以下に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
(電力変換器の回路構成)
図1は、本発明の実施の形態に従う電力変換器を含む電源システムの構成を示す回路図である。
図1を参照して、電源システム5は、複数の直流電源10aおよび10bと、負荷30と、電力変換器50と、平滑コンデンサCa,Cb,CHと、抵抗R1と、システムメインリレーSMR1,SMR2とを備える。
本実施の形態において、直流電源10aおよび10bの各々は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池のような二次電池、あるいは、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等の出力特性に優れた直流電圧源要素により構成される。直流電源10aおよび直流電源10bは、「第1の直流電源」および「第2の直流電源」にそれぞれ対応する。
直流電源10aおよび10bは、同種および同容量の直流電源によって構成することも可能であり、特性および/または容量が異なる直流電源によって構成することも可能である。
電力変換器50は、直流電源10aおよび10bと、電力線20との間に接続される。電力変換器50は、負荷30と接続された電力線20上の直流電圧(以下、出力電圧VHとも称する)を電圧指令値VH*に従って制御する。すなわち、電力線20は、直流電源10aおよび10bに対して共通に設けられる。
平滑コンデンサCaは、直流電源10aと電力変換器50との間に接続され、直流電圧を平滑する。平滑コンデンサCbは、直流電源10bと電力変換器50との間に接続され、直流電圧を平滑する。平滑コンデンサCaおよび平滑コンデンサCbは、「第1の平滑コンデンサ」および「第2の平滑コンデンサ」にそれぞれ対応する。
システムメインリレーSMR1は、直流電源10aと平滑コンデンサCaとの間に設けられる。システムメインリレーSMR2は、直流電源10bと平滑コンデンサCbとの間に設けられる。システムメインリレーSMR1,SMR2は、制御信号SE1,SE2にそれぞれ応答して、互いに独立にオンオフを制御することが可能である。すなわち、システムメインリレーSMR1,SMR2は、制御信号SE1,SE2がハイレベル(以下、Hレベル)のときにオン(閉成)する一方で、ローレベル(以下、Lレベル)のときにオフ(開放)する。システムメインリレーSMR1,SMR2は、直流電源10a,10bをそれぞれ電源システム5から遮断可能な「開閉装置」の代表例として用いられる。すなわち、任意の形式の開閉装置をシステムメインリレーSMR1,SMR2に代えて適用することができる。システムメインリレーSMR1およびシステムメインリレーSMR2は、「第1の開閉装置」および「第2の開閉装置」にそれぞれ対応する。
負荷30は、電力変換器50の出力電圧VHを受けて動作する。電圧指令値VH*は、負荷30の動作に適した電圧に設定される。電圧指令値VH*は、負荷30の動作状態に応じて可変に設定されてもよい。さらに、負荷30は、回生発電等によって、直流電源10a,10bの充電電力を発生可能に構成されてもよい。
平滑コンデンサCHは、電力線20および接地配線21の間に電気的に接続される。平滑コンデンサCHは、電力変換器50の出力電圧VHを平滑する。抵抗R1は、平滑コンデンサCHに対して並列に接続される。抵抗R1は、たとえば電源システム5が停止状態であるときなどに、平滑コンデンサCHの残留電荷を放電させるための放電抵抗である。
電力変換器50は、スイッチング素子S1〜S4と、リアクトルL1,L2とを含む。本実施の形態において、スイッチング素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子S1〜S4に対しては、逆並列ダイオードD1〜D4が配置されている。また、スイッチング素子S1〜S4は、制御信号SG1〜SG4にそれぞれ応答して、オンオフを制御することが可能である。すなわち、スイッチング素子S1〜S4は、制御信号SG1〜SG4がHレベルのときにオンする一方で、Lレベルのときにオフする。
スイッチング素子S1は、電力線20およびノードN1の間に電気的に接続される。リアクトルL2は、ノードN1と直流電源10bの正極端子との間に接続される。スイッチング素子S2はノードN1およびN2の間に電気的に接続される。リアクトルL1はノードN2と直流電源10aの正極端子との間に接続される。なお、リアクトルL2は、ノードN1およびノードN3の間に直流電源10bと直列に接続されていればよく、リアクトルL1は、ノードN2および接地配線21の間に直流電源10aと直列に接続されていればよい。
スイッチング素子S3は、ノードN2およびN3の間に電気的に接続される。ノードN3は、直流電源10bの負極端子と電気的に接続される。スイッチング素子S4は、ノードN3および接地配線21の間に電気的に接続される。接地配線21は、負荷30および直流電源10aの負極端子と電気的に接続される。
図1から理解されるように、電力変換器50は、直流電源10aおよび直流電源10bの各々に対応して昇圧チョッパ回路を備えた構成となっている。すなわち、直流電源10aに対しては、スイッチング素子S1,S2を上アーム素子とする一方で、スイッチング素子S3,S4を下アーム素子とする電流双方向の第1の昇圧チョッパ回路が構成される。同様に、直流電源10bに対しては、スイッチング素子S1,S4を上アーム素子とする一方で、スイッチング素子S2,S3を下アーム素子とする電流双方向の第2の昇圧チョッパ回路が構成される。
そして、第1の昇圧チョッパ回路によって、直流電源10aおよび電力線20の間に形成される電力変換経路と、第2の昇圧チョッパ回路によって、直流電源10bおよび電力線20の間に形成される電力変換経路との両方に、スイッチング素子S1〜S4が含まれる。
制御装置40は、負荷30への出力電圧VHを制御するために、スイッチング素子S1〜S4のオンオフを制御する制御信号SG1〜SG4を生成する。なお、図1では図示を省略しているが、直流電源10aの電圧(以下、Vaと表記する)および電流(以下、Iaと表記する)、直流電源10bの電圧(以下、Vbと表記する)および電流(以下、Ibと表記する)、ならびに、出力電圧VHの検出器(電圧センサ,電流センサ)が設けられている。さらに、直流電源10aおよび10bの温度(以下、TaおよびTbと表記する)の検出器(温度センサ)についても配置することが好ましい。これらの検出器の出力は、制御装置40へ与えられる。
図1の構成において、スイッチング素子S1〜S4は、「第1のスイッチング素子」〜「第4のスイッチング素子」にそれぞれ対応し、リアクトルL1およびL2は、「第1のリアクトル」および「第2のリアクトル」にそれぞれ対応する。
図2は、負荷30の構成例を示す概略図である。
図2を参照して、負荷30は、たとえば電動車両の走行用電動機を含むように構成される。負荷30は、平滑コンデンサCHと、インバータ32と、モータジェネレータ35と、動力伝達ギヤ36と、駆動輪37とを含む。
モータジェネレータ35は、車両駆動力を発生するための走行用電動機であり、たとえば、複数相の永久磁石型同期電動機で構成される。モータジェネレータ35の出力トルクは、減速機や動力分割機構によって構成される動力伝達ギヤ36を経由して、駆動輪37へ伝達される。駆動輪37に伝達されたトルクにより電動車両が走行する。また、モータジェネレータ35は、電動車両の回生制動時には、駆動輪37の回転力によって発電する。この発電電力は、インバータ32によってAC/DC変換される。この直流電力は、電源システム5に含まれる直流電源10a,10bの充電電力として用いることができる。
モータジェネレータの他にエンジン(図示せず)が搭載されたハイブリッド自動車では、このエンジンおよびモータジェネレータ35を協調的に動作させることによって、電動車両に必要な車両駆動力が発生される。この際には、エンジンの回転による発電電力を用いて直流電源10a,10bを充電することも可能である。
このように、電動車両は、走行用電動機を搭載する車両を包括的に示すものであり、エンジンおよび電動機により車両駆動力を発生するハイブリッド自動車と、エンジンを搭載しない電気自動車および燃料電池車との両方を含むものである。
(電力変換器の動作モード)
電力変換器50は、直流電源10a,10bと電力線20との間での直流電力変換の態様が異なる複数の動作モードを有する。
図3には、電力変換器50が有する複数の動作モードが示される。
