以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態のターボ過給機1の概略構成図、図2は電動アクチュエータ41の概略断面図である。なお、図1と図2でロッド46が一方向にストローク(往復運動)する方向が逆になっている。図1にも示したように、ターボ過給機1は、主にターボハウジング2、タービン3、コンプレッサ4、ウェイストゲートバルブ21、電動アクチュエータ41から構成される。
ハウジング2の内部には、タービン3とコンプレッサ4とが同軸5に固定されている。軸受6によりタービン3及びコンプレッサ4が軸5を介して回転可能に支持されている。
エンジンからの排気はタービン入口11よりタービンホイール3aのある空間に流入して、タービンホイール3aを回転させる。ここで、エンジンはガソリンエンジンである。なお、エンジンはガソリンエンジンである場合に限定されるものでなく、ディーゼルエンジンであってよい。タービンホイール3aが回転すると、コンプレッサインペラー4aが回転する。コンプレッサインペラー4aが回転すると、空気がコンプレッサ入口13から吸い込まれる。吸い込まれた空気はコンプレッサインペラー4aによりディフューザ4bに送られて加圧される。加圧された空気は図示しないコンプレッサ出口から排出される。
ターボハウジング2には、タービンホイール3aをバイパスしてタービン入口11とタービン出口12を連通するバイパス穴7が貫通して設けられている。このバイパス穴7を開閉するため、ウェイストゲートバルブ21を備える。
ウェイストゲートバルブ21は、スウィングバルブ22、スウィングバルブの軸23、バルブシート24、第1スイングバルブシャフト25、第2スウィングバルブシャフト26、軸受27で構成されている。
円柱状のバイパス穴7の周囲にはバルブシート24が形成されている。このバルブシート24に円盤状のスウィングバルブ22が排気の上流側(図1で右側)より離接する。
一対のスイングバルブシャフト25,26は各一端(図1で下端)が所定の角度(鋭角)をもって固定され、軸受27を支点として回動可能に設けられている。第1スウィングバルブシャフト25の他端(図1で上端)にはスウィングバルブ22の軸23が連結されている。第2スウィングバルブシャフト26の他端(図1で上端)には電動アクチュエータ41のロッド46の一端がピン28によって連結されている。
図2にも示したように電動アクチュエータ41は、主にモータハウジング42、モータ43、ロッド46、スプリング47で構成されている。モータハウジング42はターボハウジング2に固定されている。モータ43は外周側に位置しモータハウジング42に固定されるステータ44と、ステータ44の内周側に位置し回転可能なロータ45で構成され、ロータ45の軸心位置にロッド46が貫通して設けられている。ロータ45の内周とロッド46の外周には互いに噛み合う雌ネジ45aと雄ネジ46aとが切られており、この一対のネジ45a,46aの噛み合わせにより、ロータ45の回転運動がロッド46の軸方向の直線運動(ストローク)に変換される。
ステータ44に電流を流していない状態では、スプリング47により図2においてロッド46が左方向に付勢される。スプリング47の付勢力によって、図1に示したように、バルブシート24にスウィングバルブ22が一方向から当接してバイパス穴7を塞いでいる状態となる。スウィングバルブ22がバルブシート24に当接している状態がロッド46の初期位置である。ここで、ロッド46の「初期位置」とはスウィングバルブとバルブシートが当接しているときのロッド46の位置をいうものとする。また、このときのロータ45の位置も初期位置とする。
いま、ステータ44に電流を流すと、ロータ45が初期位置から所定角度だけ回転(正転)する。このときのロータ45の回転角に応じてロッド46が図2で左方向に所定のストローク量だけストローク(突出)する。ロッド46が図1で右方向に所定のストローク量だけストロークすると、一対のスウィングバルブシャフト25,26を押す。すると、スウィングバルブシャフト25,26が図1で時計方向に所定の角度だけ回動する。これによって、スウィングバルブ22が軸受27を支点として所定の角度だけ回動し、バルブシート24から離れる。ロッドスロトーク量、つまりスウィングバルブ22とバルブシート24の間隔はステータ44に流す電流値が多くなるほど大きくなる。
一方、ステータ44に流していた電流を遮断すると、ロータ45が反対方向に回転(逆転)して初期位置に戻る。このときのロータ45の回転角に応じてロッド46が図2で右方向にストロークする。ロッド46が図1で左方向にストロークすると、一対のスウィングバルブシャフト25,26を引っ張る。すると、スウィングバルブシャフト25,26が図1で反時計方向に回動し、スウィングバルブ22がバルブシート24に当接してバイパス穴7を塞ぐ。
このように、バルブ22は、シャフト24,25の回転軸(27)と偏心して取り付けられており、ロッド46の動きに合わせスウィングしてバルブシート24に離接するところから、スウィングバルブと呼ばれる。
スウィングバルブ22と連結されているロッド46をモータ43によって連続的にストロークさせることで、ロッドストローク量をステータ44に与える電流値によって可変に制御することができる。
図3はウェイストゲートバルブ21により、つまりロッドストローク量により過給圧を制御する場合のターボ過給機1の過給圧特性である。詳細には、図16に示したように吸気コレクタの圧力が大気圧より高くなる領域(過給域)と吸気コレクタの圧力が大気圧以下となる領域(非過給域)とに分けている。エンジンの運転条件が過給域となったときに、電動アクチュエータ41を介し、ロッドストローク量により過給圧を制御することとなる。
