JP2012000026A - 光合成微生物の付着培養方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】光エネルギーの利用効率が高く、高効率培養可能な光合成微生物の付着培養方法の提供。
【解決手段】波長変換機能を有する化合物を含む基材上に光合成微生物を付着させる工程と、前記光合成微生物に第1の光を照射する工程とを含み、前記第1の光と、前記第1の光が前記波長変換機能を有する化合物により波長変換されて生じた第2の光とが前記光合成微生物に照射される光合成微生物の付着培養方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、光合成微生物の付着培養方法に関する。
光合成微生物から産生されるバイオマスには有用なものが多く、盛んに研究が行われている。例えば、微細藻類などの光合成微生物の中にはオイルを蓄積する種類も存在することから、光合成微生物を利用した石油の代替燃料を産生する方法の開発が期待されている。また、光合成生物は、基本的には光のエネルギーのみを用いて、地球温暖化の原因物質として注目されている二酸化炭素を固定化することでも注目されている。
しかしながら、光合成微生物は、大腸菌などの非光合成微生物と比較して増殖速度が非常に遅い点で問題である。例えば、大腸菌は数十分で1回分裂するのに対し、オイルを蓄積する微細藻類の1種であるBotryococcus Brauniiは、1回の分裂に要する日数が数日から数週間かかることが知られている。
光合成微生物を培養する方法として、液体浮遊培養が広く行われている。
しかしながら、液体浮遊培養には、微生物のサイズが小さく、水溶液中に分散しているために、水溶液から回収するコストが高いという問題がある。
これらの要因により、光合成微生物からのバイオマス生産が商業化されている例は、未だ少なく、例えば、増殖速度の極めて速いクロレラ、スピルリナなどからのタンパク生成、他の微生物が生息しづらい高塩濃度下で生育するドナリエラからのβ−カロチン生成、バイオマス産物が極めて高価なヘマトコッカスからのアスタキサンチン生成の数例が報告されてはいるものの、依然として、商業的規模での光合成微生物の大量培養を行うためには、多くの問題を解決する必要があり、特に、さらなる光エネルギーの利用の効率化が求められている。
一方、プラスチック板などの担体を用いて光合成微生物を固定化して培養する方法が知られている。
しかしながら、従来の光合成微生物を固定化して培養する方法は、光エネルギーの利用効率が低いため、光合成微生物の大量培養には適さないという問題がある。
さらに、光合成の効率を高める目的で、太陽光又は人工光源から発する光を光ファイバーなどにより培養系内に導入して培養する方法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、光合成に有効な特定の波長を有する光を選択的に照射することが検討されている。例えば、発光ダイオード(LED)を用いる方法(例えば、特許文献3及び非特許文献1参照)がある。また、蛍光物質などを用いて、太陽光の一部を光合成に有効な特定の波長を有する光へと変換して光合成微生物に照射することで、光合成生物の成長を効率化する試みも行われている(例えば、特許文献4〜8参照)。
しかしながら、このような方法を用いても、依然として商業的規模での生産を行うにはコストがかかりすぎるという問題がある。そこで、より光エネルギーを効率的に利用する新たな方法が求められていた。
特開平7−184630号公報 特開平5−064577号公報 特開2008−237067号公報 特開平9−249775号公報 特開平6−038635号公報 特開平7−123870号公報 特開平7−149736号公報 特開平9−249773号公報
Biotechnology and Bioengineering, 50, 98−107(1996)
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、光合成微生物を付着培養する方法において、従来よりも光エネルギーの利用効率が高く、高効率培養可能な方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を解決すべく、鋭意検討した結果、光合成微生物を、波長変換機能を有する化合物を含む基材上に付着させて培養することにより、従来よりも光エネルギーの利用効率が高く、光合成微生物の増殖速度が向上することを見出し、本発明の完成に至った。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 波長変換機能を有する化合物を含む基材上に光合成微生物を付着させる工程と、
前記光合成微生物に第1の光を照射する工程とを含み、前記第1の光と、前記第1の光が前記波長変換機能を有する化合物により波長変換されて生じた第2の光とが前記光合成微生物に照射されることを特徴とする光合成微生物の付着培養方法である。
<2> 光合成微生物が、基材の第1の光が照射される側に付着される前記<1>に記載の光合成微生物の付着培養方法である。
<3> 波長変換機能を有する化合物が、蛍光物質である前記<1>から<2>のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法である。
<4> 基材100mgに対して0.001mg〜20mgの波長変換機能を有する化合物を含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法である。
<5> 第2の光の波長が、400nm〜800nmである前記<1>から<4>のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法である。
<6> 第2の光の波長が、600nm〜750nmである前記<5>に記載の光合成微生物の付着培養方法である。
<7> 基材が、板状基材及びフィルム状基材のいずれかである前記<1>から<6>のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法である。
