JP2015206316A - 内燃機関のバルブガイド構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】バルブガイドの曲げ剛性を確保しつつ、バルブガイドから冷却水へ好適に放熱することができる内燃機関のバルブガイド構造を提供する。【解決手段】ヘッド冷却液通路9が形成されたシリンダヘッド3と、外面の一部がヘッド冷却液通路9に臨むようにシリンダヘッド3に取り付けられ、吸気バルブ10又は排気バルブ11を摺動可能に支持する略円筒形状のバルブガイド12とを有する内燃機関Eのバルブガイド構造において、バルブガイド12のヘッド冷却液通路9に臨む外周部分に複数の凹部12dを周方向に並べて形成し、互いに隣接する凹部12dによって形成されるリブ12eをバルブガイド12の軸方向に延在させる。【選択図】図3

Description

本発明は、バルブガイドがその外面の一部を冷却液通路に臨ませるように機関本体に取り付けられる内燃機関のバルブガイド構造に関する。
内燃機関の吸排気バルブには、弁体である傘部と傘部を移動させる軸体であるステムとを有するポペットバルブが一般的に用いられている。吸排気バルブは、燃焼ガスに晒される燃焼室側の燃焼面(ヘッド表面又は傘表ともいう)から熱を受けるため高温になりやすい。特に排気バルブは、傘裏やステムが排気ポートに配置されて排気に晒されるため、吸気バルブよりも高温になる。
吸排気バルブが高温になると燃焼室内の混合気が自己着火しやすくなり、ノッキングが発生しやすくなる。そこで、ノッキングの発生防止を目的として、排気バルブの軸部を摺動可能に支持するバルブガイドをシリンダヘッド内の冷却水通路に臨むように配置する構成が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1記載の発明では更に、バルブガイドとシリンダヘッドとのシール性を向上させるために、シリンダヘッドのガイド挿入孔に、動弁室側の大径部、排気ポートに連通する小径部、及び冷却水通路よりも排気ポート側で大径部と小径部とを接続するテーパ部とを形成し、かつバルブガイドの外周部にも大径部及び小径部を形成するとともに、冷却水通路に臨む部分に細径部と細径部の下端でテーパ部に圧接される圧接部とを形成している。
実開平5−5407号公報
ところで、シリンダヘッドにおいては、排気ポートの周辺部が高温になり、冷却水通路の周辺部や動弁機構の潤滑油で冷却される上面近傍は比較的低温になる。そのため、シリンダヘッドの上面から排気ポートに到るように設置されるバルブガイドには、シリンダヘッドの熱膨張差による曲げ力が加わる。しかしながら、特許文献1記載の構造では、バルブガイドの細径部の断面係数が低くなるため、曲げ剛性が不足する虞があり、曲げ剛性を確保するためには細径部を大きく縮径することができない。
他方、ステムからバルブガイドの内面に伝達した熱は、バルブガイド内を放射状に伝導してバルブガイドの外面から冷却水に伝達される。バルブガイドの外径が大きい場合、冷却水と接触するバルブガイドの表面積は大きくなるが、バルブガイド内の熱伝導距離が長くなるためにバルブガイドの外面温度が低くなり、バルブガイドから冷却水への放熱量が小さくなる。したがって、特許文献1記載の構造において、曲げ剛性確保のために細径部の厚みが大きくなると、バルブガイドから冷却水への放熱量が低下するという問題があった。
また、特許文献1記載の構造においては、バルブガイドの軸線に対して交差する方向に流れる冷却水に接する細径部の表面積が細径部の直径によって定まる一定値となり、細径部の外面に冷却水に乱れを生じさせるような部分もないため、バルブガイドから冷却水への好適な放熱もなされない。
本発明は、このような背景に鑑み、バルブガイドの曲げ剛性を確保しつつ、バルブガイドから冷却水へ好適に放熱することができる内燃機関のバルブガイド構造を提供することを課題とする。
このような課題を解決するために、本発明は、内燃機関(E)のバルブガイド構造において、冷却液通路(9)が形成された機関本体(3)と、外面の一部が前記冷却液通路に臨むように前記機関本体に取り付けられ、機関弁(10、11)を摺動可能に支持する略円筒形状のバルブガイド(12)と、前記バルブガイドの前記冷却液通路に臨む外周部分に周方向に並ぶように形成された複数の凹部(12d)と、互いに隣接する凹部よって前記バルブガイドの軸方向に延びるように形成されたリブ(12e)とを有する構成とする。
