以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
先ず、図1を参照して、実施形態に係る自動車1の概略構成について説明する。自動車1は、推進駆動源としてエンジン2を搭載しており、エンジン2の出力をオートマティックトランスミッション(以下、単にトランスミッション4と記す。)および前輪車軸5を介して駆動輪に伝達する。つまり、エンジン2やトランスミッション4によって自動車1の推進駆動装置が構成される。なお、図示例では、自動車1は前輪6を駆動輪とする前輪駆動車であるが、後輪7を駆動輪とする後輪駆動車または前後両車輪6、7を駆動輪とする四輪駆動車とすることもできる。トランスミッション4は、多段式であっても連続可変式(CVT)であってもよい。
なお、自動車1は、推進駆動源としてエンジン2の代わりにまたはエンジン2とともに、想像線で示すモータ・ジェネレータ3を搭載する電気自動車またはハイブリッド車であってもよい。この場合、モータ・ジェネレータ3は、走行用の電動機と回生用の発電機とを兼ねたものであり、二次電池であるバッテリ8からの電力供給とバッテリ8に対する電力供給(充電)とをインバータ9によって制御され、減速時に減速エネルギを電力に変換回生して回生制動力を発生する回生制動手段としても機能する。
図2に併せて示すように、自動車1には、着席した運転者の右足元近傍に左右に並んだ位置にそれぞれ踏み込み操作可能に設けられたアクセルペダル11およびブレーキペダル12や、ステアリングホイール13に設けられ、オートクルーズシステムや後述するアクセル無効化モードでの操作に供されるクルーズ操作ユニット14、ステアリングホイール13に設けられ、各種のカスタマイズ設定を行うことができる外部操作部材15、トランスミッション4の変速モードの変更操作に供されるシフト操作部材16などの各種操作部材が運転席周りに設けられている。また、運転席の正面にはインストルメントパネル17が配置され、自動車1の通電状態や操作状態、走行状態、後述する始動モードなどの各種情報が表示されるようになっている。
また自動車1には、マイクロコンピュータやROM、RAM、周辺回路、入出力インタフェース、各種ドライバ等から構成された制御ユニット20や、車速Vを検出する車速センサ21、アクセルペダル11の踏込量(以下、アクセル踏込量θaと称する。)を検出するアクセルセンサ22、ブレーキペダル12の踏み込みを検出するブレーキセンサ23などが適所に設けられている。
アクセルペダル11は、運転者が足で踏み込む操作を行うことで自動車1を加速させる加速操作用部材である。自動車1では、アクセルペダル11と出力制御機器(スロットルバルブ24や燃料噴射装置25(図6参照))とがケーブル等によって接続されないドライブ・バイ・ワイヤ式とされている。アクセルペダル11には、アクセルペダル11に対して踏み力に抵抗する所望の踏込反力Frを付与するアクセルペダル反力制御装置26が付設されている。
制御ユニット20は、アクセルセンサ22の検出値に基づいてエンジン2の燃料噴射装置25やスロットルバルブ24などの出力制御機器を駆動制御することで、エンジン2の出力を制御する。また制御ユニット20は、アクセルセンサ22の検出値などに応じたマニュアル加速モードでの出力制御を行うほか、クルーズ操作ユニット14の操作に応じて自動車1を設定車速Vsに保つ自動運転を行うオートクルーズモードでもエンジン2の出力を制御する。
制御ユニット20は、このようなエンジン2の出力制御の他、シフト操作部材16の操作位置に基づいてトランスミッション4の変速モードを選択するとともに、選択した変速モードで車速Vやエンジン出力などに応じてトランスミッション4のギヤ段あるいはギヤ比を変更する変速制御を行い、自動車1の推進装置を加減速制御する。また、自動車1が電気自動車またはハイブリッド車である場合、制御ユニット20はモータ・ジェネレータ3の出力/回生も制御する。
図3に示すように、クルーズ操作ユニット14は、走行中に操作しやすいように、ニュートラル位置にあるステアリングホイール13の右縁部近傍に設けられている。クルーズ操作ユニット14は、メイン電源操作部材31、キャンセル操作部材32および加減速操作部材33の3つの部材によって構成されている。加減速操作部材33には、加速(ACCEL)操作領域、および減速(DECEL)/設定(SET)操作領域が設定され、両操作領域の裏側にそれぞれ1つのオンオフスイッチが設けられている。加減速操作部材33は、同時操作が行えないように1つの部材によって構成されているが、実質的には加速操作部材34と減速/設定操作部材35との2つの部材とによって構成されており、クルーズ操作ユニット14は実質的に4つの部材から構成されている。なお、本実施形態では、オートクルーズシステムが起動中でオートクルーズモードが実行されておらず、かつ所定の条件を満たしているときに、オートクルーズモードを中止する前の設定車速Vsでオートクルーズモードを再開させる機能を備えないものとして説明するが、この機能を持たせるために、別途、再開(RESUME)操作部を設けたり、例えばキャンセル操作部材32などにこの機能を持たせたりしてもよい。
各操作部材31〜33は、ステアリングホイール13の外面に沿った初期位置と当該外面から凹陥した操作位置との間を変位可能に設けられ、図示しない付勢手段によって付勢されることで通常時は初期位置側に配置されている。メイン電源操作部材31は、操作位置に押し込み操作されると、操作位置にある間、電源切替信号Spを出力する。キャンセル操作部材32は、操作位置に押し込み操作されると、操作位置にある間、キャンセル信号Scを出力する。加速操作部材34は、操作位置に押し込み操作されると、操作位置にある間、加速信号Saを出力する。減速/設定操作部材35は、操作位置に押し込み操作されると、操作位置にある間、減速/設定信号Sdを出力する。すなわち、これらの操作部材31、32、34、35は、操作の程度を検知しないオンオフ式のスイッチを構成している。なお、減速/設定信号Sdについては、減速処理に用いられる場合には減速信号Sdと称し、オートクルーズモードの選択処理に用いられる場合には設定信号Sdと称することがある。
詳細は後述するが、メイン電源操作部材31は、電源切替信号Spを出力することでオートクルーズシステムの起動および停止(言い換えれば、マニュアル加速モードからオートクルーズモードへのモード切替操作が有効な状態の設定および解除)を切り替えることができる。キャンセル操作部材32は、キャンセル信号Scを出力することで、オートクルーズシステムが起動中でオートクルーズモードが設定(実行)されているときにオートクルーズモードを中止することができる。加速操作部材34は、加速信号Saを出力することで、オートクルーズモード実行中に設定車速Vsを増加できる。減速/設定操作部材35は、減速/設定信号Sdを出力することで、オートクルーズモード実行中に設定車速Vsを低減できるほか、オートクルーズシステムが起動中でオートクルーズモードが実行されておらず、かつ所定の条件を満たしているときに、その時点での車速Vを設定車速Vsに設定してオートクルーズモードを開始させることができる。つまり、加減速操作部材33は、オートクルーズモードの実行中に設定車速Vsの加減操作を行うことができる。
