JP2015205342A - 遠心鋳造製熱間圧延用複合ロール - Google Patents

遠心鋳造製熱間圧延用複合ロール Download PDF

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Abstract

【課題】優れた耐摩耗性を有し、かつ外層、中間層及び軸芯部の溶着が良好である遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールを提供する。【解決手段】(a)質量%で、C:1.0〜3.0%、Si:0.3〜2.0%、Mn:0.1〜1.6%、Ni:0.1〜3.0%、Cr:3.0〜10.0%、Mo:2.0〜10.0%、W:0.01〜8.0%、V:4.0〜10.0%、及びNb:0.1〜6.0%を含有し残部がFeの外層と、(b)ダクタイル鋳鉄の軸芯部と、(c)鋳鉄製中間層とからなり、(d)中間層内で軸芯部との境界部付近におけるVの含有量は外層の廃却径におけるVの含有量の55%以下であり、かつ中間層内で軸芯部との境界部付近におけるCr含有量は外層の廃却径におけるCr含有量の50%以上である遠心鋳造製熱間圧延用複合ロール。【選択図】図2−1

Description

本発明は、耐摩耗性に優れた外層と靱性に優れた軸芯部とが中間層を介して一体化された遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールに関し、特に薄鋼板のホットストリップミルの仕上げ圧延用ワークロールに好適な遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールに関する。
連続鋳造等で製造した厚さ数百mmの加熱スラブは、粗圧延機及び仕上げ圧延機を有するホットストリップミルで数〜数十mmの厚さの鋼板に圧延される。仕上げ圧延機は通常、5〜7スタンドの四重式圧延機を直列に配置したものである。7スタンドの仕上げ圧延機の場合、第一スタンドから第三スタンドまでを前段スタンドと呼び、第四スタンドから第七スタンドまでを後段スタンドと呼ぶ。
このようなホットストリップミルに用いられるワークロールは、熱間薄板に接触するので、熱的及び機械的な圧延負荷により外層表面に生じた摩耗、肌荒れ、ヒートクラック等の損傷が生じる。従って、これらの損傷を研削除去した後、ワークロールは再び圧延に供される。ロール外層の表層部の損傷の研削除去は「改削」と呼ばれる。ワークロールは、初径から圧延に使用可能な最小径(廃却径)まで改削された後、廃却される。初径から廃却径までを圧延有効径と呼ぶ。圧延有効径では、熱間圧延用ロールの外層は圧延による摩耗が少ない優れた耐摩耗性を有することが要求される。
このように優れた耐摩耗性が要求されるホットストリップミルの仕上げスタンド用のワークロールとして、耐摩耗性を向上させるためにMo、V等の硬質炭化物形成元素を添加したハイス系合金を外層とし、外層と内層の間に中間層を形成させた複合ロールがある。
例えば、特開平6-330228号(特許文献1)は、外層材として、C:1.0〜3.5%、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:12.0%以下、Mo:8.0%以下、V:3.0〜10.0%、Nb:0.6〜7.0%を含有し、さらに必要に応じてNi:8.0%、Co:10.0%以下、Cu:2.0%以下、Ti:2.0%以下、Zr:2.0%以下、W:1.0%以下、B:0.1%以下のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物よりなる溶鋼を鋳造し、次いで、中間層材として、C:1.4〜2.4%、Si:0.4〜1.2%、Mn:0.3〜1.0%、P:0.1%以下、S:0.1%以下、Ni:0.1〜2.5%、Cr:1.0%以下、Mo:0.1〜2.0%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物よりなる溶鋼を鋳造し、次いで、内層材として、C:1.0〜2.0%、Si:1.6〜2.4%、Mn:0.2〜1.0%、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Ni:0.7%以下、Cr:1.0%以下、Mo:3.0%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物よりなる溶鋼を鋳造する遠心鋳造製スリーブロールを提案している。しかし、このロールの場合、中間層内に引け巣等の鋳造欠陥が発生しやすいという問題があった。中間層内に鋳造欠陥が著しく発生すると、外層、中間層及び内層の溶着が不十分となる。
特開平6-330228号公報
従って本発明の目的は、耐摩耗性に優れ、かつ外層、中間層及び軸芯部の溶着が良好であるホットストリップミルの仕上げ用ワークロールに好適な遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールを提供することである。
