JP2015214680A - ポリアミド酸組成物およびポリイミド組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】電子基板材料用として有用な、ポリイミド本来の高い耐熱性および機械強度を保ちながら、誘電率および誘電正接が低減されたポリイミド組成物を提供する。
【解決手段】5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダンを含むジアミン成分と、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物を含む酸成分とを重合させることによって得られるポリイミドを含有する電子基板材料用ポリイミド組成物。
【選択図】なし

Description

本発明はポリアミド酸組成物およびポリイミド組成物に関する。より詳細には、電子基板材料用、特に高周波基板材料用として有用なポリアミド酸組成物およびポリイミド組成物に関する。
芳香族ジアミン化合物および芳香族テトラカルボン酸化合物を縮合重合し、さらに硬化(イミド化)して得られる芳香族ポリイミドは、機械強度、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性などに優れているため、電子基板材料の用途で多く利用されているが、近年の電子機器の高速信号伝送に伴う高周波化において、電子基板材料であるポリイミドの低誘電率、低誘電正接化の要求が高まっている。電子回路における信号の伝播速度は基板材料の誘電率の増加に伴って低下し、また信号の伝送損失は誘電率と誘電正接の増加に伴って増大するため、基板材料であるポリイミドの低誘電率化、低誘電正接化は、電子機器の高性能化に不可欠となっており、中でも高周波で利用される通信機器では誘電正接の低減が求められている。
現在電子基板材料として多く用いられているポリイミドとしては、例えば、p−フェニレンジアミン(PDA)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(sBPDA)系ポリイミド(特許文献1)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)−ピロメリット酸二無水物(PMDA)系ポリイミドなどの二成分系ポリイミド(特許文献2)、さらに上記モノマーを任意の比率で共重合した三成分系、四成分系ポリイミド(特許文献3)が挙げられるが、いずれもイミド基の高い極性に起因する比較的高い誘電率および誘電正接を有している。
このようなイミド基の高い極性に起因する、ポリイミドの比較的高い誘電率および誘電正接を低減するという課題に対して、例えば、長鎖骨格をもつモノマーを導入し、単位分子長当りのイミド基数(イミド基濃度)を減少させることで、分子全体の極性を低減し、低誘電率化する方法(特許文献4)や、フッ素の導入および脂肪族環状構造の導入によってポリイミドを低誘電率化する方法(特許文献5)が提案されている。しかし、前者の方法では、脂肪族鎖状構造を多くもつことで、機械強度、耐熱性、耐薬品性、絶縁性などポリイミド本来の特性が低下するという不利な点があり、後者の方法では、フッ素の導入では加熱時のフッ素の脱離による腐食性や有害性、脂肪族環状構造の導入では芳香族環状構造に比べて耐熱性の低下などの不利な点がある。
一方、特許文献6には、5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダンと、テトラカルボン酸二無水物とを縮合重合させて得られる重合体(ポリアミド酸)を含む耐熱性接着剤が開示されているが、このポリアミド酸をイミド化して得られるポリイミドの誘電率および誘電正接の記載はなく、電子基板材料用、特に高周波基板材料用として有用であるか否かについても知られていなかった。
特公昭60−42817号公報 特公昭36−10999号公報 特許第3687044号公報 特開2007−106891号公報 特開2006−71783号公報 特開昭62−50374号公報
そこで、本発明は、電子基板材料用として有用な、ポリイミド本来の高い耐熱性および機械強度を保ちながら、誘電率および誘電正接が低減されたポリイミド組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、長鎖分子でありながら分子構造中に芳香族環および脂肪族環の両方を有する5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダンを含むジアミン成分と、長鎖分子の酸モノマーである2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物を含む酸成分とを用いて得られるポリイミド組成物が、ポリイミド本来の高い耐熱性および機械強度を保ちながら、誘電率および誘電正接が低減されたポリイミド組成物であり、電子基板材料用、特に高周波基板材料用として有用であることを知得した。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(9)を提供する。
(1) 5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダンを含むジアミン成分と、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物を含む酸成分とを重合させることによって得られるポリアミド酸を含有する電子基板材料用ポリアミド酸組成物。
(2) 5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダンを含むジアミン成分と、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物を含む酸成分とを重合させることによって得られるポリイミドを含有する電子基板材料用ポリイミド組成物。
