以下、本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープについて詳細に説明する。
まず、本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープを説明するのに先立って、本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープを用いて製造された半導体装置について説明する。
<半導体装置>
図1は、本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープを用いて製造された半導体装置の一例を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図1に示す半導体装置10は、QFP(Quad Flat Package)型の半導体パッケージであり、半導体チップ(半導体素子)20と、半導体チップ20を接着層60を介して支持するダイパッド30と、半導体チップ20と電気的に接続されたリード40と、半導体チップ20を封止するモールド部(封止部)50とを有している。
ダイパッド30は、金属基板で構成され、半導体チップ20を支持する支持体として機能を有するものである。
このダイパッド30は、例えば、Cu、Fe、Niやこれらの合金(例えば、Cu系合金や、Fe−42Niのような鉄・ニッケル系合金)等の各種金属材料で構成される金属基板や、この金属基板の表面に銀メッキや、Ni−Pdメッキが施されているもの、さらにNi−Pdメッキの表面にPd層の安定性を向上するために設けられた金メッキ(金フラッシュ)層が設けられているもの等が用いられる。
また、ダイパッド30の平面視形状は、通常、半導体チップ20の平面視形状に対応し、例えば、正方形、長方形等の四角形とされる。
ダイパッド30の外周部には、複数のリード40が、放射状に設けられている。
このリード40のダイパッド30と反対側の端部は、モールド部50から突出(露出)している。
リード40は、導電性材料で構成され、例えば、前述したダイパッド30の構成材料と同一のものを用いることができる。
また、リード40には、その表面に錫メッキ等が施されていてもよい。これにより、マザーボードが備える端子に半田を介して半導体装置10を接続する場合に、半田とリード40との密着性を向上させることができる。
ダイパッド30には、接着層60を介して半導体チップ20が固着(固定)されている。
この接着層60は、特に限定されないが、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ポリイミド系接着剤およびシアネート系接着剤等の各種接着剤を用いて形成される。また、接着層60には、銀粉や銅粉のような金属粒子が含まれていてもよい。これにより、接着層60の熱伝導性が向上することから、接着層60を介して半導体チップ20からダイパッド30に効率よく熱が伝達されるため、半導体チップ20の駆動時における放熱性が向上する。
また、半導体チップ20は、電極パッド21を有しており、この電極パッド21とリード40とが、ワイヤー22で電気的に接続されている。これにより、半導体チップ20と各リード40とが電気的に接続されている。
このワイヤー22の材質は、特に限定されないが、ワイヤー22は、例えば、Au線やAl線で構成することができる。
そして、ダイパッド30、ダイパッド30の上面側に設けられた各部材およびリード40の内側の部分は、モールド部50により封止されている。その結果として、リード40の外側の端部が、半導体封止材料の硬化物で構成されるモールド部50から突出している。
かかる構成の半導体装置は、例えば、本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープを用いて以下のようにして製造される。
<半導体装置の製造方法>
図2は、図1に示す半導体装置を、本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープを用いて製造する方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[1A]まず、切込層41、寸法復元層42および帯電防止層43を備え、これらがこの順で、切込層41が上面(一方の面)側に位置して積層された基材4と、基材4の上面に積層された粘着層2とを有する半導体用ウエハ加工用粘着テープ100(以下、単に「粘着テープ100」ということもある。)を用意する(図2(a)参照。)。
この粘着テープ100が本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープで構成されるが、その詳細な説明は後に行うこととする。
[2A]次に、図2(b)に示すように、図示しないダイサーテーブルの上に、粘着テープ100を設置し、その中心部122に半導体用ウエハ7の半導体素子の無い側の面を、粘着層2の上に置き、軽く押圧し、半導体用ウエハ7を積層(貼付)する。
なお、粘着テープ100に半導体用ウエハ7を予め貼着した後に、ダイサーテーブルに設置しても良い。
また、本実施形態では、粘着テープ100には、例えば、12インチのような大型の半導体用ウエハ7が積層される。
[3A]次に、粘着層2の外周部121をウエハリング9で固定し、その後、図示しない、ダイシングソー(ブレード)を用いて半導体用ウエハ7を切断(ダイシング)して半導体用ウエハ7を個片化する(ダイシング工程;図2(c)参照)。
この際、粘着テープ100は、緩衝作用を有しており、半導体用ウエハ7を切断する際の割れ、欠け等を防止する。
また、ブレードを用いた半導体用ウエハ7の切断は、図2(c)に示すように、切込層41の厚さ方向の途中まで到達するように実施される。これにより、半導体用ウエハの個片化を確実に実施することができる。
[4A]次に、粘着テープ100が備える粘着層2にエネルギーを付与することで、粘着層2の半導体用ウエハ7に対する粘着性を低下させる。
これにより、粘着層2と半導体用ウエハ7との間で剥離が生じる状態とする。
粘着層2にエネルギーを付与する方法としては、特に限定されないが、例えば、粘着層2にエネルギー線を照射する方法、粘着層2を加熱する方法等が挙げられるが、中でも、粘着層2にエネルギー線を粘着テープ100の基材4側から照射する方法を用いるのが好ましい。
かかる方法は、半導体チップ20が不要な熱履歴を経る必要がなく、また、粘着層2に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギーを付与する方法として好適に用いられる。
また、エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。これらの中でも、特に、紫外線を用いるのが好ましい。紫外線によれば、粘着層2の半導体用ウエハ7に対する粘着性を効率よく低下させることができる。
[5A]次に、粘着テープ100を図示しないエキスパンド装置で放射状に伸ばして、個片化した半導体用ウエハ7(半導体チップ20)を一定の間隔に開き(エキスパンディング工程;図2(d)参照。)、その後、この半導体チップ20を、ニードル等を用いて突き上げた状態とし、この状態で、真空コレットまたはエアピンセットによる吸着等によりピックアップする(ピックアップ工程;図2(e)参照。)。
[6A]次に、ピックアップした半導体チップ20を、接着層60を介してダイパッド30上に搭載し、その後、半導体チップ20が備える電極パッド21とリード40とをワイヤーボンディングすることでワイヤー22により電気的に接続する。
[7A]次に、半導体チップ20をモールド部50で封止する。
このモールド部50による封止は、例えば、形成すべきモールド部50の形状に対応した内部空間を備える成形型を用意し、この内部空間内に配置された半導体チップ20を取り囲むように、粉末状をなす半導体封止材料を内部空間に充填する。そして、この状態で、半導体封止材料を加熱することにより硬化させて、半導体封止材料の硬化物とすることにより行われる。
以上のような工程を有する半導体装置の製造方法により、半導体装置10が得られる。より詳しくは、前記工程[1A]〜[7A]を実施した後に、前記工程[5A]〜[7A]を繰り返して実施することで、1つの半導体用ウエハ7から複数の半導体装置10を一括して製造することができる。
以下、このような半導体装置10の製造方法に用いられる半導体用ウエハ加工用粘着テープ100(本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープ)について説明する。
<半導体用ウエハ加工用粘着テープ>
(第1実施形態)
図3は、本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープの第1実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
粘着テープ100は、基材4と、この基材4の上面(一方の面)に積層された粘着層2と、とを備え、基材4は、上面側に位置する切込層41と、この切込層41の下面に積層された寸法復元層42と、この寸法復元層42の下面に積層された帯電防止層43とを有する積層体により構成されるものであり、かかる粘着テープ100は、下記要件Aを満足することを特徴とする。
要件A:伸長前の粘着テープ100(半導体用ウエハ加工用粘着テープ)の大きさを100%とし、粘着テープ100を、25℃で面方向に120%の大きさに伸長した後に、前記伸長した力を解放した状態で100℃・1分間の条件で加熱したときに、粘着テープ100の面方向での大きさが105%以下に回復する。
