸音性のさらなる向上の観点からは好ましくは1〜500nm、より好ましくは1〜100nmである。
ナノ繊維の平均長は通常、10〜500μmであり、吸音性のさらなる向上の観点からは好ましくは50〜500μm、より好ましくは100〜500μmである。
ナノ繊維の平均径および平均長は顕微鏡写真(SEM)から測定された任意の100本の値の平均値を用いている。
ナノ繊維の種類は特に限定されるものではなく、例えば、有機系ナノ繊維、無機系ナノ繊維またはこれらの混合物であってもよい。有機系ナノ繊維は、有機化合物から形成されたナノ繊維であり、例えば、セルロースナノ繊維、キチン・キトサンナノ繊維、および他の有機高分子ナノ繊維が挙げられる。無機系ナノ繊維は、無機化合物から形成されたナノ繊維であり、例えば、ガラスナノ繊維、カーボンナノ繊維、アルミナナノ繊維、二酸化チタンナノ繊維、酸化ニッケルナノ繊維、シリカナノ繊維が挙げられる。吸音性のさらなる向上の観点から好ましいナノ繊維は有機系ナノ繊維、特にセルロースナノ繊維である。有機系ナノ繊維を構成する有機化合物の融点は通常、170〜300℃であり、好ましくは240〜280℃である。マトリクス樹脂の融点より高いものを選択することが好ましい。
ナノ繊維は、吸音性のさらなる向上の観点から、マスターバッチの形態で使用されることが好ましい。マスターバッチとは、添加剤の使用形態(状態)を表す技術用語であり、添加剤をそのまま使用するのではなく、添加剤を予め熱可塑性樹脂とともに溶融および混練し、固化および粉砕により得られる予備混合物の形態のことである。ナノ繊維マスターバッチはナノ繊維がナノ繊維用熱可塑性樹脂中に分散されている混合物である。
ナノ繊維マスターバッチを構成するナノ繊維用熱可塑性樹脂はマトリクス用熱可塑性樹脂のメルトフローレート以上のメルトフローレートを有することが好ましい。中周波音に対する吸音性がより一層、向上し、低周波音に対する吸音性も向上するためである。このような効果が得られるメカニズムの詳細は明らかではないが、上記メルトフローレートを有するナノ繊維用熱可塑性樹脂を用いると、各ナノ繊維が十分に分散されて、成形品内部でナノ繊維が突出するため、当該突出ナノ繊維が吸音に寄与するものと考えられる。例えば、成形品内部が繊維化される場合、図5に示すように熱可塑性樹脂組成物の繊維の表面からナノ繊維が突出する。また例えば、成形品内部で気泡が形成される場合は、当該気泡の内側表面から、当該気泡内に向けて、ナノ繊維が突出しているものと考えられる。ナノ繊維の突出とは、成形品の内部において、上記のように、熱可塑性樹脂組成物の繊維の表面または気泡の内側表面から、ナノ繊維が伸び出ることをいう。
ナノ繊維用熱可塑性樹脂のメルトフローレートMFRnは、マトリクス用熱可塑性樹脂のメルトフローレートをMFRbとしたとき、ナノ繊維の突出による吸音性のさらなる向上の観点から、好ましくは以下の関係式(1)を満たし、より好ましくは関係式(1’)、さらに好ましくは関係式(1’’)を満たす。
MFRb≦MFRn≦MFRb+50 (1)
MFRb≦MFRn≦MFRb+30 (1’)
MFRb≦MFRn≦MFRb+10 (1’’)
ナノ繊維用熱可塑性樹脂のメルトフローレートは通常、3〜250g/分(230℃)であり、好ましくは10〜150g/分(230℃)、より好ましくは10〜50g/分(230℃)である。
ナノ繊維用熱可塑性樹脂の種類としては通常、マトリクス用熱可塑性樹脂と同様のポリマーの範囲内から選択される。ナノ繊維の突出による吸音性のさらなる向上の観点から好ましいナノ繊維用熱可塑性樹脂は、マトリクス用熱可塑性樹脂と同じ種類のポリマーである。
ナノ繊維マスターバッチ中、ナノ繊維は当該マスターバッチ全量に対して通常は1〜30重量%の量で分散されており、成形品内部でのナノ繊維の突出の観点から好ましくは3〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%の量で分散されている。
ナノ繊維マスターバッチを製造する際の溶融混錬温度は通常、ナノ繊維用熱可塑性樹脂の融点以上であれば特に限定されず、特にナノ繊維が有機系ナノ繊維の場合には、ナノ繊維の融点以下の温度であればよい。
ナノ繊維マスターバッチの平均粒径は通常、0.1〜10mmである。
ナノ繊維マスターバッチの平均粒径は、任意の100個のマスターバッチ粒子を選択し、各粒子における最大径を粒径として測定された値の平均値である。
