以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1〜図9は、本発明の一実施の形態を説明するための図である。このうち図1、図2及び図4は、太陽電池複合型表示体10の構成を示す斜視図または縦断面図であり、図3、図5及び図6は、太陽電池複合型表示体10の作用を説明するため図であり、図7〜図9は、太陽電池複合型表示体の製造方法の一例を説明するための図である。
ここで説明する太陽電池複合型表示体10は、所定の表示機能及び外光を利用した発電機能の両方を発揮する。図1及び図2に示す太陽電池複合型表示体10において、第1軸方向d1に交互に配列された複数の向き調整面21及び複数の光透過面22が、太陽電池パネル50よりも入光側に設けられている。或る角度範囲AR1内の方向D21から太陽電池複合型表示体10を観察すると、主として向き調整面21に配置された表示面12が観察される。したがって、表示面12は、或る角度範囲AR1から太陽電池複合型表示体10を観察する観察者に対して表示機能を発揮する。一方、別の或る角度範囲AR2内の方向から入射した光L22は、主として光透過面22を通過して太陽電池パネル50に導かれる。したがって、太陽電池パネル50は、別の或る角度範囲AR2から太陽電池複合型表示体10へ入射する光に対して発電機能を発揮する。しかして、太陽電池複合型表示体10によれば、観察者からの観察方向と外光の入射方向との相違を利用して、観察者が表示面12を観察する際に太陽電池パネル50が視認されることを抑制し、周囲との調和を図ることを可能にしている。
以下、本実施の形態による太陽電池複合型表示体10の構成および作用効果について詳述していく。図1および図2によく示されているように、太陽電池複合型表示体10は、シート状の本体部20と、本体部20の背面に配置された太陽電池パネル50と、を備えている。本体部20は、太陽電池複合型表示体10の表面10aを形成し、太陽電池パネル50は、太陽電池複合型表示体10の裏面10bを形成している。表面10aは、太陽電池複合型表示体10へ入射する太陽光等の外光等の入射面をなす。また、表面10aは、表示対象13(図3参照)を可視化する表示面12からの光が太陽電池複合型表示体10から出射する出射面をなす。
シート状の本体部20は、互いに対向する一対の主面として、第1面20a及び第2面20bを有している。第1面20aは、太陽電池複合型表示体10の表面10aを形成し、第2面20bは、太陽電池パネル50が接合される面をなしている。本体部20の第1面20aは、第1軸方向d1に交互に配列された複数の向き調整面21及び複数の光透過面22と、を含んでいる。向き調整面21には、表示対象13を表示するための表示面12が配置されている。向き調整面21は、表示面12を支持すると共に、表示面12を観察し得る視野角を調整するべく設けられている。一方、光透過面22は、隣り合う表示面12の間で太陽電池複合型表示体10に入射する光L22を透過させて、太陽電池パネル50に導くために設けられている。なお、図示する例では、複数の向き調整面21は互いに同一に構成され、複数の光透過面22も互いに同一に構成されている。
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
また、本明細書において、「シート面(フィルム面、板面、パネル面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向と一致する面のことを指す。以下に説明する実施の形態においては、本体部20のシート面、太陽電池パネル50のパネル面、並びに太陽電池パネル50の受光面50aは、互いに並行となっている。さらに、本明細書において、シート状(フィルム状、板状、パネル状)の部材に対して用いる「法線方向」とは、当該部材のシート面への法線方向のことを指す。
図1に示すように、各向き調整面21及び各光透過面22は、その配列方向である第1軸方向d1に対して交差する方向に線状に延びている。とりわけ図示された例において、各向き調整面21及び各光透過面22は、第1軸方向d1及び法線方向ndの両方と直交する第2軸方向d2に、直線状に延びている。また、図2に示す例では、各向き調整面21と各光透過面22とは、法線方向ndからみて互いにずれて配置されている。なお、本実施の形態において、第1軸方向d1及び第2軸方向d2は、本体部20のシート面に沿っており、本体部20の法線方向ndに直交している。図示された例において、太陽電池複合型表示体10は、第1軸方向d1が鉛直方向と平行になり第2軸方向d2が水平方向と平行になるようにして、配置されている。
各向き調整面21は、本体部20のシート面、言い換えると、太陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜し、本体部20の法線方向ndに対しても傾斜している。すなわち、各向き調整面21は、本体部20のシート面及び本体部20の法線方向ndのいずれとも非平行になっている。向き調整面21と共に当該向き調整面21に配置された表示面12を太陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜させることにより、表示面12に付与された表示対象13を観察し得る視野角となる第1角度範囲AR1を、高い自由度で調整することが可能となる。