このように、前記要件Aを満足していることから、1つの半導体用ウエハ7からの複数の半導体装置10の製造を、その途中で翌日等に持ち越すために、半導体用ウエハ7に半導体素子20が残存した状態で、半導体装置10の製造を打ち切り、エキスパンディング状態を解放したとしても、粘着テープ100を加熱して、粘着テープ100の面方向での大きさを伸長前の状態に回復させることができることから、半導体装置10の製造を再開する迄の保管時に、粘着テープ100に弛みが生じるのを的確に抑制または防止することができ、粘着テープ100を保管用のケース内に収納することができる。
そのため、翌日等に、前述した工程[5A]におけるエキスパンディング工程以降を実施して、半導体装置10の製造を再開したとしても、工程[5A]におけるピックアップ工程での半導体素子20のピックアップを優れた精度で実施し得る。
また、保管用のケース内での保管を厚さ方向で離間して複数収納することで行ったとしても、粘着テープ100に弛みが生じるのを的確に抑制または防止することができるため、粘着テープ100に貼付された残存する半導体素子20が別の粘着テープ100に接触して半導体素子20が汚染されること、さらには、粘着テープ100同士が接触して粘着してしまうことを確実に回避することができる。
したがって、複数の半導体装置10を歩留り良く、かつ生産性高く製造することができる。
なお、エキスパンディング状態を解放した後に、粘着テープ100を加熱することで、粘着テープ100の面方向での大きさを伸長前の状態に回復させる際の加熱温度は、100℃以上150℃以下であることが好ましく、95℃以上125℃以下であることがより好ましい。また、加熱時間は、1分以上10分以下であることが好ましく、2分以上5分以下であることがより好ましい。加熱条件を上記のように設定することにより、粘着テープ100の面方向での大きさを伸長前の状態により確実に回復させることができる。
さらに、前記要件Aにおいて、粘着テープ100は、その面方向での大きさが105%以下に回復するものであれば良いが、100%以上102%以下に回復するものであることがより好ましい。これにより、半導体装置10の製造を再開する迄の保管時に、粘着テープ100に弛みが生じるのをより的確に抑制または防止することができる。
また、1つの半導体用ウエハ7からの複数の半導体装置10の製造を、その途中で翌日等に持ち越す必要が生じるのは、半導体用ウエハ7が12インチのような大型のものである場合であるため、本実施形態のように、半導体用ウエハ加工用粘着テープを、12インチのような大型の半導体用ウエハ7のダイシングおよび得られた切断片のピックアップに用いる場合に、本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープが好適に適用される。
以下、このような粘着テープ(ダイシングテープ)100が有する、切込層41と寸法復元層42と帯電防止層43とを備える基材4および粘着層2について、詳述する。
なお、粘着テープ100は、このものが備える粘着層2にエネルギーを付与することで、粘着層2の半導体用ウエハ7に対する粘着性が低下する機能を有するものである。
このような粘着層2にエネルギーを付与する方法としては、粘着層2にエネルギー線を照射する方法および粘着層2を加熱する方法等が挙げられるが、中でも、半導体チップ20が不要な熱履歴を経る必要がないことから、粘着層2にエネルギー線を照射する方法が好適に用いられる。そのため、以下では、粘着層2として、エネルギー線の照射により前記粘着性が低下するものを代表に説明する。
<基材4>
基材4は、上面側に位置する切込層41と、この切込層41の下面に積層された寸法復元層42と、寸法復元層42の下面に積層された帯電防止層43とを有する積層体により構成され、この基材4上に設けられた粘着層2を支持する機能を有している。
<<切込層41>>
切込層41は、主として樹脂材料からなり、粘着層2を支持する支持層としての機能を基材4に発揮させるための主層として機能する。また、前記工程[5A]おけるエキスパンド装置を用いた粘着テープ100の面方向に対する伸長を実現させるためのものである。
かかる樹脂材料としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンのようなポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレンのようなポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリイソブチレン等のポリオレフィン系樹脂(オレフィン系高分子)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、亜鉛イオン架橋体、ナトリウムイオン架橋体のようなアイオノマー、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体等のオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂(エステル類高分子)、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンのようなポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン系高分子)、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーのようなオレフィン系熱可塑性エラストマー(オレフィン系高分子)、アクリル樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリビニルイソプレン、ポリカーボネート(カーボネート系高分子)等の熱可塑性樹脂や、これらの熱可塑性樹脂の混合物が用いられ、中でも、エステル類高分子、スチレン系高分子、オレフィン系高分子、カーボネート系高分子、アイオノマー、またはこれらの高分子の少なくとも1種が含有されている共重合物であることが好ましい。
これらの樹脂材料は、光(可視光線、近赤外線、紫外線)、X線、電子線等のエネルギー線を透過し得る材料であることから、前記工程[4A]において、エネルギー線を切込層41側から切込層41を透過させて粘着層2に照射する場合に好ましく用いることができる。
特に、樹脂材料としては、ポリプロピレンとエラストマーとの混合物、またはポリエチレンとエラストマーとの混合物を用いることが好ましい。
また、このエラストマーとしては、下記一般式(1)で示されるポリスチレンセグメントと、下記一般式(2)で示されるビニルポリイソプレンセグメントとから成るブロック共重合体(スチレン−イソプレンブロック共重合体:SIS)が好ましい。
また、切込層41は、導電性を有する導電性材料(第2の導電性材料)を含有することが好ましい。このような導電性材料が含まれることで、導電性材料に帯電防止剤としての機能を発揮させて、前記ダイシング工程[3A]、および、前記ピックアップ工程[5A]における、半導体チップ20での静電気の発生を的確に抑制または防止することができる。
この導電性材料としては、導電性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、界面活性剤、永久帯電防止高分子(IDP)、金属材料、金属酸化物材料および炭素系材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうち界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等が挙げられる。
永久帯電防止高分子(IDP)としては、例えば、ポリエーテルとポリオレフィンブロックポリマー系列、ポリエステルアミド系列、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリウレタン系列等の全てのIDPを用いることができる。
また、金属材料としては、金、銀、銅または銀コート銅、ニッケル等が挙げられ、これらの金属粉が好ましく用いられる。
金属酸化物材料としては、インジウムティンオキサイド(ITO)、インジウムオキサイド(IO)、アンチモンティンオキサイド(ATO)、インジウムジンクオキサイド(IZO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、等が挙げられ、これらの金属酸化物粉が好ましく用いられる。
さらに、炭素系材料としては、カーボンブラック、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブのようなカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、CNナノチューブ、CNナノファイバー、BCNナノチューブ、BCNナノファイバー、グラフェン等が挙げられる。
これらの中でも、導電性材料としては、界面活性剤、永久帯電防止高分子(IDP)、金属酸化物材料およびカーボンブラックのうちの少なくとも1種であることが好ましい。これらのものは、抵抗率の温度依存性が小さいものであることから、前記工程[3A]において、半導体用ウエハ7をダイシングする際に、切込層41が加熱されたとしても、その帯電防止層43側の表面抵抗値の変化量を小さくすることができる。
さらに、切込層41は、鉱油のような軟化剤、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、マイカ、クレーのような充填材、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、分散剤、中和剤、着色剤等を含有するものであってもよい。
切込層41の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上300μm以下であるのが好ましく、30μm以上200μm以下であるのがより好ましく、80μm以上200μm以下であるのがさらに好ましい。切込層41の厚さがこの範囲内であると、前記工程[3A]における半導体用ウエハ7のダイシングを、優れた作業性により実施することができる。
