JP2015222635A - 燃料電池 - Google Patents

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Eriko Nishino
英里子 西野
浩史 岸
Hiroshi Kishi
浩史 岸
朝澤 浩一郎
Koichiro Asazawa
浩一郎 朝澤
内田 誠
Makoto Uchida
誠 内田
渡辺 政廣
Masahiro Watanabe
政廣 渡辺
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Abstract

【課題】クロスリークを抑制させた燃料電池を提供すること。
【解決手段】燃料電池1は、電解質層4と、電解質層4を挟んで対向配置され、燃料が供給される燃料側電極2、および、酸素が供給される酸素側電極3とを有する燃料電池セルを備え、燃料側電極2は、燃料化合物を含有する水に対する接触角が125度以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池に関する。
従来、燃料電池として、アルカリ形(AFC)、固体高分子形(PEFC)、リン酸形(PAFC)、溶融炭酸塩形(MCFC)、固体電解質形(SOFC)など、各種燃料電池が知られている。これらの燃料電池は、例えば、自動車用途など、各種用途での使用が検討されている。
例えば、固体高分子形燃料電池は、通常、複数の燃料電池セルが積層されるスタック構造として形成されている。燃料電池セルは、燃料が供給される燃料側電極(アノード触媒層)と、酸素が供給される酸素側電極(カソード触媒層)とを有しており、これらの電極は、固体高分子膜からなる電解質層を挟んで対向配置されている。
このような燃料電池セルは、例えば、陰イオン(アニオン)交換樹脂を含有する固体電解質膜の両面(燃料側電極面および酸素側電極面)のそれぞれに、触媒と樹脂とを含有する電極インクを塗布し、乾燥させ、燃料側電極および酸素側電極を形成することにより、膜電極接合体(MEA)として製造される(例えば、特許文献1参照。)。
特開2013−47309号公報
しかしながら、一般的に、燃料電池では、燃料側電極に供給される液体燃料が、電気化学反応を起こさないまま燃料側電極および固体高分子膜を通過して、酸素側電極に漏出する現象(クロスリーク)が生じる。このクロスリークにより、発電効率が低下する不具合がある。
そこで、本発明の目的は、クロスリークが抑制された燃料電池を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の燃料電池は、電解質層と、前記電解質層を挟んで対向配置され、燃料が供給される燃料側電極、および、酸素が供給される酸素側電極とを有する燃料電池セルを備え、前記燃料側電極は、燃料化合物を含有する水に対する接触角が125度以上であることを特徴としている。
また、本発明の燃料電池では、前記燃料側電極は、多孔質を形成し、前記燃料側電極における細孔径20μm以上の細孔の割合が50%以下であることが好適である。
また、本発明の燃料電池は、電解質層と、前記電解質層を挟んで対向配置され、燃料が供給される燃料側電極、および、酸素が供給される酸素側電極とを有する燃料電池セルを備え、前記燃料側電極は、多孔質を形成し、前記燃料側電極における細孔径20μm以上の細孔の割合が50%以下であることを特徴としている。
本発明の燃料電池では、燃料電極側に供給される液体燃料が酸素電極側に対して漏出(クロスリーク)する量が低減されている。そのため、発電性能に優れる。
図1は、本発明の燃料電池の一実施形態に用いられる燃料電池を示す概略構成図である。
図1において、燃料電池1は、固体高分子形燃料電池であって、複数の燃料電池セルSを備えており、これらの燃料電池セルSが積層されたスタック構造(セル積層体15(後述))として形成されている。
なお、図1においては、図解しやすいように1つの燃料電池セルSを取り出して示している。
燃料電池セルSは、電解質層4と、電解質層4を挟んで対向配置され、液体燃料(後述)が供給される燃料側電極2、および、酸素が供給される酸素側電極3とを備えている。
電解質層4は、例えば、アニオン成分またはカチオン成分が移動可能な層であり、具体的には、アニオン交換膜またはカチオン交換膜を用いて形成されている。好ましくは、アニオン交換膜が挙げられる。
アニオン交換膜としては、アニオン成分(例えば、水酸化物イオン(OH)など)が移動可能な媒体であれば、特に限定されず、例えば、4級アンモニウム基、ピリジニウム基などのアニオン交換基を有する固体高分子膜(アニオン交換樹脂)が挙げられる。
アニオン交換膜を形成する固体高分子としては、例えば、ポリスチレンおよびその変性体などの炭化水素系の固体高分子膜などが挙げられる。