本発明の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールは、(a) 質量基準で、C:1.0〜3.0%、Si:0.3〜2.0%、Mn:0.1〜1.6%、Ni:0.1〜3.0%、Cr:3.0〜10.0%、Mo:2.0〜10.0%、W:0.01〜8.0%、V:4.0〜10.0%、及びNb:0.1〜6.0%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる外層と、(b)ダクタイル鋳鉄からなる軸芯部と、(c) 鋳鉄製中間層とからなり、(d) 前記中間層内で軸芯部との境界部付近におけるVの含有量は前記外層の廃却径におけるVの含有量の55%以下であり、かつ前記中間層内で軸芯部との境界部付近におけるCr含有量は前記外層の廃却径におけるCr含有量の50%以上であることを特徴とする。
前記外層はさらにTi:0.003〜0.3%を含有しても良い。
前記外層はさらに、質量基準でAl:0.01〜2.0%、Zr:0.01〜0.5%、B:0.001〜0.5%、及びCo:0.1〜10.0%からなる群から選ばれた少なくとも一種を含有しても良い。
前記外層は基地の硬さが600以上のビッカース硬さを有するのが好ましい。
前記外層のロール軸方向中央で外層表面の円周方向における圧縮残留応力は廃却径で150〜500MPaであるのが好ましい。
前記軸芯部はフェライト面積率が35%以下のダクタイル鋳鉄からなることが好ましい。
本発明の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールは、耐摩耗性に優れ、かつ外層、中間層及び軸芯部の溶着が良好である。
圧延摩耗試験機を示す概略図である。 外層と中間層と軸芯部との境界部近傍におけるCr、Vの分布を概略的に示すグラフである。 Crの分布から境界部を決める方法を示すグラフである。 中間層と軸芯部との境界部付近を示す部分拡大断面図であって、中間層内で軸芯部との境界部付近におけるVの含有量及びCrの含有量の定義を示す部分拡大断面図である。 実施例の中間層近傍におけるCr、Vの分布を示すグラフである。
本発明の実施形態を以下詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変更をしても良い。特に断りがなければ、単に「%」と記載しているときは「質量%」を意味する。
[1] 遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールの構成
(A) 外層
(1) 組成
(i) 必須組成
(a) C:1.0〜3.0質量%
CはV、Nb、Cr、Mo及びWと結合して硬質炭化物を生成し、外層の耐摩耗性の向上に寄与する。Cが1.0質量%未満では硬質炭化物の晶出量が少なすぎて外層に十分な耐摩耗性を付与することができない。一方、Cが3.0質量%を超えると、過剰な炭化物により外層の靱性が低下し、耐クラック性が低下する。Cの含有量の上限は2.8質量%がより好ましい。
(b) Si:0.3〜2.0質量%
Siは溶湯の脱酸により酸化物の欠陥を減少する。Siが0.3質量%未満では溶湯の脱酸作用が不十分であり、酸化物欠陥が発生しやすい。一方、Siが2.0質量%を超えると合金基地が脆化し、外層の靱性は低下する。Siの含有量の下限は0.4質量%がより好ましい。Siの含有量の上限は1.8質量%がより好ましい。
(c) Mn:0.1〜1.6質量%
Mnは溶湯の脱酸作用の他に、不純物であるSをMnSとして固定する作用を有する。Mnが0.1質量%未満ではそれらの効果は不十分である。一方、Mnが1.6質量%を超えてもさらなる効果は得られない。Mnの含有量の下限は0.2質量%がより好ましい。Mnの含有量の上限は1.5質量%がより好ましい。
(d) Ni:0.1〜3.0質量%
Niは基地組織の焼入れ性を向上させる。Niが3.0質量%を超えると残留オーステナイトが過剰になり、硬さの向上が期待できない。Niの含有量の上限は2.5質量%がより好ましい。
(e) Cr:3.0〜10.0質量%
Crは基地をベイナイト又はマルテンサイトにして硬さを保持し、耐摩耗性を維持するのに有効な元素である。Crが3.0質量%未満では、耐摩耗性が不十分である。一方、Crが10.0質量%を超えると、基地組織の靭性が低下する。Cr含有量の下限は4.0質量%がより好ましい。Cr含有量の上限は7.0質量%がより好ましい。
(f) Mo:2.0〜10.0質量%
MoはCと結合して硬質炭化物(M6C、M2C)を形成し、外層の硬さを増加させ耐摩耗性が向上するとともに、基地の焼入れ性を向上させる。また、MoはV及びNbとともに強靭かつ硬質なMC炭化物を生成し、耐摩耗性を向上させる。Moが2.0質量%未満では、耐摩耗性が不十分である。一方、Moが10.0質量%を超えると、外層の靭性が劣化する。Mo含有量の下限は3.0質量%がより好ましい。Mo含有量の上限は8.0質量%がより好ましい。
(g) W:0.01〜8.0質量%
WはCと結合して硬質のM6C及びM2Cの炭化物を生成し、外層の耐摩耗性向上に寄与する。またMC炭化物にも固溶してその比重を増加させ、偏析を軽減させる作用を有する。しかし、Wが8.0質量%を超えると、M6Cのネットワーク炭化物が過剰となり靭性が低下する。W含有量の上限は6.0質量%がより好ましい。
(h) V:4.0〜10.0質量%
