JP2014113083A - 液面上での微細藻類の培養方法において、液面上の微細藻類を基板に転写回収した後、別の培養容器で培養を行う方法 - Google Patents

液面上での微細藻類の培養方法において、液面上の微細藻類を基板に転写回収した後、別の培養容器で培養を行う方法 Download PDF

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Abstract

【課題】微細藻類由来のバイオマスの製造コストを低減させることが可能な微細藻類の培養方法を提供することであり、具体的には、受光面積あたりの微細藻類由来のバイオマス製造量を増加させることが可能な微細藻類の培養方法を提供すること。
【解決手段】純菌化工程を経て得られた微細藻類を、第一の培養容器内の培養液中で培養することによって、前記培養液の液面上に微細藻類からなるバイオフィルムを形成させる第一の培養と、前記培養液の液面上に形成されたバイオフィルムの一部又は全部を基板に転写することによって回収する工程と、前記バイオフィルムが転写された基板を用いることで、前記微細藻類を培養する第二の培養とを含む、微細藻類の培養方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、液面上での微細藻類の培養方法において、液面上の微細藻類を基板に転写回収した後、別の培養容器で培養を行う方法に関する。より具体的には、上記微細藻類の培養方法、該培養方法により液面上に形成されたバイオフィルム、該バイオフィルムから得られるバイオマス及びオイル、並びに、微細藻類由来のバイオマスの製造方法に関する。
本発明の微細藻類の培養方法は、具体的には、液面上の微細藻類からなるバイオフィルム(生物膜又は微細藻類凝集膜)を基板上に転写によって付着させ、該基板上でバイオフィルムを増殖させる方法である。本発明に係る微細藻類の培養方法は、エネルギー分野において有用である。
微細藻類は、地球温暖化物質である二酸化炭素(CO)を吸収し、光と少量の栄養素の存在下で増殖し、陸上の高等植物と比較して増殖効率が高いこと、また、食料と競合しにくいこと、オイル状物質を産生することなどから、地球温暖化問題やエネルギー問題などを解決する切り札になるのではないかという点で注目されている。
しかし、この様な優れた性質を持つものの、いまだに商業規模での生産は行われていない。この最大の原因が、化石燃料と比較して生産コストが高いことであり、効率的な生産方法の確立が望まれている。
この問題点を解決するための方法の一つが、効率的な微細藻類の回収方法を開発することである。一般的には、微細藻類は、液中に浮遊させながら培養を行うため、低濃度かつサイズの小さな微細藻類を大量の液中から回収し、バイオマスとして利用する必要がある。しかし、多くの微細藻類の生育には光が必要であり、その濃度を過度に高めることが出来ず、結果、薄い藻体濃度での培養となってしまう。また、希薄溶液からの微細藻類の回収には、多量の水をろ過する必要があり、当初、フィルターによるろ過が試みられたものの、目詰まりを起こしやすいなどの種々の問題があった。そこで、凝集剤を用い沈降させてから回収する方法、遠心分離機を用いる方法など様々な試みが行われたものの根本的な解決には至らなかった。
上記のような理由から、微細藻類の凝集体を形成させ、これを回収対象として用いることが望まれるようになった。特許文献1及び2には、基板上に微細藻類を付着させて培養する方法が開示されている。しかしながら、これらの方法では、微細藻類を基板上に均一に付着させることが困難であり、基板の表面を有効に活用することが困難である。そこで、本発明者らは、微細藻類を懸濁処理することによって均一な溶液を調製し、この溶液を用いて微細藻類が付着した基板を調製後、培養する方法を提案し、基板の表面を有効活用することが可能となった結果、その増殖速度を向上させることに成功した(特許文献3)。
水面上に浮上させた微細藻類を回収対象とすることで、回収の容易性と回収藻体の含水率を減らす検討もされている。例えば、特許文献4には、オイルの蓄積によって微細藻類を浮上させた後、回収装置によって浮上藻体に影響しない場所で水車のような構造物によって藻体を回収する方法が開示され、遠心分離機の様な固液分離装置を用いることなく回収できると記載されている。しかし、水車の様な構造物を用いているため、大量の培地とともに藻体を回収することとなり、前記固液分離装置による回収と比較して、回収物は高含水物になる問題点があった。また、水面上に浮いたアオコの回収を、同様の装置を用いて回収することが試みられているものの水深方向にも分布している藻体を回収することは非常に困難な状況である。
また、光を培養容器全体に照射可能な方法を開発することも、前記問題点を解決するための方法の一つと考えられる。浮遊培養(分散培養)の場合、水深が深ければ深いほど、微細藻類の濃度が高ければ高いほど、培養容器の下部に光が届きにくくなる。この問題を改善する方法として、光を液面下に伝達する方法が提案されてきた。例えば、特許文献5は、集光レンズを培養容器に設置し、光ファイバーを用いて光を深部に導光することで培養する方法が提案されている。また、特許文献6には、基板表面上の微細藻類を付着培養しているところに、光ファイバーを用いて光を導光し、その増殖性を向上させる方法が提案されている。
しかし、導光のための装置は高価格であり、現実的な方法ではなかった。また、光ファイバーを用いなければ培養容器深部に光が到達できないほど、培地中に光を吸収する物質が存在すると考えられ、この様な物質が最小限である培養法の開発が望まれていた。
一方、大量の培地を使用することも問題となっている。特許文献7には、基板の表面が湿潤状態で、珪藻の培養が可能であることが示されている。しかし、この方法は、湿潤状態が短時間であり、大量の培地を使用することには変わりない。本発明者らも微細藻類を分散処理することで均一な微細藻類溶液を調製し、吸水性高分子化合物を塗布した基板の表面上で培養する方法を開発している。
特開平4−183382号公報 特開平4−183385号公報 特開2010−217677号公報 特開2011−239746号公報 特開平6−165669号公報 特開平5−64577号公報 特開平4−183383号公報
The Ecology of Cyanobacteria. Their Diversity in Time and Space, B.A. Whitton & M. Potts, Eds, Kluwer Academic (1999), pp. 160 Melis et al., J apply Phycol (2010)
微細藻類を培養し、燃料を取り出すことは非常に注目されているが、未だ商業規模での生産は行われてはいない。その理由の一つが、技術的に非効率な製造過程が多く、それらの問題点を克服できないからである。
第一に、大量の培地を含む微細藻類の低濃度分散溶液から高濃度回収物を得る工程があるが、従来技術では、微細藻類の存在のため培養容器下部への光の透過性の低さが原因で、微細藻類の濃度をある一定以下にしなければならなかった。さらに、微細藻類のサイズの小ささから、凝集剤による沈降法や遠心分離機による濃縮が行う必要があった。しかし、前者の方法では広大な培養池への薬剤の均一投入の困難さや環境破壊、培地の再利用制限などが、後者の方法では、高価格装置の使用やその稼動に大量の電気エネルギーが必要であることなどが問題で、これらの方法を用いない回収方法が望まれていた。本発明では、微細藻類の回収物の含水率が低く、かつ、簡便に回収できる方法を提供することを課題としている。
第二に、効率的な微細藻類の培養を行うためには、培養槽中の微細藻類の藻体量を増加させることが必要であるが、そのためには、培養槽深部においても微細藻類を増殖させることが有効である。そのための方法として培養槽の深部に光を導光し、培養容器全体で微細藻類を増殖させ、その藻体量を増加させることが行われてきた。しかし、集光レンズや光ファイバーのような高価な材料や機器を用いる必要があり、高コスト培養法となっていた。本発明では、この様な高価な材料や機器を使用せずに光を導光する培養方法を提供することも課題としている。
第三に、培地のハンドリングには大量のエネルギーが必要であるが、培地の使用量を最小限にすることも本発明の課題としている。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、微細藻類を静置培養することによって液面上にバイオフィルム(好ましくはフィルム状のバイオフィルム)を形成させ、これを転写によって基板表面に付着させ、これを培地中に設置し培養することで、前記の課題を解決できることを見出した。また、前記微細藻類を転写した基板を湿潤雰囲気下で培養することでも、前記課題を解決できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
〔1〕
純菌化工程を経て得られた微細藻類を、第一の培養容器内の培養液中で培養することによって、前記培養液の液面上に微細藻類からなるバイオフィルムを形成させる第一の培養と、
前記培養液の液面上に形成されたバイオフィルムの一部又は全部を基板に転写することによって回収する工程と、
前記バイオフィルムが転写された基板を用いることで、前記微細藻類を培養する第二の培養とを含む、微細藻類の培養方法。
〔2〕
前記第二の培養において使用する第二の培養容器が、前記第一の培養容器と同一であるか、又は、異なる培養容器である、〔1〕に記載の微細藻類の培養方法。
〔3〕
前記第二の培養として、前記バイオフィルムが転写された基板を用いて壁面培養する、〔1〕又は〔2〕に記載の微細藻類の培養方法。
〔4〕
前記第二の培養として、前記バイオフィルムが転写された基板を用いて水平培養する、〔1〕又は〔2〕に記載の微細藻類の培養方法。
〔5〕
前記第二の培養において、前記バイオフィルムが転写された基板が、気相と接する様に培養する、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔6〕
前記第二の培養において、前記バイオフィルムが転写された基板が気相と接する様に培養する際、該基板を、微細藻類を増殖させることが可能な培地と間欠的に接触させる、〔5〕に記載の微細藻類の培養方法。
〔7〕
前記第二の培養において、基板の両側にバイオフィルムが転写された基板を用いる、〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔8〕
前記第二の培養において、基板として光の透過が可能な透明材料を用いる、〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔9〕
前記第二の培養において、前記バイオフィルムが転写された複数の基板を、一つの培養容器内に設置し、該複数の基板の間隔が少なくとも5mm以上である、〔1〕〜〔3〕及び〔5〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔10〕
前記複数の基板の間隔が、1cm以上である、〔9〕に記載の微細藻類の培養方法。
〔11〕
前記第一の培養及び第二の培養が共に静置培養である、〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔12〕
前記微細藻類が緑藻である、〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔13〕
前記微細藻類がオイルを含む微生物である、〔1〕〜〔12〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔14〕
前記微細藻類が、ボツリオコッカス属(Botryococcus sp.)である、〔1〕〜〔13〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
〔15〕
前記微細藻類が、ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus) AVFF007株(受託番号FERM BP−11420)である、〔14〕に記載の微細藻類の培養方法。
〔16〕
〔1〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法により、液面上に形成されたバイオフィルム。
〔17〕
〔16〕に記載のバイオフィルムから得られるバイオマス。
〔18〕
〔16〕に記載のバイオフィルムから得られるオイル。
〔19〕
〔1〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法を含む、微細藻類由来のバイオマスの製造方法。
本発明によれば、従来の浮遊培養法、付着培養法と比較して、効率的にバイオマスを製造することができる。
第一に、基板上に微細藻類からなるバイオフィルム(好ましくはフィルム状の構造物であるバイオフィルム)を用いているために、後述の第一の培養及び第二の培養とも凝集剤を用いる必要がなく、薬剤による環境への悪影響もなく、両培養方法とも遠心分離機による濃縮も不要であることから、高価格装置が不要かつ稼動エネルギーが最小限でエネルギー効率の良い回収を行うことができる。また、固液分離による回収操作であるために、回収物の含水率は低くすることができる。
第二に、液面浮遊培養は、実質的に液面及び底面にのみ微細藻類が存在し、実質的に培地中には微細藻類はほとんど存在しない。本発明の微細藻類の培養方法では、液面に浮遊するバイオフィルムを転写した微細藻類を用いての付着培養であることから、その性質を引き継いでおり、培養容器やその他表面を除く基板上にのみ微細藻類が存在し、培地中には微細藻類はほとんど存在しない。このことから、培養容器底部にまで光が導光され、光ファイバーなどの高価な装置や部材を用いずに、また、光を均等に照射する目的での攪拌を行わずに、三次元的な培養をすることが可能となる。
また、培養の進行に伴って、培養容器液面に微細藻類のフィルム状の構造物であるバイオフィルムが形成される。これを転写によって基板上に付着させた後、培養を継続することも可能であり、使用する培養容器の数を減らすことも可能となる。
第三に、バイオフィルム中には水分が含まれており、微細藻類の生存に必要な極少量の水分を供給すれば、転写によってバイオフィルムが付着した基板を培地に浸漬しなくとも培養を可能とすることができる。これにより、大量の培地をハンドリングせずに培養を行うことも可能である。
本発明の培養方法の基本的な構成を示す図である。 第二の培養において、液面上のバイオフィルムを利用した場合の培養模式図である。 CSiFF03培地の組成である。 CSi培地の組成である。 C培地の組成である。 CSiFF01培地の組成である。 AVFF007株の顕微鏡写真(倍率40倍)を示す図である。 垂直培養及び水平培養による増殖後の、基板面積あたりの乾燥藻体量の結果を示す図である。 垂直培養及び水平培養による増殖後の、受光面積あたりの乾燥藻体量の結果を示す図である。 図1の(j)の状態での壁面培養(垂直培養)の様子を示す図である。 実施例2における第二の培養(壁面培養)の培養日数と乾燥藻体量との関係を示す図である。 実施例3における第二の培養(壁面培養)時の、フィルムの種類と増殖後の乾燥藻体量との関係を示す図である。 実施例4における第二の培養(壁面培養)時の初期に使用した乾燥藻体換算の付着量と増殖後の乾燥藻体量との関係を示す図である。 実施例5における第二の培養(壁面培養)時の培地濃度と増殖後の乾燥藻体量との関係を示す図である。 実施例6における第二の培養(壁面培養)時の基板の設置間隔と増殖後の乾燥藻体量との関係を示す図である。 実施例7における第二の培養(壁面培養)時の、バイオフィルムを両面に付着させた基板と片面のみに付着させた基板との違いによる、増殖後の基板面積あたりの乾燥藻体量との関係を示す図である。 実施例7における第二の培養(壁面培養)時の、バイオフィルムを両面に付着させた基板と片面のみに付着させた基板との違いによる、増殖後の受光面積あたりの乾燥藻体量との関係を示す図である。 実施例8における第二の培養(培地を実質的に使用しない壁面培養)の培養最中に、バイオフィルムが付着した基板を培地に接触させる操作の有無が、増殖後の乾燥藻体量に及ぼす影響を示す図である。 BLAST解析に使用したAVFF007株の塩基配列(配列番号1)である。 微細藻類ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus) AVFF007株の系統図である。 水平培養と垂直培養の模式図である。
