JP2015204156A - 燃料電池システム、およびその制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池を長寿命化し、高効率で運転する。
【解決手段】(a)1以上のセルを含む燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、(b)燃料電池の出力電圧PVを検出する工程、(c)出力電圧PVが第1基準値V1以下であれば、燃料電池の運転を停止し、設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定して、燃料電池を起動する工程、(d)工程(c)で燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、(e)工程(d)で算出した平均値APVを第1基準値V1および第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、および(f)工程(e)の比較結果で平均値APVが第2基準値V2以上であれば、燃料電池の運転を停止し、設定値A(k)を電流値A(i)に再設定して、燃料電池を起動する工程、を具備する燃料電池システムの制御方法。
【選択図】図3
【解決手段】(a)1以上のセルを含む燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、(b)燃料電池の出力電圧PVを検出する工程、(c)出力電圧PVが第1基準値V1以下であれば、燃料電池の運転を停止し、設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定して、燃料電池を起動する工程、(d)工程(c)で燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、(e)工程(d)で算出した平均値APVを第1基準値V1および第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、および(f)工程(e)の比較結果で平均値APVが第2基準値V2以上であれば、燃料電池の運転を停止し、設定値A(k)を電流値A(i)に再設定して、燃料電池を起動する工程、を具備する燃料電池システムの制御方法。
【選択図】図3
Description
本発明は、燃料電池システムに関し、特に発電装置として好適に使用することができる燃料電池システム、およびその制御方法に関する。
携帯電話、ノートPC、デジタルカメラ等のモバイル機器の高性能化に伴い、その電源として、高分子電解質膜を用いた高分子電解質型燃料電池が期待されている。高分子電解質型燃料電池の中でも、メタノールなどの液体燃料を直接アノードへ供給する直接酸化型燃料電池は、小型軽量化に適している。このため、モバイル機器用電源やポータブル発電機として開発が進められている。
燃料電池は、発電効率が高く、一般的な発電機に比べて騒音や振動も少ない。このため、静音性が求められる民生用の中型の電源装置のエネルギ源としても期待されている。例えば、アウトドア・アクティビティ用の電源装置に燃料電池を使用することが検討されている。燃料電池は、発電効率が高いことから、携行すべき燃料量を最小限度に抑えることができる。また、発電時の騒音が小さいことから、住宅地に近い地域で夜間に使用することもできる。
しかしながら、燃料電池は、定電流制御や定電力制御で連続運転すると、徐々に電圧が低下する傾向が見られる。その要因は様々であるが(特許文献1参照)、その一つとして、燃料電池内の酸化剤流路(空気流路)に発電による生成水が溜まることで、流路抵抗が大きくなり、酸化剤供給量が低下することが考えられる。したがって、燃料電池は、発電開始からある程度の時間が経過したときに一旦運転を止めて、酸化剤流路の目詰まりなどを解消するリセット動作を実行することが望ましい。
特許文献1では、燃料電池の連続運転中に出力電圧が低下したときに、燃料電池の出力電流を小さくすることで、出力の回復を図っている。しかしながら、特許文献1が提案する方法は、燃料電池の出力電流を小さくすることで出力が復帰することを前提としている。このため、出力が復帰しない場合には、特許文献1の方法では、燃料電池の運転を継続できないか、または、セルの劣化を促進してしまうことがあり得る。
本発明の一局面は、
(a)1以上のセルを含む燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、iおよびnは2以上であり、A(k)<A(k+1)である、
(b)前記燃料電池の出力電圧PVを検出する工程、
(c)前記出力電圧PVが第1基準値V1以下であれば、前記燃料電池の運転を停止し、前記設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定して、前記燃料電池を起動する工程、
(d)前記工程(c)で前記燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の前記出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(e)前記工程(d)で算出した前記平均値APVを前記第1基準値V1および前記第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、および
(f)前記工程(e)の比較結果で前記平均値APVが前記第2基準値V2以上であれば、前記燃料電池の運転を停止し、前記設定値A(k)を前記電流値A(i)に再設定して、前記燃料電池を起動する工程、を具備する燃料電池システムの制御方法に関する。
(a)1以上のセルを含む燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、iおよびnは2以上であり、A(k)<A(k+1)である、
(b)前記燃料電池の出力電圧PVを検出する工程、
(c)前記出力電圧PVが第1基準値V1以下であれば、前記燃料電池の運転を停止し、前記設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定して、前記燃料電池を起動する工程、
(d)前記工程(c)で前記燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の前記出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(e)前記工程(d)で算出した前記平均値APVを前記第1基準値V1および前記第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、および
(f)前記工程(e)の比較結果で前記平均値APVが前記第2基準値V2以上であれば、前記燃料電池の運転を停止し、前記設定値A(k)を前記電流値A(i)に再設定して、前記燃料電池を起動する工程、を具備する燃料電池システムの制御方法に関する。
本発明の他の局面は、
(a)1以上のセルを含む燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、nは3以上であり、iは2以上且つ(n−1)以下であり、A(k)<A(k+1)である、
(b)前記燃料電池の出力電圧PVを検出する工程、
(c)前記燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の前記出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(d)前記第1期間が終了してから第2時間TM2が経過するまでの第2期間、前記設定値A(k)を維持したまま前記燃料電池の運転を継続し、その後、前記燃料電池の運転を停止する工程、
(e)前記工程(c)で算出した前記平均値APVを第1基準値V1および前記第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、
(f)前記工程(e)の比較結果で、
前記平均値APVが前記第2基準値V2以上であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i+1)に設定し、
前記平均値APVが前記第1基準値V1以下であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定し、
前記平均値APVが前記第1基準値V1よりも大きく且つ前記第2基準値V2よりも小さければ、前記第2期間の終了後も前記設定値A(k)を前記電流値A(i)のまま維持する工程、および
(g)前記工程(f)で設定された前記設定値A(k)により、前記工程(d)で運転が停止された前記燃料電池を起動する工程、を具備する燃料電池システムの制御方法に関する。
(a)1以上のセルを含む燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、nは3以上であり、iは2以上且つ(n−1)以下であり、A(k)<A(k+1)である、
(b)前記燃料電池の出力電圧PVを検出する工程、
(c)前記燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の前記出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(d)前記第1期間が終了してから第2時間TM2が経過するまでの第2期間、前記設定値A(k)を維持したまま前記燃料電池の運転を継続し、その後、前記燃料電池の運転を停止する工程、
(e)前記工程(c)で算出した前記平均値APVを第1基準値V1および前記第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、
