JP2015200810A - 光学積層フィルムの製造方法、光学積層フィルム、光学素子、楕円偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】液晶層の下層である光学フィルムの熱収縮による変形及び液晶層の乾燥収縮や硬化収縮による変形が抑制され、濃淡ムラの発生が抑制された光学積層フィルムを得ることができる光学積層フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】光学フィルム3と基板1とを粘着剤2を介して貼り合わせる工程と、光学フィルム3上に液晶材料を含む液晶性組成物を塗布し、10〜200℃で加熱することで液晶材料を配向させ、光照射及び/又は加熱処理により液晶材料の配向状態を固定化して液晶層4を形成する工程とを含み、粘着剤2が、その剛性率の測定における粘着剤2へのせん断力をF(N)、せん断力の印加により生じた粘着剤2のせん断変形量をΔx(mm)とした場合に、粘着剤2の断面積1500mm2、測定温度100℃の条件で、Δx/Fの値が0.120mm/N以下となるものである、光学積層フィルムの製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】光学フィルム3と基板1とを粘着剤2を介して貼り合わせる工程と、光学フィルム3上に液晶材料を含む液晶性組成物を塗布し、10〜200℃で加熱することで液晶材料を配向させ、光照射及び/又は加熱処理により液晶材料の配向状態を固定化して液晶層4を形成する工程とを含み、粘着剤2が、その剛性率の測定における粘着剤2へのせん断力をF(N)、せん断力の印加により生じた粘着剤2のせん断変形量をΔx(mm)とした場合に、粘着剤2の断面積1500mm2、測定温度100℃の条件で、Δx/Fの値が0.120mm/N以下となるものである、光学積層フィルムの製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、光学積層フィルムの製造方法、光学積層フィルム、光学素子、楕円偏光板及び液晶表示装置に関する。
屈折率異方性を持つ光学積層フィルムは、液晶表示装置の画質向上に用いられるなど工業的に重要な役割を担っている。屈折率異方性を持つフィルムとしては、プラスチックフィルムの延伸によるものと、液晶を配向させたものとに大別できる。これらのうち液晶を配向させたフィルムは、多様な屈折率構造を実現できるポテンシャルを持っているため、特に注目されている。液晶高分子を配向してフィルム化した配向フィルムは、液晶表示装置用の色補償板や視野角改良板として画期的な性能を示し、液晶表示装置の高性能化、軽量化及び薄型化に寄与している。
例えば、膜厚方向により大きな屈折率を有するフィルムは、液晶表示装置の視野角改善に有効と考えられるが、このようなフィルムは液晶のホメオトロピック配向(垂直配向)を利用するのが近道と考えられる。液晶分子のホメオトロピック配向とは、液晶の長軸分子方向が基板に対して実質的に垂直方向に整列することである。
液晶をホメオトロピック配向させた液晶層を有する光学積層フィルムは、例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム等の透明な光学フィルムを、粘着剤を用いて基板に貼りつけた後、このCOPフィルム上に液晶材料を塗布し、加熱処理により液晶材料の配向状態を固定化して液晶層を形成することで製造される。ただし、透明な光学フィルムの中でもCOPフィルムは特に難接着材料であるため、液晶材料と積層形態にすることは容易ではない。例えば特許文献1では、液晶層を形成する液晶材料としてオキセタン基を有する(メタ)アクリル化合物を含有する液晶性組成物を用いることで、COPフィルム上に直接液晶性組成物を塗布し、加熱配向、及び重合による固定化を行って積層フィルムを得ている。
しかし、光学積層フィルムには、その製造時の加熱処理において液晶層の下層であるCOPフィルムが熱収縮したり、液晶層が乾燥収縮や硬化収縮することで、光学積層フィルムに皺やカールが発生しやすいという問題がある。皺やカールが発生すると、光学積層フィルムには畳の目のような濃淡ムラが生じ、色補償板や視野角改良板として求められる品質が十分に得られない。
光学積層フィルムにおける皺やカールの発生を改善する方法として、例えば特許文献2には、光学積層フィルムを構成する基材として線膨張係数が近い2つの基材を用いる方法が開示されている。
しかしながら、特許文献2に記載された方法では、線膨張係数が近い2つの基材を用いなければならないことから、選択できる基材の種類が限定されるという問題がある。また、特許文献2に記載された方法では、光学積層フィルムの皺やカールを抑制することができるが、基材の膨張及び収縮自体を抑制することはできない。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、液晶層の下層である光学フィルムの熱収縮による変形及び液晶層の乾燥収縮や硬化収縮による変形が抑制され、濃淡ムラの発生が抑制された光学積層フィルムを得ることができる光学積層フィルムの製造方法、光学積層フィルム、光学素子、楕円偏光板及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、光学フィルムと基板とを粘着剤を介して貼り合わせる工程と、上記光学フィルム上に液晶材料を含む液晶性組成物を塗布し、10〜200℃で加熱することで上記液晶材料を配向させた後、光照射及び/又は加熱処理することにより上記液晶材料の配向状態を固定化して液晶層を形成する工程と、を含み、上記粘着剤が、その剛性率の測定における上記粘着剤へのせん断力をF(N)、せん断力を印加したことにより生じた上記粘着剤のせん断変形量をΔx(mm)とした場合に、上記せん断力の印加方向に平行な上記粘着剤の断面の面積1500mm2、測定温度100℃の条件で、Δx/Fの値が0.120mm/N以下となるものである、光学積層フィルムの製造方法を提供する。
本発明の光学積層フィルムの製造方法では、液晶層の下層である光学フィルムを基板に貼り合わせる際に、100℃の条件で上記Δx/Fの値が0.120mm/N以下である粘着剤を用いている。粘着剤のΔx/Fの値が0.120mm/N以下であると、当該粘着剤及び基板の存在により、光学フィルムの熱収縮による変形及び液晶層の乾燥収縮や硬化収縮による変形が抑制され、光学積層フィルムに皺やカールが発生することを防ぐことができる。これは、光学フィルム及び液晶層が収縮するためには粘着剤がそれらに追従して変形する必要があるところ、Δx/Fの値が上記範囲内である粘着剤を用いることで粘着剤が追従せず、光学フィルムの熱収縮及び液晶層の乾燥収縮や硬化収縮を阻害するためである。その結果、得られる光学積層フィルムは、濃淡ムラの発生が十分に抑制されたものとなる。
また、本発明の製造方法は、上記液晶層を形成した後、上記基板及び上記粘着剤を上記光学フィルムから剥離する工程を更に含むことが好ましい。これにより、光学フィルム及び液晶層からなる光学積層フィルムが得られ、それを視野角改良フィルム等の様々な用途に適用することができる。
本発明の製造方法において、上記光学フィルムは、シクロオレフィンポリマーフィルムであることが好ましい。シクロオレフィンポリマーフィルムは、透明性が高く複屈折が小さい等、優れた光学特性を有しているため、視野角改良フィルム等の様々な用途に適用する光学積層フィルムの作製に適している。
本発明の製造方法において、上記基板は、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、強度及び耐熱性に優れるため、光学フィルムの熱収縮をより十分に抑制することができる。
本発明はまた、上記本発明の製造方法により得られた光学積層フィルムを提供する。本発明はまた、上記本発明の光学積層フィルムを含む光学素子を提供する。本発明はまた、上記本発明の光学積層フィルムと偏光板との積層体を含む楕円偏光板を提供する。本発明は更に、上記本発明の光学素子又は楕円偏光板を含む液晶表示装置を提供する。
本発明によれば、液晶層の下層である光学フィルムの熱収縮による変形及び液晶層の乾燥収縮や硬化収縮による変形が抑制され、濃淡ムラの発生が抑制された光学積層フィルムを得ることができる光学積層フィルムの製造方法、光学積層フィルム、光学素子、楕円偏光板及び液晶表示装置を提供することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
(光学積層フィルム及びその製造方法)
