JP2015219960A - 超電導線材の接続構造、接続方法及び超電導線材 - Google Patents

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Abstract

【課題】接続強度が高く、超電導臨界電流密度が大きい超電導線材の接続構造を提供する。【解決手段】基材1の片面に中間層2を介して超電導導体層3が形成された第一及び第二の超電導線材10A,10Bの互いの接続端部を接続する接続構造100であって、第一及び第二の超電導線材の基材同士が溶接により接合され、第一及び第二の超電導線材の超電導導体層の間に超電導導体層3Cを有する接続用線材10Cが懸架され、基材同士の接合部と接続用線材との間に空隙6を有する構成とする。【選択図】図2

Description

本発明は、超電導線材の接続構造、接続方法及び超電導線材に関する。
近年、臨界温度(Tc)が液体窒素温度(約77K)よりも高い酸化物超電導体として、例えば、YBCO系(イットリウム系)、Bi系(ビスマス系)などの酸化物超電導体が注目されている。
この高温酸化物超電導線材は、長尺でフレキシブルな金属などの基板上に酸化物超電導膜を堆積したり、単結晶基板上に酸化物超電導膜を堆積したりして超電導導体層が形成されたものが知られている。また、基板と超電導導体層との間には、必要に応じて中間層が設けられることもある。
上記超電導線材の接続方法として、特許文献1には、真空容器内にて超電導線材の超電導導体層同士を当接して、加熱し、その当接部に向けてノズルから不活性ガスと同種の超電導体超微粉を噴出し、該超微粉を焼結させることにより超電導導体層同士を接続する方法が挙げられている。
特許文献2には、超電導線材の超電導導体層同士を互いに密着させると共に各超電導導体層の端面側において両方の超電導導体層に接触するように超電導膜を堆積させることにより超電導導体層同士を接続する方法が挙げられている。
特許文献3には、接続端部の超電導導体層を除去してから金属基板同士を突合せて溶接し、超電導導体層が除去された双方の接続端部に超電導膜を形成する接続方法が挙げられている。
特許2688923号公報 特開2005−063695号公報 特許3836299号公報
しかし、特許文献1の接続方法は、超電導焼結体の超電導臨界電流密度(Jc)が小さくならないように、焼結体部分の厚み及び薄膜との接触面積を大きくする必要がある。超電導臨界電流密度が十分に大きくできないと、超電導臨界電流密度を超えた電流が流れた場合には、焼結体部分で大きな電気抵抗を発生してしまうという問題があった。
また、特許文献2の接続方法は、各超電導導体層の端面の面積が小さいため、接続良否のバラツキが大きく、臨界電流が小さくなりやすいことや、接続強度が弱いことが問題となっていた。
また、特許文献3の接続方法は、接続強度が十分であるが、金属基板の溶接の際に、高温により金属元素拡散が起こり、溶接部近傍の超電導層が劣化してしまうので、超電導導体層と形成された超電導膜との間で超電導臨界電流密度が十分に大きくできない場合があるという問題があった。
本発明の目的は、接続強度が高く、超電導臨界電流密度が大きい超電導線材の接続構造、接続方法及び超電導線材を提供することである。
請求項1記載の発明は、
基材の片面に中間層を介して超電導導体層が形成された第一及び第二の超電導線材の互いの接続端部を接続する接続構造であって、
前記第一及び第二の超電導線材の前記基材同士が接合され、
前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層の間に、超電導導体層を有する接続用線材が懸架され、
前記基材同士の接合部と前記接続用線材との間に空隙を有することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の超電導線材の接続構造において、
前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層と前記接続用線材の前記超電導導体層とが超電導状態で導通するように接続されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の超電導線材の接続構造において、
前記接続用線材の前記空隙に対向する部分に接続超電導膜が形成されていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、
基材の片面に中間層を介して超電導導体層が形成された第一及び第二の超電導線材の互いの接続端部を接続する接続構造であって、
前記第一及び第二の超電導線材の前記基材同士が接合され、
前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層の間に、接続用線材が懸架され、
前記基材同士の接合部と前記接続用線材との間に空隙を有し、
前記接続用線材の前記空隙に対向する部分に前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層を接続する接続超電導膜を有することを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項3又は4記載の超電導線材の接続構造において、
