JP2015212252A - ペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物の製造方法 - Google Patents

ペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】不純物が少なく、高収率で且つ、簡便にペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物を製造する方法の提供。【解決手段】(イ)p−イソプロペニルフェノールのオリゴマーを加熱することにより発生するp−イソプロペニルフェノールを、蒸気状で又は凝縮直後に、N,N−ジメチルホルムアミドを用いて接触せしめて捕集し、その液に第三級アミンを加えてp−イソプロペニルフェノール溶液を得る工程と、(ロ)前記のp−イソプロペニルフェノール溶液にヘキサフルオロプロペンのオリゴマーを加えて10℃〜70℃にて反応を行いp−(ペルフルオロアルケニルオキシ)イソプロペニルベンゼン(式1)を得る工程と、を含む塩基性する不純物が少なく、高収率で該化合物を製造する方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物の製造方法に関し、より詳細には、高硬度・耐熱性・耐溶剤性・撥水撥油性・低屈折性等に優れた成形材料、積層板材料、塗料用ビヒクル、撥水・撥油性フィルム、低屈折率フィルム、レンズ等の光学部材、多層反射防止剤、気体・液体透過膜、クロマトグラフ充填剤等の樹脂原料、樹脂改質剤、感光性樹脂の電子材料等の機能性高分子材料、医薬、農薬その他の精密化学品の原料として有用な一般式(1)
Figure 2015212252
(式中、nは2又は3の整数を示す。)
で表されるペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物の製造方法に関する。
ペルフルオロアルケニルアリールエーテル類の製造法として、置換基を有することもあるフェノール類とヘキサフルオロプロペン2量体又は3量体とを塩基性触媒の存在下にて反応させる方法が、一般的に知られている(例えば、英国特許第1143927号、特公昭57−56454号等)。
かかる公知技術をもとに多くの新規化合物の提案もなされ、その中において、ペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物が特異な有用性から期待されている。
該化合物について、特公平6−51653号の実施例に、p−イソプロペニルフェノールとヘキサフルオロプロペン2量体又は3量体とをN,N−ジメチルホルムアミド溶媒中でトリエチルアミン触媒の存在下にて反応させてp−(ペルフルオロアルケニルオキシ)イソプロペニルベンゼンが得られることが記載されている。
そして、かかる原料であるp−イソプロペニルフェノールは、ジヒドロキシジフェニルプロパン(以下、ビスフェノールAという。)を塩基性触媒の存在下に加熱して開裂反応せしめて、その開裂混合物から目的物を減圧下に分留して固形分として得られることが一般に知られている(例えば、英国特許第905994号)。
しかしながら、かかる方法では分留したp−イソプロペニルフェノールは重合しやすく、たとえ冷却した受器にp−イソプロペニルフェノールを捕集しても、非晶質の固体となり生成物中には数十重量%にもなる多量のp−イソプロペニルフェノールの低重合物等の不純物を含有する。そのため、高純度のp−イソプロペニルフェノールを得るには、この分留で得られた固形分からシクロヘキサン、ノルマルヘキサン等の溶剤を用いて再結晶操作して単離する等の工程を要し、工程数が多く、操作が煩雑となり工業的利用には不利である。
又、p−イソプロペニルフェノール製造の改良法として、各種の提案もなされている。
例えば、特開昭50−37736号によれば、ビスフェノールA、p−イソプロペニルフェノールの重合物等を熱分解することにより発生するp−イソプロペニルフェノールを蒸気状でもしくは凝縮直後に、極性溶剤と120℃付近で接触せしめて捕集し、高純度のp−イソプロペニルフェノール捕集液が得られることが開示され、実施例1には、n−オクチルアルコールを用いて32重量%濃度のp−イソプロペニルフェノール捕集液を得た記載がある。しかしながら、該捕集液の常温における安定性に関しては全く開示されていない。本発明者の知見によれば、実施例1に記載の捕集液は、常温におけるp−イソプロペニルフェノールの溶解度を著しく超えた濃度のものであり、該捕集液は常温において固形分が析出してp−イソプロペニルフェノールの重合も進みp−イソプロペニルフェノールの純度が著しく低下して常温における安定性は不良である。該捕集液は、p−イソプロペニルフェノール捕集時点において、分留して得られる固形状物に比し幾分の純度の向上は見られるが、工業的利用における安定性は未だ十分でなく工業的原材料として用いることは難しい。