また、アニオン交換膜を形成する固体高分子は、その分子構造において、架橋構造を有していてもよい。
このようなアニオン交換膜は、特に制限されないが、例えば、特開2013−47309号公報に記載の方法などによって、得ることができる。
また、アニオン交換膜は、市販品として入手可能であり、例えば、セレミオン(旭硝子社製)、ネオセプタ(アストム社製)などが挙げられる。
また、電解質層4の膜厚は、例えば、10〜100μmである。
燃料側電極2は、例えば、触媒およびイオン交換樹脂を含有する電極材料により形成されている。
触媒としては、特に制限されず、例えば、白金族元素(ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt))、鉄族元素(鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni))などの周期表(IUPAC Periodic Table of the Elements(version date 22 June 2007)に従う。以下同じ。)第8〜10(VIII)族元素や、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)などの周期表第11(IB)族元素、さらには亜鉛(Zn)などの金属単体や、それらの合金などが挙げられる。好ましくは、鉄族元素が挙げられ、より好ましくは、鉄が挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
また、触媒は、触媒担体に触媒が担持された担持触媒であってもよい。触媒担体としては、例えば、カーボンなどの多孔質物質が挙げられる。触媒の触媒担体に対する担持量は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
イオン交換樹脂としては、好ましくは、アニオン交換樹脂が挙げられる。具体的には、炭化水素系アイオノマー、フッ素系アイオノマー、ウレタン系アイオノマーなどのアイオノマーが挙げられ、より好ましくは、炭化水素系アイオノマーが挙げられる。
イオン交換樹脂のイオン交換容量は、例えば、0.1mmol/g以上、好ましくは、0.4mmol/g以上であり、また、例えば、1.5mmol/g以下、好ましくは、1.0mmol/g以下、さらに好ましくは、0.6mmol/g以下である。
イオン交換樹脂のイオン交換容量が上記範囲内である場合、得られる燃料側電極の、燃料含有水(後述)に対する接触角を向上させたり、大孔径(20μm以上)の細孔の割合を低減することができる。
イオン交換容量の測定方法は、実施例にて詳述する。なお、2種類以上のアイオノマーを併用する場合のイオン交換容量は、各アイオノマーのイオン交換容量に各アイオノマーのモル分率を乗じたものを合算する。
イオン交換樹脂の含有割合は、触媒100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、2質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
また、燃料側電極2は、フッ素系樹脂を含有していてもよい。フッ素系樹脂を含有するインクを用いて燃料側電極2を作製すると、燃料側電極の燃料含有水に対する接触角を向上させたり、大孔径(20μm以上)の細孔の割合を低減することができる。
フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体などが挙げられる。好ましくは、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が挙げられる。
フッ素系樹脂の含有割合は、触媒100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。また、フッ素系樹脂の含有割合は、イオン交換樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
燃料側電極2は、例えば、触媒およびイオン交換樹脂(ならびに必要に応じてフッ素系樹脂)を、有機溶媒に分散させた燃料側電極インクを調製する。その燃料側電極インクを、電解質層4の一方面に、公知の方法(例えば、スプレー法、ダイコーター法など)により塗布し、乾燥させることにより、薄膜状の電極膜として電解質層4の一方面に形成される。
燃料側電極インクは、例えば、有機溶媒に触媒を混合し、ホモジナイザーなどの公知の攪拌機を用いて撹拌混合する。次いで、この混合液に、イオン交換樹脂を撹拌混合し、最後に、フッ素系樹脂を混合することにより得られる。フッ素系樹脂は、例えば、水などの溶媒に分散された分散液として添加してもよい。
