JP2015205342A - 遠心鋳造製熱間圧延用複合ロール - Google Patents
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Abstract
Description
(A) 外層
(1) 組成
(i) 必須組成
(a) C:1.0〜3.0質量%
CはV、Nb、Cr、Mo及びWと結合して硬質炭化物を生成し、外層の耐摩耗性の向上に寄与する。Cが1.0質量%未満では硬質炭化物の晶出量が少なすぎて外層に十分な耐摩耗性を付与することができない。一方、Cが3.0質量%を超えると、過剰な炭化物により外層の靱性が低下し、耐クラック性が低下する。Cの含有量の上限は2.8質量%がより好ましい。
Siは溶湯の脱酸により酸化物の欠陥を減少する。Siが0.3質量%未満では溶湯の脱酸作用が不十分であり、酸化物欠陥が発生しやすい。一方、Siが2.0質量%を超えると合金基地が脆化し、外層の靱性は低下する。Siの含有量の下限は0.4質量%がより好ましい。Siの含有量の上限は1.8質量%がより好ましい。
Mnは溶湯の脱酸作用の他に、不純物であるSをMnSとして固定する作用を有する。Mnが0.1質量%未満ではそれらの効果は不十分である。一方、Mnが1.6質量%を超えてもさらなる効果は得られない。Mnの含有量の下限は0.2質量%がより好ましい。Mnの含有量の上限は1.5質量%がより好ましい。
Niは基地組織の焼入れ性を向上させる。Niが3.0質量%を超えると残留オーステナイトが過剰になり、硬さの向上が期待できない。Niの含有量の上限は2.5質量%がより好ましい。
Crは基地をベイナイト又はマルテンサイトにして硬さを保持し、耐摩耗性を維持するのに有効な元素である。Crが3.0質量%未満では、耐摩耗性が不十分である。一方、Crが10.0質量%を超えると、基地組織の靭性が低下する。Cr含有量の下限は4.0質量%がより好ましい。Cr含有量の上限は7.0質量%がより好ましい。
MoはCと結合して硬質炭化物(M6C、M2C)を形成し、外層の硬さを増加させ耐摩耗性が向上するとともに、基地の焼入れ性を向上させる。また、MoはV及びNbとともに強靭かつ硬質なMC炭化物を生成し、耐摩耗性を向上させる。Moが2.0質量%未満では、耐摩耗性が不十分である。一方、Moが10.0質量%を超えると、外層の靭性が劣化する。Mo含有量の下限は3.0質量%がより好ましい。Mo含有量の上限は8.0質量%がより好ましい。
WはCと結合して硬質のM6C及びM2Cの炭化物を生成し、外層の耐摩耗性向上に寄与する。またMC炭化物にも固溶してその比重を増加させ、偏析を軽減させる作用を有する。しかし、Wが8.0質量%を超えると、M6Cのネットワーク炭化物が過剰となり靭性が低下する。W含有量の上限は6.0質量%がより好ましい。
VはCと結合して硬質のMC炭化物を生成する元素である。このMC炭化物は2500〜3000のビッカース硬さHvを有し、炭化物の中でも極めて硬い。Vが4.0質量%未満では、MC炭化物量が不十分で、耐摩耗性が不十分である。一方、Vが10.0質量%を超えると、比重の軽いMC炭化物が遠心鋳造中の遠心力により外層の内側に濃化し、MC炭化物の半径方向偏析が著しくなるだけでなく、MC炭化物が粗大化して合金組織が粗くなり、圧延時に肌荒れしやすくなる。V含有量の下限は5.0質量%がより好ましい。V含有量の上限は8.0質量%がより好ましい。
NbはCと結合してMC炭化物を生成する。NbはV及びMoとの複合添加により、MC炭化物に固溶してMC炭化物を強化し、外層の耐摩耗性を向上させる。NbC系のMC炭化物は、VC系のMC炭化物より溶湯密度との差が小さいので、MC炭化物の偏析を軽減させる。Nbが0.1質量%未満ではこれらの効果は不十分である。一方、Nbが6.0質量%を超えると、MC炭化物が凝集し、健全な外層を得にくくなる。Nb含有量の下限は0.2質量%がより好ましい。Nb含有量の上限は4.0質量%がより好ましい。
本発明の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールの外層は、上記必須組成要件の他に、少なくとも一種の下記の元素を含有しても良い。
