JP2015192648A - 吸水性高分子ゲルと基板間で形成される領域での新規付着培養方法、バイオマスの製造方法、及び新規微細藻類 - Google Patents

吸水性高分子ゲルと基板間で形成される領域での新規付着培養方法、バイオマスの製造方法、及び新規微細藻類 Download PDF

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秀行 金原
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Abstract

【課題】微生物由来のバイオマス製造コスト、特に微細藻類由来のバイオマス製造コストを低減させることが可能な方法を提供すること。【解決手段】吸水性高分子ゲルと基板との間に囲まれた領域内で微生物を培養する。吸水性ゲルと基板とから構成される構造体は、地面に対して水平に設置した状態で培養することもでき、地面に対して一定の角度で設置した状態で培養を行うこともできる。また地面に対して垂直に設置した状態で培養を行うこともできる。【選択図】図1

Description

本発明は、微生物を好適に培養可能な培地を含む吸水性高分子化合物から構成されたゲル上と基板との間に形成される領域で微生物を培養する方法に関する。
微生物は、水が存在しない条件下では、実質的に培養することができず、何らかの方法で水分を供給する手段を必要とする。
そこで、大量の水を使用して微生物の培養を行うことになる。しかし、微細藻類を用いたバイオ燃料の生産には広大な土地が必要であるが、農地などの付加価値の高い土地の使用を避けると、砂漠など降水量の少ない土地を考えることができるが、この様な地域では、水の確保が困難な地域なことが多く、大量の水を使用することは容易ではない。さらに、大量の水のハンドリングには、大量のエネルギーを必要とし、効率的な水の使用が求められている。
寒天培地などでゲルを調製し、白金耳等を用いて、その表面上に未純化微生物を含む溶液を塗布後、培養することによってコロニーを形成させ、これをピックアップすることで、微生物を純化することが行われている。すなわち、吸水性高分子上で微生物を増殖させることは可能である。吸水性高分子は、分子内に多量の水分を蓄積し、微生物に対して水分の供給が可能であることが理由である。
このことに着目し、本発明者らは、基板上に吸水性高分子層を形成させ、その上で光合成微生物の培養が可能であることを報告している(特許文献1)。また、水で膨潤させた吸水性高分子を充填した容器内でマリモを育成する方法が公開されている(特許文献2)。
近年、産業活動の発達などに伴って、大量の化石燃料の使用が原因と考えられる燃料価格の高騰や、大気中に放出された二酸化炭素による温室効果で地球温暖化が進展することが問題となっている。このような問題を解決するために、単位面積あたりのオイル生産性が高いと報告されている微細藻類を用いて、光エネルギーにより二酸化炭素を固定化し、炭化水素化合物やバイオディーゼル(トリグリセリド)等に変換するための開発が注目されている。しかしながら、一部のバイオマスを除き、各プロセスの低エネルギー化が難しく、高コストな培養法となって、商業規模での生産は行われていない。
上記プロセスの低エネルギー化の中で検討すべき課題のひとつとして、オイルなどの燃料を取り出すために必要とされる、回収した微細藻類の乾燥工程に投入されるエネルギー量が問題にされている。この工程は、回収物中の含水率が高いほど乾燥に投入されるエネルギー量が多くなり、いかに回収物中の含水率を低下させることができるかが焦点とされている(非特許文献1)。例えば、培養空間内で比較的藻体が局在化して存在していると考えられているアオコにおいては、水面から水中へと徐々に存在数を減らしながら分布しているために、その回収率は約80%程度と低く、さらに遠心分離することによって得られた濃縮アオコの含水率は平均97%であると報告されている(非特許文献2)。
特開2012−157274号公報 特開2008−187970号公報
松本光史ら、第62回日本生物工学会大会(2010) トピックス集 p33 エバラ時報 pp.32 No.217(2007−10)
微生物を用いてのバイオマス生産の問題点は、効率的な培養方法、回収方法、有用物質(オイルなど)の抽出方法が開発されておらず、コスト高となることである。
微生物の培養は、培地中で分散させながら行っているために、大量の水を用いていた。そのために、大量のエネルギーを投入して培地を攪拌する必要があった。本発明では、水の使用量が最小限で、攪拌をまったく行わずに、微生物を効率的に培養する方法を提供することを課題としている。
微生物のサイズは一般的に小さくために、培養液から微生物を回収する方法として、濾過による回収、沈殿剤を用いて凝集させてからの回収、遠心分離機を用いる回収など様々な方法が検討されてきた。しかし、目詰まりが発生することや、投入するエネルギーが大きく、コスト高になるなど様々な問題点があった。本発明では、これらの問題点を改善するために、微生物を効率的に回収する方法を提供することも課題としている。
高密度培養法として、付着培養法や水面浮遊培養法があるが、これらの方法は微生物の性質によるところが大きい問題点があった。本発明では、基本的には微生物の種類に依存せずに高密度培養を成し遂げることも課題としている。
さらに回収物中の含水率が高いほど、オイル抽出効率は低くなり、そのために乾燥処理を行うことでオイル抽出効率を向上させているが、回収物中の含水率が高いほど多量の乾燥エネルギーを必要になることが問題視されていた。そこで本発明では、回収操作によって得られる回収物中の含水率を、従来法と比較して大幅に減らすことも課題としている。
従来法では、商業規模で培養を行う場合、培養器が開放系になっていることが多く、培地に目的外の微生物や、微生物を捕食する生物、すなわちコンタミ微生物が侵入することが問題点となっていた。本発明では、コンタミ微生物の侵入を可能な限り抑制する方法を提供することも課題としている。
また、微生物が微細藻類の場合、その多くは培養に二酸化炭素の供給が必要である。従来法による分散培養の場合には、配管を用いてバブリングなどによって供給が行われていたが、その場合には、長大な配管の設置や二酸化炭素供給のための高度な制御が必要であった。本発明では、効率的に二酸化炭素を供給する方法を提供することも課題としている。
さらに、微生物を培養するためには、土地の有効活用を行う必要があり、単位面積あたりの微生物収穫量を向上させる必要があった。本発明では、この様な課題を改善することも課題としている。
さらに、微細藻類などの光合成微生物は、光源として太陽光を用いた場合には、日射強度が強すぎるためその多くを無駄にし、光障害が原因と考えられる増殖速度の低下も見られた。本発明では、この様な問題点を改善することも課題としている。
さらに、吸水性高分子ゲルと基板との間で微生物を増殖させた場合、微生物や基板の種類によっては、増殖の進行とともにガス状物が放出され、基板と高分子吸水性ゲル層との間の領域で気泡が形成され、この気泡内に存在する微生物の乾燥が進行し、増殖速度の低下や基板への微生物の強固な付着に由来する微生物回収物量の低下がみられた。本発明では、この様な問題点を改善する方法を提供することも課題としている。
さらに、高分子吸水性ゲルに対して培養工程を複数回行った場合、栄養成分の減少が原因と考えられる増殖量の減少が観察されたが、この様な問題を改善することも本発明の課題としている。
さらに、新たに培養を開始する場合や繰り返し培養を行う場合、種藻を準備する必要があったが、そのための準備は非常に煩雑であるとともに、種藻用の培養器を準備する必要があった。このことも、培養コストを増加させる原因の一つでもあり、本発明では、この問題点を改善することも課題としている。
さらに、吸水性高分子ゲルと基板との間で微生物を増殖させた場合でも、微生物回収物の含水率は60%以下にはならなかった。本発明では、さらなる低含水率微生物回収物を得る方法を提供することも本発明の課題としている。
また本発明の別の課題は、本発明に係る培養方法及び回収方法により得られた微生物から有用物質を得る製造方法を提供することである。
すなわち、本発明の課題は、吸水性高分子化合物で形成されたゲル表面上と基板との間で微生物を増殖・培養し、基板を該ゲル表面から剥がした後、基板表面から微生物を回収する、微生物の培養方法及び回収方法を提供すること、また該培養方法を壁面培養法へ応用すること、基板の一部に気体が容易に通過可能な構造体を設けること、微生物回収物が付着した基板を大気中で乾燥、又は、回収物を大気中で自然乾燥させることにより含水率を低下させる方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、微生物該微生物の増殖が可能な栄養成分を含む吸水性高分子化合物が形成するゲル層と基板との間の領域で微生物を培養し、増殖物の多くを基板又は吸水性ゲル上に付着させた状態でゲル層から剥がすことができ、該増殖物を含水率が低い状態で回収できることを見出した。更に、このようにして回収された微生物から有用物質を得ることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
本発明は、以下を提供する。
[1] 微生物の培養が可能な栄養素及び水を含んだ吸水性高分子ゲルの少なくとも一部の表面と、該一部の表面を被覆可能な基板との間で微生物を培養する、微生物の培養方法。
[2] 微生物が、培養によりバイオフィルムを形成するものである、[1]に記載の培養方法。
[3] 吸水性高分子ゲルの少なくとも一部の表面に微生物を播種する工程;及び
吸水性高分子ゲル上の、少なくとも微生物が播種された領域を、基板により被覆する工程;及び
播種された微生物を吸水性高分子ゲル表面と基板との間で培養する工程
を含む、[1]又は[2]に記載の培養方法。
[4] 微生物が液面浮遊培養可能な微細藻類であり、吸水性高分子ゲル表面への播種が、液面浮遊培養により液面上に形成されたバイオフィルムが転写された基板で吸水性高分子ゲルの少なくとも一部の表面を被覆すること、又は液面浮遊培養により液面上に形成されたバイオフィルムを吸水性高分子ゲル表面に転写することにより行われる、[1]又は[2]に記載の培養方法。
[5] 吸水性高分子ゲルの表面への微生物の播種が、微生物懸濁液に浸漬された基板で吸水性高分子ゲルの少なくとも一部の表面を被覆すること、又は微生物懸濁液に吸水性高分子ゲル表面を浸漬することにより行われる、[1]又は[2]に記載の培養方法。
[6] 吸水性高分子ゲルの表面への微生物の播種が、吸水性高分子ゲルの表面、又は基板の少なくとも一方に微生物を噴霧又は塗布することにより行われる、[1]又は[2]に記載の培養方法。
[7] 培養が、吸水性高分子ゲルの両面を用いて行われる、[1]〜[6]のいずれか一に記載の培養方法。
[8] 培養後に、微生物を回収する工程を含む、[1]〜[7]のいずれか一に記載の培養方法。
[9] 微生物を回収した後の吸水性高分子ゲル又は基板を再度培養に利用する工程を含む、[8]に記載の培養方法。
[10] 吸水性高分子ゲルの再利用が、新鮮培地を添加した後に行われる、[9]に記載の培養方法。
[11] 微生物を回収した後の吸水性高分子ゲル上又は基板上に残存している微生物を種微生物として利用する培養工程をさらに含む、[8]〜[10]のいずれか一に記載の培養方法。
[12] 培養後の微生物の回収が、吸水性高分子ゲルから微生物が付着した基板を除去することにより行われ、得られた回収物を、基板に付着させたまま又は基板から脱着させた後、含水率を低下させる工程を含む、[8]〜[11]のいずれか一に記載の培養方法。
[13] 基板の二酸化炭素透過性が500cc/m2・24h/atm以上である、[1]〜[12]のいずれか一に記載の微生物の培養方法。
[14] 基板の素材がポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、及びシリコーンゴムからなる群から選ばれる少なくとも一つである、[13]に記載の培養方法。
[15] 吸水性高分子ゲル表面が垂直方向に維持される垂直培養、又は吸水性高分子ゲル表面が水平方向に維持される水平培養である、[1]〜[14]のいずれか一に記載の培養方法。
[16] 基板に少なくとも一ヶ所以上の穴が開いている、[1]〜[15]のいずれか一に記載の培養方法。
[17] 基板と吸水性高分子ゲルとの少なくとも一方の、少なくとも一部の領域に、凹凸構造が形成されている[1]〜[16]のいずれか一に記載の培養方法。
[18] 高分子吸水性ゲルの少なくとも一部の表面を、複数の基板により被覆することを特徴とする、[1]〜[17]のいずれか一に記載の培養方法。
[19] 微生物が、真菌類、緑藻、又は珪藻である、[1]〜[18]のいずれか1項に記載の培養方法。
[20] 微生物が、酵母、Botryococcus sp.、Chlamydomonas sp.、Chlorococcum sp、Chlamydomonad sp.、Tetracystis sp.、Characium sp.Protosiphon sp.又はHaematococcus sp.に属するものである、[1]〜[19]のいずれか1項に記載の培養方法。
[21] 微生物が、Botryococcus sudeticus、又はChlorococcum sp. FERM BP−22262と同じ種に属するものである、[1]〜[20]のいずれか1項に記載の培養方法。
[22] 微生物が、Botryococcus sudeticus FERM BP−11420、もしくはそれと分類学的に同一の性質を有する微細藻類株、又はChlorococcum sp. FERM BP−22262、もしくはそれと分類学的に同一の性質を有する微細藻類株である、[1]〜[21]のいずれか1項に記載の培養方法。
[23] [1]〜[22]のいずれか1項の培養方法を含む培養工程;及び
第二の培養工程で形成された液面のバイオフィルムを回収する工程
を含む、バイオマスを製造する方法。
[24] バイオマスが、オイルである、[23]に記載の製造方法。
[25] 18S rRNAの遺伝子領域をコードする塩基配列のうち、一部の領域の、Chlorococcum sp. RK261に相当する塩基配列との同一性が95.00%以上99.99%以下であるか、又はChlorococcum sp.に属する微生物であって、その18S rRNA遺伝子が、配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドと少なくとも99.94%の配列同一性を有する、微生物。
[26] Chlorococcum sp.FFG039株(受託番号FERM BP−22262)、又はそれと分類学的に同一の性質を有する、微生物。
本発明の培養法は、微生物の増殖が可能な栄養成分を含む吸水性高分子化合物が形成するゲルと基板との間の領域で微生物の培養を行うものである。この様な培養形態を採用していることから、水の使用量は最小限で、攪拌もまったく行わずに微生物を培養することができる。さらに、このような狭い領域での培養であるため高密度培養が可能なバイオフィルムを形成し、これらのことから、大量の培地から微生物を回収する必要がなく、回収は極めて容易となる。さらに、ゲル層から基板を剥がす工程では、該増殖物の多くが、吸水性高分子ゲル層表面と比べて強度が高い基板側に付着することが多いことから、取り扱いの容易な基板側から増殖物を回収することができ、回収が容易となる。さらに、本発明の方法は、微生物の種類にほとんど依存せずに培養することが可能である。さらに、水分の多くはゲル層に存在し、微生物層には、増殖に必要な最小限の水分しか含まれていないと考えられることから、微生物回収物中の含水率は極めて低くなり、乾燥工程に投入されるエネルギーを劇的に下げることができる。また、培養領域を基板で被覆しているため、屋外培養を行った際に問題となる目的外微生物の侵入に対しても強い。さらに、二酸化炭素透過性が高い基板を使用することで、気相中から効率的に二酸化炭素を微生物に対して供給することができ、従来法の様に、長大な配管や二酸化炭素供給のための高度な制御が不要となり、低コスト培養が可能となる。
本発明で使用している吸水性高分子ゲルは、半固形培地であるため、壁面培養が可能であり、培養装置設置面積あたりの微生物回収量を大幅に向上させることが可能である。すなわち、土地の有効活用が可能である。さらに支持基板の両面に対してゲル層を設け、両面壁面培養を行うことも可能である。これにより、さらなる設置面積の効率化が可能である。なお、支持基板は、一般的に強度が弱い吸水性高分子ゲル層を保持する役割も持っている。微生物として微細藻類を用いた場合には、空気層への光の導光、すなわち、光の分散が可能であることから、光量の有効活用が可能である。これにより、高強光度下における光障害を回避でき、しかも増殖速度の向上が可能である。さらに、基板の少なくとも一部に気体が通過できる構造体を設けることで、微生物から気体状物質が発生した場合には、これらを培養器外へと逃がすことができ、気体の発生に由来する種々の問題点を回避することができる。