VはCと結合して硬質のMC炭化物を生成する元素である。このMC炭化物は2500〜3000のビッカース硬さHvを有し、炭化物の中でも極めて硬い。Vが4.0質量%未満では、MC炭化物量が不十分で、耐摩耗性が不十分である。一方、Vが10.0質量%を超えると、比重の軽いMC炭化物が遠心鋳造中の遠心力により外層の内側に濃化し、MC炭化物の半径方向偏析が著しくなるだけでなく、MC炭化物が粗大化して合金組織が粗くなり、圧延時に肌荒れしやすくなる。V含有量の下限は5.0質量%がより好ましい。V含有量の上限は8.0質量%がより好ましい。
(i) Nb:0.1〜6.0質量%
NbはCと結合してMC炭化物を生成する。NbはV及びMoとの複合添加により、MC炭化物に固溶してMC炭化物を強化し、外層の耐摩耗性を向上させる。NbC系のMC炭化物は、VC系のMC炭化物より溶湯密度との差が小さいので、MC炭化物の偏析を軽減させる。Nbが0.1質量%未満ではこれらの効果は不十分である。一方、Nbが6.0質量%を超えると、MC炭化物が凝集し、健全な外層を得にくくなる。Nb含有量の下限は0.2質量%がより好ましい。Nb含有量の上限は4.0質量%がより好ましい。
(ii) 任意組成
本発明の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールの外層は、上記必須組成要件の他に、少なくとも一種の下記の元素を含有しても良い。
(a) Ti:0.003〜0.3質量%
TiはN及びOと結合し、酸化物又は窒化物を形成する。酸化物又は窒化物は溶湯中に懸濁されて核となり、MC炭化物を微細化及び均質化する。しかし、Tiが0.3質量%を超えると、溶湯の粘性が増加し、鋳造欠陥が発生しやすくなる。従って、Tiを添加する場合、その好ましい含有量は0.3質量%以下である。一方、Tiが0.003質量%未満ではその添加効果は不十分である。Tiの含有量の下限は好ましくは0.005質量%である。Tiの含有量の上限はより好ましくは0.1質量%である。
(b) Al:0.01〜2.0質量%
AlはN及びOと結合して、酸化物又は窒化物を形成し、それが溶湯中に懸濁されて核となり、MC炭化物を微細均一に晶出させる。しかし、Alが2.0質量%を超えると、外層が脆くなり、機械的性質の劣化を招く。従って、Alの好ましい含有量は2.0質量%以下である。一方、Alの含有量が0.01質量%未満では、その添加効果は不十分である。Alの含有量の上限はより好ましくは1.5質量%である。
(c) Zr:0.01〜0.5質量%
ZrはCと結合してMC炭化物を生成し、外層の耐摩耗性を向上させる。また溶湯中で生成したZr酸化物は結晶核として作用するために、凝固組織が微細になる。しかし、Zrが0.5質量%を超えると、介在物を生成し好ましくない。従って、Zrの含有量は0.5質量%以下が好ましい。一方、Zrが0.01質量%未満では、その添加効果は不十分である。Zrの含有量の上限はより好ましくは0.3質量%である。
(d) B:0.001〜0.5質量%
Bは炭化物を微細化する作用を有する。Bが0.5質量%を超えると、その効果が飽和する。一方、Bが0.001質量%未満では、その添加効果は不十分である。Bの含有量の上限はより好ましくは0.3質量%である。
(e) Co:0.1〜10.0質量%
Coは基地組織の強化に有効な元素である。しかし、Coが10質量%を超えると外層の靱性は低下する。従って、Coの含有量は10質量%以下が好ましい。一方、Coが0.1質量%未満では、その添加効果は不十分である。Coの含有量の上限はより好ましくは8.0質量%である。
(iii) 不純物
外層組成の残部は実質的にFe及び不可避的不純物からなる。不可避的不純物のうち、P及びSは機械的性質の劣化を招くので、できるだけ少なくするのが好ましい。具体的には、Pの含有量は0.1質量%以下が好ましく、Sの含有量は0.1質量%以下が好ましい。その他の不可避的不純物として、Cu、Sb、Te、Ce等の元素は合計で0.7質量%以下であれば良い。
(2) 組織
本発明の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールの外層の組織は、基本的に基地、MC炭化物、MC炭化物以外の炭化物(M2C、M3C、M6C等)を有する。外層の組織は8〜25面積%のMC炭化物を有するのが好ましい。外層の基地組織は実質的にマルテンサイト及び/又はベイナイトからなるのが好ましい。一部、パーライトが含まれてもかまわない。なお、本発明の複合ロールの外層の組織は黒鉛を有しない。
(3) 特性
(a) 耐摩耗性
外層の耐摩耗性は、MC、M2C、M6C等の硬質炭化物及び硬質な基地組織により得られる。特にV及びNb等からなるMC炭化物は非常に硬質である。また硬質な基地組織はMo等の元素により得られる。外層組織のMC炭化物の面積率が8%未満であると、外層は十分な耐摩耗性を有さないことがある。またMC炭化物の面積率が25%を超えるとMC炭化物が内面に濃化して健全に遠心鋳造をすることが困難となる。
(b) 圧縮残留応力