図3に示したように、横軸に過給圧を、縦軸にロッドスロトーク量を採っている。ロッドストローク量が大きくなるほど過給圧が低くなる特性である(図3の破線参照)。これは、ロッドストローク量が大きくなるほどスウィングバルブ22とバルブシート24の間隔が拡大し、タービン3をバイパスして流れる排気の量が増大し、タービン仕事が減少するためである。図3より、ロッドストローク量によって過給圧を連続的に制御することができる。なお、図3ではターボハウジングが暖機状態にあるときを実線で重ねて示しているが、これについては後述する。
図2に示したように、ロッド46の末端(図2で右端)近くには、ロッド46のストローク量を検出するストロークセンサ51(センサ)を備える。このストロークセンサ51からの信号はエンジンコントローラ52に入力され、過給圧のフィードバック信号として用いられる。すなわち、エンジンコントローラ52ではエンジンの運転条件に応じて要求過給圧を算出し、この算出した要求過給圧が得られるように、目標ロッドストローク量を決定する。ここでのエンジンの運転条件は、アクセルセンサ53により検出されるアクセル開度APOとエンジン回転速度センサ54により検出されるエンジン回転速度Neとから定まっている。そして、この目標ロッドストローク量からステータ44に流す電流値を算出し、その電流値をデューティ信号に変換して電流制御装置48に出力する。電流制御装置48では、入力したデューティ信号から電流信号を作ってステータ44に供給する。
一方、エンジンコントローラ52では、ストロークセンサ51を用いてロッド46の初期位置を基準位置として検出する。そして、ロッド46の基準位置を検出した後には、ストロークセンサ51により実際のロッドストローク量を検出する。ストロークセンサ51により検出した実際のロッドストローク量が上記目標ロッドストローク量と一致するようにステータ44に与える電流値を補正することで、過給圧をフィードバック制御する。
さて、スウィングバルブ22はエンジンからの排気が通過する位置に設けられている。冷間状態のエンジンが始動され運転されると、排気がタービン3を流れるため、ターボハウジング2が排気の熱を吸収して膨張する。ターボハウジング2の熱膨張によって、スウィングバルブ22とバルブシート24の当接位置がずれ、ストロークセンサ51によって検出されるロッド46の初期位置がずれ、これによって基準位置の誤検出が生じることを本発明者が新たに見出している。
これを図4,図5で説明すると、図4はスウィングバルブ22とスウィングバルブ22が当接するバルブシート24の部分を示す拡大断面図、図5はストロークセンサ51によるセンシング部分を拡大したモデル図である。図4(A),図5(A)はターボハウジング2が冷機状態にあるときを、図4(B),図5(B)はターボハウジングが暖機状態にあるときを示している。ここで、「ターボハウジングが暖機状態にあるとき」とは、冷間始動時より発生する排気の熱を受けてターボハウジングが熱膨張した後の状態のことである。「ターボハウジングが冷機状態にあるとき」とは、冷間始動時より発生する排気の熱を受けてターボハウジングが熱膨張する前の状態のことである。
ターボハウジング2が冷機状態にあるときにはバルブシート24が図4(A)に示した位置にあったものが、排気の熱を受けてバルブシートを含むターボハウジング2の全体が空間上で全方向に熱膨張する。ただし、図4では、簡略化して一方向(図4で右方向)の熱膨張しか記載していない。この熱膨張の力はスプリング47の付勢力に抗するほどの力を有している。このため、図4(b)に示したようにバルブシート24及びスウィングバルブ22の当接位置が右方向に一定量だけ移動する。これによって、ロッド46もスプリングの付勢力に抗して一定量だけ移動する。
図5に示したように、ストロークセンサ51のセンサ素子51aに対向するロッド46の外周にはロッド位置を示すための目盛りが、例えばロッド軸方向の一方(右方向)に−2,1,0,1,2,3,…と割り振られている。ここでは目盛りの単位は考えない。ターボハウジング2が冷機状態にあるときには図5(A)に示したようにセンサ素子51aに対してロッド46の「0」の目盛りが対向していたとする。そして、ターボハウジング2の熱膨張後には図5(B)に示したようにロッド46の右方向への移動によってセンサ素子51aに対向する目盛りの位置がずれ、「−2」の目盛りがセンサ素子51aに対向したとする。ターボハウジング2の熱膨張によって、ロッド46の初期位置が「2」だけ数値のマイナス側にずれたわけである。なお、厳密にはロッド46も排気熱の影響で熱膨張するのであるが、ターボハウジング2の熱膨張量に比べればロッド46の熱膨張量は格段に小さいとしてロッド46の熱膨張を無視する。
これを図3でみると、ターボハウジング2が冷機状態にあるときの過給圧の特性が破線であったとする。そして、ターボハウジング2が暖機状態になったときには、過給圧の特性がロッド46の初期位置の冷機状態からのずれ分だけ上方に移動し、実線の特性となることを意味する。これは、同じロッドストローク量を与えても、ターボハウジング2が冷機状態にあるときよりもターボハウジング2が暖機状態にあるときのほうが、バルブシート24とスウィングバルブ22の間の間隔が狭くなる分だけ過給圧が高くなってしまうためである。