<8> 基材が、有機化合物、及び無機化合物の少なくともいずれかからなる前記<1>から<7>のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法である。
<9> 光合成微生物が、バイオマスを産生する能力を有する前記<1>から<8>のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法である。
<10> 光合成微生物が、微細藻類である前記<1>から<9>のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法である。
<11> 予め分散処理された光合成微生物を基材上に付着させる前記<1>から<10>のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法である。
本発明によれば、光エネルギーの利用効率が高く、高効率に光合成微生物を培養する方法を提供することができる。
図1は、アクリル板(蛍光物質有り無し)に白色LED光を照射した際の透過光スペクトルを示すグラフである。 図2は、アクリル板(蛍光物質有り無し)に付着させた藻の増殖結果を示すグラフである。 図3Aは、培養に用いたアクリル板(パネルA:蛍光物質有り)の顕微鏡写真である。 図3Bは、培養に用いたアクリル板(パネルB:蛍光物質無し)の顕微鏡写真である。 図3Cは、アクリル板に付着培養した藻(パネルC:試料1)の顕微鏡写真である。 図3Dは、アクリル板に付着培養した藻(パネルD:試料3)の顕微鏡写真である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
(光合成微生物の付着培養方法)
本発明の光合成微生物の付着培養方法は、少なくとも、付着工程と、光照射工程とを含み、さらに、必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
<付着工程>
前記付着工程は、波長変換機能を有する化合物を含む基材上に前記光合成微生物を付着させる工程である。
−光合成微生物−
前記光合成微生物としては、光合成を行う光合成微生物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸素発生型光合成を行う微細藻類、酸素非発生型光合成を行う光合成細菌などが挙げられる。
前記微細藻類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、藍藻、原緑藻等の原核生物;黄金藻、ハプト藻、黄緑藻、真眼点藻、珪藻、渦鞭毛藻、ラフィド藻、クリプト藻、緑虫藻、プラシノ藻等の真核生物;などが挙げられる。
前記光合成細菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紅色細菌、緑色非硫黄細菌、緑色硫黄細菌、ヘリオバクテリアなどが挙げられる。
また、本発明では、光合成を行う能力とともに、別の能力、例えば、有機化合物を取り込んで、従属栄養的に生育する能力を有している生物についても、光合成微生物というものとする。
前記光合成微生物としては、バイオマスを産生する光合成微生物であることが好ましい。前記バイオマスとは、化石資源を除いた再生可能な生物由来の有機性資源であり、例えば、生物由来の物質、食料、資材、燃料などが挙げられる。具体的には、ボトリオコッカス属、シュードコリシスチス・エリプソイディア(Pseudochoricystis ellipsoidea)等が産生する炭化水素、珪藻や緑藻等が産生するトリグリセリド、クロレラやスピルリナ等が産生するタンパク質、ドナリエラ等が産生するβ-カロテン、ポルフィリディウム等が産生する多糖、スピルリナ等が産生する色素、ヘマトコッカス等が産生するアスタキサンチン、ナンノクロロプシス等が産生するDHA、種々渦鞭毛藻が産生する医薬品や医薬品中間体などが挙げられる。また本発明では、光合成微生物自身もバイオマスに含まれる。これは、例えば、光合成微生物を乾燥させ、燃焼させることでエネルギーを得ることができるからである。特に、本発明で使用される光合成微生物としては、バイオマス燃料などの工業化の観点から、炭化水素を含有するボトリオコッカス属、バイオディーゼルを産出する珪藻や緑藻などが好ましい。
これらの光合成微生物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、1種以上の光合成微生物に加えて、それ以外の微生物を含んでいてもよい。1種単独を使用する場合では、得られるバイオマスの純度が高い利点がある。2種以上を併用する場合では、目的とする光合成微生物の基材表面上への付着が良好になる、共生などにより目的とする光合成微生物の生育が良好になるなどの利点がある。
併用する微生物としては、例えば、窒素固定菌が挙げられる。窒素固定菌を併用することにより、光合成微生物の栄養源となる窒素を継続的に供給することが可能となると共に、高価な窒素化合物の使用を低減できるなどの利点があり、培養の効率化及び運用コストの観点から好適である。
−波長変換機能を有する化合物−
前記波長変換機能を有する化合物としては、特定の波長を有する光によって励起され、光合成微生物の光合成に利用可能な波長を有する光を発する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光物質、りん光物質などが挙げられる。
光合成において、光エネルギーを吸収する役割を持つクロロフィルは、種々の種類があるが、400nm〜500nmの領域と600nm〜750nmの領域の波長の光をより多く吸収することが知られている。また、補助色素により、前記の波長域を含む可視光を利用可能である。さらに、光合成細菌が持つバクテリオクロロフィルは、800nm付近の波長の光を吸収することが知られている。前記光合成微生物の光合成に利用可能な波長を有する光としては、所望の光合成微生物に応じて適宜選択することができるが、400nm〜800nmの波長を有する光が好ましく、400nm〜750nmの波長を有する光がより好ましく、600nm〜750nmの波長を有する光が特に好ましい。