ロール外層には、クラック発生防止のために所定の圧縮残留応力が必要である。しかし、圧縮残留応力の所定値を超えると、クラックの進展を助長し早める。残留応力は外層と軸芯部の歪差による弾性変形により発生するので、外層が薄くなるとその分だけ弾性変形も大きくなり、圧縮残留応力も増大する。本発明では、圧縮残留応力が最大となる廃却径で、かつロール軸方向中央で外層表面の円周方向における圧縮残留応力の値を求める。クラックの発生を防止するとともに、クラックの進展を助長しないように、ロール軸方向中央で廃却径における外層の圧縮残留応力は150〜500MPaである。外層の圧縮残留応力の下限は200MPaがより好ましい。外層の圧縮残留応力の上限は400MPaがより好ましい。
このような圧縮残留応力を得るため、鋳造後に1000℃以上の温度から焼入れ処理後、480〜580℃の焼戻し処理を1回以上行う。480〜580℃の保持は1時間以上が好ましい。この熱処理により残留オーステナイトは硬質のマルテンサイト又はベイナイトに変態し、この変態膨張によりロール表面に圧縮残留応力が付与される。このような変態により基地硬度が上がり、耐摩耗性が向上する。
(c) ビッカース硬さ
外層基地のビッカース硬さは600以上が好ましい。外層基地のビッカース硬さが600未満であると、圧延により基地部の優先的摩耗や炭化物の脱落が大きい。
(B) 軸芯部
ロールの軸芯部は靭性に優れるダクタイル鋳鉄(球状黒鉛鋳鉄)からなるのが好ましい。さらに、外層の長寿命化に応じてジャーナル部(軸芯部)の寿命も長くするために、ジャーナル部の耐摩耗性向上は必要である。ジャーナル部の摩耗により軸受との間のガタが大きくなると、遠心鋳造製複合ロールを廃却せざるを得ない。高耐摩耗性のジャーナル部を提供するため、軸受と接触する部位のあるジャーナル部を形成した軸芯部にフェライト面積率が35%以下のダクタイル鋳鉄を使用するのが好ましい。ダクタイル鋳鉄では、球状黒鉛によりその周囲の炭素量が低下し、低硬度のフェライト組織となりやすい。フェライト面積率が多くなるほど基地の硬さは低下し、よって耐摩耗性が低下する。軸芯部用ダクタイル鋳鉄のフェライト面積率は好ましくは32%以下であり、最も好ましくは29%以下である。
軸芯部となるダクタイル鋳鉄の組成は、質量基準でC:2.3〜3.6%、Si:1.5〜3.5%、Mn:0.2〜2.0%、Ni:0.3〜2.0%、Cr:0.05〜0.9%、Mo:0.05〜1.0%、Mg:0.01〜0.08%、及びV:0.05〜1.0%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物であるのが好ましい。上記必須元素の他に、Nb:0.7%以下、及びW:0.7%以下を含有しても良い。さらに、フェライト面積率を低下させるために、Cu、Sn、As及びSbの少なくとも一種を合計で0.005〜0.5%添加しても良い。Pは通常不純物元素として0.005〜0.05%程度ダクタイル鋳鉄に入っているが、フェライト面積率を低下させるために0.5%まで添加しても良い。ダクタイル鋳鉄は、鉄基地がフェライト及びパーライトを主体とし、その他は黒鉛及び微量のセメンタイトを主に含む。
(C) 中間層
外層の内面に形成される中間層は遠心鋳造用金型表面から離れているため、その指向性凝固の程度が小さく、引け巣が発生しやすいが、本発明の鋳鉄製中間層は、中間層内で軸芯部との境界部付近におけるCr含有量が外層の廃却径におけるCr含有量の50%以上であることにより最終凝固域のバランスがとれて、遠心鋳造時の凝固引け巣を防止する。その上、中間層は中間層内で軸芯部との境界部付近におけるVの含有量が前記外層の廃却径におけるVの含有量の55%以下であるので、外層から軸芯部に拡散したVが少なく、外層と軸芯部との接合強度を高める。外層及び軸芯部との溶着を良好にするために、中間層の平均厚さを3〜70 mmとするのが好ましい。中間層の平均厚さの下限は5mmがより好ましい。中間層の平均厚さの上限は50mmがより好ましい。鋳鉄製中間層は、外層とダクタイル鋳鉄からなる軸芯部との溶着が良好なため、外層と軸芯部を確実に一体化した複合ロールを得ることができる。なお中間層は接合部全体の領域にわたって均一な厚みを有するとは限らず、接合部の一部が薄くなることもある。
(1) 溶湯組成
中間層用溶湯は、(a) Vの含有量が外層用溶湯におけるVの含有量の10%以下であり、(b) Cr含有量が外層用溶湯におけるCr含有量の35%以上であり、(c) C含有量が外層用溶湯におけるC含有量の±35%以内である。
組成要件(a) について、中間層用溶湯におけるVの含有量が外層用溶湯におけるVの含有量の10%超であると、軸芯部用溶湯を鋳込んだときに中間層中のVが軸芯部に拡散し、中間層と軸芯部との接合強度が低下する。中間層用溶湯におけるVの含有量は、外層用溶湯におけるVの含有量の5%以下がより好ましい。
組成要件(b) について、中間層用溶湯におけるCr含有量が外層用溶湯におけるCr含有量の35%未満であると、遠心鋳造時の凝固引け巣が多くなるおそれがある。中間層用溶湯におけるCr含有量は、外層用溶湯におけるCr含有量の40%以上がより好ましい。また中間層用溶湯におけるCr含有量は、外層用溶湯におけるCr含有量の95%以下が好ましく、90%以下がより好ましい。
