以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2は本発明の自律航走体の制御システムの実施の一形態を示すものである。
本発明の自律航走体の制御システムは、図1に示すように、自律航走するUUV(水中無人航走体)1と、該UUV1に追従するよう自律航走して該UUV1の上方の水面に位置するUSV2と、前記UUV1用の母船の内部、又は、陸上に設置した調定・遠隔制御装置3を備えた構成とする。前記調定・遠隔制御装置3は、前記UUV1に対し航走を指示するコマンドC1を出力する機能と、前記UUV1の位置、速度、進行方位、動力装置(アクチュエータ)の回転数、内部機器(搭載機器)の状態等のステータスSを確認し表示する機能を有するものである。
図2は、前記UUV1とUSV2と調定・遠隔制御装置3の連携を示すブロック図である。
前記UUV1は、自律航走を制御するためのUUV管制器4を有し、該UUV管制器4には音響通信機5が接続されている。これにより、前記UUV1では、前記音響通信機5を用いて、後述するUSV2の音響通信機10との間で、音響通信による相互通信を実施できる。したがって、前記UUV1では、このUSV2との音響通信による相互通信により、前記UUV管制器4より出力される前記ステータスSに関する情報は、前記USV2へ送信し、一方、前記USV2より受信する航走指示用のコマンドC1(又は後述するコマンドC2)は、前記UUV管制器4へ入力されるようにしてある。
前記調定・遠隔制御装置3には、無線通信機としての衛星通信機6と無線LAN通信機7が接続されている。
前記USV2は、自律航走を制御するためのUSV管制器8を有し、該USV管制器8には通信中継装置9が接続されている。
前記通信中継装置9には、前記UUV1との音響通信用の音響通信機10が接続されている。これにより、前記USV2では、前記音響通信機10と前記UUV1の音響通信機5との間での音響通信により受信する前記UUV1のステータスSに関する情報は、前記通信中継装置9に入力される。又、前記USV管制器8は、前記通信中継装置9より前記UUV1のステータスSに関する情報を取り込み、それを基に、該USV2自身の航走を、前記UUV1に追従して該UUV1の上方の水面に常に位置するように自律制御するようにしてある。
更に、前記通信中継装置9には、コマンド経路切替器11が接続され、該コマンド経路切替器11には、無線通信機としての衛星通信機12及び無線LAN通信機13が接続されている。これにより、前記USV2では、前記調定・遠隔制御装置3との間で、無線LAN通信用の電波が届く範囲内では双方の無線LAN通信機13と7を用いた無線LAN通信により、又、その範囲外では双方の衛星通信機12と6を用いた衛星通信により、前記コマンドC1及びUUV1のステータスSについての相互通信を行うようにしてある。
前記コマンド経路切替器11は、外部接続手段14を備えた構成として、該外部接続手段14に、調定・遠隔制御予備装置15を取り外し可能に接続できるものとしてある。
前記調定・遠隔制御予備装置15は、前記調定・遠隔制御装置3と同様に、前記UUV1に対し航走を指示するコマンドC2を出力する機能と、前記UUV1のステータスSの確認と表示を行う機能を備えた可搬型の端末であり、ノート型やタブレット型のコンピュータを用いることが好適であるが、それ以外の専用端末であってもよい。又、該調定・遠隔制御予備装置15は、前記USV2に搭乗する図示しない搭乗員が搬入して、前記コマンド経路切替器11の外部接続手段14に接続できるものであればよい。
前記コマンド経路切替器11の外部接続手段14は、前記調定・遠隔制御予備装置15との相互通信を実現できれば、接続方式は、無線LANや有線LAN、あるいは、その他、既存のコンピュータネットワークの形成手段のいずれを採用してもよい。
前記コマンド経路切替器11には、更に、無線通信障害検知装置16が接続されている。
前記無線通信障害検知装置16は、前記衛星通信機12よりコマンド経路切替器11へ入力される信号、及び、前記無線LAN通信機13よりコマンド経路切替器11へ入力される信号を常時監視して、前記衛星通信機12と6及び前記無線LAN通信機13と7を介した前記調定・遠隔制御装置3との無線通信が正常に行われているか、又は、通信途絶や信号異常等の障害が発生しているかを判断する機能を備える。更に、前記無線通信障害検知装置16は、前記調定・遠隔制御装置3との無線通信が正常であると判断した場合には、前記コマンド経路切替器11に対して、前記衛星通信機12又は無線LAN通信機13より入力されるコマンドC1を前記通信中継装置9へ出力するよう指令する機能を備える。一方、前記無線通信障害検知装置16は、前記無線通信に障害が発生していると判断した場合には、前記コマンド経路切替器11に対して、前記コマンドC1に代えて、前記外部接続手段14に接続された調定・遠隔制御予備装置15より入力されるコマンドC2を前記通信中継装置9へ出力するよう指令する機能を備える。