図3を参照して、電力変換器50は、動作モードは、スイッチング素子S1〜S4の周期的なオンオフ制御に伴って直流電源10aおよび/または10bの出力電圧を昇圧する「昇圧モード(B)」と、スイッチング素子S1〜S4のオンオフを固定して直流電源10aおよび/または10bを電力線20と電気的に接続する「直結モード(D)」とに大別される。
昇圧モードには、直流電源10aおよび10bと電力線20との間で並列なDC/DC変換を行なう「パラレル昇圧モード(以下、PBモード)」と、直列接続された直流電源10aおよび10bと電力線20との間でDC/DC変換を行なう「シリーズ昇圧モード(以下、SBモード)」とが含まれる。PBモードは、特許文献2での「パラレル接続モード」に対応し、SBモードは、特許文献2での「シリーズ接続モード」に対応する。
さらに、昇圧モードには、直流電源10aのみを用いて電力線20との間でDC/DC変換を行なう「直流電源10aによる単独モード(以下、aBモード)」と、直流電源10bのみを用いて電力線20との間でDC/DC変換を行なう「直流電源10bによる単独モード(以下、bBモード)」とが含まれる。aBモードでは、直流電源10bは、出力電圧VHが直流電源10bの電圧Vbよりも高く制御されている限りにおいて、電力線20と電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。同様に、bBモードでは、直流電源10aは、出力電圧VHが直流電源10aの電圧Vaよりも高く制御されている限りにおいて、電力線20と電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。
さらに、電力変換器50は、直流電源10aおよび10bのうちのいずれか一方の直流電源が電源システム5から電気的に遮断された場合に、他方の直流電源を用いて電力線20との間でDC/DC変換を行なうための昇圧モードを有する。この昇圧モードには、直流電源10bが電源システム5から電気的に遮断された場合に直流電源10aのみを用いて電力線20との間でDC/DC変換を行なう「直流電源10b遮断時の直流電源10aによる単独モード(以下、aBbCOモード)」と、直流電源10aが電源システム5から電気的に遮断された場合に直流電源10bのみを用いて電力線20との間でDC/DC変換を行なう「直流電源10a遮断時の直流電源10bによる単独モード(以下、bBaCOモード)」とが含まれる。
aBbCOモードでは、システムメインリレーSMR2は、制御装置40からのLレベルの制御信号SE2に応答してオフ状態(開状態)となっている。あるいは、システムメインリレーSMR2には、オフ状態に固定され、オン状態(閉状態)になることができない開故障が発生している。これにより、直流電源10bは電源システム5から電気的に遮断される。
bBaCOモードでは、システムメインリレーSMR1は、制御装置40からのLレベルの制御信号SE1に応答してオフ状態となっている。あるいは、システムメインリレーSMR1には開故障が発生している。これにより、直流電源10aは電源システム5から電気的に遮断される。
ここで、aBbCOモードおよびbBaCOモードは、上述したaBモードおよびbBモードと同様に、一方の直流電源のみを用いて電力線20との間でDC/DC変換を行なう昇圧モードである。しかしながら、aBbCOモードおよびbBaCOモードは、システムメインリレーSMR1,SMR2を用いて他方の直流電源を電源システム5から電気的に遮断した状態においてDC/DC変換を行なう点において、aBモードおよびbBモードとそれぞれ区別される。
昇圧モードに含まれる、PBモード、SBモード、aBモード、bBモード、aBbCOモードおよびbBaCOモードの各々では、電力線20の出力電圧VHは、電圧指令値VH*に従って制御される。これらの各モードにおけるスイッチング素子S1〜S4の制御については後述する。
直結モードには、直流電源10aおよび10bを電力線20に対して並列に接続した状態を維持する「パラレル(以下、PDモード)」と、直流電源10aおよび10bを電力線20に対して直列に接続した状態を維持する「シリーズ直結モード(以下、SDモード)」とが含まれる。
PDモードでは、スイッチング素子S1,S2,S4をオンに固定する一方で、スイッチング素子S3がオフに固定される。これにより、出力電圧VHは、直流電源10a,10の出力電圧Va,Vb(厳密にはVa,Vbのうちの高い方の電圧)と同等となる。Va,Vb間の電圧差は直流電源10a,10bに短絡電流を生じさせるので、当該電圧差が小さいときに限定して、PDモードを適用することができる。
SDモードでは、スイッチング素子S2,S4がオフに固定される一方で、スイッチング素子S1,S3がオンに固定される。これにより、出力電圧VHは、直流電源10a,10の出力電圧Va,Vbの和と同等となる(VH=Va+Vb)。
さらに、直結モードには、直流電源10aのみを電力線20と電気的に接続する「直流電源10aの直結モード(以下、aDモード)」と、直流電源10bのみを電力線20と電気的に接続する「直流電源10bの直結モード(以下、bDモード)」とが含まれる。
aDモードでは、スイッチング素子S1,S2がオンに固定される一方で、スイッチング素子S3,S4がオフに固定される。これにより、直流電源10bは電力線20から切り離された状態となり、出力電圧VHは、直流電源10aの電圧Vaと同等となる(VH=Va)。aDモードでは、直流電源10bは、電力線20と電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。なお、Vb>Vaの状態でaDモードを適用すると、スイッチング素子S2を介して直流電源10bから10aに短絡電流が生じる。このため、aDモードの適用には、Va>Vbが必要条件となる。
同様に、bDモードでは、スイッチング素子S1,S4がオンに固定される一方で、スイッチング素子S2,S3がオフに固定される。これにより、直流電源10aは電力線20から切り離された状態となり、出力電圧VHは、直流電源10bの電圧Vbと同等となる(VH=Vb)。bDモードでは、直流電源10aは、電力線20と電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。なお、Va>Vbの状態でbDモードを適用すると、ダイオードD2を介して直流電源10aから10bに短絡電流が生じる。このため、bDモードの適用には、Vb>Vaが必要条件となる。
直結モードに含まれる、PDモード、SDモード、aDモードおよびbDモードの各々では、電力線20の出力電圧VHは、直流電源10a,10bの電圧Va,Vbに依存して決まるため、直接制御することができなくなる。このため、直結モードに含まれる各モードでは、出力電圧VHが負荷30の動作に適した電圧に設定できなくなることにより、負荷30での電力損失が増加する可能性がある。
一方で、直結モードでは、スイッチング素子S1〜S4がオンオフされないため、電力変換器50の電力損失が大幅に抑制される。したがって、負荷30の動作状態によっては、直結モードの適用によって、負荷30の電力損失増加量よりも電力変換器50での電力損失減少量が多くなることにより、電源システム5全体での電力損失が抑制できる可能性がある。
図4は、直流電源10a,10bを異なる種類の電源で構成した場合における両直流電源の特性の一例を示す概念図である。図4には、横軸にエネルギ、縦軸に電力をプロットした、いわゆるラゴンプロットが示される。一般的に、直流電源の出力パワーおよび蓄積エネルギはトレードオフの関係にあるため、高容量型のバッテリでは高出力を得ることが難しく、高出力型のバッテリでは蓄積エネルギを高めることが難しい。
したがって、直流電源10a,10bは、一方が、蓄積エネルギが高い、いわゆる高容量型の電源で構成されるのに対して、他方が、出力パワーが高い、いわゆる高出力型の電源で構成されることが好ましい。このようにすると、高容量型の電源に蓄積されたエネルギを平準的に長期間使用する一方で、高出力型の電源をバッファとして使用して、高容量型の電源による不足分を出力することができる。
図4の例では、直流電源10aが高容量型の電源で構成される一方で、直流電源10bは高出力型の電源で構成される。したがって、直流電源10aの動作領域110は、直流電源10bの動作領域120と比較して、出力可能な電力範囲が狭い。一方で、動作領域120は、動作領域110と比較して、蓄積可能なエネルギ範囲が狭い。
