以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
本発明の一実施形態のレーザ加工装置及びレーザ加工方法では、加工対象物にレーザ光を集光することにより、切断予定ラインに沿って加工対象物に改質領域を形成する。そこで、まず、改質領域の形成について、図1〜図6を参照して説明する。
図1に示されるように、レーザ加工装置100は、レーザ光Lをパルス発振するレーザ光源101と、レーザ光Lの光軸(光路)の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、レーザ光Lを集光するための集光用レンズ105と、を備えている。また、レーザ加工装置100は、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1を支持するための支持台107と、支持台107を移動させるためのステージ111と、レーザ光Lの出力やパルス幅、パルス波形等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、ステージ111の移動を制御するステージ制御部115と、を備えている。
このレーザ加工装置100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lは、ダイクロイックミラー103によってその光軸の向きを90°変えられ、支持台107上に載置された加工対象物1の内部に集光用レンズ105によって集光される。これと共に、ステージ111が移動させられ、加工対象物1がレーザ光Lに対して切断予定ライン5に沿って相対移動させられる。これにより、切断予定ライン5に沿った改質領域が加工対象物1に形成される。なお、ここでは、レーザ光Lを相対的に移動させるためにステージ111を移動させたが、集光用レンズ105を移動させてもよいし、或いはこれらの両方を移動させてもよい。
加工対象物1としては、半導体材料で形成された半導体基板や圧電材料で形成された圧電基板等を含む板状の部材(例えば、基板、ウェハ等)が用いられる。図2に示されるように、加工対象物1には、加工対象物1を切断するための切断予定ライン5が設定されている。切断予定ライン5は、直線状に延びた仮想線である。加工対象物1の内部に改質領域を形成する場合、図3に示されるように、加工対象物1の内部に集光点(集光位置)Pを合わせた状態で、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、図2の矢印A方向に)相対的に移動させる。これにより、図4、図5及び図6に示されるように、改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部に形成され、切断予定ライン5に沿って形成された改質領域7が切断起点領域8となる。
なお、集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。また、切断予定ライン5は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、これらが組み合わされた3次元状であってもよいし、座標指定されたものであってもよい。また、切断予定ライン5は、仮想線に限らず加工対象物1の表面3に実際に引かれた線であってもよい。改質領域7は、連続的に形成される場合もあるし、断続的に形成される場合もある。また、改質領域7は列状でも点状でもよく、要は、改質領域7は少なくとも加工対象物1の内部に形成されていればよい。また、改質領域7を起点に亀裂が形成される場合があり、亀裂及び改質領域7は、加工対象物1の外表面(表面3、裏面21、若しくは外周面)に露出していてもよい。また、改質領域7を形成する際のレーザ光入射面は、加工対象物1の表面3に限定されるものではなく、加工対象物1の裏面21であってもよい。
ちなみに、ここでのレーザ光Lは、加工対象物1を透過すると共に加工対象物1の内部の集光点P近傍にて特に吸収され、これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一般的に、表面3から溶融され除去されて穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)場合、加工領域は表面3側から徐々に裏面側に進行する。
ところで、本実施形態で形成される改質領域7は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。改質領域7としては、例えば、溶融処理領域(一旦溶融後再固化した領域、溶融状態中の領域及び溶融から再固化する状態中の領域のうち少なくとも何れか一つを意味する)、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。更に、改質領域7としては、加工対象物1の材料において改質領域7の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域や、格子欠陥が形成された領域がある(これらをまとめて高密転移領域ともいう)。
また、溶融処理領域や屈折率変化領域、改質領域7の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、格子欠陥が形成された領域は、更に、それら領域の内部や改質領域7と非改質領域との界面に亀裂(割れ、マイクロクラック)を内包している場合がある。内包される亀裂は、改質領域7の全面に渡る場合や一部分のみや複数部分に形成される場合がある。加工対象物1としては、例えばシリコン(Si)、ガラス、シリコンカーバイド(SiC)、LiTaO3又はサファイア(Al2O3)を含む、又はこれらからなるものが挙げられる。