又、特開昭50−140411号によれば、p−イソプロペニルフェノールが一価もしくは多価アルコールを含有することにより安定化組成物が得られ安定効果を有することが開示され、更に、実施例には、n−オクタノールを用いて濃度25重量%のp−イソプロペニルフェノール安定化組成物を得て60℃−24時間放置安定性試験がなされた記載がある。しかしながら、該組成物の常温における安定性に関しては全く開示されていない。本発明者の知見によれば、かかる実施例に記載の安定化組成物は、該溶媒の常温におけるp−イソプロペニルフェノールの溶解度を著しく超えたものであり、該組成物は常温において固形分が析出してp−イソプロペニルフェノールの重合も進みp−イソプロペニルフェノールの純度が著しく低下して常温のおける安定性は不良である。該組成物は、貯蔵安定性が不良であるばかりでなく、本発明に係る合成反応を常温付近で行うことを要するものにあっては該反応が著しく阻害されるため、合成原料等として工業的に利用することができない。
又、p−イソプロペニルフェノールの安定化組成物に用いる溶媒として一価もしくは多価アルコールが開示されているが、該アルコール類は、p−イソプロペニルフェノールを原料として本発明に係るヘキサフルオロプロペンのオリゴマーからなるフッ素化剤等とともに合成反応に利用する時、合成反応を阻害すること、副生物を生成すること等の障害を惹起するので、該アルコール類を用いたp−イソプロペニルフェノールの組成物を工業的に利用することはできない。
更に、特公昭61−26892号によれば、p−イソプロペニルフェノールおよびp−イソプロペニルフェノールの重合物よりなる混合物、又はp−イソプロペニルフェノールのオリゴマーを塩基性触媒の存在下もしくは不存在下に加熱することにより発生するp−イソプロペニルフェノールを、蒸気状でもしくは凝縮直後に、60℃以上の沸点を有し常温(15℃)において液状の1価又は多価アルコールと接触せしめ、高温で30〜50重量%の濃度を有するp−イソプロペニルフェノール捕集液を得て、該捕集液より再結晶法にて結晶性p−イソプロペニルフェノールを得る方法が開示されている。
かかる再結晶法は、p−イソプロペニルフェノールの生産の工程数が多くなること、煩雑であること、原料ビスフェノールAに対する収率が極めて低く、安価にp−イソプロペニルフェノールを製造することができないこと等から、工業的方法としては不利である。更に、該結晶性固形分は、非晶質の固形分に比して安定性が幾分かは改良されているが、p−イソプロペニルフェノールは極めて反応性が高く固形状になると重合反応を惹起し易く、p−イソプロペニルフェノールのダイマー、トリマー等の低重合物が副生し易い等安定性が悪くなる欠陥を有し、該結晶性固形分は、貯蔵等においてp−イソプロペニルフェノールの純度が著しく低下するため、その改良は未だ十分ではなく、合成原料として工業的に用いることが難しい。又、得られる30〜50重量%の濃度を有するp−イソプロペニルフェノール捕集液は、捕集溶剤の使用量比が少ないためp−イソプロペニルフェノールを蒸気状で捕集する効率が十分でないこと、溶解性が良いとはいえないこと等からp−イソプロペニルフェノールのオリゴマーが生成し易く、該捕集液には副生するオリゴマーを多量に含有し、更に、該濃度の捕集液は、常温で極めて容易に結晶を析出し安定性が良くない。該捕集液は、貯蔵安定性が不良であるばかりでなく、本発明に係る合成反応を常温付近で行うことを要するものにあっては、該反応が著しく阻害されるため、合成原料等として工業的利用が難しい。更に、該方法によれば、該アルコール類を用いて得られるp−イソプロペニルフェノール捕集液について、常温で安定なp−イソプロペニルフェノール捕集液を得るには大量の溶媒を必要とし、p−イソプロペニルフェノールの濃度が著しく低いものしか得ることができない。そのため、該捕集液を反応原料として用いるときには反応目的物の生産性が著しく低下すること、該溶媒の回収に多くの工数を要すること等の工業的利用において大きな妨げになる。
