以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る搬送補助装置を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
一実施形態に係る搬送補助装置は、キャスタを有する移動可能なベッドを一人の搬送者(例えば、看護師)が搬送する際に使用され、一人の搬送者によるベッドの搬送を補助する。この搬送補助装置は、搬送する際にベッドに装着され、搬送するとき以外はベッドから取り外される。搬送者は、ベッドの後端側でベッドを押しながら搬送するとともに、搬送補助装置の操作を行う。したがって、従来は二人の搬送者で搬送しなければならないベッドを後端側の一人の搬送者によって搬送することができ、従来の前端側の搬送者の役割を搬送補助装置が果たす。
なお、ベッドの長手方向を前後方向とし、搬送者側を後方向とし、その他方側を前方向とする。この前後方向に直交する方向を左右方向(横方向)とし、搬送者の左手側を左方向とし、搬送者の右手側を右方向とする。ベッドの移動には、ベッドを前後方向に移動させる前進と後退がある。また、ベッドを左右方向に移動させる左横移動(左方向の真横への移動)と右横移動(右方向の真横への移動)がある。また、ベッドを旋回させる左旋回(反時計回りにその場での旋回)と右旋回(時計回りにその場での旋回)がある。
図1を参照して、一実施形態に係る搬送補助装置1について説明する。図1は、一実施形態に係る搬送補助装置1がベッドBに装着された状態を模式的に示す図である。
搬送補助装置1は、操作ハンドル2と駆動ユニット3を備えており、操作ハンドル2がベッドBの後端部に装着され、駆動ユニット3がベッドBの前端部に装着される。搬送補助装置1は、搬送者Pによって操作ハンドル2に各操作が入力されると、その各操作に応じて駆動ユニット3を駆動制御及び操舵制御する。特に、搬送補助装置1は、安全性を向上させるために、ベッドBを搬送中に搬送者Pが操作ハンドル2から片手を離すと駆動ユニット3を減速停止制御し、両手を離すと非常停止制御する。なお、この実施形態では、操作ハンドル2が特許請求の範囲に記載の操作部に相当し、駆動ユニット3が特許請求の範囲に記載の駆動部に相当する。
ベッドBについて説明する。ベッドBは、ベッド本体Baの下側にベッド高さ調整機構Bbが設けられ、ベッド高さ調整機構Bbの下部の4隅にキャスタBcが取り付けられている。ベッド高さ調整機構Bbは、従来の周知の機構であり、ベッド本体Baの高さ位置を調整できる。キャスタBcは、シャフトと車輪を有し、シャフトが鉛直軸周りに回転可能に取り付けられ、車輪がシャフトの下部に水平軸周りに回転可能に取り付けられている。ベッド本体Baには、長手方向の前端部と後端部にボードBd,Beが取り付けられている。また、ベッド本体Baの上面には、マットレスBfが設置されている。
図1に加えて図2及び図3も参照して、操作ハンドル2について説明する。図2は、操作ハンドル2であり、(a)が平面図であり、(b)が斜視図である。図3は、搬送補助装置1の制御構成を示すブロック図である。
操作ハンドル2は、ベッドBの後端のボードBeの上部に装着され、搬送者Pの左手LHと右手RHで把持される。操作ハンドル2には、搬送者PがベッドBを搬送しているときに、左手LHと右手RHによって駆動ユニット3に対する各操作が入力される。この各操作には、左手LHと右手RHによる押す力及び引く力の操作、各スイッチに対するON/OFF操作がある。
操作ハンドル2は、本体2aとクランプ部2b,2bを有する。本体2aは、略板状であり、人の左右の手の間隔を考慮した所定の長さを有している。クランプ部2b,2bは、本体2aとの間でボードBeをクランプするための略L状の部材であり、本体2aの前方側の面の左右の各端部に取り付けられている。この本体2aと左右のクランプ部2b,2bでボードBeの上方から挟み込んだ状態でクランプして、操作ハンドル2がボードBeに装着される。