また、本実施形態においては、切断予定ライン5に沿って改質スポット(加工痕)を複数形成することによって、改質領域7を形成している。改質スポットとは、パルスレーザ光の1パルスのショット(つまり1パルスのレーザ照射:レーザショット)で形成される改質部分であり、改質スポットが集まることにより改質領域7となる。改質スポットとしては、クラックスポット、溶融処理スポット若しくは屈折率変化スポット、又はこれらの少なくとも1つが混在するもの等が挙げられる。この改質スポットについては、要求される切断精度、要求される切断面の平坦性、加工対象物1の厚さ、種類、結晶方位等を考慮して、その大きさや発生する亀裂の長さを適宜制御することができる。
次に、本発明の一実施形態のレーザ加工装置及びレーザ加工方法について説明する。図7に示されるように、レーザ加工装置300は、レーザ光源202、反射型空間光変調器(空間光変調器)203、4f光学系(調整光学系)241、光遮断部220及び集光光学系204を筐体231内に備えている。レーザ加工装置300は、加工対象物1にレーザ光Lを集光することにより、切断予定ライン5に沿って加工対象物1に改質領域7を形成する。
レーザ光源202は、例えば1000nm〜1500nmの波長を有するレーザ光Lを出射するものであり、例えばファイバレーザである。ここでのレーザ光源202は、水平方向にレーザ光Lを出射するように、筐体231の天板236にねじ等で固定されている。
反射型空間光変調器203は、レーザ光源202から出射されたレーザ光Lを変調するものであり、例えば反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。ここでの反射型空間光変調器203は、水平方向から入射するレーザ光Lを変調すると共に、水平方向に対し斜め上方に反射する。
図8に示されるように、反射型空間光変調器203は、シリコン基板213、駆動回路層914、複数の画素電極214、誘電体多層膜ミラー等の反射膜215、配向膜999a、液晶層216、配向膜999b、透明導電膜217、及びガラス基板等の透明基板218がこの順に積層されることで構成されている。
透明基板218は、XY平面に沿った表面218aを有しており、この表面218aは、反射型空間光変調器203の表面を構成している。透明基板218は、例えばガラス等の光透過性材料からなり、反射型空間光変調器203の表面218aから入射した所定波長のレーザ光Lを、反射型空間光変調器203の内部へ透過する。透明導電膜217は、透明基板218の裏面上に形成されており、レーザ光Lを透過する導電性材料(例えばITO)からなる。
複数の画素電極214は、透明導電膜217に沿ってシリコン基板213上にマトリックス状に配列されている。各画素電極214は、例えばアルミニウム等の金属材料からなり、これらの表面214aは、平坦且つ滑らかに加工されている。複数の画素電極214は、駆動回路層914に設けられたアクティブ・マトリクス回路によって駆動される。
アクティブ・マトリクス回路は、複数の画素電極214とシリコン基板213との間に設けられており、反射型空間光変調器203から出力しようとする光像に応じて各画素電極214への印加電圧を制御する。このようなアクティブ・マトリクス回路は、例えば図示しないX軸方向に並んだ各画素列の印加電圧を制御する第1ドライバ回路と、Y軸方向に並んだ各画素列の印加電圧を制御する第2ドライバ回路とを有しており、制御部250(図7参照)によって双方のドライバ回路で指定された画素の画素電極214に所定電圧が印加されるように構成されている。
配向膜999a,999bは、液晶層216の両端面に配置されており、液晶分子群を一定方向に配列させる。配向膜999a,999bは、例えばポリイミド等の高分子材料からなり、液晶層216との接触面にラビング処理等が施されている。
液晶層216は、複数の画素電極214と透明導電膜217との間に配置されており、各画素電極214と透明導電膜217とにより形成される電界に応じてレーザ光Lを変調する。すなわち、駆動回路層914のアクティブ・マトリクス回路によって各画素電極214に電圧が印加されると、透明導電膜217と各画素電極214との間に電界が形成され、液晶層216に形成された電界の大きさに応じて液晶分子216aの配列方向が変化する。そして、レーザ光Lが透明基板218及び透明導電膜217を透過して液晶層216に入射すると、このレーザ光Lは、液晶層216を通過する間に液晶分子216aによって変調され、反射膜215において反射した後、再び液晶層216により変調されて、出射する。
このとき、制御部250(図7参照)によって各画素電極214に印加される電圧が制御され、その電圧に応じて、液晶層216において透明導電膜217と各画素電極214とに挟まれた部分の屈折率が変化する(各画素に対応した位置の液晶層216の屈折率が変化する)。この屈折率の変化により、印加した電圧に応じて、レーザ光Lの位相を液晶層216の画素ごとに変化させることができる。つまり、ホログラムパターンに応じた位相変調を画素ごとに液晶層216によって与える(すなわち、変調を付与するホログラムパターンとしての変調パターンを反射型空間光変調器203の液晶層216に表示させる)ことができる。その結果、変調パターンに入射し透過するレーザ光Lは、その波面が調整され、そのレーザ光Lを構成する各光線において進行方向に直交する所定方向の成分の位相にずれが生じる。したがって、反射型空間光変調器203に表示させる変調パターンを適宜設定することにより、レーザ光Lが変調(例えば、レーザ光Lの強度、振幅、位相、偏光等が変調)可能となる。