一度使用した吸水性高分子ゲル層に対して、微生物の増殖を好適に促進する培地を添加することで、吸水性高分子ゲル層の再使用を可能にすることができる。これにより、新たに吸水性高分子ゲル層を調製する必要がなく、効率的かつ低コストな培養が可能となる。基板も再利用することが可能である。また従来法の分散培養で行われている培地成分よりも高濃度の培地を添加することで、上記効果をより高いものにすることができる。さらに、高分子吸水性ゲル中の含水率を低下させる処方との組合せで、吸水性高分子ゲル中の培地置換を効率的に行うことができる。
微生物層の回収後、ゲルの表面上や基板の表面上には、極僅かな量の微生物が残存している。本発明では、これらを種藻として使用することで、新たな種藻を供給せずに培養を継続することも可能である。さらに、培養後の微生物を基板に付着させたまま回収した場合には、そのまま乾燥処理を行うことができる。また、培養を終え、基板から回収した直後の回収物でも、含水率は60%程度であることから回収物の形状が不定形、かつ表面積が大きいため、この状態でも効率的に短時間で回収物を乾燥させることができる。すなわちこれらの方法により、含水率の低い回収物を容易に得ることができる。
本発明の模式図。1は吸水性高分子ゲル、2は支持基板、3は微生物層、4は基板、5は培養によって増殖した微生物、6は回収した微生物。(a)は支持基板2上に培養対象の微生物の培養を好適に行える培地を含む吸水性高分子ゲル層1を形成させた状態。(b)はその上に微生物3を塗布した状態。(c)は微生物3の上に基板4を被覆させた状態。(d)は微生物が好適に増殖できる条件下で培養を行った結果、微生物が増殖し、その量が増えたことを示している図。(e)は基板4を高分子吸水性ゲル層1から剥がした状態で、ほぼすべての微生物5が基板4側に付着している状態を図示したもの。(f)は(a)と同じ状態であるが、通常は、少量の微生物が付着している。(g)は(e)から微生物を脱着した後の微生物の状態を示している。(h)は(e)から微生物を脱着した状態の基板であるが、通常は、若干の微生物が付着している。 基板に微生物を付着させたところから培養をスタートした場合の模式図。1は吸水性高分子ゲル、2は支持基板、4は基板。(a)は基板4に微生物を付着させた状態、(b)は微生物を付着させた基板で吸水性高分子ゲルを被覆させた状態。 液面浮遊培養法の模式図。4は基板、7は培養器、8は微生物懸濁液。(a)は微生物懸濁液を培養器の中に入れた状態、(b)は(a)の状態を数秒から数十分静置させることで培養器の底面に微生物が沈んだ状態、(c)はしばらく培養を続けると液面上に微生物バイオフィルムが形成された状態、(d)は、液面上の微生物バイオフィルムに対して基板を被覆させた状態、(e)は微生物付着基板を培養器外へと移動させた状態、(f)は培養器から微生物付着基板を除去した後の培養器の状態。 両面培養法の模式図。1は吸水性高分子ゲル層、3は培養前の微生物、4は基板(支持基板)、5は増殖後の微生物、6は基板から脱着した微生物。(a)は基板に吸水性高分子ゲル層が付着している状態、(b)は吸水性高分子ゲル上に微生物を付着させた状態、(c)は微生物層の上に基板を被覆させた状態、(d)は微生物層がない方の基板を吸水性高分子ゲル層から除去させた状態、(e)は吸水性高分子ゲル上に微生物を付着させた状態、(f)は微生物層を基板で被覆させた状態、(g)は培養を行った後の状態、(h)と(i)は微生物の片方を基板と共に剥がした状態、(j)は吸水性高分子ゲル上に微生物を付着させ、その上を基板で被覆させた状態、(k)はもう片方の基板を増殖後の微生物と共に剥がした状態、(l)は吸水性高分子ゲル上に微生物を付着させ、その上を基板で被覆させた状態、(f)と実質的に同じ状態である。 支持基板の両側に吸水性高分子ゲル層を設置した場合の模式図。両面培養の場合に用いる。1は吸水性高分子ゲル層、2は支持基板。 CSiFF03培地の組成 CSiFF04培地の組成 吸水性高分子ゲル(アガロースゲル)と微生物培養用培地(液体培地)を用い、微細藻類を培養した場合の乾燥藻体量(棒グラフ)及び含水率(白抜き丸)。 一度培養に使用した吸水性高分子ゲル(寒天培地)に、新鮮な培地を添加した後、培養を再開した場合の乾燥藻体量 種々実験条件で培養を行った場合の乾燥藻体量。4−1 アガロースゲル上に藻体を塗布した場合(基板による被覆を行わない場合) 4−2 アガロースゲル上に藻体を塗布した後、基板で被覆した場合 4−3 アガロースゲル表面を、微細藻類を付着させた基板で被覆した場合 4−4 支持基板に微細藻類付着基板を貼り付けた場合(吸水性高分子ゲルがない場合) 種々実験条件で培養を行った場合の含水率。説明は、図10に同じ。 基板の素材種が乾燥藻体量に及ぼす影響 基板の素材種が含水率に及ぼす影響 本発明で培養した時の回収時の様子。(a)培養終了時 (b)培養終了後、基板(シリコーンゴムシート)を剥がした状態。左が基板をはがした後のアガロースゲル、右が、剥がした後のシリコーンゴムシート。基板に付着した微細藻類が見える。なお、プラスチックシャーレのフタの上に該微細藻類付着フィルムを置いている (c) 基板に付着していた微細藻類を基板から剥がした後の様子(2試料分)。 垂直培養の様子。(a)は垂直培養の全体の様子。培養開始後7日後。両側は微細藻類を付着させていないアガロースゲル層、中央の2つは微細藻類を付着させたアガロースゲル層、(b)は培養開始後7日目のアガロースゲル−AVFF007株−シリコーンゴムシート構造体。(c)は培養開始後7日後にアガロースゲルからはがした後のAVFF007株−シリコーンゴムシート構造体、(d)は基板を剥がした後のアガロースゲル。 培養面積あたりの水平培養と垂直培養との違い 設置面積あたりの水平培養と垂直培養との違い 両面培養と片面培養の差が微細藻類の増殖量に及ぼす影響 穴あきフィルムの模式図 基板に穴を開けた場合と基板に穴を開けなかった場合とで、微細藻類の増殖量に及ぼす影響。 (a)フィルムに穴を開けなかった場合のアガロースゲルからフィルムを脱離させた直後の状態、(b)(a)の作業を行った後のアガロースゲル上の状態、(c)穴を設けたフィルムを用いて培養した後、このフィルムを脱離させた後のアガロースゲルの状態 微細藻類ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus)AVFF007株の18S rRNAをコードする遺伝子の塩基配列の一部(配列番号1) Chlorococcum sp. FFG039株の顕微鏡写真。(a)は、通常の状態、(b)は、遊走子を放出して増殖している状態 18S rDNA解析によるFFG039株の遺伝子配列 FFG039株の系統樹
以下、本発明による微生物の培養方法の好ましい実施の形態について詳細に説明する。なお、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
[本発明の方法]
本発明の基本的な培養方法を図1に示した。なお、本模式図は、本発明を説明するためのものであることから、簡略化して表記されている部分がある。
図1の(a)に示した様に、吸水性高分子ゲル1を支持基板2の上に形成させる。なお、吸水性高分子ゲル1を形成させてから、支持基板の上に移動させても良い。また、基板には突起状物を形成させ、そこに吸水性高分子ゲルで該突起状物の全体又は少なくとも一部分を被覆するようにしても良い。これにより、一般的に強度の弱い吸水性高分子ゲルの形態が安定し、吸水性高分子ゲルと支持基板との接着性が向上する場合があるからである。
吸水性高分子ゲル1は、ゲル層を作成してから培地を含浸させても良いが、ゲル層の形成と同時に含浸させておく方が、含浸させる時間が少なく、栄養源を均一に分布させることが可能であることから好ましい。
しかし、吸水性高分子ゲル1を再利用する場合(図1の(f)から(b)への工程)には、吸水性高分子ゲルに対して培地を添加する方が好ましい。培地は、前培養と同じ組成のものを使用してもかまわないし、異なる培地組成からなる培地を使用しても良い。後者の場合には、培地成分及び各成分の比率は同一であるが、その濃度が異なる培地を使用することも可能である。例えば、培地を構成するすべての組成の濃度を2倍にすることで調製した培地などである。この様にすることで、吸水性高分子ゲル1に栄養成分をより多く含浸させることが可能となる。また、吸水性高分子ゲル1に対して乾燥処理を行った後、培地を含浸させてもかまわない。この様にすることで、吸水性高分子ゲル1に培地をより早く含浸させることが可能となる。
図1の(b)に示した様に、吸水性高分子ゲル表面上に微生物を塗布する。塗布する方法は、公知のいかなる方法を用いても良い。例えば、微生物を含む培地をピペットのようなもので吸水性高分子ゲル表面上に滴下する方法、滴下した後に吸水性高分子ゲル層の表面に薄く伸展させる方法、スピンコートによって塗布する方法などがある。また、微生物を含む溶液を霧状に噴霧することも可能である。これにより種微生物層3が形成され、図1の(b)の状態となる。なお、微生物を含む溶液は、懸濁処理をしてもしなくてもかまわないが、懸濁処理を行った方が、吸水性高分子ゲル層表面に微生物を均一に分布させることができることからより好ましい。なお、吸水性高分子ゲル層1の表面は、平坦であることが好ましいが、凹凸があってもかまわない。凹凸があることによって、二酸化炭素がゲル表面と基板との間に生じた隙間を通って拡散することができるからである。また、図では、均一にコートできているように図示しているが、斑があっても良いが、可能な限り均一なほうが好ましい。
次に、図1の(c)に図示したように、種微生物層3の表面に基板4を被覆させる。この状態で培養を行うことによって、図1の(d)に示した様に、微生物層5が形成される。この層が十分に増殖したと判断した場合には、吸水性高分子ゲル層1から基板を剥がす。この状態が図1の(e)と(f)の状態である。本模式図では、(e)の方に微生物が付着しているが、(f)の方に付着していても良く、また、両方に付着していても良い。なお、回収効率の観点から片方に付着している方が望ましく、特に、(e)の方に付着しているほうがより好ましい。これは、微生物を固形治具のようなものを用いて回収する場合、一般的に表面強度が弱いと考えられる吸水性高分子ゲル層1から回収するよりも、強度が強い基板4から回収する方が、吸水性高分子ゲル層1の再利用の観点から好ましいからである。なお、基板4または吸水性高分子ゲル層1に微生物が付着しているとは、どちらかに微生物の大部分が付着している状態を指すものであり、非付着表面には、微生物が全く存在していない状態ではない。
基板の表面から微生物を回収する場合には、図1(e)の表面の微生物をセルスクレーバーのようなものを用いて回収することができる。これにより、図1(h)の基板と図1(g)の回収物6とが得られる。なお、(f)の吸水性高分子ゲル層に微生物が付着することがあるが、その場合の模式図は省略した。
基板4または吸水性高分子ゲル層1から、微生物を脱着した後でも、完全に微生物が存在していない状態とはならない。従って、これらの表面には微生物が存在しており、これを種藻として利用することで、微生物の塗布を行わずに、吸水性高分子ゲル層1と基板4とを張り合わせ、培養を開始することもできる。
また、図1の(e)の状態で乾燥工程を行い、含水率を低下させてから微生物層5を基板から脱着しても良い。さらに、図1の(g)の状態で乾燥工程を行い、含水率を低下させてから回収物を得ても良い。さらに、これらの両方法を用いて、乾燥後の回収物を得ても良い。すなわち、基板上の藻体を乾燥させ、乾燥藻体を脱着し、脱着した乾燥藻体をさらに乾燥させても良い。乾燥工程としては、加熱による乾燥、凍結乾燥、太陽光を用いた自然乾燥など、いかなる公知の方法でも用いることができるが、太陽光を用いた自然乾燥が最も好ましい。図1の(g)の状態では、含水率が70%以下になっていることが多く、その場合には、その形態が不定形となり表面積は非常に大きくなっている。そのために、効率的に乾燥を行うことができる。図1の(g)の回収物6の含水率が高いと予想される場合には、この様な効果が得られにくい場合がある。その場合には、図1の(e)の状態で乾燥工程を行っても良い。
本発明では、基板4に対して微生物を付着させてから培養を開始することもできる。このような培養方法を行った場合の模式図を図2に示した。図2(a)に示した様に、基板4の表面に対して微生物を付着させる。その方法は、公知のいかなる方法を用いても良く、例えば、基板4の表面に微生物懸濁液を塗布する方法、基板を微生物の懸濁液中に浸漬し、基板上に微生物を付着または堆積させる方法、液面浮遊培養を行うことで液面上に微生物バイオフィルムを形成させ、これを基板の表面へと転写して付着させる方法などをあげることができる。次に、図2(b)に示した様に、微生物付着基板で吸水性高分子ゲル1の表面を被覆した後、培養を行う。この図と図1(c)とが同一の図であり、残る工程は、図1(c)以降と同一である。なお、吸水性高分子ゲル層1及び基板4の両方に微生物を付着させてから貼りあわせてもかまわない。
図3には、液面浮遊培養によって液面上に微生物バイオフィルムを形成させ、これを基板に転写し、微生物が付着した基板を調製する方法を示した。図3(a)に示した様に、微生物の懸濁液8を調製し、培養器に入れた後、静置状態にしておくと、図3(b)に示した様に、微生物は、その種類に応じて、数秒から数十分で培養器7の底面に沈む。なお、微生物が底面に沈むとは、大部分が底面に沈むことをいい、液面上や液中、培養器側面やその他表面や培地中から完全に微生物が存在しなくなる状態を言うものではない。この状態でしばらく静置培養を行うと、図3の(c)に示した様に、液面上に微生物から構成されたバイオフィルムが形成される。さらに培養を継続すると、フィルム状構造体から三次元状構造体へと構造は変化する。なお、この変化は連続的である。また、図3の(c)に示した様に、培養器底面にも微生物は存在し、図には記載していないが、培養器側面やその他表面にも存在している。
次に、図3(d)の様に、基板上に微生物バイオフィルムを転写法によって付着させる。微生物付着基板を培養器から取り出した状態が、図3の(e)の状態である。この状態は、図2(a)と同一であり、以後は、図1に示した工程で培養を行うことができる。なお、図3(d)によって液面上の微生物を除去した後の状態が図3(f)であり、培養器内の底面や側面、さらには液面上にも微生物が残存しており、ここから新たに培養を開始することができ、その結果、図3(c)の状態にすることが可能である。このサイクルは、培地中に増殖のための栄養分が残っている限り行うことができ、さらに、培地の全部又は一部分を除去後、新しい培地を追加することで何度でも培養を行うことができる。
本発明では、図3に示した様に、基板を用いて液面上に形成されたバイオフィルムを転写することで、図2の(a)に示した微生物付着基板を準備することもできる。液面上のバイオフィルムは、培養の進行に伴ってフィルム状構造体の一部が気泡状に盛り上がった三次元状構造体を利用することもできるが、本培養工程での増殖向上余地を確保する観点から、フィルム状構造体を利用することが好ましいが、この限りではない
図4には、壁面培養を行った場合の模式図を示した。本模式図では、両面培養を行った場合について図示しているが、片面培養の場合にも幾つかの変更で培養を行うことができる。図4(a)は、吸水性高分子ゲル1と基板4との構造体である。吸水性高分子ゲル1のみで使用してもかまわないが、一般的に吸水性高分子ゲルは強度が柔らかく、基板4を用いる方が強度の観点から好ましい。また基板4は、支持基板2と同一の役割も担っている。(b)は基板と反対側の吸水性高分子ゲル1の表面に微生物を塗布したものである。図1と同様に塗布の方法は公知のいかなる方法を用いても良い。(c)は、微生物塗布面に対して基板4を被覆させたものである。図2の様に、微生物を付着させた基板4で吸水性高分子ゲル1を被覆しても良い。また、基板4、吸水性高分子ゲル1の両方に微生物を塗布してから、両者を張り合わせてもかまわない。次に、(d)の様に、微生物塗付面と反対側の基板を吸水性高分子ゲルから剥がす。なお、(d)の微生物を塗布した基板4は吸水性高分子ゲルの支持体としての役割も担っている。
次に(e)の様に、微生物を塗布し、(f)の様に、基板4で微生物塗布吸水性高分子ゲル1を被覆した後、培養を継続して行う。培養を行った結果が(g)である。培養後、(h)の様に片方の基板を剥がし、セルスクレーバーなどを用いて基板から微生物を脱着する。6はその回収物である。なお、(h)では、吸水性高分子ゲル1の右側の基板を先に剥がしているが、左側を先に剥がしても良い。また、同時に剥がしても良いが、一般的に吸水性高分子ゲルは、強度が低いことから、片方ずつ剥がすことが望ましい。また、図では、基板4のほうに微生物が付着しているように図示しているが、吸水性高分子ゲル1側に微生物が付着していても同様に行える。(i)に図示したように、基板4を外した側の吸水性高分子ゲル1の表面に微生物と基板4とを貼り付ける。なお、吸水性高分子ゲル1に微生物を塗布した後に基板4で被覆しても良いし、微生物を塗布した基板を用いて、吸水性高分子ゲルを被覆しても良い。この工程によって、(j)の状態になり、(k)に示した様に、もう片方の微生物を回収し、再び微生物を付着させ(図4の(l))、培養を行うことで(g)の状態となる。この工程は何度でも繰り返しても良い。なお、3の微生物数の方が、5の微生物数よりも少ないものとする。また、基板、吸水性高分子ゲル、微生物から構成された構造体は、図には1つのみ図示しているが、複数個の構造体を並べて使用しても良い。また、図では、構造体は地面に対して垂直方向になるように図示しているが、いかなる角度で設置しても良いし、複数個設置する場合には、それぞれの設置角度や大きさ、吸水性高分子ゲル1の厚さ、基板4の種類などが異なっても良い。