図2に示すように、各向き調整面21は、第1軸方向d1において一側(図示する例では、図2における上側であって、鉛直方向における上側)に位置する一端部21aが、第1軸方向d1において他側(図示する例では、図2における下側であって、鉛直方向における下側)に位置する他端部21bよりも、本体部20の法線方向ndにおいて太陽電池パネル50から離間するように、本体部20のシート面に対して傾斜している。したがって、向き調整面21の一端部21aは、向き調整面21の他端部21bよりも、本体部20の法線方向ndにおいて太陽電池パネル50から離間している。図2から理解され得るように、このような向き調整面21によれば、法線方向ndに対して他側に傾斜した角度範囲に向けて、光が出射しやすくなる。したがって、向き調整面21に配置された表示面12からの表示機能は、法線方向ndに対して他側に傾斜した方向D21から観察されたときに、効果的に発揮されるようになる。
このような傾向を強化する観点から、太陽電池複合型表示体の主切断面において、向き調整面21は、第1軸方向d1における一側(上側)から他側(下側)に向けて、段階的又は連続的に、本体部20の法線方向ndにおいて太陽電池パネル50に接近していくことが好ましい。図示された例において、向き調整面21は平面として形成されている。そして、図2に示された太陽電池複合型表示体の主切断面において、向き調整面21は、第1軸方向d1における一側から他側に向けて、連続的に一定の傾斜の程度で、本体部20の法線方向ndに沿って太陽電池パネル50に接近していく。このような向き調整面21によれば、向き調整面21に配置された表示面12からの表示機能が、法線方向ndに対して他側に傾斜した方向D21から観察されたときに、効果的に発揮されるようになる。
上述したように、向き調整面21に、表示対象13を表示するための表示面12が配置されている。本実施の形態では、表示面12は、向き調整面21に重なるように当該向き調整面21に沿って配置されている。したがって、表示面12から第1角度範囲AR1へ向けて太陽電池複合型表示体10から出射する光は、表示面12に付与された表示対象13を可視化させる。すなわち、第1角度範囲AR1から表示面12が視認され、結果として、表示面12に形成された表示対象13を観察することができる。なお、表示面12によって動く表示対象13を表示する場合、太陽電池パネル50から発電された電気を駆動に用いることが簡便である。
図3に、表示面12に形成される表示対象13の一例が示されている。複数の表示面12が、第1軸方向d1に配列されるとともに、各表示面12は、第1軸方向d1に直交する第2軸方向d2に直線状に延びている。したがって、第1軸方向d1における各位置に位置する表示面12が、当該表示面12の第1軸方向d1における位置に応じた表示対象要素13aを付与されることによって、第2軸方向d2に細長く延びる各第1光学機能面11に形成された表示対象要素13aの組み合わせとして二次元的な表示対象13を表示することが可能となる。図3に示された例では、アルファベットの大文字の「N」が表示対象13として表示されている。このように、複数の表示対象要素13aの組み合わせとして表示対象13を表示することで、各向き調整面21のサイズを小さくできるため、第1角度範囲AR1を広げたり太陽電池複合型表示体10のサイズを大きくしたとしても、より良好な表示対象13を観察できるようになる。
上述のように、本実施の形態の太陽電池複合型表示体10は、表示対象13が連続して表示される角度範囲を高い自由度で調整可能である。そのため、本実施の形態の太陽電池複合型表示体10は、様々な用途で利用可能であり、例えば、屋外看板、道路情報掲示板、建築物の外壁面などで用いられる数m〜数十mサイズの大型パネル用途や、ポスター、標識、建築物の内壁面などで用いられる数十cm〜数mサイズの中型パネル用途や、卓上スタンド、携帯端末などで用いられる数cm〜数十cmの小型パネル用途などを例示することができる。
一方、隣り合う向き調整面21の間に位置する各光透過面22は、本体部20のシート面、言い換えると、陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜し、本体部20の法線方向ndに対しても傾斜している。すなわち、各向き調整面21は、本体部20のシート面及び本体部20の法線方向ndのいずれとも非平行になっている。光透過面22を太陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜させることにより、太陽電池パネル50による発電が連続して安定して行われるようになる角度範囲である第2角度範囲AR2を、高い自由度で調整することが可能となる。
光透過面22が本体部20のシート面に対して傾斜する角度は、向き調整面21が光制御シート20のシート面に対して傾斜する角度と異なっている。とりわけ、図2に示す太陽電池複合型表示体の主断面において、光透過面22は、本体部20の法線方向ndに対して向き調整面21とは反対側に傾斜している。上述のように、各向き調整面21は、一端部21aが他端部21bよりも本体部20の法線方向ndにおいて太陽電池パネル50から離間するように、本体部20のシート面に対して傾斜している。したがって、各光透過面22は、第1軸方向d1において他側に位置する他端部22bが、第1軸方向d1において一側に位置する一端部22aよりも、本体部20の法線方向ndにおいて太陽電池パネル50から離間するように、本体部20のシート面に対して傾斜している。図2から理解され得るように、このような光透過面22は、法線方向ndに対して一側に傾斜した角度範囲からの光が、入射しやすくなる。したがって、法線方向ndに対して一側に傾斜した方向から太陽電池複合型表示体10に入射する光L22を、太陽電池パネル50により導きやすくなる。
このような傾向を強化する観点から、太陽電池複合型表示体の主切断面において、光透過面22は、第1軸方向d1における他側から一側に向けて、段階的又は連続的に、本体部20の法線方向ndにおいて太陽電池パネル50に接近していくことが好ましい。図示された例において、光透過面22は平面として形成されている。そして、図2に示された太陽電池複合型表示体の主切断面において、光透過面22は、第1軸方向d1における他側から一側に向けて、連続的に一定の傾斜の程度で、本体部20の法線方向ndに沿って太陽電池パネル50に接近していく。このような光透過面22によれば、法線方向ndに対して一側に傾斜した方向から太陽電池複合型表示体10に入射する光L22を、太陽電池パネル50により有効に導きやすくなる。