図7に戻り、4f光学系241は、反射型空間光変調器203によって変調されたレーザ光Lの波面形状を調整するものであり、第1レンズ(第1光学素子)241a及び第2レンズ(第2光学素子)241bを有している。第1レンズ241a及び第2レンズ241bは、反射型空間光変調器203と第1レンズ241aとの間の光路の距離が第1レンズ241aの第1焦点距離f1となり、集光光学系204と第2レンズ241bとの間の光路の距離が第2レンズ241bの第2焦点距離f2となり、第1レンズ241aと第2レンズ241bとの間の光路の距離が第1焦点距離f1と第2焦点距離f2との和(すなわち、f1+f2)となり、第1レンズ241a及び第2レンズ241bが両側テレセントリック光学系となるように、反射型空間光変調器203と集光光学系204との間の光路上に配置されている。この4f光学系241によれば、反射型空間光変調器203で変調されたレーザ光Lが空間伝播によって波面形状が変化し収差が増大するのを抑制することができる。
光遮断部220は、後述する第1加工光L1及び第2加工光L2を通過させる開口220aを有するアパーチャ部材である。光遮断部220は、第1レンズ241aと第2レンズ241bとの間のフーリエ面(すなわち、共焦点Oを含む面)上に設けられている。
集光光学系204は、レーザ光源202により出射されて反射型空間光変調器203により変調されたレーザ光Lを加工対象物1の内部に集光するものである。この集光光学系204は、複数のレンズを含んで構成されており、圧電素子等を含んで構成された駆動ユニット232を介して筐体231の底板233に設置されている。
以上のように構成されたレーザ加工装置300では、レーザ光源202から出射されたレーザ光Lは、筐体231内にて水平方向に進行した後、ミラー205aによって下方に反射され、アッテネータ207によって光強度が調整される。そして、ミラー205bによって水平方向に反射され、ビームホモジナイザ260によってレーザ光Lの強度分布が均一化されて反射型空間光変調器203に入射する。
反射型空間光変調器203に入射したレーザ光Lは、液晶層216に表示された変調パターンを透過することにより当該変調パターンに応じて変調され、その後、ミラー206aによって上方に反射され、λ/2波長板228によって偏光方向が変更され、ミラー206bによって水平方向に反射されて4f光学系241に入射する。
4f光学系241に入射したレーザ光Lは、平行光で集光光学系204に入射するよう波面形状が調整される。具体的には、レーザ光Lは、第1レンズ241aを透過し収束され、ミラー219によって下方へ反射され、共焦点Oを経て発散すると共に、第2レンズ241bを透過し、平行光となるように再び収束される。そして、レーザ光Lは、ダイクロイックミラー210,238を順次透過して集光光学系204に入射し、ステージ111上に載置された加工対象物1内に集光光学系204によって集光される。
また、レーザ加工装置300は、加工対象物1のレーザ光入射面を観察するための表面観察ユニット211と、集光光学系204と加工対象物1との距離を微調整するためのAF(AutoFocus)ユニット212と、を筐体231内に備えている。
表面観察ユニット211は、可視光VL1を出射する観察用光源211aと、加工対象物1のレーザ光入射面で反射された可視光VL1の反射光VL2を受光して検出する検出器211bと、を有している。表面観察ユニット211では、観察用光源211aから出射された可視光VL1が、ミラー208及びダイクロイックミラー209,210,238で反射・透過され、集光光学系204で加工対象物1に向けて集光される。そして、加工対象物1のレーザ光入射面で反射された反射光VL2が、集光光学系204で集光されてダイクロイックミラー238,210で透過・反射された後、ダイクロイックミラー209を透過して検出器211bにて受光される。
AFユニット212は、AF用レーザ光LB1を出射し、レーザ光入射面で反射されたAF用レーザ光LB1の反射光LB2を受光し検出することで、切断予定ライン5に沿ったレーザ光入射面の変位データを取得する。そして、AFユニット212は、改質領域7を形成する際、取得した変位データに基づいて駆動ユニット232を駆動させ、レーザ光入射面のうねりに沿うように集光光学系204をその光軸方向に往復移動させる。
更に、レーザ加工装置300は、当該レーザ加工装置300を制御するためのものとして、CPU、ROM、RAM等からなる制御部250を備えている。この制御部250は、レーザ光源202を制御し、レーザ光源202から出射されるレーザ光Lの出力やパルス幅等を調節する。また、制御部250は、改質領域7を形成する際、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の表面3又は裏面21から所定距離に位置し且つレーザ光Lの集光点Pが切断予定ライン5に沿って相対的に移動するように、筐体231、ステージ111の位置、及び駆動ユニット232の駆動の少なくとも1つを制御する。
また、制御部250は、改質領域7を形成する際、反射型空間光変調器203における各画素電極214に所定電圧を印加し、液晶層216に所定の変調パターンを表示させ、これにより、レーザ光Lを反射型空間光変調器203で所望に変調させる。ここで、液晶層216に表示される変調パターンは、例えば、改質領域7を形成しようとする位置、照射するレーザ光Lの波長、加工対象物1の材料、及び集光光学系204や加工対象物1の屈折率等に基づいて予め導出され、制御部250に記憶されている。この変調パターンは、レーザ加工装置300に生じる個体差(例えば、反射型空間光変調器203の液晶層216に生じる歪)を補正するための個体差補正パターン、球面収差を補正するための球面収差補正パターン等を含んでいる。