図1は、本発明の光学積層フィルムの製造方法により製造される光学積層フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す光学積層フィルム10は、基板1と、基板1上に粘着剤2を介して貼り付けられた光学フィルム3と、光学フィルム3上に形成された液晶層4とを備えるものである。以下、光学積層フィルム10を構成する各部材について説明する。
図1は、本発明の光学積層フィルムの製造方法により製造される光学積層フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す光学積層フィルム10は、基板1と、基板1上に粘着剤2を介して貼り付けられた光学フィルム3と、光学フィルム3上に形成された液晶層4とを備えるものである。以下、光学積層フィルム10を構成する各部材について説明する。
基板1は、光学積層フィルム10の作製時に光学フィルム3を支持するためのものである。そのため、基板1としては、光学フィルム3よりも熱収縮が小さいものを用いることが好ましい。基板1としては、光学フィルム3を支持できるものであれば特に限定されないが、例えば、樹脂フィルム、金属シート、超薄板ガラス等が用いられる。これらの中でも、ハンドリング性の点から、樹脂フィルムを用いることが好ましい。
基板1として樹脂フィルムを用いる場合、樹脂フィルムを構成する材料としては、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂;ナイロンなどのポリアミド;ポリエーテルイミド;ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンサルファイド;ポリフェニレンオキサイド;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリアクリレート、ポリメタクリレート;トリアセテートセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリプロピレン、ポリビニルアルコールなどの熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらの中でも、光学フィルム3をしっかりと固定して皺やカールの発生をより十分に抑制できる観点から、光学フィルム3の熱収縮率、並びに、液晶塗工層の乾燥収縮率及び硬化収縮率よりも小さな熱収縮率を持つような材料を用いることが好ましい。熱収縮率としては、例えば、150℃、30分の条件での収縮率が1%以下である材料が好ましい。これらをみたす材料として、例えば、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
基板1の厚みは特に限定されないが、10〜200μmであることが好ましく、30〜150μmであることがより好ましく、50〜100μmであることが特に好ましい。厚みを10μm以上とすることで、光学フィルム3に皺やカールが発生することを抑制しやすく、厚みを200μm以下とすることで、コストが抑えられ、また巻取時のロール径を小さくできるため、長尺ロール生産に有利となる。
次に、粘着剤2について説明する。粘着剤2は、基板1と光学フィルム3とを貼り合わせるためのものである。粘着剤2は、その剛性率の測定における粘着剤2へのせん断力をF(N)、せん断力を印加したことにより生じた粘着剤2のせん断変形量をΔx(mm)とした場合に、せん断力の印加方向に平行な粘着剤2の断面の面積1500mm2、測定温度100℃の条件で、Δx/Fの値が0.120mm/N以下となるものであることが必要である。粘着剤2の上記Δx/Fの値が0.120mm/N以下であることで、光学フィルム3の熱収縮による変形及び液晶層4の乾燥収縮や硬化収縮による変形を抑制して皺やカールの発生を抑制することができ、得られる光学積層フィルム10に濃淡ムラが発生することを抑制することができる。また、かかる効果をより十分に得る観点から、Δx/Fの値は0.110mm/N以下であることが好ましい。
また、粘着剤2の剛性率Gは、100℃において1.10×10−5N/mm2以上であることが好ましく、1.20×10−5N/mm2以上であることがより好ましく、3.70×10−5N/mm2以上であることが特に好ましい。粘着剤2の剛性率Gが1.10×10−5N/mm2以上であることで、光学フィルム3の熱収縮による変形及び液晶層4の乾燥収縮や硬化収縮による変形を抑制して皺やカールの発生をより十分に抑制することができ、得られる光学積層フィルム10に濃淡ムラが発生することをより十分に抑制することができる。
上記Δx/Fの値及び剛性率Gの値は、図3に示す方法により測定することができる。まず、図3(a)に示すように、第1の基材5と第2の基材6とを粘着剤2によって貼り合わせた積層体を作製する。この積層体について、図3(b)に示すように、第1の基材5を固定した状態で、第2の基材6を積層体の積層方向に垂直な方向(矢印Fの方向)に引っ張り、せん断力Fを印加する。このときのせん断力F及び粘着剤2のせん断変形量Δxを測定することにより、Δx/Fの値及び剛性率Gの値を算出することができる。剛性率Gの値は、下記式(I)により求められる。なお、本測定において、粘着剤2の厚みは光学積層フィルム10を構成する時の厚みと同一とし、粘着剤2の断面積(厚み方向に垂直な断面の面積)は1500mm2とし、測定温度は100℃とする。
G=(F/A)/(Δx/L) (I)
[式(I)中、Gは剛性率(N/mm2)、Fはせん断力(N)、Aはせん断力の印加方向に平行な粘着剤の断面の面積(mm2)、Δxはせん断変形量(mm)、Lは粘着剤の厚み(mm)、をそれぞれ示す。]
G=(F/A)/(Δx/L) (I)
[式(I)中、Gは剛性率(N/mm2)、Fはせん断力(N)、Aはせん断力の印加方向に平行な粘着剤の断面の面積(mm2)、Δxはせん断変形量(mm)、Lは粘着剤の厚み(mm)、をそれぞれ示す。]
上記測定は、恒温引張試験機(例えば、インストロン社製のINSTRON 4443等)を用いて実施することができる。評価サンプルは、例えば、粘着剤2が設置された第1の基材5を幅30mmのサイズに切り出した後、幅30mmのサイズに切り出した第2の基材6を粘着剤2と接触する長さ(せん断力印加方向)が50mmとなるように貼りあわせることで作製することができる。引張試験機の上側チャックに第1の基材5を、下側チャックに第2の基材6を取り付けた後、恒温槽へ投入し、温度安定化後に引張速度5mm/分等の条件で引張を開始する。得られたSSカーブから弾性変形区間のせん断変形量Δxとせん断力Fを読み取り、上記式(I)からΔx/Fの値及び剛性率Gの値を算出することができる。
粘着剤2の厚みは、0.001〜0.03mmであることが好ましく、0.002〜0.02mmであることがより好ましい。粘着剤2の厚みが厚すぎる場合、粘着力が大きくなりすぎて、光学積層フィルム形成後に粘着剤2を光学フィルム3から剥離できなくなってしまう場合がある。また、粘着剤の厚みが厚い場合、剛性率が高くても上記Δx/Fの値が大きくなってしまう。そのため、粘着剤の種類にもよるが、粘着剤2の厚みは一般的には0.03mm以下であることが好ましい。また、粘着剤2の厚みが0.001mm以上であることで、粘着力を十分に確保できる傾向がある。また、上記Δx/Fの値は、粘着剤2の厚みによって調整することができる。そのため、上記Δx/Fの値が上記範囲内となるように、粘着剤2の厚みを調整することが好ましい。
粘着剤2の構成材料は特に限定されず、光学的に透明なものあるいは光拡散性のもので構成することもできるし、不透明のもので構成することもできる。粘着剤2は、感圧式接着剤とも呼ばれ、押し付けるだけで他物質の表面に接着し、またこれを被着面から引き剥がす場合には、被着物に強度さえあればほとんど痕跡を残さずに除去できる粘弾性体である。粘着剤2としては、薄くとも十分な粘着性を発現するものが好ましい。粘着剤2としては、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、天然ゴム、合成ゴムエラストマー、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルキルエーテル、変性ポリオレフィン樹脂系や、それらにイソシアネート等の硬化剤を添加したものを適宜に選択して用いることができる。これらの粘着剤は光硬化型等の反応性であってもよい。なかでも、アクリル系の粘着剤は、ハンドリング性や透明性などの点から好ましいものの一つである。