前記蛍光物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機系蛍光物質、無機系蛍光物質などが挙げられる。
前記有機系蛍光物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリジン化合物、アクリドン化合物、アザキノロン化合物、アザクマリン化合物、アシドアクリジン化合物、アントラセン化合物、エオシン化合物、エリスロシン化合物、オキサジアゾール化合物およびその金属錯体、オキサゾール化合物、オキシノイド化合物、オキソノール化合物、オリゴフェニレン化合物、カルバゾール化合物、キサンテン化合物、カルボシアニン化合物、キノリン化合物、キノロン化合物、クマリン化合物、クリセン化合物、クロロフィル化合物、コロネン化合物、シアニン化合物、シクロペンタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、ジスチリルベンゼン化合物、シッフ塩基、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、セレナピリリウム化合物、ダンジル系色素、チアピリリウム化合物、チオキサンテン化合物、テトラセン化合物、テルロピリリウム化合物、ナフタレン化合物、ニトロベンズオキサジアゾール化合物、2,2'−ビピリジン化合物の金属錯体、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、ピラゾリン誘導体、ピリジニウム塩、ピラゾロン誘導体、ピリリウム化合物、ピレン化合物、ピロロピロール化合物、フェナントレン化合物、ブタジエン化合物、フルオランテン化合物、フルオレセイン化合物、フルオレン化合物、ペリノン化合物、ペリレン化合物、ベンズヘテロアゾール化合物、ベンゼン化合物、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾフラザン類、ベンゾフラン系色素、芳香族アルダジエン化合物、ポルフィリン化合物、レゾルフィン化合物、レゾロフィン化合物、ローダミン化合物、III族金属との錯体、希土類錯体、量子ドットなどが挙げられる。
前記無機系蛍光物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミナ化合物、硫化亜鉛、ガドリニウム化合物、銅、アルミニウム、ユウロピウム、ガリウム化合物などが挙げられる。
前記蛍光物質としては、必要とする波長の光量を、蛍光物質を用いない場合と比較して、増強させることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DCM、DMETCI、DOCI、DODCI、DQOCI、DQTCI、HIDCI等の蛍光化合物、インドレニン、クマリン、クレジルバイオレット、シアニン、フルオレセイン、マラカイトグリーン、ナイルブルー、オキサジン、ペリレン化合物、フェノキサゾン、フェニルアラニン、フタロシアニン、ピナシアニン、ポルフィン、プロフラビン、ピリジン、ピロメテン、ローダミン、リボフラビン、スチルベン、スチリル化合物、スルホローダミン、ウラニンなどが挙げられる。中でも、ペリレン化合物が好ましく、該ペリレン化合物としては、蛍光発光するものであれば特に制限はなく、ペリレン、ペリレンレッド、ペリレンオレンジ等が挙げられる。
また、前記蛍光物質としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記りん光物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リン、イットリウム、イリジウム錯体、ポルフィリン金属錯体などが挙げられる。
また、これらの波長変換機能を有する化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−基材−
本発明において、前記「基材」とは、前記波長変換機能を有する化合物を含み、前記微生物が付着でき、一定面積を有する基材をいう。
前記基材の材質としては、特に制限はなく、光合成微生物の種類、培養の形態などに応じて適宜選択することができ、例えば、プラスチック基材等の有機化合物、ガラス基材等の無機化合物などが挙げられる。
前記プラスチック基材に使用するプラスチック素材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリイミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリ乳酸、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性、低通気性及び低吸湿性に優れているものが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ガラス基材に使用するガラス素材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ほうけい酸ガラスなどが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性、低通気性及び低吸湿性に優れているものが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記波長変換機能を有する化合物は、基材の表面に存在してもよく、基材の内部に、例えば、基材を構成する素材と前記波長変換機能を有する化合物とが混合している状態で存在していてもよい。光合成生物による侵食、光合成生物を基材から回収する際の作業による基材表面の劣化などを低減させる観点から、光合成微生物が基材に直接付着する場合には、前記波長変換機能を有する化合物は基材内部に存在することが好ましい。ただし、基材上に後述する第2の基材が存在し、光合成生物と基材とが直接接触しない場合には、基材の表面に存在してもよく、基材の内部に存在してもよい。なお、本願明細書においては、前記波長変換機能を有する化合物が、基材の表面に存在する場合も、基材の内部に存在する場合も、前記波長変換機能を有する化合物が基材に含まれると表記する。