有機溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、テトラヒドロフランなどの環状エーテル、これらの混合溶媒などが挙げられる。
燃料側電極インクを塗布し燃料側電極2を形成する前に、好ましくは、イオン交換樹脂が有機溶媒に分散されたイオン交換樹脂有機溶媒中に、電解質層4を浸漬し、乾燥させる。これにより、電解質層4の表面と燃料側電極インクとのなじみを良好にして、電解質層4に対する燃料側電極2の密着性の向上を図ることができる。
燃料側電極2の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下である。
触媒の含有量は、例えば、0.01〜5mg/cmである。
燃料側電極2の一方面(電解質層4に接している面と反対側の面)において、燃料含有水(燃料化合物を含有する水)に対する接触角は、125度以上、好ましくは、128度以上であり、また、例えば、150度以下、好ましくは、135度以下である。
接触角を上記範囲とすることにより、燃料側電極2に供給される液体燃料が酸素側電極3に漏出するクロスリークをより確実に抑制することができる。
接触角の測定については、燃料側電極2の一方面(電解質層4が形成されている面と反対側)に、燃料含有水の水滴0.001mlを滴下し、滴下後10秒後において、水滴と燃料側電極2の一方面とのなす角度を実測する。この測定を6回繰り返し、その平均値を接触角とする。燃料含有水は、燃料化合物(後述)を5質量%含有する水溶液である。また、燃料含有水は、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム)などを0.1〜5mol/L(特に、1mol/L)の割合で含有していてもよい。
燃料側電極2は、好ましくは、多孔質を形成している、すなわち、多孔質体からなる。
細孔径20μm以上の細孔の割合は、例えば、50%以下であり、好ましくは、45%以下であり、また、例えば、20%以上、好ましくは、25%以上である。
上記細孔径の割合を上記範囲とすることにより、燃料側電極2に供給される液体燃料が酸素側電極3に漏出するクロスリークを抑制することができる。
細孔径20μm未満の細孔の割合は、例えば、50%以上であり、好ましくは、55%以上であり、また、例えば、80%以下、好ましくは、75%以下である。
細孔の割合は、例えば、上記した燃料側電極インクをカーボンペーパー(SGL社製、商品名:SGL10AA)に塗布および乾燥して、燃料側電極2を形成し、その燃料側電極2をカーボンペーパーから剥ぎ取り、φ25mmに切り出し、細孔測定用サンプルを得る。その後、細孔測定用サンプルをGalwick(プロピレン、1,1,2,3,3,3酸化ヘキサフッ酸、(Porous Materials,Inc製))に浸漬し、次いで、細孔分布測定器(パームポロメータCFP−1200:Porous Materials,Inc製)を用いて測定することができる。
酸素側電極3は、例えば、錯体金属触媒およびイオン交換樹脂(ならびに必要に応じてフッ素系樹脂)を含有する電極材料により形成されている。
錯体金属触媒は、遷移金属(触媒金属)に錯体形成有機化合物が配位することによって形成されている。
遷移金属(触媒金属)としては、例えば、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、鉄が挙げられる。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
錯体形成有機化合物としては、例えば、フェナントロリン、アミノアンチピリン、ピロール、ポルフィリン、テトラメトキシフェニルポルフィリン、ジベンゾテトラアザアヌレン、フタロシアニン、コリン、クロリン、サルコミンなどの錯体形成有機化合物またはこれらの重合体が挙げられる。これらのうち、好ましくは、フェナントロリン、アミノアンチピリンが挙げられる。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
イオン交換樹脂は、燃料側電極2と同様のイオン交換樹脂が挙げられる。
イオン交換樹脂の含有割合は、錯体金属触媒100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下である。
酸素側電極3は、例えば、錯体金属触媒を有機溶媒中でボールミルなどの公知の方法によって分散させ、さらに撹拌混合する。次いで、この混合液に、イオン交換樹脂を撹拌混合し、必要に応じてフッ素系樹脂を最後に混合することにより、酸素側電極インクを調製する。その後、電解質層4の他方面(燃料側電極2が形成している面とは反対側面)に、公知の方法(例えば、スプレー法、ダイコーター法など)により酸素側電極インクを塗布し、乾燥させることにより、薄膜状の電極膜として電解質層4の他方面に形成される。