次に、光学フィルム3について説明する。光学フィルム3は、液晶層4の下層となるものであり、例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルムや、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、アクリルフィルム等が用いられる。これらの中でも、透明性、耐熱性、低吸湿性、低複屈折性等に優れることから、COPフィルムが好ましく用いられる。
COPフィルムとは、COPを主成分としてなるフィルムであり、位相差機能を有するフィルムが好ましい。COPとは、ノルボルネン、テトラシクロドデセンや、それらの誘導体等の環状オレフィンから得られる樹脂の一般的な総称である。具体的には環状オレフィンの開環重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとのランダム共重合体、およびこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体等で変性したグラフト変性体等が例示できる。また、これらの水素化物も挙げられる。商品としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン、積水化学(株)製のエスシーナ、Topas Advanced Polymers GmbH製のTopas、三井化学(株)製のアペル等が挙げられる。これらのCOPフィルムは一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであってもよい。一軸延伸は、2つ以上のロールの周速差を利用した縦一軸延伸、またはポリマーフィルムの両サイドを掴んで幅方向に延伸するテンター延伸が好ましい。ポリマーフィルムを縦方向および横方向に延伸することにより、二軸性の光学異方性を発現させてもよい。また、Z軸配向処理したもの等が挙げられる。また、COPフィルムの接着性を制御する目的で、片面もしくは両面にコロナ処理、プラズマ処理、UV−オゾン処理、ケン化処理、溶剤処理等の表面処理を適宜行ってもよい。
COPフィルム面内のリターデーション値(以下、Re1と略記)は、フィルム面内の主屈折率をnx,ny、厚さ方向の主屈折率をnz、厚さをd1(nm)とすると、Re1=(nx−ny)×d1[nm]で表され、液晶表示装置の視野角改良フィルムとして使用する場合等用途の違いにより、また視野角改良フィルムで使用する場合においても液晶表示装置の方式や種々の光学パラメータに依存することから一概には言えないが、550nmの単色光に対して、Re1は、通常30nm〜500nm、好ましくは50nm〜400nmの範囲である。また、厚さ方向のリターデーション値(以下、Rth1と略記)は、Rth1={(nx+ny)/2−nz}×d1[nm]で表され、通常0〜300nm、好ましくは0〜200nm、さらに好ましくは0〜150nmに制御されたものである。COPフィルムの厚さは、10〜400μmであることが好ましく、15〜100μmであることが最も好ましい。なお、二枚以上のポリマーフィルムを用いて、フィルム全体としての光学的性質が上記の条件を満足してもよい。
上記Re1値及びRth1値を上記範囲にすることにより、液晶表示装置の視野角改良フィルムとしては、液晶表示の色調補正を行いながら視野角を広げることが可能となり、輝度向上フィルムとしては、良好な輝度向上効果を得ることができる。Re1値が30nmより小さい場合、あるいは500nmより大きい場合には、十分な視野角改良効果が得られないか、あるいは斜めから見たときに不必要な色付きが生じる恐れがある。また、Rth1値が0nmより小さい場合、あるいは300nmより大きい場合には、十分な視野角改良効果が得られないか、あるいは斜めから見たときに不必要な色付きが生じる恐れがある。
次に、液晶層4について説明する。液晶層4は、液晶材料が配向及び固定化された層である。液晶材料の配向は、用途に応じて選択されるため特に限定されないが、例えば、ホメオトロピック配向、コレステリック配向、ホモジニアス配向、チルト配向、ハイブリッド配向等が挙げられる。液晶材料の配向がホメオトロピック配向である場合、液晶セルがIPS(In−Plane Switching)である液晶表示装置において、光学積層フィルム10は視野角改良フィルムとして有用である。
液晶層4は、液晶材料を含む液晶性組成物を用いて形成することができる。以下では、液晶材料の配向がホメオトロピック配向である液晶層を形成するための液晶性組成物について説明する。液晶性組成物としては、オキセタン基を有する(メタ)アクリル化合物と液晶性化合物とからなる液晶性を示す組成物が好ましく用いられる。なお、本発明においては、「メタクリル」と「アクリル」とを総称して「(メタ)アクリル」と表記する。オキセタン基を有する(メタ)アクリル化合物としては、下記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物が好ましい。
式(1)、式(2)および式(3)において、R1は、それぞれ独立に、水素またはメチル基を表し、R2は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基を表し、L1は、それぞれ独立に、単結合、−O−、−O−CO−または−CO−O−を表し、mは、それぞれ独立に、1〜10の整数であり、nは、それぞれ独立に、0〜10の整数である。なお、L1が単結合とは、L1を介して結合している基が直接結合することを意味し、例えばA−L1−Bの場合、A−Bのことである。
これらの化合物は必ずしも液晶性を示す必要はない。また、式(1)〜(3)で表される化合物は2種以上の混合物として用いてもよい。これらの式(1)〜(3)で表される化合物は種々挙げることができるが、下記化合物を好ましい例として挙げることができる。
これらのオキセタン基を有する(メタ)アクリル化合物の合成法は特に制限されるものではなく、通常の有機化学の合成法で用いられる方法を適用することによって合成することができる。例えば、ウィリアムソンのエーテル合成や、縮合剤を用いたエステル合成などの手段でオキセタン基を持つ部位と(メタ)アクリル基を持つ部位をつなげることで、オキセタン基と(メタ)アクリル基との全く異なる2つの反応性基を持つオキセタン基を有する(メタ)アクリル化合物を合成することができる。合成にあたっては、オキセタン基がカチオン重合性を有するため、強い酸性条件下では、重合や開環などの副反応を起こすことを考慮して反応条件を選ぶ必要がある。
液晶性組成物中にオキセタン基を有する(メタ)アクリル化合物を含有することで、光学フィルム3としてCOPフィルムを用いた場合、難接着性材料であるCOPフィルムと液晶層4の密着力が大幅に向上する。液晶性組成物中にオキセタン基を有する(メタ)アクリル化合物を含有しない場合には、COPフィルムと液晶層4の密着力が低下する傾向がある。その作用機構は明らかではないが、オキセタン基を有する(メタ)アクリル化合物は、COPフィルムと親和性が十分ではない液晶性組成物との密着に何らかの仲介作用があると推定される。
液晶性組成物を構成する液晶性化合物としては、上記のオキセタン基を有する(メタ)アクリル化合物を除く液晶性を示す化合物であり、重合性基を有する液晶性モノマーや、主鎖型または側鎖型液晶性ポリマー等が挙げられる。主鎖型液晶性ポリマーとしてはポリエステル、ポリエステルアミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート等を挙げることができる。また、側鎖型液晶性ポリマーとしてポリ(メタ)アクリレート、ポリマロネート、ポリエーテル、ポリシロキサン等を挙げることができる。これらの中でも側鎖型液晶性ポリマーが好ましく、特に下記式(4)で表される側鎖型液晶性ポリマーが好ましい。
式(4)において、R3は、それぞれ独立に、水素またはメチル基を表し、R4は、それぞれ独立に、水素、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シアノ基、ブロモ基、クロロ基、フルオロ基またはカルボキシル基を表し、R5は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基を表し、R6は、炭素数1〜24の炭化水素基を表し、L2は、それぞれ独立に、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−CH=CH−または−C≡C−を表し、pは、1〜10の整数を表し、qは0〜10の整数を表し、a、b、c、d、eおよびfは、ポリマー中の各ユニットのモル比(a+b+c+d+e+f=1.0、ただし、c+d+e=0ではない。また、置換基のみ異なるユニットの場合は、同じユニットとしてモル比をカウントする)を表す。さらに、式(4)で表されるポリマーは、液晶性を示すことが必要である。
