JP2015206077A - 廃乾電池からの資源の分離、回収方法および分離、回収設備および回収物 - Google Patents

廃乾電池からの資源の分離、回収方法および分離、回収設備および回収物 Download PDF

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Abstract

【課題】廃乾電池から該廃乾電池に含まれるマンガン成分と亜鉛成分とを分離、回収する方法、設備および回収物を提供する。【解決手段】廃乾電池からマンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池を選別し、選別した乾電池を破砕、篩い分けして粉粒体とし、酸溶液を用いて前記粉粒体からマンガンおよび亜鉛を浸出させることによりマンガンおよび亜鉛を浸出した浸出液とマンガンを含有する浸出残渣を得、固液分離したのち、分離された浸出液にオゾンを作用させてマンガン含有沈澱物と亜鉛イオン含有溶液とし、マンガン含有沈澱物と亜鉛イオン含有溶液とを固液分離することにより、廃乾電池に含まれるマンガン成分を浸出残渣とマンガン含有沈澱物とし、廃乾電池に含まれる亜鉛成分を亜鉛イオン含有溶液として分離し、回収する。【選択図】図2

Description

本発明は、廃棄されたマンガン乾電池やアルカリマンガン乾電池の主要成分であるマンガンおよび亜鉛を分離、回収し、資源としてリサイクルする方法、設備およびそれら方法により回収された回収物に関するものである。
低品位の原鉱や、精鉱、製鉄所副生成物、産業廃棄物から特定の有価金属を回収することは、従来、コスト的な理由から困難なことが多く、工業的に実施されているのは極一部の種類の有価金属に限られてきた。しかし、近年、金属資源の枯渇や取引価格の上昇等により、このようなものから有価金属を積極的に回収することが必要とされるようになってきた。例えば、有価金属の一つであるマンガンは、産業界の多岐に亘る分野で必須の金属とされているが、将来、その需要が埋蔵量を上回ることが懸念されている。特に、製鉄所では、製鋼原料としてマンガンを大量に消費することから、マンガン源の確保という問題は、製鉄分野において極めて深刻である。
その一方で、産業廃棄物として処分されている乾電池の一部には、マンガン含有率が高いものが存在する。また、日本国内では、莫大な量の乾電池が生産され、消費、廃棄されている。
例えば、1次電池として代表的なマンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池は、正極材料として二酸化マンガンを使用し、負極材料として亜鉛を使用している。また、マンガン乾電池は、電解液に塩化亜鉛を使用する場合がある。そして、これらの電池の年間生産量は、例えば、2003年度の実績で、合計約5万トン/年と言われている。
したがって、これらの廃乾電池からマンガンを回収し、これを製鋼原料として再利用する技術を確立できれば、マンガン源の確保という上記問題の大幅な解消が期待される。しかしながら、放電終了後に廃棄されたマンガン乾電池やアルカリマンガン乾電池の資源リサイクルの現状は、亜鉛精錬メーカーが廃乾電池に含まれる亜鉛の一部を回収、或いは一部電炉メーカーが廃乾電池に含まれる鉄や炭素の一部を回収しているに過ぎない。すなわち、未だ多くの資源がリサイクルされることなく未利用のまま、廃材として埋め立て処理等されている。
このような状況下、廃乾電池の構成材料をリサイクルする技術に関し、亜鉛や鉄、炭素のみならず、マンガンをもリサイクルする技術が種々提案されている。
例えば、特許文献1では、廃乾電池からマンガン電池およびアルカリマンガン電池を選別し、破砕、篩い分けして粉粒体を得、この粉粒体中に含まれる亜鉛等を希塩酸または希硫酸で溶解して、溶解残渣中にマンガンと炭素を残す技術が提案されている。そして、特許文献1で提案された技術によると、亜鉛溶解液は亜鉛精錬原料としてリサイクルし、主として二酸化マンガンと炭素が残存する溶解残渣はマンガン原料としてリサイクルすることができる。
特許文献2では、廃乾電池から、二酸化マンガンと塩化亜鉛とを分離回収する技術が提案されている。この技術では、廃乾電池に物理的処理を施し、マンガンと亜鉛とを多く含む材料を得、この材料を水洗し、塩酸溶解し、その溶液から不溶解物(炭素粉等)を除去して塩化マンガンと塩化亜鉛との混合水溶液とする。次いで、この混合水溶液を加熱濃縮したのち、更に過塩素酸を加えて加熱することで、混合水溶液中の塩化マンガンを二酸化マンガンに酸化して不溶化した後、二酸化マンガンと塩化亜鉛との固形混合物を得る。そして、得られた固形混合物に水を加えて塩化亜鉛を溶解したのち、ろ過し、二酸化マンガンと塩化亜鉛とを分離回収する。また、溶液の塩化亜鉛は、有機溶剤を使用して抽出精製する。そして、特許文献2で提案された技術によると、上記操作により二酸化マンガンと塩化亜鉛とを分離回収して得られる回収品は、再び乾電池製造にリサイクル可能な純度に仕上がるとされている。
特許文献3〜8では、廃乾電池を性能によって選別し、破砕し、焙焼、仮焼等を行うことで、廃乾電池に含まれるマンガン、亜鉛成分を、マンガン酸化物と亜鉛酸化物との混合物として回収する技術や、このように回収された混合物を原料としてマンガン−亜鉛フェライトを製造する技術が提案されている。
一方、廃乾電池ではなく主に鉱物を対象とする技術であるが、微生物を用いて鉱物から有価金属を処理液中に浸出させることにより、有価金属を回収する技術も知られている。例えば、特許文献9では、鉄還元細菌を作用させ、3価鉄を2価鉄に還元し、前記2価鉄を用いて、金属酸化物および金属水酸化物からなる群に含まれる金属(コバルト、ニッケル、マンガン等)を浸出させ、浸出液と残渣を生成し、前記浸出液と残渣とを分離し、所望の金属を回収する技術が提案されている。そして、特許文献9で提案された技術によると、浸出液に含まれる有価金属(コバルト、ニッケル、マンガン等)を、公知の方法で回収し、所望の用途に用いることができるとしている。
特開2007−012527号公報 特開平11−191439号公報 特開平9−82340号公報 特開平9−82339号公報 特開平7−85897号公報 特開平7−81941号公報 特開平6−260175号公報 特開平6−260174号公報 特開2007−113116号公報
しかしながら、特許文献1で提案された技術では、希塩酸または希硫酸を用いて粉粒体から亜鉛を溶解しているが、粉粒体からの亜鉛の除去率(溶解率)を向上化する目的で酸の濃度を高めると、粉粒体に含まれるマンガンも一部溶解してしまい、歩留りが悪化する。また、このように粉粒体に含まれるマンガンが一部溶解すると、溶解したマンガンが後段で亜鉛と共に回収されてしまう。したがって、最終的に得られる亜鉛回収物は、亜鉛を多く含有するにも拘わらず、マンガンが混入しているがゆえに廃棄物とならざるを得ず、リサイクルが不可能になり、全体のコスト圧迫要因ともなる。一方、上記溶解処理条件を緩慢にすると、粉粒体から亜鉛が完全に除去できず、マンガンと亜鉛との分離が不完全になる。
特許文献2で提案された技術は、処理が非常に煩雑であり、回収のために投じられる資材や労力は、回収品の評価額以上であることが容易に想像され、経済的に資源リサイクルが成立し得ない。また、マンガン、亜鉛成分を回収する工程で危険性の高い過塩素酸や多量の有機溶剤を使用するため、処理が高コスト化することに加えて作業環境の安全性に関する問題もある。
特許文献3〜8で提案された技術では、廃乾電池からマンガンと亜鉛とを互いに分離した形で回収することができない。すなわち、特許文献3〜8で提案された技術は、廃乾電池からマンガン酸化物と亜鉛酸化物の混合物を回収する技術であり、このように亜鉛成分が混入したマンガン回収物は、製鋼原料として使用不可能である。
特許文献9で提案された技術は、微生物を用いて鉱物から金属を浸出する技術であり、大量の強酸や有機溶媒等を使用することなく、環境に対する負担の少ない技術として知られている。しかしながら、この技術を廃乾電池に適用した場合には、固液比、すなわち浸出液に対する被処理物(廃乾電池)の割合を50g/L程度にまで高めると、廃乾電池からマンガンと共に浸出する亜鉛の抗菌作用に起因すると考えられる阻害作用により、金属の浸出率が低下する傾向にある。また、微生物の培地(えさ)として用いるクエン酸鉄などのキレート鉄(鉄錯体)の塩は、一般的に高価であり、コスト面でも多少不利である。したがって、特許文献9で提案された技術においても、回収のために投じられる資材が、回収品の評価額以上となり、経済的な資源リサイクルが困難となる場合がある。
以上のように、従来技術では、廃乾電池からマンガン成分と亜鉛成分とを回収するに際し、マンガン成分と亜鉛成分とを互いに分離した形で回収することが極めて困難であった。それゆえ、従来技術では、製鋼原料として要求される高純度のマンガンを回収するに至らず、廃乾電池からマンガンを回収して製鋼原料として再利用する技術が切望されている。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、廃乾電池からマンガンおよび亜鉛を分離、回収する方法および設備に関し、特に廃乾電池に含まれるマンガン成分と亜鉛成分とをほぼ完全に分離し、亜鉛成分の混入が極めて少ないマンガンを、安価かつ簡便に回収する方法および設備を提供することを目的とする。
