以下、本発明のダイシングフィルムについて詳細に説明する。
まず、本発明のダイシングフィルムを説明するのに先立って、本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープを用いて製造された半導体装置について説明する。
<半導体装置>
図1は、本発明のダイシングフィルムを用いて製造された半導体装置の一例を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図1に示す半導体装置10は、QFP(Quad Flat Package)型の半導体パッケージであり、半導体チップ(半導体素子)20と、半導体チップ20を接着層60を介して支持するダイパッド30と、半導体チップ20と電気的に接続されたリード40と、半導体チップ20を封止するモールド部(封止部)50とを有している。
ダイパッド30は、金属基板で構成され、半導体チップ20を支持する支持体として機能を有するものである。
このダイパッド30は、例えば、Cu、Fe、Niやこれらの合金(例えば、Cu系合金や、Fe−42Niのような鉄・ニッケル系合金)等の各種金属材料で構成される金属基板や、この金属基板の表面に銀メッキや、Ni−Pdメッキが施されているもの、さらにNi−Pdメッキの表面にPd層の安定性を向上するために設けられた金メッキ(金フラッシュ)層が設けられているもの等が用いられる。
また、ダイパッド30の平面視形状は、通常、半導体チップ20の平面視形状に対応し、例えば、正方形、長方形等の四角形とされる。
ダイパッド30の外周部には、複数のリード40が、放射状に設けられている。
このリード40のダイパッド30と反対側の端部は、モールド部50から突出(露出)している。
リード40は、導電性材料で構成され、例えば、前述したダイパッド30の構成材料と同一のものを用いることができる。
また、リード40には、その表面に錫メッキ等が施されていてもよい。これにより、マザーボードが備える端子に半田を介して半導体装置10を接続する場合に、半田とリード40との密着性を向上させることができる。
ダイパッド30には、接着層55を介して半導体チップ20が固着(固定)されている。
この接着層55は、特に限定されないが、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ポリイミド系接着剤およびシアネート系接着剤等の各種接着剤を用いて形成される。また、接着層55には、銀粉や銅粉のような金属粒子が含まれていてもよい。これにより、接着層55の熱伝導性が向上することから、接着層55を介して半導体チップ20からダイパッド30に効率よく熱が伝達されるため、半導体チップ20の駆動時における放熱性が向上する。
また、半導体チップ20は、電極パッド21を有しており、この電極パッド21とリード40とが、ワイヤー22で電気的に接続されている。これにより、半導体チップ20と各リード40とが電気的に接続されている。
このワイヤー22の材質は、特に限定されないが、ワイヤー22は、例えば、Au線やAl線で構成することができる。
そして、ダイパッド30、ダイパッド30の上面側に設けられた各部材およびリード40の内側の部分は、モールド部50により封止されている。その結果として、リード40の外側の端部が、半導体封止材料の硬化物で構成されるモールド部50から突出している。
かかる構成の半導体装置は、例えば、本発明のダイシングフィルムを用いて以下のようにして製造される。
<半導体装置の製造方法>
図2および図3は、図1に示す半導体装置を、本発明のダイシングフィルムを用いて製造する方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、図2および図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
まず、図2(b)に示すように、半導体ウエハ7の回路面S1側に、剥離可能な粘着テープであるバックグラインドテープ6を積層する。バックグラインドテープ6の積層は、あらかじめフイルム状に成形された20℃〜35℃のバックグラインドテープを張り付ける方法により行うことができる。
バックグラインドテープ6について説明する。
バックグラインドテープ6は特に限定されるものではないが、熱により剥離性を有する者が好ましい。
図2(c)に示すように、バックグラインドテープ6が熱剥離性を有するためには、基材61と、熱膨張性粘着層62から構成されるものが好ましい。
前記、バックグラインドテープ6の基材61としては、特に限定されるものではないが、樹脂材料から構成され、前記、樹脂材料としては特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンのようなポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレンのようなポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、亜鉛イオン架橋体、ナトリウムイオン架橋体のようなアイオノマー、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体等のオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンのようなポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーのようなオレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリビニルイソプレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂や、これらの熱可塑性樹脂の混合物が用いられる。
前記、バックグラインドテープ6の、熱膨張性粘着層62は、熱膨張性微小球を含有して加熱により膨張し、その膨張による凹凸変形を介し表面の粘着層も凹凸変形させて被着体に対する接着力を低減させるものである。従って被着体に接着した加熱剥離型粘着シートを任意な時にその熱膨張性粘着層を加熱処理して、被着体より簡単に剥離することを可能とするものである。
熱膨張性粘着層62は、例えば熱膨張性微小球と結合剤の混合層などとして形成することができる。その結合剤としては、熱膨張性微小球の加熱による発泡及び/又は膨張を許容するポリマー類やワックス類などの適宜なものを用いうる。就中、熱膨張性微小球の発泡及び/又は膨張を可及的に拘束しないものが好ましい。前記熱膨張性微小球の加熱膨張性や被着体に対する粘着層を介した接着力等の粘着特性の制御性などの点より、特に好ましく用いうる結合剤は粘着剤である。
前記の熱膨張性粘着層62に使用される粘着剤としては、特に限定はなく、例えばゴム系やアクリル系、ビニルアルキルエーテル系やシリコーン系、ポリエステル系やポリアミド系、ウレタン系やフッ素系、スチレン−ジエンブロック共重合体系等のポリマーを用いたものや、融点が約200℃以下等の熱溶融性樹脂を配合してクリープ特性を改良したもの、放射線硬化型のものや、それらに必要に応じて例えば架橋剤や粘着付与剤、可塑剤や軟化剤、充填剤や顔料、着色剤や老化防止剤、界面活性剤等の各種の添加剤を配合したものなどの適宜なものの1種又は2種以上を用いることができる。
