JP2015191067A - 光変調用素子、光変調器および動作点制御方法 - Google Patents

光変調用素子、光変調器および動作点制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】様々な動作点のずれを駆動回路の電源電圧以下の電圧で調整することができ、低コストで低消費電力の光変調器を提供する。
【解決手段】光分岐構造と、分岐された二つのアームの少なくとも一方に駆動回路からの電圧を印加することで光の位相を変調する光位相変調部と、前記光位相変調部に直列的に連なる二つのアームの少なくとも一方に、光位相変調部の駆動回路の電源電圧以下の電圧を印加することにより動作点を調整する光位相調整部と、光結合構造とを備え、前記光位相調整部が光位相粗調部と光位相微調部とを有し、前記光位相粗調部は、光位相変調部の駆動回路の電源電圧以下の電圧を印加することにより180°以上の範囲で光位相を変調できるように設計され、前記光位相微調部は、光位相変調部の駆動回路の電源電圧以下の電圧を印加することにより90°以下の範囲で光位相変調するように設計されていることを特徴とする光変調用素子。
【選択図】図1

Description

本発明は、光変調用素子、光変調器および動作点制御方法に関する。
家庭用光ファイバおよびローカル・エリア・ネットワーク(LAN)などに接続される光通信デバイスは、様々なシステム用の1310nmおよび1550nm波長で機能する。当該シリコンベース光通信デバイスは、CMOS技術を利用して、光機能素子および電子回路をシリコンプラットフォーム上に集積化可能とする非常に有望な技術である。
シリコンベースの光通信デバイスとしては、導波路、光結合器、波長フィルタ、光変調器などの様々なデバイスが幅広く研究されており、中でも能動的なデバイスとして光変調器が注目されている。光変調器は、電気信号を光信号に変換することができるデバイスであり、屈折率変化を利用した構造としてはマッハツェンダ干渉計を利用したものが一般的である。マッハツェンダ干渉計を利用した光変調器は、二本の光導波路からなるアームの光位相差を干渉させて、光の強度変調信号を得る。
図13は、マッハツェンダ干渉計を利用した光変調用素子を模式的に図示したものである。光変調器は、第1のアーム101および第2アーム102からなり、これに入力側で分岐する光分岐構造103と、出力側で結合する光結合構造104とが接続されている。光分岐構造103に入力した光は、第1アーム101および第2アーム102を導波する間に光の位相が変化し、光結合構造104で再度合成される。第1アーム101および第2アーム102はシリコンベース電気光学素子からなり、電圧を印加することにより電気光学効果または熱光学効果等により光の位相が変化する。
第1アーム101および第2アーム102の長さが同一で、かつ電圧が印加されなかった場合、位相差はゼロとなり、光結合構造104から出力される光は、同波調の光が重畳されるため最大となる。一方、第1アーム101および第2アーム102で位相がπだけずれた場合は、光結合構造104で合成された際にそれぞれの光が打ち消し合い、出力される光は最小となる。
一般に、出力される光の消光比を最大とするために、出力光の強度が最大になる電圧と出力光の強度が最小になる電圧の、中間の電圧を印加した時の出力光強度を動作点として設定する。すなわち、いずれか一方のアームに、光の位相差が半波長分だけずれる電圧を印加した状態を初期状態とし、その時の光強度を基準(動作点)とする。光変調器は、この動作点を基準として動作し、光信号を出力する。そのため、動作点を一定に制御することは非常に重要である。これに対し、動作点は使用環境温度の変化や、製造時のバラツキ、長期間の使用に伴う劣化等で安定しないという問題があった。
このような動作点の制御を行うために、様々な検討が進められている。
例えば特許文献1には、位相変調部と分離して、ヒータを用いた熱光学効果による動作点の制御することが記載されている。
また、例えば特許文献2では、第1アームと第2アームに位相差を生じさせるための駆動回路の電源電圧に、一定の周波数信号を重畳して印加することで動作点を制御することが行われている。
国際公開第2010/064417号 特開2013−9136号公報
しかしながら、動作点のずれは、例えば光変調用素子の劣化等に伴い、大きくずれる場合と、例えば光変調器の駆動時の温度変化等に伴い、わずかにずれる場合があり、上述の方法では、この両方を低電圧で同時に制御することができなかった。また、動作点の大きなずれとわずかなずれの較正を、低電圧で同時に行うことができる光変調素子、光変調器を実現することができなかった。
上述の特許文献1に記載された熱光学効果による動作点の制御方法では、印加電圧に対する位相の変化率が大きいため、大きな動作点のずれを較正することはできる。一方で、印加電圧に対する位相の変化率が大きいと、わずかな動作点のずれを正確に較正することができなかった。このような問題は、市場に出回る量産品等において、特に深刻である。例えば試作品であれば、印加電圧に対する位相の変化率が大きい場合でも、印加電圧を精密に制御することで、わずかな動作点のずれも較正することができる。しかし、市場に出回る量産品等では、印加電圧の精密な制御を使用の度に行うことは現実的ではない。
また上述の特許文献2に記載された動作点の制御方法では、第1アームと第2アームに位相差を生じさせるために、駆動回路の電源電圧に一定の周波数信号を重畳しているため、駆動回路の電源電圧以上の電圧が必要である。そのために電源電圧を大きくする必要があり、低電圧で制御することができなかった。また、重畳する周波数を大きいものにすると、位相変調精度にも影響が生じるため、わずかな動作点のずれの制御しかできないという問題があった。
本発明は、上述の課題を解決する光変調用素子、光変調器および動作点制御方法を提供することを目的とする。
本発明の光変調用素子は、光の入力側で二つのアームに分岐する光分岐構造と、分岐された二つのアームの少なくとも一方に、駆動回路からの電圧を印加することにより光の位相を変調する光位相変調部と、前記光位相変調部に直列的に連なる二つのアームの少なくとも一方に、光位相変調部の駆動回路の電源電圧以下の電圧を印加することにより動作点を調整する光位相調整部と、光位相調整部からの光を光の出力側で結合する光結合構造とを備える。前記光位相調整部が、光位相粗調部と光位相微調部とを有する。また、前記光位相粗調部は、前記駆動回路の電源電圧以下の電圧を印加することにより180°以上の範囲で光位相変化できるように設計され、前記光位相微調部は、前記駆動回路の電源電圧以下の電圧を印加することにより90°以下の範囲で光位相変化できるように設計されている。
