以下、本発明の半導体素子保護用粘着テープおよび半導体素子保護用粘着テープの製造方法について詳細に説明する。
まず、本発明の半導体素子保護用粘着テープを説明するのに先立って、本発明が適用された半導体装置について説明する。
<半導体装置>
図1は、半導体用ウエハ加工用粘着テープを用いて製造された半導体装置の一例を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図1に示す半導体装置10は、半導体チップ(半導体素子)20と、半導体チップ20を支持するインターポーザー(基板)30と、複数の導電性を有するバンプ(端子)70と、半導体チップ20を封止するモールド部(封止部)17とを有している。
インターポーザー30は、絶縁基板であり、例えばポリイミド・エポキシ・シアネート・ビスマレイミドトリアジン(BTレジン)等の各種樹脂材料で構成されている。このインターポーザー30の平面視形状は、通常、正方形、長方形等の四角形とされる。
インターポーザー30の上面(一方の面)には、例えば、銅等の導電性金属材料で構成される端子41が、所定形状で設けられている。
また、インターポーザー30には、その厚さ方向に貫通して、図示しない複数のビア(スルーホール:貫通孔)が形成されている。
各バンプ70は、それぞれ、各ビアを介して、一端(上端)が端子41の一部に電気的に接続され、他端(下端)は、インターポーザー30の下面(他方の面)から突出している。
バンプ70のインターポーザー30から突出する部分は、ほぼ球形状(Ball状)をなしている。
このバンプ70は、例えば、半田、銀ろう、銅ろう、燐銅ろうのようなろう材を主材料として構成されている。
また、インターポーザー30上には、端子41が形成されている。この端子41に、接続部81を介して、半導体チップ20が有する端子21が電気的に接続されている。
なお、本実施形態では、図1に示すように、端子21は、半導体チップ20に形成されている面側から突出する構成をなしており、端子41も、インターポーザー30から突出する構成をなしている。
また、半導体チップ20と、インターポーザー30との間の間隙には、各種樹脂材料で構成されるアンダーフィル材が充填され、このアンダーフィル材の硬化物により、封止層80が形成されている。この封止層80は、半導体チップ20と、インターポーザー30との接合強度を向上させる機能や、前記間隙への異物や水分等の浸入を防止する機能を有している。
さらに、インターポーザー30の上側には、半導体チップ20と、インターポーザー30とを覆うように形成されたモールド部17が半導体封止材料の硬化物で構成されており、これにより、半導体装置10内において半導体チップ20が封止され、半導体チップ20に対する異物や水分等の浸入が防止される。
かかる構成の半導体装置10は、例えば、半導体用ウエハ加工用粘着テープ(ダイシングテープ)を用いた半導体装置の製造方法により、以下のようにして製造される。
<半導体装置の製造方法>
図2、図3は、図1に示す半導体装置を、半導体用ウエハ加工用粘着テープを用いて製造する方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、図2、図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[1A]まず、基材4と、基材4の上面に積層された粘着層2とを有する半導体用ウエハ加工用粘着テープ100(以下、単に「加工用粘着テープ100」ということもある。)を用意する(図2(a)参照。)。
この加工用粘着テープ100の詳細な説明については、後に行うこととする。
[2A]次に、図2(b)に示すように、図示しないダイサーテーブルの上に、加工用粘着テープ100を設置し、その中心部122に半導体用ウエハ7の半導体チップの無い側の面を、粘着層2の上に置き、軽く押圧し、半導体用ウエハ7を積層(貼付)する(貼付工程)。
なお、加工用粘着テープ100に半導体用ウエハ7を予め貼着した後に、ダイサーテーブルに設置しても良い。
また、半導体用ウエハ7としては、通常、その厚さが100μm以上600μm以下程度のものが用いられる。
[3A]次に、粘着層2の外周部121(縁部)を、円筒状をなすウエハリング9で固定し、その後、図示しない、ダイシングソー(ブレード)を用いて半導体用ウエハ7を切断(ダイシング)して半導体用ウエハ7を個片化することで半導体チップ20を得る(個片化工程;図2(c)参照。)。
この際、加工用粘着テープ100は、緩衝作用を有しており、半導体用ウエハ7を切断する際の割れ、欠け等を防止する。
また、ブレードを用いた半導体用ウエハ7の切断は、図2(c)に示すように、基材4の厚さ方向の途中まで到達するように実施される。これにより、半導体用ウエハの個片化を確実に実施することができる。
なお、この際、半導体用ウエハ7の切断時に生じる粉塵が飛散するのを防止すること、さらには、半導体用ウエハ7が不必要に加熱されるのを抑制することを目的に、半導体用ウエハ7には切削水を供給しつつ、半導体用ウエハ7が切断される。
また、ウエハリング9としては、通常、その厚さが1.0mm以上1.5mm以下程度のものが用いられる。
[4A]次に、加工用粘着テープ100が備える粘着層2にエネルギーを付与することで、粘着層2の半導体用ウエハ7に対する粘着性を低下させる(エネルギー付与工程)。
これにより、粘着層2と半導体用ウエハ7との間で剥離が生じる状態とする。
粘着層2にエネルギーを付与する方法としては、特に限定されないが、例えば、粘着層2にエネルギー線を照射する方法、粘着層2を加熱する方法等が挙げられるが、中でも、粘着層2にエネルギー線を加工用粘着テープ100の基材4側から照射する方法を用いるのが好ましい。
かかる方法は、半導体チップ20が不要な熱履歴を経る必要がなく、また、粘着層2に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギーを付与する方法として好適に用いられる。
また、エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。これらの中でも、特に、紫外線を用いるのが好ましい。紫外線によれば、粘着層2の半導体用ウエハ7に対する粘着性を効率よく低下させることができる。
[5A]次に、加工用粘着テープ100を図示しないエキスパンド装置で放射状に伸ばして、個片化した半導体用ウエハ7(半導体チップ20)を一定の間隔に開き(エキスパンディング工程;図2(d)参照。)、その後、この半導体チップ20を、ニードル等を用いて突き上げた状態とし、この状態で、真空コレットまたはエアピンセットによる吸着等によりピックアップする(ピックアップ工程;図2(e)参照。)。
[6A]次に、ピックアップした半導体チップ20を、真空コレットまたはエアピンセットから実装用プローブ等に受け渡して上下反転させた後、図3(a)に示すように、この半導体チップ20が備える端子21と、インターポーザー30が備える端子41とを、端子41上に設けられた半田バンプ85を介して対向させて、インターポーザー30上に載置する。すなわち、半導体チップ20の加工用粘着テープ100と接触していた面を上側にして、半導体チップ(半導体素子)20をインターポーザー(基板)30上に載置する。
[7A]次に、図3(b)に示すように、端子21と端子41との間に介在した半田バンプ85を加熱しつつ、インターポーザー30と半導体チップ20とを接近させる。
これにより、溶融した半田バンプ85が端子21および端子41の双方に接触し、この状態で、冷却することで、接続部81が形成され、その結果、接続部81を介して、端子21と端子41とが電気的に接続される(搭載工程;図3(c)参照。)。
[8A]次に、半導体チップ20と、インターポーザー30との間に形成された間隙に、各種樹脂材料で構成されるアンダーフィル材(封止材)を充填し、その後、このアンダーフィル材を硬化させることにより、アンダーフィル材の硬化物で構成された封止層80を形成する(封止層形成工程;図3(d)参照。)。
[9A]次に、インターポーザー30の上側に、半導体チップ20と、インターポーザー30とを覆うように、モールド部17を形成することで、半導体チップ20をインターポーザー30とモールド部17とで封止するとともに、インターポーザー30が備えるビアを介して端子41の一部に電気的に接続された、バンプ70をインターポーザー30の下側から突出するように形成する(図3(e)参照。)。
ここで、モールド部17による封止は、例えば、形成すべきモールド部17の形状に対応した内部空間を備える成形型を用意し、この内部空間内に配置された半導体チップ20とインターポーザー30とを覆うように、粉末状をなす半導体封止材料を内部空間に充填する。そして、この状態で、半導体封止材料を加熱することにより硬化させて、半導体封止材料の硬化物とすることにより行われる。
以上のような工程を有する半導体装置の製造方法により、半導体装置10が得られる。より詳しくは、前記工程[1A]〜[9A]を実施した後に、前記工程[5A]〜[9A]を繰り返して実施することで、1つの半導体用ウエハ7から複数の半導体装置10を一括して製造することができる。
以下、このような半導体装置10の製造方法に用いられる半導体用ウエハ加工用粘着テープ100について説明する。
<半導体用ウエハ加工用粘着テープ>
図4は、半導体用ウエハ加工用粘着テープの実施形態を示す縦断面図である。図5は、半導体用ウエハ加工用粘着テープと半導体用ウエハとウエハリングとを有する積層物に、本発明の半導体素子保護用粘着テープを粘着させた状態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図4、5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
加工用粘着テープ100は、基材4と、この基材4の上面(一方の面)に積層された粘着層2とを備える積層体により構成される。以下、これら基材4および粘着層2について説明する。