このため、例えば、ターボハウジング2が冷機状態にあるときの「0」の目盛りをロッドの基準位置として検出して記憶し、ターボハウジング2が暖機状態にあるときに実際のロッドストローク量をストロークセンサ51により検出する。そして、ストロークセンサ51により検出した実際のロッドストローク量から実過給圧を算出したとき、算出した実過給圧が要求過給圧より高くなってしまう。従って、要求過給圧より定まるロッドストローク量を改めて基本ロッドストローク量として、温度補正量を導入し、次式によりロッドストローク指令値を与えることによって、ターボハウジング2に熱膨張があっても精度良く過給圧を制御できることとなる。
ロッドストローク指令値=基本ロッドストローク量+温度補正量…(1)
過給中にはターボハウジング2の熱膨張によりバルブシート24とスウィングバルブ22の間の間隔が狭くなる分だけ過給圧が高くなってしまうであるから、この高くなった過給圧分を減少させるにはロッドストローク量が大きくなる側に補正することである。そこで、温度補正量によってロッドストローク量を大きくする側に補正することで、スウィングバルブ22をバルブシート24からより離れる側に移動させる。スウィングバルブ22がバルブシート24から温度補正量の分だけより離れる側に移動すると、その分だけ過給圧が低下する。これによって、熱膨張に伴う過給圧の上昇分を相殺させるのである。(1)式によれば、ターボハウジング2に熱膨張があっても要求過給圧が得られるわけである。
上記(1)式の温度補正量は、例えばターボハウジング温度から図6のテーブルを検索することにより算出すればよい。図6に示したように温度補正量はターボハウジング温度が上昇するほど大きくなる値である。ターボハウジング温度が上昇するほど、過給中のバルブシート24とスウィングバルブ22の間隔が狭くなる。そこで、その狭くなった間隔分だけロッドストローク量を増大補正することで、ターボハウジング2が膨張する前と同じ間隔が得られるようにするわけである。
さらに、ターボ過給機1を構成している部品のバラツキを考慮すると、フィードバック量を導入して過給圧のフィードバック制御を行うことが必要であるので、上記(1)式に代えて次の式を採用する。
ロッドストローク指令値=基本ロッドストローク量+温度補正量+フィードバック量 …(2)
(2)式のフィードバック量は実過給圧と要求過給圧の差に基づいて算出される値である。ここで、実過給圧は、ストロークセンサ51により検出される実際のロッドストローク量から算出することとなる。
この場合に、過給圧のフィードバック制御を精度良く行うためには、ターボハウジング2が冷機状態にあるときに、ロッド46の初期位置を基準位置として検出することが必要である。これは、ターボハウジング2が暖機状態にあるときにロッド46の初期位置を基準位置として検出したのでは、ストロークセンサ51により検出される実過給圧に誤検出が生じるためである。ストロークセンサ51により検出される過給圧が実際の過給圧からずれ、フィードバック量を精度良く与えることができなくなるのである。
これについて図7,図8を参照して説明する。図7,図8はターボハウジング2が暖機状態にあるときにロッド46の初期位置を基準位置として検出したあとに実際のロッドストローク量をストロークセンサにより検出し、その検出したロッドストローク量から実過給圧を算出する場合を図解している。
ターボハウジング2が暖機状態にあるときには、図7(A)に示したように、センサ素子51aがロッド46の初期位置で「−2」の位置に対向しているとする。図7(A)は、図5(B)を改めて示すものである。ここで、ロッド46の「初期位置」とは、前述したようにスウィングバルブ22とバルブシート24が当接しているときのロッド46の位置のことである。このときに、ロッド46の初期位置である「−2」を基準位置として検出するといっても、実際には「−2」の位置を基準位置とするのではなく、「−2」の位置を改めてデフォルト値である「0」の基準位置とすることとなる。これは、ターボハウジング2が冷機状態にあることを前提とする限り、ロッド46の初期位置は必ず「0」にあるとみなし、同じ「0」をロッド46の基準位置としているためである。これを逆にいうと、ターボハウジング2が暖機状態にあることによってロッドの初期位置が「−2」となっていても、ロッド46の初期位置は「0」にあるとみなし、デフォルト値である「0」をロッド46の基準位置とするわけである。
このことは、図7(B)に示したように「−2」の位置をデフォルト値である「0」の位置に置き換えることを意味する。つまり、ターボハウジング2が冷機状態で基準位置を検出したときには−2,−1,0,1,2,3,4,5,6,…であった目盛りが、図7(B)のように0,1,2,3,4,5,6,7,8の目盛りに置き換えられるわけである。そして、過給域で目標ロッドストローク量を「4」としてロッド46をストロークした場合に、この置き換え後の目盛りを用いるとき、図7(C)に示したように置き換え後の「4」の位置にセンサ素子51aが対向する。