この構成によれば、バルブガイドの軸方向に延びるリブが形成されるように複数の凹部が形成されることにより、バルブガイドの断面係数の低下を抑制して曲げ剛性を確保しつつ、凹部においてバルブガイドの厚みを小さく(熱伝導距離を短く)してバルブガイドから冷却水への放熱量を大きくすることができる。また、バルブガイドの冷却液通路に臨む外周部分にリブ及び凹部が形成されることにより、冷却液に接するバルブガイドの表面積が大きくなり、リブが冷却液の流れに対して交差する方向に延びることにより、冷却液に乱流が発生するため、これらによってもバルブガイドから冷却水への放熱量を大きくできる。
また、上記の発明において、冷却液の流れ方向に直交し、かつ前記バルブガイドの中心(12X)を通るように前記バルブガイドを二分する仮想平面(VS)に対して前記冷却液の上流側に、前記リブが少なくとも2つ形成されている構成とすることができる。
この構成によれば、冷却液の上流側に形成された2つのリブ間の凹部に衝突した冷却液が乱流を発生させるため、バルブガイドから冷却液への熱伝達率が高くなり、バルブガイドから冷却水への放熱量を大きくすることができる。
また、上記の発明において、前記凹部の幅(W1)が前記凹部の深さ(D)よりも大きい構成とすることができる。
この構成によれば、凹部に冷却液が進入しやすくなるため、乱流が発生しやすくなってバルブガイドから冷却液への熱伝達率が高くなり、バルブガイドから冷却水への放熱量を大きくすることができる。
また、上記の発明において、前記凹部が、前記バルブガイドの径方向に延びる一対の側壁面(32)を有し、当該側壁面と前記バルブガイドの外周面(12a)との接続部が稜線(34)を形成する構成とすることができる。
この構成によれば、凹部に進入して層流を形成する冷却液が稜線で剥離するため、乱流が発生しやすくなってバルブガイドから冷却液への熱伝達率が高くなり、バルブガイドから冷却水への放熱量を大きくすることができる。
このように本発明によれば、バルブガイドの曲げ剛性を確保しつつ、バルブガイドから冷却水へ好適に放熱することができる内燃機関のバルブガイド構造を提供することができる。
第1実施形態に係る内燃機関の要部断面図 図1に示すバルブガイドの正面図 図2中のIII−III断面図 第1実施形態に係るバルブガイドの効果を説明するための図 第1実施形態に係るバルブガイドの効果を説明するための比較例を示す図 第1実施形態に係るバルブガイドの効果を示すグラフ 第2実施形態に係るバルブガイドの正面図 図5中のVI−VI断面図 第2実施形態に係るバルブガイドの効果を示すグラフ 変形例に係るバルブガイドの正面図
以下、図面を参照して、本発明に係る内燃機関Eのバルブガイド構造について、いくつかの実施形態を挙げて詳細に説明する。以下では、内燃機関Eが自動車に搭載された状態を基準として図1に示す上下の方向に従って説明する。
≪第1実施形態≫
図1に示すように、内燃機関Eは、直列多気筒の自動車用ガソリンエンジンであり、図示しないピストンが収容される複数のシリンダ1を備えたシリンダブロック2と、シリンダブロック2の上端面2aに接合する下端面3aをもってシリンダブロック2に締結されたシリンダヘッド3と、シリンダヘッド3の上部に締結されたヘッドカバー4とを備えている。
シリンダ1は、それぞれ略上下方向に延在し、互いに平行かつ一列となるようにシリンダブロック2に形成されている。以下、列設された複数のシリンダ1の配列方向をシリンダ列方向という。各シリンダ1は、上端がシリンダブロック2の上端面2aに開口し、下端がシリンダブロック2の下部に形成されたクランク室(図示しない)に開口している。シリンダブロック2のシリンダ1の側部には、各シリンダ1の側周部を一体に囲むようにブロック冷却液通路5が形成されている。ブロック冷却液通路5のシリンダ列方向に延在する部分は、各シリンダ1の側周部に沿うように湾曲しており、ブロック冷却液通路5の上端は、シリンダブロック2の上端面2aに開口している。ブロック冷却液通路5は、冷却水やオイル、冷媒などの冷却液を流通させるべく、シリンダブロック2の成型時に砂型などによって空洞として形成される。