フッ素系樹脂は、燃料側電極2と同様のフッ素系樹脂(好ましくは、PTFE)が挙げられる。フッ素系樹脂を含有する場合、フッ素系樹脂の含有割合は、錯体金属触媒100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
酸素側電極3の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、好ましくは、300μm以下、好ましくは、150μm以下である。
錯体金属触媒の含有量(担持量)は、例えば、0.01〜5mg/cmである。
これによって、燃料電池セルS、つまり、電解質層4と、電解質層4を挟む燃料側電極2および酸素側電極3とは、膜電極接合体として一体的に形成されている。
また、燃料電池1は、さらに、燃料供給部材5と酸素供給部材6とを備えている。
燃料供給部材5は、ガス不透過性の導電性部材からなり、その一方の面が、燃料側電極2における電解質層4と接触している表面とは反対側の表面に、対向接触されている。そして、この燃料供給部材5には、燃料側電極2の全体に燃料を接触させるための燃料側流路7が、一方の面から凹む葛折状の溝として形成されている。なお、この燃料側流路7は、その上流側端部および下流側端部に、燃料供給部材5を貫通する燃料供給口8および燃料排出口9がそれぞれ連続して形成されている。具体的には、上流側端部(図1における紙面下側)に燃料供給口8が形成され、下流側端部(図1における紙面上側)に燃料排出口9が形成されている。
また、酸素供給部材6も、燃料供給部材5と同様に、ガス不透過性の導電性部材からなり、その一方の面が、酸素側電極3における電解質層4と接触している表面とは反対側の表面に、対向接触されている。そして、この酸素供給部材6にも、酸素側電極3の全体に酸素(空気)を接触させるための酸素側流路10が、一方の面から凹む葛折状の溝として形成されている。なお、この酸素側流路10にも、その上流側端部および下流側端部に、酸素供給部材6を貫通する酸素供給口11および酸素排出口12がそれぞれ連続して形成されている。具体的には、上流側端部(図1における紙面上側)に酸素供給口11が形成され、下流側端部(図1における紙面下側)に酸素排出口12が形成されている。
そして、この燃料電池1は、上述したように、燃料電池セルSが、複数積層されるスタック構造として形成されている。そのため、燃料供給部材5および酸素供給部材6は、図示されていないが、両面に燃料側流路7および酸素側流路10が形成されるセパレータとして構成(兼用)される。
なお、図1には表われていないが、燃料電池1には、導電性材料によって形成される集電板が備えられており、燃料電池1で発生した起電力は、集電板に備えられた端子から外部に取り出される。
また、試験的(モデル的)には、燃料供給部材5と酸素供給部材6とを、外部回路13によって接続し、その外部回路13に電圧計14を介在させることにより、燃料電池1で発生する電圧を計測することもできる。
また、このような燃料電池1には、セル積層体15の積層方向における両端部に、一対のカバーCを備えている。
1対のカバーCは、セパレータとして兼用される燃料供給部材5および酸素供給部材6と同じ大きさの略矩形平板形状に形成されている。また、積層方向一方側(以下、前側)のカバーCには、燃料供給部16、燃料排出部17、酸素供給部18および酸素排出部19が備えられている。
燃料供給部16は、燃料電池セルSの燃料側流路7に燃料を供給するために、前側のカバーCの左右方向一方側(以下、右側)および上下方向一方側(以下、下側)端部に配置されている。燃料供給部16は、前側のカバーCを積層方向に貫通するように、略円筒形状に形成されている。
燃料排出部17は、燃料電池セルSの燃料側流路7から燃料を排出させるために、前側のカバーCの左右方向他方側(以下、左側)および上下方向他方側(以下、上側)端部に配置されている。燃料排出部17は、前側のカバーCを積層方向に貫通するように、略円筒形状に形成されている。
酸素供給部18は、燃料電池セルSの酸素側流路10に酸素を供給するために、前側のカバーCの右上側端部に配置されている。酸素供給部18は、前側のカバーCを積層方向に貫通するように、略円筒形状に形成されている。
酸素排出部19は、燃料電池セルSの酸素側流路10から酸素を排出させるために、前側のカバーCの左下側端部に配置されている。酸素排出部19は、前側のカバーCを積層方向に貫通するように、略円筒形状に形成されている。
