JP2015208923A - ガスバリア性フィルムおよびガスバリア性積層体 - Google Patents

ガスバリア性フィルムおよびガスバリア性積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】高湿度雰囲気下におけるガスバリア性に優れ、かつ、包装用材料として十分なラミネート強度を有するガスバリア性フィルムおよびガスバリア性積層体を提供する。【解決手段】プラスチック材料からなる基材フィルムと、基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられた、酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)および無機層状鉱物(C)を主たる構成成分として含むガスバリア層と、を備え、基材フィルムにおけるガスバリア層が設けられる面の三次元表面粗さ(算術平均)Saが、50nm以上であるガスバリア性フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、乾燥食品・菓子・パン・珍味などの湿気や酸素を嫌う食品、および、使い捨てカイロ、錠剤・粉末薬または湿布・貼付剤などの医薬品の包装分野に用いられるガスバリア性フィルムおよびガスバリア性積層体に関するものである。さらに、詳しくは、無機層状化合物と樹脂からなるガスバリア性コーティング層を含むガスバリア性フィルムおよびガスバリア性積層体に関する。
食品や医薬品などの包装に用いられる包装材料には、内容物の変質や腐敗などを抑制し、それらの機能や性質を保持するために、水蒸気、酸素、その他の内容物を変質させる気体の進入を遮断する性質(ガスバリア性)が必要である。
そのため、従来、これら包装材料には、ガスバリア性を有する材料からなるガスバリア層が設けられていた。これまで、ガスバリア層は、フィルムや紙などの基材上に、スパッタリング法や蒸着法、ウェットコーティング法や印刷法などにより設けられていた。また、ガスバリア層としては、アルミニウムなどの金属からなる金属箔や金属蒸着膜、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデンなどの樹脂膜が用いられている(例えば、特許文献1〜5参照)。
しかしながら、金属箔や金属蒸着膜は、ガスバリア性には優れるものの、不透明であるため、内容物を確認することができなかったり、伸縮性に劣るため、数%の伸びでクラックが生じて、ガスバリア性が低下したり、使用後の廃棄時に、不燃物として処理する必要があるなど、数々の問題があった。
また、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体などの樹脂膜を有するガスバリア性フィルムは、低湿度下では優れたガスバリア性を示すが、湿度の上昇に伴ってガスバリア性が低下していき、湿度70%RH以上ではガスバリア性が失われてしまうため、使用上の制限があった。これを改善するために、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体などに、無機層状化合物を添加し、湿度依存性を低下させる方法などが提案されている。しかしながら、この方法では十分な改善には至らず、基材と樹脂膜との密着性が低下する弊害を有し、包装材料としての十分な強度が得られ難かった。
一方、ポリ塩化ビニリデンなどの樹脂膜を有するガスバリア性フィルムは、湿度依存性が低く、優れたガスバリア性を示すが、廃棄処理などの際に、有害物質の発生源となる可能性があり、塩素系物質を含有しないガスバリア材料が求められている。
したがって、塩素系物質を含まない材料で、高湿度雰囲気下でも高いガスバリア性を有し、基材への密着性も良好な、ガスバリア性樹脂膜が強く求められていた。
そこで、我々は、酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂、水溶性高分子および無機層状鉱物を主たる構成成分する水系のコーティング材料と、それをコーティングしたガスバリア性フィルムと、を提案している(例えば、特許文献6参照)。このガスバリア性フィルムは、高湿度雰囲気下におけるガスバリア性に優れ、皮膜の基材への密着性や凝集力も良好である。しかしながら、このガスバリア性フィルム上に接着剤を介して、ヒートシール性樹脂層をラミネートした積層体において、初期のラミネート強度は良好であるものの、高湿度雰囲気下に長期間保管すると、時間の経過に伴ってラミネート強度が低下し、積層体の一部に剥離が生じる(以下、「デラミネーション」と言う。)不良が発生する場合があった。
特開2002−321301号公報 特開2001−287294号公報 特開平11−165369号公報 特開平6−93133号公報 特開平9−150484号公報 特許第3764109号公報 特願2012−41251
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高湿度雰囲気下におけるガスバリア性に優れ、かつ、包装用材料として十分なラミネート強度を有するガスバリア性フィルムおよびガスバリア性積層体を提供することを目的とする。