本発明の光変調器は、上記光変調用素子と、前記光変調用素子の光位相変調部に電圧を印加する電源と、前記光変調用素子の光位相粗調部に電圧を印加する粗調用電源と、前記光変調用素子の光位相微調部に電圧を印加する微調用電源と、前記光変調用素子の光の出力側で動作点のずれを計測するモニターとを備える。
入力された光を二つに分岐する光分岐ステップと、駆動回路からの電圧を印加することで、分岐された少なくとも一方の光の位相を変化させる光変調ステップと、位相が変化した光を再合成する光合成ステップと、再合成した光の一部をモニターし動作点のずれを測定する測定ステップと、前記測定ステップでの動作点のずれに基づき、動作点を較正する光位相粗調ステップおよび光位相微調ステップとを有する。前記光位相粗調ステップは、駆動回路の電源電圧以下の電圧を印加することで、導波する光の位相を180°以上の範囲で変化させることができ、前記光位相微調ステップは、駆動回路の電源電圧以下の電圧を印加することで、導波する光の位相を90°以下の範囲で変化させることができる。
本発明によれば、様々な動作点のずれを駆動回路の電源電圧以下の電圧で調整することができ、低コストで低消費電力の光変調用素子、光変調器および動作点制御方法を実現することができる。
本発明の一実施形態に係る光変調用素子を模式的に示した図である。 光位相粗調部3Aが二つのアームのいずれか一方にあり、光位相微調部3Bが光位相粗調部3Aと異なるアームにある光変調用素子を模式的に示した図である。 図1のA−A’面のシリコンベース電気光学素子の断面構造を模式的に示した図である。 熱光学効果を利用したシリコンベース電気光学素子の一例の断面模式図である。 キャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子の一例の断面模式図である。 キャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子のその他の例の断面模式図である。 キャリアプラズマ効果を利用したキャリア空乏型シリコンベース電気光学素子の一例の断面模式図である。 光位相変調部と光位相調整部が、電気的に分離し、光学的に接続された光変調用素子の一例を模式的に示した図である。 光位相変調部と光位相調整部が、電気的に分離し、光学的に接続された光変調用素子のその他の例を模式的に示した図である。 SIS型接合シリコンベース電気光学素子の製造方法を模式的に示した図である。 本発明の一実施形態に係る光変調器を模式的に示した図である。 シリコンベース電気光学素子の位相変化の印加電圧依存性を示したグラフであり、(a)は図6で示すキャリア注入型シリコンベース電気光学素子の位相変化の印加電圧依存性を示し、(b)は、図2で示すSIS型接合シリコンベース電気光学素子の位相変化の印加電圧依存性を示す。 マッハツェンダ干渉計を利用した光変調用素子を模式的に図示したものである。
以下、本発明の実施形態である光変調用素子および光変調器について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
図1は、本発明の一実施形態に係る光変調用素子を模式的に示した図である。本発明の一実施形態に係る光変調用素子10は、光の入力側で二つのアームに分岐する光分岐構造1と、分岐された二つのアームの少なくとも一方に、駆動回路からの電圧を印加することにより光の位相を変調する光位相変調部2と、前記光位相変調部2に直列的に連なり、動作点を調整する光位相調整部3と、光位相調整部3からの光を、光の出力側で結合する光結合構造4とを備える。また、前記光位相調整部3が、光位相粗調部3Aと光位相微調部3Bとを有し、前記光位相粗調部3Aは、駆動回路の電源電圧以下の電圧を少なくとも一方のアームに印加することにより180°以上の範囲で光位相変化できるように設計され、前記光位相微調部3Bは、駆動回路の電源電圧以下の電圧を少なくとも一方のアームに印加することにより90°以下の範囲で光位相変化できるように設計されている。
光位相粗調部3Aは、印加電圧に対する位相変化量が大きく、光位相微調部3Bは印加電圧に対する位相変化量が小さい。すなわち、同じ電圧をこれらに印加した際に、光位相粗調部3Aは大きな位相変化を生じ、光位相微調部3Bは小さな位相変化を生じる。そのため、光位相粗調部3Aおよび光位相微調部3Bからなる光位相調整部を設けることで、所定の電圧を印加することで大きな動作点のずれも、わずかな動作点のずれも較正することができる。
具体的には、光位相粗調部3Aは、光位相変調部2の駆動回路の電源電圧以下の電圧を少なくとも一方のアームに加えることで、180°以上の範囲で光位相変化が可能である。そのため、光強度の消光特性における大きな動作点のずれを較正することができる。一方、光位相粗調部3Bは、光位相変調部2の駆動回路の電源電圧以下の電圧を少なくとも一方のアームに加えることで、90°以下の範囲で光位相変化が可能である。そのため、高速駆動時の環境温度変化によるわずかな動作点のずれを、精密に較正することができる。
ここで、光位相粗調部3Aおよび光位相微調部3Bは、いずれも光位相変調部2の駆動回路の電源電圧以下の電圧で動作し、それぞれが大きな動作点のずれおよびわずかな動作点のずれを較正することができる。そのため、光位相変調部2の駆動回路の電源電圧以上の電圧を出力する電源を光変調用素子10全体として要しない。つまり、本発明の光変調用素子10は、大きな電源電圧と接続することが不要となり、消費電力およびコストの観点で優れる。
もし光位相粗調部3Aのみで様々な動作点のずれを較正しようとすると、光位相粗調部3Aは電圧に対する光の位相変化量が大きいため、わずかな電圧変化でも大きな光の位相変化が生じてしまう。そのため、精密な動作点の較正ができない。
また、もし光位相微調部3Bのみで様々な動作点のずれを較正しようとすると、光位相粗調部3Bは電圧に対する光の位相変化量が小さいため、非常に大きな電圧を印加する必要がある。これは大きな動作点のずれを較正するためには、大きな位相変化をできる必要があり、電圧に対する光の位相変化量が小さい光位相粗調部3Bのみでは、大きな電圧を印加しないとそれだけの位相変化量を実現することができないためである。すなわち、この場合、動作点の制御のための大きな電源電圧が必要となり、消費電力およびコストの観点で好ましくない。