なお、加工用粘着テープ100は、このものが備える粘着層2にエネルギーを付与することで、粘着層2の半導体用ウエハ7に対する粘着性が低下する機能を有するものである。このような粘着層2にエネルギーを付与する方法としては、粘着層2にエネルギー線を照射する方法および粘着層2を加熱する方法等が挙げられるが、中でも、半導体チップ20が不要な熱履歴を経る必要がないことから、粘着層2にエネルギー線を照射する方法が好適に用いられる。そのため、以下では、粘着層2として、エネルギー線の照射により前記粘着性が低下するものを代表に説明する。
<基材4>
基材4は、主として樹脂材料から成り、この基材4上に設けられた粘着層2を支持する機能を有している。また、前記工程[5A]おけるエキスパンド装置を用いた加工用粘着テープ100の面方向に対する伸長を実現させるためのものである。
かかる樹脂材料としては、特に限定されず、例えば、後述する半導体素子保護用粘着テープ200が備える基材204で説明する樹脂材料と同様のものを用いることができる。
また、基材4は、導電性を有する導電性材料を含有することが好ましい。このような導電性材料が含まれることで、導電性材料に帯電防止剤としての機能を発揮させて、前記個片化工程[3A]、および、前記ピックアップ工程[5A]における、半導体チップ20での静電気の発生を的確に抑制または防止することができる。
この導電性材料としては、後述する半導体素子保護用粘着テープ200が備える基材204で説明する導電性材料と同様のものを用いることができる。
基材4の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上300μm以下であるのが好ましく、30μm以上200μm以下であるのがより好ましく、80μm以上200μm以下であるのがさらに好ましい。基材4の平均厚さがこの範囲内であると、前記工程[3A]における半導体用ウエハ7のダイシングを、優れた作業性により実施することができる。
さらに、基材4は、その表面に、粘着層2に含まれる構成材料と反応性を有する、ヒドロキシル基、アミノ基のような官能基が露出していることが好ましい。
また、基材4は、異なる前記樹脂材料で構成される層を複数積層した積層体(多層体)で構成されるものであってもよい。さらに、前記樹脂材料をドライブレンドしたブレンドフィルムで構成されるものであってもよい。
<粘着層>
粘着層2は、前記工程[3A]において、半導体用ウエハ7をダイシングする際に、半導体用ウエハ7を粘着して支持する機能を有している。また、この粘着層2は、このものに対するエネルギーの付与により半導体用ウエハ7への粘着性が低下し、これにより、粘着層2と半導体用ウエハ7との間で容易に剥離を生じさせ得る状態となるものである。
かかる機能を備える粘着層2は、(1)粘着性を有するベース樹脂と、(2)粘着層2を硬化させる硬化性樹脂と、を主材料として含有する樹脂組成物で構成される。
以下、樹脂組成物に含まれる各成分について、順次、説明する。
(1)ベース樹脂
ベース樹脂は、粘着性を有し、粘着層2へのエネルギー線の照射前に、半導体用ウエハ7に対する粘着性を粘着層2に付与するために、樹脂組成物中に含まれるものである。
このようなベース樹脂としては、特に限定されず、例えば、後述する半導体素子保護用粘着テープ200が備える粘着層202で説明するベース樹脂と同様のものを用いることができる。
(2)硬化性樹脂
硬化性樹脂は、例えば、エネルギー線の照射により硬化する硬化性を備えるものである。この硬化によってベース樹脂が硬化性樹脂の架橋構造に取り込まれた結果、粘着層2の粘着力が低下する。
このような硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、後述する半導体素子保護用粘着テープ200が備える粘着層202で説明する硬化性樹脂と同様のものを用いることができる。
硬化性樹脂は、ベース樹脂100重量部に対して5重量部以上500重量部以下で配合されることが好ましく、10重量部以上300重量部以下で配合されることがより好ましく、20重量部以上200重量部以下で配合されることがさらに好ましい。上記のように硬化性樹脂の配合量を調整することによって、前記工程[5A]における半導体チップ20のピックアップ性を優れたものとすることができる。
(3)光重合開始剤
また、粘着層2は、エネルギー線の照射により半導体用ウエハ7に対する粘着性が低下するものであるが、エネルギー線として紫外線等を用いる場合には、硬化性樹脂には、硬化性樹脂の重合開始を容易とするために光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、後述する半導体素子保護用粘着テープ200が備える粘着層202で説明する光重合開始剤と同様のものを用いることができる。
光重合開始剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.1重量部以上50重量部以下で配合されることが好ましく、0.5重量部以上10重量部以下で配合されることがより好ましい。上記のように光重合開始剤の配合量を調整することによって、半導体チップ20のピックアップ性は好適なものとなる。
(4)架橋剤
さらに、硬化性樹脂には、架橋剤が含まれていてもよい。架橋剤が含まれることで、硬化性樹脂の硬化性の向上が図られる。
架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、後述する半導体素子保護用粘着テープ200が備える粘着層202で説明する架橋剤と同様のものを用いることができる。
架橋剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.01重量部以上50重量部以下で配合されることが好ましく、5重量部以上50重量部以下で配合されることがより好ましい。上記のように架橋剤の配合量を調整することによって、半導体チップ20のピックアップ性は好適なものとなる。
(5)導電性材料(帯電防止剤)
さらに、粘着層2を構成する樹脂組成物には、導電性を有する導電性材料を含有することが好ましい。このような導電性材料が含まれることで、導電性材料に帯電防止剤としての機能を発揮させて、前記個片化工程[3A]、および、前記ピックアップ工程[5A]における、半導体チップ20での静電気の発生が的確に抑制または防止される。
この導電性材料としては、導電性を有するものであれば、特に限定されないが、後述する半導体素子保護用粘着テープ200が備える基材204で説明する導電性材料と同様のものを用いることができる。
なお、基材4および粘着層2のうちの一方に導電性材料を含有させる構成とする場合には、基材4に導電性材料を含有させることが好ましい。これにより、半導体チップ20に導電性材料を確実に付着させることなく、半導体チップ20での静電気の発生をより的確に抑制または防止することができる。
(6)その他の成分
さらに、粘着層2を構成する樹脂組成物には、上述した各成分(1)〜(5)の他に他の成分として、粘着付与剤、老化防止剤、粘着調整剤、充填材、着色剤、難燃剤、軟化剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤等のうちの少なくとも1種が含まれていてもよい。
なお、これらのうち粘着付与剤としては、特に限定されないが、例えば、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、粘着層2の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上30μm以下であるのが好ましく、5μm以上30μm以下であるのがより好ましく、10μm以上20μm以下であるのがさらに好ましい。粘着層2の平均厚さをかかる範囲内とすることで、粘着層2は、粘着層2へのエネルギー付与前には、良好な粘着力を発揮するとともに、粘着層2へのエネルギー付与後には、粘着層2と半導体用ウエハ7との間において、良好な剥離性を発揮する。
なお、粘着層2は、異なる前記樹脂組成物で構成される層を複数積層した積層体(多層体)で構成されるものであってもよい。
以上のような半導体用ウエハ加工用粘着テープ100を用いた半導体装置の製造方法において、前述の通り、前記工程[1A]〜[9A]を実施した後に、前記工程[5A]〜[9A]を繰り返して実施することで、1つの半導体用ウエハ7から複数の半導体装置10が製造される。
この場合では、1つの半導体用ウエハ7からの複数の半導体装置10の製造を、その途中で翌日以降に持ち越すために、半導体用ウエハ7に半導体チップ20を残存させたまま、半導体装置10の製造を打ち切り、エキスパンディング状態を解放して、半導体用ウエハ7(半導体チップ20)の外周部121側において、加工用粘着テープ100をウエハリング9で固定した状態、すなわち、加工用粘着テープ100(基板)と、半導体用ウエハ7(半導体チップ20)と、ウエハリング9とを有する積層物150とした状態で保管、さらには移動させることがある。そして、例えば、翌日以降に、前述した工程[5A]におけるエキスパンディング工程から後を実施することで、半導体装置10の製造が再開される。
しかしながら、エキスパンディング状態を解放した後に、単に、半導体用ウエハ7の外周部121側において加工用粘着テープ100をウエハリング9で固定した積層物150の状態でカセットケース等内において保管すると、その保管状況によっては、埃や水蒸気等の外部異物により、半導体用ウエハ7(半導体チップ20)が汚染されてしまい、これに起因して、かかる半導体チップ20を用いて製造される半導体装置10の信頼性が低下すると言う問題があった。
これに対して、本発明では、樹脂材料を含有するシート状をなす基材204と、この基材204上に積層された粘着層202とを備える積層体により構成され、この積層体の縁部において選択的に粘着性を有する半導体素子保護用粘着テープ200(以下、単に「保護用粘着テープ200」ということもある。)を用意する。そして、この保護用粘着テープ200を、積層物150の加工用粘着テープ100とは反対側において、ウエハリング9に粘着層202が備える粘着性をもって粘着させる。これにより、加工用粘着テープ100、ウエハリング9および保護用粘着テープ200により密閉空間250が形成され、その結果、この密閉空間250内に、半導体用ウエハ7(半導体チップ20)が封止される(図5参照。)。このように、密閉空間250内に半導体用ウエハ7(半導体チップ20)を封止した状態で、カセットケース等内において保管することができるため、埃や水蒸気等の外部異物により、半導体用ウエハ7(半導体チップ20)が汚染されるのを的確に抑制または防止することができる。したがって、かかる半導体チップ20を用いて製造される半導体装置10の信頼性の向上が図られる。