前記波長変換機能を有する化合物の含有量としては、特に制限なく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基材100mgに対して0.001mg〜20mgが好ましく、0.01mg〜10mgがより好ましく、0.1mg〜5mgが特に好ましい。前記波長変換機能を有する化合物の含有量が、0.001mg未満であると、増殖数が少なくなることがあり、20mgを超えると、基材コストが高くなりすぎることがある。一方、前記波長変換機能を有する化合物の含有量が、0.1mg〜5mgであると、増殖数が多くなり、基材コストも適切である点で有利である。
前記基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、フィルム状、球状、半球状、不定形、糸状、繊維状、不織布状、布状、織物状、編物状、寒天状などが挙げられる。これらの中でも、光合成微生物との付着面を効率的に確保できる点で、板状、フィルム状などが好ましい。
前記基材が板状、フィルム状などの場合、その厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001mm〜1,000mmが好ましく、0.01mm〜10mmがより好ましい。
ここで、「基材上」とは、培養時に前記微生物を含む培地に接しており、前記微生物が前記基材に付着して増殖することができる前記基材表面をいう。
例えば、前記基材表面の全体が培地に接している場合は、前記基材表面の全体を基材上とする。
また、例えば、前記基材が板状であり、該板状の基材の一方の面が、例えば、培養容器の内部の底面に設置され、培地と接触していない場合は、前記一方の面を除くその他の面を基材上といい、前記板状の基材の全面が培地に接している場合は、前記板状の基材表面の全面を基材上という。
また、「一定面積」とは、前記基材上の面積をいい、前記基材の形状や培養形態などに応じて適宜選択することができるが、0.00001m〜1,000mが好ましく、0.001m〜20mがより好ましく、0.01m〜10mが特に好ましい。前記面積が、0.00001m未満であると、十分な量のバイオマス量を得ることができないことがあり、1,000mを超えると、ハンドリングが困難となることがある。
なお、前記一定面積は、個々の基材上の面積をいう。前記基材を、例えば、連結、整列させるなどにより、複数個同時に用いることができる。この場合、基板上の合計面積を基材の一定面積単位で調整することができ、光合成微生物の大量培養に好適に用いることができる。
前記基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記基材の表面が、平滑であってもよく、凹部を有するものであってもよい。
前記基材の構造は、付着表面積が増加することにより付着量が向上するという観点、及び光合成微生物の付着安定性が向上するという観点から、凹部を有することが好ましい。
前記基材の凹部の形成方法としては、用いる素材に応じて、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、エッチング処理、ブラスト処理、熱圧などが挙げられる。前記基材の凹部の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、すり鉢状、円錐状、円柱状等の穴、溝の断面形状が半円形、四角形、不定形状等の溝などが挙げられる。
前記基材の凹部の深さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001mm〜10mmが好ましく、0.01mm〜1mmがより好ましく、0.02mm〜0.5mmが特に好ましい。前記基材の凹部の深さが、0.001mm未満であると、光合成微生物の付着量の向上効果が少ないことがあり、10mmを超えると、基材の強度が低下すること、凹部に光合成微生物が入り込むことにより回収が困難になることがある。一方、前記基材の凹部の深さが、0.001mm〜10mmであると、光合成微生物の付着量の向上、光合成微生物回収性、基材強度の点で有利である。
ここで、前記「深さ」とは、各凹部における最大深さをいい、複数の凹部の最大深さの平均で表すことが好ましい。前記最大深さの平均としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10点以上の最大深さの平均であることが好ましく、20点以上の最大深さの平均であることがより好ましく、30点以上の最大深さの平均であることが特に好ましい。
光合成微生物の付着性を向上させるために、前記基材の表面に化学修飾を行ってもよい。化学修飾の方法として、公知の方法を適宜選択することができるが、シランカップリング剤による表面修飾、交互吸着法による表面修飾、グラフト重合法による表面修飾などを挙げることができる。基材表面に導入する化学修飾基は、光合成微生物への光の照射を阻害しないものであれば、用いる微生物の種類に応じて適宜選択することができる。
本発明では、前記基材(第1の基材ということがある)と光合成微生物との間に更にもう一つの基材、すなわち第2の基材を設けることができる。第2の基材に使用する素材としては、基材(第1の基材)に接触可能な追従性を持つとともに、安価で、光透過性の高い素材であることが好ましく、このような素材として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロンなどが挙げられる。このような第2の基材を設けることによって、第2の基材を含む培養装置から容易に取り外すことができ、作業性が向上する利点がある。例えば、第1の基材をアクリル基材とし、第2の基材を第1の基材よりも薄く、容易に曲げることができるポリエチレン製のプラスチックバッグとし、培養後、このプラスチックバッグを培養装置から取り外し、表面に付着した藻体を回収してもよい。第2の基材が劣化した際には、新しい第2の基材と交換し、再び培養装置内の第1の基材上に設置することで、より高価な第1の基材の劣化を最小限に防ぎ、より低コストでの生産を行うことができる。なお、本願明細書では、第1の基材へ光合成微生物を付着させて培養する場合も、第2の基材へ光合成微生物を付着させて培養する場合も、基材上での培養と表記する。