図4に示すように、アクセルペダル反力制御装置26は、アクセルペダル11に付与する踏込反力Frを発生する反力アクチュエータ36と、反力アクチュエータ36に発生させる踏込反力Frを制御する反力制御ユニット37とを備える。アクセルペダル11は、下端が車体に回動自在に連結されるとともに、上部にペダルアーム38が連結されており、図示しないリターンスプリングにより付勢されたペダルアーム38によって原位置側(起立側)へ常時付勢されている。反力アクチュエータ36は、回転運動型の電動モータ39と、電動モータ39の出力軸に連結された旋回アーム40とを備えており、電動モータ39が旋回アーム40に回転トルクを加えることにより、旋回アーム40をペダルアーム38に摺接させてアクセルペダル11に踏込反力Frを付与する。
反力制御ユニット37は、アクセルペダル11に対し、図5に実線で示すように、アクセルペダル11を踏み込む方向に動作させるときは大きく、戻す方向に動作させるときは小さくなるヒステリシス特性をもって踏込反力Frを与える。以下、図5に実線で示す特性の踏込反力Frを通常値と呼ぶ。一方、後述するように車速Vが所定の閾値Vth(例えば、20km/h)未満であることによりアクセルペダル11による加速操作が無効とされているときには、反力制御ユニット37は、破線で示すようにアクセル踏込量θaの全範囲で値を通常値よりも増大させた無効値に踏込反力Frを設定する。なお、図5に一点鎖線で示すようにアクセル踏込量θaの全範囲で通常値よりも減少させた値を踏込反力Frの無効値とすることもできる。
図6に示すように、制御ユニット20には、アクセルセンサ22からのアクセル踏込量θa、ブレーキセンサ23からのブレーキ信号Sb、車速V、加速信号Sa、減速/設定信号Sd、キャンセル信号Sc、電源切替信号Sp、外部操作信号Sohが入力している。
電源切替信号Spはクルーズ電源設定部41に入力している。クルーズ電源設定部41は、自動車1の図示しないイグニッションスイッチがオンにされたときに、オートクルーズシステムのメイン電源の電源状態MPをオフに設定するとともに、電源切替信号Spが入力すると、オートクルーズシステムのメイン電源の電源状態MP(オン/オフ)を切り替える。オートクルーズシステムのメイン電源の電源状態MPがオンになったときには、インストルメントパネル17にその旨の表示がされる。
始動モード設定部42は、イグニッションスイッチがオンにされたときに選択する始動モードSMとして、車速Vが閾値Vth(20km/h)未満の場合にアクセルペダル11の操作に基づく加速制御を無効とするアクセル無効化モードと、車速Vが閾値Vth(20km/h)未満の場合にもアクセルペダル11の操作に基づく加速制御を有効とするアクセル有効化モードとを有している。始動モード設定部42は、イグニッションキーがオンに操作されて制御ユニット20が起動したときに、メモリMを読み込み、メモリMに記憶された始動モードSM(アクセル無効化モードまたはアクセル有効化モード)を選択的に設定する。始動モードSMとしてアクセル無効化モードがメモリMに設定されているときには、インストルメントパネル17にその旨の表示がされる。
メモリMに記憶された始動モードSMは、外部操作部材15が出力する外部操作信号Sohによってアクセル無効化モードとアクセル有効化モードとを(電源状態のオン/オフを)切り替えられ、イグニッションキーが操作されて制御ユニット20が停止した後にも保持されるようになっており、起動時に選択される始動モードSMを運転者が好みに合わせて設定できるようになっている。
なお、始動モードSMがアクセル無効化モードに設定されている場合には、始動時のオートクルーズシステムの電源状態MPがオンに設定されるようにしてもよい。このような形態とすることにより、メイン電源操作部材31を操作しなくとも、車速Vが閾値Vth以上であるときにクルーズ開始操作を行う(減速/設定操作部材35を押す)ことで、オートクルーズモードでの車速維持が可能になり、加速操作性が向上する。
オートクルーズシステムの電源状態MPは出力制御モード選択部43に入力する。出力制御モード選択部43には、ブレーキ信号Sb、車速V、加速信号Sa、減速/設定信号Sdおよびキャンセル信号Scも入力する。出力制御モード選択部43は、入力したこれらの信号に基づいて、オートクルーズモードおよびマニュアル加速モードのいずれか一方をエンジン2の出力制御モードCMとして選択する。なお、オートクルーズモードが選択(実行)されると、インストルメントパネル17にその旨の表示がされる。
具体的には、出力制御モード選択部43は、オートクルーズシステムの電源状態MPがオンであり、車速Vが閾値Vth(例えば、20km/h)以上のときに、設定信号Sdが入力すると、オートクルーズモードを選択する。オートクルーズモードが選択されているときには、ブレーキ信号Sbまたはキャンセル信号Scが入力した場合に、出力制御モード選択部43はオートクルーズモードの選択を解除してマニュアル加速モードを選択する。なお、閾値Vthは、運転者のカスタマイズ設定によって変更可能とすることもできる。
出力制御モード選択部43から出力される出力制御モードCMおよび出力制御モード選択部43に入力する各種信号は、マニュアル加速モード出力設定部44およびクルーズモード出力設定部45に入力する。また、始動モード設定部42から出力される始動モードSMは、マニュアル加速モード出力設定部44に入力する。マニュアル加速モード出力設定部44は、出力制御モードCMとしてマニュアル加速モードが選択されているときにエンジン2の目標出力Ptを設定する。クルーズモード出力設定部45は、出力制御モードCMとしてオートクルーズモードが選択されているときにエンジン2の目標出力Ptを設定する。詳細については図7および図8を参照しながら後述する。
マニュアル加速モード出力設定部44またはクルーズモード出力設定部45によって設定された目標出力Ptは、出力制御部46に入力する。出力制御部46は、燃料噴射制御部47とスロットル制御部48とを備えている。燃料噴射制御部47は、目標出力Ptに応じ、エンジン2に設けられた燃料噴射装置25の燃料噴射量および噴射時期などを制御する。スロットル制御部48は、目標出力Ptに応じ、エンジン2に付設されたスロットルバルブ24の開度を制御する。これにより、エンジン2の出力が制御される。