また、本発明では、図3(e)で調製した微生物付着基板を吸水性高分子ゲル1に貼り付けることで培養を行うこともできる。
図4では、吸水性高分子ゲル1の表面に付着させた基板4を吸水性高分子ゲル1の支持体として利用しているが、図5に示した様に、支持体としての基板2を吸水性高分子ゲルの内部に設置しても良い。なお、この基板で吸水性高分子ゲルによって被覆されている部分は、基本的には微生物と接触せず、支持体としてのみ機能する。なお、支持体基板2は、基板4と比較して強度が高い方が好ましい。これは、前者が構造体を支持するための機能を持つため強度を要するが、後者は、回収用基板としての機能をも有するため、柔軟性を持つ必要がある場合があるからである。また、支持体基板2は、貫通状構造を有していても良い。これにより、貫通状構造を通じて、吸水性高分子ゲル1が連続構造体となり、構造体の形態を維持し易いからである。
[本発明で培養可能な微生物]
本発明で使用可能な微生物としては、種々の公知の培養法、例えば、浮遊培地面浮遊培養、付着培養が可能であり、人工的に調製可能な培地で培養が可能であれば、いかなる種類の微生物をも対象としている。
本発明の微生物とは、人の肉眼では、個々の存在が識別できないような微小な生物を指す。微生物としては、真正細菌、古細菌のみならず、真核生物としての藻類、原生生物、菌類、粘菌などを用いることができる。また本発明で微生物というときは、植物細胞及び動物細胞を含む。
微生物として微細藻類も使用することができる。上記微細藻類としては、特に制限はなく、原核生物、真核生物のいずれであっても良く、目的に応じて適宜選択することができる。より具体的には、例えば、藍色植物門、灰色植物門、紅色植物門、緑色植物門、クリプト植物門、ハプト植物門、不等毛植物門、渦鞭毛植物門、ユーグレナ植物門、クロララクニオン植物門などがあげられる。これらの中でも、上記微細藻類としては、不等藻植物門の珪藻、緑色植物門が好ましく、バイオマスを産生する点で、ヘマトコッカス(Haematococcus)属、クラミドモナス(Chlamydomonas)属、クロロコッカム(Chlorococcum)属、ボツリオコッカス(Botryococcus)属、ニッチア(Nitzschia)属がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記微生物を入手する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、自然界より採取する方法、市販品を用いる方法、保存機関や寄託機関から入手する方法などがあげられる。なお、本発明で用いられる微細藻類は、純化工程を経由したものであることが好ましい。
微生物として酵母も使用することができる。上記酵母としては、特に制限はなく、エンドミセス(Endomyces)属、エレマスクス(Eremascus)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、ナドソニア(Nadsonia)属、サッカロミコデス(Saccharomycodes)属、ハンセニアスポラ(Hanseniaspora)属、ウィッカーハミア(Wickerhamia)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、ロッデロミセス(Lodderomyces)属、ウィンゲア(Wingea)属、エンドミコプシス(Endomycopsis)属、ピキア(Pichia)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、パキソレン(Pachysolen)属、シテロミセス(Citeromyces)属、デバリオミセス(Debaryomyces)属、シュワンニオミセス(Schwanniomyces)属、デッケラ(Dekkera)属、サッカロミコプシス(Saccharomycopsis)属、リポミセス(Lipomyces)属、スペルモフソラ(Spermophthora)属、エレモテシウム(Eremothecium)属、クレブロテシウム(Crebrothecium)属、アシュブヤ(Ashbya)属、ネマトスポラ(Nematospora)属、メトシュニコウィア(Metschnikowia)属、コッキディアスクス(Coccidiascus)属、又はキャンディダ(Candida)属に属する酵母を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。キャンディダ(Candida)属に属する酵母の好ましい例は、Candida utilisである。
本発明では、上記微生物の中でも有用物質を生産できることが好ましい。特に、医薬品、化粧品、健康食品の中間体や最終生成物、合成化学で使用する原料、炭化水素化合物やトリグリセリド、脂肪酸化合物のようなオイル状物、水素のような気体などを生成する微生物が好ましい。なお、本発明では、これらを生成物と呼ぶことがある。さらに本発明では、液面上での培養及び液面からの回収が良好であること、高い増殖速度を持つこと、高いオイル含有率を有していること、少なくとも培養中は臭いが殆どなく、有毒物質の発生も確認されていないこと、のいずれかを満たす微生物を用いることが好ましい。
[バイオフィルム]
本発明でのバイオフィルムとは、微生物から構成されているフィルム状の構造体又は後述する立体的な三次元状の構造体のことを言い、通常、岩などの表面に付着している微生物構造体(微生物集合体又は微生物膜)のことを言うが、これらに加えて本発明では、液面のような流動性のある表面に存在している、微生物から構成されたフィルム状構造体または三次元状構造体のこともバイオフィルムという。なお、自然界でのバイオフィルムは、目的微生物とともに、ゴミや植物の破片などを含んでいることがあるが、本発明では純化工程を経由して得られた試料であれば、これらを含んでいてもよい。しかし、理想的には、本発明に係る微生物と該微生物の増殖時に分泌される細胞間マトリックスなどのような物質のみから構成されていることがより好ましい。また、培養器の底面上の微生物もフィルム状構造体を形成していれば、バイオフィルムということができる。
またバイオフィルムは、個々の微生物同士が直接又は細胞間マトリックスのような物質(例えば、多糖等)を介して付着しあっている構造であることが好ましい。一般的には、この様なフィルム状構造体のことを生物膜などと表記される場合も多い。
また、純化工程とは、微細藻類を単一の種類にする目的で行う工程であり、必ずしも完全に単独の微細藻類のみにすることを言うものではない。
本発明では、吸水性高分子ゲルと基板との間で増殖し、実質的に微生物集合物が連続している構造体のこともバイオフィルムと言うものとする。本発明では、本培養工程の終了時には、微生物回収物の量が多いことから、この領域にバイオフィルムが形成されていることが望ましい。また、本培養工程を開始する際に、該領域にバイオフィルム構造を形成していても良く、形成していなくても良い。なお、前者の方が該領域を有効に使用でき、微生物回収物の量を多くすることができる場合が多いことからより好ましい。
[AVFF007株]
本明細書の実施例で使用した微細藻類、AVFF007株は、受託番号FERM BP−11420として、2011年(平成23年)9月28日付で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)
にブタベスト条約の下で、富士フイルム株式会社(日本国東京都港区西麻布2丁目26番30号)により、国際寄託された。なお、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターの業務は、2012年(平成24年)4月1日より、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 120号室)に引き継がれている。
AVFF007株は、本発明者らが、日本国京都府の淡水池から単離した淡水微細藻類の新規株である。AVFF007株は、その18S rRNA遺伝子の塩基配列の一部(配列番号:1、図22)を国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information、NCBI)のデータに基づき、BLASTで解析した結果、Botryococcus sp. UTEX2629(Botryococcus sudeticus)株に近縁の微細藻類であると同定された(UTEX2629株側の1118塩基中、AVFF007株側の1109塩基が同一であった。)。AVFF007株は、Characiopodium sp. Mary 9/21 T−3wとも近縁の微細藻類であり、今後、Characiopodium属に変更される可能性もある。その場合、AVFF007株の名称は変更されるものとし、また、Characiopodium属以外に変更された場合にも、AVFF007株の名称は変更されるものとする。
本発明には、AVFF007株と分類学的に同一の性質を有する株を用いることができる。AVFF007株の分類学的性質を以下に示す。
AVFF007株の分類学的性質
1.形態的性質
緑色円形状である。浮遊性であり、液面及び底面で増殖することができる。サイズは4〜30μmである(液面上の場合は比較的大きく、底面上のものは比較的小さい。)。液面上で増殖し、フィルム状構造体を形成する。増殖に伴って、液面上に気泡を発生し、これらが重なり合って液面上に三次元構造体を形成する。また、オイルを生産する。
2.培養的性質(培養方法)
(1)培地:CSiFF04(CSi培地を改良したもの。組成を図7に示した。)
(2)培養温度:好適温度は23℃であり、37℃以下であれば培養できる。
(3)培養期間(概ね定常期に達するまでの期間)は、初期使用藻体量によるが、2週間〜1ヶ月である。通常、10×10個/mLで培養することができる。
(4)培養方法:好気培養、静置培養が適する。
(5)光要求性:要。光強度:4000〜15000ルクス、明暗周期:明期時間12時間/暗期時間12時間。継代培養の際は、4000ルクスで培養することができる。
なお、AVFF007株は、上記の培養的性質(培養方法)にしたがった継代培養により、保管することができる。植え継ぎは、液面上に浮いている微細藻類を採取し、ピペッティングなどの分散を行った後、新しい培地に分散させることにより、行うことができる。なお、継代直後は、培養器底面に沈んでいるが、1週間程度で液面上にバイオフィルムを形成し始める。継代直後から液面上に存在させても、増殖することができる。植え継ぎ間隔は、約1ヶ月である。なお黄色味を帯びてきたら、継代する。
AVFF007株と分類学的に同一の性質を有する株には、微細藻類であって、その18S rRNA遺伝子が、配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチドと少なくとも95.0%、好ましくは98.0%、より好ましくは99.0%、さらに好ましくは99.5%、さらに好ましくは99.9%の配列同一性を有するものが含まれる。
本発明で塩基配列について配列同一性というときは、2つの配列を最適の態様で整列させた場合に、整列した領域内の2つの配列間で共有する一致した塩基の数の百分率を意味する。すなわち、同一性=(一致した塩基の数/塩基の全数)×100で算出でき、市販もしくは一般に公開されているアルゴリズムを用いて計算することができる。塩基配列の同一性に関する検索・解析は、当業者には周知のアルゴリズムまたはプログラムにより行うことができる。プログラムを用いる場合のパラメーターは、当業者であれば適切に設定することができ、また各プログラムのデフォルトパラメーターを用いてもよい。これらの解析方法の具体的な手法もまた、当業者にはよく知られている。
[FFG039株]
本明細書の実施例で使用した微細藻類、FFG039株は、本発明者らが日本国奈良県において採取したものである。AVFF007株に比較して、増殖性が良く、オイル生産性に優れる。また、バイオフィルムの構造が壊れにくく、回収が容易であるという特徴を有する。なお、FFG039株はChlorococcum sp.であり、18S rRNAの遺伝子配列解析の結果、微細藻類クロロコックム属RK261株(Chlorococcum sp. RK261)に近縁の種類であった。本発明では、新規に単離した微細藻類をChlorococcum sp.FFG039と名付けた。本発明に係る微細藻類の遺伝子領域をコードする塩基配列のうち、一部の領域の、クロロコックム属RK261に相当する塩基配列との同一性が95.00%以上99.99%以下であることがより好ましい。なお、ここで言う「一部の領域」とは、1000塩基配列以上の領域を意味する。同一性を試験するにあたっては、全塩基配列を用いての同一性の試験が最も信頼性が高いが、全塩基配列を決定することは極少数の生物種を除いて技術的にもコスト的にも困難であり、またクロロコックム属RK261株の塩基配列も特定の一部(具体的には、後述する比較対象としたChlorococcum sp. FFG039株(以下、FFG039株と略称する。)の塩基配列に対応する塩基配列の近傍)しか公開されて
いない。更に、一般的には1000塩基配列程度読めば帰属は可能といわれている。以上のことから、本発明では「一部の領域」の塩基配列の比較により同一性を試験したが、その信頼性は十分に高いものと考えられる。なお、クロロコックムの和名は、淡水藻類、山岸高旺著、内田老鶴圃に記載の和名に準じた。
本明細書の実施例で使用した微細藻類、FFG039株は、受託番号FERM BP−22262として、2014年(平成26年)2月6日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 120号室)にブタベスト条約の下で、富士フイルム株式会社(日本国東京都港区西麻布2丁目26番30号)により、国際寄託されている。
FFG039株は、本発明者らが京都府の池から単離したクロロコックム属に属する淡水微細藻類の新規株である。
以下に、該微細藻類の単離方法(以下、純菌化ともいう)及び該微細藻類のFFG039株を新規株と判定するに至った経緯を説明する。
[微細藻類FFG039株の純菌化]
奈良県の池から自然淡水を5mLのホモジナイズ用チューブ(株式会社トミー精工、TM−655S)に入れることで採取した。図7に示すCSiFF04培地を1.9mL入れた24穴プレート(アズワン株式会社、微生物培養プレート1−8355−02)に、採取してきた自然淡水を100μL加え、プラントバイオシェルフ組織培養用(株式会社池田理化、AV152261−12−2)に設置し、4000ルクスの連続光照射下、23℃で培養を行った。約1ヵ月後、24穴プレートのウェル内に緑色の凝集物が生じたので、光学顕微鏡で観察したところ、多数の微生物の存在を確認した。
アガロース(inviterogen, UltraPureTM Agarose)を1g秤量し、200mLのCSiFF04培地を500mL三角フラスコに入れた。これを121℃で10分間オートクレーブ処理し、クリーンベンチ内でアズノールシャーレ(アズワン株式会社、1−8549−04)の中に、冷えて固まる前に約20mLずつ入れることで、アガロースゲルを作製した。
24穴プレート内の微細藻類を含む溶液を希釈し、ディスポスティック(アズワン株式会社、1−4633−12)のループ部分に溶液を付着させ、前記にて準備したアガロースゲル上に塗ることで、アガロースゲル上に微細藻類を塗布したシャーレを調製した。
このシャーレを、プラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、4000ルクスの連続光照射下、23℃で培養を行った。約2週間後、緑色のコロニーが、アガロースゲル上に現れたので、滅菌竹串(アズワン株式会社、1−5980−01)を用いて、コロニーをその先端に付着させ、CSiFF04培地を2mL入れた24穴プレートのウェル内に懸濁させた。この様にして調製した微細藻類を含む24穴プレートをプラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、4000ルクスの連続光照射下、23℃で培養を行った。約2週間後、ウェル内の水溶液が緑色を呈してくるので、すべてのウェルから少量の溶液を採取し、光学顕微鏡を用いて微細藻類を観察し、単一の微細藻類しか存在していないと考えられるウェルを見つけ出すことで、純菌化を行った。