前記基材上に前記光合成微生物を付着させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一定量の光合成微生物を含む培地をピペットなどで前記基材に滴下する方法、一定量の光合成微生物を含む培地に前記基材を含浸させてから引き上げる方法、一定量の光合成微生物を含む培地を前記基材上にポンプを用いて連続的に供給する方法などが挙げられる。
ここで、前記「一定量」とは、特に制限はなく、培養形態や基材上の面積などに応じて適宜選択することができる。
前記一定量の光合成微生物を含む培地における光合成微生物の濃度としては、特に制限はなく、光合成微生物の種類などに応じて適宜選択することができるが、1×10細胞/mL〜1×10細胞/mLが好ましく、1×10細胞/mL〜1×10細胞/mLがより好ましい。前記光合成微生物の濃度が、1×10細胞/mL未満であると、前記基材上に前記光合成微生物付着層を形成しにくいことや、前記光合成微生物付着層の形成に長時間を要することなどがあり、1×10細胞/mLを超えると、前記光合成微生物付着層が厚くなりすぎ、増殖率が低下してバイオマスの生産コストが増加することがある。
前記基材上に付着させる光合成微生物の密度としては、特に制限はなく、光合成微生物の種類などに応じて適宜選択することができるが、10個/mm〜10個/mmが好ましく、10個/mm〜10個/mmがより好ましく、2×10個/mm〜2×10個/mmが特に好ましい。前記光合成微生物の密度が、10個/mm未満であると、増殖に時間がかかることがあり、10個/mmを超えると、増殖率が低下し、バイオマス産生コストが増加することがある。一方、前記光合成微生物の密度が、2×10個/mm〜2×10個/mmであると、付着後の単位時間あたりの増殖数が増加し、バイオマス産生コストが低い点で有利である。
<光照射工程>
前記光照射工程は、前記光合成微生物に第1の光を照射する工程である。
ここで、前記第1の光と、前記第1の光が前記波長変換機能を有する化合物により波長変換されて生じた第2の光とが前記光合成微生物に照射される。
前記第1の光としては、特に制限はなく、光合成微生物の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、太陽光、発光ダイオード(LED、Light Emitting Diode)光、蛍光灯光、白熱球光、キセノンランプ光、ハロゲンランプ光などが挙げられる。これらの中でも、太陽光が自然エネルギーである点で好ましく、LED光が発光効率の良い点で好ましく、蛍光灯光が簡便に使用することのできる点で好ましい。
前記第1の光の照度としては、特に制限はなく、光合成微生物の種類などに応じて適宜選択することができるが、1ルクス〜100万ルクスが好ましく、1,000ルクス〜10万ルクスがより好ましい。前記照度が、1ルクス未満であると、前記光合成微生物が光合成を十分に行うことができないことがあり、100万ルクスを超えると、光障害により、前記光合成微生物の増殖速度が低下したり、死滅したりすることがある。
前記照度を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の照度計を用いて測定する方法などが挙げられる。
前記第1の光の照射は、連続的であってもよく、例えば、光照射あり12時間及び光照射なし12時間などの明暗サイクル下で行ってもよく、光の照度の強弱をつけたサイクル下で行ってもよく、用いる光合成微生物に応じて適宜選択できる。また、第1の光として太陽光などを利用する場合には、基材に対して直接照射してもよく、第1の光と基材との間に農業用被覆フィルムなどを介在させて第1の光の照度などを調節してもよい。
前記第2の光は、前記第1の光、及び前記第1の光に含まれる特定の波長を有する光のいずれかが前記波長変換機能を有する化合物により波長変換されて生じた光であり、前記光合成微生物の光合成に利用可能な波長を有する光である。前記第2の光としては、所望の光合成微生物に応じて適宜選択することができるが、400nm〜800nmの波長を有する光が好ましく、400nm〜750nmの波長を有する光がより好ましく、600nm〜750nmの波長を有する光が特に好ましい。前記第2の光の波長が、400nm未満であるか、800nmを超えると、光合成微生物の光合成効率が低下することがある。
−付着培養−
前記光合成微生物を前記基材上で付着培養する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光合成微生物が付着した基材を空気中湿潤状態で培養する方法、培養容器内に光合成微生物が付着した基材を浸漬して培養する方法などが挙げられる。
前記光合成微生物の付着培養に用いる培地としては、特に制限はなく、光合成微生物の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、窒素源、ビタミン、微量元素等の増殖に必要な栄養源を含む培地などが挙げられる。前記光合成微生物が前記微細藻類である場合、その付着培養に用いる培地としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機物及び水を含む培地などが挙げられる。前記微細藻類の付着培養に用いる培地の具体的な例としては、後述する実施例に記載の培地などを用いることができる。また、これらの培地は、有機物を含んでいてもよい。
前記付着培養に用いる培地のpHとしては、特に制限はなく、光合成微生物の種類などに応じて適宜選択することができる。
