JP2015221549A - 複層シート製造装置 - Google Patents

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幸雄 円戸
富美子 桑原
Fumiko Kuwabara
富美子 桑原
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Shigeru Fujita
繁 藤田
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Abstract

【課題】シート状あるいは網状の複数のシート形成材を一体化する複層シートの製造を、接着剤を使用することなく、低コストで効率良く実現できる複層シート製造装置の提供。【解決手段】複数のシート形成材90を積層したシート状積層体90Dを加熱ロール21を含む複数のロール21、22に挟み込みシート形成材90に含まれる熱可塑性樹脂材を加熱溶融する加熱ニップ部20と、この加熱ニップ部20から送り出されたシート状積層体を接触させて冷却する冷却ロール30と、冷却ロール30と加熱ニップ部20との間にてシート状積層体を加熱又は冷却可能な中間ロール40とを有し、中間ロール40の位置調整によってシート状積層体の中間ロールに対する重ね部サイズを調整可能である複層シート製造装置を提供する。【選択図】図2

Description

本発明は、シート状あるいは網状の複数のシート形成材を一体化して複層シートを製造する複層シート製造装置に関する。
例えば、ハム、ソーセージ、ローストビーフ、焼き豚、サラミ、ベーコン、生肉等の食肉用ケーシングとして多用されているファイブラスケーシングは、麻紙又は不織布にビスコースを含浸したもの(以下、ファイブラスシートとも言う)を筒状に形成したものである。このファイブラスケーシングとしては、熱可塑性合成繊維を含有する不織布にビスコースを含浸したファイブラスシートを用いて形成することも提案されている(例えば特許文献1)。
ハム、ソーセージ等の食肉加工品は、ファイブラスケーシングに詰め込んだ原料肉(肉塊、練り肉等)に燻煙等の工程を施して製造される。ファイブラスケーシングは、燻煙のための煙を透過させる充分な通気性を有しているため、ケーシング内側の原料肉の燻煙工程に好適に利用できる。
また、ハム、ソーセージ等の食肉加工品は、その原料肉の成形や装飾を目的として、原料肉としての肉塊に直接、あるいは原料肉を詰め込んだファイブラスケーシングに紐又はネットを巻付け、その状態のまま燻煙等の工程を行って製造する手法も知られている。しかしながら、原料肉としての肉塊に直接、あるいは原料肉を詰め込んだファイブラスケーシングに紐又はネットを巻付けることは手間が掛る作業であり、生産性に劣る。
このため、ファイブラスケーシングにネットを一体化した食肉用ネット付きケーシングが提案されている(例えば特許文献2)。特許文献2は、ネットをファイブラスケーシングに縫着した構成の食肉用ネット付きケーシングを開示している。
なお、原料肉の肉塊に直接紐又はネットを巻付けると、紐又はネットが原料肉に食い込むことから、原料肉の紐又はネットが食い込だ部分は燻煙されず、装飾色づけ及び香り付けが斑になる。したがって、燻煙による装飾色づけ及び香り付けを均等にする点では、原料肉の肉塊に紐又はネットを直接巻付けることに比べて、原料肉を詰め込んだファイブラスケーシングに紐又はネットを巻付けることの方が有利である。
食肉用ネット付きケーシングは、原料肉を詰め込んだファイブラスケーシングに紐又はネットを巻付ける手間を解消でき、しかも燻煙による装飾色づけ及び香り付けを均等化する点でも好適である。
実開平2−78084号公報 実用新案登録第3104485号公報
特許文献2記載の食肉用ネット付きケーシングは、片端有底筒状のファイブラスケーシングの外側に被せた片端有底筒状のネットの一部をファイブラスケーシングの所定位置に縫着した構成になっている。この食肉用ネット付きケーシングは、その製造の自動化が難しく、低コスト化、量産化には不向きであった。
これに鑑みて、麻紙又は不織布にビスコースを含浸させたファイブラスシートにネットを一体化したもの(以下、ネット付きファイブラスシートとも言う)を用いて食肉用ネット付きケーシングを形成することが検討される。
ネット付きファイブラスシートは、例えば、接着剤を用いてファイブラスシートにネットを接着一体化して製造することが考えられる。しかしながら、食品包装材としては、接着剤の残存溶剤が食品の香りに影響する等の不都合回避のため、接着剤の不使用の要求がある。このため、接着剤を使用せずにネット付きファイブラスシートを製造できる技術が求められるが、現状の所、接着剤を使用せずにネット付きファイブラスシートの量産を容易に実現できる好適な技術が存在しないのが実情であった。
本発明は、前記課題に鑑みて、シート状あるいは網状の複数のシート形成材を一体化する複層シートの製造を、接着剤を使用することなく、低コストで効率良く実現できる複層シート製造装置の提供を目的としている。
本発明者は、シート形成材を複数積層一体化した構成の複層シートを、接着剤を使用することなく製造するための手法として、帯状のシート形成材を用い、複数積層したシート形成材を、その1以上に設けられた熱可塑性樹脂材の加熱溶融とその後の冷却、固化とによって接着、一体化することを検討した。具体的には、複数のシート形成材を積層したシート状積層体を、加熱手段が組み込まれた加熱ロールを含む複数のロールによってニップし加熱する加熱ニップ部と、この加熱ニップ部から送り出されたシート状積層体を接触させて冷却する冷却ロールとを有する構成の装置(以下、試用装置とも言う)を用いて複層シートを製造することを検討した。
上述の試用装置を用いた複層シートの製造は、シート状積層体を加熱ニップ部にて加熱、ニップして、シート形成材の1以上に含まれる熱可塑性樹脂材を加熱溶融させ、次いで、シート状積層体を冷却ロールに接触させて冷却する。複層シートは、シート状積層体のシート形成材同士が、加熱ロールによって加熱溶融後に冷却固化した熱可塑性樹脂材によって接着一体化されることによって得られる。また、試用装置を用いた複層シートの製造は、複層シート、シート状積層体、シート形成材の送り移動によって、複数のシート形成材からのシート状積層体の形成、及び形成後のシート状積層体の冷却ロールとの接触による冷却を連続して行うため、複層シートの量産が可能である。
冷却ロールの表面温度は例えば30℃以下に設定される。加熱ロールによる加熱後のシート状積層体は、加熱ロールによる加熱時に加熱ロール周面に対向させた側の面に冷却ロールの表面温度に比べて格段に高い表面温度が確保された状態で冷却ロールに接触させて冷却する。シート状積層体の加熱ロールによって加熱溶融された熱可塑性樹脂材は、熱溶融状態を保ったままシート状積層体の冷却ロールとの接触部(以下、積層体冷却ロール接触部とも言う)に到達して冷却ロールによって急冷されるか、積層体冷却ロール接触部に到達前に加熱ロールと冷却ロールとの間でのシート状積層体の空冷に伴い冷却固化される。
なお、試用装置には、シート状積層体における加熱ロールと冷却ロールとの間に位置する部分に接触する部材は存在しない。
試用装置を用いる複層シートの製造にあっては、シート状積層体の熱可塑性樹脂材を加熱溶融するべく、加熱ロール温度(表面温度)をシート状積層体の熱可塑性樹脂材の融点よりも高く設定する。
熱可塑性樹脂材を有するシート形成材としては、少なくとも表層部に熱可塑性樹脂材を有する繊維状又は粒状の材料(以下、形成材用接着材料とも言う)が、シート状(あるいはフィルム状)又は網状の基材への混入、付着等によってシート形成材面方向に概ね均等配置されたもの(以下、接着用樹脂分散シート形成材とも言う)、あるいは繊維状の形成材用接着材料のみによって形成された織布、不織布、網(以下、接着用繊維シート形成材とも言う)を好適に用いることができる。接着用樹脂分散シート形成材の基材としては、例えば、紙、天然繊維、熱硬化性樹脂製の繊維又はシート(あるいはフィルム)、ガラス繊維等の無機繊維、といった熱可塑性を有していない形成材料によって形成された非熱可塑性基材である。また、接着用樹脂分散シート形成材の基材としては、シート形成材同士を接着させる熱可塑性樹脂材に比べて融点が高く、複層シートの製造にあたり設定した加熱ロール表面温度に鑑みて加熱溶融されない融点の熱可塑性樹脂(以下、高融点熱可塑性樹脂素材とも言う)によって形成された繊維又はシート(あるいはフィルム)も採用可能である。
形成材用接着材料としては、熱可塑性樹脂材のみによって形成されたものに限定されず、熱可塑性を有していない形成材料又は高融点熱可塑性樹脂素材からなる芯材に熱可塑性樹脂材を含む表層部を設けた構成のものも採用可能である。
試用装置を用いて接着用樹脂分散シート形成材及び/又は接着用繊維シート形成材を含む複数のシート形成材から複層シートを製造する場合は、加熱ロールによって加熱されたシート状積層体の熱溶融状態となった熱可塑性樹脂材の流動によって、シート状積層体における熱可塑性樹脂材の存在範囲を拡げることが可能である。冷却ロールによる冷却後のシート状積層体(複層シート)における固化状態の熱可塑性樹脂材の存在範囲は、複層シートの柔軟性に影響を与える。
本発明者は、試用装置を用いる複層シートの製造において、加熱ロール温度の調整(熱可塑性樹脂材融点と加熱ロール温度との温度差の調整)によって、複層シートの柔軟性を調整することを検討した。
シート状積層体の熱可塑性樹脂材の加熱ロールによる加熱溶融量は、熱可塑性樹脂材融点と加熱ロール温度との温度差を大きくするほど多く、前記温度差を小さくするほど少なく調整することが可能である。接着用樹脂分散シート形成材及び/又は接着用繊維シート形成材を含む複数のシート形成材を積層したシート状積層体から複層シートを得る場合は、熱可塑性樹脂材融点と加熱ロール温度との温度差が大きいほど、熱可塑性樹脂材の加熱溶融量を多くできるとともに、熱溶融状態の熱可塑性樹脂材のその流動による存在範囲を大きくできる。熱可塑性樹脂材の存在範囲が大きいことは、複層シートにおいてその柔軟性を熱可塑性樹脂材に依存する領域が大きいことを意味する。
加熱ロール温度調整によって熱可塑性樹脂材の存在範囲、複層シートの柔軟性を調整する構成では、熱可塑性樹脂材の存在範囲の変更の度に加熱ロール温度を調整する必要がある。
また、加熱ロール温度調整のみによる熱可塑性樹脂材の存在範囲の調整は、熱可塑性樹脂材の融点のみならず、熱可塑性樹脂材の比熱や熱溶融状態における流動性、シート状積層体厚み方向における熱可塑性樹脂材の存在位置、シート状積層体の加熱ロール表面(周面)に対向される面(以下、加熱ロール対向面とも言う)と熱可塑性樹脂材との間に存在するシート形成材の熱伝導性、に応じて加熱ロール温度を調整、設定する必要がある。このため、加熱ロール温度調整のみによって熱可塑性樹脂材の存在範囲を調整する構成では、シート状積層体を構成するシート形成材を増加又は減少又は変更したとき、多くの場合、熱可塑性樹脂材に所期の存在範囲を確保するべく加熱ロール温度調整が必要となる。
しかし、加熱ロール温度の調整は、加熱ロール温度(表面温度)が所期の温度に安定するまで待機する必要があり、調整に時間が掛る。このため、例えば、試用装置を用いる複層シートの製造において、複層シートの製造を中断し、加熱ロール温度の調整を経て複層シートの製造を再開する場合には、複層シートの製造再開までの所要時間の短縮が難しく、製造再開に時間が掛るといった不満があった。
そこで、本発明者は、製造する複層シートの変更(シート形成材の変更の他、柔軟性の変更も含む)に伴う加熱ロール温度の調整を回避、あるいは加熱ロール温度の調整が必要となるケースを少なくするべく、加熱ニップ部と冷却ロールとの間にシート状積層体を加熱又は冷却可能な中間ロールを設け、この中間ロールの位置変更によってシート状積層体の中間ロールに対する重ね部サイズを調整するとともに、シート状積層体の加熱ニップ部の加熱ロールに対する重ね部サイズあるいは冷却ロールに対する重ね部サイズを調整する構成を見い出し、本発明を完成させた。
本発明は以下の態様を採用できる。
第1の態様は、シート状あるいは網状の複数のシート形成材を、その1以上に含まれる熱可塑性樹脂材を融点以上の温度に加熱して接着、一体化する複層シート製造装置であって、前記シート形成材を複数積層したシート状積層体を加熱ロールを含む複数のロールに挟み込み前記熱可塑性樹脂材を加熱溶融する加熱ニップ部と、前記シート状積層体を前記加熱ニップ部の加熱ロールによる加熱後に接触させて冷却する表面温度30℃以下の冷却ロールと、前記シート状積層体の前記加熱ロールと前記冷却ロールとの間に延在する部分である積層体加熱後延在部に接触可能な中間ロールと、この中間ロールを支持するロール支持機構と、前記加熱ニップ部から送り出されて前記中間ロールに接触したシート状積層体を加熱又は冷却するべく前記中間ロールの温度を調整する温度調整部とを有し、前記ロール支持機構は、前記中間ロールの位置変更によって、前記シート状積層体の前記中間ロールに対する重ね部サイズの調整とともに、前記シート状積層体の前記加熱ロールに対する重ね部サイズあるいは冷却ロールに対する重ね部サイズが調整されるように、前記中間ロールを位置変更可能に支持することを特徴とする複層シート製造装置である。
第2の態様は、前記加熱ロールが前記中間ロールに比べて径大であることを特徴とする第1の態様の複層シート製造装置である。
第3の態様は、前記冷却ロールよりもシート状積層体の送り方向下流側に設けられた送りロールをさらに有し、前記冷却ロールは、その回転周速を前記送りロールに比べて低速に設定可能であることを特徴とする第1又は2の態様の複層シート製造装置である。
第4の態様は、前記加熱ニップ部及び前記冷却ロールは、前記シート状積層体を前記加熱ロールによる加熱後3秒以内に前記冷却ロールに接触させる送り速度を以て送り移動することを特徴とする第1〜3のいずれか1つの態様の複層シート製造装置である。
なお、本発明に係る複層シート製造装置は、食肉包装用ファイブラスシートのように通気性確保が要求される複層シートの製造に限定されない。本発明に係る複層シート製造装置は、透水性が要求される複層シートや、空気遮断性及び/又は遮水性が要求される複層シート等、様々な複層シートの製造に幅広く適用可能である。
本発明に係る複層シート製造装置によれば、接着剤を使用することなく、複層シートの製造を低コストで効率良く実現でき、しかも、中間ロールの位置調整のみによって複層シートにおける熱可塑性樹脂材の存在範囲の調整を可能とする。その結果、製造する複層シートの変更(シート形成材の変更の他、柔軟性の変更も含む)のための加熱ロール温度の調整を回避、あるいは加熱ロール温度の調整が必要となるケースを少なくすることができる。
中間ロールの位置調整のみによる熱可塑性樹脂材の存在範囲の調整は、加熱ロール温度の調整による熱可塑性樹脂材の存在範囲の調整に比べて短時間で実現できる。このため、シート状積層体を構成するシート形成材を増加又は減少又は変更、あるいはシート積層体における熱可塑性樹脂材の存在範囲の調整による、製造する複層シートの変更を短時間で効率良く行える。
また、本発明に係る複層シート製造装置によれば、加熱ロールによる加熱後のシート状積層体を冷却又は加熱する中間ロールの位置調整によって、既述の試用装置に比べて多種多様な複層シートの製造が可能である。
本発明に係る1実施形態の複層シート製造装置を示す全体図である。 図1の複層シート製造装置の加熱ニップ部付近を示す拡大図である。 図1の複層シート製造装置の中間ロール付近を示す拡大図である。 図1の複層シート製造装置を用いる複層シートの製造に使用するシート形成材に設ける接着用繊維(芯有り接着用繊維)のその軸線に垂直の断面構造を示す断面図である。 図1の複層シート製造装置を用いる複層シートの製造に使用するシート形成材に設ける接着用繊維(芯無し接着用繊維)のその軸線に垂直の断面構造を示す断面図である。 図1の複層シート製造装置を用いる複層シートの製造において、シート状積層体の加熱ロール重ね部から送り方向下流側部分を、加熱ロールにシート状積層体を押さえ込むピンチロールの回転中心と冷却ロールの回転中心とを通る仮想平面を介して図1の場合とは反対の側から冷却ロールに接触可能に配設し、中間ロールをシート状積層体のロール対向面側に配置した態様を説明する図であり、複層シート製造装置の加熱ニップ部付近を示す拡大図である。
以下、本発明の1実施形態の複層シート製造装置について、図面を参照して説明する。
図1はこの実施形態の複層シート製造装置10の全体構造を示す全体正面図、図2は複層シート製造装置10の加熱ニップ部20付近を示す拡大正面図である。
なお、図1、図2において、上側を上、下側を下として説明する。
図1、図2に示すように、この実施形態の複層シート製造装置10は、帯状のシート形成材90を複数積層一体化して複層シート90Sを製造するものである。この複層シート製造装置10は、複数のシート形成材90を積層状態にした積層体(シート状積層体90D)をロール21、22に挟み込んで加熱する加熱ニップ部20と、この加熱ニップ部20から送り出されたシート状積層体90Dが巻き掛けられた冷却ロール30とを有する。冷却ロール30は、加熱ニップ部20にて加熱されたシート状積層体90Dを冷却する。
また、この複層シート製造装置10は、加熱ニップ部20と冷却ロール30との間に設けられた中間ロール40と、冷却ロール30よりもシート状積層体90Dの送り方向(以下、積層体送り方向とも言う)下流側に設けられた送りロール50(以下、シート送りロールとも言う)とを有している。複層シート製造装置10は、さらに、シート状積層体90Dの巻き取り用の巻き芯(図示略)を回転駆動して、シート状積層体90Dを巻き芯に巻き取る巻き取り台74も有している。
図1に示すように、複層シート製造装置10は、帯状のシート形成材90をロール状に巻き上げたシート形成材原反90Aをその軸回りに回転自在に支持する原反支持台70を複数有する。
図示例の複層シート製造装置10は、具体的には原反支持台70を3つ有している。図1、図2においては、3つの原反支持台70に、区別のため、互いに異なる符号71、72、73を付記している。以下、符号71の原反支持台70を第1原反支持台、符号72の原反支持台70を第2原反支持台、符号73の原反支持台70を第3原反支持台とも言う。
図1、図2に例示した複層シート製造装置10は、加熱ニップ部20へ送り込むシート形成材90の送り移動を案内する案内ロール12(以下、形成材案内ロールとも言う)を有している。
複層シート製造装置10の形成材案内ロール12、加熱ニップ部20を構成する各ロール21、22、中間ロール40、シート送りロール50は、それぞれ水平方向に延在する互いに平行な回転軸線を以て回転可能に設けられている。
原反支持台70は、シート形成材原反90Aを、形成材案内ロール12、加熱ニップ部20を構成する各ロール21、22、中間ロール40、シート送りロール50と平行な回転軸線を以て回転自在に支持する。
巻き取り台74は、巻き芯を、形成材案内ロール12、加熱ニップ部20を構成する各ロール21、22、中間ロール40、シート送りロール50と平行な回転軸線を以て回転駆動する。
また、図1に例示した複層シート製造装置10は、シート状積層体90Dにおける、シート送りロール50と巻き取り台74に支持された巻き芯との間に位置する部分の送り移動の案内用のシート案内ロール13も有している。
図1に例示した複層シート製造装置10において、シート案内ロール13も、形成材案内ロール12、加熱ニップ部20を構成する各ロール21、22、中間ロール40、シート送りロール50と平行な回転軸線を以て回転自在に設けられている。
シート状積層体90Dは帯状に形成される。複層シート製造装置10において、シート状積層体90Dは、その両面における長手方向に垂直の幅方向が、形成材案内ロール12、加熱ニップ部20を構成する各ロール21、22、中間ロール40、シート送りロール50の回転軸線に平行な状態を保ったまま送り移動される。
図1に示すように、加熱ニップ部20は、熱可塑性樹脂材を有するシート形成材を含むシート状積層体90Dを複数のロール21、22に挟み込んで互いに圧接させるとともに、シート形成材90の熱可塑性樹脂材をその融点以上の温度に加熱する。
図1、図2に例示した複層シート製造装置10の加熱ニップ部20は、シート状積層体90Dを挟み込む一対のロール21、22を有する。一対のロール21、22の一方(図1、図2では符号21のロール)は、円筒状の金属製外胴21a(図2参照)内に該外胴21aを加熱するヒータを内蔵した構造となっている。外胴21aの熱伝導率は空気に比べて格段に高い。このロール21は、ヒータが加熱した外胴21aによって、一対のロール21、22間に挟み込んだシート状積層体90Dを加熱するものである。このロール21を、以下、加熱ロールとも言う。加熱ロール21のヒータとしては、例えば、誘電加熱用コイルであるが、これに限定されず電熱線等も採用可能である。
一対のロール21、22の他方(ロール22)は、加熱ニップ部20に設けられたロール押圧装置23によって加熱ロール21に向かって弾性付勢されている。このロール22は、積層状態にして一対のロール21、22の間に通したシート状積層体90Dを加熱ロール21に押さえ込むピンチロールとして機能する。このロール22を、以下、加熱部ピンチロールとも言う。
なお、加熱ニップ部20は、加熱部ピンチロールを、ロール押圧装置23によって加熱ロール21に向かって弾性付勢する構成に限定されない。加熱ニップ部20としては、例えば、積層状態にして一対のロール21、22の間に通した複数のシート形成材90を加熱ロール21に押さえ込むべく、加熱部ピンチロール22の加熱ロール21からの距離を適宜設定して固定可能な構成等も採用可能である。加熱部ピンチロール22の加熱ロール21からの距離を適宜設定して固定可能な構成においては、ロール押圧装置23の設置を省略できる。
加熱部ピンチロール22には、加熱手段や冷却手段といった温度調整手段は設けられていない。この実施形態では、加熱部ピンチロール22としてゴムロールを採用している。但し、加熱部ピンチロール22としてはゴムロールに限定されず、紙、樹脂フィルム、樹脂シート等の帯状材の送り移動や案内に使用される周知のロールを採用可能である。