操作ハンドル2の上面における左右の各端部(本体2aの上面とクランプ部2b,2bの上面とに跨る部分)には、左操作グリップ2cと右操作グリップ2dが設けられている。左操作グリップ2cは、搬送者Pの左手LHで把持され、左手LHによる操作が入力される。右操作グリップ2dは、搬送者Pの右手RHで把持され、右手RHによる操作が入力される。各操作グリップ2c,2dは、人の手で把持し易い形状かつ大きさを有している。各操作グリップ2c,2dの表面は、所定の強度かつ柔軟性を有し、例えば、ゴム、樹脂、布で形成される。なお、この実施形態では、左操作グリップ2cが特許請求の範囲に記載の左操作入力部に相当し、右操作グリップ2dが特許請求の範囲に記載の右操作入力部に相当する。
左操作グリップ2cの内部には、左操作検知センサ2eが設けられている。右操作グリップ2dの内部には、右操作検知センサ2fが設けられている。各操作検知センサ2e,2fは、搬送者Pの各手LH,RHによって各操作グリップ2c,2dに加えられる押す力及び引く力(前後方向の操作力)の大きさを検知するセンサであり、例えば、歪ゲージを用いたセンサである。検知される力の大きさは、例えば、押す力がプラス値、引く力がマイナス値で示される。
搬送者Pが左操作グリップ2cと右操作グリップ2dに同程度の押す力を加えた場合には駆動ユニット3が真っ直ぐに前進し、左操作グリップ2cよりも右操作グリップ2dに大きな押す力を加えた場合には駆動ユニット3が反時計回りに操舵しながら前進し、右操作グリップ2dよりも左操作グリップ2cに大きな押す力を加えた場合には駆動ユニット3が時計回りに操舵しながら前進する。また、搬送者Pが左操作グリップ2cと右操作グリップ2dに同程度の引く力を加えた場合には駆動ユニット3が真っ直ぐに後退し、左操作グリップ2cよりも右操作グリップ2dに大きな引く力を加えた場合には駆動ユニット3が時計回りに操舵しながら後退し、右操作グリップ2dよりも左操作グリップ2cに大きな引く力を加えた場合には駆動ユニット3が反時計回りに操舵しながら後退する。
左操作グリップ2cの内側の側部には、左移動スイッチ2gが設けられている。右操作グリップ2dの内側の側部には、右移動スイッチ2hが設けられている。各移動スイッチ2g,2hは、各操作グリップ2c,2dを把持している各手LH,RHの指(特に、親指)が届く位置に配置されている。したがって、搬送者Pは、各操作グリップ2c,2dから各手LH,RHを離さずに、各移動スイッチ2g,2hに対する操作が可能である。各移動スイッチ2g,2hは、駆動ユニット3を左右方向の真横に移動させるためのスイッチであり、従来の周知のON/OFFのメカスイッチである。左移動スイッチ2gがONの場合には駆動ユニット3が左方向の真横に移動し、右移動スイッチ2hがONの場合には駆動ユニット3が右方向の真横に移動する。なお、この実施形態では、左移動スイッチ2g及び右移動スイッチ2hが特許請求の範囲に記載の横移動操作入力部に相当する。
搬送者Pが左移動スイッチ2gをONした場合、前端部の駆動ユニット3が左方向の真横方向に移動する。このときに、後端部の搬送者Pも左方向に移動するとベッドBが左横移動し、後端部の搬送者Pが右方向に移動するとベッドBがその場で左旋回する。搬送者Pが右移動スイッチ2hをONした場合、前端部の駆動ユニット3が右方向の真横方向に移動する。このときに、後端部の搬送者Pも右方向に移動するとベッドBが右横移動し、後端部の搬送者Pが左方向に移動するとベッドBがその場で右旋回する。
左操作グリップ2cの内部には、左手検知センサ2iが設けられている。右操作グリップ2dの内部には、右手検知センサ2jが設けられている。各手検知センサ2i,2jは、搬送者Pの各手LH,RHが各操作グリップ2c,2dを把持(接触)していることを検知するセンサであり、例えば、リミットスイッチを用いたセンサである。各手検知センサ2i,2jでは、各操作グリップ2c,2dの表面に各手LH,RHが置かれて僅かな荷重がかかるとONし、荷重がかからないとOFFするON/OFF情報を出力する。なお、この実施形態では、左手検知センサ2iが特許請求の範囲に記載の左手検知部に相当し、右手検知センサ2jが特許請求の範囲に記載の右手検知部に相当する。