請求項1に係る発明は、プラスチック材料からなる基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられた、酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)および無機層状鉱物(C)を主たる構成成分として含むガスバリア層と、を備え、前記基材フィルムにおける前記ガスバリア層が設けられる面の三次元表面粗さ(算術平均)Saが、50nm以上であることを特徴とするガスバリア性フィルムである。
請求項2に係る発明は、前記基材フィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびナイロンから選択される1種のプラスチック材料からなることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルムである。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルムと、該ガスバリア性フィルムの少なくとも一方の面に順に積層された、接着剤層およびヒートシール性樹脂層と、を備えたことを特徴とするガスバリア性積層体である。
本発明によれば、三次元表面粗さ(算術平均)Saが、50nm以上であるプラスチック材料からなる基材フィルムを用い、その基材フィルムの少なくとも一方の面に、酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)および無機層状鉱物(C)を主たる構成成分として含むガスバリア層を形成することにより、高湿度雰囲気下におけるガスバリア性に優れ、ガスバリア層の基材フィルムに対する密着性や凝集力も良好なガスバリア性フィルムおよびガスバリア性積層体を提供することができる。また、高湿度雰囲気下で長期間保管されても、時間の経過に伴うラミネート強度の低下が少なく、包装用材料として、様々な包装用資材として活用することが可能なガスバリア性積層体を提供することができる。
本発明のガスバリア性フィルムおよびガスバリア性積層体の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
「ガスバリア性フィルム」
本実施形態のガスバリア性フィルムは、プラスチック材料からなる基材フィルムと、その基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられた、酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)および無機層状鉱物(C)を主たる構成成分として含むガスバリア層と、を備え、基材フィルムにおけるガスバリア層が設けられる面の三次元表面粗さ(算術平均)Saが、50nm以上であるフィルムである。
基材フィルムにおけるガスバリア層が設けられる面とは、ガスバリア層が基材フィルムの一方の面のみに設けられる場合、その一方の面のことであり、ガスバリア層が基材フィルムの一方の面および他方の面(すなわち、両面)に設けられる場合は、その一方の面および他方の面のことである。
プラスチック材料からなる基材フィルムの三次元表面粗さ(算術平均)Saが、50nm未満であると、基材フィルムとガスバリア層の密着強度が低下し、ガスバリア性フィルムの十分なラミネート強度が得られない。三次元表面粗さ(算術平均)Saが50nm以上であれば、基材フィルムとしては、任意のプラスチック材料からなる基材を選択できるが、三次元表面粗さ(算術平均)Saは70nm以上であることが好ましく、80nm以上であることがより好ましい。
なお、三次元表面粗さ(算術平均)Saの上限値は特に設けられないが、極端に表面粗さの大きい基材フィルムは、ガスバリア性の低下を招くため、好ましくない。
三次元表面粗さ(算術平均)Saは、JIS B0601−2013「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語、定義及び表面性状パラメータ」に記載されている2次元粗さパラメータの中心線平均粗さ(Ra)を、3次元に面として計算させたものである。粗さ曲面の中心面上に直交する座標軸をX軸、Y軸とし、中心面に直交する軸をZ軸とし、粗さ曲面をf(x、y)、基準面の大きさLx、Lyとしたとき、三次元表面粗さ(算術平均)Saは、下記式(1)より算出される。
Figure 2015208923
プラスチック材料からなる基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体などのポリC2−10などのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などの脂肪族系ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミドなどの芳香族ポリアミドなどのポリアミド系樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系単量体の単独または共重合体などのアクリル系樹脂、セロファンなどからなるフィルムが挙げられる。これらの樹脂は、1種または2種以上が組み合わせられて用いられる。