加熱ロール21の表面(周面)は、例えば、セラミックコーティング、ポリテトラフルオロエチレン〈四フッ化樹脂〉コーティング等によって、低摩擦抵抗の滑らかな面に形成されている。
図1、図2に例示した加熱ニップ部20の一対のロール21、22は、図示略のモータの駆動力によって互いに逆向きに互いに同じ速度で回転駆動される。図1、図2において、加熱ロール21は時計回りに回転駆動され、加熱部ピンチロール22は反時計回りに回転駆動される。加熱ニップ部20は、シート形成材90を送り移動する送り機構としても機能する。
シート状席槽体90Dを得るためのシート形成材90としては、既述の接着用樹脂分散シート形成材や接着用繊維シート形成材を用いることができる。
図1、図2は、複層シート製造装置10を用いて、シート形成材90として、外層部(表層部)が熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂材)によって形成された繊維(以下、接着用繊維とも言う)を混抄した混抄紙91と、不織布92と、合成樹脂製のネット93とを積層、一体化した3層構造の複層シート90Sを製造する場合を例示する。
図1、図2に例示したシート状積層体90Dは、混抄紙91、不織布92、ネット93を、混抄紙91とネット93との間に不織布92を挟み込んで積層したものである。
混抄紙91は既述の接着用樹脂分散シート形成材、不織布92及びネット93は、既述の接着用繊維シート形成材に該当する。
図4は、この実施形態の混抄紙91の接着用繊維910の断面構造を示す。
図1、図2に例示した混抄紙91の接着用繊維910は、具体的には、図4に例示したように、合成樹脂製の芯材911のその軸線方向に垂直の断面外周全周に、融点80〜170℃の熱可塑性樹脂からなる外層部912(表層部)が被着一体化された構造になっている。芯材911を形成する樹脂は、融点250℃超の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート等)、あるいは熱硬化性樹脂(例えばポリアミノアミド樹脂、フェノール樹脂等)である。
この構成の接着用繊維910を、以下、芯有り接着用繊維とも言う。
接着用繊維910の外層部912を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、融点90〜120℃のポリエチレン(具体的には密度0.910以上〜0.930未満の低密度ポリエチレン)、融点130〜170℃のポリプロピレン等の、融点90〜170℃のポリオレフィン系樹脂を好適に採用できる。
接着用繊維外層部912の熱可塑性樹脂は、加熱溶融後の固化によって部材同士を接着する接着材料として機能する。
図1、図2に例示した不織布92は、その全体が芯有り接着用繊維によって形成されたものを用いている。不織布92の接着用繊維は、混抄紙91に使用可能な芯有り接着用繊維を採用できる。
図1、図2に例示したネット93は、融点80〜170℃の熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂材)製の表層部を有する接着用繊維を複数本集合させた糸を用いて網目を複数形成して構成したものである。図1、図2に例示したネット93の接着用繊維(以下、ネット用接着繊維とも言う)は、その全体が、融点80〜170℃の熱可塑性樹脂によって形成されたものである。
全体が融点80〜170℃の熱可塑性樹脂によって形成された接着用繊維を、以下、芯無し接着用繊維とも言う。図5に、芯無し接着用繊維920のその軸線に垂直の断面構造を示す。
図1、図2に例示したネット93は、芯無し接着用繊維をネット用接着繊維に用いたものである。
図1、図2に例示したネット93のネット用接着繊維は、具体的には、その全体が、融点120〜140℃の高密度ポリエチレン(密度0.942以上)によって構成されている。
但し、ネット用接着繊維を形成する熱可塑性樹脂としては、既述の高密度ポリエチレンに限定されず、混抄紙91の接着用繊維の外層部に使用可能なものを採用できる。
図1においては、第1原反支持台71に混抄紙91の原反91Aを支持し、第2原反支持台72に不織布92の原反92Aを支持し、第3原反支持台73にネット93の原反93Aを支持している。混抄紙原反91A、不織布原反92A、ネット原反93Aは、それぞれシート形成材原反90Aの例である。
加熱ニップ部20の一対のロール21、22間には、混抄紙91、不織布92、ネット93のそれぞれ原反91A、92A、93Aから引き出された部分が通されている。
図1、図2に例示したシート状積層体90Dは、混抄紙91、不織布92、ネット93を、混抄紙91とネット93との間に不織布92を挟み込むようにして積層したものである。
シート状積層体90Dの混抄紙91及びネット93は、加熱ニップ部20にて不織布92に加熱圧接される。
混抄紙91、不織布92、ネット93は、加熱ニップ部20の一対のロール21、22間において、混抄紙91を不織布92の加熱ロール21側、ネット93を不織布92のロール22側に配置した状態に積層され、一対のロール21、22によってニップされる。
図1、図2において、混抄紙91、不織布92、ネット93は、シート状積層体90Dにおける加熱ニップ部20の一対のロール21、22間にニップされた部分90G(以下、ニップ領域、あるいは積層体ニップ領域とも言う)にて、上から混抄紙91、不織布92、ネット93の順に積層状態とされている。
加熱ニップ部20は、互いに異なる経路で供給される混抄紙91、不織布92、ネット93を加熱、ニップして、互いに隣り合うシート形成材90同士を圧接させる。
混抄紙91、不織布92、ネット93は、加熱ニップ部20のロール21、22の回転駆動によって、それぞれ原反91A、92A、93Aから引き出される。
混抄紙91、不織布92、ネット93は、それぞれの原反91A、92A、93Aから加熱ニップ部20のロール21、22までの間にて互いに異なる経路で送り移動される。
図1、図2に例示した複層シート製造装置10は、混抄紙91、不織布92、ネット93を、互いに異なる経路での送り移動を実現するべく案内する形成材案内ロール12を複数有している。形成材案内ロール12は、複数のシート形成材90の個々の送り移動経路に対応して設けられている。
図1に示すように、図示例の複層シート製造装置10は、設置床T上に組み立てられた支持フレーム11を有している。
図示例の複層シート製造装置10の加熱ニップ部20、中間ロール40、冷却ロール30、シート送りロール50は、支持フレーム11に支持されて、設置床Tから上方に離隔した位置に配置されている。複数の形成材案内ロール12は、それぞれ、複層シート製造装置10の支持フレーム11に取り付けられている。
図1に示すように、図示例の複層シート製造装置10は、その全体が設置床T上に設けられている。
但し、複層シート製造装置10は、例えば、その一部が、設置床Tの上面TSから下方に設けられた構成等も採用可能である。
本明細書では、複層シート製造装置10について、シート状積層体90Dをその両側から挟み込む加熱ニップ部20のロール21、22の回転軸線の間隔方向に垂直なロール21、22接線方向(図1〜図3において左右方向)を前後方向(以下、装置前後方向とも言う)として説明する。また、図1〜図3に示す複層シート製造装置10について、左側を前、右側を後、として説明する。
図1、図2に例示した複層シート製造装置10の第1〜3原反支持台71、72、73は、加熱ニップ部20よりも前側(以下、装置前側とも言う)に配置されている。中間ロール40、冷却ロール30、シート送りロール50は、加熱ニップ部20よりも後側(以下、装置後側とも言う)に配置されている。中間ロール40は装置前後方向において、加熱ニップ部20のロール21、22と冷却ロール30との間に配置されている。シート送りロール50は、冷却ロール30から装置後側に離隔した位置に配置されている。
複数のシート形成材90は、加熱ニップ部20の前側(装置前側)から加熱ニップ部20のロール21、22間に通される。シート状積層体90Dは、加熱ニップ部20からその後側(装置後側)へ送り出される。
加熱ニップ部20は、シート状積層体90Dの一対のロール21、22間に位置する部分(ニップ領域90G)を加熱ロール21によって加熱して、シート状積層体90Dを構成するシート形成材90に含まれる接着用の熱可塑性樹脂材(以下、接着用熱可塑性樹脂材とも言う)を加熱溶融する。接着用熱可塑性樹脂材は、加熱ニップ部20にて加熱溶融される熱可塑性樹脂を指す。
既述の混抄紙91、不織布92、ネット93によって構成されるシート状積層体90Dにおける接着用熱可塑性樹脂材は、混抄紙91及び不織布92の芯有り接着用繊維の外層部、及びネット用接着繊維を指す。加熱ニップ部20は、加熱ロール21によって、シート状積層体90Dを加熱して、シート状積層体90Dを構成するシート形成材90の接着用熱可塑性樹脂材を加熱溶融させる。
図1、図2に示すように、混抄紙91、不織布92、ネット93によって構成されるシート状積層体90Dは、加熱ニップ部20にて、混抄紙91の接着用熱可塑性樹脂材の融点とネット93の接着用熱可塑性樹脂材の融点、及び/又は、不織布92の芯有り接着用繊維の外層部の融点、以上の温度に加熱して接着用熱可塑性樹脂材を加熱溶融させる。
但し、加熱ニップ部20によるシート状積層体90Dの加熱温度は、混抄紙91の芯有り接着用繊維の芯材融点及び不織布92の芯有り接着用繊維の芯材融点の両方よりも低く抑えることが好ましい。
この実施形態の複層シート製造装置10の加熱ロール21表面温度は、80℃〜250℃の範囲で調整して設定可能である。
複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造において、加熱ロール21表面温度は、80℃〜250℃の範囲でシート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の融点以上の温度に設定する。
加熱ニップ部20にて加熱ニップされたシート状積層体90Dのネット93形状の安定性確保の点では、ネット用接着繊維に、混抄紙91の芯有り接着用繊維外層部及び不織布92の芯有り接着用繊維外層部の両方に比べて融点が高い接着用熱可塑性樹脂材を用いた構成のものを採用することが好ましい。このネット用接着繊維を採用した場合は、加熱ニップ部20にてシート状積層体90Dをネット用接着繊維の接着用熱可塑性樹脂材の融点以上の温度(加熱温度)に加熱する。このネット用接着繊維を採用したシート状積層体90Dは、加熱ニップ部20にて加熱したときに、ネット用接着繊維の断面中央部を加熱溶融させずに固化状態のまま残すことを容易に実現できるため、ネット93の形状安定性確保に有利である。
加熱ニップ部20による加熱ニップの際のネット93形状の安定性確保の点では、ネット用接着繊維として、混抄紙91の芯有り接着用繊維及び不織布92の芯有り接着用繊維に比べて太いものを採用することも有効である。
混抄紙91の芯有り接着用繊維及び不織布92の芯有り接着用繊維に比べて太いネット用接着繊維は、加熱ニップ部20にてその融点以上の温度に加熱されても、断面中央部(ネット用接着繊維の軸線方向に垂直の断面中央部)の加熱溶融を容易に回避できる。ネット用接着繊維の断面中央部の加熱溶融の回避は、ネット用接着繊維の全体が加熱溶融される場合に比べて、ネット93形状の安定性確保の点で有利である。
図1に示すように、ここで例示した複層シート製造装置10は、シート形成材90の接着用熱可塑性樹脂材をコロナ放電処理する表面処理部14(コロナ放電処理部)を有している。この表面処理部14は、シート形成材90のその原反から加熱ニップ部20への送り経路の途中に対応させて設けられる。そして、この表面処理部14は、コロナ放電処理によってシート形成材90の接着用熱可塑性樹脂材表面に親水性極性基(例えば水酸基、カルボニル基等)を発生させ接着用繊維910表面の濡れ性を高める。
図1に例示した複層シート製造装置10の表面処理部14は、シート状積層体90Dを構成する複数のシート形成材90のうち、加熱ニップ部20のピンチロール22に最も近い側に配置されるシート形成材90(図示例では混抄紙91)の原反と加熱ニップ部20との間の送り経路に対応させて設けられている。そして、この表面処理部14は、コロナ放電処理によって、シート形成材90の接着用熱可塑性樹脂材表面(図示例では、混抄紙91の接着用繊維910表面)の濡れ性を高める。
シート形成材90のコロナ放電処理された接着用熱可塑性樹脂材表面は、別のシート形成材90の加熱ニップ部20にて加熱溶融された接着用熱可塑性樹脂材の馴染み(濡れ性)が良い。シート形成材90の接着用熱可塑性樹脂材表面のコロナ放電処理は、加熱ニップ部20から送り出されたシート状積層体90Dの熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の冷却固化によるシート形成材90同士の確実な接着一体化、接着強度向上に有効に寄与する。
図1、図2においては、加熱ニップ部20の加熱ロール21とネット93との間に介挿した帯状剥離材94(いわゆる工程紙)を、加熱ニップ部20の一対のロール21、22間にシート状積層体90Dとともに挟み込んでいる。
図1、図2に例示した複層シート製造装置10は、帯状剥離材94をロール状に巻き上げた帯状剥離材原反94Aをその軸回りに回転自在に支持する剥離材原反支持台75と、帯状剥離材原反94Aから引き出された帯状剥離材94の巻き取り用の巻き芯(図示略)を回転駆動する剥離材巻き取り台76とを有している。帯状剥離材94は、剥離材巻き取り台76によって回転駆動された巻き芯に巻き取られるに伴い、帯状剥離材原反94Aから引き出されていく。
なお、帯状剥離材原反94Aから剥離材巻き取り台76に装着された巻き芯への帯状剥離材94の送り方向を、以下、剥離材送り方向とも言う。
加熱ニップ部20のロール21、22間には、帯状剥離材94の、帯状剥離材原反94Aと、剥離材巻き取り台76に装着された巻き芯に巻き付けられた部分との間の中間部が、シート状積層体90Dとともに通されている。帯状剥離材94は、加熱ニップ部20前側から後側へ向かって加熱ニップ部20のロール21、22間を送り移動される。
剥離材巻き取り台76の巻き芯の回転駆動によって帯状剥離材原反94Aから引き出された帯状剥離材94の送り速度は、剥離材巻き取り台76による巻き芯の回転速度によって決まる。帯状剥離材原反94Aから剥離材巻き取り台76に装着された巻き芯への帯状剥離材94の送り速度は、加熱ニップ部20のロール21、22間におけるシート状積層体90Dの移動速度(送り速度)と同じになるように調整されている。帯状剥離材94は、加熱ニップ部20のロール21、22間をシート状積層体90Dと一体的に送り移動される。
図1、図2に示すように、複層シート製造装置10は、帯状剥離材94の送り移動を案内する剥離材案内ロール15を複数有している。剥離材案内ロール15は、複層シート製造装置10の支持フレーム11に取り付けられている。複数の剥離材案内ロール15は、剥離材送り方向において、帯状剥離材94の原反94Aと加熱ニップ部20との間に位置する部分、及び剥離材巻き取り台76に装着された巻き芯と加熱ニップ部20との間に位置する部分の送り移動を案内する。
図1、図2に例示した複層シート製造装置10において、冷却ロール30は、加熱ニップ部20の一対のロール21、22からその後方(図1、図2において右側)へ離隔して配置されている。シート状積層体90Dにはその長手方向においてニップ領域90Gと冷却ロール30との間に延在する部分(積層体ニップ後張設部90E)が確保されている。
冷却ロール30は、加熱ニップ部20に対して積層体送り方向下流側に位置する。
図2、図3に示すように、帯状剥離材94の加熱ニップ部20のロール21、22間にニップされた部分から剥離材送り方向下流側部分の送り移動を案内する剥離材案内ロール15のうち、剥離材送り方向において最も上流側に位置するものを、以下、下流側先頭案内ロール15aとも言う。下流側先頭案内ロール15aは、加熱ニップ部20の帯状剥離材94に接するロール(加熱ロール21)を介してシート状積層体90Dとは反対の側に設置されている。図2において、下流側先頭案内ロール15aは、加熱ロール21から下方に離隔した位置に設置されている。
帯状剥離材94は、加熱ニップ部20のロール21、22間にニップされた部分から剥離材送り方向下流側に、下流側先頭案内ロール15aに巻き掛けた部分を有している。帯状剥離材94長手方向(剥離材送り方向に一致)における、加熱ニップ部20のロール21、22間にニップされた部分と下流側先頭案内ロール15aとの間に位置する部分を、以下、剥離材ニップ後延在部94aとも言う。
図2、図3に示すように、剥離材ニップ後延在部94aの剥離材送り方向上流部は、加熱ロール21の周面に巻き掛けられている。
図1、図2に示すように、剥離材ニップ後延在部94aは、加熱ロール21と下流側先頭案内ロール15aとの間に張設された部分を有している。
図2、図3に示す複層シート製造装置10の冷却ロール30の最上部は、加熱ロール21の加熱部ピンチロール22との間に積層体ニップ領域90Gを挟み込む部分(上部)に接し装置前後方向に延在する接平面HS(以下、加熱ロール接平面とも言う)から加熱ロール21とは反対の側にずれた位置にある。
シート状積層体90Dは、その厚みが、中間ロール40半径に比べて格段に小さいものを採用する。冷却ロール30最上部の加熱ロール接平面HSからの離隔距離(加熱ロール接平面HSに垂直の方向(図示例では装置10上下方向に一致)の離隔距離)は、採用するシート状積層体90Dの厚みに比べて格段に大きい。複層シート製造装置10上下方向において、冷却ロール30の最上部は、加熱ロール21との間にシート状積層体90Dを挟み込んだときの加熱部ピンチロール22最下部よりも上方に位置する。
図2、図3に示すシート状積層体90Dは、冷却ロール30にその上側から巻き掛けられている。シート状積層体90Dは、より具体的には、加熱部ピンチロール22回転軸線と冷却ロール30回転軸線とを通る仮想平面CS(以下、2ロール中心配置平面とも言う)を介して加熱ロール21とは反対の側から冷却ロール30に巻き掛けられている。
図2、図3に示す冷却ロール30の回転軸線は、加熱ロール接平面HSから加熱ロール21とは反対の側にずれた位置にある。冷却ロール30回転軸線の加熱ロール接平面HSからの離隔距離(加熱ロール接平面HSに垂直の方向の離隔距離)は、採用するシート状積層体90Dの厚みに比べて格段に大きい。
また、図2、図3に示す冷却ロール30は、その全体が加熱ロール接平面HSから加熱ロール21とは反対の側にずれた位置にある。
2ロール中心配置平面CSは加熱ロール接平面HSに対して平行であっても傾斜していても良い。図2、図3に示す複層シート製造装置10の2ロール中心配置平面CSは、加熱部ピンチロール22回転軸線から装置後側へ行くに従って加熱ロール接平面HSからの距離が増大するように加熱ロール接平面HSに対して傾斜している。
図3に仮想線で示すように、積層体ニップ領域90Gと冷却ロール30との間に最短距離で張設した積層体ニップ後張設部90Eは、加熱部ピンチロール22と冷却ロール30との間に真っ直ぐに延在する部分90E2(以下、真直延在部あるいは最短張設時真直延在部とも言う)を有する。
積層体ニップ領域90Gと冷却ロール30との間に最短距離で張設したときの積層体ニップ後張設部90Eを、以下、最短張設部90E1あるいは積層体最短張設部90E1とも言う。
既述のように、複層シート製造装置10上下方向において、冷却ロール30の最上部は、加熱ロール21との間にシート状積層体90Dを挟み込んだときの加熱部ピンチロール22最下部よりも上方に位置する。このため、積層体最短張設部90E1は、具体的には、真直延在部90E2の他に、加熱部ピンチロール22周面に沿って湾曲延在する部分(以下、ピンチロール側湾曲延在部とも言う)を有する。積層体最短張設部90E1の真直延在部90E2は、ピンチロール側湾曲延在部から積層体送り方向下流側へ延在する。
また、積層体真直延在部90E2は、装置後側へ行くに従って積層体ニップ領域90Gを装置前後方向に延長した仮想延長からの離隔距離が増大するように装置前後方向に対して傾斜して延在し、2ロール中心配置平面CSと交差する。
以下、積層体最短張設部90E1を介して両側のうち剥離材ニップ後延在部94aがある側(図3において積層体最短張設部90E1から下側)を最短張設時第1面側(あるいは積層体最短張設時第1面側)、この最短張設時第1面側とは反対の側を最短張設時第2面側(あるいは積層体最短張設時第2面側)とも言う。
図2、図3に示すように、剥離材ニップ後延在部94aは積層体最短張設部90E1の最短張設時第1面側に位置する。また、剥離材ニップ後延在部94aは、剥離材送り方向下流側に行くにしたがって積層体最短張設部90E1からの距離が増大するように、積層体最短張設部90E1に対して傾斜して延在している。
図2、図3に示すように、複層シート製造装置10は、中間ロール40を加熱ニップ部20のロール21、22の回転軸線と平行な回転軸線を以て回転自在に支持するロール支持機構41を有している。
ロール支持機構41は、積層体最短張設部90E1におけるシート状積層体90D幅方向に垂直かつ最短張設時真直延在部90E2両面に交差する仮想交差直線K(図3参照)に沿う方向に、中間ロール40の支持位置を変更可能である。図1〜図3において、仮想交差直線Kは上下方向に延在している。ロール支持機構41は、中間ロール40の支持位置(加熱ニップ部20のロール21、22及び冷却ロール30に対する仮想交差直線K方向における相対位置)を装置上下方向に変更可能である。
なお、複層シート製造装置10において、冷却ロール30及びシート送りロール50の位置は加熱ロール21に対して固定である。
図2、図3に示すように、中間ロール40は、装置前後方向において、加熱ニップ部20のロール21、22及び冷却ロール30のいずれからも離隔した位置に配置されている。
図2、図3に実線で例示するように、積層体ニップ後張設部90Eは、中間ロール40の仮想交差直線K方向の位置調整によって、その延在方向中央部を中間ロール40に巻き掛けて、加熱ニップ部20と冷却ロール30との間に張設できる。図2、図3に実線で示す積層体ニップ後張設部90Eは、その全体が、積層体最短張設部90E1から最短張設時第1面側にずれた位置に延在する。積層体ニップ後張設部90Eの延在方向中央部は、積層体最短張設部90E1から最短張設時第1面側にずれた位置にて中間ロール40に巻き掛けられる。