上述のように、本実施の形態のパネル部材10において、太陽電池パネル50により多くの光を導くべく、光透過面22は、広い角度範囲から入射する光を取り込む。このため、光透過面22に入射する光の入射角度によっては、光の反射損失が大きくなる。そこで、本実施の形態による太陽電池複合型表示体10において、光透過面22における光の反射損失を低減する工夫がなされている。図4に、光透過面22を拡大して示す。
図4に示すように、光透過面22に反射防止層15が積層されている。反射防止層15は、光透過面22の側から順に重ねられた複数の層16〜18を含み、各層16〜18は、当該層16〜18よりも光透過面22側に位置する他の層16、17よりも屈折率が低くなっている。図4に示す例では、反射防止層15は、光透過面22の側から順に重ねられた第1層16、第2層17及び第3層18を含んでいる。この場合、第3層18は、第1層16及び第2層17よりも屈折率が低く、第2層17は、第1層16よりも屈折率が低くなっている。一般に、光が相対的に低い屈折率をもつ層から相対的に高い屈折率をもつ層に進入する場合、2つの層の間に、相対的に高い屈折率をもつ層に近接して位置するほど屈折率が大きくなるように複数の層を介在させて、屈折率を徐々に変化させるのが、反射損失の低減の観点から好ましい。したがって、このような形態によれば、光透過面22に近接して位置する層16〜18ほど屈折率が大きくなり、屈折率差を徐々に変化させることができるため、光透過面22に入射する光の反射損失を効果的に低減することができる。
一例として、光透過面22に近接して位置する第1層16を樹脂層で形成し、第1層16に重ねられた第2層17を、第1層16をなす樹脂よりも屈折率の低い樹脂層で形成し、第2層17に重ねられた第3層18を屈折率の低い無機物を主成分として含む蒸着層で形成してもよい。
ただし、光透過面22における光の反射損失を低減する態様は、このような例に限定されない。他の例として、反射防止層は、多数の微小突起を含んでなるモスアイ構造を有した層であってもよい。あるいは、光透過面22に、多数のテクスチャー構造を付与して、光の反射損失を低減してもよい。
次に、向き調整面21と光透過面22との関係について述べる。図2に示す太陽電池複合型表示体の主断面において、向き調整面21と、第1軸方向d1における他側で当該向き調整面21と隣り合う光透過面22と、の第1軸方向d1に沿った間隔は、本体部20の法線方向ndにおいて太陽電池パネル50に接近していくにつれて、段階的又は連続的に狭くなっていく。言い換えると、向き調整面21上の各位置と、第1軸方向d1における他側で当該向き調整面21と隣り合う光透過面22と、の第1軸方向d1に沿った間隔が、当該向き調整面21上の位置が本体部20の法線方向ndに沿って太陽電池パネル50に接近していくにつれて、段階的又は連続的に狭くなっていく。したがって、向き調整面21の他端部21bは、他側に位置する光透過面22の一端部22aと最も接近する。
図示された実施の形態では、向き調整面21の他端部21bは、他側に位置する光透過面22の一端部22aと繋がっている。もっとも、向き調整面21の他端部21bは、他側に位置する光透過面22の一端部22aから離間していてもよい。
一方、向き調整面21の一端部21aは、第1軸方向d1における一側で当該向き調整面21と隣り合う光透過面22の他端部22bと繋がっている。もっとも、向き調整面21の一端部21aは、第1軸方向d1における一側で当該向き調整面21と隣り合う光透過面22の他端部22bから離間していてもよい。
また、図2に示す主切断面において、向き調整面21は、当該向き調整面21と隣り合う光透過面22の長さと等しくなっている。したがって、本体部20の第1面20aに占める向き調整面21の割合は、本体部20の第1面20aに占める光透過面22の割合と等しい。ただし、図2に示す主切断面において、向き調整面21は、当該向き調整面21と隣り合う光透過面22の長さと異なっていてもよい。とりわけ、向き調整面21が当該向き調整面21と隣り合う光透過面22よりも短くなっている場合、本体部20の第1面20aに占める向き調整面21の割合を、本体部20の第1面20aに占める光透過面22の割合よりも小さくすることができる。この場合、相対的に多くの光を光透過面22に導き易くなる傾向となり、結果として、より多くの光を太陽電池パネル50に導くことに寄与し得る。
また、図2に示す例では、向き調整面21が本体部20のシート面に対してなす角度θ1は、光透過面22が本体部20のシート面に対してなす角度θ2と等しい。ただし、向き調整面21が本体部20のシート面に対してなす角度θ1は、観察されることが意図された観察者による観察方向に応じて決定され、光透過面22が本体部20のシート面に対してなす角度θ2は、取り込むことが意図された外光の入射方向に応じて決定される。したがって、向き調整面21が本体部20のシート面に対してなす角度θ1は、光透過面22が本体部20のシート面に対してなす角度θ2と異なっていてもよい。
また、図2に示す例では、各向き調整面21及び各光透過面22が、平坦面からなる。