光位相調整部3において、光位相粗調部3Aおよび光位相微調部3Bは、図1に示すように各アームにあってもよい。各アームに光位相粗調部3Aおよび光位相微調部3Bを有することで、各アームをそれぞれ精密に制御することができる。
また光位相調整部3において、図2に示すように、光位相粗調部3Aが二つのアームのいずれか一方にあり、光位相微調部3Bが光位相粗調部3Aと異なるアームにあってもよい。このような構成とすることで、制御端子数を低減することが可能となり、高密度化に寄与する。また制御回路の簡素化も可能となる。
(光位相変調部)
図3は、光位相変調部のシリコンベース電気光学素子の断面を模式的に示した図である。具体的には、図1のA−A’面におけるシリコンベース電気光学素子の断面を模式的に示した図である。
このシリコンベース電気光学素子は、SIS(semiconductor−insulator−semiconductor)型接合シリコンベース電気光学素子20である。このSIS型接合シリコンベース電気光学素子20は、基板29の上に、基板29と反対側に矩形に突出するリブ導波路構造21aを有する第1導電型半導体層21と、リブ導波路構造の上に積層された誘電体層22と、誘電体層22上に積層された第2導電型半導体層23とを有する。第1導電型半導体層21は、第1導電型の不純物が他の部分より高濃度にドープされた第1コンタクト部24を介して、第1電極配線25に接続する。また第2導電型半導体層23は、第2導電型の不純物が他の部分より高濃度にドープされた第2コンタクト部26を介して、第2電極配線27に接続する。さらに第1コンタクト部24は、第1導電型半導体層21のスラブ部21cに対して矩形に突出している。スラブ部21cは、第1導電型半導体層21の突出していない部分を意味する。またその他の領域は酸化物からなるクラッド層28であり、光の導波部を制限している。
なお、本実施形態では、電気光学素子を構成する基板29として、シリコン基板上に、酸化膜を有するSOI(シリコン・オン・インシュレーター)基板を用いる例を示しているが、基板はシリコンベースのものであればよい。
このようなSIS型接合シリコンベース電気光学素子20は、印加される電源電圧に対する位相変化量が小さく、その位相変化の線形性が高い。そのため、印加される電圧に対し、精密な制御をすることができる。また、印加される電圧と光の位相変化量の対応が1対1で得ることができ、素子の複雑化を避けることができる。さらに、印加される電圧に対する位相御変化量が小さく、その位相変化の線形性が高いため、大きな動作点のずれの発生を抑制することができる。
光位相変調部2は、電圧をアームに印加することで、各アームの光の位相が変化する。駆動回路の電源電圧は、SiGeバイポーラトランジスタを用いる場合は3.3Vであり、CMOS構造を用いる場合は1.0〜1.8Vである。なお、これらの電源電圧が光位相変調部の光の位相を変化させる際には、駆動回路を介して電圧が印加されるため、その際の電圧はこの電圧値より低下する。
ここで、このSIS型接合シリコン・ベース電気光学装置20は、電気光学効果(自由キャリアプラズマ効果)を利用するものである。以下に、半導体層がシリコンからなる場合を例にして、このSIS型接合シリコンベース電気光学素子20における動作原理である、光の位相変調メカニズムの概要を説明する。
純粋な電気光学効果はシリコン内では得られない、または得られにくいため、自由キャリアプラズマ効果と熱光学効果だけが光変調動作に利用出来る。本発明が目的とする高速動作(Gb/秒以上)を得るためには、自由キャリアプラズマ効果だけが有効であり、以下の関係式(1)、(2)の1次近似値で説明される。
Figure 2015191067
Figure 2015191067
式(1)のΔnおよび式(2)のΔkは、それぞれ、シリコン層の屈折率変化の実部および虚部を表わしており、eは電荷、λは光の波長、εは真空中の誘電率、nはシリコン層の屈折率、mは電子キャリアの有効質量、mはホールキャリアの有効質量、μは電子キャリアの移動度、μはホールキャリアの移動度、ΔNは電子キャリアの濃度変化、ΔNはホールキャリアの濃度変化を表している。
シリコン中の電気光学効果の実験的な評価が行われており、光通信システムで使用する1310nmおよび1550nmの波長でのキャリア密度に対する屈折率変化は、Drudeの式と良く一致することが分かっている。また、これを利用した電気光学素子においては、位相変化量Δθは以下の式で定義される。
Figure 2015191067
式(3)のLは、シリコンベース電気光学素子の光伝播方向に沿ったアクティブ層(有効変調領域)の長さである。Δneffは、ΔnおよびΔkから得ることができる実効屈折率である。式(3)からわかるように、実効屈折率の変化Δneffが大きければ、アクティブ長さLが短くても、大きな位相変化を生み出すことができる。
このシリコンベース電気光学素子は、リブ導波路構造21aを有する。そのため、光導波部と屈折率が変化する領域とが重なるため、シリコンベース電気光学装置の印加電圧に対する、光の変調効率が高くなる。すなわち、光変調のアクティブ層の長さを短くすることができ、光変調用素子を小型化することができる。
ここで光導波部とは、光の導波する部分を意味し、図2においては点線で囲まれた領域L1を意味する。このSIS型接合シリコンベース電気光学素子20においては、第1導電型半導体(主に、リブ導波路構造21a)、誘電体層22、第2導電型半導体23である。また屈折率が変化する領域は、キャリア密度が変化する領域であり、第1導電型半導体層21、第2導電型半導体層23のうち、誘電体層22との接合界面付近となる。
また、このリブ導波路構造21aを有することで、高濃度でドーピングした領域と、光導波部との重なりを低減することもできる。
ここで、高濃度でドーピングした領域とは、図1の第1コンタクト部24および第2コンタクト部26であり、この領域に光が伝播すると、ドーパントによる光吸収が生じてしまう。リブ導波路構造21aをもたせることにより、高濃度でドーピングした領域での光吸収による損失を低減することができる。
ここで、キャリア密度が変化する領域の厚みを(最大空乏層厚)Wは、熱平衡状態では下記数式で与えられる。
Figure 2015191067
εは、半導体層の誘電率、kはボルツマン定数、Ncはキャリア密度、nは真性キャリア濃度、eは電荷量である。例えば、Ncが1017/cmの時、最大空乏層厚は0.1μm程度であり、キャリア密度が上昇するに伴い、空乏層厚、すなわちキャリア密度の変調が生じる領域の厚みは薄くなる。