(3) (1)に記載のポリアミド酸組成物を硬化させて得られる、電子基板材料用ポリイミド組成物。
(4) 周波数1GHzにおける比誘電率が3.0以下である、(2)または(3)に記載のポリイミド組成物。
(5) 周波数1GHzにおける誘電正接が0.005以下である、(2)〜(4)のいずれか1項に記載のポリイミド組成物。
(6) 高周波基板材料用である、(4)または(5)に記載のポリイミド組成物。
(7) (2)〜(6)のいずれかに記載のポリイミド組成物からなるフィルムを有する電子基板。
(8) (4)〜(6)のいずれか1項に記載のポリイミド組成物からなるフィルムを有する電子基板。
(9) (2)〜(6)のいずれか1項に記載のポリイミド組成物からなるポリイミドフィルム上に、(1)に記載のポリアミド組成物を含有する接着剤層を有するカバーレイフィルム。
本発明によれば、電子基板材料用として有用な、ポリイミド本来の高い耐熱性および機械強度を保ちながら、誘電率および誘電正接が低減されたポリイミド組成物を提供することができる。
本発明のポリアミド酸組成物および本発明のポリイミド組成物は、高い耐熱性および機械強度と、低い誘電率および誘電正接とを実現したものであり、電子基板材料用、特に高周波基板材料用として有用な組成物である。
本発明のポリアミド酸組成物およびポリイミド酸組成物について、以下に詳細に説明する。
[ポリアミド組成物]
本発明のポリアミド酸組成物は、5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダンを含むジアミン成分と、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物を含む酸成分とを重合させることによって得られるポリアミド酸を含有する電子基板材料用ポリアミド酸組成物である。
5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダンは、芳香族環状構造および脂肪族環状構造の両方を有する長鎖分子であることから、ポリイミドの高い耐熱性、機械強度を維持しつつ、誘電率、誘電正接を低下させることができる。また、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物は、ポリイミドに高い機械強度、耐熱性、耐薬品性および電気絶縁性を付与することができる。5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダンを含むジアミン成分と、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物を含む酸成分とを用いることによって得られるポリイミドは、耐熱性および機械特性に優れ、しかも誘電率および誘電正接を低減させることができる。
本発明のポリアミド酸組成物において、ジアミン成分は、5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダンに加えて、それ以外のジアミン化合物をさらに含むことができる。
5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダン以外のジアミン化合物としては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下「ODA」という場合がある。)、1,4−フェニレンジアミン(p−フェニレンジアミン、以下「PDA」という場合がある。)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下「BAPP」という場合がある。)等の芳香族ジアミン;1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の直鎖型脂肪族ジアミン;1,2−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン、1,3−ジアミノ−2−メチルプロパン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ジアミノペンタン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン等の分枝型脂肪族ジアミン;5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,5(6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ジアミノアダマンタン、3,3’−ジアミノ−1,1’−ビアダマンチル、1,6−ジアミノアダマンタン等の脂環式ジアミン;などが挙げられる。5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダン以外のジアミン化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
ジアミン成分中の5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダンの含有量は、ポリイミド組成物の耐熱性および機械強度を高く維持しつつ、誘電率および誘電正接を低減させるという観点から、50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。
本発明のポリアミド酸組成物において、酸成分は、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物に加えて、それ以外のポリカルボン酸無水物をさらに含むことができる。
2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物以外のポリカルボン酸化合物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(sBPDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)等の芳香族テトラカルボン酸二酸無水物が挙げられる。2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物以外のポリカルボン酸化合物は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