そして、例えば、翌日以降に、保護用粘着テープ200を、ウエハリング9から引き剥がすと言う単純な作業の後に、前述した工程[5A]におけるエキスパンディング工程から後を実施することで、半導体装置10の製造を再開させることができる。
以下、この半導体素子保護用粘着テープ200について説明する。
<半導体素子保護用粘着テープ>
<<第1実施形態>>
図6は、本発明の半導体素子保護用粘着テープの第1実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
保護用粘着テープ200は、本実施形態では、樹脂材料を含有する円盤状をなす基材204と、基材204の上面(一方の面)のほぼ全面に積層して形成された粘着層202と、粘着層202の上面の縁部を除く中心部に積層(貼付)して形成された貼付層205とを備える積層体により構成される。すなわち、本実施形態の保護用粘着テープ200では、粘着層202は、基材204のほぼ全面に形成され、さらに、保護用粘着テープ200は、さらに、粘着層202の縁部を除く中心部に貼付された貼付層205を備えている。
保護用粘着テープ200をかかる構成のものとすることで、基材204と、この基材204上に積層された粘着層202とを備える積層体において、この積層体の縁部において選択的に粘着性が発揮される。したがって、この縁部における粘着性をもってウエハリング9に対して保護用粘着テープ200を貼付させることができる。
以下、これら基材204、粘着層202および貼付層205について説明する。
なお、保護用粘着テープ200において、本実施形態では、粘着層202は、エネルギーを付与することで、粘着層202のウエハリング9に対する粘着性が低下する機能を有するものであり、これにより、半導体装置10の製造を再開させる際に、エネルギーを付与することで、粘着層202の粘着性を低下させて保護用粘着テープ200を容易に剥離させることができる。
このような粘着層202にエネルギーを付与する方法としては、粘着層202にエネルギー線を照射する方法および粘着層202を加熱する方法等が挙げられるが、中でも、半導体チップ20が不要な熱履歴を経る必要がないことから、粘着層202にエネルギー線を照射する方法が好適に用いられる。そのため、以下では、粘着層202として、エネルギー線の照射により前記粘着性が低下するものを代表に説明する。
<基材204>
基材204は、主として樹脂材料から成り、この基材204上に設けられた粘着層202および貼付層205を支持する機能を有している。この基材204は、その全体形状が円盤状、すなわち、平面視形状が円形状をなしている。
かかる樹脂材料としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンのようなポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレンのようなポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリイソブチレン等のポリオレフィン系樹脂(オレフィン系高分子)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、亜鉛イオン架橋体、ナトリウムイオン架橋体のようなアイオノマー、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体等のオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂(エステル類高分子)、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンのようなポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン系高分子)、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーのようなオレフィン系熱可塑性エラストマー(オレフィン系高分子)、アクリル樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリビニルイソプレン、ポリカーボネート(カーボネート系高分子)等の熱可塑性樹脂や、これらの熱可塑性樹脂の混合物が用いられ、中でも、エステル類高分子、スチレン系高分子、オレフィン系高分子、カーボネート系高分子、アイオノマー、またはこれらの高分子の少なくとも1種が含有されている共重合物であることが好ましい。
これらの樹脂材料は、光(可視光線、近赤外線、紫外線)、X線、電子線等のエネルギー線を透過し得る材料であることから、エネルギー線を基材204側から基材204を透過させて粘着層202に照射する場合に好ましく用いることができる。そのため、半導体装置10の製造を再開させる際に、エネルギー線を基材204側から粘着層202に照射することで、粘着層202の粘着性を低下させて保護用粘着テープ200を容易に剥離させることができる。
特に、樹脂材料としては、ポリプロピレンとエラストマーとの混合物、またはポリエチレンとエラストマーとの混合物を用いることが好ましい。
また、このエラストマーとしては、下記一般式(1)で示されるポリスチレンセグメントと、下記一般式(2)で示されるビニルポリイソプレンセグメントとから成るブロック共重合体(スチレン−イソプレンブロック共重合体:SIS)が好ましい。
また、基材204は、導電性を有する導電性材料を含有することが好ましい。このような導電性材料が含まれることで、導電性材料に帯電防止剤としての機能を発揮させて、保護用粘着テープ200の剥離の際に、ウエハリング9ひいては半導体チップ20における静電気の発生を的確に抑制または防止することができる。
この導電性材料としては、導電性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、界面活性剤、永久帯電防止高分子(IDP)、金属材料、金属酸化物材料および炭素系材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうち界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等が挙げられる。
永久帯電防止高分子(IDP)としては、例えば、ポリエーテルとポリオレフィンブロックポリマー系列、ポリエステルアミド系列、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリウレタン系列等の全てのIDPを用いることができる。
また、金属材料としては、金、銀、銅または銀コート銅、ニッケル等が挙げられ、これらの金属粉が好ましく用いられる。
金属酸化物材料としては、インジウムティンオキサイド(ITO)、インジウムオキサイド(IO)、アンチモンティンオキサイド(ATO)、インジウムジンクオキサイド(IZO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、等が挙げられ、これらの金属酸化物粉が好ましく用いられる。
さらに、炭素系材料としては、カーボンブラック、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブのようなカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、CNナノチューブ、CNナノファイバー、BCNナノチューブ、BCNナノファイバー、グラフェン等が挙げられる。
さらに、基材204は、鉱油のような軟化剤、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、マイカ、クレーのような充填材、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、分散剤、中和剤、着色剤等を含有するものであってもよい。
基材204の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上600μm以下であるのが好ましく、30μm以上250μm以下であるのがより好ましい。基材204の平均厚さがこの範囲内であると、保護用粘着テープ200をウエハリング9に粘着させた際に、保護用粘着テープ200が撓むのを確実に抑制または防止した状態で、粘着層202および貼付層205を支持することができるため、半導体チップ20に保護用粘着テープ200が接触するのを確実に防止することができる。
さらに、基材204は、その表面に、粘着層202に含まれる構成材料と反応性を有する、ヒドロキシル基、アミノ基のような官能基が露出していることが好ましい。
また、基材204は、異なる前記樹脂材料で構成される層を複数積層した積層体(多層体)で構成されるものであってもよい。さらに、前記樹脂材料をドライブレンドしたブレンドフィルムで構成されるものであってもよい。
なお、基材204は、その全体形状が円盤状をなしているが、縁部の一部から、厚さ方向に直交する方向に突出する突出部を把持部として備えるものであってもよい。これにより、ウエハリング9からの保護用粘着テープ200の引き剥がしを、この把持部を把持して実施することができる。そのため、かかる引き剥がしを、より容易に行うことができる。
<粘着層>
粘着層202は、その粘着性をもって、保護用粘着テープ200をウエハリング9に粘着させる機能を有している。また、本実施形態では、この粘着層202は、このものに対するエネルギー線の照射によりウエハリング9への粘着性が低下し、これにより、粘着層202とウエハリング9との間で容易に剥離を生じさせ得る状態となるものである。
かかる機能を備える粘着層202は、加工用粘着テープ100が備える粘着層2と同様に、(1)粘着性を有するベース樹脂と、(2)粘着層202を硬化させる硬化性樹脂と、を主材料として含有する樹脂組成物で構成される。
