JP2015200835A - 撮像装置および位相推定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】取得した1枚の画像から試料の位相分布を比較的簡単に定量的に推定すること
【解決手段】デジタル顕微鏡において、照明光学系20は、その瞳面に、少なくとも2つの同心円によって分割され、互いに光強度分布が異なる少なくとも2つの領域を形成し、結像光学系30は、その瞳面に、光軸を中心とする1つの円によって分割され、入射光に互いに異なる一様な位相差をそれぞれ与える2つの領域を有する位相板34を備える。
【選択図】図1
【解決手段】デジタル顕微鏡において、照明光学系20は、その瞳面に、少なくとも2つの同心円によって分割され、互いに光強度分布が異なる少なくとも2つの領域を形成し、結像光学系30は、その瞳面に、光軸を中心とする1つの円によって分割され、入射光に互いに異なる一様な位相差をそれぞれ与える2つの領域を有する位相板34を備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、撮像装置および位相推定方法に関する。
特許文献1〜3は、染色されていない生体試料等の無色透明な試料を可視化する位相差顕微鏡を提案している。また、非特許文献1は、照明光学系に挿入されたウォラストンプリズムによって照明光を偏光方向が直交し位置が僅かにずれた2光束に分割し、結像光学系に挿入されたウォラストンプリズムが試料を透過した2光束を合成する微分干渉顕微鏡を提案している。試料からの透過または反射光と参照光との干渉パターンを撮像し、得られた1枚の画像に対しデータ解析を行うことによって試料の透過光の位相分布を推定するデジタルホログラフィ顕微鏡も知られている。その他、非特許文献2は、デジタル顕微鏡における試料の像面上の光強度分布と試料による位相変化量の関係を提案している。
C . J. Bellair, C. L. Curl, B. E. Allman, P. J. Harris, A. Roberts, L . M . D. Delbridge, K. A. Nugent共著、「Quantitative phase amplitude microscopy IV: imaging thick specimens」 Journal of Microscopy, Vol. 214, Part 1 April 2004, pp. 62-69
M.Shibuya,H.OOKI,K.Saito,Suezou Nakadate共著、「Generalizing Effective Point Spread Function and its Applicationto the Phase−Contrast Microscope」OPTICAL REVIEW, Vol. 12, No. 2, 2005, pp.105-108
従来、試料の位相情報を取得するには、高価な光学素子を用い、手法によっては複数回の撮像が必要であった。また、位相分布を定性的に可視化することはできても、定量的な推定までは困難であった。例えば、位相差顕微鏡や微分干渉顕微鏡で取得される像強度と試料による位相変化量の間には非線形な関係があるために、試料による位相変化量を定量的に正確に推定することは困難である。位相差顕微鏡は位相分布のエッジを強調するが、位相分布に忠実ではない。また、デジタルホログラフィ顕微鏡は、位相分布の推定精度は比較的高いが、従来の明視野顕微鏡の構成を大きく変更する必要がある点、観察像を位相分布に変換するための計算コストが大きい点、スペックルノイズに起因した誤差が発生する点に課題がある。
本発明は、取得した1枚の画像から試料の位相分布を比較的簡単に定量的に推定することが可能な撮像装置および位相推定方法を提供することを例示的な目的とする。
本発明の撮像装置は、標本を照明する照明光学系と、該照明光学系によって照明された前記標本の像を形成する結像光学系と、該結像光学系によって形成された前記標本の像を光電変換する撮像素子と、を有する撮像装置であって、前記照明光学系は、該照明光学系の瞳面に、少なくとも2つの同心円によって分割され、互いに光強度分布が異なる少なくとも2つの領域を形成し、前記結像光学系は、該結像光学系の瞳面に、該結像光学系の光軸を中心とする1つの円によって分割され、それぞれが入射光に互いに異なる一様な位相差を与える2つの領域を有する位相板を備えることを特徴とする。
本発明によれば、取得した1枚の画像から試料の位相分布を比較的簡単に定量的に推定することが可能な撮像装置および位相推定方法を提供することができる。