負荷30の動作点101では、高パワーが短時間要求される。たとえば、電動車両では、動作点101は、ユーザのアクセル操作による急加速時に対応する。これに対して、負荷30の動作点102では、比較的低パワーが長時間要求される。たとえば、電動車両では、動作点102は、継続的な高速定常走行に対応する。
動作点101に対しては、主に、高出力型の直流電源10bからの出力によって対応することができる。一方で、動作点102に対しては、主に、高容量型の直流電源10aからの出力によって対応することができる。これにより、電動車両では、高容量型のバッテ
リに蓄積されたエネルギを長時間に亘って使用することによって、電気エネルギによる走行距離を延ばすことができるとともに、ユーザのアクセル操作に対応した加速性能を速やかに確保することができる。
また、直流電源がバッテリによって構成される場合には、低温時に出力特性が低下する可能性や、高温時に劣化進行を抑制するために充放電が制限される可能性がある。特に、電動車両では、搭載位置の差異によって、直流電源10a,10bの間に温度差が発生するケースも生じる。したがって、電源システム5では、直流電源10a,10bの動作状態(特に温度)に応じて、あるいは、上述したような負荷30の要求に応じて、いずれか一方の直流電源のみを使用した方が、効率的であるケースが存在する。上述したような、直流電源10a,10bの一方のみを使用するモード(aBモード,bBモード)を設けることによって、これらのケースに対応することができる。
さらに、電源システム5において、直流電源10aおよび10bのうちの一方が故障する可能性がある。たとえば、直流電源10aおよび10bのうちの一方の直流電源に対応するシステムメインリレーに開故障が発生するケースや、当該一方の直流電源を構成する複数のバッテリセルの一部に断線や短絡などの異常が発生するケースが存在する。このようなケースにおいては、直流電源の機能が正常に発揮されない。そこで、故障が検出された一方の直流電源を電源システム5から電気的に遮断して、他方の直流電源のみを使用するモード(aBbCOモード,bBaCOモード)を設けることによって、これらのケースに対応することができる。
すなわち、本実施の形態1に従う電力変換器50では、直流電源10a,10bおよび/または負荷30の動作状態に応じて、図3に示した、複数の動作モードのうちのいずれかの動作モードが選択される。動作モードを選択するための処理の詳細については、後程説明する。
(各動作モードでの回路動作)
次に、各動作モードにおける電力変換器50の回路動作を説明する。まず、直流電源10aおよび10bと電力線20との間で並列なDC/DC変換を行なうPBモードでの回路動作について、図5〜図8を用いて説明する。
(PBモードにおける回路動作)
図5および図6に示されるように、スイッチング素子S4またはS2をオンすることによって、直流電源10aおよび10bを電力線20に対して並列に接続することができる。ここで、並列接続モードでは、直流電源10aの電圧Vaと直流電源10bの電圧Vbとの高低に応じて等価回路が異なってくる。
図5(a)に示されるように、Vb>Vaのときは、スイッチング素子S4をオンすることにより、スイッチング素子S2,S3を介して、直流電源10aおよび10bが並列に接続される。このときの等価回路が図5(b)に示される。
図5(b)を参照して、直流電源10aおよび電力線20の間では、スイッチング素子S3のオンオフ制御によって、下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。同様に、直流電源10bおよび電力線20の間では、スイッチング素子S2,S3を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。
一方、図6(a)に示されるように、Va>Vbのときには、スイッチング素子S2をオンすることにより、スイッチング素子S3,S4を介して、直流電源10aおよび10bが並列に接続される。このときの等価回路が図6(b)に示される。
図6(b)を参照して、直流電源10bおよび電力線20の間では、スイッチング素子S3のオンオフ制御によって、下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。同様に、直流電源10aおよび電力線20の間では、スイッチング素子S3,S4を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。
次に、図7および図8を用いて、電力変換器50のPBモードにおける昇圧動作について詳細に説明する。
図7には、PBモードにおける直流電源10aに対するDC/DC変換(昇圧動作)が示される。
図7(a)を参照して、スイッチング素子S3,S4のペアをオンし、スイッチング素子S1,S2のペアをオフすることによって、リアクトルL1にエネルギを蓄積するための電流経路350が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
これに対して、図7(b)を参照して、スイッチング素子S3,S4のペアをオフするとともに、スイッチング素子S1,S2のペアをオンすることによって、リアクトルL1の蓄積エネルギを直流電源10aのエネルギとともに出力するための電流経路351が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
スイッチング素子S3,S4のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S1,S2の少なくとも一方がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1,S2のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S3,S4の少なくとも一方がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、図7(a)の電流経路350および図7(b)の電流経路351が交互に形成される。
この結果、スイッチング素子S1,S2のペアを等価的に上アーム素子とし、スイッチング素子S3,S4のペアを等価的に下アーム素子とする昇圧チョッパ回路が、直流電源10aに対して構成される。図7に示されるDC/DC変換動作では、直流電源10bへの電流流通経路がないため、直流電源10aおよび10bは互いに非干渉である。すなわち、直流電源10aおよび10bに対する電力の入出力を独立に制御することが可能である。
このようなDC/DC変換において、直流電源10aの電圧Vaと、電力線20の出力電圧VHとの間には、下記(1)式に示す関係が成立する。(1)式では、スイッチング素子S3,S4のペアがオンされる期間のデューティ比をDaとする。
VH=1/(1−Da)・Va …(1)
図8には、PBモードにおける直流電源10bに対するDC/DC変換(昇圧動作)が示される。
図8(a)を参照して、スイッチング素子S2,S3のペアをオンし、スイッチング素子S1,S4のペアをオフすることによって、リアクトルL2にエネルギを蓄積するための電流経路360が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
これに対して、図8(b)を参照して、スイッチング素子S2,S3のペアをオフするとともに、スイッチング素子S1,S4のペアをオンすることによって、リアクトルL2の蓄積エネルギを直流電源10bのエネルギとともに出力するための電流経路361が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
スイッチング素子S2,S3のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S1,S4の少なくとも一方がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1,S4のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S2,S3の少なくとも一方がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、図8(a)の電流経路360および図8(b)の電流経路361が交互に形成される。