一方、熱膨張性粘着層62に配合する熱膨張性微小球としては、例えばイソブタンやプロパン、ペンタンの如く容易にガス化して熱膨張性を示す適宜な物質をコアセルベーション法や界面重合法等の適宜な方式にて殻形成物質、例えば塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体やポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールやポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルやポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンの如き熱溶融性物質や熱膨張で破壊する物質などからなる殻の内部に内包させたマイクロカプセルなどがあげられる。マイクロカプセルを使用することで、熱膨張性微小球の使用により加熱による被着体の汚染度の増大を安定に抑制することができる。マイクロカプセル化していない発泡剤等では、表面を形成する粘着層を凝集破壊するためか汚染度増大の抑制効果に乏しくなる。加熱による接着力低減の操作性、就中その接着力低減の安定した達成性などの点よりは、破裂するまでの体積膨張が5倍以上、好ましくは7倍以上、より好ましくは10倍以上の熱膨張性微小球が用いられる。
用いる熱膨張性微小球の平均粒径は、適宜に決定でき、一般には100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは1〜50μmのものであるが、これに限定されない。なお熱膨張性微小球として、マイクロスフェア(マツモトマイクロスフィアF-50D、松本油脂製薬社製)等の市販物を使用することができる。
熱膨張性微小球の使用量は、熱膨張性粘着層の膨張倍率や接着力の低減性などにより適宜に決定してよい。一般には、上記した結合剤、粘着剤の場合にはそのベースポリマー100重量部あたり、1〜150重量部、好ましくは10〜130重量部、特に好ましくは25〜100重量部の熱膨張性微小球が用いられる。
熱膨張性粘着層の形成は、例えば熱膨張性微小球と結合剤等の配合成分を必要に応じ溶媒を用いて混合し、その混合物を塗布方式等の適宜な方式で展開してシート状の層を形成する方式などにより行うことができる。その層の厚さは、接着力の低減性などにより適宜に決定しうる。
次に、図2(d)に示すように、半導体ウエハ7のバックグラインドテープ6とは反対側の面(裏面S2)を研磨して、半導体ウエハ7を所定の厚さまで、薄くする。研磨は、バックグラインドテープ6によって、半導体ウエハ7を研磨用の治具に固定した状態で、グラインド装置201を使用して行う。ここで、バックグラインドテープ6が半導体ウエハ7の回路面S1側に張り付けられているので、均一に圧力を加えることができる。その結果、研磨により、半導体ウエハ7の裏面S2を平坦化できる。
つづいて、基材4と、基材4上に積層された粘着層2とを有するダイシングフィルム100を用意する(図3(a)参照。)。
このダイシングフィルム100が本発明のダイシングフィルムで構成されるが、その詳細な説明は後に行うこととする。
次に、図3(b)に示すように、図示しないダイサーテーブルの上に、粘着テープ100を設置し、その中心部122に半導体用ウエハ7とバックグラインドテープ6が積層された積層体の、裏面S2側を、粘着層2の上に置き、軽く押圧し、半導体用ウエハ7とバックグラインドテープ6が積層された積層体を積層する。
なお、ダイシングフィルム100に半導体用ウエハ7とバックグラインドテープ6が積層された積層体を予め貼着した後に、ダイサーテーブルに設置しても良い。
次に、粘着層2の外周部121をウエハリング9で固定する。(図3(C)参照。)
つづいて、バックグラインドテープ6を、半導体ウエハ7の、回路面S1より剥離する。バックグラインドテープ6の剥離方法としては特に限定されず、加熱して剥離する方法、放射線等を照射して剥離する方法等があるが、130℃から150℃に加熱し、バックグラインドテープ6の粘着力を低下させてから、剥離する方法が好ましい。(図3(d)参照。)
次に、図示しない、ダイシングソー(ブレード)を用いて半導体用ウエハ7を切断(ダイシング)して半導体用ウエハ7を個片化する(図3(e)参照)。
また、ダイシングフィルム100は、緩衝作用を有しており、半導体用ウエハ7を切断する際の割れ、欠け等を防止する。
さらに、ブレードを用いた半導体用ウエハ7の切断は、図3(e)に示すように、基材4の厚さ方向の途中まで到達するように実施される。これにより、半導体用ウエハの個片化を確実に実施することができる。
次に、ダイシングフィルム100が備える粘着層2にエネルギーを付与することで、粘着層2の半導体用ウエハ7に対する粘着性を低下させる。
これにより、粘着層2と半導体用ウエハ7との間で剥離が生じる状態とする。
粘着層2にエネルギーを付与する方法としては、特に限定されないが、例えば、粘着層2にエネルギー線を照射する方法、粘着層2を加熱する方法等が挙げられるが、中でも、粘着層2にエネルギー線をダイシングフィルム100の基材4側から照射する方法を用いるのが好ましい。
また、エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。これらの中でも、特に、紫外線を用いるのが好ましい。紫外線によれば、粘着層2の半導体用ウエハ7に対する粘着性を効率よく低下させることができる。
次に、ダイシングフィルム100を図示しないエキスパンド装置で放射状に伸ばして、個片化した半導体用ウエハ−7(半導体チップ20)を一定の間隔に開き(図3(f)参照。)、その後、この半導体チップ20を、ニードル等を用いて突き上げた状態とし、この状態で、真空コレットまたはエアピンセットによる吸着等によりピックアップする(図3(g)参照。)。
次に、ピックアップした半導体チップ20を、接着層60を介してダイパッド30上に搭載し、その後、半導体チップ20が備える電極パッド21とリード40とをワイヤーボンディングすることでワイヤー22により電気的に接続する。
次に、半導体チップ20をモールド部50で封止する。
このモールド部50による封止は、例えば、形成すべきモールド部50の形状に対応した内部空間を備える成形型を用意し、この内部空間内に配置された半導体チップ20を取り囲むように、粉末状をなす半導体封止材料を内部空間に充填する。そして、この状態で、半導体封止材料を加熱することにより硬化させて、半導体封止材料の硬化物とすることにより行われる。
以上のような工程を有する半導体装置の製造方法により、半導体装置10が得られるが、以下、半導体装置の製造方法に用いられるダイシングフィルム100(本発明の半導体ウエハ加工用ダイシングフィルム)について説明する。
<ダイシングフィルム>
図3(a)は、本発明の半導体用ウエハ加工用ダイシングフィルムの実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
ダイシングフィルム100(本発明の半導体用ウエハ加工用ダイシングフィルム)は、基材4と、この基材4に積層された粘着層2とを備える積層体により構成されるものであり、基材4は、130℃での引っ張り弾性率が1.0×107Pa以上であり、23℃での引っ張り弾性率が3.0×109Pa以下であることを特徴とする。
