JP2015193620A - 物性で特定される皮膚外用剤 - Google Patents
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Abstract
Description
具体的には、高剪断域におけるのび(残留粘度)の変化自身が摩擦を生み皮膚への刺激となる場合がある。すなわち、チキソトロピックな構造では物理的な刺激が高すぎて、皮膚感覚が過敏になっているアトピー性皮膚炎患者にとっては一過性の刺激となりかねない。
そこで、アルキル変性されていても良いカルボキシビニルポリマー等の増粘剤を含む製剤において、その流動特性の改善方法が望まれていた。具体的には、使用途中における粘度変化の少ない外用製剤が求められていた。
本発明はこのような状況下為されたものであり、アトピー性皮膚炎の患者でも使用しやすい物性の皮膚外用剤を提供することを課題とする。
<1>アルキル変性されていてもよいカルボキシビニルポリマー及び/またはその塩(本明細書において、同概念を、単に「アルキル変性されていても良いカルボキシビニルポリマー」又は「カルボキシビニルポリマー」という場合がある。)と、ノニオン性界面活性剤とを含有する皮膚外用剤において、32℃の恒温条件下、コーンプレート型粘度計で計測した、残留粘度が200mPa・s以下であり、且つ、キャッソン(Casson)降伏値が40000mPa以上であることを特徴とする、皮膚外用剤。
<2>キャッソン(Casson)プロットにおいて、剪断速度の平方根が、1〜15の変域での相関係数の二乗の値が0.98以上であることを特徴とする、<1>に記載の皮膚外用剤。
<3>乳化剤形であることを特徴とする、<1>または<2>に記載の皮膚外用剤。
<4>ノニオン性界面活性剤のみで乳化されていることを特徴とする、<1>〜<3>何れか1項に記載の皮膚外用剤。
<5>ノニオン性界面活性剤の曇点より高い温度で、水中油乳化物を調製し、ノニオン性界面活性剤の曇点以下の温度まで冷却した後、アルキル変性されていても良いカルボキシビニルポリマーを加え、しかる後に該アルキル変性されていても良いカルボキシビニルポリマーをアルカリ剤で中和し、製造されたものであることを特徴とする、<4>に記載の皮膚外用剤。
<6>アルキル変性されていても良いカルボキシビニルポリマー及び/又はその塩と、ノニオン性界面活性剤とを含有する乳化剤形の皮膚外用剤の評価方法であって、32℃の恒温条件下、コーンプレート型粘度計でCasson降伏値と残留粘度とを計測し、該Casson降伏値が40000mPa以上であり、且つ、残留粘度が200mPa・s以下であった場合、使用性が好ましく、且つ、安定性に優れる皮膚外用剤であると判別することを特徴とする、乳化剤形の皮膚外用剤の評価方法。
(1)32℃の恒温条件下、コーンプレート型粘度計で計測した、残留粘度は200mPa・s以下、より好ましくは190mPa・s以下であり、更に好ましくは、加えて、100mPa・s以上であり、120mPa・s以上であって、且つ、キャッソン(Casson)降伏値は40000mPa以上であり、より好ましくは、42000mPa以上であり、加えて、60000mPa以下であり、より好ましくは50000mPa以下である。
(2)また、本発明の皮膚外用剤は、剪断速度の平方根が、1〜15の変域において、良好な直線性を示すことが好ましい。すなわち、キャッソン(Casson)プロットにおいて、剪断速度の平方根が1〜15の変域での相関係数の二乗の値が0.98以上であることが好ましい。通常の皮膚外用剤においては、構造を作っている増粘剤の親水性バランスと、架橋構造に影響を及ぼす界面活性剤の曇点効果などにより、構造変化が起こりやすい。本発明の皮膚外用剤の好ましい形態では、前記変域においても粘弾性の変化について優れた直線性を示すので、上述の構造変化は起こりにくい。