英国特許第1143927号公報 特公昭57−56454号公報 特公平6−51653号公報 英国特許第905994号公報 特開昭50−37736号公報 特開昭50−140411号公報 特公昭61−26892号公報
従来、p−イソプロペニルフェノールのオリゴマーを熱分解させてp−イソプロペニルフェノールを製造することと、p−イソプロペニルフェノールを原料としてヘキサフルオロプロペンのオリゴマーからなるフッ素化剤と反応させてp−(ペルフルオロアルケニルオキシ)イソプロペニルベンゼンを製造することとについて、これら二つの製造は別々に実施されていた。したがって、中間体のp−イソプロペニルフェノールを一旦単離し、引き続き該フッ素化剤との反応に供給されるまでの間にp−イソプロペニルフェノールが重合を起こす傾向があり、該フッ素化剤との反応において高純度の状態でp−イソプロペニルフェノールを供給することが難しかった。そのため、反応生成物のペフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物中へのp−イソプロペニルフェノール重合物の混入や、生成物の純度低下、収率低下を招くという問題があった。
本発明の目的は、不純物が少なく、高収率で且つ、簡便にペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物を製造する方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、p−イソプロペニルフェノールのオリゴマーを熱分解し、生成したp−イソプロペニルフェノールを単離することなくN,N−ジメチルホルムアミドを用いて特定の濃度範囲内で捕集し第三級アミンを添加して、純度が高く且つ安定性に優れたp−イソプロペニルフェノールを含む反応溶液を得ることを見出し、引き続いてヘキサフルオロプロペンのオリゴマーからなるフッ素化剤との合成反応装置に供給することによって、p−イソプロペニルフェノールの重合物の副生を惹起することがなく、その結果、ペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物の純度向上、収率向上、生産性向上、簡便な操作性に寄与することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(イ)p−イソプロペニルフェノールのオリゴマーを塩基性触媒の存在下又は不存在下に加熱することにより発生するp−イソプロペニルフェノールを、蒸気状で又は凝縮直後に、留出するp−イソプロペニルフェノール1重量部に対して2.5〜9.0重量部のN,N−ジメチルホルムアミドを用いて接触せしめてp−イソプロペニルフェノールを捕集し、その液に1.0〜1.5当量(対p−イソプロペニルフェノール当量)の第三級アミンを加えてp−イソプロペニルフェノール溶液を得る工程と、
(ロ)上記(イ)工程で得られたp−イソプロペニルフェノール溶液に一般式(C(式中、mは2又は3の整数を示す。)で表されるヘキサフルオロプロペンのオリゴマーを加えて反応温度10℃〜70℃にて反応を行い
一般式(1)
Figure 2015212252
(式中、nは2又は3の整数を示す。)
で表されるペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物を得る工程と、
を含むことを特徴とするペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物の製造方法である。
本発明の製造方法において用いられるp−イソプロペニルフェノールのオリゴマーとは、重合度が2〜5のp−イソプロペニルフェノールの低重合体を意味する。
該オリゴマーは、公知の方法により、ビスフェノールAを塩基性触媒の存在下に150〜250℃に加熱して得られる混合物からフェノールを留去することにより得られる。
本発明の製造方法において、p−イソプロペニルフェノールのオリゴマーからp−イソプロペニルフェノールを発生させるためには、該オリゴマーを150〜260℃、50〜100mmHgの条件下において加熱し、発生するp−イソプロペニルフェノールを反応系外に留出させることにより行われる。この際、塩基性触媒の存在下に加熱してもよい。かかる塩基性触媒としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらの水酸化物、アルコラート等を用いることができる。これらの触媒の使用量は、p−イソプロペニルフェノールのオリゴマーに対し0.01〜2%である。