粘着層2を介して半導体用ウエハ7を支持する基材4の引っ張り弾性率をかかる範囲内に設定することで、バックグラインドテープを剥離する際に、半導体ウエハ7を加熱しても、半導体用ウエハ加工用ダイシングフィルム100にしわ・たるみが生じるのを的確に抑制または防止することができる。そのため、かかる半導体用ウエハ加工用ダイシングフィルム100に積層された半導体用ウエハ7を優れた精度で切断することができる。
以下、ダイシングフィルム100が有する基材4および粘着層2について、詳述する。
なお、ダイシングフィルム100は、このものが備える粘着層2にエネルギーを付与することで、粘着層2の半導体用ウエハ7に対する粘着性が低下する機能を有するものである。
このような粘着層2にエネルギーを付与する方法としては、粘着層2にエネルギー線を照射する方法および粘着層2を加熱する方法等が挙げられるが、中でも、粘着層2にエネルギー線を照射する方法が好適に用いられる。そのため、以下では、粘着層2として、エネルギー線の照射により前記粘着性が低下するものを代表に説明する。
<基材4>
基材4は、主として樹脂材料から成り、この基材4上に設けられた粘着層2を支持する機能を有している。
かかる樹脂材料としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンのようなポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレンのようなポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、亜鉛イオン架橋体、ナトリウムイオン架橋体のようなアイオノマー、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体等のオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンのようなポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーのようなオレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリビニルイソプレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂や、これらの熱可塑性樹脂の混合物が用いられる。
これらの樹脂材料は、光(可視光線、近赤外線、紫外線)、X線、電子線等のエネルギー線を透過し得る材料であることから、前記工程において、エネルギー線を基材4側から基材4を透過させて粘着層2に照射する場合に好ましく用いることができる。
特に、樹脂材料としては、ポリプロピレンとエラストマーとの混合物、またはポリエチレンとエラストマーとの混合物を用いることが好ましい。
エラストマーとしてはポリプロピレンエラストマー、スチレン系エラストマーなどがあげられる。
また、基材4は、鉱油のような軟化剤、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、マイカ、クレーのような充填材、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、分散剤、中和剤、着色剤等を含有するものであってもよい。
基材4の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上300μm以下であるのが好ましく、30μm以上200μm以下であるのがより好ましく、80μm以上200μm以下であるのがさらに好ましい。基材4の厚さがこの範囲内であると、前記工程[3A]における半導体用ウエハ7のダイシングを、優れた作業性により実施することができる。
さらに、基材4は、その表面に、粘着層2に含まれる構成材料と反応性を有する、ヒドロキシル基、アミノ基のような官能基が露出していることが好ましい。
また、基材4は、異なる前記樹脂材料で構成される層を複数積層した積層体(多層体)で構成されるものであってもよい。さらに、前記樹脂材料をドライブレンドしたブレンドフィルムで構成されるものであってもよい。
前述したように、基材4は、130℃での引っ張り弾性率が1.0×107Pa以上であり、好ましくは1.5×107Pa以上である。これにより、バックグラインドテープを剥離する際に、半導体ウエハ7を加熱しても、半導体用ウエハ加工用ダイシングフィルム100にしわ・たるみが生じるのを的確に抑制または防止することができる。そのため、かかる半導体用ウエハ加工用ダイシングフィルム100に積層された半導体用ウエハ7を優れた精度で切断することができる。
また、基材4は、23℃での引っ張り弾性率が3.0×109Pa以下であり、より好ましく、2.0×109Pa以下である。これにより、エキスパンド工程において、好適にエキスパンドを行うことができ、半導体チップをピックアップすることができる。
また、前記基材4の23℃での引っ張り弾性率が3.0×108Pa以上であることが好ましく、より好ましくは、3.5×108Pa以上である。これにより、フィルムのブロッキングがなく基材製膜時に巻くことが出来る。
基材4の引っ張り弾性率は、基材4を主として構成する樹脂材料や、任意の材料として挙げた軟化剤、充填材、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、分散剤、中和剤、着色剤等の種類や含有量を適宜設定することにより、前述したような範囲内に設定することができる。
すなわち、樹脂材料として、例えば、ポリプロピレンとエラストマーの混合物、または、ポリエチレンとエラストマーの混合物を用いることによって、130℃での高い引っ張り弾性率を維持しつつ、23℃での引っ張り弾性率が高くなりすぎることを抑制することができる。
引っ張り弾性率の測定方法としては粘弾性測定装置DMSを用いて昇温速度5℃/minの条件で行うことができる。
<粘着層>
粘着層2は、半導体用ウエハ7をダイシングする際に、半導体用ウエハ7を粘着して支持する機能を有している。また、この粘着層2は、このものに対するエネルギーの付与により半導体用ウエハ7への粘着性が低下し、これにより、粘着層2と半導体用ウエハ7との間で容易に剥離を生じさせ得る状態となるものである。
かかる機能を備える粘着層2は、(1)粘着性を有するベース樹脂と、(2)粘着層2を硬化させる硬化性樹脂とを主材料として含有する樹脂組成物で構成される。
以下、樹脂組成物に含まれる各成分について、順次、詳述する。
(1)ベース樹脂
ベース樹脂は、粘着性を有し、粘着層2へのエネルギー線の照射前に、半導体用ウエハ7に対する粘着性を粘着層2に付与するために、樹脂組成物中に含まれるものである。
このようなベース樹脂としては、アクリル系樹脂(粘着剤)、シリコーン系樹脂(粘着剤)、ポリエステル系樹脂(粘着剤)、ポリ酢酸ビニル系樹脂(粘着剤)、ポリビニルエーテル系樹脂(粘着剤)またはウレタン系樹脂(粘着剤)のような粘着層成分として用いられる公知のものが挙げられるが、中でも、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。アクリル系樹脂は、耐熱性に優れ、また、比較的容易かつ安価に入手できることから、ベース樹脂として好ましく用いられる。