この要件を満たせば、ポリマー中の各ユニットのモル比は任意でよいが、以下のとおりであることが好ましい。
a:好ましくは0〜0.80、より好ましくは0.05〜0.50
b:好ましくは0〜0.90、より好ましくは0.10〜0.70
c:好ましくは0〜0.50、より好ましくは0.10〜0.30
d:好ましくは0〜0.50、より好ましくは0.10〜0.30
e:好ましくは0〜0.50、より好ましくは0.10〜0.30
f:好ましくは0〜0.30、より好ましくは0.01〜0.10
a:好ましくは0〜0.80、より好ましくは0.05〜0.50
b:好ましくは0〜0.90、より好ましくは0.10〜0.70
c:好ましくは0〜0.50、より好ましくは0.10〜0.30
d:好ましくは0〜0.50、より好ましくは0.10〜0.30
e:好ましくは0〜0.50、より好ましくは0.10〜0.30
f:好ましくは0〜0.30、より好ましくは0.01〜0.10
また、R4は、好ましくは、水素、メチル基、ブチル基、メトキシ基、シアノ基、ブロモ基、フルオロ基であり、特に好ましくは、水素、メトキシ基、またはシアノ基である。また、L2は、好ましくは、単結合、−O−、−O−CO−または−CO−O−である。さらに、R6は、好ましくは、炭素数2、3、4、6、8または18の炭化水素基である。
上記の側鎖型液晶性ポリマーは、各成分に該当するそれぞれの(メタ)アクリル化合物の(メタ)アクリル基をラジカル重合またはアニオン重合により共重合することにより容易に合成することができる。重合条件は特に限定されるものではなく、通常の条件を採用することができる。
側鎖型液晶性ポリマーは、重量平均分子量が1,000〜200,000であるものが好ましく、3,000〜50,000のものが特に好ましい。この範囲外では強度が不足したり、配向性が悪化したりして好ましくない。
液晶層4の形成に使用される液晶性組成物は、さらに下記一般式(5)で表されるジオキセタン化合物を含有してもよい。一般式(5)で表されるジオキセタン化合物は、液晶性の有無を問わず使用できるが、液晶性を示すものが好ましい。
式(5)において、R7は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基を表し、L3は、それぞれ独立に、単結合または−(CH2)n−(nは1〜12の整数)を表し、X1は、それぞれ独立に、単結合、−O−、−O−CO−または−CO−O−を表し、M1は、下記式(6)または式(7)で表される基のいずれかであり、下記式(6)および式(7)中のP1は、それぞれ独立に下記式(8)から選ばれる基を表し、P2は下記式(9)から選ばれる基を表し、L4は、それぞれ独立に単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−O−CO−または−CO−O−を表す。
−P1−L4−P2−L4−P1− (6)
−P1−L4−P1− (7)
−P1−L4−P2−L4−P1− (6)
−P1−L4−P1− (7)
上記式(8)および式(9)において、Et、iPr、nBuおよびtBuは、それぞれエチル基、イソプロピル基、ノルマル−ブチル基およびターシャリー−ブチル基を表す。
上記式(5)において、M1基から見て左右のオキセタン基を結合している連結基は異なっても(非対称型)、同一でも(対称型)よく、液晶性は構造により異なるが示さなくともよい。
上記式(5)で表される化合物は、L3、X1およびM1の組み合わせから多くの化合物が例示されるが、好ましくは下記の化合物を挙げることができる。
これらの化合物は有機化学における通常の合成方法に従って合成することができ、合成方法は特に限定されるものではない。
液晶性組成物において、式(1)〜(3)で表されるいずれかのオキセタン基を有する(メタ)アクリル化合物、液晶性化合物および必要に応じて添加される式(5)で表されるジオキセタン化合物の各成分の組成(質量比)は、式(1)〜(3)で表されるオキセタン基を有する化合物:液晶性化合物:式(5)で表されるジオキセタン化合物=1〜30:100:0〜40であることが好ましく、より好ましくは、3〜20:100:0〜30である。この範囲外では、ホメオトロピック配向保持能、及び、COPフィルムと液晶層4の層間密着力が低下する傾向がある。
上記液晶性組成物は配向処理された後、当該組成物に含まれるカチオン重合性基を重合させて架橋することにより、当該液晶状態が固定化される。これにより、光学積層フィルムの耐熱性が向上する。従って、カチオン重合を容易に速やかに進行させるため、液晶性組成物中に、光や熱などの外部刺激でカチオンを発生する光カチオン発生剤及び/又は熱カチオン発生剤を含有させておくことが好ましい。また、必要によっては各種の増感剤を併用してもよい。
光カチオン発生剤とは、適当な波長の光を照射することによりカチオンを発生できる化合物を意味し、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系などを例示することが出来る。これら化合物の対イオンとしては、アンチモネート、フォスフェート、ボレートなどが好ましく用いられる。具体的な化合物としては、Ar3S+SbF6 −、Ar3P+BF4 −、Ar2I+PF6 −(ただし、Arはフェニル基または置換フェニル基を示す。)などが挙げられる。また、スルホン酸エステル類、トリアジン類、ジアゾメタン類、β−ケトスルホン、イミノスルホナート、ベンゾインスルホナートなども用いることができる。
熱カチオン発生剤とは、適当な温度に加熱されることによりカチオンを発生できる化合物であり、例えば、ベンジルスルホニウム塩類、ベンジルアンモニウム塩類、ベンジルピリジニウム塩類、ベンジルホスホニウム塩類、ヒドラジニウム塩類、カルボン酸エステル類、スルホン酸エステル類、アミンイミド類、五塩化アンチモン−塩化アセチル錯体、ジアリールヨードニウム塩−ジベンジルオキシ銅、ハロゲン化ホウ素−三級アミン付加物などを挙げることができる。
これらのカチオン発生剤の液晶性組成物中への添加量は、液晶性組成物を構成する化合物のメソゲン部分やスペーサ部分の構造や、オキセタン基当量、液晶性組成物の配向条件などにより異なるため一概には言えないが、側鎖型液晶性ポリマーに対し、通常100質量ppm〜20質量%、好ましくは1000質量ppm〜10質量%、より好ましくは0.5質量%〜8質量%、最も好ましくは1質量%〜6質量%の範囲である。添加量が100質量ppmよりも少ない場合には、発生するカチオンの量が十分でなく重合が進行しにくい傾向があり、また20質量%よりも多い場合には、液晶層4中に残存するカチオン発生剤の分解残存物等が多くなり耐光性などが悪化するおそれがあるため好ましくない。
液晶性組成物には、液晶性組成物の液晶性を損なわない範囲で混和し得る種々の化合物を含有することができる。含有することができる化合物としては、ビニル基、(メタ)アクリル基等のラジカル重合性基やオキセタン基(上記のオキセタン基を有する化合物を除く)、オキシラニル基、ビニルオキシ基などのカチオン重合性基を有する各種の重合性化合物、カルボキシル基、アミノ基、イソシアナート基などの反応性基を有する化合物、フィルム形成能を有する各種の高分子化合物などが挙げられる。また、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤などを、さらに反応性の官能基を有する化合物や低分子または高分子液晶物質を用いた場合は、それぞれの官能基に適した反応開始剤や活性化剤、増感剤等を、本発明の目的を逸脱しない範囲内で添加してもよい。反応性基を有する液晶性組成物は、所望の配向を実現させた後、当該反応性基を反応させるに適した条件下で反応を行わしめ、架橋や分子量増大等により、目的とする最終製品の機械強度等の向上に寄与させることもできる。
次に、光学積層フィルム10の製造方法について説明する。光学積層フィルム10の製造方法は、光学フィルム3と基板1とを粘着剤2を介して貼り合わせる工程(以下、「貼り合わせ工程」とも言う)と、光学フィルム3上に液晶材料を含む液晶性組成物を塗布し、10〜200℃で加熱することで液晶材料を配向させた後、光照射及び/又は加熱処理することにより液晶材料の配向状態を固定化して液晶層4を形成する工程(以下、「液晶層形成工程」とも言う)と、を含み、液晶層4を形成した後、基板1及び粘着剤2を光学フィルム3から剥離する工程(以下、「剥離工程」とも言う)を更に含んでいてもよい。上記製造方法において、粘着剤2は、上述した通り評価温度100℃、断面積1500mm2におけるΔx/Fの値が0.120mm/N以下となるものである。