目盛りを置き換えたときに、過給域でどのように過給圧が検出されるのかを見るため、図8に示したように、縦軸に置き換え前の目盛りと、置き換え後の目盛りとを並べて示す。図8よりターボハウジング2の冷機状態で基準位置を検出した場合には置き換え前の目盛りを用いるので、ストロークセンサ51により検出されるロッドストローク量が「4」であるとき、過給圧はB1である。一方、ターボハウジング2の暖機状態で基準位置を検出した場合には置き換え後の目盛りを用いる。置き換え後の目盛りによれば、ストロークセンサ51により検出されるロッドストローク量が「4」であるとき、過給圧はB2となり、実際の過給圧(B1)よりも高いと誤検出されることとなる。さらに述べると、ターボハウジング2が冷機状態のときにロッド46の初期位置は「0」にあるので、デフォルト値である「0」を基準位置として、過給域でストロークセンサ51によりロッドストロークを検出する限り、実過給圧の検出に誤検出が生じることはない。一方、ターボハウジング2が暖機状態のときにロッド46の初期位置は「−2」にあるのに、「−2」の位置を「0」の基準位置としてしまい、過給域でストロークセンサ51によりロッドストロークを検出するのでは、実過給圧の検出に誤検出が生じてしまうのである。
こうした実過給圧の検出における誤検出を回避するためには、ターボハウジング2が冷機状態にあるときのロッド46の初期位置を基準位置として検出することが必要となる。つまりは、ロッド46の初期位置を基準位置として検出するタイミングをターボハウジング2が冷機状態にあるときのタイミングとするのである。
そこで、次の〈1〉〜〈3〉のように、ターボハウジング2が冷機状態にあるか否かを判定することが考えられる。次の〈1〉〜〈3〉でターボハウジング2が冷機状態にあることを判定したとき、ロッド46の初期位置を基準位置として検出するのである。
〈1〉ターボハウジング2の温度を検出する温度センサを設け、この温度センサにより検出されるターボハウジング温度と冷機判定温度を比較し、ターボハウジング温度が冷機判定温度以下になったらターボハウジングが冷機状態になったと判定する。
〈2〉エンジン再始動からの経過時間からターボハウジング温度を推定し、この推定したターボハウジング温度に基づいてターボハウジング2が冷機状態にあるか否かを判定する。例えば、図15に示したように、エンジン再始動からの経過時間が長くなるほどターボハウジング温度が低下していく特性を予め求めておく。そして、エンジン再始動からの経過時間から図15を内容とするテーブルを検索することにより、ターボハウジング温度を算出する。算出したターボハウジング温度と冷機判定温度を比較し、ターボハウジング温度が冷機判定温度以下になったらターボハウジングが冷機状態になったと判定する。
〈3〉エンジンの冷却水の温度(この温度を、以下単に「水温」という。)を水温センサにより検出し、検出した水温と冷機判定水温を比較し、水温が冷機判定水温以下になったらターボハウジングが冷機状態になったと判定する。
しかしながら、エンジンの運転条件の相違であるとか、エンジンを使用する環境条件(標高、季節)の相違であるとか、エンジン、ターボ過給機の個体差であるとかによってターボハウジング温度の特性及び水温の特性にバラツキが生じる。このため、上記〈1〉のように温度センサにより検出したターボハウジング温度に基づいてターボハウジング2が冷機状態にあるか否かを精度良く判定しようとすると、判定方法が複雑になり得る。また、ターボハウジング2の温度を検出する温度センサを、ターボハウジング2に設けるスペースを採れないことがある。ターボハウジング2の温度を検出する温度センサを設けることは、その分コストアップとなって跳ね返る。
上記〈2〉のようにエンジン再始動からの経過時間からターボハウジング温度を推定しようとすると、相違する運転条件毎にあるいは相違する環境条件毎に図15に示した内容のテーブルを作成する必要があり、適合工数が増加する。
上記〈3〉のように水温センサにより検出した水温に基づいてターボハウジング2が冷機状態にあるか否かを判定しようとすると、エンジン冷却水は冷機状態にあっても、ターボハウジング2が暖機状態にある場合に誤判定を生じてしまう。
そこで、本発明の第1実施形態では、ターボハウジング温度や、今回のエンジンの運転時における水温に基づかない方法で、ターボハウジング2が冷機状態にあるか否かを簡易に判定する。すなわち、前回のエンジン運転時にエンジンの冷却水が暖機状態にあり、かつ今回のエンジン運転時にエンジンの冷却水が冷機状態にあるときにターボハウジング2が冷機状態にあると判定する。ここで、エンジンの冷却水は、ターボハウジング2よりも熱容量が大きい流体であってエンジンの暖機程度に応じて温度変化する流体である。例えば、冷間始動時からエンジンの冷却水は温度上昇して、エンジン暖機完了後の温度に落ち着く。また、その後にエンジンを停止した後には、エンジンの冷却水は温度低下し、最終的に大気温度に落ち着く。このようにエンジンの冷却水はエンジンの暖機程度に応じて温度上昇したり温度低下したりする流体である。なお、後述するエンジンの潤滑油やトランスミッションの潤滑油も、ターボハウジング2よりも熱容量が大きい流体であってエンジンの暖機程度に応じて温度変化する流体である。
これをさらに図9を参照して説明すると、冷間状態からエンジンを始動して運転し、その後にエンジンを停止し、その後にエンジンを再始動して運転する場合に、水温とターボハウジング温度がどのように変化するのかを上下に並べて示している。横軸には時間を採っている。上段の水温に対しては、冷機判定水温と暖機判定水温を予め設定している。ターボハウジング温度に対しても冷機判定温度と暖機判定温度を設定する。
t1のタイミングでイグニッションスイッチ57をOFFからONに切換え、冷間状態のエンジンを始動したとする。ターボハウジング2の熱容量はエンジン冷却水の有する熱容量に比較すれば相対的に小さい。このためエンジン始動後の排気の熱を受けると、ターボハウジング温度が水温よりも先に上昇し、t3のタイミングでターボハウジング温度が暖機判定温度を超える。一方、水温はターボハウジング温度の上昇に遅れて上昇し、t5のタイミングで暖機判定水温を超える。この結果、エンジンが暖機判定されるt5のタイミングでは、ターボハウジング2は必ず暖機状態にあるといえる。