シリンダヘッド3の下端面3aの各シリンダ1に対向する部分には、曲面状の窪みである燃焼室凹部3bが形成されている。各燃焼室凹部3bは、各シリンダ1のピストンよりも上方の部分と共に燃焼室6を画成する。また、シリンダヘッド3の内部には、一端がシリンダ列方向に沿う一側面に開口する一方、二股に分岐した2つの他端が各燃焼室凹部3bの壁面に開口する複数の吸気通路7と、一端がシリンダヘッド3のシリンダ列方向に沿う他側面に開口する一方、分岐した他端が2つずつ各燃焼室凹部3bの壁面に開口する排気通路8とが形成されている。燃焼室凹部3bを基準として吸気通路7が設けられた側を吸気側、排気通路8が設けられた側を排気側とする。また、シリンダヘッド3には、燃焼室凹部3bの壁面及びシリンダヘッド3の上面に開口するように図示しない点火プラグ挿入孔が形成され、この点火プラグ挿入孔に点火プラグが挿入される。
シリンダヘッド3の内部には、燃焼室6内や排気通路8内の燃焼ガスからの熱伝搬による温度上昇を抑制するために、燃焼室凹部3b、吸気通路7及び排気通路8の周辺にヘッド冷却液通路9(9a、9b、9c、9d,9e等)が形成されている。ヘッド冷却液通路9も、冷却水やオイル、冷媒などの冷却液を流通させるべく、シリンダヘッド3の成型時に砂型などによって空洞として形成される。
ヘッド冷却液通路9は、主冷却液通路9a、上排気側冷却液通路9b、下排気側冷却液通路9c、図示しない排気側連結通路、上吸気側冷却液通路9d、下吸気側冷却液通路9e、及び図示しない吸気側連結通路等を有している。主冷却液通路9aは、複数の燃焼室凹部3bの上方近傍を通過するようにシリンダヘッド3のシリンダ列方向(長手方向)に延在している。上排気側冷却液通路9b及び下排気側冷却液通路9cは、排気通路8を上下から互いに挟み合うように配置され、それぞれシリンダヘッド3の長手方向に延在している。排気側連結通路は、主冷却液通路9aと上排気側冷却液通路9b及び下排気側冷却液通路9cとを連通する。上吸気側冷却液通路9d及び下吸気側冷却液通路9eは、吸気通路7を上下から互いに挟み合うように配置され、それぞれシリンダヘッド3の長手方向に延在している。吸気側連結通路は、主冷却液通路9aと上吸気側冷却液通路9d及び下吸気側冷却液通路9eとを連通する。主冷却液通路9a、上排気側冷却液通路9b、下排気側冷却液通路9c、上吸気側冷却液通路9d及び下吸気側冷却液通路9eでは、冷却液がシリンダ列方向に流通する。
シリンダヘッド3には、各吸気通路7及び排気通路8を開閉する吸気バルブ10及び排気バルブ11が設けられている。吸気バルブ10及び排気バルブ11はそれぞれ、シリンダヘッド3に嵌合されたバルブガイド12、12によって摺動可能に支持され、各吸気通路7及び排気通路8を横切るように配置された棒状のステム10a、11aと、ステム10a、11aの下端に一体に形成され、各吸気通路7及び排気通路8と燃焼室凹部3bとの接続部分に設けられた円環状のバルブシート13、13に着座する弁体である傘部10b、11bとを有するポペットバルブである。傘部10b、11bの外周部分には、バルブシート13、13に当接する円錐台形のバルブフェース10c、11c(シール面)が形成されている。
バルブガイド12は、グラファイトを含む潤滑性に優れた焼結材により略円筒形状に形成されている。バルブガイド12は、シリンダヘッド3の吸気側及び排気側の上面からそれぞれ上吸気側冷却液通路9d及び上排気側冷却液通路9bを通過して吸気通路7及び排気通路8に連通するように形成された円形断面の貫通孔3cに圧入されることによってシリンダヘッド3に嵌合される。つまり、バルブガイド12は、それぞれ外面の一部が上吸気側冷却液通路9d又は上排気側冷却液通路9bに臨むようにシリンダヘッド3に取り付けられ、吸気バルブ10又は排気バルブ11を摺動可能に支持する。