ただし、このような例に限定されず、各向き調整面21及び各光透過面22は、曲面からなってもよい。一例として、各向き調整面21及び各光透過面22は、レンズ面のような球面乃至湾曲面の一部をなしてもよい。より具体的には、各向き調整面21及び各光透過面22は、外方側に向かって凸となるように湾曲したレンズ面であってもよいし、内方側に向かって凹となるように湾曲したレンズ面であってもよい。向き調整面21が曲面からなる場合、「向き調整面21が平面に対して傾斜する」とは、図2に示す主切断面において、向き調整面21の両端部21a、21bを結ぶ直線が平面に対して傾斜することを意味する。また、向き調整面21が本体部20のシート面に対してなす角度θ1は、図2に示す主切断面において、向き調整面21の両端部21a、21bを結ぶ直線が本体部20のシート面に対してなす角度をいう。同様に、光透過面22が曲面からなる場合、「光透過面22が平面に対して傾斜する」とは、図2に示す主切断面において、光透過面22の両端部22a、22bを結ぶ直線が平面に対して傾斜することを意味する。また、光透過面22が本体部20のシート面に対してなす角度θ2は、図2に示す主切断面において、光透過面22の両端部22a、22bを結ぶ直線が本体部20のシート面に対してなす角度をいう。
次に、本体部20に対向して配置された太陽電池パネル50について説明する。太陽電池パネル50は、受光面50aで受光した光を電気エネルギーに変換する発電装置である。太陽電池パネル50の受光面50aには、第2角度範囲AR2から光透過面22に取り込まれた光L22が導かれるようになっており、この光L22が発電に利用される。
図2に示すように、太陽電池パネル50は、第1軸方向d1に配列された複数の向き調整面21及び複数の光透過面22の各々に対向して、平面状に延び広がっている。図示された例において、太陽電池パネル50は、本体部20のシート面と平行に延びている。したがって図示された例では、第1光学機能面11は、向き調整面21及び光透過面22の配列方向である第1軸方向d1と平行に延び広がり、且つ、向き調整面21及び光透過面22の長手方向である第2軸方向d2とも平行に延び広がっている。
このような太陽電池パネル50として、種々の形態のものを使用することができる。例えば、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等からなる平板状のシリコン基板を含むシリコン系太陽電池パネル、薄膜太陽電池パネル、カルコパイライト系太陽電池等を、太陽電池パネル50として用いることができる。
次に、上述してきた太陽電池複合型表示体10の製造方法の一例について、主として図7〜図9を参照しながら説明する。
まず、図7に示すように、透明樹脂を成型することにより、本体部20を作製する。成型は、熱溶融押出加工や射出成型等を採用することができる。図7に示すように、得られた本体部20の第1面20aには、複数の向き調整面21と複数の光透過面22とが交互に形成されている。
次に、図8に示すように、本体部20の向き調整面21に表示面12を形成する。一例として、インクジェット印刷によって、本体部20の向き調整面21に表示面12を形成する。その後、図9に示すように、本体部20の第2面20bに、太陽電池パネル50を接合する。これにより、太陽電池複合型表示体10が得られる。
次に、主として、図5及び図6を参照しながら、太陽電池複合型表示体10の作用について説明する。太陽電池複合型表示体10は、例えば、向き調整面21及び光透過面22の配列方向である第1軸方向d1が鉛直方向に沿うようにして、配置される。具体的には、第1軸方向d1における一側が、鉛直方向における上側に沿い、第1軸方向d1における他側が、鉛直方向における下側に沿うように、太陽電池複合型表示体10が配置される。
図5によく示されているように、傾斜した向き調整面21に配置された表示面12は、当該表示面12の正面方向から視認され易い。図5に示す例では、表示面12が本体部20の法線方向ndに対して第1軸方向d1における一側に傾斜しているため、当該法線方向ndに対して第1軸方向d1における他側に傾斜した方向D41、D42、D43から太陽電池複合型表示体10を観察したときに表示面12を視認し易くなる。このように、表示面12が配置された向き調整面21を本体部20の法線方向ndに対して傾斜させることにより、表示面12が観察される視野角となる第1角度範囲AR1を、高い自由度で調整することができる。したがって、観察者は、優れた視認性で表示対象13を観察することができ、且つ、優れた意匠性で表示対象13を表示することができる。
一方、向き調整面21とは異なる角度で傾斜した光透過面22は、向き調整面21を視認し易い方向D41、D42、D43とは異なる方向から入射する光L51、L52、L53を効率的に取り込むことが可能となる。図6に示す例では、光透過面22が本体部20の法線方向ndに対して第1軸方向d1における他側に傾斜しているため、当該法線方向ndに対して第1軸方向d1における一側に傾斜した方向から太陽電池複合型表示体10に入射する光L51、L52、L53を効率的に取り込むことが可能となる。光透過面22に取り込まれた光L51、L52、L53は、本体部20内を進行して太陽電池パネル50に導かれる。このように、光透過面22を向き調整面21とは異なる角度で本体部20の法線方向ndに対して傾斜させることにより、太陽電池パネル50に導かれるようになる太陽電池複合型表示体10への入射方向の角度範囲である第2角度範囲AR2を、高い自由度で調整することができる。したがって、本実施の形態による太陽電池複合型表示体10では、時間帯や季節に応じて入射方向を変化させる太陽光を、効率的に受光して、太陽電池パネル50での発電に利用することが可能となる。