TiはN及びOと結合し、酸化物又は窒化物を形成する。酸化物又は窒化物は溶湯中に懸濁されて核となり、MC炭化物を微細化及び均質化する。しかし、Tiが0.3質量%を超えると、溶湯の粘性が増加し、鋳造欠陥が発生しやすくなる。従って、Tiを添加する場合、その好ましい含有量は0.3質量%以下である。一方、Tiが0.003質量%未満ではその添加効果は不十分である。Tiの含有量の下限は好ましくは0.005質量%である。Tiの含有量の上限はより好ましくは0.1質量%である。
AlはN及びOと結合して、酸化物又は窒化物を形成し、それが溶湯中に懸濁されて核となり、MC炭化物を微細均一に晶出させる。しかし、Alが2.0質量%を超えると、外層が脆くなり、機械的性質の劣化を招く。従って、Alの好ましい含有量は2.0質量%以下である。一方、Alの含有量が0.01質量%未満では、その添加効果は不十分である。Alの含有量の上限はより好ましくは1.5質量%である。
ZrはCと結合してMC炭化物を生成し、外層の耐摩耗性を向上させる。また溶湯中で生成したZr酸化物は結晶核として作用するために、凝固組織が微細になる。しかし、Zrが0.5質量%を超えると、介在物を生成し好ましくない。従って、Zrの含有量は0.5質量%以下が好ましい。一方、Zrが0.01質量%未満では、その添加効果は不十分である。Zrの含有量の上限はより好ましくは0.3質量%である。
Bは炭化物を微細化する作用を有する。Bが0.5質量%を超えると、その効果が飽和する。一方、Bが0.001質量%未満では、その添加効果は不十分である。Bの含有量の上限はより好ましくは0.3質量%である。
Coは基地組織の強化に有効な元素である。しかし、Coが10質量%を超えると外層の靱性は低下する。従って、Coの含有量は10質量%以下が好ましい。一方、Coが0.1質量%未満では、その添加効果は不十分である。Coの含有量の上限はより好ましくは8.0質量%である。
外層組成の残部は実質的にFe及び不可避的不純物からなる。不可避的不純物のうち、P及びSは機械的性質の劣化を招くので、できるだけ少なくするのが好ましい。具体的には、Pの含有量は0.1質量%以下が好ましく、Sの含有量は0.1質量%以下が好ましい。その他の不可避的不純物として、Cu、Sb、Te、Ce等の元素は合計で0.7質量%以下であれば良い。
本発明の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールの外層の組織は、基本的に基地、MC炭化物、MC炭化物以外の炭化物(M2C、M3C、M6C等)を有する。外層の組織は8〜25面積%のMC炭化物を有するのが好ましい。外層の基地組織は実質的にマルテンサイト及び/又はベイナイトからなるのが好ましい。一部、パーライトが含まれてもかまわない。なお、本発明の複合ロールの外層の組織は黒鉛を有しない。
(a) 耐摩耗性
外層の耐摩耗性は、MC、M2C、M6C等の硬質炭化物及び硬質な基地組織により得られる。特にV及びNb等からなるMC炭化物は非常に硬質である。また硬質な基地組織はMo等の元素により得られる。外層組織のMC炭化物の面積率が8%未満であると、外層は十分な耐摩耗性を有さないことがある。またMC炭化物の面積率が25%を超えるとMC炭化物が内面に濃化して健全に遠心鋳造をすることが困難となる。
ロール外層には、クラック発生防止のために所定の圧縮残留応力が必要である。しかし、圧縮残留応力の所定値を超えると、クラックの進展を助長し早める。残留応力は外層と軸芯部の歪差による弾性変形により発生するので、外層が薄くなるとその分だけ弾性変形も大きくなり、圧縮残留応力も増大する。本発明では、圧縮残留応力が最大となる廃却径で、かつロール軸方向中央で外層表面の円周方向における圧縮残留応力の値を求める。クラックの発生を防止するとともに、クラックの進展を助長しないように、ロール軸方向中央で廃却径における外層の圧縮残留応力は150〜500MPaである。外層の圧縮残留応力の下限は200MPaがより好ましい。外層の圧縮残留応力の上限は400MPaがより好ましい。
外層基地のビッカース硬さは600以上が好ましい。外層基地のビッカース硬さが600未満であると、圧延により基地部の優先的摩耗や炭化物の脱落が大きい。