ナノ繊維の含有量は通常、熱可塑性樹脂組成物(成形品)全量に対して0.1重量%以上、特に0.1〜10重量%であり、吸音性のさらなる向上の観点から好ましくは0.5〜5重量%である。ここでいうナノ繊維の含有量とはナノ繊維単独の含有量である。ナノ繊維マスターバッチを使用する場合は、上記組成物(成形品)に対するナノ繊維単独の含有量が上記範囲内になるように、当該マスターバッチを使用すればよい。ナノ繊維の含有量が少なすぎると、吸音性が低下する。
熱可塑性樹脂組成物には、結晶核剤等の添加剤をさらに含有させてもよい。成形品内部の繊維化の観点から、結晶核剤を含有させることが好ましい。成形品内部の気泡形成の観点からは、結晶核剤は含有させてもよいし、または含有させなくてもよい。
結晶核剤とは、熱溶融および冷却することにより、かつ/または溶融混錬およびせん断流動を与えることにより、自己組織化による三次元網目構造を形成し得る有機化合物のことである。このような結晶核剤を熱可塑性樹脂に添加して熱溶融および冷却、かつ/または溶融混錬およびせん断流動に供することにより、熱可塑性樹脂の微細で均一な結晶の成長が促進される。これに伴い、結晶化により生成する気泡も微細化されるため、コアバック式発泡射出成形時において当該気泡が起点となり、より一層、微細な繊維化が達成される。
結晶核剤としては、自動車部品や家電部品の分野で使用されるあらゆる結晶核剤が使用可能である。結晶核剤は繊維化の観点から有機系結晶核剤が好ましく使用される。有機系結晶核剤の具体例としては、例えば、ソルビトール系化合物、特に芳香族環含有ソルビトール系化合物および脂肪族環含有ソルビトール系化合物など、が挙げられる。結晶核剤としては、ソルビトール系化合物が好ましく、芳香族環含有ソルビトール系化合物がより好ましい。
芳香族環含有ソルビトール系化合物の好ましい具体例として、一般式(1)で表されるソルビトール系化合物が挙げられる。
Figure 0006872856
式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシカルボニル基、またはハロゲン原子である。RおよびRの、ベンゼン環における結合位置は特に限定されず、それぞれ独立して、例えば、オルト位、メタ位およびパラ位であってよい。ベンゼン環におけるRおよびRの結合位置は、それぞれ独立して、後述するmが1のときはパラ位が好ましく、mが2のときはメタ位およびパラ位が好ましい。
好ましいRおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、または直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)であり、より好ましくは直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)である。
は、水素原子、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数2〜4のアルケニル基、または直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のヒドロキシアルキル基である。
好ましいRはそれぞれ独立して、水素原子、または直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)であり、より好ましくは水素原子である。
mおよびnはそれぞれ独立して、1〜5の整数であり、好ましくは1または2である。mが2以上の整数のとき、2つのRは互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成してもよい。nが2以上の整数のとき、2つのRは互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成してもよい。
pは0または1であり、好ましくは1である。
芳香族環含有ソルビトール系化合物として、市販のゲルオールMD(新日本化学社製)(式(1)において、R=R=メチル基(m=n=1でパラ位)、R=水素原子、p=1)、ゲルオールD(新日本化学社製)(式(1)において、R=R=水素原子、R=水素原子、p=1)、ゲルオールDXR(新日本化学社製)(式(1)において、R=R=メチル基(m=n=2でメタ位およびパラ位)、R=水素原子、p=1)、ゲルオールE−200(新日本化学社製)、Millad NX8000(Milliken Chemical社製)(式(1)において、R=R=プロピル基(m=n=1でパラ位)、R=プロピル基、p=1)、RiKAFAST AC(新日本化学社製)が入手可能である。