また、FFG039株の40倍での顕微鏡写真を図23に示した。(a)が通常の状態、(b)が多数の遊走子を放出して増殖しているところである。
[形態的性質]
・分散処理を行った後にしばらく時間を置くと、底面にすべて沈む。
・しばらく培養を行うと、液面上に浮くものが現れる。従って、底面に沈んでいるものと液面に浮いているものとに分かれる。さらに培養を継続すると、液面上にフィルム状の構
造物が現れる。さらに培養を行うと、三次元状の構造物が現れる。
・液面のもの、及び、底面のもの、いずれも形態は球状であり、それぞれサイズは一定ではなく分布を持つ。
・凝集性があり、巨大なコロニーを形成する
・色は緑色であり、培養の進行に伴って、黄色く変色する。
・培養中及び回収物の臭いはほとんどない。
[培養的性質]
・細胞増殖時には、遊走子によって増殖する。1個の細胞から、多数の遊走子が発生する。
・光合成による光独立栄養培養が可能である。
・増殖には、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウ、マンガン、鉄が必須である。他に、亜鉛、コバルト、モリブデン、ホウ素が入っていると好適に増殖する。ビタミン類の添加も増殖を促す。
[生理学的性質]
・藻体内にオイルを蓄積し、乾燥重量比で最大40重量%近く蓄積する。
・オイルは、炭化水素化合物と脂肪酸を蓄積する。脂肪酸は、パルミチン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸などを産生し、特に、パルミチン酸、オレイン酸が主成分である。炭化水素化合物は、デカン、ヘプタデカンなどを産生する。
・Nile red染色したFFG039株を蛍光顕微鏡で観察すると、蛍光視野中の藻体において、明るい蛍光発色の領域としてNile redで発色したオイルの存在が確認される。該オイルは藻体細胞内の比較的広い領域に蓄積されうる。
更に以下の方法に従って、FFG039株の同定を行った。
(微細藻類FFG039株の同定)
FFG039株の培養法は、100mL容量の三角フラスコに50mLのCSiFF04培地を導入し、1000×104個/mLのFFG039株溶液を0.5mL添加し、25℃、光照射下で振盪培養を14日間行った。
FFG039株の乾燥粉末を得るために、前記によって得られたFFG039株を含む培地40mLを遠心機(MX−300(トミー精工製)を用いて、6000×g、4℃下、10分間遠心操作を行った。上清を除去した後、液体窒素を使用して固形物を容器ごと凍結し、これを予め液体窒素によって冷やしておいた乳鉢に全量移し、予め液体窒素にて冷やしておいた乳棒を用いて粉砕した。
微細藻類からのDNAの抽出は、DNeasy Plant Mini Kit (Qiagen製) を用いて、記載されているマニュアルに従って抽出を行った。抽出後のDNAは、e−spect (malcom製)を用いて、純度、量を測定した。抽出後のDNAは、精製度の指標であるA260nm/A280nm=1.8以上を達成しており、約5ng/μLのDNAが取得されたことを確認した。
抽出後のDNAの純度は問題なかったことから、超純水を用いて104倍に希釈することで、PCR用の試料を準備した。PCR用の試料としては、18S rRNAの遺伝子領域(rDNA領域)を使用した。PCRは、GeneAmp PCR System 9700 (Applied Biosystems製)を用いて、98℃10秒間、60℃50秒間、72℃10秒間のサイクルを30回行った。なお、使用した酵素は、Prime Star Max (タカラバイオ製)である。得られたPCR産物は1 %アガロース電気泳動により、単一バンドであることを確認した。
PCR生成物の精製は、PCR purification kit (Qiagen
製)を用いて行った。方法は、マニュアルに記載の方法に従って行った。PCR反応が十分にできたかどうか、また、精製度を確認するために、e−spectを用いて、純度、量を測定し、A260nm/A280nm=1.8以上であったことから、問題ないと判断した。
次に、精製物を鋳型とし、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing kit (Applied Biosystems製)を用いて、サイクルシークエンスを行った。条件は、マニュアルに従った。得られた反応物をABI PRISM 3100−Avant Genetic Analyzer(Applied Biosystems製)を用いて、塩基配列の解読を行った。
これをBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)による同一解析を行った。方法は、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information、NCBI)のデータ上の全塩基配列情報に対し、上記配列をBLAST検索し、最も同一性の高い生物種をFFG039株の近縁種とした。比較対象とした塩基配列(1650塩基、配列番号1)についてのみ、図24に示した。具体的には、解読した塩基配列の両端の数塩基は、BLAST解析によって比較対象とされなかったので、図24には示さなかった。なお、図24に示した塩基配列の左上が5’末端であり、右下が3’末端である。
同一解析の結果、Chlorococcum sp. RK261株と、Chlorococcum sp. RK261株側の1650塩基中、FFG039株側の1649塩基に同一性(すなわち、99.94%の同一性)があった。従って、FFG039株は、Chlorococcum sp. RK261株に近縁の微細藻類であると分類した。
以上の解析の結果得られた系統図を図25に示す。なお、本発明では、クロロコックムの名称が変更された場合には、FFG039株も同様に名称が変更されるものとする。
本発明には、FFG039株と分類学的に同一の性質を有する株を用いることができる。FFG039株の分類学的性質を以下に示す。
FFG039株の分類学的性質
1.形態的性質
円状である。静置培養を行うと、液面上にフィルム状の構造物を形成する。オイルを生産する。
2.培養的性質(培養方法)
(1)培地:CSiFF04培地又はCSi改良培地(Ca(NO・4HO 150 mg/L、KNO 100 mg/L、KHPO 28.4 mg/L、KHPO 22.2 mg/L、MgSO・7HO 40 mg/L、FeCl・6HO 588 ug/L、MnCl・4HO 108 ug/L、ZnSO・7HO 66 ug/L、CoCl・6HO 12 ug/L、NaMoO・2HO 7.5 ug/L、NaEDTA・2HO 3 mg/L、ビタミンB12 0.1 ug/L、Biotin 0.1 ug/L、チアミン・HCl 10 ug/L、pH 7.0)
(2)培養温度:15〜25℃で培養できる。
(3)培養期間:2〜4週間
(4)培養方法:静置培養が適する。
(5)光要求性:要。光強度:4000〜15000ルクス、明暗周期:明期時間12時間/暗期時間12時間。
FFG039株と分類学的に同一の性質を有する微細藻類には、Chlorococc
um sp.属に属する微細藻類であって、その18S rRNA遺伝子が、配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドと少なくとも99.94%の配列同一性を有するものが含まれる。
[浮遊培養]
本発明では、微生物を培地中に分散させた状態で培養することを浮遊培養と呼んでいる。なお本発明では、液面上での培養を浮遊培養とは呼ばないものとする。浮遊培養では、前培養工程において、目的に応じて使用する。
[液面浮遊培養]
本発明では、液面上で微生物を培養する培養方法のことを液面浮遊培養と言う。なお、培養器底面、側面や培地中などに微生物が同時に存在していても、主たる目的が液面上での培養である場合には、液面浮遊培養という。また液面上でバイオフィルムが形成される場合には、液面にはバイオフィルムとともに泡沫がたくさん存在し、液面がどの位置か必ずしも明確でない場合や、バイオフィルムが自重によって液面下に多少沈んでいる場合がある。本発明で液面上というときは、完全な液面のみならず、このような場合も含む。ただし、微生物を液中、培養器の底面のいずれか一方のみ、または、両方のみで培養する培養方法は、液面浮遊培養には含まれない。
なお本発明における液面とは、典型的には後述する液体培地の液面であり、通常、液体培地と空気との界面である。また、水が主成分となる場合は、水面のことである。
また、本発明での液面浮遊培養を行っていると、液面上のフィルム状構造体又は三次元状構造体からひだ状の構造体が液中へと侵入する現象が見られることがある。本発明では、この様な状況での培養も液面浮遊培養に含むものとしている。
液面浮遊培養を行うための種微生物としては、懸濁処理を行った後、培養器に添加してもよく、種微生物の添加後、液体培地との混合を促進するために攪拌を行っても良い。また、微生物バイオフィルムを培養器の水面に対して添加し、浮かせた状態で培養を開始しても良いし、浮かせてから微生物バイオフィルムの水面からの離脱が最小限になるように、微生物バイオフィルムを破断化させ、さらに、培養器液面上に分散するように攪拌してもかまわない。
[付着培養]
本発明で言う付着培養とは、基板表面又は培養器の壁面(例えば、培養器の底面又は側面)に微生物が付着した状態で培養することである。本発明の本培養工程は、付着培養の一種である。
[壁面培養]
本発明で言う壁面培養とは、地面に対して45度以上の角度で基板と吸水性高分子ゲルとの構造体を設置して行う培養方法のことであり、微生物を付着させた状態で行う培養方法のことである。壁面培養には、垂直培養を含むものとする。なお、壁面培養を行う場合には、支持基板を用いることが好ましい。
構造体の配置には、構造体を固定するための器具を使用することが好ましい。また、構造体は複数個設置し、同時に培養を開始しても良い。複数個の構造体を設置することによって、培養に必要な面積を有効に活用することができる。
なお、構造体の設置間隔は任意に決めることができるが、5mm以上であることが好ましく、1cm以上であることがさらに好ましく、10cm以上が最も好ましい。構造体の間隔が5mm以上であると、構造体の底部近辺にも光を届けさせることができる。構造体の設置間隔は一般的に1000cm以下である。
構造体を地面に対して垂直に配置する時の高さも培養の目的に応じて決めることができる。すべての構造体を同じ高さで設置しても良く、異なった高さの構造体を設置しても良い。これにより、斜めからの光の照射に対して、効率的に培養を行うことが可能となる場合があるからである。
[垂直培養]
本発明で言う垂直培養とは、地面に対して70度以上の角度で基板と吸水性高分子ゲルとからなる構造体を設置して行う培養方法のことであり、微生物を付着させた状態で行う培養方法のことである。壁面培養の一形態が、垂直培養である。
[水平培養]
本発明で言う水平培養とは、地面に対して45度未満の角度で基板と吸水性高分子ゲルからなる構造体を設置して行う培養方法のことである。
[両面培養]
本発明で言う両面培養とは、吸水性高分子ゲルが有する表面のうち、二つの面を使用して培養する培養方法のことである。主として、壁面培養において行い、支持基板を用いることが好ましい培養方法である。支持基板を用いる場合、図5に示したように、支持基板の両側に吸水性高分子ゲル層をそれぞれ設置することがある。この場合、支持基板の一方の側の吸水性高分子ゲル層の一面と、支持基板の他方の側の吸水性高分子ゲル層の一面とを培養に使用することができ、これらの二面を使用して培養する場合も、本発明でいう両面培養に包含される。
[前培養工程]
本発明の前培養工程とは、純化工程を終了した後に得られた保存用微生物を増殖させ、本培養が行えるまでに微生物の数を増やす工程のことである。前培養工程は、公知のいかなる培養方法でも選択可能である。例えば、分散培養法や付着培養法、また、本発明者らにより開発された液面浮遊培養などを行うことが可能である。また、本培養が行える規模まで微生物を増殖させるために、前培養工程を数回行っても良い。
また、一般的には、1cm〜1m以下の表面積を持つ培養器を使用し、屋内外いずれでも培養可能であるが、屋内での培養の方が好ましい。
[本培養工程]
本培養工程とは、前培養工程を行った後の培養工程のことであり、最終回収工程を行う直前までの培養工程のことを言う。本培養工程は、複数回行っても良い。
また、一般的には、100cm以上の表面積を持つ培養器を使用し、屋内外いずれでも培養可能であるが、屋外での培養の方が好ましい。
[種微生物]
本発明での種微生物とは、前培養工程や本培養工程の開始時に使用する微生物のことを指し、前培養工程や本培養工程における微生物の培養の元となる微生物のことを言う。さらに種微生物は、前培養工程により得られた微生物に限られず、本培養工程により得られた微生物、回収工程で得られた最終回収物の一部も使用することができる。
また、回収工程の後に、基板上や吸水性高分子ゲル上に残存している微生物を用いて、培養を再開する場合には、これらの微生物を種微生物として扱うことができる。
なお、微生物が微細藻類の場合には、本発明では種藻ということがある。
[懸濁処理]
本発明では、懸濁処理した微生物試料を用いても良い。懸濁処理を行うことで、溶液中の微生物が均一化し、吸水性高分子ゲル又は基板上の微生物の分布が均一化し、培養後の膜厚が均一化する結果、培養面積あたりの微生物量が増加する場合があるからである。懸濁処理としては、公知のいかなる方法を用いることができるが、ピペッティングや容器内に入れた微生物溶液を手で振る処理、スターラーチップや攪拌棒による処理などの弱い処理、超音波処理や高速振盪処理などの強い処理、細胞間マトリックスのような接着物質を分解する酵素などの物質を用いる方法などをあげることができる。
ただし、凝集性を示さない微生物の場合には、本処理工程は不要である。また、図3の液面浮遊培養によって得られた微生物の場合で、基板や吸水性高分子ゲル表面に塗布する場合を除いて、本処理工程は不要である。
[微生物の塗布]
微生物の塗布とは、微生物を吸水性高分子ゲルの表面または基板の表面の少なくともいずれか一方に存在させる処理のことをいい、その方法は公知のいかなる方法を用いても良い。例えば、微生物を含む溶液を上記表面に添加したのち、展開棒などを使用し、表面に塗布する方法、上記表面を微生物懸濁液の中に浸漬し、表面に微生物を付着させる方法、液面上に形成させた微生物バイオフィルムを上記表面に転写させる方法などをあげることができる。なお、微生物を含む溶液は、懸濁処理を行う方が、均一に微生物を塗布させることが可能である場合が多いことから好ましい。
また、培養を開始するにあたっての微生物の塗布量は、0.001μg/cm以上1mg/cm以下が好ましく、0.1μg/cm以上0.1mg/cmがさらに好ましく、1μg/cm以上10μg/cmが最も好ましい。0.1μg/cm以上であれば、培養開始時の微生物量に対する培養終了後の微生物量との比を短時間で大きくすることができることから好ましい。
また、微生物集合体は、培養領域内で複数個存在していても良い。
[液面上のバイオフィルムの転写法による微生物付着基板の調製]
転写法とは、図3の(d)から(e)に示されるように、液面上の微生物から構成された微生物バイオフィルム(フィルム状の構造体又は三次元状の構造体)を基板に写し取る方法のことであり、付着の一種で、実質的に増殖を伴わない付着である。
基板を液面に対して、平行、又は、それに近い角度になるように静かに挿入し、液面上の微生物バイオフィルムを基板の表面に付着させる。なお、挿入を行う際、基板を液面に対して若干斜めに挿入し、最終的に液面に対して平行にするようにすると、多くのバイオフィルムを少ない転写回数で付着でき好ましい。転写は、転写率が向上することから、複数回行っても良い。
転写は、培養器の液面全面に対して基板を接触させてもよいし、部分的に接触させても良い。バイオフィルムの転写において、培養器の一部分を転写し、かつ、複数の基板を用いる場合には、複数の基板を液面に対して接触させた後に、液面からバイオフィルム付着基板を引き上げることが好ましい。これは、一枚の基板を液面に挿入した後、液面から引き上げると同時にバイオフィルム非存在領域が現れるが、引き上げによる液面の動きによってバイオフィルム構造が崩れ、バイオフィルム存在領域から非存在領域に崩れたバイオフィルムが移動する可能性があり、これにより、新たな基板を用いて転写を行うと、バイオフィルム存在領域と非存在領域とを同時に転写してしまう場合があり、この場合には、本培養工程での増殖効率が低下するためである。
[吸水性高分子ゲルへの基板の被覆]
吸水性高分子ゲルへの基板の被覆は、被覆することが可能であれば公知のいかなる方法を用いても良い。