次いで、本発明の製造方法においては、上記のように発生したp−イソプロペニルフェノールをN,N−ジメチルホルムアミドに接触させて捕集する。
N,N−ジメチルホルムアミドは、p−イソプロペニルフェノールに対する相溶性に優れ捕集効果が良いこと、更に、引き続いて行うヘキサフルオロプロペンのオリゴマーからなるフッ素化剤との合成反応の溶媒として原料、生成物との相溶性、合成反応性に優れること等から極めて優れている。捕集溶剤として、アルコール類等のプロトン性極性溶媒は該捕集液の貯蔵安定性が十分でないこと、引き続いて行う合成反応を阻害すること等から用いることができないこと、又、ケトン類、ジメチルスルホキシド類、スルホラン類の溶媒は、p−イソプロペニルフェノールに対する相溶性、捕集効果が十分でないこと、該捕集液の安定性が十分でないこと等から工業的に利用することが難しい。
発生するp−イソプロペニルフェノールをN,N−ジメチルホルムアミドに接触させて捕集するには、例えば、p−イソプロペニルフェノールのオリゴマーから発生するp−イソプロペニルフェノールを蒸気状で吸収塔の上部に導き、塔頂付近で、塔頂に供給したN,N−ジメチルホルムアミドと接触させて吸収塔を流下させることにより吸収溶解させる方法、発生するp−イソプロペニルフェノールを凝縮させ、その凝縮液が受器に至る前にN,N−ジメチルホルムアミドと接触させて溶液とする方法、あるいは発生するp−イソプロペニルフェノールを凝縮させ、その凝縮液を、予めN,N−ジメチルホルムアミドを入れた受器に導いて通常5分以内に溶解させる方法等をとることができる。
上記した如く、熱分解反応で生成するp−イソプロペニルフェノールは、極めて反応性が高く、特に液状になると素早く重合反応が起こり、p−イソプロペニルフェノールのダイマー、トリマー等の低重合物が生成する。p−イソプロペニルフェノールの収率を考慮すると、熱分解生成物を熱分解器から留出させるときには、蒸気状態が好ましく、液層部は極力少なくすることが好ましい。
従って、上記の方法中、特に、p−イソプロペニルフェノールを蒸気状で吸収溶解させる方法が好ましく、該方法によれば、熱分解生成物が蒸気状態で蒸留塔に供給されるため、p−イソプロペニルフェノールの重合が防止され、高純度のp−イソプロペニルフェノールを得ることが可能である。
発生するp−イソプロペニルフェノールと溶剤との接触温度は、捕集方法、発生圧力等により異なるが、100℃以下、好ましくは80℃以下、かつ30℃以上で行うのが好ましい。上記の範囲よりも高温度で接触させると、p−イソプロペニルフェノールの2量体が副生し易くなり、上記の範囲よりも低温度で接触させると、p−イソプロペニルフェノールの溶解度が低くなり捕集効率が低下するため好ましくない。
本発明において、発生するp−イソプロペニルフェノールを捕集するために用いられるN,N−ジメチルホルムアミドの量は、留出するp−イソプロペニルフェノール1重量部に対して2.5〜9.0重量部の範囲であり、特に、3.0〜8.0重量部の範囲が好ましい。2.5重量部より少ない量においては、p−イソプロペニルフェノールの捕集が十分に行われないためp−イソプロペニルフェノールの重合体が生成し易く、得られるp−イソプロペニルフェノール溶液の純度が著しく低下して好ましくない。更に、該溶液のp−イソプロペニルフェノール濃度が高濃度となり、引き続いて行うヘキサフルオロプロペンのオリゴマーからなるフッ素化剤との合成反応において発熱等の制御が困難になるので、該反応溶液として利用することが難しい。又、9.0重量部より多い量においては、得られるp−イソプロペニルフェノール溶液の濃度が著しく低くなり、引き続いて行うペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物の合成反応の収率が著しく低くなり、生産性が低下し工業的利用が難しいので好ましくない。
従って、上記の接触温度、溶媒の使用量においてp−イソプロペニルフェノールを捕集する場合は、発生するp−イソプロペニルフェノールを実質的に完全に捕集することができ、その結果、10〜28重量%の濃度を有する高純度のp−イソプロペニルフェノールの捕集液が得られる。更に、引き続いて行うペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物の合成反応の反応溶液としての工業的利用から、該濃度は12〜25重量%の捕集液であることが好ましい。
尚、上記の工程において、p−イソプロペニルフェノールのオリゴマーを熱分解する反応器下部より、不活性ガスで連続的にバブリングを行ってもよい。