エンジン、ターボハウジング2とも暖機完了した後のt6のタイミングで、イグニッションスイッチ57をONからOFFに切換え、エンジンの運転を停止する。エンジンの運転停止より水温、ターボハウジング温度が低下していく。この場合にも、ターボハウジング2の熱容量がエンジン冷却水の有する熱容量に比較すれば相対的に小さい。このため、ターボハウジング温度が水温よりも先に低下し、t8のタイミングでターボハウジング温度が冷機判定温度を下回る。例えばイグニッションスイッチ57のONからOFFへの切換タイミングより2時間程度が経過すれば50℃程度まで低下する。一方、水温はターボハウジング温度の下降に遅れて下降し、t9のタイミングで冷機判定温度を下回る。この結果、エンジンが冷機判定されるt9のタイミングでは、ターボハウジング2は必ず冷機状態にあるといえる。
t10のタイミングでイグニッションスイッチ57を再びOFFからONに切換えてエンジンを再始動したときには、ターボハウジング2が冷機状態にあるので、ストロークセンサ51によるロッド46の基準位置の検出を許可する。
ターボハウジング温度が冷機判定温度を横切ったt8のタイミングや水温が冷機判定水温を横切ったt9のタイミングでロッド46の基準位置の検出を許可するのではなく、t10の再始動のタイミングまで遅らせる理由は次の通りである。すなわち、上記のように運転条件の相違であるとか、環境条件の相違であるとか、個体差であるとかによってターボハウジング2の温度特性及び水温の特性にバラツキが生じる。こうしたバラツキの影響を受けないようにするには、例えば上記〈1〉の場合、判定方法が複雑になり得る。そこで、前回のエンジンの運転時にエンジン冷却水が暖機状態を経験したこと及び今回のエンジンの運転時にエンジン冷却水が冷機状態にあることの組み合わせでターボハウジング2が冷機状態にあることを判定するようにしたものである。ここで、「前回のエンジンの運転時」とは前回にイグニッションスイッチ57をOFFからONに切換えてエンジンの運転を開始したタイミングから、その後にイグニッションスイッチ57をONからOFFに切換えてエンジンの運転を停止したタイミンミングまでのことをいう。「今回のエンジンの運転時」とは今回にイグニッションスイッチ57をOFFからONに切換えてエンジンの運転を開始したタイミングから、その後にイグニッションスイッチ57をONからOFFに切換えてエンジンの運転を停止するタイミンミングまでのことをいう。
言い換えると、前回のエンジンの運転時にエンジン冷却水が暖機状態を経験したことは前回の運転履歴に、今回のエンジンの運転時にエンジン冷却水が冷機状態にあることは今回の運転履歴に含まれる。このように前回の運転履歴との組み合わせでターボハウジング2が冷機状態にあるか否かを判定することとしたのは、次の理由からである。すなわち、今回の運転履歴だけでターボハウジング2の冷機状態の判定を行うとすれば誤判定を生じてしまうためである。
これについて説明すると、図9においてエンジンの冷間始動直後でかつt4より前のタイミングでイグニッションスイッチ57がONからOFFに切換えられるときには、ターボハウジング温度は暖機判定温度を超えているのに、水温は冷機判定水温に達していない。その直後にイグニッションスイッチ57がOFFからONに切換えられてエンジンが再始動された場合、水温は冷機判定水温未満にある。この場合に、前回の運転履歴無しで、水温からターボハウジング2の冷機状態を判定するとすれば、エンジンの冷却水が冷機状態にあるので、ターボハウジング2も冷機状態にあると誤判定される。これによって、再始動後直ぐにストロークセンサ51によるロッド46の基準位置の検出が許可される。しかしながら、ターボハウジング温度は暖機判定温度を超えている(ターボハウジング2は暖機状態にある)ので、ロッド46の基準位置の検出に誤検出が生じる。
エンジンコントローラ52で実行される制御を以下のフローチャートに従って説明する。図10のフローはロッド46の基準位置を検出するための処理を記載したメインルーチンである。メインルーチンは8つの操作で構成されている。このうち、ステップ1は前回のエンジンの運転時に行われる操作、ステップ2〜8は今回のエンジンの運転時に行われる操作である。
まず、ステップ1では前回のエンジン運転時にターボハウジング2が暖機状態にあるか否かを判定する。これについては、図11のフロー(図10のステップ1のサブルーチン)により説明する。図11のフローは、ターボハウジング暖機判定フラグfTUHOTを設定するためのもので、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
ステップ11では水温TWと暖機判定水温mTUTWHOTを、ステップ12ではエンジンの潤滑油の油温(以下では、単に「油温」ともいう。)TOILと暖機判定油温mTUTOHOTを比較する。上記の暖機判定水温mTUTWHOT及び暖機判定油温mTUTOHOTは、予め設定しておく。上記の水温TWは水温センサ55により、上記の油温TOILは、エンジンの潤滑油を循環させる油通路に設けてある油温センサ56により検出する。
水温TWが暖機判定水温mTUTWHOTを超えており、かつ油温TOILが暖機判定油温mTUTOHOTを超えているときにはターボハウジング2が暖機状態にあると判断する。このときにはステップ13に進み、ターボハウジング暖機判定フラグfTUHOT=1とする。