本体2aの内部における右側のクランプ部2bに対向する箇所には、装着検知センサ2kが設けられている。装着検知センサ2kは、操作ハンドル2がボードBeに装着されているか否かを検知するセンサであり、例えば、リミットスイッチを用いたセンサである。装着検知センサ2kでは、本体2aとクランプ部2bとの間にボードBeが挟まれた状態でクランプされて本体2aに荷重がかかるとONし、荷重がかからないとOFFするON/OFF情報を出力する。なお、この実施形態では、装着検知センサ2kが特許請求の範囲に記載の装着検知部に相当する。
本体2aの内部には、送信機(図示せず)が設けられている。送信機は、駆動ユニット3の受信機に各信号を送信するための送信機であり、無線でもよいし、有線でもよい。送信機から送信する各信号としては、左操作検知センサ2eで検知した力の大きさを示す信号、右操作検知センサ2fで検知した力の大きさを示す信号、左移動スイッチ2gのON/OFFを示す信号、右移動スイッチ2hのON/OFFを示す信号、左手検知センサ2iのON/OFFを示す信号、右手検知センサ2jのON/OFFを示す信号、装着検知センサ2kのON/OFFを示す信号等がある。
図1及び図3を参照して、駆動ユニット3について説明する。駆動ユニット3は、ベッドBの前端のボードBdの前側に装着される。駆動ユニット3は、搬送者Pによる操作ハンドル2への各操作に応じて駆動及び操舵する。また、駆動ユニット3は、安全性を向上させるために、移動中に、搬送者Pが操作ハンドル2から片手を離すと減速して停止し、操作ハンドル2から両手を離すと非常停止(急停止)する。なお、操作ハンドル2がボードBeに正常に装着されていない場合や操作ハンドル2がボードBeに正常に装着されていても、停止中に搬送者Pが操作ハンドル2から片手又は両手を離している場合、操作不可となり、駆動ユニット3は停止した状態が維持される。
駆動ユニット3は、本体3aを有している。本体3aは、所定の形状を有しており、前面側が曲面であり、後面側が平面である。本体3aは、ボードBdの高さよりも高い高さかつボードBdの幅より狭い幅であり、下記する各部材を収納できる所定の厚さを有している。本体3aの後面部には、装着アーム(図示せず)が設けられている。駆動ユニット3のベッドBへの装着時には、装着アームが本体3aの後面に対して垂直に配置され、装着アームがベッドBの本体2aの下方に入れられて、本体2aの下面に取り付けられたアタッチメントに装着される。本体3aの下端部の前側には、バンパ3bが取り付けられている。
本体3aの内部には、駆動車輪3c、操舵モータ3d、駆動モータ3e、制御装置4、バッテリ(図示せず)、受信機(図示せず)等を収納している。駆動車輪3cは、床面に接地するように、本体3aの内部の最下部に配置されている。駆動車輪3cは、水平軸周りに回転可能に取り付けられている。バッテリは、操舵モータ3d、駆動モータ3e、制御装置4等に電力を供給するためのバッテリである。受信機は、操作ハンドル2の送信機から送信された各信号を受信する受信機である。なお、この実施形態では、制御装置4が特許請求の範囲に記載の制御部に相当する。
操舵モータ3dは、シャフト(図示せず)を介して駆動車輪3cに連結されている。操舵モータ3dでは、制御装置4における操舵制御により、駆動車輪3cを鉛直軸周りに回転させる操舵トルクを発生させる。操舵モータ3dには、操舵角センサ3fが取り付けられている。操舵角センサ3fは、駆動車輪3cの操舵角(ひいては、駆動ユニット3の進行方向)を検知するためのセンサであり、例えば、エンコーダを用いたセンサである。操舵角センサ3fでは、検知した操舵角情報を制御装置4に出力する。
駆動モータ3eは、ベルト(図示せず)を介して駆動車輪3cに連結されている。駆動モータ3eでは、制御装置4における駆動制御により、駆動車輪3cを水平軸周りに回転させる駆動トルクを発生させる。駆動モータ3eには、速度センサ3gが取り付けられている。速度センサ3gは、駆動車輪3cの車輪速度(ひいては、駆動ユニット3の速度)を検知するためのセンサであり、例えば、エンコーダを用いたセンサである。速度センサ3gでは、検知した速度情報を制御装置4に出力する。
図1〜図3を参照して、制御装置4について説明する。なお、図3では各検知センサ2e,2f,2i,2j,2k、各スイッチ2g,2hと制御装置4とを直接接続して描いているが、実際には各検知センサ2e,2f,2i,2j,2k、各スイッチ2g,2hからの各信号は操作ハンドル2の送信機と駆動ユニット3の受信機を介して制御装置4に入力される。