図1は、本実施形態のデジタル顕微鏡のブロック図である。デジタル顕微鏡は、光源10、照明光学系20、結像光学系(対物レンズ)30、撮像素子40、パーソナルコンピュータ(PC)50、表示部60を有する。デジタル顕微鏡は、明視野顕微鏡に光学素子22と位相板34を加えた構成を有している。
光源10は、可視光(例えば、波長0.4μm〜波長0.7μm)の光を発する。光源10の駆動はPC50によって制御される。
照明光学系20は、試料(標本)SPを光源10からの光で照明し、光学素子22とコンデンサーレンズ24を有する。光学素子22は照明光学系20の瞳面に配置され、コンデンサーレンズ24は光学素子22を通過した光を試料SPに集光する。
光学素子22は、照明光学系20の瞳面の光強度を変調するフィルタ、回折光学素子(CGH)、プリズム、マイクロミラーデバイスなどを使用することができる。光学素子22は、位相分布計測と通常観察を切り替えることができるように照明光学系20の光軸に対して挿脱可能であってもよいし、照明光学系20内に固定されていてもよい。
本実施形態では、照明光学系20の瞳面に配置される光学素子22によって、試料SPがない場合の結像光学系30の瞳面に形成される光強度分布を「有効光源」と呼ぶ。本実施形態の光学素子22は、少なくとも2つの同心円によって分割される少なくとも2つの領域を有する。これにより、本実施形態における有効光源は、図3(a)に示すような光軸を中心とする円形と輪帯が組み合わされた光強度分布か、図5(a)に示すような光軸を中心とする多重輪帯状の光強度分布を有する。円と輪帯が組み合わされた光強度分布の場合の輪帯領域と最も内側の円領域は異なる一様な光強度を持つ。また、多重輪帯状の光強度分布の場合、各輪帯は異なる一様な光強度を持つ。光学素子22は、最も外側の輪帯領域、最も内側の円領域、これら2つの領域に挟まれた領域の任意の輪帯の順に単位面積当たりの光強度が増大してもよい。
なお、有効光源の結像特性への影響は、有効光源の相対値(分布)が決定する。また、前述した通り、照明光学系の瞳と結像光学系の瞳は光学的に共役であるため、試料がない場合に結像光学系の瞳上に形成される照明光学系の絞り(フィルタ)の像が有効光源となる。したがって、結像特性へ影響を与えるのは、照明光学系の瞳における光強度分布である。この光強度分布と光学素子22の強度透過率分布は等価であるので、以下では光学素子22において、光強度と強度透過率を区別せず用いる。例えば、光学素子22の最も内側の同心円の半径は0.45〜0.55、光強度は0.05〜0.10の範囲、等と表現する。
試料SPは、例えば、染色されていない無色透明な生体試料等である観察対象である。デジタル顕微鏡は試料SPからの透過光の位相情報を定量的に取得する。
結像光学系30は、試料SPからの光を撮像素子40に結像する、つまり、試料SPの光学像を撮像素子40の像面に形成する。結像光学系30は、対物レンズ32、位相板34、結像レンズ36を有する。対物レンズ32、結像レンズ36は集光作用を有するコンデンサーレンズである。位相板34は、結像光学系30の瞳面に配置され、光学素子22と光学的に共役な関係にある。
位相板34は、光軸を中心とする1つの円によって分割される2つの領域を有し、位相板34の2つの領域は入射光に互いに異なる一様な位相差をそれぞれ与える。ここで、位相板34の領域の境界である円の半径は、有効光源において最も光強度が高い輪帯領域の外側の半径(図3(a)であれば0.55)と同一であることが好ましいが、後者の円形境界の半径の方が大きくてもよい。また、2つの領域に与える位相差は、ある整数nに対し、60°+360×nから130°+360×nの範囲にあることが好ましい。
撮像素子40は、結像光学系30が形成した光学像を光電変換する。
PC50は、撮像素子40から出力されるアナログ電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器、A/D変換器から出力されるデジタル信号にノイズ除去、量子化などの処理を施す画像処理手段を含む。なお、A/D変換器は撮像素子40と一体であってもよい。また、PC50はデジタル顕微鏡の各部の動作を制御すると共に試料SPの位相分布を推定する制御手段を含む。位相推定手段はPC50に接続された外部の位相推定装置であってもよい。また、位相推定方法としてパーソナルコンピュータ(PC)にインストールされるソフトウェア(プログラム)であってもよい。
なお、光学素子22、位相板34を用いずに撮像する通常観察モードでは、画像処理手段はガンマ補正やホワイトバランスなどを行うが、位相分布計測の場合にはこれらの階調補正は行わないことが望ましい。なぜなら、取得される像の光強度と試料による位相変化量の間には略線形な関係があるが、階調補正を行うとこの関係が崩れ、試料SPの位相分布の推定が困難になるためである。なお、図1に示す撮像装置において、通常観察を行うかどうかを、ユーザが選択してもよい。