前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層と前記接続用線材との間にも、接続超電導膜が形成されていることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の超電導線材の接続構造において、
前記第一及び第二の超電導線材の前記接続端部の前記中間層及び前記超電導導体層の除去により前記空隙が形成されていることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項6記載の超電導線材の接続構造において、
前記第一及び第二の超電導線材の前記接続端部の前記中間層及び前記超電導導体層の除去に加えて、前記基材の部分的な除去により前記空隙が形成されていることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、超電導線材の接続方法において、
基材の片面に中間層を介して超電導導体層が形成された第一及び第二の超電導線材の互いの接続端部を接続する接続方法であって、
前記第一及び第二の超電導線材の前記接続端部の前記中間層及び前記超電導導体層を除去する第一の除去工程と、
前記第一及び第二の超電導線材の前記基材同士を溶接により接合する接合工程と、
前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層の間に、超電導導体層を有する接続用線材を懸架する線材取り付け工程と、
酸素アニール工程と、
を備え、
前記線材取り付け工程において、前記基材同士の接合部と前記接続用線材との間に空隙を形成することを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項8記載の超電導線材の接続方法において、
前記接続用線材の前記空隙に対向する部分に接続超電導膜を形成する成膜工程を備えることを特徴とする。
請求項10記載の発明は、
基材の片面に中間層を介して超電導導体層が形成された第一及び第二の超電導線材の互いの接続端部を接続する接続方法であって、
前記第一及び第二の超電導線材の前記接続端部の前記中間層及び前記超電導導体層を除去する第一の除去工程と、
前記第一及び第二の超電導線材の前記基材同士を溶接により接合する接合工程と、
前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層の間に、接続用線材を懸架する線材取り付け工程と、
酸素アニール工程と、
を備え、
前記線材取り付け工程において、前記基材同士の接合部と前記接続用線材との間に空隙を形成し、
前記接続用線材の前記空隙に対向する部分に前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層を接続する接続超電導膜を形成する成膜工程を備えることを特徴とする。
請求項11記載の発明は、請求項9又は10記載の超電導線材の接続方法において、
前記成膜工程において、前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層と前記接続用線材との間にも、接続超電導膜を形成することを特徴とする。
請求項12記載の発明は、請求項8から11のいずれか一項に記載の超電導線材の接続方法において、
前記第一及び第二の超電導線材の前記接続端部の前記基材の部分的な除去を行う第二の除去工程を備えることを特徴とする。
請求項13記載の発明は、超電導線材であって、請求項1から7のいずれか一項に記載の超電導線材の接続構造により接続された前記第一及び第二の超電導線材を有することを特徴とする。
上記発明では、上記の構成により、接続強度が高く、超電導臨界電流密度が大きい超電導線材の接続構造、接続方法及び超電導線材を提供することが可能となる。
超電導線材の斜視図である。 第一の実施形態である超電導線材の接続構造の断面図である。 図3(A)〜図3(F)は超電導線材の接続方法を工程順に示した断面図である。 第二の実施形態である超電導線材の接続構造の断面図である。 第三の実施形態である超電導線材の接続構造の断面図である。 図6(A)〜図6(F)は超電導線材の接続方法を工程順に示した断面図である。 第四の実施形態である超電導線材の接続構造の断面図である。
[第一の実施形態]
以下に、本発明を実施するための好ましい第一の実施の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付し、重複した説明を適宜省略する。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
図1は、本発明の第1実施形態に係る超電導線材の斜視図である。
図1に示すように、超電導線材10は、超電導成膜用基材1(以下、「基材1」とする)の厚み方向の一方の主面(以下、成膜面11という)に、中間層2、酸化物超電導導体層3及び安定化層4がこの順に積層されている。即ち、超電導線材10は、基材1、中間層2、酸化物超電導導体層3(以下、「超電導導体層3」とする)、安定化層4による積層構造を有している。