以下、本発明の微細藻類の培養方法ついて詳細に説明する。
本発明の微細藻類の培養方法は、純菌化工程を経て得られた微細藻類を、第一の培養容器内の培養液中で培養することによって、培養液の液面上に微細藻類からなるバイオフィルムを形成させる第一の培養と、上記培養液の液面上に形成されたバイオフィルムの一部又は全部を基板に転写することによって回収する工程と、該バイオフィルムが転写された基板を用いることで、微細藻類を培養する第二の培養とを含む。
本発明の微細藻類の培養方法は、液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類を、バイオフィルムとして基板に転写し、新しい培養容器に移動又は元々存在していた培養容器に維持し、そこで微細藻類を再度育成させるように培養するものである。
上記第二の培養において使用する第二の培養容器は、前記第一の培養容器と同一であるか、又は、異なる培養容器である。
本発明の第一の形態として、本発明の微細藻類の培養方法は、上記第二の培養として、バイオフィルムが転写された基板を用いて後述の壁面培養をすることが好ましい。
本発明の第二の形態として、本発明の微細藻類の培養方法は、上記第二の培養として、バイオフィルムが転写された基板を用いて後述の水平培養をすることが好ましい。
また、本発明の微細藻類の培養方法は、上記第二の培養において、バイオフィルムが転写された基板を、気相と接する様に培養することが好ましい。
更に、上記第二の培養において、バイオフィルムが転写された基板が気相と接する様に培養する際、該基板を、微細藻類を増殖させることが可能な培地と間欠的に接触させることがより好ましい。
以下、本発明の微細藻類の培養方法の詳細について説明する。
[微細藻類]
本発明における微細藻類は、典型的には液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類であり、液面上においてバイオフィルム形成能を有する微細藻類である。
本発明で言う微細藻類とは、人の肉眼では、その個々の存在が識別できないような微小な藻類を指す。微細藻類の分類としては、液面上においてバイオフィルム形成能を有するものであれば特に制限はなく、原核生物及び真核生物のいずれであってもよい。
前記微細藻類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、藍色植物門、灰色植物門、紅色植物門、緑色植物門、クリプト植物門、ハプト植物門、不等毛植物門、渦鞭毛植物門、ユーグレナ植物門、クロララクニオン植物門などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記微細藻類としては、不等藻植物門の珪藻、緑色植物門が好ましく、緑藻であることがより好ましい。バイオマスを産生する点で、前記微細藻類としては、オイルを含む微生物であることが好ましく、ボトリオコッカス属(Botryococcus sp.)がより好ましい。
前記微細藻類を入手する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、自然界より採取する方法、市販品を用いる方法、保存機関や寄託機関から入手する方法などが挙げられる。
本発明で言うバイオフィルムとは、微生物から構成されているフィルム状の構造物又は後述する立体的な三次元状の構造物のことを言い、通常、岩やプラスチック表面に付着している微生物構造体(微生物集合体又は微生物膜)のことを言うが、本発明では、これらに加えて、液面のような流動性のある表面に対して存在している微生物から構成されたフィルム状の構造物又は後述する立体的な三次元状の構造物のこともバイオフィルムというものとする。なお、自然界でのバイオフィルムには、微生物以外に、ゴミや植物の破片などを含んでいることが多いが、本発明でもこれらを含んでいてもよいものとする。但し、例えば、屋外の様なオープンな環境では、前記の目的微生物以外の混入の回避は不可能であるために、本発明では意図的にこれらを含ませた試料を対象としていない。しかし、微細藻類の回収の効率の観点から、バイオフィルムはゴミや植物の破片などの不純物を含まないことが好ましく、理想的には、本発明に係る微細藻類と該微細藻類の増殖時に分泌される細胞間マトリックスなどのような物質のみから構成されていることがより好ましい。また、本発明では、バイオフィルムは、個々の微細藻類同士が直接又は細胞間マトリックスのような物質を介して付着しあっている構造であることが好ましい。
本発明における液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類は、微細藻類ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus)が好ましい。本発明に係る微細藻類の18S rRNAの遺伝子領域をコードする塩基配列のうち、一部の領域の、ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus)に相当する塩基配列との相同性が95.0%以上99.9%以下であることがより好ましい。なお、ここで言う「一部の領域」とは、1000塩基配列以上の領域を意味する。相同性を試験するにあたっては、全塩基配列を用いての相同性の試験が最も信頼性が高いが、全塩基配列を決定することは極少数の生物種を除いて技術的にもコスト的にも困難であり、またボツリオコッカス スデティクスの塩基配列も特定の一部(具体的には、後述する比較対象としたAVFF007株の塩基配列に対応する塩基配列の近傍)しか公開されていない。更に、一般的には1000塩基配列程度読めば帰属は可能といわれている。以上のことから、本発明では「一部の領域」の塩基配列の比較により相同性を試験したが、その信頼性は十分に高いものと考えられる。
また本発明にかかる微細藻類は、液面上における増殖速度が大きいことが好ましく、具体的には、液面上の微細藻類の対数増殖期における増殖速度(すなわち、対数増殖期の期間における一日あたりの平均増殖速度)が、乾燥重量で0.1g/m/day以上であることが好ましく、1g/m/day以上であることがより好ましく、5g/m/day以上であることが更に好ましく、10g/m/day以上であることが最も好ましい。液面上の微細藻類の対数増殖期における増殖速度は、乾燥重量で一般的に1000g/m/day以下である。
特に、液面上での培養及び液面からの回収が良好であること、高い増殖速度を持つこと、オイルを高い含有率で含有していること、少なくとも培養中は臭いが殆どなく、有毒物質の発生も確認されていないことなどの観点から、本発明にかかる微細藻類は、微細藻類ボツリオコッカス スデティクス AVFF007株(以下、AVFF007株と略称する。)であることがより好ましい。
本明細書の実施例で使用した微細藻類、AVFF007株は、受託番号FERM BP−11420として、2011年(平成23年)9月28日付で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東一丁目1番地1 中央第6)にブタベスト条約の下で国際寄託されている。
AVFF007株は、本発明者らが京都府の池から単離したボツリオコッカス属スデティクス種に属する淡水微細藻類の新規株である。
以下に、該微細藻類の単離方法(以下、純菌化ともいう)及び該微細藻類のAVFF007株を新規株と判定するに至った経緯を説明する。
(微細藻類AVFF007株の純菌化)
京都府の池から自然淡水を5mLのホモジナイズ用チューブ(株式会社トミー精工、TM−655S)に入れることで採取した。図5に示すC培地と、図4に示すCSi培地との1:1混合(体積比)培地を1.9mL入れた24穴プレート(アズワン株式会社、微生物培養プレート1−8355−02)に、採取してきた自然淡水を100μL加え、プラントバイオシェルフ組織培養用(株式会社池田理化、AV152261−12−2)に設置し、4000ルクスの連続光照射下、23℃で培養を行った。約1ヵ月後、24穴プレートのウェル内に黄色い凝集物が生じたので、光学顕微鏡で観察したところ、多数の微生物の存在を確認した。
アガロース(inviterogen, UltraPureTM Agarose)を1g秤量し、200mLのC培地とCSi培地との1:1混合(体積比)培地を500mL三角フラスコに入れた。これを121℃で10分間オートクレーブ処理し、クリーンベンチ内でアズノールシャーレ(アズワン株式会社、1−8549−04)の中に、冷えて固まる前に約20mLずつ入れることで、アガロースゲルを作製した。
24穴プレート内の微細藻類を含む溶液を希釈し、ディスポスティック(アズワン株式会社、1−4633−12)のループ部分に溶液を付着させ、前記にて準備したアガロースゲル上に塗ることで、アガロースゲル上に微細藻類を塗布したシャーレを調製した。
このシャーレを、プラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、4000ルクスの連続光照射下、23℃で培養を行った。約2週間後、緑色のコロニーが、アガロースゲル上に現れたので、滅菌竹串(アズワン株式会社、1−5980−01)を用いて、コロニーをその先端に付着させ、C培地とCSi培地との1:1混合(体積比)培地を2mL入れた24穴プレートのウェル内に懸濁させた。この様にして調製した微細藻類を含む24穴プレートをプラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、4000ルクスの連続光照射下、23℃で培養を行った。約2週間後、ウェル内の水溶液が緑色を呈してくるので、すべてのウェルから少量の溶液を採取し、光学顕微鏡を用いて微細藻類を観察し、単一の微細藻類しか存在していないと考えられるウェルを見つけ出すことで、純菌化を行った。
なお、C培地の組成は図5に示し、CSi培地の組成は、図4に示す通りで、いずれも、900mLの蒸留水を121℃、10分間のオートクレーブ処理をし、10倍濃度のC培地又はCSi培地を100mL調製後、ポアサイズ0.45μmのフィルターで滅菌を行った溶液と混合することで調製した。
また、AVFF007株の40倍での顕微鏡写真を示す図を、図7に示した。
(形態的性質)
・分散処理を行った後にしばらく時間を置くと、底面にすべて沈む。
・しばらく培養を行うと、液面上に浮くものが現れる。従って、底面に沈んでいるものと液面に浮いているものとに分かれる。さらに培養を継続すると、液面上にフィルム状の構造物が現れる。さらに培養を行うと、三次元状の構造物が現れる。
・液面のもの、及び、底面のもの、いずれも形態は球状であり、それぞれサイズは一定ではなく分布を持つ。
・凝集性があり、巨大なコロニーを形成する
・色は緑色であり、培養の進行に伴って、黄色く変色する。
・培養中及び回収物の臭いはほとんどないが、生野菜のような臭いを感じることがある。回収物中から溶媒を除去したものは、硫黄のような臭いがする。
(培養的性質)
・淡水中で成育し、海水中での増殖は極端に遅くなる。海水が数%混入するだけでも増殖速度に影響を及ぼす。
・細胞増殖時には、遊走子によって増殖する。1個の細胞から、遊走子は数個から十数個発生する。
・光合成による光独立栄養培養が可能である。
・増殖には、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウ、マンガン、鉄が必須である。他に、亜鉛、コバルト、モリブデン、ホウ素が入っていると好適に増殖する。ビタミン類の添加も増殖を促す。
(生理学的性質)
・生育温度は、37℃以下である。温度が高いほど増殖性は良い。
・40℃ではほとんど増殖しないが、40℃環境下でも少なくとも数時間は耐える。
・生育pHは、5以上9以下である。培地の種類に依存して、生育後のpHは8以上、例えばpHが10.5になる場合がある。
・光や熱を与えると、カロテノイドを生成しやすくなる。
・菌体内にオイルを蓄積し、乾燥重量比で15wt%から30wt%蓄積する。
・液面に浮いている藻体は、底面に沈んでいる藻体よりもオイル含有量が高い。
・オイルは、炭化水素化合物と脂肪酸が主成分。脂肪酸は、C16:0, C16:1, C18:1, C18:2が主である。炭化水素化合物は、C17, C21が主である。
・Nile red染色したAVFF007株を蛍光顕微鏡で観察すると、蛍光視野中の藻体において、明るい蛍光発色の領域としてNile redで発色したオイルの存在が確認される。該オイルは藻体細胞内の広い領域に蓄積されうる。
・スライドガラス上にAVFF007株を含む培養液を滴下し、カバーガラスをかけて顕微鏡下観察すると、AVFF007株からオイル状の油滴が放出される。
・液面に浮いている藻体は、底面に沈んでいる藻体よりも比重が軽いが、水よりも重い。
・光量は、200〜800μmol/m/sが好適に増殖できる光量であるが、40μmol/m/s程度でも、1500μmol/m/s程度でも好適光量の半分程度の増殖速度で増殖は可能である。
更に以下の方法に従って、AVFF007株の同定を行った。
(微細藻類AVFF007株の同定)
AVFF007株の培養法は、100mL容量の三角フラスコに50mLのCSi培地を導入し、1000×10個/mLのAVFF007株溶液を0.5mL添加し、25℃、光照射下で振盪培養を14日間行った。
AVFF007株の乾燥粉末を得るために、前記によって得られたAVFF007株を含む培地40mLを遠心機(MX−300(トミー精工製)を用いて、6000×g、4℃下、10分間遠心操作を行った。上清を除去した後、固形物を容器ごと液体窒素を使用して凍結し、これを予め液体窒素によって冷やしておいた乳鉢に全量移し、予め液体窒素にて冷やしておいた乳棒を用いて粉砕した。
微細藻類からのDNAの抽出は、DNeasy Plant Mini Kit (Qiagen製) を用いて、記載されているマニュアルに従って行った。抽出後のDNAは、e−spect (malcom製)を用いて、純度、量を測定した。抽出後のDNAは、精製度の指標であるA260nm/A280nm=1.8以上を達成しており、約5ng/μLのDNAが取得されたことを確認した。
抽出後のDNAの純度は問題なかったことから、超純水を用いて10倍に希釈することで、PCR用の試料を準備した。PCR用の試料としては、18S rRNAの遺伝子領域(rDNA領域)を使用した。PCRは、GeneAmp PCR System 9700 (Applied Biosystems製)を用いて、98℃10秒間、60℃50秒間、72℃10秒間のサイクルを30回行った。なお、使用した酵素は、Prime Star Max (タカラバイオ製)である。得られたPCR産物は1wt%アガロース電気泳動により、単一バンドであることを確認した。