中間ロール40の位置は、ロール支持機構41によって、仮想交差直線K方向(図1〜図3に例示した複層シート製造装置10の上下方向)に変更できる。
以下、ロール支持機構41による中間ロール40の仮想交差直線K方向の移動方向のうち、積層体最短張設時第2面側から積層体最短張設時第1面側へ向かう方向、及び積層体最短張設時第1面側にて最短張設時第2面側とは反対側へ向かう方向を第1方向、該第1方向とは反対の方向を第2方向とも言う。図1〜図4において、第1方向は下方へ向かう方向、第2方向は上方へ向かう方向である。
図3に仮想線(二点鎖線)で示す中間ロール40は、その周面を、加熱ニップ部20のロール22と冷却ロール30との間に真っ直ぐに延在された積層体最短張設部90E1に接触させたときの中間ロール40位置を示す。積層体最短張設部90E1は、加熱ニップ部20のロール22と冷却ロール30との間に真っ直ぐに延在された状態に保たれ、中間ロール40周面に対する接線に重なっている。このときの中間ロール40位置を、以下、接触最小位置とも言う。図3等において、接触最小位置の中間ロール40に符号40Jを付記する。
中間ロール40は、ロール支持機構41によって、接触最小位置40Jに配置、支持可能であり、また、接触最小位置40Jから積層体最短張設時第1面側にずれた位置へも積層体最短張設時第2面側にずれた位置へも配置、支持可能である。
図2、図3に実線で示す中間ロール40は、接触最小位置40Jから積層体最短張設時第1面側へずれた位置にある。中間ロール40は、接触最小位置40Jにあるとき、あるいは接触最小位置40Jから積層体最短張設時第1面側へずれた位置にあるときに積層体ニップ後張設部90Eに接触する。
中間ロール40は、シート状積層体90Dの両面のうち、加熱ニップ部20にて加熱ロール21表面(周面)側に位置していた面(加熱ロール対向面90a)とは反対の裏面90b(以下、積層体裏面とも言う)に接触される。
なお、加熱ロール21表面(周面)は、金属製外胴21aの周面(側面)を指す。
中間ロール40位置について、図3に示す接触最小位置40J及び該接触最小位置40Jから第1方向にずれた位置を、以下、積層体接触位置とも言う。
中間ロール40は、積層体接触位置にあるときに積層体ニップ後張設部90Eに接触する。
図2、図3に実線で示すように、中間ロール40が接触最小位置40Jから積層体最短張設時第1面側(具体的には第1方向)へずれた位置にあるとき、積層体ニップ後張設部90Eは、中間ロール40に接する部分を谷底部とするV字状に曲げられる。すなわち、このとき、積層体ニップ後張設部90Eは、中間ロール40に接する部分から第2方向側へ離隔するにしたがって、中間ロール40に接する部分を介して延在方向両側部分間の距離が増大するV字状に曲げられる。
中間ロール40は、積層体最短張設部90E1(図3参照)の真直張設部90E2に対して最短張設時第2面側(具体的には第2方向)へ離隔した位置、具体的には接触最小位置40Jから第2方向へずれた位置、にも配置可能である。中間ロール40が最短張設時真直延在部90E1(図3参照)に対してその最短張設時第2面側へ離隔する位置にあるとき、中間ロール40は積層体ニップ後張設部90Eに接触せず、積層体最短張設部90E1は加熱ニップ部20のロール22と冷却ロール30との間に真っ直ぐに延在された状態に保たれる。
このときの中間ロール40の位置、すなわち最短張設時真直延在部90E1(図3参照)に対してその最短張設時第2面側へ離隔する中間ロール40位置を、以下、積層体非接触位置とも言う。
図2、図3に実線で例示した中間ロール40によってV字状に曲げられた積層体ニップ後張設部90Eの加熱ニップ部20(具体的にはニップ領域90G)と中間ロール40との間の張設部分を、以下、中間ロール前張設部90Fとも言う。
中間ロール40が図2、図3に実線で例示した位置にあるとき、中間ロール前張設部90Fは、積層体送り方向下流側に行くにしたがって積層体最短張設部90E1からの距離が増大するように、積層体最短張設部90E1に対して傾斜して延在している。
接触最小位置40Jから最短張設時第1面側へずれた中間ロール40位置としては、図2に仮想線にて示す符号40Kの位置も採り得る。
図2の符号40Kの中間ロール40位置は、積層体ニップ後張設部90Eの中間ロール前張設部90Fがシート状積層体90Dのニップ領域90Gから加熱ニップ部20のロール21、22の回転軸線の間隔方向に直交する平面上に真っ直ぐに延在するときの中間ロール40位置である。図2の符号40Kの中間ロール40位置を、以下、基準配置位置とも言う。
図2、図3に実線で示す中間ロール40は、基準配置位置40K(図2参照)から接触最小位置40Jとは反対の方向(第1方向。図示例では装置上下方向下方)にずれた位置に配置されている。図2、図3に実線で示すように、中間ロール40を基準配置位置40Kから接触最小位置40Jとは反対の方向(具体的には第1方向)にずれた位置に配置したとき、シート状積層体90Dには、加熱ロール21にその周面に沿って巻き掛けられた領域(以下、重ね部90Hとも言う)が確保される。
図3において、シート状積層体90Dの加熱ロール21に対する重ね部90Hは、シート状積層体90D長手方向においてシート状積層体90Dを加熱ロール21表面(周面)に帯状剥離材94を介して重ねた領域である。
以下、シート状積層体90Dにおけるその加熱ロール21に対する重ね部90Hを加熱ロール重ね部あるいは積層体加熱ロール重ね部、とも言う。
図2、図3に実線で示すように中間ロール40を基準配置位置40Kから接触最小位置40Jとは反対の方向へずれた位置に配置したとき、シート状積層体90Dには、ニップ領域90Gと該ニップ領域90Gから積層体送り方向下流側へ連続する下流側巻き掛け部90hとからなる加熱ロール重ね部90Hが確保される。
中間ロール40が基準配置位置40K(図2参照)あるいは基準配置位置40Kから積層体最短張設部90E1側(具体的には第2方向)にずれた位置にあるときには、シート状積層体90Dの加熱ロール21に対する下流側巻き掛け部90hは確保されず、ニップ領域90Gのみによって積層体加熱ロール重ね部90Hが確保される。
図2、図3に実線で示すように中間ロール40を基準配置位置40Kから接触最小位置40Jとは反対の方向へずれた位置に配置したとき、シート状積層体90Dには、冷却ロール30に対する巻き掛け部90Iも確保される。
なお、シート状積層体90Dの冷却ロール30から積層体送り方向下流側へ延在する部分は、積層体送り方向下流側へ行くに従って、積層体最短張設部90E1(図3)の真直延在部90E2の仮想延長からその加熱ロール対向面90a側(図3では下方)への離隔距離が増大するように、最短張設時真直延在部90E2の仮想延長に対して傾斜して延在している。シート状積層体90Dの冷却ロール30から積層体送り方向下流側へ延在する部分は、上述のように最短張設時真直延在部90E2の仮想延長に対する傾斜を維持したまま延在してシート送りロール50(図2参照)に到達されている。
このため、シート状積層体90Dの冷却ロール30に対する巻き掛け部90Iは、ロール支持機構41による中間ロール40の支持位置に関係無く常時確保される。
シート状積層体90Dの冷却ロール30に巻き掛けた巻き掛け部90Iは、本明細書において、シート状積層体90D長手方向において冷却ロール30表面(周面)に重ねた領域(重ね部90I)として扱う。
以下、シート状積層体90Dにおけるその冷却ロール30に対する重ね部90I(図2、図3参照)を冷却ロール重ね部あるいは積層体冷却ロール重ね部、とも言う。
積層体加熱ロール重ね部90Hは、帯状剥離材94を加熱ロール21表面(周面)との間に挟み込んでいる。このため、積層体加熱ロール重ね部90Hは、帯状剥離材94を介して加熱ロール21によって加熱される。
一方、シート状積層体90Dの冷却ロール重ね部90Iは、冷却ロール30にその表面(周面)に直接接触させて巻き掛けられているため、冷却ロール30によって直接冷却される。
図2、図3に示すように、積層体加熱ロール重ね部90Hの下流側巻き掛け部90hは、シート状積層体90Dの中間ロール前張設部90Fの積層体送り方向上流側部分である。
図2、図3に示すように、シート状積層体90Dのニップ領域90Gは、加熱部ピンチロール22によって加熱ロール21に押圧されている。また、積層体加熱ロール重ね部90Hには、シート状積層体90Dの送り移動時に中間ロール前張設部90Fに張力が作用することで、加熱ロール21表面(周面)への押圧力が働く。積層体加熱ロール重ね部90Hは、シート状積層体90Dの送り移動時に、帯状剥離材94を加熱ロール21表面(周面)に向かって押圧して帯状剥離材94の加熱ロール21表面からの浮き上がりを防ぐ。このため、シート状積層体90Dの送り移動時には、積層体加熱ロール重ね部90H及び帯状剥離材94が加熱ロール21表面に重ね合わされた状態が安定に保たれ、加熱ロール21による積層体加熱ロール重ね部90Hの加熱が確実に実現される。
なお、複層シート製造装置10を用いる複層シートの製造は、帯状剥離材94を使用せず、シート状積層体90Dの加熱ロール21表面(周面)に直接重ねた部分を加熱ロール21によって加熱して実施しても良い。
この点、シート状積層体90Dの加熱ロール重ね部は、図1〜図4に例示したように帯状剥離材94を介して加熱ロール21周面に重ねた部分に限定されるものではない。シート状積層体90Dの加熱ロール21(具体的には加熱ロール21周面)に対する重ね部としては、帯状剥離材94を介在させず、シート状積層体90Dの加熱ロール21表面(周面)に直接重ねた部分であっても良い。
以下、シート状積層体90Dのその面方向におけるロール21、30に対する重ね部90H、90Iの大きさを重ね部サイズとも言う。
また、以下、加熱ロール重ね部の重ね部サイズを加熱ロール重ね部サイズ、冷却ロール重ね部の重ね部サイズを冷却ロール重ね部サイズとも言う。
図2に示すように、中間ロール40が基準配置位置40Kにあるときは、既述のように、積層体加熱ロール重ね部90Hはシート状積層体90Dのニップ領域90Gのみによって確保され、下流側巻き掛け部90hは存在しない。シート状積層体90Dの加熱ロール重ね部90Hサイズは、中間ロール40位置を基準配置位置40Kから第2方向側にずらしても、中間ロール40を基準配置位置40Kに配置したときと同じである。中間ロール40位置の調整によって調整される積層体加熱ロール重ね部90Dサイズは、中間ロール40が基準配置位置40Kにあるとき及び基準配置位置40Kから第2方向にずれた位置にあるときが最小である。
シート状積層体90Dの加熱ロール重ね部90Hサイズは、中間ロール40の基準配置位置40Kから第1方向(図2、図3において装置下方)へのずれ量が大きいほど大きくなる。また、中間ロール40の基準配置位置40Kから第1方向へのずれ量が大きいほど、シート状積層体90Dの冷却ロール重ね部90Iサイズも増大する。中間ロール40の基準配置位置40Kから第1方向(下方)へのずれ量が小さいほど、積層体加熱ロール重ね部90Hサイズは小さく、積層体冷却ロール重ね部90Iサイズも小さくなる。
積層体加熱ロール重ね部90Hは、中間ロール40の基準配置位置40Kから第1方向へのずれ量に応じてシート状積層体90D長手方向のサイズが増減する。
なお、シート状積層体90Dの冷却ロール重ね部90Iサイズは、中間ロール40の接触最小位置40Jから第1方向へのずれ量が大きいほど大きくなり、中間ロール40の接触最小位置40Jから第1方向へのずれ量が小さいほど小さくなる。
また、中間ロール40が接触最小位置40Jにあるとき、及び接触最小位置40Jから第2方向にずれた位置にあるとき、シート状積層体90Dの冷却ロール重ね部90Iサイズは最小である。積層体ニップ後張設部90Eは、中間ロール40が接触最小位置40Jにあるとき、及び接触最小位置40Jから第2方向にずれた位置にあるときに、最短張設部90E1となる。
冷却ロール重ね部90Iは、中間ロール40の接触最小位置40Jから第1方向へのずれ量に応じてシート状積層体90D長手方向のサイズが増減する。
図2に示すように、中間ロール40は、装置前後方向において、下流側先頭案内ロール15aから後側へ離隔した位置に設けられている。積層体ニップ後張設部90Eの中間ロール前張設部90Fにおける加熱ロール重ね部90Hよりも積層体送り方向下流側に位置する部分は、積層体送り方向下流側へ行くにしたがって剥離材ニップ後延在部94aから装置後側への離隔距離が大きくなるように、剥離材ニップ後延在部94aに対して傾斜して延在している。
このため、剥離材ニップ後延在部94aは、帯状剥離材94の送り移動に伴い、シート状積層体90Dからその下方へ分離(剥離)される。
帯状剥離材94は、紙、樹脂フィルム等のフィルム状材料の表面に樹脂コーティングを施した長尺の帯状材である。帯状剥離材94は、ネット用接着繊維を形成する熱可塑性樹脂が熱溶融状態にて加熱ニップ部20の加熱ロール21に接触、付着することを防ぐ。帯状剥離材94の樹脂コーティングは、例えばフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)などの、化学的安定性、耐熱性に優れるものを好適に採用できる。この樹脂コーティングは、帯状剥離材94の両面のうち、少なくとも、シート状積層体90Dに接する側の面に施されている。
また、帯状剥離材94表層の樹脂コーティングは、ネット用接着繊維を形成する熱可塑性樹脂が熱溶融状態にて接触しても付着しにくく、容易に除去(剥離)できる低付着性のものを採用している。したがって、帯状剥離材94は、ネット用接着繊維を形成する熱可塑性樹脂が熱溶融状態にて接触してもネット93が接着、付着してしまうことが無く、加熱ニップ部20からその積層体送り方向下流側へ送り出されることで、ネット93から円滑に分離(剥離)できる。
図2、図3に示すように、帯状剥離材94には、シート状積層体90Dのニップ領域90Gよりも装置前側にて加熱ロール21に巻き掛けられた巻き掛け部94b(以下、剥離材前側巻き掛け部とも言う)が確保されている。帯状剥離材94は、剥離材前側巻き掛け部94bにて加熱ロール21よって加熱されてから加熱ニップ20のロール21、22間に送り込まれる。シート状積層体90Dを構成する複数のシート形成材90のうち、加熱ニップ20にて最も加熱ロール21側に配置されるシート形成材90は、加熱ニップ20のロール21、22間に送り込まれてから直ちに加熱ロール21による加熱が開始される。
加熱ニップ部20から送り出されたシート状積層体90Dは、該シート状積層体90Dの互いに隣り合うシート形成材90同士の接合状態を保ったまま冷却ロール30に向かって送り移動される。
図2、図3に示すように、シート状積層体90Dは、その両面のうち加熱ロール対向面90a、つまり図示例ではネット93側の面を冷却ロール30周面に接触させて冷却ロール30に巻き掛けられている。
図2に示すように、冷却ロール30には、その表面(周面。冷却ロール30の径方向外側の面)温度を10〜30℃の範囲に保つ温度調整装置31が接続されている。
図2の温度調整装置31は、冷却ロール30内部への冷媒の流通(例えば通水)によって、冷却ロール30の周面の温度を10〜30℃に保つものである。
なお、冷却ロール30は、空気に比べて熱伝導率が高い金属製円筒状の外胴を有する。冷却ロール30の周面は、この外胴の周面(側面)を指す。
温度調整装置31は、冷却ロール30表面温度を10〜30℃の範囲内で設定した温度(目標温度。以下、冷却ロール設定温度)に保つべく作動する。
温度調整装置31によって設定する冷却ロール30表面温度(冷却ロール設定温度)は15〜25℃の範囲にあることが好ましく、15〜20℃の範囲にあることがより好ましい。
冷却ロール30は、その表面温度が0℃超かつ10℃よりも低い温度であると、複層シート製造装置を室温30℃を超える室内で使用する場合に、表面(周面)に結露が生じやすくなる。冷却ロール30表面(周面)の結露は、冷却ロール30によるシート状積層体90Dの冷却進行のバラツキや冷却効率低下、シート状積層体90Dの冷却ロール30に対するスリップの原因になることがある。シート状積層体90Dの冷却ロール30に対するスリップは、シート状積層体90Dの皺、捻れ等の変形の原因になることがある。冷却ロール30表面温度を10℃以上とすることは、複層シート製造装置を室温30℃を超える室内で使用する場合であっても、冷却ロール30表面(周面)の結露発生を防ぐことに有効に寄与する。
図1、図2に示す中間ロール40には、その表面温度を調整する温度調整装置42(図3参照。温度調整部)が接続されている。中間ロール40は、その表面温度を温度調整装置42によって調整することで、該中間ロール40に接するシート状積層体90Dを冷却可能であり、また、シート状積層体90Dを加熱昇温させることも可能である。以下、シート状積層体90Dの冷却に用いる場合の中間ロール40を冷却中間ロール、シート状積層体90Dの加熱に用いる場合の中間ロール40を加熱中間ロールとも言う。
温度調整装置42が調整目標とする中間ロール40表面温度(目標温度)を、以下、中間ロール使用温度(あるいは、単に、使用温度)ともいう。
この実施形態の複層シート製造装置10において、冷却中間ロール40の中間ロール使用温度(冷却中間ロール使用温度)は、10〜30℃の範囲内の温度に設定される。加熱中間ロール40の中間ロール使用温度(加熱中間ロール使用温度)は、80℃〜250℃の範囲内に設定される。
なお、冷却中間ロール使用温度は15〜25℃の範囲にあることが好ましく、15〜20℃の範囲にあることがより好ましい。
冷却中間ロール使用温度を10℃以上(10〜30℃)とすることは、冷却ロール30について説明した理由(結露防止)と同じ理由に依る。
温度調整装置42は、中間ロール40内部に流通させた流体の温度を調整することで、中間ロール40表面(周面)温度を既述の中間ロール使用温度(目標温度)に保つべく作動する。
なお、中間ロール40は、空気に比べて熱伝導率が高い金属製円筒状の外胴を有する。中間ロール40は、この外胴の周面(側面)を積層体ニップ後張設部90Eに接触させる。中間ロール40表面(周面)は外胴周面を指す。
中間ロール40の使用温度は、複層シート製造装置10に設けられている操作盤を作業者が操作して入力した中間ロール温度設定指令に基づく温度調整装置42の作動によって調整、設定される。中間ロール温度設定指令は操作盤から温度調整装置42へ入力される。
中間ロール温度設定指令には、中間ロール40表面温度を既述の冷却中間ロール使用温度(10〜30℃)に保つべく温度調整装置42を作動させる冷却中間ロール温度設定指令と、中間ロール40表面温度を既述の加熱中間ロール使用温度(80℃〜250℃)に保つべく温度調整装置42を作動させる加熱中間ロール温度設定指令とがある。
温度調整装置42の作動による中間ロール使用温度(目標温度)は、操作盤からの中間ロール温度設定指令の入力によって設定される。
中間ロール40を冷却中間ロールとして使用する場合は、操作盤からの冷却中間ロール温度設定指令の入力によって、中間ロール使用温度(目標温度)を既述の冷却中間ロール使用温度に設定する。中間ロール40加熱中間ロールとして使用する場合は、操作盤からの加熱中間ロール温度設定指令の入力によって、中間ロール使用温度(目標温度)を既述の加熱中間ロール使用温度に設定する。
なお、複層シート製造装置10は、操作盤からの中間ロール温度設定指令の入力が複数回行なわれたときに、最後に入力された中間ロール温度設定指令に基づいて中間ロール使用温度を設定する。
複層シート製造装置10は、操作盤からの中間ロール温度設定指令の入力によって、中間ロール使用温度を切り換え可能である。
この実施形態の複層シート製造装置10の温度調整装置42は、より具体的には、操作盤から冷却中間ロール温度設定指令が入力されたときに、中間ロール40表面温度を予め設定しておいた冷却中間ロール使用温度に保つべく作動する。冷却中間ロール使用温度は、複層シート製造装置10に、10〜30℃の範囲の特定温度に予め設定されている。
また、この温度調整装置42は、操作盤からの加熱中間ロール温度設定指令の入力によって、中間ロール40表面温度を加熱中間ロール温度設定指令に含まれる指定温度(加熱中間ロール使用温度。但し80℃〜250℃の範囲)に保つべく作動する。加熱中間ロール温度設定指令の指定温度は80℃〜250℃の範囲で適宜指定可能である。
なお、複層シート製造装置10は、上述のように、操作盤から入力された中間ロール温度設定指令に基づいて、中間ロール使用温度を、予め設定された冷却中間ロール使用温度、あるいは加熱中間ロール温度設定指令に含まれる指定温度に設定する構成に限定されない。複層シート製造装置10は、操作盤から入力された中間ロール温度設定指令に基づいて中間ロール使用温度を設定可能であれば良く、中間ロール温度設定指令に基づいて中間ロール使用温度を設定するための具体的構成は適宜設計可能である。
複層シート製造装置10としては、例えば、中間ロール使用温度を、冷却中間ロール温度設定指令に含まれる指定温度に設定可能、かつ加熱中間ロール温度設定指令に含まれる指定温度に設定可能とした構成も採用可能である。
また、複層シート製造装置10としては、例えば、10〜30℃の範囲の1以上の設定温度と、80℃〜250℃の範囲の複数の設定温度とを予め設定しておき、中間ロール使用温度を、これら設定温度から操作盤操作によって選択した温度に設定する構成も採用可能である。この場合は、操作盤からの中間ロール温度設定指令の入力に、予め設定した設定温度から1つを選択する操作盤操作が含まれる。
複層シート製造装置としては、操作盤からの中間ロール温度設定指令の入力に応じて、中間ロール使用温度を10℃以上かつ250℃以下の範囲で設定、変更可能な構成も採用可能である。この複層シート製造装置としては、例えば、中間ロール使用温度を、10℃〜250℃の範囲で適宜設定して操作盤から入力する中間ロール温度設定指令に含ませられた指定温度に設定する構成を採用可能である。また、この複層シート製造装置の中間ロール使用温度は、10℃〜250℃の範囲で予め設定しておいた中間ロール使用温度を操作盤から入力の中間ロール温度設定指令にて選択(指定)することで、選択した中間ロール使用温度に設定しても良い。予め設定しておく中間ロール使用温度は1つに限定されず互いに異なる複数の温度であっても良い。