ロールの軸芯部は靭性に優れるダクタイル鋳鉄(球状黒鉛鋳鉄)からなるのが好ましい。さらに、外層の長寿命化に応じてジャーナル部(軸芯部)の寿命も長くするために、ジャーナル部の耐摩耗性向上は必要である。ジャーナル部の摩耗により軸受との間のガタが大きくなると、遠心鋳造製複合ロールを廃却せざるを得ない。高耐摩耗性のジャーナル部を提供するため、軸受と接触する部位のあるジャーナル部を形成した軸芯部にフェライト面積率が35%以下のダクタイル鋳鉄を使用するのが好ましい。ダクタイル鋳鉄では、球状黒鉛によりその周囲の炭素量が低下し、低硬度のフェライト組織となりやすい。フェライト面積率が多くなるほど基地の硬さは低下し、よって耐摩耗性が低下する。軸芯部用ダクタイル鋳鉄のフェライト面積率は好ましくは32%以下であり、最も好ましくは29%以下である。
外層の内面に形成される中間層は遠心鋳造用金型表面から離れているため、その指向性凝固の程度が小さく、引け巣が発生しやすいが、本発明の鋳鉄製中間層は、中間層内で軸芯部との境界部付近におけるCr含有量が外層の廃却径におけるCr含有量の50%以上であることにより最終凝固域のバランスがとれて、遠心鋳造時の凝固引け巣を防止する。その上、中間層は中間層内で軸芯部との境界部付近におけるVの含有量が前記外層の廃却径におけるVの含有量の55%以下であるので、外層から軸芯部に拡散したVが少なく、外層と軸芯部との接合強度を高める。外層及び軸芯部との溶着を良好にするために、中間層の平均厚さを3〜70 mmとするのが好ましい。中間層の平均厚さの下限は5mmがより好ましい。中間層の平均厚さの上限は50mmがより好ましい。鋳鉄製中間層は、外層とダクタイル鋳鉄からなる軸芯部との溶着が良好なため、外層と軸芯部を確実に一体化した複合ロールを得ることができる。なお中間層は接合部全体の領域にわたって均一な厚みを有するとは限らず、接合部の一部が薄くなることもある。
中間層用溶湯は、(a) Vの含有量が外層用溶湯におけるVの含有量の10%以下であり、(b) Cr含有量が外層用溶湯におけるCr含有量の35%以上であり、(c) C含有量が外層用溶湯におけるC含有量の±35%以内である。
外層内面に中間層が形成され、かつ中間層内面に軸芯部が形成されるので、中間層の外側領域(外層内面に近い側)に外層成分が拡散する。そのため、中間層の凝固組成は溶湯組成と異なるだけでなく、ロール半径方向で勾配を有する。具体的には、(a) 中間層内で軸芯部との境界部付近におけるVの含有量は外層の廃却径におけるVの含有量の55%以下であり、かつ(b) 中間層内で軸芯部との境界部付近におけるCr含有量は外層の廃却径におけるCr含有量の50%以上である。中間層の凝固組成要件(a) 及び(b) を満たすことにより、外層、中間層及び軸芯部の溶着が良好となるため、外層と中間層、及び中間層と軸芯部との間に高い接合強度(引張強度が300MPa以上)が得られる。組成要件(a) について、中間層内で軸芯部との境界部付近におけるVの含有量は、外層の廃却径におけるVの含有量の50%以下がより好ましい。組成要件(b)について、中間層内で軸芯部との境界部付近におけるCr含有量は外層の廃却径におけるCr含有量の55%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。
本発明の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールのサイズは特に限定されないが、好ましい例は、外層の外径が200〜1000mmで、ロール胴長が500〜3000mmで、外層の圧延使用層(圧延有効径)の厚さが40〜100mmである。
本発明の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールは、(a) 回転する遠心鋳造用円筒状金型に上記組成を有する外層用溶湯を鋳込み、(b) 外層の凝固中又は凝固後に中空状外層の内部に中間層用溶湯を鋳込み、(c) 中間層の凝固中又は凝固後に、外層及び中間層を有する円筒状金型を起立させ、その上下端に上型及び下型を設けて、静置鋳造用鋳型を構成し、(d) 前記上型、前記外層及び中間層を有する円筒状金型及び前記下型により構成される中空部(キャビティ)に軸芯部用溶湯を鋳込むことにより製造する。なお、外層及び中間層を形成する円筒状金型と、軸芯部を形成する上型及び下型が予め一体に設けられた鋳型を静置鋳造用鋳型としてもよい。
(1) 溶湯
外層用溶湯の化学組成は、質量基準でC:1.0〜3.0%、Si:0.3〜2.0%、Mn:0.1〜1.6%、Ni:0.1〜3.0%、Cr:3.0〜10.0%、Mo:2.0〜10.0%、W:0.01〜8.0%、V:4.0〜10.0%、及びNb:0.1〜6.0%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなる。