貼り合わせ工程において、光学フィルム3と基板1とを粘着剤2を介して貼り合わせる方法としては、基板1上に粘着剤2の溶液を塗布した後、その塗膜上に光学フィルム3を被せて塗膜を乾燥させる方法、基板1上に粘着剤2の溶液を塗布乾燥し、粘着力及び剛性率を安定化させた後に光学フィルム3を貼合する方法、基板1上に粘着剤2の膜を形成し、粘着力及び剛性率を安定化させた後に光学フィルム3を貼合する方法等が挙げられる。溶液の調製に用いる溶媒に関しては、粘着剤2に使用される各種化合物を溶解でき適当な条件で除去できて、かつ、基板1及び光学フィルム3への影響が少ない溶媒であれば特に制限はなく、一般的にアセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ブトキシエチルアルコール、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノール、ベンジルオキシエチルアルコールなどのエーテルアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類、フェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系などやこれらの混合系が好ましく用いられる。また、基板1上に均一な塗膜を形成するために、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤などを溶液に添加してもよい。
塗布方法については、塗膜の均一性が確保される方法であれば、粘着剤2を直接塗布する方法でも、粘着剤2の溶液を塗布する方法でも、特に限定されることはなく公知の方法を採用することができる。塗布方法としては、例えば、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式、ディスペンサー方式、グラビアコート方式、マイクログラビア方式、バーコート方式、スクリーン印刷方式、キスコート方式、リップコート方式、ダイコート方式などを挙げることができる。これらの中でも、グラビアコート方式、キスコート方式、リップコート方式、ダイコート方式が好ましい。また、基板1上に均一な塗膜を形成するために、塗布する前に表面改質処理として、基板1にコロナ処理やプラズマ処理を行ってもよい。
粘着剤2の溶液を塗布する方法では、塗布後に溶媒を除去するための乾燥工程を行うことが好ましい。この乾燥工程は、塗膜の均一性が維持される方法であれば、特に限定されることなく公知の方法を採用することができる。例えば、ヒーター(炉)、温風吹きつけなどの方法が挙げられる。乾燥条件は、使用する溶媒や粘着剤の種類等によって適宜調整すればよいが、通常、室温〜150℃で0.1〜30分である。
液晶層形成工程において、液晶性組成物を光学フィルム3上に展開して液晶層4を形成する方法としては、液晶性組成物の溶液を光学フィルム3上に塗布後、塗膜を乾燥して溶媒を除去させる方法が挙げられる。溶液の調製に用いる溶媒に関しては、液晶性組成物に使用される各種化合物を溶解及び/又は分散でき適当な条件で除去できて、かつ、光学フィルム3への影響が少ない溶媒であれば特に制限はなく、一般的にアセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ブトキシエチルアルコール、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノール、ベンジルオキシエチルアルコールなどのエーテルアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類、フェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系などやこれらの混合系が好ましく用いられる。また、光学フィルム3上に均一な塗膜を形成するために、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤などを溶液に添加してもよい。
塗布方法については、塗膜の均一性が確保される方法であれば、液晶性組成物を直接塗布する方法でも、液晶性組成物の溶液を塗布する方法でも、特に限定されることはなく公知の方法を採用することができる。塗布方法としては、例えば、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式、ディスペンサー方式、グラビアコート方式、マイクログラビア方式、バーコート方式、スクリーン印刷方式、キスコート方式、リップコート方式、ダイコート方式などを挙げることができる。これらの中でも、グラビアコート方式、キスコート方式、リップコート方式、ダイコート方式が好ましい。また、他の塗布方法として、ローラーコート法、ナイフコート法、ブレードコート法、ロッドコート法、ディップコート法、スプレイコート法、カーテンコート法、スライドコート法、スロットコート法などを挙げることができる。これらの中でも、制御が容易であるとともに、膜厚を精度よく均一にできる観点から、スライドコート法及びスロットコート法が好ましい。また、光学フィルム3上に均一な塗膜を形成するために、塗布する前に表面改質処理として、光学フィルム3にコロナ処理やプラズマ処理を行ってもよい。
液晶性組成物の溶液を塗布する方法では、塗布後に溶媒を除去するための乾燥工程を行うことが好ましい。この乾燥工程は、塗膜の均一性が維持される方法であれば、特に限定されることなく公知の方法を採用することができる。例えば、ヒーター(炉)、温風吹きつけなどの方法が挙げられる。乾燥条件は、使用する溶媒や液晶性組成物の種類等によって適宜調整すればよいが、通常、室温〜150℃で0.1〜30分である。塗布膜厚は、用いる液晶性組成物や得られる液晶層4の用途等により調整されるため一概には決められないが、乾燥後の膜厚で0.1〜50μm、好ましくは0.2〜20μm、さらに好ましくは0.3〜10μmである。膜厚がこの範囲外では、目的とする効果が得られない、配向が不十分になる、などして好ましくない。
続いて、光学フィルム3上に形成された液晶層について、熱処理などの方法で液晶を配向させた後、光照射及び/又は加熱処理で反応性基を反応させ当該配向を固定化する。最初の熱処理では、使用した液晶性組成物の液晶相発現温度範囲内で所望の温度に加熱することで、該液晶性組成物が本来有する自己配向能により液晶を配向させる。熱処理の条件としては、用いる液晶性組成物の液晶相挙動温度(転移温度)により最適条件や限界値が異なるため一概には言えないが、通常10〜200℃、好ましくは30〜150℃の範囲であり、該液晶性組成物のガラス転移点(Tg)以上の温度、さらに好ましくはTgより10℃以上高い温度で熱処理するのが好ましい。あまり低温では、液晶配向が充分に進行しないおそれがあり、また高温では液晶性組成物や光学フィルム3に悪影響を与えるおそれがある。また、熱処理時間については、通常3秒〜30分、好ましくは10秒〜10分の範囲である。3秒より短い熱処理時間では、液晶配向が充分に完成しないおそれがあり、また30分を超える熱処理時間では、生産性が悪くなるため、どちらの場合も好ましくない。
液晶層において上記の方法により液晶材料の配向を形成したのち、反応性基を含有する液晶性組成物を用いた場合は、当該液晶材料の配向状態を保ったまま液晶性組成物中に含まれる反応開始剤の機能を発現させ反応性基を反応させて配向を固定化する。
反応開始剤が光の照射により開始剤の機能を発現する場合、用いる反応開始剤の吸収波長領域にスペクトルを有するようなメタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、アークランプ、レーザーなどの光源からの光を照射し、反応開始剤を活性化させる。このときの積算照射量としては、通常10〜2000mJ/cm2、好ましくは50〜1000mJ/cm2の範囲である。ただし、当該反応開始剤の吸収領域と光源のスペクトルが著しく異なる場合や、液晶性組成物自身に光源波長光の吸収能がある場合などはこの限りではない。これらの場合には、適当な光増感剤や、吸収波長の異なる2種以上の反応開始剤を混合して用いるなどの方法を採ることもできる。光照射時の温度は、該液晶性組成物が液晶配向をとる温度範囲が好ましく、反応の効果を充分に上げるためには、該液晶性組成物のTg以上の液晶相温度で光照射を行うのが好ましい。