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー主成分とするポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)をベースポリマーとするもののことを言う。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルのような(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、特に、耐熱性に優れ、また、比較的容易かつ安価に入手できる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの双方を含む意味で用いることとする。
また、このアクリル系樹脂は、そのガラス転移点が20℃以下であることが好ましい。これにより、粘着層2へのエネルギー線の照射前において、粘着層2に優れた粘着性を発揮させることができる。
アクリル系樹脂は、凝集力、耐熱性等の改質等を目的として、必要に応じて、ポリマーを構成するモノマー成分として、共重合性モノマーを含むものが用いられる。
このような共重合性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシルのようなヒドロキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジルのようなエポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸のようなカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸のような酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドのようなアミド系モノマー、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルのようなアミノ基含有モノマー、(メタ)アクリロニトリルのようなシアノ基含有モノマー、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンのようなオレフィン系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンのようなスチレン系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル系モノマー、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルのようなビニルエーテル系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデンのようなハロゲン原子含有モノマー、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルのようなアルコキシ基含有モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環を有するモノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら共重合性モノマーの含有量は、アクリル系樹脂を構成する全モノマー成分に対して、40重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
また、共重合性モノマーは、アクリル系樹脂を構成するポリマーにおける主鎖の末端に含まれるものであってもよいし、その主鎖中に含まれるもの、さらには、主鎖の末端と主鎖中との双方に含まれるものであってもよい。
さらに、共重合性モノマーには、ポリマー同士の架橋等を目的として、多官能性モノマーが含まれていてもよい。
多官能性モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、エチレン−酢酸ビニルコポリマーおよび酢酸ビニルポリマー等も、共重合性モノマー成分として用いることができる。
なお、このようなアクリル系樹脂(ポリマー)は、単一のモノマー成分または2種以上のモノマー成分の混合物を重合させることにより生成させることができる。また、これらモノマー成分の重合は、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法、懸濁重合方法等の重合方法を用いて実施することができる。
以上、説明したモノマー成分を重合することにより得られるアクリル系樹脂としては、炭素−炭素二重結合を、側鎖、主鎖中または主鎖の末端に有しているアクリル系樹脂(「二重結合導入型アクリル系樹脂」と言うこともある。)であることが好ましい。アクリル系樹脂が二重結合導入型アクリル系樹脂である場合には、後述する硬化性樹脂の添加を省略したとしても、得られる粘着層2に、上述した粘着層2としての機能を発揮させることができる。
このような二重結合導入型アクリル系樹脂としては、アクリル系樹脂を構成するポリマー内の側鎖のうち、1/100以上の側鎖のそれぞれに、炭素−炭素二重結合を1個有している二重結合導入型アクリル系樹脂(「二重結合側鎖導入型アクリル系樹脂」と言うこともある。)であることが好ましい。このように、炭素−炭素二重結合を、アクリル系樹脂の側鎖に導入することは、分子設計の点からも有利である。なお、この二重結合側鎖導入型アクリル系樹脂は、主鎖中や、主鎖の末端にも、炭素−炭素二重結合を有していてもよい。
このような二重結合導入型アクリル系樹脂の合成方法(すなわち、アクリル系樹脂に炭素−炭素二重結合を導入する方法)としては、特に限定されず、例えば、共重合性モノマーとして官能基を有するモノマーを用いて共重合して、官能基を含有するアクリル系樹脂(「官能基含有アクリル系樹脂」と言うこともある。)を合成した後、官能基含有アクリル系樹脂中の官能基と反応し得る官能基と、炭素−炭素二重結合とを有する化合物(「炭素−炭素二重結合含有反応性化合物」と言うこともある。)を、官能基含有アクリル系樹脂に、炭素−炭素二重結合のエネルギー線硬化性(エネルギー線重合性)を維持した状態で、縮合反応または付加反応させることにより、二重結合導入型アクリル系樹脂を合成する方法等が挙げられる。
なお、アクリル系樹脂に炭素−炭素二重結合を、全側鎖のうちの1/100以上の側鎖に導入する際の制御手段としては、例えば、官能基含有アクリル系樹脂に縮合反応または付加反応させる化合物である炭素−炭素二重結合含有反応性化合物の含有量を適宜調節することにより行う方法等が挙げられる。
また、官能基含有アクリル系樹脂に炭素−炭素二重結合含有反応性化合物を縮合反応又は付加反応させる際には、触媒を用いることにより、前記反応を効果的に進行させることができる。このような触媒としては、特に制限されないが、ジラウリン酸ジブチルスズのようなスズ系触媒が好ましく用いられる。このスズ系触媒の含有量としては、特に制限されないが、例えば、官能基含有アクリル系樹脂100重量部に対して0.05重量部以上1重量部以下であることが好ましい。