(f)前記工程(e)の比較結果で、
前記平均値APVが前記第2基準値V2以上であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i+1)に設定し、
前記平均値APVが前記第1基準値V1以下であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定し、
前記平均値APVが前記第1基準値V1よりも大きく且つ前記第2基準値V2よりも小さければ、前記第2期間の終了後も前記設定値A(k)を前記電流値A(i)のまま維持する工程、および
(g)前記工程(f)で設定された前記設定値A(k)により、前記工程(d)で運転が停止された前記燃料電池を起動する工程、を具備する燃料電池システムの制御方法に関する。
本発明のさらに他の局面は、
1以上のセルを含む燃料電池と、
前記燃料電池に燃料を供給する燃料供給部と、
前記燃料電池に酸化剤を供給する酸化剤供給部と、
前記燃料電池の出力電圧PIを検出する電流センサと、
前記燃料電池の出力電圧PVを検出する電圧センサと、
前記出力電流PIおよび前記出力電圧PVを調節するように、前記出力電圧PVを変圧して、前記燃料電池の発電電力を出力する変圧部と、
前記燃料供給部、前記酸化剤供給部および前記変圧部を制御する制御部と、を具備し、
前記制御部は、
(a)前記燃料電池を、前記出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、iおよびnは2以上であり、A(k)<A(k+1)であり、
(b)前記燃料電池の前記出力電圧PVを前記電圧センサにより検出する工程、
(c)前記出力電圧PVが第1基準値V1以下であれば、前記燃料電池の運転を停止し、前記設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定して、前記燃料電池を起動する工程、
(d)前記工程(c)で前記燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の前記出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(e)前記工程(d)で算出した前記平均値APVを前記第1基準値V1および前記第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、および
(f)前記工程(e)の比較結果で前記平均値APVが前記第2基準値V2以上であれば、前記燃料電池の運転を停止し、前記設定値A(k)を前記電流値A(i)に再設定して、前記燃料電池を起動する工程、を含む処理を行う、燃料電池システムに関する。
1以上のセルを含む燃料電池と、
前記燃料電池に燃料を供給する燃料供給部と、
前記燃料電池に酸化剤を供給する酸化剤供給部と、
前記燃料電池の出力電圧PIを検出する電流センサと、
前記燃料電池の出力電圧PVを検出する電圧センサと、
前記出力電流PIおよび前記出力電圧PVを調節するように、前記出力電圧PVを変圧して、前記燃料電池の発電電力を出力する変圧部と、
前記燃料供給部、前記酸化剤供給部および前記変圧部を制御する制御部と、を具備し、
前記制御部は、
(a)前記燃料電池を、前記出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、iおよびnは2以上であり、A(k)<A(k+1)であり、
(b)前記燃料電池の前記出力電圧PVを前記電圧センサにより検出する工程、
(c)前記出力電圧PVが第1基準値V1以下であれば、前記燃料電池の運転を停止し、前記設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定して、前記燃料電池を起動する工程、
(d)前記工程(c)で前記燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の前記出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(e)前記工程(d)で算出した前記平均値APVを前記第1基準値V1および前記第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、および
(f)前記工程(e)の比較結果で前記平均値APVが前記第2基準値V2以上であれば、前記燃料電池の運転を停止し、前記設定値A(k)を前記電流値A(i)に再設定して、前記燃料電池を起動する工程、を含む処理を行う、燃料電池システムに関する。
本発明のさらに他の局面は、
1以上のセルを含む燃料電池と、
前記燃料電池に燃料を供給する燃料供給部と、
前記燃料電池に酸化剤を供給する酸化剤供給部と、
前記燃料電池の出力電圧PIを検出する電流センサと、
前記燃料電池の出力電圧PVを検出する電圧センサと、
前記出力電流PIおよび前記出力電圧PVを調節するように、前記出力電圧PVを変圧して、前記燃料電池の発電電力を出力する変圧部と、
前記燃料供給部、前記酸化剤供給部および前記変圧部を制御する制御部と、を具備し、
前記制御部は、
(a)前記燃料電池を、前記出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、nは3以上であり、iは2以上且つ(n−1)以下であり、A(k)<A(k+1)である、
(b)前記燃料電池の前記出力電圧PVを前記電圧センサにより検出する工程、
(c)前記燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の前記出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(d)前記第1期間が終了してから第2時間TM2が経過するまでの第2期間、前記設定値A(k)を維持したまま前記燃料電池の運転を継続し、その後、前記燃料電池の運転を停止する工程、
(e)前記工程(c)で算出した前記平均値APVを第1基準値V1および前記第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、
(f)前記工程(e)の比較結果で、
前記平均値APVが前記第2基準値V2以上であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i+1)に設定し、
前記平均値APVが前記第1基準値V1以下であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定し、
前記平均値APVが前記第1基準値V1よりも大きく且つ前記第2基準値V2よりも小さければ、前記第2期間の終了後も前記設定値A(k)を前記電流値A(i)のまま維持する工程、および
(g)前記工程(f)で設定された前記設定値A(k)により、前記工程(d)で運転が停止された前記燃料電池を起動する工程、を含む処理を行う、燃料電池システムに関する。
1以上のセルを含む燃料電池と、
前記燃料電池に燃料を供給する燃料供給部と、
前記燃料電池に酸化剤を供給する酸化剤供給部と、
前記燃料電池の出力電圧PIを検出する電流センサと、
前記燃料電池の出力電圧PVを検出する電圧センサと、
前記出力電流PIおよび前記出力電圧PVを調節するように、前記出力電圧PVを変圧して、前記燃料電池の発電電力を出力する変圧部と、
前記燃料供給部、前記酸化剤供給部および前記変圧部を制御する制御部と、を具備し、
前記制御部は、
(a)前記燃料電池を、前記出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、nは3以上であり、iは2以上且つ(n−1)以下であり、A(k)<A(k+1)である、
(b)前記燃料電池の前記出力電圧PVを前記電圧センサにより検出する工程、
(c)前記燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の前記出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(d)前記第1期間が終了してから第2時間TM2が経過するまでの第2期間、前記設定値A(k)を維持したまま前記燃料電池の運転を継続し、その後、前記燃料電池の運転を停止する工程、
(e)前記工程(c)で算出した前記平均値APVを第1基準値V1および前記第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、
(f)前記工程(e)の比較結果で、
前記平均値APVが前記第2基準値V2以上であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i+1)に設定し、
前記平均値APVが前記第1基準値V1以下であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定し、
前記平均値APVが前記第1基準値V1よりも大きく且つ前記第2基準値V2よりも小さければ、前記第2期間の終了後も前記設定値A(k)を前記電流値A(i)のまま維持する工程、および
(g)前記工程(f)で設定された前記設定値A(k)により、前記工程(d)で運転が停止された前記燃料電池を起動する工程、を含む処理を行う、燃料電池システムに関する。
本発明によれば、例えば燃料電池が劣化して出力が低下したときに、十分な出力電圧が得られるように劣化状態に応じて出力電流を低下させることで、劣化を促進することなく燃料電池の運転を継続することができる。これにより、燃料電池を長寿命化、ないしは、その寿命を延命することができる。また、燃料電池の出力低下が、流路の目詰まりなどのイレギュラーな原因による場合にも、その原因が解消されて出力が回復されると、一旦低下させた出力電流が元に戻される。これにより、出力電流が燃料電池のその時点の本来の発電能力に応じて適切に設定される。よって、燃料電池の能力を最大限に発揮させて、高効率で燃料電池を運転することができる。