結晶核剤は、吸音性のさらなる向上の観点から、予め熱可塑性樹脂とともに溶融混練、冷却および粉砕されてなる結晶核剤マスターバッチ(ペレット)の形態で使用されることが好ましい。結晶核剤マスターバッチ中の結晶核剤の含有量は通常、当該マスターバッチ全量に対して1〜40重量%である。
結晶核剤マスターバッチの平均粒径は通常、0.1〜10mmである。
結晶核剤マスターバッチの平均粒径は、任意の100個のマスターバッチ粒子を選択し、各粒子における最大径を粒径として測定された値の平均値である。
結晶核剤マスターバッチ中、結晶核剤(特に有機系結晶核剤)は当該マスターバッチ全量に対して通常は1〜40重量%の量で分散されており、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%の量で分散されている。
結晶核剤の含有量は通常、熱可塑性樹脂組成物(成形品)全量に対して0.01〜2重量%であり、好ましくは0.1〜1重量%である。ここでいう結晶核剤の含有量とは結晶核剤単独の含有量である。結晶核剤マスターバッチを使用する場合は、上記組成物(成形品)に対する結晶核剤単独の含有量が上記範囲内になるように、当該マスターバッチを使用すればよい。
本工程での溶融混練温度、すなわちシリンダ温度、は熱可塑性樹脂組成物が十分に溶融する限り特に制限されず、成形品内部の繊維化の観点から好ましくは、後述する熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfに対して、Tccf+70〜Tccf+130℃であり、より好ましくはTccf+80〜Tccf+120℃である。成形品内部の気泡形成の観点からは、溶融混錬温度は特に限定されない。
(射出工程)
本工程は、溶融混練工程で得られた熱可塑性樹脂組成物の溶融物を金型内に射出する工程である。詳しくは、溶融物を、図1の発泡射出成型装置1のノズル16から固定型21と可動型22からなる金型内のキャビティ23に射出する。図1中、キャビティ23は直方体形状を有しているが、これに限定されるものではなく、目的とする成形品形状に基づく所望の形状を有していればよい。
金型温度は、成形品内部の繊維化の観点からは、後述する熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfに対して、Tccf−70〜Tccf−20℃が好ましく、より好ましくはTccf−70〜Tccf−40℃である。成形品内部の気泡の形成の観点からは、金型温度は特に限定されない。
射出速度は特に限定されず、通常20〜200mm/秒であり、成形品の繊維化の観点から好ましくは30〜150mm/秒である。射出量は、キャビティ23が充満される量である。成形品内部の気泡の形成の観点からは、射出速度は特に限定されない。
キャビティ23の厚み方向の最大厚みは通常1〜10mmであり、成形品の繊維化の観点から好ましくは1〜5mmである。成形品内部の気泡の形成の観点からは、キャビティの最大厚みは特に限定されない。厚み方向とは、後述するコアバック工程における可動型22の移動方向、すなわちコアバック方向と平行な方向を意味する。
(コアバック工程)
本工程は、可動型22をコアバックさせることにより、射出工程で射出された溶融物を発泡させる工程である。詳しくは、熱可塑性樹脂組成物の溶融物を射出後、金型内で保圧し、可動型22をコアバックさせ、発泡を行う。これにより成形品内部に気泡が形成される。コアバックとは、キャビティ23の体積を増大させるために、可動型22を固定型21とは反対方向に移動させることをいう。これにより、キャビティ23内の圧力が低減され、溶融物の発泡が促進される。
本工程においては、コアバックを以下に示す特定のタイミングで行うことにより、発泡とともに繊維化を行うことができる。すなわち、コアバックは、熱可塑性樹脂組成物の冷却速度19℃/秒での結晶化温度をTccf(℃)としたとき、射出された熱可塑性樹脂組成物(溶融物)の温度がTccf−10〜Tccf+20℃、好ましくはTccf−5〜Tccf+20℃、好ましくはTccf〜Tccf+20℃であるときに開始する。このようなタイミングでコアバックを開始することにより、コアバック初期において、発泡によりセルを十分に形成しつつ、形成されたセルの合一を防止することができる。このため、コアバック初期に十分な数のセルの微分散が達成されるので、その後のコアバックにより、セル壁をコアバック方向に延伸させつつ、コアバック方向に対する垂直方向で破断させることができる。これらの結果として、繊維化が達成されるものと考えられる。コアバック開始温度が低すぎると、コアバック初期においてセルを十分に形成できないので、隣接するセル間のセル壁厚みが比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。コアバック開始温度が高すぎると、コアバック初期においてセルの合一が進むので、セル径が比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。