酸成分中の2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物の含有量は、誘電率および誘電正接の低減の観点から、50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。
また、ジアミン成分と酸成分との量は、重合物の分子量を十分に高めるために、ジアミン成分が有するアミノ基に対して酸成分が有する酸無水物基が、0.9当量以上であることが好ましい。
本発明のポリアミド酸組成物は、さらに溶媒を含有してもよい。溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等が挙げられるが、溶解するものであれば特に制限されない。溶媒は1種類を単独で、または2種類以上を混合して使用することができる。
本発明のポリアミド酸組成物の製造方法は、5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダンを含むジアミン成分と、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物を含む酸成分とを重合させる工程を備える。
ジアミン成分と酸成分との重合は、例えば、ジアミン成分と酸成分とを、ジアミン成分の合計と酸成分の合計とがほぼ等モルとなる量で溶媒に添加し、その溶媒中でジアミン成分と酸成分とを重合することによって行われる。溶媒には、ジアミン成分および酸成分に加えて、さらに後述する添加剤を添加してもよい。
ジアミン成分と酸成分とを重合させる条件は特に制限されない。例えば、N,N−ジメチルアセトアミド(溶媒)に、ジアミン成分および酸成分を添加して得られた混合物を、80℃以下の温度条件下で、大気下や窒素雰囲気化で撹拌し、反応させて、ポリアミド酸の溶液(ポリアミド酸組成物)を製造する方法が挙げられる。
上記製造方法によって得られるポリアミド酸組成物は、溶媒中に10〜30質量%の割合(濃度)でポリアミド酸を含有するように調製することが好ましい。
本発明のポリアミド酸組成物は、電子基板材料用、特に高周波基板材料用のワニスとして使用することができる。
本発明のポリアミド酸組成物に含有されるポリアミド酸(本発明のポリアミド酸)は、下記式(I)で表される繰返し単位を有する。
ポリアミド酸はその分子構造について特に制限されない。例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体が挙げられる。
本発明のポリアミド酸組成物は、本発明のポリアミド酸を1種類のみ含有してもよいし、2種類以上を含有してもよい。
本発明のポリアミド酸組成物には、さらに添加剤を含有してもよい。添加剤としては、ポリアミド酸を脱水・環化(イミド化)させてポリイミドに転化するために使用される、脱水剤、触媒等が挙げられる。
脱水剤としては、例えば、無水酢酸等の脂肪族カルボン酸無水物、フタル酸無水物等の芳香族カルボン酸無水物等が挙げられる。脱水剤は、1種類を単独で、または2種類以上を混合して使用することができる。
触媒としては、例えば、ピリジン、ピコリン、キノリン等の複素環式第三級アミン類;トリエチルアミン等の脂肪族第三級アミン類;N,N−ジメチルアニリン等の芳香族第三級アミン類;などが挙げられる。触媒は、1種類を単独で、または2種類以上を混合して使用することができる。
本発明のポリアミド酸組成物は、電子基板材料用、特に高周波基板材料用のポリイミド組成物の前駆体として有用である。
また、本発明のポリアミド酸組成物は、フレキシブルプリント回路基板(FPC基板)等に用いるカバーレイフィルムの接着剤層を構成する材料としても有用である。カバーレイフィルムの接着剤層を構成する方法としては、例えば、ポリアミド酸組成物をポリイミドフィルムの表面に付与し、溶媒を除去してフィルムを形成する方法が挙げられる。
本発明のポリアミド酸組成物を硬化させることにより、後述するポリイミド組成物を製造することができる。
[ポリイミド組成物]
本発明のポリイミド組成物は、5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダンを含むジアミン成分と、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とを重合させることによって得られるポリイミドを含有する電子基板材料用ポリイミド組成物である。
上記ジアミン成分および上記酸成分は、本発明のポリアミド酸組成物について説明したものと同様である。
本発明のポリイミド組成物の製造方法は、5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダンを含むジアミン成分と、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物を含む酸成分とを重合させる工程を備える。
ジアミン成分と酸成分との重合は、例えば、ジアミン成分と酸成分とを、ジアミン成分の合計と酸成分の合計とがほぼ等モルとなる量で溶媒に添加し、その溶媒中でジアミン成分と酸成分とを重合することによって行われる。溶媒には、ジアミン成分および酸成分に加えて、さらに前述した添加剤を添加してもよい。
本発明のポリイミド組成物は、溶媒中でジアミン成分と酸成分とを直接重合させて製造してもよいし、本発明のポリアミド酸組成物または本発明のポリアミド酸を脱水・環化(イミド化)させて製造してもよい。