(3)このため、本発明の皮膚外用剤は、使用時においては、使用開始時から、使用終了時までの、延展性などの使用感の変化は極めて少ないという特徴を有する。これにより、敏感な皮膚に対しても与える物理刺激が低い皮膚外用剤となると推察される。
(4)また、本発明の皮膚外用剤のコーンプレート型粘度計で測定した場合の25℃における粘度は、好ましくは1300mPa・s以上、より好ましくは1400mPa・s以上であり、更に好ましくは1500Pa・s以上、特に好ましくは1600mPa・s以上であり、加えて、好ましくは3000mPa・s以下であり、より好ましくは2000mPa・s以下であり、更に好ましくは1900mPa・s以下である。
あらかじめ、カルボキシビニルポリマーを少量の水で溶解させ、カルボキシビニルポリマー液を調製する。同様にアルカリ剤水溶液を調製する。この2種の液をそれぞれ添加すべきノニオン性界面活性剤の曇点以下の温度に温度調整しておく。
残余の水と、水性成分、例えば、多価アルコールや水溶性の添加物を合わせ、乳化温度である曇点より高い温度に調整しておく。同時に、ノニオン性界面活性剤を含む油性成分を合わせ、乳化温度である曇点より高い温度に調整しておく。
ノニオン性界面活性剤の曇点より高い温度に調整した水相に、同様に曇点より高い温度に調整した油相を攪拌下徐々に加え、水中油乳化物を調製し、これを攪拌、冷却し、曇点以下まで冷却する。曇点以下の温度になったら、攪拌下徐々にカルボキシビニルポリマー液を添加する。添加後、一様になるまで攪拌し、しかる後に、アルカリ剤水溶液を徐々に加え、皮膚外用剤を得る。
ここで、アルカリ剤水溶液の添加は、本発明の組成物のpHが、好ましくは4〜8となるように行うことができる。また、本発明の組成物のpHの下限値は、好ましくは4、さらに好ましくは、4.5である。また、本発明の組成物のpHの上限値は、好ましくは、6、さらに好ましくは5.5である。
以下に、実施例を挙げて、更に詳細に本発明について説明を加える。
また、本発明の医薬組成物1を、アトピー性皮膚炎患者に適用したところ、使用開始時から、使用終了時にかけて、粘度変化が少なく一過性の刺激が抑制されていて使用しやすいものであった。
処方成分は、本発明の医薬組成物1と変わらず、製造方法のみを変えて比較例1の医薬組成物を製造した。即ち、表2に示す(イ)、(ロ)、(ハ)を秤量し、これらの内、(イ)と(ロ)は75℃で撹拌混合溶解し、(ハ)は室温で撹拌混合溶解し、各々の溶解温度で保持した。攪拌下(ロ)に(イ)を徐々に加え乳化し、一様になったところで、撹拌冷却し、30℃まで冷却したところで、更に、(ハ)を徐々に加えて中和し、比較例1の医薬組成物を得た。比較例1の医薬組成物のpHは4.5であった。この医薬組成物のCassonプロットを行い、回帰式を求め、残留粘度と、Casson降伏値を求めたところ、残留粘度は236mPa・sであり、Casson降伏値は24661mPaであることが判明した。また、R2=0.991で、直線回帰していることが判明した。これより、この比較例1の医薬組成物は医薬組成物1と同じ処方成分を構成としながら、本発明の皮膚外用剤には属さないことが明らかになった。
また、比較例1の医薬組成物を、アトピー性皮膚炎患者に適用してところ、使用開始時から、使用終了時にかけて、粘度が低下し一過性の刺激を発現するものであった。
(1)乳化粒子
本発明の医薬組成物1と、比較例1の医薬組成物の乳化粒子の顕微鏡写真を図1に示す。これより、本発明の医薬組成物は微細で均一な乳化粒子であるのに対し、比較例の医薬組成物は不均一で、且つ、大きな乳化粒子になっていることが判る。
本発明の医薬組成物1と、比較例1の医薬組成物について、コーンプレート型粘度計(装置機種名:RE−80R、製造会社名:東機産業、条件:ローター:3°×R14、測定温度:25℃、回転数:50rpm、測定時間:3分)で粘度を測定した。結果は、本発明の医薬組成物1が1733mPa・sであり、比較例1の医薬組成物は1133mPa・sであった。