本発明者らは、廃乾電池からマンガン、亜鉛成分を分離、回収する技術に関し、従来技術が抱える上記問題点を克服する新規な分離、回収技術を探索すべく種々検討を重ねた。具体的には、廃乾電池からマンガン乾電池やアルカリマンガン乾電池を選別し、更に破砕、篩い分けすることにより得られた粉粒体から、マンガン成分と亜鉛成分とを互いに分離して回収する手段を模索した。
廃乾電池からマンガン乾電池やアルカリマンガン乾電池を選別し、これらを破砕して篩い分けすると、乾電池を構成する材料が篩上の固形物と篩下の粉粒体とに分離される。乾電池を構成する材料のうち、主に鉄皮状包装材、亜鉛缶、真鍮棒、紙材、プラスチック等は、破砕後に箔状や片状の固形物となり、篩上に分離される。一方、二酸化マンガン、炭素、塩化亜鉛、塩化アンモン、苛性カリ、或いは更に放電により生成したMnO(OH)やZn(OH)2、Mn(OH)2、ZnO等は、粉粒体となり、篩下に分離される。なお、粉粒体に、微量の鉄が不可避的に混入する場合もある。
本発明者らは、先ず、上記粉粒体、すなわち、主にマンガン・亜鉛成分とともに炭素を含有する粉粒体に酸浸出処理を施し、粉粒体中の亜鉛を浸出させる一方、粉粒体中のマンガン成分を浸出残渣に残存させることで、マンガン成分と亜鉛成分とを互いに分離した形で回収することを試みた。しかし、このような方法では、粉粒体中のマンガン成分の全量を浸出残渣に留めておくことが極めて困難であり、その一部が亜鉛とともに浸出してしまうことが明らかになった。
そこで、本発明者らは更に検討を進め、浸出液に含まれるマンガン成分と亜鉛成分とを完全に分離して回収する手段を模索した。その結果、浸出液にオゾンを作用させるという簡便な手段により、浸出液に溶解しているマンガンおよび亜鉛のうち、マンガンのみを酸化物として沈澱させて回収できるという知見を得た。
上記の酸浸出処理により得られる浸出液は、マンガンイオンと亜鉛イオンを含んでいる。また、粉粒体が鉄を不可避的に混入する場合には、酸浸出処理時に粉粒体中の鉄も浸出するため、上記浸出液は鉄イオンも含んでいることが想定される。
このような浸出液から、マンガン成分のみを不溶化して沈澱させることができれば、マンガン成分を、亜鉛または鉄から容易に分離して回収することができる。そこで、本発明者らは、各金属(マンガン、亜鉛、鉄)の酸化還元電位(ORP)とpHの状態図(Eh-pH図)に着目した。
図1(a)は、25℃の水溶液中におけるマンガンの酸化還元電位(ORP)とpHの状態図(Eh-pH図)である。図1(b)は、25℃の水溶液中における亜鉛の酸化還元電位(ORP)とpHの状態図(Eh-pH図)である。図1(c)は、25℃の水溶液中における鉄の酸化還元電位(ORP)とpHの状態図(Eh-pH図)である。図1(a)〜(c)に示すとおり、Eh-pH図においてマンガンが沈澱する領域と鉄、亜鉛が沈澱する領域はある程度重なっており、図1(a)に示すマンガンのEh-pH図中、○で囲った領域以外ではマンガン以外の物質も沈澱してしまうことが分かる。そのため、マンガン、亜鉛、鉄がいずれも溶解している(イオン化している)領域から、酸化還元電位(ORP)、pHの状態を変化させると、殆どの領域において亜鉛または鉄が先に酸化物あるいは水酸化物として固形物化、沈殿してしまう。
しかしながら、本発明者らは、唯一、低pH・高ORPの領域(図1(a)に示すマンガンのEh-pH図中、○で囲った領域)に、主にマンガンが酸化物として固形物化、沈殿する領域が存在することに思い至った。そして、マンガンイオンと亜鉛イオン、鉄イオンを含有する上記浸出液のpHと酸化還元電位(ORP)を、Eh-pH図において主にマンガンが酸化物として固形物化、沈澱する領域(図1(a)に示すマンガンのEh-pH図中、○で囲った領域)のpHと酸化還元電位(ORP)に調整することにより、主にマンガンのみを酸化物として不溶化し、沈殿させることができることに想到した。
また、本発明者らは更に検討を進め、上記浸出液のpHと酸化還元電位(ORP)を簡便に調整する手段を模索した。その結果、上記浸出液にオゾンを作用させることにより、上記浸出液のpHと酸化還元電位(ORP)を容易に所望の値(図1(a)に示すマンガンのEh-pH図中、○で囲った領域)に調整可能であることを知見した。
更に、本発明者らが成分分析を行った結果、上記の如くオゾンを作用させることにより得られた沈澱物(マンガン酸化物)は、極めて高純度のマンガン酸化物であることが確認された。そして、この高純度のマンガン酸化物や、酸浸出処理で得られた浸出残渣を回収することで、上記廃乾電池の粉粒体から、亜鉛をほぼ完全に分離したマンガン回収物が得られることを知見した。
本発明は上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は次のとおりである。
[1] 廃乾電池から該廃乾電池に含まれるマンガン成分と亜鉛成分とを分離する方法であって、廃乾電池からマンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池を選別する選別工程と、該選別工程で選別した廃乾電池を破砕、篩い分けして粉粒体を得る破砕・篩い分け工程と、酸溶液を用いて前記粉粒体に酸浸出処理を施し、マンガンおよび亜鉛を浸出した浸出液とマンガンを含有する浸出残渣とを得る酸浸出工程と、該酸浸出工程で得られた浸出液と浸出残渣とを固液分離する第1固液分離工程と、該第1固液分離工程で分離された浸出液にオゾンを作用させて、該浸出液中に含まれるマンガンイオンを酸化して沈澱させ、マンガン含有沈澱物と亜鉛イオン含有溶液とを得るオゾン処理工程と、該オゾン処理工程で得られたマンガン含有沈澱物と亜鉛イオン含有溶液とを固液分離する第2固液分離工程とを有し、前記廃乾電池に含まれるマンガン成分を前記浸出残渣と前記マンガン含有沈澱物とし、前記廃乾電池に含まれる亜鉛成分を前記亜鉛イオン含有溶液として分離することを特徴とする廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法。
[2] 前記[1]において、前記酸浸出工程における酸溶液が、質量%濃度1.4%以上45%以下の希硫酸または質量%濃度1%以上14%以下の希塩酸であることを特徴とする廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法。
[3] 前記[1]または[2]において、前記酸浸出工程における粉粒体と酸溶液との固液比が50g/L以上であることを特徴とする廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法。
[4] 廃乾電池から該廃乾電池に含まれるマンガン成分を回収する方法であって、前記[1]ないし[3]のいずれかの廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法にしたがい分離されたマンガン含有沈澱物をマンガン成分として回収することを特徴とする廃乾電池からのマンガン回収方法。
[5] 廃乾電池から該廃乾電池に含まれるマンガン成分を回収する方法であって、前記[1]ないし[3]のいずれかの廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法にしたがい分離された浸出残渣とマンガン含有沈澱物とを混合する混合工程を有し、前記浸出残渣と前記マンガン含有沈澱物との混合物をマンガン成分として回収することを特徴とする廃乾電池からのマンガン回収方法。
[6] 前記[4]または[5]のマンガン回収方法により回収されたマンガン成分回収物。
[7] 廃乾電池から該廃乾電池に含まれる亜鉛成分を回収する方法であって、前記[1]ないし[3]のいずれかの廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法にしたがい分離された亜鉛イオン含有溶液にアルカリ剤を添加して、前記亜鉛イオン含有溶液中の亜鉛イオンを亜鉛含有沈澱物とするアルカリ沈澱処理工程と、該アルカリ沈澱処理工程で得られた亜鉛含有沈澱物を固液分離する第3固液分離工程とを有し、該第3固液分離工程で分離された亜鉛含有沈澱物を亜鉛成分として回収することを特徴とする廃乾電池からの亜鉛回収方法。
[8] 前記[7]の亜鉛回収方法により回収された亜鉛成分回収物。
[9] 廃乾電池から該廃乾電池に含まれるマンガン成分と亜鉛成分とを分離する設備であって、廃乾電池からマンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池を選別する選別装置と、該選別装置で選別された廃乾電池を装入して破砕処理を施し、破砕処理物を得る破砕装置と、該破砕装置で得られた破砕処理物に篩い分け処理を施して粉粒体を得る篩い分け装置と、酸溶液を用いて前記粉粒体に酸浸出処理を施し、マンガンイオンおよび亜鉛イオンを含有する浸出液とマンガンを含有する浸出残渣とを得る酸浸出槽と、該酸浸出槽で得られた浸出液と浸出残渣とを固液分離する第1固液分離装置と、該第1固液分離装置で分離された浸出液にオゾンを作用させて、該浸出液中に含まれるマンガンイオンを酸化して沈澱させ、マンガン含有沈澱物と亜鉛イオン含有溶液とを得るオゾン処理装置と、該オゾン処理装置で得られたマンガン含有沈澱物と亜鉛イオン含有溶液とを固液分離する第2固液分離装置とを備えることを特徴とする廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離設備。