以上のように、本実施の形態によれば、第1面20a及び第1面20aに対向する第2面20bを有するシート状の本体部20と、本体部20の第2面20bに対向して配置された太陽電池パネル50と、を備え、本体部20の第1面20aは、第1軸方向d1に交互に配列された複数の向き調整面21及び複数の光透過面22と、を含み、向き調整面21は、太陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜し、光透過面22は、太陽電池パネル50のパネル面に対して向き調整面21とは異なる角度で傾斜し、向き調整面21に、表示を行うための表示面12が配置されている。このような太陽電池複合型表示体10によれば、向き調整面21及び光透過面22が太陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜しているため、傾斜した向き調整面21及び光透過面22が、各々の正面方向から入射する光を有効に利用し易くなる。とりわけ、光透過面22は、向き調整面21と異なる角度で太陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜している。このため、向き調整面21に配置された表示面12は、光透過面22に取り込まれ易い光L22、L51〜L53の傾斜する方向とは異なる方向D21、D41〜D43から太陽電池複合型表示体10を観察したときに視認され易くなり、光透過面22は、向き調整面21を視認し易い方向D21、D41〜D43とは異なる方向から太陽電池複合型表示体10に入射する光L22、L51〜L53を有効に取り込む。このように、光透過面22を向き調整面21とは異なる角度で太陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜させることにより、向き調整面21に配置された表示面12を観察し得る視野角となる第1角度範囲AR1および太陽電池パネル50にて発電が連続して安定して行われるようになる角度範囲である第2角度範囲AR2を、高い自由度で調整することが可能となる。加えて、太陽電池パネル50が本体部20の第2面20bに対向して配置されているため、太陽電池パネル50の受光面50aが外部に露出していない。このため、太陽電池パネル50を目立たなくさせることができる。これらのことから、本実施の形態によれば、周囲の環境との調和を図ると共に、表示面12による表示及び太陽電池パネル50による発電の両立が効果的に可能となる。
ところで、向き調整面21に配置された表示面12にて形成される表示対象13を観察している際に、表示対象13とともに光透過面22を介して太陽電池パネル50が観察されると、表示対象13の視認性や意匠性を著しく害することになる。したがって、表示面12が観察され得る第1角度範囲AR1は、太陽電池パネル50が観察されるようになる第2角度範囲AR2と区分けされていること、すなわち重なり合っていないことが好ましい。
そこで、本実施の形態の太陽電池複合型表示体10では、図2に示す主切断面において、向き調整面21は、本体部20の法線方向ndに対して光透過面22とは逆側に傾斜している。このような形態によれば、向き調整面21に配置された表示面12は、光透過面22に取り込まれ易い光L22、L51〜L53の傾斜する方向とは逆の方向D21、D41〜D43から太陽電池複合型表示体10を観察したときに選択的に観察され易くすることができ、光透過面22は、向き調整面21を視認し易い方向D21、D41〜D43とは逆の方向から太陽電池複合型表示体10に入射する光L22、L51〜L53を選択的に取り込むことができる。具体的には、向き調整面21は、一端部21aが他端部21bよりも本体部20の法線方向ndにおいて太陽電池パネル50から離間するように、本体部20のシート面に対して傾斜し、光透過面22は、他端部22bが一端部22aよりも本体部20の法線方向ndにおいて太陽電池パネル50から離間するように、本体部20のシート面に対して傾斜している。この場合、本体部20の法線方向ndに対して第1軸方向d1における他側に傾斜した方向D21、D41〜D43から太陽電池複合型表示体10を観察したときに、光透過面22よりも向き調整面21に配置された表示面12を選択的に観察し易くすることができる。また、本体部20の法線方向ndに対して第1軸方向d1における一側に傾斜した方向から太陽電池複合型表示体10へ入射する光L22、L51〜L53を、向き調整面21よりも光透過面22に選択に導くことができる。
つまり、このような形態によれば、向き調整面21に配置された表示面12を観察し得る視野角となる第1角度範囲AR1が、パネル部材の法線方向ndに対して第1軸方向d1における他側に傾斜した方向に対応し、光透過面22を介して太陽電池パネル50に導かれるようになる太陽電池複合型表示体10への入射方向の角度範囲である第2角度範囲AR2が、パネル部材の法線方向ndに対して第1軸方向d1における一側に傾斜した方向に対応する。このため、第1角度範囲AR1と第2角度範囲AR2とが、区分けされやすくなる。言い換えると、第1角度範囲AR1と第2角度範囲AR2とが、重なり合いにくくなる。
このように第1角度範囲AR1と第2角度範囲AR2との重なり合いが少なくなれば、表示面12による表示機能および太陽電池パネル50での発電機能が、互いに悪影響を及ぼすことなく、より有効に発揮されるようになる。本実施の形態においては、表示面12に付与された表示対象13を観察している際に、表示対象13とともに光透過面22を介して太陽電池パネル50が観察されることを抑制することが可能となる。この場合、表示対象13の視認性や表示対象13の意匠性を改善することができる。