以下、樹脂組成物に含まれる各成分について、順次、説明する。
(1)ベース樹脂
ベース樹脂は、粘着性を有し、粘着層202へのエネルギー線の照射前に、ウエハリング9に対する粘着性を粘着層202に付与するために、樹脂組成物中に含まれるものである。
このようなベース樹脂としては、アクリル系樹脂(粘着剤)、シリコーン系樹脂(粘着剤)、ポリエステル系樹脂(粘着剤)、ポリ酢酸ビニル系樹脂(粘着剤)、ポリビニルエーテル系樹脂(粘着剤)、スチレン系エラストマー樹脂(粘着剤)、ポリイソプレン系樹脂(粘着剤)、ポリイソブチレン系樹脂(粘着剤)またはウレタン系樹脂(粘着剤)のような粘着層成分として用いられる公知のものが挙げられるが、中でも、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。アクリル系樹脂は、耐熱性に優れ、また、比較的容易かつ安価に入手できることから、ベース樹脂として好ましく用いられる。
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー主成分とするポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)をベースポリマーとするもののことを言う。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルのような(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、特に、耐熱性に優れ、また、比較的容易かつ安価に入手できる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの双方を含む意味で用いることとする。
また、このアクリル系樹脂は、そのガラス転移点が20℃以下であることが好ましい。これにより、粘着層202へのエネルギー線の照射前において、粘着層202に優れた粘着性を発揮させることができる。
アクリル系樹脂は、凝集力、耐熱性等の改質等を目的として、必要に応じて、ポリマーを構成するモノマー成分として、共重合性モノマーを含むものが用いられる。
このような共重合性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシルのようなヒドロキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジルのようなエポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸のようなカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸のような酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドのようなアミド系モノマー、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルのようなアミノ基含有モノマー、(メタ)アクリロニトリルのようなシアノ基含有モノマー、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンのようなオレフィン系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンのようなスチレン系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル系モノマー、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルのようなビニルエーテル系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデンのようなハロゲン原子含有モノマー、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルのようなアルコキシ基含有モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環を有するモノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら共重合性モノマーの含有量は、アクリル系樹脂を構成する全モノマー成分に対して、40重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
また、共重合性モノマーは、アクリル系樹脂を構成するポリマーにおける主鎖の末端に含まれるものであってもよいし、その主鎖中に含まれるもの、さらには、主鎖の末端と主鎖中との双方に含まれるものであってもよい。
さらに、共重合性モノマーには、ポリマー同士の架橋等を目的として、多官能性モノマーが含まれていてもよい。
多官能性モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、エチレン−酢酸ビニルコポリマーおよび酢酸ビニルポリマー等も、共重合性モノマー成分として用いることができる。
なお、このようなアクリル系樹脂(ポリマー)は、単一のモノマー成分または2種以上のモノマー成分の混合物を重合させることにより生成させることができる。また、これらモノマー成分の重合は、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法、懸濁重合方法等の重合方法を用いて実施することができる。
以上、説明したモノマー成分を重合することにより得られるアクリル系樹脂としては、炭素−炭素二重結合を、側鎖、主鎖中または主鎖の末端に有しているアクリル系樹脂(「二重結合導入型アクリル系樹脂」と言うこともある。)であることが好ましい。アクリル系樹脂が二重結合導入型アクリル系樹脂である場合には、後述する硬化性樹脂の添加を省略したとしても、得られる粘着層202に、上述した粘着層202としての機能を発揮させることができる。
このような二重結合導入型アクリル系樹脂としては、アクリル系樹脂を構成するポリマー内の側鎖のうち、1/100以上の側鎖のそれぞれに、炭素−炭素二重結合を1個有している二重結合導入型アクリル系樹脂(「二重結合側鎖導入型アクリル系樹脂」と言うこともある。)であることが好ましい。このように、炭素−炭素二重結合を、アクリル系樹脂の側鎖に導入することは、分子設計の点からも有利である。なお、この二重結合側鎖導入型アクリル系樹脂は、主鎖中や、主鎖の末端にも、炭素−炭素二重結合を有していてもよい。
このような二重結合導入型アクリル系樹脂の合成方法(すなわち、アクリル系樹脂に炭素−炭素二重結合を導入する方法)としては、特に限定されず、例えば、共重合性モノマーとして官能基を有するモノマーを用いて共重合して、官能基を含有するアクリル系樹脂(「官能基含有アクリル系樹脂」と言うこともある。)を合成した後、官能基含有アクリル系樹脂中の官能基と反応し得る官能基と、炭素−炭素二重結合とを有する化合物(「炭素−炭素二重結合含有反応性化合物」と言うこともある。)を、官能基含有アクリル系樹脂に、炭素−炭素二重結合のエネルギー線硬化性(エネルギー線重合性)を維持した状態で、縮合反応または付加反応させることにより、二重結合導入型アクリル系樹脂を合成する方法等が挙げられる。
なお、アクリル系樹脂に炭素−炭素二重結合を、全側鎖のうちの1/100以上の側鎖に導入する際の制御手段としては、例えば、官能基含有アクリル系樹脂に縮合反応または付加反応させる化合物である炭素−炭素二重結合含有反応性化合物の含有量を適宜調節することにより行う方法等が挙げられる。
また、官能基含有アクリル系樹脂に炭素−炭素二重結合含有反応性化合物を縮合反応又は付加反応させる際には、触媒を用いることにより、前記反応を効果的に進行させることができる。このような触媒としては、特に制限されないが、ジラウリン酸ジブチルスズのようなスズ系触媒が好ましく用いられる。このスズ系触媒の含有量としては、特に制限されないが、例えば、官能基含有アクリル系樹脂100重量部に対して0.05重量部以上1重量部以下であることが好ましい。
また、官能基含有アクリル系樹脂における官能基Aおよび炭素−炭素二重結合含有反応性化合物における官能基Bとしては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、アジリジン基等が挙げられ、さらに、官能基含有アクリル系樹脂における官能基Aと、炭素−炭素二重結合含有反応性化合物における官能基Bとの組み合わせとしては、例えば、カルボン酸基(カルボキシル基)とエポキシ基との組み合わせ、カルボン酸基とアジリジン基との組み合わせ、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせ、ヒドロキシル基とカルボキシル基との組み合わせ等の各種の組み合わせが挙げられ、これらの中でも、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせであることが好ましい。これにより、これら官能基A、B同士の反応追跡を容易に行うことができる。
さらに、これらの官能基A、Bの組み合わせにおいて、何れの官能基が、官能基含有アクリル系樹脂の官能基Aまたは炭素−炭素二重結合含有反応性化合物の官能基Bとなっていてもよいが、例えば、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせの場合、ヒドロキシル基が、官能基含有アクリル系樹脂における官能基Aとなっており、イソシアネート基が、炭素−炭素二重結合含有反応性化合物における官能基Bとなっていることが好ましい。
この場合、官能基含有アクリル系樹脂を構成する官能基Aを有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸のようなカルボキシル基を有するもの、無水マレイン酸、無水イタコン酸のような酸無水物基を有するもの、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテルのようなヒドロキシル基を有するもの、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルのようなエポキシ基を有するもの等が挙げられる。