本発明の医薬組成物1と比較例1の医薬組成物を80℃で6時間保存し、乳化状態を顕微鏡、及び、肉眼で観察した。80℃で6時間保存した医薬組成物の顕微鏡写真を図2に示す。これより、本発明の医薬組成物1はこの保存条件でも乳化粒子に変化は見られなかった。一方、比較例1の医薬組成物は合一がおこり、粒子が荒れていることが判る。又、肉眼所見では、本発明の医薬組成物1は変化が見られなかったのに対し、比較例1の医薬組成物は二相に分離していることが認められた。
このように、同じ処方構成であっても、本発明の皮膚外用剤に属するものは、安定性も、使用性も優れるのに対し、本発明の皮膚外用剤に属さないものはこれの特性が劣ることが明確になった。
処方成分は、皮膚外用剤2と変わらず、製造方法のみを変えて比較例2の皮膚外用剤を製造した。即ち、表4に示す(イ)、(ロ)、(ハ)を秤量し、これらの内、(イ)と(ロ)は75℃で撹拌混合溶解し、(ハ)は室温で撹拌混合溶解し、各々の溶解温度で保持した。攪拌下(ロ)に(イ)を徐々に加え乳化し、一様になったところで、撹拌冷却し、30℃まで冷却したところで、更に、(ハ)を徐々に加えて中和し、比較例2の皮膚外用剤を得た。比較例2の皮膚外用剤のpHは4.5であった。この皮膚外用剤のCassonプロットを行い、回帰式を求め、残留粘度と、Casson降伏値を求めたところ、残留粘度は260mPa・sであり、Casson降伏値は29479mPaであることが判明した。また、R2=0.9909で、直線回帰していることが判明した。これより、比較例2の皮膚外用剤は皮膚外用剤2と同じ処方成分を構成としながら、本発明の皮膚外用剤には属さないことが明らかになった。
一方、比較例3の医薬組成物を、アトピー性皮膚炎患者に適用したところ、使用終了時にかけて、粘度変化による一過性の刺激が感じられた。
また、比較例4の医薬組成物を、アトピー性皮膚炎患者に適用したところ、使用終了時にかけて、粘度変化による一過性の刺激が感じられた。
Claims (6)
- アルキル変性されていてもよいカルボキシビニルポリマー及び/またはその塩と、ノニオン性界面活性剤とを含有する皮膚外用剤において、32℃の恒温条件下、コーンプレート型粘度計で計測した、残留粘度が200mPa・s以下であり、且つ、キャッソン(Casson)降伏値が40000mPa以上であることを特徴とする、皮膚外用剤。
- キャッソン(Casson)プロットにおいて、剪断速度の平方根が、1〜15の変域での相関係数の二乗の値が0.98以上であることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
- 乳化剤形であることを特徴とする、請求項1または2に記載の皮膚外用剤。
- ノニオン性界面活性剤のみで乳化されていることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の皮膚外用剤。
- ノニオン性界面活性剤の曇点より高い温度で、水中油乳化物を調製し、ノニオン性界面活性剤の曇点以下の温度まで冷却した後、アルキル変性されていても良いカルボキシビニルポリマーを加え、しかる後に該アルキル変性されていても良いカルボキシビニルポリマーをアルカリ剤で中和し、製造されたものであることを特徴とする、請求項4に記載の皮膚外用剤。
- アルキル変性されていても良いカルボキシビニルポリマー及び/又はその塩と、ノニオン性界面活性剤とを含有する乳化剤形の皮膚外用剤の評価方法であって、32℃の恒温条件下、コーンプレート型粘度計でCasson降伏値と残留粘度とを計測し、該Casson降伏値が40000mPa以上であり、且つ、残留粘度が200mPa・s以下であった場合、使用性が好ましく、且つ、安定性に優れる皮膚外用剤であると判別することを特徴とする、乳化剤形の皮膚外用剤の評価方法。
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