本発明における光学用基材は、以下の特徴的構成を備えたものである。すなわち、本発明の光学用基材は、以下の(1)〜(4)の各特徴的構成を備えている。
(光学用基材の特徴的構成)
(1)基材主面から面外方向に延在する複数の凸部又は凹部から構成される複数のドット集合体が点在してなる微細凹凸構造が形成されている。
(2)各ドット集合体は、凸部又は凹部の複数のドットが六方格子構造の格子点に離間してなり、且つ各ドット間は、ナノオーダーのピッチで配置されている。
(3)ドット集合体を構成する複数のドットのうち基準ドットが設けられており、複数のドット集合体のうち任意に選択された第1のドット集合体の基準ドットから最近接格子点に位置するドットとの重心位置間を結んだ直線を基準ベクトルiとし、基準ベクトルiから120度回転させて得られるベクトルをjとし、m及びnを1000以下の正の整数とし、少なくとも一方を2以上とし、M及びNを夫々、一定範囲内での連続する整数としたとき、前記第1のドット集合体の前記基準ドットから見た各ドット集合体の前記基準ドットは、(Nm−Mn)i+{Nn+M(m−n)}jの格子点に位置している。
(4)各ドット集合体が互いに同じ六方格子構造の格子点配置となるように、各ドット集合体間にて対応する前記ドット同士が、各基準ドットに対して同一の格子点配置とされている。
本発明において、六方格子とは互いに120°をなす実質的に長さの等しいベクトルi、jに対して整数係数a,bの位置ベクトルai+bjの位置を格子点とする格子構造を意味する。
上記した各特徴的構成について、図1を用いて説明する。図1は、第1の実施の形態に係る光学用基材を示す部分平面模式図である。
図1は、光学用基材1の基材主面(表面)1aの一部分を示している。光学用基材1の基材主面1aには微細凹凸構造2が形成されている。
図1に示すように、基材主面1aには、X方向とY方向とからなる面から面外方向であるZ方向に延在する凸部あるいは凹部から構成される複数のドット集合体3、4、5、6・・・が点在する微細凹凸構造2が形成されている(上記した(1)の特徴的構成)。
なお図1において、実線で示すドットは実在するドットであり、点線で示すドットは存在しておらず、すなわち実線で示したドットは基材主面1aに凸部あるいは凹部として形成されているが、点線で示したドットは基材主面1aには形成されておらずフラットな面とされる。点線で示したドットは格子点を示したものである。
図1に示すように点在する各ドット集合体3、4、5、6・・・は、凸部又は凹部の複数のドットが六方格子構造(六方格子パターン)の格子点に離間して構成され、且つ、各ドット間はナノオーダーのピッチで配置される(上記した(2)の特徴的構成)。
図1に示すように各ドット集合体3、4、5、6・・・は、中心のドットと、その周囲に6個のドットが配置され、各ドットはナノオーダーのピッチで離間して配置されている。本発明では、このように離間して配置されたドット集合体の配列を「超格子配列構造」と定義する。中心のドットと、その周囲に配置された6個のドットは、夫々、六方格子構造の格子点に位置している。
またナノオーダーとは、1nm以上1000nm未満の範囲を指す。ピッチとは、各ドットの中心(重点)位置を直線で結んだ長さ(間隔)である。図1におけるピッチは略700nmである。
図1に示すように、ドット集合体を構成する複数のドットのうち基準ドット3a、4a、5a、6a・・・が設けられている。例えば六方格子構造の中心ドットが基準ドットとされる。
複数のドット集合体から第1のドット集合体3を任意に選択する。第1のドット集合体3において、第1のドット集合体3の基準ドット3aから最近接格子点に位置するドット3bの重心位置(中心位置)間を結んだ直線を基準ベクトルiとする。最近接格子点とは、基準ドット3aから最も近い位置にあるドット3bを指すが、図1では、基準ドット3aの周囲に位置する6個のドットがいずれも基準ドット3aから等間隔に配置されているので、基準ベクトルiを他のドット間との間のベクトルで規定してもよい。ここでは、基準ドット3aから右隣にあるドット3bを選択して基準ベクトルiをX方向に平行なベクトル方向としている。基準ベクトルiから正の向きに120°回転させて得られるベクトルをjとする。「正の向き」とは基準ベクトルiから紙面上方向に向けての方向を指す。