制御装置4は、駆動ユニット3を制御するための電子制御装置であり、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read OnlyMemory]やRAM[Random Access Memory]等のメモリ、入出力回路等からなる。制御装置4では、ROMに格納されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することにより、状態判定部4a、操舵制御部4b、駆動制御部4c、減速停止制御部4d、非常停止制御部4eが構成される。制御装置4は、操作ハンドル2の各検知センサ2e,2f,2i,2j,2kや各スイッチ2g,2hの各信号に示される情報が入力されるとともに、駆動ユニット3の操舵角センサ3fや速度センサ3gの各情報が入力される。そして、制御装置4では、この入力される各情報を用いて各部4a〜4eの処理を行い、操舵モータ3d及び駆動モータ3eを制御する。
状態判定部4aについて説明する。状態判定部4aでは、駆動ユニット3の停止中に、装着検知センサ2kから出力されたON/OFF情報がONかOFFかを判定する。装着検知センサ2kからOFFが出力されている場合(操作ハンドル2がボードBeに正常に装着されていない場合)、状態判定部4aでは、各手検知センサ2i,2jのON/OFF情報に関係なく、搬送者Pによる操作ハンドル2への駆動ユニット3に対する操作を不可とし、操舵制御部4b及び駆動制御部4cの各処理を実施しない。
装着検知センサ2kからONが出力されている場合(操作ハンドル2がボードBeに正常に装着されている場合)、状態判定部4aでは、駆動ユニット3の停止中又は移動中に、左手検知センサ2iから出力されたON/OFF情報がONかOFFかを判定するとともに、右手検知センサ2jから出力されたON/OFF情報がONかOFFかを判定する。駆動ユニット3の停止中又は移動中に左手検知センサ2iからONが出力されかつ右手検知センサ2jからONが出力されている場合(搬送者Pが左右の手LH,RHで操作ハンドル2を把持している場合)、状態判定部4aでは、搬送者Pによる操作ハンドル2への駆動ユニット3に対する操作を可とし、操舵制御部4b及び駆動制御部4cの各処理を実施する。駆動ユニット3の停止中に左手検知センサ2iと右手検知センサ2jの少なくとも一方からOFFが出力されている場合(停止中に搬送者Pが左右の手LH,RHの少なくとも一方を操作ハンドル2から離した場合)、状態判定部4aでは、搬送者Pによる操作ハンドル2への駆動ユニット3に対する操作を不可とし、操舵制御部4b及び駆動制御部4cの各処理を実施しない。駆動ユニット3の移動中に左手検知センサ2iと右手検知センサ2jの一方のみからOFFが出力されている場合(移動中に搬送者Pが左右の手LH,RHの一方だけを操作ハンドル2から離した場合)、状態判定部4aでは、減速停止制御部4dの処理を実施する。駆動ユニット3の移動中に左手検知センサ2iと右手検知センサ2jの両方からOFFが出力されている場合(移動中に搬送者Pが左右の手LH,RHの両方を操作ハンドル2から離した場合)、状態判定部4aでは、非常停止制御部4eの処理を実施する。
なお、搬送者Pによる操作ハンドル2への駆動ユニット3に対する操作を不可とする場合、操舵制御部4bや駆動制御部4cでの各制御を行わないだけでもよいし、操作ハンドル2に対する操作自体もできない状態(つまり、各操作検知センサ2e,2fで力を検知しない状態や各移動スイッチ2g,2hへのON操作を受け付けない状態)としてもよい。