表示部60は、ディスプレイなどから構成され、PC50から出力された試料SPの画像を表示する。
PC50は、1枚の画像によって試料の透過光の位相分布を推定する。PC50は、観察像を位相分布に変換する際に後述する数式1の近似(あるいは数式2)を導入し、計算を簡略にし、計算コストを減らしている。
試料SPに弱回折近似を仮定すると、非特許文献2により、観測される像面上の光強度分布I、試料SPによる位相変化量φ、試料SPの座標(x,y)における振幅透過率を1+P(x,y)の間には数式1の関係が成立する。
ここで、Re、Imはそれぞれ実部と虚部をとる演算を表し、*は畳み込み演算を表す。EPSF(Effective Point Spread Function)は、瞳関数(位相板34の複素振幅透過率)と有効光源とから決定される光学系に固有の関数である。
数式1から分かるように、Iとφの間には畳み込み演算を介した線形な関係があり、EPSFの形状の広がりはぼけとしてIに影響する。また、数式1の第2項は位相差顕微鏡や本実施形態では、ほぼ0となり、0にならない部分はオフセット成分となる。以上のことから、EPSFの広がりに起因する像のぼけを無視するならば、取得したデータIに対して線形演算を行えばφが近似的に推定できる。EPSFの広がりに起因する像のぼけを無視できる場合は、例えば、結像光学系の試料側開口数が0.65以上、好ましくは、0.7以上となる場合である。この時、φをデルタ関数に置き換えることができる。
PC50は、位相分布算出のためのパラメータであるオフセット値および係数を決定する。オフセット値は、例えば、撮像した1枚の画像の全画素値の平均値、中央値、最大値と最小値の平均値、試料SPの透明部分(背景)の値を用いることができるが、これらに限定されない。係数は、例えば、後述する数式2のCであり、ユーザが指定してもよいし、位相変化量が既知の試料を用いて取得したデータから決定してもよい。オフセット値および係数を決定は、事前になされてもよい。
PC50は、画像データから抽出されるオフセット値を全画素の輝度値から減算し、係数を乗じることで試料SPによる位相変化量の分布の推定値を算出する。「試料SPによる位相変化量の分布」とは、光軸と平行な方向で入射した平面波が試料SPの透過直後に有する位相分布を意味する。換言すると、試料SPを透過することで発生する位相の進みや遅れを、光軸に垂直な平面内の各位置において定量化した分布である。
算出された位相分布は、透明な試料の形態情報を得る目的で単独に使用することもできる。また、光学素子22と位相板34を用いずに撮像した画像に新たな情報を加える目的で使用することもできる。
本実施形態の位相分布推定方法は、試料の透過率分布が一様に近いほど誤差が小さいため、染色されていない生体試料など透過率が一様で位相のみ非一様な分布を持つ位相物体に特に好適である。
本実施形態で用いる光学部材は、強度か位相の一方だけを変調するため、位相差顕微鏡のリング状部材に比べ製造が容易であり、比較的安価で高精度であるという効果がある。また、実施形態の位相推定方法は通常の明視野顕微鏡の構成を変えずに、照明光学系20と結像光学系30に所定の光学部材を挿入するだけで実現可能である。さらには、取得データから位相分布を算出する方法は線形演算のため、計算コストが低い。そのため、他の位相差可視化方法に比べてコストおよび計算時間の点で優位性がある。
以下、実施例1による、光学素子22と位相板34を挿入した明視野顕微鏡で撮像した1枚の画像から試料SPによる位相変化量の分布(位相分布)を算出する方法について説明する。
図2(a)は、試料SPの振幅透過率を示す図であり、図2(b)は、試料SPのラジアン単位の位相分布を示す図である。この試料SPを本実施例の数値計算の評価に用いる。試料SPにxy軸を設定し、図2の横軸をx(μm)、縦軸をy(μm)とする。試料SPでは、背景の振幅透過率を一様に0.8に設定し、16個の正方形パターンをランダムに配置している。16個の正方形の大きさを0.5〜1.5μm、それらの振幅透過率を0.5〜0.9、それらの位相を−1.57〜1.57ラジアン(−90°〜90°)の範囲でランダムに与えている。
実施例1では、光源10の波長を0.55μm、結像光学系30の試料側開口数(対物NA)を0.7、結像倍率を10倍としている。
図3(a)は、光学素子22の透過率分布を示す図であり、横軸は規格化された半径の値、縦軸は透過率である。図3(a)の最も内側の同心円の半径は0.50、その外側の同心円の半径は0.55であり、光強度は、内側から順に0.07、1.00、0.00である。また、光軸が同心円の中心を通るとし、最外周の半径1の円は試料側開口数0.7の絞りに対応している。このように、最も外側の輪帯領域の光強度は最も内側の円領域の光強度よりも高い。