一方、ステップ11,12で水温TWが暖機判定水温mTUTWHOT以下であるかまたは油温TOILが暖機判定油温mTUTOHOT以下であるときにはターボハウジング2が暖機状態にないと判断する。このときにはステップ14に進み、ターボハウジング暖機判定フラグfTUHOT=0とする。
このようにして設定したターボハウジング暖機判定フラグfTUHOTの値は、その後にエンジンが停止されても消失しないように不揮発性メモリに記憶する。
図11のフローでは、水温TW及び油温TOILがともに暖機判定温度を超えているときに、ターボハウジング2が暖機状態にあると判断したが、この場合に限られるものでない。例えば、水温TWと油温TOILのいずれか一方が暖機判定温度を超えているときに、ターボハウジング2が暖機状態にあると判断することであってよい。
また、油温はエンジンの潤滑油の油温に限られるものでない。エンジンにはトランスミッションが連結されている。このトランスミッションを潤滑するため、潤滑油をポンプにより循環させている。この場合に、潤滑油の温度が高くなりすぎないように潤滑油の温度を管理するため、トランスミッションの潤滑油の油温を検出するトランスミッション油温センサをトランスミッションに設けている。油温TOILに代えてこのトランスミッション油温センサにより検出されるトランスミッションの潤滑油の油温であってよい。
図10のフローに戻り、ステップ2では今回のエンジン始動時であるか否かをみる。今回のエンジン始動時であるか否かは、イグニッションスイッチ57の信号に基づいて判断すればよい。例えばイグニッションスイッチ57がOFF状態にあれば、今回のエンジン始動時にないと判断する。イグニッションスイッチ57がOFFからONに切換えられたときには今回のエンジン始動時であると判断する。今回のエンジン始動時でない場合にはそのまま今回の処理を終了する。
一方、今回のエンジン始動時である場合にステップ3に進む。ステップ3では、ターボハウジング暖機判定フラグfTUHOT(図11のフローにより設定済み)をみる。ターボハウジング暖機判定フラグfTUHOT=0であるときにはそのまま今回の処理を終了する。
一方、ターボハウジング暖機判定フラグfTUHOT=1であるときにはステップ4に進み、今回のエンジン運転時にターボハウジング2が冷機状態にあるか否かを判定する。これについては、図12のフロー(図10のステップ3のサブルーチン)により説明する。図12のフローは、ターボハウジング冷機判定フラグfTUCLを設定するためのもので、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
ステップ21では水温TWと冷機判定水温mTUTWCLを、ステップ22では油温TOILと冷機判定油温mTUTOCLを比較する。上記の冷機判定水温mTUTWCL及び冷機判定油温mTUTOCLは、予め設定しておく。
水温TWが冷機判定水温mTUTWCLを下回り、かつ油温TOILが冷機判定油温mTUTOCLを下回るときにはターボハウジング2が冷機状態にあると判断する。このときにはステップ23に進み、ターボハウジング冷機判定フラグfTUCL=1とする。
一方、ステップ21,22で水温が冷機判定水温mTUTWCLを以上であるかまたは油温が冷機判定油温mTUTOCL以上であるときにはターボハウジング2が冷機状態にないと判断する。このときにはステップ24に進み、ターボハウジング冷機判定フラグfTUCL=0とする。
このようにして設定したターボハウジング冷機判定フラグfTUCLの値はメモリに記憶しておく。
図10のフローに戻り、ステップ5では、ターボハウジング冷機判定フラグfTUCL(図12のフローにより設定済み)をみる。ターボハウジング冷機判定フラグfTUCL=0であるときにはそのまま今回の処理を終了する。
一方、ターボハウジング冷機判定フラグfTUCL=1であるときにはステップ6に進み、基準位置の検出を許可するか否かを判定する。これについては、図13のフロー(図10のステップ5のサブルーチン)により説明する。図13のフローは基準位置検出許可フラグfTULNを設定するためのもので、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
ステップ31,32でターボハウジング暖機判定フラグfTUHOT(図10のステップ1で設定済み)、ターボハウジング冷機判定フラグfTUCL(図10のステップ3で設定済み)をみる。ターボハウジング暖機判定フラグfTUHOT=1かつターボハウジング冷機判定フラグfTUCL=1であるときにはターボハウジング2が冷機状態にあると判断する。このときにはロッド46の基準位置の検出を許可するためステップ23に進み、基準位置検出許可フラグfTULN=1とする。
一方、ステップ31,32でターボハウジング暖機判定フラグfTUHOT=0またはターボハウジング冷機判定フラグfTUCL=0のときにはターボハウジング2が冷機状態にないと判断する。このときにはロッド46の基準位置の検出を許可しないようにするためステップ24に進み基準位置検出許可フラグfTULN=0とする。
このようにして設定した基準位置検出許可フラグfTULNの値はメモリに記憶する。
図10のフローに戻り、ステップ7では基準位置検出許可フラグfTULN(図13のフローにより設定済み)をみる。基準位置検出許可フラグfTULN=0であるときにはそのまま今回の処理を終了する。