図7に示すように、マニュアル加速モード出力設定部44は、アクセル踏込量θaに基づいて第1目標出力Pt1を設定する第1目標出力設定部51と、加速信号Saに基づいて第2目標出力Pt2を設定する第2目標出力設定部52とを有している。第1目標出力設定部51は、アクセル踏込量θaと略比例するように第1目標出力Pt1を設定する。なお、本実施形態では、始動モードSMとしてアクセル無効化モードが設定されている場合、第1目標出力設定部51は、車速Vが所定の閾値Vth(例えば、20km/h)未満のときには第1目標出力Pt1を0に設定する。一方、第2目標出力設定部52は、始動モードSMとしてアクセル無効化モードが設定されている場合、加速信号Saが入力している間、自動車1を加速させるように、車速Vに応じて第2目標出力Pt2を設定する。これに対し、始動モードSMとしてアクセル有効化モードが設定されている場合、第2目標出力設定部52は、加速信号Saの入力の有無に関わらず第2目標出力Pt2を0に設定する。すなわち、アクセル有効化モードでは、オートクルーズモードにならない限り、加減速操作部材33(加速操作部材34)の操作は無効である。
また、始動モードSMとしてアクセル無効化モードが設定されている場合、第2目標出力設定部52は、加速操作部材34が単なるクリック操作で長押しされ、所定の単位時間内に分断することなく加速信号Saが継続的に入力した場合には、比較的小さい第1加速度をもって自動車1を加速させるように第2目標出力Pt2を設定する。一方、加速操作部材34がダブルクリック操作に続けて長押しされ、所定の単位時間内に分断する2回の信号入力に続けて加速信号Saが継続的に入力した場合には、第1加速度に比べて大きい第2加速度をもって自動車1を加速させるように、第2目標出力設定部52は第2目標出力Pt2を設定する。つまり、運転者が加速操作部材34を単なるクリック操作で長押し操作した場合には、第1加速度に対応する第2目標出力Pt2が設定される一方、運転者がダブルクリック操作を行った後に加速操作部材34を長押し操作した場合には、第2加速度に対応する第2目標出力Pt2が設定される。
第1目標出力Pt1は、第1目標出力補正部53を介して目標出力選択部54に入力する。第1目標出力補正部53には車速Vも入力しており、第1目標出力補正部53は、車速Vが閾値Vth以上になった後に所定時間にわたって第1目標出力Pt1の時間微分値である増大速度が所定の値で制限されるように第1目標出力Pt1を補正する。これは、アクセルペダル操作が無効とされる、車速Vが閾値Vth(20km/h)未満で走行していた状態から、車速Vが閾値Vth以上となり、アクセルペダル11の踏込反力Frが図5の無効値から通常値に切り替えられた直後に、運転者によるアクセルペダル11の誤操作によって自動車1が急加速することを抑制するために行われる。車速Vの代わりに、反力制御ユニット37が設定するアクセルペダル11の踏込反力Frが第1目標出力補正部53に入力し、踏込反力Frが無効値から通常値に切り替えられたことをもって第1目標出力Pt1の増大速度を制限する形態としてもよい。
目標出力選択部54には、第2目標出力Pt2も入力する。目標出力選択部54は、入力した第1目標出力Pt1および第2目標出力Pt2のうち値が大きい方を目標出力Ptとして選択し、出力制御部46に向けて出力する。ただし、目標出力選択部54は、始動モードSMとしてアクセル無効化モードが設定されかつ車速Vが閾値Vth(例えば、20km/h)未満の場合、第1目標出力Pt1を無効とし、必ず第2目標出力Pt2を選択する。本実施形態では、前述したようにアクセル無効化モードが設定されかつ車速Vが閾値Vth(例えば、20km/h)未満の場合に第1目標出力設定部51が第1目標出力Pt1を0に設定することで、第1目標出力Pt1が予め無効に(選択されない状態に)なっている。
図8に示すように、クルーズモード出力設定部45は、クルーズ車速設定部56を有している。クルーズ車速設定部56は、クルーズモード出力設定部45が起動したとき、すなわち車速Vが閾値Vth以上であり、設定信号Sdの入力によって出力制御モード選択部43がオートクルーズモードを選択したときに、その時点の車速Vをオートクルーズシステムの目標車速として設定車速Vsに設定する。その後のクルーズモード出力設定部45の起動中すなわちオートクルーズモードの実行中には、クルーズ車速設定部56は、加速信号Saが入力すると設定車速Vsに所定値(例えば、1.5km/h)を加算する一方、減速信号Sdが入力すると設定車速Vsから所定値(例えば、1.5km/h)を減算する。
設定車速Vsは、第3目標出力設定部57に入力する。第3目標出力設定部57には車速Vも入力する。第3目標出力設定部57は、入力した設定車速Vsと車速Vとの偏差および車速Vに基づいて第3目標出力Pt3を設定する。第3目標出力Pt3は目標出力選択部58に入力する。
また、クルーズモード出力設定部45は、前述したマニュアル加速モード出力設定部44の第1目標出力設定部51と同一の機能を有する第1目標出力設定部61を有している。なお、マニュアル加速モード出力設定部44の第1目標出力補正部53に相当する機能部は設けられていない。第1目標出力設定部61からは、第1目標出力設定部51と同一の第1目標出力Pt1が出力され、目標出力選択部58に入力する。
目標出力選択部58は、入力した第1目標出力Pt1および第3目標出力Pt3のうち値が大きい方を目標出力Ptとして選択し、出力制御部46に向けて出力する。なお、クルーズモード出力設定部45が起動するオートクルーズモードの実行中は、車速Vが閾値Vth未満であることはないため、第1目標出力Pt1が無効とされることはない。
次に、このように構成された制御ユニット20による各種制御の手順を説明する。
まず、制御ユニット20(始動モード設定部42)は、イグニッションキーがオンにされて起動すると、図9にその手順を示す始動モード設定制御を行う。制御ユニット20は、メモリMに記憶された始動モードSMを読み込み(ステップST1)、記憶された始動モードSMがアクセル無効化モードであるか否か判定する(ステップST2)。この判定がYesであれば、制御ユニット20は、始動モードSMとしてアクセル無効化モードを設定し(ステップST3)、Noであれば始動モードSMとしてアクセル有効化モードを設定して(ステップST4)、設定した始動モードSMを出力して(ステップST5)本処理を終了する。
また、制御ユニット20(クルーズ電源設定部41)は、イグニッションキーがオンにされて起動すると、オートクルーズシステムのメイン電源の電源状態MPをオフに設定した後、図10にその手順を示すクルーズ電源制御を行う。制御ユニット20は、電源切替信号Spが入力したか否かを判定し(ステップST6)、電源切替信号Spが入力していなければ、設定されている電源状態MPをそのまま出力し(ステップST10)、本処理を繰り返す。ステップST6で電源切替信号Spが入力している場合(Yes)、制御ユニット20は、現在設定されている電源状態MPがオンであるか否かを判定し(ステップST7)、Yesであれば電源状態MPをオフに設定してオートクルーズシステムを停止し(ステップST8)、Noであれば電源状態MPをオンに設定してオートクルーズシステムを起動する(ステップST9)。その後、制御ユニット20は、設定した電源状態MPを出力し(ステップST10)、本処理を繰り返す。