また、この複層シート製造装置は、中間ロール使用温度の設定を、予め設定しておいた中間ロール使用温度の中間ロール温度設定指令による選択(指定)に加えて、中間ロール使用温度以外の温度(但し10℃〜250℃の範囲)について中間ロール温度設定指令に含まれる指定温度に設定可能、とした構成も採用可能である。
中間ロール40が積層体接触位置に配置されているとき、加熱ニップ部20にて加熱後のシート状積層体90Dは、その送り移動によって、中間ロール40に接触した後、冷却ロール30に接触する。
シート状積層体90Dの加熱ロール重ね部90H(図2、図3参照。具体的にはその積層体送り方向下流端)から冷却ロール30までの延在部分を、以下、加熱後張設部90Kとも言う。この加熱後張設部90Kは、シート状積層体90D長手方向において加熱ロール重ね部90Hと冷却ロール重ね部90Iとの間に位置する。
図2、図3に示すように、積層体接触位置の中間ロール40は、具体的には、シート状積層体90Dの加熱後張設部90Kにおける積層体裏面90bに当接される。
図2、図3に示すように、積層体接触位置にある中間ロール40に対するシート状積層体90D(具体的には加熱後張設部90K)の接触部分を、以下、中間ロール重ね部90J、あるいは積層体中間ロール重ね部90Jとも言う。
複層シート製造装置10は、積層体接触位置の範囲で中間ロール40の位置を仮想交差直線K方向に変更することで、シート状積層体90D面方向における中間ロール重ね部90Jの大きさ(中間ロール重ね部サイズとも言う)を変化させることができる。シート状積層体90Dの中間ロール重ね部90Jサイズは、中間ロール40が接触最小位置40Jにあるときが最小である。積層体中間ロール重ね部90Jは、中間ロール40の接触最小位置40J(図3参照)から第1方向へのずれ量が大きい程、シート状積層体90D長手方向にサイズ(重ね部サイズ)が大きくなる。また、積層体中間ロール重ね部90Jは、中間ロール40の接触最小位置40Jから第1方向へのずれ量が小さい程、シート状積層体90D長手方向にサイズ(重ね部サイズ)が小さくなる。
シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材(具体的には混抄紙91、不織布92、ネット93の接着用繊維の熱可塑性樹脂)は、加熱ロール21によって加熱溶融された後、シート状積層体90Dの冷却ロール重ね部90Iの積層体送り方向下流端(以下、単に、冷却ロール重ね部90I下流端、とも言う)に到達するまでにその全部あるいは殆どが融点よりも低い温度に降温されて固化する。
シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材は、加熱ロール21によって加熱溶融後、加熱後張設部90Kの積層体送り方向下流端(以下、加熱後張設部90K下流端、あるいは積層体加熱後張設部90K下流端とも言う)に達するまでに加熱後張設部90Kにて固化するか、あるいは溶融状態のまま積層体冷却ロール重ね部90Iに到達する。
加熱ニップ部20から送り出されたシート状積層体90Dの互いに隣り合うシート形成材90同士は、加熱ロール21によって加熱溶融された接着用熱可塑性樹脂材の固化によって互いに接着、一体化される。その結果、複層シート90Sが形成される。この実施形態では、冷却ロール30による冷却の完了したシート状積層体90Dを複層シート90Sとして扱う。複層シート90Sはシート状積層体90Dの一例である。
冷却ロール30は図示略の回転駆動機構によって回転駆動されて複層シート90Sを送り出す。冷却ロール30から送り出された複層シート90Sは、図示略の回転駆動機構によって回転駆動されるシート送りロール50、及び複層シート製造装置10に設けられているシート案内ロール13を経て、巻き取り台74によって回転駆動された巻き芯に巻き取られる。
巻き取り台74によって回転駆動される巻き芯は、巻き取り台74に脱着可能である。
巻き取り台74は、複層シート90Sを巻き付けた巻き芯を該巻き取り台74から取り外して、複層シート90Sを巻き付けていない巻き芯を取り付けることができる。
図2、図3において、シート状積層体90Dのニップ領域90Gから冷却ロール30までのシート状積層体90Dの送り経路長(すなわち積層体ニップ後張設部90Eの延在長)は2.0m以下の長さに設定されている。積層体ニップ後張設部90Eの延在長が2.0m以下であることは、中間ロール40が積層体接触位置にあるとき、及び中間ロール40が積層体最短張設時第2面側の積層体非接触位置に位置するとき、の両方に共通する。
積層体ニップ後張設部90Eの延在長は、シート状積層体90Dの加熱ロール21及び中間ロール4に対する巻き掛け長確保に鑑みて0.5m以上の長さが確保されていることが好ましい。この実施形態の複層シート製造装置10の積層体ニップ後張設部90Eの延在長は0.5〜2.0mの範囲である。
但し、シート状積層体90Dを加熱ニップ部20にて加熱後に出来るだけ速やかに冷却ロール30に接触させる点では、積層体ニップ後張設部90Eの延在長が短い方が有利である。この点も鑑みて、積層体ニップ後張設部90Eの延在長は、0.5〜1.5mであることが好ましく、0.5〜1.0mであることがより好ましい。
図2、図3において、シート状積層体90Dがその送り移動によってニップ領域90Gから移動されて冷却ロール30に到達接触するまでの所要時間を、以下、ニップ後張設部送り時間とも言う。このニップ後張設部送り時間は、シート状積層体90Dのニップ領域90Gから冷却ロール30までの送り経路長(すなわち積層体ニップ後張設部90E延在長)と、シート状積層体90Dの送り速度とによって決まる。
ニップ後張設部送り時間に関与するシート状積層体90Dの送り速度は、積層体ニップ後張設部90Eにおけるシート状積層体90Dの送り速度である。以下、積層体ニップ後張設部90Eにおけるシート状積層体90Dの送り速度をニップ後張設部送り速度とも言う。
この実施形態の複層シート製造装置10は、シート状積層体90Dをニップ領域90Gから送り出されてから3秒以内に冷却ロール30に到達接触させることが可能である。つまり、この実施形態の複層シート製造装置10のニップ後張設部送り時間は3秒以内に設定されている。この実施形態の複層シート製造装置10は、積層体ニップ後張設部90E延在長が0.5〜2.0m、かつニップ後張設部送り時間が3秒以内、の構成となっている。
但し、本発明者の検討の結果、複層シート製造装置10としては、積層体ニップ後張設部90E延在長が1.0〜2.0mのときニップ後張設部送り時間が0.5〜3秒、積層体ニップ後張設部90E延在長が0.5〜1.0m未満のときニップ後張設部送り時間が0.25〜1.5秒、の構成を好適に採用できる。この構成は、中間ロール40が積層体接触位置にあるとき、及び中間ロール40が積層体非接触位置にあるとき、の両方に共通する。
この実施形態の複層シート製造装置10の加熱ロール21と冷却ロール30とは、互いに同じ回転周速を以て回転駆動されて、シート状積層体90Dを送り移動する。
また、この実施形態の複層シート製造装置10は、加熱ロール21と冷却ロール30とシート送りロール50とを互いに同じ回転周速で回転駆動する通常運転モードと、加熱ロール21及び冷却ロール30をシート送りロール50に比べて若干低速の回転周速で回転駆動する延伸加工運転モードとを操作盤の操作によって選択、切り換え可能である。
また、この実施形態の複層シート製造装置10は、図示略の操作盤を作業者が操作することで、シート送りロール50について予め複数設定された積層体送り速度の選択、切り換えが可能である。
なお、以下、シート送りロール50の回転駆動による積層体送り速度をシート送り速度とも言う。
この実施形態の複層シート製造装置10は、運転モードとして通常運転モードを選択したとき、シート送り速度の選択の結果、該選択したシート送り速度とニップ後張設部送り速度とを同じにするべく、加熱ロール21と冷却ロール30とシート送りロール50とを互いに同じ回転周速で回転駆動する。
また、この実施形態の複層シート製造装置10は、運転モードとして延伸加工運転モードを選択したときも、シート送り速度の選択の結果、選択したシート送り速度を実現するべくシート送りロール50を回転駆動する。但し、加熱ロール21及び冷却ロール30は、ニップ後張設部送り速度を選択したシート送り速度に比べて若干低速とするべく、シート送りロール50に比べて低速の回転周速で回転駆動する。その結果、延伸加工運転モードでは、冷却ロール30とシート送りロール50との間でシート状積層体90D(複層シート90S)に延伸加工のための引っ張り荷重を与える。
なお、延伸加工運転モードにおける加熱ロール21及び冷却ロール30の回転周速は、複数のシート送り速度の個々に応じて予め設定されている。延伸加工運転モードにおける加熱ロール21及び冷却ロール30の回転周速を、以下、低速設定速度とも言う。
但し、この実施形態の複層シート製造装置10のニップ後張設部送り速度は、複層シート製造装置10の運転モードに関わらず、積層体ニップ後張設部90E延在長が1.0〜2.0mのときニップ後張設部送り時間が0.5〜3秒、積層体ニップ後張設部90E延在長が0.5〜1.0m未満のときニップ後張設部送り時間が0.25〜1.5秒の条件を満たすように設定される。
巻き取り台74(図1参照)は、該巻き取り台74が回転駆動する巻き芯の回転周速を、複層シート90Sのシート送りロール50から送り方向下流側部分に作用する張力の計測値、あるいは該張力に起因して巻き芯から作用する回転反力、が予め設定した範囲内となるように自動調整しつつ、複層シート90Sを巻き芯に巻き取っていく。これにより、巻き取り台74は、過剰な張力による複層シート90Sの伸びや切断、張力不足による巻き弛みの発生を防ぐ。
複層シート製造装置10において、ニップ後張設部送り時間が3秒以内であることは、シート状積層体90Dをその接着用熱可塑性樹脂材の加熱ロール21による加熱溶融から3秒以内に冷却ロール30に接触させることを意味する。この複層シート製造装置10は、ニップ後張設部送り時間が3秒以内の構成により、シート状積層体90Dの加熱後張設部90K(以下、積層体加熱後張設部とも言う)の空気との接触による冷却(空冷)の影響を限定している。
中間ロール40が基準配置位置40Kにあるとき及び基準配置位置40Kから第2方向にずれた位置にあるとき、シート状積層体90Dの加熱後張設部90K(図3参照)はニップ後張設部90Eと一致している。
中間ロール40が積層体非接触位置にあるとき、積層体加熱後張設部90Kには、加熱ニップ部20のピンチロール22のみが接触部材として接触する。但し、ピンチロール22は、熱伝導率が低いゴムロールであり、しかもシート状積層体90Dとともに加熱ロール21によって加熱されるため、実質的に積層体加熱後張設部90Kの冷却要因とならない。
複層シート製造装置10について、中間ロール40を積層体非接触位置に配置した状態を、以下、中間ロール非接触配置状態とも言う。
中間ロール非接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造において、加熱ロール21によって加熱後のシート状積層体90Dの熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材は、積層体加熱後張設部90Kの空冷進行とともに冷却されていく。
中間ロール非接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造は、加熱ロール21表面温度の調整、シート送り速度の選択によって、積層体冷却ロール重ね部90I(具体的にはその上流端)に到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無の切り換え、及び熱溶融状態のまま到達する接着用熱可塑性樹脂材の量(以下、到達量とも言う)の調整が可能である。但し、この複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造は、加熱ロール21表面温度の調整、設定のみでも、冷却ロール重ね部90Iに到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無切り換え、到達量調整が可能である。
以下、中間ロール非接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造について、加熱ロール21表面温度の調整、設定のみによる、冷却ロール重ね部90Iに到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無切り換え、到達量調整について説明する。
中間ロール非接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造にあっては、シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の融点に対する加熱ロール21表面温度の調整によって接着用熱可塑性樹脂材の加熱溶融量を調整できる。接着用熱可塑性樹脂材の融点と該融点以上の温度に設定する加熱ロール21表面温度との差が大きいほど、接着用熱可塑性樹脂材の加熱溶融量を多くでき、また、熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の温度も高めることができる。
なお、複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造において、熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材は、その温度が接着用熱可塑性樹脂材融点よりも高いほど、熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材に接する未溶融の接着用熱可塑性樹脂材の加熱溶融に有効に寄与する。シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材は、複層シート製造装置10の加熱ロール21による加熱時のみでなく、加熱ロール21による加熱後も熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材との接触によって加熱溶融可能である。
中間ロール非接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造において、加熱ロール21表面温度の、シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材を熱溶融状態で積層体冷却ロール重ね部90I上流端に到達させることが可能な下限温度を、以下、溶融樹脂存在限界温度とも言う。
溶融樹脂存在限界温度が加熱ロール21表面温度の設定上限温度よりも低いときは、加熱ロール21表面温度を溶融樹脂存在限界温度よりも高く設定することで、積層体冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材を到達させることができる。
また、このとき、加熱ロール21表面温度を溶融樹脂存在限界温度よりも高く設定すれば、加熱ロール21によって加熱したシート状積層体90Dの熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材は積層体加熱後張設部90Kの空冷によって積層体加熱後張設部90Kにて全て固化し、積層体冷却ロール重ね部90Iに熱溶融状態で到達する接着用熱可塑性樹脂材は存在しない。
中間ロール非接触配置状態の複層シート製造装置10は、溶融樹脂存在限界温度が加熱ロール21表面温度の設定上限温度よりも低いとき、加熱ロール21表面温度の調整によって、冷却ロール重ね部90I上流端に到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無を切り換えることができる。
加熱ロール21表面温度の、シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の全てを熱溶融状態で到達させることが可能な下限温度を、以下、全溶融限界温度とも言う。
中間ロール非接触配置状態の複層シート製造装置10は、溶融樹脂存在限界温度が加熱ロール21表面温度の設定上限温度よりも低く、全溶融限界温度も加熱ロール21表面温度の設定上限温度より低いとき、溶融樹脂存在限界温度から全溶融限界温度までの範囲で加熱ロール21表面温度を高くするほど、積層体冷却ロール重ね部90I上流端への熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の到達量を多くできる。また、溶融樹脂存在限界温度が加熱ロール21表面温度の設定上限温度よりも低く、全溶融限界温度が加熱ロール21表面温度の設定上限温度よりも高ければ、溶融樹脂存在限界温度から加熱ロール21表面温度の設定上限温度までの範囲で加熱ロール21表面温度を高くするほど、積層体冷却ロール重ね部90I上流端への熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の到達量を多くできる。
したがって、中間ロール非接触配置状態の複層シート製造装置10は、加熱ロール21表面温度の調整によって、冷却ロール重ね部90I上流端に到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無切り換え、到達量調整が可能である。
中間ロール非接触配置状態の複層シート製造装置10に限らず、複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造においては、シート状積層体90Dとして、その接着用熱可塑性樹脂材の融点が加熱ロール21表面温度の設定上限温度よりも低いものを採用する。また、シート状積層体90Dとしては、溶融樹脂存在限界温度が加熱ロール21表面温度の設定上限温度よりも低いもの、及び溶融樹脂存在限界温度が加熱ロール21表面温度の設定上限温度よりも高いもの、のいずれも採用可能である。
但し、溶融樹脂存在限界温度が加熱ロール21表面温度の設定上限温度よりも高いシート状積層体90Dは、加熱ロール21表面温度の調整のみによる、冷却ロール重ね部90I上流端に到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無切り換え、到達量調整を行なえるものではない。
中間ロール非接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造において、溶融樹脂存在限界温度及び全溶融限界温度は、シート状積層体90Dの構成、シート状積層体90Dに確保される加熱後張設部90K長さ等の複層シート製造装置10構成、シート送り速度、帯状剥離材94使用時の加熱ロスの影響を受ける。
溶融樹脂存在限界温度及び全溶融限界温度に影響を与えるシート状積層体90D構成としては、例えば、熱可塑性樹脂材の融点、比熱、熱溶融状態における流動性、シート状積層体厚み方向における熱可塑性樹脂材の存在位置、加熱ロール対向面90aと熱可塑性樹脂材との間に存在するシート形成材の熱伝導性を挙げることができる。
なお、帯状剥離材94使用時の加熱ロスは、帯状剥離材94を使用しないときには勘案の必要は無い。帯状剥離材94使用時に帯状剥離材94による加熱ロスを勘案し、帯状剥離材94を使用しないときには勘案の必要が無いことは、複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造において、中間ロール40位置や中間ロール使用温度に関係無く共通する。
既述の混抄紙91の接着用繊維は混抄紙91の面方向全体にわたって概ね均等の密度で配置され、不織布92の接着用繊維は不織布92面方向全体にわたって概ね均等の密度で配置されている。また、ネット93において、接着用繊維を複数本集合させた糸は、ネット93面方向全体にわたって概ね均等の密度で配置されている。シート形成材90としては、その面方向全体にわたって接着用熱可塑性樹脂材を概ね均等の密度で配置、あるいは接着用熱可塑性樹脂材を複数集合させた集合部(例えば、ネット93の糸)を多数箇所に分散配置した構成が採用される。
複層シート製造装置10の加熱ロール21は、シート状積層体90D(具体的には加熱ロール重ね部90H)をその幅方向全体にわたって均等に加熱できる。加熱ロール21によって加熱後のシート状積層体90Dには、その幅方向全体にわたって多数箇所に熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材が存在する状態が確保される。
中間ロール非接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造において、加熱ロール21によって加熱後のシート状積層体90Dは、そのロール対向面90aに冷却ロール30表面温度(10〜30℃)に比べて格段に高い温度を保ったまま送り移動によって冷却ロール30に到達される。そして、このシート状積層体90Dは、冷却ロール30との接触により短時間で急激に冷却(急冷)される。その結果、シート状積層体90Dに熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材が含まれるとき、熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の全部あるいは殆どがその融点よりも低い温度に急冷されて冷却固化される。
複層シート製造装置10の冷却ロール30は、シート状積層体90Dを、その幅方向全体にわたって均等に冷却できる。
また、シート状積層体90Dを加熱ロール21による加熱後3秒以内に冷却ロール30に接触させること(但し積層体ニップ後張設部90E延在長は0.5〜2.0m)、及びシート状積層体90Dを冷却ロール30によって短時間で冷却(急冷)することも、シート状積層体のその幅方向における冷却速度のバラツキを小さく抑えて均等化を図る点で有利である。
シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材としては、アクリル、ポリカーボネート等の非晶性樹脂、ポリエチレン等の結晶性の熱可塑性樹脂(以下、接着用結晶性樹脂材とも言う)のどちらも採用可能である。