以上のように構成されたレーザ加工装置300において実施されるレーザ加工方法の対象となる加工対象物1は、図9に示されるように、例えばシリコン等の半導体材料からなる基板11と、基板11の表面11aに形成された機能素子層15と、を備えている。機能素子層15は、基板11の表面11aに沿ってマトリックス状に配列された複数の機能素子15a(例えば、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、又は回路として形成された回路素子等)と、隣り合う機能素子15aの間のストリート領域(領域)17に形成された金属パターン16(例えば、TEG(Test Element Group)等)と、を含んでいる。このように、加工対象物1の表面(第1表面)3には、2次元状に配置された複数の機能素子15a、及び隣り合う機能素子15aの間のストリート領域17に配置された金属パターン16が設けられている。なお、機能素子層15は、基板11の表面11aの全体に渡って形成された層間絶縁膜(例えば、Low-k膜等)を含んでいる。
レーザ加工装置300において実施されるレーザ加工方法は、加工対象物1を機能素子15aごとに切断することにより複数のチップを製造するチップの製造方法として用いられる。そのため、当該レーザ加工方法では、加工対象物1に対して、表面3に垂直な方向から見た場合に隣り合う機能素子15aの間のストリート領域17を通るように(例えば、加工対象物1の厚さ方向から見た場合にストリート領域17の幅の中心を通るように)、複数の切断予定ライン5が格子状に設定される。そして、基板11の裏面11bである加工対象物1の裏面(第2表面)21から入射させられたレーザ光Lが加工対象物1に集光され、各切断予定ライン5に沿って加工対象物1に改質領域7が形成される。なお、シリコン等の半導体材料からなる基板11においては、改質領域7として、レーザ光Lの集光点Pの位置に微小空洞7aが形成され、集光点Pに対してレーザ光Lの入射側に溶融処理領域7bが形成される場合がある。
以下、レーザ加工装置300において実施されるレーザ加工方法について説明する。まず、切断予定ライン5に沿った方向にレーザ光Lを0次光及び±n次光(nは自然数)に分岐する回折機能を含む変調パターを、反射型空間光変調器203の液晶層216に表示させる。このように、反射型空間光変調器203では、液晶層216が、変調パターンを表示する複数の画素として機能する。図10に示されるように、0次光及び±n次光のそれぞれの集光点は、加工対象物1において、次数を示す数値(0及び±nであり、+の数値で絶対値が大きいものほど数値が大きいと表現し、−の数値で絶対値が大きい数値ほど数値が小さいと表現する)が大きくなるほど、レーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の表面3側に位置し、且つ切断予定ライン5に沿ったレーザ光Lの相対的移動方向における前側に位置する位置関係を有している。
当該レーザ加工方法では、図10の(a)に示されるように、+1次光及び−1次光をそれぞれ第1加工光L1及び第2加工光L2(加工光:集光点に対応する領域に改質領域を形成し得るエネルギーを有する光)として利用する。これにより、第1集光点P1及び第2集光点P2は、加工対象物1において、第1集光点P1が第2集光点P2に対してレーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の表面3側に位置し、且つ第1集光点P1が第2集光点P2に対して切断予定ライン5に沿ったレーザ光Lの相対的移動方向における前側に位置する位置関係を有することになる。なお、図10の(b)に示されるように、+1次光、0次光及び−次光をそれぞれ第1加工光L1、第2加工光L2及び第3加工光L3として利用してもよい。つまり、第1加工光L1及び第2加工光L2は、加工対象物1に集光される0次光及び±n次光のうち0次光及び±1次光から選択される。
以上のように、反射型空間光変調器203は、レーザ光Lが少なくとも第1加工光L1及び第2加工光L2を含む0次光及び±n次光に分岐されて、集光光学系204により第1加工光L1が第1集光点P1に集光されると共に第2加工光L2が第2集光点P2に集光されるように、レーザ光源202により出射されたレーザ光Lを変調する。
ここで、加工対象物1の表面3に垂直な方向から見た場合における第1集光点P1と第2集光点P2との距離(加工対象物1の表面3に垂直な方向から見た場合に切断予定ライン5に沿った方向において隣り合う加工光の集光点の間の距離)をDと定義する。そして、図11に示されるように、表面3における第1加工光L1の半径をW1とし、表面3における第2加工光L2の半径をW2とすると、反射型空間光変調器203は、D>W1+W2を満たすようにレーザ光Lを変調する。これにより、加工対象物1の表面3に到達した第1加工光L1の漏れ光(集光点に対応する領域において加工対象物に吸収されなかった光)及び第2加工光L2の漏れ光が表面3において干渉して強め合うことが防止される。
一例として、厚さ300μm、結晶方位(100)、抵抗値1Ω・cmUPのシリコンウェハを加工対象物1として準備し、図11及び下記の表1に示される条件でレーザ光Lの照射を行った場合、レーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の表面3において第1加工光L1の漏れ光と第2加工光L2の漏れ光とが接するときの第1集光点P1と第2集光点P2との距離D(=W1+W2)は、31.32641μmとなる。なお、レーザ光Lのスキャン速度とは、切断予定ライン5に沿っての第1集光点P1及び第2集光点P2の相対的移動速度である。
実験の結果、下記の表2のとおりとなり、第1集光点P1と第2集光点P2との距離Dが30μm以下であると(当該距離Dが31.32641μmよりも小さいと)表面3にダメージが発生し、第1集光点P1と第2集光点P2との距離Dが40μm以上であると(当該距離Dが31.32641μmよりも大きいと)表面3にダメージが発生しなかった。この結果から、D>W1+W2を満たすようにレーザ光Lを変調することで、加工対象物1の表面3に到達した第1加工光L1の漏れ光及び第2加工光L2の漏れ光が表面3において干渉して強め合うことが防止され、表面3におけるダメージの発生が抑制されることが分かった。