本実施形態では、吸気バルブ10は耐熱性のステンレス鋼によって中実に形成されている。排気バルブ11は、同じくステンレス鋼によって、傘部11bからステム11aに到る空洞部11dが内部に形成された中空構造とされている。この空洞部11dは、排気バルブ11が開弁位置にあるときに上排気側冷却液通路9bと重なる位置まで上方に延びている。空洞部11dの内部には熱伝導率の高い冷媒が封入され、冷媒が傘部11bで燃焼ガスから受け取った熱をステム11aの特に上排気側冷却液通路9bと重なる部分で放出することで、排気バルブ11が効果的に冷却される。冷媒としては例えばナトリウムを用いることができる。なお、空洞部11dは、少なくとも排気バルブ11が閉弁位置にあるときに上排気側冷却液通路9bと重なる位置まで上方に延びていることが好ましい。
吸気バルブ10及び排気バルブ11の上端近傍にはそれぞれ円盤形状のリテーナ14、14が固定されており、各リテーナ14とシリンダヘッド3の上面との間には圧縮コイルばね15、15が介装されている。これにより、吸気バルブ10及び排気バルブ11は、常時上向き(閉弁方向)に付勢されて傘部10b、11bがバルブシート13、13に着座し、吸気通路7及び排気通路8の燃焼室6側の端部を閉塞する。吸気バルブ10及び排気バルブ11に対して設けられたバルブガイド12、リテーナ14及び圧縮コイルばね15は、それぞれ共通部材とされている。これらの吸気通路7、排気通路8、吸気バルブ10、排気バルブ11、バルブガイド12、12、バルブシート13、13、リテーナ14、14及び圧縮コイルばね15、15により、燃焼室6への吸気及び燃焼室6からの排気が可能な吸排気装置16が構成される。
シリンダヘッド3とヘッドカバー4との間に画成された動弁室17には、吸気バルブ10及び排気バルブ11を開弁駆動する動弁機構18が収容されている。動弁機構18は、シリンダヘッド3に支持されたカムシャフト19及びロッカシャフト20、ロッカシャフト20により揺動可能に支持された吸気ロッカアーム21及び排気ロッカアーム22等を備えた公知の構成を有している。吸気ロッカアーム21及び排気ロッカアーム22は、それぞれカムに当接する一端及び吸気バルブ10及び排気バルブ11のステムエンドに当接する他端を有している。
カムシャフト19が図示しない動力伝達機構を介してクランクシャフトの2分の1の回転速度をもって回転駆動されると、ローラを介してカムに転接する吸気ロッカアーム21及び排気ロッカアーム22がそれぞれ所定のタイミングで揺動する。これにより、吸気バルブ10及び排気バルブ11が圧縮コイルばね15の付勢力に抗して下向き(開弁方向)に駆動されて傘部10b、11bがバルブシート13、13から離間することで、吸気通路7及び排気通路8が開放されて燃焼室6と連通する。
次に、図2及び図3を参照して、バルブガイド12について詳細に説明する。ここでは排気側のバルブガイド12を取り上げて説明するが、吸気側のバルブガイド12も同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。
図示するように、バルブガイド12は、外周面12aと内周面12bとが同心状に配置され、外周面12aの上下端に形成された面取り部12c及び後述する凹部12dを除く部分の厚さT1が一定とされた略円筒形状とされている。バルブガイド12の上排気側冷却液通路9bに望む外周部分には、複数(本実施形態では6つ)の凹部12dが周方向に並ぶように形成されている。凹部12dは、正面視(図2)で概ね矩形を呈する同一形状に形成され、周方向に等間隔に配置されている。このような凹部12dが形成されることにより、バルブガイド12の外周部分における互いに隣接する2つの凹部12d間には、バルブガイド12の軸方向と平行に延びるリブ12eが複数本(本実施形態では6本)形成される。リブ12eも凹部12dと同様にすべてが同一形状となっている。
凹部12d及びリブ12eの長さL(バルブガイド12の軸方向長さ)は、バルブガイド12が通過する部分の上排気側冷却液通路9bの高さHよりも大きくされている。凹部12d及びリブ12eは、上端及び下端が上排気側冷却液通路9bの外側(図1の貫通孔3c内)に位置するように配置される。図3に示すように、凹部12dは、概ねバルブガイド12の径方向に延びる一対の側壁面31、31と、バルブガイド12の12Xから一対の側壁面31、31の中央に向けて伸ばした仮想線VLに直交する方向に延びる底壁面32と、底壁面32と各側壁面31とを接続する一対の湾曲面33、33とにより構成される。したがって、凹部12dの両端部では、外周面12aと側壁面31との接続部が概ね90度の挟み角を有する稜線34を形成し、リブ12eの先端両側縁がエッジ状となっている。