さらに、切込層41は、その表面に、粘着層2に含まれる構成材料と反応性を有する、ヒドロキシル基、アミノ基のような官能基が露出していることが好ましい。
また、切込層41は、異なる前記樹脂材料で構成される層を複数積層した積層体(多層体)で構成されるものであってもよい。さらに、前記樹脂材料をドライブレンドしたブレンドフィルムで構成されるものであってもよい。
<<寸法復元層42>>
寸法復元層42は、粘着層2を支持する支持層としての機能を基材4に発揮させるための副層として機能する。また、粘着テープ100を、前述した要件Aを満足するものとするために含まれるものである。すなわち、複数の半導体装置10の製造を、その途中で打ち切り、エキスパンディング状態を解放した際に、粘着テープ100を加熱することで、粘着テープ100の面方向での大きさを伸長前の状態に回復させるために含まれるものである。
このような寸法復元層42は、溶融弾性を有する樹脂材料を含有し、これにより、100℃・1分間の条件で加熱したときに、完全には溶融せず柔軟化しているが、形状をある程度保持している状態を有していることで、前記要件Aを満足するものとなる。
また、溶融弾性を有する樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン系の架橋性材料、熱可塑性エラストマー、合成ゴムなどが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが中でも、ポリオレフィン系の架橋性材料であることが好ましい。ポリオレフィン系の架橋性材料は、押出ラミネート加工適正、性能および経済性等に優れることから好適に用いられる。
ポリオレフィン系の架橋性材料とは、ポリオレフィン系ベース樹脂を種々の架橋方法で架橋した樹脂のことを言う。
ポリオレフィン系ベース樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−酸無水物共重合体、エチレン−酸無水物−(メタ)アクリル酸エステル類共重合体等が挙げられる。
ポリオレフィン系ベース樹脂を架橋する架橋方法としては、特に限定されないが、例えば、電子線架橋法、過酸化物により架橋する方法、架橋剤により架橋する方法等が挙げられるが、中でも、過酸化物により架橋する方法または架橋剤により架橋する方法が好ましい。なお、架橋剤により架橋する方法において使用される架橋剤としては、例えば、多価アミン、多価アルコール化合物、多価エポキシ化合物、多価シラン化合物、カルボン酸金属塩等が挙げられる。
このようなポリオレフィン系の架橋性材料としては、押出ラミネート加工性に優れると言う点で、ポリオレフィン系ベース樹脂としてエチレン−酸無水物共重合体を含み、架橋剤として多価アルコール化合物を含む熱可塑性架橋樹脂が好ましく用いられる。
この熱可塑性架橋樹脂は、より具体的には、(A1)エチレンとラジカル重合性酸無水物とを必須構成要素とするエチレン−酸無水物共重合体(ポリオレフィン系ベース樹脂)、(A2)分子内に水酸基を2つ以上有する多価アルコール化合物(架橋剤)の他に、(A3)反応促進剤を含有するものが用いられ、前記(A1)エチレン−酸無水物共重合体中におけるラジカル重合性酸無水物に由来する単位の割合が、0.1〜20重量%であり、前記(A1)エチレン−酸無水物共重合体中の酸無水物基に対する、(A2)多価アルコール化合物由来の水酸基のモル比が、0.01〜10の範囲であり、かつ前記(A3)反応促進剤が、(A1)エチレン−酸無水物共重合体100重量部に対して0.001〜20重量部の範囲であるものが好ましい。これにより、粘着テープ100を、前記要件Aを確実に満足するものとすることができる。
熱可塑性架橋樹脂において、(A1)エチレン−酸無水物共重合体中に含まれる酸無水物基は、(A2)多価アルコール化合物中に含まれる水酸基と反応し、モノエステルを形成することで、架橋構造が樹脂組成物中に導入される。
酸無水物基を含む(A1)エチレン−酸無水物共重合体と(A2)多価アルコール化合物の2成分を含む熱可塑性架橋樹脂は、融点以上200℃以下の温度領域である高温では架橋構造が解離し、冷却時に再び架橋構造を形成する性質を示す。また、(A3)反応促進剤を添加することにより、この架橋反応速度あるいは架橋解離反応速度を速めることができる。このように、熱可塑性架橋樹脂は、寸法復元層42を構成する樹脂の融点以上200℃以下の温度領域である高温では架橋構造が解離して溶融弾性を示し、冷却時には再び架橋構造を形成して耐熱性を示すようになり、寸法復元層42を構成する樹脂として好適に用いることができる。
なお、(A1)エチレン−酸無水物共重合体は、少なくともエチレンとラジカル重合性酸無水物とを必須構成要素とする共重合体であり、必要に応じて他のラジカル重合性コモノマー(以下、「第3モノマー」と言うこともある。)が共重合したもの(エチレン−酸無水物−(メタ)アクリル酸エステル類共重合体)であってもよい。これにより、寸法復元層42の融点、柔軟性、さらには、切込層41との密着性を適切な範囲のものに容易に設定することができる。
このような(A1)エチレン−酸無水物共重合体において、ラジカル重合性酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水エンディック酸、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物などを挙げることができる。
また、第3モノマーとしては、例えば、エチレン系不飽和エステル化合物、エチレン系不飽和アミド化合物、エチレン系不飽和カルボン酸化合物、エチレン系不飽和エーテル化合物、エチレン系不飽和炭化水素化合物等が挙げられ、より具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、フマル酸メチル、フマル酸エチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、メチルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、(A2)分子内に水酸基を2つ以上有する多価アルコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
さらに、(A3)反応促進剤としては、例えば、カルボン酸の金属塩または、カルボキシル基を含む重合体の金属塩等が挙げられる。カルボン酸の金属塩としては、例えば、酢酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、コハク酸、安息香酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等のカルボン酸と、周期表のIA族、IIA族、IIB族、IIIB族の元素(例えばLi、Na、K、Mg、Ca、Zn、Al等)との金属塩が挙げられる。また、カルボキシル基を含む重合体の金属塩としては、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の一部または全部のカルボキシル基と、周期表のIA族、IIA族、IIB族、IIIB族の元素(例えばLi、Na、K、Mg、Ca、Zn、Al等)との金属塩、もしくは、エチレンとエチレン−(メタ)アクリル酸金属塩との共重合体などが挙げられる。
また、寸法復元層42は、導電性を有する導電性材料を含有していてもよい。導電性材料が含まれることで、導電性材料に帯電防止剤としての機能を発揮させて、前記ダイシング工程[3A]、および、前記ピックアップ工程[5A]における、半導体チップ20での静電気の発生をより的確に抑制または防止することができる。
この導電性材料としては、切込層41で挙げたものと同様のものを用いることができる。
さらに、寸法復元層42は、鉱油のような軟化剤、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、マイカ、クレーのような充填材、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、分散剤、中和剤、着色剤、導電性材料等を含有するものであってもよい。
寸法復元層42の厚さは、特に限定されないが、例えば、5μm以上200μm以下であるのが好ましく、20μm以上150μm以下であるのがより好ましい。寸法復元層42の厚さがこの範囲内であると、伸長された粘着テープ100を、エキスパンディング状態を解放した状態で加熱することで、粘着テープ100の面方向での大きさを伸長前の状態に確実に回復させることがでる。
<<帯電防止層43>>
帯電防止層43は、寸法復元層42の下面に積層されることで、寸法復元層42の帯電防止層43側の表面抵抗率を低下させる機能を有している。帯電防止層43を備えることで、基材4の寸法復元層42側の表面抵抗率を低下させることができ、前記ダイシング工程[3A]、および、前記ピックアップ工程[5A]における、半導体チップ20での静電気の発生を的確に抑制または防止することができる。
そのため、静電気が放電することに起因して、半導体チップがダメージを受け、その結果、半導体チップ20の特性の低下、さらには半導体チップ20の破損を招くのを、的確に抑制または防止することができる。
特に、本実施形態では、粘着テープ100には、例えば、12インチのような大型の半導体用ウエハ7が積層されており、半導体用ウエハ7は、前記ダイシング工程[3A]において、より長時間、切断されることとなるが、基材4の帯電防止層43側の表面抵抗率を前記範囲内に設定することで、このような大型の半導体用ウエハ7においても、半導体チップ20の特性の低下、さらには半導体チップ20の破損が的確に抑制または防止される。
かかる機能を備える帯電防止層43は、基材4の寸法復元層42側の表面抵抗率を低下し得るものであれば如何なる構成のものであってもよいが、主として樹脂材料からなり、導電性材料と熱可塑性樹脂で構成されることが好ましい。