ポリアミド酸を脱水・環化させてポリイミドに転化する方法としては、例えば、脱水剤と触媒を用いて脱水する化学閉環法、熱的に脱水する熱閉環法があり、これらのうちの一方によって、またはこれらの両方を併用して行ってもよい。化学閉環法で使用する脱水剤および触媒は、前述したものと同様である。
熱閉環法では、加熱温度としては、通常100〜400℃、好ましくは200〜350℃、さらに好ましくは250〜300℃の範囲を任意に選択することができる。また、加熱時間は、通常、1分〜6時間、好ましくは5分〜2時間、さらに好ましくは15分〜1時間である。加熱雰囲気は、特に限定されないが、硬化して得られるポリイミドの表面の着色を抑えるという観点から、窒素ガス雰囲気、窒素/水素混合ガス雰囲気等の不活性雰囲気が好ましい。
具体的には、例えば、ポリアミド酸組成物のフィルムを高温に加熱してポリイミド組成物(ポリイミド)のフィルムを製造することができる。化学閉環法を併用してもよい。
ポリアミド酸組成物からポリイミド組成物(ポリイミド)のフィルムを形成する際の溶媒の除去およびイミド化のための加熱が連続して行われてもよく、また、溶媒除去およびイミド化が同時に行われてもよい。
ポリイミド組成物(ポリイミド)を溶媒に溶解することで、ポリイミド溶液(ワニス)を得ることができる。また、ポリアミド酸溶液をそのまま加熱または触媒の添加で脱水、イミド化することで、ポリイミド溶液を得ることができる。
ポリイミド溶液を水やメタノールなどの貧溶媒中に滴下・癒過することで、ポリイミド粉末を得ることができる。
上記ポリイミド溶液(ワニス)を上記基板上に流延・乾燥することで、ポリイミドフィルムを作製することもできる。また、ポリイミド粉末を加熱圧縮することでポリイミドの成型体を形成することができる。
本発明のポリイミド組成物に含有されるポリイミド(本発明のポリイミド)は、下記式(II)で表される繰り返し単位を有する。
本発明のポリイミドはその分子構造について特に制限されない。例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体が挙げられる。
本発明のポリイミド組成物は、本発明のポリイミドを1種類のみ含有してもよいし、2種類以上を含有してもよい。
本発明のポリイミド組成物の機械強度としては、引張弾性率が1.8GPa以上であるか、または引張強度が75MPa以上であることが好ましい。ここで、引張弾性率および引張強度は、JIS K 7127:1999(ISO 527−3:1995)に準拠して測定した値である。
本発明のポリイミド組成物の耐熱性としては、ガラス転移温度が220℃以上であることが好ましい。ここで、ガラス転移温度は、JIS K 7244−1:1998(ISO 6721−1:1994)に準拠して測定した値である。
本発明のポリイミド組成物の誘電特性としては、周波数1GHzにおける比誘電率が3.0以下であるか、または周波数1GHzにおける誘電正接が0.005以下であることが好ましく、周波数1GHzにおける比誘電率が3.0以下であり、かつ、周波数1GHzにおける誘電正接が0.005以下であることがより好ましい。ここで、非誘電率および誘電正接は、JIS C 2565:1992に準拠して測定した値である。
本発明のポリイミド組成物は、高い耐熱性および機械強度を持ち、誘電率および誘電正接が低減されているので、電子基板材料用、特に高周波基板材料用として有用である。
[電子基板、高周波基板]
本発明のポリアミド酸組成物または本発明のポリイミド組成物を用いて、電子基板用、特に高周波基板用のポリイミドフィルム(本発明のポリイミドフィルム)を製造することができる。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、本発明のポリアミド酸組成物を支持体(例えば、ガラス板、ステンレス板、銅板、アルミニウム板等)上に塗布後、乾燥、加熱して脱水・閉環(イミド化)する方法、また、本発明のポリイミドを有機溶媒に溶解した後、ガラス板上に塗布して、脱溶媒する方法等が可能である。これらの支持体への塗布方法は、特に限定されず、従来公知の塗布方法が適用できる。
上記有機溶剤としては、溶解性の観点から非プロトン性極性溶剤が好ましく、具体的には、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられるが、溶解するものであれば特に制限されない。これらは、1種類を単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。また、この場合のポリイミドの含有量は、5〜50質量%の範囲とすることが好ましく、10〜30質量%の範囲とすることがより好ましい。
具体例としては、ガラス板上に塗布されたポリアミド酸組成物は、乾燥温度が50〜150℃、乾燥時間が0.5〜80分間程度で乾燥され、さらに、100〜400℃、好ましくは200〜350℃、さらに好ましくは250〜300℃程度の温度で加熱処理することによりポリイミドフィルムを得ることができる。ポリイミドフィルムの着色を抑制する観点から400℃以下とすることが好ましい。さらに、イミド化をポリイミドフィルムの着色を抑制するために減圧または窒素雰囲気中で行うことが好ましいが、特に高温でない限り空気中で行っても差し支えない。
また、減圧する場合の圧力としては、小さい方が好ましいが、上記加熱条件、水が除去できる圧力であれば特に制限されないが、具体的には、0.09MPa〜0.0001MPa程度である。
このようにして得られたポリイミドフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリアミド酸組成物からポリイミドを製造する際に、他の架橋性樹脂、熱硬化性樹脂等を配合してもよい。また、必要に応じて、グラスファイバー、カーボンダイバー等の無機繊維、酸化安定剤、末端封止剤、フィラ−、シランカップリング剤、感光剤、光重合開始剤及び増感剤等の添加剤を混合してもよい。
こうして得られたポリイミドフィルム上に導電膜を形成し、さらに電子回路を構成したり、高周波回路を構成したりすることにより、電子基板、高周波基板として利用することができる。