本発明の一形態は、図5に示すように、1以上のセルを含む燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動(時刻t0)する工程(a)を具備する燃料電池システムの制御方法に関する。ただしk=1、2、…、i、…、nであり、iおよびnは2以上であり、A(k)<A(k+1)である。
本形態においては、燃料電池の出力電圧PVを検出する工程(b)と、出力電圧PVが第1基準値V1以下であれば(時刻t1)、燃料電池の運転を停止し、設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定して、燃料電池を起動(時刻t2)する工程(c)とが実行される。
さらに、本形態においては、工程(c)で燃料電池を起動してから所定時間(第1時間TM1)が経過するまでの第1期間の出力電圧PVの平均値APVを算出する工程(d)と、工程(d)で算出した平均値APVを第1基準値V1および第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程(e)とが実行される。そして、工程(e)の比較結果で平均値APVが第2基準値V2以上であれば、燃料電池の運転を停止(時刻t3)し、設定値A(k)を電流値A(i)に再設定して、燃料電池を起動(時刻t4)する工程(f)を実行する。
本形態においては、基本的に、燃料電池の出力電流PIを一定にして燃料電池を運転する。これにより、燃料電池の運転状態を安定化することができ、発電効率を向上させることができる。しかしながら、燃料電池を長時間連続運転すると、燃料電池の出力は低下する傾向がある。これにより、燃料電池の出力電圧PVが低下する。出力電圧PVの低下量が大きくなると、燃料電池の発電効率も低下する。また、出力電圧PVが大きく低下した状態で燃料電池の運転を継続すると、燃料電池の劣化が促進されることも考えられる。
そこで、図5に示すように、出力電圧PVが第1基準値V1以下になると(時刻t1)、燃料電池の運転を一旦停止する。燃料電池の運転を停止してから所定時間(例えば第3時間TM3)が経過すると(時刻t2)、運転を再開する。このとき、出力電圧PVの移動平均値(例えば1秒毎に検出した1分間の検出結果の平均値)を第1基準値V1と比較し、その平均値が第1基準値V1以下であるときに燃料電池の運転を一旦停止するようにしてもよい。
燃料電池の運転を所定時間だけ停止することで、例えば劣化していない燃料電池であれば、出力を回復することができる(リフレッシュ処理)。このとき、必須ではないが、燃料電池の運転を停止した後、酸化剤流路(空気流路)の目詰まりを解消するための処理(例えば多量の空気を送る)などを行うことができる。
そして、工程(c)で燃料電池の運転を再開するとき、出力電流PIの設定値A(k)(初期値は電流値A(i))は、一段階小さい電流値A(i−1)に変更される。つまり、出力電流PIを前回の運転時よりも一段階小さい一定の電流値に設定して、運転を再開する。これにより、例えば燃料電池の劣化に起因して低下した出力電圧PVを大きくすることができる。よって、低すぎる出力電圧PVで燃料電池を運転することにより劣化が促進されるのを防止することができ、燃料電池を長寿命化することができる。
さらに、本形態では、運転を再開(時刻t2またはt4)してから所定時間(第1時間TM1)が経過するまでの第1期間(t2〜t3、t4〜t5)における出力電圧PVの平均値APVが算出され、その平均値APVが第1基準値V1および第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2(V2>V1)と比較される(工程(e))。
工程(e)の比較結果で平均値APVが第2基準値V2以上であれば、燃料電池の運転を停止する(時刻t3)。そして、燃料電池の運転を停止してから所定時間(例えば上記第3時間TM3)が経過すると、運転を再開する(時刻t4)。このとき、出力電流PIの設定値A(k)を元の値(電流値A(i))に戻して運転を再開する。これにより、燃料電池の出力の低下が、燃料電池の運転を所定時間停止することで回復するようなイレギュラー、ないしは一時的なものである場合には、出力電流PIの設定値A(k)を元の適正な値に戻すことができる。したがって、燃料電池の能力を最大限に発揮させるように出力電流PIを設定することができる。これにより、燃料電池の最大出力を得ることができ、高効率で発電させることができる。
さらに、工程(e)の比較結果で平均値APVが第1基準値V1よりも大きく且つ第2基準値V2よりも小さければ、設定値A(i−1)に設定したままで燃料電池の運転を継続(図5の時刻t5)することが好ましい。これにより、燃料電池を最適な出力電圧PVで運転することができる。
また、iおよびnが3以上であり、工程(e)の比較結果で平均値APVが第1基準値V1以下であれば、再び燃料電池の運転を停止し、設定値A(k)を電流値A(i−1)よりもさらに小さい電流値A(i−2)に設定して、燃料電池を起動することが好ましい。本形態では、出力電流PIの設定値として、互いに異なるn個(2個以上)の電流値が用意されている(図4参照)。設定値A(k)を3つ以上用意しておくことで、設定値A(k)を小さくする手順を2回以上繰り返し実行することができる。個数nは多いほど好ましく、例えば4以上であることが好ましく、5以上であることがさらに好ましい。
数「n」を大きくすることで、燃料電池の劣化状態に応じて出力電流PIをきめ細かに調節することができる。したがって、燃料電池の劣化状態に応じた最適な出力電流PIで燃料電池を運転することができる。このように、設定値として3個以上の電流値を用意しておくことで、燃料電池の劣化の進行度に応じて出力(電流)を低下させていくことができ、燃料電池を長寿命化または延命することができる。また、燃料電池を可能な限り高効率で発電させることもできる。
第1基準値V1は1セルあたりで0.25〜0.375V(ボルト)に設定することが好ましく、第2基準値V2は1セルあたりで0.35〜0.45Vに設定することが好ましい。第1基準値V1と第2基準値V2は、燃料電池の出力を最大にする出力電圧PVを基準に決めることができる。燃料電池が個数「N」のセル(後述のMEA)を含む場合には、燃料電池全体に対して、第1基準値V1は、(0.25×N〜0.375×N)Vに設定され、第2基準値V2は、(0.35×N〜0.45×N)Vに設定される。
図8に、劣化していない燃料電池の電圧−電流特性(V−I特性)の一例を示す。同図に示すように、燃料電池は、最大出力PWmaxが得られる出力電圧と出力電流(MFE、MFI)が決まっている。その発電効率も、出力電圧が電圧値MFEであるときか、その近傍の電圧であるときに最大となるのが一般的である。そして、その傾向は、ある程度劣化した燃料電池においても同様である。したがって、V1とV2を、電圧値MFEを基準に設定することで、燃料電池の劣化状態によらず容易に最大効率を得ることができる。つまり、V1とV2は、出力電圧PVがV1とV2の間にあるとき(V1<PV<V2)に、燃料電池の発電能力を最大限に発揮させることができるように設定される。
第1基準値V1と第2基準値V2の差、V2−V1は、1セルあたりで0.1〜0.125Vであることが好ましい。第1時間TM1は、燃料電池の出力が長時間の連続運転により低下することの影響を排除できる程度であればよく、かつ運転状態が不安定である起動直後の出力変動の影響を十分に緩和できる程度に長い時間、例えば1〜60分に設定される。
なお、第1基準値V1および第2基準値V2は、上記範囲内の一定の値とすることもできるし、上記範囲内で燃料電池の総稼働時間および/または出力電流PIの設定値に応じて変更することもできる。つまり、燃料電池の劣化状態に応じて、第1基準値V1および第2基準値V2を上記範囲内で変えることができる。このとき、劣化が進行しているほど(総稼働時間が長いほど、および/または、出力電流PIの設定値が小さいほど)、第1基準値V1および第2基準値V2を小さい値に設定することができる。同様に、後述の第3基準値V3および第4基準値V4も、後述の範囲内の一定の値とすることもできるし、その範囲内で燃料電池の総稼働時間および/または出力電流PIの設定値に応じて変更することができる。
上述した通り、工程(c)では、燃料電池をリフレッシュさせるのに十分な第3時間TM3だけ燃料電池の運転を停止することが好ましい。第3時間TM3は、10秒〜5分の範囲内で設定することができる。なお、第3時間TM3は、出力電圧PVが例えば1セルあたりで0.18〜0.22Vの第4基準値V4以下になるような時間に設定することが好ましい。
燃料電池の運転を停止するとき、燃料電池に燃料を供給するポンプ(例えば後述の燃料ポンプ26)や、燃料電池に酸化剤を供給するポンプ(例えば後述の空気ポンプ24)を停止する。このとき、燃料電池の出力電圧PVは、燃料電池の運転を停止したときから低下し始める。出力電圧PVが第4基準値V4以下になるまで燃料や酸化剤の供給を停止することで、劣化していない燃料電池であれば、出力を回復することができる(リフレッシュ処理)。
したがって、第3時間TM3は、環境温度に応じて、上記範囲内で変えることができる。環境温度が高ければ、残存燃料が速やかに消費されるために、第3時間TM3を相対的に短い時間に設定することができる。反対に、環境温度が低ければ、残存燃料の消費が緩やかになるので、第3時間TM3を相対的に長い時間に設定することが好ましい。