被覆により、吸水性高分子ゲルと基板との間に気相が生じることがあるが、気相を残したまま培養してもかまわないが、基板側に微生物が存在していた場合には、気相部分の基板側で微生物の乾燥による増殖速度の低下、死滅、乾燥により基板から微生物バイオフィルムの脱着性が低下するなど、種々の問題の原因となりうることから、可能な限り気相は除去した方が好ましい。
吸水性高分子ゲルへの基板の被覆は、吸水性高分子ゲル又は基板、又は、その両方に微生物を塗布した後、直ちに行っても良いが、一定時間培養を行ってから基板を被覆してもかまわない。
[培養器]
培養器(培養池)の形状は、吸水性高分子ゲルを保持できる限りにおいて、公知のいかなる形状でも用いることができる。培養器は、開放型、閉鎖型のいずれでも使用することができるが、大気中よりも高い二酸化炭素濃度を使用した際の、培養器外への二酸化炭素の拡散を防ぐために、閉鎖型の培養器を用いる方が好ましい。閉鎖型の培養器を用いることで、培養目的外微生物やゴミの混入防止、培地の蒸発抑制、風による構造体への影響を最小限にすることができる。しかし、商業生産を行う場合には、建設コストが安価であるなどの観点から、開放系での培養が好ましい。
[基板]
本発明での基板とは、図1の4、図2の4、図3の4、図4の4、図5の2で使用される固体状物のことであり、主として、吸水性高分子ゲルや微生物の乾燥を防ぐ機能、高分子吸水性ゲルの形態を保持する機能、液面上の微生物バイオフィルムを転写する機能、微生物代謝に必要な、あるいは不要な気体状物質の出入りを媒介する機能、目的外微生物の侵入を防ぐ機能の中から選ばれる少なくとも一つの機能を有するものである。
基板の形状は、フィルム状、板状、繊維状、多孔質状、凸状、波状などいかなる形状のものでも良いが、転写のしやすさ、及び基板からの微生物の脱着のしやすさ、吸水性高分子ゲルを支持する能力の高さから、フィルム状または板状であることが好ましい。
また、穴を開けた基板、すなわち、貫通状構造物を持つ基板を用いることもできる。培養の進行に伴って気体を放出する微生物の場合、本発明では、吸水性高分子ゲルと基板との間で微生物を培養しているため、この領域で気体が大気中に拡散しづらくなる。気体透過性の良い基板を用いた場合には、この様な問題は起こりにくいが、気体透過性の悪い基板や気体発生量の多い微生物を用いた場合には、気体が培養器外へと拡散するための穴を基板の表面に開けておくこともできる。なお、穴の個数や間隔は、気体を培養器外へと拡散でき、微生物の培養に著しく影響を与えない限りにおいて特に制限しない。
なお、気体が吸水性高分子ゲルと基板との間に残存した場合には、微生物が増殖するための水分が確保しづらく(特に、微生物の多くが基板側に存在していた場合)、増殖速度が低下してしまう可能性がある。また、この様な気泡が生じてしまった場合には、微生物が基板に強く吸着し、基板からの微生物の脱着時に問題を起こす可能性がある。このために、貫通状構造体を基板に設置し、発生した気体を培養器外へと拡散させることは重要である。
[支持基板]
本発明での支持基板とは、基板の一種であり、図1の2、図4の4、図5の2で使用され、主として、吸水性高分子ゲルの構造を保持するのに使用される基板のことである。一般的には、基板の強度をより高めたものである。
[基板の表面凹凸]
本発明では、基板の表面に凹凸を形成させることもできる。凹凸構造によって、気体状物質が基板と吸水性高分子ゲル層との間の領域の拡散が容易となる場合があるからである。
[素材]
本発明で使用可能な培養器、基板、支持基板の素材は、特に限定することはなく、公知のものを使用することができる。例えば、有機高分子化合物や無機化合物、金属、それらの複合体から構成された素材を使用することができる。また、それらの混合物を用いることも可能である。
有機高分子化合物としては、ポリエチレン誘導体、ポリ塩化ビニル誘導体、ポリエステル誘導体、ポリアミド誘導体、ポリスチレン誘導体、ポリプロピレン誘導体、ポリアクリル誘導体、ポリエチレンテレフタレート誘導体、ポリブチレンテレフタレート誘導体、ナイロン誘導体、ポリエチレンナフタレート誘導体、ポリカーボネート誘導体、ポリ塩化ビニリデン誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体、ポリビニルアルコール誘導体、ポリエーテルスルホン誘導体、ポリアリレート誘導体、アリルジグリコールカーボネート誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体誘導体、フッ素樹脂誘導体、ポリ乳酸誘導体、アクリル樹脂誘導体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等などを用いることができる。
無機化合物としては、ガラス、セラミックス、コンクリートなどを用いることができる。
金属化合物としては、鉄、アルミニウム、銅やステンレスなどの合金を用いることができる。
上記の中でも、基板や培養器の素材の一部は、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリエステルの中から選ばれる少なくとも一つから構成されていることが好ましい。
また、培養器、基板、支持基板の素材は同一であっても良く、異なっていても良い。
また、閉鎖型の培養器を用いる場合には、受光面は、光が透過する素材である方が良く、透明材料であればさらに良い。また、垂直培養を行う場合には、基板及び支持基板は、透明材料であることが好ましい。
[吸水性高分子]
本発明での吸水性高分子とは、吸水性に優れ、多量の水分(培地を含む)を保持することのできる高分子のことであり、吸水後に、圧力をかけても離水しにくい性質を持った高分子のことである。一般的には、架橋構造(本発明では、網目構造、ネットワーク構造などともいう)を形成し、その中に水分子を取り込んで、ゲル状の形態をしている。
吸水性高分子の吸水能としては、自重の2倍〜10,000倍が好ましく、自重の10倍〜1,000倍がより好ましく、自重の50倍〜500倍が特に好ましい。ここで、吸水能とは、純水を用いてポリマーの乾燥重量に対する吸水重量を計測したものを指すが、本発明において吸水ポリマーが吸水する対象としては、純水に限定されず、以下に説明する培地、水などが意図される。なお一般に、純水の代わりに塩類を含む水溶液を用いた場合には、吸水能は低下する。
上記吸水性高分子を構成するモノマーとしては、上記の吸水能を重合後に有すものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸、アクリル酸誘導体、酢酸ビニル、カルボキシメチルセルロース、エチレン、メタクリレート誘導体、ピロリドン、脂肪族グリコール、プロピレン、セルロース誘導体、アミノ酸などが挙げられる。上記アクリル酸誘導体としては、例えば、メタアクリル酸、及びそのエステル、カルシウム塩及びナトリウム塩、ヒドロキシエチルメタアクリル酸、ヒドロキシプロピルメタアクリル酸、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、ジメチルアミノエチルメタアクリル酸、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、アクリルアミド及びその誘導体(N−メチロールアクリルアミド及びそのアルキルエーテル化合物等)、オキシラン基を有するアクリル酸誘導体(グリシジルアクリレート、メタクリロニトリル等)、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸アセチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸アセチル、メタクリル酸ドデシルなどが挙げられる。
上記吸水性高分子としては、上記のモノマーを重合させたときの高分子化合物の他に、上記の吸水能を有すものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ−α−ヒドロキシビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;及びこれらのスルホン化物など、並びに、アルギン酸ナトリウム、デンプン、絹フィブロイン、絹セリシン、ゼラチン、各種タンパク質、多糖類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、微生物が産生する細胞外マトリックスを吸水性ポリマーとして用いることもできる。この中には、微生物が存在していてもよく、また、細胞外マトリックスのみを取り出して使用してもよい。さらに、微生物を含んでいる場合には、微生物は生きた状態で使用してもよいし、死んだ状態で使用してもよい。
上記吸水性高分子の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、質量平均分子量で、1,000〜10,000,000が好ましく、2,000〜1,000,000がより好ましく、5,000〜100,000が特に好ましい。上記質量平均分子量が、1,000以上であると、吸水性高分子ゲルの構造が安定し、10,000,000を以下であると重合が容易である。一方、上記質量平均分子量が、5,000〜100,000であると、吸水性高分子ゲルの安定性の点で好ましい。
上記吸水性高分子ゲルは、架橋されていてもよく、架橋されていなくともよいが、微生物を表面から脱着させた場合の構造体への影響を最小限にする観点、繰返し使用するための観点、垂直培養したときに吸水性高分子ゲルの形態を保持していなければならない観点などから、架橋されているものが好ましい。
吸水性高分子ゲルの架橋方法は、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。例えば、架橋剤を用いる方法、ラジカル開始剤を用いる方法、加熱により架橋させる方法、電子線、紫外線、放射線等を用いる方法などを挙げることができる。これらの中でも、架橋剤を用いる方法、紫外線を用いる方法が、簡便性、架橋効率の高さ、及び安全性の観点から好ましい。
上記吸水性高分子ゲルとして、共重合体を用いてもよい。共重合体にすることで、架橋反応が容易になるという利点がある。
支持基板に対する上記吸水性高分子の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乾燥粉末での質量で、上記基板の面積当たり1μg/cm〜100g/cmが好ましく、100μg/cm〜1g/cmがより好ましく、1mg/cm〜100mg/cmが特に好ましい。上記吸水性高分子の量が、1μg/cm以上であると、吸水性高分子ゲル構造が安定し、100g/cm以下であると、水分を十分に蓄えることができる。
吸水性高分子ゲルの厚みは、1mm〜100cmが好ましく、5mm〜20cmがさらに好ましく、1cm〜5cmが最も好ましい。吸水性高分子ゲルの厚みが1mm以上であると十分に水分を保持でき、吸水性高分子ゲルの厚みが100cm以下であると、ゲル層の形態の保持が可能である。
[培地(液体培地)]
本発明では、培養で使用する培地、吸水性高分子化合物に含浸させる培地は、微生物を培養できる限り、公知のいかなる培地(液体培地)も使用することができる。公知の培地として、AF−6培地、Allen培地、BBM培地、C培地、CA培地、CAM培地、CB培地、CC培地、CHU培地、CSi培地、CT培地、CYT培地、D培地、ESM培地、f/2培地、HUT培地、M−11培地、MA培地、MAF−6培地、MF培地、MDM培地、MG培地、MGM培地、MKM培地、MNK培地、MW培地、P35培地、URO培地、VT培地、VTAC培地、VTYT培地、W培地、WESM培地、SW培地、SOT培地などを挙げることができる。このうち淡水性のものはAF−6培地、Allen培地、BBM培地、C培地、CA培地、CAM培地、CB培地、CC培地、CHU培地、CSi培地、CT培地、CYT培地、D培地、HUT培地、M−11培地、MA培地、MAF−6培地、MDM培地、MG培地、MGM培地、MW培地、P35培地、URO培地、VT培地、VTAC培地、VTYT培地、W培地、SW培地、SOT培地である。前述のAVFF007株を培養する培地としては、C培地、CSi培地、CHU培地、及びこれら培地の混合物が好ましい。なお培地は、培養する微生物の種類に応じて選択することが望ましい。また培地は、吸水性高分子ゲル中に含まれていても良い。
培地は、紫外線滅菌、オートクレーブ滅菌、フィルター滅菌しても良く、しなくても良い。
培地は、前培養工程と本培養工程で異なる培地を使用しても良い。また、培養工程の途中で異なる培地を使用しても良い。
[吸水性高分子ゲル及び基板の再利用]
本発明では、吸水性高分子ゲルを一度限りの使用に限定することも可能であるが、資源の有効利用とコストダウンの観点から再利用することが好ましい。
この場合、培養後に基板または吸水性高分子ゲル表面から微生物バイオフィルムを脱着した後、吸水性高分子ゲルに基板を被覆することで培養を開始しても良い。すなわち、完全に微生物を脱着することは不可能であるため、表面に残った微生物を種微生物として、培養を開始する方法である。
さらに、微生物の懸濁液を吸水性高分子ゲル又は基板上に塗布した後、両者を接触させても良い。
吸水性高分子ゲルに培地を添加した後、基板で被覆しても良い。すなわち、増殖のための栄養成分を新たに追加した後に培養を開始しても良い。この場合、種微生物を新たに調製せずに培養を開始しても良い。さらに、吸水性高分子ゲルの含水率を低下させるための乾燥工程を行った後、培地を添加し、基板で被覆しても良いし、吸水性高分子ゲルに培地を添加した後、その表面に液体培地が残存していた場合に、その表面に液体培地が残存しない程度に乾燥させてから基板で被覆しても良い。この場合にも、種微生物を新たに調製せずに培養を開始しても良い。また基板は、新しい基板を用いても良いし、一度培養に使用したものを使用しても良い。また、培地は、吸水性高分子ゲルを調製した時と同一成分の培地を使用しても良く、異なる成分の培地を使用しても良く、その濃度も変更しても良い。なお、より高濃度の培地を添加することが、吸水性高分子ゲルに対する吸水性の限界値の問題点を回避する観点からより好ましい。また、これらの工程において、寒天培地に微生物を塗布した後、基板を被覆しても良いし、基板に微生物を付着させてから微生物付着基板を吸水性高分子ゲルに対して被覆しても良い。また、使用後の吸水性高分子ゲル又は基板の少なくとも一方を、蒸留水や培地で洗浄してから使用しても良い。
なお、吸水性高分子ゲルや基板を再利用する際に、異なる微生物を培養する場合には、十分に検討してから行うことが望ましい。
基板や吸水性高分子ゲルを殺菌処理や滅菌処理を行ってから使用しても良い。特に、微生物の種類を変える場合には、上記の方法を検討した方が良い。
[二酸化炭素]
微生物として微細藻類を用いた場合には、その多くが増殖を行うために二酸化炭素の供給が必要である。
前培養工程で分散培養を行った場合には、従来法のようにバブリングによって二酸化炭素を培地中に供給しても良いが、液面浮遊培養を用いた場合には、二酸化炭素を気相中から供給した方が好ましい。これは、液面上の微細藻類バイオフィルムの構造が破壊され、藻体量の斑が発生し、回収工程で基板上へのバイオフィルム回収効率が悪く、回収藻体量が減少する可能性があるからである。
本培養工程では、吸水性高分子ゲル上での培養になるため、バブリングによる二酸化炭素の供給が原理上不可能であることから、気相からの供給となる。基板としては、二酸化炭素の供給が可能となるように、基板を貫通する穴が少なくとも1ヶ所以上設置することも好ましい。また、小面積基板を複数個用いることも好ましい。なお、二酸化炭素透過性を持つ基板を用いることもできる。この様な基板として、シリコーンゴムシートなどを用いることができる。
本発明では、大気中の二酸化炭素の利用も可能であるが、大気濃度よりも高濃度の二酸化炭素を利用することもできる。この場合には、拡散による二酸化炭素の損失を防ぐために、閉鎖型の培養器または農業用フィルムなどの被覆物で覆った培養器中で培養することが望ましい。この場合の二酸化炭素濃度は本発明の効果が達成できる限り特に限定しないが、好ましくは大気濃度以上、20体積%未満であり、好ましくは0.01〜15体積%であり、より好ましくは0.1〜10体積%である。また、二酸化炭素は、燃焼装置によって排出された二酸化炭素であってもよい。また、試薬によって二酸化炭素を発生させてもよい。
[光源及び光量]
本発明で用いることのできる光源は、公知のいかなる光源も用いることができるが、太陽光、LED光、蛍光燈、白熱球、キセノンランプ光、ハロゲンランプなどを用いることができ、この中でも、自然エネルギーである太陽光、発光効率の良いLED、簡便に使用することのできる蛍光燈を用いることが好ましい。
光量は、100ルクス以上100万ルクス以下であることが好ましく、300ルクス以上50万ルクス以下がさらに好ましい。最も好ましい光量は、1000ルクス以上20万ルクス以下である。光量が1000ルクス以上であると、微細藻類の培養が可能であり、20万ルクス以下であると、光障害による培養への悪影響が少ない。
光は、連続照射、ある一定の時間間隔で照射と非照射を繰り返す方法のいずれでもかまわないが、12時間間隔で光をON、OFFすることが好ましい。