一方、基準位置検出許可フラグfTULN=1であるときにはステップ8に進み、ロッド46の初期位置を基準位置として検出する。これについては、図14のフロー(図10のステップ7のサブルーチン)により説明する。図14のフローはロッド46の基準位置を検出するためのもので、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
ステップ41では、ステータ44に流す電流をゼロとし、ステップ42でステータ電流をゼロにしてから一定時間が経過したか否かをみる。一定時間はステータ電流をゼロにしてからスウィングバルブ22がバルブシート24に当接するまでの時間に余裕代を加算した値で、予め設定しておく。ステータ電流をゼロにしてから一定時間が経過しない間は、スウィングバルブ22がバルブシート24に当接していない、従ってロッド46が初期位置に戻っていないと判断し、そのまま今回の処理を終了する。
ステップ42でステータ電流をゼロにしてから一定時間が経過したときには、ステータ電流をゼロにしたことによってスウィングバルブ22をバルブシート24に当接し、ロッド46が初期位置に戻ったと判断する。このときにはステップ43に進み、ストロークセンサ51により、スウィングバルブ22がバルブシート24と当接しているときのロッド位置、つまり初期位置をロッド46の基準位置として検出しメモリに取り込む(学習する)。
これで、ロッド46の基準位置の検出・記憶を終了するので、ステップ44,45,46では次回のロッド46の基準位置の検出に備えるため、3つのフラグfTUHOT、fTUCL、fTULNをゼロに切換える。
このあと、今回のエンジンの運転時に図10のステップ1の操作を行い、ターボハウジング2が暖機状態にあることを判定したら、ターボハウジング暖機判定フラグfTUHOT=1とする。次回のエンジンの運転時に、図10のステップ2〜8の操作を行う。ステップ2,3,5,7の全ての条件が成立すれば、ステップ8で基準位置の検出及び記憶を行う。このようにして、ロッド46の基準位置を定期的に検出する。これで図10のフローの説明を終了する。
図10のフローで設定されるターボハウジング暖機判定フラグfTUHOTとターボハウジング冷機判定フラグfTUCLの2つのフラグを図9に重ねて記載している。図9に示したように、ターボハウジング暖機判定フラグfTUHOTはt5のタイミングでゼロから1に切換わり、ターボハウジング冷機判定フラグfTUCLはt10のタイミングでゼロから1に切換わる。すると、t10のタイミングで基準位置検出許可フラグfTULNがゼロから1に切換わる。一定時間経過後のt11のタイミングでロッド46の基準位置が検出されると、上記ターボハウジング暖機判定フラグfTUHOTとターボハウジング冷機判定フラグfTUCLの2つのフラグが1からゼロに切換わる。
本実施形態では、前回のエンジン運転時に冷却水及びエンジン潤滑油の両方が暖機状態にあるときにターボハウジング2が暖機状態にあると判定している。これによって、前回のエンジン運転時に冷却水とエンジン潤滑油のいずれかが暖機状態にあるときにターボハウジング2が暖機状態にあると判定する場合より、基準位置の検出の機会が制限されることとなる。また、今回のエンジン運転時に冷却水及びエンジン潤滑の両方が冷機状態にあるときにターボハウジング2が冷機状態にあると判定している。これによって、今回のエンジン運転時に冷却水とエンジン潤滑油のいずれかが冷機状態にあるときにターボハウジング2が冷機状態にあると判定する場合より、基準位置の検出の機会が制限されることとなる。つまり、基準位置の検出の機会を絞ることで、基準位置の検出精度を確保しているのである。
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態のエンジンの制御装置は、ターボハウジング2と、タービン3及びコンプレッサ4と、バルブシート24と、スウィングバルブ22(バルブ)と、電動アクチュエータ41(アクチュエータ)とで構成されるターボ過給機を備える。上記タービン3及びコンプレッサ4はターボハウジング2内に収納されている。上記バイパス穴7はターボハウジング2に設けられタービン3に流入する排気を、タービン3をバイパスして流す。上記バルブシート24はバイパス穴7の周囲に設けている。上記バルブ22はバルブシート24に対向しバイパス穴7の上流側からストロークすることによってバルブシート24との間隔を調整し得る。上記電動アクチュエータ41は一方向に伸び出すか縮むことによってスウィングバルブ22をスウィングさせるロッド46のストローク量を可変に調整し得る。本実施形態のエンジンの制御装置は、さらにストロークセンサ51(センサ)と、基準位置検出手段(52)を備える。上記ストロークセンサ51はロッド46のストローク量を検出する。上記基準位置検出手段(52)は、ターボハウジング2が冷機状態にあることを判定したときにスウィングバルブ22をバルブシート24に当接させた状態とし、当接させた状態でのロッド46の位置を基準位置としてストロークセンサ51により検出する。スウィングバルブ22はバルブシート24に当接することによってバイパス穴7を遮断しているため、スウィングバルブ22がバルブシート24に当接している状態でのロッド46の位置がターボハウジング2の熱膨張によって変化する。一方、本実施形態では、ターボハウジング2が冷機状態にあることを判定したときにスウィングバルブ22をバルブシート24に当接させた状態とし、当接させた状態でのロッド46の位置を基準位置としてストロークセンサ51により検出する。これによって、ターボハウジング2が熱膨張する前の、スウィングバルブ22がバルブシート24に当接している状態でのロッド46の位置を検出することが可能となり、基準位置の誤検出を防止することができる。