不活性ガスとして、具体的には窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノン等が挙げられるが、特に、経済性の面から窒素が好ましい。
又、熱分解反応原料の熱分解器への供給方法は、連続的でも間歇的または、回分式でもよいが、連続的供給が好ましい。
次に、上記のようにして得られたp−イソプロペニルフェノールの凝集液に、1.0〜1.5当量(対p−イソプロペニルフェノール当量)の第三級アミンを加えて本発明に係る(イ)工程の目的のp−イソプロペニルフェノール溶液を得る。
かかる第三級アミンとしては、具体例として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの脂肪族アミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンなどの芳香族アミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどの脂環式アミン、ピリジン、N,N−メチルピペリジンなどの複素環式アミン、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等が挙げられるが、特に、取扱いが簡易であることからトリエチルアミンが好ましい。
又、第三級アミンの添加量としては、p−イソプロペニルフェノール1当量に対して1.0〜1.5当量であるが、引き続き行うペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物の合成反応の量比として1.02〜1.3当量であることが好ましい。該量比が、1.0当量より少ない場合には、反応生成物中に不純物としてp−イソプロペニルフェノール及びその重合物が混在し精製等の工程が煩雑になり工業的に不利になること、又、1.5当量より多い場合には、合成反応において副生反応物が生成しやすいこと等から好ましくない。
尚、かかる第三級アミンの添加方法は、p−イソプロペニルフェノール捕集液の受器を用いて添加する方法、引き続いて行う(ロ)工程の含フッ素ビニル化合物の合成反応装置にp−イソプロペニルフェノール捕集液を導入して添加する方法等によって行うことができるが、これらに限定されるものではない。
上記のようにして得られたp−イソプロペニルフェノール溶液は、p−イソプロペニルフェノールの純度が高く、且つ貯蔵安定性が良好である。かかる溶液の安定性が著しく優れていることは驚くべきことであり、かかる安定性は、添加した第三級アミンがp−イソプロペニルフェノールとの間で四級塩として働き、且つこれらとN,N−ジメチルホルムアミドが有する優れた溶解性、特異な極性等による相互作用によるものと推定される。
該p−イソプロペニルフェノール溶液は、引き続いてペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物の合成原料、反応液としてそのまま用いることができため、合成反応工程が極めて簡略であり、高純度のp−イソプロペニルフェノールを原料として用いることができ、工業的に優れたものである。
引き続いて、本発明に係る製造方法は、(ロ)工程として、上記した(イ)の工程で得られるp−イソプロペニルフェノール溶液を含フッ素ビニル化合物の合成反応装置に導入し、溶液の温度を10℃〜70℃に制御しながら一般式(C(式中、mは2又は3の整数を示す。)で表されるヘキサフルオロプロペンのオリゴマー加えて合成反応を行い、一般式(1)で表されるペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物を得るものである。
かかる一般式(1)で表されるペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物としては、例えば、p−(ペルフルオロヘキセニル)オキシイソプロペニルベンゼン、p−(ペルフルオロノネニル)オキシイソプロペニルベンゼン及びこれらの異性体が挙げられるが、これらの混合物でもよい。特に、p−(ペルフルオロノネニル)オキシイソプロペニルベンゼンとしてp−ペルフルオロ(2−イソプロピル−1,3−ジメチル−1−ブテニル)オキシイソプロペニルベンゼンが有用であるが、これらに限定されるものではない。