外層用溶湯の鋳込み温度は、Ts+30℃〜Ts+150℃(ただし、Tsはオーステナイト晶出開始温度である。)の範囲内である。鋳込み温度がTs+30℃より低いと、鋳込んだ溶湯の凝固が速すぎ、微細な介在物などの異物が遠心力による分離の前に凝固するため、異物欠陥が残存しやすい。一方、鋳込み温度がTs+150℃より高いと、共晶炭化物が密集した領域が層状に生成される。鋳込み温度の下限はTs+50℃がより好ましい。鋳込み温度の上限はTs+120℃がより好ましい。なお、オーステナイト晶出開始温度Tsは、示差熱分析装置により測定した凝固発熱の開始温度である。通常、外層用溶湯は、取鍋から漏斗、注湯ノズル等を介して、又はタンディッシュから注湯ノズル等を介して、遠心鋳造用金型内に鋳込まれるので、本発明でいう鋳込み温度は、取鍋内またはタンディッシュ内の溶湯の温度をいう。
遠心鋳造用金型で外層を鋳造するときの遠心力は、重力倍数で60〜150Gの範囲内である。重力倍数が60G未満では、外層溶湯の巻き付きが不足する(レーニング)。一方、重力倍数が150Gを超えると、遠心分離が顕著になり偏析を生じやすい。重力倍数(G No.)は、式:G No.=N×N×D/1,790,000[ただし、Nは金型の回転数(rpm)であり、Dは金型の内径(外層の外周に相当)(mm)である。]により求められる。
遠心鋳造用金型は厚さ120〜450mmの強靭なダクタイル鋳鉄からなるのが好ましい。金型が120mm未満と薄いと、金型の冷却能が不足するため、外層内に引け巣欠陥が発生しやすい。一方、金型の厚さが450mmを超えても冷却能は飽和している。金型のより好ましい厚さは150〜410 mmである。遠心鋳造は水平型、傾斜型又は垂直型のいずれでも良い。
外層が金型に焼付くのを防止するために、金型内面にシリカ、アルミナ、マグネシア又はジルコンを主体とする塗型を0.5〜5mmの厚さに塗布するのが好ましい。塗型が5mmより厚いと、溶湯の冷却が遅く液相の残存時間が長いので、遠心分離が起こりやすく、偏析が発生しやすい。一方、塗型が0.5mmより薄いと、外層の金型への焼付き防止効果が不十分である。塗型のより好ましい厚さは0.5〜4mmである。
外層を鋳込んだ後、外層の凝固中又は凝固後に、(a) Vの含有量が外層用溶湯におけるVの含有量の10%以下であり、(b) Cr含有量が外層用溶湯におけるCr含有量の35%以上であり、かつ(c) C含有量が外層用溶湯におけるC含有量の±35%以内である中間層用溶湯を鋳込む。外層の内面が再溶解した後中間層が凝固するので、両者は金属接合する。
中間層が凝固中又は凝固後に、外層及び中間層を有する金型を起立させ、その上下端にそれぞれ上型及び下型を設けて静置鋳造用鋳型を構成する。上型及び下型は外層及び中間層を有する金型に連通しているので、上型、外層及び中間層を有する金型及び下型は一体的な中空部(キャビティ)を形成する。そのキャビティに軸芯部用溶湯であるダクタイル鋳鉄を鋳込む。中間層の内面が再溶解した後、軸芯部が凝固するので、両者は金属接合する。
複合ロールの廃却径で、かつロール軸方向中央で外層表面の円周方向における圧縮残留応力を150〜500MPaとするために、軸芯部の鋳造後、1000℃以上の温度から焼入れ処理後、480〜580℃の焼戻し処理を1回以上行う。
(1) 複合ロールの製造
表1に示す組成(質量%)の外層用溶湯を、高速回転する内径840mm、長さ3100mm、及び厚さ320mmのダクタイル鋳鉄製の遠心鋳造用円筒状金型(内面に厚さ2mmのジルコンを主体とする塗型を塗布)に鋳込み、外層を遠心鋳造した。外層外周における重力倍数は120Gであった。外層用溶湯の鋳込み温度はTs+50℃〜Ts+120℃(ただし、Tsはオーステナイト晶出開始温度である。)の間であった。
(a) 外層におけるMC炭化物の面積率
実施例の複合ロールの外層(ロール胴部端面からロール軸方向に約100mm離れた位置)から切り出した試験片の光学顕微鏡写真から、画像解析ソフトを用いて、MC炭化物の面積率を求めた。
実施例の複合ロールの軸芯部(ジャーナル部)から切り出した試験片の光学顕微鏡写真から、画像解析ソフトを用いて、フェライトの面積率(%)を測定した。
(a) 外層の基地のビッカース硬さ(Hv)
実施例の複合ロールの外層(ロール胴部端面からロール軸方向に約100mm離れた位置にある外層)から切り出した試験片に対して、マイクロビッカース硬さ試験機により基地のビッカース硬さを測定した。