かかる樹脂材料(熱可塑性樹脂)としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンのようなポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレンのようなポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリイソブチレン等のポリオレフィン系樹脂(オレフィン系高分子)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、亜鉛イオン架橋体、ナトリウムイオン架橋体のようなアイオノマー、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体等のオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂(エステル類高分子)、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンのようなポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン系高分子)、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーのようなオレフィン系熱可塑性エラストマー(オレフィン系高分子)、アクリル樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリビニルイソプレン、ポリカーボネート(カーボネート系高分子)等の熱可塑性樹脂や、これらの熱可塑性樹脂の混合物が用いられ、中でも、エステル類高分子、スチレン系高分子、オレフィン系高分子、カーボネート系高分子、アイオノマー、またはこれらの高分子の少なくとも1種が含有されている共重合物であることが好ましい。
これらの樹脂材料は、光(可視光線、近赤外線、紫外線)、X線、電子線等のエネルギー線を透過し得る材料であることから、前記工程[4A]において、エネルギー線を帯電防止層43側から帯電防止層43を透過させて粘着層2に照射する場合に好ましく用いることができる。
特に、樹脂材料としては、ポリプロピレンとエラストマーとの混合物、またはポリエチレンとエラストマーとの混合物を用いることが好ましい。
また、このエラストマーとしては、下記一般式(1)で示されるポリスチレンセグメントと、下記一般式(2)で示されるビニルポリイソプレンセグメントとから成るブロック共重合体(スチレン−イソプレンブロック共重合体:SIS)が好ましい。
また、帯電防止層43は、本実施形態では、導電性を有する導電性材料を含有している。このような導電性材料が含まれることで、導電性材料に帯電防止剤としての機能を発揮させて、前記ダイシング工程[3A]、および、前記ピックアップ工程[5A]における、半導体チップ20での静電気の発生を的確に抑制または防止することができる。
この導電性材料としては、導電性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、界面活性剤、永久帯電防止高分子(IDP)、導電性高分子、金属材料、金属酸化物材料および炭素系材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうち界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等が挙げられる。
永久帯電防止高分子(IDP)としては、例えば、ポリエーテルとポリオレフィンブロックポリマー系列、ポリエステルアミド系列、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリウレタン系列等の全てのIDPを用いることができる。
また、金属材料としては、金、銀、銅または銀コート銅、ニッケル等が挙げられ、これらの金属粉が好ましく用いられる。
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、PEDOT(poly−ethylenedioxythiophene)、PEDOT/PSS、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等が挙げられる。
また、ポリチオフェンまたはその誘導体としては、例えば、ポリチオフェン、ポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェン、ポリ(3−チオフェン−β−エタンスルホン酸)が挙げられ、中でも、ポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェンであることが好ましい。ポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェンは、特に優れた導電性を有する高分子であることから、寸法復元層42の帯電防止層43側の表面抵抗率を確実に低下させることができる。
ポリアニリンまたはその誘導体としては、例えば、ポリアニリン、ポリメチルアニリン、ポリメトキシアニリン等が挙げられる。
さらに、ポリピロールまたはその誘導体としては、例えば、ポリピロール、ポリ3−メチルピロール、ポリ3−オクチルピロール等が挙げられる。
金属酸化物材料としては、インジウムティンオキサイド(ITO)、インジウムオキサイド(IO)、アンチモンティンオキサイド(ATO)、インジウムジンクオキサイド(IZO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、等が挙げられ、これらの金属酸化物粉が好ましく用いられる。
さらに、炭素系材料としては、カーボンブラック、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブのようなカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、CNナノチューブ、CNナノファイバー、BCNナノチューブ、BCNナノファイバー、グラフェン等が挙げられる。
これらの中でも、導電性材料としては、界面活性剤、永久帯電防止高分子(IDP)、金属酸化物材料およびカーボンブラックのうちの少なくとも1種であることが好ましい。これらのものは、抵抗率の温度依存性が小さいものであることから、前記工程[3A]において、半導体用ウエハ7をダイシングする際に、帯電防止層43が加熱されたとしても、その帯電防止層43側の表面抵抗値の変化量を小さくすることができる。
かかる構成の帯電防止層43において、導電性材料は、用いる導電性材料の種類によっても異なるが、ベース樹脂100重量部に対して5重量部以上30重量部以下で配合されることが好ましく、10重量部以上20重量部以下で配合されることがより好ましい。
さらに、帯電防止層43は、鉱油のような軟化剤、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、マイカ、クレーのような充填材、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、分散剤、中和剤、着色剤等を含有するものであってもよい。
帯電防止層43の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上200μm以下であるのが好ましく、0.2μm以上150μm以下であるのがより好ましく、0.5μm以上100μm以下であるのがさらに好ましい。帯電防止層43の厚さがこの範囲内であると、寸法復元層42側の表面抵抗率を確実に低下させることができる。
また、帯電防止層43を寸法復元層42の下面に積層することにより、寸法復元層42の帯電防止層43側の表面抵抗率が低下するが、その表面抵抗率は1.0×1011(Ω/□)以下であるのが好ましく、1.0×109(Ω/□)超、1.0×1010(Ω/□)以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
また、帯電防止層43は、異なる前記樹脂材料で構成される層を複数積層した積層体(多層体)で構成されるものであってもよい。さらに、前記樹脂材料をドライブレンドしたブレンドフィルムで構成されるものであってもよい。
なお、本実施形態では、基材4が帯電防止層43を備える場合について説明したが、この帯電防止層43は、粘着テープ100が備える他の層の構成によっては、省略することができる。
<粘着層>
粘着層2は、前記工程[3A]において、半導体用ウエハ7をダイシングする際に、半導体用ウエハ7を粘着して支持する機能を有している。また、この粘着層2は、このものに対するエネルギーの付与により半導体用ウエハ7への粘着性が低下し、これにより、粘着層2と半導体用ウエハ7との間で容易に剥離を生じさせ得る状態となるものである。
かかる機能を備える粘着層2は、(1)粘着性を有するベース樹脂と、(2)粘着層2を硬化させる硬化性樹脂とを主材料として含有する樹脂組成物で構成される。
以下、樹脂組成物に含まれる各成分について、順次、詳述する。
(1)ベース樹脂
ベース樹脂は、粘着性を有し、粘着層2へのエネルギー線の照射前に、半導体用ウエハ7に対する粘着性を粘着層2に付与するために、樹脂組成物中に含まれるものである。
このようなベース樹脂としては、アクリル系樹脂(粘着剤)、シリコーン系樹脂(粘着剤)、ポリエステル系樹脂(粘着剤)、ポリ酢酸ビニル系樹脂(粘着剤)、ポリビニルエーテル系樹脂(粘着剤)、スチレン系エラストマー樹脂(粘着剤)、ポリイソプレン系樹脂(粘着剤)、ポリイソブチレン系樹脂(粘着剤)またはウレタン系樹脂(粘着剤)のような粘着層成分として用いられる公知のものが挙げられるが、中でも、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。アクリル系樹脂は、耐熱性に優れ、また、比較的容易かつ安価に入手できることから、ベース樹脂として好ましく用いられる。