また、制御ユニット20(出力制御モード選択部43)は、イグニッションキーがオンにされて起動すると、図11にその手順を示す出力制御モード選択制御を行う。制御ユニット20は、クルーズ電源設定部41によって設定されたオートクルーズシステムの電源状態MPがオンであるか否かを判定する(ステップST11)。オートクルーズシステムの電源状態MPがオフであれば(ステップST11:No)、制御ユニット20は、出力制御モードCMとしてマニュアル加速モードを選択する(ステップST12)。一方、オートクルーズシステムの電源状態MPがオンであれば(ステップST11:Yes)、制御ユニット20は、現在の車速Vが閾値Vth以上であるか否かを判定し(ステップST13)、車速Vが閾値Vth以上である場合には(ステップST13:Yes)、設定信号Sdが入力しているか否か(ステップST14)を判定する。車速Vが閾値Vth未満の場合(ステップST13:No)、および設定信号Sdが入力していない場合(ステップST14:No)、制御ユニット20は、出力制御モードCMとしてマニュアル加速モードを選択する(ステップST12)。一方、車速Vが閾値Vth以上であり(ステップST13:Yes)かつ設定信号Sdが入力している(ステップST14:Yes)場合、制御ユニット20は、現在の車速Vを設定車速Vsに設定する(ステップST15)。
その後、制御ユニット20は、キャンセル信号Scが入力したか否かを判定し(ステップST16)、キャンセル信号Scが入力していない場合(ステップST16:No)、ブレーキ信号Sbが入力したが否かを判定する(ステップST17)。キャンセル信号Scが入力した場合(ステップST16:Yes)、およびブレーキ信号Sbが入力した場合(ステップST17:Yes)、制御ユニット20は、出力制御モードCMとしてマニュアル加速モードを選択する(ステップST12)。一方、キャンセル信号Scが入力しておらず(ステップST16:No)、かつブレーキ信号Sbが入力していない場合(ステップST17:No)、制御ユニット20は、出力制御モードCMとしてオートクルーズモードを選択する(ステップST18)。
ステップST12およびステップST18で出力制御モードCMを選択した後、制御ユニット20は、選択した出力制御モードCMを出力し(ステップST19)、本手順を繰り返す。
出力制御モード選択部43によってマニュアル加速モードを選択する出力制御モードCMが出力されると、制御ユニット20(マニュアル加速モード出力設定部44)は、図12にその手順を示すマニュアル加速モード出力設定制御を行う。制御ユニット20は、まず車速Vを読み込み(ステップST21)、次に、始動モードSMとしてアクセル無効化モードが設定されているか否かを判定する(ステップST22)。始動モードSMとしてアクセル無効化モードが設定されている場合(ステップST22:Yes)、制御ユニット20は次に、車速Vが閾値Vth以上であるか否かを判定する(ステップST23)。車速Vが閾値Vth未満の場合(ステップST23:No)、制御ユニット20は、第1目標出力Pt1を0に設定して(ステップST24)ステップST29に進む。
ステップST22で始動モードSMとしてアクセル有効化モードが設定されている場合(No)、および、ステップST23で車速Vが閾値Vth以上である場合(Yes)、制御ユニット20は、アクセル踏込量θaを読み込み(ステップST25)、アクセル踏込量θaに応じた第1目標出力Pt1を演算する(ステップST26)。次いで、制御ユニット20は、車速Vが閾値Vth以上になった後に所定時間が経過しているか否かを判定し(ステップST27)、この判定がYesの場合、そのままステップST29に進み、Noの場合、第1目標出力Pt1の増大速度が所定の値以下となるように制限して第1目標出力Pt1を補正して(ステップST28)ステップST29に進む。
ステップST29では、制御ユニット20は再度、始動モードSMとしてアクセル無効化モードが設定されているか否かを判定する(ステップST29)。ステップST29で始動モードSMとしてアクセル有効化モードが設定されている場合(No)、制御ユニット20は、第2目標出力Pt2を0に設定して(ステップST30)ステップST36に進む。一方、ステップST29で始動モードSMとしてアクセル無効化モードが設定されている場合(Yes)、制御ユニット20は、加速信号Saが入力しているか否かを判定し(ステップST31)、この判定がNoの場合、第2目標出力Pt2をアイドリング値に設定して(ステップST32)ステップST36に進む。一方、ステップST31で加速信号Saが入力している場合(Yes)、制御ユニット20は、加速信号Saが所定の単位時間内に分断する2回の信号入力、すなわちダブルクリック操作を伴っているか否かを判定し(ステップST33)、この判定がNoであれば、比較的小さい第1加速度をもって自動車1を加速させる第2目標出力Pt2を演算して(ステップST34)ステップST36に進む。一方、ステップST33の判定がYesであれば、制御ユニット20は、第1加速度に比べて大きい第2加速度をもって自動車1を加速させる第2目標出力Pt2を演算して(ステップST35)ステップST36に進む。
ステップST36では、制御ユニット20は、第1目標出力Pt1が第2目標出力Pt2よりも大きいか否かを判定する。ステップST36で第1目標出力Pt1が第2目標出力Pt2よりも大きい場合(Yes)、制御ユニット20は、第1目標出力Pt1を目標出力Ptに選択して(ステップST37)、目標出力Ptを出力し(ステップST39)、本手順を繰り返す。一方、ステップST36で第1目標出力Pt1が第2目標出力Pt2以下である場合(No)、制御ユニット20は、第2目標出力Pt2を目標出力Ptに選択して(ステップST38)、目標出力Ptを出力し(ステップST39)、本手順を繰り返す。
一方、出力制御モード選択部43によってクルーズモードを選択する出力制御モードCMが出力されると、制御ユニット20(クルーズモード出力設定部45)は、図13にその手順を示すクルーズモード出力設定制御を行う。制御ユニット20は、図11のステップST15で設定された設定車速Vsを読み込み(ステップST41)、加速信号Saが入力しているか否かを判定し(ステップST42)、加速信号Saが入力している場合(Yes)、設定車速Vsに所定値(例えば、1.5km/m)を加算して設定車速Vsを上書きする(ステップST43)。一方、ステップST42で加速信号Saが入力していない場合(No)、制御ユニット20は、減速信号Sdが入力しているか否かを判定し(ステップST44)、減速信号Sdが入力している場合(Yes)、設定車速Vsから所定値(例えば、1.5km/m)を減算して設定車速Vsを上書きする(ステップST45)。その後、制御ユニット20は、設定車速Vsと現在の車速Vとの偏差および車速Vに基づいて第3目標出力Pt3を演算する。なお、ステップST44で減速信号Sdが入力していない場合(No)は、ステップST41で読み込んだ設定車速Vsと現在の車速Vとの偏差は0になり、制御ユニット20は、車速Vに基づいて第3目標出力Pt3を演算することになる。