これにより、前記USV2では、前記調定・遠隔制御装置3との無線通信が正常である場合は、前記衛星通信機12又は無線LAN通信機13にて前記調定・遠隔制御装置3より受信するコマンドC1が、コマンド経路切替器11と通信中継装置9を経て音響通信機10へ送られて、UUV1に向けて送信される。一方、前記調定・遠隔制御装置3との無線通信に障害が発生しているときには、前記調定・遠隔制御予備装置15より出力されるコマンドC2が、コマンド経路切替器11と通信中継装置9を経て音響通信機10へ送られて、UUV1に向けて送信される。
なお、前記コマンド経路切替器11は、外部接続手段14に前記調定・遠隔制御予備装置15が接続されていない状態のときには、前記障害検知装置16より前記のようにコマンドC1に代えてコマンドC2を出力するよう指令が付与されると、単にコマンドC1の出力を停止するようにしてあるものとする。
前記コマンド経路切替器11は、前記通信中継装置9より入力する前記UUV1のステータスSの情報については、前記衛星通信機12、無線LAN通信機13、及び、調定・遠隔制御予備装置15のいずれにも送出するものとしてある。
前記UUV1は、前記UUV管制器4に接続された無線通信機として、衛星通信機17と無線LAN通信機18を装備した構成としてもよい。この構成によれば、前記UUV1が水面に浮上した状態で停止あるいは航走しているときは、該UUV1と前記調定・遠隔制御装置3との間で、無線LAN通信用の電波が届く範囲内では双方の無線LAN通信機18と7を用いた無線LAN通信により、又、その範囲外では双方の衛星通信機17と6を用いた衛星通信により、前記コマンドC1及びUUV1のステータスSに関する情報の相互通信を、前記USV2を介さずに直接行うことができるようになる。
以上の構成としてある本発明の自律航走体の制御システムを用いてUUV1の制御を行う場合は、予め、前記調定・遠隔制御装置3にてUUV1の航走内容を設定し、そのコマンドC1を出力させる。又、前記調定・遠隔制御装置3では、航走中のUUV1に対しても、必要に応じて適宜追加のコマンドC1を出力させる。
これにより、前記コマンドC1は、前記調定・遠隔制御装置3とUSV2との間の無線通信、及び、該USV2とUUV1との間の音響通信によりUUV1に送られてUUV管制器4に入力される。あるいは、前記UUV1が前記衛星通信機17及び無線LAN通信機18を装備した構成としてあり、且つ水面に浮上している場合は、前記コマンドC1が、前記調定・遠隔制御装置3とUUV1との間の無線通信により直接UUV1に送られてUUV管制器4に入力される。
したがって、前記UUV1は、前記コマンドC1に従った航走を行うようになる。
航走中のUUV1では、該UUV1のステータスSに関する情報が予め設定された或る時間間隔で前記UUV管制器4より出力されると、該ステータスSの情報は、該UUV1と前記USV2との間の音響通信、及び、該USV2と前記調定・遠隔制御装置3との間の無線通信により調定・遠隔制御装置3へ送られるため、該調定・遠隔制御装置3にて、前記UUV1のステータスSを確認することができる。
又、そのUUV1のステータスSに応じて、前記調定・遠隔制御装置3でUUV1に対する追加のコマンドC1を設定して出力させれば、前記と同様の処理により、該追加のコマンドC1に従うようにUUV1の航走を制御することができ、その制御の結果更新されるUUV1のステータスSは、調定・遠隔制御装置3で更に確認することができる。
更に、前記USV2に搭乗員(図示せず)が搭乗していて、該USV2に装備されたコマンド経路切替器11に前記調定・遠隔制御予備装置15が接続されている場合は、万一、前記調定・遠隔制御装置3とUSV2との間の無線通信に障害が生じても、該調定・遠隔制御予備装置15により、前記USV2の搭乗員が前記UUV1のステータスSを確認することができる。この状態で、USV2の搭乗員が、必要に応じて、前記調定・遠隔制御予備装置15でUUV1の航走に関するコマンドC2を設定して出力させれば、前記調定・遠隔制御装置3からのコマンドC1に代えて、前記コマンドC2に従うように前記UUV1の航走を制御することができ、その制御の結果更新されるUUV1のステータスSは、調定・遠隔制御予備装置15で更に確認することができる。