とりわけ、本実施の形態による太陽電池複合型表示体10では、表示面12を観察し得る視野角となる第1角度範囲AR1を鉛直方向における下側に傾斜した方向に設定し、太陽電池パネル50に導かれるようになる太陽電池複合型表示体10への入射方向の角度範囲である第2角度範囲AR2を鉛直方向における上側に傾斜した方向に設定している。この場合、典型的な利用として想定される表示板としての用途において太陽電池複合型表示体10を目線よりも高い位置に設置する場合に有効である。観察者は、鉛直方向における上側に見上げながら太陽電池複合型表示体10を観察するため、第1角度範囲AR1から表示面12に付与された表示対象13を観察することができる。一方、太陽光は、時間帯や季節に応じて入射方向が変化するが、鉛直方向における下側に傾斜した方向、あるいは、略水平方向に進みながら太陽電池複合型表示体10に入射する。このため、太陽光は、時間帯や季節に応じて入射方向が変化しても、第2角度範囲AR2から光透過面22に入射して太陽電池パネル50に向かうことができる。したがって、このような形態によれば、太陽電池パネル50による太陽光の受光および表示面12による表示を効果的に両立させることができる。
また、本実施の形態によれば、太陽電池複合型表示体10の主切断面において、向き調整面21と、第1軸方向d1における他側で当該向き調整面21と隣り合う光透過面22と、の第1軸方向d1に沿った間隔は、本体部20の法線方向ndにおいて太陽電池パネル50に接近していくにつれて、狭くなっていく。このような形態によれば、向き調整面21に配置された表示面12が、光透過面22へ入射すべき光を遮ってしまうこと、あるいは、光透過面22が、向き調整面21に配置された表示面12の観察を遮ってしまうこと、を効果的に抑制することができる。このため、表示面12が、第1角度範囲AR1内の方向から太陽電池複合型表示体10を観察したときに、より確実に表示機能を発揮することができる。また、光透過面22が、第2角度範囲AR2から太陽電池複合型表示体10へ入射する光をより確実に太陽電池パネル50へ導くことができる。
また、本実施の形態によれば、向き調整面21の一端部21aは、第1軸方向d1における一側で当該向き調整面21と隣り合う光透過面22の他端部22bと繋がっている。
このような形態によれば、向き調整面21の一端部21aと光透過面22の他端部22bとの間を、太陽電池複合型表示体10に入射する光が透過することを防止し、当該光を向き調整面21に配置された表示面12または光透過面22に入射させることができる。この結果、太陽電池複合型表示体10に入射する光を効率よく利用することができる。
また、本実施の形態によれば、向き調整面21の他端部21bは、第1軸方向d1における他側で当該向き調整面21と隣り合う光透過面22の一端部22aと繋がっている。
このような形態によれば、向き調整面21の他端部21bと光透過面22の一端部21aとの間を、太陽電池複合型表示体10に入射する光が透過することを防止し、当該光を向き調整面21に配置された表示面12または光透過面22に入射させることができる。この結果、太陽電池複合型表示体10に入射する光を効率よく利用することができる。
また、本実施の形態によれば、光透過面22に反射防止層15が積層され、反射防止層15は、光透過面22の側から順に重ねられた複数の層16〜18を含み、各層16〜18は、当該層16〜18よりも光透過面22側に位置する他の層16、17よりも屈折率が低くなっている。このような形態によれば、光透過面22に近接して位置する層16〜18ほど屈折率が大きくなり、屈折率差を徐々に変化させることができるため、太陽電池複合型表示体10の表面10aに入射する光の反射損失を効果的に低減することができる。
また、本実施の形態によれば、太陽電池パネル50は、本体部20の第2面20bに接合されている。しかしながら、各光透過面22に太陽電池パネル50を配置し、多数の太陽電池パネル50を使用することも考えられる。各太陽電池パネル50を対応する1つの光透過面22に重ねて配置する場合、多くの太陽電池パネル50を必要とするため、結果としてコストが高くなる。その上、1つ当たりの太陽電池パネル50の大きさをあまり大きくすることができず、発電効率をあまり高めることができない。一方、本実施の形態によれば、太陽電池パネル50は、各光透過面22に対向しながら本体部20の第2面20bに接合されている。この場合、複数の光透過面22に対応して太陽電池パネル50を配置することができるため、コストの増加を抑えることができる。その上、比較的大型の太陽電池パネル50を用いることも可能になるため発電効率を高めることも可能となる。
ところで、下記の表1は、世界の幾つかの国の主要な都市における季節ごとの南中高度(°)を示している。使用が想定される国の主要な都市における春分秋分の南中高度が第2角度範囲AR2に含まれることが好ましい。その国で有効に使用できる可能性が高いからである。例えば、使用されることが想定される国が日本の場合は54°から56°までの高度が第2角度範囲AR2に含まれるようにすればよい。さらに、49°から61°までの高度が第2角度範囲AR2に含まれるようにすれば、世界の多くの国で有効に使用できる可能性が高いため、好ましい。また、使用が想定される国の主要な都市における夏至の南中高度から冬至の南中高度までが第2角度範囲AR2に含まれることがさらに好ましい。その国で一年を通して有効に使用できる可能性が高いからである。例えば、使用されることが想定される国が日本の場合は31°から79°までの高度が第2角度範囲AR2に含まれるようにすればよい。さらに、25°から84°までの高度が第2角度範囲AR2に含まれるようにすれば、世界の多くの国で有効に使用できる可能性が高いため、好ましい。なお、所望の高度が第2角度範囲AR2に含まれることを容易にするために、第2角度範囲AR2の角度範囲が45°程度以上連続していることが好ましい。もっとも、太陽電池複合型表示体10を傾けて配置することによって、所望の高度を第2角度範囲AR2に含まれるようにすることも可能である。一方、第2角度範囲AR2の角度範囲の上限については、第1角度範囲AR1とのバランスで適宜設定すればよいが、135°程度未満とすることによって、本実施の形態の太陽電池複合型表示体10の特長をより発揮させることができる。
≪変形例≫
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