また、上述したことから明らかなように、工程(c)で燃料電池の運転を停止する期間を時間により決めるのではなく、出力電圧PVの検出結果に基づいて決めることもできる。つまり、出力電圧PVが第4基準値V4以下にまで低下したときに、燃料電池の運転を再開するようにしてもよい。なお、燃料電池が個数「N」のセルを含む場合には、燃料電池全体に対して、第4基準値V4は、(0.18×N〜0.22×N)Vに設定される。
また、本形態では、燃料電池に対する燃料供給量FQおよび酸化剤供給量AQの少なくとも一方を、出力電流PIの設定値A(k)に応じて設定することが好ましい。出力電流PIは、消費燃料量から燃料のクロスオーバー量を除いた、実際の消費燃料量に応じて増減する。したがって、出力電流PIに応じて燃料供給量FQを設定することで、実際の消費燃料量に対して適切な量の燃料を燃料電池に送ることができる。また、出力電流PIに応じて酸化剤供給量AQを設定することで、実際の消費燃料量に対して適切な量の酸化剤(例えば空気)を燃料電池に送ることができる。
燃料供給量FQや酸化剤供給量AQを無用に大きくすると、燃料ポンプやエアポンプの単位時間当たりの吐出量が無用に増大する。それにより、燃料ポンプやエアポンプの電力消費量が増大する。燃料供給量FQおよび酸化剤供給量AQの少なくとも一方を、出力電流PIに応じて設定することで、燃料ポンプやエアポンプの電力消費量が徒に増大するのを抑制することができ、システム全体の発電効率を向上させることができる。燃料供給量FQおよび酸化剤供給量AQは、好ましくは両方を出力電流PIに応じて設定する。
本発明の他の形態は、図6に示すように、(a)1以上のセルを含む燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動(時刻t11)する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、nは3以上であり、iは2以上且つ(n−1)以下であり、A(k)<A(k+1)である、(b)燃料電池の出力電圧PVを検出する工程、(c)燃料電池を起動してから所定時間(第1時間TM1)が経過(時刻t12)するまでの第1期間の出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、および(d)第1期間が終了してから所定時間(第2時間TM2)が経過(時刻t13)するまでの第2期間、設定値A(k)を電流値A(i)に維持したまま燃料電池の運転を継続し、その後、燃料電池の運転を停止する工程と、を具備する。
本形態の制御方法では、さらに、工程(c)で算出した前記平均値APVを第1基準値V1および第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程(e)を実行する。そして、工程(e)の比較結果で、平均値APVが第2基準値V2以上であれば、第2期間の終了後に設定値A(k)を電流値A(i+1)に設定し、平均値APVが第1基準値V1以下であれば、第2期間の終了後に設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定し、平均値APVが第1基準値V1よりも大きく且つ第2基準値V2よりも小さければ、第2期間の終了後も設定値A(k)を電流値A(i)のまま維持する工程(f)を実行する。そして、工程(f)で設定された設定値A(k)により、工程(d)で運転が停止された燃料電池を起動(時刻t14)する工程(g)を実行する。
以上のように、燃料電池の運転を一定期間(第1期間+第2期間)継続することで、燃料電池を高効率で発電することができる。第1期間に相当する第1時間TM1は、上述した理由により1〜60分であることが好ましい。第2期間に相当する第2時間TM2は、燃料電池の運転を継続することにより得られるメリット(例えば運転状態の安定により良好な発電効率が得られる)が、燃料電池の出力が連続運転により低下することによるデメリット(燃料電池の劣化が促進される、発電効率が極端に低下する)を下回らない範囲内で適宜に設定される。第2時間TM2は1〜120分であることが好ましい。なお、ユーザーの操作によりシステムのメインスイッチがオフにされた場合などには、当然に、第2時間TM2が経過したか否かにかかわらず、燃料電池の運転は停止される。
また、本実施形態においては、燃料電池を起動した直後の第1期間に検出される出力電圧PVの平均値APVに基づいて、次に燃料電池を起動するときの出力電流PIの設定値が決められる。上述したとおり、燃料電池は、連続運転により出力が低下する傾向がある。このため、連続運転により出力が低下していない起動直後の平均的な出力電圧PVに基づいて、次に燃料電池を起動するときの出力電流PIを設定することで、その時点の燃料電池が有する本来の発電能力を十分に発揮させることができるように、最適な出力電流PIで燃料電池を運転することができる。
ここで、工程(e)の比較結果で、平均値APVが第2基準値V2以上であれば(APV≧V2)、その時点の燃料電池が有する発電能力に対して、出力電流PIが低すぎることになる。このため、出力電流PIの設定値A(k)を一段階大きな電流値A(i+1)に変更する。これにより、イレギュラーな原因による一時的な出力低下が解消されたような場合には、一旦低下させた設定値A(k)を元に戻すことができる。これにより、燃料電池の出力を燃料電池の本来の能力の範囲で最大にすることができ、高効率で燃料電池を運転することができる。
反対に、図6の時刻t11〜t12に示すように、工程(e)の比較結果で、平均値APVがV1以下であれば(APV≦V1)、その時点の燃料電池が有する発電能力に対して、出力電流PIが大きすぎることになる。このため、設定値A(k)を一段階小さな電流値A(i−1)に変更し、燃料電池の運転を再開する。
これにより、燃料電池の劣化により出力が低下し、出力電圧PVが低下したときに、出力電圧PVを増大させることができ、燃料電池の劣化が促進されるのを防止することができる。図6に示す例では、時刻t14〜t15の第1期間の平均値APVもV1以下である。このため、次に燃料電池の運転が停止され、その運転が再開されるとき(時刻t16)の設定値A(k)はさらに小さい電流値(例えばA(i−2))に設定されている。このように、設定値の個数(値「n」)を3以上とすることで、燃料電池の劣化状態に応じて、出力電圧PIの設定値をきめ細かに調節することができる。したがって、燃料電池の幅広い劣化状態に対応して、適切に出力電流PIを設定して、劣化が促進されるのを抑えることができる。
そして、工程(e)の比較結果で、平均値APVが第1基準値V1よりも大きく、かつ第2基準値V2よりも小さければ(V1<APV<V2)、その時点の燃料電池が有する発電能力に対して、出力電流PIが適切に設定されていることになる。このため、設定値A(k)を電流値A(i)に維持したまま燃料電池を再起動する。
さらに、図7に示すように、本形態には、nが4以上であり、iが3以上且つ(n−1)以下であるときに、出力電圧PVを第1基準値V1よりも小さい第3基準値V3と比較する工程(h)、および工程(h)の比較結果で出力電圧PVが第3基準値V3以下であるときに(時刻t21)、燃料電池の運転を停止する工程(j)と、を含ませることができる。
そして、工程(j)で燃料電池の運転を停止したときに、設定値A(k)が電流値A(i+1)に設定されていれば設定値A(k)を電流値A(i)に設定し、設定値A(k)が電流値A(i)に設定されていれば設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定し、設定値A(k)が電流値A(i−1)に設定されていれば設定値A(k)を電流値A(i−2)に設定する工程(m)を実行する。そして、工程(m)で設定された設定値A(k)により燃料電池を起動(時刻t22)する工程(o)を実行する。
以上の処理によれば、燃料電池の出力が極度に低下した場合には、燃料電池を起動してからの経過時間によらずに燃料電池の運転が即時に停止される。これにより、上記の出力の極度の低下が例えば流路の目詰まりなどの一時的な原因で発生したときには、その原因を速やかに取り除くことで、速やかに、燃料電池が有する本来の能力を発揮できる状態にすることができる。また、発電効率の低下を防止できる。また、出力低下が燃料電池の劣化による場合には、出力電流PIの設定値を速やかに劣化状態に応じた適切な設定値に切り替えることができる。これにより、燃料電池のさらなる劣化を抑えることができる。なお、工程(h)における出力電圧PVの検出結果と第3基準値V3との比較は、燃料電池の運転状態が不安定な起動直後(例えば起動後の1分間)は行わず、燃料電池の運転状態がある程度安定してから行うことが好ましい。
また、図7に示す例では、燃料電池が再起動された直後の時刻t22〜t23の第1期間の平均値APVはV1〜V2の値である。このため、次に燃料電池の運転が停止され、その運転が再開されるとき(時刻t24)の設定値A(k)は電流値A(i−1)のまま維持されている。
ここで、上述した理由により、第1基準値V1は1セルあたりで0.25〜0.375Vであり、第2基準値V2が1セルあたりで0.35〜0.45Vであることが好ましい。第3基準値V3は1セルあたりで0.2〜0.3Vであることが好ましい。なお、燃料電池が個数「N」のセルを含む場合には、燃料電池全体に対して、第3基準値V3は、(0.2×N〜0.3×N)Vに設定される。また、本形態においても、上述したように、燃料電池に対する燃料供給量FQおよび酸化剤供給量AQの少なくとも一方を、出力電流PIの設定値に応じて設定することで、システム全体の発電効率を向上させることができる。
本発明の一実施形態の燃料電池システムは、1以上のセルを含む燃料電池と、燃料電池に燃料を供給する燃料供給部と、燃料電池に酸化剤を供給する酸化剤供給部と、燃料電池の出力電圧PIを検出する電流センサと、燃料電池の出力電圧PVを検出する電圧センサと、出力電流PIおよび出力電圧PVを調節するように、出力電圧PVを変圧して、燃料電池の発電電力を出力する変圧部と、燃料供給部、酸化剤供給部および変圧部を制御する制御部と、を具備する。