また、官能基含有アクリル系樹脂における官能基Aおよび炭素−炭素二重結合含有反応性化合物における官能基Bとしては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、アジリジン基等が挙げられ、さらに、官能基含有アクリル系樹脂における官能基Aと、炭素−炭素二重結合含有反応性化合物における官能基Bとの組み合わせとしては、例えば、カルボン酸基(カルボキシル基)とエポキシ基との組み合わせ、カルボン酸基とアジリジル基との組み合わせ、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせ、ヒドロキシル基とカルボキシル基との組み合わせ等の各種の組み合わせが挙げられ、これらの中でも、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせであることが好ましい。これにより、これら官能基A、B同士の反応追跡を容易に行うことができる。
さらに、これらの官能基A、Bの組み合わせにおいて、何れの官能基が、官能基含有アクリル系樹脂の官能基Aまたは炭素−炭素二重結合含有反応性化合物の官能基Bとなっていてもよいが、例えば、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせの場合、ヒドロキシル基が、官能基含有アクリル系樹脂における官能基Aとなっており、イソシアネート基が、炭素−炭素二重結合含有反応性化合物における官能基Bとなっていることが好ましい。
この場合、官能基含有アクリル系樹脂を構成する官能基Aを有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸のようなカルボキシル基を有するもの、無水マレイン酸、無水イタコン酸のような酸無水物基を有するもの、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテルのようなヒドロキシル基を有するもの、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルのようなエポキシ基を有するもの等が挙げられる。
また、官能基Bを有する炭素−炭素二重結合含有反応性化合物としては、イソシアネート基を有するものとして、例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシメチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルイソシアネート、m−プロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられ、エポキシ基を有するものとして、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
アクリル系樹脂は、前記工程において、半導体用ウエハ7をダイシングする際に、半導体用ウエハ7等の汚染を防止するという観点から、低分子量物の含有量が少ないものであることが好ましい。この場合、アクリル系樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは30万〜500万に設定され、より好ましくは50万〜500万に設定され、さらに好ましくは80万〜300万に設定される。なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量が、モノマー成分の種類等によっては、50万未満であると、半導体用ウエハ7等に対する汚染防止性が低下し、半導体チップ20を剥離させた際に糊残りが生じるおそれがある。
なお、アクリル系樹脂は、ヒドロキシル基やカルボキシル基(特に、ヒドロキシル基)のような、架橋剤や光重合開始剤に対して反応性を有する官能基(反応性官能基)を有していることが好ましい。これにより、架橋剤や光重合開始剤がポリマー成分であるアクリル樹脂に連結するため、粘着層2からこれら架橋剤や光重合開始剤が漏出することを的確に抑制または防止することができる。その結果、前記工程[4A]におけるエネルギー線照射時により、粘着層2の半導体用ウエハ7に対する粘着性が確実に低下される。
(2)硬化性樹脂
硬化性樹脂は、例えば、エネルギー線の照射により硬化する硬化性を備えるものである。この硬化によってベース樹脂が硬化性樹脂の架橋構造に取り込まれた結果、粘着層2の粘着力が低下する。
このような硬化性樹脂としては、例えば、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射によって三次元架橋可能な重合性炭素−炭素二重結合を、官能基として少なくとも2個以上分子内に有する低分子量化合物が用いられる。具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物、エステルアクリレートオリゴマー、2−プロペニル−ジ−3−ブテニルシアヌレート等の炭素−炭素二重結合含有基を有しているシアヌレート系化合物、トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、2−ヒドロキシエチル ビス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−アクリロキシエチル) 2−[(5−アクリロキシヘキシル)−オキシ]エチルイソシアヌレート、トリス(1,3−ジアクリロキシ−2−プロピル−オキシカルボニルアミノ−n−ヘキシル)イソシアヌレート、トリス(1−アクリロキシエチル−3−メタクリロキシ−2−プロピル−オキシカルボニルアミノ−n−ヘキシル)イソシアヌレート、トリス(4−アクリロキシ−n−ブチル)イソシアヌレートのような炭素−炭素二重結合含有基を有しているイソシアヌレート系化合物、市販のオリゴエステルアクリレート、芳香族系、脂肪族系等のウレタンアクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、官能基数が6官能以上であるオリゴマーが含まれることが好ましく、官能基数が15官能以上であるオリゴマーが含まれることがより好ましい。これにより、エネルギー線の照射により硬化性樹脂をより確実に硬化させることができる。また、このような硬化性樹脂は、ウレタンアクリレートであることが好ましい。これにより、適度な柔軟性によるピックアップ時の糊割れを抑制できるという効果が得られる。
なお、このウレタンアクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル型またはポリエーテル型等のポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナート等)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等)を反応させて得られたものが挙げられる。
また、硬化性樹脂には、特に限定されないが、重量平均分子量の異なる2つ以上の硬化性樹脂が混合されているのが好ましい。このような硬化性樹脂を利用すれば、エネルギー線照射による樹脂の架橋度を容易に制御することができ、前記工程[5A]における半導体チップ20のピックアップ性を向上させることができる。また、このような硬化性樹脂として、例えば、第1の硬化性樹脂と、第1の硬化性樹脂よりも重量平均分子量が大きい第2の硬化性樹脂との混合物等が用いられてもよい。