PCR生成物の精製は、PCR purification kit (Qiagen製)を用いて行った。方法は、マニュアルに記載の方法に従って行った。PCR反応が十分にできたかどうか、また、精製度を確認するために、e−spectを用いて、純度、量を測定し、A260nm/A280nm=1.8以上であったことから、問題ないと判断した。
次に、精製物を鋳型とし、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing kit (Applied Biosystems製)を用いて、サイクルシークエンスを行った。条件は、マニュアルに従った。得られた反応物をABI PRISM 3100−Avant Genetic Analyzer(Applied Biosystems製)を用いて、塩基配列の解読を行った。
これをBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)による相同解析を行った。方法は、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information、NCBI)のデータ上の全塩基配列情報に対し、上記配列をBLAST検索し、最も相同性の高い生物種をAVFF007株の近縁種とした。比較対象とした塩基配列(1111塩基、配列番号1)についてのみ、図19に示した。具体的には、解読した塩基配列の両端の数塩基は、BLAST解析によって比較対象とされなかったので、図19には示さなかった。なお、図19に示した塩基配列の左上が5’末端であり、右下が3’末端である。
相同解析の結果、Botryococcus sp. UTEX2629株と、Botryococcus sp. UTEX2629株側の1118塩基中、AVFF007株側の1109塩基に相同性(すなわち、99%の相同性)があった。従って、AVFF007株は、Botryococcus sp. UTEX2629株に近縁の微細藻類であると分類した。
以上の解析の結果得られた系統図を図20に示す。AVFF007株は、Characiopodium sp. Mary 9/21 T−3wとも近縁の微生物であり、AVFF007株は、今後、Characiopodium 属に名称が変更される可能性もあり、本発明では、ボツリオコッカス スデティクスの名称が変更された場合には、AVFF007株も同様に名称が変更されるものとする。また、Characiopodium属以外の名称に変更された場合にも同様の処置が行えるものとする。
(微細藻類AVFF007株の密度測定)
10mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA, Ethylenediamine−N,N,N’,N’−tetraacetic acid)、5mM HEPES(4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid) KOH (pH 7.5)の溶液に塩化セシウムを溶解させることで、塩化セシウム濃度10%ごとに塩化セシウム濃度が35〜105% (w/v)の溶液を調製し、Polyallomer tube (日立工機製)内にtube先端部から液面部に向かって濃度が薄くなるように濃度勾配を作成した。
このチューブの上面に5×10個/mLのAVFF007株をアプライし、遠心機を用いて、20000×g、4℃、30分間の遠心処理を行った。
液面上に浮遊している藻体の細胞密度は1.26g/mLであり、非特許化文献1に記載のBotryococcus sp. UTEX−2629株の細胞密度、1.34 g/mLよりも軽かった。
以上から、密度の観点からもBotryococcus sp. UTEX−2629株と完全に同一のものではなく、Botryococcus sp. UTEX−2629株に近い微細藻類であると判断した。
更に、Botryococcus sp. UTEX−2629株と近縁の微細藻類であることは、非特許化文献2の図3と、図7に示したAVFF007株の顕微鏡写真を示す図とを見比べると、それらがほぼ同一の形態であることからもわかる。
なお本発明の培養方法によれば、上記AVFF007株以外の微細藻類でも、培養条件を好適な条件とすることにより、液面上でのバイオフィルムの形成が可能になると考えられる。
[本発明の方法]
本発明の培養方法の基本的な構成を図1に示した。なお、本模式図は、本発明を説明するためのものであることから、簡略化して表記している部分がある。
培養は大きく二つに分類することができる。液面浮遊培養によるバイオフィルムの調製から基板への転写までの第一の培養と、微細藻類からなるバイオフィルムが付着した基板を培養容器に設置して培養を行う第二の培養である。
まず、第一の培養であるが、これは、液面上にバイオフィルムを形成させ、基板を用いて液面上のバイオフィルムを回収するまでの工程である。図1の(a)に示した様に、微細藻類の懸濁溶液を調製し、培養容器に入れた後にしばらく静置すると、図1の(b)に示した様に、ほとんどすべての微細藻類が培養容器の底面に、微細藻類の種類に応じて数分から数十分で沈む。
この状態でしばらく培養を継続すると、図1の(d)に示した様に、液面上にも微細藻類が生長し、液面上にバイオフィルムを形成する。なお、微細藻類の種類によっては、図1の(b)の状態を経由せずに図1の(d)の状態になるものも存在する。
本発明では、激しく攪拌しない限り、振盪培養を行っても本発明と同様の培養を行うことは可能であるが、液面上に形成されるバイオフィルム中の藻体数が少なくなることから、静置状態での培養の方が望ましい。また、底面に沈むとは、微細藻類の大部分が底面に沈むことをいい、液面上や液中から完全に微細藻類が存在しなくなる状態を言うものではない。また、微細藻類の懸濁溶液の調製は、いかなる方法でも用いることが可能である。また、微細藻類は、液面浮遊培養法、浮遊培養法、付着培養法など公知のいかなる培養方法で得られたものを用いても良い。
図1の(d)の状態は、図1の(c)から準備することも可能である。すなわち、液面上にバイオフィルムを浮かせた状態から培養を行う方法である。また、図1の(g)の状態から調製しても良い。すなわち、図1の(e)で液面上の微細藻類からなるバイオフィルムの一部又は全部を回収し、培養を継続することによって、図1の(g)の状態を経由して、図1の(d)の状態にしても良い。この方法は、図1の(e)から(g)の状態で、液体培地中に増殖のための栄養素が残存している限り繰り返し可能であり、図1の(a)の懸濁溶液や、図1の(c)の液面上へのバイオフィルムの導入工程を省略できる点でより好ましい。
また、図1の(c)及び(g)の液面上のバイオフィルムに対し、バイオフィルムの構造物を分割する分割処理を行っても良い。分割処理を行うことによって、培地と接触可能な微細藻類の数が増加し、微細藻類の増殖速度の向上が期待できると共に、微細藻類の存在していない領域を減らすことができ、液面を有効に活用できるからである。
分割処理の方法は、いかなる方法を用いることも可能であるが、液面に振動を与える方法、例えば、液面上の波を利用する方法、風を利用する方法、水流を利用する方法、固体材料を用いる方法などをあげることができる。固体材料を用いる方法とは、例えば、棒やスクリューのようなものを用いて、液面上の微細藻類から構成されている構造物を分裂させる処理である。
また、培養容器が形成する液面の一部の領域のバイオフィルムを基板を用いて回収することによって、自然に分割処理を行うことも可能である。これは、培養開始後、バイオフィルムを形成するのに十分な培養時間が経過しない時、すなわち、フィルム状構造物が十分に成長しきらず、弱い構造物である場合に特に有効である。一般的には、培養開始後、1〜5日程度であるが、培養条件によって日数は異なる。
分割の程度は、細かければ細かいほど好ましいが、細かくするためには、より激しい操作が必要となり、微細藻類が底面に沈む可能性が高くなってしまう。分割の程度は、目視で見えるような大きさ、例えば、0.01mm〜1mの大きさに分割することが好ましい。
また、図1の(b)から(d)、(c)から(d)、(g)から(d)への培養工程において分割処理を行っても良い。これにより、バイオフィルムの形成速度が向上するからである。
次に、基板を用いて、液面上のバイオフィルムを回収する。回収は、液面の全領域に渡って行っても良いし、部分的に行っても良い。液面上の微細藻類からなるバイオフィルムを回収するタイミングとしては、培養容器内の液面が微細藻類で部分的に覆われている状態で回収することも可能であるが、回収後の基板の非バイオフィルム付着領域が少ないことから、培養容器内の液面がすべて微細藻類で覆われてから回収することが好ましい。
また、バイオフィルムは、フィルム状の構造物の状態及び三次元状の構造物の状態のいずれの状態でも用いることができるが、フィルム状の構造物の方が、後述の壁面培養や水平培養時の増殖性向上の余地がある点、及び、図1の(d)の状態を作り出すための培養時間の短さの点、図1(d)から(e)、(f)、(g)に至る工程のサイクル数の増加の点などからより好ましい。なお、サイクル数の増加は、バイオフィルム形成物中の藻体量が少ないことによる培地中栄養成分の残存率の高さによるものである。また、図1の(h)から(i)又は(j)への工程、すなわち、微細藻類からなるバイオフィルムが付着した基板(以下、単に基板とも言う)を培養容器に浸漬する際に、三次元状の構造物由来の微細藻類が付着した基板を用いると、基板から微細藻類がはがれやすくなり、微細藻類を有効に活用することができない問題があるが、フィルム状の構造物を付着させた基板はこの様なことが少ないことからより好ましい。
液面上の微細藻類の回収方法は、基板の一部を液面に浸漬し、液面表面上を沿うように動かすことで、基板上に液面上のバイオフィルムを堆積させながら回収する方法を用いても良いが、基板表面を有効に活用できる観点から転写による回収方法がより好ましい。また、転写は、一回の転写によって、基板上にバイオフィルムを付着させても良いが、複数回付着させても良い。これにより、基板上のバイオフィルムの非付着部位の面積を好適に減少させることができる場合があるからである。また、複数枚の基板を用いての転写による付着工程を行うことがより好ましい。一般的に、第一の培養で用いる培養容器の液面表面積は、第二の培養で用いる培養容器の鉛直方向の断面積よりも大きく、大きな表面積を有する基板の取扱いが困難だからである。また、複数枚の基板を用いることによって、一つの培養容器で複数個のバイオフィルムを付着させた基板を同時に調製することが可能だからである。後述するように、第二の培養の壁面培養時には、バイオフィルムが付着した基板を複数枚用いることの方が光量の有効活用の観点からより好ましい。また、複数枚の基板を用いる場合には、基板を液面から脱離させる前に、別の基板を液面に配置することが好ましい。これは、使用予定の基板よりも少ない数の基板を液面に配置した後、バイオフィルムが付着した基板を液面から脱離させると、例えば、基板を脱離させることによって生じたバイオフィルム非存在液面に、基板を液面から剥がす時などのような極僅かな液面上の揺らぎによって液面上のバイオフィルム構造が部分的に壊れ、該バイオフィルム非存在領域へと移動する結果、液面上には、バイオフィルム非存在領域がまばらに発生し、残りの基板を転写した際に、基板の転写面に対してバイオフィルム非存在領域が発生してしまう可能性があるからである。このことは、第二の培養での培養効率が低下する原因となる可能性があることから、複数の基板を同時に液面上のバイオフィルムに接触させてから、基板を脱離させることが好ましい。
次に、第二の培養であるが、これは、微細藻類を付着させた基板を地面に対して水平方向、垂直方向等に設置し、培養する工程である。なお、ここでは、水平方向と垂直方向の二種類を代表として図示及び記載しているが、基板の設置角度はいかなる角度でもかまわない。基板の設置角度を傾けることによって、太陽光などの自然光をより好適に照射することが可能だからである。また、基板の角度を自動又は手動で変えられるようにして、光源を追尾するようにしてもかまわない。
第一の培養によって液面上のバイオフィルムを付着させた基板は、第二の培養における培養容器中で、例えば、図1の(i)又は(j)に示した様に配置することが出来る。
第一の培養によって液面上のバイオフィルムを付着させた基板を図1の(i)に示した様に、培養液を入れた培養容器の中にバイオフィルムが付着した面を光源のほうに向けて、地面に対して水平に配置することが出来る。図では、一枚の基板のみを配置しているが、複数枚の基板を配置しても良い。
第一の培養によって液面上のバイオフィルムを付着させた基板を図1の(j)に示した様に、培養液を入れた培養容器の中にバイオフィルムが付着した面を地面に対して垂直に配置することが出来る。図では、複数枚の基板を配置しているが、一枚の基板でも良い。基板は、隣の基板から光の供給が可能である点、材料内部を光が透過可能である点から、透明材料を使用することが好ましく、より培養容器の深い部分に光を導光できる点からも好ましい。
なお、図1の(j)に示したような状態での、基板の設置間隔は任意に決めることができるが、5mm以上であることが好ましく、1cm以上であることがより好ましい(すなわち、本発明の微細藻類の培養方法においては、上記第二の培養において、バイオフィルムが転写された複数の基板を、一つの培養容器内に設置し、該複数の基板の間隔が少なくとも5mm以上であることが好ましく、1cm以上であることがより好ましい)。基板の設置間隔は一般的に1000cm以下である。
基板を地面に対して垂直に配置する時の高さも培養の目的に応じて決めることができる。また、図では、すべての基板が同じ高さで描かれているが、異なった高さの基板を配置しても良い。これにより、斜めからの光の照射に対して、効率的に培養を行うことが可能となる場合があるからである。
なお、基板の配置には、基板を固定するための器具を使用することが好ましい。また、本発明では、図1の(j)の培養形式を垂直培養及び壁面培養のいずれかで呼んでいる。基板は複数の基板から構成されていても良い。例えば、基板をフィルムとして用いた場合、培養液中でその形態を保持することが困難である場合も考えられるが、その様な場合に形態を保持するためのより強度の高い基板と共に浸漬することが可能である。フィルムが薄い場合には、フィルム内を導光することが困難であると考えられるが、より強度の高い基板として透明な材料を用いた場合には、導光の効果も期待することが可能であることからもより好ましい。
また、図では、基板は液面に完全に浸漬させているが、一部が液面上に出ていてもかまわない。また、図では、微細藻類を基板の片面のみに付着させているが、受光面積あたりの藻体量を増加させることができることから、基板の両面に付着させても良い。なお、受光面積は、本模式図の場合、培養容器の液面積にほぼ等しい。
なお、第二の培養によって得られた微細藻類を図1の(a)や(c)の微細藻類として使用しても良い。
第一の培養及び第二の培養の両方に共通することであるが、培養容器は、開放系でも閉鎖系でも良い。高濃度二酸化炭素の使用による増殖速度の向上、外部からの目的外微生物やゴミの混入、風による液面上のバイオフィルムの破壊防止、水の蒸発防止などの観点から、閉鎖系での培養の方がより好ましい。
[第二の培養において液面上に形成された微細藻類からなるバイオフィルムを利用する培養方法]