シート状積層体を加熱ロールによる加熱後に空冷のみで室温まで冷却した場合(以下、空冷製造法とも言う)は、シート状積層体の冷却速度のバラツキが接着用結晶性樹脂材によるシート形成材同士の接着強度にも影響を与えて接着強度のバラツキが生じやすい。複層シート(シート状積層体)におけるシート形成材同士の接着強度のバラツキは、複層シートの送り移動中のシート形成材の剥がれの原因になるため、複数シートの送り速度の制約要因になったり、複数シートの送り移動に支障を生じる等の影響がある。
これに対して、複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造において、加熱ロールによる加熱後の接着用結晶性樹脂材を冷却ロールによって急冷することは、シート状積層体の冷却速度の均等化が容易であり、上述の空冷製造法に比べて、接着用結晶性樹脂材によるシート形成材同士の接着強度のバラツキが生じにくい。加熱ロールによる加熱後の接着用結晶性樹脂材を冷却ロールによって急冷する構成は、接着用結晶性樹脂材によるシート形成材同士の接着強度の均等化を容易に実現でき、複層シートの送り移動中のシート形成材の剥がれ防止に有効に寄与する。
複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造は、既述の空冷製造法に比べて、シート状積層体のその幅方向における冷却速度の均等化を容易に実現できる。
シート状積層体90Dを積層体ニップ後張設部90Eに0.5〜2.0mの延在長を確保しかつ加熱ロール21による加熱後3秒以内に冷却ロール30に接触させて急冷する構成は、接着用結晶性樹脂材を有するシート状積層体90Dを使用する場合に好適である。
接着用熱可塑性樹脂材として結晶性熱可塑性樹脂を用いたシート状積層体90Dを、以下、結晶性接着樹脂有り積層体ともいう。
結晶性接着樹脂有り積層体を積層体ニップ後張設部90Eに0.5〜2.0mの延在長を確保しかつ加熱ロール21による加熱後3秒以内に冷却ロール30に接触させて急冷する構成は、結晶性接着樹脂有り積層体の冷却を均等化できる。また、この構成であれば、結晶性接着樹脂有り積層体を熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材を含んだ状態で冷却ロール30に接触させるとき、熱溶融状態の結晶性熱可塑性樹脂(接着用熱可塑性樹脂材)の冷却、固化の均等化も容易に実現できる。この構成においては、熱溶融状態の結晶性熱可塑性樹脂(接着用熱可塑性樹脂材)を含んだ状態の結晶性接着樹脂有り積層体を冷却ロール30に接触させて急冷することで、熱溶融状態の結晶性熱可塑性樹脂を急冷固化でき、結晶性熱可塑性樹脂の高分子鎖の偏在を抑えて、高分子鎖の偏在に起因する接着強度のバラツキを小さく(均等化)できる。その結果、この構成は、結晶性接着樹脂有り積層体面方向において、結晶性熱可塑性樹脂によるシート形成材90同士の接着強度の均等化を容易に実現できる。
結晶性熱可塑性樹脂によるシート形成材90同士の接着強度の均等化は、複層シート90Sの送り移動中でのシート形成材90の剥がれを生じにくくする。このため、加熱ロール21によって加熱後の結晶性接着樹脂有り積層体を冷却ロール30によって急冷する構成は、シート状積層体90Dの送り速度向上、それによる複層シート90Sの生産性向上を容易に実現できる。
中間ロール非接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造では、加熱ロール21表面温度の調整によって積層体冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態のまま到達させる接着用熱可塑性樹脂材量を調整することで、複層シート90Sにおける結晶化を回避して固化した接着用結晶性樹脂材量を調整できる。
中間ロール非接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造は、加熱ロール21表面温度の調整のみによって、複層シート90S面方向における接着用熱可塑性樹脂材の存在範囲、及び複層シート90Sにおける結晶化を回避して固化した結晶性熱可塑性樹脂材量の調整が可能である。
この実施形態の複層シート製造装置10の加熱ロール21表面温度は、80℃〜250℃の範囲で調整して設定する。このため、加熱ロール21によるシート状積層体90Dの加熱は、シート状積層体90Dとして芯材が融点250℃超の熱可塑性樹脂である芯有り接着用繊維を有するものを使用する場合に、芯有り接着用繊維の芯材を加熱溶融することは無い。
但し、加熱ロールとしては、例えば表面温度を80〜300℃の範囲で調整して設定可能なものなど、表面温度の設定上限温度が250℃超のものも採用可能である。加熱ロールとしては、温度調整装置42によって、例えばその表面温度を80℃から、250℃超の設定上限温度の範囲で調整、設定可能なものも採用可能である。
芯材が融点250℃超の熱可塑性樹脂である芯有り接着用繊維を有するシート状積層体90Dは、より具体的には、芯材が融点250℃超の熱可塑性樹脂である芯有り接着用繊維を有するシート形成材90を含む構成のシート状積層体90Dを指す。
熱可塑性樹脂製の芯材を有する芯有り接着用繊維を、以下、熱可塑性芯有り接着用繊維とも言う。シート状積層体90Dが芯材が融点250℃超の熱可塑性芯有り接着用繊維を有するものであるとき、加熱ロール21表面温度は、熱可塑性芯有り接着用繊維の外層部の融点以上かつ芯材の融点よりも低い温度に設定する。加熱ロール21としては、その表面温度を熱可塑性芯有り接着用繊維の外層部の融点以上かつ芯材の融点よりも低い温度に設定可能なものを使用する。
シート状積層体90Dに設けられた接着用繊維が芯無し接着用繊維及び/又は熱硬化性樹脂繊維に限定されている場合など、シート状積層体90Dが熱可塑性芯有り接着用繊維を含まないとき、加熱ロール21はその表面温度を250℃超に設定して使用しても良い。
加熱中間ロール40としても、温度調整装置42によって、その中間ロール使用温度を80℃から、250℃超の設定上限温度(例えば300℃)の範囲で調整、設定可能なものを採用しても良い。
シート状積層体90Dに熱可塑性芯有り接着用繊維が含まれているとき、加熱中間ロール40使用温度は、熱可塑性芯有り接着用繊維の外層部の融点以上かつ芯材の融点よりも低い温度に設定する。但し、シート状積層体90Dに設けられた接着用繊維が芯無し接着用繊維及び/又は熱硬化性樹脂繊維に限定されている場合など、シート状積層体90Dが熱可塑性芯有り接着用繊維を含まないとき、加熱中間ロール40は、その使用温度を250℃超に設定して使用しても良い。
加熱中間ロール40の使用温度は加熱ロール21表面温度と同じでも異なっていても良い。
既述の中間ロール40は、中間ロール40内部に流通させた流体の温度を調整する流体流通形の温度調整装置42によって、その中間ロール使用温度が調整、設定される構成となっている。
但し、中間ロール40としては、例えば、流体流通形の温度調整装置42以外に、加熱中間ロールとして使用する際の表面加熱用のヒータを組み込んだ構成のものも採用可能である。
複層シート製造装置10は、加熱ロール21及び冷却ロール30に対する中間ロール40の位置調整と、積層体接触位置にある中間ロール40の使用温度設定(温度選択)とによって、多種多様な構成の複層シート90Sの製造に幅広く対応できる。
この実施形態の複層シート製造装置10において、加熱ロール21及び冷却ロール30に対する中間ロール40の位置調整は、より具体的には、図3に示す仮想交差直線K方向の中間ロール40の位置調整である。
この実施形態の複層シート製造装置10における中間ロール40の使用温度設定(温度選択)は、具体的には、冷却中間ロールと加熱中間ロールとの選択、及び中間ロール40を加熱中間ロールとして使用する場合の中間ロール使用温度の設定である。
図2、図3に示すように、複層シート製造装置10において中間ロール40を積層体接触位置に配置した状態を、以下、中間ロール接触配置状態とも言う。
複層シート製造装置10が中間ロール接触配置状態のとき、積層体加熱後張設部90Kには、中間ロール40のみが接触部材として接触する。このとき、積層体加熱後張設部90Kの中間ロール重ね部90J以外の部分の冷却要因は積層体加熱後張設部90Kの空冷のみである。
中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10における中間ロール40の位置調整可能範囲を、以下、接触ロール位置調整範囲とも言う。
また、複層シート製造装置10における中間ロール40の接触最小位置40Jから第1方向へのずれ量が最大のときの配置位置を、以下、第1方向限界配置位置とも言う。この実施形態の複層シート製造装置10の中間ロール40の第1方向限界配置位置は、ロール支持機構61による中間ロール40の位置調整可能範囲の第1方向側の端である。この実施形態の複層シート製造装置10の中間ロール40の第1方向限界配置位置は、中間ロール40の基準配置位置40Kから第1方向側にずれた位置に設定されている。
接触ロール位置調整範囲はロール支持機構61による中間ロール40の位置調整可能範囲の一部である。中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10において中間ロール40は、接触ロール位置調整範囲(接触最小位置40J及び第1方向限界配置位置を含む)で仮想交差直線K方向に配置位置を調整可能である。
複層シート製造装置10について、冷却中間ロール40を積層体接触位置に配置した状態を、以下、冷却中間ロール接触配置状態とも言う。
冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造は、加熱ロール21表面温度を、シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の融点よりも高い温度に設定し、冷却中間ロール40を接触ロール位置調整範囲内で位置調整し、シート状積層体90Dを送り移動する。冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造においてシート状積層体90Dは、加熱ロール21によって加熱された後、その送り移動によって、冷却中間ロール40に接触して冷却され、次いで、冷却ロール30に接触して冷却される。
冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造において、加熱ロール21表面温度は、シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の所期の加熱溶融量を得るとともに、熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材に所期の温度を確保するべく設定する。また、加熱ロール21表面温度は、シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の融点、シート状積層体90Dの厚み方向における接着用熱可塑性樹脂材の位置等を考慮して設定する。
図2、図3を参照して判るように、複層シート製造装置10において積層体加熱ロール重ね部90Hサイズは、中間ロール40の基準配置位置40Kから第1方向へのずれ量が大きいほど大きく、前記ずれ量が小さいほど小さくなる。
シート状積層体90Dは、積層体加熱ロール重ね部90Hサイズが大きいほど加熱ロール21からの熱エネルギー供給量を増大でき、加熱ロール21による加熱に有利である。
複層シート製造装置10は、中間ロール40の基準配置位置40Kから第1方向へのずれ量の調整によって、シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の加熱ロール21による加熱溶融量や、熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の温度を調整できる。
冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10の冷却中間ロール40は、加熱ロール21によって加熱後のシート状積層体90Dを冷却する。
冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造は、冷却中間ロール40の接触最小位置40Jから第1方向へのずれ量の調整、設定によって、冷却中間ロール40による積層体加熱後張設部90Kの冷却効果を調整、設定できる。
シート状積層体90Dの冷却中間ロール40との接触面積は、積層体中間ロール重ね部90Jサイズが大きいほど大きく、積層体中間ロール重ね部90Jサイズが小さいほど小さくなる。冷却中間ロール40による積層体加熱後張設部90Kの冷却効果は積層体中間ロール重ね部90Jサイズによって決まる。冷却中間ロール40による積層体加熱後張設部90Kの冷却効果は積層体中間ロール重ね部90Jサイズが大きいほど大きく、積層体中間ロール重ね部90Jサイズが小さいほど小さい。
図2、図3を参照して判るように、複層シート製造装置10は、中間ロール40の基準配置位置40Kから第1方向へのずれ量を大きくして、積層体加熱ロール重ね部90Hサイズを大きくすれば、積層体中間ロール重ね部90Jサイズ及び積層体冷却ロール重ね部90Iサイズも大きくなる。また、複層シート製造装置10は、中間ロール40の基準配置位置40Kから第1方向へのずれ量を小さくすれば、積層体加熱ロール重ね部90Hサイズ、積層体中間ロール重ね部90Jサイズ及び積層体冷却ロール重ね部90Iサイズが小さくなる。
この実施形態の複層シート製造装置10において、中間ロール40を基準配置位置40Kに配置したときの積層体中間ロール重ね部90Jサイズは、積層体加熱ロール重ね部90Hサイズに比べて格段に大きい。
冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10の冷却中間ロール40は、基準配置位置40Kから第1方向限界配置位置までの範囲(基準配置位置40K及び第1方向限界配置位置を含む)に配置したときに、加熱ロール21による加熱後のシート状積層体90Dを急冷する役割を果たす。その結果、加熱ロール21による加熱後のシート状積層体90Dの熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材もその一部又は全部が融点よりも低い温度にまで急冷され、固化される。
また、図2、図3に示す中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10は、中間ロール40の基準配置位置40Kから第2方向へのずれ量が大きいほど積層体中間ロール重ね部90Jサイズが小さくなるが、積層体加熱ロール重ね部90Hサイズは、中間ロール40の基準配置位置40Kから第2方向へのずれ量の変化に対して変動しない。中間ロール40を基準配置位置40Kから第2方向へずれた位置に配置するとき、積層体加熱ロール重ね部90Hサイズは、中間ロール40の基準配置位置40Kから第2方向へのずれ量に関係無く、中間ロール40を基準配置位置40Kに配置したときと同じサイズを維持する。
ところで、図2、図3に示すように、この実施形態の複層シート製造装置10の加熱ロール21は、中間ロール40に比べて径大に形成されている。加熱ロール21は、その外径が、例えば中間ロール40外径の1.5〜5倍程度のものを好適に用いることができる。図2、図3に例示した加熱ロール21の外径は、中間ロール40外径の2倍以上であり、より具体的には中間ロール40外径の3倍程度(3倍強)の大きさである。
このため、例えば、中間ロール40を基準配置位置40Kから第1方向へ移動して基準配置位置40Kからのずれ量を次第に大きくしていったとき、積層体中間ロール重ね部90Jサイズに比べて積層体加熱ロール重ね部90Hサイズの方が、中間ロール40の基準配置位置40Kからのずれ量の増加量に対する増加量が大きい。
既述のように、複層シート製造装置10は、中間ロール40が基準配置位置40Kにあるとき、加熱ロール重ね部90Hよりもサイズが大きい積層体中間ロール重ね部90Jを確保できる。
但し、この実施形態の複層シート製造装置10は、中間ロール40の基準配置位置40Kから第1方向へのずれ量を調整することで、積層体加熱ロール重ね部90Hサイズを積層体中間ロール重ね部90Jサイズよりも大きくすることが可能である。
積層体加熱ロール重ね部90Hサイズが積層体中間ロール重ね部90Jサイズと同じときの中間ロール40配置位置(基準配置位置40Kから第1方向へのずれ量調整による配置位置)を、以下、重ね部サイズバランス位置、とも言う。この実施形態の複層シート製造装置10の中間ロール40の第1方向限界配置位置は、重ね部サイズバランス位置から第1方向へずれた位置に設定されている。
積層体加熱ロール重ね部90Hサイズと、該積層体加熱ロール重ね部90Hよりもサイズが大きいときの積層体中間ロール重ね部90Jのサイズとの差は、中間ロール40が基準配置位置40Kに配置されているときが最大である。
積層体中間ロール重ね部90Jサイズは、中間ロール40の基準配置位置40Kからの仮想交差直線K方向のずれ量を大きくするほど積層体加熱ロール重ね部90Hサイズに対して相対的に小さくなっていく。つまり、積層体中間ロール重ね部90Jの積層体加熱ロール重ね部90Hに対するサイズ比(積層体中間ロール重ね部90Jサイズ/積層体加熱ロール重ね部90Hサイズ)は、中間ロール40の基準配置位置40Kからの仮想交差直線K方向のずれ量を大きくするほど小さくなっていく。
積層体加熱ロール重ね部90Hサイズと、該積層体加熱ロール重ね部90Hよりもサイズが大きいときの積層体中間ロール重ね部90Jのサイズとの差は、中間ロール40の基準配置位置40Kからの仮想交差直線K方向のずれ量が大きいほど小さくなる。
このため、冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造にあっては、例えば加熱ロール21表面温度を変更せずに冷却中間ロール40の接触最小位置40Jから第1方向のずれ量調整のみによって、積層体加熱後張設部90K下流端温度(ここでは、積層体加熱後張設部90Kにおけるロール対向面90a下流端温度)を調整できる。冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造にあっては、例えば加熱ロール21表面温度一定の条件下では、冷却中間ロール40の基準配置位置40Kからの仮想交差直線K方向のずれ量を大きくするほど、積層体加熱後張設部90K下流端温度を高くすることができる。
冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造にあっては、加熱ロール21表面温度を上昇させず、加熱ロール21表面温度を一定に保ったままでも、冷却中間ロール40の基準配置位置40Kからの仮想交差直線K方向のずれ量を大きくすることで積層体加熱後張設部90K下流端温度を高くすることが可能である。
なお、積層体冷却ロール重ね部90Iサイズは、冷却中間ロール40の接触最小位置40Jから第1方向のずれ量を大きくするほど大きくなる。
冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10は、冷却中間ロール40の基準配置位置40Kから第1方向のずれ量を大きくして積層体加熱後張設部90K下流端温度を高くした場合でも、冷却ロール30によるシート状積層体90Dの急冷、及び熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の急冷固化を実現できる。
冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造は、加熱ロール21表面温度の調整、シート送り速度の選択、中間ロール40位置の調整によって、積層体冷却ロール重ね部90I(具体的にはその上流端)に到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無切り換え、到達量調整が可能である。但し、冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造は、加熱ロール21表面温度、シート送り速度を変更せず、中間ロール40位置の調整、設定のみを行なうことでも、冷却ロール重ね部90Iに到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無切り換え、到達量調整が可能である。冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造は、中間ロール40位置の調整のみによって、複層シート90S面方向における接着用熱可塑性樹脂材の存在範囲や、複層シート90Sにおける結晶化を回避して固化した接着用結晶性樹脂材の量が互いに異なる種々の複層シート90Sの製造に幅広く対応できる。
以下、冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造について、中間ロール40位置調整のみによる、冷却ロール重ね部90Iに到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無切り換え、到達量調整について説明する。
冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造にあっては、冷却中間ロール40を基準配置位置40Kに配置したときに冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態で到達する接着用熱可塑性樹脂材が無い場合に、冷却中間ロール40の基準配置位置40Kに対する仮想交差直線K方向のずれ量調整のみによって、冷却ロール重ね部90I上流端に到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無切り換え及び存在量調整を実現可能なケースがある。