[10] 廃乾電池から該廃乾電池に含まれるマンガン成分を回収する設備であって、前記[9]の廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離設備を備えることを特徴とする廃乾電池からのマンガン回収設備。
[11] 廃乾電池から該廃乾電池に含まれる亜鉛成分を回収する設備であって、前記[9]の廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離設備と、該マンガンおよび亜鉛分離設備の第2固液分離装置で分離された亜鉛イオン含有溶液を貯液し、該亜鉛イオン含有溶液にアルカリ沈澱処理を施して亜鉛含有沈澱物を得るアルカリ沈澱処理槽と、該アルカリ沈澱処理槽で得られた亜鉛含有沈澱物を固液分離する第3固液分離装置とを備えることを特徴とする廃乾電池からの亜鉛回収設備。
本発明によれば、簡便な方法で廃乾電池中のマンガンと亜鉛をほぼ完全に分離でき、また高い歩留りで回収することができる。また、本発明によれば、亜鉛の混入が低減されたマンガンを回収することができるため、回収したマンガンを製鋼原料としてリサイクルすることができ、回収した亜鉛は亜鉛精錬原料としてリサイクルすることが可能となる。以上のように、本発明は、廃乾電池の主要成分であるマンガン、亜鉛の両者の再利用を実現するものであることから、工業上の意味は極めて大きい。
(a)水溶液中におけるマンガンの、酸化還元電位(ORP)とpHの状態図(Eh-pH図)である。(b)水溶液中における亜鉛の、酸化還元電位(ORP)とpHの状態図(Eh-pH図)である。(c)水溶液中における鉄の、酸化還元電位(ORP)とpHの状態図(Eh-pH図)である。 本発明の分離、回収方法の一形態を説明するフロー図である。 本発明の分離、回収設備の一形態を示す模式図である。 実施例の酸浸出処理における酸溶液の硫酸濃度とマンガン浸出率との関係を示す図である。 実施例で回収されたマンガン酸化物のXRD解析結果を示す図である。 実施例のオゾン処理時のマンガン回収率および亜鉛回収率を示す図である。
以下、本発明について具体的に説明する。
まず、本発明の廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法、マンガン回収方法、マンガン成分回収物、亜鉛回収方法、亜鉛成分回収物について説明する。
本発明は、マンガン乾電池、アルカリマンガン乾電池のいずれか1種または2種の廃乾電池を対象とする発明である。そして、本発明は、これらの廃乾電池に含まれるマンガン成分と亜鉛成分とを互いに分離する分離方法の発明、当該分離方法にしたがい分離したそれぞれの成分を回収する回収方法の発明、並びに、当該回収方法にしたがい回収された回収物の発明である。
図2は本発明の実施の一形態を説明するフロー図である。図2に示すように、本発明のマンガンおよび亜鉛分離方法、並びに本発明のマンガン回収方法は、選別工程1、破砕・篩い分け工程2、酸浸出工程3、第1固液分離工程4、オゾン処理工程5および第2固液分離工程6を有する。
また、本発明のマンガン回収方法は、上記の各工程1〜6に加えて更に、第2固液分離工程6の次工程として混合工程7を有する場合もある。
また、本発明の亜鉛回収方法は、上記の各工程1〜6に加えて更に、第2固液分離工程6の次工程として、アルカリ沈澱処理工程8と、第3固液分離工程9とを有する。
選別工程
廃乾電池は、種類毎に分別して回収されることが少なく、様々な種類のものが混在した形で回収されるのが一般的である。このため、本発明では、先ず、これらの廃棄・回収された廃乾電池の中から、マンガン乾電池、アルカリマンガン乾電池のうちのいずれか一方または双方を選別する。選別方法としては、手選別、形状や放射線等を利用して分別する機器を利用する機械選別など、いずれの方法を用いてもよい。選択した選別方法により、廃乾電池中の水銀電池やニカド電池等を除外する。
破砕・篩い分け工程
次に、選別工程で選別したマンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池を破砕する。破砕の目的は、選別工程で選別したマンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池の構成材料から、マンガン・亜鉛以外の成分を含む材料を可能な限り排除することにある。
選別された廃乾電池のうち、マンガン乾電池は、二酸化マンガン(正極材料)、炭素棒(集電体)、亜鉛缶(負極材料)、塩化亜鉛または塩化アンモニウム(電解液)、放電により生成したMnO(OH)やZn(OH)2などのほか、包装材である鉄、プラスチックおよび紙等を含む。また、選別された廃乾電池のうち、アルカリマンガン乾電池は、上記炭素棒(集電体)、亜鉛缶(負極材料)、塩化亜鉛または塩化アンモニウム(電解液)の代わりに真鍮棒(集電体)、亜鉛粉、(負極材料)、水酸化カリウム(電解液)等を含み、放電により生成したMn(OH)2、ZnO等を含む。
これらの材料が破砕されると、包装材(鉄、プラスチックおよび紙等)や、マンガン乾電池の負極材料である亜鉛缶、アルカリマンガン乾電池の集電体である真鍮棒は、箔状や片状の固形物となる。一方、正極材料である二酸化マンガン、マンガン乾電池の集電体である炭素棒、アルカリマンガン乾電池の負極材料である亜鉛粉、放電により生成したMnO(OH)やZn(OH)2、Mn(OH)2、ZnOなど、および各種電解液は、上記箔状・片状の固形物よりも更に細かい粉粒体となる。
したがって、選別した廃乾電池を破砕したのち、所定の目開きの篩を用いて篩い分けすると、選別した廃乾電池から包装材等の大きな固形物が除去され、主にマンガン・亜鉛成分とともに炭素を含有する粉粒体を得ることができる。
選別した廃乾電池の破砕には通常、破砕機を使用する。破砕機の型式については特に限定されず、例えば、破砕後に、乾電池を構成している包装材等と粉粒体がよく分離される型式のものが好ましい。このようなものとしては、例えば、2軸回転式の破砕機が挙げられる。上記の破砕物の篩い分け(箔状や片状の固形物と、粉粒体との篩い分け)に使用する篩の目開きは、1mm以上20mm以下程度とすることが好ましい。また、1mm以上10mm以下程度とすることがより好ましく、1mm以上3mm以下程度とすることがより一層好ましい。
以上のように、破砕・篩い分け工程を経ることで、マンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池の主要構成材料である、二酸化マンガン、炭素、塩化亜鉛または塩化アンモン、苛性カリ、更には、放電によって生成したMnO(OH)やZn(OH)2、Mn(OH)2、ZnOなどが混合した粉粒体が得られる。また、この粉粒体には、微量の鉄成分が不可避的に混入する。
また、破砕・篩い分け工程において、マンガン乾電池の負極材料である亜鉛缶は箔状や片状の固形物として篩い分けされるが、この亜鉛缶は別途回収され、リサイクルされる。
酸浸出工程
酸浸出工程では、酸溶液を用いて、破砕・篩い分け工程で得られた粉粒体、すなわち主としてマンガン・亜鉛成分と炭素を含有する粉粒体に、酸浸出処理を施す。この酸浸出処理により、粉粒体に含まれる亜鉛を浸出させるとともに、粉粒体に含まれるマンガンの一部を浸出させる。また、粉粒体に含まれる炭素と、粉粒体に含まれるマンガンのうち浸出しなかったマンガンを、浸出残渣に残存させる。
選別工程で選別した廃乾電池は、放電によって生成したMnO(OH) 、Mn(OH)2と、未放電のMnO2とを含んでいる。これらのうち、MnO(OH)やMn(OH)2は酸に溶解すると考えられるが、MnO2は酸に殆ど溶解しないと考えられる。それは、以下(1)式で示されるMnO2溶解の半反応式から明らかなように、MnO2の溶解には、Mnを4価から2価へ還元する必要があり、酸のほかに還元のための電子を供給する還元剤を必要とするためである。
MnO2(固形物)+4H+2e- → Mn2+(溶解)+2H2O … (1)
したがって、酸溶液を用いて粉粒体に酸浸出処理を施すと、粉粒体に含まれるマンガン成分のうち、MnO(OH)やMn(OH)2として存在するマンガンは酸溶液に浸出すると考えられる。一方、粉粒体に含まれるマンガン成分のうち、MnO2は、酸溶液に浸出せず、粉粒体に含まれる炭素とともに浸出残渣として残存すると考えられる。なお、粉粒体に含まれる亜鉛成分については、酸の濃度を上昇していけば、ほぼ全量が溶解(浸出)する。