基材フィルムとしては、シリカ、タルク、珪藻土、アクリルポリマーなどのアンチブロッキング剤、フィラー、界面活性剤、金属酸化物などの静電気防止剤などの添加剤を用いたフィルムであってもよい。
添加剤の種類や、添加剤の粒経を選択することにより、基材フィルムの表面に微小な凹凸を発現させて、基材フィルムの表面(一方の面、または、一方の面もしくは他方の面)の三次元表面粗さ(算術平均)Saを任意の値に調整することができる。
基材フィルムとしては、単一の樹脂で構成された単層フィルムや複数の樹脂を用いた単層または積層フィルムが用いられる。また、上記の樹脂を他の基材(金属、木材、紙、セラミックスなど)に積層した積層基材を用いてもよい。
これらの中でも、基材フィルムとしては、ポリオレフィン系樹脂フィルム(特に、ポリプロピレンフィルムなど)、ポリエステル系樹脂フィルム(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム)、ポリアミド系樹脂フィルム(特に、ナイロンフィルム)などが好適に用いられる。
基材フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、一軸または二軸延伸配向フィルムであってもよく、表面処理(コロナ放電処理など)やアンカーコートまたはアンダーコート処理したフィルムであってもよい。さらに、基材フィルムは、複数の樹脂や金属などを積層した積層フィルムであってもよい。
また、基材フィルムは、コーティングする面(皮膜(ガスバリア層など)を形成する面)に、コロナ処理、低温プラズマ処理などを施すことにより、コーティング剤に対する良好な濡れ性と、皮膜に対する接着強度とを向上したものであってもよい。
基材フィルムの厚さは、特に限定されるものではなく、包装材料としての適性や他の皮膜の積層適性を考慮しつつ、価格や用途に応じて適宜選択されるが、実用的には3μm〜200μmであり、好ましくは5μm〜120μmであり、より好ましくは10μm〜100μmである。
酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)および無機層状鉱物(C)を主たる構成成分としてなるガスバリア層は、公知の湿式コーティング方法により、基材フィルム上に、少なくとも酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)および無機層状鉱物(C)を主たる構成成分として含むコーティング剤を塗工した後、溶媒成分を乾燥除去して形成される。
コーティング剤は、例えば、上記の3成分を所定の配合比率で配合し、水または水/アルコール混合液に溶解あるいは分散させて調製することができる。
酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂(A)は、一般的なポリウレタン樹脂と異なり、架橋剤としてのポリアミン化合物と、ポリウレタン樹脂の酸基とを結合させることで剛直な分子骨格を形成し、ガスバリア性が発現する。酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂(A)の乾燥皮膜は、一般的なポリウレタン樹脂と同様に、水に不溶であるため、湿度依存性の低いガスバリア性の皮膜となる。
ポリアミン化合物とポリウレタン樹脂の酸基との結合は、イオン結合(例えば、第三級アミノ基とカルボキシル基とのイオン結合など)であってもよく、共有結合(例えば、アミド結合など)であってもよい。
そのため、ポリアミン化合物としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基および第3級アミノ基からなる群から選択される2種以上の塩基性窒素原子を有する種々のポリアミン類が用いられる。
水溶性高分子(B)は、常温で水に完全に溶解もしくは微分散可能な高分子のことである。
水溶性高分子(B)としては、後述する無機層状鉱物(C)の単位結晶層間に侵入、配位(インターカレーション)することが可能な化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、酸化でんぷん、エーテル化でんぷん、デキストリンなどのでんぷん類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはそのエステル、塩類およびそれらの共重合体、スルホイソフタル酸などの極性基を含有する共重合ポリエステル、ポリヒドロキシエチルメタクリレートおよびその共重合体などのビニル系重合体、ウレタン系高分子、あるいは、これらの各種重合体のカルボキシル基など官能基変性重合体などが挙げられる。
水溶性高分子(B)は、少なくとも1種類がポリビニルアルコール系重合体およびその誘導体であるものが好ましく、特に好ましくは、鹸化度が95%以上かつ重合度が300〜2000のポリビニルアルコール樹脂である。
ポリビニルアルコール樹脂は、鹸化度や重合度が高い程、吸湿膨潤性が低くなる。
ポリビニルアルコール樹脂の鹸化度が95%未満では、十分なガスバリア性が得られ難い。
また、ポリビニルアルコール樹脂の重合度が300未満では、ガスバリア性の低下を招く。一方、ポリビニルアルコール樹脂の重合度が2000を超えると、水系コーティング剤の粘度が上がり、他の成分と均一に混合することが難しく、ガスバリア性や密着性の低下といった不具合を招いたりするため好ましくない。