また、このような燃料電池1では、必要により、各燃料電池セルSを冷却するための冷却媒体用流路(図示せず)を、燃料供給部材5および/または酸素供給部材6に設けることができる。また、そのような場合には、前側のカバーCの左右方向中央に、冷却媒体を冷却媒体用流路に供給するための冷却媒体供給部、および、冷却媒体用流路から冷却媒体を排出されるための冷却媒体排出部を備えることができる(破線参照)。
上記の燃料電池1は、酸素側電極3に空気(酸素)が供給されるとともに、燃料側電極2に液体燃料が供給されることにより、発電される。より具体的には、燃料電池1では、酸素供給部18から酸素側流路10に空気が供給されるとともに、燃料供給部16から燃料側流路7に、液体燃料が供給されることによって、定常的に発電される(定常運転)。
この燃料電池1において、燃料側流路7に供給される液体燃料としては、例えば、燃料化合物、ならびに、溶剤(水および/または有機溶媒)を含有する。燃料化合物としては、例えば、メタノール、ジメチルエーテル、ヒドラジン類(例えば、無水ヒドラジン(NHNH)、水加ヒドラジン(NHNH・HO)、トリアザン(NHNHNH)、テトラザン(NHNHNHNH)など)などが挙げられる。好ましくは、ヒドラジン類が挙げられる。
液体燃料に使用する有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコールなどが挙げられる。
液体燃料の濃度(すなわち、液体燃料(溶液)中の燃料化合物の濃度)は、燃料化合物の種類によっても異なるが、定常運転時には、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下である。
また、液体燃料には、添加剤として、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物などが添加することができる。添加剤の添加量は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、例えば、0.1mol/L以上、好ましくは、0.5mol/L以上であり、また、例えば、10mol/L以下、好ましくは、5mol/L以下である。
そして、燃料電池1における発電を、アニオン交換膜を備える燃料電池セルSについて、より具体的に説明すると、酸素供給部材6の酸素側流路10に酸素(空気)を供給しつつ、燃料供給部材5の燃料側流路7に上記した燃料を供給すれば、酸素側電極3においては、次に述べるように、燃料側電極2で発生し、外部回路13を介して移動する電子(e)と、水(HO)と、酸素(O)とが反応して、水酸化物イオン(OH)を生成する。生成した水酸化物イオン(OH)は、アニオン交換膜からなる電解質層4を、酸素側電極3から燃料側電極2へ移動する。そして、燃料側電極2においては、電解質層4を通過した水酸化物イオン(OH)と、燃料とが反応して、電子(e)が生成する。生成した電子(e)は、燃料供給部材5から外部回路13を介して酸素供給部材6に移動され、酸素側電極3へ供給される。このような燃料側電極2および酸素側電極3における電気化学的反応によって、起電力が生じ、発電が行われる。
例えば、燃料化合物としてヒドラジン(NHNH)を用いた場合には、上記反応は、燃料側電極2、酸素側電極3および全体として、次の反応式(1)〜(3)で表すことができる。
(1) NHNH+4OH→4HO+N+4e (燃料側電極)
(2) O+2HO+4e→4OH (酸素側電極)
(3) NHNH+O→2HO+N (全体)
このような電気化学的反応が連続的に生じることによって、燃料電池1全体として、上記式(3)で示される反応が生じて、燃料電池1に起電力が発生する。
定常運転時において、燃料側電極2に対する液体燃料の流量は、燃料電池セルS1枚あたりの流量として、例えば、0.0005L/min/cell以上、好ましくは、0.001L/min/cell以上であり、また、例えば、0.005L/min/cell以下、好ましくは、0.004L/min/cell以下である。
燃料側電極2に対する圧力は、例えば、1kPa以上、好ましくは、5kPa以上であり、また、例えば、30kPa以下、好ましくは、25kPa以下である。
そして、定常運転時において、燃料側電極2に対する圧力と、酸素側電極3に対する圧力とは、同一であってもよく、また、異なっていてもよい。圧力差がある場合は、その差は、例えば、4kPa以上、好ましくは、10kPa以上であり、また、例えば、50kPa以下、好ましくは、20kPa以下である。
また、燃料電池1の運転温度は、特に限定されないが、燃料電池セルSの温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、60℃以上であり、また、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下に設定される。