ここで、「空気中湿潤状態」とは、前記基材上の光合成微生物付着層が乾かない状態を表す。空気中の湿度が、前記光合成微生物付着層が乾かない程度であれば、前記基材上に付着した前記光合成微生物をそのままの環境で培養することができる。また、例えば、前記光合成微生物付着層が乾く環境である場合は、必要に応じて、培地、水などを適宜補充して空気中湿潤状態を保持する。培地、水などの溶液を補充する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記溶液をピペットなどで前記基材に滴下する方法、前記溶液に前記基材を含浸させてから引き上げる方法、前記基材上にポンプを用いて前記溶液を少しずつ供給する方法などが挙げられる。また、湿潤箱内で前記基材に前記光合成微生物を含む培地を補充して培養する方法を用いてもよい。
前記付着培養における培養温度としては、特に制限はなく、光合成微生物の種類などに応じて適宜選択することができるが、0℃〜100℃が好ましく、15℃〜40℃がより好ましい。前記培養温度が、0℃未満又は100℃を超えると、前記光合成微生物が育成できないことがある。
前記付着培養を行う培養期間としては、特に制限はなく、光合成微生物の種類などに応じて適宜選択することができる。
前記付着培養における二酸化炭素濃度としては、特に制限はなく、光合成微生物の種類などに応じて適宜選択することができるが、0.001%〜50%が好ましく、1%〜10%がより好ましい。前記二酸化炭素濃度が、0.001%未満であると、前記光合成微生物が光合成を十分に行うことができないことがあり、50%を超えると、pHの低下により、前記光合成微生物が育成できないことがある。
空気中湿潤状態で付着培養する場合、空気中の二酸化炭素を効率的に使用することができるため、液体培養において通常行われている二酸化炭素や空気の培地中へのバブリングなどが不要となり、設備の稼動コストなどの観点から好ましい。
前記基材は、培養装置の中に設置されていてもよく、培養装置の本体(内壁面)を構成していてもよい。また、前記基材は、光源に対してどの様な角度で設置されていてもよいが、培養面積を多く使用することができ、基材面積当たりの収量を多くする場合には、光に対して垂直が好ましく、培養面積を多く使用することができず、培養面積当たりの収量を多くする場合には、地面に対して垂直な角度90度に近い方が好ましい。
前記基材は、第1の光源に対して、一つ配置してもよいし、複数個配置してもよい。光合成微生物付着層が薄い場合には、一つの基材のみでは光量を有効に活用することができない場合があり、そのような場合には、各基材を透過した光を有効に活用するために、複数個重ねるように配置してもよい。
前記付着培養に用いる培養装置としては、特に制限はなく、培養する光合成微生物、目的のバイオマスに応じて適時選択することができ、例えば、オープンポンド(開放池)、レースウェイ型、チューブ型(J. Biotechnol., 92, 113, 2001)などが挙げられる。また、プラスチックの袋の中で培養を行う、プラスチックバッグによる培養装置も使用することができる。その他の使用可能な培養装置としては、特に制限なく、目的に応じて適時選択することができ、例えば、Journal of Biotechnology 70 (1999)313−321、Eng. Life
Sci. 9, 165−177(2009)に記載の培養装置が挙げられる。
前記付着培養に用いる培養装置として、農業用被覆材を用いることができる。前記培養基材を、農業用フィルム等の農業用被覆材で被覆することによって、前記培養基材上の光合成微生物の乾燥を防ぐことができる。また、様々な機能が付与された農業用被覆材を用いることによって、光合成微生物の生育を阻害する環境因子を排除又は低減すことができる。
例えば、紫外線をカットする農業用フィルムを用いて紫外線をカットすることで、紫外線照射によって分解しやすい蛍光物質などの波長変換機能を有する化合物の劣化を最小限に抑えることができ、波長変換機能を有する化合物を含む基材の再利用性を高めることができる。
また、赤外線を遮蔽する農業用フィルムも使用することができる。これによって、赤外線による温度上昇を防ぐことができ、光合成微生物の至適温度を保つことが容易になるため、光合成微生物の育成を向上できる点で好ましい。このようなフィルムとしては、特に制限なく、目的に応じて適時選択することができ、例えば、特開平5−184243号公報、特許3804987号公報、特開2001−61357号公報などが挙げられる。
<その他の工程>
本発明の光合成微生物の付着培養方法は、前記工程に加えて、必要に応じて、基材形成工程、前培養工程、分散処理工程などを含むことができる。
<<基材形成工程>>
前記基材形成工程は、基材を形成する工程である。
前記基材を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法を適宜選択することができる。
<<前培養工程>>
前記前培養工程は、光合成微生物を前培養する工程である。
前記光合成微生物を前培養する方法としては、特に制限はなく、光合成微生物の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、静置培養法、振盪培養法、静置若しくは振盪しながら二酸化炭素や空気をバブリングさせて培養液を流動させながら培養する方法などが挙げられる。
前記光合成微生物は、凝集する性質を有するものも存在し、前培養することにより光合成微生物凝集体を形成することがある。本発明において、「光合成微生物凝集体」とは、複数個の光合成微生物が集合した構造体のことをいい、その光合成微生物の構造体は、複数種の光合成微生物から構成されていてもよく、単一種の光合成微生物から構成されていてもよい。更に、光合成微生物同士が直接隣接していてもよく、ある種の物質、例えば、細胞間マトリックスのような物質を介して凝集していてもよい。また、群体といわれているものも、本発明では、凝集のことを意味するものとする。
<<分散処理工程>>
前記分散処理工程は、光合成微生物を分散処理する工程である。