本発明に係る(ロ)工程における合成の反応温度は、10℃〜70℃の範囲である。反応温度が高くなるに従って反応速度が速くなるが、室温で十分速やかに反応させることができ、原料及び生成物の熱重合反応を防止する上から15℃〜60℃の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは15〜40℃の範囲である。
反応は、大気圧下あるいは加圧下で行うことができるが、反応作業、装置の簡便さから大気圧下で行うことが好ましい。
更に、反応系は、空気雰囲気下あるいは不活性ガス雰囲気下で行うことができるが、反応生成物の着色を少なくする上から不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。かかる不活性ガスとしては、具体的には窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノン等が挙げられるが、特に、経済性の面から窒素が好ましい。
本発明に係る一般式(C(式中、mは2又は3の整数を示す。)で表されるヘキサフルオロプロペンのオリゴマーとしては、例えば、ヘキサフルオロプロペン2量体(C12)、ヘキサフルオロプロペン3量体(C18)、及びこれらの異性体が挙げられるが、これらの混合物を用いることもできる。特に、ヘキサフルオロプロペン3量体であるペルフルオロ(3−エチル−2,4−ジメチル−2−ペンテン)及びペルフルオロ(3−イソプロピル−4−メチル−2−ペンテン)が有用であるが、これらに限定されるものではない。又、これらを異性化の処理をしても或いはしなくても有用であるが、特に、ヘキサフルオロプロペンをフッ素イオンの存在下スルホラン類を溶媒として2量化または3量化したもの、ヘキサフルオロプロペンの2量体または3量体をフッ素イオンの存在下スルホラン類を溶媒として異性化して得られる化合物は反応性が良好であることから好ましい。
かかるヘキサフルオロプロペンのオリゴマーの使用量比は、該合成反応が化学量論的には該オリゴマー/p−イソプロペニルフェノール比が1/1(モル)で進むので、反応に用いるp−イソプロペニルフェノールと等モル量比で使用すればよいが、該反応を十分に完結させるには、通常p−イソプロペニルフェノール1モルに対し1.0〜1.3モルの量比で使用するのが好ましい。
尚、上記した(ロ)工程のペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物の合成反応は、第三級アミンの存在下で速やかに進むが、かかる第三級アミンは、上記した(イ)工程に用いられる化合物が同様に有用であり、必要に応じて適宜追加して加えてもよいが、通常(イ)工程にて得られるp−イソプロペニルフェノール溶液に十分に含まれているので加える必要はない。
更に、該ペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物の合成反応に用いられる溶剤は、該反応の速やかに進めるためにはN,N−ジメチルホルムアミドが好ましく、かかる溶媒は、上記した(イ)工程に用いられるN,N−ジメチルホルムアミドが同様に有用であり、必要に応じて適宜追加して加えてもよいが、通常(イ)工程にて得られるp−イソプロペニルフェノール溶液に十分に含まれているので加える必要はない。
本発明の製造方法によれば、p−イソプロペニルフェノールオリゴマーの熱分解で生成したp−イソプロペニルフェノールを単離することなくN,N−ジメチルホルムアミドを用いて捕集し第三級アミンを添加して得られるp−イソプロペニルフェノール溶液を引き続いてヘキサフルオロプロペンのオリゴマーからなるフッ素化剤との合成反応装置に供給することにより、簡便な操作により、p−イソプロペニルフェノール重合物の副生を抑制することができ、合成反応の収率が向上し、ペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物を簡便に、高純度、高収率で得ることができる。また、熱分解で生成したp−イソプロペニルフェノールの捕集を特定濃度範囲のN,N−ジメチルホルムアミドを用いて実施し第三級アミンを添加することにより、効率的で且つ安定性に優れたp−イソプロペニルフェノール溶液が得られ、反応生成物の収率を向上させることができる。
次に、実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等限定されるものではない。
(イ)p−イソプロペニルフェノール溶液を得る工程