この結果、スイッチング素子S1,S4のペアを等価的に上アーム素子とし、スイッチング素子S2,S3のペアを等価的に下アーム素子とする昇圧チョッパ回路が、直流電源10bに対して構成される。図8に示されるDC/DC変換動作では、直流電源10aを含む電流経路がないため、直流電源10aおよび10bは互いに非干渉である。すなわち、直流電源10aおよび10bに対する電力の入出力を独立に制御することが可能である。
このようなDC/DC変換において、直流電源10bの電圧Vbと、電力線20の出力電圧VHとの間には、下記(2)式に示す関係が成立する。(2)式では、スイッチング素子S2,S3のペアがオンされる期間のデューティ比をDbとする。
VH=1/(1−Db)・Vb …(2)
また、図7および図8から理解されるように、PBモードでは、スイッチング素子S1〜S4に、直流電源10aと電力線20との間のDC/DC変換による電流と、直流電源10bおよび電力線20の間でのDC/DC変換による電流との両方が流れる。
したがって、両者の電力変換によって流れる電流が、各スイッチング素子において逆方向である場合、たとえば、図7(a)における電流経路350と、図8(a)における電流経路360とが同時に形成されている場合には、両電流経路の電流が打ち消し合うため、スイッチング素子S3の通過電流は小さくなる。このような現象により、PBモードでは、スイッチング素子S1〜S4における損失は、単独の直流電源を用いてDC/DC変換を実行するaBモードまたはbBモードと比較して小さくできる場合がある。
図9には、PBモードにおけるスイッチング素子の制御動作例を説明するための波形図が示される。図9には、直流電源10aのPWM制御に用いられるキャリア波CWaと、直流電源10bのPWM制御に用いられるキャリア波CWbとは、同一周波数かつ同一位相であるときの例が示される。
図9を参照して、たとえば、PBモードでは、特許文献2に記載されるように、直流電源10aおよび10bの一方の出力を、出力電圧VHの電圧偏差ΔVH(ΔVH=VH*−VH)を補償するように制御(電圧制御)するとともに、直流電源10aおよび10bの他方の出力を、電流Ia,Ibの電流偏差を補償するように制御(電流制御)することができる。この際に、電流制御の指令値(Ia*またはIb*)は、当該電源の出力電力を制御するように設定することができる。
一例として、直流電源10bの出力を電圧制御する一方で、直流電源10aの出力を電流制御するようにすると、デューティ比Daは電流偏差ΔIa(ΔIa=Ia*−Ia)に基づいて演算される一方で、デューティ比Dbは、電圧偏差ΔVH(ΔVH=VH*−VH)に基づいて演算される。
直流電源10aの出力を制御するためのデューティ比Daと、キャリア波CWaとの電圧比較に基づいて、制御パルス信号SDaが生成される。同様に、直流電源10bの出力を制御するためのデューティ比Dbと、キャリア波CWbとの比較に基づいて制御パルス信号SDbが生成される。制御パルス信号/SDa,/SDbは、制御パルス信号SDa,SDbの反転信号である。
図10に示されるように、制御信号SG1〜SG4は、制御パルス信号SDa(/SDa)およびSDb(/SDb)の論理演算に基づいて設定される。
スイッチング素子S1は、図7および図8の昇圧チョッパ回路の各々で上アーム素子を形成する。したがって、スイッチング素子S1のオンオフを制御する制御信号SG1は、制御パルス信号/SDaおよび/SDbの論理和によって生成される。この結果、スイッチング素子S1は、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10a)の上アーム素子および、図8の昇圧チョッパ回路(直流電源10b)の上アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
スイッチング素子S2は、図7の昇圧チョッパ回路では上アーム素子を形成し、図8の昇圧チョッパ回路では下アーム素子を形成する。したがって、スイッチング素子S2のオンオフを制御する制御信号SG2は、制御パルス信号/SDaおよびSDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S2は、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10a)の上アーム素子および、図8の昇圧チョッパ回路(直流電源10b)の下アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
同様にして、スイッチング素子S3の制御信号SG3は、制御パルス信号SDaおよびSDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S3は、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10a)の下アーム素子および、図8の昇圧チョッパ回路(直流電源10b)の下アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
また、スイッチング素子S4の制御信号SG4は、制御パルス信号SDaおよび/SDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S4は、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10a)の下アーム素子および、図8の昇圧チョッパ回路(直流電源10b)の上アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
PBモードでは、制御信号SG2およびSG4が相補のレベルに設定されているので、スイッチング素子S2およびS4は相補的にオンオフされる。これにより、図5に示したVb>Vaのときの動作と、図6に示したVa>Vbの動作とが、自然に切替えられる。さらに、スイッチング素子S1,S3が相補にオンオフされることにより、直流電源10a,10bについて、デューティ比Da,Dbに従った直流電力変換が実行できる。
再び図9を参照して、制御信号SG1〜SG4は、図10に示された論理演算式に従って、制御パルス信号SDa(/SDa)およびSDb(/SDb)に基づいて生成される。制御信号SG1〜SG4に従ってスイッチング素子S1〜S4をオンオフすることにより、リアクトルL1を流れる電流I(L1)およびリアクトルL2を流れる電流I(L2)が制御される。電流I(L1)は直流電源10aの電流Iaに相当し、電流I(L2)は直流電源10bの電流Ibに相当する。
このように、PBモードでは、直流電源10a,10bと電力線20との間で並列に直流電力を入出力するDC/DC変換を実行した上で、出力電圧VHを電圧指令値VH*に制御することができる。さらに、電流制御の対象となる直流電源の電流指令値に応じて、当該直流電源の入出力電力を制御することができる。
PBモードでは、負荷30の入出力電力(以下、負荷電力PLとも称する)に対する、電流制御される直流電源からの出力電力による不足分が、電圧制御される直流電源から出力されることになる。このため、電流制御での電流指令値の設定によって、直流電源間での電力分配比を間接的に制御することが可能となる。この結果、PBモードでは、直流電源10a,10b全体が電力線20に対して入出力する総電力PH(PH=Pa+Pb)のうちの、直流電源10aおよび10bの電力分配を制御することができる。また、電流指令値の設定によって、一方の直流電源からの出力電力によって、他方の直流電源を充電する動作も可能である。
(aBモードおよびbBモードにおける回路動作)
直流電源10a,10bの一方のみを用いる昇圧モード(aBモード,bBモード)における回路動作は、図7および図8における回路動作と共通する。
aBモードにおいては、図7(a),(b)に示すスイッチング動作によって、直流電源10bを不使用とする一方で、直流電源10aおよび電力線20(負荷30)の間で双方向のDC/DC変換が実行される。したがって、aBモードでは、直流電源10aの出力を制御するためのデューティ比Daに基づく制御パルス信号SDaに従って、スイッチング素子S1〜S4が制御される。
具体的には、図7(a),(b)に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子を構成するスイッチング素子S3およびS4は、制御パルス信号SDaに従って共通にオンオフ制御される。同様に、昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1およびS2は、制御パルス信号/SDaに従って共通にオンオフ制御される。