また、官能基Bを有する炭素−炭素二重結合含有反応性化合物としては、イソシアネート基を有するものとして、例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシメチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルイソシアネート、m−プロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられ、エポキシ基を有するものとして、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
アクリル系樹脂は、保護用粘着テープ200を、ウエハリング9から剥離させる際に、アクリル系樹脂をウエハリング9に残存させないという観点から、低分子量物の含有量が少ないものであることが好ましい。この場合、アクリル系樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは30万〜500万に設定され、より好ましくは50万〜500万に設定され、さらに好ましくは80万〜300万に設定される。なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量が、モノマー成分の種類等によっては、前記下限値未満であると、ウエハリング9等に対する汚染防止性が低下し、ウエハリング9を剥離させた際に糊残りが生じるおそれがある。
なお、アクリル系樹脂は、ヒドロキシル基やカルボキシル基(特に、ヒドロキシル基)のような、架橋剤や光重合開始剤に対して反応性を有する官能基(反応性官能基)を有していることが好ましい。これにより、架橋剤や光重合開始剤がポリマー成分であるアクリル樹脂に連結するため、粘着層202からこれら架橋剤や光重合開始剤が漏出することを的確に抑制または防止することができる。その結果、エネルギー線照射時により、粘着層202のウエハリング9に対する粘着性が確実に低下される。
(2)硬化性樹脂
硬化性樹脂は、例えば、エネルギー線の照射により硬化する硬化性を備えるものである。この硬化によってベース樹脂が硬化性樹脂の架橋構造に取り込まれた結果、粘着層202の粘着力が低下する。
このような硬化性樹脂としては、例えば、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射によって三次元架橋可能な重合性炭素−炭素二重結合を、官能基として少なくとも2個以上分子内に有する低分子量化合物が用いられる。具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物、エステルアクリレートオリゴマー、2−プロペニル−ジ−3−ブテニルシアヌレート等の炭素−炭素二重結合含有基を有しているシアヌレート系化合物、トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、2−ヒドロキシエチル ビス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−アクリロキシエチル)2−[(5−アクリロキシヘキシル)−オキシ]エチルイソシアヌレート、トリス(1,3−ジアクリロキシ−2−プロピル−オキシカルボニルアミノ−n−ヘキシル)イソシアヌレート、トリス(1−アクリロキシエチル−3−メタクリロキシ−2−プロピル−オキシカルボニルアミノ−n−ヘキシル)イソシアヌレート、トリス(4−アクリロキシ−n−ブチル)イソシアヌレートのような炭素−炭素二重結合含有基を有しているイソシアヌレート系化合物、市販のオリゴエステルアクリレート、芳香族系、脂肪族系等のウレタンアクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、官能基数が6官能以上であるオリゴマーが含まれることが好ましく、官能基数が15官能以上であるオリゴマーが含まれることがより好ましい。これにより、エネルギー線の照射により硬化性樹脂をより確実に硬化させることができる。また、このような硬化性樹脂は、ウレタンアクリレートであることが好ましい。これにより、適度な柔軟性によるピックアップ時の糊割れを抑制できるという効果が得られる。
なお、このウレタンアクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル型またはポリエーテル型等のポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナート等)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等)を反応させて得られたものが挙げられる。
また、硬化性樹脂には、特に限定されないが、重量平均分子量の異なる2つ以上の硬化性樹脂が混合されているのが好ましい。このような硬化性樹脂を利用すれば、エネルギー線照射による樹脂の架橋度を容易に制御することができ、保護用粘着テープ200をウエハリング9から容易に剥離させることができる。また、このような硬化性樹脂として、例えば、第1の硬化性樹脂と、第1の硬化性樹脂よりも重量平均分子量が大きい第2の硬化性樹脂との混合物等が用いられてもよい。
硬化性樹脂は、ベース樹脂100重量部に対して5重量部以上500重量部以下で配合されることが好ましく、10重量部以上300重量部以下で配合されることがより好ましく、20重量部以上200重量部以下で配合されることがさらに好ましい。上記のように硬化性樹脂の配合量を調整することによって、保護用粘着テープ200をウエハリング9から容易に剥離させることができる。
なお、この硬化性樹脂は、前述したアクリル系樹脂として、二重結合導入型アクリル系樹脂を用いた場合、すなわち、炭素−炭素二重結合を、側鎖、主鎖中または主鎖の末端に有しているものを用いた場合には、その樹脂組成物中への添加を省略するようにしてもよい。これは、アクリル系樹脂が二重結合導入型アクリル系樹脂である場合には、エネルギー線の照射により、二重結合導入型アクリル系樹脂が備える炭素−炭素二重結合の機能によって、粘着層202が硬化し、これにより、粘着層202の粘着力が低下することによる。
(3)光重合開始剤
また、粘着層202は、エネルギー線の照射によりウエハリング9に対する粘着性が低下するものであるが、エネルギー線として紫外線等を用いる場合には、硬化性樹脂には、硬化性樹脂の重合開始を容易とするために光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ミヒラーズケトン、アセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾイン、ジベンジル、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン、2−ナフタレンスルホニルクロリド、1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、4,4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、o−アクリルオキシベンゾフェノン、p−アクリルオキシベンゾフェノン、o−メタクリルオキシベンゾフェノン、p−メタクリルオキシベンゾフェノン、p−(メタ)アクリルオキシエトキシベンゾフェノン、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリラート、1,2−エタンジオールモノ(メタ)アクリラート、1,8−オクタンジオールモノ(メタ)アクリラートのようなアクリラートのベンゾフェノン−4−カルボン酸エステル、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、アゾビスイソブチロニトリル、β−クロールアンスラキノン、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナート、ポリビニルベンゾフェノン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、2,4,5−トリアリ−ルイミダゾール二量体、等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの中でも、ベンゾフェノン誘導体およびアルキルフェノン誘導体であることが好ましい。これらの化合物は分子中に反応性官能基として水酸基を備えるものであり、この反応性官能基を介して、ベース樹脂や硬化性樹脂に連結することができ、光重合開始剤としての機能をより確実に発揮させることができる。
光重合開始剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.1重量部以上50重量部以下で配合されることが好ましく、0.5重量部以上10重量部以下で配合されることがより好ましい。上記のように光重合開始剤の配合量を調整することによって、保護用粘着テープ200のウエハリング9からの剥離性を好適なものとし得る。
(4)架橋剤
さらに、硬化性樹脂には、架橋剤が含まれていてもよい。架橋剤が含まれることで、硬化性樹脂の硬化性の向上が図られる。
架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、尿素樹脂系架橋剤、メチロール系架橋剤、キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、多価金属キレート系架橋剤、酸無水物系架橋剤、ポリアミン系架橋剤、カルボキシル基含有ポリマー系架橋剤等が挙げられる。これらの中でもイソシアネート系架橋剤が好ましい。
イソシアネート系架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、多価イソシアネートのポリイソシアネート化合物およびポリイソシアネート化合物の三量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート化合物の三量体または末端イソシアネートウレタンプレポリマーをフェノール、オキシム類等で封鎖したブロック化ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