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー主成分とするポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)をベースポリマーとするもののことを言う。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルのような(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、特に、耐熱性に優れ、また、比較的容易かつ安価に入手できる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの双方を含む意味で用いることとする。
また、このアクリル系樹脂は、そのガラス転移点が20℃以下であることが好ましい。これにより、粘着層2へのエネルギー線の照射前において、粘着層2に優れた粘着性を発揮させることができる。
アクリル系樹脂は、凝集力、耐熱性等の改質等を目的として、必要に応じて、ポリマーを構成するモノマー成分として、共重合性モノマーを含むものが用いられる。
このような共重合性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシルのようなヒドロキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジルのようなエポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸のようなカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸のような酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドのようなアミド系モノマー、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルのようなアミノ基含有モノマー、(メタ)アクリロニトリルのようなシアノ基含有モノマー、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンのようなオレフィン系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンのようなスチレン系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル系モノマー、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルのようなビニルエーテル系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデンのようなハロゲン原子含有モノマー、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルのようなアルコキシ基含有モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環を有するモノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら共重合性モノマーの含有量は、アクリル系樹脂を構成する全モノマー成分に対して、40重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
また、共重合性モノマーは、アクリル系樹脂を構成するポリマーにおける主鎖の末端に含まれるものであってもよいし、その主鎖中に含まれるもの、さらには、主鎖の末端と主鎖中との双方に含まれるものであってもよい。
さらに、共重合性モノマーには、ポリマー同士の架橋等を目的として、多官能性モノマーが含まれていてもよい。
多官能性モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、エチレン−酢酸ビニルコポリマーおよび酢酸ビニルポリマー等も、共重合性モノマー成分として用いることができる。
なお、このようなアクリル系樹脂(ポリマー)は、単一のモノマー成分または2種以上のモノマー成分の混合物を重合させることにより生成させることができる。また、これらモノマー成分の重合は、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法、懸濁重合方法等の重合方法を用いて実施することができる。
以上、説明したモノマー成分を重合することにより得られるアクリル系樹脂としては、炭素−炭素二重結合を、側鎖、主鎖中または主鎖の末端に有しているアクリル系樹脂(「二重結合導入型アクリル系樹脂」と言うこともある。)であることが好ましい。アクリル系樹脂が二重結合導入型アクリル系樹脂である場合には、後述する硬化性樹脂の添加を省略したとしても、得られる粘着層2に、上述した粘着層2としての機能を発揮させることができる。
このような二重結合導入型アクリル系樹脂としては、アクリル系樹脂を構成するポリマー内の側鎖のうち、1/100以上の側鎖のそれぞれに、炭素−炭素二重結合を1個有している二重結合導入型アクリル系樹脂(「二重結合側鎖導入型アクリル系樹脂」と言うこともある。)であることが好ましい。このように、炭素−炭素二重結合を、アクリル系樹脂の側鎖に導入することは、分子設計の点からも有利である。なお、この二重結合側鎖導入型アクリル系樹脂は、主鎖中や、主鎖の末端にも、炭素−炭素二重結合を有していてもよい。
このような二重結合導入型アクリル系樹脂の合成方法(すなわち、アクリル系樹脂に炭素−炭素二重結合を導入する方法)としては、特に限定されず、例えば、共重合性モノマーとして官能基を有するモノマーを用いて共重合して、官能基を含有するアクリル系樹脂(「官能基含有アクリル系樹脂」と言うこともある。)を合成した後、官能基含有アクリル系樹脂中の官能基と反応し得る官能基と、炭素−炭素二重結合とを有する化合物(「炭素−炭素二重結合含有反応性化合物」と言うこともある。)を、官能基含有アクリル系樹脂に、炭素−炭素二重結合のエネルギー線硬化性(エネルギー線重合性)を維持した状態で、縮合反応または付加反応させることにより、二重結合導入型アクリル系樹脂を合成する方法等が挙げられる。
なお、アクリル系樹脂に炭素−炭素二重結合を、全側鎖のうちの1/100以上の側鎖に導入する際の制御手段としては、例えば、官能基含有アクリル系樹脂に縮合反応または付加反応させる化合物である炭素−炭素二重結合含有反応性化合物の含有量を適宜調節することにより行う方法等が挙げられる。
また、官能基含有アクリル系樹脂に炭素−炭素二重結合含有反応性化合物を縮合反応又は付加反応させる際には、触媒を用いることにより、前記反応を効果的に進行させることができる。このような触媒としては、特に制限されないが、ジラウリン酸ジブチルスズのようなスズ系触媒が好ましく用いられる。このスズ系触媒の含有量としては、特に制限されないが、例えば、官能基含有アクリル系樹脂100重量部に対して0.05重量部以上1重量部以下であることが好ましい。
また、官能基含有アクリル系樹脂における官能基Aおよび炭素−炭素二重結合含有反応性化合物における官能基Bとしては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、アジリジン基等が挙げられ、さらに、官能基含有アクリル系樹脂における官能基Aと、炭素−炭素二重結合含有反応性化合物における官能基Bとの組み合わせとしては、例えば、カルボン酸基(カルボキシル基)とエポキシ基との組み合わせ、カルボン酸基とアジリジル基との組み合わせ、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせ、ヒドロキシル基とカルボキシル基との組み合わせ等の各種の組み合わせが挙げられ、これらの中でも、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせであることが好ましい。これにより、これら官能基A、B同士の反応追跡を容易に行うことができる。
さらに、これらの官能基A、Bの組み合わせにおいて、何れの官能基が、官能基含有アクリル系樹脂の官能基Aまたは炭素−炭素二重結合含有反応性化合物の官能基Bとなっていてもよいが、例えば、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせの場合、ヒドロキシル基が、官能基含有アクリル系樹脂における官能基Aとなっており、イソシアネート基が、炭素−炭素二重結合含有反応性化合物における官能基Bとなっていることが好ましい。
この場合、官能基含有アクリル系樹脂を構成する官能基Aを有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸のようなカルボキシル基を有するもの、無水マレイン酸、無水イタコン酸のような酸無水物基を有するもの、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテルのようなヒドロキシル基を有するもの、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルのようなエポキシ基を有するもの等が挙げられる。
また、官能基Bを有する炭素−炭素二重結合含有反応性化合物としては、イソシアネート基を有するものとして、例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシメチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルイソシアネート、m−プロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられ、エポキシ基を有するものとして、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