図3(b)は、位相板34のラジアン単位で示す位相分布である。円形部の半径は0.55であり、円形部の内側と外側の位相差は1.57ラジアン(90°)である。実施例1では、位相板34の光束が通過する全ての位置において透過率は100%であるが、95%以上であればよい。
観測される像面上の光強度分布をI、Iの最大値をmax[I]、Iの最小値をmin[I]、Cを係数、OFFをオフセット成分、試料SPの推定位相分布をφとした場合、数式2によってφを計算する。試料SPの位相分布と推定位相分布がシミュレーション上でよい一致を示すことから、本実施例では係数Cの値をπとした。係数CやOFFはシミュレーションによって決定することができる。
図3(c)に、図2の試料情報に基づいてシミュレートされた像面上の光強度分布Iから数式2のCの値をπとして算出した位相分布φを示す。
なお、図3(c)の効果を得るのに光学素子22の構成は図3(a)に示すものに限定されず、位相板34の構成は図3(b)に示すものに限定されない。例えば、図3(a)において、最も内側の同心円の半径は0.45〜0.55、光強度は0.05〜0.10の範囲であればよい。同様に、その外側の同心円の幅は0.03〜0.07、光強度は、0.90〜1.00であればよい。
比較例として、従来の位相差顕微鏡を使用して同様の計算を行った。位相差顕微鏡は、照明光学系の瞳面に輪帯形状の領域のみ照明光を透過する絞りを設け、結像光学系の瞳面に位相が1/4波長進み強度が減衰する効果を持つ輪帯形状の透光性光学部材を設け、絞りと透光性光学部材を互いに共役な関係に配置する。試料透過直後に直進光に対し1/4波長だけ位相が遅れる回折光は、光学部材を透過することで位相が1/4波長進む直進光に対し1/2波長の位相差をもつことになり、弱めあう干渉をする。この結果、試料の形状が非一様であり回折光が発生する位置と光学的に共役な像面上の位置においては、直進光と回折光の弱め合う干渉が起こるために像強度が低下する。一方、試料の形状が一様である位置と光学的に共役な像面上の位置においては、回折光が発生しないために弱め合う干渉が起こらず、像強度は低下しない。このように、試料の形状が観察画像の階調に変換され、無色透明な試料が可視化され、試料の形状に起因する透過光の位相分布を反映した観察像を得ることができる。
結像光学系の輪帯部は1.57ラジアン(90°)の位相差と1未満の透過率をもつ。図4(a)に位相差顕微鏡の有効光源(絞りの透過率分布)、図4(b)に位相差顕微鏡の結像光学系の瞳フィルタの振幅透過率分布、図4(c)に位相差顕微鏡の結像光学系の瞳フィルタの位相分布をラジアン単位でそれぞれ示す。ここで、輪帯の内側半径は0.90、外側半径は1.00であり、結像光学系の輪帯部の透過率は0.90である。
従来は、図4(a)に示す有効光源分布と図4(c)に示す瞳フィルタの位相分布が同一形状であったが、本実施例では、図3(a)と図3(b)に示すように異なる形状にしている。
図4(d)は、図2の試料情報に基づいてシミュレートされた像面上の光強度分布Iから数式2のCの値をπとして算出した位相分布φをラジアン単位で示す。座標(xi,yj)における試料SPの真の位相をφ0(xi,yj)とし、位相推定誤差を数式3のRMSE(Root Mean Square Error)によって定義する。例えば、図2の試料SPに対して、図2(b)がφ0(xi,yj)に相当する。RMSEは、1サンプリング点あたりの平均的な誤差をラジアン単位で表したものといえる。M,Nはそれぞれx,y方向のサンプリング点数である。
図3(c)の推定位相分布φに対するRMSEは0.20、図4(d)の推定位相分布φに対するRMSEは0.42であり、従来の位相差顕微鏡を使用した方法よりも実施例1の方法の方が、推定誤差が低い。
次に、図2の試料SPの代わりに16個の正方形パターンの大きさを0.5〜1.5μm、振幅透過率を0.5〜0.9、位相を−1.57〜1.57ラジアン(−90°〜90°)の範囲でランダムに100通り変化させ、同様の評価を行った。この100通りの試料SPに対してIをシミュレートした後に位相分布φを算出し、試料の真の位相分布φ0に基づきRMSEを算出した。この結果、実施例1の方法では100通りの試料に対するRMSEの平均値は0.22、標準偏差は0.11であった。一方、従来の位相差顕微鏡を使用する方法では、RMSEの平均値は0.42、標準偏差は0.13であり、試料が変化しても実施例1の推定方法ではより少ない誤差で試料の位相分布を推定できることがわかる。