基材1は、テープ状の低磁性の金属基板やセラミックス基板が用いられる。金属基板の材料としては、例えば、強度及び耐熱性に優れた、Co、Cu、Cr、Ni、Ti、Mo、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Ag等の金属又はこれらの合金が用いられる。特に、耐食性及び耐熱性が優れているという観点からハステロイ(登録商標)、インコネル(登録商標)等のNi基合金、またはステンレス鋼等のFe基合金を用いることが好ましい。
また、これら各種金属材料上に各種セラミックスを配してもよい。また、セラミックス基板の材料としては、例えば、MgO、SrTiO、又はイットリウム安定化ジルコニア等が用いられる。その他にも、サファイアを基材として用いてもよい。
成膜面11は、略平滑な面とされており、例えば成膜面11の表面粗さが10nm以下とされていることが好ましい。
なお、表面粗さとは、JISB-0601-2001において規定する表面粗さパラメータの「高さ方向の振幅平均パラメータ」における算術平均粗さRaである。
中間層2は、超電導導体層3において例えば高い2軸配向性を実現するための層である。このような中間層2は、例えば、熱膨張率や格子定数等の物理的な特性値が基材1と超電導導体層3を構成する超電導体との中間的な値を示す。
また、中間層2は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。多層構造の場合、その層数や種類は限定されないが、非晶質のGdZr7−δ(δは酸素不定比量)やAl或いはY等を含むベッド層と、結晶質のMgO等を含みIBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法により成形された強制配向層と、LaMnO3+δ(δは酸素不定比量)を含むLMO層と、を順に積層した構成となっていてもよい。また、LMO層の上にCeO2等を含むキャップ層をさらに設けてもよい。
上記各層の厚さは、LMO層を30nm、強制配向層のMgO層を40nm、ベッド層のY層を7nm、Al層を80nmとする。なお、これらの数値はいずれも一例である。
この中間層2の表面には、超電導導体層3が積層している。超電導導体層3は、酸化物超電導体、特に銅酸化物超電導体を含んでいることが好ましい。銅酸化物超電導体としては、高温超電導体としてのREBaCu7−δ(以下、RE系超電導体と称す)が好ましい。なお、RE系超電導体中のREは、Y,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm,YbやLuなどの単一の希土類元素又は複数の希土類元素であり、これらの中でもBaサイトと置換が起き難い等の理由でYであることが好ましい。また、δは、酸素不定比量であって、例えば0以上1以下であり、超電導転移温度が高いという観点から0に近いほど好ましい。なお、酸素不定比量は、オートクレーブ等の装置を用いて高圧酸素アニール等を行えば、δは0未満、すなわち、負の値をとることもある。
安定化層4は、超電導導体層3の表面を覆っているが、基材1と中間層2と超電導導体層3の周囲全体を覆っていることがより好ましい。
この安定化層4は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。多層構造の場合、その層数や種類は限定されないが、銀からなる銀安定化層と、銅からなる銅安定化層を順に積層した構成となっていてもよい。
本実施形態は、超電導線材の接続構造100及び当該超電導線材の接続構造100を有する超電導線材を示すものである。なお、「超電導線材の接続構造100を有する超電導線材」とは、接続構造100により接続された第一と第二の超電導線材10A,10Bを有する超電導線材を示す。
本実施形態である超電導線材の接続構造100は、図2に示すように、第一と第二の超電導線材10A,10Bの接続端部同士を突き合わせた状態で後述する接続方法によって接続することにより形成される。第一と第二の超電導線材10A,10Bは上記超電導線材10と同一構造であり、各層1〜4については超電導線材10と同じ符号を使用する。
この接続構造100は、第一及び第二の超電導線材10A,10Bの接続端部の基材1,1同士が溶接により接合され、第一及び第二の超電導線材10A,10Bの接続端部の超電導導体層3,3同士が、超電導導体層3Cを有する接続用線材10Cによりブリッジ接続され、基材1,1同士の接合部と接続用線材10Cとの間に空隙6が形成されている。
[接続方法]
上記の接続構造100について、図3(A)〜図3(F)に基づいて、その接続方法を工程順に説明する。
まず、図3(A)に示すように、第一と第二の超電導線材10A,10Bの接続端部側において、安定化層4,4の除去を行い、超電導導体層3,3を露出させる(露出工程)。安定化層4の除去は、機械的研磨、化学的研磨又はこれらの組み合わせにより行う。
例えば、安定化層4として銀又は銀合金を使用している場合に、化学的に除去する場合には、剥離剤として過酸化水素とアンモニアの水溶液を使用することが望ましい。