無機層状鉱物(C)は、極薄の単位層が重なって1つの層状粒子を形成している無機化合物のことである。
無機層状鉱物(C)としては、水中で膨潤・へき開するものが好ましく、これらの中でも、特に水への膨潤性を有する粘土化合物が好ましく用いられる。より具体的には、無機層状鉱物(C)は、極薄の単位層間に水を配位し、吸収・膨潤する性質を有する粘土化合物であり、一般には、Si4+がO2−に対して配位して四面体構造を構成する層と、Al3+、Mg2+、Fe2+、Fe3+などが、O2−およびOHに対して配位して八面体構造を構成する層とが、1対1あるいは2対1で結合し、積み重なって層状構造をなすものである。この粘土化合物は、天然のものであっても、合成されたものであってもよい。
無機層状鉱物(C)の代表的なものとしては、フィロケイ酸塩鉱物などの含水ケイ酸塩、例えば、ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライトなどのカオリナイト族粘土鉱物、アンチゴライト、クリソタイルなどのアンチゴライト族粘土鉱物、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどのスメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライトなどのバーミキュライト族粘土鉱物、白雲母、金雲母などの雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライトなど雲母またはマイカ族粘土鉱物などが挙げられる。
これらの無機層状鉱物(C)は、1種または2種以上が組み合わせられて用いられる。
これらの無機層状鉱物(C)の中でも、モンモリロナイトなどのスメクタイト族粘土鉱物、水膨潤性雲母などのマイカ族粘土鉱物が特に好ましい。
無機層状鉱物(C)の大きさは、平均粒径10μm以下、厚さ500nm以下が好ましい。無機層状鉱物(C)の中でも、少なくとも1種類が平均粒径1μm〜10μm、厚さ10nm〜100nmの水膨潤性合成雲母が特に好ましい。
無機層状鉱物(C)として、水膨潤性合成雲母を用いると、水膨潤性合成雲母は、水性ポリウレタン樹脂(A)および水溶性高分子(B)との相溶性が高く、天然系の雲母に比べて不純物が少ないため、不純物に由来するガスバリア性の低下や膜凝集力の低下を招くことがない。また、水膨潤性合成雲母は、結晶構造内にフッ素原子を有することから、水系コーティング剤からなる皮膜のガスバリア性の湿度依存性を低く抑えることにも寄与する。さらに、水膨潤性合成雲母は、他の水膨潤性の無機層状鉱物に比べて、高いアスペクト比を有することから、迷路効果がより効果的に働き、特に水系コーティング剤からなる皮膜のガスバリア性が高く発現するのに寄与する。
本実施形態のガスバリア層を形成するコーティング剤には、ガスバリア性フィルムのガスバリア性や包装用材料としての強度を損なわない範囲内であれば、各種の添加剤が含まれていてもよい。
添加剤としては、例えば、ポリイソシアネート、カルボジイミド、エポキシ化合物、オキサゾリドン化合物、アジリジン系化合物などの反応性硬化剤、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー、界面活性剤、シランカップリング剤などが挙げられる。
本実施形態のガスバリア層を形成するコーティング剤は、溶媒としては、水を主として、水に溶解あるいは均一に混合する溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、セロソルブ類、カルビトール類、アセトニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。
本実施形態のガスバリア層を形成するコーティング剤は、全固形分濃度が8質量%以上、23℃における粘度が10mPa・s〜50mPa・sであることが好ましく、全固形分濃度が10質量%以上、23℃における粘度が10mPa・s〜40mPa・sであることがより好ましい。
本実施形態におけるガスバリア層を形成するためのウェットコーティング方法としては、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ダイコート、スクリーン印刷、スプレーコートなどが用いられる。
プラスチック材料からなる基材フィルムの一方の面、または、一方の面もしくは他方の面に、前記のコーティング剤をコーティング後、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射など、公知の乾燥方法を用いて、乾燥皮膜を形成し、ガスバリア層が得られる。
ガスバリア層の厚さは、本実施形態のガスバリア性フィルムに求められるガスバリア性に応じて設定されるが、0.1μm〜5μmであることが好ましく、0.2μm〜2μmであることがより好ましい。
ガスバリア層の厚さが0.1μm未満では、十分なガスバリア性が得られ難い。一方、バリア層の厚さが5μmを超えると、均一な塗膜面を設けることが難しいばかりでなく、乾燥負荷の増大、製造コストの増大につながり好ましくない。