同様に、bBモードにおいては、図8(a),(b)に示すスイッチング動作によって、直流電源10aを不使用とする一方で、直流電源10bおよび電力線20(負荷30)の間で双方向のDC/DC変換が実行される。したがって、bBモードでは、直流電源10bの出力を制御するためのデューティ比Dbに基づく制御パルス信号SDbに従って、スイッチング素子S1〜S4が制御される。
具体的には、図8(a),(b)に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子を構成するスイッチング素子S2およびS3は、制御パルス信号SDbに従って共通にオンオフ制御される。同様に、昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1およびS4は、制御パルス信号/SDbに従って共通にオンオフ制御される
(SBモードにおける回路動作)
次に、SBモードでの回路動作を、図11および図12を用いて説明する。
図11(a)に示されるように、スイッチング素子S3をオン固定することによって、直流電源10aおよび10bを電力線20に対して直列に接続することができる。このときの等価回路が図11(b)に示される。
図11(b)を参照して、SBモードでは、直列接続された直流電源10aおよび10bと電力線20との間では、スイッチング素子S2,S4を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、スイッチング素子S2,S4のオフ期間にオンされることによって、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。また、オン固定されたスイッチング素子S3により、リアクトルL1をスイッチング素子S4と接続する配線15が等価的に形成される。
次に、図12を用いて、SBモードにおけるDC/DC変換(昇圧動作)を説明する。
図12(a)を参照して、直流電源10aおよび10bを直列接続するためにスイッチング素子S3がオン固定される一方で、スイッチング素子S2,S4のペアがオンし、スイッチング素子S1がオフされる。これにより、リアクトルL1,L2にエネルギを蓄積するための電流経路370,371が形成される。この結果、直列接続された直流電源10a,10bに対して、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
これに対して、図12(b)を参照して、スイッチング素子S3をオン固定したままで、図12(a)とは反対に、スイッチング素子S2,S4のペアがオフし、スイッチング素子S1がオンされる。これにより、電流経路372が形成される。電流経路372により、直列接続された直流電源10a,10bからのエネルギと、リアクトルL1,L2に蓄積されたエネルギとの和が電力線20へ出力される。この結果、直列接続された直流電源10a,10bに対して、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
スイッチング素子S3がオン固定された下で、スイッチング素子S2,S4のペアがオンされる一方でスイッチング素子S1がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1がオンされる一方でスイッチング素子S2,S4がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、図12(a)の電流経路370,371および図12(b)の電流経路372が交互に形成される。
SBモードのDC/DC変換では、直流電源10aの電圧Va、直流電源10bの電圧Vb、および、電力線20の出力電圧VHの間には、下記(3)式に示す関係が成立する。(3)式では、スイッチング素子S2,S4のペアがオンされる第1の期間のデューティ比をDcとする。
VH=1/(1−Dc)・(Va+Vb) …(3)
ただし、VaおよびVbが異なるときや、リアクトルL1,L2のインダクタンスが異なるときには、図12(a)の動作終了時におけるリアクトルL1,L2の電流値がそれぞれ異なる。したがって、図12(b)の動作への移行直後には、リアクトルL1の電流の方が大きいときには電流経路373を介して差分の電流が流れる。一方、リアクトルL2の電流の方が大きいときには電流経路374を介して、差分の電流が流れる。
図13には、SBモードにおけるスイッチング素子の制御動作例を説明するための波形図が示される。
SBモードでは、特許文献2に記載されるように、出力電圧VHの電圧偏差ΔVH(ΔVH=VH*−VH)を補償するように、(3)式のデューティ比Dcが演算される。そして、キャリア波CWとデューティ比Dcとの電圧比較に基づいて、制御パルス信号SDcが生成される。制御パルス信号/SDcは、制御パルス信号SDcの反転信号である。SBモードでは、直流電圧(Va+Vb)と、出力電圧VHとの間のDC/DC変換が、図10に示された昇圧チョッパ回路によって実行される。
図14に示されるように、制御信号SG1〜SG4は、制御パルス信号SDc(/SDc)の論理演算に基づいて設定することができる。
制御パルス信号SDcは、昇圧チョッパ回路の下アーム素子を構成するスイッチング素子S2,S4のペアの制御信号SG2,SG4とされる。同様に、昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1の制御信号SG1は、制御パルス信号/SDcによって得られる。この結果、下アーム素子を構成するスイッチング素子S2,S4のペアがオンされる期間と、上アーム素子を構成するスイッチング素子S1がオンされる期間とが相補的に設けられる。
SBモードでは、直流電源10aおよび10bが直列接続された状態で、電力線20(負荷30)との間で双方向のDC/DC変換が実行される。したがって、直流電源10aの出力電力Paおよび直流電源10bの出力電力Pbを直接制御することができない。すなわち、直流電源10a,10bの出力電力Pa,Pbの比は、電圧Va,Vbの比によって、下記(4)式に従って自動的に決まる。
Pa:Pb=Va:Vb …(4)
なお、直流電源10a,10bからの出力電力の和(Pa+Pb)によって負荷30へ入出力される供給されることは、PBモードと同様である。
(aBbCOモードおよびbBaCOモードにおける回路動作)
次に、aBbCOモードおよびbBaCOモードでの回路動作を、図15から図18を用いて説明する。
[aBbCOモードにおける回路動作]
図15には、aBbCOモードにおける直流電源10aに対するDC/DC変換(昇圧動作)が示される。
図15(a)を参照して、aBbCOモードにおいては、システムメインリレーSMR2がオフ状態とされることによって、直流電源10bが電源システム5から電気的に遮断されている。この状態で、スイッチング動作によって、直流電源10aおよび電力線20(負荷30)の間で双方向のDC/DC変換が実行される。
ここで、aBCOモードにおける回路動作を、aBモードにおける回路動作と共通とすると、DC/DC変換の実行中に平滑コンデンサCbの電圧が上昇し、平滑コンデンサCbが過電圧状態に至る可能性がある。具体的には、図7(a),(b)に示した昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1およびS2をオンすることによって、リアクトルL1の蓄積エネルギを直流電源10aのエネルギとともに出力するための電流経路351が形成される。このとき、この出力エネルギの一部を平滑コンデンサCbが受ける場合がある。平滑コンデンサCbは直流電源10bに比べて容量が小さいため、このエネルギを受けて平滑コンデンサCbの電圧が徐々に上昇し、過電圧状態に至ってしまう虞がある。
そこで、aBbCOモードでは、スイッチング素子S1〜S4のオンオフ制御によって、平滑コンデンサCbの端子間を短絡させた状態を維持した上で、直流電源10aおよび電力線20(負荷30)の間で双方向のDC/DC変換を実行する。
具体的には、図15(a)を参照して、スイッチング素子S2およびS3をオン固定することにより、平滑コンデンサCbの端子間を短絡させる。そして、スイッチング素子S4をオンし、スイッチング素子S1をオフすることによって、リアクトルL1にエネルギを蓄積するための電流経路380が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