また、安定化層4の剥離によって露出した超電導導体層3は、後述する線材取り付け工程において後述する接続超電導膜5を良好に形成するために、その表面粗さをより小さくすることが望ましい。
次に、図3(B)に示すように、第一と第二の超電導線材10A,10Bの安定化層4,4の剥離によって露出した超電導導体層3,3の接続端部側の一部と中間層2,2の接続端部側の一部とを除去して、基材1,1の表面を露出させる(第一の除去工程)。これらの除去は、機械的研磨、化学的研磨又はこれらの組み合わせにより行う。
さらに、図3(C)に示すように、第一の除去工程によって露出した基材1,1の接続端部に対して、超電導導体層3,3及び中間層2,2の除去範囲と等しい範囲について、部分的な除去を行う。即ち、基材1,1は、図3(C)に示すように、その接続端部側に向かうにつれて基材1,1の厚さが薄くなるように傾斜した形状で部分的な除去が行われる(第二の除去工程)。
上記基材1,1の除去もまた、機械的研磨、化学的研磨又はこれらの組み合わせにより行う。
次に、図3(D)に示すように、第一と第二の超電導線材10A,10Bの基材1,1を、その接続端部同士を突き合わせた状態で、溶接により接合する(接合工程)。これにより基材1,1を介して第一の超電導線材10Aと第二の超電導線材10Bとが十分な強度をもって連結される。
また、かかる基材1,1の連結により、第一の除去工程により除去された超電導導体層3,3及び中間層2,2の除去部分と、第二の除去工程により除去された基材1,1の除去部分とによって、第一と第二の超電導線材10A,10Bの接続部分に、略五角形状の隙間領域が形成される。
次に、図3(E)に示すように、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3に懸架される接続用線材10Cが用意される。この接続用線材10Cは、基材1Cの主面上に中間層2C、超電導導体層3Cが順に積層された積層体である(図3(E)では超電導導体層3Cが下向きとなるように図示している)。そして、接続用線材10Cの基材1C、中間層2C、超電導導体層3Cは、それぞれ、第一又は第二の超電導線材10A,10Bの基材1、中間層2、超電導導体層3と同一材料から形成されている。
上記接続用線材10Cは安定化層4を有しておらず、超電導導体層3Cの表面全体を全長に渡って露出させている。また、この接続用線材10Cの超電導導体層3Cについても、その表面粗さを十分小さくすることが望ましい。なお、接続用線材10Cは、第一又は第二の超電導線材10A,10Bと同じ超電導線材から安定化層4を除去することにより取得しても良い。
さらに、接続用線材10Cの超電導導体層3Cと第一及び第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3との間には、MOD法(Metal Organic Deposition法/有機金属堆積法)によって接続超電導膜5が形成される。
このため、接続用線材10Cの超電導導体層3Cの表面には、MOD法に基づいて接続超電導膜5を形成するためのMOD液が塗布される。
このMOD液は、例えば、RE(Y(イットリウム)、Gd(ガドリニウム)、Sm(サマリウム)及びHo(ホルミウム)等の希土類元素)とBaとCuとが約1:2:3の割合で含まれているアセチルアセトナート系MOD溶液が使用される。
なお、MOD液は、少なくとも、接続用線材10Cの超電導導体層3Cと第一及び第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3のいずれか一方に塗布すれば良いが、これらの両方に塗布しても良い。
次に、図3(F)に示すように、接続用線材10Cの超電導導体層3Cを第一及び第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3に対向させた状態で、超電導導体層3,3の露出した表面上に接続用線材10Cを配置する。そして、第一及び第二の超電導線材10A,10Bの接続端部の超電導導体層3,3同士を、接続用線材10Cによりブリッジ接続する(線材取り付け工程)。
次に、接続用線材10Cに塗布されたMOD液に含まれる有機成分を除去するための仮焼成工程と、第一及び第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3と接続用線材10Cの超電導導体層3Cとの界面にエピタキシャル成長させて接続超電導膜5を形成するための本焼成工程とが、所定の加圧環境下で実施される(成膜工程)。
次に、第一及び第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3と接続用線材10Cの超電導導体層3Cと新たに形成された接続超電導膜5とに対して酸素をドープする酸素アニール工程が行われる。この酸素アニール工程は、第一及び第二の超電導線材10A,10Bの接続端部と接続用線材10Cとが、酸素雰囲気内に収容され、所定の加熱環境下で実施される。
なお、この酸素アニール工程の後、接続部分の表面に、銀を蒸着し、または、銀ペーストを塗布した後に焼成することで銀安定化層を形成し、その上に電解めっき法などで銅安定化層を形成する安定化層形成工程を付加しても良い。この時、安定化層は空隙6を埋めるように形成されてもよい。