p−イソプロペニルフェノールのオリゴマー(p−イソプロペニルフェノールダイマー97%、同トリマー3%)を240℃、55mmHgの条件下に加熱してp−イソプロペニルフェノールを蒸気にて180g/hrの速度で留出させ、充填塔式の吸収塔の塔頂の直ぐ下部に蒸気状で導入した。一方、N,N−ジメチルホルムアミドを900g/hrで吸収塔の塔頂に送入して流下させ、p−イソプロペニルフェノールと55℃で接触させて捕集した。その結果、p−イソプロペニルフェノールを含む固形分16.6重量%の捕集液を得た。該捕集液をガスクロマトグラフィーにて検定した結果、溶媒を除くp−イソプロペニルフェノールの純度は99.8重量%であり、極めて高純度であった。
続いて、該捕集液に、捕集液1000gに対してトリエチルアミン137.4g(1.1当量対p−イソプロペニルフェノール1当量)の量比でトリエチルアミンを加えて目的のp−イソプロペニルフェノール溶液を得た。
(ロ)p−(ペルフルオロアルケニルオキシ)イソプロペニルベンゼンを得る工程
引き続いて、撹拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロートを装着した500ml反応器に、上記の(イ)工程で得られたp−イソプロペニルフェノール溶液250.0gを送入した。その液温を40℃に保持し撹拌しながら、滴下ロートよりフッ素イオン存在下でメチルスルホランを溶剤として異性化せしめたヘキサフルオロプロペン3量体128.3g(1.05モル対p−イソプロペニルフェノール1モル)を添加した。滴下終了後、2時間反応を行い完了した。該反応生成物をガスクロマトグラフィーにて検定した結果、原料p−イソプロペニルフェノールのピークは消滅していた。
次いで、この反応生成物を水にあけ、下層を分取し希塩酸および水で洗浄して粗生成物を得た。更に、この粗生成物を減圧蒸留により沸点83.5〜84.0℃/1.5mmHg留分のp−(ペルフルオロノネニルオキシ)イソプロペニルベンゼン151.8g(収率99.1%)を得た。
[(イ)工程で得られたp−イソプロペニルフェノール溶液の安定性試験]
実施例1(イ)工程で得られた第三級アミンを含むp−イソプロペニルフェノール溶液を容器に入れ、室温にて2週間放置した。その結果、該容器内に固形分の析出は見られなかった。この放置試験した溶液をガスクロマトグラフィーにて検定した結果、溶媒及び第三級アミンを除くp−イソプロペニルフェノールの純度は99.2重量%であった。
本発明に係るp−イソプロペニルフェノール溶液は、安定性に優れ、高純度を保持したものであった。
比較例1
[p−イソプロペニルフェノールの2−エチルヘキサノール捕集液の安定性試験]
実施例1(イ)に記載したp−イソプロペニルフェノール捕集液の製造において、N,N−ジメチルホルムアミドの代わりに、2−エチルヘキサノールを用いる以外は、実施例1と同様にしてp−イソプロペニルフェノールの捕集液を製造して、p−イソプロペニルフェノールを含む固形分16.6重量%の捕集液を得た。
この捕集液を容器に入れ、室温にて2週間放置した。その結果、該容器の底部に固形分の析出が見られ、更に、放置試験した該捕集液を再溶解してガスクロマトグラフィーにて検定した結果、溶媒を除くp−イソプロペニルフェノールの純度は86.1重量%であった。該捕集液は、安定性が不良であり、工業的に利用することができないものであった。

Claims (1)

  1. (イ)p−イソプロペニルフェノールのオリゴマーを塩基性触媒の存在下又は不存在下に加熱することにより発生するp−イソプロペニルフェノールを、蒸気状で又は凝縮直後に、留出するp−イソプロペニルフェノール1重量部に対して2.5〜9.0重量部のN,N−ジメチルホルムアミドを用いて接触せしめてp−イソプロペニルフェノールを捕集し、その液に1.0〜1.5当量(対p−イソプロペニルフェノール当量)の第三級アミンを加えてp−イソプロペニルフェノール溶液を得る工程と、
    (ロ)上記(イ)工程で得られたp−イソプロペニルフェノール溶液に一般式(C(式中、mは2又は3の整数を示す。)で表されるヘキサフルオロプロペンのオリゴマーを加えて反応温度10℃〜70℃にて反応を行い
    一般式(1)
    Figure 2015212252
    (式中、nは2又は3の整数を示す。)
    で表されるペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物を得る工程と、
    を含むことを特徴とするペルフルオロアルケニルオキシ基含有ビニル化合物の製造方法。
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