また、変調パターンを表示する複数の画素として機能する液晶層216において、隣り合う画素の間の距離をdとし、4f光学系241の倍率をmとし、集光光学系204の焦点距離をfとし、レーザ光Lの波長をλとすると、反射型空間光変調器203は、D<2×f×tan[asin{λ/(d×4×m)}]を満たすようにレーザ光Lを変調する。前述の式において「4」は、反射型空間光変調器203の変調パターンにおけるグレーティングピクセル数を示し、グレーティングピクセル数:4は、図12の(a)の場合である。参考として、グレーティングピクセル数:2は、図12の(b)の場合である。
上述した第1集光点P1と第2集光点P2との距離Dを大きくするためには、反射型空間光変調器203の変調パターンにおいてグレーティングピクセル数を小さくする必要があるが、グレーティングピクセル数を小さくし過ぎると、レーザ光Lにおいて波面制御しきれない成分が増加して漏れ光が増加するおそれがある。そこで、厚さ300μm、結晶方位(100)、抵抗値1Ω・cmUPのシリコンウェハを加工対象物1として準備し、図11及び下記の表3に示される条件でレーザ光Lの照射を行うことで、グレーティングピクセル数と表面3におけるダメージの発生の有無との関係について調べた。なお、第1集光点P1と第2集光点P2との距離Dは、D=2×f×tan[asin{λ/(d×グレーティングピクセル数×m)}]により算出することができる。
実験の結果、下記の表4のとおりとなり、グレーティングピクセル数が4以下であると(換言すれば、第1集光点P1と第2集光点P2との距離Dが102μm以上であると)表面3にダメージが発生し、グレーティングピクセル数が5以上であると(換言すれば、第1集光点P1と第2集光点P2との距離Dが80μm以下であると)表面3にダメージが発生しなかった。この結果から、D<2×f×tan[asin{λ/(d×4×m)}]を満たすようにレーザ光Lを変調することで、レーザ光Lにおいて波面制御しきれない成分が増加して漏れ光が増加することが抑制され、表面3におけるダメージの発生が抑制されることが分かった。
更に、表2及び表4の結果から、第1集光点P1と第2集光点P2との距離が40μm〜80μmとなるようにレーザ光Lを変調することで、表面3におけるダメージの発生が抑制されることが分かった。図13に示されるように、第1集光点P1と第2集光点P2との距離Dが20μmであると、加工対象物1の表面3に到達した第1加工光L1の漏れ光及び第2加工光L2の漏れ光が表面3において干渉して強め合っていることが確認され(上段)、表面3にダメージが発生した(下段)。また、第1集光点P1と第2集光点P2との距離Dが102μmであると、−1次光において漏れ光が増加していることが確認され(上段)、表面3にダメージが発生した(下段)。これらに対し、第1集光点P1と第2集光点P2との距離Dが40μmであると、加工対象物1の表面3に到達した第1加工光L1の漏れ光及び第2加工光L2の漏れ光が表面3において干渉して強め合っていること、及び−1次光において漏れ光が増加していることが確認されず(上段)、表面3にダメージが発生しなかった(下段)。なお、図13の上段の図は、表面3における0次光及び±n次光の状態を表面3側から観察した写真であり、改質領域未形成時のものである。また、図13の下段の図は、切断予定ライン5に沿って切断した加工対象物1の切断面の写真である。
また、光遮断部220は、加工対象物1に集光される±n次光のうち±2次光以上の高次光(ここでは、±2次光及び±3次光)を遮断する。このことから、光遮断部220は、加工対象物1に集光される0次光及び±n次光のうち第1加工光L1及び第2加工光L2に対して外側に集光される光を遮断するといえる。或いは、光遮断部220は、加工対象物1に集光される0次光及び±n次光のうち、第1加工光L1及び第2加工光L2に対してレーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物の表面3側に集光される光、及び第1加工光L1及び第2加工光L2に対してレーザ光Lの入射側の加工対象物の裏面21側に集光される光を遮断するといえる。なお、反射型空間光変調器203は、遮断する光の少なくとも一部が光遮断部220の開口220aの外側を通過するようにレーザ光Lを変調してもよい。
図14の(a)に示されるように、4f光学系241のフーリエ面上に位置する光遮断部220の開口220aの半径をXとし、上述したように、加工対象物1の表面3に垂直な方向から見た場合における第1集光点P1と第2集光点P2との距離をDとし、第2レンズ241bの第2焦点距離をf2とし、集光光学系204の焦点距離をfとすると、光遮断部220が±2次光以上の高次光(±2次光については中心よりも外側の部分)を遮断するためには、D×f2/f<2X<2D×f2/fを満たす必要がある。つまり、反射型空間光変調器203が、(X×f)/(2×f2)<D/2<(X×f)/f2を満たすようにレーザ光Lを変調すれば、光遮断部220が±2次光以上の高次光(±2次光については中心よりも外側の部分)を遮断することができる。
また、図14の(b)に示されるように、光遮断部220が±3次光以上の高次光(±3次光については中心よりも外側の部分)を遮断するためには、D×f2/f<2X<3D×f2/fを満たす必要がある。つまり、反射型空間光変調器203が、(X×f)/(3×f2)<D/2<(X×f)/f2を満たすようにレーザ光Lを変調すれば、光遮断部220が±3次光以上の高次光(±3次光については中心よりも外側の部分)を遮断することができる。