ここで、第1のドット集合体3の基準ドット3aから見た各ドット集合体4、5、6・・・の基準ドット4a、5a、6a・・・は、(Nm−Mn)i+{Nn+M(m−n)}jの格子点に位置している(上記した(3)の特徴的構成)。ここで、m及びnは、1000以下好ましくは100以下の正の整数であり、少なくとも一方は2以上であり、M及びNは一定範囲内での同じ整数及び/又は連続する整数である。
m及びnは、基準とする第1のドット集合体3の基準ドット3aに対して第1の隣接するドット集合体の基準ドット位置がi方向にmピッチ、j方向にnピッチ変位したドット位置に存在している事を意味する。そして、その位置から120°回転させた位置は、i方向に−nピッチ、j方向に(m−n)ピッチ変位した位置であって、その位置にも隣接するドット集合体の基準ドットが位置している。第1の隣接ドット集合体の基準ドットの位置ベクトルmi+njと、第2の隣接ドット集合体の基準ドットの位置ベクトル−ni+(m−n)jとからN,Mを整数として、N(mi+nj)+M{−ni+(m−n)j}=(Nm−Mn)i+{Nn+M(m−n)}jの位置ベクトルに一般のドット集合体を配列することを意味している。
m、nが両者とも1の場合は、既存の六方配列であり、少なくとも一方が2以上であれば超格子配列が可能となる。また、n、mが1000を超えると表面の輝度斑が大きいため好ましくなく、n、mが100以下であれば輝度斑が特に小さくなり好ましい。
また、(M、N)の組み合わせは光学用基材のサイズや形状に応じて(M、N)を平面上の格子点で表した場合、一定範囲の連続した範囲の値を取る。
例えば、(M、N)=(0、1)、(1、1)(2、1)(3、1)(4、1)(5、1)(6、1)・・・、(M、N)=(1、0)(2、0)(2、0)(4、0)(5、0)(6、0)・・・、(M、N)=(0、−1)(1、−1)(2、−1)(3、−1)(4、−1)(5、−1)(6、−1)・・・(M、N)=(2、−2)(3、−2)(4、−2)・・・等である。
N、Mは、整数の組み合わせの連続する範囲から必要とする光学用基材の大きさ、基礎となる六方格子構造のドット間距離(ピッチ)に応じて適宜選択されるが、本発明の光学用基材としての性能を発揮するためにはその範囲の大きさは、100以上であることが好ましい。なおM、Nが共に0のとき、第1のドット集合体3の基準ドット3aの格子点位置を示している。
ドット集合体4の基準ドット4aは、基準ドット3aの位置から(Nm−Mn)i+{Nn+M(m−n)}jの式に規定されたM、N、m、nを夫々、0、1、3、−1として計算された3i―jのベクトルV1の格子点位置に配置されている。
また、ドット集合体5の基準ドット5aは、基準ドット3aの位置から(Nm−Mn)i+{Nn+M(m−n)}jの式に規定されたM、N、m、nを夫々、1、1、3、−1として計算された4i+3jのベクトルV2の格子点位置に配置されている。
また、ドット集合体6の基準ドット6aは、基準ドット3aの位置から(Nm−Mn)i+{Nn+M(m−n)}jの式に規定されたM、N、m、nを夫々、1、0、3、−1として計算されたi+4jのベクトルV3の格子点位置に配置されている。
このようにして、本発明では、各ドット集合体の基準ドットを求める。そして、各ドット集合体が互いに同じ六方格子構造の格子点配置となるように、各ドット集合体間にて対応する前記ドット同士を、各基準ドットに対して同一の格子点配置に設定する(上記した(4)の特徴的構成)。例えば、第1のドット集合体3を構成するドット3bと、それに対応するドット集合体4のドット4bとは夫々、各基準ドット3a、4aから見て同一の格子点配置とされている。他のドットについても同様である。
本発明では、上記によって定められたドット以外の格子点領域にドットは存在していない。すなわち図1に示す点線のドットは格子点を示しているだけで実在しないドットであり、図1に示す第1の実施の形態では、各ドット集合体間が、1個のドット(格子点)の間隔分、空けられている。
図2は、第2の実施の形態に係る光学用基材を示す部分平面模式図である。図2は、m=5、n=2とし、代表的に(M、N)=(0、1)、(1、0)、(1、1)として第1のドット集合体3から離間した3つのドット集合体10、11、12の基準ドット間のベクトルV4、V5、V6を求めた。ベクトルV4は、5i+2j(M,N=0、1)、ベクトルV5は、3i+5j(M、N=1、1)、ベクトルV6は、−2i+3j(M、N=1、0)であった。
図2では、図1と異なって、各ドット集合体間が2個のドット(格子点)の間隔分、空けられている。