また、多価イソシアネートとして、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートから成る群より選択される少なくとも1種の多価イソシアネートが好ましい。
架橋剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.01重量部以上50重量部以下で配合されることが好ましく、5重量部以上50重量部以下で配合されることがより好ましい。上記のように架橋剤の配合量を調整することによって、保護用粘着テープ200のウエハリング9からの剥離性を好適なものとし得る。
(5)導電性材料(帯電防止剤)
さらに、粘着層202を構成する樹脂組成物には、導電性を有する導電性材料を含有することが好ましい。このような導電性材料が含まれることで、導電性材料に帯電防止剤としての機能を発揮させて、保護用粘着テープ200の剥離の際に、ウエハリング9ひいては半導体チップ20における静電気の発生を的確に抑制または防止することができる。
この導電性材料としては、導電性を有するものであれば、特に限定されないが、前記基材204に含まれる導電性材料として説明したのと、同様のものを用いることができる。
なお、基材204および粘着層202のうちの一方に導電性材料を含有させる構成とする場合には、基材204に導電性材料を含有させることが好ましい。これにより、半導体チップ20に導電性材料を確実に付着させることなく、半導体チップ20での静電気の発生をより的確に抑制または防止することができる。
(6)その他の成分
さらに、粘着層202を構成する樹脂組成物には、上述した各成分(1)〜(5)の他に他の成分として、粘着付与剤、老化防止剤、粘着調整剤、充填材、着色剤、難燃剤、軟化剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤等のうちの少なくとも1種が含まれていてもよい。
なお、これらのうち粘着付与剤としては、特に限定されないが、例えば、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、粘着層202の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上30μm以下であるのが好ましく、5μm以上30μm以下であるのがより好ましく、10μm以上20μm以下であるのがさらに好ましい。粘着層202の平均厚さをかかる範囲内とすることで、粘着層202は、粘着層202へのエネルギー付与前には、良好な粘着力を発揮するとともに、粘着層202へのエネルギー付与後には、粘着層202とウエハリング9との間において、良好な剥離性を発揮する。
なお、粘着層202は、異なる前記樹脂組成物で構成される層を複数積層した積層体(多層体)で構成されるものであってもよく、この場合、ウエハリング9が接合される層(基材204の反対側に位置する層)に撥油材が含まれていればよい。
なお、本実施形態では、粘着層202が、エネルギーを付与することで、粘着層202のウエハリング9に対する粘着性が低下する機能を有するものとし、(1)ベース樹脂と、(2)硬化性樹脂と、を主材料として含有し、(3)光重合開始剤と、(4)架橋剤と、(5)導電性材料と、(6)その他の成分とが好ましくは含有される場合について説明したが、粘着層202の粘着性がエネルギーの付与を省略してもウエハリング9から剥離させ得る程度の強度である際には、粘着層202を、(1)ベース樹脂を主材料として含有するものとし、粘着層202への(2)硬化性樹脂、(3)光重合開始剤の添加を省略することができる。
<貼付層205>
貼付層205は、主として樹脂材料から成り、粘着層202の上面の縁部を除く中心部に積層(貼付)して形成される。これにより、基材204と粘着層202と貼付層205とを備える積層体において、この積層体の縁部において選択的に粘着性を発揮させる機能を有している。
かかる樹脂材料としては、特に限定されず、例えば、前記基材204に含まれる樹脂材料として説明したのと同様のものを用いることができる。
また、貼付層205は、導電性を有する導電性材料を含有していてもよい。この導電性材料としては、導電性を有するものであれば、特に限定されないが、前記基材204に含まれる導電性材料として説明したのと、同様のものを用いることができる。
貼付層205の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、5μm以上150μm以下であるのが好ましく、15μm以上100μm以下であるのがより好ましい。貼付層205の平均厚さがこの範囲内であると、保護用粘着テープ200をウエハリング9に粘着させた際に、貼付層205が半導体チップ20に接触するのを確実に防止することができる。
また、かかる範囲内の平均厚さを有する貼付層205は、その平均厚さが基材204の平均厚さよりも薄いことが好ましい。これにより、保護用粘着テープ200をウエハリング9に粘着させた際に、貼付層205が半導体チップ20に接触するのをより確実に防止することができる。
さらに、粘着層202に貼付層205を貼付することで積層体に形成される縁部、すなわち粘着領域は、その幅が、2mm以上30mm以下であるのが好ましく、5mm以上15mm以下であるのがより好ましい。これにより、ウエハリング9に対して保護用粘着テープ200を確実に貼付することができる。
また、保護用粘着テープ200は、JIS K 7361−1に規定された方法に準拠して測定された、D65標準光源における全光線透過率が85%以上98%以下となっているのが好ましく、90%以上98%以下となっているのがより好ましい。これにより、保護用粘着テープ200をウエハリング9に粘着させたまま、密閉空間250内に封止された半導体チップ20の状態を視認することができる。
さらに、この保護用粘着テープ200は、粘着層202面へ±5000Vの電圧を印加した場合における10%減衰時間が5秒以内であるのが好ましく、0.1秒以上3秒以下であることがより好ましい。このように前記10%減衰時間がかかる範囲内の時間であることで、ウエハリング9から保護用粘着テープ200を剥離させたとしても、この剥離に起因する静電気により、半導体用ウエハ7が帯電するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、この帯電により半導体用ウエハ7に作り込まれた半導体チップ20の回路に不具合が生じ、その結果、半導体チップ20の破損を招くのを的確に抑制または防止することができるため、半導体チップ20を備える半導体装置10を歩留まり良く製造することができる。
かかる構成の半導体素子保護用粘着テープ200は、例えば、以下のようにして製造することができる。
(半導体素子保護用粘着テープの製造方法)
図7、図8は、図6に示す半導体素子保護用粘着テープ、を製造する方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、図7、図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[1B]まず、基材204を用意する(図7(a)参照。)
基材204の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、カレンダー法、インフレーション押出し法、Tダイ押出し法のような押出成形法、湿式キャスティング法等の一般的な成形方法が挙げられる。なお、基材204が積層体で構成される場合、かかる構成のその基材204の製造方法としては、例えば、共押出し法、ドライラミネート法等の成形方法が用いられる。
また、基材204は、無延伸で用いることができるし、さらに、必要に応じて一軸または二軸の延伸処理を施したものを用いるようにしてもよい。
[2B]次に、基材204の上面に粘着層202を形成する(図7(b)参照。)。
基材204の表面(上面)には、基材204と粘着層202との密着性を向上させることを目的に、コロナ処理、クロム酸処理、マット処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理、プライマー処理、アンカーコート処理のような表面処理が施されていてもよい。
また、粘着層202は、基材204上に、粘着層202の構成材料である樹脂組成物を溶剤に溶解してワニス状にした液状材料を、塗布または散布した後、溶剤を揮発させて粘着層202を形成することにより得ることができる。
なお、溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、酢酸エチル、ジメチルホルムアルデヒド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、基材204上への液状材料の塗布または散布は、例えば、ダイコート、カーテンダイコート、グラビアコート、コンマコート、バーコートおよびリップコート等の方法を用いて行うことができる。
[3B]次に、貼付層205を用意し、そして、この貼付層205を、基材204上に形成された粘着層202のほぼ全面に貼付する(図7(c)参照。)。
これにより、基材204と粘着層202と貼付層205とがこの順で積層された積層体210が得られる。
この貼付層205は、基材204で説明した製造方法と同様にして製造することができる。
また、粘着層202上への貼付層205の貼付は、粘着層202が備える粘着性をもって、粘着層202上に貼付層205を積層することにより、実施することができる。
粘着層202に貼付層205を積層する方法としては、特に制限されないが、例えば、ロールを用いたラミネート方法、プレスを用いたラミネート方法を用いることができる。これらの中でも、連続的に生産できるという生産性の観点から、ロールを用いたラミネート方法が好ましい。
なお、本実施形態では、前記工程[1B]〜[3B]により、シート状をなす基材204を用意した後、この基材204のほぼ全面に、それぞれ、粘着層202および貼付層205を、この順で積層する工程が構成される。