一例として、D=50μm、f2=150mm、f=1.8mmであれば、4166.7μm<2X<8333μmを満たすように、光遮断部220の開口220aの半径Xを決定すれば、光遮断部220が±2次光以上の高次光(±2次光については中心よりも外側の部分)を遮断することができる。換言すれば、2X=10000μm、f2=150mm、f=1.8mmであれば、30μm<D/2<60μmを満たすように、第1集光点P1と第2集光点P2との距離Dを決定すれば、光遮断部220が±2次光以上の高次光(±2次光については中心よりも外側の部分)を遮断することができる。
また、D=50μm、f2=150mm、f=1.8mmであれば、4166.7μm<2X<12500μmを満たすように、光遮断部220の開口220aの半径Xを決定すれば、光遮断部220が±3次光以上の高次光(±3次光については中心よりも外側の部分)を遮断することができる。換言すれば、2X=10000μm、f2=150mm、f=1.8mmであれば、20μm<D/2<60μmを満たすように、第1集光点P1と第2集光点P2との距離Dを決定すれば、光遮断部220が±3次光以上の高次光(±3次光については中心よりも外側の部分)を遮断することができる。
なお、レーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の表面3にダメージが発生するのを抑制するために、光遮断部220は、+n次光を遮断する部材であってもよい。その場合、図15の(a)に示されるように、4f光学系241のフーリエ面上において共焦点Oから光遮断部220(光遮断部220の共焦点O側の辺)までの距離をXとすると、光遮断部220が+2次光以上の高次光(+2次光については中心よりも外側の部分)を遮断するためには、D×f2/f<2X<2D×f2/fを満たす必要がある。つまり、反射型空間光変調器203が、(X×f)/(2×f2)<D/2<(X×f)/f2を満たすようにレーザ光Lを変調すれば、光遮断部220が+2次光以上の高次光(+2次光については中心よりも外側の部分)を遮断することができる。
また、図15の(b)に示されるように、光遮断部220が+3次光以上の高次光(+3次光については中心よりも外側の部分)を遮断するためには、D×f2/f<2X<3D×f2/fを満たす必要がある。つまり、反射型空間光変調器203が、(X×f)/(3×f2)<D/2<(X×f)/f2を満たすようにレーザ光Lを変調すれば、光遮断部220が+3次光以上の高次光(+3次光については中心よりも外側の部分)を遮断することができる。
更に、光遮断部220は、集光光学系204のレンズ視野を制限するように、集光光学系204の光入射部に設けられていてもよい。図16の(a)に示されるように、集光光学系204の光入射部に位置する光遮断部220の開口220aの半径をXとし、上述したように、加工対象物1の表面3に垂直な方向から見た場合における第1集光点P1と第2集光点P2との距離をDとすると、反射型空間光変調器203が、X/2<D/2<Xを満たすようにレーザ光Lを変調すれば、光遮断部220が±2次光以上の高次光(±2次光については中心よりも外側の部分)を遮断することができる。また、図16の(b)に示されるように、反射型空間光変調器203が、X/3<D/2<Xを満たすようにレーザ光Lを変調すれば、光遮断部220が±3次光以上の高次光(±3次光については中心よりも外側の部分)を遮断することができる。
一例として、2X=150μmであれば、37.5μm<D/2<75μmを満たすように、第1集光点P1と第2集光点P2との距離Dを決定すれば、光遮断部220が±2次光以上の高次光(±2次光については中心よりも外側の部分)を遮断することができる。また、2X=150μmであれば、25μm<D/2<75μmを満たすように、第1集光点P1と第2集光点P2との距離Dを決定すれば、光遮断部220が±3次光以上の高次光(±3次光については中心よりも外側の部分)を遮断することができる。
ここで、厚さ300μm、結晶方位(100)、抵抗値1Ω・cmUPのシリコンウェハを加工対象物1として準備し、図11及び上記の表3に示される条件でレーザ光Lの照射を行うことで、3次光と表面3におけるダメージの発生の有無との関係について調べた。なお、表面3におけるダメージの発生の有無を判別し易くするために、表面3に感熱性膜を形成して実験を行った。
実験の結果、図17の(d)に示されるように、少なくとも3次光の影響によって、レーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の表面3にダメージが発生することが分かった。図17の(a)は、切断予定ライン5に沿って切断した加工対象物1の切断面における0次光及び±n次光のそれぞれの集光点の位置関係を示す図である。図17の(b)は、表面3における0次光及び±n次光の状態を表面3側から観察した写真であり、改質領域未形成時のものである。図17の(c)は、表面3における0次光及び±n次光の状態を表面3側から観察した写真であり、改質領域形成時のものである。図17の(d)は、感熱性膜を表面3側から観察した写真であり、改質領域形成時のものである。
図18は、本発明の比較例を説明するための図であり、(a)は、フーリエ面近傍でのレーザ光Lの状態を示すシミュレーション図であり、(b)は、集光点近傍でのレーザ光Lの状態を示すシミュレーション図である。このように、+3次光を遮断しないと、図19に示されるように、+3次光の影響によって、レーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の表面3に最も強いダメージが発生することが分かった。なお、図19の上段は、0次光及び±n次光のそれぞれの集光点を分岐させる方向に平行な方向にレーザ光Lを相対的に移動させた場合に感熱性膜を表面3側から観察した写真であり、図19の下段は、0次光及び±n次光のそれぞれの集光点を分岐させる方向に垂直な方向にレーザ光Lを相対的に移動させた場合に感熱性膜を表面3側から観察した写真である。