酸溶液に使用する酸としては、一般的な酸でよく、硫酸、硝酸、塩酸、その他の酸を用いることができるが、コストや調達の容易さ等を考慮すると、硫酸あるいは塩酸を用いるのが好ましい。硫酸を使用する場合には、硫酸濃度が質量%濃度で1.4%以上45%以下の希硫酸を用いることが好ましい。また、硫酸濃度が質量%濃度で2%以上30%以下の希硫酸を用いることがより好ましく、硫酸濃度が質量%濃度で5%以上25%以下の希硫酸を用いることがより一層好ましい。塩酸を用いる場合には、塩酸濃度が質量%濃度で1%以上14%以下の希塩酸を用いることが好ましい。また、塩酸濃度が質量%濃度で2%以上8%以下の希塩酸を用いることがより好ましい。塩酸または硫酸は、市販されているものを使用すればよいが、工業用或いは有害金属成分の少ない廃酸を希釈して使用すれば、酸のコストを低減することができる。また、ここでの質量%濃度は、酸溶液中の酸の質量を溶液全体の質量で除したものに100を乗じた値である。
なお、いずれの酸を用いる場合でも、マンガンおよび亜鉛の浸出に必要な酸濃度は、固液比、粉粒体の量、粉粒体中のマンガンおよび亜鉛の含有量、粉粒体中のマンガンや亜鉛の形態等によって変動する。そのため、予め実機を想定した予備実験を行うことで、最適な酸濃度を決定することができる。
酸浸出処理の効率化を図る観点からは、酸浸出工程における粉粒体と酸溶液との固液比(粉粒体(g)/ 酸溶液(L))を50g/L以上とすることが好ましい。また、上記固液比を100g/L以上とすることがより好ましい。但し、上記固液比が800g/Lを超えて過剰に高くなると、粘度が上昇してハンドリング上の問題が生じたり、後述する第1固液分離工程時の歩留まりが悪化したりする可能性がある。したがって、上記固液比は800g/L以下とすることが好ましい。
酸浸出処理の処理温度(雰囲気温度や酸溶液の温度)は、室温(15〜25℃前後)でも十分な効果が得られるが、加温を行ってもよい。加温を行えば反応効率の向上が期待できるが、その分加温コストも必要となるため、得られる効果と比較して加温実施の可否を決定すればよい。酸浸出処理の処理時間は、5分以上6時間以下とすることが好ましい。また、30分以上4時間以下とすることがより好ましく、1時間以上3時間以下とすることがより一層好ましい。
以上の酸浸出工程により、粉粒体に含まれる亜鉛成分のほぼ全量と、粉粒体に含まれるマンガン成分のうち主にMnO(OH)やMn(OH)2として存在するマンガンが浸出した浸出液が得られる。また、以上の酸浸出工程により、粉粒体に含まれるマンガン成分のうち主にMnO2として存在するマンガンは浸出残渣に残存する。それゆえ、以上の酸浸出工程では、マンガンを含む浸出残渣も得られる。なお、粉粒体に含まれる炭素のほぼ全量も浸出残渣に残存する。また、粉粒体に含まれる亜鉛成分はほぼ全量浸出するため、浸出残渣は亜鉛成分を殆ど含まない。
第1固液分離工程
第1固液分離工程では、酸浸出工程で得られた浸出液と浸出残渣とを固液分離する。固液分離手段は特に限定されず、例えば重力沈降分離、ろ過、遠心分離、フィルタプレス、膜分離などから選ばれる任意の手段とすることができる。
先述のとおり、浸出残渣は、マンガン成分を含有するが、亜鉛成分を殆ど含有しない。それゆえ、固液分離により分離された浸出残渣は、マンガン成分として回収することができる。一方、固液分離により分離された浸出液は、次工程のオゾン処理工程でオゾン処理に供する。
オゾン処理工程
オゾン処理工程では、酸浸出工程で得られた浸出液(マンガンイオンおよび亜鉛イオンを含む浸出液)にオゾンを作用させることにより、浸出液中に含まれるマンガンイオンを酸化して沈澱させ、マンガン含有沈澱物と亜鉛イオン含有溶液を得る。すなわち、オゾン処理工程では、浸出液中に含まれるマンガンイオンおよび亜鉛イオンのうち、マンガンイオンのみを酸化してマンガン酸化物(マンガン含有沈澱物)とすることで、亜鉛成分を溶解した状態に維持しつつマンガン成分を固体状にする。
具体的には、酸浸出工程で得られた浸出液にオゾンを散気することで、浸出液の酸化還元電位(ORP)を調整し、浸出液のpHおよび酸化還元電位(ORP)を図1(a)〜(c)に示すEh-pH図においてマンガンのみが酸化物として不溶化(固形物化)・沈澱する領域(図1(a)に示すマンガンのEh-pH図中、○で囲った領域)とする。これにより、浸出液に溶解していたマンガンが優先的に不溶化して固体となる。
なお、上記浸出液は酸性である。そのため、通常、特に上記浸出液のpHを調整する必要はなく、第1固液分離工程で分離した浸出液にオゾンをそのまま散気して酸化還元電位(ORP)を調整するだけで、浸出液のpHと酸化還元電位(ORP)を、Eh-pH図においてマンガンのみが酸化物として不溶化(固形物化)・沈澱する領域に調整することができる。但し、念のためオゾン散気に先立ち浸出液のpHを測定してもよい。測定されたpHが所望の値よりも高いようであれば、若干酸(例えば、硫酸、硝酸、塩酸などの一般的な酸)を添加すればよい。
Eh-pH線図としては、例えば、
Pourbaix, M. Atlas of electrochemical equilibria in aqueous solutions. National Association of Corrosion Engineers. (1974) 644p.
に記載のものを用いることができる。
図1(a)〜(c)から明らかであるように、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)が、共に固形物化する領域は溶液中の各成分の濃度により変動する。例えば、浸出液中Mn、Zn濃度がともに0.1Mで、Fe濃度が0.05Mであった場合には、図1(a)〜(c)において、Mn、Znは100Mと10-2Mの線の中間の境界(図1(a)の線*1、および図1(b)の線*2)を基準にして考えればよく、Feは100Mと10-2Mの線の間の10-2M寄りの境界(図1(c)の線*3)を基準にして考えればよい。この場合、図1(a)〜(c)において、マンガンが酸化物として固形物化・沈澱する領域(図1(a)中、○で囲った領域)のpHと酸化還元電位(ORP)は、図1(a)のとおり、おおよそ「pH:0.1以上2.2未満」、「酸化還元電位(ORP):約+0.9V以上+1.2V以下」であることが好ましいと判る。
また、図1(a)〜(c)は水温25℃の時のものであるが、水温が異なる場合には、温度補正を行えばよい。補正の方法としては、公知の方法(例えば、Van't Hoffの式による平衡乗数の補正など)で行えばよい。
したがって、浸出液のpHが2.2未満であることを確認した上で、この浸出液にオゾンを散気して酸化還元電位(ORP)を+0.9V以上に上昇させることで、マンガンのみを酸化物として固形物化し、他の元素から分離、沈澱させることが可能になる。
オゾンは紫外線法、放電法、電解法などによって生成するが、工業的な利用においては、無声放電と言われる方法によって製造することが多い。原理としては、電極間に交流電圧を印加して生じさせた無声放電の空間に、酸素ガスを通すことで、酸素ガスの一部が活性化され、オゾンに変化する。この時オゾン濃度は、条件にもよるが数g/Nm3〜300g/Nm3という程度の濃度となる。酸素ガスは空気からPSAなどの方法により濃化したガスを用いることもできるし、液体酸素を気化したものを用いることもできる。
オゾンの散気量としては、酸化還元電位(ORP)を観察しながらオゾンを散気し、酸化還元電位(ORP)が所定値(例えば、浸出液の温度が25℃であり、該浸出液中のMn、Zn、Fe濃度がそれぞれMn:0.1M 、Zn:0.1M、Fe:0.05Mである場合、約+1V以上)となるように調整することが好ましい。なお、オゾンの必要量は、装置形状や散気時の気泡径などによって変化するため、コスト等を比較し、最も効率のよい方法を選択すればよい。
以上のオゾン処理工程により、浸出液中のマンガンが優先的に不溶化して固体となり、亜鉛イオン、鉄イオンの殆どは浸出液中に溶解した状態となる。すなわち、マンガン含有沈澱物(主に二酸化マンガンMnO2)と亜鉛イオン含有溶液(微量の鉄イオンを含む)が得られる。
なお、上記オゾン処理工程においては、マンガンの酸化により生成するマンガン酸化物によってオゾン処理中の浸出液が黒色となり、反応進行状態を目視により判別することが困難となる。ここで、オゾンによる酸化が不十分な場合には、未反応マンガンイオンが固形物として沈殿せず、マンガン成分回収率の悪化を招く。
一方、過剰にオゾンを作用させると、一度生成したマンガン酸化物が、過酸化物のイオンとなって再溶解してしまい、オゾン酸化不足の場合と同様に回収率が悪化する。その理由について本発明者らが検討した結果、マンガン酸化反応が過剰になると、固形物となったマンガンの酸化物が更に酸化され、過マンガン酸のイオンとなって溶液中に再溶解してしまうためであることが明らかになった。
図1(a)において、マンガンの過酸化物(図1(a)中の最上部、MnO4 -という物質)が主たる存在になるORPは、pH2でも+1.6V付近であり、実際にはこのような値にまでORPが上昇する現象は、通常では観察されない。しかし、本発明者による検討の結果、一部のマンガン酸化物がオゾンの作用により過酸化物となることが判明した。また、同時に、過酸化物が生成するのは、マンガンがほぼ全て酸化物として固形物化した後であることも確認された。
これらの事実から、マンガン酸化反応の終点の見極めが必要になるが、マンガン酸化反応の終点を反応時間で管理しようとしても、前記浸出液などの場合には、浸出液ごとに溶液の濃度、組成が若干異なっていることもあり、必ずしも同じ反応時間で同じ回収率が得られるとは限らない。酸化還元電位(ORP)による制御を考えた場合にも同様の問題が生じ、明確な反応終点の確認は困難である。