上述した実施の形態では、図2に示すように、表示面12が向き調整面21に印刷された例を示したが、表示面12を向き調整面21に配置する形態は、このような例に限定されない。図10に、表示面12を向き調整面21に配置する他の例を示す。図10に示す例では、表示面12は、可動手段30を介して向き調整面21に取り付けられ、向き調整面21に対して可動になっている。具体的には、可動手段30は、向き調整面21に対向して設けられた可動板31と、可動板31を保持する支点軸32と、向き調整面21から支点軸32まで延び当該支点軸32を回転自在に支持する支柱33と、を有している。可動板31の向き調整面21とは反対側を向く面に表示対象13を付与された表示面12が形成されている。支点軸32には、当該支点軸32を駆動させる不図示のモータが取り付けられている。
このような形態によれば、観察者が表示面12を観察する方向に応じて、不図示のモータによって支点軸32を回転させることによって可動板31の向きを調整することができる。これにより、可動板31に配置された表示面12の向きを、観察者が表示面12を観察する方向に合わせることができ、表示面12に付与された表示対象13を観察し得る視視野角となる第1角度範囲AR1を、高い自由度で調整し、且つ、広角化させることが可能となる。
また、上述した実施の形態では、図2に示すように、太陽電池パネル50が本体部20に接合されている。この太陽電池パネル50を本体部20に接合する層60について、図11を参照して詳しく説明する。図11は、太陽電池パネル50が樹脂からなる層60を介して本体部20に接合された例を示す。
図11に示す層60は、反射損失低減層として構成され、光透過面22から取り込んだ太陽光L22〜L24を効率よく太陽電池パネル50にて受光させると共に、本体部20と太陽電池パネル50とを接合する機能をもつ。図11に示すように、反射損失低減層60は、本体部20の第2面20bと太陽電池パネル50の受光面50aとの間で、本体部20の第2面20bと太陽電池パネル50の受光面50aとに隣接している。図11に示す反射損失低減層60は、本体部20の第2面20bの全面及び太陽電池パネル50の受光面50aの全面を隙間なく覆っている。
一例として、反射損失低減層60は、それ自体既知の種々のポリマー樹脂材料にて構成され得る。太陽光L22〜L24を効率よく太陽電池パネル50に受光させるためには、反射損失低減層60をなす材料は、光透過性に優れた材料からなるのがよい。また、本体部20と太陽電池パネル50とを安定して接合するためには、反射損失低減層60をなす材料は、本体部20をなす材料及び太陽電池パネル50をなす材料との密着性に優れた材料からなるのがよい。なお、反射損失低減層60は、単層からなってもよいし、多層からなってもよい。
図11に示す形態によれば、太陽電池パネル50の受光面50aを反射損失低減層60を介して本体部20の第2面20bに接合することにより、太陽電池パネル50の受光面50aの表面に空気層が形成され難い。仮に太陽電池パネル50の受光面50aの表面に空気層が形成されてしまうと、太陽電池パネル50の受光面50aに入射しようとする光L22〜L24が空気層と本体部20の第2面20bとの界面で全反射するおそれが高まり、光L22〜L24を効率よく太陽電池パネル50で利用することができないおそれが高まる。これに対して、図11に示す形態によれば、太陽電池パネル50の受光面50aの表面に空気層が形成され難いため、光透過面22から入射する太陽光L22〜L24を太陽電池パネル50の受光面50aに高い効率で取り込むことができる。
さらに、本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、太陽電池パネル50の受光面50aに太陽光L22〜L24を高い効率で取り込ませるためには、以下の条件を満たすことが好ましいことが知見された。前提として、本体部20の第1面20aのうち、本体部20の法線方向ndに沿って第2面20bから離間するように突出した位置を頂部23とし、本体部20の第1面20aのうち、本体部20の法線方向ndに沿って第2面20bに接近するように凹んだ位置を谷部24とする。この場合、頂部23は、1つの光透過面22の他端部22bと1つの向き調整面21の一端部21aとの接続位置として規定され、谷部24は、1つの光透過面22の他端部22bと1つの向き調整面21の一端部22aとの接続位置として規定される。
図11に示す断面において、一の光透過面22pと一の向き調整面21pとにより規定される一の頂部23を通って、前記一の向き調整面21pに隣り合う別の光透過面22qに入射した光L23、L24について着目する。さらに、この別の光透過面22qに入射した光L23、L24のうち、当該別の光透過面22qと隣り合う別の向き調整面21qと当該別の向き調整面21qに隣り合うさらに別の光透過面22rとにより規定される一の谷部24を通る光L23について考える。図11から理解されるように、本体部20の法線方向ndに対して一側に最も傾斜した方向から光透過面22の各位置に入射する光は、当該光透過面22の一側に位置する頂部23を通る光L23、L24である。ここでいう頂部23を通る光L23、L24とは、頂部23に接するようにして進行方向を維持したまま頂部23を通過する光である。そして、この頂部23を通って光透過面22に入射した光L23、L24のうち、本体部20への法線方向ndに対して一側に最も傾斜した方向から屈折率調整層60を通過する光は、谷部24にて遮られない光、すなわち谷部24を通る光L24である。なお、ここでいう谷部24を通る光L23とは、谷部24に接するようにして進行方向を維持したまま谷部24を通過する光である。