[4B]次に、貼付層205が下側になるように積層体210を裏返し、その後、貼付層205上の粘着層202および基材204を貫通するように、円環状に打ち抜く(図7(d)参照。)。
また、粘着層202および基材204に対する打ち抜きは、例えば、ロール状金型を用いる方法や、プレス金型を用いる方法を用いて行うことができる。中でも、連続的に打ち抜くことができるロール状金型を用いる方法が好ましい。
[5B]次に、貼付層205上の粘着層202および基材204のうち、円環状に打ち抜いた位置よりも外側に位置する粘着層202および基材204を除去する(図7(e)参照。)。
これにより、積層体210を、貼付層205上に円盤状をなす粘着層202と基材204とがこの順で積層されたものとして得ることができる。
[6B]次に、基材204が下側になるように積層体210を裏返し、その後、粘着層202上の貼付層205を、粘着層202よりも内側で貫通するように、円環状に打ち抜く(図8(a)参照。)。
また、貼付層205に対する打ち抜きは、例えば、ロール状金型を用いる方法や、プレス金型を用いる方法を用いて行うことができる。中でも、連続的に打ち抜くことができるロール状金型を用いる方法が好ましい。
[7B]次に、粘着層202上の貼付層205のうち、円環状に打ち抜かれた位置よりも外側に位置する貼付層205を除去する(図8(b)参照。)。
これにより、積層体210を、粘着層202上に、その内側で円盤状をなす貼付層205が積層されたものとして得ることができる。すなわち、保護用粘着テープ200を、円盤状をなす基材204と、基材204の上面のほぼ全面に積層して形成された粘着層202と、粘着層202の上面の縁部を除く中心部に積層して形成された円盤状をなす貼付層205とを備える積層体210として得ることができる。
なお、本実施形態では、前記工程[6B]〜[7B]により、前記貼付層の縁部から前記貼付層を剥離させて、前記粘着層の縁部を除く中心部に貼付された前記貼付層を形成する工程が構成される。
以上のような工程を経ることで、第1実施形態の保護用粘着テープ200を製造することができる。
<<第2実施形態>>
次に、半導体素子保護用粘着テープの第2実施形態について説明する。
図9は、本発明の半導体素子保護用粘着テープの第2実施形態を示す縦断面図である。
以下、第2実施形態の保護用粘着テープ200について、前記第1実施形態の保護用粘着テープ200との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の保護用粘着テープ200は、貼付層205の形成が省略され、さらに、基材204上のほぼ全面に形成され、縁部に粘着性を選択的に有する粘着層202を備えること以外は、第1実施形態の保護用粘着テープ200と同様である。
すなわち、保護用粘着テープ200は、本実施形態では、樹脂材料を含有する円盤状をなす基材204と、基材204の上面(一方の面)のほぼ全面に積層して形成された粘着層202とを備える積層体により構成され、かかる積層体において、粘着層202は、縁部に位置する粘着性を有する粘着領域212と、粘着層202の縁部を除く中央部に粘着性を有しない非粘着領域222とを備えている。
保護用粘着テープ200をかかる構成のものとすることで、基材204と、この基材204上に積層された粘着層202とを備える積層体において、この積層体の縁部において選択的に粘着性が発揮される。
かかる構成の保護用粘着テープ200において、基材204は、前記第1実施形態の保護用粘着テープ200が備える基材204と同様の構成のものとされる。そして、この基材204は、平面視において円形状をなしている。
また、粘着層202は、基材204の上面(一方の面)のほぼ全面に積層して形成されている。そして、この粘着層202は、縁部に位置する粘着性を有する粘着領域212と、粘着層202の縁部を除く中央部に粘着性を有しない非粘着領域222とを備えている。また、この粘着層202において、非粘着領域222は、平面視において円形状をなし、粘着領域212は、平面視において、リング状をなしている。
このような粘着層202は、(1)粘着性を有するベース樹脂と、(2)粘着層202を硬化させる硬化性樹脂と、を主材料として含有し、(3)光重合開始剤と、(4)架橋剤と、(5)導電性材料と、(6)その他の成分とを好ましくは含有する樹脂組成物で構成される点では、第1実施形態の保護用粘着テープ200が備える粘着層202と同様である。これに対して、非粘着領域222において、エネルギーの付与により硬化性樹脂が硬化することで粘着性が低下し、粘着領域212において、エネルギーが付与されていないことにより硬化性樹脂が未硬化であることで粘着性を備えている点で、第1実施形態の保護用粘着テープ200が備える粘着層202と異なっている。このように、エネルギーを付与する非粘着領域222と、エネルギーを付与しない粘着領域212とを設けることで、保護用粘着テープ200を、その縁部において選択的に粘着性が発揮されるものとすることができる。
このような第2実施形態の保護用粘着テープ200によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
また、かかる構成の保護用粘着テープ200は、例えば、以下のようにして製造することができる。
(半導体素子保護用粘着テープの製造方法)
図10は、図9に示す半導体素子保護用粘着テープ、を製造する方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、図10中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[1C]まず、基材204を用意する(図10(a)参照。)
基材204の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、カレンダー法、インフレーション押出し法、Tダイ押出し法のような押出成形法、湿式キャスティング法等の一般的な成形方法が挙げられる。なお、基材204が積層体で構成される場合、かかる構成のその基材204の製造方法としては、例えば、共押出し法、ドライラミネート法等の成形方法が用いられる。
また、基材204は、無延伸で用いることができるし、さらに、必要に応じて一軸または二軸の延伸処理を施したものを用いるようにしてもよい。
[2C]次に、基材204の上面のほぼ全面に粘着層202を形成する(図10(b)参照。)。
基材204の表面(上面)には、基材204と粘着層202との密着性を向上させることを目的に、コロナ処理、クロム酸処理、マット処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理、プライマー処理、アンカーコート処理のような表面処理が施されていてもよい。
また、粘着層202は、基材204上に、粘着層202の構成材料である樹脂組成物を溶剤に溶解してワニス状にした液状材料を、塗布または散布した後、溶剤を揮発させて粘着層202を形成することにより得ることができる。
なお、溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、酢酸エチル、ジメチルホルムアルデヒド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、基材204上への液状材料の塗布または散布は、例えば、ダイコート、カーテンダイコート、グラビアコート、コンマコート、バーコートおよびリップコート等の方法を用いて行うことができる。
なお、本実施形態では、前記工程[1C]〜[2C]により、樹脂材料を含有するシート状をなす基材204を用意した後、基材204のほぼ全面に、粘着層202を形成する工程が構成される。
[3C]次に、粘着層202の非粘着領域222を形成すべき形状に対応した開口部310を有するマスク300を用意し、その後、このマスク300を介して、粘着層202にエネルギー線を照射する(図10(c)参照。)。
これにより、粘着層202のエネルギー線が照射された領域に含まれる硬化性樹脂が硬化することに起因して粘着性が低下し、その結果、粘着層202の中心部に非粘着領域222が形成される。
[4C]次に、粘着層202の縁部に、エネルギー線が照射されず粘着性を備えている領域が残存するように、粘着層202および基材204を貫通させることで、円環状に打ち抜く(図10(d)参照。)。
これにより、積層体210を、貼付層205上に全体形状が円盤状をなす粘着層202と基材204とがこの順で積層されたものとして得ることができる。また、粘着層202を、縁部において粘着性を備える粘着領域212と、中心部において粘着性が低減している非粘着領域222とを有するものとして得ることができる。すなわち、保護用粘着テープ200を、円盤状をなす基材204と、基材204の上面のほぼ全面に積層して形成された粘着層202とを備え、粘着層202を、縁部において粘着性を備える粘着領域212と、中心部において粘着性が低減している非粘着領域222とを有する積層体210として得ることができる。
なお、本実施形態では、前記工程[3C]〜[4C]により、粘着層202の縁部を除く中央部の粘着性を低減させて、前記中央部に粘着性を有しない非粘着領域222を形成して、非粘着領域222と、粘着層202の縁部に粘着性を有する粘着領域212とを形成する工程が構成される。
なお、本実施形態では、粘着層202上に保護層を設けることなく、粘着層202に非粘着領域222および粘着領域212を形成する場合について説明したが、かかる場合に限定されず、例えば、前記工程[2C]の後に、粘着層202上に保護層を形成しそして、前記工程[3C]〜[4C]を経た後に、この保護層を剥離させることで、本実施形態の保護用粘着テープ200を得るようにしてもよい。なお、この場合、保護層としては、前記第1実施形態の貼付層205として説明したのと同様の構成のものを用いることができる。
以上のような工程を経ることで、第2実施形態の保護用粘着テープ200を製造することができる。
<<第3実施形態>>
次に、半導体素子保護用粘着テープの第3実施形態について説明する。
図11は、本発明の半導体素子保護用粘着テープの第3実施形態を示す縦断面図である。