アクリル系樹脂は、前記工程[3A]において、半導体用ウエハ7をダイシングする際に、半導体用ウエハ7等の汚染を防止するという観点から、低分子量物の含有量が少ないものであることが好ましい。この場合、アクリル系樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは30万〜500万に設定され、より好ましくは50万〜500万に設定され、さらに好ましくは80万〜300万に設定される。なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量が、モノマー成分の種類等によっては、50万未満であると、半導体用ウエハ7等に対する汚染防止性が低下し、半導体チップ20を剥離させた際に糊残りが生じるおそれがある。
なお、アクリル系樹脂は、ヒドロキシル基やカルボキシル基(特に、ヒドロキシル基)のような、架橋剤や光重合開始剤に対して反応性を有する官能基(反応性官能基)を有していることが好ましい。これにより、架橋剤や光重合開始剤がポリマー成分であるアクリル樹脂に連結するため、粘着層2からこれら架橋剤や光重合開始剤が漏出することを的確に抑制または防止することができる。その結果、前記工程[4A]におけるエネルギー線照射時により、粘着層2の半導体用ウエハ7に対する粘着性が確実に低下される。
(2)硬化性樹脂
硬化性樹脂は、例えば、エネルギー線の照射により硬化する硬化性を備えるものである。この硬化によってベース樹脂が硬化性樹脂の架橋構造に取り込まれた結果、粘着層2の粘着力が低下する。
このような硬化性樹脂としては、例えば、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射によって三次元架橋可能な重合性炭素−炭素二重結合を、官能基として少なくとも2個以上分子内に有する低分子量化合物が用いられる。具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物、エステルアクリレートオリゴマー、2−プロペニル−ジ−3−ブテニルシアヌレート等の炭素−炭素二重結合含有基を有しているシアヌレート系化合物、トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、2−ヒドロキシエチル ビス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−アクリロキシエチル) 2−[(5−アクリロキシヘキシル)−オキシ]エチルイソシアヌレート、トリス(1,3−ジアクリロキシ−2−プロピル−オキシカルボニルアミノ−n−ヘキシル)イソシアヌレート、トリス(1−アクリロキシエチル−3−メタクリロキシ−2−プロピル−オキシカルボニルアミノ−n−ヘキシル)イソシアヌレート、トリス(4−アクリロキシ−n−ブチル)イソシアヌレートのような炭素−炭素二重結合含有基を有しているイソシアヌレート系化合物、市販のオリゴエステルアクリレート、芳香族系、脂肪族系等のウレタンアクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、官能基数が6官能以上であるオリゴマーが含まれることが好ましく、官能基数が15官能以上であるオリゴマーが含まれることがより好ましい。これにより、エネルギー線の照射により硬化性樹脂をより確実に硬化させることができる。また、このような硬化性樹脂は、ウレタンアクリレートであることが好ましい。これにより、適度な柔軟性によるピックアップ時の糊割れを抑制できるという効果が得られる。
なお、このウレタンアクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル型またはポリエーテル型等のポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナート等)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等)を反応させて得られたものが挙げられる。
また、硬化性樹脂には、特に限定されないが、重量平均分子量の異なる2つ以上の硬化性樹脂が混合されているのが好ましい。このような硬化性樹脂を利用すれば、エネルギー線照射による樹脂の架橋度を容易に制御することができ、前記工程[5A]における半導体チップ20のピックアップ性を向上させることができる。また、このような硬化性樹脂として、例えば、第1の硬化性樹脂と、第1の硬化性樹脂よりも重量平均分子量が大きい第2の硬化性樹脂との混合物等が用いられてもよい。
硬化性樹脂を、第1の硬化性樹脂と、第2の硬化性樹脂との混合物とする場合、第1の硬化性樹脂の重量平均分子量は、100〜1000程度であることが好ましく、200〜500程度であることがより好ましい。また、第2の硬化性樹脂の重量平均分子量は、1000〜30000程度であることが好ましく、1000〜10000程度であることがより好ましく、2000〜5000程度であることがさらに好ましい。さらに、第1の硬化性樹脂の官能基数は、1〜5官能基であることが好ましく、第2の硬化性樹脂の官能基数は、6官能基以上であることが好ましい。かかる関係を満足することにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
硬化性樹脂は、ベース樹脂100重量部に対して5重量部以上500重量部以下で配合されることが好ましく、10重量部以上300重量部以下で配合されることがより好ましく、20重量部以上200重量部以下で配合されることがさらに好ましい。上記のように硬化性樹脂の配合量を調整することによって、前記工程[5A]における半導体チップ20のピックアップ性を優れたものとすることができる。
なお、この硬化性樹脂は、前述したアクリル系樹脂として、二重結合導入型アクリル系樹脂を用いた場合、すなわち、炭素−炭素二重結合を、側鎖、主鎖中または主鎖の末端に有しているものを用いた場合には、その樹脂組成物中への添加を省略するようにしてもよい。これは、アクリル系樹脂が二重結合導入型アクリル系樹脂である場合には、エネルギー線の照射により、二重結合導入型アクリル系樹脂が備える炭素−炭素二重結合の機能によって、粘着層2が硬化し、これにより、粘着層2の粘着力が低下することによる。
(3)光重合開始剤
また、粘着層2は、エネルギー線の照射により半導体用ウエハ7に対する粘着性が低下するものであるが、エネルギー線として紫外線等を用いる場合には、硬化性樹脂には、硬化性樹脂の重合開始を容易とするために光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ミヒラーズケトン、アセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾイン、ジベンジル、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン、2−ナフタレンスルホニルクロリド、1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、4,4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、o−アクリルオキシベンゾフェノン、p−アクリルオキシベンゾフェノン、o−メタクリルオキシベンゾフェノン、p−メタクリルオキシベンゾフェノン、p−(メタ)アクリルオキシエトキシベンゾフェノン、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリラート、1,2−エタンジオールモノ(メタ)アクリラート、1,8−オクタンジオールモノ(メタ)アクリラートのようなアクリラートのベンゾフェノン−4−カルボン酸エステル、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、アゾビスイソブチロニトリル、β−クロールアンスラキノン、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナート、ポリビニルベンゾフェノン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、2,4,5−トリアリ−ルイミダゾール二量体、等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの中でも、ベンゾフェノン誘導体およびアルキルフェノン誘導体であることが好ましい。これらの化合物は分子中に反応性官能基として水酸基を備えるものであり、この反応性官能基を介して、ベース樹脂や硬化性樹脂に連結することができ、光重合開始剤としての機能をより確実に発揮させることができる。
光重合開始剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.1重量部以上50重量部以下で配合されることが好ましく、0.5重量部以上10重量部以下で配合されることがより好ましい。上記のように光重合開始剤の配合量を調整することによって、粘着テープ100のピックアップ性は好適なものとなる。
(4)架橋剤
さらに、硬化性樹脂には、架橋剤が含まれていてもよい。架橋剤が含まれることで、硬化性樹脂の硬化性の向上が図られる。
架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、尿素樹脂系架橋剤、メチロール系架橋剤、キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、多価金属キレート系架橋剤、酸無水物系架橋剤、ポリアミン系架橋剤、カルボキシル基含有ポリマー系架橋剤等が挙げられる。これらの中でもイソシアネート系架橋剤が好ましい。