硬化性樹脂を、第1の硬化性樹脂と、第2の硬化性樹脂との混合物とする場合、第1の硬化性樹脂の重量平均分子量は、100〜1000程度であることが好ましく、200〜500程度であることがより好ましい。また、第2の硬化性樹脂の重量平均分子量は、1000〜30000程度であることが好ましく、1000〜10000程度であることがより好ましく、2000〜5000程度であることがさらに好ましい。さらに、第1の硬化性樹脂の官能基数は、1〜5官能基であることが好ましく、第2の硬化性樹脂の官能基数は、6官能基以上であることが好ましい。かかる関係を満足することにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
硬化性樹脂は、ベース樹脂100重量部に対して5重量部以上500重量部以下で配合されることが好ましく、10重量部以上300重量部以下で配合されることがより好ましく、20重量部以上200重量部以下で配合されることがさらに好ましい。上記のように硬化性樹脂の配合量を調整することによって、前記工程における半導体チップ20のピックアップ性を優れたものとすることができる。
なお、この硬化性樹脂は、前述したアクリル系樹脂として、二重結合導入型アクリル系樹脂を用いた場合、すなわち、炭素−炭素二重結合を、側鎖、主鎖中または主鎖の末端に有しているものを用いた場合には、その樹脂組成物中への添加を省略するようにしてもよい。これは、アクリル系樹脂が二重結合導入型アクリル系樹脂である場合には、エネルギー線の照射により、二重結合導入型アクリル系樹脂が備える炭素−炭素二重結合の機能によって、粘着層2が硬化し、これにより、粘着層2の粘着力が低下することによる。
(3)光重合開始剤
また、粘着層2は、エネルギー線の照射により半導体用ウエハ7に対する粘着性が低下するものであるが、エネルギー線として紫外線等を用いる場合には、硬化性樹脂には、硬化性樹脂の重合開始を容易とするために光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ミヒラーズケトン、アセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾイン、ジベンジル、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン、2−ナフタレンスルホニルクロリド、1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、4,4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、o−アクリルオキシベンゾフェノン、p−アクリルオキシベンゾフェノン、o−メタクリルオキシベンゾフェノン、p−メタクリルオキシベンゾフェノン、p−(メタ)アクリルオキシエトキシベンゾフェノン、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリラート、1,2−エタンジオールモノ(メタ)アクリラート、1,8−オクタンジオールモノ(メタ)アクリラートのようなアクリラートのベンゾフェノン−4−カルボン酸エステル、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、アゾビスイソブチロニトリル、β−クロールアンスラキノン、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナート、ポリビニルベンゾフェノン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、2,4,5−トリアリ−ルイミダゾール二量体、等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの中でも、ベンゾフェノン誘導体およびアルキルフェノン誘導体であることが好ましい。これらの化合物は分子中に反応性官能基として水酸基を備えるものであり、この反応性官能基を介して、ベース樹脂や硬化性樹脂に連結することができ、光重合開始剤としての機能をより確実に発揮させることができる。
光重合開始剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.1重量部以上50重量部以下で配合されることが好ましく、0.5重量部以上10重量部以下で配合されることがより好ましい。上記のように光重合開始剤の配合量を調整することによって、粘着テープ100のピックアップ性は好適なものとなる。
(4)架橋剤
さらに、硬化性樹脂には、架橋剤が含まれていてもよい。架橋剤が含まれることで、硬化性樹脂の硬化性の向上が図られる。
架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、尿素樹脂系架橋剤、メチロール系架橋剤、キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、多価金属キレート系架橋剤、酸無水物系架橋剤、ポリアミン系架橋剤、カルボキシル基含有ポリマー系架橋剤等が挙げられる。これらの中でもイソシアネート系架橋剤が好ましい。
イソシアネート系架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、多価イソシアネートのポリイソシアネート化合物およびポリイソシアネート化合物の三量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート化合物の三量体または末端イソシアネートウレタンプレポリマーをフェノール、オキシム類等で封鎖したブロック化ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
また、多価イソシアネートとして、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4'−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートから成る群より選択される少なくとも1種の多価イソシアネートが好ましい。
架橋剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.01重量部以上50重量部以下で配合されることが好ましく、5重量部以上50重量部以下で配合されることがより好ましい。上記のように架橋剤の配合量を調整することによって、粘着テープ100のピックアップ性は好適なものとなる。
(5)その他の成分
さらに、粘着層2を構成する樹脂組成物には、上述した各成分(1)〜(4)の他に他の成分として、帯電防止剤、粘着付与剤、老化防止剤、粘着調整剤、充填材、着色剤、難燃剤、軟化剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤等のうちの少なくとも1種が含まれていてもよい。以下、これらのうち、帯電防止剤および粘着付与剤について説明する。
(5−1)帯電防止剤
帯電防止剤としては、特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等の界面活性剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、温度依存性を示さない帯電防止剤としては、例えば、カーボンブラック、銀、ニッケル、アンチモンドープスズ酸化物、スズドープインジウム酸化物等の粉体が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(5−2)粘着付与剤