その一例として、例えば、冷却中間ロール40を基準配置位置40Kに配置したときに積層体加熱後張設部90K下流端に熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材が存在せず、かつ基準配置位置40Kと第1方向限界配置位置との間及び基準配置位置40Kと接触最小位置40Jとの間に、冷却ロール重ね部90I上流端に到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無が切り替わる境界の冷却中間ロール40位置(溶融樹脂存在臨界位置)がそれぞれ存在する状態(以下、両方向切り換え可能状態)を挙げることができる。
以下、基準配置位置40Kと第1方向限界配置位置との間の溶融樹脂存在臨界位置を溶融樹脂存在第1臨界位置、及び基準配置位置40Kと接触最小位置40Jとの間の溶融樹脂存在臨界位置を溶融樹脂存在第2臨界位置とも言う。
両方向切り換え可能状態にあっては、冷却中間ロール40を溶融樹脂存在第1臨界位置と溶融樹脂存在第2臨界位置との間の領域に配置したときには、積層体加熱後張設部90K下流端に熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材が存在しない状態とすることができる。冷却中間ロール40を、溶融樹脂存在第1臨界位置を介して基準配置位置40Kとは反対の側に配置したとき、及び溶融樹脂存在第2臨界位置を介して基準配置位置40Kとは反対の側に配置したとき、には、冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材を到達させることができる。
したがって、両方向切り換え可能状態にあっては、冷却中間ロール40の基準配置位置40Kから仮想交差直線K(図3参照)方向のずれ量調整によって、冷却ロール重ね部90I上流端に到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無を切り換えることができる。
また、両方向切り換え可能状態においては、接触ロール位置調整範囲における溶融樹脂存在第2臨界位置から第2方向側の領域に、シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の全量が熱溶融状態のまま積層体加熱後張設部90K下流端に到達するときの冷却中間ロール40位置(接着用樹脂全溶融位置)が存在する場合と存在しない場合とがある。この接着用樹脂全溶融位置が存在する場合は溶融樹脂存在第2臨界位置から接着用樹脂全溶融位置までの領域、接着用樹脂全溶融位置が存在しない場合は溶融樹脂存在第2臨界位置から接触最小位置40Jまでの領域において、冷却中間ロール40位置の溶融樹脂存在第2臨界位置から第2方向へのずれ量を大きくするほど、冷却ロール重ね部90I上流端に到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の存在量が多くなる。
また、両方向切り換え可能状態においては、冷却中間ロール40位置の溶融樹脂存在第1臨界位置から第1方向へのずれ量を大きくするほど、冷却ロール重ね部90I上流端に到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の量は多くなる。
なお、基準配置位置40Kに配置した冷却中間ロール40は、積層体加熱後張設部90Kを急冷して積層体加熱後張設部90Kの熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の一部又は全部を急冷固化する役割を果たす。冷却中間ロール40を基準配置位置40Kから第1方向にずれた位置に配置すれば、基準配置位置40Kに配置したときに比べて中間ロール重ね部90Jサイズが増大し、冷却中間ロール40によるシート状積層体90Dの冷却効果が高まる。このため、接触ロール位置調整範囲における溶融樹脂存在第1臨界位置から第1方向側の領域に接着用樹脂全溶融位置は存在しない。
冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造にあっては、溶融樹脂存在第2臨界位置は存在するが溶融樹脂存在第1臨界位置が存在しない点のみが上記両方向切り換え可能状態と相違する状態も採り得る。この状態にあっては、溶融樹脂存在第2臨界位置及び溶融樹脂存在第2臨界位置から第1方向側の領域では、冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材を到達させることが可能な冷却中間ロール40位置は存在しない。
また、冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造にあっては、冷却中間ロール40を基準配置位置40Kに配置したときに冷却ロール重ね部90Iに熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材を到達させることが可能な状態(以下、全位置溶融樹脂到達状態とも言う)も採り得る。この状態では、接触ロール位置調整範囲における冷却中間ロール40位置に関係無く、冷却ロール重ね部90Iに熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材を到達させることができる。
全位置溶融樹脂到達状態にあっては、溶融樹脂存在第1臨界位置及び溶融樹脂存在第2臨界位置は存在しない。また、全位置溶融樹脂到達状態は、接触ロール位置調整範囲における溶融樹脂存在第2臨界位置から第2方向側の領域に上述の接着用樹脂全溶融位置が存在する場合と存在しない場合とを採り得る。
全位置溶融樹脂到達状態にあっては、冷却中間ロール40の基準配置位置40Kから第1方向へのずれ量を大きくするほど、積層体加熱後張設部90K下流端の熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の存在量が多くなる。
また、全位置溶融樹脂到達状態にあっては、接着用樹脂全溶融位置が存在する場合は基準配置位置40Kから接着用樹脂全溶融位置までの領域、接着用樹脂全溶融位置が存在しない場合は基準配置位置40Kから接触最小位置40Jまでの領域において、冷却中間ロール40の基準配置位置40Kから第2方向へのずれ量を大きくするほど、積層体加熱後張設部90K下流端の熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の存在量を多くできる。
なお、冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造にあっては、加熱ロール21表面温度の調整のみで、両方向切り換え可能状態と全位置溶融樹脂到達状態との切り換えを行なうことが可能である。
また、接着用樹脂全溶融位置の有無も、加熱ロール21表面温度の調整によって切り替え可能である。
中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10において、中間ロール40を基準配置位置40Kから第1方向にずれた位置に配置した場合は、中間ロール40を基準配置位置40Kから第2方向にずれた位置に配置した場合に比べて、積層体加熱ロール重ね部90Hサイズ、積層体中間ロール重ね部90Jサイズ、冷却ロール重ね部90Iサイズが大きい点で異なる。
中間ロール40を基準配置位置40Kから第1方向にずれた位置に配置した場合は、中間ロール40を基準配置位置40Kから第2方向にずれた位置に配置した場合に比べて積層体加熱ロール重ね部90Hサイズを大きく確保できる分、加熱ロール21による接着用熱可塑性樹脂材の加熱溶融量の増大や、熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の流動による拡がり増大、厚手のシート状積層体90Dの厚み全体の加熱等に有利である。
また、中間ロール40を基準配置位置40Kから第1方向にずれた位置に配置した場合は、中間ロール40の基準配置位置40Kから第1方向へのずれ量調整によって、加熱ロール21による接着用熱可塑性樹脂材の加熱溶融量を調整可能であるが、このような加熱溶融量の調整は、中間ロール40を基準配置位置40Kから第2方向にずれた位置に配置した場合は行なえない。
冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10の冷却中間ロール40は、加熱ロール21によって加熱後のシート状積層体90Dを冷却することで、シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の溶融進行や熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の流動による拡がりを抑制あるいは停止させる役割を果たす。
冷却中間ロール40を接触最小位置40Jから基準配置位置40Kまでの範囲に配置する場合は、冷却中間ロール40の接触最小位置40Jから第1方向へのずれ量を大きくするほど、シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の溶融進行や熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の流動による拡がりを少なく抑えることができる。
シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の溶融進行や熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の流動による拡がりは、シート状積層体90Dの厚みや柔軟性、シート形成材90間の接着強度等に影響を与える。
冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sにおける冷却中間ロール40の仮想交差直線K方向の位置調整は、多種多様な複層シート90Sの製造実現に有効に寄与する。
冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10は、冷却中間ロール40の基準配置位置40Kに対する仮想交差直線K方向のずれ量の調整設定と、加熱ロール21表面温度の調整、設定とによって、接着用熱可塑性樹脂材の融点の違い等の様々なシート状積層体90D構成に容易に対応して、様々な複層シート90Sの製造を実現できる。冷却中間ロール40の基準配置位置40Kに対する仮想交差直線K方向のずれ量の調整設定と、加熱ロール21表面温度の調整、設定とによって、冷却ロール重ね部90I上流端に到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無の切り換え、存在量調整を行える。
また、冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10は、加熱ロール21表面温度を変更することなく、冷却中間ロール40の接触最小位置40Jから第1方向へのずれ量調整のみによっても、例えば柔軟性等の複層シート90Sの性状調整が可能であり、様々な複層シート90Sの製造に対応できる。
また、冷却中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10は、接着用熱可塑性樹脂材の融点の違い等の様々なシート状積層体90D構成に対応するべく、例えば、加熱ロール21表面温度を、適用予定のシート状積層体90Dのうち接着用熱可塑性樹脂材の加熱溶融に要する加熱ロール21表面温度が最も高いもの(以下、最高溶融温度積層体とも言う)に合せて設定しても良い。この場合、冷却中間ロール40の基準配置位置40Kに対する仮想交差直線K方向のずれ量調整によって、接着用熱可塑性樹脂材の加熱溶融に要する加熱ロール21表面温度が最高溶融温度積層体よりも低いシート状積層体90Dからの複層シート90Sの製造も可能である。例えば、接着用熱可塑性樹脂材の加熱溶融に要する加熱ロール21表面温度が最高溶融温度積層体よりも低いシート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の加熱溶融量が過剰になることを防ぐには、冷却中間ロール40の基準配置位置40Kに対する仮想交差直線K方向のずれ量調整によって、積層体加熱ロール重ね部90Hサイズを小さく抑えることで対応できる。
図2、図3において、複層シート製造装置10について、加熱中間ロール40を積層体接触位置に配置した状態を、以下、加熱中間ロール接触配置状態とも言う。
加熱中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10は、加熱ロール21に加えて加熱中間ロール40によってもシート状積層体90Dを加熱できる。このため、加熱中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10は、シート状積層体90Dを熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材を含んだ状態で冷却ロール30に接触させることを容易かつ確実に実現する場合に好適に採用できる。
加熱中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10は、加熱中間ロール40位置の接触最小位置40Jから第1方向のずれ量を大きくするほど積層体中間ロール重ね部90Jサイズが増大することで、加熱中間ロール40使用温度を一定に維持したままであっても、加熱中間ロール40から積層体加熱後張設部90Kへの熱エネルギー供給量を増大できる。このため、加熱中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10は、加熱ロール21表面温度及び加熱中間ロール40使用温度を一定に維持したままであっても、加熱中間ロール40位置の接触最小位置40Jから第1方向へのずれ量を大きくするほど積層体加熱後張設部90K下流端温度を高くできる。
加熱中間ロール40は、例えば、積層体加熱後張設部90Kを加熱することで、シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の加熱ロール21によって加熱溶融されなかった未溶融分を加熱溶融可能である。
加熱中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10は、例えば熱溶融状態のまま冷却ロール重ね部90Iに到達させる接着用熱可塑性樹脂材量の増大を容易に実現できる。
また、加熱中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いた複層シート90Sの製造にあっては、例えば、加熱ロール21表面温度及び加熱中間ロール40使用温度の、シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の融点との差を小さく抑えれば、冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材を到達させないことも可能である。
例えば、接着用熱可塑性樹脂材の融点が150℃超である場合は、加熱中間ロール40と冷却ロール30との間での積層体加熱後張設部90Kの空冷が熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材温度(降温)に与える影響が大きい。このため、この場合は、加熱ロール21表面温度及び加熱中間ロール40使用温度の、シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の融点との差を小さく抑えることで、積層体冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態で到達する接着用熱可塑性樹脂材が存在しない状態とすることも可能である。
加熱中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造は、加熱ロール21表面温度の調整、シート送り速度の選択、中間ロール40位置の調整によって、積層体冷却ロール重ね部90I(具体的にはその上流端)に到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無切り換え、到達量調整が可能である。但し、加熱中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造は、加熱ロール21表面温度、シート送り速度を変更せず、中間ロール40位置の調整、設定のみを行なうことでも、冷却ロール重ね部90Iに到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無切り換え、到達量調整が可能である。加熱中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造は、中間ロール40位置の調整のみによって、複層シート90S面方向における接着用熱可塑性樹脂材の存在範囲や、複層シート90Sにおけ結晶化を回避して固化した接着用結晶性樹脂材の量が互いに異なる種々の複層シート90Sの製造に幅広く対応できる。
以下、加熱中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造について、中間ロール40位置調整のみによる、冷却ロール重ね部90Iに到達する熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の有無切り換え、到達量調整について説明する。
加熱中間ロール40位置の仮想交差直線K方向の位置調整のみによって、積層体冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態で到達する接着用熱可塑性樹脂材の有無切り換え及び到達量調整が可能なのは、接触最小位置40Jと第1方向限界配置位置との間に溶融樹脂存在臨界位置が存在する場合である。つまり、加熱中間ロール40を接触最小位置40Jに配置したときに積層体冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態で到達する接着用熱可塑性樹脂材が存在せず、接触最小位置40Jと第1方向限界配置位置との間に加熱中間ロール40の溶融樹脂存在臨界位置が存在するように、加熱ロール21表面温度及び加熱中間ロール40使用温度を設定した場合である。
この場合は、加熱中間ロール40位置を溶融樹脂存在臨界位置から第2方向側にずれた位置に設定すれば積層体冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態で到達する接着用熱可塑性樹脂材を無くすことができる。加熱中間ロール40位置を溶融樹脂存在臨界位置から第1方向側にずれた位置に設定すれば積層体冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態で到達する接着用熱可塑性樹脂材を生じさせることができる。
また、この場合は、加熱中間ロール40位置について、溶融樹脂存在臨界位置と第1方向限界配置位置との間に接着用樹脂全溶融位置が存在するときは溶融樹脂存在臨界位置から接着用樹脂全溶融位置までの領域、接着用樹脂全溶融位置が存在しないときは溶融樹脂存在臨界位置から第1方向限界配置位置までの領域にて、加熱中間ロール40位置の溶融樹脂存在臨界位置から第1方向へのずれ量を大きくするほど、積層体冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態で到達させる接着用熱可塑性樹脂材量を増加させることができる。つまり、この場合は、加熱中間ロール40位置について、溶融樹脂存在臨界位置から第1方向側に、溶融樹脂存在臨界位置から第1方向へのずれ量を大きくするほど、積層体冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態で到達させる接着用熱可塑性樹脂材量を増加させることが可能な領域が確保される。
加熱中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を複層シート90Sの製造に用いるとき、加熱中間ロール40を接触最小位置40Jに配置したときに積層体冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態で到達する接着用熱可塑性樹脂材が存在する場合は、接触最小位置40Jと第1方向限界配置位置との間に溶融樹脂存在臨界位置が存在しない。この場合は、加熱中間ロール40位置の接触最小位置40Jから第1方向へのずれ量に関係無く、積層体冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態で到達する接着用熱可塑性樹脂材が存在する。このため、この場合は、加熱中間ロール40位置の仮想交差直線K方向の位置調整のみでは、積層体冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態で到達する接着用熱可塑性樹脂材の有無を切り換えることはできない。
但し、この場合は、加熱中間ロール40位置について、接触最小位置40Jと第1方向限界配置位置との間に接着用樹脂全溶融位置が存在するときは接触最小位置40Jから接着用樹脂全溶融位置までの領域、接着用樹脂全溶融位置が存在しないときは接触最小位置40Jから第1方向限界配置位置までの領域にて、加熱中間ロール40位置の接触最小位置40Jから第1方向へのずれ量を大きくするほど、積層体冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態で到達させる接着用熱可塑性樹脂材量を増加させることができる。つまり、この場合は、加熱中間ロール40位置について、接触最小位置40Jから第1方向側に、接触最小位置40Jから第1方向へのずれ量を大きくするほど、積層体冷却ロール重ね部90I上流端に熱溶融状態で到達する接着用熱可塑性樹脂材量を増加させることが可能な領域が確保される。
加熱中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いた複層シート90Sの製造において、冷却ロール30は、加熱中間ロール40位置の接触最小位置40Jから第1方向へのずれ量に関係無く、シート状積層体90Dの急冷、積層体冷却ロール重ね部90Iに熱溶融状態で到達した接着用熱可塑性樹脂材の全部又は一部の急冷固化を実現できる。