イソシアネート系架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、多価イソシアネートのポリイソシアネート化合物およびポリイソシアネート化合物の三量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート化合物の三量体または末端イソシアネートウレタンプレポリマーをフェノール、オキシム類等で封鎖したブロック化ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
また、多価イソシアネートとして、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートから成る群より選択される少なくとも1種の多価イソシアネートが好ましい。
架橋剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.01重量部以上50重量部以下で配合されることが好ましく、5重量部以上50重量部以下で配合されることがより好ましい。上記のように架橋剤の配合量を調整することによって、粘着テープ100のピックアップ性は好適なものとなる。
(5)導電性材料(帯電防止剤)
さらに、粘着層2を構成する樹脂組成物には、導電性を有する導電性材料を含有することが好ましい。このような導電性材料が含まれることで、導電性材料に帯電防止剤としての機能を発揮させて、前記ダイシング工程[3A]、および、前記ピックアップ工程[5A]における、半導体チップ20での静電気の発生が的確に抑制または防止される。
この導電性材料(第3の導電性材料)としては、導電性を有するものであれば、特に限定されないが、前記基材4に含まれる導電性材料として説明したのと、同様のもの用いることができる。
なお、基材4および粘着層2のうちの一方に導電性材料を含有させる構成とする場合には、基材4に導電性材料を含有させることが好ましい。これにより、半導体チップ20に導電性材料を確実に付着させることなく、半導体チップ20での静電気の発生をより的確に抑制または防止することができる。
(6)その他の成分
さらに、粘着層2を構成する樹脂組成物には、上述した各成分(1)〜(5)の他に他の成分として、粘着付与剤、老化防止剤、粘着調整剤、充填材、着色剤、難燃剤、軟化剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤等のうちの少なくとも1種が含まれていてもよい。
なお、これらのうち粘着付与剤としては、特に限定されないが、例えば、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、粘着層2の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上30μm以下であるのが好ましく、5μm以上30μm以下であるのがより好ましく、10μm以上20μm以下であるのがさらに好ましい。粘着層2の厚さをかかる範囲内とすることで、粘着層2は、粘着層2へのエネルギー付与前には、良好な粘着力を発揮するとともに、粘着層2へのエネルギー付与後には、粘着層2と半導体用ウエハ7との間において、良好な剥離性を発揮する。
なお、粘着層2は、異なる前記樹脂組成物で構成される層を複数積層した積層体(多層体)で構成されるものであってもよい。
次に、かかる構成の半導体用ウエハ加工用粘着テープ100は、例えば、以下のようにして製造することができる。
<半導体用ウエハ加工用粘着テープの製造方法>
図4は、図3に示す半導体用ウエハ加工用粘着テープを製造する方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[1B]まず、切込層41と寸法復元層42と帯電防止層43とがこの順で積層された基材4を用意する(図4(a)参照。)
かかる構成の基材4は、特に限定されないが、例えば、インフレーション共押出し法、Tダイ共押出し法のような押出成形法や、カレンダー法、インフレーション押出し法、Tダイ押出し法のような押出成形法、湿式キャスティング法で得られたフィルムのラミネーション法等の一般的な成形方法を用いて製造することができる。
Tダイ共押出し法を用いて基材4を製造する場合、切込層41、寸法復元層42、帯電防止層43の構成材料である樹脂組成物を溶融し、溶融状態で各層を積層した後、冷却ロールで冷却して基材4を形成することにより得ることができる。
また、ラミネーション法を用いて切込層41を製造する場合、切込層41は、無延伸で用いることができるし、さらに、必要に応じて一軸または二軸の延伸処理を施したものを用いるようにしてもよい。また、切込層41の表面(下面)には、切込層41と寸法復元層42との密着性を向上させることを目的に、コロナ処理、クロム酸処理、マット処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理、プライマー処理、アンカーコート処理のような表面処理が施されていてもよい。
また、ラミネーション法を用いて寸法復元層42を製造する場合、寸法復元層42は、切込層41上に、寸法復元層42の構成材料である樹脂組成物を溶融した材料を、熱ラミネート後に冷却して寸法復元層42を形成することにより得ることができる。
また、ラミネーション法を用いて帯電防止層43を製造する場合、帯電防止層43は、寸法復元層42上に、帯電防止層43の構成材料である樹脂組成物を溶融した材料を、熱ラミネート後に冷却して帯電防止層43を形成することにより得ることができる。
[2B]次に、得られた基材4(切込層41)の上面に粘着層2を形成する(図4(b)参照。)。
基材4の表面(上面)には、基材4と粘着層2との密着性を向上させることを目的に、コロナ処理、クロム酸処理、マット処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理、プライマー処理、アンカーコート処理のような表面処理が施されていてもよい。
また、粘着層2は、基材4上に、粘着層2の構成材料である樹脂組成物を溶剤に溶解してワニス状にした液状材料を、塗布または散布した後、溶剤を揮発させて粘着層2を形成することにより得ることができる。
なお、溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、酢酸エチル、ジメチルホルムアルデヒド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、基材4上への液状材料の塗布または散布は、例えば、ダイコート、カーテンダイコート、グラビアコート、コンマコート、バーコートおよびリップコート等の方法を用いて行うことができる。
[3B]次に、基材4上に形成された粘着層2に対して、中心側と外周側とが分離されるように、粘着層2の厚さ方向に基材4を残存させて円環状に粘着層2の一部を除去することにより、粘着層2を中心部122と外周部121とを備えるものとする(図4(c)参照。)。
粘着層2の一部を円環状に除去する方法としては、例えば、除去すべき領域を取り囲むように打ち抜いた後、この打ち抜かれた領域に位置する粘着層2を除去する方法が挙げられる。
また、除去すべき領域に対する打ち抜きは、例えば、ロール状金型を用いる方法や、プレス金型を用いる方法を用いて行うことができる。中でも、連続的に粘着テープ100を製造することができるロール状金型を用いる方法が好ましい。
なお、本工程では、粘着層2の一部をリング状(円形状)に打ち抜いて中心部122と外周部121とを形成したが、粘着層2の一部を打ち抜く形状は、前述した半導体装置の製造方法において、粘着層2の外周部121をウエハリングで固定できる形状となっていれば如何なる形状のものであってもよい。具体的には、打ち抜く形状としては、例えば、上述した円形状の他、楕円状、俵型状のような長円状や、四角形状、五角形状のような多角形状等が挙げられる。
[4B]次に、基材4上に形成された粘着層2に対して、セパレーター1を積層することにより、粘着層2がセパレーター1で被覆された粘着テープ100を得る(図4(d)参照。)。
粘着層2にセパレーター1を積層する方法としては、特に制限されないが、例えば、ロールを用いたラミネート方法、プレスを用いたラミネート方法を用いることができる。これらの中でも、連続的に生産できるという生産性の観点から、ロールを用いたラミネート方法が好ましい。
なお、セパレーター1としては、特に限定されないが、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタラートフィルム等が挙げられる。
また、セパレーター1は、粘着テープ100の使用時に剥がされるために、表面を離型処理されたものを使用してもよい。離型処理としては離型剤をセパレーター1表面にコーティングする処理や、セパレーター1表面に細かい凹凸をつける処理等が挙げられる。なお、離型剤としては、シリコーン系、アルキッド系、フッ素系等のものが挙げられる。
以上のような工程を経て、セパレーター1で被覆された粘着テープ100を形成することができる。
なお、本実施形態で製造されたセパレーター1で被覆された粘着テープ100は、前述した粘着テープ100を用いた半導体装置の製造方法において、粘着テープ100をセパレーター1から剥離した後に使用される。
また、セパレーター1が被覆する粘着層2から、このセパレーター1を剥がす際には、粘着層2の面に対してセパレーター1を90度以上180度以下の角度で剥離を行うことが好ましい。セパレーター1を剥離する角度を前記範囲とすることで、粘着層2とセパレーター1との界面以外での剥離を確実に防止することができる。