このように、本発明の自律航走体の制御システムによれば、前記調定・遠隔制御装置3とUUV1との間で、通信中継装置9を装備したUSV2を中継した相互通信を行うことができて、前記UUV1の航走を、前記調定・遠隔制御装置3で設定するコマンドC1により制御することができると共に、該調定・遠隔制御装置3にて、航走中の前記UUV1のステータスSを確認することができる。
又、前記UUV1のステータスSは、同時に前記USV2に装備した調定・遠隔制御予備装置15でも確認することができて、たとえば、UUV1に異常が発生し、浮上してきた場合等に、USV2の搭乗員が周囲の状況を判断し、USV2の一時的な手動操作を行うことで、該USV2を適切な方向に回避させることが可能になる。
更に、万一、前記調定・遠隔制御装置3と、USV2との間の無線通信に障害が発生した場合は、前記調定・遠隔制御装置3に代えて、前記USV2のコマンド経路切替器11に接続した調定・遠隔制御予備装置15により、コマンドC2による前記UUV1の航走の制御と、航走中のUUV1のステータスSの確認を行うことができるため、前記UUV1の調定・遠隔制御の健全性を維持することができる。
前記調定・遠隔制御予備装置15は、前記USV2に搭乗員が搭乗する場合に、該USV2に容易に装備することができ、又、不要な場合は簡単に取り外すことができる。
更に、前記コマンド経路切替器11の外部接続手段14には、WEBサーバ機能を持たせて、その機能を用いて前記調定・遠隔制御予備装置15を接続させるようにしてもよい。又、前記調定・遠隔制御予備装置15は、防水機能付きであることが望ましい。
前記本発明の自律航走体の制御システムの構成においては、調定・遠隔制御装置3は、UUV1の航走に関するコマンドC1を発するものとし、USV2は前記UUV1に追従して航走するものとして説明したが、前記調定・遠隔制御装置3により、USV2の母船からの発進や回収時にUUV1に追従する以外の航走を行わせるための制御用のコマンドを出力させると共に、前記UUV1のステータスSと同様に該USV2に関するステータスを確認、表示できるものとしてもよい。前記USV2用のコマンドは、前記調定・遠隔制御装置3より無線通信により前記USV2へ送り、通信中継装置9よりUSV管制器8に入力させるようにすればよい。
なお、本発明は前記実施の形態にのみ限定されるものではなく、図1に示したUUV1とUSV2の形状やサイズは、図示するための便宜上のものであり、実際のUUV1とUSVの形状やサイズを反映するものではない。又、調定・遠隔制御装置3及び調定・遠隔制御予備装置15の形状やサイズも図示するための便宜上のものであり、それぞれの実際の形状やサイズを反映するものではない。それぞれの機器のサイズの比も図示するための便宜上のものである。
調定・遠隔制御装置3は、複数のUUV1についての調定と遠隔制御を行う機能を有するものとしてもよい。
前記実施の形態では、一機のUUV1に対し、一機のUSV2が追従して航走する場合について示したが、複数機のUUV1の航走範囲が一機のUSV2から音響通信が可能な範囲内に収まる場合は、調定・遠隔制御装置3と該複数のUUV1との間の相互通信を、一機のUSV2に装備した通信中継装置9により中継させるようにしてもよい。
UUV1、USV2、調定・遠隔制御装置3用の無線通信機として、衛星通信機6,12,17と、無線LAN通信機7,13,18を示したが、無線LAN通信機7,13,18は省略した構成としてもよい。又、調定・遠隔制御装置3からUUV1及びUSV2の航走領域までに想定される距離間での通信が可能であれば、衛星通信機6,12,17以外の形式の無線通信機を採用してもよい。
前記USV2に装備されたコマンド経路切替器11は、USV2の搭乗員による手動操作で、通信中継装置9と音響通信機10を経てUUV1に向けて送信するコマンドを、前記調定・遠隔制御装置3からのコマンドC1に代えて、前記調定・遠隔制御予備装置15により出力するコマンドC2に強制的に切り替えるコマンド切替用スイッチを備えるようにしてもよい。この構成によれば、万一、UUV1に異常が発生した場合等に、USV2の搭乗員による航走領域の現場状況に応じたUUV1の制御を優先的に行わせることが可能になる。
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。