組成要件(c) について、中間層用溶湯におけるC含有量が外層用溶湯におけるC含有量の±35%以内でないと、C含有量の差により中間層と外層との接合強度が低い。中間層用溶湯におけるC含有量は、外層用溶湯におけるC含有量の±30%以内がより好ましい。
上記組成要件(a)〜(c) を満たす中間層用溶湯の好ましい具体的組成は、C:1.6〜3.8%、Si:0.2〜3.5%、Mn:0.2〜2.0%、Ni:0〜5.0%、Cr:1.0〜4.0%、Mo:0〜3.0%、V:0〜1.0%、Nb:0〜3.0%、及びW:0〜3.0%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物である。中間層用溶湯のV、Nb含有量の上限は、それぞれ0.5%がより好ましい。
(2) 凝固組成
外層内面に中間層が形成され、かつ中間層内面に軸芯部が形成されるので、中間層の外側領域(外層内面に近い側)に外層成分が拡散する。そのため、中間層の凝固組成は溶湯組成と異なるだけでなく、ロール半径方向で勾配を有する。具体的には、(a) 中間層内で軸芯部との境界部付近におけるVの含有量は外層の廃却径におけるVの含有量の55%以下であり、かつ(b) 中間層内で軸芯部との境界部付近におけるCr含有量は外層の廃却径におけるCr含有量の50%以上である。中間層の凝固組成要件(a) 及び(b) を満たすことにより、外層、中間層及び軸芯部の溶着が良好となるため、外層と中間層、及び中間層と軸芯部との間に高い接合強度(引張強度が300MPa以上)が得られる。組成要件(a) について、中間層内で軸芯部との境界部付近におけるVの含有量は、外層の廃却径におけるVの含有量の50%以下がより好ましい。組成要件(b)について、中間層内で軸芯部との境界部付近におけるCr含有量は外層の廃却径におけるCr含有量の55%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。
外層内面に中間層が形成され、かつ中間層内面に軸芯部が形成されるので、外層と中間層との境界で両者の成分が拡散しあうだけでなく、中間層と軸芯部との境界で両者の成分が拡散しあう。そのため、合金元素の濃度は、中間層を介して外層から軸芯部まで概ね低下する。中間層と軸芯部との境界部では、特に炭化物形成元素であるV及びCrの元素の濃度は著しく低下する。
中間層と軸芯部との境界部におけるCr及びVの濃度変化を調べた結果、図2-1に概略的に示すように、Cr、Vは中間層から軸芯部との境界部で急激に低下し、軸芯部で一定になるので、境界部の範囲を特定するのに本発明ではCrの濃度変化を用いた。そこで、図2-2に示すように、Crの濃度曲線の変曲点A1,A2の位置をそれぞれ境界部の半径方向外側位置及び内側位置と定義する。このような変曲点を求めるためには、半径方向に3 mm以下のピッチでCrの濃度を分析するのが好ましい。
図2-3は境界部付近における複合ロールの横断面(軸線方向に垂直な断面)を拡大して示す。図2-3に示すように、境界部の端部20の半径方向位置は一般に一定ではない。このような端部20を有する境界部の付近において、V及びCrの濃度を半径方向直線Lに沿って一定のピッチPで測定するが、測定点M1,M2,M3・・・のいずれかが境界部の端部20に位置することはほとんどない。すなわち、境界部の外端A1は測定点M1,M2,M3・・・のいずれとも一致しないことの方が多い。そこで、半径方向直線L上に、外端A1から距離X(=2 mm)だけ離れた半径方向外側(中間層側)の位置A3を設定し、(a) 位置A3にいずれかの測定点が一致する場合には、位置A3におけるV及びCrの濃度を採用し、(b) 位置A3にいずれの測定点も一致しない場合には、位置A3から最も近い外側の測定点(図示の例ではM2)におけるV及びCrの濃度を採用する。従って、位置A3又はそれに最も近い外側の測定点M2におけるVの含有量を「中間層内で軸芯部との境界部付近におけるVの含有量」と定義する。同様に、位置A3又はそれに最も近い外側の測定点M2におけるCr含有量を「中間層内で軸芯部との境界部付近におけるCr含有量」と定義する。M1,M2,M3・・・の例を図2-2にも記入する。
なお、中間層内で軸芯部との境界部付近におけるV及びCrの含有量は、測定位置に応じて変動する程度が比較的大きいので、本発明では上記方法に従って任意の3箇所で測定した値の平均値を採用する。
(D) ロールサイズ
本発明の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールのサイズは特に限定されないが、好ましい例は、外層の外径が200〜1000mmで、ロール胴長が500〜3000mmで、外層の圧延使用層(圧延有効径)の厚さが40〜100mmである。
[2] 遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールの製造方法
本発明の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールは、(a) 回転する遠心鋳造用円筒状金型に上記組成を有する外層用溶湯を鋳込み、(b) 外層の凝固中又は凝固後に中空状外層の内部に中間層用溶湯を鋳込み、(c) 中間層の凝固中又は凝固後に、外層及び中間層を有する円筒状金型を起立させ、その上下端に上型及び下型を設けて、静置鋳造用鋳型を構成し、(d) 前記上型、前記外層及び中間層を有する円筒状金型及び前記下型により構成される中空部(キャビティ)に軸芯部用溶湯を鋳込むことにより製造する。なお、外層及び中間層を形成する円筒状金型と、軸芯部を形成する上型及び下型が予め一体に設けられた鋳型を静置鋳造用鋳型としてもよい。