その後、制御ユニット20は、アクセル踏込量θaを読み込み(ステップST47)、アクセル踏込量θaに応じた第1目標出力Pt1を演算する(ステップST48)。次に、制御ユニット20は、第3目標出力Pt3が第1目標出力Pt1よりも大きいか否かを判定し(ステップST49)、この判定がYesであれば、第3目標出力Pt3を目標出力Ptに選択する(ステップST50)。第1目標出力Pt1が第3目標出力Pt3よりも大きく、ステップST49の判定がNoであれば、制御ユニット20は、第1目標出力Pt1を目標出力Ptに選択する(ステップST51)。
その後、制御ユニット20は、ステップST50またはステップST51で選択した目標出力Ptを出力し(ステップST52)、本手順を繰り返す。
このように、本実施形態に係る推進操作装置は、足による自動車1の加速操作を行うことができるアクセルペダル11と、手による自動車1の加速操作を行うことができる加速操作部材34と、アクセルペダル11および加速操作部材34のいずれの操作によっても自動車1を加速させるように燃料噴射装置25やスロットルバルブ24を操作してエンジン2を加速制御する制御ユニット20とを備える。そして、制御ユニット20は、図11の出力制御モード選択制御のステップST13において車速Vが閾値Vth未満(No)の場合に、ステップST12でマニュアル加速モードを選択し、かつ図12のマニュアル加速モード出力設定制御のステップST23において車速Vが閾値Vth未満(No)の場合に、ステップST24で第1目標出力Pt1を0に設定することで、アクセルペダル11の操作に基づく加速制御を無効とし、ステップST36およびステップST38で第2目標出力Pt2を選択することで、加速操作部材34の操作に応じてエンジン2を加速制御する。これにより、閾値Vth未満の低速域でのブレーキペダル12とアクセルペダル11との踏み間違えによる誤加速を防止できるとともに、閾値Vth以上の車速域においてはアクセルペダル11の操作に基づく加速制御を残存させて良好な操作性を確保できる。
本実施形態では、制御ユニット20は、図11の出力制御モード選択制御のステップST13において車速Vが閾値Vth未満(No)の場合、および車速Vが閾値Vth以上であり(ステップST13:Yes)、ステップST14、ステップST16およびステップST17の判定結果に応じ、ステップST12でマニュアル加速モードを選択した場合には、図12のマニュアル加速モード出力設定制御のステップST34およびステップST35において、加速操作部材34の操作によって加速信号Saが入力する間、自動車1を加速させるようにエンジン2を加速制御する。これにより、運転者が加速操作部材34をアクセルペダル11と同様の操作感覚で操作して自動車1を加速させることが可能になる。
本実施形態では、制御ユニット20は、図12のマニュアル加速モード出力設定制御において、車速Vが閾値Vth未満であるときに選択し得る第2目標出力Pt2を、加速操作部材34がダブルクリック操作を伴わない態様で操作され、ステップST33の判定がNoの場合には、ステップST34において比較的小さい第1加速度をもって自動車1を加速させるように第2目標出力Pt2を設定する。一方、加速操作部材34がダブルクリック操作を伴う態様で操作され、ステップST33の判定がYesの場合には、制御ユニット20は、ステップST35において第1加速度に比べて大きな第2加速度をもって自動車1を加速させるようにエンジン2を加速制御する。これにより、加速操作部材34が操作の程度を検知しないオンオフ式であっても、閾値Vth未満の車速範囲において、操作の態様によって2つの加速度を設定することが可能になり、運転者が状況に合わせた加速度を選択できるようになる。
また、第2加速度を選択する操作が、所定の単位時間内に行われる分断した2回の操作であるダブルクリック操作を伴うものであるため、運転者が簡単な操作で第2加速度を選択できるようになっている。
本実施形態では、制御ユニット20は、図12のマニュアル加速モード出力設定制御のステップST23において、車速Vが閾値Vth未満(No)の場合に、アクセルペダル11の操作に基づく加速制御を無効とする(ステップST24)アクセル無効化モード(ステップST22:Yes)と、車速Vが閾値Vth未満の場合にもアクセルペダル11の操作に基づく加速制御を有効(ステップST26)とするアクセル有効化モード(ステップST22:No)とを有し、自動車1のイグニッションスイッチがオンにされたときに設定する始動モードSMとして、アクセル無効化モードおよびアクセル有効化モードの一方を外部操作部材15で選択的にカスタマイズ設定可能である。これにより、制御ユニット20が起動時に選択する始動モードSMとしてアクセル無効化モードまたはアクセル有効化モードに運転者が好みに合わせて設定できるため、様々なユーザにとって使い勝手のよいセッティングが可能である。
本実施形態では、制御ユニット20は、図12のマニュアル加速モード出力設定制御のステップST23において、車速Vが閾値Vth以上(Yes)の場合に、ステップST36およびステップST37において第1目標出力Pt1を選択可能とすることで、アクセルペダル11の操作に基づく加速制御を有効とするとともに、ステップST36およびステップST38において第2目標出力Pt2を選択可能とすることで、加速操作部材34の操作に基づく加速制御を有効とする。これにより、ステップST23で車速Vが閾値Vth以上(Yes)になった後には、運転者がアクセルペダル11と加速操作部材34とのうち好みの方を操作して自動車1を加速させることができる。また、ステップST23で車速Vが閾値Vth以上(Yes)になっても加速操作部材34の操作に基づく加速制御が無効にならないため、運転者は加速操作部材34を操作し続けることで、車速Vが閾値Vthに達したときに自動車1の加速度が急減することを防止できる。
本実施形態では、制御ユニット20は、図12のマニュアル加速モード出力設定制御のステップST23において、車速Vが閾値Vth以上(Yes)の場合、ステップST36において、ステップST24、ST26、ST28で設定したアクセル踏込量θaに基づく第1目標出力Pt1と、ステップST32、ST34、ST35で設定した加速操作部材34の加速信号Saに基づく第2目標出力Pt2とを比較し、ステップST37またはステップST38で値が大きい方を選択してステップST39で目標出力Ptとして出力する。これにより、より大きい目標出力Ptに基づいてエンジン2が加速制御されるため、加速操作部材34の操作に基づく制御からアクセルペダル11の操作に基づく制御への移行時あるいはその逆への移行時に、目標出力Ptの急変が防止され、スムーズな加速が実現される。