そのため、リブ導波路構造の高さはW以上であることが好ましい。リブ導波路構造21aの高さがW以上であれば、キャリア密度が変化する領域をリブ導波路構造21a内とすることができ、光導波部との重なりを高く維持することができる。
また、第1導電型半導体層21は、第1導電型の不純物が他の部分より高濃度にドープされた第1コンタクト部24において、第1電極配線25に接続している。同様に、第2導電型半導体層23は、第2導電型の不純物が他の部分より高濃度にドープされた第2コンタクト部26において、第2電極配線27に接続している。高濃度ドープを行うことにより、第1導電型半導体層21と第1電極配線25の界面、第2導電型半導体層23と第2電極配線27の界面における接触抵抗を低減することができる。その結果として、直列抵抗成分を小さくし、RC時定数を小さくすることができる。すなわち、光変調動作の速度を向上することができる。
さらに、第1コンタクト部24は、第1導電型半導体層21のスラブ部21cに対して矩形に突出している。そのため、より第1コンタクト部24内のドーピング密度を上昇させることができ、半導体と導電体との界面の接触抵抗をより低減することができる。すなわち、RC時定数が小さく、より光変調動作の速度が高くすることができる。
また第1コンタクト部24を矩形に突出させることで、スラブ部21cの幅を短くすることができる。スラブ部21cは、高濃度でドーピングした領域と、光導波部との重なりを低減するために、約0.1μmと薄くしている。しかしながら、スラブ部21cを広範囲に渡って、均一に薄く形成することは難しい。
第1導電型半導体層21および第2導電型半導体層23は、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、歪シリコン、単結晶シリコン、Si1−xGeからなる群から選択される少なくとも一層からなることが好ましい。
(光位相粗調部)
光位相粗調部3Aは、電圧印加に対して大きく位相変化(具体的には光位相変調部の駆動回路の電源電圧の印加に対して180°以上の位相変化)する。そのため、光位相粗調部3Aは、熱光学効果を利用したシリコンベース電気光学素子またはキャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子が好ましい。
図4は熱光学効果を利用したシリコンベース電気光学素子の一例の断面模式図である。この熱光学効果を利用したシリコンベース電気光学素子は、光位相粗調部3Aに用いることができるため、光変調用素子においては、図1のB−B’断面である。
この熱光学効果を利用したシリコンベース電気光学素子30は、基板39と反対側に矩形に突出するリブ導波路構造31aを有する真正半導体層31と、リブ導波路構造31aの上に積層された誘電体層32と、誘電体層32上に形成された高抵抗多結晶半導体層33とを有する。真正半導体層31は及び高抵抗多結晶半導体層33とは、第1導電型または第2導電型の不純物が他の部分より高濃度にドープされたコンタクト部34を介して、第1電極配線35および第2電極配線37に接続する。またその他の領域は酸化物からなるクラッド層38であり、光の導波部を制限している。第2電極配線37に電圧を印加すると、高抵抗多結晶半導体層33が発熱し、真正半導体層31の屈折率が変化する。この熱光学効果を利用したシリコンベース電気光学素子30において、光導波部は、図4において点線で囲まれた領域L2であり、真正半導体層31(主に、リブ導波路構造31a)、誘電体層32および高抵抗多結晶半導体層33である。
ここで、図4は、誘電体層32と高抵抗多結晶半導体層33が接触しているが、離して形成してもよい。この距離を適宜調整することで、印加電圧に対する位相変化量を調整することができる。
図5はキャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子の一例の断面模式図である。このキャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子は、光位相粗調部3Aに用いることができるため、光変調用素子においては、図1のB−B’断面である。
このキャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子40は、基板49と反対側に矩形に突出するリブ導波路構造41aを有する真正半導体層41を有する。この真正半導体層41は、その一方の端部に第1導電型不純物が他の部分より高濃度にドープされた第1コンタクト部44を有し、この第1コンタクト部44を介して、第1電極配線45と接続する。また、もう一方の端部に第2導電型不純物が他の部分より高濃度にドープされた第2コンタクト部46を有し、この第2コンタクト部46を介して、第2電極配線47に接続する。またその他の領域は酸化物からなるクラッド層48であり、光の導波部を制限している。第1電極配線45と第2電極配線47の間に、電圧を印加することで、真正半導体層41(主に、リブ導波路構造41a)の屈折率が変化する。このキャリアプラズマ効果を利用したシリコンベース電気光学素子40において、光が導波する光導波部は、図5において点線で囲まれた領域L3であり、真正半導体層41(主に、リブ導波路構造41a)である。
また、図6はキャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子のその他の例の断面模式図である。このキャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子は、光位相粗調部3Aに用いることができるため、光変調用素子においては、図1のB−B’断面である。
このキャリアプラズマ効果を利用したシリコンベース電気光学素子50は、基板と反対側に矩形に突出するリブ導波路構造51aを有する真正半導体層51と、リブ導波路構造51aの上に積層された誘電体層52と、誘電体層52上に形成された第2真正半導体層53とを有する。この真正半導体層51は、第1導電型不純物が他の部分より高濃度にドープされた第1コンタクト部54を介し、第1電極配線55に接続する。また第2真正半導体層53は、その両端に第1導電型不純物が他の部分より高濃度にドープされた第2コンタクト部56aと第2導電型の不純物が他の部分より高濃度にドープされた第3コンタクト部56bを介して、第2電極配線57に接続する。またその他の領域は酸化物からなるクラッド層58であり、光の導波部を制限している。第1電極配線55及び第2電極配線57間に電圧を印加することで、真正半導体層51および第2真正半導体層53の屈折率が変化する。このキャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子50において、光が導波する光導波部は、図6において点線で囲まれた領域L4であり、真正半導体層51(主に、リブ導波路構造51a)、誘電体層52および第2真正半導体層53である。