(A) 外層の形成
(1) 溶湯
外層用溶湯の化学組成は、質量基準でC:1.0〜3.0%、Si:0.3〜2.0%、Mn:0.1〜1.6%、Ni:0.1〜3.0%、Cr:3.0〜10.0%、Mo:2.0〜10.0%、W:0.01〜8.0%、V:4.0〜10.0%、及びNb:0.1〜6.0%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなる。
(2) 鋳込み温度
外層用溶湯の鋳込み温度は、Ts+30℃〜Ts+150℃(ただし、Tsはオーステナイト晶出開始温度である。)の範囲内である。鋳込み温度がTs+30℃より低いと、鋳込んだ溶湯の凝固が速すぎ、微細な介在物などの異物が遠心力による分離の前に凝固するため、異物欠陥が残存しやすい。一方、鋳込み温度がTs+150℃より高いと、共晶炭化物が密集した領域が層状に生成される。鋳込み温度の下限はTs+50℃がより好ましい。鋳込み温度の上限はTs+120℃がより好ましい。なお、オーステナイト晶出開始温度Tsは、示差熱分析装置により測定した凝固発熱の開始温度である。通常、外層用溶湯は、取鍋から漏斗、注湯ノズル等を介して、又はタンディッシュから注湯ノズル等を介して、遠心鋳造用金型内に鋳込まれるので、本発明でいう鋳込み温度は、取鍋内またはタンディッシュ内の溶湯の温度をいう。
(3) 遠心力
遠心鋳造用金型で外層を鋳造するときの遠心力は、重力倍数で60〜150Gの範囲内である。重力倍数が60G未満では、外層溶湯の巻き付きが不足する(レーニング)。一方、重力倍数が150Gを超えると、遠心分離が顕著になり偏析を生じやすい。重力倍数(G No.)は、式:G No.=N×N×D/1,790,000[ただし、Nは金型の回転数(rpm)であり、Dは金型の内径(外層の外周に相当)(mm)である。]により求められる。
(4) 遠心鋳造用金型
遠心鋳造用金型は厚さ120〜450mmの強靭なダクタイル鋳鉄からなるのが好ましい。金型が120mm未満と薄いと、金型の冷却能が不足するため、外層内に引け巣欠陥が発生しやすい。一方、金型の厚さが450mmを超えても冷却能は飽和している。金型のより好ましい厚さは150〜410 mmである。遠心鋳造は水平型、傾斜型又は垂直型のいずれでも良い。
(5) 塗型
外層が金型に焼付くのを防止するために、金型内面にシリカ、アルミナ、マグネシア又はジルコンを主体とする塗型を0.5〜5mmの厚さに塗布するのが好ましい。塗型が5mmより厚いと、溶湯の冷却が遅く液相の残存時間が長いので、遠心分離が起こりやすく、偏析が発生しやすい。一方、塗型が0.5mmより薄いと、外層の金型への焼付き防止効果が不十分である。塗型のより好ましい厚さは0.5〜4mmである。
(B) 中間層の形成
外層を鋳込んだ後、外層の凝固中又は凝固後に、(a) Vの含有量が外層用溶湯におけるVの含有量の10%以下であり、(b) Cr含有量が外層用溶湯におけるCr含有量の35%以上であり、かつ(c) C含有量が外層用溶湯におけるC含有量の±35%以内である中間層用溶湯を鋳込む。外層の内面が再溶解した後中間層が凝固するので、両者は金属接合する。
(C) 軸芯部の形成
中間層が凝固中又は凝固後に、外層及び中間層を有する金型を起立させ、その上下端にそれぞれ上型及び下型を設けて静置鋳造用鋳型を構成する。上型及び下型は外層及び中間層を有する金型に連通しているので、上型、外層及び中間層を有する金型及び下型は一体的な中空部(キャビティ)を形成する。そのキャビティに軸芯部用溶湯であるダクタイル鋳鉄を鋳込む。中間層の内面が再溶解した後、軸芯部が凝固するので、両者は金属接合する。
外層と中間層との境界部で両層の元素が相互に拡散するので、凝固した中間層の組成はその溶湯組成と異なるだけでなく、勾配を有する。具体的には、中間層内で軸芯部との境界部付近におけるVの含有量は外層の廃却径におけるVの含有量の55%以下であり、より好ましくは50%以下である。
(D) 熱処理
複合ロールの廃却径で、かつロール軸方向中央で外層表面の円周方向における圧縮残留応力を150〜500MPaとするために、軸芯部の鋳造後、1000℃以上の温度から焼入れ処理後、480〜580℃の焼戻し処理を1回以上行う。
本発明を以下の実施例および比較例により詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例
(1) 複合ロールの製造
表1に示す組成(質量%)の外層用溶湯を、高速回転する内径840mm、長さ3100mm、及び厚さ320mmのダクタイル鋳鉄製の遠心鋳造用円筒状金型(内面に厚さ2mmのジルコンを主体とする塗型を塗布)に鋳込み、外層を遠心鋳造した。外層外周における重力倍数は120Gであった。外層用溶湯の鋳込み温度はTs+50℃〜Ts+120℃(ただし、Tsはオーステナイト晶出開始温度である。)の間であった。