これに対して、図15(b)を参照して、スイッチング素子S4をオフするとともに、スイッチング素子S1をオンすることによって、リアクトルL1の蓄積エネルギを直流電源10aのエネルギとともに出力するための電流経路381が形成される。
スイッチング素子S2およびS3をオン固定したまま、スイッチング素子S4がオンされる一方で、スイッチング素子S1がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1がオンされる一方で、スイッチング素子S4がオフされている第2の期間とを交互に繰り返すことにより、図15(a)の電流経路380および図15(b)の電流経路381が交互に形成される。
この結果、スイッチング素子S1を等価的に上アーム素子とし、スイッチング素子S4を等価的に下アーム素子とする昇圧チョッパ回路が直流電源10aに対して構成される。なお、このようなDC/DC変換において、直流電源10aの電圧Vaと、電力線20の出力電圧VHとの間には、上記(1)式に示す関係が成立する。すなわち、(1)式のDaは、スイッチング素子S4がオンされる期間のデューティ比を示している。
図16には、aBbCOモードにおけるスイッチング素子の制御動作例を説明するための波形図が示される。
aBbCOモードでは、出力電圧VHの電圧偏差ΔVH(ΔVH=VH*−VH)を補償するように、(1)式のデューティ比Daが演算される。そして、キャリア波CWaとデューティ比Daとの電圧比較に基づいて、制御パルス信号SDaが生成される。制御パルス信号/SDaは、制御パルス信号SDaの反転信号である。
図19に示されるように、制御信号SG1〜SG4は、制御パルス信号SDa(/SDa)の論理演算に基づいて設定することができる。制御パルス信号SDaは、昇圧チョッパ回路の下アーム素子を構成するスイッチング素子S4の制御信号SG4とされる。同様に、昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1の制御信号SG1は、制御パルス信号/SDaによって得られる。なお、スイッチング素子S2,S3の制御信号SG2,SG3をHレベルに固定することにより、スイッチング素子S2,S3はオン固定される。
[bBaCOモードにおける回路動作]
図17には、bBaCOモードにおける直流電源10bに対するDC/DC変換(昇圧動作)が示される。
図17(a)を参照して、bBaCOモードにおいては、システムメインリレーSMR1がオフ状態とされることによって、直流電源10aが電源システム5から電気的に遮断されている。この状態で、スイッチング素子S1〜S4のオンオフ制御によって、平滑コンデンサCaの端子間を短絡させた状態を維持した上で、直流電源10bおよび電力線20(負荷30)の間で双方向のDC/DC変換を実行する。これにより、DC/DC変換の実行中に平滑コンデンサCaの電圧が上昇し、平滑コンデンサCaが過電圧状態に至るのを防止することができる。
具体的には、図17(a)を参照して、スイッチング素子S3およびS4をオフ固定することにより、平滑コンデンサCaの端子間を短絡させる。そして、スイッチング素子S2をオンし、スイッチング素子S1をオフすることによって、リアクトルL2にエネルギを蓄積するための電流経路390が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
これに対して、図17(b)を参照して、スイッチング素子S2をオフするとともに、スイッチング素子S1をオンすることによって、リアクトルL1の蓄積エネルギを直流電源10bのエネルギとともに出力するための電流経路391が形成される。
スイッチング素子S3およびS4をオフ固定したまま、スイッチング素子S2がオンされる一方で、スイッチング素子S1がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1がオンされる一方で、スイッチング素子S2がオフされている第2の期間とを交互に繰り返すことにより、図17(a)の電流経路390および図17(b)の電流経路391が交互に形成される。
この結果、スイッチング素子S1を等価的に上アーム素子とし、スイッチング素子S2を等価的に下アーム素子とする昇圧チョッパ回路が直流電源10bに対して構成される。なお、このようなDC/DC変換において、直流電源10bの電圧Vbと、電力線20の出力電圧VHとの間には、上記(2)式に示す関係が成立する。すなわち、(2)式のDbは、スイッチング素子S2がオンされる期間のデューティ比を示している。
図18には、bBaCOモードにおけるスイッチング素子の制御動作例を説明するための波形図が示される。
bBaCOモードでは、出力電圧VHの電圧偏差ΔVH(ΔVH=VH*−VH)を補償するように、(2)式のデューティ比Dbが演算される。そして、キャリア波CWbとデューティ比Dbとの電圧比較に基づいて、制御パルス信号SDbが生成される。制御パルス信号/SDbは、制御パルス信号SDbの反転信号である。
図19に示されるように、制御信号SG1〜SG4は、制御パルス信号SDb(/SDb)の論理演算に基づいて設定することができる。制御パルス信号SDbは、昇圧チョッパ回路の下アーム素子を構成するスイッチング素子S2の制御信号SG2とされる。同様に、昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1の制御信号SG1は、制御パルス信号/SDbによって得られる。なお、スイッチング素子S3,S4の制御信号SG3,SG4をHレベルに固定することにより、スイッチング素子S3,S4はオン固定される。
(制御モードの選択処理)
次に本実施の形態に従う電力変換器制御における制御モードの選択処理について説明する。
図20には、図3に示した各動作モードにおける直流電源10a,10b間での電力分配比(k)の制御可否、および、出力電圧VHの設定可能範囲が示される。
図20を参照して、PBモードでは、電流制御対象となる直流電源での電流指令値の設定により、直流電源10a,10b間の電力分配比kを制御することができる。なお、電力分配比kは、総電力PH(PH=Pa+Pb)に対する直流電源10aの出力電力Paの比で定義される(k=Pa/PH)。すなわち、PBモードでは、0〜1.0の範囲内で任意の値に、電力分配比kを設定することができる。なお、PBモードでは、出力電圧VHは、電圧VaおよびVbの最大値であるmax(Va,Vb)から、出力電圧VHの制御上限値である上限電圧VHmaxまでの範囲内で制御することができる(max(Va,Vb)≦VH≦VHmax)。なお、max(Va,Vb)について、Va>Vbのときはmax(Va,Vb)=Vaであり、Vb>Vaのときはmax(Va,Vb)=Vbである。また、上限電圧VHmaxは、部品の耐圧等を考慮して定められる上限値である。
SBモードでは、電力分配比kは、(4)式に示したように、電圧Va,Vbによって自動的に決まるため、各直流電源10a,10bの出力電力Pa,Pbを独立に制御することはできない。また、出力電圧VHは(Va+Vb)よりも低く設定することができない。SBモードでは、出力電圧VHは、(Va+Vb)から上限電圧VHmaxまでの範囲内で制御することができる(Va+Vb<VH≦VHmax)。
aBモードでは、直流電源10aのみが使用されるので電力分配比k=1.0に固定される。そして、式(1)のデューティ比Daに基づいて図8に示した昇圧チョッパ回路を制御することにより、出力電圧VHは、max(Va,Vb)から上限電圧VHmaxまでの範囲内で制御することができる(max(Va,Vb)<VH≦VHmax)。
bBモードでは、直流電源10bのみが使用されるため、電力分配比k=0に固定される。そして、式(2)のデューティ比Dbに基づいて図8に示した昇圧チョッパ回路を制御することにより、出力電圧VHは、max(Va,Vb)からVHmaxの範囲内で制御することができる(max(Va,Vb)<VH≦VHmax)。
aBbCOモードでは、直流電源10aのみが使用されるため、電力分配比k=1.0に固定される。そして、式(1)のデューティ比Daに基づいて図15に示した昇圧チョッパ回路を制御することにより、出力電圧VHは、VaからVHmaxの範囲内で制御することができる(Va<VH≦VHmax)。