一方、マンガンの過酸化物の生成は、溶液が赤く変色することで容易に確認することができる。そのため、オゾン処理中の浸出液の色を観察することでマンガン酸化反応の終点を見極めることも考えられるが、前述のようにマンガン酸化物(固形物)微粒子の共存下では、溶液全体がマンガン酸化物(MnO2)の色である黒色になってしまい、オゾン処理中の浸出液の変色を判別できない。しかし、オゾン処理中の浸出液からマンガン酸化物(MnO2)を分離すれば、浸出液の色の変化を観察することが可能となり、延いてはマンガンの過酸化物の生成の有無を判別することができる。
オゾン処理中の浸出液からマンガン酸化物(主にMnO2)を分離する手段としては、例えば、浸出液をろ過、あるいは沈降分離して、マンガン酸化物を浸出液から分離する手段などが挙げられる。したがって、実際の運用においては、オゾン処理工程において、オゾン処理中の浸出液のごく一部を定期的または連続的に抽出し、抽出した液からマンガン酸化物を分離し、溶液自体の色を観察してマンガンイオンの酸化反応終点を見極めることが好ましい。具体的には、オゾン処理中の浸出液のごく一部を取り出し、取り出した浸出液をろ過、あるいは静置することにより、固形物であるマンガン酸化物と溶液とに分離し、分離した溶液の色を観察することが好ましい。また、観察後の溶液は再びオゾン処理工程に戻し、これを繰り返すことが好ましい。そして、マンガン酸化物を分離した後の溶液の色が赤く変色した時点でマンガン酸化反応が終了したと判断してオゾン処理を終了することが好ましい。このようにマンガン酸化反応の終点を見極めてオゾン処理を終了すれば、マンガン成分の回収率を最大にすることが可能となる。
第2固液分離工程
第2固液分離工程では、オゾン処理工程で得られたマンガン含有沈澱物(主にMnO2)と亜鉛イオン含有溶液(浸出液からマンガンイオンを沈澱させた溶液)とを固液分離する。固液分離手段は特に限定されず、例えば重力沈降分離、ろ過、遠心分離、フィルタプレス、膜分離などから選ばれる任意の手段とすることができる。この第2固液分離工程により、浸出液に含まれるマンガン成分と亜鉛成分のそれぞれを、マンガン含有沈澱物と亜鉛イオン含有溶液とに分離することができる。
上記のとおり、選別工程、破砕・篩い分け工程および酸浸出工程により、マンガン成分(主にMnO2)を含有するが亜鉛成分を殆ど含有しない浸出残渣が得られる。また、酸浸出工程に続き、第1固液分離工程、オゾン処理工程、第2固液分離工程の各工程を経ることにより、マンガン成分(主にMnO2)を含有するが亜鉛成分を殆ど含有しないマンガン含有沈澱物と、マンガンイオンを殆ど含有しない亜鉛イオン含有溶液とが得られる。
したがって、上記各工程を経ることで、マンガン成分と亜鉛成分が混在した状態にある廃乾電池(粉粒体)から、マンガン成分と亜鉛成分を互いに分離した状態で抽出することができる。すなわち、廃乾電池(粉粒体)に含まれるマンガン成分を、浸出残渣とマンガン含有沈澱物として抽出することができる。また、廃乾電池(粉粒体)に含まれる亜鉛成分を、亜鉛イオン含有溶液として抽出することができる。
以上が、本発明の廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法である。
また、本発明の廃乾電池からのマンガン回収方法は、第2固液分離工程で分離されたマンガン含有沈澱物を、マンガン成分として回収する方法である。先述のとおり、第2固液分離工程で分離されたマンガン含有沈澱物は、亜鉛成分を殆ど含有しない。また、廃乾電池(粉粒体)に含まれる炭素のほぼ全量は、第1固液分離工程で浸出残渣として分離されるため、上記マンガン含有沈澱物は炭素も殆ど含有しない。したがって、上記マンガン含有沈澱物をマンガン成分として回収することにより、高純度のマンガン成分(マンガン酸化物)を回収することができる。
更に、本発明の廃乾電池からのマンガン回収方法は、上記選別工程、破砕・篩い分け工程、酸浸出工程、第1固液分離工程、オゾン処理工程および第2固液分離工程の各工程に加えて更に、第2固液分離工程の次工程として混合工程を設けることができる。
混合工程
混合工程では、上記第1固液分離工程で分離された浸出残渣と、上記第2固液分離工程で分離されたマンガン含有沈澱物とを混合し、上記浸出残渣と上記マンガン含有沈澱物との混合物を、マンガン成分として回収する。先述のとおり、本発明の廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法によると、酸浸出工程で浸出残渣が得られ、オゾン処理工程でマンガン含有沈澱物が得られるが、これらの2種の固形物中には選別した廃乾電池(粉粒体)に含まれていたマンガン成分のほぼ全量が含まれている。また、これらの2種の固形物中には、選別した廃乾電池(粉粒体)に含まれていた亜鉛成分は殆ど含まれない。したがって、この2種の固形物を合一せしめることにより、選別した廃乾電池(粉粒体)のマンガンを、亜鉛とほぼ完全に分離しつつ、ほぼ100%の歩留りで回収することができる。
本発明のマンガン成分回収物は、上記マンガン含有沈澱物、または上記浸出残渣と上記マンガン含有沈澱物との混合物である。
上記マンガン含有沈澱物は、炭素の混入量が極めて低く、その成分の殆どがMnO2である。したがって、本発明の方法に従い回収されたマンガン成分回収物のうち、上記マンガン含有沈澱物は、製鉄所の製鋼原料のなかでも特に、金属マンガン製造のための原料として好適である。
なお、上記マンガン含有沈澱物のみをマンガン成分として回収する場合、廃乾電池(粉粒体)からのマンガン回収率としては低く、上記浸出残渣に残存するマンガンが無駄になる。それゆえ、マンガン回収率向上の観点からは、上記浸出残渣もマンガン成分として回収することが好ましい。しかし、上記浸出残渣は、主成分としてマンガン酸化物(MnO2)を含有するほか、廃乾電池(粉粒体)に含まれていた炭素も含有している。この炭素は、例えば回収された浸出残渣を加熱してその主成分であるマンガン酸化物を還元する際、マンガンの還元剤となり得る。したがって、上記浸出残渣のみをマンガン成分として回収する場合、回収物は、製鉄所の製鋼原料のなかでもフェロマンガン製造の出発原料としてある程度好都合な原料となり得るが、若干炭素含有量が高すぎる点において、課題がある。
そこで、上記課題を解決すべく本発明者らが検討した結果、上記浸出残渣と上記マンガン含有沈澱物とを混合して回収することに想到した。上記浸出残渣と上記マンガン含有沈澱物とを混合することにより、炭素濃度が適度に低減され、かつ、マンガン回収率が著しく向上したマンガン成分回収物が得られる。本発明の方法に従い回収されたマンガン成分回収物のうち、上記浸出残渣と上記マンガン含有沈澱物との混合物は、還元剤として作用し得る炭素を少量含むことから、フェロマンガン製造の出発原料等として好適に使用される。
一方、本発明の廃乾電池からの亜鉛回収方法は、上記選別工程、破砕・篩い分け工程、酸浸出工程、第1固液分離工程、オゾン処理工程および第2固液分離工程の各工程に加えて更に、第2固液分離工程の次工程としてアルカリ沈澱処理工程と、第3固液分離工程とを有する。
アルカリ沈澱処理工程
アルカリ沈澱処理工程では、上記の第2固液分離工程で分離された亜鉛イオン含有溶液にアルカリ剤を添加して、該亜鉛イオン含有溶液中の亜鉛イオンを亜鉛含有沈澱物とする。第2固液分離工程で分離された亜鉛イオン含有溶液は、亜鉛を高濃度に含有する酸性溶液であり、該酸性溶液をアルカリ性にすることで、亜鉛を水酸化物として不溶化、沈殿させることができる。
アルカリ剤の種類は特に制限されないが、苛性ソーダ(NaOH)、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を用いることが好ましい。但し、アルカリ剤として一般的なアルカリである苛性ソーダ(NaOH)を用いた場合には、酸濃度によってナトリウム塩の沈澱を生じることがあり、亜鉛含有沈殿物の亜鉛含有率が低下する傾向にある。例えば、硫酸酸性の亜鉛イオン含有溶液を苛性ソーダでアルカリ性にした場合、亜鉛の水酸化物と共に硫酸ナトリウムが同時に沈澱する。このような場合には、沈殿物を水洗すれば、硫酸ナトリウムを容易に溶解、除去することができるので、必要に応じて水洗工程を追加すればよい。
第3固液分離工程
第3固液分離工程では、アルカリ沈澱処理工程で得られた亜鉛含有沈澱物を、固液分離して亜鉛成分として回収する。固液分離手段は特に限定されず、例えば脱水、ろ過による手段や、重力沈降分離、遠心分離、フィルタプレス、膜分離などから選ばれる任意の手段とすることができる。これにより、高濃度の亜鉛成分が回収でき、良質な亜鉛精錬原料として使用することができる。
本発明の亜鉛成分回収物、すなわち第3固液分離工程で分離された亜鉛含有沈澱物は、その成分の殆どが亜鉛の水酸化物である。但し、第3固液分離工程で分離された亜鉛含有沈澱物を、例えば100℃超の温度に加熱して脱水した場合には、全量が亜鉛の水酸化物ではなく、一部は脱水され亜鉛の酸化物として回収される場合もある。また、本発明の亜鉛成分回収物、すなわち第3固液分離工程で分離された亜鉛含有沈澱物には、上記アルカリ沈澱処理工程で生成した硫酸ナトリウム等のナトリウム塩が微量に混入する場合もある。これは、使用したアルカリの種類、添加量、水洗状態の違いによるもので、処理の状況により混入の有無、その程度は異なる。