[実施例1]
上記超電導線材の接続構造100のより具体的な実施例について説明する。なお、以下に説明する実施例の各種の設定値は、いずれも一例であって発明の内容を限定するものではない。
図2に示すように、接続構造100では、第一と第二の超電導線材10A,10Bのそれぞれの超電導導体層3,3と接続用線材10Cの超電導導体層3Cとの重合する長さaをおよそ15mm、空隙6の長さbをおよそ4〜5mmとし、接続用線材10Cの長さをおよそ34〜35mmとしている。
なお、「長さ」とは第一及び第二の超電導線材10A,10Bの長手方向における長さを示す。以下、「長さ」という場合には全て同様とする。
これに対して、空隙6における基材1,1が除去された深さcはおよそ10μm、基材1,1の厚みをおよそ50μm、中間層2,2の厚みをおよそ200nm、超電導導体層3,3の厚みをおよそ1μm、接続超電導膜5の厚みをおよそ100nm〜1μmとしている。
また、図3(A)〜図3(F)に示した接続方法における、安定化層4,4の除去後の第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3の表面粗さ(中心線平均粗さRa)と、接続超電導膜5の形成前の接続用線材10Cの超電導導体層3Cの表面粗さ(中心線平均粗さRa)は、いずれも50nm以下とすることが望ましく、10nm以下とすることがより望ましい。
また、線材取り付け工程における仮焼成工程については、第一と第二の超電導線材10A,10Bの接続端部及び接続用線材10Cは、400℃以上500℃以下の温度範囲で熱処理が行なわれる。
また、本焼成工程では、第一と第二の超電導線材10A,10Bの接続端部及び接続用線材10Cは、10〜200MPaの範囲で加圧されながら、750℃以上830℃以下の温度範囲で熱処理が行なわれる。
酸素アニール工程においては、第一と第二の超電導線材10A,10Bの接続端部及び接続用線材10Cは、350℃以上500℃以下の温度範囲の酸素の雰囲気下にあり、この条件下で酸素ドープが行われる。
以上の条件の下で、良好な超電導線材の接続構造100が形成される。
[実施形態の技術的効果]
超電導線材の接続構造100では、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3が接続用線材10Cの超電導導体層3Cによりブリッジ接続された状態となるので、超電導臨界電流密度を十分に大きくすることができ、大電流でも超電導状態を良好に維持することが可能となる。
また、第一と第二の超電導線材10A,10Bの基材1,1を溶接により接合しているので、接続構造における接続強度を高く維持することが可能である。
さらに、第一の超電導線材10Aと第二の超電導線材10Bの基材1,1同士の接合部と接続用線材10Cとの間に空隙6を有するので、基材1,1の溶接による接合部を各超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3から離間することができる。第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3は、溶接によって加熱されると、結晶方位のズレが発生し、接続超電導膜5との間で結晶構造の悪化を生じ得る。しかし、空隙6が存在すると、溶接時の基材1,1の金属元素拡散の影響及び溶接時の熱の影響を低減することができ、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3の劣化を抑え、また、接続超電導膜5の形成を良好に行うことが可能となる。従って、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3間の臨界電流密度を十分に大きく確保することが可能となる。
また、上記空隙6を設けることにより、酸素アニール工程において、接続超電導膜5における空隙6に面する部分と第一と第二の超電導線材10A,10Bの接続端部近傍の部分とに十分に酸素を供給することができ、酸素ドープを良好に行うことが可能となる。これによって、短時間のアニール処理で十分な臨界電流特性が得られる。
同様に、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3における接続端部近傍の部分に対しても、十分に酸素を供給することができ、酸素ドープを良好に行うことが可能となる。
なお、空隙6は、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3及び中間層2,2のみの除去により形成することも可能であり、この場合も、超電導導体層3,3の劣化の低減、接続超電導膜5の良好な形成、臨界電流密度の向上、良好な酸素ドープの各効果を得ることが可能だが、図2に示すように、基材1,1の接続端部の部分的な除去を行うことにより、上記の各効果をより向上させることが可能である。