粘着付与剤としては、特に限定されないが、例えば、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、粘着層2の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上30μm以下であるのが好ましく、5μm以上30μm以下であるのがより好ましく、10μm以上20μm以下であるのがさらに好ましい。粘着層2の厚さをかかる範囲内とすることで、粘着層2は、粘着層2へのエネルギー付与前には、良好な粘着力を発揮するとともに、粘着層2へのエネルギー付与後には、粘着層2と半導体用ウエハ7との間において、良好な剥離性を発揮する。
次に、かかる構成の半導体用ウエハ加工用ダイシングフィルム100は、例えば、以下のようにして製造することができる。
<半導体用ウエハ加工用ダイシングフィルムの製造方法>
図4は、図3に示す半導体用ウエハ加工用粘着テープを製造する方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
まず、基材4を用意し、この基材4上に粘着層2を形成する(図4(a)参照。)。
基材4の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、カレンダー法、インフレーション押出し法、Tダイ押出し法のような押出成形法、湿式キャスティング法等の一般的な成形方法が挙げられる。なお、基材4が積層体で構成される場合、かかる構成のその基材4の製造方法としては、例えば、共押出し法、ドライラミネート法等の成形方法が用いられる。
また、基材4は、無延伸で用いることができるし、さらに、必要に応じて一軸または二軸の延伸処理を施したものを用いるようにしてもよい。また、基材4の表面には、基材4と粘着層2との密着性を向上させることを目的に、コロナ処理、クロム酸処理、マット処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理、プライマー処理、アンカーコート処理のような表面処理が施されていてもよい。
また、粘着層2は、基材4上に、粘着層2の構成材料である樹脂組成物を溶剤に溶解してワニス状にした液状材料を、塗布または散布した後、溶剤を揮発させて粘着層2を形成することにより得ることができる。
なお、溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、ジメチルホルムアルデヒド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、基材4上への液状材料の塗布または散布は、例えば、ダイコート、カーテンダイコート、グラビアコート、コンマコート、バーコートおよびリップコート等の方法を用いて行うことができる。
次に、基材4上に形成された粘着層2に対して、中心側と外周側とが分離されるように、粘着層2の厚さ方向に基材4を残存させて円環状に粘着層2の一部を除去することにより、粘着層2を中心部122と外周部121とを備えるものとする。
粘着層2の一部を円環状に除去する方法としては、例えば、除去すべき領域を取り囲むように打ち抜いた後、この打ち抜かれた領域に位置する粘着層2を除去する方法が挙げられる。
また、除去すべき領域に対する打ち抜きは、例えば、ロール状金型を用いる方法や、プレス金型を用いる方法を用いて行うことができる。中でも、連続的に粘着テープ100を製造することができるロール状金型を用いる方法が好ましい。
なお、本工程では、粘着層2の一部をリング状(円形状)に打ち抜いて中心部122と外周部121とを形成したが、粘着層2の一部を打ち抜く形状は、前述した半導体装置の製造方法において、粘着層2の外周部121をウエハリングで固定できる形状となっていれば如何なる形状のものであってもよい。具体的には、打ち抜く形状としては、例えば、上述した円形状の他、楕円状、俵型状のような長円状や、四角形状、五角形状のような多角形状等が挙げられる。
次に、基材4上に形成された粘着層2に対して、セパレーターを積層することにより、粘着層2がセパレーターで被覆された粘着テープ100を得る。
粘着層2にセパレーターを積層する方法としては、特に制限されないが、例えば、ロールを用いたラミネート方法、プレスを用いたラミネート方法を用いることができる。これらの中でも、連続的に生産できるという生産性の観点から、ロールを用いたラミネート方法が好ましい。
なお、セパレーターとしては、特に限定されないが、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタラートフィルム等が挙げられる。
また、セパレーターは、粘着テープ100の使用時に剥がされるために、表面を離型処理を施されたものを使用してもよい。離型処理としては離型剤をセパレーター表面にコーティングする処理や、セパレーター表面に細かい凹凸をつける処理等が挙げられる。なお、離型剤としては、シリコーン系、アルキッド系、フッ素系等のものが挙げられる。
以上のような工程を経て、セパレーターで被覆された粘着テープ100を形成することができる。
なお、本実施形態で製造されたセパレーターで被覆された粘着テープ100は、前述した粘着テープ100を用いた半導体装置の製造方法において、粘着テープ100をセパレーターから剥離した後に使用される。
また、セパレーターが被覆する粘着層2から、このセパレーターを剥がす際には、粘着層2の面に対してセパレーターを90度以上180度以下の角度で剥離を行うことが好ましい。セパレーターを剥離する角度を前記範囲とすることで、粘着層2とセパレーターとの界面以外での剥離を確実に防止することができる。
なお、本実施形態では、半導体装置10を、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)に適用し、かかる構成の半導体装置10を、粘着テープ100を用いて製造する場合について説明したが、かかる場合に限定されず、各種の形態の半導体パッケージの製造に、粘着テープ100を適用することができ、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)、マトリクス・アレイ・パッケージ・ボール・グリッド・アレイ(MAPBGA)、チップ・スタックド・チップ・サイズ・パッケージ等のメモリやロジック系素子に適用することができる。
以上、本発明の半導体用ウエハ加工用ダイシングフィルムについて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
なお、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(ダイシングフィルム)
基材4を構成する材料として、ホモポリプロピレン(プライムポリマー製、E−203G)60質量部と、オレフィン系熱可塑性エラストマー(三井化学製、ミラストマー9020NS)40質量部、帯電防止剤としてペレスタット230(三洋化成製)10質量部、を準備し、ドライブレンドしたのち、Φ50mm押出機(L/D=25 ユニメルトピンスクリュー スクリュー圧縮比=2.9)、300mm幅のコートハンガーダイ(リップ間隙=0.5mm)、押し出し温度=220℃(スクリュー先端)の条件で、押し出し製膜し、厚み150μmのシートを得た。その後、シートの粘着剤塗工面にコロナ処理を施して、基材4として使用されるシートを得た。