本実施形態のガスバリア性フィルムは、必要に応じて、保護層、印刷層、アンカーコート層、遮光層、その他の機能層などを有していてもよい。
本実施形態のガスバリア性フィルムは、三次元表面粗さ(算術平均)Saが、50nm以上であるプラスチック材料からなる基材フィルムを用い、その基材フィルムの少なくとも一方の面に、水性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)および無機層状鉱物(C)を主たる構成成分として含むガスバリア層を有することにより、高湿度雰囲気下におけるガスバリア性に優れ、ガスバリア層の基材フィルムに対する密着性や凝集力も長期間良好である。また、本実施形態のガスバリア性フィルムは、ガスバリア層側に、接着剤の塗布により他のフィルムを張り合わせた積層フィルムにおいてラミネート強度の劣化が小さいため、包装用材料として用いることにより、内容物の品質保持性を高め、様々な包装用資材として活用することができる。
「ガスバリア性積層体」
本実施形態のガスバリア性積層体は、上述の実施形態のガスバリア性フィルムと、ガスバリア性フィルムの少なくとも一方の面に順に積層された、接着剤層およびヒートシール性樹脂層と、を備えた積層体である。
すなわち、本実施形態のガスバリア性積層体は、上述の実施形態のガスバリア性フィルムのガスバリア層上に、接着剤層を介して、少なくともヒートシール性樹脂層がラミネート加工されてなる積層体である。
ここで、ヒートシール性樹脂層としては、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエステル系共重合フィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、酢酸ビニル系共重合フィルムなどを用いることができる。これらのフィルムのなかでも、ポリオレフィンフィルムは低温ヒートシール性に優れ、安価なため特に好ましい。
ラミネート加工方法としては、公知のドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法、ノンソルラミネート法などを用いることができる。
接着剤層に用いられる接着剤としては、各種ラミネート加工方法に応じて、様々な接着剤を選択でき、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系などの公知の接着剤を用いることができる。
本実施形態のガスバリア性フィルムは、上述の実施形態のガスバリア性フィルムのガスバリア層上に、接着剤層を介して、少なくともヒートシール性樹脂層をラミネート加工することにより、ヒートシール可能な包装材料として用いることができる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜10、比較例1〜7]
酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂(A)(以下、「成分(A)」と記すことがある。)として、三井化学社製のポリウレタンディスパージョン「タケラックWPB−341」、または、三井化学社製のポリウレタンディスパージョン「タケラックWPB−363」を用いた。
水溶性高分子(B)(以下、「成分(B)」と記すことがある。)として、ポリビニルアルコール樹脂であるクラレ社製ポバールPVA−117(鹸化度98〜99%、重合度1700)、または、クラレ社製ポバールPVA−105(鹸化度98〜99%、重合度500)を用いた。
無機層状鉱物(C)(以下、「成分(C)」と記すことがある。)として、水膨潤性合成雲母(コープケミカル社製のソマシフMEB−3)、モンモリロナイト(クニミネ工業社製のクニピア−F)を用いた。
成分(A)、成分(B)および成分(C)を、表1に示す固形分配合比率で配合して、80℃にて加熱、混合した後、室温まで冷却して、溶媒中の10質量%がイソプロパノール、最終的な固形分濃度が9%となるように、イオン交換水とイソプロパノールで希釈し、塗工直前に表1および表2に記載の硬化剤(三井化学社製の水溶性ポリソシアネート タケネートWD−725)を添加し、コーティング剤を調製した。
上記のコーティング剤を、グラビアコーターを用いて、表1に示す三次元表面粗さ(算術平均)Saに違いのある、各基材フィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、二軸延伸ナイロン(ONY)フィルム)上に塗工し、90℃のオーブンを10秒間通過させて乾燥し、各基材フィルム上に、それぞれ膜厚0.5μmのガスバリア層を形成したガスバリア性フィルムを得た。
さらに、ガスバリア層形成面側に、ドライラミネーション加工により、ポリエーテル系接着剤(三井化学社製のタケラックA−969V/三井化学社製のタケネートA−5)を介して、厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製のCPP GLC)をラミネートし、40℃にて48時間養生し、表1および表2に示す、実施例1〜10および比較例1〜7の積層体を得た。
[評価方法]
(酸素透過度)