そして、このような燃料電池1では、燃料側電極2が、燃料含有水に対する接触角が125度以上であるため、燃料側電極2に供給される液体燃料が、電解質層4を通じて、酸素側電極3に漏出(クロスリーク)する量を低減することができる。そのため、発電性能に優れる。これは、接触角が大きいと、撥水性が高くなり、液体燃料が触媒層(燃料側電極2)中に浸透する速度が遅くなるため、液体燃料における触媒層の透過を抑制できているものと推察される。
また、このような燃料電池1では、燃料側電極2における細孔径20μm以上の細孔の割合が50%以下であるため、燃料側電極2に供給される液体燃料が、電解質層4を通じて、酸素側電極3に漏出(クロスリーク)する量を低減することができる。そのため、発電性能に優れる。これは、燃料側電極2の細孔径が小さいと、液体燃料(溶液分子)と触媒層(燃料側電極2)との接触面積が増え、摩擦が大きくなることから、液体燃料が触媒層を透過しにくくなる一方、燃料側電極2の細孔径が大きいと、接触面積が減り、液体燃料が触媒層を透過しやすくなることによるものと推察される。
そして、このような燃料電池1の用途としては、例えば、自動車、船舶、航空機などにおける駆動用モータの電源、携帯電話機などの通信端末における電源などが挙げられる。
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。以下に示す実施例の数値は、実施形態において記載される数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
実施例1
<燃料側電極インクの調製>
ニッケル(触媒)0.15gを、溶媒(1−プロパノールとテトラヒドロフランとの混合溶媒(質量比1:1)1.77ml(1.5g)に混合し、ホモジナイザー(タイテック製、VP−050)を出力約35%で稼動させることにより、10分間撹拌した。次いで、得られた混合液に、炭化水素系アイオノマーAを2wt%含有する溶液を0.831g添加し、ホモジナイザーで3分間撹拌した。次いで、得られた混合液に、フッ素系樹脂水分散液(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を50〜60質量%含有する水分散液、「ネオフロン FEP ND−110」、ダイキン社製)3.8μl(0.0053g)を添加し、振とう機で15分間撹拌した。これにより、分散液(スラリー)として、燃料側電極インクを得た。
なお、炭化水素系アイオノマーAは、炭化水素系アイオノマーa1(イオン交換容量:0.7mmol/g)と炭化水素系アイオノマーa2(イオン交換容量:1.4mmol/g)とを1:1の質量割合で混合した混合物である。
各炭化水素系アイオノマーのイオン交換容量(IEC)は、下記の手順で測定した。
(1)アイオノマーからなる膜を12mm×30mmに切断する。
(2)アイオノマーからなる膜をOHでイオン交換させ、このイオン交換後の膜の質量を測定する。
(3)マイクロピペットを使って、15mlの0.1M塩酸を正確に量り、ビンに注入する、この際、バックグランド測定のために、バックグランド用として、別のビンも用意し、15ml塩酸を量り取る。
(4)イオン交換後の膜を塩酸15mlに24時間浸漬する。
(5)塩酸および膜を、マグネチックスターラーを備えたビーカーに移す。
(6)自動測定装置を使用し、0.1M NaOHで滴定する。
(7)下記の式で、IECを計算する。
IEC=1000×(NaOHの測定量(L))×NaOH濃度(M)/(アイオノマーからなる膜の乾燥質量(g))
<酸素側電極インクの調製>
金属錯体触媒(化合物名:鉄錯体フェナントロリン(FePhen))0.05gを、溶媒(1−プロパノールとテトラヒドロフランとの混合溶媒(質量比1:1)2.36ml(2.0g)に混合し、遊星ボールミル(ITOH社製、「LA−PO.1」)によって200rpmで2時間混合した後、ホモジナイザー(タイテック製、「VP−050」)を出力約35%で稼動させることにより、10分間撹拌した。次いで、得られた混合液に、炭化水素系アイオノマーAを2wt%含有する溶液を1.0032g添加し、ホモジナイザーで3分間撹拌した。さらに、PTFE(ダイキン社製、固形分60質量%、「ポリフロンPTFE D−210C」)3.8μlを混合し、振とう器によって500rpmで15分撹拌した。これにより、分散液(スラリー)として、燃料側電極インクを得た。
<燃料電池セルの作製>