操舵制御部4bについて説明する。操舵制御部4bでは、左操作検知センサ2eで検知した左操作グリップ2cに加えられた力と右操作検知センサ2fで検知した右操作グリップ2dに加えられた力との差を演算する。そして、操舵制御部4bでは、この力の差がプラス値かあるいはマイナス値かによって駆動車輪3cの操舵方向(駆動ユニット3の進行方向)を決定するとともに力の差の絶対値から目標操舵角を演算し、この操舵方向で目標操舵角になるように操舵モータ3dを制御する。また、操舵制御部4bでは、左移動スイッチ2gがONされている場合、駆動車輪3cが正面方向から左回転方向(反時計回り)に90°になるように操舵モータ3dを制御する。また、操舵制御部4bでは、右移動スイッチ2hがONされている場合、駆動車輪3cが正面方向から右回転方向(時計回り)に90°になるように操舵モータ3dを制御する。この操舵制御では、操舵角センサ3fで検知した実操舵角を用いて、フィードバック制御を行う。
駆動制御部4cについて説明する。駆動制御部4cでは、左操作検知センサ2eで検知した左操作グリップ2cに加えられた力と右操作検知センサ2fで検知した右操作グリップ2dに加えられた力との和を演算する。そして、駆動制御部4cでは、この力の和がプラス値かあるいはマイナス値かによって駆動車輪3c(駆動ユニット3)の前進方向かあるいは後退方向かを決定するとともに力の和の絶対値から目標速度を演算し、この前進方向又は後退方向で目標速度になるように駆動モータ3eを制御する。この駆動制御では、速度センサ3gで検知した実速度を用いて、フィードバック制御を行う。なお、駆動モータ3eに対する制御については、減速停止制御部4d又は非常停止制御部4eの処理が実施されている場合にはその制御のほうが優先される。
減速停止制御部4dについて説明する。操作ハンドル2がボードBeに正常に装着されかつ移動中に搬送者Pが片手を操作ハンドル2から離した場合、減速停止制御部4dでは、所定の減速度を設定し、駆動車輪3h(駆動ユニット3)が所定の減速度で減速して最終的に停止するように駆動モータ3eを制御する。所定の減速度は、減速によってベッドBに横になっている人に不快感を与えない程度の減速度(大きな慣性力が作用しない減速度)である。
なお、減速中の停止する前に、離していた片手を戻して搬送者Pが両手で操作ハンドル2を把持する状態になった場合、駆動ユニット3を停止させることなく、操舵制御部4b及び駆動制御部4cの各処理を実施して、駆動ユニット3の通常の移動を再開させるようにしてもよい。
非常停止制御部4eについて説明する。操作ハンドル2がボードBeに正常に装着されかつ移動中に搬送者Pが両手を操作ハンドル2から離した場合、非常停止制御部4eでは、駆動車輪3h(駆動ユニット3)が直ちに停止するように駆動モータ3eを制御する。
図1〜図3を参照して、搬送補助装置1における動作(特に、状態判定、減速停止制御、非常停止制御)の流れについて説明する。ベッドBの後端のボードBeに操作ハンドル2が装着され、前端のボードBdに駆動ユニット3が装着される。この際、装着検知センサ2kでは、荷重がかかり、ONを出力する。この段階では、左右の手検知センサ2i,2jが未だOFFなので、制御装置4では、操作不可とし、駆動ユニット3に対する各制御を実施しない。
なお、ボードBeに操作ハンドル2が正常に装着されるまでは、装着検知センサ2kでは、荷重がかからないので、OFFを出力する。この場合、制御装置4では、操作不可とし、駆動ユニット3に対する各制御を実施しない。ちなみに、操作ハンドル2がベッドBに正常に装着されていない場合、搬送者PがベッドBを操作ハンドル2を介して搬送することができないし、また、搬送者Pが操作ハンドル2に対して正常な操作ができない。
操作ハンドル2及び駆動ユニット3をベッドBに装着すると、搬送者Pは、左右の手LH,RHで操作ハンドル2の左右の操作グリップ2c,2dを把持する。この際、左右の手検知センサ2i,2jでは、荷重がかかり、ONをそれぞれ出力する。この場合、制御装置4では、操作可能とし、駆動ユニット3に対する各制御を実施する。
なお、左右の手LH,RHで左右の操作グリップ2c,2dを把持するまでは、各手検知センサ2i,2jでは、荷重がかからないので、OFFをそれぞれ出力する。この場合、制御装置4では、装着検知センサ2kがONの場合でも、操作不可とし、駆動ユニット3に対する各制御を実施しない。ちなみに、左右の手LH,RHで左右の操作グリップ2c,2dが把持されていないと、左右の手LH,RHによる正常な操作ができない。
