JP2015209672A - 鋼材柱の補強構造 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、H型鋼柱1は、図7に示すように下端に溶接したベースプレート2を備え、このベースプレート2には、アンカーボルト3,3を設けている。このアンカーボルト3,3をコンクリートの基礎に埋め込むとともに、ナット4を締め付けて上記ベースプレート2を基礎に固定するようにしている。
さらに、H型鋼は弱軸方向の曲げには弱いため、現在の基準からみて、柱としての強度が不足しているH型鋼柱は多かった。
なお、H型鋼以外の鋼材柱も、図7に示すH型鋼柱1と同様に、ベースプレート2をアンカーボルト3によって基礎に固定するようにしている。そのため、H型鋼柱1以外の既存の鋼材柱も、底部のせん断耐力が不足したものがあった。
なお、既存のH型鋼柱1は、下端に溶接したベースプレート2を、上記アンカーボルト3とナット4とによって基礎立ち上げ部8aに固定して設置されている。
これら基礎立ち上げ部8a及び基礎梁9の上にはコンクリートスラブ10を設けている。
上記H型鋼柱1のベースプレート2は、コンクリートスラブ10を介して基礎立ち上げ部8aにアンカーボルト3で固定されている。
また、上記囲い鋼板5及び軸方向筋7の下端は、上記コンクリートスラブ10上に設置されている。
このようなH型鋼柱1を、囲い鋼板5で覆って断面積を大きくしたり、軸方向筋7を埋設したりしても、補強によって新たに追加された補強部は固定されていない。つまり、補強後の柱も底部も、上記アンカーボルト3によるピン接合のままである。
このように、柱の端部のせん断耐力が弱ければ、曲げ耐力も発揮できず、補強したとしても建造物の柱としての強度を十分に上げることはできなかった。
この発明の目的は、特に柱底部の耐力を上げながら、補強後の柱の強度を向上させることができる鋼材柱の補強構造を提供することである。
そして、第1の発明は、上記軸方向筋の下端を既存の基礎あるいは新たに形成した補充基礎に埋設したことを特徴とする。
上記既存の基礎とは、既存の鋼材柱の底部より下方に位置し、当該鋼材柱の下端を固定する部分のことである。
上記梁部材であって上記軸方向筋と対向する位置には、あと施工アンカーを設け、このあと施工アンカーの突出部を上記軸方向筋の近傍に位置させるとともに、このあと施工アンカーの突出部及び上記軸方向筋の上端を上記グラウト材に埋設したことを特徴とする。
さらに、上記グラウト材を囲う囲い鋼板が、グラウト材の崩壊を防止して鋼材柱のせん断耐力をさらに向上させることができる。
しかも、既存の鋼材柱に沿った軸方向筋の下端を基礎に埋設して固定し、補強後の柱の底部を固定することができる。特に、補強によって付加された部分で、軸方向筋と基礎とが結合するので、既存のアンカーボルトのみで柱を支える場合と比べて応力集中も発生し難く、柱底部のより強固な固定が期待できる。その結果、補強効果が有効に発揮され、せん断力及び曲げ耐力を向上させ、補強後の鋼材柱の強度を十分に向上させることができる。
第3の発明によれば、既存の基礎に軸方向筋を埋設することが難しい場合にも、軸方向筋の下端を補充基礎に埋設して固定し、補強後の柱の強度を向上させることができる。
第5の発明によれば、基礎梁部分に位置する軸方向筋の下端を基礎梁に埋設して固定することができる。
上記H鋼柱1は、図7に示すように、下端に溶接したベースプレート2を備えたもので、このベースプレート2を貫通するアンカーボルト3とナット4とによって、基礎立ち上げ部8aに固定されている。
一方、上記H型鋼柱1の上端付近には、その両脇にH型鋼からなる梁11,11を連結している。これら梁11,11とH型鋼柱1との連結は、溶接やボルト止めなどで行なわれるが、上記H型鋼柱1と梁11,11とは直接連結するだけでなく、連結用プレートなどを介在させるようにしてもよい。
図1に示すように、この第1実施形態では、上記H型鋼柱1の周囲を、間隔を保って囲い鋼板5で囲むとともに、上記梁11の部分にも梁11との間隔を保って梁用の囲い鋼板12を設けている。そして、これら囲い鋼板5,12の内部にグラウト材6を充填している。