ここで、制御部は、
(a)燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、iおよびnは2以上であり、A(k)<A(k+1)である、
(b)燃料電池の出力電圧PVを電圧センサにより検出する工程、
(c)出力電圧PVが第1基準値V1以下であれば、燃料電池の運転を停止し、設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定して、燃料電池を起動する工程、
(d)工程(c)で燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(e)工程(d)で算出した平均値APVを第1基準値V1および第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、および
(f)工程(e)の比較結果で平均値APVが第2基準値V2以上であれば、燃料電池の運転を停止し、設定値A(k)を電流値A(i)に再設定して、燃料電池を起動する工程、を含む処理を行う。
(a)燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、iおよびnは2以上であり、A(k)<A(k+1)である、
(b)燃料電池の出力電圧PVを電圧センサにより検出する工程、
(c)出力電圧PVが第1基準値V1以下であれば、燃料電池の運転を停止し、設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定して、燃料電池を起動する工程、
(d)工程(c)で燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(e)工程(d)で算出した平均値APVを第1基準値V1および第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、および
(f)工程(e)の比較結果で平均値APVが第2基準値V2以上であれば、燃料電池の運転を停止し、設定値A(k)を電流値A(i)に再設定して、燃料電池を起動する工程、を含む処理を行う。
本発明の他の実施形態の燃料電池システムは、1以上のセルを含む燃料電池と、燃料電池に燃料を供給する燃料供給部と、燃料電池に酸化剤を供給する酸化剤供給部と、燃料電池の出力電圧PIを検出する電流センサと、燃料電池の出力電圧PVを検出する電圧センサと、出力電流PIおよび出力電圧PVを調節するように、出力電圧PVを変圧して、燃料電池の発電電力を出力する変圧部と、燃料供給部、酸化剤供給部および変圧部を制御する制御部と、を具備する。
ここで、制御部は、
(a)燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、nは3以上あり、iは2以上且つ(n−1)以下であり、A(k)<A(k+1)である、
(b)燃料電池の出力電圧PVを電圧センサにより検出する工程、
(c)燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(d)第1期間が終了してから第2時間TM2が経過するまでの第2期間、設定値A(k)を維持したまま燃料電池の運転を継続し、その後、燃料電池の運転を停止する工程、
(e)工程(c)で算出した平均値APVを第1基準値V1および第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、
(f)工程(e)の比較結果で、
平均値APVが第2基準値V2以上であれば、第2期間の終了後に設定値A(k)を電流値A(i+1)に設定し、
平均値APVが第1基準値V1以下であれば、第2期間の終了後に設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定し、
平均値APVが第1基準値V1よりも大きく且つ第2基準値V2よりも小さければ、第2期間の終了後も設定値A(k)を電流値A(i)のまま維持する工程、および
(g)工程(f)で設定された設定値A(k)により、工程(d)で運転が停止された燃料電池を起動する工程、を含む処理を行う。
(a)燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、nは3以上あり、iは2以上且つ(n−1)以下であり、A(k)<A(k+1)である、
(b)燃料電池の出力電圧PVを電圧センサにより検出する工程、
(c)燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(d)第1期間が終了してから第2時間TM2が経過するまでの第2期間、設定値A(k)を維持したまま燃料電池の運転を継続し、その後、燃料電池の運転を停止する工程、
(e)工程(c)で算出した平均値APVを第1基準値V1および第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、
(f)工程(e)の比較結果で、
平均値APVが第2基準値V2以上であれば、第2期間の終了後に設定値A(k)を電流値A(i+1)に設定し、
平均値APVが第1基準値V1以下であれば、第2期間の終了後に設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定し、
平均値APVが第1基準値V1よりも大きく且つ第2基準値V2よりも小さければ、第2期間の終了後も設定値A(k)を電流値A(i)のまま維持する工程、および
(g)工程(f)で設定された設定値A(k)により、工程(d)で運転が停止された燃料電池を起動する工程、を含む処理を行う。
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1に、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの制御方法が適用される燃料電池システムをブロック図により示す。このシステム20は、それぞれがカソードとアノードを含む、少なくとも1つのセル(単セル)を有する直接酸化型燃料電池(燃料電池スタック)22と、カソードに空気を供給する酸化剤ポンプ(空気ポンプ)24と、アノードに、燃料タンク25から供給される燃料(メタノール)の水溶液を供給する燃料ポンプ26と、制御装置28とを備える。
(実施形態1)
図1に、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの制御方法が適用される燃料電池システムをブロック図により示す。このシステム20は、それぞれがカソードとアノードを含む、少なくとも1つのセル(単セル)を有する直接酸化型燃料電池(燃料電池スタック)22と、カソードに空気を供給する酸化剤ポンプ(空気ポンプ)24と、アノードに、燃料タンク25から供給される燃料(メタノール)の水溶液を供給する燃料ポンプ26と、制御装置28とを備える。
また、システム20には、燃料電池22が発電した電力を蓄電する蓄電装置30と、アノードから排出されたアノード流体およびカソードから排出されたカソード流体を回収する回収部32とを含ませることができる。回収部32により回収された液体は、燃料と混合して、燃料水溶液としてアノードに供給される。蓄電装置30には、制御弁式鉛蓄電池、ディープサイクルバッテリー、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素蓄電地などを好適に使用することができる。
そして、図1の燃料電池システム20は、さらに、燃料電池22の出力電圧PVを検出する電圧センサ(VS)34と、燃料電池22の出力電流PIを検出する電流センサ(IS)36と、出力電圧PVを変圧比PSで変圧して、燃料電池が発電した電力を蓄電装置30および外部に出力するDC/DCコンバータ38とを備える。電圧センサ34および電流センサ36の検出結果を示す信号(検出結果信号)は制御装置28に入力される。制御装置28は、入力された検出結果信号に基づいて、空気ポンプ24、燃料ポンプ26、およびDC/DCコンバータ38の変圧比PSを制御する。制御装置28が、変圧比PSを制御することで、出力電圧PV、出力電流PI、蓄電装置30の充電電流、充電電圧などが制御される。
制御装置28には、マイクロコンピュータなどの情報処理装置を使用することができる。情報処理装置は、演算部、データ格納部、各種インターフェースなどで構成することができる。演算部は、データ格納部に格納されているプログラムにしたがって、燃料電池の運転に必要な演算を行う。演算部は、平均値APVの算出などの数値計算を行う計算部と、電圧センサの検出結果などを一時的に記憶する記憶部と、数値の大小関係を比較することで各種判定を行う判定部を含む。また、データ格納部(フラッシュメモリなどの補助記憶装置)には、後述の第1基準値V1、第2基準値V2、第3基準値V3、第4基準値V4、電流値A(1)〜A(n)、その初期値A(i)、第1時間TM1、第2時間TM2、第3時間TM3、燃料供給量テーブル、および酸化剤供給量テーブルなどのデータを記憶させておくことができる。ただし、nおよびiは整数値をとる定数である。演算部は、本実施形態の制御方法に関する処理を実行するときに、必要に応じて、上記のデータを読み込む。
図2に燃料電池(燃料電池スタック)を構成するセル(単セル)の構造を示す。燃料電池22は、通常、複数のセル1を有している。第1基準値V1〜第3基準値V3は、1つのセル1に対して設定される値であり、燃料電池22全体に対する各基準値はセル1の個数を乗じた値に換算される。セル1は、アノード2、カソード3、およびアノード2とカソード3との間に介在する電解質膜4を含む膜電極接合体(MEA)5に対応している。MEA5の一方の側面には、アノード2を封止するようにガスケット14が配置され、他方の側面には、カソード3を封止するようにガスケット15が配置されている。