図2に示した様に、第二の培養において形成された、培養容器の液面上のバイオフィルムを基板に付着させても良い。これにより、一つの培養容器で培養を行える場合があることから好ましい。また、培養容器の液面上に形成されたフィルム上の構造物の存在により、培養容器内の微細藻類が得ることのできる光量が減少するが、これを好適に防止することからも好ましい。
図2の(a)から(b)に示した様に、基板に付着させた微細藻類を培養していると、基板浸漬時に基板から剥がれた微細藻類由来又は複数回培養した場合に、培養容器や基板などに残っていた微細藻類由来等の微細藻類の増殖によって液面上に微細藻類からなるバイオフィルムが形成されることがある。図2の(c)に示した様に、このバイオフィルムを基板に転写し、図2の(d)に示した様に、これを培養容器内に設置することで壁面培養を行う方法である。これにより、図2の(b)の状態で培養を継続すると、液面上のバイオフィルムが成長し、液面下に存在している微細藻類への光の到達が減少し、その成長を阻害する可能性がある。導光が可能な基板の少なくとも一部を液面上にも存在するように設置することで、ある程度この問題を回避することができるが、本培養法を用いることにより、より好適に培養を行うことができる。
図2では、新しい基板を用いて、液面上のバイオフィルムを付着させて培養に用いているが、基板上のバイオフィルムを回収した後の基板を使用してもかまわない。また、一般的には、培養容器の液面の表面積の方が一枚の基板の表面積よりも広い場合が多いことから、複数の基板を培養容器に設置してもかまわない。また、図2の(d)の状態で基板から微細藻類を回収し、バイオマス抽出工程を行っても良い。
図2では、基板は垂直方向に設置しているが、水平方向に設置しても良く、あらゆる角度を用いることができる。また、バイオフィルムは基板の片面に付着させても、両面に付着させてもかまわない。
図2では、同一の培養容器を用いての培養、すなわち、液面上のバイオフィルムを基板に転写し、そのバイオフィルムを培養していた培養容器に基板を設置することで培養を行っているが、該バイオフィルムが付着した基板を別の培養容器内に設置することで培養を行っても良い。
[純菌化工程]
本発明で言う純菌化工程とは、自然状態にある微細藻類の場合には、微細藻類と共に、様々な種類の生物やゴミなどが共存した状態で生育している状態を、目的の微細藻類のみに単離する工程を言う。なお、現実的には、このような完全な単離は困難な場合があり、本発明では主となる微細藻類が得られれば純菌化できたものと定義している。
なお、本発明において主として得られるとは、顕微鏡下の観察において、数ヶ所の視野で目的以外の微生物が確認できなかった場合を意味する。
純菌化の方法としては、公知のいかなる方法を用いることもできるが、例えば、寒天培地上で微生物を含む希釈懸濁溶液を展開後、培養し、コロニーを形成させた後に、コロニーを採取する方法や、顕微鏡下で一匹ずつ採取する方法などが挙げられる。
[前培養工程]
本発明で言う前培養工程とは、一般的には、純菌化工程を終了した後に得られた微細藻類を保存しておくが、前記保存微細藻類を増殖させ、本培養を行えるまで微細藻類の数を増やす工程のことである。本工程の培養法は、公知のいかなる培養方法も可能である。また、本発明の液面浮遊培養を行うことも可能である。また、前培養工程は、本培養が行える規模まで微細藻類を増殖させるために、数回の前培養工程を行っても良い。
また、一般的には、1cm〜1m以下の表面積を持つ培養槽を使用し、屋内外いずれでも培養可能であるが、屋内での方が好ましい。
[本培養工程]
本発明で言う本培養工程とは、前培養工程を行った後の培養工程のことであり、最終回収工程を行う直前のまでの培養工程のことを言う。本培養工程は、複数回行っても良いものとする。
また、本培養工程には、以下に記載する第一の培養と第二の培養の二つの工程が存在する。
また、一般的には、100cm以上の表面積を持つ培養槽を使用し、屋内外いずれでも培養可能であるが、屋外での培養の方が好ましい。
[第一の培養]
本発明で言う第一の培養とは、本培養工程の一つであり、液面浮遊培養の工程である。第一の培養は、例えば、図1の(a)から(g)の状態を言うものである。すなわち、第二の培養において使用する、基板に付着したバイオフィルムを得るための培養工程である。また、図2の模式図に示した培養方法の中で第一の培養に相当する部分に関しては、第一の培養に含めることができる。
[第二の培養]
本発明で言う第二の培養とは、本培養工程の一つであり、水平培養又は壁面培養等を含むものである。第二の培養は、例えば、図1の(h)から(i)又は(j)の状態を言うものである。すなわち、第一の培養によって液面上に形成したバイオフィルムを基板上で培養する培養工程である。
本培養によって収穫されたバイオフィルムから、バイオマスが得られるため、培養工程における最終工程を含む工程である。また、図2の模式図に示した培養方法の中で第二の培養に相当する部分に関しては、第二の培養に含めることができる。
第二の培養は、液面から底面までの距離が短い場合には、静置培養を行うほうが好ましいが、該距離が長い場合には、振盪培養を行っても良い。これは、該距離が短い場合には、水深が浅いことから培養に必要な二酸化炭素が底面にまで十分に浸透する可能性が高いが、該距離が長いと、水深が深くなり、培養に必要な二酸化炭素を底面にまで供給することが困難となってしまう可能性があるからである。また、二酸化炭素をバブリングしたり、液流を発生するなどの方法で培養液を攪拌しても良い。なお、バイオフィルムを液体の流れの中に置くと、バイオフィルムが強固に生育することがあり、この点からも培養液を攪拌させることが好ましい場合がある。
[壁面培養]
本発明で言う壁面培養とは、地面に対して45度以上の角度で基板を設置して行う培養方法のことであり、微細藻類を付着させた状態で行う培養方法のことである。壁面培養には、垂直培養を含むものとする。
[水平培養]
本発明で言う水平培養とは、地面に対して45度未満の角度で基板を設置して行う培養方法のことである。
[垂直培養]
本発明で言う垂直培養とは、地面に対して80度以上の角度で基板を設置して行う培養方法のことであり、微細藻類を付着させた状態で行う培養方法のことである。壁面培養の一形態が、垂直培養である。
[微細藻類の使用]
前培養を行うにあたって使用する微細藻類は、浮遊培養、液面浮遊培養、付着培養、壁面培養など、公知のいかなる培養法によって得られたものを使用しても良い。
本培養を行うにあたって使用する微細藻類は、液面浮遊培養によって得られたものを使用することもできる。また、図2に示した液面上のバイオフィルムを用いても良い。
[懸濁処理]
本発明において、懸濁処理とは、微細藻類の集合体をより小さな集合体又は単一の微細藻類にするためのいかなる処理方法も含むことができるものとする。例えば、ピペッティングや容器内で微細藻類の溶液を手で振る処理、スターラーチップや攪拌棒による処理などの弱い処理、超音波処理や高速振盪処理などの強い処理、細胞間マトリックスのような接着物質を分解する酵素などの物質を用いる方法などを含むものとする。
懸濁処理により、微細藻類をより小さな集合体又は単一の微細藻類にすることによって、微細藻類凝集体のサイズが大きいものと比較して微細藻類凝集体のサイズが小さければ小さいほど、培地との接触面積が増え、その結果、微細藻類の増殖速度を向上させることができることから、より好ましい。
超音波処理とは、人の耳には聞こえない高い振動数を持った振動波を、微細藻類の溶液又は微細藻類の溶液を保持している容器に対して直接加えることを特徴とする方法で、必ずしも密閉容器である必要はなく、また、微細藻類を含む溶液が容器の底面から離れることがない方法である。
高速振盪処理とは、振盪用密閉容器の中に微細藻類の凝集物を含む溶液を、空気相が形成できるように入れ、振盪用密閉容器全体を高速で振盪させるとともに、懸濁溶液相が振盪用密閉容器の内壁から離れたり、接触したりするような処理方法を言う。
[懸濁溶液]
本発明で言う懸濁溶液とは、懸濁処理を行った溶液のことを言うものとする。
[微細藻類の懸濁溶液]
微細藻類の懸濁溶液とは、微細藻類を懸濁処理することによって得られた溶液のことを言う。この微細藻類は、液体中で浮遊培養したものを使用してもかまわないし、基板上に微細藻類を付着培養したものを、基板表面から微細藻類を剥がしてから使用しても良い。また、液面浮遊培養によって得られた微細藻類を使用しても良い。また、これらの少なくとも2つ以上の培養形態由来の微細藻類の混合物を使用しても良い。例えば、液面浮遊培養由来の微細藻類と液面培養時の培養容器底面上の微細藻類との混合物などが挙げられる。
前培養、本培養とも、微細藻類の増殖状態を確認するために、懸濁処理を行っても良い。この処理によって、微細藻類の数を数えることが容易になるからである。
[分散処理]
本発明において、分散処理とは、微細藻類の集合体をより小さな集合体又は単一の微細藻類にするための処理方法であり、例えば、ピペッティングや容器内で微細藻類の溶液を手で振る処理、スターラーチップや攪拌棒による処理などの弱い処理を除いた懸濁処理のことを言う。すなわち、分散処理とは、超音波処理や高速振盪処理などの強い処理、細胞間マトリックスのような接着物質を分解する酵素などの物質を用いる方法などを含むものとする。
前培養、本培養とも、微細藻類の増殖状態を確認するために、分散処理を行っても良い。この処理によって、微細藻類の数を数えることが容易になるからである。
[分散溶液]
本発明で言う分散溶液とは、超音波処理や高速振盪処理などの分散処理を行った溶液のことを言うものとし、ピペッティングや容器内で微細藻類の溶液を手で振る処理、スターラーチップや攪拌棒による処理などの弱い懸濁処理を行った溶液のことは言わないものとする。
[微細藻類の分散溶液]
微細藻類の分散溶液とは、微細藻類を分散処理することによって得られた溶液のことを言う。この微細藻類は、液体中で浮遊培養したものを使用してもかまわないし、基板上に微細藻類を付着培養したものを、基板表面から微細藻類を剥がしてから、又は懸濁処理と同時に基板表面から剥がした微細藻類を使用しても良い。また、液面浮遊培養によって得られた微細藻類を使用しても良い。また、これらの少なくとも2つ以上の培養形態由来の微細藻類の混合物を使用してもかまわない。例えば、液面浮遊培養由来の微細藻類と液面培養時の培養容器底面上の微細藻類との混合物などが挙げられる。
前培養、本培養とも、微細藻類の増殖状態を確認するために、分散処理を行っても良い。この処理によって、微細藻類の数を数えることが容易になるからである。
[沈積]
本発明で言う沈積とは、培養容器底面に対して微細藻類が近傍に存在している状態若しくは付着、又はその両方の状態が混在している状態を言う。微細藻類が近傍に存在している状態とは、僅かな培養液の動きで、基板又は培養容器底面から微細藻類が容易に移動する状態を言う。また、沈積には、付着も含まれているものとする。本発明では、液面上に微細藻類を存在させた状態から培養を開始することも可能であるため、沈積工程を意図的に形成させずに培養させることも可能である。この方法では、液面浮遊培養の工程数を減らすことができ、一般的には、培養の効率が向上する。但し、液面上から培養を開始したとしても図1に示した様に、少なからず底面上に微細藻類が沈積して存在する様になる。
[付着]
本発明で言う付着とは、基板又は培養容器底面に対して微細藻類が直接付着している状態を言い、僅かな液体培地の動き程度では基板や培養容器底面などの表面から微細藻類がはがれない程度に付着していることを言う。また、本発明では、液体培地の液面上に形成させた微細藻類からなるバイオフィルム(フィルム状の構造物又は三次元状の構造物)が液面に浮いている状態を液面に付着しているとも表記することがある。また、本発明では、転写によって液面上の微細藻類からなるバイオフィルムを基板に付着させた状態も付着と呼ぶものとする。
[沈積工程]
図1の(a)から(b)の微細藻類の沈積工程は、微細藻類の懸濁溶液又は懸濁溶液を静置することで、培養容器の底面に微細藻類を沈積させる工程である。なお、図1の(c)の様に、液面上に微細藻類から構成されたバイオフィルムを部分的に形成させた後に、このバイオフィルムから培養容器の底面の表面に微細藻類が沈降する可能性もあるが、本発明では、これらは沈積工程には含めないものとする。また、沈積後に、微細藻類からなるバイオフィルムが少なくとも液面上に目視にて確認できるまでには、微細藻類の種類にもよるが、一般的には、数日から2週間程度を要する。しかし、この工程は、沈積工程とは言わずに、培養工程に含めるものとする。なお、この工程では、振盪状態でも進行するが、静置状態の方が沈積する微細藻類の数が多くなるため、静置状態に置くことの方が好ましい。また、本発明では、目視で見る限り、ほぼすべての微細藻類が沈積するが、顕微鏡などの機器を使用しての観察を行うと、極めて少数ではあるが、液面上や液中に微細藻類が含んでいることがある。しかし、本発明ではその様な場合でも、微細藻類のほとんどが底面上に沈んでいることから、沈積していると記すものとする。
沈積工程において、微細藻類は、その種類に応じて1秒から1日の間で培養容器底面の表面に沈降する。沈積工程が付着を伴う場合には、より長時間を要し、培養工程と重なる場合もある。
[培養工程]
培養工程は、液面上での培養工程と基板上での培養工程がある。
[液面上での培養工程]
液面上での培養工程とは、微細藻類を沈積した後の工程から、液面上の微細藻類からなるバイオフィルムを回収する直前までの工程のことを言う。すなわち、例えば、図1の(b)から(d)までの工程、図1の(c)から(d)への工程、図1の(f),(g),(d)までの工程、(h)から(i)又は(j)以降の工程のことを言う。また、図1の(i)、(j)の状態で培養を行う工程、図2の(a)から(b)への工程、図2の(c)から(d)への工程である。
液面上での培養工程によって、液面上に微細藻類からなるバイオフィルムが形成される。
培養工程は、液面上にバイオフィルムを形成した後に、これらの構造物がさらに増殖する工程も含むものとする。また、一般的には、フィルム状の構造物を形成した後に、三次元状の構造物を形成するが、これらの過程も培養工程に含むものとする。
培養工程では、振盪培養を行ってもかまわない。これは、静置培養よりは微細藻類の数が少ないものの、液面上に微細藻類からなるバイオフィルムの形成が振盪培養を行っても可能だからである。しかし、液面上の微細藻類からなるバイオフィルムの増殖数を向上させる目的から、静置培養を行うことが好ましい。また、静置培養は、従来のような浮遊培養と異なって、振盪や攪拌などの動力が不要であり、動力エネルギー及び動力発生装置が不要であるため、コストを大幅に低減できることからも好ましい。
すなわち、本発明の微細藻類の培養方法は、液面上にバイオフィルムを形成可能な微細藻類を、静置培養することを含むことが上記の理由から好ましい。
[基板上での培養工程]
基板上での培養工程とは、基板に付着したバイオフィルムの増殖を行う工程を言う。本培養工程では、振盪培養を行っても良いし、静置培養を行っても良い。また、培地に対して液流を発生させても良い。
[微細藻類の分布状態]
第一の培養において、本発明の培養方法を用いた微細藻類の培養では、基板を用いたバイオフィルムの回収を行う直前の微細藻類の分布状態は、液中の微細藻類の個数が、液面上の微細藻類の個数又は培養容器底面に沈積している微細藻類の個数と比較して少ないことが特徴である。また、この時の分布状態では、液面上の微細藻類の個数の方が培養容器底面に沈積している微細藻類と比較して多い方が好ましいが、必ずしもこの限りではない。なおここでいう微細藻類の個数には、顕微鏡を用いての観察が困難な、微細藻類の細胞から発生する遊走子は含まれないものとする。