前記光合成微生物を分散処理する方法としては、特に制限はなく、光合成微生物の種類などに応じて適宜選択することができるが、高速振盪処理や超音波処理などが挙げられる。分散処理によって、例えば、前記前培養工程により凝集していた光合成微生物を個々もしくはより小さな細胞集団にすることによって調製した試料を用いることができる。即ち、予め分散処理された光合成微生物を基材上に付着することで、基材表面を有効に使用することができ、前記分散処理を行わないものと比較して付着量を増加させることができると共に、付着後の増殖量を向上させることができる点で好ましい。
本発明によれば、光合成微生物の付着培養方法において、従来よりも光エネルギーの利用効率が高く、高効率培養可能な方法を提供することができる。
また、本発明によれば、従来液体培養で必要であった光合成微生物の付着及び沈殿の防止のための攪拌装置及びその動力を用いることなく、省エネルギー、省スペース及び省コストな光合成微生物の付着培養方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、培養した光合成微生物を容易に回収することができ、回収コストを低減した光合成微生物の付着培養方法を提供することができる。
また、本発明の光合成微生物の付着培養方法は、廃水処理と併用することもできる。廃水処理液中に含まれるリンや窒素などの栄養素を光合成微生物の培地成分として活用することにより、光合成微生物の栄養素を供給するためのコストを低減することができる。また、富栄養化状態の廃水が自然界に排出されると、赤潮や青潮などの原因となり、魚介類の死滅による環境への悪影響や漁業従事者の生活に対して多大の影響を与えることが懸念される。したがって、本発明の光合成微生物の付着培養方法を廃水処理と併用することは、富栄養化対策の観点からも好ましい。
また、本発明の光合成微生物の付着培養方法によって形成される基材上の光合成微生物付着層(バイオフィルム)は、金属回収、オイル分解などに用いることができる。これらは、J. Appl. Phycol(2008) Vol.20,p.227−235に記述されており、本発明の光合成微生物の付着培養方法はこれらの方法に活用できる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
(実施例1:蛍光物質を含有するアクリル基材を用いた緑藻の培養)
緑藻ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris、株番号:NIES−2264、国立環境研究所より購入)をオートクレーブ滅菌したC培地が200mL入った500mL三角フラスコに接種し、100rpm、20℃、2,000ルクス下で、振盪培養機(株式会社サンキ精機、Incubator Shaker Model RGS−20RL)を用いて、増殖させた。
用いたC培地の組成は以下のとおりである。
次に、以下の手順で、培養液中の藻を回収し、藻体数をカウントした。
クリーンベンチにおいて、得られた藻の培養液をしばらく静置し、藻を三角フラスコの底に沈殿させた。沈殿した藻をピペットにより採取して5mLチューブ(株式会社トミー精工、TM−655S滅菌付)に入れた。液量は約2mLであった。このチューブをビーズ式細胞破砕装置(株式会社トミー精工、Micro Smash MS−100)にセットし、ビーズの添加なしで4,200rpm、20秒間の高速振幅処理を行い、凝集した藻を分散させて、藻の懸濁液を得た。クリーンベンチにおいて、分散処理後の5mLチューブをよく攪拌しながら50μLの藻の懸濁液を分取し、予め950μLの滅菌済みC培地を入れた2mLのマイクロチューブ(株式会社トミー精工、TM−626S滅菌付)に添加して液量を1mLとした。
得られた藻の希釈液10μLを血球計数板上に添加し、顕微鏡下にて藻体数をカウントした。カウントの結果、5mLチューブ内の藻体濃度は、2.35×10個/mLであった。
そして、以下の手順で藻の付着層(バイオフィルム)を作製するとともに、藻を培養した。
乾熱滅菌済みの200mL三角フラスコの中に100mLのC培地を入れ、そこに、処理後の5mLチューブをよく攪拌しながら426μLの藻の懸濁液を添加し、藻体濃度1×10個/mLに調製した。
波長変換機能を有する化合物を含む基材として、蛍光物質を含むアクリル板(株式会社さくら樹脂、アクリル板−集光レッド、75×25mm、板厚4mm)、波長変換機能を有する化合物を含まない基材(対照)として、蛍光物質を含まないアクリル板(株式会社さくら樹脂、アクリル板、75×25mm、板厚4mm)を用いた。また、これらのアクリル板に、光源として白色LED光(NIHONYUSAC社、エコランプ電球、95W形白色)を照射した際の透過光のスペクトルを測定した結果を図1に示す。なお、透過光のスペクトルは、分光光度計(オーシャンフォトニクス社、USB−2000)に積分球を取り付け、波長400nm〜800nmについて、波長1nm毎に蛍光放射を含めた透過光の光量を測定した。
角型透明ディッシュ(アズワン株式会社、2−5316−01、235×85×16mm)の中に、2種類のアクリル板各2枚それぞれを重なり合わないようにディッシュの各々の角から等間隔の位置に置いた後、藻体濃度1×10個/mLの藻の懸濁液を100mL入れた。懸濁液を添加してから30分間そのまま静置した後、組立式照明培養棚プラントバイオシェルフ(株式会社池田理化、AV151961-8)に移し、4,000ルクス、室温(約20℃)で3日間培養を行った。この培養により、前記のアクリル板上に藻を付着させ、藻の付着層(バイオフィルム)を作製した。
次に、藻が付着したアクリル板を、C培地で穏やかに洗浄してアクリル板に付着していない藻を洗い流した後、下記の条件でさらに8日間培養した。