凹部12dの深さD(バルブガイド12の外周面12aから最も深い部分の深さ)は、バルブガイド12の厚さT1の半分以下とされている。したがって、凹部12dが形成されたことで最も薄くなる部分のバルブガイド12の厚さT2は、凹部12dの深さD以上となっている。一方、凹部12dの幅W1(バルブガイド12の外周面12a上の幅)は、リブ12eの幅W2(同面上の幅)よりも大きく、かつ凹部12dの深さD(同面から最も深い部分の深さ)よりも大きくされている。
そしてバルブガイド12は、図3に白抜き矢印で示す冷却液流れ方向(すなわちシリンダ列方向)に対して凹部12dが対向する向きでシリンダヘッド3に取り付けられる。したがって、冷却液の流れ方向に直交しかつバルブガイド12の12Xを通るようにバルブガイド12を二分する仮想平面VSに対して冷却液の上流側には、仮想平面VS上に配置されるリブ12eを除いて2つのリブ12eが形成される。
次に、このように構成されたバルブガイド12の作用効果について、図4〜図6を参照しながら説明する。ここでは、図4に示すように、バルブガイド12の外周面12aにおける動弁室17に露出する部分及び端面(以下、両者を合わせてステムエンド面12fと呼ぶ)の平均温度と、バルブガイド12の内周面12b(全面)の平均温度とを、図5に示す比較例1〜4と対比して、図6のグラフに示す。
図5に示すように、比較例1は、本実施形態のバルブガイド12と同一の外径及び内径を有し(つまり厚さT1を有し)、外周面に何ら凹凸が形成されないバルブガイド(以下、ベースバルブガイド101という)を、上排気側冷却液通路9bに露出しないようにシリンダヘッド3の壁で覆った水冷化なしの場合である。比較例2は、ベースバルブガイド101を、本実施形態と同様に上排気側冷却液通路9bに臨むようにシリンダヘッド3に取り付けて水冷化した場合である。比較例3は、水冷化に加え、ベースバルブガイド101の上排気側冷却液通路9bに臨む部分の全体に、本実施形態の図3の断面と同一の断面係数(弱軸方向での断面係数)となる細軸部102を設けた(細軸化した)場合である。比較例4は、水冷化及び細軸化に加え、細軸部102にフィン状の突起103を形成して凹凸形状にした場合である。なお、比較例4の細軸部102における断面係数が最も小さくなる部分の断面形状は、比較例3と同一であり、この部分ではそれぞれのバルブガイドの厚さTcは、リブ12eを有しないために本実施形態のバルブガイド12の凹部12dにおける厚さT2よりも大きくなっている。
図6に示すように、水冷化した比較例2では、水冷化なしの比較例1に比べ、ステムエンド面12fの平均温度及び内周面12bの平均温度はともに低くなる。これは、比較例1ではバルブガイド12の熱がシリンダヘッド3を伝導した後に冷却液に放出されるのに対し、比較例2ではバルブガイド12の熱が冷却液に直接放出されるためである。
水冷化及び細軸化した比較例3では、水冷化だけの比較例2に比べ、ステムエンド面12fの平均温度及び内周面12bの平均温度はともに低くなる。これは、比較例3では、冷却液に接触するバルブガイドの表面積が比較例2に比べて小さくなるものの、細軸部102における径方向の熱伝導距離が比較例2に比べて短くなり、熱伝導距離の短縮による冷却性能の増大効果の方が表面積の縮小による冷却性能の低減効果よりも大きいためである。
水冷化、細軸化及び凹凸形状にした比較例4では、水冷化及び細軸化だけの比較例3に比べ、ステムエンド面12fの平均温度及び内周面12bの平均温度はともに低くなる。これは、突起103部分ではバルブガイドの径方向の熱伝導距離が比較例3に比べて長くなるものの、この部分の熱伝導距離の増大による冷却性能の低減効果よりも、薄く形成された突起103による冷却液との接触面積拡大によってもたらされる冷却性能の増大効果の方が大きいためである。