以下、第3実施形態の保護用粘着テープ200について、前記第1実施形態の保護用粘着テープ200との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の保護用粘着テープ200は、貼付層205の形成が省略され、基材204上の縁部に選択的に形成された、粘着性を有する粘着層202を備えること以外は、第1実施形態の保護用粘着テープ200と同様である。
すなわち、保護用粘着テープ200は、本実施形態では、樹脂材料を含有する円盤状をなす基材204と、基材204の上面(一方の面)の縁部に選択的に積層して形成された粘着層202とを備える積層体により構成される。
保護用粘着テープ200をかかる構成のものとすることで、基材204と、この基材204上に積層された粘着層202とを備える積層体において、この積層体の縁部において選択的に粘着性が発揮される。
かかる構成の保護用粘着テープ200において、基材204は、前記第1実施形態の保護用粘着テープ200が備える基材204と同様の構成のものとされる。そして、この基材204は、平面視において円形状をなしている。
また、粘着層202は、基材204の上面(一方の面)の縁部に選択的に積層して形成される。
このような粘着層202は、基材204の上面(一方の面)のほぼ全面ではなく、縁部に選択的に形成されること以外は、前記第1実施形態の保護用粘着テープ200が備える粘着層202と同様のものである。この縁部に選択的に形成される粘着層202は、平面視においてリング状をなし、(1)粘着性を有するベース樹脂と、(2)粘着層202を硬化させる硬化性樹脂と、を主材料として含有し、(3)光重合開始剤と、(4)架橋剤と、(5)導電性材料と、(6)その他の成分とが好ましくは含有される樹脂組成物で構成される。また、粘着層202の粘着性がエネルギーの付与を省略してもウエハリング9から剥離させ得る程度の強度である際には、粘着層202は、(1)ベース樹脂を主材料として含有し、(2)硬化性樹脂、(3)光重合開始剤の添加が省略された樹脂組成物で構成される。
このような第3実施形態の保護用粘着テープ200によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
(半導体素子保護用粘着テープの製造方法)
図12、図13は、図11に示す半導体素子保護用粘着テープ、を製造する方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、図12中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[1D]まず、基材204を用意する(図12(a)参照。)
基材204の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、カレンダー法、インフレーション押出し法、Tダイ押出し法のような押出成形法、湿式キャスティング法等の一般的な成形方法が挙げられる。なお、基材204が積層体で構成される場合、かかる構成のその基材204の製造方法としては、例えば、共押出し法、ドライラミネート法等の成形方法が用いられる。
また、基材204は、無延伸で用いることができるし、さらに、必要に応じて一軸または二軸の延伸処理を施したものを用いるようにしてもよい。
なお、本実施形態では、前記工程[1D]により、シート状をなす基材204を用意する工程が構成される。
[2D]次に、基材204の上面に粘着層202を形成する(図12(b)参照。)。
基材204の表面(上面)には、基材204と粘着層202との密着性を向上させることを目的に、コロナ処理、クロム酸処理、マット処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理、プライマー処理、アンカーコート処理のような表面処理が施されていてもよい。
また、粘着層202は、基材204上に、粘着層202の構成材料である樹脂組成物を溶剤に溶解してワニス状にした液状材料を、塗布または散布した後、溶剤を揮発させて粘着層202を形成することにより得ることができる。
なお、溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、酢酸エチル、ジメチルホルムアルデヒド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、基材204上への液状材料の塗布または散布は、例えば、ダイコート、カーテンダイコート、グラビアコート、コンマコート、バーコートおよびリップコート等の方法を用いて行うことができる。
[3D]次に、貼付層205を用意し、そして、この貼付層205を、基材204上に形成された粘着層202のほぼ全面に貼付する(図12(c)参照。)。
これにより、基材204と粘着層202と貼付層205とがこの順で積層された積層体210が得られる。
この貼付層205は、基材204で説明した製造方法と同様にして製造することができる。
また、粘着層202上への貼付層205の貼付は、粘着層202が備える粘着性をもって、粘着層202上に貼付層205を積層することにより、実施することができる。
粘着層202に貼付層205を積層する方法としては、特に制限されないが、例えば、ロールを用いたラミネート方法、プレスを用いたラミネート方法を用いることができる。これらの中でも、連続的に生産できるという生産性の観点から、ロールを用いたラミネート方法が好ましい。
[4D]次に、貼付層205、粘着層202および基材204を貫通するように、円環状に打ち抜く(図12(d)参照。)。
また、貼付層205、粘着層202および基材204に対する打ち抜きは、例えば、ロール状金型を用いる方法や、プレス金型を用いる方法を用いて行うことができる。中でも、連続的に打ち抜くことができるロール状金型を用いる方法が好ましい。
[5D]次に、円環状に打ち抜かれた貼付層205、粘着層202および基材204のうち、外側に位置する貼付層205、粘着層202および基材204を除去する(図12(e)参照。)。
これにより、積層体210を、全体形状が円盤状をなす基材204と、粘着層202と、貼付層205とがこの順で積層されたものとして得ることができる。
[6D]次に、基材204上の粘着層202および貼付層205を、基材204よりも内側で貫通するように、円環状に打ち抜く(図13(a)参照。)。
また、粘着層202および貼付層205に対する打ち抜きは、例えば、ロール状金型を用いる方法や、プレス金型を用いる方法を用いて行うことができる。中でも、連続的に打ち抜くことができるロール状金型を用いる方法が好ましい。
[7D]次に、貼付層205の全てと、円環状に打ち抜かれた粘着層202のうち、内側に位置する粘着層202とを除去する(図13(b)参照。)。
これにより、積層体210を、基材204上に、その縁部側でリング状をなす粘着層202が積層されたものとして得ることができる。すなわち、保護用粘着テープ200を、円盤状をなす基材204と、基材204の上面の縁部に積層して形成された粘着層202とを備える積層体210として得ることができる。
なお、基材204からの粘着層202の除去を円滑に実施するために、前記工程[2D]に先立って、基材204の上面には離型処理を施すことが好ましい。離型処理としては離型剤を基材204の上面にコーティングする処理や、基材204の上面に細かい凹凸をつける処理等が挙げられる。なお、離型剤としては、シリコーン系、アルキッド系、フッ素系等のものが挙げられる。
また、粘着層は、円環状に打ち抜かれた粘着層202および貼付層205のうち、内側に位置する粘着層202および貼付層205を除去した後、縁部側に位置する貼付層205上にさらに粘着層を積層することで、基材204の縁部に、粘着層202と貼付層205と粘着層とがこの順で積層された3層の積層体として形成することもできる。
なお、本実施形態では、前記工程[2D]〜[7D]により、基材204の縁部に、選択的に粘着層202を形成する工程が構成される。
以上のような工程を経ることで、第3実施形態の保護用粘着テープ200を製造することができる。
以上、本発明の半導体素子保護用粘着テープおよび半導体素子保護用粘着テープの製造方法について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の半導体素子保護用粘着テープが備える各層には、同様の機能を発揮し得る、任意の成分が添加されていてもよく、あるいは、基材は、前記実施形態で説明したように、1層で構成されるものの他、複数の層で構成されるものであってもよく、例えば、前述した基材の粘着層とは反対側の面に、帯電防止層を備えるものであってもよい。
また、本発明の半導体素子保護用粘着テープが備える各層の構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することもできる。
さらに、前記実施形態では、加工用粘着テープ100に固定された状態で個片化された半導体用ウエハ7(半導体チップ20)の外周部121側において加工用粘着テープ100をウエハリング9で固定した積層物150を前記工程[5A]の後に、ウエハリング9に保護用粘着テープ200を貼付することで密閉空間250を形成して、半導体用ウエハ7(半導体チップ20)を保管・移動する場合について説明したが、かかる場合に限定されず、以下のようにして形成された積層物155に対して保護用粘着テープ200を貼付して半導体チップ20を保管・移動するようにしてもよい。
すなわち、加工用粘着テープ100を、前記工程[5A]でピックアップした半導体チップ20を積層(貼付)する載せ替え用粘着テープとして用い、加工用粘着テープ100に半導体チップ20を貼付した状態で、半導体チップ20の外周部側において加工用粘着テープ100をウエハリング9で固定した積層物155とした後に、ウエハリング9の加工用粘着テープ100(載せ替え用粘着テープ)の反対側に、保護用粘着テープ200を貼付することで密閉空間255を形成して、半導体チップ20を保管・移動するようにしてもよい(図14参照。)。
さらに、本発明の半導体素子保護用粘着テープの製造方法では、任意の目的で、1以上の工程を追加することができる。