MEA5は、アノード側セパレータ10およびカソード側セパレータ11に挟持されている。アノード側セパレータ10は、アノード2に接し、カソード側セパレータ11は、カソード3に接している。アノード側セパレータ10は、アノード2に燃料を供給する燃料流路12を有する。燃料流路12は、燃料が流入するアノード入口と、反応で生成したCO2や未使用の燃料などを排出するアノード排出口を有する。カソード側セパレータ11は、カソード3に酸化剤を供給する酸化剤流路13を有する。酸化剤流路13は、酸化剤が流入するカソード入口と、反応で生成した水や未使用の酸化剤などを排出するカソード排出口を有する。
図2に示すようなセルを複数個、電気的に直列に積層することで、燃料電池スタックが構成される。この場合、通常はアノード側セパレータ10とカソード側セパレータ11は一体のものとして形成される。すなわち、一枚の導電性を有するセパレータの一方の面がアノード側セパレータ、他方の面がカソード側セパレータとなる。各セルのアノード入口は、マニホールドを用いるなどして通常1つに集約される。アノード排出口、カソード入口およびカソード排出口も同様に、それぞれ集約される。
燃料電池の停止中にアノード2へ酸素が侵入することがないように、燃料電池システムにおけるアノード側空間、すなわち燃料ポンプ26からアノードを経由して回収部内の液体に至るまでの空間は、密閉空間となっている。MEA5のアノード2は、アノード入口とアノード排出口以外が外部と連通しないように、ガスケット14で封止されている。アノード側セパレータ10およびカソード側セパレータ11とそれぞれ接触するように集電板16および17が配置される。集電板16および17とそれぞれ接触するように端板18を配置することで、積層された複数のセル1を締結することができる。
カソード3は、電解質膜4に接するカソード触媒層8およびカソード側セパレータ11に接するカソード拡散層9を含む。カソード拡散層9は、例えば、カソード触媒層8に接する導電性撥水層と、カソード側セパレータ11に接する基材層とを含む。
カソード触媒層8は、カソード触媒と高分子電解質を含む。カソード触媒としては、触媒活性の高いPtなどの貴金属が好ましい。カソード触媒は、そのまま用いてもよいし、担体に担持した形態で用いてもよい。担体としては、電子伝導性および耐酸性の高さから、カーボンブラックなどの炭素材料を用いることが好ましい。高分子電解質としては、プロトン伝導性を有するパーフルオロスルホン酸系高分子材料、炭化水素系高分子材料などを用いることが好ましい。パーフルオロスルホン酸系高分子材料としては、例えば、Nafion(登録商標)などを用いることができる。
アノード2は、電解質膜4に接するアノード触媒層6およびアノード側セパレータ10に接するアノード拡散層7を含む。アノード拡散層7は、例えば、アノード触媒層6に接する導電性撥水層と、アノード側セパレータ10に接する基材層とを含む。
アノード触媒層6は、アノード触媒と高分子電解質を含む。アノード触媒としては、一酸化炭素による触媒の被毒を低減する観点から、PtとRuとの合金触媒が好ましい。アノード触媒は、そのまま用いてもよいし、担体に担持した形態で用いてもよい。担体としては、カソード触媒を担持する担体と同様の炭素材料を用いることができる。アノード触媒層6に含まれる高分子電解質としては、カソード触媒層8に用いられる材料と同様の材料を用いることができる。
アノード拡散層7およびカソード拡散層9に含まれる導電性撥水層は、導電剤と撥水剤を含む。導電性撥水層に含まれる導電剤としては、カーボンブラックなど、燃料電池の分野で常用される材料を特に限定することなく用いることができる。導電性撥水層に含まれる撥水剤は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)など、燃料電池の分野で常用される材料を特に限定することなく用いることができる。
基材層としては、導電性の多孔質材料が用いられる。導電性の多孔質材料としては、カーボンペーパー、カーボンクロスなど、燃料電池の分野で常用される材料を特に限定することなく用いることができる。これらの多孔質材料は、燃料の拡散性および生成水の排出性などを向上させるために、撥水剤を含んでいてもよい。撥水剤は、導電性撥水層に含まれる撥水剤と同様の材料を用いることができる。
電解質膜4としては、例えば、従来から用いられているプロトン伝導性高分子膜を特に限定なく使用できる。具体的には、パーフルオロスルホン酸系高分子膜、炭化水素系高分子膜などを好ましく使用できる。パーフルオロスルホン酸系高分子膜としては、例えば、Nafion(登録商標)などが挙げられる。
次に、本実施形態の燃料電池システムの制御方法について、フローチャートを参照して説明する。図3に、本実施形態の制御方法のフローチャートを示す。
本方法においては、(a)1以上のセルを含む燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、nは3以上であり、iは2以上且つ(n−1)以下であり、A(k)<A(k+1)である、(b)前記燃料電池の出力電圧PVを検出する工程、(c)前記燃料電池を起動してから所定時間(第1時間TM1)が経過するまでの第1期間の前記出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、(d)前記第1期間が終了してから所定時間(第2時間TM2)が経過するまでの第2期間、前記設定値A(k)を維持したまま前記燃料電池の運転を継続し、その後、前記燃料電池の運転を停止する工程、(e)前記工程(c)で算出した前記平均値APVを第1基準値V1および前記第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、(f)前記工程(e)の比較結果で、前記平均値APVが前記第2基準値V2以上であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i+1)に設定し、前記平均値APVが前記第1基準値V1以下であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定し、前記平均値APVが前記第1基準値V1よりも大きく且つ前記第2基準値V2よりも小さければ、前記第2期間の終了後も前記設定値A(k)を前記電流値A(i)のまま維持する工程、および(g)前記工程(f)で設定された前記設定値A(k)により、前記工程(d)で運転が停止された前記燃料電池を起動する工程、が実行される。
本方法においては、(a)1以上のセルを含む燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、nは3以上であり、iは2以上且つ(n−1)以下であり、A(k)<A(k+1)である、(b)前記燃料電池の出力電圧PVを検出する工程、(c)前記燃料電池を起動してから所定時間(第1時間TM1)が経過するまでの第1期間の前記出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、(d)前記第1期間が終了してから所定時間(第2時間TM2)が経過するまでの第2期間、前記設定値A(k)を維持したまま前記燃料電池の運転を継続し、その後、前記燃料電池の運転を停止する工程、(e)前記工程(c)で算出した前記平均値APVを第1基準値V1および前記第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、(f)前記工程(e)の比較結果で、前記平均値APVが前記第2基準値V2以上であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i+1)に設定し、前記平均値APVが前記第1基準値V1以下であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定し、前記平均値APVが前記第1基準値V1よりも大きく且つ前記第2基準値V2よりも小さければ、前記第2期間の終了後も前記設定値A(k)を前記電流値A(i)のまま維持する工程、および(g)前記工程(f)で設定された前記設定値A(k)により、前記工程(d)で運転が停止された前記燃料電池を起動する工程、が実行される。
本方法においては、さらに、nが4以上であり、iが3以上且つ(n−1)以下であるときに、(h)前記出力電圧PVを前記第1基準値V1よりも小さい第3基準値V3と比較する工程と、(j)前記工程(h)の比較結果で前記出力電圧PVが前記第3基準値V3以下であるときに前記燃料電池の運転を停止する工程と、(m)前記工程(j)で前記燃料電池の運転を停止したときに、前記設定値A(k)が前記電流値A(i+1)に設定されていれば前記設定値A(k)を前記電流値A(i)に設定し、前記設定値A(k)が前記電流値A(i)に設定されていれば前記設定値A(k)を前記電流値A(i−1)に設定し、前記設定値A(k)が前記電流値A(i−1)に設定されていれば前記設定値A(k)を電流値A(i−2)に設定する工程と、(o)前記工程(m)で設定された前記設定値A(k)により前記燃料電池を起動する工程と、が実行される。
図4に、制御装置のデータ格納部に格納される設定値テーブルの一例を示す。図示例の設定値テーブル40には、出力電流PIの設定値A(k)として使用する具体的な電流値A(1)〜A(n)(単位はアンペア)が格納されている。ここで、数「n」は、2以上の整数である。つまり、図示例の設定値テーブル40には、少なくとも2個の電流値が格納されている。ただし、以下の説明では、例えば数「n」が「7」であり、設定値A(k)として、A(1)〜A(7)の7個の電流値が用意されているものとして説明する。また、設定値A(k)の初期値を電流値A(i)で表すとき、i=4とする。また、燃料供給量FQおよび酸化剤供給量AQについても、FQ(1)〜FQ(n)およびAQ(1)〜AQ(n)を規定する同様のテーブルを格納部に格納することができる。