実施例の複合ロールの製品初径に位置する外層の表面をショア硬さ計によりショア硬さを測定した。
実施例の複合ロールの外層のロール軸方向中央で、外層の廃却径まで機械加工により除去した。実施例の複合ロールの外層の廃却径(製品初径表面から深さ50mm)で、かつロール軸方向中央で外層表面の円周方向における圧縮残留応力をX線回折残留応力測定装置により測定した。
実施例の外層材を用いて、外径60mm、内径40mm、及び幅40mmのスリーブ構造の試験用ロールを作製した。耐摩耗性を評価するため、図1に示す圧延摩耗試験機を用いて、各試験用ロールに対して摩耗試験を行った。圧延摩耗試験機は、圧延機1と、圧延機1に組み込まれた試験用ロール2,3と、圧延材8を予熱する加熱炉4と、圧延材8を冷却する冷却水槽5と、圧延中に一定の張力を与える巻取機6と、張力を調節するコントローラ7とを具備する。圧延摩耗条件は以下の通りであった。圧延後、試験用ロールの表面に生じた摩耗の深さを触針式表面粗さ計により測定した。結果を表5に示す。
圧延材:SUS304
圧下率:25%
圧延速度:150 m/分
圧延材温度:900℃
圧延距離:300 m/回
ロール冷却:水冷
ロール数:4重式
表6に示す組成(質量%)の外層用溶湯を、高速回転する内径840mm、長さ3100mm、及び厚さ320mmのダクタイル鋳鉄製の遠心鋳造用円筒状金型(内面に厚さ2mmのジルコンを主体とする塗型を塗布)に鋳込み、外層を遠心鋳造した。外層外周における重力倍数は120Gであった。外層用溶湯の鋳込み温度はTs+50℃〜Ts+120℃(ただし、Tsはオーステナイト晶出開始温度である。)の間であった。
5・・・冷却水槽 6・・・巻取機 7・・・コントローラ
11・・・ラック 12・・・重り 13・・・ピニオン 14・・・試験材
15・・・噛み込み材
20・・・境界部の端部
Claims (6)
- (a) 質量基準で、C:1.0〜3.0%、Si:0.3〜2.0%、Mn:0.1〜1.6%、Ni:0.1〜3.0%、Cr:3.0〜10.0%、Mo:2.0〜10.0%、W:0.01〜8.0%、V:4.0〜10.0%、及びNb:0.1〜6.0%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる外層と、(b)ダクタイル鋳鉄からなる軸芯部と、(c) 鋳鉄製中間層とからなり、(d) 前記中間層内で軸芯部との境界部付近におけるVの含有量は前記外層の廃却径におけるVの含有量の55%以下であり、かつ前記中間層内で軸芯部との境界部付近におけるCr含有量は前記外層の廃却径におけるCr含有量の50%以上であることを特徴とする遠心鋳造製熱間圧延用複合ロール。
- 請求項1に記載の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールにおいて、前記外層がさらにTi:0.003〜0.3%を含有することを特徴とする遠心鋳造製熱間圧延用複合ロール。
- 請求項1又は2に記載の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールにおいて、前記外層がさらに質量基準でAl:0.01〜2.0%、Zr:0.01〜0.5%、B:0.001〜0.5%、及びCo:0.1〜10.0%からなる群から選ばれた少なくとも一種を含有することを特徴とする遠心鋳造熱間圧延用複合ロール。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールにおいて、前記外層の基地硬さが600以上のビッカース硬さを有することを特徴とする遠心鋳造製熱間圧延用複合ロール。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールにおいて、前記外層のロール軸方向中央で外層表面の円周方向における圧縮残留応力が廃却径で150〜500 MPaであることを特徴とする遠心鋳造製熱間圧延用複合ロール。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールにおいて、前記軸芯部がフェライト面積率が35%以下のダクタイル鋳鉄からなることを特徴とする遠心鋳造製熱間圧延用複合ロール。
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