なお、上記囲い鋼板5は、その下端側において、上記ベースプレート2の外周との間隔が、上記軸方向筋7を配置可能な寸法となるように配置されている。
さらに、上記囲い鋼板5は、断面をL字状にした4つの単位鋼板5a〜5dで構成され、各単位鋼板5a〜5dの先端同士を重ね合わせてH型鋼柱1の全周を矩形に囲うようにしている。ただし、補強鋼板5は4つの部材で構成されるものに限らず、H型鋼柱1の周囲を囲むことが可能なものであれば、その形状はどのようなものでもかまわない。
なお、この第1実施形態では上記梁用の囲い鋼板12の幅を、柱の部分のみを囲む囲い鋼板5の幅より大きくしているが、梁用の囲い鋼板12の幅は、上記囲い鋼板5と同等にしてもよい。さらに、上記梁用の囲い鋼板12を、例えば断面がL字状の一対の単位鋼板など、複数の単位鋼板で構成してもよいし、梁用の囲い鋼板12を設けなくてもよい。
ただし、周方向や、上下に連続する単位鋼板5a〜5d同士は、上記帯状シートではなく、溶接やボルトなどを用いて連結するようにしてもよい。
なお、上記囲い鋼板5,12の外周に帯状シートを貼り付ければ、帯状シートの引張強度を上記囲い鋼板5,12の強度に付加することもできる。
また、上記梁11であって、軸方向筋7,7に対向する部分には、複数のあと施工アンカー14を打ち込んでその突出部を軸方向筋7,7の近傍に位置させている。このようなあと施工アンカー14は、梁11を構成するH型鋼のウエブに固定され、軸方向筋7とともに上記グラウト材6に埋設される。これにより、グラウト材6、梁11及び軸方向筋7が一体化し、軸方向筋7の上端が固定されることになる。
ただし、必要な補強強度によっては、梁11の部分まで補強せず、上記梁用の囲い鋼板12を設けなくてもよい。その場合には、軸方向筋7の上端であるプレートナット13は上記梁11より下方で、上記囲い鋼板5内に位置するようにする。
また、上記軸方向筋7において上記スラブ10と基礎底盤8との間に対応し、図1中一点鎖線で囲んだ部分Aは、格子状に配置された基礎梁9,9間で露出した露出部Aとなる。そこで、この露出部Aを、グラウト材やコンクリートで覆って錆などが発生しないようにしている。
上記グラウト材6は、H型鋼柱1の一対のフランジ1a,1aとその間のウエブ1bとで囲まれる空間内にも充填され、H型鋼柱1の全表面を覆う。
さらに、上記グラウト材6を囲う囲い鋼板5が、グラウト材6の崩壊を防止することで内部の座屈を防止し、曲げ耐力、軸耐力及びせん断耐力をさらに向上させることができる。
しかも、軸方向筋7の下端は、基礎底盤8に埋設されているので、上記囲い鋼板5で囲まれた補強部分と基礎との結合強度が強くなり、柱の底部のせん断耐力が上がり、基礎からずれたり分離したりしてしまうようなことがない。その結果、囲い鋼板5、軸方向筋7及びグラウト材6による補強効果が有効に機能し、補強後の柱の強度を向上させることができる。
なお、上記軸方向筋7は、上記基礎底盤8に埋設される下端から、プレートナット13まで連続する1本ものでなくてもよく、複数の軸方向筋を溶接や、継手によって事後的に連結したものでもよい。なお、上記継手には、端部同士を連結する機械的な継手のほか、軸方向に重ねてグラウト材に埋設することによって連結する重ね継手が含まれる。
ただし、この第2実施形態では、周囲に基礎梁を設けていない基礎立ち上げ部8aに、H型鋼柱1のベースプレート2がアンカーボルト3によって直接固定されている。また、既存の基礎底盤8に固定孔15を形成するのではなく、新たに補充基礎16を形成し、この補充基礎16に軸方向筋7の下端を埋設している点が、上記第1実施形態と異なる。
その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と同じ構成要素には、図1と同じ符号を用い各構成要素の説明は省略する。
この補強構造の具体的な形成方法は、以下のとおりである。
まず、上記ベースプレート2より下方で、軸方向筋7が配置される位置に対応する基礎立ち上げ部8aの周囲に、複数のあと施工アンカー14を打ち込む。このあと施工アンカー14は、一端側を基礎立ち上げ部8aから突出させ、その突出部が、補充基礎16内に埋設する軸方向筋7の近傍に達する長さを備えている。