なお、本実施形態では、半導体装置10を、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)に適用し、かかる構成の半導体装置10を、粘着テープ100を用いて製造する場合について説明したが、かかる場合に限定されず、各種の形態の半導体パッケージの製造に、粘着テープ100を適用することができ、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)、マトリクス・アレイ・パッケージ・ボール・グリッド・アレイ(MAPBGA)、チップ・スタックド・チップ・サイズ・パッケージ等のメモリやロジック系素子に適用することができる。
また、本実施形態では、本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープを、12インチのような大型の半導体用ウエハのダイシングおよび得られた切断片のピックアップに用いる場合について説明したが、当然、12インチの半導体用ウエハに代えて8インチのような小型の半導体用ウエハにも適用できることは言うまでもないし、12インチよりも大型の18インチの半導体用ウエハにも適用できる。
(第2実施形態)
次に、半導体装置10の製造に用いられる半導体用ウエハ加工用粘着テープの第2実施形態について説明する。
図5は、本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープの第2実施形態を示す縦断面図である。
以下、第2実施形態の粘着テープ100’(半導体用ウエハ加工用粘着テープ)について、前記第1実施形態の粘着テープ100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図5に示す粘着テープ100’は、基材4とは構成が異なる基材4’と、この基材4’の上面に積層された粘着層2を備えるものであること以外は、図1に示す粘着テープ100と同様である。
すなわち、第2実施形態の粘着テープ100’において、基材4’は、上面側に位置する切込層41と、この切込層41の下面に積層された寸法復元層42と帯電防止層43と、寸法復元層42と、帯電防止層43とを有し、切込層41側からこの順で積層されている積層体により構成されている。換言すれば、基材4’は、切込層41の下面側に寸法復元層42と帯電防止層43とがこの順で積層された繰返し体5を2つ有している。このように繰返し体5を備えることで、前述した半導体装置の製造方法のダイシング工程[3A]において、ダイシングソーを用いて、半導体用ウエハ7を切断した際に、不本意に、切込層41側の寸法復元層42が切断されたとしても、その下側にさらに寸法復元層42が存在するため、この下側に位置する寸法復元層42により、粘着テープ100を、前述した要件Aをより確実に満足するものとすることができる。また、繰返し体5が備える寸法復元層42と帯電防止層43とを比較的薄いものとすることで、帯電防止層43を半導体用ウエハ7に対して近位に配置させることができる。そのため、半導体装置の製造方法のダイシング工程[3A]、および、ピックアップ工程[5A]における、半導体チップ20での静電気の発生を的確に抑制または防止することができる。
なお、基材4’が備える繰返し体5の数は、本実施形態のように2つの場合に限らず、3つ以上であってもよい。
このような第2実施形態の粘着テープ100’によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
以上、本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープについて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープが備える各層には、同様の機能を発揮し得る、任意の成分が添加されていてもよく、あるいは、基材中の切込層41、寸法復元層42、帯電防止層43の各層が複数で積層されていてもよい。
また、本発明の半導体用ウエハ加工用粘着テープが備える各層の構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することもできる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
なお、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
1.原材料の準備
まず、各実施例および各比較例の半導体用ウエハ加工用粘着テープの製造に用いた原材料を以下に示す。
(樹脂材料1)
樹脂材料1として、ポリプロピレン60重量部と、下記一般式(1)で示されるポリスチレンセグメントと下記一般式(2)で示されるビニルポリイソプレンセグメントとから成るブロック共重合体40重量部とを含有するものを用意した。
(ベース樹脂1)
ベース樹脂1として、第1の共重合体を10重量部と、第2の共重合体を90重量部とからなるものを用意した。なお、第1の共重合体としては、アクリル酸ブチル70重量部と、アクリル酸2−エチルヘキシル25重量部と、酢酸ビニル5重量部とを共重合させて得られた重量平均分子量が500000の共重合体を用いた。また、第2の共重合体としては、アクリル酸2−エチルヘキシル50重量部と、アクリル酸ブチル10重量部と、酢酸ビニル37重量部と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3重量部とを共重合させて得られた重量平均分子量が300000の共重合体を用いた。
(熱可塑性架橋樹脂1)
熱可塑性架橋樹脂1として、(a1)エチレン−無水マレイン酸−アクリル酸エチル類共重合体(ポリオレフィン系ベース樹脂)80重量部、(a2)エチレングリコール(多価アルコール化合物)20重量部、(a3)酢酸リチウム(反応促進剤)1重量部を含有するものを用意した。
(熱可塑性架橋樹脂2)
熱可塑性架橋樹脂2として、(a1)エチレン−無水マレイン酸−1−ブテン共重合体(ポリオレフィン系ベース樹脂)82重量部、(a2)エチレングリコール(多価アルコール化合物)18重量部、(a3)酢酸リチウム(反応促進剤)1重量部を含有するものを用意した。
(硬化性樹脂1)
硬化性樹脂1として、15官能のオリゴマーのウレタンアクリレート(Miwon Specialty Chemical社製、品番:Miramer SC2152)を用意した。
(架橋剤1)
架橋剤1として、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製、品番:コロネートL)を用意した。
(光重合開始剤1)
光重合開始剤1として、ベンジルジメチルケタール(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、品番:イルガキュア651)を用意した。
(第1の導電性材料1)
第1の導電性材料1として、ポリチオフェン(荒川化学社製、品番:アラコートAS625)を用意した。なお、AS625中には、導電性材料の他、高分子バインダーとして、アクリル系樹脂を含有する。
(第1の導電性材料2)
第1の導電性材料2として、PEDOT/PSS(綜研化学社製、品番:WED−S)を用意した。なお、WED−S中には、導電性材料の他、高分子バインダーとして、アクリル系樹脂を含有する。
(第1の導電性材料3)
第1の導電性材料3として、PEDOT/PSS(ナガセケムテックス社製、品番:P−502RG)を用意した。なおP−502RG中には、導電性材料の他、高分子バインダーとして、アクリル系樹脂を含有する。
(第2の導電性材料)
第2の導電性材料(高分子型帯電防止剤)として、ペレスタット212(三洋化成社製)を用意した。
(第3の導電性材料)
第3の導電性材料として、イオン液体(広栄化学社製、品番:IL−A2」)を用意した。
2.半導体用ウエハ加工用粘着テープの作製
[実施例1]
樹脂材料1(85重量部)と第2の導電性材料(15重量部)、熱可塑性架橋樹脂1(100重量部)、樹脂材料1(85重量部)と第2の導電性材料(15重量部)をそれぞれ別の単軸押出機のホッパーに投入して押出し機で混練した後、各層厚みは、切込層41が65μm、寸法復元層42が80μm、帯電防止層43が5μmとなるようにTダイで成形して冷却ロールで冷却し、厚さ150μmの基材4を得た。この時、各押出し機とTダイの温度は230℃、冷却ロールの温度は25℃とした。
次に、ベース樹脂1(100重量部)、硬化性樹脂1(ベース樹脂100重量部に対して140重量部)、架橋剤1(ベース樹脂100重量部に対して5重量部)および光重合開始剤1(ベース樹脂100重量部に対して3重量部)が配合された樹脂組成物を含有する液状材料を作製した。この液状材料を、乾燥後の粘着層2の厚さが10μmになるようにして基材4(切込層41)にバーコート塗工した後、80℃で1分間乾燥させて、基材4の上面(一方の面)に粘着層2を形成した。
[実施例2]
熱可塑性架橋樹脂1に代えて、熱可塑性架橋樹脂2を用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2の粘着テープを得た。
[比較例1]
寸法復元層42の形成を省略した以外は、前記実施例1と同様にして、比較例1の粘着テープを得た。
3.評価
得られた実施例1および比較例1の半導体用ウエハ加工用粘着テープについて、それぞれ、伸長前の半導体用ウエハ加工用粘着テープの大きさを100%としたとき、25℃で面方向に120%の大きさに伸長した後に、前記伸長した力を解放した状態で100℃・1分間の条件で加熱した。
そして、実施例1および比較例1の半導体用ウエハ加工用粘着テープの面方向での大きさを測定した。
その結果、実施例1および実施例2の半導体用ウエハ加工用粘着テープでは、それぞれ、その面方向での大きさが103%および104%となっており、105%以下に回復していた。
これに対して、比較例1の半導体用ウエハ加工用粘着テープでは、その面方向での大きさが110%となっており、105%以下に回復してはいなかった。