なお、第2固液分離工程で分離された亜鉛イオン含有溶液は、微量の鉄イオンを不可避的に含むことがあるため、上記のアルカリ沈澱処理工程では亜鉛と共に鉄も沈澱する場合がある。このような場合でも、本来、前記破砕・篩い分け工程で得られる元粉粒体の鉄含有量はそれほど高くないので、鉄分の微量の混入はそれほど問題にはならない。但し、仮に鉄分を除去する必要がある場合には、アルカリ沈澱処理工程においてアルカリ剤を添加する際、亜鉛イオン含有溶液をアルカリ性にする前に、pHを4〜5程度に調整し、空気曝気を行えば、鉄のみを不溶化して回収することもできる。その後、残液をアルカリ性にして亜鉛成分を沈殿させれば、鉄分を含まない亜鉛含有沈澱物を得ることができる。
また、第2固液分離工程で分離された亜鉛イオン含有溶液がその他の微量金属元素(Cr、Cu、Ni、Pb、Cd、Hg等)を含有する場合も、アルカリ沈澱処理工程で亜鉛イオン含有溶液をアルカリ性にすることにより上記微量金属の殆どが亜鉛と共に沈澱する。しかし、これらの含有量は微量であるため、その後の亜鉛精錬工程にて十分除去できる濃度であると考えられる。
以上のように、本発明によると、廃乾電池から亜鉛成分の混入量が極めて少ないマンガン成分回収物が得られる。廃乾電池からの回収原料を使用することは、フレッシュなマンガン鉱石等の使用量の削減となり、資源の有効利用に寄与する。これと同時に、これまで再利用されずに埋立等によって廃棄処分がされていた廃乾電池の量を削減できるため、廃棄処分にかかる費用を低減し、環境汚染の軽減にも寄与することができる。
次に、本発明の廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離設備、並びにマンガン回収設備、亜鉛回収設備について説明する。本発明の設備は、上記した本発明の方法、すなわち廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法、並びにマンガン回収方法、亜鉛回収方法の実施に好適な設備である。
図3に、本発明の設備の模式図を示す。図3に示すように、本発明のマンガンおよび亜鉛分離設備は、廃乾電池からマンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池を選別する選別装置10と、選別装置10で選別された廃乾電池を装入して破砕処理を施し、破砕処理物を得る破砕装置20aと、破砕装置20aで得られた破砕処理物に篩い分け処理を施して粉粒体を得る篩い分け装置20bと、酸溶液を用いて、篩い分け装置20bで得られた粉粒体に酸浸出処理を施し、マンガンイオンおよび亜鉛イオンを含有する浸出液とマンガンを含有する浸出残渣とを得る酸浸出槽30と、酸浸出槽30で得られた浸出液と浸出残渣とを固液分離する第1固液分離装置40と、第1固液分離装置40で分離された浸出液にオゾンを作用させて、該浸出液中に含まれるマンガンイオンを酸化して沈澱させ、マンガン含有沈澱物と亜鉛イオン含有溶液とを得るオゾン処理装置50と、オゾン処理装置50で得られたマンガン含有沈澱物と亜鉛イオン含有溶液とを固液分離する第2固液分離装置60とを備える。
また、本発明のマンガン回収設備は、上記マンガンおよび亜鉛分離設備の各装置10〜60を備え、例えば第1固液分離装置40で分離された浸出残渣を回収する浸出残渣回収槽70a、第2固液分離装置60で分離されたマンガン含有沈澱物を回収するマンガン含有沈澱物回収槽70bを備えてもよい。
また、本発明のマンガン回収設備は、浸出残渣回収槽70aおよびマンガン含有沈澱物回収槽70bに代えて、第1固液分離装置40で分離された浸出残渣と第2固液分離装置60で分離されたマンガン含有沈澱物とを混合して回収する混合物回収槽70cを備えてもよい。更に、本発明のマンガン回収設備は、浸出残渣回収槽70a、マンガン含有沈澱物回収槽70bとともに混合物回収槽70cを備えてもよい。
また、本発明の亜鉛回収設備は、上記マンガンおよび亜鉛分離設備の各装置10〜60と、第2固液分離装置60で分離された亜鉛イオン含有溶液を貯液し、該亜鉛イオン含有溶液にアルカリ沈澱処理を施して亜鉛含有沈澱物を得るアルカリ沈澱処理槽80と、アルカリ沈澱処理槽80で得られた亜鉛含有沈澱物を固液分離する第3固液分離装置90とを備える。また、例えば第3固液分離装置90で分離された亜鉛含有沈澱物を亜鉛成分として回収する亜鉛成分回収槽100を備えてもよい。
これらの設備を構成する各種装置、反応槽、回収槽は、上記したそれぞれの機能を有する限り、その構造等は問わない。
例えば、選別装置の種類は特に限定されず、形状や放射線等を利用して分別する装置等を例示することができる。なお、廃乾電池の選別は、手選別でも行うことができるため、選別装置は必ずしも設ける必要はない。
破砕装置としては通常の破砕機を用いることができる。破砕機の型式については特に限定されず、例えば、破砕後に、乾電池を構成している包装材と、粉粒体がよく分離される型式のものが好ましい。このようなものとしては、例えば、2軸回転式の破砕機が挙げられる。
篩い分け装置は、目開き1mm以上20mm以下の篩を備えたものが好ましい。上記目開きは、1mm以上10mm以下とすることがより好ましく、1mm以上3mm以下とすることがより一層好ましい。
オゾン処理装置は、浸出液にオゾン処理(オゾン散気)を施すための反応槽を設けることに加えて、反応槽からオゾン散気中の浸出液のごく一部を定期的または連続的に抽出し、抽出した浸出液をマンガン酸化物(MnO2)と溶液とに分離するための分離・観察槽を設けることが好ましい。分離・観察槽を設けることにより、オゾン処理中の浸出液から黒色のマンガン酸化物(MnO2)を分離した溶液の色を観察することが可能となり、延いてはマンガン酸化反応の終点を見極めることが可能となる。
なお、上記分離・観察槽において、オゾン処理中に抽出した浸出液をマンガン酸化物(MnO2)と溶液とに分離するためのろ過装置等を設けてもよい。また、特段の固液分離装置を設けずに、抽出した浸出液を静置することにより、マンガン酸化物(MnO2)と溶液とに分離してもよい。更に、コストや設置スペース等の関係において許容されるのであれば、ろ液や静置後の上澄液の吸光度を測定する分光光度計を、分離・観察槽に併設してもよい。
第1〜3の各固液分離装置としては、例えば、フィルタプレス装置、膜分離装置、重力沈降分離装置、ろ過装置、遠心分離装置などから選ばれる任意の装置を用いることができる。
酸浸出槽、アルカリ沈澱処理槽としては、例えばタンクに攪拌機を具えた一般的な攪拌槽を用いることができる。
また、アルカリ沈澱処理槽には、亜鉛イオン含有溶液に不可避的に混入した鉄イオンを沈澱分離する装置を併設することが好ましい。更に、例えば亜鉛含有沈澱物とともに硫酸ナトリウム等が同時に沈澱した場合を想定し、沈澱物を水洗して硫酸ナトリウムを溶解、除去するための装置を第3固液分離装置とアルカリ沈澱処理槽の間に併設してもよい。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
廃乾電池からマンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池を選別し、選別した廃乾電池を破砕し、目開き2.8mmの篩で篩い分けすることにより、廃乾電池の粉粒体を得た。得られた粉粒体の組成を表1に示す。なお、得られた粉粒体は、表1に示す元素の他に、酸化物や水酸化物に由来する酸素と若干の水素、水分を含む。
Figure 2015206077
上記により得られた粉粒体を用い、以下(1)〜(3)の試験を実施した。
(1)酸浸出処理
本発明に従い酸浸出処理を実施し、粉粒体からのマンガン浸出率と亜鉛浸出率とを求めた。
粉粒体に、種々の硫酸濃度に希釈した酸溶液を添加し、酸浸出処理を行った。酸溶液としては、試薬硫酸を用いた。酸浸出処理は、浸出槽で粉粒体と酸溶液を混合して攪拌しながら実施した。また、酸浸出処理の処理規模が小さく、攪拌中に空気中の酸素が溶液中に溶解することによる溶液中の酸化還元電位上昇が無視できない可能性があったため、窒素を少量曝気しながら酸浸出処理を行った。
酸浸出処理における酸溶液量(mL)、粉粒体量(g)、酸溶液の硫酸濃度(N)、酸浸出処理時間(h)、窒素曝気量(mL/min)は、以下のとおりである。なお、以下に示す酸浸出処理時間は、粉粒体と酸溶液とを混合して攪拌を開始した時点から計測した時間である。
酸溶液:100mL
粉粒体:10g(固液比100g/L)
硫酸濃度:1N(質量%濃度(質量分率)約4.6%)、2N(質量%濃度約9.0%)、4N(質量%濃度約17.4%)、6N(質量%濃度約24.8%)
酸浸出処理時間:1h(攪拌処理)
窒素曝気量:10mL/min
酸浸出処理後、得られた浸出液と浸出残渣とを、孔径1μmのろ紙でろ過することにより固液分離し、分離した浸出液のマンガン濃度を、ICP発光分析法により定量した。次いで、定量値をもとに浸出液中のマンガン質量を求め、粉粒体中のマンガン質量に対する浸出液中のマンガン質量の割合(マンガン元素換算)を算出することでマンガン浸出率を求めた。マンガン浸出率の結果を図4に示す。