このようにあと施工アンカー14を打ちこんだら、軸方向筋7を所定の位置に配置し、図示しない型枠内にコンクリートを充填して、上記あと施工アンカー14とともに軸方向筋7の下端側を埋設した補充基礎16を形成する。
その後、上記補充基礎16上に囲い鋼板5を配置し、その内側にグラウト材6を充填するようにしている。
さらに、この第2実施形態では、補充基礎16にあと施工アンカー14を設けることによって補充基礎16と軸方向筋7との結合力をより強くしている。
また、この第2実施形態では、補充基礎16の形成時に上記軸方向筋7の下端を埋設することができるので、第1実施形態のように事後的に固定孔15(図1参照)を形成しなくてもよい。また、軸方向筋7の露出部A(図1参照)を覆う処理も必要ない。
なお、上記補充基礎16を形成する際に、基礎立ち上げ部8aや基礎底盤8の表面に複数の差し筋を設け、これらを利用してかご鉄筋を形成すれば、より強固な補充基礎16を形成することができるとともに、補充基礎16と軸方向筋7との結合力をより一層強くできる。
この第3実施形態において、上記第1,2実施形態と同様の構成要素には同じ符号を用いる。
第3実施形態の補強構造は、上記補充基礎17に軸方向筋7の下端を埋設したものである。そして、上記補充基礎17を形成する際には、交差する方向の一対の基礎梁9,9の側面に複数のあと施工アンカー14を打ち込んで、このあと施工アンカー14と軸方向筋7の下端とが補充基礎17に埋設されるようにしている。上記あと施工アンカー14は、上記第2実施形態のあと施工アンカー14と同様に、その突出部が軸方向筋7の近傍に位置するように設けられている。
なお、図4では、あと施工アンカー14を太線で示しているが、実際には補充基礎17に埋設されている。
したがって、この第3実施形態でも、補強後の柱の底部を固定しながら、補強後の柱の強度を向上させることができる。
また、あと施工アンカー14によって補充基礎17と軸方向筋7との結合力をより強くできる点は第2実施形態と同じである。
さらに、この補充基礎17も、かご鉄筋を埋設するようにすれば、補充基礎17自体の強度が上がるとともに、軸方向筋7との結合力をより一層強くできる。
また、上記第2、3実施形態では、補充基礎16,17を形成する際にあと施工アンカー14を設けているが、補充基礎16,17内に埋設される軸方向筋7の内設長さを十分に長くして固定力を強くできる場合には、上記あと施工アンカー14を設けなくてもよい。
さらに、上記のような補充基礎16,17を形成しながら、軸方向筋7の下端は基礎底盤8に埋設させるようにしてもよい。その場合には、基礎底盤8と補充基礎との両者によって軸方向筋7の下端側を保持することになるため、基礎底盤8に形成する固定孔15の軸方向長さが多少短くても、軸方向筋7の下端を確実に固定できることになる。
上記H型鋼柱1の代わりに円形鋼管柱18を用いている点が、上記第1実施形態と異なるが、その他の構成は第1実施形態とほぼ同じである。
そこで、第1実施形態と同じ構成要素には、第1実施形態と同じ符号を用い、詳細な説明は省略する。
以下に、第4実施形態の補強構造について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
また、上記ベースプレート19上には、上記円形鋼管柱18の下端付近外周と上記ベースプレート19との間を連結する複数のリブプレート20を設け、これらリブプレート20を上記ベースプレート19及び円形鋼管柱18に溶接している。このように、上記リブプレート20を介在させることによってベースプレート19と円形鋼管柱18とをより強力に結合している。
そして、上記アンカーボルト3を基礎立ち上げ部8aに埋設するとともにナット4によってベースプレート19を固定し、既存の鋼材柱である円形鋼管柱18を設置している(図6参照)。
この第4実施形態の円形鋼管柱18は断面が円形であるが、囲い鋼板5はその周囲を図2と同様に矩形に囲み、この囲い鋼板5で囲まれた矩形の内側四隅に沿って上記軸方向筋7を配置している。