粘着剤層2に用いられる粘着剤のベースポリマーとして、2−エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸を9:1の割合で共重合させた共重合ポリマー(重量平均分子量500000)を42質量部、粘着剤の硬化成分として、ウレタンアクリレート(重量平均分子量5000、重合性官能基4)を47質量部、粘着剤の光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651)を3質量部、粘着剤の架橋剤として、ポリイソシアネート(商品名コロネートL)を8質量部を酢酸エチルに溶解させて、粘着剤を作成した。この粘着剤を、乾燥後の粘着剤層の厚みが60μmになるようにして、上記シートのコロナ処理面に塗工した後、80℃で1分乾燥させることで、粘着剤層2として、所望のダイシングフィルムを得た。
(評価)
上記で得られたダイシングフィルムの粘着層2に、12インチの半導体ウエハを置き、軽く押圧することで、半導体ウエハ7を積層した。次に前記積層体を130℃で5分加熱したのち、ステージから手で剥がして床板からの取られを観察した。
結果の基準は次の通りとした。
◎−全く取られずに剥がれる。
○−若干密着しているが力をほとんど入れずに剥がれる状態である。
△−密着しており力を入れないと剥がれない状態である。
×−床板に取られて全く剥がれない状態である。
上記で得られた半導体ウエハ7とダイシングフィルムの積層体を、ダイシングソー(DISCO製、DFD6450)を用いてダイシングし、10mm×10mmのサイズにダイシングした。ダイシングフィルムに紫外線を照射し、エキスパンドを行った。エキスパンドはエキスパンダー(ヒューグル製)を使用し、エキスパンド性についての観察を行った。
結果の基準は次の通りとした。
◎−チップ間隔が45μ以上開くものである。
○−チップ間隔が40-45μのものである。
△−チップ間隔が35-40μのものである。
×−チップ間隔が30-35μのままである。
上記で得られたダイシングフィルムを10cmにカットして、2枚重ねて1kgの荷重をかけて40℃1週間に保管し、ブロッキング性を観察した。
結果の基準は次の通りとした。
◎−フィルムが接着しておらず、簡単に剥がれるものである。
○−若干密着しているが力をほとんど入れずに剥がれる状態である。
△−密着しており力を入れないと剥がれない状態である。
×−フィルム同士が接着しており手で剥がれないものである。
(基材の機械特性)
基材4の引っ張り弾性率は、基材4を4mm×20mmにカットし、DMS6100(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、昇温速度5℃/minの条件で測定した。
(実施例2)
基材4を構成する材料として、ホモポリプロピレン(プライムポリマー製、E−203G)60質量部と、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成ポリケミカル製、タフテックH1062)40質量部、帯電防止剤としてペレスタット230(三洋化成製)10質量部、とした以外は実施例1と同様にして、基材シートおよびダイシングフィルムを得た。
(実施例3)
基材4を構成する材料として、ランダムポリプロピレン(サンアロマー製、PM731M)60質量部と、オレフィン系熱可塑性エラストマー(三井化学製、ミラストマー9020NS)40質量部、帯電防止剤としてペレスタット230(三洋化成製)10質量部、とした以外は実施例1と同様にして、基材シートおよびダイシングフィルムを得た。
(実施例4)
基材4を構成する材料として、ホモポリプロピレン(プライムポリマー製、E−203G)80質量部と、オレフィン系熱可塑性エラストマー(三井化学製、ミラストマー9020NS)20質量部、帯電防止剤としてペレスタット230(三洋化成製)10質量部、とした以外は実施例1と同様にして、基材シートおよびダイシングフィルムを得た。
(実施例5)
基材4を構成する材料として、ホモポリプロピレン(プライムポリマー製、E−203G)80質量部と、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成ポリケミカル製、タフテックH1062)20質量部、帯電防止剤としてペレスタット230(三洋化成製)10質量部、とした以外は実施例1と同様にして、基材シートおよびダイシングフィルムを得た。
(実施例6)
基材4を構成する材料として、ホモポリプロピレン(プライムポリマー製、E−203G)100質量部と、帯電防止剤としてペレスタット230(三洋化成製)10質量部、とした以外は実施例1と同様にして、基材シートおよびダイシングフィルムを得た。
(比較例1)
基材4を構成する材料として、ホモポリプロピレン(プライムポリマー製、E−203G)60質量部と、スチレンイソプレンブロックコポリマー(三井化学製、ミラストマー9020NS)40質量部、帯電防止剤としてペレスタット230(三洋化成製)10質量部、とした以外は実施例1と同様にして、基材シートおよびダイシングフィルムを得た。
(比較例2)
基材4を構成する材料として、ホモポリプロピレン(プライムポリマー製、E−203G)80質量部と、スチレンイソプレンブロックコポリマー(三井化学製、ミラストマー9020NS)20質量部、帯電防止剤としてペレスタット230(三洋化成製)10質量部、とした以外は実施例1と同様にして、基材シートおよびダイシングフィルムを得た。
(比較例3)
基材4を構成する材料として、ホモポリプロピレン(プライムポリマー製、E−203G)40質量部と、オレフィン系熱可塑性エラストマー(三井化学製、ミラストマー9020NS)60質量部、帯電防止剤としてペレスタット230(三洋化成製)10質量部、とした以外は実施例1と同様にして、基材シートおよびダイシングフィルムを得た。
(比較例4)
基材4を構成する材料として、ポリエーテルスルホン(住友化学製、スミカエクセル3600G)100質量部と、帯電防止剤としてペレスタット230(三洋化成製)10質量部、とした以外は実施例1と同様にして、基材シートおよびダイシングフィルムを得た。
(比較例5)
基材4を構成する材料として、シクロオレフィン系ポリマー(日本ゼオノア製、ゼオノア1600)100質量部と、帯電防止剤としてペレスタット230(三洋化成製)10質量部、とした以外は実施例1と同様にして、基材シートおよびダイシングフィルムを得た。
上記結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1〜5のダイシングフィルムの基材は、130℃での引っ張り弾性率が1.0×10
7Pa以上であり、23℃での引っ張り弾性率が3.0×10
9Pa以下であるため、床板からの取られ性とエキスパンド性が両立していた。
対して、比較例1〜3のダイシングフィルムの基材は、130℃での引っ張り弾性率が1.0×107Pa未満であったため、床板からの取られ性が悪化した。
また、比較例4、5のダイシングフィルムの基材は、23℃での引っ張り弾性率が3.0×109Paを超えるため、エキスパンド性が悪化した。