図20は、本発明の実施例を説明するための図であり、(a)は、フーリエ面近傍でのレーザ光Lの状態を示すシミュレーション図であり、(b)は、集光点近傍でのレーザ光Lの状態を示すシミュレーション図である。このように、光遮断部220により+3次光の一部を遮断すると、図21に示されるように、+3次光の影響によって加工対象物1の表面3に発生するダメージが弱まることが分かった。なお、図21の上段は、0次光及び±n次光のそれぞれの集光点を分岐させる方向に平行な方向にレーザ光Lを相対的に移動させた場合に感熱性膜を表面3側から観察した写真であり、図21の下段は、0次光及び±n次光のそれぞれの集光点を分岐させる方向に垂直な方向にレーザ光Lを相対的に移動させた場合に感熱性膜を表面3側から観察した写真である。
図22は、本発明の実施例を説明するための図であり、(a)は、フーリエ面近傍でのレーザ光Lの状態を示すシミュレーション図であり、(b)は、集光点近傍でのレーザ光Lの状態を示すシミュレーション図である。このように、光遮断部220により+3次光の全部を遮断すると、図23に示されるように、+3次光の影響によって加工対象物1の表面3に発生するダメージが略なくなることが分かった。なお、図23の上段は、0次光及び±n次光のそれぞれの集光点を分岐させる方向に平行な方向にレーザ光Lを相対的に移動させた場合に感熱性膜を表面3側から観察した写真であり、図23の下段は、0次光及び±n次光のそれぞれの集光点を分岐させる方向に垂直な方向にレーザ光Lを相対的に移動させた場合に感熱性膜を表面3側から観察した写真である。
図24は、本発明に関する実験結果を説明するための図である。この場合、集光光学系204のレンズ視野を制限するように、光遮断部220が集光光学系204の光入射部に設けられており、第1集光点P1と第2集光点P2との距離Dが50μm以上のときに+3次光を遮断することができるレンズ視野となっている。図24に示される実験結果から明らかなように、光遮断部220により+3次光が遮断されると、+3次光の影響によって加工対象物1の表面3に発生するダメージが略なくなることが分かった。なお、図24の上段は、0次光及び±n次光のそれぞれの集光点を分岐させる方向に平行な方向にレーザ光Lを相対的に移動させた場合に感熱性膜を表面3側から観察した写真であり、図24の下段は、0次光及び±n次光のそれぞれの集光点を分岐させる方向に垂直な方向にレーザ光Lを相対的に移動させた場合に感熱性膜を表面3側から観察した写真である。
以上により、レーザ加工装置300において実施されるレーザ加工方法では、レーザ光Lが第1加工光L1及び第2加工光L2を含む0次光及び±n次光に分岐されて、第1加工光L1が第1集光点P1に集光されると共に第2加工光L2が第2集光点P2に集光されるように、レーザ光Lを変調し、加工対象物1において第1集光点P1及び第2集光点P2のそれぞれに対応する複数の領域のそれぞれに改質領域7を形成する。
このとき、表面3における第1加工光L1の半径をW1とし、表面3における第2加工光L2の半径をW2とし、表面3に垂直な方向から見た場合における第1集光点P1と第2集光点P2との距離をDとすると、D>W1+W2を満たすようにレーザ光Lを変調する。或いは、表面3に垂直な方向から見た場合における第1集光点P1と第2集光点P2との距離が40μm〜80μmとなるようにレーザ光Lを変調する。
また、加工対象物1に集光される0次光及び±n次光のうち第1加工光L1及び第2加工光L2に対して外側に集光される光を遮断する。或いは、加工対象物1に集光される0次光及び±n次光のうち、第1加工光L1及び第2加工光L2に対してレーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物の表面3側に集光される光、及び第1加工光L1及び第2加工光L2に対してレーザ光Lの入射側の加工対象物の裏面21側に集光される光を遮断する。
そして、加工対象物1に改質領域7を形成した後、加工対象物1の裏面21にエキスパンドテープを貼り付け、当該エキスパンドテープを拡張させる。これにより、切断予定ライン5に沿って形成された改質領域7から加工対象物1の厚さ方向に伸展した亀裂を、加工対象物1の表面3及び裏面21に到達させて、切断予定ライン5に沿って加工対象物1を機能素子15aごとに切断することにより、複数のチップを得る。
以上、説明したように、レーザ加工装置300、及びレーザ加工装置300において実施されるレーザ加工方法では、加工対象物1に集光される0次光及び±n次光のうち第1加工光L1及び第2加工光L2に対して外側に集光される光を遮断する。或いは、加工対象物1に集光される0次光及び±n次光のうち、第1加工光L1及び第2加工光L2に対してレーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物の表面3側に集光される光、及び第1加工光L1及び第2加工光L2に対してレーザ光Lの入射側の加工対象物の裏面21側に集光される光を遮断する。これらにより、当該光が加工対象物1の表面3近傍及び裏面21近傍に集光することが防止される。よって、レーザ光Lを複数の加工光に分岐して各加工光により改質領域7を形成する場合に、レーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の表面3、及びレーザ光Lの入射側の加工対象物の裏面21に、ダメージが発生するのを抑制することができる。
また、第1加工光L1及び第2加工光L2は、加工対象物1に集光される0次光及び±n次光のうち0次光及び±1次光から選択され、光遮断部220は、加工対象物1に集光される±n次光のうち±2次光及び±3次光を遮断する。これにより、相対的に大きいエネルギーを有する0次光及び±1次光を第1加工光L1及び第2加工光L2として効率良く利用しつつ、レーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の表面3、及びレーザ光Lの入射側の加工対象物1の裏面21にダメージが発生するのをより確実に抑制することができる。特に、相対的に大きいエネルギーを有する+3次光を遮断することは、レーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の表面3にダメージが発生するのを抑制する上で重要である。