なお、図2、図3に示すように、この実施形態の複層シート製造装置10の冷却ロール30は、中間ロール40に比べて径大に形成されている。中間ロール40に比べて径大の冷却ロール30は、中間ロール40と同径あるいは径小の冷却ロール30に比べて、積層体冷却ロール重ね部90Iサイズを大きく確保する点で有利である。
加熱中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いた複層シート90Sの製造において、シート状積層体90Dは、その加熱ロール対向面90a側から加熱ロール21によって加熱され、積層体裏面90b側から加熱中間ロール40によって加熱される。このため、加熱中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10は、シート状積層体90D厚み方向における接着用熱可塑性樹脂材の溶融状態の均等化に有効に寄与する。
また、接触配置状態の加熱中間ロール40は、熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の流動による拡がり促進にも利用可能である。
接触配置位置の中間ロール40は、具体的には、シート状積層体90Dの、加熱ニップ部20においてピンチロール22側に位置する面に接触される。
混抄紙91、不織布92、ネット93で構成される積層体ニップ後張設部90Eの上面は、混抄紙91の片面(不織布92とは反対側の面)である。接触配置位置の中間ロール40は、具体的には、積層体ニップ後張設部90Eの上面を形成する混抄紙91に当接される。
シート状積層体90D厚み方向における接着用熱可塑性樹脂材の溶融状態の違いは、加熱溶融後の接着用熱可塑性樹脂材が冷却固化されたシート状積層体90Dに内部応力(曲げ応力)を与えて、シート状積層体90Dの曲げ癖の原因となることがある。シート状積層体90D厚み方向における接着用熱可塑性樹脂材の溶融状態の違いに起因するシート状積層体90Dの曲げ癖は、シート状積層体90Dの厚みが大きいほど生じやすい。この曲げ癖は、シート状積層体90Dの厚みが薄い場合は生じにくい。
加熱中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造は、加熱ロール21によって加熱後のシート状積層体90Dを積層体接触位置の加熱中間ロール40によって加熱することで、シート状積層体90Dに曲げ癖が付与されることの防止に有効に寄与する。
中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10における中間ロール40の接触最小位置40Jから第1方向へのずれ量は、シート状積層体90Dの具体的構成や、製造する複層シート90Sの要求条件(柔軟性等)に鑑みて、設定する。中間ロール接触配置状態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造は、シート状積層体90Dの具体的構成や、製造する複層シート90Sの要求条件に鑑みて、例えばテスト製造等によって予め把握した適切位置(接触最小位置40Jから第1方向への適切ずれ量の位置)に中間ロール40を配置して実施する。
ここで説明する実施形態の複層シート製造装置10を用いる複層シート90Sの製造は、複層シート製造装置10の運転中(複層シート90Sの製造中)に、シート状積層体90Dの送り速度と、加熱ロール21表面温度及び加熱中間ロール40使用温度と、中間ロール40位置とを変更することなく一定に保ったまま実行するものとする。但し、複層シート製造装置10の運転停止中は、シート状積層体90Dの送り速度、加熱ロール21表面温度及び加熱中間ロール40使用温度、中間ロール40位置の調整、変更が可能である。
図3に例示したロール支持機構41は、支持フレーム11に固定されたベース部材41aと、このベース部材41aに該ベース部材41aからの突出寸法を変更可能に設けられたロール支持部材41bとを有する。また、このロール支持機構41は、ロール支持部材41bをベース部材41aに対して移動させてベース部材41aからの突出寸法を変更するための動力源41Mを有する。
図3に例示したロール支持機構41の動力源41Mは電動モータである。但し、動力源41Mは電動モータに限定されず、例えば油圧モータ等の流体圧モータ等も採用可能である。
ロール支持機構41は、ベース部材41aから突出されるロール支持部材41bの突端部に、中間ロール40の回転軸線方向の端部を回転自在に支持している。中間ロール40の回転軸線はロール支持部材41bに対する位置は変動しない。
ロール支持機構41は、動力源41Mの駆動力によって、ロール支持部材41bをベース部材41aに対して移動させることでロール支持部材41bのベース部材41aからの突出寸法を変更できる。そして、ロール支持機構41は、ロール支持部材41bのベース部材41aからの突出寸法を変更することで、積層体最短張設部90E1に対する仮想交差直線K方向に中間ロール40の位置を変更できる。
なお、動力源41Mの駆動が停止しているとき、ロール支持部材41bのベース部材41aに対する位置は変動しない。中間ロール40のベース部材41aに対する位置も変動しない。
ロール支持機構41としては、動力源41Mの駆動力によってロール支持部材41bのベース部材41aに対する位置を変更して、ロール支持部材41bのベース部材41aからの突出寸法を変更する構成に限定されない。
ロール支持機構41としては、例えば、ベース部材41aに対する位置変更によってベース部材41aからの突出寸法を変更可能なロール支持部材41bを固定装置を用いてベース部材41aに固定可能な構成も採用可能である。固定装置としては、ロール支持部材41bのベース部材41aに対する固定と固定解除とを切り替え可能なものを採用する。このロール支持機構は、ロール支持部材41bのベース部材41aに対する固定位置調整によって、仮想交差直線K方向における中間ロール40の位置を調整できる。
また、ロール支持機構としては、ベース部材41aをシリンダー、ロール支持部材41bをピストンとする流体圧シリンダー装置も採用可能である。この場合は動力源として流体圧ポンプを採用する。流体圧ポンプはシリンダーから離隔した位置に配置しても良い。
この実施形態の複層シート製造装置10のロール支持機構としては、仮想交差直線K方向における中間ロール40の支持位置を調整、設定可能なものであれば良く、その具体的構成としては特には限定は無い。
図1のシート形成材原反90Aから加熱ニップ部20へのシート形成材90送り経路の形成材案内ロール12の内、形成材送り方向最下流に位置する形成材案内ロール12を、以下、最後部形成材案内ロール12aとも言う。
図1、図2において、混抄紙91の送り経路の最後部形成材案内ロール12aに符号12a1、不織布92の送り経路の最後部形成材案内ロール12aに符号12a2、ネット93の送り経路の最後部形成材案内ロール12aに符号12a3を付記する。
これら案内ロール12は、該案内ロール12に接するシート形成材90の送り移動(加熱ニップ部20のロールの回転駆動による送り移動)に伴い、シート形成材90に従動回転する。なお、シート案内ロール13は、該シート案内ロール12に接するシート状積層体90Dの送り移動(加熱ニップ部20のロール、及び巻き取り台74に取り付けられた巻き芯、の回転駆動による送り移動)に伴いシート状積層体90Dに従動回転する。
図1、図2に示すように、複層シート製造装置10は、不織布92の送り経路に配置されたプレヒーター部62及び上流側中間ロール60を有している。
プレヒーター部62及び上流側中間ロール60は、不織布92の送り経路における最後部形成材案内ロール12a2と加熱ニップ部20との間に配置されている。
以下、ロール支持機構に支持された中間ロール40を下流側中間ロールとも言う。
プレヒーター部62は、例えば電熱線等の加熱手段が組み込まれた複数のヒーターロール62aによって不織布92を挟み込んで加熱する。このプレヒーター部62は、不織布92を、加熱ニップ部20におけるシート状積層体90Dの加熱温度と概ね同じ温度かあるいは該加熱温度よりも低い温度に加熱する。
不織布原反92Aから引き出された不織布92は、プレヒーター部62にて加熱された後に、加熱ニップ部20にて該不織布92を構成する接着用繊維表層部の接着用熱可塑性樹脂材の融点以上の温度に加熱される。プレヒーター部62は、加熱ニップ部20にて加熱前の不織布92を予熱する機能を果たす。このため、不織布92の接着用繊維表層部の接着用熱可塑性樹脂材は、加熱ニップ部20にて短時間で加熱溶融させることができる。
複数のヒーターロール62aは、加熱ニップ部20のロール21、22の回転軸線と平行な回転軸線を以て設けられている。
なお、プレヒーター部62は、複数のヒーターロール62aによって不織布92を挟み込む構成に限定されない。プレヒーター部62は、加熱手段が設けられていないロールを含んでいても良い。プレヒーター部62は、ヒーターロールを1以上含む複数のロールによって不織布92を挟み込んで加熱する構成を採用できる。
図2に示すように、プレヒーター部62は、複層シート製造装置10前後方向において加熱ニップ部20の前側に設置されている。図2に例示したプレヒーター部62は、不織布92を、複数のヒーターロール62aによって、加熱ニップ部20における不織布92を装置前側に延長した位置あるいはその近傍に支持する。
図1、図2に示すように、上流側中間ロール60を装置前後方向においてプレヒーター部62と加熱ニップ部20との間に配置されている。複層シート製造装置10は、上流側中間ロール60を加熱ニップ部20のロール21、22と平行な回転軸線を以て回転自在に支持するロール支持機構61も有している。
不織布92におけるプレヒーター部62と加熱ニップ部20との間に張設された部分を、以下、不織布積層前張設部62Eとも言う。
ロール支持機構61は、上流側中間ロール60を、不織布積層前張設部62Eの両面に対する傾斜方向(図2では上下方向)に位置変更可能に支持している。
ロール支持機構61としては、例えば図3に例示したロール支持機構41Aと同様の構成のものや、図4に例示したロール支持機構41Bと同様の構成のもの等を採用できる。
複層シート製造装置10は、上流側中間ロール60の、不織布積層前張設部62Eに対する傾斜方向における位置を変更することで、不織布92の加熱ニップ部20の加熱ロール21に対する重ね部サイズを調整できる。複層シート製造装置10は、シート状積層体90Dの最短張設部90E1(図3参照)に対する傾斜方向における上流側中間ロール60の位置調整によって、加熱ニップ部20の加熱ロール21の表面温度を変更すること無く、加熱ロール21による不織布92の加熱温度を調整できる。
図2に示すように、複層シート製造装置10は、ネット原反93Aから加熱ニップ部20までのネット93送り経路に設けられたテンター81及びクロスガイダー82を有している。
テンター81は、ネット原反93Aから引き出されて送り移動されるネット93を案内するとともに該ネット93を予め設定した幅にて一平面上に展開した状態に整える。
クロスガイダー82は、テンター81を通過したネット93を予め設定した幅を保って案内する。
図2において、テンター81はネット93送り経路における最後部形成材案内ロール12a3よりも形成材送り方向上流側、クロスガイダー82はネット93送り経路における最後部形成材案内ロール12a3よりも形成材送り方向下流側に配置されている。但し、ネット93送り経路におけるテンター81及びクロスガイダー82と最後部形成材案内ロール12aとの位置関係は図示例に限定されず、適宜、変更可能である。複層シート製造装置10は、例えば、テンター81及びクロスガイダー82の両方とも、ネット93送り経路における最後部形成材案内ロール12a3よりも形成材送り方向下流側に配置した構成も採用可能である。
なお、図2において、ネット93送り経路に設けられた形成材案内ロール12は1つだけであり、この形成材案内ロール12が最後部形成材案内ロール12a3として機能する。但し、複層シート製造装置としては、ネット93送り経路の形成材案内ロール12を、ネット93送り経路の形成材送り方向の複数箇所に設けた構成も採用可能である。
図2に示すように、冷却ロール30から積層体送り方向下流側へ送り出された複層シート90Sは、まず、シート送りロール50に接触する。
複層シート90Sは、シート送りロール50に巻き掛けられている。
シート送りロール50は冷却ロール30から離隔させて設けられている。図1、図2において、シート送りロール50は、冷却ロール30から装置後側へ離隔させて設けられている。
ここで、複層シート製造装置10の延伸加工運転モードにおける複層シート90Sの延伸加工について説明する。
既述の通り、延伸加工運転モードの複層シート製造装置10の加熱ロール21及び冷却ロール30は、シート送りロール50に比べて低速の低速設定速度で回転駆動される。そして延伸加工運転モードの複層シート製造装置10は、冷却ロール30とシート送りロール50との間で複層シート90Sに引っ張り荷重を作用させて、複層シート90Sを延伸加工できる。
複層シート90Sの延伸加工は、複層シート90Sを構成するシート形成材90に接着用結晶性樹脂材を有するシート形成材を含む場合に、接着用結晶性樹脂材の高分子鎖を複層シート90S長手方向に沿う向きに配向させて複層シート90Sの引っ張り強度を高めることができる。また、複層シート90Sの延伸加工は、複層シート90S外面に露出する接着用結晶性樹脂材の表面平滑化も可能である。
図2に示すように、複層シート製造装置10は、加熱ニップ部20によって加熱されたシート状積層体90Dを冷却ロール30との接触による冷却完了直後に延伸加工する構成となっている。
ここで、シート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材がポリエチレン等の接着用結晶性樹脂材である場合の複層シート90Sの延伸加工による接着用結晶性樹脂材の高分子鎖の配向について説明する。
例えば、冷却ロール30に接触したシート状積層体90Dに熱溶融状態で存在していた接着用結晶性樹脂材の高分子鎖の向きは、冷却ロール30による接着用結晶性樹脂材の急冷固化と同時に完全に固定されてしまう訳ではない。接着用結晶性樹脂材の高分子鎖は、熱溶融状態の接着用結晶性樹脂材の固化直後はその向きが完全には固定されておらず、複層シート90Sの延伸加工によって配向させやすい状態になっている。加熱ロール21による加熱後のシート状積層体90Dを冷却ロール30との接触による冷却完了直後に延伸加工する構成は、延伸加工による高分子鎖の配向を効率良く行える。また、この構成は、接着用結晶性樹脂材の白化及びそれによる脆化の抑制又は防止に有効に寄与する。
冷却ロール30との接触による冷却完了直後の複層シート90Sの延伸加工によって接着用結晶性樹脂材の高分子鎖の配向を効率良く行えることは、積層体加熱後張設部90Kに含まれる熱溶融状態の接着用結晶性樹脂材を積層体冷却ロール重ね部90Iに到達前に冷却固化する場合も共通する。
既述のように、複層シート製造装置10は、シート状積層体90Dをニップ領域90Gから送り出されてから3秒以内に冷却ロール30に到達接触させる。積層体冷却ロール重ね部90I上流端に到達前に熱溶融状態から固化した接着用結晶性樹脂材は、積層体冷却ロール重ね部90I下流端を通過後も暫くは、その高分子鎖の向きを複層シート90Sの延伸加工によって配向させやすい状態になっている。
このため、加熱ロール21による加熱後のシート状積層体90Dを冷却ロール30との接触による冷却完了直後に延伸加工する構成は、加熱ロール21による加熱溶融後に積層体冷却ロール重ね部90Iに到達前に冷却固化した接着用結晶性樹脂材についても、その高分子鎖を複層シート90Sの延伸加工によって効率良く配向できる。
冷却ロール30との接触による冷却完了後のシート状積層体90D(複層シート90S)は空冷されていく。接着用結晶性樹脂材の高分子鎖は、延伸加工によって配向された後、その向きを維持したまま、複層シート90Sの空冷に伴う接着用結晶性樹脂材の冷却進行により向きが固定されていく。
接着用結晶性樹脂材は、シート状積層体90Dの延伸加工によって高分子鎖が複層シート90S長手方向に沿う向きに配向されることで、複層シート90S長手方向の引っ張り力に対する耐力が向上する。その結果、延伸加工後の複層シート90Sは、その送り移動中に引っ張り力が作用しても、接着用結晶性樹脂材によるシート形成材90間の接着状態を安定に維持でき、送り移動中のシート形成材の剥がれを防止できる。送り移動中のシート形成材の剥がれを防止できることは、複層シート90Sの円滑な送り移動の安定維持、量産化、生産性向上、歩留まり向上に有効に寄与する。
図1、図2に例示した複層シート製造装置10は、シート送りロール50よりも積層体送り方向に配置されて複層シート90Sを送り移動する下流側ニップ送り部51を有している。
図2に例示した下流側ニップ送り部51は、モータの駆動力によって所定回転軸線を以て回転駆動される駆動ロール51aと、この駆動ロール51aに向かって複層シート90Sを押さえ込み駆動ロール51aに従動回転するピンチロール51b(送り部ピンチロール)とを有する。
また、下流側ニップ送り部51は、ピンチロール93bを駆動ロール51aに向かって弾性付勢するロール押圧装置51cも有している。
図2に例示した下流側ニップ送り部51の駆動ロール51aの回転周速は、送りロール50の回転周速と同じに揃えられている。下流側ニップ送り部51は、複数のロール51a、51bにニップした複層シート90Sを、駆動ロール51aの回転駆動によって送りロール50と同じ送り速度で送り移動する。
なお、下流側ニップ送り部51は、駆動ロール51a及びピンチロール51bの両方をモータによって回転駆動して複層シート90Sを送り移動する構成も採用可能である。
図1、図2に例示した複層シート製造装置10は、下流側ニップ送り部51を有しているため、冷却ロール30の回転周速を低速設定速度としても、下流側ニップ送り部51から積層体送り方向下流側での複層シート90Sの送り移動に影響を与えることが無い。下流側ニップ送り部51から積層体送り方向下流側では、複層シート90Sを目的のシート送り速度で確実に送り移動することができる。
複層シート製造装置10は、有機溶剤を含む接着剤を使用することなく、複数のシート形成材90を積層一体化した複層シート90Sを効率良く製造することができる。また、複層シート製造装置10は、複層シート90Sの量産、低コスト化を容易に実現できる。
しかも、この複層シート製造装置10は、加熱ロール21表面温度の調整、設定、下流側中間ロール40の仮想交差直線K方向(図3参照)の位置調整、下流側中間ロール40の使用温度設定によって、複層シート90Sを製造するためのシート状積層体90Dの構成(具体的には、シート状積層体90Dの形成に使用する複数のシート状形成材90の構成)や、柔軟性等の複層シート90Sの要求条件に幅広く対応できる。
さらに、図2、図3等に示すように、この複層シート製造装置10は、下流側中間ロール40(冷却中間ロール又は加熱中間ロール)の仮想交差直線K方向(図3参照)の位置調整のみによっても、シート状積層体90Dの構成、柔軟性等の複層シート90Sの要求条件に幅広く対応できる。
複層シート製造装置10は、下流側中間ロール40の仮想交差直線K方向(図3参照)の位置調整のみによって、シート状積層体90Dの熱溶融状態の接着用熱可塑性樹脂材の流動による拡がりを調整可能である。その結果、複層シート90Sにおける接着用熱可塑性樹脂材の存在範囲の調整、それによる複層シート90Sの柔軟性調整が可能である。
また、複層シート製造装置10は、下流側中間ロール40の基準配置位置40K(図2参照)から第1方向へのずれ量調整による積層体加熱ロール重ね部90Hサイズの調整のみで、加熱ロール21によるシート状積層体90Dの接着用熱可塑性樹脂材の溶け込み量(加熱溶融量)調整が可能である。
複層シート製造装置10は、例えば、シート状積層体90Dの裏面90b側に位置する接着用熱可塑性樹脂材など、シート状積層体90D厚み方向において加熱ロール対向面90aから離れた位置に存在する接着用熱可塑性樹脂材の加熱溶融のために、下流側中間ロール40の基準配置位置40Kから第1方向へのずれ量を大きくして積層体加熱ロール重ね部90Hサイズを大きく確保するといった対応も可能である。
複層シート製造装置10は、下流側中間ロール40の基準配置位置40Kから第1方向へのずれ量調整のみによって、シート状積層体90D厚み方向における接着用熱可塑性樹脂材の存在位置(加熱ロール対向面90aからの距離)に容易に対応して、複層シート90Sの製造を実現可能である。
混抄紙91、不織布92、ネット93を、混抄紙91とネット93との間に不織布92を挟み込んで積層一体化した複層シート90Sは、接着用繊維(ネット用接着繊維を含む)以外の形成材料に食肉包装材として利用可能な材料を使用することで、ネット付きファイブラスシートに応用できる。複層シート製造装置10は、混抄紙91、不織布92、ネット93を用いてネット付きファイブラスシートを量産できる。
ネット付きファイブラスシートを用いれば、例えば二つ折りにした1枚のネット付きファイブラスシートの外周部の接合一体化、あるいは2枚のネット付きファイブラスシートの外周部同士の接合一体化、等の手法で食肉用ネット付きケーシングを簡単に効率良く製造できる。
既述の混抄紙91及び不織布92は、それぞれ、その全体にわたって微小な通気孔部を多数有する、通気性のシート形成材(以下、通気性シート形成材とも言う)である。混抄紙91には、該混抄紙91を形成する繊維間の微小な空隙が通気孔部として多数形成されている。不織布92には、該不織布92を形成する繊維間の微小な空隙が通気孔部として多数形成されている。但し、混抄紙91としては、その全体にわたって、例えば針の突き刺し等によって直径20μm〜1mm程度の孔が通気孔部として多数分散形成された構成のものも採用可能である。また、複層シート製造装置10としては、混抄紙91あるいは複層シート90Sに、針の突き刺しによって、直径20μm〜1mm程度の孔を多数分散形成する通気孔形成部を有する構成も採用可能である。
ネット93は、接着用繊維(具体的には芯無し接着用繊維)を複数本集合した糸によって形成された網目内側に、通気性確保に充分な大きさの空隙を有する構成となっている。
混抄紙91、不織布92、ネット93を積層一体化した複層シート90Sは、燻煙等の食肉加工に利用される食肉用ネット付きケーシングに要求される通気性を有する。