第二の培養において、培養中の微細藻類の分布状態は、基板の近傍のみに存在していることが好ましい。これは、基板と基板との間の培地が存在する部位に、高濃度の微細藻類が存在していると、培養容器の水深が深い部分に光が十分に届かなくなる可能性があるからである。また、液面上に微細藻類からなるバイオフィルムが存在していても良い。ただし、この場合には、バイオフィルムが三次元状の構造物を形成していても良いが、フィルム状の構造物を形成しているほうが好ましい。これは、三次元状の構造物の場合、微細藻類の存在量が多く、基板に付着させた微細藻類への光の供給量の減少の度合いが大きいからである。フィルム状の構造物の場合には、基板に付着させた微細藻類への光の供給量を十分に行うことができる。なお、培養容器の側面や底面、基板を保持させるための構造物の表面に微細藻類が存在しないほうが好ましいが、存在しても良いものとする。
なお、液中における個数とは、液面と、培養容器の底面との中間点近傍で数えられた微細藻類の個数のことをいい、一立方センチメートルあたりの微細藻類の個数を言う。また、液面上、又は培養容器の底面近傍の微細藻類の個数とは、一平方センチメートルあたりの微細藻類の個数のことを言うものとする。なお、微細藻類の個数は、微細藻類の重量、乾燥重量や濁度など、微細藻類を定量可能な方法で置き換えることができるものとする。
[静置培養]
本発明で言う静置培養とは、微細藻類を意識的に移動させない状態で培養する培養法のことをいう。すなわち、例えば、局所的な培地温度の変化に伴って、培地が対流し、その流れによって、微細藻類が移動することがあるが、意識的に微細藻類を移動させていないことから、この様な場合も含めて、本発明では静置培養というものとする。
[付着培養]
本発明で言う付着培養とは、基板表面又は培養容器壁面に微細藻類が付着した状態で培養することを言うものとする。図1の(i)又は(j)の状態を付着培養というものとする。なお、本発明では、液面浮遊培養によって得られたバイオフィルムを基板に転写することによって得られたものに限定して用いることができる。
[浮遊培養]
本発明では、微細藻類を基板、液面、培養容器側面や底面以外の培地中に実質的に分散させた状態で培養することを浮遊培養と呼んでいる。
[液面浮遊培養]
本発明では、第一の培養において、液面上で微細藻類を培養する培養方法のことを液面浮遊培養と言う。なお、培養容器底面や培地中に微細藻類が同時に存在していても、液面浮遊培養という。また、液面浮遊培養は、液面に付着して培養していると考えることもできるため、本発明では、付着培養の一種であると扱うこともある。
また、本発明での液面浮遊培養を行っていると、液面上のバイオフィルムから液中へと微細藻類の集合体が侵入する現象が見られることがある。本発明では、この様な状況での培養も液面浮遊培養に含むものとしている。
本発明において、液面浮遊培養を行うと共に、上述の浮遊培養及び付着培養のいずれか一方又は両方を同時に行うことができる。
以上のように、本発明では微細藻類を培養する液体培地中の場所に応じて、上述のように培養方法の名称を区別したが、上述のようにこれらは同時に行うことが可能である。すなわち、例えば、微細藻類を液面上で培養すると同時に液中に分散させた状態でも培養している場合には、液面浮遊培養と浮遊培養とを同時に行っていると言う。
[湿潤培養]
湿潤培養とは、第二の培養において、基板上に付着している微細藻類の置かれている環境因子の中で、湿度が基板上の微細藻類の生育に必要な水分が培養期間中保持可能な状態で培養することを言う。例えば、この様な湿度としては、50%以上が好ましく、70%以上がさらに好ましく、80%以上が最も好ましい。湿度が50%以上であると、基板上の微細藻類の生存に必要な水分を失うことなく、長時間の培養が可能である。なお、湿度の上限値は100%である。また、基板上の微細藻類の一部は、液体と接触可能な状態で培養しても良いし、液体と接触させずに培養容器の中に液体を配置しても良い。この様にすることによって、気相中の湿度が低下したときに、液相からの水分の供給が可能となり、高湿度を維持することが可能だからである。ただし、1つの培養容器の中に設置している基板上の微細藻類の個数の少なくとも80%以上が液体状の培地と接していない状態で培養する必要がある。
[培地(液体培地)]
本発明では、微細藻類を培養できる限り、いかなる培地(液体培地)も使用することが可能である。なお、培地は、培養する微細藻類の種類に応じて選択することが望ましい。例えば、前述のAVFF007株(図7)、すなわちBotryococcus sudetics AVFF007は淡水で生育するため、培地は淡水性であることが好ましい。公知の培地として、淡水性のものはAF−6培地、Allen培地、BBM培地、C培地、CA培地、CAM培地、CB培地、CC培地、CHU培地、CSi培地、CT培地、CYT培地、D培地、HUT培地、M−11培地、MA培地、MAF−6培地、MDM培地、MG培地、MGM培地、MW培地、P35培地、URO培地、VT培地、VTAC培地、VTYT培地、W培地、SW培地、SOT培地などがあり、海水性のものとしては、ESM培地、f/2培地、MF培地、MKM培地、MNK培地、WESM培地などを挙げることができる。前述のAVFF007株を培養する培地としては、C培地、CSi培地、CHU培地、及びこれら培地の混合物が好ましく、C培地、CSi培地及びこれら培地の混合物がより好ましい。
培地は、紫外線滅菌、オートクレーブ滅菌、フィルター滅菌しても良く、しなくても良い。
なお、本発明では、液体培地にカルシウムが含まれていることが好ましい。カルシウムが培地に入っていると、微細藻類の増殖速度が向上し、液面上のバイオフィルムの形成が容易となるからである。液体培地中のカルシウム濃度は、特に限定されないが、下限値は、好ましくは0.3mM以上であり、より好ましくは0.5mM以上である。液体培地中のカルシウム濃度の上限値は、特に限定されないが、通常100mM以下であり、好ましくは5mM以下である。
[第一の培養での水深]
本発明で使用する第一の培養での液体培地の水深は、特に限定しない。水深が浅いほど水の使用量が少なく、水を移動したりするハンドリングのための煩雑さやエネルギー使用量も小さくなり、更に、培養容器の製造コストも低下するから、水深は浅い方が良い。一方、水深が深いと、表面積あたりの栄養成分が多くなることから好ましい。特に、CSiFF04培地のように、これ以上の栄養分濃度を増加させると沈殿物が多く発生してしまう培地の場合には、液面積あたりの栄養成分量を増やすことができる点から、水深は深い方が好ましい。以上から、水深は0.4cm以上が好ましく、0.5cmから10mがより好ましく、1.0cmから1mが更に好ましく、1.5cmから30cmが最も好ましい。水深が0.4cm以上であるとバイオフィルムの形成が可能となり、水深が1.0cm以上であると、液面上にバイオフィルムが形成させるまでの間に、培地の水分が蒸発することで微細藻類の培養に好ましくない状態となることが充分に避けられ、水深が10m以下であると培地や微細藻類を含む懸濁溶液のハンドリングが困難になり過ぎることを避けるとともに、液中への光の吸収のため光の利用効率が低下することを抑制することができるからである。水深が、1.5cmから30cmであると、バイオフィルムが形成されるまでの間の培地の水の蒸発が少なく、また、培地や微細藻類を含む懸濁溶液のハンドリングが容易となり、水や培地中に極微量存在する微細藻類による光の吸収が最小限となることから光の利用効率が良くなる。また、水深が浅いほど二酸化炭素の供給が容易となり、光合成によって生成した酸素の大気中への放出が容易となる。
[第二の培養での水深]
本発明で使用する第二の培養での液体培地の水深は、特に限定されないが、水深が深い方が好ましい。これは、水深が深いほどより光量の有効活用が可能だからである。水深は1cm以上が好ましく、5cmから100mがより好ましく、10cmから10mが更に好ましく、1mから5mが最も好ましい。水深が1cm以上であるとバイオフィルムの形成が可能となり、水深が1m以上であると、光のエネルギーをより有効に活用することができ、水深が100m以下であると底部での光量低下による増殖速度の低下を回避することができる。水深が、1mから5mであると、光量を有効に活用することができ、単位面積あたりの藻体量が多くなる。
[第一の培養での二酸化炭素]
本発明では、培地中に意図的に二酸化炭素を供給する手段を用いずに培養する方が好ましい。すなわち、培地中への二酸化炭素を含む気体をバブリングによって供給する方法は用いない方が好ましい。これは、液面上の微細藻類からなるバイオフィルムが、バブリングにより破壊されるのを防ぐためである。但し、破壊が部分的である場合には、バブリングによって二酸化炭素を供給しても良いものとする。バブリングを用いない方法は、二酸化炭素を供給するガスの配管を設置する必要がないこと、二酸化炭素供給源、例えば、火力発電所や製鉄所などの周辺の土地の確保が一般的には困難であること、広大な面積に対して均一に二酸化炭素を供給するための制御が非常に困難であることなどから、気相中の二酸化炭素を直接使用できることは、大幅なコストダウンにつながることから非常に有利である。
本発明では、意図的に二酸化炭素を培地内へと供給する手段を用いない方が好ましいとしているが、気相中の二酸化炭素が液面上の微細藻類又は微細藻類の存在していない領域を経由して、培地内へと二酸化炭素が供給される場合は、前記の手段に相当しないものと定義している。なお、液面上に微細藻類から構成されたフィルム状の構造物が形成される前は、培地の液面と二酸化炭素を含む気体とが直接接触している部分が多く存在しているが、この場合には、液面を介して二酸化炭素が培地中へと溶解するが、これは意図的に二酸化炭素を供給していると言わないものとする。また、液面上にバイオフィルムが形成された後でも、バイオフィルムを経由して、二酸化炭素が培地中に溶解するが、この場合も意図的に二酸化炭素を培地中へと供給していないものとする。
本発明では、大気中の二酸化炭素を使用することが、コスト面で有利であることから望ましいが、大気中濃度よりも高い濃度の二酸化炭素の利用も可能である。この場合には、拡散による二酸化炭素の損失を防ぐために、閉鎖型の培養容器で培養することが望ましい。この場合における気相中の二酸化炭素の濃度は本発明の効果が達成できる限り特に限定されないが、好ましくは大気中の二酸化炭素濃度以上20体積%未満でありより好ましくは0.1〜15体積%であり、0.1〜10体積%の範囲が最も好ましい。なお、大気中の二酸化炭素の濃度は、一般に約0.04体積%と言われている。
さらに、大きく成長して欲しい微細藻類が液面上に存在することから、気相中の二酸化炭素を取り込みやすくなる利点もある。
[第二の培養での二酸化炭素]
第二の培養では、二酸化炭素を培地中に導入することが可能である。これは、液面上に浮遊しているバイオフィルムと異なり、基板表面に付着しているバイオフィルムの構造が破壊されにくいためである。また、バブリングなどの二酸化炭素を含む気体の導入により、液面上が乱れ、その結果、液面上にバイオフィルムが発生しにくくなる。これにより、基板上に付着させた藻類の増殖に必要な光量を確保することができる。また、第二の培養では、単位面積あたりの微細藻類バイオマス量が多くなることから、水深が深い方が好ましい。水深が深いと、自然対流のみでは、二酸化炭素を培養容器深部に供給するには長時間を要する。バブリングによって二酸化炭素を培養容器深部に供給することが可能となる。また、二酸化炭素の導入によって、微細藻類の増殖速度を好適に向上させることが可能である。以上から、第二の培養では、培養容器中に二酸化炭素を導入することも可能である。
二酸化炭素の導入法は、公知のいかなる方法を用いることも可能であるが、細菅を用いて培地中に導入しても良いし、配管の先に多孔質の気泡発生部位を持つ配管を用いることもでき、後者の方が、より基板上に付着しているバイオフィルムへの影響が小さいこと及び気泡のサイズが小さいことによる培地中への二酸化炭素の溶解速度の向上の点からより好ましい。
二酸化炭素の供給は、大気を用いても良いが、より増殖速度を向上させることが可能であることから、大気中濃度よりも高い二酸化炭素を使用する方が好ましく、本発明の効果が達成できる限り特に限定されないが、好ましくは大気中の二酸化炭素濃度以上、20体積%未満であり、好ましくは、0.1〜15体積%であり、より好ましくは0.1〜10体積%である。
[その他培養条件]
培養開始直後の液体培地(培養溶液)のpHは5〜9の範囲内であることが好ましく、より好ましくはpHが5〜7の範囲内であり、更に好ましくはpHが5以上7未満であり、特に好ましくはpHが5〜6の範囲内である。これは、微細藻類の増殖速度を好適に増加させることができるとともに、図3に示す組成を有するCSiFF03培地のような高いpHで沈殿物を発生し易い培地は、弱酸性にすると沈殿物の発生を抑えることができるからである。また、底面上の藻と比較して、液面上の藻の数が多くなることからも、弱酸性条件下で培養を行うことが望ましい。また、微細藻類の種類に依存して、好適なpHは変化することから、微細藻類の種類に応じたpHを選択するのが好ましい。なお、培養開始直後と培養開始後のpHは、微細藻類の増殖に伴って変化する場合があることから、培養開始直後の液体培地のpHは、微細藻類の回収時のpHと異なっていても良いものとする。
培養温度は、微細藻類の種類に応じて選択することができるが、0℃以上90℃以下であることが好ましい。より好ましくは、15℃以上50℃以下であり、特に好ましくは、20℃以上40℃未満である。培養温度が20℃以上40℃未満であると、微細藻類の増殖速度が十分速い。
第一の培養において、微細藻類の下限初期藻体濃度は、培養溶液中に藻体が1個あれば、時間をかけさえすれば増殖は可能であるため、その制限は特に設けないが、好ましくは1個/mL以上であり、より好ましくは1000個/mL以上であり、更に好ましくは1×10個/mL以上である。微細藻類の上限初期藻体濃度は、どの様な高濃度でも増殖が可能であるため、その制限は特に設けないが、ある濃度以上であると藻体濃度が高ければ高いほど、投入藻体数と増殖後の藻体数の比が低下することから、10000×10個/mL以下が好ましく、1000×10個/mL以下がより好ましく、500×10個/mL以下が更に好ましい。
第二の培養において、基板上の微細藻類の下限初期藻体濃度は、基板上に藻体が1個あれば、時間をかけさえすれば増殖は可能であるため、その制限は特に設けないが、好ましくは0.1μg/cm以上1g/cm以下であり、より好ましくは1μg/cm以上10mg/cm以下であり、更に好ましくは10μg/cm以上1mg/cm以下であり、最も好ましくは0.09mg/cm以上1mg/cm以下である。
0.1μg/cm以上であれば、基板上のバイオフィルムの増殖が好適に行われ、1g/cm以下であれば、基板上からバイオフィルムが全部又は部分的に脱離することなく増殖を行うことができる。
本発明では、第一の培養において、液面浮遊培養する場合の前培養期間は、1日以上300日以下が好ましく、3日以上100日以下がより好ましく、7日以上50日以下が更に好ましい。
第一の培養において、液面浮遊培養の期間としては、当該微細藻類が生育する限り培養を継続することができ、通常、1〜100日間で行うことが好ましく、7〜50日間で行うことがより好ましく、10〜30日間で行うことが更に好ましい。
第二の培養において、壁面培養又は水平培養の期間としては、当該微細藻類が生育する限り培養を継続することができ、通常、1〜100日間で行うことが好ましく、7〜50日間で行うことがより好ましく、10〜30日間で行うことが更に好ましい。