本実施形態では、制御ユニット20は、図12のマニュアル加速モード出力設定制御のステップST23において車速Vが閾値Vth以上(Yes)であるときに選択し得る第2目標出力Pt2についても、加速操作部材34がダブルクリック操作を伴わない態様で操作され、ステップST33の判定がNoの場合には、ステップST34において比較的小さい第1加速度をもって自動車1を加速させるように第2目標出力Pt2を設定する。一方、加速操作部材34がダブルクリック操作を伴う態様で操作され、ステップST33の判定がYesの場合には、制御ユニット20は、ステップST35において第1加速度に比べて大きな第2加速度をもって自動車1を加速させるように第2目標出力Pt2を設定してエンジン2を加速制御する。これにより、加速操作部材34が操作の程度を検知しないオンオフ式であっても、閾値Vth以上の車速範囲において、操作の態様によって2つの加速度を設定することが可能になり、運転者が状況に合わせた加速度を選択できるようになる。
本実施形態に係る推進操作装置は、自動車1を設定車速Vsに維持するオートクルーズシステムの電源操作に供されるメイン電源操作部材31と、加速操作部材34を含み、手による設定車速Vsの加減操作を行うことができる加減速操作部材33とを更に備えている。そして、制御ユニット20は、図11の出力制御モード選択制御において、ステップST11でオートクルーズシステムの電源状態MPがオンであり(Yes)且つステップST13で車速Vが閾値Vth以上(Yes)であるときに、減速/設定操作部材35が操作されてステップST14で設定信号Sdの入力を検出した(Yes)場合、これをクルーズ開始操作として、ステップST18でオートクルーズモードを選択し、図13のクルーズモード出力設定制御に従ってエンジン2の出力を制御する。また、図11の出力制御モード選択制御において、ステップST11でオートクルーズシステムの電源状態MPがオンであり(Yes)且つステップST13で車速Vが閾値Vth以上(Yes)であるときに、ステップST14で設定信号Sdの入力を検出しない(No)場合、制御ユニット20は、ステップST12でマニュアル加速モードを選択し、図12のマニュアル加速モード出力設定制御に従って、ステップST36〜ステップST38において、アクセルペダル11の操作に応じた第1目標出力Pt1および加速操作部材34の操作に応じた第2目標出力Pt2に基づいてエンジン2を加速制御する。これにより、オートクルーズシステムの設定車速Vsを加減する加減速操作部材33を利用して手で操作する加速操作部材34を実現できる。また、運転者は、加速操作部材34を操作することで、クルーズモード出力設定制御の実行中にもマニュアル加速モード出力設定制御の実行中にも自動車1を加速させることができ、加速操作性が向上する。
本実施形態では、制御ユニット20は、図13のクルーズモード出力設定制御を実行している場合、加減速操作部材33の加速操作(ステップST42の加速信号Sa入力)および減速操作(ステップST44の減速信号Sd入力)に応じて、ステップST43およびステップST45で設定車速Vsを加減し、当該設定車速Vsに基づいてステップST46で第3目標出力Pt3を演算してエンジン2の出力を制御する。また、図11のステップST13で車速Vが閾値Vth以上(Yes)であるが、ステップST12でマニュアル加速モードを選択している場合、制御ユニット20は、図12のステップST26で演算した、アクセル踏込量θaに応じた第1目標出力Pt1と、ステップST34およびステップST35で演算した、加速信号Saの入力すなわち加速操作部材34の加速操作に応じた第2目標出力Pt2とに基づいてエンジン2を加速制御する(ステップST37、ステップST38)。これにより、アクセル無効化モード(ステップST29:Yes)では閾値Vth以上の車速V範囲においては、オートクルーズモードの実行の如何に関わらず加減速操作部材33を操作することで自動車1を加速させることができ、加速操作性が向上する。
本実施形態では、制御ユニット20は、イグニッションスイッチがオンにされたときに、図9の始動モード・クルーズ電源設定制御を行い、始動モードSMとしてアクセル無効化モードが設定されている場合(ステップST2:Yes)、ステップST3で、アクセル無効化モードを設定するとともに、電源状態MPをオンに設定してオートクルーズシステムを起動する。これにより、メモリMの始動モードSMをアクセル無効化モードに設定しておけば、運転者は、メイン電源操作部材31を操作しなくとも、図11のステップST13で車速Vが閾値Vth以上(Yes)であるときに、減速/設定操作部材35を操作して設定信号Sdを入力する(ステップST14:Yes)ことで、ステップST18でオートクルーズモードを選択させて一定車速走行を行うことができ、加速操作性が向上する。
本実施形態では、アクセルペダル11の踏込反力Fr(踏込み操作に必要な踏込み荷重)を調整可能なアクセルペダル反力制御装置26を更に備えており、アクセルペダル反力制御装置26は、車速Vが閾値Vth未満(ステップST22:No)であり、アクセルペダル11による加速操作が無効とされる場合、アクセルペダル11の踏込反力Frを図5に破線で示す無効値に増大させる。これにより、閾値Vth未満の車速V範囲でアクセルペダル11による加速操作ができなくなっていることを運転者に認識させることができる。
あるいは、アクセルペダル反力制御装置26は、車速Vが閾値Vth未満(ステップST22:No)の場合、図5に一点鎖線で示されるように通常値よりも減少させた値を踏込反力Frの無効値とすることもでき、これによっても閾値Vth未満の車速V範囲でアクセルペダル11による加速操作ができなくなっていることを運転者に認識させることができる。
<変形実施形態>
次に、図14および図15を参照して変形実施形態に係る、アクセル無効化モードにおけるマニュアル加速モード出力制御について説明する。なお、推進操作装置のハード構成および制御ユニット20の構成は、上記実施形態と同一であるためその説明を省略する。また、アクセル有効化モードに設定されている場合のマニュアル加速モード出力制御の手順も、上記実施形態と同一であるため、ここでは説明を省略する。
本変形実施形態のマニュアル加速モード出力制御では、制御ユニット20は、まず車速Vを読み込み(ステップST21)、車速Vが閾値Vth以上であるか否かを判定する(ステップST23)。車速Vが閾値Vth未満である場合(No)、制御ユニット20は、第1目標出力Pt1を0に設定する(ステップST24)。その後、制御ユニット20は、運転者によってブレーキ操作が行われているか否かを判定する(ステップST61)。ここで、ブレーキ操作とは、ブレーキペダル12の操作であってよいが、減速/設定操作部材35の長押し操作などを含めても良い。