本発明においては、粘着剤2として上記Δx/Fの値が評価温度100℃、接触面積1500mm2において0.120mm/N以下である粘着剤2を用いているため、液晶層4を形成する際の各種熱処理によって光学フィルム3が熱収縮すること及び液晶層4が乾燥収縮や硬化収縮することを十分に抑制することができる。そのため、光学積層フィルム10に皺やカールが発生することが抑制され、濃淡ムラが発生することが抑制される。
以上の方法により、基板1上に粘着剤2を介して光学フィルム3が貼り付けられており、且つ、当該光学フィルム3上に配向を固定化した液晶層4が形成された光学積層フィルム10が得られる。
また、上記液晶層形成工程において液晶層4を形成した後、基板1及び粘着剤2を光学フィルム3から剥離する剥離工程を行ってもよい。剥離工程を行うことにより、図2に示すように、光学フィルム3と該光学フィルム3上に形成された液晶層4とからなる光学積層フィルム20を得ることができる。光学積層フィルムを用いて光学素子、楕円偏光板、液晶表示装置等を作製する場合、基板1及び粘着剤2は不要であるため、それらが剥離除去された光学積層フィルム20が用いられる。
液晶層4の光学フィルム3とは反対側の表面には、その表面を保護するために表面保護層を設けてもよい。表面保護層としては、塗布型の接着剤やポリマーフィルムからなる保護フィルム等を挙げることができる。
また、光学積層フィルムの用途等によっては、位相差値が要求される場合もある。その場合、液晶層面内の最大屈折率方向を示す方向の屈折率をNx、それと直交する方向の屈折率をNy、厚さ方向の屈折率をNz、液晶層の厚さをd(nm)とするとき、ホメオトロピック配向液晶層の屈折率の関係は、通常、Nz>Nx≧Nyとなり、面内のリターデーション値(Re=(Nx−Ny)×d[nm])が0nm〜50nm、厚さ方向のリターデーション値(Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d[nm])が−500nm〜−30nmである。ReおよびRthは波長550nm光による値である。
本発明の光学積層フィルムは、通常、偏光板や位相差フィルムと組み合わせて積層体とし、光学素子や楕円偏光板として用いることができる。また、複数の位相差フィルムと積層してもよい。積層体は通常、偏光板や位相差フィルムにズレや歪み等が発生しないように接着剤や粘着剤を用いて形成される。
上記の偏光板は、偏光素子単体や偏光素子の両側または片側に透光性保護フィルムを有するものが通常は使用される。偏光素子は特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光素子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムを延伸して二色性材料(沃素、染料)を吸着・配向したものが好適に用いられる。偏光素子の厚さも特に制限されないが、5〜80μm程度が一般的である。
広く一般に使用されているヨウ素を用いた偏光素子(膜)は、連続縦一軸延伸プロセスによって製造されるため、ロールの長手方向と平行に吸収軸がある。したがって、一般的な縦一軸延伸された長尺の偏光膜と長尺の第1の光学異方性層を、偏光膜の吸収軸と第1の光学異方性層の遅相軸が直交するようにロール to ロールにより貼り合せる場合には、遅相軸が搬送方向と直交するように横延伸機を用いるのが好ましい。
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光素子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
透光性保護フィルムとしては、光学的に等方な基板が好ましく、例えばフジタック(富士フィルム社製品)やコニカタック(コニカ社製品)などのトリアセチルセルロースフィルム、アートンフィルム(JSR社製品)やゼオノアフィルム、ゼオネックスフィルム(日本ゼオン社製品)などのCOPフィルム、TPXフィルム(三井化学社製品)、アクリプレンフィルム(三菱レーヨン社製品)が挙げられるが、光学素子用フィルムとした場合の耐熱性や耐湿性などからトリアセチルセルロースフィルムやCOPフィルムが好ましい。透光性保護フィルムの厚さは、一般には150μm以下であり、1〜100μmが好ましい。特に5〜50μmとするのが好ましい。
上記の各種位相差フィルムとしては、ポリマーフィルムや液晶性の化合物や組成物から形成されるものを挙げることができる。ポリマーフィルムは、複屈折性を発現し得るポリマーから形成される。複屈折性ポリマーフィルムとしては、複屈折特性の制御性、透明性、耐熱性に優れるものや、光弾性が小さいものが好ましい。この場合、用いる高分子材料としては均一な一軸配向もしくは二軸配向が達成できる高分子であれば特に制限はないが、従来公知のもので溶液流延法や押出成形方式で製膜できるものが好ましく、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、セルロースアシレート、または、これらポリマーの2種又は3種以上を混合したポリマーなどが挙げられる。また、これらフィルムの厚みとしては、望ましくは10〜100μm、特に望ましくは20〜80μmがよい。厚みが厚すぎると得られる積層体が厚くなり薄膜化の要求に対して好ましくなく、薄すぎるとフィルムの機械強度が保てなくなるため、製造中に引き裂かれるなどのトラブルが生じる恐れがある。
液晶性の化合物や組成物の配向を固定化させたフィルムは、例えば、ある温度範囲において液晶性を示すサーモトロピック液晶性化合物や、ある溶液の特定の濃度範囲で液晶性を示すリオトロピック液晶性化合物や、これらを含む組成物を基板上に延展・配向し配向を固定化したフィルムが挙げられる。特にサーモトロピック液晶性化合物は広い温度範囲で液晶性を示すことができるようにするために複数の液晶性化合物を混合して用いることが多い。また、液晶性化合物は低分子量、高分子量およびこれらの混合物であってもよい。
固定化前の液晶性の化合物や組成物の液晶相としては、ネマチック相、ねじれネマチック相、コレステリック相、スメクチック相、ディスコティックネマチック相等が挙げられる。また、配向形態としては、配向基板に水平に配向するホモジニアス配向や垂直に配向するホメオトロピック配向、両者の中間状態と考えられるチルト配向やハイブリッド配向が例示される。
これらの液晶性の化合物や組成物は、配向状態を固定するために、紫外線または熱により重合もしくは架橋するような化合物であってもよい。そのような液晶性の化合物としては、(メタ)アクリロイル基やエポキシ基、ビニル基、オキセタニル基などの重合性基を有する化合物、もしくはアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアナート基などの反応性官能基を有する化合物であることが好ましく、例えばWO97/44703やWO98/00475号公報に記載の化合物などが挙げられる。
液晶層の厚さとしては、所望とする正面位相差と厚さ方向の位相差値によって異なり、さらに配向した液晶性の化合物の複屈折によっても異なるが、好ましくは0.05〜20μm、より好ましくは0.1〜10μm程度である。膜厚がこの範囲外では、目的とする効果が得られない、配向が不十分になる、などして好ましくない。
位相差フィルム面内の最大屈折率方向を示す方向の屈折率をnx2、それと直交する方向の屈折率をny2、厚さ方向の屈折率をnz2、フィルムの厚さをd2(nm)とするとき、(nx2−ny2)×d2[nm]で表される面内のリターデーション値(Re2)は20〜1000nm、より好ましくは50〜700nm、さらに好ましくは70〜300nm程度がよい。
また、{nz2−(nx2+ny2)/2}×d2[nm]で表される厚さ方向のリターデーション値(Rth2)は絶対値で0〜700nm、より好ましくは5〜400nm、さらに好ましくは10〜300nm程度がよい。なお、Re2とRth2とは上記条件を同時に満たす必要はない。なお、Re2およびRth2は波長550nmの単色光で測定した値である。
次に、本発明の光学積層フィルムを用いた光学素子および楕円偏光板について説明する。光学素子は、偏光板や位相差フィルムと組み合わせたものであり、楕円偏光板は光学積層フィルムと偏光板を積層一体化したものである。これらは各層間にずれや歪み等が生じないように接着剤や粘着剤(以下、粘・接着剤ということがある)を用いて積層されることが好ましい。