そして、この第4実施形態でも、上記軸方向筋7の下端を基礎底盤8内に形成した固定孔15に挿入してグラウト材6によって固定している。
また、上記ボルト3を固定する基礎立ち上げ部8aの断面積も、上記ベースプレート19に対応したものである。
そのため、このベースプレート19の外周に、上記軸方向筋7を配置するための間隔を保って囲い鋼板5を配置すると、補強後の柱が太くなり過ぎてしまうことがある。
また、この切欠き部21に上記軸方向筋7を配置しようとすると、既存の基礎立ち上げ部8aの外周部分が邪魔になることがある。この外周の一部を撤去し、二点鎖線で示した撤去部Bに軸方向筋7を通過させ、軸方向筋7の下端を基礎底盤8の固定孔15に埋設している。
なお、上記軸方向筋7は、上記撤去部Bにおいて露出部Aとなるため、この露出部Aをグラウト材やコンクリートで覆って錆などが発生しないようにする。
この第4実施形態も、上記他の実施形態と同様に、補強後の柱の底部を固定してせん断耐力及び曲げ耐力を向上させ、補強後の柱の強度を向上させることができる。
また、上記囲い鋼板5は既存の鋼材柱の全周を囲むものではなく、特定の面のみを囲むようにしてもよい。その場合には、上記軸方向筋は囲い鋼板5で囲まれた内側のみに配置されるが、その軸方向筋の下端を基礎に埋設することで柱底部を固定できる点は、上記実施形態と同様である。
また、上記では、軸方向筋7の下端を基礎底盤8あるいは補充基礎に埋設させる例について説明したが、上記基礎梁9が固定孔15を形成するのに十分な大きさを備えている場合には、基礎梁9に固定孔を形成して軸方向筋7を埋設させるようにしてもよい。
2 ベースプレート
3 アンカーボルト
4 ナット
5 (柱用の)囲い鋼板
5a〜5d 単位鋼板
6 グラウト材
7 軸方向筋
8 基礎底盤
8a 基礎立ち上げ部
9 基礎梁
11 梁
12 (梁用の)囲い鋼板
14 あと施工アンカー
16 補充基礎
17 補充基礎
18 円形鋼管柱
19 ベースプレート
そして、第1の発明は、既存の基礎の周囲に補充基礎を新たに形成し、この補充基礎に上記軸方向筋の下端を埋設したことを特徴とする。
上記既存の基礎とは、既存の鋼材柱の底部より下方に位置し、当該鋼材柱の下端を固定する部分のことである。
Claims (6)
- 鋼材柱の特定の面又は全周を囲い鋼板で囲い、鋼材柱の外周と上記囲い鋼板との間にグラウト材を充填し、このグラウト材中に軸方向筋を配置する鋼材柱の補強構造において、上記軸方向筋の下端を既存の基礎あるいは新たに形成した補充基礎に埋設した鋼材柱の補強構造。
- 上記基礎は基礎底盤を備え、この基礎底盤に固定孔を形成し、この固定孔に上記軸方向筋の下端を挿入するとともにグラウト材を充填して上記軸方向筋の下端を上記基礎底盤に埋設した請求項1に記載の鋼材柱の補強構造。
- 既存の基礎の周囲に補充基礎を新たに形成し、この補充基礎に上記軸方向筋の下端を埋設した請求項1に記載の鋼材柱の補強構造。
- 上記既存の基礎にあと施工アンカーを打ち込み、このあと施工アンカーの突出部を上記軸方向筋の近傍に位置させるとともに、このあと施工アンカーの突出部及び上記軸方向筋の下端を上記補充基礎に埋設した請求項3に記載の鋼材柱の補強構造。
- 上記既存の基礎は基礎梁を備え、この基礎梁に固定孔を形成し、この固定孔に上記軸方向筋の下端を挿入するとともにグラウト材を充填して上記軸方向筋の下端を上記基礎梁に埋設した請求項1の鋼材柱の補強構造。
- 上記鋼材柱の両脇に梁部材が連結された連結部を梁用の囲い鋼板で覆い、上記連結部と梁用の囲い鋼板との間にグラウト材を充填して、このグラウト材に上記軸方向筋の上端を埋設するとともに、
上記梁部材であって上記軸方向筋と対向する位置にあと施工アンカーを設け、このあと施工アンカーの突出部を上記軸方向筋の近傍に位置させるとともに、このあと施工アンカーの突出部及び上記軸方向筋の上端を上記グラウト材に埋設した請求項1〜5のいずれか1に記載の鋼材柱の補強構造。
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