光の波長は、光合成が行える波長であれば、どの様な波長でも用いることができ、その制限を設けないが、好ましい波長は、太陽光又は太陽光に類似の波長である。単一の波長を照射することで光合成生物の育成速度が向上する例も報告されており、本発明でもこの様な照射方法を用いることもできる。
[その他培養条件]
本発明では、前培養工程で使用する液体培地、吸水性高分子ゲルに含浸させる液体培地、吸水性高分子ゲルを再利用する場合に使用される液体培地(液体培地のことを培養液とも言う)のpHは1〜13の範囲内であることが好ましく、3〜11の範囲内であることがより好ましく、5〜9の範囲内であることがさらに好ましく、6〜8の範囲内であることが最も好ましい。
また、微生物の種類に応じて、好適なpHは変化することから、微生物の種類に応じたpHを選択することが好ましい。なお、液体培地のpHとは、培養開始時のpHのことである。また、培養工程内のpHは、培養に伴って変化する場合があることから、培養工程内でpHは変化しても良い。
本発明では、培地中のpHを一定に保つ緩衝作用を持った物質を培地中に添加することができる。これにより、微生物の培養の進行とともに培地中のpHが変化する問題を抑制することや、培地中への二酸化炭素の供給でpHが変化する現象を抑制できる場合がある。緩衝作用を持った物質としては、公知の物質を使用することができ、その使用には制限がないが、4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid(HEPES)や、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液などを好適に用いることができる。これら、緩衝物質の濃度や種類は、微生物の種類や培養環境に応じて決めることができる。
培養温度は、微生物の種類に応じて選択することができ、特に限定はしないが、0℃以上90℃以下であることが好ましく、15℃以上50℃以下がより好ましく、20℃以上40℃未満が最も好ましい。培養温度が20℃以上40℃未満であると、微生物を好適に培養することができる。
微生物の下限投入量、すなわち、培養開始時に使用する微生物量は、培養範囲内において1個あれば、時間をかけさえすれば増殖は可能であるため、その制限は特に設けないが、好ましくは1個/cm以上であり、より好ましくは1000個/cm以上であり、更に好ましくは1×10個/cm以上である。微生物の上限投入量は、どの様な高濃度でも増殖が可能であるため、その制限は特に設けないが、ある濃度以上であると投入微生物量と増殖後の微生物量の比が低下することから、1×10個/cm以下が好ましく、1×10個/cm以下がより好ましく、5×10個/cm以下が更に好ましい。
本発明での前培養期間、本培養期間は、微細藻類の種類に応じて選択することができ、特に限定はしないが、1日以上300日以下が好ましく、3日以上100日以下がより好ましく、7日以上50日以下が更に好ましい。
液面浮遊培養で使用する液体培地の水深は、特に限定しないが、水深が浅い方が好ましい。これは、水の使用量が少なく、ハンドリング効率が良くなるからである。水深は0.4cm以上が好ましく、1cm〜10mがより好ましく、2cm〜1mが更に好ましく、4cm〜30cmが最も好ましい。水深が0.4cm以上であるとバイオフィルムの形成が可能となり、水深が10m以下であると、ハンドリングが容易である。水深が、4.0cm〜30cmであると、水分の蒸発による影響が最小限であり、培地や微細藻類を含む溶液のハンドリングが容易である。
[吸水性高分子ゲルと基板との間で囲まれた領域で育成した微生物バイオフィルムの大きさと増殖速度]
微生物バイオフィルムの大きさは0.1cm以上であることが好ましく、1cm以上がより好ましく、10cm以上がさらに好ましく、吸水性高分子ゲル層と接している基板面積と等しいことが最も好ましい。0.1cm以上であれば、培養開始時の微生物量に対する培養終了後の微生物量との比を短時間で大きくすることができることから好ましい。また、微生物バイオフィルムは、培養領域内で複数個存在していても良い。なお、液面浮遊培養においても、これらのバイオフィルムの大きさでの培養が好ましい範囲である。なお、この場合には、上記吸水性高分子ゲル層と接している基板面積が、培養器の液面の表面積となる。
微生物バイオフィルムの厚さは、1μm〜10cmが好ましく、10μm〜5cmがさらに好ましく、100μm〜1cmが最も好ましい。1μm以上であれば十分な最終回収物が得られ、10cm以下であれば、フィルム層内に十分に水分が供給され、培養途中での微生物の死滅を減らすことができるとともに、光や二酸化炭素などの培養に必要な栄養素やエネルギーを届けることができる。
また本発明にかかる微生物は、増殖速度が大きいことが好ましく、対数増殖期における増殖速度(すなわち、対数増殖期の期間における一日あたりの平均増殖速度)が、乾燥重量で0.1g/m/day以上であることが好ましく、0.5g/m/day以上であることがより好ましく、1g/m/day以上であることがさらに好ましく、3g/m/day以上であることが最も好ましい。微生物の対数増殖期における増殖速度は、乾燥重量で一般的に1000g/m/day以下である。なお、液面浮遊培養においても、これらの増殖速度での培養が好ましい範囲である。
また本発明に係る吸水性高分子ゲルと基板との間に形成された微生物バイオフィルムの吸水性高分子ゲルもしくは基板単位面積当りの乾燥微生物重量は、1μg/cm〜100g/cmが好ましく、50μg/cm〜10g/cmがさらに好ましく、0.5mg/cm〜1g/cmが最も好ましい。1μg/cm以上であれば十分な最終回収物が得られ、100g/cm以下であれば、バイオフィルム層内に十分に水分が供給され、培養途中での微生物の死滅を減らすことができるとともに、光や二酸化炭素などの培養に必要な栄養素やエネルギーを届けることができるからである。
[回収]
バイオフィルムは、吸水性高分子ゲルと基板との間の領域で部分的に覆われている状態で回収することも可能であるが、微生物の藻体量が多いことから、上記領域の全てがバイオフィルムで覆われた後に回収することが好ましい。また、バイオフィルムがこれらの領域を全て覆いつくした後に、しばらく培養を継続してから回収を行っても良い。
吸水性高分子ゲルと基板との間の領域で培養した微生物を回収するためには、吸水性高分子ゲルと基板とを引き離す必要がある。このための方法としては、公知のいかなる方法でも用いることができる。例えば、基板の一部をピンセットなどの治具でつまみ、吸水性高分子ゲルから引き離す方法などがある。
増殖させた微生物は、吸水性高分子ゲル側、基板側、あるいはその両方のいずれにも付着していても良いが、一般的に吸水性高分子ゲルよりも基板の方が強度は高く、基板表面からの微生物の脱着のしやすさから、基板の方に微生物が付着している方が好ましい。
[吸水性高分子ゲル又は基板表面からの微生物バイオフィルムの脱着]
本発明での脱着とは、回収の一種であり、基板表面や吸水性高分子ゲル表面から微生物を剥がす処理のことを言う。
吸水性高分子ゲルや基板からの微生物バイオフィルムを脱着する方法としては、微生物バイオフィルムをこれらの表面から脱着させることが可能であれば、公知のいかなる方法でも使用することができる。例えば、セルスクレーバーのようなものを用いて上記表面から微生物バイオフィルムを剥ぎ取る方法、水流を用いる方法、液体中で超音波を用いる方法などをあげることができるが、セルスクレーバーのようなものを用いる方法が好ましい。これは、他の方法では、バイオフィルムが培地などで薄められることになり、再度濃縮が必要な場合があり、非効率だからである。
[回収量]
上述の回収方法は、微生物バイオフィルムの70%以上を回収することが好ましく、より好ましくは80%以上を回収することであり、さらに好ましくは90%以上を回収することであり、最も好ましくは100%回収することである。微生物バイオフィルムの回収率は、例えば、目視で確認することができる。
[乾燥微生物]
本発明における乾燥微生物は、本発明によって得られた微生物回収物を乾燥させたものである。なお本発明では、微生物が微細藻類の場合には、乾燥藻体という。
当該微生物回収物を乾燥させる方法としては、微生物回収物中の水分を除去できる方法であればいかなる公知の方法を用いることができ、特に制限されない。例えば、微生物回収物を天日干しにする方法、微生物回収物を加熱乾燥させる方法、微生物回収物を凍結乾燥(フリーズドライ)する方法、微生物回収物に乾燥空気を吹き付ける方法等があげられる。これらのうち、微生物回収物に含まれる成分の分解を抑制できる観点から凍結乾燥、短時間で効率的に乾燥できる観点から加熱乾燥または天日干しする方法が好ましい。
[含水率]
本発明での含水率とは、特に記載した場合を除き、回収物中に含まれる水分の重量(通常、回収物の重量から、乾燥後の回収物の重量(必要に応じ、培地の固形成分に相当する重量を減じる。)ことで、算出できる。)を、回収物の重量で割って、100を掛けたものである。
本発明により吸水性高分子ゲルと基板との間に形成された微生物バイオフィルムの含水率は、10%以上95%以下が好ましく、30%以上90%以下がさらに好ましく、50%以上70%以下が最も好ましい。含水率が30%以上90%以下であると、基板や吸水性高分子ゲルからの脱離が容易であり、乾燥工程に要するエネルギー量が少ない。
[有用物質]
本発明での有用物質とは、微生物由来のバイオマスの一種で、バイオマスから抽出工程、精製工程などの工程を経由することによって得られる産業にとって有益な物質の総称である。この様な物質として、医薬品や化粧品や健康食品などの原料や中間物や最終生成物、化学合成物の原料や中間物や最終生成物、炭化水素化合物、さらにはオイル、アルコール化合物、水素やメタンなどのエネルギー代替物質、酵素、タンパク、核酸、糖やDHAなどの脂質化合物、アスタキサンチンなどを含む。有用物質は、生産物蓄積工程によって、微細藻類中に蓄積させることもできる。
[バイオマス]
本発明でのバイオマスとは、化石資源を除いた再生可能な生物由来の有機性資源をいい、例えば、生物由来の物質、食料、資材、燃料、資源などをあげることができる。藻類バイオマスには、微細藻類自体(バイオフィルム状であってもよい。)、有用物質を採取した後の微細藻類残滓が含まれる。
[オイル]
本発明でのオイルとは、可燃性の流動性物質のことであり、主として、炭素、水素から構成された化合物のことであり、場合によっては、酸素原子、窒素原子などを含む物質のことである。オイルは、一般的に混合物であり、ヘキサンやクロロホルム、アセトンなどの低極性溶媒を用いて抽出される物質である。その組成は、炭化水素化合物や脂肪酸、トリグリセリドなどから構成される場合や、これらから選ばれる複数種の組成から構成されている場合もある。また、エステル化して、バイオディーゼルとして使用することもできるものもある。
微生物回収物中に含まれる有用物質やオイルを採取する方法としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に制限されない。
オイルの一般的な回収方法は、最終回収物を加熱乾燥させて乾燥藻体を得た後、細胞破砕を行い、有機溶媒を用いてオイルを抽出する。抽出されたオイルは、一般的に、クロロフィルなどの不純物を含むため精製を行う。精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによるもの、蒸留(例えば、特表2010−539300に記載の蒸留方法)によるものなどがある。本発明でもこの様な方法を用いることができる。
また、超音波処理によって微生物を破砕したり、プロテアーゼや酵素などによって微生物を溶解したりした後、有機溶媒を用いて藻体内のオイルを抽出する方法もある(例えば、特表2010−530741に記載の方法)。本発明でもこの様な方法を用いることができる。
また本発明の微生物は、バイオマスとしての有用性の観点から、オイル含有量が高いことが好ましい。具体的には、微生物の乾燥藻体あたりのオイル含有量が5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。微生物の乾燥微生物量あたりのオイル含有量は通常80質量%以下である。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
65mLのCSiFF03培地(図6)を入れたプロビオペトリディッシュ(アズワン株式会社、2−4727−01)中でAVFF007株を4000ルクスの光量下、30日間培養し、液面上のフィルム状構造体をナイロンフィルムを用いて堆積法にて採取し、5mLホモジナイズ用チューブ(株式会社トミー精工、TM−655S)に入れ、ビーズ式細胞破砕装置(MS−100、株式会社トミー精工、ビーズは使用せず)にセットし、4200rpmで20秒間のホモジナイズ処理を3回行うことで、AVFF007株の懸濁液aを得た。
この溶液を希釈し、660nmの吸光度を測定することで濁度を算出し、予め算出していた濁度と藻体数との関係式から、上記懸濁液aの藻体数を計算した。藻体数は、2.63×10個/mLとなったため、10×10個/mLの溶液を調製するために、285μLの上記懸濁液aを採取し、CSiFF03培地と混合することで、750mLの懸濁液bを得た。
アズノールシャーレ(アズワン株式会社、1−8549−04)に、懸濁液bを45mL入れたものを16個準備した。これを12時間ごとにON、OFFを繰り返しながら、4000ルクスの蛍光灯照射下で培養を行った。なお、培養は静置培養で、培養温度は23℃を用いた。
培養6日後には、水面上に薄いフィルム状物の形成が見られたので、アズノールシャーレの内径と同一サイズに切断したポリエチレンフィルムと接触させ、水面上のフィルム状構造体を転写させた。セルスクレーバーを用いて、ポリエチレンフィルム上の藻体を剥がし、予め重量を測定しておいたカバーガラス(アズワン株式会社、2−176−13)上に載せ、100℃に設定した乾燥機を用いて乾燥させた。乾燥後、重量を測定し、培地中に含まれている培地固形成分に相当する質量を差し引くことで、ポリエチレンフィルム上のAVFF007株の重量を測定した。測定の結果、0.042mg/cmとなった。すなわち、種藻として使用する藻体量は、0.042mg/cmとなった。なお、2回の測定を行い、その平均値を使用した。
液面上のAVFF007株からなるフィルム状構造体を転写した上記ポリエチレンフィルムを3枚準備した。アズノールシャーレ内にCSiFF04培地(図7)を含む1%アガロースゲル(アガロースは、invitrogen UltraPure AgaroseTM,15510−019を使用)を準備した。なお、アガロースゲルは、培地と粉末状アガロースとを混合後、121℃、10分間のオートクレーブ処理を行い、室温下、静置することでゲル化させた。また、1個のシャーレに対して、約20mLのアガロース、培地混合溶液を用いた。なお、この培地を含むアガロースゲルを、寒天培地ということもある。
アガロースゲルの表面とポリエチレンフィルムのAVFF007株付着面とが接触しあうように、アガロースゲルにポリエチレンフィルムを重ね、シャーレは付属のフタをしない状態で、真空デシケーターに入れ、5%二酸化炭素濃度下、12時間ごとにON、OFFの光照射を繰り返しながら、4000ルクスの蛍光灯照射下培養を行った。なお、培養は静置培養で、培養温度は23℃を用い、培養開始後、14日後に回収工程を行った。
培養の進行に伴って、アガロースゲルとポリエチレンフィルムとの間に挟まれた領域で微細藻類(AVFF007株)が増殖し、緑色に着色していく様子が見られた。培養終了後、アガロースゲル上からポリエチレンフィルムを剥がしとったが、目視の限りでは、アガロースゲル上にはほんの僅かな微細藻類しか存在せず、ポリエチレンフィルム上にほとんどの微細藻類が付着していた。
予め重量を測定しておいたカバーガラス上に、ポリエチレンフィルムからセルスクレーバーを用いて表面の微細藻類を剥がしつつ載せた。なお、微細藻類は、形態を保持できるほど含水率が低く、粘土状の半固形状態であった。これを100℃に設定した乾燥機を用いて乾燥させた。乾燥後、重量を測定し、培地中に含まれている培地成分に相当する質量を差し引くことで、ポリエチレンフィルム上のAVFF007株の重量を測定した。測定の結果、0.587mg/cmとなった。なお、3回の測定を行い、その平均値を使用した。
本実施例での回収物の含水率は50.8%であった。なお、種藻の含水率は92.9%、比較例1の水面浮遊培養法での回収物の含水率は81.7%であった。
微細藻類を従来の浮遊培養法で培養し、遠心分離機を用いた場合の回収物の含水率は、約90%程度であることから、本実施例の含水率は、極めて低く、このことにより、オイル抽出工程での効率が非常に高まるものと考えられる。なお、本発明の含水率50.8%と従来法の遠心分離機を用いた方法の含水率90%では、水分量で約9分の1となり、本発明の水分低下量効果は、絶大である。
[比較例1(液面浮遊培養)]
本比較例は、液面浮遊培養を行った場合の液面上の藻体量とそれを回収した後の含水率に関するものである。