外層の最内面が凝固完了する前に、外層内面に、表1に示す組成の中間層用溶湯を鋳込み、中間層を遠心鋳造した。外層外周における重力倍数は120Gであった。中間層用溶湯の鋳込み温度は1510℃であった。この遠心鋳造法により平均厚さ95mmの外層、及び平均厚さ22mmの中間層を形成した。廃却径は表面から65mmとなるようにした。
中空状中間層が凝固した後、遠心鋳造用円筒状金型の回転を止め、円筒状金型の上下端にそれぞれ上型(長さ1900mm)及び下型(長さ1200mm)を設けて静置鋳造用鋳型を構成した。上型、中間層を有する金型及び下型からなる静置鋳造用鋳型のキャビティに、表1に示す組成の軸芯部用ダクタイル鋳鉄溶湯を鋳込み、軸芯部を静置鋳造した。軸芯部用ダクタイル鋳鉄溶湯の鋳込み温度は1410℃であった。なお、表1に示す組成は残部が実質的にFe及び不可避的不純物からなる。
軸芯部の凝固完了後、静置鋳造用鋳型を解体して、得られた複合ロールを取り出し、1050℃から焼入れ処理後、530℃の焼戻し処理を2回行った。このようにして、実施例の複合ロールを得た。
得られた複合ロールのロール胴部端面からロール軸方向に約100mm離れた位置から切り出した試験片に対して、中間層近傍におけるCr、Vの分布を測定した。結果を図3に示す。
図3から明らかなように、廃却径の位置から境界部の端部(A3)の位置までの距離は約27 mmであった。表2は、外層の廃却径の位置及び中間層内で軸芯部との境界部付近の位置におけるCr、Vの含有量、さらに境界部近傍におけるCr含有量/廃却径位置におけるCr含有量の比、及び境界部近傍におけるVの含有量/廃却径位置におけるVの含有量の比を示す。
図3、表2から明らかなように、実施例の複合ロールは、(a) 中間層内で軸芯部との境界部付近におけるVの含有量は、外層の廃却径におけるVの含有量の55%以下であり、かつ(b) 中間層内で軸芯部との境界部付近におけるCr含有量は外層の廃却径におけるCr含有量の50%以上であった。また実施例の複合ロールは、超音波探傷により検査した結果、外層と中間層の接合部、および軸芯部と中間層の接合部に欠陥はなく健全に溶着していたことを確認できた。
(2) 組織の測定
(a) 外層におけるMC炭化物の面積率
実施例の複合ロールの外層(ロール胴部端面からロール軸方向に約100mm離れた位置)から切り出した試験片の光学顕微鏡写真から、画像解析ソフトを用いて、MC炭化物の面積率を求めた。
(b) 軸芯部(ジャーナル部)のフェライト面積率(%)
実施例の複合ロールの軸芯部(ジャーナル部)から切り出した試験片の光学顕微鏡写真から、画像解析ソフトを用いて、フェライトの面積率(%)を測定した。
(3) 特性の測定
(a) 外層の基地のビッカース硬さ(Hv)
実施例の複合ロールの外層(ロール胴部端面からロール軸方向に約100mm離れた位置にある外層)から切り出した試験片に対して、マイクロビッカース硬さ試験機により基地のビッカース硬さを測定した。
(b) 外層のショア硬さ(Hs)
実施例の複合ロールの製品初径に位置する外層の表面をショア硬さ計によりショア硬さを測定した。
(c) 外層の廃却径での圧縮残留応力(MPa)
実施例の複合ロールの外層のロール軸方向中央で、外層の廃却径まで機械加工により除去した。実施例の複合ロールの外層の廃却径(製品初径表面から深さ50mm)で、かつロール軸方向中央で外層表面の円周方向における圧縮残留応力をX線回折残留応力測定装置により測定した。
組織の測定結果を表3に示し、特性の測定結果を表4に示す。
表3及び表4から明らかなように、実施例において、軸芯部(ジャーナル部)のフェライト面積率は35%以下であった。また外層は600以上の基地のビッカース硬さ、及び150〜500MPaの範囲内の廃却径での圧縮残留応力を有していた。
(4) 性能試験
実施例の外層材を用いて、外径60mm、内径40mm、及び幅40mmのスリーブ構造の試験用ロールを作製した。耐摩耗性を評価するため、図1に示す圧延摩耗試験機を用いて、各試験用ロールに対して摩耗試験を行った。圧延摩耗試験機は、圧延機1と、圧延機1に組み込まれた試験用ロール2,3と、圧延材8を予熱する加熱炉4と、圧延材8を冷却する冷却水槽5と、圧延中に一定の張力を与える巻取機6と、張力を調節するコントローラ7とを具備する。圧延摩耗条件は以下の通りであった。圧延後、試験用ロールの表面に生じた摩耗の深さを触針式表面粗さ計により測定した。結果を表5に示す。
圧延材:SUS304
圧下率:25%
圧延速度:150 m/分
圧延材温度:900℃
圧延距離:300 m/回
ロール冷却:水冷
ロール数:4重式
表5から明らかなように、実施例の複合ロールの外層は優れた耐摩耗性を有していた。また、本発明の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールをホットストリップミルの仕上げ用ワークロールに適用した結果、外層は耐摩耗性に優れ、接合部からの剥離等の不具合はなく外層、中間層及び軸芯部の溶着が良好であった。
比較例
表6に示す組成(質量%)の外層用溶湯を、高速回転する内径840mm、長さ3100mm、及び厚さ320mmのダクタイル鋳鉄製の遠心鋳造用円筒状金型(内面に厚さ2mmのジルコンを主体とする塗型を塗布)に鋳込み、外層を遠心鋳造した。外層外周における重力倍数は120Gであった。外層用溶湯の鋳込み温度はTs+50℃〜Ts+120℃(ただし、Tsはオーステナイト晶出開始温度である。)の間であった。