ステップST61でブレーキ操作が行われていない場合(No)、制御ユニット20は、後述する加速フラグFaが0に設定されているか否かを判定する(ステップST62)。ステップST62で加速フラグFaが0に設定されている場合(Yes)、制御ユニット20は、加速信号Saが入力しているか否かを判定し(ステップST63)、加速信号Saが入力していない場合には(No)、第2目標出力Pt2をアイドリング値に設定して(ステップST64)ステップST72に進む。
一方、ステップST63で加速信号Saが入力している場合(Yes)、制御ユニット20は、加速フラグFaを1に設定し(ステップST65)、その後、加速信号Saが所定の単位時間内に分断する2回の信号入力、すなわちダブルクリック操作を伴っているか否かを判定する(ステップST66)。ステップST66でダブルクリック操作を伴っていない場合(No)、制御ユニット20は、後述する高加速度フラグFbを0に設定する(ステップST67)。一方、ステップST66でダブルクリック操作を伴っている場合には(Yes)、制御ユニット20は、高加速度フラグFbを1に設定する(ステップST68)。
その後、制御ユニット20は、高加速度フラグFbが0に設定されているか否かを判定し(ステップST69)、この判定がYesであれば、車速Vが比較的小さい第1加速度をもって自動車1を加速させる第2目標出力Pt2を演算して(ステップST70)ステップST72に進む。一方、ステップST69で高加速度フラグFbが1に設定されており、その判定がNoの場合には、制御ユニット20は、第1加速度に比べて大きい第2加速度をもって自動車1を加速させる第2目標出力Pt2を演算して(ステップST71)ステップST72に進む。ステップST72では、制御ユニット20は、ステップST64、ステップST70またはステップST71で設定または演算された第2目標出力Pt2を目標出力Ptとして出力し、本手順を繰り返す。
加速信号Saの入力によって(ステップST63:Yes)ステップST65で加速フラグFaが1に設定されると、次のルーチンではステップST62の判定がNoになる。この場合、制御ユニット20は、加速信号Saの入力に関わらず、ステップST69に進んで高加速度フラグFbの判定に応じ、ステップST70またはステップST71で第2目標出力Pt2を演算し、演算した第2目標出力Pt2を目標出力Ptとして出力し、本手順を繰り返す。すなわち、運転者が加速操作部材34を一度操作すると、その後操作を行わなくても自動車1の加速が継続する。
加速フラグFaが1に設定されており、加速信号Saが入力していない状態、すなわち運転者が加速操作部材34を操作していない状態で自動車1が加速している最中であっても、運転者がブレーキ操作を行うと、ステップST61の判定がYesとなる。この場合には、制御ユニット20は、加速フラグFaを0に設定するとともに(ステップST75)、高加速度フラグFbを0に設定する(ステップST76)。
ステップST76で高加速度フラグFbを0に設定した後は、制御ユニット20は、図14中にA〜Bとして示す処理を行って本手順を繰り返す。A〜Bの間で行われる処理の内容については後述する。
一方、自動車1が加速を続けて車速Vが閾値Vth以上になると、ステップST21の判定がYesとなる。この場合には、制御ユニット20は、次に車速Vが所定の第1車速V1以上であるか否かを判定する(ステップST73)。ここで、第1車速V1は、後述するように加速操作部材34が一度操作されると、その後操作が行われなくても、車速Vがその値になるまで自動車1の加速を継続させる速度として制御ユニット20により設定された速度であり、本実施形態では閾値Vthよりも大きな一定の値(例えば、25km/h)とされている。すなわち、V1=Vth+α(ただし、αは正数(例えば、5km/h))とされている。他の実施形態として、第1車速V1が運転者による任意の設定が可能な一定値や、制御ユニット20が運転傾向や走行状態などに応じて設定する変動値であってもよい。また、第1車速V1は、閾値Vthよりも大きな値に限られるものではなく、閾値Vthと同一(α=0)や、閾値よりも小さな値(αが負数)であってもよい。
ステップST73において、後述するステップST77〜ST89の手順を経て車速Vが既に第1車速V1以上になっており、Yesと判定された場合、制御ユニット20は、ステップST75に進んで加速フラグFaを0に設定し、ステップST76で高加速度フラグFbを0に設定した後、A〜Bの処理を行って本手順を繰り返す。
一方、ステップST73において、車速Vが閾値Vth以上になった直後で未だ車速Vが第1車速V1に達しておらず、Noと判定された場合、制御ユニット20は、次に運転者によってブレーキ操作が行われているか否かを判定し(ステップST74)、ブレーキ操作が行われている場合には、ステップST75に進んで加速フラグFaを0に設定し、ステップST76で高加速度フラグFbを0に設定した後、A〜Bの処理を行って本手順を繰り返す。ブレーキ操作が行われておらず、ステップST74の判定がNoである場合、制御ユニット20は、ステップST75およびステップST76の処理を行わずに、A〜Bの処理を行って本手順を繰り返す。
図14中に示すA〜Bの処理について図15を参照して説明する。制御ユニット20は、アクセル踏込量θaを読み込み(ステップST77)、アクセル踏込量θaに応じた第1目標出力Pt1を演算する(ステップST78)。次いで、制御ユニット20は、車速Vが閾値Vth以上になった後に所定時間が経過しているか否かを判定し(ステップST79)、この判定がYesの場合、そのままステップST81に進み、Noの場合、第1目標出力Pt1の増大速度が所定の値以下となるように制限して第1目標出力Pt1を補正して(ステップST80)ステップST81に進む。
ステップST81では、制御ユニット20は、加速フラグFaが0に設定されているか否かを判定し(ステップST81)、この判定がYesの場合、第2目標出力Pt2をアイドリング値に設定して(ステップST82)ステップST86に進む。一方、ステップST81で加速フラグFaが1に設定されている場合(Nos)、制御ユニット20は、高加速度フラグFbが0に設定されているか否かを判定し(ステップST83)、この判定がYesであれば、比較的小さい第1加速度をもって自動車1を加速させる第2目標出力Pt2を演算して(ステップST84)ステップST86に進む。一方、ステップST83の判定がNoであれば、制御ユニット20は、第1加速度に比べて大きい第2加速度をもって自動車1を加速させる第2目標出力Pt2を演算して(ステップST85)ステップST86に進む。