4cm×4cm(厚み27μm)に切り取った電解質層(炭化水素系アニオン交換膜)を、炭化水素系アイオノマー(イオン交換容量:0.7mmol/g)に浸漬し、乾燥させた。その電解質層の一方面の中央部に、2cm×2cmの範囲で、Ni触媒の担持量(乾燥後)が2.6mg/cmとなるように、燃料側電極インクを塗布し、乾燥させることにより、多孔質である燃料側電極(厚み25μm)を形成させた。次いで、電解質層の他方面の中央部に、2cm×2cmの範囲で、FePhen触媒の担持量(乾燥後)が1.0mg/cmとなるように、酸素側電極インクを塗布し、酸素側電極(厚み50μm)を形成させた。これにより、燃料電池セルを得た。
実施例2
実施例1の燃料極電極インクの調製において、炭化水素系アイオノマーAの2wt%含有液を炭化水素系アイオノマーB(イオン交換容量:0.6mmol/g)の2wt%含有液に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の燃料極電極インクを調製した。
この実施例2の燃料極電極インクを用いて、実施例1と同様にして燃料電池セルを作製した。
実施例3
実施例1の燃料極電極インクの調製において、炭化水素系アイオノマーAの2wt%含有液を炭化水素系アイオノマーB(イオン交換容量:0.6mmol/g)の2wt%含有液に変更し、フッ素系樹脂水分散液を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、実施例3の燃料極電極インクを調製した。
この実施例3の燃料極電極インクを用いて、実施例1と同様にして燃料電池セルを作製した。
比較例1
実施例1の燃料極電極インクの調製において、フッ素系樹脂水分散液を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の燃料極電極インクを調製した。
この比較例1の燃料極電極インクを用いて、実施例1と同様にして燃料電池セルを作製した。
<接触角の測定>
各実施例および比較例の燃料電池セルを、燃料側電極が上側となるように載置し、次いで、その燃料側電極面に、燃料化合物として水加ヒドラジンが純水中に5質量%含有し、さらにKOHを1mol/L含有する燃料含有水の水滴0.001mlを滴下した。滴下後10秒後において、水滴と燃料側電極面とのなす角度をCCDカメラにて撮影して測定した。この測定を6回実施し、その平均値を接触角とした。この結果を表1に示す。
<細孔径分布の測定>
各実施例および比較例の燃料側電極インクをカーボンペーパー(SGL社製、商品名:SGL10AA)に、Ni触媒の担持量(乾燥後)が2.6mg/cmとなるように塗布し、乾燥させることにより、多孔質である燃料側電極を形成させた。その後、燃料側電極の層をカーボンペーパーから剥ぎ取り、φ25mmに切り出し、細孔測定用サンプルを得た。
次いで、細孔測定用サンプルをGalwick(プロピレン、1,1,2,3,3,3酸化ヘキサフッ酸、(Porous Materials,Inc製))に浸漬した。その後、浸漬した細孔測定用サンプルを、細孔分布測定器(パームポロメータCFP−1200:Porous Materials,Inc製)を用いて、燃料側電極の細孔径分布を測定し、細孔径20μm以上の細孔の割合(%)を求めた。この結果を表1に示す。
<燃料透過量>
各実施例および比較例の燃料電池セルを用いて、図1の燃料電池を作製した。この燃料電池を定常運転させ、発電評価中の電流0(OCV状態)のときにおいて、燃料供給口8に供給された液体燃料(水加ヒドラジン5質量%+1mol/LのKOHの水溶液)の供給液量と、燃料排出口9から排出された液体燃料の排出液量とを10分間測定し、下記式により酸素側電極へ漏出した燃料透過量を算出した。
(液体燃料の供給液量)−(液体燃料の排出液量)=(燃料透過量)
この結果を表1に示す。
Figure 2015222635
1 燃料電池
2 燃料側電極
3 酸素側電極
4 電解質層

Claims (3)

  1. 電解質層と、前記電解質層を挟んで対向配置され、燃料が供給される燃料側電極、および、酸素が供給される酸素側電極とを有する燃料電池セルを備え、
    前記燃料側電極は、燃料化合物を含有する水に対する接触角が125度以上であることを特徴とする、燃料電池。
  2. 前記燃料側電極は、多孔質を形成し、
    前記燃料側電極における細孔径20μm以上の細孔の割合が50%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池。
  3. 電解質層と、前記電解質層を挟んで対向配置され、燃料が供給される燃料側電極、および、酸素が供給される酸素側電極とを有する燃料電池セルを備え、
    前記燃料側電極は、多孔質を形成し、
    前記燃料側電極における細孔径20μm以上の細孔の割合が50%以下であることを特徴とする、燃料電池。
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