bBaCOモードでは、直流電源10bのみが使用されるため、電力分配比k=0に固定される。そして、式(2)のデューティ比Dbに基づいて図17に示した昇圧チョッパ回路を制御することにより、出力電圧VHは、VbからVHmaxの範囲内で制御することができる(Vb<VH≦VHmax)。
PDモードでは、直流電源10aおよび10bが並列に電力線20に対して接続される。このため、電力分配比kは、直流電源10aおよび10bの内部抵抗に依存して一意に決まるので、各直流電源10a,10bの出力電力Pa,Pbを独立に制御することはできない。具体的には、直流電源10aの内部抵抗Raおよび直流電源10bの内部抵抗Rを用いると、k=Rb/(Ra+Rb)となる。また、VH=Va(VH=Vb)に固定されるため、電圧指令値VH*に応じて出力電圧VHを制御することはできない。なお、上述のように、PDモードは、電圧VaおよびVbの電圧差が小さいときに限定して適用することができる。
SDモードでは、直流電源10aおよび10bが直列に電力線20に対して電気的に接続される。このため、出力電圧VH=Va+Vbに固定される。すなわち、電圧指令値VH*に応じて出力電圧VHを制御することはできない。また、電力分配比kは、SBモードと同様に、電圧VaおよびVbに従って自動的に決まるため、任意には制御できない。
aDモードの適用時には、上述のようにVa>Vbが条件であるため、直流電源10bが電力線20から切り離される一方で、直流電源10aが電力線20に対して接続される。このため、出力電圧VH=Vaに固定される。また、電力供給は直流電源10aからのみ実行されるので、電力分配比k=1.0に固定される。
同様に、bDモードの適用時には、上述のようにVb>Vaが条件であるため、直流電源10aが電力線20から切り離される一方で、直流電源10bが電力線20に対して接続される。このため、出力電圧VH=Vbに固定される。また、電力供給は直流電源10bからのみ実行されるので、電力分配比k=0に固定される。
図20から理解されるように、各動作モードにおいて、電力変換器50が出力可能な出力電圧VHの範囲が異なる。また、PBモードでは直流電源10a,10bの間での電力配分が制御可能である一方で、その他のSBモード、SDモード、aBモード、bBモード、aBbCOモード、bBaCOモード、aDモード、bDモードおよびPDモードでは、直流電源10a,10bの間での電力配分が任意には制御できない
(昇圧モードにおける制御動作)
図21は、昇圧モードに属する各動作モードにおける制御信号および制御データの設定を説明する図表である。図21を参照して、昇圧モードにおける各動作モードは、共通の制御構成において、電力分配比k、電流フィードバック制御の実行対象となる直流電源、および制御信号SG1〜SG4の演算ロジックを変更することにより、動作モードの違いに対応している。
PBモードでは、0≦k≦1.0の任意の値に、電力分配比kを設定することができる。電力分配比kは、たとえば、直流電源10a,10bの状態(たとえば、SOCのバランスないし上下限電力のバランス)、あるいは出力電力レベル(PH)等に基づいて決めることができる。
循環電力値Prは、直流電源10bを充電するための直流電源10aからの出力電力に相当する。循環電力値Prが設定されないとき(Pr=0)には、直流電源10aおよび10bの間での充放電は実行されない。一方、たとえば、直流電源10a,10bのSOCが不均衡である場合には、低SOC側の直流電源の充電を促進するように循環電力値Prを設定する。PBモードでは、循環電力値Prについても制御上は任意の値に設定することができる。PBモードでは、出力電圧VHを電圧指令値VH*に制御するために必要な総電力指令値PH*は、電力分配比kに従って電力指令値Pa*,Pb*に分配される。そして、電力指令値Pa*と電圧Vaの検出値とに基づいて、直流電流Iaの電流指令値Ia*が設定されるとともに、電力指令値Pb*と電圧Vbの検出値とに基づいて、直流電流Ibの電流指令値Ib*が設定される。この設定された電流指令値Ia*,Ib*に従って、直流電源10a,10bの両方の電流Ia,Ibが制御される。
aBモードでは、図7(a),(b)に示すスイッチング動作によって、スイッチング素子S1〜S4が形成する昇圧チョッパ回路によって、直流電源10aおよび電力線20(負荷30)の間で双方向DC/DC変換が実行される。したがって、aBモードでは、直流電源10aの出力を制御するためのデューティ比Daに基づく制御パルス信号SDaに従って、スイッチング素子S1〜S4が制御される。具体的には、図7(a),(b)に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子を構成するスイッチング素子S3およびS4は、制御パルス信号SDaに従って共通にオンオフ制御される。同様に、昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1およびS2は、制御パルス信号/SDaに従って共通にオンオフ制御される。
aBモードでは、直流電源10bが非使用(充放電回避)とされるので、循環電力値Pr=0に固定される。さらに、電力分配比k=1.0に固定することにより、電力指令値Pa*=PH*に設定される一方で、電力指令値Pb*=0に設定される。さらに、電流フィードバック制御は、直流電源10aに対してのみ実行される。すなわち、PBモードと同様に、電力指令値Pa*に従って設定された電流指令値Ia*と電流Iaの検出値との電流偏差に基づいて、直流電源10aの電流Iaが制御される。
bBモードでは、図8(a),(b)に示すスイッチング動作によって、スイッチング素子S1〜S4が形成する昇圧チョッパ回路によって、直流電源10bおよび電力線20(負荷30)の間で双方向のDC/DC変換が実行される。したがって、bBモードでは、直流電源10bの出力を制御するためのデューティ比Dbに基づく制御パルス信号SDbに従って、スイッチング素子S1〜S4が制御される。具体的には、図8(a),(b)に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子を構成するスイッチング素子S2およびS3は、制御パルス信号SDbに従って共通にオンオフ制御される。同様に、昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1およびS4は、制御パルス信号/SDbに従って共通にオンオフ制御される。
bBモードにおいても、PBモードおよびaBモードと同様に、出力電圧VHの電圧偏差ΔVHに基づいて総電力指令値PH*が設定される。bBモードでは直流電源10aは不使用とされるので、循環電力値Pr=0に固定される。さらに、電力分配比k=0に固定することにより、電力指令値Pb*=PH*に設定される一方で、電力指令値Pa*=0に設定される。さらに、電流フィードバック制御は、直流電源10bに対してのみ実行される。すなわち、PBモードと同様に、電力指令値Pb*に従って設定された電流指令値Ib*と電流Ibの検出値との電流偏差に基づいて、直流電源10bの電流Ibが制御される。
SBモードでは、直流電源10aおよび10bが直列接続された状態で、電力線20(負荷30)との間で双方向のDC/DC変換が実行される。したがって、直流電源10aおよび直流電源10bを流れる電流は共通となる(Ia=Ib)。このため、直流電源10aの出力電力Paおよび直流電源10bの出力電力Pbを直接制御することができない。すなわち、SBモードにおける電力Pa,Pbの比は、電圧Va,Vbの比によって、上記(4)式に従って自動的に決まる。SBモードでは、電力分配比kは、式(4)に沿って求められる式(5)に従って、直流電源10a,10bの電圧Va,Vbの現在値(検出値)に基づいて設定される。
k=Va/(Va+Vb) …(5)
また、SBモードでは、直流電源10a,10b間での充放電はできないので、循環電力値Pr=0に設定される。SBモードでは、PBモードと同様に、出力電圧VHの電圧偏差ΔVHに基づいて総電力指令値PH*が設定される。総電力指令値PH*は、直列接続された直流電源10a,10bの間での、現在の電圧Va,Vbに基づく電力分配比kに従って、電力指令値Pa*およびPb*に分配される。
SBモードでは、Ia=Ibのため電流フィードバック制御は、直流電源10a,10bの一方のみで実行する。たとえば、直接電力指令値を制限することが可能である、すなわち、厳格に過電力から保護される直流電源10aに対して電流フィードバック制御が実行される。