楕円偏光板は、光学積層フィルムと前述の偏光板とを好ましくは粘・接着剤を介して積層一体化したものである。積層一体化の方法に特に制限はなく、光学積層フィルム、偏光板の互いに積層すべき面の一方または両方に適宜な方法で粘・接着剤層を形成した後、圧着すればよい。圧着は毎葉形態、長尺形態のいずれでも行うことができ、使用する装置もそれぞれの形態に適した装置を用いればよく、プレス、ラミネーター等を例示できる。
上記接着剤としては、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリエーテル系等のポリマー系接着剤、イソシアネート系接着剤、フッ素系やゴム系接着剤等を適宜に選択して用いる。
上記接着剤を更に具体的に例示すると、アクリル系接着剤としては、アクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシル等の低いガラス転移温度(Tg)のモノマーと、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、スチレン、不飽和カルボン酸、アクリロニトリル等のような接着性や凝集性を付与するモノマーの共重合体が挙げられる。ポリウレタン系接着剤としては、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等の末端OH基を有する主剤と、イソシアネート系硬化助剤からなる2液型接着剤が挙げられる。他に、エポキシ系2液硬化型接着剤(例えばエポキシ樹脂とポリチオールの2液、あるいはエポキシ樹脂とポリアミドの2液等)、シリコーン系1液湿気硬化型接着剤等も好ましく挙げられる。
これらの接着剤は接着剤層の形成にあたり、作業性や層厚の均一性等を考慮して各種の溶媒で希釈して使用することが好ましい。上記接着剤の希釈に用いられる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類が好ましく挙げられる。これらの溶媒は、単独でも、2種以上を混合して使用してもよい。
また、粘着剤を用いる場合の粘着剤は、光学的に透明なものあるいは光拡散性のもので構成することができる。粘着剤は、感圧式接着剤とも呼ばれ、押し付けるだけで他物質の表面に接着し、またこれを被着面から引き剥がす場合には、被着物に強度さえあればほとんど痕跡を残さずに除去できる粘弾性体である。粘着剤には、透明性、低複屈折性に優れ、薄くとも十分な粘着性を発現するものが好ましい。例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、天然ゴム、合成ゴムエラストマー、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルキルエーテル、変性ポリオレフィン樹脂系や、それらにイソシアネート等の硬化剤を添加したものを適宜に選択して用いる。これらのなかから、透明で光学的に等方性のものを選択して用いればよい。これらの粘着剤は光硬化型等の反応性であってもよい。なかでも、アクリル系の粘着剤は、ハンドリング性や透明性などの点から好ましいものの一つである。
光拡散性の粘着剤は、上記の如き粘着剤中に微粒子を分散させて、光拡散性を発現させたものである。光拡散性を発現させるために配合される微粒子として、マット剤と呼ばれる二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムや、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンなどのポリマー微粒子などが挙げられる。
光拡散性の粘着剤のヘイズは20%以上であるのが好ましく、さらには40%以上、とりわけ60%以上であるのが一層好ましい。ヘイズは、JIS K 7105に規定される値であって、(拡散透過率/全光線透過率)×100(%)で表される。
また、粘着剤の厚みは、いずれもそれぞれ0.5〜50μm、望ましくは1〜30μm、さらに望ましくは3〜20μmである。厚みがこれ以上薄すぎると、粘着力が不足しやすく粘着が困難となり、また厚すぎると端部から滲みでて製品外観の不良を起こしたりして好ましくない。
反応性の粘・接着剤を用いた場合は、得られる光学素子や楕円偏光板に悪影響を及ぼさず、該反応性に適した反応(硬化)を生起させる条件を用いればよい。硬化方法は特に限定されないが、例えば、加熱硬化、レドックス系常温硬化、嫌気硬化、紫外線や電子線などの活性線硬化などが例示される。好ましい硬化方法は、紫外線、電子線などの活性線による硬化法である。特に活性線による硬化方法は、反応が速く配向を固定化された液晶物質層への影響が少なく好ましい。硬化は、前述の光重合開始剤が添加された接着剤層へ、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、アークランプ、レーザー、シンクロトロン放射光源などの光源からの光を照射して行うことができる。照射量としては、積算照射量として通常10〜2000mJ/cm2、好ましくは50〜1000mJ/cm2の範囲である。ただし、光重合開始剤の吸収領域と光源のスペクトルが著しく異なる場合や、あるいは反応すべき化合物自身に光源波長の吸収能がある場合などはこの限りではない。これらの場合には、適当な光増感剤や、あるいは吸収波長の異なる2種以上の光重合開始剤を混合して用いるなどの方法を採ることも出来る。電子線による硬化の場合の加速電圧は、通常10kV〜200kV、好ましくは20kV〜100kVである。
ラミネーターと接着剤を用いた場合について具体的に説明する。ウエットラミネートの場合、塗布時の粘性や乾燥後の厚みを考慮して、接着剤を水または有機溶媒、あるいはその混合溶液で希釈して、適当な固形分濃度(例えば0.1〜50%)に調整する。その後、得られた接着剤溶液をバーコーター、グラビアコーター等で上記偏光素子または本発明の光学積層フィルムの光学フィルム(COPフィルム)面に塗布し、両者を貼合して乾燥する。乾燥温度は用いる接着剤の硬化方法(雰囲気中の水分あるいは加熱等)によって一概に言えないが、室温〜130℃の範囲が好ましく、室温〜100℃が更に好ましい。
ドライラミネートの場合、塗布時の粘性や乾燥後の厚みを考慮して、接着剤を有機溶媒等で希釈して、適当な固形分濃度に調整する。その後、得られた接着剤溶液をバーコーター、グラビアコーター等で上記偏光素子または光学積層フィルムの光学フィルム面に塗布し、乾燥する。乾燥温度は溶媒の種類によって一概には言えないが、室温〜130℃の範囲が好ましい。偏光素子と光学積層フィルムの貼合は、ロール等を用いて圧着により行う。圧着時の圧力は0.1〜1MPa程度であり、この際、上記偏光素子や光学積層フィルムの光学特性に支障がなければ、通常は120℃以下の温度で加熱しながら上記圧着を行ってもよい。上記加熱条件の好ましい範囲は、30〜100℃で2分以内である。
上記粘・接着剤層の厚みは、粘・接着剤層の特性や被着部材の種類により適宜選択されるが、厚すぎると透明性が損なわれ、薄すぎると接着力が不十分となる。好ましくは、乾燥後の厚みとして0.01〜30μm、より好ましくは0.1〜20μmである。
上記粘・接着剤には、その特性を損なわない範囲で各種の添加剤を配合してもよい。例えば、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等のカップリング剤、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等の粘着性付与剤、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、カーボンブラック等の無機充填剤、エアロジルやディスバロン等の揺変剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤等の安定剤、アクリルモノマー等の反応性希釈剤、フッ素系やシリコーン系等の界面活性剤が挙げられる。
また、光学積層フィルムを上記偏光素子と積層一体化する場合、光学フィルム側表面の密着性を向上させる目的で、コロナ処理、プラズマ処理、UV−オゾン処理、ケン化処理、プライマー層形成等の表面処理を適宜行ってもよい。プライマー層形成処理は、例えば、イソシアネート化合物、シランカップリング剤等を溶媒で希釈し、薄く塗布する方法で行われる。
以上のようにして、光学積層フィルムと偏光素子とを積層一体化した楕円偏光板を得ることができる。楕円偏光板の具体的な層構成は、例えば、透光性保護フィルム/偏光素子/透光性保護フィルム/光学積層フィルム、あるいは透光性保護フィルム/偏光素子/光学積層フィルムが挙げられる。後者は特に楕円偏光板の総厚を低減することが可能となり、特に好ましい。