本発明において、コアバックのタイミングを、比較的遅い冷却速度で測定された結晶化温度に基づいて決定しても、十分な繊維化は達成されない。コアバック初期の十分な数のセルの微分散は、熱可塑性樹脂組成物の結晶化に基づくものと考えられる。そこで、例えば、100℃/分以下の冷却速度で測定された結晶化温度に基づいてコアバックのタイミングを表しても、冷却速度がコアバックを伴う発泡射出成形の実情に全く合っていないために、結晶化は十分に起こらず、結果として繊維化は十分に達成されないものと考えられる。
ナノ繊維をマスターバッチの形態で使用し、かつ上記した特定のナノ繊維用熱可塑性樹脂を使用すると、気泡形成時または繊維化時においてナノ繊維を突出させることができる。特に、ナノ繊維の突出の観点から、上記したナノ繊維マスターバッチ中のナノ繊維の分散量(含有量)および後述の発泡倍率を調整することにより、ナノ繊維をより一層、有効に突出させることができる。
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfは以下の方法により測定することができる。
熱可塑性樹脂組成物を、融点以上の温度に加熱して19℃/秒にて冷却したときの熱流−温度曲線を、高速示差走査熱量計(METTLER TOLEDO社製)により求める。この熱流−温度曲線が吸熱ピークを示す温度を結晶化温度Tccf(℃)とする。
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfは、成形品の繊維化の観点から好ましくは80〜190℃であり、より好ましくは80〜180℃である。マトリクス用熱可塑性樹脂がポリプロピレンの場合、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfは、さらに好ましくは80〜135℃である。成形品内部の気泡の形成の観点からは、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度は特に限定されない。
保圧時において、熱可塑性樹脂組成物の温度を温度圧力センサー24により観測しておくことにより、コアバック開始のタイミングを計ることができる。
保圧の圧力および保圧の時間は、コアバックを上記タイミングで開始できれば特に限定されない。保圧の圧力は通常、10〜80MPaであり、好ましくは20〜60MPaである。保圧の時間は通常、1〜10秒であり、好ましくは2〜7秒である。
コアバック開始時において、熱可塑性樹脂組成物中のセル径は、微細繊維化の観点から、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
コアバック開始時における熱可塑性樹脂組成物中のセル径は、コアバックさせないこと以外、本発明に係る成形品の製造方法と同様の方法により、溶融混練工程および射出工程を実施した後、金型内において熱可塑性樹脂組成物の溶融物をそのまま冷却して得られた試料を用いて測定することができる。詳しくは、上記試料を、コアバック方向に対して垂直方向で切断し、得られた断面の顕微鏡写真を撮影する。当該写真において、スキン層から500μm以上離れた領域において、任意の100個のセルの直径(最大径)を測定し、最大値を求める。
コアバックさせる量は所定の発泡倍率が達成される量である。
発泡倍率は成形品内部の気泡の形成の観点からは1.1〜10倍であり、成形品内部の繊維化の観点から好ましくは3〜8倍であり、成形品内部でのナノ繊維の突出の観点から好ましくは4〜6倍である。
コアバックにかける時間は通常、0.1〜2秒であり、好ましくは0.2〜1.5秒である。
本工程において金型温度は、射出工程時と同様の温度範囲内において維持することが好ましい。
(冷却工程)
コアバック完了後は、発泡体をそのまま金型内で保持することにより、冷却し、その後、金型を開いて成形品を得ることができる。
[発泡樹脂成形品]