(光位相微調部)
光位相微調部3Bは、印加電圧に対して小さく位相変化(具体的には光位相変調部の駆動回路の電源電圧の印加に対して90°以下の位相変化)する。そのため、光位相微調部3Bは、キャリアプラズマ効果を利用したキャリア空乏型シリコンベース電気光学素子または光位相変調部に用いたSIS型接合シリコンベース電気光学素子20が好ましい。
また、熱光学効果を利用したシリコンベース電気光学素子30において、高抵抗多結晶半導体層33とリブ導波路構造31aの距離を離した場合を用いることもできる。高抵抗多結晶半導体層33とリブ導波路構造31aの距離は、加える電圧にもよるが、例えば1.8Vの印加電圧に対して、2.0μm以上の距離を離すと、位相変化量が90°以下となるため光位相微調部として用いることができる。
図7はキャリアプラズマ効果を利用したキャリア空乏型シリコンベース電気光学素子の一例の断面模式図である。このキャリアプラズマ効果を利用したキャリア空乏型シリコンベース電気光学素子は、光位相粗調部3Bに用いることができるため、光変調用素子においては、図1のC−C’断面である。
このキャリアプラズマ効果を利用したキャリア空乏型シリコンベース電気光学素子60は、第1導電型半導体61と、第2導電型半導体63が接続されている。第1導電型半導体61と第2導電型半導体63は、その接合部において基板と反対側に矩形に突出するリブ導波路構造を有してしている。またそのリブ導波路構造上には誘電体層62が積層されている。第1導電型半導体61は、第1導電型の不純物が他の部分より高濃度にドープされた第1コンタクト部64を介して、第1電極配線65に接続する。また、第2導電型半導体63は、第2導電型の不純物が他の部分より高濃度にドープされた第2コンタクト部66を介して、第2電極配線67に接続する。またその他の領域は酸化物からなるクラッド層68であり、光の導波部を制限している。第1電極配線65と第2電極配線67間に電圧を印加すると、第1導電型半導体と第2導電型半導体の接合面において、空乏層が形成され屈折率が変化する。このキャリアプラズマ効果を利用したキャリア空乏型のシリコンベース電気光学素子60において、光が導波する光導波部は、図7において点線で囲まれた領域L5であり、主に二つの導電型の半導体の接合界面であるリブ導波路構造である。
光位相変調部2および光位相調整部3の具体的な構成について説明した。これら光位相変調部2と光位相調整部3は、電気的に分離し、光学的に接続されていることが好ましい。具体的には、光位相変調部2におけるアームの光導波部と、光位相調整部3におけるアームの光導波部とを離して配置し、かつこれらが半導体材料を介して接続されていることが好ましい。また、光位相変調部2におけるアームの光導波部を、光位相調整部3に向けて、先端が光の波長以下の幅となるように突出させ、さらに光位相調整部3におけるアームの光導波部を、光位相変調部2に向けて、先端が光の波長以下の幅となるように突出させ、これら突出した先端同士を、エバネッセント波の滲み出し距離以内で近接させていることが好ましい。
光位相変調部2と光位相調整部3が光学的に分離されていると、光を導波することができず機能しない。この光の導波を確保するために、光位相変調部2と光位相調整部3を接続しているが、光位相変調部2と光位相調整部3のそれぞれに加える電圧差によっては、光位相変調部2と光位相調整部3間で電流が流れる。この電流は位相変調および位相調整においてノイズとなるため電気的に分離することが好ましい。
以下に、光位相変調部2におけるアームの光導波部と、光位相調整部3におけるアームの光導波部とを離して配置し、かつこれらが半導体材料によって接続されていることで、電気的に分離し光学的に接続された光変調器について具体的に説明する。
図8は、光位相変調部と光位相調整部が、電気的に分離し、光学的に接続された光変調用素子の一例を模式的に示した図である。
図8(a)で示すように、光位相変調部2(A−A’断面)が、図2のSIS型接合シリコンベース電気光学素子からなる。また、光位相調整部3の光位相変調部2に隣接する部分が光位相粗調部3Aであり、この光位相粗調部3A(B−B’断面)が、図5で示すキャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子40からなる。なお、図8では、図5で示すキャリア注入型シリコンベース電気光学素子40を光位相粗調部3Aとして示したが、光位相粗調部3Aに用いることができるものであれば、その構造は問わない。また光位相変調部に隣接する部分を光位相粗調部3Aとしたが、光位相微調部3Bが隣接していてもよい。
前述しているが、SIS型接合シリコンベース電気光学素子20の光導波部L1は、第1導電型半導体21(主に、リブ導波路構造21a)、誘電体層22および第2導電型半導体23である。一方、キャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子40の光導波部L3は、真正半導体層41(主に、リブ導波路構造41a)である。
図8(b)は、SIS型接合シリコンベース電気光学素子20における光導波部L1と、キャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子40の光導波部L3との接続を模式的に示した断面図である。
SIS型接合シリコンベース電気光学素子20における光導波部L1と、キャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子40の光導波部とを、互いに突出させ、任意の距離をおいて離す。これにより電気的な分離を実現することができる。一方で、任意の距離をおいて離して配置すると、光の導波も分断されるため、絶縁性を有し光を導波させることができる半導体材料Dで接続する。半導体材料Dは、絶縁性を有するため、これらの間を接続しても電気な分離に影響は無い。絶縁性は数V程度の電位差を印加した際に、電流が流れない程度の絶縁性を有すればよい。