本発明では、培地中のpHを一定に保つ緩衝作用を持った物質を培地中に添加することも可能である。一般的に、微細藻類は生存や増殖に伴って菌体外に様々な物質を放出することが知られているが、放出する物質によっては、培地中のpHを変化させ、微細藻類の培養が好適に行われないような環境へと変化してしまうことも考えられる。この様な現象を回避するために、緩衝作用を持った物質を添加することが好ましい。更に、微細藻類は二酸化炭素を炭素源として利用し、増殖するが、二酸化炭素の培地中への溶解に伴って、培地のpHが低下し、微細藻類の培養が好適に行われないような環境へと変化してしまうことも考えられる。この様な現象を回避するためにも、緩衝作用を持った物質を添加することが好ましい。緩衝作用を持った物質としては、公知の物質を使用することができ、その使用には制限がないが、4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid(HEPES)や、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液などを好適に用いることができる。これら、緩衝物質の濃度や種類は、微細藻類の培養環境に応じて決めることができる。
[培養容器]
本発明で用いることのできる培養容器(培養池)の形状は、微細藻類の懸濁溶液を保持できる限りにおいて、公知のいかなる形態の培養容器でも用いることができる。例えば、円柱状、方形状、球状、板状、チューブ状、プラスチックバッグなどの不定形状のものを使用することができる。また、本発明で使用可能な培養容器は、オープンポンド(開放池)型、レースウェイ型、チューブ型(J. Biotechnol., 92, 113, 2001)など様々な公知の方式を用いることができる。培養容器として、使用することの可能な形態は、例えば、Journal of Biotechnology 70 (1999) 313−321, Eng. Life Sci. 9, 165−177 (2009)に記載の培養容器をあげることができる。これらの中で、第一の培養および第二の培養では、オープンポンド型又はレースウェイ型を用いることが、コスト面からは好ましい。
本発明で使用可能な培養容器は、開放型、閉鎖型のいずれも使用することができるが、培養目的以外の微生物やゴミの混入防止、培地の蒸発抑制、風による液面上のバイオフィルム(微細藻類構造物)の破壊や移動の防止、大気中の二酸化炭素濃度以上の二酸化炭素を使用した際の、培養容器外への二酸化炭素の拡散を防ぐために、閉鎖型の培養容器の方が好適に用いることができる。
[光源及び光量]
前記光照射において用いることのできる光源は、公知のいかなる光源も用いることができるが、太陽光、LED光、蛍光燈、白熱球、キセノンランプ光、ハロゲンランプなどを用いることができ、この中でも、自然エネルギーである太陽光、発光効率の良いLED、簡便に使用することのできる蛍光燈を用いることが好ましい。
光量は、100ルクス以上100万ルクス以下であることが好ましく、300ルクス以上50万ルクス以下が更に好ましい。最も好ましい光量は、1000ルクス以上、20万ルクス以下である。光量は、多ければ多いほど微細藻類の増殖速度が向上するため好ましいが、1000ルクス以上であると、微細藻類の成長速度が充分に速く、20万ルクス以下であると、光障害の発生が抑えられ、微細藻類の増殖速度が減少したり、死滅する割合の増加を充分に抑えることができる。第二の培養においては、第一の培養と比較して、光量を分散して受光することが可能であるため、より高い光量を用いることが可能である。
光は、連続照射、及び、ある一定の時間間隔で照射、非照射を繰り返す方法のいずれでもかまわないが、自然の状態に近いことから、12時間間隔で光をON、OFFすることが好ましい。なお、実験の結果から、液面浮遊培養は、培養開始直後は、連続照射が、培養中期から培養後期には、12時間間隔で光をON、OFF照射することが好ましい。
光の波長は、特に制限を設けないが、光合成が行える波長であれば、どの様な波長でも用いることができる。好ましい波長は、太陽光又は太陽光に類似の波長であるが、単一の波長を照射することで光合成生物の育成速度が向上する例も報告されており、本発明でもこの様な照射方法を用いることが好ましい。
一方でコストの観点では、単一の波長の光を用いた照射よりも、波長を制御しない光を用いた照射がコスト的に有利であり、太陽光を用いるのがコストの観点では最も有利である。
[バイオフィルム]
バイオフィルムとは、通常、フィルム状の構造物であり、微細藻類がお互いにつながりあうことで、フィルム状の構造を形成している状態のことを言う。微細藻類がお互いにつながりあうためには、例えば、微細藻類から細胞間マトリックスなどのような物質を放出し、それらの化学的な作用によって、微細藻類同士を結び付けている。すなわち、弱い水流の動き程度ではお互いが離れない程度に結合している状態のことを言う。一般的には、この様なフィルム状の構造物のことを生物膜などと表記される場合も多い。
バイオフィルムは、液面上に形成されたバイオフィルムと基板上に形成されたバイオフィルムがある。
[液面上に形成されたバイオフィルム]
本発明の微細藻類の培養方法により、液面上に形成されたバイオフィルムは、培養容器全面に渡って、微細藻類凝集物の切れ目がない均一なフィルム状の構造物であっても良いが、そのようなフィルム状の構造物の一部が気泡状に盛り上がり形成された立体的な三次元状の構造物であっても良い。また、このような立体的な三次元状の構造物の一部が、更に気泡状に盛り上がり形成された複雑な構造物であっても良い。フィルム状構造物の一部が気泡状に盛り上がる現象は、微細藻類の増殖の進行に伴って観察される。
気泡状に盛り上がり形成された立体的な三次元状の構造物は、培養容器内に多数あっても良く、それぞれのサイズは異なっていても良い。
また、微細藻類の増殖の進行に伴って、フィルム状の構造物には、しわ状の構造が表れることがあるが、フィルム状の構造物はこの様な構造を伴っていても良い。
更に、微細藻類の増殖の進行に伴って、フィルム状の構造物には、ひだ状又はカーテン状の構造を培地中に形成することがあるが、フィルム状の構造物はこの様な構造を伴っていても良い。
以上のように、フィルム状の構造物は、しわ状、ひだ状、カーテン状の構造を伴っても良く、或いは、フィルム状の構造物は気泡状の構造を伴って形成される立体的な三次元状の構造物となっても良い。
なお、本発明では、第二の培養を行うために、第一の培養でのバイオフィルムの構造は、増殖のための余地が必要であるためバイオフィルム中の藻体量が多すぎると非効率であるため、バイオフィルムの構造が三次元状よりもフィルム状の方が好ましく、バイオフィルムには、しわ状、ひだ状の構造物などを伴っていない方がより好ましい。
フィルム状の構造物の面積は、液面上に存在しているフィルム状の構造物の断片が、基板を用いて回収を行う際に、基板から液面を介して逃げない程度の面積であることが好ましく、培養容器全面に渡って、フィルム状の構造物の切れ目がないことがより好ましい。例えば、この様な面積として、1cm以上をあげることができ、好ましくは10cm以上である。最も好ましくは、100cm以上である。この様な面積の上限は培養容器の液面の面積以下であれば特に限定されない。
フィルム状の構造物の厚さは、通常、1μm〜10000μmの範囲であり、1μm〜1000μmの範囲であることが好ましく、10μm〜1000μmの範囲であることがより好ましい。
本発明に係るバイオフィルムが、フィルム状の構造物の一部又は複数の部分において気泡状に盛り上がり形成された立体的な三次元状の構造物である場合、培地の液面を基準とした該三次元状の構造物の高さは通常、0.01mm〜100mmの範囲であり、0.1mm〜20mmの範囲であることが好ましく、5mm〜20mmの範囲であることがより好ましい。
本発明に係るバイオフィルムの単位面積あたりの乾燥藻体重量は、0.001mg/cm以上であることが好ましく、0.1mg/cm以上であることがより好ましく、1mg/cm以上であることが特に好ましい。最も好ましくは、5mg/cm以上である。単位面積あたりの乾燥藻体重量が大きい方が、採取されるオイルなどのバイオマスの量が大きくなることが見込まれる。バイオフィルムの単位面積あたりの乾燥藻体重量は通常100mg/cm以下である。
また本発明に係るバイオフィルム中の微細藻類の、単位面積当りの膜密度は、10万個/cm以上であることが好ましく、100万個/cm以上であることがより好ましく、1000万個/cm以上であることが特に好ましい。バイオフィルム中の微細藻類の、単位面積当りの膜密度が10万個/cm未満では、液面上にバイオフィルムの形成が確認できず、微細藻類の回収性が悪くなる。一方、バイオフィルム中の微細藻類の、単位面積当りの膜密度が1000万個/cm以上であれば、膜密度が高く、強固なバイオフィルムが液面上に形成され、回収性が向上する。バイオフィルム中の微細藻類の、単位面積当りの膜密度の上限値は、多ければ多いほど好ましいため特に限定されないが、通常、100億個/cm以下である。
[基板上に形成されたバイオフィルム]
本発明の基板上に形成されたバイオフィルムは、液面浮遊培養と異なり、主としてフィルム状の構造物が主な構造物となり、三次元状構造物やしわ状、ひだ状などの構造物は形成しにくい。なお、フィルム状構造物の中でも、基板全体にわたって微細藻類が存在していることが、基板の表面積を有効活用する観点から好ましい。
基板上のバイオフィルムの厚さは、通常、1μm〜10000μmの範囲であり、1μm〜1000μmの範囲であることが好ましく、10μm〜1000μmの範囲であることがより好ましい。
本発明に係るバイオフィルムの単位面積あたりの乾燥藻体重量は、0.001mg/cm以上であることが好ましく、0.01mg/cm以上であることがより好ましく、0.1mg/cm以上であることが特に好ましい。最も好ましくは、1mg/cm以上である。単位面積あたりの乾燥藻体重量が大きい方が、採取されるオイルなどのバイオマスの量が大きくなることが見込まれるからである。バイオフィルムの単位面積あたりの乾燥藻体重量は通常10mg/cm以下である。
また本発明に係るバイオフィルム中の微細藻類の、単位基板表面積当りの膜密度は、1000個/cm以上であることが好ましく、10万個/cm以上であることがより好ましく、100万個/cm以上であることが特に好ましい。バイオフィルム中の微細藻類の、単位面積当りの膜密度が1000個/cm未満では、基板上にバイオフィルムの形成が確認できず、微細藻類の回収性が悪くなる。一方、バイオフィルム中の微細藻類の、単位面積当りの膜密度が100万個/cm以上であれば、膜密度が高く、強固なバイオフィルムが基板上に形成され、回収性が向上する。バイオフィルム中の微細藻類の、単位面積当りの膜密度の上限値は、多ければ多いほど好ましいため特に限定されないが、通常、1億個/cm以下である。
また本発明に係るバイオフィルムは、バイオマスとしての有用性の観点から、オイル含有量が高いことが好ましい。具体的には、バイオフィルムの乾燥藻体あたりのオイル含有量が5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。バイオフィルムの乾燥藻体あたりのオイル含有量は通常80質量%以下である。
[培養回数]
本発明で言う培養回数とは、微細藻類培養工程の繰り返し数のことである。すなわち、図1の(d)から、(f)を経由し、(g)へ、更に、(d)にまで戻ってくる工程の繰り返し回数である。本発明では、底面に微細藻類が残っている、又は回収後も液面上に微細藻類が若干残っている、又は意図的に微細藻類を液面上に残している(図1の(c))ので、微細藻類が増殖に必要な栄養素が残っている限り、何回でも、前記の工程を繰り返すことが可能である。
これにより、培養容器の数を少なくすることができ、微細藻類を含む培養液を移動するための煩わしさから開放されることとなる。
本発明では、少なくとも一回以上の培養回数を行うことが可能である。培養回数は、微細藻類増殖のための栄養素の量、目的以外の微生物の存在状態などに依存して決められる。
また、第二の培養においても培養回数を複数回行うことが可能である。すなわち、図1の(i)又は(j)の状態で培養を行い、基板上のバイオフィルムの一部を収穫し、残したバイオフィルム付着基板を図1の(i)又は(j)のようにして培養を継続する方法である。液面浮遊培養と同じように、培地の栄養分が残存している限り、繰り返し培養することが可能である。また、培地に培地成分を含む溶液を添加することで、培地成分の不足を補うことも可能である。
[回収工程]
回収工程とは、図1の(d)から(e)に示されるように、液面上の微細藻類からなるバイオフィルムを基板に転写する工程、又は、図1の(i)又は(j)から、基板上のバイオフィルムを回収する工程のことである。なお、後者において、バイオマスとして利用する目的での回収のことを、特に最後の回収と呼ぶことがある。この工程としては、図1の(i)、(j)の基板上からバイオマスを得る方法などを挙げることができるが、この限りではない。また、本発明では、最後の回収を回収として扱う場合がある。
基板からのバイオフィルムの回収は、バイオフィルムを基板から剥離させることが可能な方法であればいかなる公知の方法を使用することもできる。例えば、重力による方法、セルスクレーパーのようなものを用いて基板からバイオフィルムを剥ぎ取る方法、水流を用いる方法、超音波を用いる方法などをあげることができるが、セルスクレーパーのようなものを用いる方法が好ましい。これは、他の方法では、バイオフィルムが培地などで薄められることになり、再度濃縮が必要な場合があり、非効率であるからである。
[バイオフィルムの転写]
本発明で言う転写とは、付着の一種で、実質的に増殖を伴わない付着である。本発明では、基板を用いて、液面上に形成されたバイオフィルムを、実質的にそのままの形で基板の表面に移し採る操作を言う。
バイオフィルムの転写は、図1の(e)に示したように、基板を用い、液面上に形成させたバイオフィルムを基板の表面へと転写させる工程である。図では、培養容器内の全面にバイオフィルムが形成されており、この様な状態で回収工程を行っているが、この様な状態での回収を行っても良いし、微細藻類からなるバイオフィルムが部分的に存在していない状態がある場合でも本発明では行うことができる。
[微細藻類を部分的に残す方法]
液面上の微細藻類から構成されたフィルム状構造物を、基板を用いて転写する工程、すなわち、図1の(d)から(e)の工程において、液面上の微細藻類を部分的に残す方法である。すなわち、液面以外の部分を除いた図1の(c)の状態を作り出す工程である。
[分割処理]
本発明で言う分割処理とは、微細藻類から構成されたフィルム状の構造物を部分的に壊し、液面上に広く分布させる操作のことである。
また、液面上に供給した微細藻類から構成されたフィルム状構造物、又はフィルム状構造物の回収後に液面上に残存させたフィルム状構造物のいずれかのフィルム状構造物を、攪拌することによって構造物をより細分化し、前記フィルム状構造物の少なくとも一部を液面上に浮かせておいてもよい。液面上に浮遊しているフィルム状構造物の破片の最外部が増殖可能な空間を有していることから、この様にすることで、その最外部を液面上に露出させ、増殖速度を増加させることができるからである。また、分割操作を行うことによって回収操作によって生じた微細藻類が存在しない領域に対して、微細藻類を存在させることが可能となり、培養容器の液面の有効活用を計ることも可能である。