図4から明らかなように、酸溶液の硫酸濃度が高くなるにしたがいマンガン浸出率も上昇するが、酸溶液の硫酸濃度を6Nにまで高めた場合であってもマンガン浸出率は30%程度に留まった。
一方、上記固液分離で分離した浸出液の亜鉛濃度を、ICP発光分析法により定量した。次いで、定量値をもとに浸出液中の亜鉛質量を求め、粉粒体中の亜鉛質量に対する浸出液中の亜鉛質量の割合(亜鉛元素換算)を算出することで亜鉛浸出率を求めた。その結果、いずれの硫酸濃度の酸溶液を用いた場合であっても、亜鉛浸出率はほぼ100%となり、粉粒体中に含まれていた亜鉛のほぼ全量が溶液中に浸出したことが確認された。
また、硫酸濃度2N(質量%濃度約9.0%)のサンプルについて、酸浸出処理後、得られた浸出液と浸出残渣とを、孔径1μmのろ紙でろ過することにより固液分離し、分離した浸出残渣を105℃に加熱して乾燥したのち、乾燥後の浸出残渣の化学成分を燃焼−赤外線吸収法(C、S)、ICP発光分析法(その他の元素)により分析した。分析により得られた浸出残渣の化学成分を、表2に示す。なお、上記浸出残渣は、表2に示す元素の他に、酸化物や水酸化物に由来する酸素と若干の水素を含む。
Figure 2015206077
表2に示すように、浸出残渣の亜鉛含有率は質量%で1%未満と極めて低く、亜鉛成分が殆ど混入していないことが確認された。一方、浸出残渣のマンガン含有量は質量%で42%程度であった。
(2)マンガン成分の回収
粉粒体に、所定の硫酸濃度に希釈した酸溶液を添加し、酸浸出処理を行った。酸溶液としては、試薬硫酸を用いた。酸浸出処理は、浸出槽で粉粒体と酸溶液を混合して攪拌しながら実施した。また、酸浸出処理の処理規模が小さく、攪拌中に空気中の酸素が溶液中に溶解することによる溶液中の酸化還元電位上昇が無視できない可能性があったため、窒素を少量曝気しながら酸浸出処理を行った。
酸浸出処理における酸溶液量(mL)、粉粒体量(g)、酸溶液の硫酸濃度(N)、酸浸出処理時間(h)、窒素曝気量(mL/min)は、以下のとおりである。なお、以下に示す酸浸出処理時間は、粉粒体と酸溶液とを混合して攪拌を開始した時点から計測した時間である。
酸溶液:2000mL
粉粒体:200g(固液比100g/L)
硫酸濃度:2N(質量%濃度約9.0%)
酸浸出処理時間:1h(攪拌処理)
窒素曝気量:200mL/min
酸浸出処理後、得られた浸出液と浸出残渣とを、孔径1μmのろ紙で吸引ろ過することにより固液分離した。分離した浸出残渣を乾燥したのち、その質量を測定したところ、約108gであった。一方、分離した浸出液に対してオゾン処理を行った。オゾン処理は、オゾン供給チューブ先端にエアストーンを取り付け、容器底部よりオゾンガスを供給し、攪拌しながら処理を行った。オゾン処理に供した浸出液量(mL)、オゾン処理時のオゾン散気量(L/min)、攪拌速度(rpm)、オゾン処理時間(h)は、以下のとおりである。なお、以下のオゾン処理時間は、オゾン散気開始時点からオゾン散気終了時点までの時間である。
浸出液量:2000mL
オゾン発生装置:EZ-OG-R4(エコデザイン社製)
オゾン発生装置電流:3.8A
オゾン散気量(オゾン、酸素混合ガスとして):1.8L/min(オゾン濃度約93g/Nm3、オゾン作用量10g/h)
攪拌速度(反応槽のスターラー回転数):260rpm
オゾン処理時間:3h
オゾン処理後、孔径1μmのろ紙で吸引ろ過し、得られた沈澱物を105℃にて乾燥した。乾燥後の沈澱物(質量約35g)の化学成分を、燃焼−赤外線吸収法(C、S)、イオンクロマトグラフ法(Cl)、原子吸光法(Hg)、カールフィッシャー法(結晶水分)、ICP発光分析法(残りの元素)により求めた結果を表3に示す。また、乾燥後の沈澱物のXRD(X線回折)による解析結果を図5に示す。更に、上記(1)と同様にしてオゾン処理前の浸出液中のマンガン質量を求め、浸出液中のマンガン質量に対する沈澱物中のマンガン質量の割合(マンガン元素換算)を算出することで、オゾン処理時におけるマンガン回収率を求めた。また、上記(1)と同様にしてオゾン処理前の浸出液中の亜鉛質量を求め、浸出液中の亜鉛質量に対する沈澱物中の亜鉛質量の割合(亜鉛元素換算)を算出することで、オゾン処理時における亜鉛回収率も求めた。これらの結果を図6に示す。
Figure 2015206077
図5に示すように、オゾン処理により得られた沈澱物は、マンガン酸化物「MnO2」であり、マンガン含有沈澱物であることが確認された。また、表3に示すように、上記沈澱物は水分を含んでいるが、この水分を完全に除去した状態での上記沈澱物のMnO2含有率は97質量%以上となり、オゾン処理を通じて高純度のマンガン酸化物が得られることが分かった。更に、表3に示すように、上記沈澱物の亜鉛含有率は1質量%未満であった。
また、図6に示すように、オゾン処理を施すことにより、浸出液に溶解していたマンガンの99.9%を沈澱物として回収することができる。このように、本発明のマンガン回収方法では、酸浸出処理時に廃乾電池(粉粒体)に含まれるマンガン成分の一部が浸出するが、オゾン処理を施すことで浸出液に溶解しているマンガンのほぼ全量をマンガン含有沈澱物(マンガン酸化物)として回収することができる。したがって、本発明のマンガン回収方法によると、酸浸出処理時に得られた浸出残渣やオゾン処理時に得られた沈澱物を回収することにより、極めて高い回収率でマンガン成分を回収することができる。
以上により、本発明のマンガン回収方法が、回収率(歩留り)の点でも全く問題のない極めて優れた回収方法であることが分かる。
更に、図6に示すように、オゾン処理により得られる沈澱物では、浸出液に溶解していた亜鉛の0.1%しか回収されておらず、粉粒体に含まれていた亜鉛のほぼ全量がオゾン処理後の溶液中に存在していることが確かめられた。したがって、本発明のマンガン回収方法によると、酸浸出処理時に得られた浸出残渣やオゾン処理時に得られた沈澱物を回収することにより、亜鉛混入量が極めて少ないマンガン含有物質を回収することができる。
また、表3に示すように、オゾン処理により得られた沈澱物中に含まれる金属元素のうち、マンガン、亜鉛、鉄、カリウム以外の金属元素は全て定量下限以下であった。マンガン、亜鉛、鉄、カリウム以外の金属元素の含有量が定量下限以下となる理由としては、元来、廃乾電池中(粉粒体中)の含有量が微量であるという点も挙げられる。しかし、本実施例の結果から、マンガン、亜鉛、鉄以外の金属元素はオゾン処理によって殆ど沈澱せず、オゾン処理により得られた沈澱物には殆ど混入しないことが分かった。
また、表3に示すように、オゾン処理により得られた沈澱物(マンガン酸化物)は、硫酸由来と思われる硫黄を含有している。このように硫黄やカリウムの含有率は、若干高いものの、上記沈澱物を水洗することにより容易に0.1%程度まで低減できることを別途確認した。しかしながら、例えば上記沈澱物(マンガン酸化物)をマンガン成分として回収したのちに還元処理する場合には、沈澱物中の硫黄やカリウムは大部分が揮発したりスラグとして除去されると考えられるため、除去量、還元マンガン体に求められる硫黄、カリウム含有量などから水洗実施の有無、程度等を適宜選択すればよい。上記沈澱物中に含まれる水分は、105℃では揮発しない水分であり、マンガン酸化物の結晶中に入り込んだ結晶水分である。マンガン結晶においては、結晶水は300〜400℃程度までの温度で殆どが脱離することから、高度な水分除去が必要であれば、300〜400℃程度で乾燥すれば低水分のマンガン酸化物を得ることができる。
なお、本実施例においては、オゾン処理前の浸出液に溶解していたマンガンを酸化物としてほぼ全量回収するために、約3hと比較的長いオゾン処理時間を要した。これは、本実施例の反応系が実験室レベルで小さいために、未反応のオゾンが反応容器上部に多く抜けてしまい、散気したオゾンが効率的に利用されなかったことに起因するものと推測される。したがって、本発明を実機適用する場合には、オゾン処理装置の反応容器形状を工夫したり、オゾン処理装置に、マイクロバブル、ナノバブルなどの技術を適用して気泡径を小さくしたりすることで、浸出液に対するオゾンの溶解効率を高めることが好ましい。これらの処置を講じてオゾンの利用効率を高めれば、オゾン処理時間の短縮化、使用オゾン量の低減を図ることができる。
(3)亜鉛成分の回収
上記(2)において、オゾン処理後、孔径1μmのろ紙で吸引ろ過することにより得られたろ液(亜鉛イオン含有溶液)に、水酸化ナトリウムを添加し、ろ液のpHを10.8まで上昇させてアルカリ性にしてろ液をアルカリ性溶液にすることによりアルカリ沈澱処理を施し、黄白色の沈澱物を得た。次いで、得られた沈澱物を水洗し、105℃で乾燥したのち、回収した。
乾燥後の沈澱物(亜鉛成分回収物)をXRD(X線回折)により解析した結果、沈澱物は主として亜鉛の酸化物を含有していることが確認された。また、乾燥後の沈澱物(64g)の化学成分を、燃焼−赤外線吸収法(C、S)、ICP発光分析法(残りの元素)により分析した結果を表4に示す。なお、表4に示す沈澱物は、表4に示す元素の他に、酸化物や水酸化物に由来する酸素や水素を含む。
Figure 2015206077