外層の最内面が凝固完了する前に、外層内面に、表6に示す組成の中間層用溶湯を鋳込み、中間層を遠心鋳造した。外層外周における重力倍数は120Gであった。中間層用溶湯の鋳込み温度は1510℃であった。この遠心鋳造法により平均厚さ95mmの外層、及び平均厚さ22mmの中間層を形成した。廃却径は表面から65 mmとなるようにした。
中空状中間層が凝固した後、遠心鋳造用円筒状金型の回転を止め、円筒状金型の上下端にそれぞれ上型(長さ1900mm)及び下型(長さ1200mm)を設けて静置鋳造用鋳型を構成した。上型、中間層を有する金型及び下型からなる静置鋳造用鋳型のキャビティに、表6に示す組成の軸芯部用ダクタイル鋳鉄溶湯を鋳込み、軸芯部を静置鋳造した。軸芯部用ダクタイル鋳鉄溶湯の鋳込み温度は1410℃であった。なお、表6に示す組成は残部が実質的にFe及び不可避的不純物からなる。
軸芯部の凝固完了後、静置鋳造用鋳型を解体して、得られた複合ロールを取り出し、1050℃から焼入れ処理後、530℃の焼戻し処理を2回行った。このようにして、比較例の複合ロールを得た。
前述の実施例と同じ方法により、得られた複合ロールのロール胴部端面からロール軸方向に約100mm離れた位置から切り出した試験片に対して、中間層近傍におけるCr、Vの分布を測定した。
表7は、外層の廃却径の位置及び中間層内で軸芯部との境界部付近の位置におけるCr、Vの含有量、さらに境界部近傍におけるCr含有量/廃却径位置におけるCr含有量の比、及び境界部近傍におけるVの含有量/廃却径位置におけるVの含有量の比を示す。
比較例の遠心鋳造製圧延用複合ロールについて、実施例同様に組織及び特性の測定を行った。組織の測定結果を表3に示し、特性の測定結果を表4に示す。摩耗試験の結果を表5に示す。
比較例は、(a) 中間層内で軸芯部との境界部付近におけるVの含有量は、外層の廃却径におけるVの含有量の55%以下であり、かつ(b) 中間層内で軸芯部との境界部付近におけるCr含有量は外層の廃却径におけるCr含有量の50%以上であることを満足していなかった。比較例の複合ロールを、超音波探傷により検査した結果、得られた軸芯部と中間層の接合部に鋳造欠陥が多く存在して、両者の溶着が健全でないことが確認できた。
1・・・圧延機 2・・・試験用ロール 3・・・試験用ロール 4・・・加熱炉
5・・・冷却水槽 6・・・巻取機 7・・・コントローラ
11・・・ラック 12・・・重り 13・・・ピニオン 14・・・試験材
15・・・噛み込み材
20・・・境界部の端部

Claims (6)

  1. (a) 質量基準で、C:1.0〜3.0%、Si:0.3〜2.0%、Mn:0.1〜1.6%、Ni:0.1〜3.0%、Cr:3.0〜10.0%、Mo:2.0〜10.0%、W:0.01〜8.0%、V:4.0〜10.0%、及びNb:0.1〜6.0%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる外層と、(b)ダクタイル鋳鉄からなる軸芯部と、(c) 鋳鉄製中間層とからなり、(d) 前記中間層内で軸芯部との境界部付近におけるVの含有量は前記外層の廃却径におけるVの含有量の55%以下であり、かつ前記中間層内で軸芯部との境界部付近におけるCr含有量は前記外層の廃却径におけるCr含有量の50%以上であることを特徴とする遠心鋳造製熱間圧延用複合ロール。
  2. 請求項1に記載の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールにおいて、前記外層がさらにTi:0.003〜0.3%を含有することを特徴とする遠心鋳造製熱間圧延用複合ロール。
  3. 請求項1又は2に記載の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールにおいて、前記外層がさらに質量基準でAl:0.01〜2.0%、Zr:0.01〜0.5%、B:0.001〜0.5%、及びCo:0.1〜10.0%からなる群から選ばれた少なくとも一種を含有することを特徴とする遠心鋳造熱間圧延用複合ロール。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールにおいて、前記外層の基地硬さが600以上のビッカース硬さを有することを特徴とする遠心鋳造製熱間圧延用複合ロール。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールにおいて、前記外層のロール軸方向中央で外層表面の円周方向における圧縮残留応力が廃却径で150〜500 MPaであることを特徴とする遠心鋳造製熱間圧延用複合ロール。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の遠心鋳造製熱間圧延用複合ロールにおいて、前記軸芯部がフェライト面積率が35%以下のダクタイル鋳鉄からなることを特徴とする遠心鋳造製熱間圧延用複合ロール。
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