本実施形態では、前記ターボハウジングの温度を検出する温度センサを設け、前記温度センサからの信号に基づいて前記ターボハウジングが冷機状態にあることを判定する。これによって、ターボハウジングの温度を検出する温度センサを設けることができる場合に、過給圧を精度良くフィードバック制御することができる。
本実施形態では、エンジン始動からの経過時間からターボハウジング温度を推定し、この推定したターボハウジング温度に基づいて前記ターボハウジングが冷機状態にあることを判定する。これによって、エンジン始動からの経過時間からターボハウジング温度を推定することができる場合に、過給圧を精度良くフィードバック制御することができる。
今回のエンジン運転時にエンジン冷却水及びエンジン潤滑油が冷機状態にあるからといって、ターボハウジング2が冷機状態にあるとは限らず、ターボハウジン2が暖機状態にあることがある。このため、今回のエンジン運転時にエンジン冷却水及びエンジン潤滑油が冷機状態にあることだけからターボハウジン2が冷機状態にあるか否かを判定するのでは、誤判定が生じ得る。改めて考えてみると、前回のエンジン運転時にエンジン冷却水及びエンジン潤滑油(ターボハウジング2よりも熱容量が大きい流体であってエンジンの暖機程度に応じて温度変化する流体)が暖機状態にあればターボハウジング2も暖機状態にある。また、今回のエンジン運転時にエンジン冷却水及びエンジン潤滑油が冷機状態にあればターボハウジング2も冷機状態にある。そこで本実施形態では、前回のエンジン運転時にエンジン冷却水及びエンジン潤滑油が暖機状態にあり、かつ今回のエンジン運転時にエンジン冷却水及びエンジン潤滑油が冷機状態にあるときにターボハウジング2が冷機状態にあると判定する。これによって、前回のエンジン運転時の履歴を組み合わせているので、今回のエンジン運転時にエンジン冷却水及びエンジン潤滑油が冷機状態にあることだけからターボハウジン2が冷機状態にあるか否かを判定することに伴う誤判定を回避できる。また、本実施形態では、ターボハウジング温度を直接検出できない場合や、エンジン始動からの経過時間からターボハウジング温度を推定することができない場合においても、ターボハウジングが冷機状態にあることを判定できる。
本実施形態では、前記流体がエンジン冷却水である。つまり、前回のエンジン運転時にエンジン冷却水が暖機状態にあり、かつ今回のエンジン運転時にエンジン冷却水が冷機状態にあるときにターボハウジング2が冷機状態にあると判定する。これによって、ターボハウジング2だけ暖機されていてエンジン冷却水は冷機状態にある場合に、ターボハウジング2が冷機状態にあるとの誤判定を回避できる。
本実施形態では、前記流体がエンジンの潤滑油である。つまり、前回のエンジン運転時にエンジンの潤滑油が暖機状態にあり、かつ今回のエンジン運転時にエンジンの潤滑油が冷機状態にあるときにターボハウジング2が冷機状態にあると判定する。これによって、ターボハウジング2だけ暖機されていてエンジンの潤滑油は冷機状態にある場合に、ターボハウジング2が冷機状態にあるとの誤判定を回避できる。
本実施形態では、トランスミッションを備える場合に、前記流体がトランスミッションの潤滑油である。つまり、前回のエンジン運転時にトランスミッションの潤滑油が暖機状態にあり、かつ今回のエンジン運転時にトランスミッションの潤滑油が冷機状態にあるときにターボハウジング2が冷機状態にあると判定する。これによって、ターボハウジング2だけ暖機されていてトランスミッションの潤滑油は冷機状態にある場合に、ターボハウジング2が冷機状態にあるとの誤判定を回避できる。
本実施形態では、過給域になると、基準位置検出手段(52)により検出した基準位置及びストロークセンサ51(センサ)により検出されるロッド46のストローク量に基づいて過給圧をフィードバック制御する過給圧フィードバック制御手段を備える。これによって、過給圧を精度良くフィードバック制御することができる。
実施形態では、バルブシート24に対向しバイパス穴7の上流側からスウィングすることによってバルブシート24との間隔を調整し得るスウィングバルブ22の場合で説明したが、この場合に限られるものでない。例えば、バルブシートに対向しバイパス穴の上流側からストロークすることによってバルブシートとの間隔を調整し得るバルブ(このバルブを「ストレートバルブ」という。)であってよい。
実施形態では、電動アクチュエータの場合で説明したが、この場合に限られるものでない。スウィングバルブ22のスウィング角度またはストレートバルブのストローク量を可変に調整し得るアクチュエータであれば、油圧駆動または空気圧駆動のアクチュエータであってかまわない。
実施形態では、ロッド46のストローク量を検出するストロークセンサ51を設ける場合で説明したが、スウィングバルブ22のスウィング角度を検出する角度センサを設ける場合であってよい。この場合には、温度センサからの信号に基づいてターボハウジングが冷機状態にあることを判定したときにスウィングバルブをバルブシートに当接させた状態とし、当接させた状態でのスウィングバルブの角度を基準角度として角度センサにより検出する。または、前回のエンジン運転時にエンジン冷却水やエンジン潤滑油が暖機状態にあり、かつ今回のエンジン運転時にエンジン冷却水やエンジン潤滑油が冷機状態にあるときにスウィングバルブをバルブシートに当接させた状態とする。そして、当接させた状態でのスウィングバルブの角度を基準角度として角度センサにより検出する。