また、光遮断部220は、第1加工光L1及び第2加工光L2を通過させる開口220aを有している。これにより、少なくとも第1加工光L1及び第2加工光L2を通過させ且つ第1加工光L1及び第2加工光L2以外の所定の光を遮断する光遮断部220を簡単な構成で実現することができる。
また、光遮断部220は、第1レンズ241aと第2レンズ241bとの間のフーリエ面上に設けられている。これにより、第1加工光L1及び第2加工光L2以外の所定の光を確実に遮断することができる。なお、光遮断部220が、集光光学系204の光入射部に設けられていても、第1加工光L1及び第2加工光L2以外の所定の光を確実に遮断することができる。また、反射型空間光変調器203が、遮断する光の少なくとも一部が開口220aの外側を通過するようにレーザ光Lを変調してもよい。これによれば、第1加工光L1及び第2加工光L2以外の所定の光をより確実に遮断することができる。
また、レーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の表面3には、2次元状に配置された複数の機能素子15a、及び隣り合う機能素子15aの間のストリート領域17に配置された金属パターン16が設けられており、切断予定ライン5は、表面3に垂直な方向から見た場合に隣り合う機能素子15aの間のストリート領域17を通るように設定される。レーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の表面3において隣り合う機能素子15aの間のストリート領域17に金属パターン16が配置されていると、金属パターン16で漏れ光の吸収が起こって当該表面3にダメージが発生し易くなるものの、そのような場合であっても、レーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の表面3にダメージが発生するのを抑制することができる。特に、基板11の表面11aの全体に渡って層間絶縁膜(例えば、Low-k膜等)が形成されている場合には、当該層間絶縁膜の剥がれ等を抑制することができるので有効である。
また、表面3における第1加工光L1の半径をW1とし、表面3における第2加工光L2の半径をW2とし、表面3に垂直な方向から見た場合における第1集光点P1と第2集光点P2との距離をDとすると、D>W1+W2を満たすようにレーザ光Lを変調する。これにより、加工対象物1の表面3に到達した第1加工光L1の漏れ光及び第2加工光L2の漏れ光が表面3において干渉して強め合うことが防止される。よって、レーザ光Lを複数の加工光に分岐して各加工光により改質領域7を形成する場合にレーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の表面3にダメージが発生するのを抑制することができる。
また、反射型空間光変調器203において隣り合う画素の間の距離をdとし、4f光学系241の倍率をmとし、集光光学系204の焦点距離をfとし、レーザ光Lの波長をλとすると、反射型空間光変調器203は、D<2×f×tan[asin{λ/(d×4×m)}]を満たすようにレーザ光Lを変調する。表面3に垂直な方向から見た場合における第1集光点P1と第2集光点P2との距離Dを大きくするためには、反射型空間光変調器203の変調パターンにおいてグレーティングピクセル数を小さくする必要があるが、グレーティングピクセル数を小さくし過ぎると、レーザ光Lにおいて波面制御しきれない成分が増加して漏れ光が増加するおそれがある。D<2×f×tan[asin{λ/(d×4×m)}]を満たすようにレーザ光Lを変調することで、レーザ光Lにおいて波面制御しきれない成分が増加して漏れ光が増加するのを抑制し、レーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の表面3にダメージが発生するのを抑制することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、加工対象物1の構成及び材料は、上述したものに限定されない。一例として、基板11は、シリコン基板以外の半導体基板、サファイア基板、SiC基板、ガラス基板(強化ガラス基板)、透明絶縁基板等があってもよい。
また、0次光及び±n次光のそれぞれの集光点は、加工対象物1において、次数を示す数値が小さくなるほど、レーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の表面3側に位置し、且つ切断予定ライン5に沿ったレーザ光Lの相対的移動方向における前側に位置する位置関係を有していてもよい。また、加工対象物1の表面3側からレーザ光Lを入射させてもよい。この場合、裏面21がレーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物1の第1表面となり、表面3がレーザ光Lの入射側の加工対象物1の第2表面となる。
また、光遮断部220は、+n次光を遮断する部材と、−n次光を遮断する部材と、を有し、対向する部材の間の領域において第1加工光L1及び第2加工光L2を通過させるものであってもよい。また、光遮断部220は、加工対象物1に集光される±n次光のうち、第1加工光L1及び第2加工光L2に対してレーザ光Lの入射側とは反対側の加工対象物の表面3側に集光される光のみを遮断する、或いは+3次光のみを遮断する等、±2次光以上の高次光を選択的に遮断してもよい。