種藻を採取する直前まで、実施例1と同一の方法で培養を行った。なお、N数は2である。
実施例1では、水面上のフィルム状構造体をポリエチレンフィルムで転写したが、転写を行わず、そのまま培養を継続した。すなわち、水面浮遊培養をそのまま継続した。培養条件、回収物の定量は、実施例1と同一条件で行った。
収量は、0.678mg/cmとなった。なお、含水率は、82%になった。実施例1よりも、収量が若干多くなったものの、含水率は大幅に上がった。
[比較例2(液面浮遊培養+基板被覆)]
本実施例は、アガロースゲルの代わりに液体培地を用いた場合の比較例である。
実施例1と同様の方法で、懸濁液a、b、種藻aが付着したフィルムを準備した。
液面上のAVFF007株からなるフィルム状構造体を転写したシリコーンゴムシートを、一方は、アズノールシャーレ内で作成したCSiFF04培地を含む1%アガロースゲルに対して、他方は、アズノールシャーレに45mLのCSiFF04培地を入れた容器に対して、アガロースゲル又は培地の表面と、シリコーンゴムシート上のAVFF007株付着面とが接触しあうように重ね、シャーレに付属のフタをしない状態で真空デシケーターに入れ、5%二酸化炭素濃度下、12時間ごとにON、OFFを繰り返しながら、4000ルクスの蛍光灯照射下培養を行った。なお、培養は静置培養で、培養温度は23℃を用い、培養開始後、14日後に回収工程を行った。なお、液体培地を被覆させたシリコーンゴムシートは、培養中液面上に浮いていた。
結果を図8に示した。液体培地を基板で被覆した場合と、本発明でのアガロースゲルを基板で被覆した場合とでは、後者の方が増殖後の藻体量が増加した。また、含水率も、本発明の方法を用いた方が低下し、乾燥工程での投入エネルギー量を大幅に削減できると考えられる。なお、棒グラフが乾燥藻体量、白抜きの○が、回収物の含水率である。
[実施例2(寒天培地の再利用)]
本実施例は、一度使用したアガロースゲルを用いた場合と、一度使用したアガロースゲルに少量の栄養素を添加し、第二の本培養を行うことで、アガロースゲルの再使用が可能かどうかを検証したものである。
実施例1と同様の方法で、懸濁液a(実施例1の懸濁液aに相当)を得た。また、実施例1と同様の方法で、懸濁液b(実施例1の懸濁液bに相当)を得た。ただし、藻体数は、5.91×10個/mLとなったため、10×10個/mLの溶液を調製するために、186μLの上記懸濁液aを採取し、1100mLの懸濁液bを得た。
実施例1と同様の方法で、アズノールシャーレを用いて水面浮遊培養を行った。ただし、シャーレは18個準備した。
実施例1と同様の方法で、種藻aが付着したフィルムを準備した。ただし、培養期間として3日間、フィルム種としてシリコーンゴムシートを用い、種藻量は、0.008mg/cmとなった。
実施例1と同様の方法で寒天培地を用いて第一の本培養工程を行った。ただし、14日後に回収工程を行った。回収量は、1.222mg/cm、含水率は、59.0%であった。なお、藻体回収後の寒天培地は、一部を第二の本培養に使用するために確保しておいた。
以下、第二の本培養を行うための前培養を行った。
実施例1と同様の方法で、懸濁液c(実施例1の懸濁液aに相当)を得た。
実施例1と同様の方法で、懸濁液d(実施例1の懸濁液bに相当)を得た。ただし、藻体数は、2.73×10個/mLとなったため、10×10個/mLの溶液を調製するために、251μLの上記懸濁液cを採取し、685mLの懸濁液dを得た。
実施例1と同様の方法で、アズノールシャーレを用いて液面浮遊培養を行った。ただし、シャーレは12個準備した。
以下、第二の本培養工程を行った。
実施例1と同様の方法で、種藻bが付着したフィルムを準備した。ただし、培養期間として3日間、フィルム種としてシリコーンゴムシートを用い、種藻として使用する藻体量は0.006mg/cmとなった。
未使用のアガロースゲルを用いて、実施例1と同様の方法で第二の本培養工程に相当する培養を行った。ただし、フィルム種としてシリコーンゴムシートを用い、種藻b由来のAVFF007株を用い、14日後に回収工程を行った。
第一の本培養で使用した回収工程後のアガロースゲルを用いて、実施例1と同様の方法で第二の本培養工程を行った。ただし、フィルム種としてシリコーンゴムシートを用い、種藻b由来のAVFF007株を用い、14日後に回収工程を行った。
第一の本培養で使用した回収工程後のアガロースゲルを用いて、実施例1と同様の方法で第二の本培養工程を行った。ただし、アガロースゲルには、シャーレ1枚に付き、CSiFF04培地を2mL添加し、フィルム種としてシリコーンゴムシートを用い、種藻b由来のAVFF007株を用い、14日後に回収工程を行った。
図9に結果を示した。未使用アガロースゲルを使用した場合の回収藻体量が0.831mg/cmに対し、使用済みアガロースゲルを使用した場合には0.083mg/cmとなり、回収量は約10分の1となった。これは、アガロースゲル内の栄養成分が第一の本培養工程によって消費されたため、第二の本培養工程で必要な栄養成分が不足したためと考えられる。これに対し、使用済みアガロースゲルに、培地を添加した試料では、未使用寒天培地を使用した場合よりも約60%の回収量であったが、使用済み寒天培地に対して培地を全く添加していない場合と比較して約6倍の回収量となった。
以上から、使用済みアガロースゲルに培地を添加することで、再使用が可能であることがわかった。
[実施例3(基板の再利用)]
本実施例は、基板の再使用が可能かどうか、再使用時に基板上に少量残った藻体を投入藻体として利用することが可能かどうかを検証するための実施例である。
実施例1と同様の方法で、懸濁液aを得た。実施例1と同様の方法で、懸濁液bを得た。ただし、藻体数は、1.16×10個/mLとなったため、10×10個/mLの溶液を調製するために、268μLの上記懸濁液aを採取し、3100mLの懸濁液bを得た。
実施例1と同様の方法で、アズノールシャーレを用いて水面浮遊培養を行った。ただし、シャーレは36個準備した。
実施例1と同様の方法で、種藻aが付着したフィルムを準備した。ただし、培養期間として5日間、フィルム種としてシリコーンゴムシートを用い、種藻量は、0.003mg/cmとなった。
実施例1と同様の方法で第一の本培養工程を行った。ただし、14日後に回収工程を行った。回収量は、2.15mg/cm、含水率は、71.0%であった。
新しいアガロースゲルに対して、上記回収後の微細藻類が若干量付着していると考えられるシリコーンゴムシートの藻体付着面と接触するようにして貼り付けた。すなわち、一度使用し、藻体を除去した基板上を用いて新しいアガロースゲル表面を被覆し、基板上に極少量残っている藻体(すなわち、これを投入藻体と考えて)を使用して培養が可能かどうかの検証を行った。この状態で、実施例1の本培養工程と同様の方法で第二の本培養工程を行った。
14日後の藻体量を測定すると、回収量は1.971mg/cm、含水率は72.1%であった。
以上から、基板に種藻を新たに供給せずに、回収後に残存している基板上の微細藻類を利用することで、再度培養できることが明らかになった。
[実施例4(塗布+基板被覆)]
本実施例は、吸水性高分子ゲル上に微細藻類を直接塗布し基板を用いずに培養を行った場合、吸水性高分子ゲル上に微細藻類を直接塗布し基板を用いて培養を行った場合、本発明の方法で培養を行った場合、吸水性高分子ゲルを使用せずに培養を行った場合の例である。
実施例1と同様の方法で、懸濁液aを得た。実施例1と同様の方法で、懸濁液bを得た。ただし、藻体数は、5.91×10個/mLとなったため、10×10個/mLの溶液を調製するために、186μLの上記懸濁液aを採取し、1100mLの懸濁液bを得た。
実施例1と同様の方法で、アズノールシャーレを用いて水面浮遊培養を行った。ただし、シャーレは18個準備した。
実施例1と同様の方法で、種藻aを付着したフィルムを準備した。ただし、培養期間として3日間、フィルム種としてシリコーンゴムシートを用い、種藻量は、0.008mg/cmとなった。すなわち、培養に使用した投入藻体量は、0.008mg/cmである。
種藻aを付着させたシリコーンゴムシートからセルスクレーバーを用いて藻体を剥がし、これを直接アガロースゲルの表面に塗布した。すなわち、基板に付着させた藻体と同一量の藻体を寒天培地上に塗布し、基板を用いずに培養した場合の例である。この試料を、試料4−1とした。
種藻aを付着させたシリコーンゴムシートからセルスクレーバーを用いて藻体を剥がし、これを直接アガロースゲルの表面に塗布し、アズノールシャーレの内径のサイズに切断したシリコーンゴムシートを用いて、藻体塗布面を被覆することで準備した試料を試料4−2とした。
種藻aを付着させたシリコーンゴムシートをアガロースゲルの表面に対して、藻体とアガロースゲルとが直接接するように、アガロースゲルの表面を被覆させた試料を、試料4−3とした。
種藻aを付着させたシリコーンゴムシートをアズノールシャーレの表面に対して、シリコーンゴムシート上のAVFF007株付着面とアズノールシャーレ表面とが直接接するように重ねた。すなわち、アガロースゲルがない場合の培養例である。この試料を、試料4−4とした。
以上の、試料4−1から4−4を、実施例1と同様の方法で培養した。
培養及び回収は、実施例1と同様の方法で行った。
藻体量の結果を図10に、そのときの含水率を図11に示した。試料4−1の場合、0.45mg/cmの藻体量となり、試料4−4よりは増殖量は多くなったが、試料4−2と比べて少なくなった。これは、アガロースゲル上での藻体の形態は、コロニー状となり、この形状のため、表面積の有効活用ができず、藻体量は増加しなかったと推定している。試料4−2の場合には、試料4−3と比べて、アガロースゲル上への藻体の塗布が不均一であったため、表面積の有効活用ができず、藻体量の増加に制限があったものと考えている。すなわち、液面浮遊培養によって培養した液面上の微細藻類バイオフィルムを基板上に転写することで調製した微細藻類付着基板を用いることが好ましいことを示している。一方、試料4−3の場合が最も藻体量を多く得ることができた。これは、増殖後の藻体の形態がフィルム状で、アガロースゲル表面を有効に活用できたからであると考えている。試料4−4の場合、微細藻類は全く増殖しなかった。これは、吸水性高分子ゲルがなかったため水分及び栄養源が不足していたためと推定している。
[実施例5:さまざまなフィルムを用いた場合]
本実施例は、様々なフィルムを基板として用いた時に増殖性へ及ぼす影響について検証したものである。
実施例1と同様の方法で、懸濁液aを得た。
実施例1と同様の方法で、懸濁液bを得た。ただし、藻体数は、1.51×10個/mLとなったため、10×10個/mLの溶液を調製するために、610μLの上記懸濁液aを採取し、920mLの懸濁液bを得た。
実施例1と同様の方法で、アズノールシャーレを用いて液面浮遊培養を行った。ただし、シャーレは20個準備した。
実施例1と同様の方法で、種藻を付着させたフィルムを準備した。ただし、培養期間として3日間、フィルム種としてポリエチレンフィルムを用い、種藻量は0.078mg/cmとなった。すなわち、投入藻体量は、0.078mg/cmである。
実施例1と同様の方法で本培養工程を行った。ただし、フィルム種として図12に示したフィルムを用い、本培養工程開始後、18日後に回収工程を行った。
培養の進行に伴って、アガロースゲルと種々フィルムとの間に挟まれた領域で微細藻類が増殖していく様子が見られた。ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合は、黄緑色、シリコーンゴムシートの場合は、柿色、他のフィルムの場合には、両者の中間的な色であった。培養終了後、アガロースゲル上から各種フィルムを剥がしとったが、目視の限りでは、すべてのフィルム種で、アガロースゲル上に微細藻類がほとんど存在せず、フィルム上にほとんどの微細藻類が付着していた。
定量は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を図12に示した。シリコーンゴムシートが最も高い増殖量となった。これは、シリコーンゴムシートの二酸化炭素透過性が、他のフィルムと比較して高いことが原因であると考えている。
回収物の含水率の結果を図13に示したが、55〜70%の間であり、含水率は、従来の遠心分離機を用いた方法と比べても極めて低く、フィルム上でフィルム状に付着しているため極めて簡便に回収することができ、オイル抽出工程の低コスト化に有用である。
シリコーンゴムシートを用いた場合の回収直前の状態を図14(a)に、シリコーンゴムシートをアガロースゲルから剥がした後の状態を図14(b)に、シリコーンゴムシートから微細藻類を脱着した後の回収物の状態を図14(c)に示した。(b)に示した様に、大部分の微細藻類がシリコーンゴムシート側に付着し、(c)に示した様に、含水率が低いために回収物は微細藻類集合物の回収時の形態を維持できる程度に水分量が低くなっている。
[実施例6]
本実施例は、基板上の微細藻類及び基板から脱着した微細藻類のさらなる含水率の低下を目指すために、該微細藻類の表面積が広いことを利用して、乾燥を行うものである。
実施例5のシリコーンゴムシートを基板として調製した試料、すなわち、図14の(b)の様に、基板上に微細藻類バイオフィルムが付着している試料と、図14の(c)の様に、基板上から微細藻類バイオフィルムを脱着させた試料を、人工太陽(プロブライトV、日本ペイント株式会社)を光量15000ルクスに調整し、これを天秤の上に設置し、一定の時間ごとに重量を測定することで、含水率を計算した。なお、含水率は、乾燥機による試料を完全に乾燥させた後の乾燥重量を計算した後に算出した。また、室内の温度は、24.1℃、湿度46%であった。
基板上の微細藻類の含水率は、照射開始時58%、5分後36%、10分後21%、20分後16%であった。一方、基板から脱着した微細藻類は、照射開始時60%、5分後51%、10分後42%、20分後36%であった。以上から、いずれの試料ともさらなる含水率の低下を行うことができた。また、より表面積が大きいと考えられる基板上の微細藻類のほうが含水率を大きく下げることができた。
[実施例7]
本実施例は、連続した一つの吸水性高分子ゲル表面に、少なくとも二個以上の基板で被覆して培養を行うものである。
実施例1と同様の方法で、懸濁液a、bを得、アズノールシャーレを用いて液面浮遊培養を行った。フィルム種としてシリコーンゴムシートを用い、液面上の微細藻類を転写法によって付着させ、種藻aが付着したシリコーンゴムシートを準備した。その藻体量を測定したところ、0.012mg/cmになった。すなわち、培養に使用した投入藻体量は、0.012mg/cmである。
種藻aを付着させたシリコーンゴムシートをアガロースゲル上に貼り付けて、実施例1と同様の培養条件で培養を行った。
さらに、4等分に分割したシリコーンゴムシートに種藻aが付着したシリコーンゴムシートを準備した。その藻体量は、上記の1/4量である。これを同様に、アガロースゲル上に貼り付けて、実施例1と同様の培養条件で培養を行った。すなわち、1つの吸水性高分子ゲルに4枚のシリコーンゴムシートを貼り付け、シリコーンゴムシート間には、約0.5mmの隙間が生じるように貼り付けた。
1枚のシリコーンゴムシートを貼り付けた場合の乾燥藻体量は、1.3mg/cmとなったが、4枚のシリコーンゴムシートを貼り付けた場合の乾燥藻体量は、1.6mg/cmになった。これは、後者の方が、フィルム間の隙間を通って二酸化炭素が供給されると共に、培養に伴って発生した気体が培養器外へと迅速に流れ出たためと推定している。
[実施例8]
本実施例は、凹凸構造を有する基板を用いて、吸水性高分子ゲルと上記凹凸構造を持つ基板との間で微生物を培養するものである。
実施例1と同様の方法で、懸濁液a、bを得、アズノールシャーレを用いて液面浮遊培養を行った。フィルム種として凹凸構造を持つポリエチレンフィルムを用い、液面上の微細藻類を転写法によって付着させ、種藻aが付着した凹凸構造を持つポリエチレンフィルム及び凹凸構造を持たないポリエチレンフィルムを準備した。その藻体量を測定したところ、0.012mg/cmになった。すなわち、培養に使用した投入藻体量は、0.012mg/cmである。なお、凹凸を持つポリエチレンフィルムは、市販のサンドペーパーでこすることによって調製した。
種藻aを付着させたそれぞれのポリエチレンフィルムをアガロースゲル上に貼り付けて、実施例1と同様の培養条件で培養を行った。
凹凸構造を持たないポリエチレンフィルムを貼り付けた場合の乾燥藻体量は、0.65mg/cmとなったが、凹凸構造を持つポリエチレンフィルムを貼り付けた場合の乾燥藻体量は、0.82mg/cmになった。これは、後者の方が、フィルムと微細藻類バイオフィルムとの間の隙間を通って二酸化炭素が供給されると共に、培養に伴って発生した気体が培養器外へと迅速に流れ出たためと推定している。
[実施例9:ヘマトコッカス(他の藻類)の場合]
本実施例は、液面浮遊培養を行うことができないヘマトコッカスに対して、本発明の方法に適用したものである。すなわち、本発明の方法は、様々な種類の微細藻類を用いることができることを示したものである。