これに対し、本実施形態に係る6つの凹部12d及び6本のリブ12eが形成されたバルブガイド12では、ステムエンド面12fの平均温度は、比較例4に比べて若干高くなるものの比較例1〜3に比べれば低くなり、内周面12bの平均温度は全ての比較例1〜4に比べて大幅に低くなる。これは、リブ12eが軸方向に延在することにより、排気通路8側からステムエンド面12f側へ熱が伝わりやすくなる一方で、凹部12dにおける厚さT2が比較例4の厚さTcよりも薄くなることや、リブ12eによってバルブガイド12の表面積が大きくなること、冷却液に乱流が発生することによってバルブガイド12から冷却液への熱伝達率が大きくなること等によるものである。
つまり、比較例4では、突起103が冷却液の流れ方向に延在していることから、細軸部102の周囲の冷却液には乱流が発生せず、細軸部102との接触部分で冷却液が層流を形成する。これに対して本実施形態に係るバルブガイド12では、冷却液が凹部12dに衝突して層流を形成するが、速度境界層が凹部12dのエッジ状端縁でバルブガイド12の表面から剥離して乱流を発生させ、速度境界層の影響を受ける温度境界層もバルブガイド12の表面から剥離することにより、バルブガイド12の表面に低温の冷却液が接することになり、バルブガイド12から冷却液への熱伝達率が大きくなる。
また、リブ12eが軸方向に延在することにより、同じ断面係数となるように細軸化した比較例3や比較例4に比べてバルブガイド12を軽量化することが可能になっている。言い換えれば、同じ質量となるように細軸化したものよりも断面係数を大きくして高い曲げ剛性を確保することができる。
このように、実施形態に係るバルブガイド12では、冷却液通路に臨む外周部分に複数の凹部12dが形成されるとともに、互いに隣接する凹部12dによってバルブガイド12の軸方向に延びるリブ12eが形成されることにより、バルブガイド12の断面係数及び曲げ剛性を低下させることなく、凹部12dにおけるバルブガイド12の厚みが小さく(熱伝導距離が短く)なってバルブガイド12から冷却水への放熱量が大きくなる。また、バルブガイド12の冷却液通路に臨む外周部分にリブ12e及び凹部12dが形成されることにより、冷却液に接するバルブガイド12の表面積が大きくなり、リブ12eが冷却液の流れに対して交差する方向に延びることにより、冷却液に乱流が発生するため、これらによってもバルブガイド12から冷却水への放熱量が大きくなる。
また、本実施形態では、冷却液の流れ方向に直交しかつバルブガイド12の12Xを通る仮想平面VSに対して冷却液の上流側に、仮想平面VS上のものを除いてリブ12eが2つ形成されたことにより、冷却液の上流側に形成された2つのリブ12e間の凹部12dが冷却液に乱流を発生させるため、バルブガイド12から冷却液への熱伝達率が高くなり、バルブガイド12から冷却水への放熱量が大きくなる。
また、凹部12dの幅W1が凹部12dの深さDよりも大きいことにより、冷却液が凹部12dに進入しやすく、凹部12dの側壁面31とバルブガイド12の外周面12aとの接続部が稜線34を形成することにより、凹部12dに進入して層流を形成する冷却液が稜線34で剥離しやすくなる。これによっても、冷却液に乱流が発生しやすくなって、バルブガイド12から冷却液への熱伝達率が高くなる。
≪第2実施形態≫
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と同一の部材や部位には同一の符号を付し、重複する説明は説明する。本実施形態では、バルブガイド12の内燃機関Eに対する取付構造は第1実施形態と同一とされており、バルブガイド12の形状が第1実施形態と異なる。
図7及び図8に示すように、本実施形態では、バルブガイド12の上排気側冷却液通路9bに望む外周部分に4つの凹部12dが周方向に並べて形成されている。したがって、バルブガイド12の外周部分には、4本のリブ12eが形成される。バルブガイド12は、外径及び内径が第1実施形態と同一で、凹部12dが形成された部分(図8)の断面係数が第1実施形態と同一とされている。凹部12dの深さDは第1実施形態よりも深くなり、凹部12dにおける厚さT2は第1実施形態の厚さT2及び比較例3、4の厚さTcよりも小さくなっている。また、第1実施形態と同様、凹部12dの幅W1は、リブ12eの幅W2よりも大きく、かつ凹部12dの深さDよりも大きくされている。