[基板]
本発明でいうところの基板とは、図1の(e)、(h)、(i)又は(j)で使用する基板のことを言う。
基板の表面とは、基板のあらゆる表面のことを言い、基板の上面、基板の底面、基板の側面のことをいうものとする。なお、これらの表面に微細藻類が付着していても、培養容器などに接触しており、基板と培養容器などの表面との間に形成される層から微細藻類が培養溶液中に出ることができない場合には、本発明の表面ではないものとする。
基板の形状は、フィルム状、板状、凸状、波状などいかなる形状のものでも良いが、付着や沈着、転写などのしやすさ、および基板からの微細藻類の回収のしやすさから、フィルム状又は板状であることが好ましい。
基板の面積は、第一の培養においては、好ましくは培養容器中の培養溶液液面の面積よりも小さい方が好ましい。第二の培養においては、培養溶液液面表面積よりも基板の面積の方が大きくても、小さくてもかまわない。
[素材]
本発明で使用可能な培養容器及び基板の素材は、特に限定することはなく、公知のものを使用することができる。例えば、有機高分子化合物や無機化合物、それらの複合体から構成された素材を使用することができる。また、それらの混合物を用いることも可能である。
有機高分子化合物としては、ポリエチレン誘導体、ポリ塩化ビニル誘導体、ポリエステル誘導体、ポリアミド誘導体、ポリスチレン誘導体、ポリプロピレン誘導体、ポリアクリル誘導体、ポリエチレンテレフタレート誘導体、ポリブチレンテレフタレート誘導体、ナイロン誘導体、ポリエチレンナフタレート誘導体、ポリカーボネート誘導体、ポリ塩化ビニリデン誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体、ポリビニルアルコール誘導体、ポリエーテルスルホン誘導体、ポリアリレート誘導体、アリルジグリコールカーボネート誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体誘導体、フッ素樹脂誘導体、ポリ乳酸誘導体、アクリル樹脂誘導体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等などを用いることができる。
無機化合物としては、ガラス、セラミックス、コンクリートなどを用いることができる。
金属化合物としては、鉄、アルミニウム、銅やステンレスなどの合金を用いることができる。
上記の中でも、基板、又は培養容器の素材の一部は、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリエステルの中から選ばれる少なくとも一つから構成されていることが好ましい。
基板の素材としては、ポリエステル及び塩化ビニルが好ましい。
また、培養容器、基板の素材が同一であっても良く、異なっていても良い。
また、閉鎖型の培養容器を用いる場合には、受光面は、光が透過する素材である方が良く、透明材料であれば更に良い。
本発明の微細藻類の培養方法では、上記第二の培養において、基板として光の透過が可能な透明材料を用いることが好ましい。そのような基板としては、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリエステル等が挙げられる。
本発明の微細藻類の培養方法では、上記第二の培養において、基板を支持するための基板を用いることがあるが、その様な場合には、基板を支持できる強度を持つ材料であることが必要であり、又、光の透過が可能な透明材料であることが好ましい。 そのような基板としては、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリエステル等が挙げられ、この中でもガラスが特に好ましい。
[基板の表面凹凸]
本発明では、基板の表面に凹凸を形成させることもできる。基板の表面に凹凸を形成させることによって、付着表面積が増加すること及び藻体の付着、転写、回収安定性が向上する場合がある。
[バイオマス及びオイル]
本発明は、本発明の微細藻類の培養方法により液面上に形成されたバイオフィルムから得られるバイオマス及びオイルにも関する。
また本発明は、本発明の微細藻類の培養方法を含む、微細藻類由来のバイオマスの製造方法にも関する。
本発明において、「バイオマス」とは、化石資源を除いた再生可能な生物由来の有機性資源をいい、例えば、生物由来の物質、食料、資材、燃料、資源などが挙げられる。
本発明において、「オイル」とは、可燃性の流動性物質のことであり、主として、炭素、水素から構成された化合物のことであり、場合によっては、酸素、窒素などを含む物質のことである。オイルは、一般的に混合物であり、ヘキサンやアセトンなどの低極性溶媒を用いて抽出される物質である。その組成は、炭化水素化合物や脂肪酸、トリグリセリドなどから構成されている。また、エステル化して、バイオディーゼルとして使用するものもある。
本発明に係るバイオフィルムに含まれるバイオマス及びオイルを採取する方法としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に制限されない。
バイオマスの一例であるオイルの一般的な回収方法は、バイオフィルムを加熱乾燥させて、乾燥藻体を得た後、必要に応じて細胞破砕を行い、有機溶媒を用いてオイルを抽出する。抽出されたオイルは、一般的に、クロロフィルなどの不純物を含むため、精製を行うことができる。精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによるもの、蒸留(例えば、特表2010−539300に記載の蒸留方法)によるものなどがある。
また、高濃度の微細藻類の溶液を調製した後、超音波処理によって微細藻類を破砕したり、プロテアーゼや酵素などによって微細藻類を破砕したりした後、有機溶媒を用いて藻体内のオイルを抽出する方法もある(例えば、特表2010−530741に記載の方法)。
このように、本発明に係るバイオフィルムは、バイオマス燃料として有用である。すなわち、本発明は、本発明に係るバイオフィルムの回収方法により回収されたバイオフィルムを燃料として使用する、バイオマス燃料の製造方法にも関する。
[乾燥藻体]
本発明における乾燥藻体は、本発明にかかるバイオフィルムを乾燥させたものである。
当該バイオフィルムを乾燥させる方法としては、バイオフィルム中の水分を除去できる方法であれば特に制限されない。例えば、バイオフィルムを天日干しにする方法、バイオフィルムに乾燥空気を吹き付ける方法、バイオフィルムを凍結乾燥(フリーズドライ)する方法、加熱する方法等が挙げられる。これらのうち、バイオフィルムに含まれる成分の分解を抑制できる観点からは、凍結乾燥する乾燥方法が、短時間で効率的に乾燥できる観点からは、加熱乾燥する方法が好ましい。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
浮遊静置培養にて、培養(前培養)していた培養容器から、微細藻類AVFF007株を採取することで、培養用の微細藻類を調製した。
なお、前培養は、オートクレーブ滅菌した図4の組成を有するCSi培地と図5の組成を有するC培地との1:1混合物(体積比)が40mL入った100mL三角フラスコに、微細藻類を接種し、プラントバイオシェルフ組織培養用(株式会社池田理化、AV152261−12−2)を用いて、23℃、4,000ルクスの蛍光灯で、12時間毎にONとOFFとを切り替える光照射下で増殖させた。なお、培養は静置培養である。
第一の培養を行うために、前記の微細藻類を、ピペットを用いて採取し、5mLホモジナイズ用チューブ(株式会社トミー精工、TM−655S)に入れた後、ビーズ式細胞破砕装置(MS−100、トミー精工株式会社)にセットし、4200rpmで20秒間のホモジナイズ処理を、細胞破砕用ビーズを用いずに3回行った。これを更に20倍に上記培地を用いて希釈し、2mLホモジナイズ用チューブに入れた後、5500rpmで20秒間のホモジナイズ処理を1回、破砕用ビーズを使用せずに分散処理を行った。
この溶液を10μL採取し、カウンティング・チェンバー(アズワン株式会社、2−5390−01)を用いて藻体数を計測し、この結果に基づいて、10×10個/mLの微細藻類の分散溶液を370mL、CSi培地を用いて調製した。これを2個のスチロール角型ケース11型に、それぞれ180mLずつ調製した溶液を入れ、フタをした状態で、プラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、第一の培養を開始した。培養条件は、前培養と同一の条件を用いた。
第一の培養から5日目には、液面上に薄くフィルム状の構造物であるバイオフィルムが形成されたことから、第一の培養を終了した。スライドガラスと同一のサイズ(短辺26mm×長辺76mm)に切断しておいたポリエチレンフィルムを、それぞれのスチロール角型ケース11型に対して、9枚ずつ、互いのポリエチレンフィルムが重なり合わないように、液面に対して水平に浮かべた。しばらくしてから、片面に微細藻類(フィルム状の構造物であるバイオフィルム)が付着したポリエチレンフィルムを1枚ずつ培養容器から取り出した。
転写によって得られた微細藻類が付着したポリエチレンフィルムの中から、4枚を用いて、転写時の微細藻類の藻体数を計測した。セルスクレーパー(住友ベークライト株式会社、MS−93100)を用いて、フィルム上の微細藻類を剥ぎ取り、希釈した後、カウンティング・チェンバーを用いてカウントした。微細藻類のカウント数は、38.6×10個/cmとなった。
第二の培養は、以下の2種の方法で行った。まず、基板を地面に対して垂直方向に設置し、培養容器に培地を入れることで培養を行った。
予め180℃の熱処理を行っておいたガラス製染色バット(1−4398−01、アズワン株式会社)を4個準備し、その中に滅菌CSi培地を250mL入れた。なお、染色バットの側面は、黒紙で覆うことで遮光した。予め180℃の熱処理を行っておいた染色バット金具(1−4398−11、アズワン株式会社)に、スライドグラス(2−154−04、アズワン株式会社、短辺26mm×長辺76mm×厚み1mm)と、上述のようにして転写した微細藻類が付着したポリエチレンフィルムを重ねた積層体基板(以下、単に基板ともいう)をそれぞれのスライドガラス挿入部位に1枚ずつ、計3枚挿入した。スライドグラスを用いると、積層基板を培地中に垂直に設置しやすいためである。また、染色バット金具の溝によって、スライドグラスとポリエチレンフィルムとが離れにくい様に保持可能な構造となっているため、スライドグラスとポリエチレンフィルムとの間は接着剤などを用いて接着させなかった。なお、染色バット金具への基板の挿入位置は、1cm間隔で、中央部に挿入するようにした。また、この状態が図1の(j)の状態に相当する。なお、微細藻類は、培地に面している方向に設置した。
次に、基板を地面に対して水平方向に設置し、培養容器に培地を入れることで培養を行った。予め180℃の熱処理を行っておいた染色バット金具の中央の位置に、上記スライドグラスと、上述のようにして転写することで調製した微細藻類が付着したポリエチレンフィルムを重ねた積層体基板(以下、単に基板ともいう)を1枚挿入した。なお、染色バット金具は、90°回転させた状態で挿入した。なお、スライドグラスを用いるのは、前記垂直培養と同一の理由である。この様な染色バットを、4個準備した。また、この状態が図1の(i)の状態に相当する。なお、微細藻類は、培地に面している方向に設置した。
以上の2種の基板設置方法による培養を1週間行った。なお、培養条件は、前培養と同一条件である。
基板面積あたりの微細藻類の藻体数の結果を図8に示した。
ここで、図8において“初期付着”と表記した結果は、第一の培養で得られた液面上の微細藻類の数、すなわち、培養開始時に第2の基板上に付着していた微細藻類の数である。図8において“垂直”と表記した結果は、第二の培養として図1の(j)と同様の壁面培養(垂直培養)を、“水平”と表記した結果は、第二の培養として図1の(i)と同様の培養方法(水平培養)を1週間行った後の微細藻類の数である。
いずれの培養方法も初期付着量と比べて、藻体数が増加していることから、本実施例でのいずれの方法でも培養を行うことが可能であることが示された。また、壁面培養(垂直培養)よりも水平培養の方が藻体数が多くなっており、より好ましい培養法であることが示された。
受光面積あたりの微細藻類藻体数の結果を図9に示した。この結果が示すように、壁面培養法を用いることにより、受光面積あたりの藻体数が大幅に増加することがわかった。
なお、図21に、水平培養と垂直培養の模式図を示した。水平培養の場合、受光面積=基板面積であるため、基板面積あたりの藻体数が同一であれば、水平培養、垂直培養ともに、藻体数は同じであるが、垂直培養の場合、受光面積と基板面積とが異なるため、基板面積あたりの藻体数が同一であっても水平培養、垂直培養との間で藻体数は異なる。
例えば、垂直培養の場合の基板面積あたりの藻体数は138(図8)である。基板間隔は1cmであり、基板の長さが7.6cmであれば、基板一枚あたりの受光面積は基板面積の7.6分の1となる。従って、基板面積あたりの藻体量を受光面積あたりの藻体量に変換するためには、基板面積あたりの藻体量に7.6を掛けると良い。以上から、垂直培養の場合の受光面積あたりの藻体数は138×7.6=1048となる(図9)。
図10には、図1の(j)の状態での壁面培養(垂直培養)の様子を図示した。ポリエチレンフィルム上に微細藻類が生育しており、基板間の培地中には、目視では微細藻類の存在が確認できず、この間を通して、光が通過することで培養容器下部にも光が届くことで増殖が可能になったものと考えられる。なお、撮影のために黒紙は除去している。
[実施例2]
実施例1と同様の方法で前培養を行った。
更に、実施例1と同様の方法で、第一の培養を行った。なお、微細藻類の分散溶液は540mL調製し、スチロール角型ケース11型は3個準備した。
実施例1と同様の方法で、片面上に微細藻類(フィルム状の構造物であるバイオフィルム)が付着したポリエチレンフィルムとスライドグラスとを重ね合わせた積層体基板(以下、単に基板ともいう)を準備した。なお、基板は24枚準備し、培養期間は4日間とした。藻体量は、加熱処理による重量変化で表した乾燥藻体量を用いて測定し、その初期付着量は、0.006mg/cmであった。
第二の培養は、以下の様にして行った。予め180℃の熱処理を行っておいたガラス製染色バットを3個準備し、それぞれに滅菌したCSi培地を250mL入れた。染色バットの側面は、黒紙で覆うことで遮光した。
次に、予め180℃の熱処理を行っておいた染色バット金具に、上述のスライドグラスに、前記微細藻類が付着したポリエチレンフィルムを重ねた積層体基板(以下、単に基板ともいう)を6枚挿入し、これらをCSi培地を入れた染色バットに挿入した。なお、染色バット金具への基板の挿入位置は、1cm間隔で、中央部に挿入するようにした。また、この状態が図1の(j)の状態に相当する(すなわち、実施例2では第二の培養として壁面培養(垂直培養)を行った。)。
この様にして調製した試料を含む染色バット3個を、真空デシケーター(1−070−01、アズワン株式会社)の中にすべて入れ、二酸化炭素濃度を10%にし、プラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、23℃、4000ルクスの光量の蛍光灯下、12時間毎にONとOFFとを切り替える光照射下で培養を行った。なお、培養は静置培養で、二酸化炭素は、藻体量の評価ごとに、10%になるように再調製した。