表4のとおり、沈澱物の亜鉛含有率は74.0%であり、高濃度の亜鉛を含有していることが分かった。通常、アルカリ沈殿処理においては、亜鉛の水酸化物が検出されるが、今回得られた沈澱物の亜鉛は酸化物であった。これは、105℃で乾燥することにより、脱水反応が生じ、水酸化物が酸化物に変化したものと推察される。実運用においては、脱水したケーキのまま、あるいは温度を掛けずに乾燥させれば水酸化物のままであるが、105℃程度で乾燥させれば酸化物として回収することも可能である。ゆえに、その後の使用用途、目的、コスト等に合わせて、回収法を適宜選択すればよい。
上記(2)で得られた浸出残渣の化学成分を、燃焼−赤外線吸収法(C、S)およびICP発光分析法(残りの元素)により求めた。次いで、上記浸出残渣と上記(2)で得られたマンガン含有沈澱物とを混合して混合物とした場合の化学成分を、浸出残渣の質量と化学成分、ならびにマンガン含有沈澱物の質量と化学成分(表3参照)から算出した。混合物の化学成分を表5に示す。なお、表5に示す混合物は、その含有量は測定していないが酸化物や水酸化物に由来する酸素や水素を含む。
Figure 2015206077
上記(2)で得られた浸出残渣とマンガン含有沈澱物の合計質量と、上記により求めた混合物の化学成分から、混合物中に含まれるマンガンの質量を算出した。そして、粉粒体中に含まれるマンガン質量に対する混合物中に含まれるマンガン質量の割合(マンガン元素換算)を算出することにより、粉粒体からのマンガン成分回収率を求めた。また、上記(3)で得られた沈澱物、すなわち亜鉛成分回収物の質量と化学成分から、亜鉛成分回収物中に含まれる亜鉛の質量を算出した。そして、粉粒体中に含まれる亜鉛質量に対する亜鉛成分回収物中に含まれる亜鉛質量の割合(亜鉛元素換算)を算出することにより、粉粒体からの亜鉛成分回収率を求めた。以上により求めた回収率を、混合物(マンガン成分回収物)と亜鉛成分回収物の主な化学成分とともに表6に示す。
更に、上記と同様にして、粉粒体中に含まれるマンガン質量に対する浸出残渣中に含まれるマンガン質量の割合(マンガン元素換算)を算出することにより、浸出残渣として回収されたマンガンの回収率を求めた。また、粉粒体中に含まれる亜鉛質量に対する浸出残渣中に含まれる亜鉛質量の割合(亜鉛元素換算)を算出することにより、浸出残渣として回収された亜鉛の回収率を求めた。上記(2)で得られたマンガン含有沈澱物についても上記と同様にして、粉粒体中に含まれていたマンガンがマンガン含有沈澱物として回収される割合(回収率)を求めるとともに、粉粒体中に含まれていた亜鉛がマンガン含有沈澱物として回収される割合(回収率)を求めた。以上により求めた回収率を、浸出残渣とマンガン含有沈澱物の主な化学成分とともに表6に示す。
Figure 2015206077
表6の結果からも明らかであるように、本発明によれば、選別した廃乾電池(マンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池)を破砕、篩い分けすることにより得られた粉粒体中のマンガンと亜鉛をほぼ完全に分離しつつ、両元素のほぼ全量を回収でき、それぞれをマンガン原料、亜鉛原料としてリサイクルすることが可能となる。
1 … 選別工程
2 … 破砕・篩い分け工程
3 … 酸浸出工程
4 … 第1固液分離工程
5 … オゾン処理工程
6 … 第2固液分離工程
7 … 混合工程
8 … アルカリ沈澱処理工程
9 … 第3固液分離工程
10 … 選別装置
20a… 破砕装置
20b… 篩い分け装置
30 … 酸浸出槽
40 … 第1固液分離装置
50 … オゾン処理装置
60 … 第2固液分離装置
70a… 浸出残渣回収槽
70b… マンガン含有沈澱物回収槽
70c… 混合物回収槽
80 … アルカリ沈澱処理槽
90 … 第3固液分離装置
100… 亜鉛成分回収槽

Claims (11)

  1. 廃乾電池から該廃乾電池に含まれるマンガン成分と亜鉛成分とを分離する方法であって、廃乾電池からマンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池を選別する選別工程と、該選別工程で選別した廃乾電池を破砕、篩い分けして粉粒体を得る破砕・篩い分け工程と、酸溶液を用いて前記粉粒体に酸浸出処理を施し、マンガンおよび亜鉛を浸出した浸出液とマンガンを含有する浸出残渣とを得る酸浸出工程と、該酸浸出工程で得られた浸出液と浸出残渣とを固液分離する第1固液分離工程と、該第1固液分離工程で分離された浸出液にオゾンを作用させて、該浸出液中に含まれるマンガンイオンを酸化して沈澱させ、マンガン含有沈澱物と亜鉛イオン含有溶液とを得るオゾン処理工程と、該オゾン処理工程で得られたマンガン含有沈澱物と亜鉛イオン含有溶液とを固液分離する第2固液分離工程とを有し、前記廃乾電池に含まれるマンガン成分を前記浸出残渣と前記マンガン含有沈澱物とし、前記廃乾電池に含まれる亜鉛成分を前記亜鉛イオン含有溶液として分離することを特徴とする廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法。
  2. 前記酸浸出工程における酸溶液が、質量%濃度1.4%以上45%以下の希硫酸または質量%濃度1%以上14%以下の希塩酸であることを特徴とする請求項1に記載の廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法。
  3. 前記酸浸出工程における粉粒体と酸溶液との固液比が50g/L以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法。
  4. 廃乾電池から該廃乾電池に含まれるマンガン成分を回収する方法であって、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法にしたがい分離されたマンガン含有沈澱物をマンガン成分として回収することを特徴とする廃乾電池からのマンガン回収方法。
  5. 廃乾電池から該廃乾電池に含まれるマンガン成分を回収する方法であって、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法にしたがい分離された浸出残渣とマンガン含有沈澱物とを混合する混合工程を有し、前記浸出残渣と前記マンガン含有沈澱物との混合物をマンガン成分として回収することを特徴とする廃乾電池からのマンガン回収方法。
  6. 請求項4または5に記載のマンガン回収方法により回収されたマンガン成分回収物。
  7. 廃乾電池から該廃乾電池に含まれる亜鉛成分を回収する方法であって、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離方法にしたがい分離された亜鉛イオン含有溶液にアルカリ剤を添加して、前記亜鉛イオン含有溶液中の亜鉛イオンを亜鉛含有沈澱物とするアルカリ沈澱処理工程と、該アルカリ沈澱処理工程で得られた亜鉛含有沈澱物を固液分離する第3固液分離工程とを有し、該第3固液分離工程で分離された亜鉛含有沈澱物を亜鉛成分として回収することを特徴とする廃乾電池からの亜鉛回収方法。
  8. 請求項7に記載の亜鉛回収方法により回収された亜鉛成分回収物。
  9. 廃乾電池から該廃乾電池に含まれるマンガン成分と亜鉛成分とを分離する設備であって、廃乾電池からマンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池を選別する選別装置と、該選別装置で選別された廃乾電池を装入して破砕処理を施し、破砕処理物を得る破砕装置と、該破砕装置で得られた破砕処理物に篩い分け処理を施して粉粒体を得る篩い分け装置と、酸溶液を用いて前記粉粒体に酸浸出処理を施し、マンガンイオンおよび亜鉛イオンを含有する浸出液とマンガンを含有する浸出残渣とを得る酸浸出槽と、該酸浸出槽で得られた浸出液と浸出残渣とを固液分離する第1固液分離装置と、該第1固液分離装置で分離された浸出液にオゾンを作用させて、該浸出液中に含まれるマンガンイオンを酸化して沈澱させ、マンガン含有沈澱物と亜鉛イオン含有溶液とを得るオゾン処理装置と、該オゾン処理装置で得られたマンガン含有沈澱物と亜鉛イオン含有溶液とを固液分離する第2固液分離装置とを備えることを特徴とする廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離設備。
  10. 廃乾電池から該廃乾電池に含まれるマンガン成分を回収する設備であって、請求項9に記載の廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離設備を備えることを特徴とする廃乾電池からのマンガン回収設備。
  11. 廃乾電池から該廃乾電池に含まれる亜鉛成分を回収する設備であって、請求項9に記載の廃乾電池からのマンガンおよび亜鉛分離設備と、該マンガンおよび亜鉛分離設備の第2固液分離装置で分離された亜鉛イオン含有溶液を貯液し、該亜鉛イオン含有溶液にアルカリ沈澱処理を施して亜鉛含有沈澱物を得るアルカリ沈澱処理槽と、該アルカリ沈澱処理槽で得られた亜鉛含有沈澱物を固液分離する第3固液分離装置とを備えることを特徴とする廃乾電池からの亜鉛回収設備。
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