また、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3と接続用線材10Cの超電導導体層3Cとの間にも接続超電導膜5が形成されているので、超電導導体層3,3と超電導導体層3Cとの間の臨界電流密度を十分に大きくすることができ、良好な超電導状態を維持することが可能となる。
[第二の実施形態]
図4に第二の実施形態である超電導導体層の接続構造100Dを示す。この接続構造100Dについては、前述した接続構造100と同一の構成については同じ符号を付して重複する説明は省略する。
この接続構造100Dは、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3に懸架される接続用線材10Dが異なっている。この接続用線材10Dは、基材1Cの主面上に中間層2Cが積層された積層体である(図4では、基材1Cにおける超電導導体層3,3側の面に中間層2Cが形成された状態を図示している)。
上記接続用線材10Dは超電導導体層3Cを有しておらず、中間層2Cの表面全体を全長に渡って露出させている。また、この接続用線材10Dの中間層2Cについても、その表面粗さを十分小さくすることが望ましい。
この接続構造100Dを形成する接続方法は、接続構造100の接続方法とほぼ同じであり、異なる点のみを説明する。
第一と第二の超電導線材10A,10Bの露出工程から接合工程までは同じであり、接合工程後には、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3に懸架される接続用線材10Dが用意される。
そして、中間層2Cの露出面にMOD液が塗布された状態で、当該中間層2Cの露出面を第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3の露出面に対向させて、これら超電導導体層3,3上に接続用線材10Dを配置する(線材取り付け工程)。
なお、この場合、MOD液は第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3の露出面側にも塗布しても良いが、中間層2Cの露出面全体にMOD液を塗布することは必須である。
その後は、接続構造100と同じ条件で仮焼成工程及び本焼成工程からなる成膜工程と酸素アニール工程とが行われ、接続構造100Dが形成される。
この超電導線材の接続構造100Dの場合も、接続超電導膜5により第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3における超電導臨界電流密度を十分に大きくすることができ、第一と第二の超電導線材10A,10Bの接続強度も高く維持できる。
さらに、空隙6による金属元素拡散の影響及び溶接時の熱の影響の低減、酸素アニール工程における超電導導体層3,3、接続超電導膜5への酸素の良好なドープを実現することが可能である。
[第三の実施形態]
図5に第三の実施形態である超電導導体層の接続構造100Eを示す。この接続構造100Eについては、前述した接続構造100と同一の構成については同じ符号を付して重複する説明は省略する。
この接続構造100Eは、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3と接続用線材10Cの超電導導体層3Cとの間に形成される接続超電導膜5Eの形成範囲が異なっている。この接続超電導膜5Eは接続用線材10Cの超電導導体層3Cの表面における空隙6に対向する部分にのみ形成されている。つまり、接続超電導膜5Eは、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3の接続端部側の端面と接続用線材10Cの超電導導体層3Cの空隙6に臨む面とに接しており、これらによって、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3の間の超電導臨界電流密度を確保している。
上記接続構造100Eに基づく超電導線材の接続方法を図6(A)〜図6(F)に示す。
図6(A)〜図6(D)に示す第一と第二の超電導線材10A,10Bの露出工程から接合工程までは、接続構造100に基づく超電導線材の接続方法と同一であるため、その説明は省略する。
そして、接合工程後には、図6(E)に示すように、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3に懸架される接続用線材10Cが用意される。この時、接続用線材10Cの超電導導体層3Cの露出面にはMOD液は塗布されずに第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3に直接接触させて、加熱加圧により相互間の接続が行われる(線材取り付け工程)。これら超電導導体層3,3と3Cの層間の接続は、例えば、超電導導体層を溶融点まで加熱して接合する特許第5214744号公報の技術に比べて、より低い温度で行うことができる。
そして、図6(F)に示すように、線材取り付け工程により第一と第二の超電導線材10A,10Bの接続端部に空隙6が形成される。
この空隙6の内側に第一及び第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3を接続するための接続超電導膜5Eを形成する(成膜工程)。