本発明の光学積層フィルムや、それを用いた光学素子ならびに楕円偏光板は、光学積層フィルムや光学素子を構成する液晶層やCOPフィルム、各種位相差フィルムの面内のリターデーション値、厚さ方向のリターデーション値等により、様々な表示モードの液晶セル、液晶表示装置に用いることができる。例えば、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードを挙げることができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(粘着剤A付PET基板)
粘着剤A付PET基板として、パナック社製パナプロテクトET(製品名)を使用した。
粘着剤A付PET基板として、パナック社製パナプロテクトET(製品名)を使用した。
(粘着剤B付PET基板)
粘着剤B付PET基板として、パナック社製パナプロテクトHP(製品名)を使用した。
粘着剤B付PET基板として、パナック社製パナプロテクトHP(製品名)を使用した。
(液晶溶液の調製)
ラジカル重合により、下記式(10)で表される側鎖型液晶性ポリマーを合成した。この側鎖型液晶性ポリマーのGPCにより測定した重量平均分子量は、ポリスチレン換算で9,700であった。なお、式(10)における表記は各ユニットの構成比を表すものであって、ブロック重合体を意味するものではない。
ラジカル重合により、下記式(10)で表される側鎖型液晶性ポリマーを合成した。この側鎖型液晶性ポリマーのGPCにより測定した重量平均分子量は、ポリスチレン換算で9,700であった。なお、式(10)における表記は各ユニットの構成比を表すものであって、ブロック重合体を意味するものではない。
式(11)で表されるアクリル化合物150gと、式(10)で表される側鎖型液晶性ポリマー770gと、式(12)で表されるジオキセタン化合物80gとを、9000mlのシクロヘキサノンに溶かし、暗所でトリアリルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート50%プロピレンカーボネート溶液(アルドリッチ社製、試薬)100gを加えた後、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して液晶溶液を調製した。
[Δx/F及び剛性率の測定]
上記のPET基板上に設置された粘着剤A及びBについて、次の方法でΔx/F及び剛性率の測定を行った。以下、測定方法について、粘着剤A付PET基板を例に図3を参照しつつ説明する。幅30mmのサイズに切り出した粘着剤A付PET基板(PETフィルム5/粘着剤2)の粘着剤Aの側に、幅30mmのサイズに切り出した東レ社製PPS(ポリフェニレンスルフィド)フィルム6を貼合して、図3(a)に示すようなPETフィルム(第1の基材)5/粘着剤2/PPSフィルム(第2の基材)6からなる測定用積層体を得た。この時、PPSフィルム6と粘着剤2の接触面積が1500mm2となるように、PPSフィルム6を粘着剤A付PET基板と貼合する際には、粘着剤A付PET基板の端部から50mmの位置にPPSフィルムの端部が来るように貼合した。
上記のPET基板上に設置された粘着剤A及びBについて、次の方法でΔx/F及び剛性率の測定を行った。以下、測定方法について、粘着剤A付PET基板を例に図3を参照しつつ説明する。幅30mmのサイズに切り出した粘着剤A付PET基板(PETフィルム5/粘着剤2)の粘着剤Aの側に、幅30mmのサイズに切り出した東レ社製PPS(ポリフェニレンスルフィド)フィルム6を貼合して、図3(a)に示すようなPETフィルム(第1の基材)5/粘着剤2/PPSフィルム(第2の基材)6からなる測定用積層体を得た。この時、PPSフィルム6と粘着剤2の接触面積が1500mm2となるように、PPSフィルム6を粘着剤A付PET基板と貼合する際には、粘着剤A付PET基板の端部から50mmの位置にPPSフィルムの端部が来るように貼合した。
得られた測定用積層体について、インストロン社製INSTRON 4443(製品名)を用いて、図3(b)に示すように、PETフィルム5を固定した状態でPPSフィルム6を積層方向に垂直な方向(矢印Fの方向)に引張速度5mm/分で引っ張った。このときのせん断力(F)及び粘着剤2のせん断変形量(Δx)を測定し、Δx/Fの値及び剛性率Gの値を求めた。結果を表1に示す。
(実施例1)
ロール状の粘着剤A付PET基板の粘着剤A側に、ロール状のJSR社製COP(シクロオレフィンポリマー)フィルム(製品名:アートン)をロール・トゥ・ロールで貼り合わせた。当該積層フィルムのCOP側に上述の液晶溶液を塗布し、60℃で10分間乾燥した後、90℃で2分間の条件で配向処理を行い、液晶層を配向させた。次いで、60℃の条件にて高圧水銀灯ランプにより600mJ/cm2の紫外光(ただし、365nmで測定した光量)を照射して、液晶層を硬化させた。液晶層を形成した積層フィルムから、粘着剤A付PET基板を剥離することで、光学積層フィルムAを得た。
ロール状の粘着剤A付PET基板の粘着剤A側に、ロール状のJSR社製COP(シクロオレフィンポリマー)フィルム(製品名:アートン)をロール・トゥ・ロールで貼り合わせた。当該積層フィルムのCOP側に上述の液晶溶液を塗布し、60℃で10分間乾燥した後、90℃で2分間の条件で配向処理を行い、液晶層を配向させた。次いで、60℃の条件にて高圧水銀灯ランプにより600mJ/cm2の紫外光(ただし、365nmで測定した光量)を照射して、液晶層を硬化させた。液晶層を形成した積層フィルムから、粘着剤A付PET基板を剥離することで、光学積層フィルムAを得た。
(比較例1)
粘着剤A付PET基板の代わりに粘着剤B付PET基板を用いること以外は、全て実施例1と同様にして光学積層フィルムBを得た。
粘着剤A付PET基板の代わりに粘着剤B付PET基板を用いること以外は、全て実施例1と同様にして光学積層フィルムBを得た。
[濃淡ムラの評価]
実施例1及び比較例1の光学積層フィルムについて、暗室中において、バックライトから光が照射されるように設置した2枚の偏光板間に光学積層フィルムを設置し、斜めから目視観察することで、濃淡ムラの強弱程度を評価した。結果を表2に示す。
実施例1及び比較例1の光学積層フィルムについて、暗室中において、バックライトから光が照射されるように設置した2枚の偏光板間に光学積層フィルムを設置し、斜めから目視観察することで、濃淡ムラの強弱程度を評価した。結果を表2に示す。
1…基板、2…粘着剤、3…光学フィルム、4…液晶層、5…第1の基材、6…第2の基材、10,20…光学積層フィルム。
Claims (9)
- 光学フィルムと基板とを粘着剤を介して貼り合わせる工程と、
前記光学フィルム上に液晶材料を含む液晶性組成物を塗布し、10〜200℃で加熱することで前記液晶材料を配向させた後、光照射及び/又は加熱処理することにより前記液晶材料の配向状態を固定化して液晶層を形成する工程と、
を含み、
前記粘着剤が、その剛性率の測定における前記粘着剤へのせん断力をF(N)、せん断力を印加したことにより生じた前記粘着剤のせん断変形量をΔx(mm)とした場合に、前記せん断力の印加方向に平行な前記粘着剤の断面の面積1500mm2、測定温度100℃の条件で、Δx/Fの値が0.120mm/N以下となるものである、光学積層フィルムの製造方法。 - 前記液晶層を形成した後、前記基板及び前記粘着剤を前記光学フィルムから剥離する工程を更に含む、請求項1記載の光学積層フィルムの製造方法。
- 前記光学フィルムがシクロオレフィンポリマーフィルムである、請求項1又は2記載の光学積層フィルムの製造方法。
- 前記基板がポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学積層フィルムの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法により得られた光学積層フィルム。
- 請求項5記載の光学積層フィルムを含む光学素子。
- 請求項5記載の光学積層フィルムと偏光板との積層体を含む楕円偏光板。
- 請求項6記載の光学素子を含む液晶表示装置。
- 請求項7記載の楕円偏光板を含む液晶表示装置。
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-
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