搬送者Pによる左右の操作グリップ2c,2dへの各操作や各移動スイッチ2g,2hへの各操作に応じて、制御装置4では、操舵制御及び駆動制御を行う。この各制御により操舵モータ3dと駆動モータ3eが作動すると、駆動ユニット3が操舵し、所定の速度で駆動する。これによって、ベッドBの後端側の搬送者Pと前端側の駆動ユニット3によりベッドBを搬送できる。
特に、搬送者Pが左右の手LH,RHの一方を操作ハンドル2の左右の操作グリップ2c,2dの一方から離した場合、左右の手検知センサ2i,2jの一方では、荷重がかからなくなり、OFFを出力する。この場合、制御装置4では、所定の減速度を設定し、所定の減速度で減速し、停止するまで駆動モータ3eを制御する。この制御により、駆動モータ3eでは、所定の減速度になるような駆動トルクを発生し、最終的に駆動トルクの発生を停止する。これによって、駆動ユニット3が所定の減速度で速度が0km/hになるまで減速し、停止する。このように、減速しながらベッドVが緩やかに停止するので、ベッドB自体及びベッドBに横になっている人には大きな慣性力が作用せず、ベッドBに横になっている人に不快感を与えない。なお、搬送者Pが離していた一方の手を戻し、左右の操作グリップ2c,2dの一方を把持すると、左右の手検知センサ2i,2jの両方で、荷重がかかり、ONをそれぞれ出力する。この場合、制御装置4では、操作可能とし、駆動ユニット3に対する各制御を再開する。
また、搬送者Pが左右の手LH,RHの両方を操作ハンドル2の左右の操作グリップ2c,2dから離した場合、左右の手検知センサ2i,2jでは、荷重がかからなくなり、OFFをそれぞれ出力する。この場合、制御装置4では、駆動車輪3cが停止するように駆動モータ3eを制御する。この制御により、駆動モータ3eでは、駆動トルクの発生を直ちに停止する。これによって、駆動ユニット3が直ちに停止する。なお、搬送者Pが離していた両方の手LH,RHを戻し、左右の操作グリップ2c,2dをそれぞれ把持すると、左右の手検知センサ2i,2jの両方で、荷重がかかり、ONをそれぞれ出力する。この場合、制御装置4では、操作可能とし、駆動ユニット3に対する各制御を再開する。
この搬送補助装置1によれば、搬送者Pが操作ハンドル2の左右の操作グリップ2c,2dから片手を離した場合、駆動ユニット3を所定の減速度で減速して停止させるので、ベッドBの急減速を防止できる。そのため、ベッドBに横になっている人が不快感を受けない。また、搬送補助装置1によれば、搬送者Pが操作ハンドル2の左右の操作グリップ2c,2dから両手を離した場合、駆動ユニット3を直ちに停止させるので、安全性を確保できる。
また、搬送補助装置1によれば、操作ハンドル2がベッドBに正常に装着されていない場合、操作ハンドル2への駆動ユニット3に対する操作を不可とし、駆動ユニット3に対する各制御を実施しない。そのため、駆動ユニット3が移動することはなく停止した状態を維持する。
また、搬送補助装置1によれば、各移動スイッチ2g,2hが各操作グリップ2c,2dで操作する搬送者Pの各手LH,RHの指(特に、親指)が届く範囲内に配置されているので、搬送者Pが各移動スイッチ2g,2hに対して操作する場合に搬送者Pが各操作グリップ2c,2dから手を離さずに操作でき。したがって、搬送者Pは、減速停止や非常停止させることなく、移動スイッチ2g,2hを操作できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、上記実施形態では搬送の対象物としてキャスタを有するベッドに適用したが、キャスタを有する荷台(例えば、食事、医療器具、物品等を積載して搬送し得るもの)、キャスタを有する機器(例えば、医療機器)等の他のものでよい。
また、上記実施形態では手検知センサとしてリミットスイッチを適用したが、操作グリップに手が接触していることを検知できるものであれば、光センサ、静電センサ等の他の検知センサを適用してもよい。また、上記実施形態では操作検知センサと手検知センサを別々の構成としたが、2つのセンサの機能を有するセンサで構成してもよい。また、上記実施形態では装着検知センサとしてリミットスイッチを適用したが、操作ハンドルが装着されていることを検知できるものであれば、光センサ、静電センサ等の他の検知センサを適用してもよい。