接続超電導膜5Eの形成は、接続用線材10Cの超電導導体層3Cにおける空隙6の内側となっている面全体にMOD液を塗布する、あるいは、空隙6内にMOD液を注入して超電導導体層3Cにおける空隙6の内側となっている面に付着させる。
そして、前述した接続超電導膜5の場合と同じ条件で、仮焼成工程、本焼成工程、酸素アニール工程を実行し、接続超電導膜5Eを形成する。
この超電導線材の接続構造100Eの場合、接続超電導膜5Eにより第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3及び接続用線材10Cの超電導導体層3Cの超電導臨界電流密度を十分に大きくすることができ、第一と第二の超電導線材10A,10Bの接続強度も高く維持できる。
さらに、空隙6による金属元素拡散の影響及び溶接時の熱の影響の低減、酸素アニール工程における超電導導体層3,3、接続超電導膜5への酸素の良好なドープを実現することが可能である。
なお、超電導導体層3,3と3Cの層間の接続が行われるので、接続超電導膜5Eの形成は省略することが可能である。但し、接続超電導膜5Eを設けることにより、酸素アニール工程の加熱温度をより低くすることが可能となるという利点がある。
[第四の実施形態]
図7に第四の実施形態である超電導導体層の接続構造100Fを示す。この接続構造100Fについては、前述した接続構造100D,100Eと同一の構成については同じ符号を付して重複する説明は省略する。
この接続構造100Fは、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3の間には前述した接続用線材10Dが懸架されており、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3と接続用線材10Dの中間層2Cとの間には前述した接続超電導膜5Eが形成されている。
この接続構造100Fを形成する接続方法は、接続構造100Eの接続方法とほぼ同じであり、異なる点のみを説明する。
第一と第二の超電導線材10A,10Bの露出工程から接合工程までは同じであり、接合工程後には、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3に懸架される接続用線材10Dが用意される。
そして、接続用線材10Dの中間層2Cの露出面を第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3の露出面に対向させて、これら超電導導体層3,3上に接続用線材10Dを接合する(線材取り付け工程)。これら超電導導体層3,3と中間層2Cの層間の接続は、相互間を物理的に固定連結するだけであり、相互間の導通を確保するための層間接続は行われない。
そして、線材取り付け工程により第一と第二の超電導線材10A,10Bの接続端部に空隙6が形成される。
この空隙6の内側に、図6(F)の場合と同様に、第一及び第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3を接続するための接続超電導膜5Eを形成する(成膜工程)。
この超電導線材の接続構造100Fの場合も、接続超電導膜5Eにより第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3における超電導臨界電流密度を十分に大きくすることができ、第一と第二の超電導線材10A,10Bの接続強度も高く維持できる。
さらに、空隙6による金属元素拡散の影響及び溶接時の熱の影響の低減、酸素アニール工程における超電導導体層3,3、接続超電導膜5への酸素の良好なドープを実現することが可能である。
[その他]
空隙6において基材1,1は接合部に近づくにつれて深くなるように傾斜した形状となるように除去されているが、これに限らず、長さbの全範囲で均一な深さとなるように除去しても良い。
また、接続超電導膜5,5Eの成膜は、MOD法には限られない。例えば、化学気相蒸着法(CVD法)、レーザー蒸着法(PLD法)、有機金属気相成長法(MOCVD法)により成膜を行っても良い。
また、超電導線材の接続構造100において、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3と接続用線材10Cの超電導導体層3Cとの層間の接続が超電導臨界電流密度を十分に確保できるのであれば、接続超電導膜5における空隙6の内側部分には超電導膜を形成しなくとも良い。
また、超電導線材の接続構造100Eにおいて、第一と第二の超電導線材10A,10Bの超電導導体層3,3と接続用線材10Cの超電導導体層3Cとの層間の接続が超電導臨界電流密度を十分に確保できるのであれば、接続超電導膜5Eは形成しなくとも良い。
1,1C 基材
2,2C 中間層
3,3C 超電導導体層
4 安定化層
5,5E 接続超電導膜
6 空隙
10,10A,10B 超電導線材
10C,10D 接続用線材
100,100D,100E,100F 接続構造

Claims (13)

  1. 基材の片面に中間層を介して超電導導体層が形成された第一及び第二の超電導線材の互いの接続端部を接続する接続構造であって、