本発明の成形品は内部で連続気泡を有していてもよいし、または繊維化されていてもよい。内部とは、成形品表面のスキン層から100μm以上、好ましくは200μm以上離れた領域である。
本発明の成形品は上記したようにナノ繊維を含有するため、吸音性(高周波音および中周波音に対する吸音性)が向上する。このとき、成形品内部でナノ繊維は突出していてもよいし、または突出せずに熱可塑性樹脂組成物の繊維内または気泡のセル壁内に埋設されていてもよい。成形品内部でナノ繊維が突出するとは、成形品内部が繊維化されている場合、図5に示すように熱可塑性樹脂組成物の繊維の表面からナノ繊維が伸び出ているという意味であり、成形品内部で気泡が形成されている場合は、当該気泡の内側表面から、当該気泡内に向けて、ナノ繊維が伸び出ている、という意味である。
本発明の成形品は、内部でナノ繊維が突出していると、中周波音に対する吸音性がより一層、向上し、低周波音に対する吸音性も向上する。このとき、本発明の成形品は内部で連続気泡を有していてもよいし、または繊維化されていてもよい。
本発明の成形品は、内部で繊維化され、かつナノ繊維が突出していることが最も好ましい。中周波音に対する吸音性が最も向上するためである。
(内部で繊維化されるか、または気泡が形成され、かつナノ繊維が突出している実施態様に係る成形品)
本実施態様のように、内部でナノ繊維が突出している場合、突出ナノ繊維は熱可塑性樹脂組成物によりコーティングされることがあり、その繊維径は様々に変化する。また特に、成形品内部が繊維化されている場合には、顕微鏡写真上、熱可塑性樹脂組成物の繊維と、突出ナノ繊維とは判別し難い。従って、本実施態様の成形品は、その構造または特性により直接特定することは非実際的であると言える。
(内部で繊維化され、かつナノ繊維が突出していない実施態様に係る成形品)
繊維化とは、セル壁がコアバック方向に延伸されつつ、コアバック方向に対する垂直方向で破断され、繊維が形成されるという意味である。繊維化は、形成される繊維がコアバック方向に対して平行に配向するように達成される。このため、繊維の配向方向から、コアバック方向を検知することができる。繊維の配向方向はまた成形品の厚み方向とも平行である。本明細書中、平行とは、2つの方向のなす角度が厳密に0°でなければならないというわけではなく、±5°程度の範囲は許容される。
本実施態様において繊維は、発泡成形品のコアバック方向に対する垂直断面を示す図2に示されるように、繊維状物30だけでなく、セル壁が破断されてなる非環状のセル壁痕31および32を包含するものとし、破断されることなく残存する環状のセル壁33を包含するものではない。繊維状物30および非環状のセル壁痕31および32は、発泡成形品のコアバック方向に対する垂直断面において中実であり、中空のものではない。
本実施態様の成形品は、内部の全てが必ずしも繊維化されていなければならないというわけではなく、例えば、図2に示されるように、一部に環状のセル壁33を有することを妨げるものではない。
本実施態様の成形品は、繊維が、成形品のコアバック方向に対して垂直な断面において10μm以下、特に0.01〜10μm、好ましくは0.01〜1μmの平均径を有する。
繊維の平均径は、発泡成形品をコアバック方向に対して垂直に切断した断面の顕微鏡写真から算出された値を用いている。詳しくは、当該写真において任意の100個の繊維における繊維径を測定し、それらの平均値を求める。繊維径は、繊維が、図2に示すように、繊維状物30の場合は、最長径d1であり、繊維が非環状セル壁痕31および32の場合は、当該セル壁痕の最大厚みd2、d3である。
本実施態様の成形品は、成形品のコアバック方向に対して垂直な断面において、繊維の数が好ましくは40個/100μm以上、特に40〜2000個/100μmであり、より好ましくは100〜2000個/100μmである。
単位面積あたりの繊維の数は、発泡成形品をコアバック方向に対して垂直に切断した断面の顕微鏡写真に基づく値を用いている。詳しくは、図2に示すように、任意の領域において繊維30,31および32の総数を求め、当該総数を当該領域の面積で除することにより求める。10個の任意の領域における「単位面積あたりの繊維の数」の平均値を用いている。
(内部で気泡が形成され、かつナノ繊維が突出していない実施態様に係る成形品)
本実施態様において、気泡の平均径(セル径)は通常、1〜50μmであり、好ましくは1〜20μmである。