図3に示すように、例えばシステムのメインスイッチがオンにされ、システムが稼動を開始すると、出力電流PIを設定値A(k)に設定して、燃料電池22が起動される(ST1)。システムの稼動開始時は、変数kに初期値i(=4)が代入される。したがって、出力電流PIの設定値A(k)が電流値A(i)(=A(4))に設定され、燃料電池22が起動される(ST1)。これにより、一定の出力電流PIで燃料電池22の発電が開始される。このとき、例えば燃料供給量FQはFQ(k)(=FQ(4))に設定され、酸化剤供給量AQはAQ(k)(=AQ(4))に設定される。
燃料電池22が発電を開始すると、電圧センサにより出力電圧PVを検出する(ST2)。次に、出力電圧PVの検出結果(以下、単にPV値という)が第3基準値V3よりも大きいかを判定する(ST3)。PV値が第3基準値V3以下であれば(ST3でNo)、直ちに燃料電池の運転を停止する(ST8)。
一方、PV値が第3基準値V3よりも大きければ(ST3でYes)、燃料電池22を起動してから第1期間に対応する第1時間TM1が経過したかを判定する(ST4)。第1時間TM1が経過していなければ(ST4でNo)、そのときのPV値を記憶部に記憶させ(ST4)、ST2に戻る。以下、ST2〜ST5の手順を例えば1秒間隔で繰り返す。これにより、第1期間に1秒毎に検出されたPV値が記憶部に記憶される。
燃料電池22を起動してから第1時間TM1が経過すると、ST6に進み、第1時間TM1が経過するまでに記憶部に記憶された全てのPV値の平均値APVを算出する(ST6)。ただし、平均値APVの算出は、この時点に限らず、ST9以前であれば、例えば後述のST8で燃料電池の運転を停止した後に実行することもできる。
次に、第1期間が終了してから、第2期間に対応する第2時間TM2が経過したかを判定する(ST7)。第2時間TM2が経過していなければ(ST7でNo)、ST2に戻り、以下、ST2、ST3、ST7の手順を、第2時間TM2が経過するまで繰り返し実行する。これにより、第2期間、燃料電池22の運転が継続される。このとき、ST4、ST5、ST6の各手順は実質的にスキップされる。第1期間が終了してから第2時間TM2が経過すると、ST8に進み、燃料電池22の運転を停止する。
次に、ST6で求めた平均値APVが第1基準値V1以下であるかを判定する(ST9)。ここで、平均値APVが第1基準値V1以下であれば(ST9でYes、APV≦V1)、変数「k」に代入されている値(初期値は「4」)を「1」だけ小さくする(ST10)。これにより、出力電流PIが一段階小さい設定値(A(i−1)=A(3))に設定される。
そして、出力電流PIの設定値の変更に応じて、燃料供給量FQおよび酸化剤供給量AQを変更し(ST11)、燃料電池の運転を停止した後、上記第3時間TM3が経過すれば(ST12でYes)、ST1に戻る。このとき、燃料供給量FQは例えば一段階小さな供給量(例えばFQ(3))に変更され、酸化剤供給量AQは例えば一段階小さな供給量(例えばAQ(3))に変更される。以上の処理により、ST1では、出力電流PIの設定値A(k)、燃料供給量FQおよび酸化剤供給量AQが一段階小さくされて、燃料電池の運転が再開される。ST12では、第3時間TM3が経過したか否かを判定することに代えて、PV値が第4基準値V4以下であるか否かを判定し、PV値が第4基準値V4以下であるときにST1に戻るようにすることもできる。
出力電圧PVが第3基準値V3以下である場合(ST3でNo)にも、ST8で燃料電池22の運転を停止した後、ST10で出力電流PIの設定値が一段階小さくされる。そして、その設定値の変更に応じて、燃料供給量FQおよび酸化剤供給量AQが変更され(ST11)、第3時間TM3の経過後にST1に戻る。このとき、ST9の手順は実質的にスキップされる。
また、平均値APVが第1基準値よりも大きければ(ST9でNo)、平均値APVが第2基準値V2以上であるかを判定する(ST13)。ここで、平均値APVが第2基準値V2以上であれば(ST13でYes、APV≧V2)、変数「k」に代入されている値(初期値は「4」)を「1」だけ大きくする(ST14)。これにより、出力電流PIが一段階大きい設定値(A(i+1)=A(5))に設定される。
そして、出力電流PIの設定値の変更に応じて、燃料供給量FQおよび酸化剤供給量AQを変更し(ST11)、第3時間TM3の経過後にST1に戻る。このとき、燃料供給量FQは例えば一段階大きい供給量FQ(5)に変更され、酸化剤供給量AQは例えば一段階大きい供給量AQ(5)に変更される。以上の処理により、ST1では、出力電流PIの設定値A(k)、燃料供給量FQおよび酸化剤供給量AQが一段階大きくされて、燃料電池の運転が再開される。
また、平均値APVが第1基準値V1よりも大きく、かつ第2基準値V2よりも小さければ(ST13でNo)、出力電流PIの設定値A(k)、燃料供給量FQおよび酸化剤供給量AQの変更は行わず、第3時間TM3の経過後に、そのままST1に戻る。これにより、ST1では、従前の出力電流PIの設定値A(k)(=A(i)=A(4))、燃料供給量FQおよび酸化剤供給量AQを維持したままで、燃料電池の運転が再開される。
なお、変数kの初期値i(iは定数)は固定値である必要はなく、システムのメインスイッチがオフにされたときの変数kの値を記憶しておき、次にメインスイッチがオンにされたときには、その記憶値を初期値iとして使用することができる。例えばシステムのメインスイッチがオフにされたときの変数kの値が「3」であれば、次にメインスイッチがオンにされたときには、変数kの初期値iを「3」とし、設定値A(k)を電流値A(3)に設定して、システムの稼動を開始することができる。これにより、燃料電池の劣化状態に応じた適切な出力電流PIの設定値でシステムの稼動を開始することができる。
以上のように、本実施形態の制御方法によれば、燃料電池の運転を一定期間(第1期間+第2期間)継続することで、燃料電池を高効率で発電することができる。また、燃料電池を起動した直後の第1期間に検出される出力電圧PVの平均値APVに基づいて、次に燃料電池を起動するときの出力電流PIの設定値が決められる。これにより、連続運転により出力が低下していない起動直後の平均的な出力電圧に基づいて、次に燃料電池を起動するときの出力電流PIを設定することができる。したがって、燃料電池が有する本来の発電能力を十分に発揮させることができるように、最適な出力電流PIで燃料電池を運転することができる。
また、燃料電池の出力が極度に低下した場合には、燃料電池の運転を即時に停止することができる。これにより、上記の出力の極度の低下が例えば流路の目詰まりなどの一時的な原因で発生したときには、その原因を速やかに取り除くことで、速やかに、燃料電池が有する本来の能力を発揮できる状態にすることができる。また、発電効率の低下を防止できる。また、出力低下が燃料電池の劣化による場合には、出力電流PIの設定値を速やかに劣化状態に応じた適切な設定値に切り替えることができる。これにより、燃料電池のさらなる劣化を抑えることができる。
そして、出力電流PIの設定値に応じて燃料供給量FQおよび酸化剤供給量AQを変更することで、燃料ポンプなどの補機類の消費電力を抑えることができ、システム全体の発電効率を向上させることができる。
本発明によれば、燃料電池を長寿命化することで、システムの使用可能期間を長期化することができる。よって、長期にわたって優れた発電特性を維持でき、安定した性能を維持できる燃料電池システムを提供することができる。本発明は、アウトドア・アクティビティに使用されるような中型の電源に適用するのに非常に有用である。
1…セル、2…アノード、3…カソード、4…電解質膜、5…MEA、6…アノード触媒層、7…アノード拡散層、8…カソード触媒層、9…カソード拡散層、10…アノード側セパレータ、11…カソード側セパレータ、12…燃料流路、13…酸化剤流路、14…ガスケット、15…ガスケット、16…集電板、18…端板、20…燃料電池システム、22…燃料電池、24…空気ポンプ、25…燃料タンク、26…燃料ポンプ、28…制御装置、30…蓄電装置、32…回収部、34…電圧センサ、36…電流センサ、38…DCコンバータ、40…設定値テーブル
Claims (18)
- (a)1以上のセルを含む燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、iおよびnは2以上であり、A(k)<A(k+1)である、
(b)前記燃料電池の出力電圧PVを検出する工程、
(c)前記出力電圧PVが第1基準値V1以下であれば、前記燃料電池の運転を停止し、前記設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定して、前記燃料電池を起動する工程、
(d)前記工程(c)で前記燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の前記出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(e)前記工程(d)で算出した前記平均値APVを前記第1基準値V1および前記第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、および