バルブガイド12は、図8に白抜き矢印で示す冷却液流れ方向に対して凹部12dが対向する向きでシリンダヘッド3に取り付けられる。したがって、仮想平面VS上にはリブ12eは配置されず、仮想平面VSに対して冷却液の上流側に2つのリブ12eが形成される。
本実施形態のバルブガイド12によれば、図9に示すように、ステムエンド面12fの平均温度は、第1実施形態と同様に比較例4に比べて若干高くなるものの、比較例3と同等になり、内周面12bの平均温度は全ての比較例1〜4に比べて大きく大幅に低くなる。これは、第1実施形態で述べた理由と同じ理由によるものである。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、一例として自動車用の内燃機関Eにバルブガイド構造を適用しているが、鉄道車両や船舶、航空機等にも広く適用することができる。
また、凹部12d及びリブ12eの形状が異なる2つの実施形態を示してバルブガイド12について説明したが、凹部12d及びリブ12eの形態はこれに限られることなく適宜変更可能である。例えば、図10に示すように、バルブガイド12の外周部に凹部12d間にリブ12eが7本以上(図示例は12本)形成される形態や、5本形成される形態、3本や2本形成される形態としてもよい。ただし、バルブガイド12の曲げ剛性を確保するためには、リブ12eを4本以上形成することが好ましく、リブ12eを等間隔に4本形成した場合には、仮想平面VS上にリブ12eを配置せずに、仮想平面VSに対して冷却液の上流側に2本のリブ12eを配置することが好ましい。
また上記実施形態では、凹部12dを等間隔に配置して全てのリブ12eを同形状にしているが、凹部12dの幅W1を異ならせたり、リブ12eの幅W2を異ならせたり、リブ12eを不均等に配置したりしてもよい。更に上記実施形態では、リブ12eがバルブガイド12の軸方向と平行に延びるように凹部12dを形成しているが、リブ12eはバルブガイド12の軸方向と平行に延びる必要はなく、バルブガイド12の軸方向に対して傾斜していてもよい。
この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度、素材等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
3 シリンダヘッド(機関本体)
9 ヘッド冷却液通路
9b 上排気側冷却液通路
10 吸気バルブ(機関弁)
11 排気バルブ(機関弁)
12 バルブガイド
12a 外周面
12e リブ
12X バルブガイドの中心
31 側壁面
34 稜線
E 内燃機関
VS 仮想平面
W1 凹部12dの幅
W2 リブ12eの幅
D 凹部12dの深さ

Claims (4)

  1. 冷却液通路が形成された内燃機関の機関本体と、
    外面の一部が前記冷却液通路に臨むように前記機関本体に取り付けられ、機関弁を摺動可能に支持する略円筒形状のバルブガイドと、
    前記バルブガイドの前記冷却液通路に臨む外周部分に周方向に並ぶように形成された複数の凹部と、
    互いに隣接する凹部によって前記バルブガイドの軸方向に延びるように形成されたリブと
    を有することを特徴とする内燃機関のバルブガイド構造。
  2. 冷却液の流れ方向に直交し、かつ前記バルブガイドの中心を通るように前記バルブガイドを二分する仮想平面に対して前記冷却液の上流側に、前記リブが少なくとも2つ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のバルブガイド構造。
  3. 前記凹部の幅が前記凹部の深さよりも大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関のバルブガイド構造。
  4. 前記凹部が、前記バルブガイドの径方向に延びる一対の側壁面を有し、当該側壁面と前記バルブガイドの外周面との接続部が稜線を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関のバルブガイド構造。
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