図3は、第3の実施の形態に係る光学用基材を示す部分平面模式図である。m=6、n=1とし、代表的に(M、N)=(0、1)、(1、0)、(1、1)として第1のドット集合体3から離間した3つのドット集合体13、14、15の基準ドット間のベクトルV7、V8、V9を求めた。ベクトルV7は、6i+j(M,N=0、1)、ベクトルV8は、5i+6j(M、N=1、1)、ベクトルV9は、−i+5j(M、N=1、0)であった。
図3では、図1と異なって、各ドット集合体間が3個のドット(格子点)の間隔分、空けられている。
図4は、第4の実施の形態に係る光学用基材を示す部分平面模式図である。図4では図3と同様に、m=6、n=1とした。図3に示すように、基準ドットの周囲に6個のドットを配置した六方格子構造のドット集合体では、各ドット集合体間に3個分のドットの間隔が空くので、1個分のドットの間隔だけが空くように、図4では、各ドット集合体16、17、18、19ではドット数を図3からもう一周分、外側に増やしてドット集合体を構成した。
図5は、第5の実施の形態に係る光学用基材を示す部分平面模式図である。図5に示す各ドット集合体(複数の実線のドットが六方格子構造の格子点配置とされた集合体)は、図2のドット集合体の位置(図5に示す破線円)から、下記の条件に基づいてランダムに移動配置されている。
すなわち、図5に示す実施の形態では、上記の(1)〜(4)の特徴的構成に加えて、さらに(5)の特徴的構成を備えている。
(5)第1のドット集合体の基準ドットから見た各ドット集合体の前記基準ドットは、(Nm−Mn)i+{Nn+M(m−n)}jの格子点からKを0.01以上1.00以下の定数及びPを最近接格子点間距離としたKP√(m2−mn+n2)内に存在する格子点へランダムに配置移動されている。ここでKは、0.01以上1.00以下の定数であり、Pは最近接格子点間距離である。Kは超格子点間距離を基準としたときに超格子点をランダムに移動させるときの範囲を示す係数であり、Kは0.01よりも小さいとき変位の光学的効果が少なくギラツキ低減効果が低いため好ましくなく、1.00を超えると隣接するドット集合体の位置と共通するドットを占めるドットの割合が増えて光取り出し効率が低下する傾向が有り好ましくない。
ここで図2の実施の形態と同様に、m=5、n=2とすると、√(m2−mn+n2)は√19となる。K=0.3、P=700nmとすると、0.3×700(nm)×√19≒910nmとなり、基準ドットを(Nm−Mn)i+{Nn+M(m−n)}jの格子点から半径910nmの円内に存在する格子点へランダムに移動配置している。
図6は、第6の実施の形態に係る光学用基材を示す部分平面模式図である。図6に示す基材主面1a内の第1方向(X方向)は、ドットがピッチPxにて配置される方向で、第1方向に直行する第2方向(Y方向)は、ドットがピッチPyにて配置される方向である。図6では、図2で示した各ドット集合体の六方格子構造の格子点位置を、第1方向(X方向)にドットが一定間隔のピッチPxで配置され、第2方向(Y方向)にドットが不定間隔のピッチPyとなるように変化させた実施の形態である。
このため例えば図6に示すドット集合体20とドット集合体21とでは、第1方向(X方向)へのドットのピッチPxは同じであるが、第2方向(Y方向)へのドットのピッチPyはやや異なっている。
ここで本発明ではナノオーダーの不定間隔が変動幅δであることが好ましい。変動幅δは、第2方向におけるドット間のピッチPyの標準偏差σの3倍の値であり、第2方向のピッチPyを100点以上計測して算出される値で定義される。また、変動幅δは、平均ピッチPyavより小さいことが好ましい。変動幅δは、特に、平均ピッチPyavの1%以上50%以下の範囲であると、複数のドット間のピッチPyの大きさが適度な範囲となるので、光散乱性による発光効率向上効果とカラーシフト低減効果を実現できる。変動幅δは、さらに、平均ピッチPyavの5%以上30%以下の範囲であると、光散乱性よる光取り出し効率向上効果とカラーシフト低減効果に加え、さらに、回折による光取り出し効率向上効果と、表面プラズモン共鳴による光取り出し効率向上効果が共に得られるのでより好ましい。
また、上記の実施の形態では、第1方向のピッチPxを一定間隔とし、第2方向のピッチPyを不定間隔としたが、第2方向のピッチPyを一定間隔とし、第1方向のピッチPxを不定間隔としてもよく、あるいは、第1方向及び第2方向の各ピッチPx、Pyを不定間隔としてもよい。