(f)前記工程(e)の比較結果で前記平均値APVが前記第2基準値V2以上であれば、前記燃料電池の運転を停止し、前記設定値A(k)を前記電流値A(i)に再設定して、前記燃料電池を起動する工程、を具備する燃料電池システムの制御方法。 - 前記工程(e)の比較結果で前記平均値APVが前記第1基準値V1よりも大きく且つ前記第2基準値V2よりも小さければ、前記設定値A(k)を前記電流値A(i−1)に維持したままで前記燃料電池の運転を継続する、請求項1に記載の燃料電池システムの制御方法。
- iおよびnが3以上であり、前記工程(e)の比較結果で前記平均値APVが前記第1基準値V1以下であれば、前記燃料電池の運転を停止し、前記設定値A(k)を電流値A(i−2)に設定して、前記燃料電池を起動する、請求項1または2に記載の燃料電池システムの制御方法。
- (a)1以上のセルを含む燃料電池を、出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、nは3以上であり、iは2以上且つ(n−1)以下であり、A(k)<A(k+1)である、
(b)前記燃料電池の出力電圧PVを検出する工程、
(c)前記燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の前記出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(d)前記第1期間が終了してから第2時間TM2が経過するまでの第2期間、前記設定値A(k)を維持したまま前記燃料電池の運転を継続し、その後、前記燃料電池の運転を停止する工程、
(e)前記工程(c)で算出した前記平均値APVを第1基準値V1および前記第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、
(f)前記工程(e)の比較結果で、
前記平均値APVが前記第2基準値V2以上であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i+1)に設定し、
前記平均値APVが前記第1基準値V1以下であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定し、
前記平均値APVが前記第1基準値V1よりも大きく且つ前記第2基準値V2よりも小さければ、前記第2期間の終了後も前記設定値A(k)を前記電流値A(i)のまま維持する工程、および
(g)前記工程(f)で設定された前記設定値A(k)により、前記工程(d)で運転を停止した前記燃料電池を起動する工程、を具備する燃料電池システムの制御方法。 - nが4以上であり、iが3以上且つ(n−1)以下であり、
(h)前記出力電圧PVを前記第1基準値V1よりも小さい第3基準値V3と比較する工程、
(j)前記工程(h)の比較結果で前記出力電圧PVが前記第3基準値V3以下であるときに前記燃料電池の運転を停止する工程、
(m)前記工程(j)で前記燃料電池の運転を停止したときに、前記設定値A(k)が前記電流値A(i+1)に設定されていれば前記設定値A(k)を前記電流値A(i)に設定し、前記設定値A(k)が前記電流値A(i)に設定されていれば前記設定値A(k)を前記電流値A(i−1)に設定し、前記設定値A(k)が前記電流値A(i−1)に設定されていれば前記設定値A(k)を電流値A(i−2)に設定する工程、および
(o)前記工程(m)で設定された前記設定値A(k)により前記燃料電池を起動する工程、をさらに具備する請求項4に記載の燃料電池システムの制御方法。 - 前記工程(c)で、前記燃料電池をリフレッシュさせるのに十分な第3時間TM3だけ前記燃料電池の運転を停止する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池システムの制御方法。
- 前記工程(c)で、前記出力電圧PVが前記第1基準値よりも小さい第4基準値V4以下になるまで前記燃料電池の運転を停止する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池システムの制御方法。
- 前記工程(g)で、前記燃料電池をリフレッシュさせるのに十分な第3時間TM3だけ前記燃料電池の運転を停止してから前記燃料電池を起動する、請求項4または5に記載の燃料電池システムの制御方法。
- 前記工程(g)で、前記出力電圧PVが前記第1基準値よりも小さい第4基準値V4以下に低下してから前記燃料電池を起動する、請求項4または5に記載の燃料電池システムの制御方法。
- 前記第1基準値V1が1セルあたりで0.25〜0.375Vであり、前記第2基準値V2が1セルあたりで0.35〜0.45Vである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の燃料電池システムの制御方法。
- 前記第3基準値V3が1セルあたりで0.2〜0.3Vである、請求項5記載の燃料電池システムの制御方法。
- 前記第4基準値V4が1セルあたりで0.18〜0.22Vである、請求項7または9に記載の燃料電池システムの制御方法。
- 前記第1時間TM1が1〜60分である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の燃料電池システムの制御方法。
- 前記第2時間TM2が1〜120分である、請求項4、5および8〜13のいずれか1項に記載の燃料電池システムの制御方法。
- 前記第3時間TM3が10秒〜5分である、請求項6または8に記載の燃料電池システムの制御方法。
- 前記燃料電池に対する燃料供給量FQおよび酸化剤供給量AQの少なくとも一方を、前記設定値A(k)に応じて設定する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の燃料電池システムの制御方法。
- 1以上のセルを含む燃料電池と、
前記燃料電池に燃料を供給する燃料供給部と、
前記燃料電池に酸化剤を供給する酸化剤供給部と、
前記燃料電池の出力電圧PIを検出する電流センサと、
前記燃料電池の出力電圧PVを検出する電圧センサと、
前記出力電流PIおよび前記出力電圧PVを調節するように、前記出力電圧PVを変圧して、前記燃料電池の発電電力を出力する変圧部と、
前記燃料供給部、前記酸化剤供給部および前記変圧部を制御する制御部と、を具備し、
前記制御部は、
(a)前記燃料電池を、前記出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、iおよびnは2以上であり、A(k)<A(k+1)であり、
(b)前記燃料電池の前記出力電圧PVを前記電圧センサにより検出する工程、
(c)前記出力電圧PVが第1基準値V1以下であれば、前記燃料電池の運転を停止し、前記設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定して、前記燃料電池を起動する工程、
(d)前記工程(c)で前記燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の前記出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(e)前記工程(d)で算出した前記平均値APVを前記第1基準値V1および前記第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、および
(f)前記工程(e)の比較結果で前記平均値APVが前記第2基準値V2以上であれば、前記燃料電池の運転を停止し、前記設定値A(k)を前記電流値A(i)に再設定して、前記燃料電池を起動する工程、を含む処理を行う、燃料電池システム。 - 1以上のセルを含む燃料電池と、
前記燃料電池に燃料を供給する燃料供給部と、
前記燃料電池に酸化剤を供給する酸化剤供給部と、
前記燃料電池の出力電圧PIを検出する電流センサと、
前記燃料電池の出力電圧PVを検出する電圧センサと、
前記出力電流PIおよび前記出力電圧PVを調節するように、前記出力電圧PVを変圧して、前記燃料電池の発電電力を出力する変圧部と、
前記燃料供給部、前記酸化剤供給部および前記変圧部を制御する制御部と、を具備し、
前記制御部は、
(a)前記燃料電池を、前記出力電流PIの設定値A(k)を電流値A(i)に設定して起動する工程、ただしk=1、2、…、i、…、nであり、nは3以上であり、iは2以上且つ(n−1)以下であり、A(k)<A(k+1)である、
(b)前記燃料電池の前記出力電圧PVを前記電圧センサにより検出する工程、
(c)前記燃料電池を起動してから第1時間TM1が経過するまでの第1期間の前記出力電圧PVの平均値APVを算出する工程、
(d)前記第1期間が終了してから第2時間TM2が経過するまでの第2期間、前記設定値A(k)を維持したまま前記燃料電池の運転を継続し、その後、前記燃料電池の運転を停止する工程、
(e)前記工程(c)で算出した前記平均値APVを第1基準値V1および前記第1基準値V1よりも大きい第2基準値V2と比較する工程、
(f)前記工程(e)の比較結果で、
前記平均値APVが前記第2基準値V2以上であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i+1)に設定し、
前記平均値APVが前記第1基準値V1以下であれば、前記第2期間の終了後に前記設定値A(k)を電流値A(i−1)に設定し、
前記平均値APVが前記第1基準値V1よりも大きく且つ前記第2基準値V2よりも小さければ、前記第2期間の終了後も前記設定値A(k)を前記電流値A(i)のまま維持する工程、および
(g)前記工程(f)で設定された前記設定値A(k)により、前記工程(d)で運転が停止された前記燃料電池を起動する工程、を含む処理を行う、燃料電池システム。
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