以上によれば、上記光L23は、本体部20への法線方向ndに対して一側に最も傾斜した方向から光透過面22に入射して、谷部24にて遮られることなく太陽電池パネル50に向かうことができる光であり、理論上太陽電池パネル50の受光面50aへの入射角が最も大きい光である。つまり、上記光L23は、光透過面22に入射する太陽光L22〜L24のうち、太陽電池パネル50の受光面50aにて極めて取り込まれ難い光である。したがって、この光L23がその光路中で全反射することなく太陽電池パネル50の受光面50aに進入していくことができれば、太陽電池パネル50の受光面50aに向かう他の光L23、L24も主として受光面50aにて取り込まれ得ると考えられる。
図11に示すように、光透過面22に入射した前記光L23が太陽電池パネル50の受光面50aに到達するまでに、本体部20と反射損失低減層60との間の界面及び反射損失低減層60と太陽電池パネル50との間の界面を少なくとも通過する。上述のように、反射損失低減層60は、太陽電池パネル50の受光面50aを隙間なく覆っているため、反射損失低減層60と受光面50aとの間に空気層が介在し難く、反射損失低減層60と受光面50aとの間の界面の反射損失の低減が図られている。したがって、前記光L23が本体部20と反射損失低減層60との間の界面にて全反射することなく反射損失低減層60を透過していくことができれば、太陽電池パネル50の受光面50aにさらに多くの光を取り込むことができると考えられる。以下、前記光L23が本体部20と反射損失低減層60との間の界面にて全反射しない条件について導く。
光L23が光透過面22に入射するときの入射角をα0とし、光L23が光透過面22で屈折した屈折角をα1とする。すなわち、入射角α0は、光透過面22に入射する光L23が、光透過面22の法線方向nd1に対してなす角度であり、屈折角α1は、光透過面22で屈折した光L23が、光透過面22の法線方向nd1に対してなす角度である。また、本体部20の第1面20aに隣接する層の屈折率をn0とし、本体部20の屈折率をn1とする。典型的には、本体部20の第1面20aに隣接する層は、空気層であり、その屈折率は1である。スネルの法則より、
[数1]
n0×sinα0=n1×sinα1 … (1)
が得られる。
さらに、光L23が反射損失低減層60に入射するときの入射角をα2とする。すなわち、入射角α2は、反射損失低減層60に入射する光L23が、反射損失低減層60の法線方向nd2に対してなす角度である。図11に示す例では、反射損失低減層60の法線方向nd2は、本体部20の法線方向ndに平行となっている。また、反射損失低減層60の屈折率をn2とする。前記光L23が本体部20と反射損失低減層60との間の界面にて全反射しないためには、前記光L23が反射損失低減層60に入射するときの入射角α2が本体部20と反射損失低減層60との界面における全反射臨界角よりも小さければよいから、
[数2]
n1×Sinα2<n2×1 … (2)
となる。
また、図11に示す幾何学的関係から、
[数3]
α2=90°−θ2+α1 … (3)
の関係式が成立する。
式(2)を満たすように反射損失低減層60の屈折率n2を決定することにより、前記光L23が本体部20と反射損失低減層60との間の界面にて全反射しないように、反射損失低減層60を選定することができる。したがって、式(2)を満たすように屈折率n2を決定することにより、光透過面22から太陽電池複合型表示体10に入射する多くの光L22〜L24を太陽電池パネル50の受光面50aで取り込むことができる。
以上のように、図11に示す形態によれば、本体部20の第2面20bと太陽電池パネル50の受光面50aとの間に配置された反射損失低減層60をさらに備え、反射損失低減層60は、本体部20の第2面20bと太陽電池パネル50の受光面50aとを接合している。このような形態によれば、太陽電池パネル50の受光面50aを反射損失低減層60を介して本体部20の第2面20bに接合することから、太陽電池パネル50の受光面50aの表面に空気層が形成され難い。このため、光透過面22から取り込まれた太陽光L22が太陽電池パネル50の受光面50aの表面付近で全反射してしまうことを抑制し、太陽光L22を受光面50aにて高い効率で取り込むことが可能となる。
また、図11に示す形態によれば、反射損失低減層60は、太陽電池パネル50の受光面50aを隙間なく覆っている。この場合、反射損失低減層60と太陽電池パネル50の受光面50aとの間に空気層が形成されるおそれを著しく低減させることができるため、光透過面22から取り込まれた太陽光L22を太陽電池パネル50の受光面50aにて高い効率で取り込むことが可能となる。
また、図11に示す形態によれば、一軸方向d1及び本体部20の法線方向ndの両方に平行な断面において、一の向き調整面21pと一の光透過面22pとにより規定され本体部20の第2面20bから離間するように突出した一の頂部23を通って、一の向き調整面21pに隣り合う別の光透過面22qに入射した光L23のうち、前記入射した別の光透過面22qに隣り合う別の向き調整面21qと当該別の向き調整面21qに隣り合うさらに別の光透過面22rとにより規定され本体部20の第2面20bに接近するように凹んだ一の谷部24を通る光L23が、反射損失低減層60に入射するときの入射角α2は、本体部20と反射損失低減層60との界面における全反射臨界角よりも小さい。このような形態によれば、光透過面22から入射する多くの光L22〜L24が本体部20と反射損失低減層60との界面で全反射することなく反射損失低減層60を透過していくことができる。このため、光透過面22から取り込まれた太陽光L22〜L24を太陽電池パネル50の受光面50aにてさらに高い効率で取り込むことが可能となる。
なお、本体部20と太陽電池パネル50との関係は、図11に示す例に限定されない。太陽電池パネル50が本体部20の第2面20bから離間していてもよい。