培養容器には、染色バット(アズワン株式会社、98.5×48.5×96.5mm)を用い、組立式照明培養棚上で光源を染色バットの上面から照射させ、4,000ルクス、室温(約20℃)、無攪拌の条件下で培養を行った。なお、染色バットの上面以外はすべて黒い紙で覆い、上面からの光以外の光が入射しないようにした。また、アクリル板が光源に対して垂直、すなわち、地面に対して水平になるように、加えて、表1に記載のとおり、光源に対して藻の付着面が各アクリル板の上面(光源側)及び下面(光源の反対側)のいずれかとなるように、藻が付着した各アクリル板を各染色バット金具・タテ型(15枚用)の端から4段目に挿入し、各染色バットに設置した。その後、各染色バットに200mLのC培地を添加し、培養した。
アクリル板上に付着した藻をセルスクレイパー(住友ベークライト株式会社、MS−93100)で剥ぎ取り、5mLチューブ(株式会社トミー精工、TM−655S滅菌付)に液量が1mLになるようにC培地を加えながら入れた。このチューブをビーズ式細胞破砕装置(株式会社トミー精工、Micro Smash MS−100)にセットし、ビーズの添加なしで4,200rpm、20秒間の高速振幅処理を行った。血球計数板を用いて藻体数をカウントした結果を図2に示した。
また、培養に用いたアクリル板(蛍光物質有り無し)、及びアクリル板に付着培養した藻(試料1、及び試料3)の写真を図3A〜Dに示した。
(結果)
藻の付着面をアクリル板の上面(光源側)にして培養した場合、蛍光物質を含まないアクリル板(試料3)に付着した藻体数は0.63×10個/cmであるのに対して、蛍光物質を含むアクリル板(試料1)に付着した藻体数は1.94×10個/cmとなり、したがって、蛍光物質を含むアクリル板の方が藻の増殖効率が高いことが分かった。
光源からの光量は両者同一であるにもかかわらず、増殖効率に違いが表れたことの要因としては、光源からアクリル板に付着した藻を通過した光、散乱光などが、アクリル板に含まれる蛍光物質を励起することにより蛍光を生じ、放射された蛍光の一部が藻に到達することによるものと考えられる。つまり、光源から照射された光(散乱光を含む)に加えて、蛍光が光合成に利用可能となり、光量が増加するためと考えられる。また、所定の波長を有する光(蛍光の励起光に相当する光)が、蛍光物質によって光合成の利用効率がより高い波長を有する光に変換され、その光量が増加するためと考えられる。
また、藻の付着面をアクリル板の下面(光源の反対側)にして培養した場合、上面(光源側)にして培養した場合と比較して藻体数は少なくなるが、蛍光物質を含まないアクリル板(試料4)と比較して、蛍光物質を含むアクリル板(試料2)を用いた方が、付着し、増殖した藻体数がより多いことが分かった。
光源からの光量は両者同一であるにもかかわらず、増殖効率に違いが表れたことの要因としては、光源からアクリル板に到達した光、散乱光などが、アクリル板に含まれる蛍光物質を励起することにより蛍光を生じ、放射された蛍光の一部が藻に到達することによるものと考えられる。つまり、光源から照射された光(散乱光を含む)に加えて、蛍光が光合成に利用可能となり、光量が増加するためと考えられる。また、光合成の利用効率が低い波長を有する光が蛍光物質により波長変換されることにより、光合成の利用効率が高い波長を有する光量が増加するためと考えられる。
以上より、蛍光物質を含む基材上に光合成微生物を付着させ、培養することによって、蛍光物質を含まない基材を用いた場合よりも、効率良く目的の光合成微生物を増殖させることができる。
本発明の光合成微生物の付着培養方法は、従来よりも光エネルギーの利用効率が高く、高効率に培養する方法を提供することができるので、光合成微生物の大量培養、及び商業的規模での光合成微生物からのバイオマス生産に好適に利用できる。また、本発明の光合成微生物の付着培養方法は、廃水処理、金属回収、オイル分解などに好適に利用できる。

Claims (11)

  1. 波長変換機能を有する化合物を含む基材上に光合成微生物を付着させる工程と、
    前記光合成微生物に第1の光を照射する工程とを含み、
    前記第1の光と、前記第1の光が前記波長変換機能を有する化合物により波長変換されて生じた第2の光とが前記光合成微生物に照射されることを特徴とする光合成微生物の付着培養方法。
  2. 光合成微生物が、基材の第1の光が照射される側に付着される請求項1に記載の光合成微生物の付着培養方法。
  3. 波長変換機能を有する化合物が、蛍光物質である請求項1から2のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法。
  4. 基材100mgに対して0.001mg〜20mgの波長変換機能を有する化合物を含む請求項1から3のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法。
  5. 第2の光の波長が、400nm〜800nmである請求項1から4のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法。
  6. 第2の光の波長が、600nm〜750nmである請求項5に記載の光合成微生物の付着培養方法。
  7. 基材が、板状基材及びフィルム状基材のいずれかである、請求項1から6のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法。
  8. 基材が、有機化合物及び無機化合物の少なくともいずれかからなる請求項1から7のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法。
  9. 光合成微生物が、バイオマスを産生する能力を有する請求項1から8のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法。
  10. 光合成微生物が、微細藻類である請求項1から9のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法。
  11. 予め分散処理された光合成微生物を基材上に付着させる請求項1から10のいずれかに記載の光合成微生物の付着培養方法。
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