    前記第一及び第二の超電導線材の前記基材同士が接合され、
    前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層の間に、超電導導体層を有する接続用線材が懸架され、
    前記基材同士の接合部と前記接続用線材との間に空隙を有することを特徴とする超電導線材の接続構造。
  2. 前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層と前記接続用線材の前記超電導導体層とが超電導状態で導通するように接続されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導線材の接続構造。
  3. 前記接続用線材の前記空隙に対向する部分に接続超電導膜が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の超電導線材の接続構造。
  4. 基材の片面に中間層を介して超電導導体層が形成された第一及び第二の超電導線材の互いの接続端部を接続する接続構造であって、
    前記第一及び第二の超電導線材の前記基材同士が接合され、
    前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層の間に、接続用線材が懸架され、
    前記基材同士の接合部と前記接続用線材との間に空隙を有し、
    前記接続用線材の前記空隙に対向する部分に前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層を接続する接続超電導膜を有することを特徴とする超電導線材の接続構造。
  5. 前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層と前記接続用線材との間にも、接続超電導膜が形成されていることを特徴とする請求項3又は4記載の超電導線材の接続構造。
  6. 前記第一及び第二の超電導線材の前記接続端部の前記中間層及び前記超電導導体層の除去により前記空隙が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の超電導線材の接続構造。
  7. 前記第一及び第二の超電導線材の前記接続端部の前記中間層及び前記超電導導体層の除去に加えて、前記基材の部分的な除去により前記空隙が形成されていることを特徴とする請求項6記載の超電導線材の接続構造。
  8. 基材の片面に中間層を介して超電導導体層が形成された第一及び第二の超電導線材の互いの接続端部を接続する接続方法であって、
    前記第一及び第二の超電導線材の前記接続端部の前記中間層及び前記超電導導体層を除去する第一の除去工程と、
    前記第一及び第二の超電導線材の前記基材同士を溶接により接合する接合工程と、
    前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層の間に、超電導導体層を有する接続用線材を懸架する線材取り付け工程と、
    酸素アニール工程と、
    を備え、
    前記線材取り付け工程において、前記基材同士の接合部と前記接続用線材との間に空隙を形成することを特徴とする超電導線材の接続方法。
  9. 前記接続用線材の前記空隙に対向する部分に接続超電導膜を形成する成膜工程を備えることを特徴とする請求項8記載の超電導線材の接続方法。
  10. 基材の片面に中間層を介して超電導導体層が形成された第一及び第二の超電導線材の互いの接続端部を接続する接続方法であって、
    前記第一及び第二の超電導線材の前記接続端部の前記中間層及び前記超電導導体層を除去する第一の除去工程と、
    前記第一及び第二の超電導線材の前記基材同士を溶接により接合する接合工程と、
    前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層の間に、接続用線材を懸架する線材取り付け工程と、
    酸素アニール工程と、
    を備え、
    前記線材取り付け工程において、前記基材同士の接合部と前記接続用線材との間に空隙を形成し、
    前記接続用線材の前記空隙に対向する部分に前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層を接続する接続超電導膜を形成する成膜工程を備えることを特徴とする超電導線材の接続方法。
  11. 前記成膜工程において、前記第一及び第二の超電導線材の前記超電導導体層と前記接続用線材との間にも、接続超電導膜を形成することを特徴とする請求項9又は10記載の超電導線材の接続方法。
  12. 前記第一及び第二の超電導線材の前記接続端部の前記基材の部分的な除去を行う第二の除去工程を備えることを特徴とする請求項8から11のいずれか一項に記載の超電導線材の接続方法。
  13. 請求項1から7のいずれか一項に記載の超電導線材の接続構造により接続された前記第一及び第二の超電導線材を有する超電導線材。
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