aBbCOモードでは、図15(a),(b)に示すスイッチング動作によって、スイッチング素子S1〜S4が形成する昇圧チョッパ回路によって、直流電源10aおよび電力線20(負荷30)の間で双方向DC/DC変換が実行される。したがって、aBモードでは、直流電源10aの出力を制御するためのデューティ比Daに基づく制御パルス信号SDaに従って、スイッチング素子S1〜S4が制御される。具体的には、図15(a),(b)に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子を構成するスイッチング素子S4は、制御パルス信号SDaに従ってオンオフ制御される。同様に、昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1は、制御パルス信号/SDaに従ってオンオフ制御される。スイッチング素子S2,S3はオン固定される。
aBbCOモードでは、aBモードと同様に、循環電力値Pr=0に固定されるとともに、電力分配比k=1.0に固定される。さらに、電流フィードバック制御は、直流電源10aに対してのみ実行される。すなわち、aBモードと同様に、電力指令値Pa*に従って設定された電流指令値Ia*と電流Iaの検出値との電流偏差に基づいて、直流電源10aの電流Iaが制御される。
bBaCOモードでは、図17(a),(b)に示すスイッチング動作によって、スイッチング素子S1〜S4が形成する昇圧チョッパ回路によって、直流電源10bおよび電力線20(負荷30)の間で双方向のDC/DC変換が実行される。したがって、bBaCOモードでは、直流電源10bの出力を制御するためのデューティ比Dbに基づく制御パルス信号SDbに従って、スイッチング素子S1〜S4が制御される。具体的には、図17(a),(b)に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子を構成するスイッチング素子S2は、制御パルス信号SDbに従ってオンオフ制御される。同様に、昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1は、制御パルス信号/SDbに従ってオンオフ制御される。スイッチング素子S3,S4はオン固定される。
bBaCOモードにおいても、bBモードと同様に、出力電圧VHの電圧偏差ΔVHに基づいて総電力指令値PH*が設定される。bBaCOモードでは、bBモードと同様に、循環電力値Pr=0に固定されるとともに、電力分配比k=0に固定される。さらに、電流フィードバック制御は、直流電源10bに対してのみ実行される。すなわち、bBモードと同様に、電力指令値Pb*に従って設定された電流指令値Ib*と電流Ibの検出値との電流偏差に基づいて、直流電源10bの電流Ibが制御される。
本実施の形態に従う電力変換器制御では、図1に示した電力変換器50の制御動作について、出力電圧VHを電圧指令値VH*に制御する昇圧モードに属する各動作モード間で、共通の制御演算を適用することができる。このため、複数の動作モードを選択的に適用する電力変換器50の制御演算負荷を軽減することができる。
図22には、動作モードを選択する際の制御処理を説明するフローチャートである。たとえば、制御装置40が予め格納されたプログラムを実行することにより、フローチャートに従った一連の制御処理が制御周期毎に実行される。
図22を参照して、制御装置40は、負荷30の駆動中、ステップS10により、システムメインリレーSMR1がオン状態とされているか否かを判定する。システムメインリレーSMR1,SMR2は、通常、電源システム5の起動時に制御装置40によってオン状態にされると、電源システム5の停止時までオン状態に維持される。制御装置40は、負荷30の駆動中、直流電源10a,10bの動作状態(電源状態)を監視している。電源状態は、たとえば、電圧Va,Vb、電流Ia,Ib、温度Ta,Tb等を含む。そして、制御装置40は、直流電源10aに故障が検出された場合には、システムメインリレーSMR1をオン状態からオフ状態に切り替えることによって、直流電源10aを電源システム5から電気的に遮断させる。
制御装置40は、システムメインリレーSMR1がオフ状態とされているとき、すなわち、直流電源10aが電源システム5から電気的に遮断されているときには(ステップS10のNO判定時)には、ステップS30により、電力変換器50が有する複数の動作モード(図3)の中からbBaCOモードを選択する。これにより、図17(a),(b)に示すスイッチング動作によって、スイッチング素子S1〜S4が形成する昇圧チョッパ回路によって、直流電源10bおよび電力線20(負荷30)の間で双方向のDC/DC変換が実行される。
一方、制御装置40は、システムメインリレーSMR1がオン状態とされているとき(ステップS10のYES判定時)には、ステップS20により、システムメインリレーSMR2がオン状態とされているか否かを判定する。制御装置40は、直流電源10bに故障が検出された場合には、システムメインリレーSMR2をオン状態からオフ状態に切り替えることによって、直流電源10bを電源システム5から電気的に遮断させる。
制御装置40は、システムメインリレーSMR2がオフ状態とされているとき、すなわち、直流電源10bが電源システム5から電気的に遮断されているときには(ステップS20のNO判定時)には、ステップS40により、電力変換器50が有する複数の動作モードの中からbBaCOモードを選択する。これにより、図15(a),(b)に示すスイッチング動作によって、スイッチング素子S1〜S4が形成する昇圧チョッパ回路によって、直流電源10aおよび電力線20(負荷30)の間で双方向DC/DC変換が実行される。
これに対して、制御装置40は、システムメインリレーSMR1およびSMR2がともにオン状態とされているときには(ステップS20のYES判定時)、ステップS50により、複数の動作モードのうち、昇圧モード(PBモード、aBモード、bBモード、SBモード)および直結モード(aDモード、bDモード、PDモードおよびSDモード)の合計8個の動作モードのうちのいずれかを選択する。そして、制御装置40は、選択した動作モードを電力変換器50に適用することにより、直流電源10aおよび/または10bと、電力線20との間でDC/DC変換を実行する。
なお、ステップS20における動作モードの選択は、負荷30の動作状態(たとえば、トルクおよび回転数)に応じて求められた出力電圧VHに関する負荷要求電圧と、直流電源10a,10bの動作状態とに応じて実行される。たとえば、制御装置40は、複数の動作モードのうちの負荷要求電圧以上の電圧を電力変換器50が出力可能な動作モード群を選択する。そして、制御装置40は、当該動作モード群のうちから、現在の動作状態に応じて電源システム5の電力損失が最小となる動作モードを選択する。
このように、本実施施の形態に従う電源システムの制御によれば、複数の直流電源のうちのいずれかの直流電源において故障が生じても、当該直流電源に対応する平滑コンデンサの過充電から電源システムを保護しつつ、他の直流電源を有効活用して負荷電力を確保することができる。たとえば、負荷30が電動車両の走行用電動機を含む構成である場合には(図2)、直流電源10a,10bのうちの一方の直流電源に故障が生じても、他方の直流電源を有効活用して車両駆動力を確保することができる。
なお、本実施の形態において、負荷30は、直流電圧(出力電圧VH)によって動作する機器であれば、任意の機器によって構成できる点について確認的に記載する。すなわち、本実施の形態では、電動車両の走行用電動機を含むように負荷30が構成される例を説明したが、本発明の適用はこのような負荷に限定されるものではない。
また、本実施の形態では、2個の直流電源10a,10bと、共通の電力線20との間でDC/DC変換を実行する電力変換器50を例示したが、3個以上の直流電源が設けられる構成に対しても、同様に本発明を適用することが可能である。たとえば、n個(n≧3)の直流電源のそれぞれに対応して昇圧チョッパ回路を設けるように電力変換器50を構成することができる。このような構成においても、n個の直流電源のうちの1つの直流電源が電源システムから電気的に遮断された場合には、複数のスイッチング素子が形成する昇圧チョッパ回路によって、当該1つの直流電源に対応する平滑コンデンサの端子間を短絡させるとともに、他の(n−1)個の直流電源および電力線(負荷)の間で双方向DC/DC変換を実行することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。