以下、実施例により本発明を具体例に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
以下の実施例および比較例で使用している略号はそれぞれ以下の意味を表す。
INDAN: 5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダン
PDA: p−フェニレンジアミン
BAPP: 2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
sBPDA: 3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BPADA: 2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物
DMAc: N,N−ジメチルアセトアミド
(実施例1)
DMAc 400gに、INDAN 46.4gと、BPADA 53.5gとを添加し、常温、大気圧中で3時間撹拌、反応させ、ポリアミド酸溶液を得た。得られたポリアミド酸溶液 15gを、バーコーターを用いてガラス板に塗布し、100℃で20分間、200℃で20分間、300℃で20分間加熱し、約50μm厚のポリイミドフィルムを作製した。
後述する評価方法に従って、作製したポリイミドフィルムの評価試験を行い、表1にその結果を示した。なお、各成分モル比は、全ジアミン成分中および全酸成分中のモル比とする。
(比較例1)
表1に示すとおり、ジアミン成分として、INDANに代えてPDAを使用し、PDAとsBPDAとを、1.0:1.0のモル比で混合した点を除いて、実施例1と同様の手順で、ポリアミド酸溶液を調製し、ポリイミドフィルムを作製した。
後述する評価方法に従って、作製したポリイミドフィルムの評価試験を行い、表1にその結果を示した。
(比較例2)
表1に示すとおり、ジアミン成分として、INDANに代えてBAPPを使用し、酸成分としてsBPDAに代えてBPADAを使用し、BAPPとBPADAとを1.0:1.0のモル比で混合した点を除いて、実施例1と同様の手順で、ポリアミド酸溶液を調製し、ポリイミドフィルムを作製した。
後述する評価方法に従って、作製したポリイミドフィルムの評価試験を行い、表1にその結果を示した。
〈評価方法〉
作製したポリイミドフィルムについて、機械強度(引張弾性率、引張強度)、耐熱性(ガラス転移温度)および誘電特性(誘電率、誘電正接)を評価した。
《機械強度》
JIS K 7127:1999(ISO 527−3:1995)に準拠して、以下の条件で引張弾性率および引張強度を測定した。
測定装置:島津製作所製AGS−J
引張速度:102mm/min
チャック間距離:30mm
《耐熱性》
JIS K 7244−1:1998(ISO 6721−1:1994)に準拠して、以下の条件でガラス転移温度を測定した。
機器:TAインストルメント製DMA Q800
昇温速度: 3℃/min
温度範囲: 50〜450℃
周波数: 1Hz
《誘電特性》
JIS C 2565:1992に準拠して、以下の条件で比誘電率および誘電正接を測定した。
測定装置: AET製誘電率測定装置
測定法: 空洞共振器法
測定周波数: 1GHz
INDANおよびBPADAからなるポリイミド(実施例1)は機械強度、耐熱性および誘電特性のすべてが優れ、特に誘電正接が低い。
これに対して、INDANを含まない一般的なPDA−sBPDA系ポリイミド(比較例1)は、機械強度および耐熱性が高く、優れるものの、誘電率および誘電正接が高く、誘電特性が十分ではない。また、INDANを含まないBAPP−BPADA系ポリイミド(比較例2)は、誘電率および誘電正接が比較的低く、誘電特性が良いものの、機械強度および耐熱性が低く、十分でない。
本発明のポリアミド酸およびポリイミド組成物は、電子機器の基板材料(電子基板材料)、特に、高周波領域で使用される電子機器の基板材料(高周波基板材料)として好適に用いられ、電子機器の高性能化に貢献すると考えられる。

Claims (9)

  1. 5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダンを含むジアミン成分と、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物を含む酸成分とを重合させることによって得られるポリアミド酸を含有する電子基板材料用ポリアミド酸組成物。
  2. 5−(4−アミノフェノキシ)−3−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,3−トリメチルインダンを含むジアミン成分と、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物を含む酸成分とを重合させることによって得られるポリイミドを含有する電子基板材料用ポリイミド組成物。
  3. 請求項1に記載のポリアミド酸組成物を硬化させて得られる、電子基板材料用ポリイミド組成物。
  4. 周波数1GHzにおける比誘電率が3.0以下である、請求項2または3に記載のポリイミド組成物。
  5. 周波数1GHzにおける誘電正接が0.005以下である、請求項2〜4のいずれか1項に記載のポリイミド組成物。
  6. 高周波基板材料用である、請求項4または5に記載のポリイミド組成物。
  7. 請求項2〜6のいずれかに記載のポリイミド組成物からなるフィルムを有する電子基板。
  8. 請求項4〜6のいずれか1項に記載のポリイミド組成物からなるフィルムを有する電子基板。
  9. 請求項2〜6のいずれか1項に記載のポリイミド組成物からなるポリイミドフィルム上に、請求項1に記載のポリアミド組成物を含有する接着剤層を有するカバーレイフィルム。
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