複層シート製造装置10によれば、食肉用ネット付きケーシングに要求される通気性を有する複層シートを、接着剤を使用することなく、簡単に低コストで製造できる。
ところで、接着用熱可塑性樹脂材を含むネット93を、該ネット93とは別体の通気性シート形成材(図2等では不織布92)に積層一体化して複層シートを形成する構成は、ネットの加熱ロール21によって加熱溶融された接着用熱可塑性樹脂材が通気性シート形成材の表面付近に留まり、通気性シート形成材の内部深くにまで浸透しにくい。このため、ネットの接着用熱可塑性樹脂材による通気性シート形成材の通気孔部の埋め込みが少なく、通気性シート形成材の通気性維持に有利である。
したがって、形成済みのネットを、該ネットとは別体の通気性シート形成材に積層一体化して複層シートを形成する構成は、通気性シート形成材とネットとを積層一体化した複層シートの通気性確保に有効に寄与する。
接着剤を使用しないネット付きファイブラスシートの製造技術としては、例えば、麻紙又は不織布にビスコースを含浸したファイブラスシートの片面に、直接、硬化性の液状樹脂材料を押し出し加工してネットを形成することも考えられる(以下、ネット押し出しラミネート法とも言う)。しかし、このネット押し出しラミネート法では、ファイブラスシートにネット形成用の液状樹脂材料が浸透、硬化して、液状樹脂材料がファイブラスシートの微細な通気孔を埋め込んで塞いでしまう現象を避けることが困難である。ネット形成用の液状樹脂材料のファイブラスシートへの浸透は、ファイブラスシート片面の液状樹脂材料のネット形成部分からファイブラスシート厚み方向のみならず、ファイブラスシート面方向にも拡がっていく。
これに対して、複層シート製造装置を用いて、接着用熱可塑性樹脂材を含んで形成済みのネットを該ネットとは別体の通気性シート形成材に積層一体化する場合は、既述のように、ネットの加熱ロール21によって加熱溶融された接着用熱可塑性樹脂材が通気性シート形成材の表面付近に留まり、通気性シート形成材の内部深くにまで浸透しにくい。このため、加熱ニップ部にて加熱溶融されたネットの接着用熱可塑性樹脂材が通気性シート形成材内の通気孔部を埋め込んで塞いでしまうことを回避あるいは少なく抑えることができる。複層シート製造装置を用いて、接着用熱可塑性樹脂材を含んで形成済みのネットを該ネットとは別体の通気性シート形成材に積層一体化することは、ネット押し出しラミネート法に比べて通気性シート形成材の通気性に与える影響を小さく抑えることができる。
なお、接着用熱可塑性樹脂材を含むネットとしては、芯無し接着用繊維を複数本集合した糸によって形成されたものに限定されない。ネットしてとしては、芯無し接着用繊維にかえて芯有り接着用繊維を複数本集合した糸を用いて形成したものや、接着用熱可塑性樹脂材樹脂の一体成形品のネットも採用可能である。
これら、どの構成のネットを採用した場合も、ネットをその接着用熱可塑性樹脂材を加熱溶融して通気性シート形成材に積層一体化する方が、ネット押し出しラミネート法に比べて通気性シート形成材及び複層シート全体の通気性維持の点で有利である。
複層シート製造装置10は、食肉包装用ファイブラスシートのように通気性確保が要求される複層シートの製造の他、例えば紙おむつの吸水性樹脂を収容する包材のように通気性及び透水性が要求される複層シートの製造にも適用可能である。
複層シート製造装置10は、通気性及び/又は透水性が要求される複層シートの製造等に適用可能である。微細孔によって透水性が確保されたシート形成材(通気性及び透水性が確保されたシート形成材)についても、接着用熱可塑性樹脂材を含むネットをその接着用熱可塑性樹脂材を加熱溶融して積層する手法の方が、ネット押し出しラミネート法に比べて、透水性確保の点で有利である。
なお、複層シートの形成に使用する複数のシート形成材の接着用熱可塑性樹脂材以外の材質は、複層シートに求められる性質に応じて、適宜選択可能である。
図6に示すように、本実施形態の複層シート製造装置10は、積層体ニップ後張設部90Eを、2ロール中心配置平面CSを介して図1の場合とは反対の側から冷却ロール30に接触可能に配設し、中間ロール40を積層体ニップ後張設部90Eのロール対向面90a側に配置して複層シート90Sの製造に用いても良い。
図6に示す態様において、積層体ニップ後張設部90Eは、2ロール中心配置平面CSを介して加熱ロール21と同じ側に延在配置されている。
図6に仮想線(2点鎖線)で示すように、積層体ニップ後張設部90Eは、積層体ニップ領域90Gから装置前後方向に真っ直ぐに延在させたときに最短張設部90E1となる。このとき、積層体ニップ後張設部90Eのロール対向面90aは複層シート製造装置10の加熱ロール接平面HSと重なる。中間ロール40は最短張設部90E1のロール対向面90aに接するときの位置が接触最小位置740Jである。
積層体中間ロール重ね部90Jは、中間ロール40を接触最小位置740Jから第2方向へのずれ量を大きくする(接触最小位置740Jから積層体真直延在部90E2に垂直の方向の変位量を大きくする)ほど大きくなる。また、中間ロール40を接触最小位置740Jから第2方向へのずれ量を大きくすれば、積層体中間ロール重ね部90Jの増大に伴い積層体冷却ロール重ね部90Iサイズも大きくなる。なお、中間ロール40としては、冷却中間ロール、加熱中間ロール、のいずれも採用可能である。
本実施形態の複層シート製造装置10は、積層体ニップ後張設部90Eの配置位置に関して、図1〜図3に示す態様と図6に示す態様とを切り換えることができる。
図6に示す態様は、中間ロール40を接触最小位置740Jから第2方向へのずれ量を調整したとき、積層体加熱ロール重ね部90Iサイズを変動させることなく、積層体中間ロール重ね部90Jサイズと積層体冷却ロール重ね部90Iサイズとを調整できる。
以上、本発明を最良の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の最良の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
(1) シート状積層体を構成するシート形成材の数は2以上であれば良く、上述の実施形態の3つに限定されない。
シート状積層体を構成するシート形成材としては、接着用熱可塑性樹脂材を含むシート形成材(接着樹脂有りシート形成材)のみを用いても良いが、接着樹脂有りシート形成材に加えて接着用熱可塑性樹脂材を含まないシート形成材(接着樹脂無しシート形成材)を併用しても良い。
但し、シート状積層体を構成する複数のシート形成材は、全てのシート形成材の接着一体化のために、互いに隣り合うシート形成材の一方又は両方に接着樹脂有りシート形成材を採用する。互いに隣り合うシート形成材の一方又は両方が接着樹脂有りシート形成材であるシート状積層体は、接着樹脂有りシート形成材の接着用熱可塑性樹脂材を加熱ニップ部にて加熱溶融後、冷却固化することで、隣り合うシート形成材同士の接着一体化を実現できる。
接着樹脂有りシート形成材としては、例えば、紙、天然繊維、熱硬化性樹脂繊維、ガラス繊維等の無機繊維といった熱可塑性を有していない形成材料によって形成された基材(非熱可塑性基材)に、熱可塑性樹脂材が混入、付着一体化等によって設けられたもの、あるいは熱可塑性樹脂材によって全体が形成されたものを挙げることができる。接着樹脂無しシート形成材)としては、接着樹脂有りシート形成材の非熱可塑性基材と同様の構成のものを用いることができる。
また、シート形成材は、シート状(紙、樹脂フィルム、織布、不織布等)、網状等の形態で、手指で楽に折り曲げ可能な柔軟性を有する構成に形成される。
上述の実施形態にて例示した混抄紙91、不織布92、ネット93は、既述の接着樹脂有りシート形成材に該当する。
接着樹脂有りシート形成材は、その両面に接着用熱可塑性樹脂材が存在する構成のシート状あるいは網状のシート形成材である。
接着樹脂有りシート形成材としては接着用繊維を含むもの(しかも、接着用繊維がシート片面又は両面に露呈しているもの)を好適に採用できる。接着用繊維としては、既述の芯有り接着用繊維、芯無し接着用繊維のどちらも採用可能である。接着樹脂有りシート形成材としては、芯有り接着用繊維及び/又は芯無し接着用繊維を含む構成を採用可能である。
接着樹脂有りシート形成材としては、例えば、既述の混抄紙91のように接着用繊維を含む紙、接着用繊維を含む織布、接着用繊維を含む不織布を採用できる。また、接着樹脂有りシート形成材としては、接着用熱可塑性樹脂材製の熱可塑性樹脂フィルム、接着用熱可塑性樹脂材製の一体成形品であるネットも採用可能である。
接着樹脂無しシート形成材は、その全体が、融点が加熱ニップ部によるシート状積層体の加熱温度よりも高い熱可塑性樹脂、あるいは熱可塑性を有していない材料によって形成された、シート状あるいは網状の部材である。
シート状の接着樹脂無しシート形成材としては、融点が加熱ニップ部によるシート状積層体の加熱温度よりも高い熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂、によって形成された樹脂製フィルム、この樹脂製フィルムに熱可塑性を有していない繊維を混入した繊維混入フィルム、紙等を挙げることができる。また、シート状の接着樹脂無しシート形成材としては、例えば、麻紙又は不織布にビスコースを含浸したファイブラスシート、熱可塑性を有していない繊維によって形成した織布、不織布も採用可能である。熱可塑性を有していない繊維としては、熱硬化性樹脂繊維、ガラス繊維等の無機繊維、天然繊維等を採用可能である。
網状の接着樹脂無しシート形成材としては、例えば、熱硬化性樹脂繊維、ガラス繊維等の無機繊維、天然繊維等の、熱可塑性を有していない繊維を複数本集合させた糸によって形成したネット、融点が加熱ニップ部によるシート状積層体の加熱温度よりも高い熱硬化性樹脂、あるいは熱硬化性樹脂によって一体成形されたネットも採用可能である。
接着樹脂有りシート形成材としては、例えば、既述の混抄紙91のように、接着用熱可塑性樹脂材以外の形成材料を含む構成を採用可能である。
接着樹脂有りシート形成材の接着用熱可塑性樹脂材以外の部分(非熱可塑性基材)は、接着樹脂無しシート形成材として採用可能な構成を採用できる。
また、接着樹脂有りシート形成材としては、非熱可塑性基材に、既述の接着用繊維、粉状あるいは粒状の接着用熱可塑性樹脂材を混入あるいは付着一体化させた構成も採用可能である。
接着樹脂有りシート形成材を複数有するシート状積層体は、接着用熱可塑性樹脂材の融点が互いに同じ接着樹脂有りシート形成材が複数存在しても、各接着樹脂有りシート形成材の接着用熱可塑性樹脂材の融点が互いに異なっていても良い。
接着用熱可塑性樹脂材としてはその融点が80〜270℃のものを好適に採用できる。
接着用繊維の外層部の熱可塑性樹脂(接着用熱可塑性樹脂材)は、融点90〜170℃のポリオレフィン系樹脂に限定されず、融点80〜270℃の熱可塑性樹脂を用いることが可能である。
熱可塑性樹脂製の芯材を有する接着用繊維(熱可塑性芯有り接着用繊維)の芯材を形成する熱可塑性樹脂は、その融点が250℃超のものに限定されない。熱可塑性樹脂製の芯材を有する接着用繊維としては、芯材の熱可塑性樹脂の融点が、外層部の熱可塑性樹脂(接着用熱可塑性樹脂材)の融点に比べて高い構成のものを広く採用できる。この点、接着用繊維の芯材を形成する熱可塑性樹脂は、その融点が250℃以下のものであっても良い。但し、熱可塑性芯有り接着用繊維の芯材を形成する熱可塑性樹脂の融点と外層部の熱可塑性樹脂の融点との差は60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。熱可塑性芯有り接着用繊維の外層部の熱可塑性樹脂(接着用熱可塑性樹脂材)の融点は80〜170℃であることが好ましい。熱可塑性芯有り接着用繊維の芯材を形成する熱可塑性樹脂の融点は140℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃超であることがさらに好ましい。
一方、熱硬化性樹脂等の熱可塑性を有していない材料によって形成された繊維を芯材として有する芯有り接着用繊維の外層部の熱可塑性樹脂(接着用熱可塑性樹脂材)は融点が80〜270℃のものを用いることができる。
(2) 接着用繊維が混抄された混抄紙、紙、織布、不織布のように、その全体にわたって多数形成された微細孔(例えば既述の通気孔部)によって通気性及び/又は透水性が確保されたシート形成材を、以下、透過性シート形成材とも言う。透過性シート形成材としては、例えばその全体にわたって、針の突き刺し等によって直径20μm〜1mm程度の孔が通気孔部として多数分散形成された構成のものも採用可能である。
通気性及び/又は透水性が確保された複層シートを、以下、透過性複層シートとも言う。透過性複層シートの製造に用いるシート形成材としては、透過性シート形成材及び/又はネットに限定される。織布、不織布、ネットとしては、接着樹脂有りシート形成材、接着樹脂無しシート形成材のいずれであっても良い。
但し、透過性複層シートの製造のために形成するシート状積層体は、互いに隣り合うシート形成材の一方又は両方が接着樹脂有りシート形成材となるように、複数のシート形成材を積層して構成することは既述の通りである。
なお、複層シート(透過性複層シートも含む各種複層シート)の形成に使用する複数のシート形成材の接着用熱可塑性樹脂材以外の材質は、複層シートに求められる性質に応じて、適宜選択可能である。
(3) 複層シート製造装置10は、非通気性及び遮水性が要求される複層シートの製造にも適用可能である。
ここで非通気性は空気流通を遮断できる性質を指す。非通気性及び遮水性を有する複層シート(以下、メンブレン複層シートとも言う)は、例えば、電子部品、医薬品等を気密性及び水密性を確保して収容する包材等に利用できる。また、メンブレン複層シートは、例えば酸素、窒素ガス、アンモニアガス等のガスの透過を遮断できるガスバリア性を有するものであっても良い。
メンブレン複層シートの製造は、該メンブレン複層シートの製造に用いる複数のシート形成材の1以上に、非通気性及び遮水性を有する接着樹脂無しシート形成材(以下、接着樹脂無しメンブレン材、とも言う)を採用する。
接着樹脂無しメンブレン材としては、融点が加熱ニップ部によるシート状積層体の加熱温度よりも高い熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂によって全体が形成された樹脂製フィルムや、この樹脂製フィルムに熱可塑性を有していない繊維を混入した繊維混入フィルムを採用することが好ましい。
(4) 複層シートの製造には、接着樹脂無しシート形成材と接着樹脂有りシート形成材とを予め積層一体化した複合材(以下、シート形成複合材とも言う)を用いても良い。
また、複層シートの製造には、複数の接着樹脂無しシート形成材を予め積層一体化したシート形成複合材、あるいは、複数の接着樹脂有りシート形成材を予め積層一体化したシート形成複合材を用いても良い。
(5) 複層シート製造装置の加熱ニップ部としては、上述の実施形態のように、加熱ロール21及びピンチロール22の両方をそれぞれモータの駆動力によって回転駆動する構成に限定されない。加熱ニップ部としては、ピンチロール22を加熱ロール21に従動回転する従動ロールとした構成も採用可能である。
加熱ニップ部としては、ピンチロール22に加熱手段や冷却手段といった温度調整手段を設けた構成も採用可能である。また、加熱ニップ部としては、加熱ロール21及びピンチロール22の両方に加熱手段を設けた構成も採用可能である。
(6) 冷却ロールは、その回転周速をシート送りロール50の回転周速と同じ速度(基準設定速度)と、該基準設定速度に対して1つだけ設定した低速設定速度とに切り換え可能な構成に限定されない。冷却ロールは、その回転周速を基準設定速度と該基準設定速度よりも低速の互いに異なる複数の低速設定速度とから選択、切り換え可能である構成や、低速設定速度が基準設定速度から該基準設定速度よりも低速の低速下限速度までの範囲において適宜変更可能な構成も採用可能である。
また、冷却ロールは、その回転周速が、基準設定速度よりも低速の低速設定速度に設定されている構成も採用可能である。
また、複層シート製造装置としては、複数のシート送り速度を選択可能な構成に限定されず、シート送り速度が1つのみで、シート送り速度と該シート送り速度よりも低速の低速設定速度との切り換えが可能な構成も採用可能である。
(7) 下流側中間ロールとしては、温度調整装置(温度調整部)によってその表面温度が調整されている構成のものに限定されず、温度調整装置が接続されておらず表面温度の調整が無いものも使用可能である。
この場合も、複層シート製造装置は、積層体最短張設部90E1(図3)の面に交差する仮想交差直線Kに対する傾斜方向における下流側中間ロールの位置変更によって、加熱ニップ部20の加熱ロール21に対するシート形成材の重ね部サイズ、及び冷却ロール30に対するシート形成材の重ね部サイズを調整できる。
(8) 上述の実施形態では、下流側中間ロールを位置変更可能に支持するロール支持機構として、下流側中間ロールを、加熱ニップ部の加熱ロールと冷却ロールとの間に真っ直ぐに延在、張設したときのシート状積層体の両面に傾斜する直線に沿って位置変更可能に支持する構成のもの(以下、直線移動型ロール支持機構とも言う)を例示した。
但し、ロール支持機構としては、下流側中間ロールの位置変更(位置調整)によって、前記加熱ニップ部の前記加熱ロール及び前記冷却ロールに対する前記シート状積層体の重ね部サイズを調整できるものであれば良く、その具体的構成には特には限定は無い。
ロール支持機構としては、例えば、加熱ニップ部の加熱ロールの回転軸線に平行な回転軸線を以て回転可能な回転支持部材を有し、該回転支持部材のその回転軸線から離隔した位置に下流側中間ロールを取り付けた構成のもの(以下、回転型ロール支持機構とも言う)も採用可能である。回転型ロール支持機構としては、例えば、その回転支持部材の回転軸線が、例えば、加熱ニップ部の加熱ロールの回転軸線と同軸あるいは該回転軸線近傍に位置する構成を好適に採用できる。回転支持部材の回転軸線が加熱ニップ部の加熱ロールの回転軸線と同軸あるいは該回転軸線近傍に位置する回転型ロール支持機構は、下流側中間ロールを回転支持部材の回転軸線を中心に90度以上回転可能な構成を採用することで、既述の直線移動型ロール支持機構に比べて、シート状積層体90Dの加熱ロール重ね部90Hサイズを大きく確保することが可能である。
(9) 複層シート製造装置としては、シート状積層体を冷却又は加熱する下流側中間ロールの位置調整によって、加熱ロール重ね部90Hサイズを調整可能な構成であれば良く、必ずしも図3に例示した基準配置位置から第2方向へ移動可能な構成に限定されない。複層シート製造装置としては、例えばシート状積層体を冷却又は加熱する下流側中間ロールの位置調整範囲が、加熱ロール重ね部90Hサイズを調整可能な範囲に限定されている構成も採用可能である。
(10) 本発明に係る実施形態の複層シート製造装置を用いた複層シートの製造は、上述の実施形態のようにシート形成材と加熱ロールとの間に介挿する帯状剥離材94(図1、図2参照)を使用することに限らず、帯状剥離材を使用しないで実施することも可能である。例えば、加熱ニップ部に通す複数のシート形成材のうち加熱ロールに最も近いシート形成材が、その加熱ロール側の面に接着用熱可塑性樹脂材が露呈していない構成(接着用熱可塑性樹脂材を含まないことを含む)であり、帯状剥離材を使用しなくても、加熱溶融した接着用熱可塑性樹脂材の加熱ロールへの付着を防止できる(あるいは付着量が無視できる程度に少ない)場合は、帯状剥離材を使用を省略できる。
10…複層シート製造装置、14…表面処理部(コロナ放電処理部)、20…加熱ニップ部、21、22…(加熱ニップ部の)ロール、30…冷却ロール、31…(冷却ロールの)温度調整装置、40…下流側中間ロール、41…ロール支持機構、42…(下流側中間ロールの)温度調整装置、50…送りロール(シート送りロール)、90…シート形成材、90S…複層シート、91…シート形成材(混抄紙)、92…シート形成材(不織布)、93…シート形成材、熱可塑性樹脂材(ネット)、910…接着用繊維(芯有り接着用繊維)、912…(芯有り接着用繊維の)芯材、913…熱可塑性樹脂材(芯有り接着用繊維の外層部)、920…熱可塑性樹脂材、接着用繊維(芯無し接着用繊維)。

Claims (4)

  1. シート状あるいは網状の複数のシート形成材を、その1以上に含まれる熱可塑性樹脂材を融点以上の温度に加熱して接着、一体化する複層シート製造装置であって、
    前記シート形成材を複数積層したシート状積層体を加熱ロールを含む複数のロールに挟み込み前記熱可塑性樹脂材を加熱溶融する加熱ニップ部と、前記シート状積層体を前記加熱ニップ部の加熱ロールによる加熱後に接触させて冷却する表面温度30℃以下の冷却ロールと、前記シート状積層体の前記加熱ロールと前記冷却ロールとの間に延在する部分である積層体加熱後延在部に接触可能な中間ロールと、前記加熱ロールに対する前記シート状積層体の重ね部サイズあるいは冷却ロールに対するシート状積層体の重ね部サイズを調整するべく前記中間ロールを位置変更可能に支持するロール支持機構と、前記加熱ニップ部から送り出されて前記中間ロールに接触したシート状積層体を加熱又は冷却するべく前記中間ロールの温度を調整する温度調整部とを有することを特徴とする複層シート製造装置。
  2. 前記加熱ロールが前記中間ロールに比べて径大であることを特徴とする請求項1に記載の複層シート製造装置。
  3. 前記冷却ロールよりもシート状積層体の送り方向下流側に設けられた送りロールをさらに有し、前記冷却ロールは、その回転周速を前記送りロールに比べて低速に設定可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複層シート製造装置。
  4. 前記加熱ニップ部及び前記冷却ロールは、前記シート状積層体を前記加熱ロールによる加熱後3秒以内に前記冷却ロールに接触させる送り速度を以て送り移動することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層シート製造装置。
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