これに対し、SIS型接合シリコンベース電気光学素子20における光導波路L1からの光は、半導体材料Dを介してキャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子40の光導波部L3に導波することができる。半導体材料Dは、例えば多結晶シリコン、アモルファスシリコン、歪シリコン、Si1−xGe等を用いることができる。
また、このとき光導波部全てが接続されている必要は無く、その一部だけが接続されていてもよい。具体的には、例えばSIS型接合シリコンベース電気光学素子20においては、リブ導波路構造21aでも、第2導電型半導体層23でもよい。
また例えば光導波部L1の誘電体層22は、半導体材料Dと同様のものを用いているため、誘電体層22を延長することで、光導波部同士を接続することもできる。この場合、接続するために新たな層を形成する必要がなく容易に作製することができるため、より好ましい。
また、光位相変調部2におけるアームの光導波部を、光位相調整部3に向けて、先端が光の波長以下の幅となるように突出させ、さらに光位相調整部3におけるアームの光導波部を、光位相変調部2に向けて、先端が光の波長以下の幅となるように突出させ、これら突出した先端同士を、エバネッセント波の滲み出し距離以内で近接させることで、電気的に分離し光学的に接続された光変調器について具体的に説明する。
図9は、光位相変調部と光位相調整部が、電気的に分離し光学的に接続された光変調器のその他の例を模式的に示した図である。
図9(a)で示すように、光位相変調部2(A−A’断面)が、図2で示すSIS型接合シリコンベース電気光学素子20からなる。また、光位相調整部3の光位相変調部2に隣接する部分が光位相粗調部3Aであり、この光位相粗調部3A(C−C’断面)が、図6で示すキャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子40とした。なお、図9では、図6で示すキャリア注入型シリコンベース電気光学素子50を光位相粗調部3Aとして示したが、光位相粗調部3Aに用いることができるものであれば、その構造は問わない。また光位相変調部に隣接する部分を光位相粗調部3Aとしたが、光位相微調部3Bが隣接していてもよい。
前述しているが、SIS型接合シリコンベース電気光学素子20の光導波部L1は、前述のように第1導電型半導体21(主に、リブ導波路構造21a)、誘電体層22および第2導電型半導体23である。キャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子50の光導波部L4は、真正半導体層51(主に、リブ導波路構造51a)、誘電体層52および第2真正半導体層53である。
図9(b)は、SIS型接合シリコンベース電気光学素子20における光導波部L1と、キャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子50の光導波部L4との接続を模式的に示した断面図である。また図9(c)は、SIS型接合シリコンベース電気光学素子20における光導波部L1と、キャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子50の光導波部L4との接続を模式的に示した平面図である。
SIS型接合シリコンベース電気光学素子20における光導波部L1が、キャリア注入型シリコンベース光学素子50に向けて、先端が光の波長以下の幅となるように突出している。同様に、キャリア注入型シリコンベース光学素子50における光導波部L4も、SIS型接合シリコンベース電気光学素子20に向けて、先端が光の波長以下の幅となるように突出している。
このときSIS型接合シリコンベース電気光学素子20へ入射した光は、光導波部L1を通り、突出された先端まで導波する。この先端は光の波長以下の幅で形成されているため、光は導波することができない。しかし、このような光の波長以下の領域ではエバネッセント波が生じる。このエバネッセント波が減衰しきる直前までの領域に、光が導波することができる材料を近づけると、エバネッセント波は光として再放出される。SIS型接合シリコンベース電気光学素子20の光導波部L1と、キャリア注入型シリコンベース光学素子50の光導波部L4は、エバネッセント波の滲み出し距離内で近接しているため、SIS型接合シリコンベース電気光学素子20から入射した光は、エバネッセント波を介して、キャリア注入型のシリコンベース光学素子50へ導波することができる。一方、互いに突出した先端同士は物理的に離れているため、電気は通さない。そのため、このような構成とすることで、電気的に分離し光学的に接続された光変調器を実現することができる。
なお、このとき突出させる部分は、光導波部全体である必要は無く、その一部でもよい。具体的には、例えばSIS型接合シリコンベース電気光学素子20においては、リブ導波路構造21aでも、第2導電型半導体層23でもよい。また、例えばキャリアプラズマ効果を利用したキャリア注入型シリコンベース電気光学素子50においては、真正半導体層51および第2真正半導体層53のいずれでもよい。また図9(b)のように断面視した際に突出部同士が向き合う構造でも、図9(c)のように平面視した際に突出部同士が向き合う構造でもいずれも用いることができる。図9(c)の平面視した際に突出部同士が向き合う構造は、作製が容易であり好ましい。
(SIS型接合シリコンベース電気光学素子の製造方法)
図10に示したSIS型接合シリコンベース電気光学素子20の製造方法について、図10(a)〜(g)を用いて説明する。まず、図10(a)に示すように、厚さが100〜1000nm程度の埋め込み酸化膜29bが内部に形成された基板29を準備する。基板29は、SOI基板であり、少なくとも埋め込み酸化膜29bより積層面に近い側の部分が、p型、n型のいずれかの導電型を有しているものとする。基板29は、一般の方法で作製してもよく、市販品を購入してもよい。
積層面に近い側の半導体層(第1導電型半導体層)21に対するホウ素、リン、ヒ素等の不純物ドープ(イオン注入)は、基板29を製造する前に行ってもよいし、後に行ってもよい。
次に、図10(b)で示すように、フォトリソグラフィ法を用いて、矩形の突出部21a、21bとの間の部分を選択的にエッチングし、スラブ部21cを形成する。これにより、矩形の突出部21a、第1コンタクト部24に相当する部分が、他の部分に対して矩形に突出した形状となる。
ここで行うエッチングは、ウェットエッチング、ドライエッチングの何れであってもよい。ただし、スラブ部21cに相当する部分が完全に除去されてしまわないように、エッチング条件を調整する必要がある。エッチング条件の調整は、温度等を変えることによって行うことができる。スラブ部21cの厚さは、50〜150nmとするのが好ましい。