また、図3(b)において、位相板34の円の内側と外側の位相差を変化させたとき、100通りの試料に対するRMSEの平均値は位相差が1.57ラジアン(90°)の場合に最小値0.21をとった。この時、RMSEの平均値の変化が0.21の5%以内に収まる範囲は、位相差が1.16ラジアン(66°)以上2.06ラジアン(118°)以下であった。以上より、任意の整数nに対し位相板34の位相差は1.16+2πnラジアン(66°)以上2.06+2πnラジアン(118°)以下に調整されることが望ましい。
なお、このようにして算出された位相分布は、試料の厚みや屈折率などの分布に換算して利用することが可能であることは言うまでもない。
実施例2では、明視野顕微鏡において、照明光学系20および結像光学系30の光路中に遮光部がある場合に、実施例1と同様に位相分布を推定する方法を説明する。
照明光学系20における遮光部は、図5(a)において、有効光源の中心の強度0の円形領域として示されている。すなわち、試料SPがない場合の結像光学系30の瞳面において、光軸と光軸から最も離れた光路との距離の30%の半径を有し、光軸を中心とする円形領域内に光線が入射しないような照明光学系20であると仮定する。
結像光学系30における遮光部は、図5(b)に示すように結像光学系30の瞳面において、光軸と光軸から最も離れた光路との距離の30%の半径を有し、光軸を中心とする円形領域とする。
試料SP、照明光の波長、対物NA、結像倍率は実施例1と同一とする。
図5(a)に示す有効光源を、照明光学系20の瞳面に配置された光学素子22によって形成する。ここで、光学素子22の最も内側の円の半径は0.33、その外側の同心円の半径は0.50、その外側の同心円の半径は0.60であり、光強度は内側から順に0.00、0.20、1.00、0.00である。また、光軸が同心円の中心を通るとし、最外周の半径1の円は開口数0.7の絞りに対応している。このように、最も外側の輪帯領域の光強度は最も内側の輪帯領域の光強度よりも高い。
結像光学系の瞳面には、図5(b)に示す透過率および図5(c)にラジアン単位で示す位相差を与える位相板34を配置する。ここで、位相板34の領域を決定する円の半径は0.60であり、円の内側の領域と外側の領域の位相差は1.57ラジアン(90°)である。
図5(d)に、図3の試料情報に基づいてシミュレートされた像面上の光強度分布Iから式(2)のCの値をπとして算出した位相分布φを示す。
なお、図5(d)の効果を得るのに光学素子22の構成は図5(a)に示すものに限定されず、位相板34の構成は図5(b)および(c)に示すものに限定されない。例えば、図5(a)において、遮光部の外側に形成される、内側の輪帯の幅を0.15〜0.20、光強度を0.18〜0.22、内側の輪帯の外側に形成される輪帯の幅を0.08〜0.12、光強度を0.90〜1.00としてもよい。
一方、実施例1と同じ位相差顕微鏡に対して同様の計算を行い比較する。但し、結像光学系の瞳面に図5(b)と同一の遮光部を加える点だけは実施例1と異なる。
実施例1と同様に位相推定誤差を数式3のRMSEを用いて評価すると、図5の方法に対するRMSEは0.16、位相差顕微鏡の方法に対するRMSEは0.38であった。また、実施例1と同様に試料SPをランダムに100通り変化させ、それぞれの場合について推定位相分布φのRMSEを算出した結果、図5の手法の100通りの試料SPに対するRMSEの平均値は0.21、同じく標準偏差は0.09であった。一方、位相差顕微鏡の方法ではRMSEの平均値は0.37、同じく標準偏差は0.13であった。このように、照明光学系20および結像光学系30の光路中に遮光部がある場合においても、本実施例の方法は試料SPの変化に依存せず位相差顕微鏡より少ない誤差で試料SPの位相分布を推定できる。
また、図5(c)において円の内側の領域と外側の領域の位相差を変化させたとき、100通りの試料に対するRMSEの平均値は位相差が2.04ラジアン(117°)の場合に最小値0.19をとった。この時、RMSEの平均値の変化が0.19の5%以内に収まる範囲は、位相差が1.72ラジアン(98°)以上2.27ラジアン(130°)以下であった。以上より、前記位相板の円の内側の領域と外側の領域の位相差は1.72+2πnラジアン(98°)以上2.27+2πnラジアン(130°)以下に調整されることが望ましい。
本発明は、透明性の高い試料を観察する顕微鏡の用途に適用することができる。
20…照明光学系、30…結像光学系、34…位相板、40…撮像素子
Claims (9)
- 標本を照明する照明光学系と、該照明光学系によって照明された前記標本の像を形成する結像光学系と、該結像光学系によって形成された前記標本の像を光電変換する撮像素子と、を有する撮像装置であって、