第二の培養の培養日数と乾燥藻体量との関係の結果を図11に示した。すなわち、図11は実施例2の第二の培養(壁面培養)における微細藻類の増殖曲線を表す。なお、藻体量は、前記のように加熱乾燥による重量変化から算出した乾燥藻体量を用い、基板表面積あたりの藻体量をプロットした。培養開始後、約1週間の増殖量は少ないが、2週間までに、増殖量が急激に増加し、それ以降、増殖量の増加は微増となり、典型的な微細藻類のグロースカーブとなった。
[実施例3]
実施例1と同様の方法で前培養を行った。なお、培地としては、図6に示す組成を有するCSiFF01培地を用いた。
更に、実施例1と同様の方法で、第一の培養を行った。なお、微細藻類の分散溶液は380mL調製し、スチロール角型ケース11型は2個準備した。
実施例2と同様の方法で、片面上に微細藻類(フィルム状の構造物であるバイオフィルム)が付着したフィルムとスライドグラスとを重ね合わせた積層体基板(以下、単に基板ともいう)を準備した。なお、フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ガラスをそれぞれ3枚ずつ準備した。
次に、実施例2と同様の方法で、第二の培養を行った。なお、染色バットは4個準備し、1個の染色バットには1種類のフィルムを使用した基板を3枚ずつ設置した。
第二の培養を7日間行った後の藻体量を、フィルムの種類毎に示した結果を図12に示した。ここで、図12において“初期付着”と表記した結果は、第一の培養で得られた液面上の微細藻類の数である。
図12から明らかのように、ポリエステルフィルムと塩化ビニルフィルムとが、ポリエチレンフィルムと比較して、増殖量が多くなった。ガラスを使用した場合にはほとんど微細藻類が増殖しなかったのは、基板上に転写によって付着させた微細藻類が基板から脱離した結果と考えられる。
[実施例4]
実施例1と同様の方法で前培養を行った。なお、培養容器としては、6穴プレート(アズワン株式会社、微生物培養用プレート、1−835501)を用いた。また、培地としては、CSiFF01培地を用いた。
第一の培養を行うために、前記の微細藻類を、ポリエチレンフィルムを用いた転写によって、液面上のフィルム状構造物から採取し、予め3mLのCSiFF01培地を入れておいた6穴プレートに入れた。これをピペッティングによって分散させ、全量5mLホモジナイズ用チューブに入れた後、ビーズ式細胞破砕装置にセットし、4200rpmで20秒間のホモジナイズ処理を、細胞破砕用ビーズを用いずに3回行った。これを更に33.3倍に培地を用いて希釈し、5500rpmで20秒間のホモジナイズ処理を1回、破砕用ビーズを使用せずに分散処理を行った。
懸濁溶液中の藻体濃度は、濁度(660nmの吸光度)から算出した。なお、算出式は、予め濁度と藻体数との関係式を得ておいた後、濁度から藻体数を計算によって算出した。AVFF007株の場合には、y=115.26x+782x+25.63となった。なお、yが藻体数[単位:×10個/mL]、xが660nmでの吸光度である。この結果に基づいて、10×10個/mLの微細藻類分散溶液を240mL、CSiFF01培地を用いて調製した。これを1個のスチロール角型ケース11型に、230mLずつ調製した溶液を入れ、フタをした状態で、プラントバイオシェルフ組織培養用に設置し、培養を開始した。培養条件は、前培養と同一の条件を用いた。但し、培養期間が異なる3種を準備した。
実施例1と同様の方法で、片面上に微細藻類(フィルム状の構造物であるバイオフィルム)が付着したポリエチレンフィルムとスライドグラスとを重ね合わせた積層体基板(以下、単に基板ともいう)を準備した。なお、第一の培養の培養期間を、4日間、11日間、19日間とし、藻体の初期付着量が異なった基板を3種準備した。なお、初期付着量は、それぞれ、0.03mg/cm、0.09mg/cm、0.29mg/cmであった。
第二の培養は、実施例2と同様の方法で行った。但し、培地としてCSiFF01培地を用い、二酸化炭素濃度を5%とし、第二の培養は10日間行った。
藻体の初期付着量と乾燥藻体量との関係の結果を図13に示した。図13から明らかのように、初期付着量が、0.09mg/cm以上であれば、それ以上藻体量を増やしても微細藻類の増殖速度は向上しないことがわかった。従って、最適な微細藻類の初期付着量は、0.09mg/cm以上であることがわかった。
[実施例5]
実施例4と同様の方法で前培養を行った。なお、培地としては、図4に示す組成を有するCSi培地を用いた。
実施例4と同様の方法で第一の培養を行った。但し、スチロール角型ケース11型には、180mLの培地を入れ、第一の培養の培養期間を4日間とした。
実施例1と同様の方法で、片面上に微細藻類(フィルム状の構造物であるバイオフィルム)が付着したポリエチレンフィルムとスライドグラスとを重ね合わせた積層体基板(以下、単に基板ともいう)を準備した。なお、第一の培養の培養後に得られた微細藻類の初期付着量は、0.026mg/cmであった。
第二の培養は、実施例2と同様の方法で行った。但し、培地としてCSiFF01培地(図6)と同濃度の1×CSiFF01培地、2倍濃度の2×CSiFF01培地、5倍濃度の5×CSiFF01培地を入れた染色バットをそれぞれ用いた。また、二酸化炭素濃度を5%とし、第二の培養は7日間行った。
藻体の初期付着量と乾燥藻体量との関係の結果を図14に示した。培地濃度が濃くなるほど藻体量が多くなり、5倍以上の濃度を用いることで、好適に微細藻類が増殖できることがわかった。
[実施例6]
実施例4と同様の方法で前培養を行った。なお、培地としては、CSi培地を用いた。
実施例4と同様の方法で第一の培養を行った。但し、スチロール角型ケース11型には、230mLの培地を入れ、第一の培養の培養期間は4日間とした。培地は図3に示す組成を有するCSiFF03培地を使用した。
実施例1と同様の方法で、片面上に微細藻類(フィルム状の構造物であるバイオフィルム)が付着したポリエチレンフィルムとスライドグラスとを重ね合わせた積層体基板(以下、単に基板ともいう)を準備した。なお、第一の培養の培養期間を、4日間とし、初期付着量は、0.024mg/cmであった。
第二の培養は、実施例2と同様の方法で行った。但し、培地としてCSiFF03培地を270mL使用し、二酸化炭素濃度を5%とした。第二の培養は10日間行った。また、基板の染色バット金具への挿入間隔は、0.5cm、1.0cm、1.5cm、2.0cm、3.0cmとした。
基板の設置間隔と乾燥藻体量との関係の結果を図15に示した。基板の設置間隔が広ければ広いほど第二の培養から10日後の乾燥藻体量が増加した。これは、基板の間隔が広いほど、光量が多くなること、基板あたりの栄養成分が多くなることのいずれか一方、又は、両方が原因と考えられる。従って、基板の設置間隔は基板の鉛直方向の長さが7.6cmである場合には、3.0cm以上が好ましい。
[実施例7]
実施例1〜6までは、基板に対して微細藻類(フィルム状の構造物であるバイオフィルム)を片面のみに付着して培養した例であるが、本実施例では、基板の両面に微細藻類を付着させた場合の結果を示す。
実施例4と同様の方法で前培養を行った。なお、培地としては、CSiFF01培地を用いた。
実施例4と同様の方法で第一の培養を行った。但し、スチロール角型ケース11型には、230mLの培地を入れ、第一の培養の培養期間は4日間とした。培地はCSiFF03培地を使用した。
実施例1と同様の方法で、片面上に微細藻類(フィルム状の構造物であるバイオフィルム)が付着したポリエチレンフィルムとスライドグラスとを重ね合わせた積層体基板(以下、単に基板ともいう)を準備した。なお、第一の培養の培養期間を、4日間とし、初期付着量は、0.024mg/cmであった。
第二の培養は、実施例2と同様の方法で行った。但し、培地としてCSiFF03培地を270mL使用し、二酸化炭素濃度を5%とした。第二の培養は10日間行った。但し、両面付着の場合は、微細藻類からなるバイオフィルム、ポリエチレンフィルム、スライドグラス、ポリエチレンフィルム、微細藻類からなるバイオフィルムの順に積層して基板を構成し、片面付着の場合には、これまでと同様に基板を構成した。
第二の培養から10日目における、バイオフィルムを両面に付着させた基板と片面のみに付着させた基板との違いによる、増殖後の基板面積あたりの乾燥藻体量との関係の結果を図16に示した。
微細藻類からなるバイオフィルムを片面のみに付着させた基板を使用した培養(以下、片面付着培養と呼ぶ)の方が、両面に付着させた基板を使用した培養(以下、両面付着培養と呼ぶ)よりも藻体量が多くなった。これは、片面付着培養の方が両面付着培養よりも、受け取ることの可能な光量が多いこと、受け取ることの可能な栄養素が多いことのいずれか一方、又は、両方が原因と考えられる。
図17は、上記片面付着培養及び両面付着培養における、受光面積あたりの藻体量を図示した結果である。この場合には、両面付着培養における結果の方が、藻体量が多くなった。以上から、受光面積、すなわち、培養槽の大きさあたりの藻体量を重視する場合には、両面付着培養は有効であることがわかった。
[実施例8]
実施例4と同様の方法で前培養を行った。なお、培地としては、CSiFF01培地を用いた。
実施例4と同様の方法で第一の培養を行った。但し、スチロール角型ケース11型には、230mLの培地を入れ、第一の培養の培養期間は4日間とした。培地はCSiFF03培地を使用した。
実施例1と同様の方法で、片面上に微細藻類(フィルム状の構造物であるバイオフィルム)が付着したポリエチレンフィルムとスライドグラスとを重ね合わせた積層体基板(以下、単に基板ともいう)を準備した。なお、第一の培養の培養期間を、4日間とし、初期付着量は、0.034mg/cmであった。
第二の培養は、実施例2と同様の方法で行った。但し、滅菌CSi培地を250mL入れる代わりに、滅菌CSi培地を2mL入れ、その中に染色バットの底面の大きさに切断したろ紙を置いた(すなわち、実施例8における第二の培養は、バイオフィルムが転写された基板が、気相と接する様に培養するものである)。
但し、本実施例は、第二の培養最中に、染色バットから微細藻類が付着したポリエチレンフィルムを抜き取り、染色バットに250mLのCSiFF03培地を入れた容器に1分間浸漬した後、戻す操作を行った(すなわち、第二の培養において、バイオフィルムが転写された基板が気相と接する様に培養する際、基板を、微細藻類を増殖させることが可能な培地と間欠的に接触させた)。また、二酸化炭素濃度を5%とし、第二の培養は14日間行った。培地への浸漬及び二酸化炭素の供給は、14日間の培養期間中、合計9回行った。
また、第二の培養最中に、培地に浸漬しなかった試料(すなわち、上記のような操作を行わなかった試料)も準備し、その場合には、二酸化炭素の交換だけは同様に9回行った。
実施例8における第二の培養(培地を実質的に使用しない壁面培養)の培養最中に、バイオフィルムが付着した基板を培地に接触させる操作の有無が、増殖後の乾燥藻体量に及ぼす影響を示した結果を図18に示した。
培地に浸漬した場合(図18において“浸漬あり”と表記)と浸漬しなかった場合(図18において“浸漬なし”と表記)とを比較すると、前者の方が藻体量は多くなった。これは、後者は、培地成分が転写によって付着した藻体バイオフィルム内及び周辺しかないのに対して、前者は、培地に浸漬した際に、培地から栄養成分と代謝などによって生じた老廃物などの物質とを交換することができるためと考えている。
浸漬ありの場合、なしの場合の回収物の含水率を算出した結果、前者は89%、後者は90%であった。これは、遠心分離機を用いて回収した場合の一般的な含水率90%とほぼ同等である。
以上から、壁面湿潤培養時に、培地を新たに供給することは効果的であると考えられる。

Claims (19)

  1. 純菌化工程を経て得られた微細藻類を、第一の培養容器内の培養液中で培養することによって、前記培養液の液面上に微細藻類からなるバイオフィルムを形成させる第一の培養と、
    前記培養液の液面上に形成されたバイオフィルムの一部又は全部を基板に転写することによって回収する工程と、
    前記バイオフィルムが転写された基板を用いることで、前記微細藻類を培養する第二の培養とを含む、微細藻類の培養方法。
  2. 前記第二の培養において使用する第二の培養容器が、前記第一の培養容器と同一であるか、又は、異なる培養容器である、請求項1に記載の微細藻類の培養方法。
  3. 前記第二の培養として、前記バイオフィルムが転写された基板を用いて壁面培養する、請求項1又は2に記載の微細藻類の培養方法。
  4. 前記第二の培養として、前記バイオフィルムが転写された基板を用いて水平培養する、請求項1又は2に記載の微細藻類の培養方法。
  5. 前記第二の培養において、前記バイオフィルムが転写された基板が、気相と接する様に培養する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  6. 前記第二の培養において、前記バイオフィルムが転写された基板が気相と接する様に培養する際、該基板を、微細藻類を増殖させることが可能な培地と間欠的に接触させる、請求項5に記載の微細藻類の培養方法。
  7. 前記第二の培養において、基板の両側にバイオフィルムが転写された基板を用いる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  8. 前記第二の培養において、基板として光の透過が可能な透明材料を用いる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  9. 前記第二の培養において、前記バイオフィルムが転写された複数の基板を、一つの培養容器内に設置し、該複数の基板の間隔が少なくとも5mm以上である、請求項1〜3及び5〜8のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  10. 前記複数の基板の間隔が、1cm以上である、請求項9に記載の微細藻類の培養方法。
  11. 前記第一の培養及び第二の培養が共に静置培養である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  12. 前記微細藻類が緑藻である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  13. 前記微細藻類がオイルを含む微生物である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  14. 前記微細藻類が、ボツリオコッカス属(Botryococcus sp.)である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
  15. 前記微細藻類が、ボツリオコッカス スデティクス(Botryococcus sudeticus) AVFF007株(受託番号FERM BP−11420)である、請求項14に記載の微細藻類の培養方法。
  16. 請求項1〜15のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法により、液面上に形成されたバイオフィルム。
  17. 請求項16に記載のバイオフィルムから得られるバイオマス。
  18. 請求項16に記載のバイオフィルムから得られるオイル。
  19. 請求項1〜15のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法を含む、微細藻類由来のバイオマスの製造方法。
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