次に、図10(c)で示すように、第1導電型半導体層21の突出した矩形の突出部21bに、イオン注入法により、第1導電型の不純物をドーピングし、第1コンタクト部24を形成する。これにより、第1コンタクト部24は、第1導電型の不純物が他の部分より高濃度でドープされた状態となる。続いて、第1導電型半導体層21の突出したリブ導波路構造21a上に、誘電体層22を積層する。
次に、プラズマCVD法などの成膜法により、第1導電型半導体層21、誘電体層22上を覆うように酸化膜クラッド層28を一旦形成する。そして、図10(d)で示すように、第1導電型半導体層21、誘電体層22の形状に伴って、酸化膜クラッド層28の突出した部分をCMP法によって除去することにより、平坦化する。
次に、図10(e)に示すように、多結晶半導体層を0.1〜0.3μmの厚みで積層し、第2導電型をイオン注入することにより、第2導電型半導体層23を形成する。不純物の注入は、成膜中に行っても良い。さらに、第2導電型半導体層23の両端に、第2導電型の不純物のイオン注入を行い、当該不純物が他の部分より高濃度でドープされた第2コンタクト部26を形成する。
次に、図10(f)に示すように、再度、酸化膜クラッド層28をプラズマCVD法などにより積層し、反応性エッチングによりコンタクトホールを形成する。そして、図10(g)に示すように、スパッタ法やCVD法によりコンタクトホールを埋めるようにTi/TiN/Al(Cu)あるいはTi/TiN/Wなどの金属層を形成し、コンタクトホールの外部に延びる金属層に対して、反応性エッチングによるパターニングを行い、第1電極配線25、第2電極配線27を形成することにより、シリコンベース電気光学素子を得ることができる。なお、第1電極配線25および第2電極配線27の形成により、駆動回路との電気的な接続が可能になる。
(光変調器)
図11は、本発明の光変調器を模式的に示した図である。
本発明の光変調器100は、上記の光変調用素子10と、光変調用素子10の光位相変調部2に電圧を印加する電源101と、光変調用素子10の光位相粗調部3Aに電圧を印加する粗調用電源102と、光変調用素子10の光位相粗調部3Bに電圧を印加する微調用電源103と、光変調用素子10の光の出力側で動作点のずれを計測するモニター104構造を備える。
電源101は、光位相変調部2に電圧を印加することで光変調器を導波する光の位相を変化させる。このとき、光位相に伴い生じた動作点のずれは、モニター構造104で確認される。
確認された動作点のずれに応じて、光位相粗調部3Aおよび光位相微調部3Bのそれぞれに、粗調用電源102および微調用電源103から電圧を印加する。これらの電源から印加される電圧は、電源101の電圧以下である。
そのため、光変調器100は、電源101の電圧以上の電圧を出力可能な電源を準備する必要がなく、低消費電力を実現することができる。また出力の大きな電源は高価なため、低コストな光変調器100を実現することができる。
またモニター構造104は動作点のずれを測定することができれば、特に制限されるものではなく、一般に用いられるフォトダイオードモニター等を用いることができる。
(動作点制御方法)
本発明の動作点制御方法は、以下のステップを有する。入力された光を二つに分岐する光分岐ステップと、分岐された少なくとも一方の光導波部に、電圧が印加されることで光の位相を変化する光変調ステップと、位相が変化した光を合成する光合成ステップとを有する。また、モニター構造が、この合成した光の一部をモニターし動作点のずれを測定する測定ステップを有する。さらに、この測定ステップでの動作点のずれに基づき、光位相粗調ステップと光位相微調ステップで動作点を較正する。このとき動作点の較正は手動で行ってもよいが、モニター構造からの動作点のずれの情報を処理し、その動作点のずれに対応した電圧を出力する駆動装置により自動で行われることが好ましい。光位相粗調ステップは、駆動回路の電源電圧以下の電圧を印加することで、導波する光の位相を180°以上の範囲で変化させることができる。また、光位相微調ステップは、駆動回路の電源電圧以下の電圧を印加することで、導波する光の位相を90°以下の範囲で変化させることができる。
光分岐ステップでは、光変調器に入力された光を二つに分岐する。このとき、分岐された光は、同位相である。
次に、光変調ステップにでは、分岐された光の少なくとも一方の位相を変化させる。光の位相の変化は、電圧が光の導波部に印加されることによる光導波部の屈折率変化に伴い生じる。この位相の変化した光を、光合成ステップで再合成させる。位相のずれによって、出力される光の強度を変調させることができる。すなわち、駆動回路の電源電圧からの電気信号を、光信号に置き換えることができる。光合成ステップでの光の位相差が、出力される光信号に直接影響を及ぼすため、光変調ステップでは分岐した光の両方の位相を変化させても、その一方のみを変化させてもよい。
この光変調ステップで生じた位相差は、光合成ステップで合成された光の一部を測定することで得ることができる。また、本来生じるべき位相差と、測定された光の位相差のずれから、動作点のずれを測定することができる。
この測定は、合成した光を再分岐し、一部をフォトダイオードモニター等に接続することで行うことができる。
光位相粗調ステップと光位相微調ステップでは、測定された動作点のずれを較正することができる。
光位相粗調ステップは、光変調ステップの駆動回路の電源電圧以下の電圧を印加することで導波する光の位相を180°以上の範囲で変化させることができる。また光位相微調ステップでは、光変調ステップの駆動回路の電源電圧以下の電圧を印加することで、導波する光の位相を90°以下の範囲で変化させることができる。そのため、大きな動作点のずれは、光位相粗調ステップで較正することができ、わずかな動作点のずれは、光位相粗調ステップで較正することができる。
つまり、光位相変調ステップの駆動回路の電源電圧以下の電圧を印加するのみで、大きな動作点のずれも、わずかな動作点のずれも両方対応することができる。
(実施例1)
図12はシリコンベース電気光学素子の位相変化の印加電圧依存性を示したグラフであり、(a)は図6で示すキャリア注入型シリコンベース電気光学素子50の位相変化の印加電圧依存性を示し、(b)は、図2で示すSIS型接合シリコンベース電気光学素子20の位相変化の印加電圧依存性を示す。