ステップST86では、制御ユニット20は、第1目標出力Pt1が第2目標出力Pt2よりも大きいか否かを判定する。ステップST86で第1目標出力Pt1が第2目標出力Pt2よりも大きい場合(Yes)、制御ユニット20は、第1目標出力Pt1を目標出力Ptに選択して(ステップST87)、目標出力Ptを出力し(ステップST89)、図14のBに戻って本手順を繰り返す。一方、ステップST86で第1目標出力Pt1が第2目標出力Pt2以下である場合(No)、制御ユニット20は、第2目標出力Pt2を目標出力Ptに選択して(ステップST88)、目標出力Ptを出力し(ステップST89)、図14のBに戻って本手順を繰り返す。
このような処理が行われることにより、加速信号Saが入力してステップST63の判定が一度Yesになると(加速操作部材34が一度操作されると)、車速Vが閾値Vth以上になっても(ステップST23:Yes)、車速Vが第1車速V1になるまで(ステップST73:Yes)あるいはブレーキ操作がなされるまでは(ステップST74:Yes)、加速フラグFaや高加速度フラグFbが0にならず、図12のステップST84またはステップST85において第2目標出力Pt2が算出され、自動車1が第1加速度または第2加速度をもって加速を続けることになる。また、車速Vが閾値Vth以上になると(ステップST23:Yes)、図15に示すフローにしたがって、アクセル踏込量θaに応じた第1目標出力Pt1が算出され(ステップST78)、ステップST86〜ステップST89において、大きいほうの目標出力が出力される。すなわち、アクセルペダル11の操作に基づく加速制御が有効になる。
このように、本変形実施形態では、制御ユニット20は、車速Vが第1車速V1未満の場合(ステップST23:No)、加速操作部材34が一度操作される(ステップST63:Yes)と、車速Vが第1車速V1になる(ステップST73:Yes)までエンジン2を加速制御する(ステップST70、ステップST71、ステップST82、ステップST74)。これにより、発進直後にハンドル操作を行う場合のように、加速操作部材34を操作し続けることが困難な状況にあっても、車速Vが第1車速V1にまるまで自動車1を加速させる操作を運転者が容易に行うことができる。
また、本実施形態では、第1車速V1が閾値Vthよりも大きな値に設定されている(V1=Vth+α(ただし、αは正数))ため、運転者が加速操作部材34を一度操作すると(ステップST63:Yes)、自動車1が閾値Vthよりも大きな第1車速V1になるまで加速し、加速完了時点(ステップST73:Yes)でアクセルペダル操作が有効になる(ステップST78)。そのため、再度加速操作部材34を押し続ける操作を行わなくても、アクセルペダル11を操作することで自動車1を引き続き加速させることができ、加速操作部材34とアクセルペダル11とによる加速操作をより簡単に行うことができる。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、一例として自動車1に適用した推進操作装置として説明を行ったが、鉄道車両などにも広く適用することができる。また、上記実施形態では、加減速操作部材33が、オンオフ式の加速操作部材34と減速/設定操作部材35とにより構成されるとものとして説明したが、加減速操作部材33の形式はこれに限られず、例えばレバー式やダイヤル式など、他の形式のものであってもよい。また、上記実施形態では、ダブルクリック操作を伴う場合に加速度が大きくなるようにエンジン2の出力を制御しているが、操作態様はこれに限られず、例えば、加減速操作部材33が段階的操作を可能に構成されている場合には、2段階目の操作が行われた場合に加速度が大きくなるようにエンジン2の出力を制御してもよい。あるいは、加速度増加部材を別途設けた場合には、加速度操作部材の操作によって所定の加速設定がなされた状態で、または加速度操作部材と共に操作されることで、加速操作部材34の操作による加速度が大きくなるようにエンジン2の出力を制御してもよい。この場合、所定の加速設定を段階的にすることも可能である。
また、上記実施形態では、制御ユニット20が、ステップST36において、アクセルペダル11による第1目標出力Pt1と加速操作部材34による第2目標出力Pt2とを比較し、大きい方を選択している(ステップST37、ST38)が、アクセルペダル11および加速操作部材34の両方が操作されている場合には、それぞれの要求出力の合算値を目標出力Ptとしてもよい。
また、上記実施形態では、アクセル無効化モードでは車速Vが閾値Vth以上になっても加速操作部材34の操作による加速を可能にしているが、車速Vが閾値Vth未満の場合のみに加速操作部材34の操作による加速を可能とし、車速Vが閾値Vth以上のときにはオートクルーズモードの設定車速Vsの変更のみを可能にする形態とし、例えば、アクセル無効化モードでは制御ユニット20の起動時にオートクルーズシステムのメイン電源の電源状態MPをオンに設定するとともに、車速Vが閾値Vthになった瞬間にオートクルーズモードが選択されるようにしたり、アクセル無効化モードではオートクルーズシステムのメイン電源の電源状態MPをオンに設定し、車速Vが閾値Vthになった後にはオートクルーズモードへのモード切替操作が行われない限り加速できないようにしてもよい。また、上記実施形態では、運転者が外部操作部材15を操作してアクセル無効化を解除するカスタマイズ設定を行い、車速Vが閾値Vth未満であってもアクセルペダル11による加速操作を有効にできるようにしているが、例えば車速Vが閾値Vth未満の場合には、アクセルペダル11による加速操作が必ず無効となる形態とすることも可能である。
さらに、上記実施形態では、アクセル無効化モードでは車速Vが所定の閾値Vth未満のときにアクセルペダル11の操作による加速を無効化し、加速操作部材34の操作によって自動車1を加速させるようにしているが、減速/設定操作部材35が押圧操作された場合に、エンジンブレーキよりも大きな所定の減速度で自動車1を減速させるようにしてもよい。このようにすることにより、運転者がペダル操作を行わずに自動車1を加減速することができる。また、上記実施形態と変形実施形態とを組み合わせた形態、例えば、加速操作部材34をクリックすると、比較的小さな加速度で第1車速V1まで加速し、加速操作部材34をクリックすると、標準的な加速度で第1車速V1まで加速し、加速操作部材34を押し続けると、比較的大きな加速度で加速し続ける形態などとすることも可能である。
この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、各制御の具体的手順や順序、数値など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素や各制御の処理要素などは必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。