気泡の平均径は、発泡成形品をコアバック方向に対して垂直に切断した断面の顕微鏡写真に基づく値を用いている。詳しくは、任意の100個の気泡について、各気泡の最大径を測定し、それらの平均値を求める。
本実施態様において、セル壁厚は通常、0.1〜20μmであり、好ましくは0.1〜10μmである。セル壁厚は、気泡と気泡との間の距離(厚み)のことである。
セル壁厚は、発泡成形品をコアバック方向に対して垂直に切断した断面の顕微鏡写真に基づく値を用いている。詳しくは、任意の100カ所において、気泡間の距離を測定し、それらの平均値を求める。
本実施態様において、気泡の数は通常、10〜500個/100μm以上であり、好ましくは10〜200個/100μmである。
気泡の数は、発泡成形品をコアバック方向に対して垂直に切断した断面の顕微鏡写真に基づく値を用いている。詳しくは、任意の領域において気泡の総数を求め、当該総数を当該領域の面積で除することにより求める。10個の任意の領域における「単位面積あたりの繊維の数」の平均値を用いている。
[用途]
本発明の成形品は、ナノ繊維を含むことにより、優れた吸音性を有する。
本発明の成形品は高周波音(周波数1000Hz以上5000Hz以下)に対して優れた吸音性を有する。具体的には、本発明の成形品の4000Hzでの吸音率は通常は0.62以上であり、好ましくは0.72以上、より好ましくは0.86以上である。
本発明の成形品は中周波音(周波数500Hz以上1000Hz未満)に対しても優れた吸音性を有する。具体的には、本発明の成形品の800Hzでの吸音率は通常は0.10以上であり、好ましくは0.12以上、より好ましくは0.18以上である。
本発明の成形品は好ましくは低周波音(周波数200Hz以上500Hz未満)に対しても優れた吸音性を有する。具体的には、本発明の成形品の400Hzでの吸音率は好ましくは0.06以上である。
本発明の成形品が吸音する高周波音、中周波音および低周波音は自動車用途において以下の音に相当する:
高周波音−エンジン放射音;
中周波音−ロードノイズ;
低周波音−エンジン振動、吸排気音。
吸音性は、音の振動エネルギーを吸収することにより、エネルギーの伝導を抑制する特性である。このため、吸音性が優れていると、熱エネルギーの伝導も抑制し、断熱性にも優れていることは明らかである。
[実施例1]
(ナノ繊維マスターバッチA)
ナノ繊維用熱可塑性樹脂としてのポリプロピレンペレット(NBX04G;日本ポリプロ社製;MFR36g/10分(230℃)、Tcps124℃)100重量部およびナノ繊維としてのセルロースナノ繊維(平均径100)nm、平均長10μm)10重量部を210℃で溶融混練、冷却および粉砕して、ナノ繊維マスターバッチAを得た。ポリプロピレンペレットの結晶化温度Tcpsでの貯蔵弾性率は1×10Paであった。
(結晶核剤マスターバッチA)
結晶核剤用熱可塑性樹脂としてのポリプロピレンペレット(NBX04G;日本ポリプロ社製;MFR36g/10分(230℃)、Tcps124℃)100重量部および結晶核剤としてのゲルオールMD(新日本化学社製、融点247℃)5.0重量部を270℃で溶融混練、冷却および粉砕して、平均粒径3mmの結晶核剤マスターバッチAを得た。
(溶融混練工程)
上記ナノ繊維マスターバッチA 11重量部、上記結晶核剤マスターバッチA 10.5重量部およびマトリクス用熱可塑性樹脂としてのポリプロピレンペレット(NBX04G;日本ポリプロ社製;MFR36g/10分(230℃)、Tcps124℃)を80重量部をドライブレンドし、図1の発泡射出成型装置1のホッパ13からシリンダ11内に投入した。これらの混合物をシリンダ11内で185℃(=Tccf+92℃)にて溶融および混練しながら、高圧ガス供給装置17により物理発泡剤としての窒素ガスをマトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対して0.132重量部注入した。得られた熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度TccfおよびTccsを測定したところ、それぞれ93℃および124℃であり、Tccsでの貯蔵弾性率は1×10Paであった。
(射出工程)
シリンダ11内の溶融物を、固定型21および可動型22からなる金型間のキャビティ23内に射出した。金型温度は40℃(=Tccf−53℃)であり、射出速度は40mm/秒であり、キャビティの厚みは2mmであった。
(コアバック工程)