実施例1〜10、比較例1〜7のガスバリア性フィルムについて、酸素透過度測定装置(MOCON社製のOXTRAN−2/20)を用いて、20℃、湿度80%の雰囲気下、酸素透過度を測定した。結果を表1および表2に示す。
(T型ラミネート強度)
実施例1〜10および比較例1〜7の積層体を、40℃、湿度75%の条件下における恒温槽にて2ヶ月間保管した。保管後、積層体を15mm幅の短冊状にカットし、引張試験機テンシロンにより、300mm/分の速度で、基材フィルムとシーラントフィルムの剥離角度が90°になるように剥離させて、ラミネート強度を測定した。結果を表1および表2に示す。
(180°ラミネート強度)
実施例1〜10および比較例1〜7の積層体を、40℃、湿度75%の条件下における恒温槽にて2ヶ月間保管した。保管後、積層体を15mm幅の短冊状にカットし、引張試験機テンシロンにより、300mm/分の速度で、基材フィルムの剥離角度が180°、シーラントフィルムの剥離角度が360°になるように剥離させて、ラミネート強度を測定した。結果を表1および表2に示す。
(三次元表面粗さ)
三次元非接触表面形状計測システムを用いて、以下の条件で各基材フィルムの表面について三次元表面粗さ(算術平均)Sa(nm)を測定した。結果を表1および表2に示す。
システム:Vertscan R3300h Lite(菱化システム社製)
測定領域:1408.31μm×1885.82μm
測定モード:Phase
バンドパスフィルター:520nm
中心面補正:4次
測定回数:3回
測定環境:温度23℃、湿度47%RH
Figure 2015208923
Figure 2015208923
表1および表2に記載の結果から、実施例1〜10では、20℃、湿度80%RHの雰囲気下における酸素透過度の値が50cm/(m・day・MPa)以下と、良好なガスバリア性が得られ、T型ラミネート強度、180°ラミネート強度ともに、0.7N/15mm以上の値を維持していた。
一方、比較例1〜6では、ガスバリア性は良好だが、T型ラミネート強度および180°ラミネート強度のいずれか一方、あるいは両方が0.6N/15mm以下であった。これは、包装材料としてデラミネーション不良を発生する可能性が高い強度である。
また、比較例7では、比較例1〜6と同様に、十分なラミネート強度を得られないことに加え、20℃、湿度80%RHの雰囲気下における酸素透過度の値が500cm/(m・day・MPa)以上となり、高湿度下における良好なガスバリア性を得ることができなかった。
また、従来、T型ラミネート強度のみでは、ガスバリア性積層体のラミネート強度の評価が十分ではなかった。すなわち、ガスバリア性積層体を、立体の内容物を詰めて密封する包装材料として用いた場合に、搬送時の振動等により、包装材料の屈曲部分に繰り返しの負荷がかかることでデラミネーション不良(浮き)が発生する場合がある。例えば、所定の包装形態にて、JIS Z 0232(方法A)に従って振動試験を実施すると、浮きの発生数に実施例と比較例で差異が認められた。さらに、この試験での浮きの発生数は、T型ラミネート強度よりも、180°ラミネート強度と相関性が高い傾向であった。従って、包装材料としての実用強度を評価する場合、T型ラミネート強度のみでは十分ではなく、実施例と比較例の差異を見出し難かった。そこで、本実施例および比較例では、ガスバリア性積層体のT型ラミネート強度に加えて、180°ラミネート強度を測定することにより、実施例と比較例の強度差を明確にすることができた。
本発明のガスバリア性フィルムおよびガスバリア性積層体は、高湿度雰囲気下における高いガスバリア性と、基材への十分な密着強度と皮膜の凝集強度を両立し、かつ高湿度雰囲気下で長期間保管されても、時間の経過に伴ってラミネート強度が劣化することがなく、デラミネーション不良を発生しないので、各種包装材料として種々の分野に利用することができる。

Claims (3)

  1. プラスチック材料からなる基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられた、酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)および無機層状鉱物(C)を主たる構成成分として含むガスバリア層と、を備え、
    前記基材フィルムにおける前記ガスバリア層が設けられる面の三次元表面粗さ(算術平均)Saが、50nm以上であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
  2. 前記基材フィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびナイロンから選択される1種のプラスチック材料からなることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. 請求項1または2に記載のガスバリア性フィルムと、該ガスバリア性フィルムの少なくとも一方の面に順に積層された、接着剤層およびヒートシール性樹脂層と、を備えたことを特徴とするガスバリア性積層体。
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