100mL三角フラスコ中で培養していたNIES−2264(Haematococcus lacustris)から一部を採取し、同培地にて希釈後血球計数板を用いて藻体数を計測し、濃度を調製した後、1×104個/cmとなるようにCSiFF04培地を含むアガロースゲル上に塗布した。塗布は、ピペットで藻体溶液を滴下後、ディスポスティック(アズワン株式会社、1−4633−12)を用いて、可能な限り均一になるように行った。
藻体溶液の塗布後、アズノールシャーレの内壁とほぼ同じ面積になるように円形に切断したシリコーンゴムシートで被覆し、シートと寒天培地との間に形成された気泡を可能な限り除去した後、培養を開始した。
培養は、微細藻類を塗布したプラスチック製シャーレを真空デシケーターの中に入れ、プラスチック製シャーレに付属しているフタを外した状態で、開口部を上側、すなわち、光源側に向けて設置し、5%二酸化炭素濃度となるように設定し、真空デシケーターのフタを閉じた。その他、培養条件などは、実施例1と同じ条件で行った。培養と共にシャーレ内のアガロースゲル上が緑色になり、培養14日後に、アガロースゲル上から藻体を回収した。アガロースゲル上からシリコーンゴムシートを剥がし、大部分の藻体がシリコーンゴムシート上に付着していることから、シリコーンゴムシート上から、セルスクレーバーを用いて微細藻類の回収を行った。凍結乾燥後、回収物の含水率を計算すると、78.4%であった。また、乾燥藻体量は、3.7mg/cmであった。
得られた乾燥藻体を2mLのホモジナイズ用チューブ(株式会社トミー精工、TM−626)に入れ、直径0.5mmφのガラス製ビーズを0.6g、1mLのヘキサンを入れ、フタをした後、ビーズ式細胞破砕装置MS−100(株式会社トミー精工)にセットした。5500rpmの回転数で20秒間のホモジナイズ処理を3回行った後、容器を遠心除去後、上清を2mLのガラス製サンプル瓶に入れ、再度遠心処理を行った。再び、上清を予め重量を測定しておいた2mLのガラス製サンプル瓶に入れ、溶媒を除去した後、残った粘性物質をオイル量とした。オイル量は、乾燥藻体量対して、12.2%であった。
以上から、AVFF007株以外の藻体でも本培養法による培養は可能で、また、液面浮遊培養以外の培養法でも培養可能であることが判明した。
なお、NIES−2264は、液面上にフィルム状構造体を形成しない。
[実施例10]
実施例1と同様の方法で前培養を行い、懸濁液a、1100mLの懸濁液bを得た。
懸濁液bを65mL入れたものを6個準備し、実施例1と同様の方法で培養を行った。ただし、アズノールシャーレの代わりに、プロビオペトリディッシュを用いた。
実施例1と同様の方法で、液面上の微細藻類バイオフィルムをシリコーンゴムシートに転写し、乾燥重量を測定した。測定の結果、0.0075mg/cmとなった。すなわち、種藻として使用する藻体量は、0.0075mg/cmとなった。
実施例1と同様の方法で、アガロースゲルを準備し、培養を行った。ただし、四枚の内、二枚のプロビオペトリディッシュは、地面に対して水平に、残る二枚は、地面に対して垂直に設置した。なお、垂直に設置した場合のプロビオペトリディッシュ間の設置間隔は、1.5cmとした、
培養の進行に伴って、アガロースゲルとシリコーンゴムシートとの間に挟まれた領域で微細藻類が増殖し、緑色に着色していく様子が見られた。14日間の培養終了後、アガロースゲル上からシリコーンゴムシートを剥がしとったが、目視の限りでは、アガロースゲル上にはほんの僅かな微細藻類しか存在せず、シリコーンゴムシート上にほとんどの微細藻類が付着していた。図15(a)には、培養開始7日後の培養中の様子を、(b)には、培養開始7日後のアガロースゲル−AVFF007株−シリコーンゴムシート構造体を、(c)には、培養開始7日後のアガロースゲルからはがした後のAVFF007株−シリコーンゴムシート構造体を、(d)には、回収後のアガロースゲルを示した。なお、図15(a)には、4枚の基板を設置しているが、両端は微細藻類未付着の基板である。
乾燥重量は、実施例1と同様の方法で測定した。
結果を図16に示した。プロビオペトリディッシュを地面に対して水平に設置した場合は、垂直に設置した場合と比べて、若干藻体量が多くなった。これは、藻体付着面が受ける光量が前者の方が多いためと考えている。
図17には、図16の結果を設置面積あたりに変換した後の結果を示した。垂直培養の場合には、1.5cm間隔でプロビオペトリディッシュを設置しているため、設置面積あたりの藻体量が増加し、水平に設置した場合と比較して、5.7倍の藻体量となった。この結果は、本発明の方法で培養面積をより有効に使用することができることを示している。なお含水率は、水平設置の場合、59.0%、垂直設置の場合、62.9%となり、遠心分離機などによって回収することによって一般的に得られる含水率、約90%よりも大幅に低くなった。
なおオイル含有量は、乾燥藻体あたりの重量比で、22.1%となった。
[実施例11:両面付着]
実施例7と同様の方法で、前培養、藻体懸濁液調製、バイオフィルムの調製を行った。バイオフィルム量は、0.003mg/cmであった。すなわち、種藻として使用する藻体量は、0.003mg/cmとなった。
基板としてシリコーンゴムシートを用い、実施例7と同様に、シリコーンゴムシートの片面にAVFF007株の微細藻類バイオフィルムを転写した。
ポリスチレン板の両面にCSiFF04培地を含むアガロースゲル層を調製した。すなわち、ポリスチレン板が支持基板、アガロースゲル層が吸水性高分子ゲルである。このアガロースゲル層の表面にAVFF007株付着シリコーンゴムシートを貼り付けた。すなわち、シリコーンゴムシート、藻体層、アガロースゲル、ポリスチレン板、アガロースゲル、藻体層、シリコーンゴムシートからなる構造体を形成させた。この構造体の藻体層が地面に対して垂直になるように4枚設置し、真空デシケーター中に入れ、二酸化炭素濃度を5%になるように調整した後、15000ルクスの光量を蛍光灯によって照射した。なお、光の照射は、12時間間隔でONとOFFとを繰り返すようにした。
同時に、片面に微細藻類を付着させた構造体も調製した。
培養の結果、培養面積あたりでの藻体量は、片面培養では、1.832mg/cm、両面培養では、3.504mg/cmとなった。この様に、片面培養よりも両面培養の方が効率は良くなった。乾燥藻体量あたりの結果を、図18に示した。また、設置面積あたりでは、前者が10.44mg/cm、後者が、20.00mg/cmになった。
[実施例12:フィルムに穴を開けた場合]
実施例7と同様に、前培養を行い、懸濁液a、懸濁液bを調製した。
懸濁液bを45mL入れたものを4個準備し、実施例7と同様の方法で培養を行った。ただし、プロビオペトリディッシュの代わりに、アズノールシャーレを用いた。
実施例7と同様の方法で、液面上の微細藻類バイオフィルムをシリコーンゴムシートに転写し、乾燥重量を測定した。測定の結果、0.0075mg/cmとなった。すなわち、種藻として使用する藻体量は、0.0075mg/cmとなった。
実施例7と同様の方法で、アガロースゲルを準備し、培養を行った。ただし、ポリエチレンフィルムを4枚準備し、その内、二枚は、何もしないフィルム、残る二枚は、針で合計9ヶ所の穴を開けたフィルムを用いた(図19)。穴の間隔は、2cm間隔で、フィルム中央部に、3×3個の穴が開くようにした。これを実施例1と同様の方法で培養を行った。
培養の進行に伴って、アガロースゲルとポリエチレンフィルムとの間に挟まれた領域で微細藻類が増殖し、緑色に着色していく様子が見られた。14日間の培養終了後、アガロースゲル上からポリエチレンフィルムを剥がしとった。
定量は、実施例1と同様の方法で行った。
結果を、図20に示した。穴がない場合には、藻体量は、0.48mg/cmとなり、穴があった場合には、0.61mg/cmとなった。この結果から、被覆用フィルムの穴の存在は、増殖量を増加させる作用があるものと考えられる。これは、被覆用フィルムに穴のない場合には、増殖に必要な二酸化炭素の供給に制限があるが、適度な間隔で穴を設置しているフィルムの場合には、穴を通じて二酸化炭素を取り込むことができるとともに、増殖に伴って発生する酸素の培養系外への放出が可能となるためと考えている。
また、図21に示した様に、増殖に伴って発生した酸素は、穴がない場合には、多くの気相がアガロースゲルとフィルムとの間の領域で発生し、藻体の乾燥が進行すると共に、フィルムからの藻体の脱離が困難となり(図21(a))、また、アガロースゲル上にもフィルム脱離後に藻体が残存しやすくなり(図21(b))、藻体量が減少するからである。一方、穴が開いたフィルムを用いた場合には、わずかな気泡やアガロースゲル上の藻体残存が見られるが、その程度は少なく、その結果、藻体の回収量が前者と比べて向上したものと考えている(図21(c))。この様に、フィルムに穴を開けることによって、藻体の回収量が向上する。なお、シリコーンゴムシートのような気体透過性の高いフィルムを用いた場合には、これらの問題は発生しにくい。
[実施例13:FFG039株、珪藻の場合]
実施例9と同様の方法で培養を行った。ただし、緑藻として、Chlorococcum sp.FFG039株、NIES−2199(Botryococcus braunii、ボッリオコッカス)を、珪藻として、NIES−1339(Nitzschia sp./ニッチア)の計三種の微細藻類をそれぞれ培養することで用いた。
また、FFG039株の場合には、CSiFF04培地を、NIES−2199の場合には、C培地を、NIES−1339の場合には、f/2培地を用いた。
培養後、主として、フィルムに付着したバイオマス回収物の含水率は、それぞれ、63.2、65.1、61.9%であり、乾燥藻体量は、それぞれ、5.2、2.7、3.6mg/cm2であった。
以上から、FFG039株、Botryococcus sp.、珪藻でも培養可能であることがわかった。
[実施例14:微生物の場合]
実施例9と同様の方法で培養を行った。ただし、微生物として、酵母(和光純薬工業株式会社、101399、Candida utilis)を用いた。培養方法は、Microbiol.Cult.Coll.25(2):89−91,2009の培養方法に従った。寒天培地をYM液体培地で調製し、30℃の温度下5日間の培養を行った。また、光は意識して照射することはせず、振盪も行わなかった。培養後、主として、フィルムに付着したバイオマスの回収量は、4.7mg/cmであった。
配列番号1:AVF007株の18S rRNA遺伝子の塩基配列の一部
配列番号2:FFG039株の18S rRNA遺伝子の塩基配列の一部

Claims (26)

  1. 微生物の培養が可能な栄養素及び水を含んだ吸水性高分子ゲルの少なくとも一部の表面と、該一部の表面を被覆可能な基板との間で微生物を培養する、微生物の培養方法。
  2. 微生物が、培養によりバイオフィルムを形成するものである、請求項1に記載の培養方法。
  3. 吸水性高分子ゲルの少なくとも一部の表面に微生物を播種する工程;及び
    吸水性高分子ゲル上の、少なくとも微生物が播種された領域を、基板により被覆する工程;及び
    播種された微生物を吸水性高分子ゲル表面と基板との間で培養する工程
    を含む、請求項1又は2に記載の培養方法。
  4. 微生物が液面浮遊培養可能な微細藻類であり、吸水性高分子ゲル表面への播種が、液面浮遊培養により液面上に形成されたバイオフィルムが転写された基板で吸水性高分子ゲルの少なくとも一部の表面を被覆すること、又は液面浮遊培養により液面上に形成されたバイオフィルムを吸水性高分子ゲル表面に転写することにより行われる、請求項1又は2に記載の培養方法。
  5. 吸水性高分子ゲルの表面への微生物の播種が、微生物懸濁液に浸漬された基板で吸水性高分子ゲルの少なくとも一部の表面を被覆すること、又は微生物懸濁液に吸水性高分子ゲル表面を浸漬することにより行われる、請求項1又は2に記載の培養方法。
  6. 吸水性高分子ゲルの表面への微生物の播種が、吸水性高分子ゲルの表面、又は基板の少なくとも一方に微生物を噴霧又は塗布することにより行われる、請求項1又は2に記載の培養方法。
  7. 培養が、吸水性高分子ゲルの両面を用いて行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の培養方法。
  8. 培養後に、微生物を回収する工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の培養方法。
  9. 微生物を回収した後の吸水性高分子ゲル又は基板を再度培養に利用する工程を含む、請求項8に記載の培養方法。
  10. 吸水性高分子ゲルの再利用が、新鮮培地を添加した後に行われる、請求項9に記載の培養方法。
  11. 微生物を回収した後の吸水性高分子ゲル上又は基板上に残存している微生物を種微生物として利用する培養工程をさらに含む、請求項8〜10のいずれか1項に記載の培養方法。
  12. 培養後の微生物の回収が、吸水性高分子ゲルから微生物が付着した基板を除去することにより行われ、得られた回収物を、基板に付着させたまま又は基板から脱着させた後、含水率を低下させる工程を含む、請求項8〜11のいずれか1項に記載の培養方法。
  13. 基板の二酸化炭素透過性が500cc/m・24h/atm以上である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の微生物の培養方法。
  14. 基板の素材がポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、及びシリコーンゴムからなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項13に記載の培養方法。
  15. 吸水性高分子ゲル表面が垂直方向に維持される垂直培養、又は吸水性高分子ゲル表面が水平方向に維持される水平培養である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の培養方法。
  16. 基板に少なくとも一ヶ所以上の穴が開いている、請求項1〜15のいずれか1項に記載の培養方法。
  17. 基板と吸水性高分子ゲルとの少なくとも一方の、少なくとも一部の領域に、凹凸構造が形成されている請求項1〜16のいずれか1項に記載の培養方法。
  18. 高分子吸水性ゲルの少なくとも一部の表面を、複数の基板により被覆することを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の培養方法。
  19. 微生物が、真菌類、緑藻、又は珪藻である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の培養方法。
  20. 微生物が、酵母、Botryococcus sp.、Chlamydomonas sp.、Chlorococcum sp、Chlamydomonad sp.、Tetracystis sp.、Characium sp.Protosiphon sp.又はHaematococcus sp.に属するものである、請求項1〜19のいずれか1項に記載の培養方法。
  21. 微生物が、Botryococcus sudeticus、又はChlorococcum sp. FERM BP−22262と同じ種に属するものである、請求項1〜20のいずれか1項に記載の培養方法。
  22. 微生物が、Botryococcus sudeticus FERM BP−11420、もしくはそれと分類学的に同一の性質を有する微細藻類株、又はChlorococcum sp. FERM BP−22262、もしくはそれと分類学的に同一の性質を有する微細藻類株である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の培養方法。
  23. 請求項1〜22のいずれか1項の培養方法を含む培養工程;及び
    第二の培養工程で形成された液面のバイオフィルムを回収する工程
    を含む、バイオマスを製造する方法。
  24. バイオマスが、オイルである、請求項23に記載の製造方法。
  25. 18S rRNAの遺伝子領域をコードする塩基配列のうち、一部の領域の、Chlorococcum sp. RK261に相当する塩基配列との同一性が95.00%以上99.99%以下であるか、又はChlorococcum sp.に属する微生物であって、その18S rRNA遺伝子が、配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドと少なくとも99.94%の配列同一性を有する、微生物。
  26. Chlorococcum sp.FFG039株(受託番号FERM BP−22262)、又はそれと分類学的に同一の性質を有する、微生物。
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