射出後、金型キャビティ内で溶融物を40MPaで5.8秒保圧した後、可動型22を10mmだけ0.5秒かけて固定型21の方向とは反対方向にコアバックさせることにより、発泡および繊維化させた。コアバック開始時において、溶融物の温度は94℃(=Tccf+1℃)であり、溶融物中のセル径は20μm以下であった。発泡倍率は6倍であった。本工程において金型は40℃に維持した。
実施例1の発泡樹脂成形品のコアバック方向に対する平行断面の顕微鏡写真(SEM)を撮影した(図5)。成形品内部で熱可塑性樹脂組成物の繊維化が行っており、当該繊維の表面からナノ繊維が突出していることを確認した。
(冷却工程)
コアバック後、発泡体をそのまま40℃の金型内で保持することにより、冷却した。その後、金型を開いて発泡成形品を得た。
[実施例2]
以下の方法で製造したナノ繊維マスターバッチBをナノ繊維マスターバッチAの代わりに用いたこと以外、実施例1と同様の方法により、発泡成形品を製造した。
実施例2の発泡樹脂成形品のコアバック方向に対する平行断面の顕微鏡写真(SEM)を撮影した。成形品内部で熱可塑性樹脂組成物の繊維化が起こっており、当該繊維の表面からナノ繊維は突出していないことを確認した。
(ナノ繊維マスターバッB)
ナノ繊維用熱可塑性樹脂としてポリプロピレンペレット(F133A;プライムポリマー社製;MFR3g/10分(230℃))を用いたこと以外、ナノ繊維マスターバッチAの製造方法と同様の方法により、ナノ繊維マスターバッチBを得た。
[実施例3]
結晶核剤マスターバッチAを使用することなしに、表1に示す配合を採用したこと以外、実施例1と同様の方法により、発泡成形品を製造した。
本実施例においては、繊維化は起こらず、連続気泡が形成された。
[比較例1]
ナノ繊維マスターバッチAおよび結晶核剤マスターバッチAを使用することなしに、表1に示す配合を採用したこと以外、実施例1と同様の方法により、発泡成形品を製造した。
本実施例においては、繊維化は起こらず、連続気泡が形成された。
[吸音性]
成形品の垂直入射吸音率を測定した。詳しくは、成形品を、そのコアバック方向が吸音率測定のための垂直方向に平行になるように用いた。測定条件を以下に示し、結果を図3、図4および表1に示す。
測定装置:φ(直径)40mmの音響インピーダンス管装置(日東紡音響エンジニアリング(株))
測定条件:試料サイズ;φ(直径)40mm、音波入射側のスキン層を除去
(4000Hzでの吸音率)
◎;0.86以上;
○;0.72以上;
△;0.62以上(実用上問題なし);
×;0.62未満(実用上問題あり)。
(800Hzでの吸音率)
◎;0.18以上;
○;0.12以上;
△;0.10以上(実用上問題なし);
×;0.10未満(実用上問題あり)。
(400Hzでの吸音率)
○;0.06以上(実用上問題なし);
×;0.06未満(実用上問題あり)。
[その他の物性の測定]
発泡成形品をコアバック方向に対して平行および垂直に切断し、それらの断面の顕微鏡写真を撮影した。
実施例および比較例で得られた両方の発泡成形品において、平行断面の顕微鏡写真より、発泡成形品の内部が繊維化されており、繊維がコアバック方向に対して平行に配向していることを確認した。
溶融物の結晶化温度TccsおよびTccf、溶融物のTccs(℃)での貯蔵弾性率、マトリクス用熱可塑性樹脂の結晶化温度Tcps、マトリクス用熱可塑性樹脂のTcpsでの貯蔵弾性率、コアバック開始時における溶融物の温度、コアバック開始時における溶融物の貯蔵弾性率、コアバック開始時における溶融物中のセル径、繊維の平均径、繊維の数、気泡の平均径、セル壁厚および気泡の数を前記した方法により測定した。
Figure 0006872856

本発明に係る射出成形法に基づく成形品の製造方法により製造される成形品は、衝撃吸収材、断熱材、吸音材として有用である。
1:発泡射出成形装置
10:スクリューフィーダ
11:シリンダ
12:スクリュー軸
13:ホッパ
14:チェックリング
15:円錐形状のヘッド
16:ノズル
17:高圧ガス供給装置
20:金型装置
21:固定型
22:可動型
23:キャビティ
24:温度圧力センサー
25:冷却機構
30:繊維状物
31:32:非環状セル壁痕
33:環状セル壁

Claims (14)

  1. 発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂およびナノ繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物を、固定型と可動型からなる金型内に充填した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性樹脂組成物を溶融状態で発泡させつつ成形する発泡樹脂成形品の製造方法であって、