前記照明光学系は、該照明光学系の瞳面に、少なくとも2つの同心円によって分割され、互いに光強度分布が異なる少なくとも2つの領域を形成し、
前記結像光学系は、該結像光学系の瞳面に、該結像光学系の光軸を中心とする1つの円によって分割され、それぞれが入射光に互いに異なる一様な位相差を与える2つの領域を有する位相板を備えることを特徴とする撮像装置。 - 前記撮像素子の像面の光強度分布をI、前記標本の位相分布をφ、Iの最大値をmax[I]、Iの最小値をmin[I]、Cを係数、OFFをオフセット成分とすると、
に従って前記撮像素子から得られる1枚の画像から前記標本の位相分布を推定する位相推定手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。 - 前記照明光学系が該照明光学系の瞳面に形成する前記少なくとも2つの領域は、内側の円領域と、該円領域の光強度よりも高い外側の輪帯領域から構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
- 前記照明光学系が該照明光学系の瞳面に形成する前記少なくとも2つの領域は、最も内側の輪帯領域と、該輪帯領域の光強度よりも高い外側の輪帯領域から構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
- 前記照明光学系が該照明光学系の瞳面に形成する前記少なくとも2つの領域の単位面積当たりの光強度は、最も外側の輪帯領域、最も内側の円領域、前記最も外側の輪帯領域と前記最も内側の円領域に挟まれた領域の任意の輪帯領域の順に増大することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
- 前記結像光学系の瞳面に配置された位相板の前記1つの円の半径は、前記照明光学系が前記瞳面に形成する、最も光強度が高い輪帯領域の外側の半径と同一またはそれよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
- 光束が通過する前記結像光学系の瞳面のすべての位置において透過率が95%以上であることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
- 前記位相板が2つの領域に与える位相差は、ある整数nに対し、60°+360×nから130°+360×nの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
- 標本を照明する照明光学系と、前記照明光学系によって照明された前記標本の像を形成する結像光学系と、前記結像光学系によって形成された前記標本の像を光電変換する撮像素子と、を有する撮像装置であって、前記照明光学系は、該照明光学系の瞳面に、少なくとも2つの同心円によって分割され、互いに光強度分布が異なる少なくとも2つの領域を形成し、前記結像光学系は、該結像光学系の瞳面に、該結像光学系の光軸を中心とする1つの円によって分割され、入射光に互いに異なる一様な位相差を与える2つの領域を有する位相板を備える撮像装置から得られた1枚の画像から前記標本の位相分布を推定する位相推定方法であって、
前記撮像素子の像面の光強度分布をI、前記標本の位相分布をφ、Iの最大値をmax[I]、Iの最小値をmin[I]、Cを係数、OFFをオフセット成分とすると、
に従って前記標本の位相分布を推定することを特徴とする位相推定方法。
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JP2014080637A JP2015200835A (ja) | 2014-04-10 | 2014-04-10 | 撮像装置および位相推定方法 |
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CN108445555A (zh) * | 2018-05-09 | 2018-08-24 | 华南师范大学 | 超表面透镜 |
CN112731692A (zh) * | 2021-01-06 | 2021-04-30 | 上海交通大学 | 一种相位分布曲面的调控方法及系统 |
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- 2014-04-10 JP JP2014080637A patent/JP2015200835A/ja active Pending
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