キャリア注入型光位相変調部50は、200μmの長さに対して1.5Vの電圧を印加することにより、180°以上の位相変化が生じている。一方、SIS型接合シリコンベース電気光学素子20は、200μmの長さに対して1.5Vの電圧を印加することにより9度程度の位相変化しか生じていない。光位相変調部2がCMOS構造を用いる場合は、その駆動回路の電源電圧は1.8Vである。
そのため、キャリア注入型シリコンベース電気光学素子50を光位相粗調部3A、SIS型接合シリコンベース電気光学素子20を光位相微調部3Bとして適用することが可能である。
また、SIS型接合シリコンベース電気光学素子20は、印加電圧に対して比較的線形な位相変化が可能であり、位相変化の微調整には有効である。
1…光分岐構造、2…光位相変調部、3…光位相調整部、3A…光位相粗調部、3B…光位相微調部、10…光変調用素子、20…SIS型接合シリコンベース電気光学素子、30…熱光学型シリコンベース電気光学素子、40、50…キャリア注入型シリコンベース電気光学素子、60…キャリア空乏型シリコンベース電気光学素子、21、61…第1導電型半導体、31、41、51…真正半導体層、21a、31a、41a、51a…リブ導波路構造、21b…矩形の突出部、21c…スラブ部、22、32、52、62…誘電体層、23、63…第2導電型半導体層、33…高抵抗多結晶層、53…第2真正半導体層、24、34、44、54、64…第1コンタクト部、25、35、45、55、65…第1電極配線、26、46、56a、66…第2コンタクト部、27、37、47、57、67…第2電極配線、28、38、48、58、68…酸化物クラッド層、29、39、49、59、69…基板、56b…第3コンタクト部、100…光変調器、101…電源、102…粗調用電源、103…微調用電源、104…モニター、L1、L2、L3、L4、L5…光導波部、D…誘電体

Claims (8)

  1. 光の入力側で二つのアームに分岐する光分岐構造と、
    分岐した二つのアームの少なくとも一方に、駆動回路からの電圧を印加することにより光の位相を変調する光位相変調部と、
    前記光位相変調部に直列的に連なる二つのアームの少なくとも一方に、光位相変調部の駆動回路の電源電圧以下の電圧を印加することにより動作点を調整する光位相調整部と、
    光位相調整部からの光を光の出力側で結合する光結合構造とを備え、
    前記光位相調整部が、光位相粗調部と光位相微調部とを有し、
    前記光位相粗調部は、前記駆動回路の電源電圧以下の電圧を、二つのアームの少なくとも一方に印加することにより180°以上の範囲で光位相変化できるように設計され、
    前記光位相微調部は、前記駆動回路の電源電圧以下の電圧を、二つのアームの少なくとも一方に印加することにより90°以下の範囲で光位相変化できるように設計されていることを特徴とする光変調用素子。
  2. 前記光位相変調部の二つのアームが、シリコンベース電気光学素子からなり、
    前記シリコンベース電気光学素子が、
    基板上に、前記基板と反対側に矩形に突出するリブ導波路構造を有する第1導電型半導体層と、前記リブ導波路構造の上に積層された誘電体層と、前記誘電体層上に積層された第2導電型半導体層とを有し、
    前記第1導電型半導体層は、第1導電型の不純物が他の部分より高濃度にドープされた第1コンタクト部を介して、第1電極配線に接続され、
    前記第2導電型半導体層は、第2導電型の不純物が他の部分より高濃度にドープされた第2コンタクト部を介して、第2電極配線に接続されており、
    さらに前記第1コンタクト部は、第1導電型半導体層のスラブ部に対して矩形に突出していることを特徴とする請求項1に記載の光変調用素子。
  3. 前記光位相調整部において、
    前記光位相粗調部および前記光位相微調部が、各アームにあることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の光変調用素子。
  4. 前記光位相調整部において、
    前記光位相粗調部が、二つのアームのいずれか一方にあり、
    前記光位相微調部が、前記光位相粗調部と異なるアームにあることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の光変調用素子。
  5. 前記光位相変調部における各アームの光導波部と、前記光位相調整部における各アームの光導波部とを離して配置し、かつこれらが半導体材料を介し接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光変調用素子。
  6. 前記光位相変調部における各アームの光導波部を、前記光位相調整部に向けて、先端が光の波長以下の幅となるように突出させ、
    さらに前記光位相調整部における各アームの光導波部を、前記光位相変調部に向けて、先端が光の波長以下の幅となるように突出させ、
    これら突出した先端同士を、エバネッセント波の滲み出し距離以内で近接させていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光変調用素子。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の光変調用素子と、前記光変調用素子の光位相変調部に電圧を印加する電源と、前記光変調用素子の光位相粗調部に電圧を印加する粗調用電源と、前記光変調用素子の光位相微調部に電圧を印加する微調用電源と、前記光変調用素子の光の出力側で動作点のずれを計測するモニターとを備える光変調器。
  8. 入力された光を二つに分岐する光分岐ステップと、
    分岐された少なくとも一方の光導波部に、駆動回路からの電圧が印加されることで光の位相を変化する光変調ステップと、
    位相が変化した光を再合成する光合成ステップと、
    再合成した光の一部をモニターし、動作点のずれを測定する測定ステップと、
    前記測定ステップでの動作点のずれに基づき、動作点を較正する光位相粗調ステップおよび光位相微調ステップとを有し、
    前記光位相粗調ステップは、駆動回路の電源電圧以下の電圧を分岐された少なくとも一方の光導波部に印加することで、導波する光の位相を180°以上の範囲で変化させることができ、
    前記光位相微調ステップは、駆動回路の電源電圧以下の電圧を分岐された少なくとも一方の光導波部に印加することで、導波する光の位相を90°以下の範囲で変化させることができることを特徴とする動作点制御方法。
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