    前記発樹脂成形品は内部で、繊維化されているか、または気泡を形成されており、
    前記ナノ繊維を、予めナノ繊維用熱可塑性樹脂とともに溶融および混練し、固化および粉砕により得られる、該ナノ繊維が前記ナノ繊維用熱可塑性樹脂中に分散されているナノ繊維マスターバッチの形態で使用し、
    前記ナノ繊維用熱可塑性樹脂が、前記マトリクス用熱可塑性樹脂のメルトフローレート以上のメルトフローレートを有し、これにより、ナノ繊維を発泡樹脂成形品内部において突出させる、発泡樹脂成形品の製造方法。
  2. 前記ナノ繊維が1nm以上1000nm未満の平均径を有する、請求項1に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
  3. 前記ナノ繊維が有機系ナノ繊維および/または無機系ナノ繊維である、請求項1または2に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
  4. 前記マトリクス用熱可塑性樹脂が、3〜200g/分(230℃)のメルトフローレートを有する、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
  5. 前記発泡樹脂成形品が内部で繊維化されている場合、前記ナノ繊維は、前記熱可塑性樹脂組成物の繊維の表面から伸び出ており、
    前記発泡樹脂成形品が内部で気泡を形成されている場合、前記ナノ繊維は、前記気泡の内側表面から前記気泡内に向けて伸び出ている、請求項1〜4のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
  6. 前記ナノ繊維マスターバッチ中、前記ナノ繊維が該マスターバッチ全量に対して1〜30重量%の量で分散されている、請求項1〜5のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
  7. 前記ナノ繊維の含有量が前記発泡樹脂成形品全量に対して0.1〜10重量%である、請求項1〜6のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
  8. 前記熱可塑性樹脂組成物を溶融および混練し、前記金型内に射出した後、可動型をコアバックさせる、請求項1〜7のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
  9. 前記熱可塑性樹脂組成物の冷却速度19℃/秒での結晶化温度をTccf(℃)としたとき、前記コアバックを、前記熱可塑性樹脂組成物の温度がTccf−10℃〜Tccf+20℃であるときに開始し、これにより発泡樹脂成形品の内部を発泡とともに繊維化させる、請求項1〜8のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
  10. 前記熱可塑性樹脂組成物が、該熱可塑性樹脂組成物の冷却速度10℃/分での結晶化温度Tccsにおいて1×10〜5×10Paの貯蔵弾性率を有する、請求項9に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
  11. 前記マトリクス用熱可塑性樹脂が、冷却速度10℃/分での結晶化温度Tcpsを90〜210℃に有し、かつTcpsにおいて1×10〜1×10Paの貯蔵弾性率を有するポリマーである、請求項9または10に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
  12. コアバック開始時において金型内の熱可塑性樹脂組成物中のセル径が30μm以下である、請求項9〜11のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
  13. 前記発泡を3〜8倍の発泡倍率で行う、請求項9〜12のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
  14. 前記熱可塑性樹脂組成物が結晶核剤をさらに含有する、請求項9〜13のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
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