図7は、第7の実施の形態に係る光学用基材を示す部分平面模式図である。図7に示す基材主面1a内の第1方向(X方向)は、ドットがピッチPxにて配置される方向で、第1方向に直行する第2方向(Y方向)は、ドットがピッチPyにて配置される方向である。図7では、図5で示した各ドット集合体の六方格子構造の格子位置を、第1方向(X方向)にドットが一定間隔のピッチPxで配置され、第2方向(Y方向)にドットが不定間隔のピッチPyとなるように変化させた実施の形態である。
このため例えば図7に示すドット集合体22とドット集合体23とでは、第1方向(X方向)へのドットのピッチPxは同じであるが、第2方向(Y方向)へのドットのピッチPyはやや異なっている。
ドット集合体のドットは、各ドット集合体の基準ドットに対して3回対称配置、あるいは、6回対称配置をとることが好ましい。基準ドットは、格子位置を変調させる前の状態で各ドット集合体内のドットの配置を意味し、図1ないし図7に示す例示はすべて正6角形配置をとる。
図8は、第8の実施の形態に係る光学用基材を示す部分平面模式図であり、図9は、第9の実施の形態に係る光学用基材を示す部分平面模式図であり、図10は、第10の実施の形態に係る光学用基材を示す部分平面模式図であり、図11は、第11の実施の形態に係る光学用基材を示す部分平面模式図である。
図8は、正六角形でない各ドット集合体が6回対称配置にて配置された例であり、図9は、各ドット集合体が正三角形の形状とされた例であり、図10は、正三角形でない各ドット集合体が3回対称構造にて配置された例である。また図11は、基準ドットに対して同一の位置にドットが存在する超格子配列構造を示す例である。
ドット集合体はその基準ドットを含み互いに隣接する六方格子位置をたどって到達できる六方格子位置に置かれたドットからなる集合体であり、好ましくは、ある対称中心の基準ドットに対して3回対称、6回対称な対称性を持った配置をとる集合体であり、その例として、特にもっとも外側の格子点位置に配置された各ドットの外周を直線状に辿り、あるいは各ドットの中心(重心)を直線状で辿ると六角形の形状となるパターンが「正六角形ドット集合体」として定義される。
(透明誘電体層)
本実施の形態に係る光学用基材は、微細構造層の基材主面(微細凹凸構造)上に、ドット形状に対応する形状を有した透明導電体層を具備していてもよい。さらに、透明誘電体層における、微細構造層と反対側の主面が平坦化されていることが好ましい。なお、ドット形状に対応する形状とは、透明誘電体層の有するドット形状と、微細構造層の有するドット形状とが、転写形状の関係にあることを意味する。すなわち、微細構造層の微細凹凸構造は、透明誘電体層により充填されていることを意味する。
透明誘電体層における微細構造層と反対側の主面が平坦化されていることにより、例えば、本実施の形態の光学用基材を、有機EL発光素子に対する基材として使用した場合に、有機EL発光素子の電流短絡を抑制でき、信頼性の向上に繋がる。平坦化の程度は、使用される発光素子の特性に合わせて適宜選択することができる。例えば、短絡を抑制するという観点から、Ra≦10nmであることが好ましく、Ra≦5nmがより好ましく、Ra≦2nmがさらに好ましく、最も好ましくはRa≦1nmである。なお、Raは原子間力顕微鏡(AFM)にて測定可能である。
有機EL発光素子は、発光部上に透明導電膜層を積層し、透明導電膜層上に透明誘電体層を介して光学用基材を貼り付けて構成される。このとき、光学用基材における透明誘電体層側が、透明導電膜層に接するように配置される。すなわち、光学用基材における基材の露出する面が、発光部から最も離れて配置される。
有機EL発光素子において、発光部の透明導電膜層と接している主面と反対側の主面上に、光拡散層を設けてもよい。この場合には、カラーシフトをより抑制することができる。また、発光素子において、発光部の透明導電膜層と接している主面と反対側の主面上に、光反射層を設けてもよい。この場合には、光学用基材へ到達する光強度を向上させることができる。
(光学用基材の材料構成)
本発明における光学用基材の材料は特に限定されるものではなく、樹脂、誘電体、半導体、及び金属のいずれかの材料を用いることができる。
有機EL発光素子からの発光が、本発明の光学用基材に反射して、発光素子から発光する場合、本発明の光学用基材の表面は、少なくとも、金属等の反射性材料で構成されている必要がある。光学用基材として、金属を用い、光学用基材上に有機EL発光素子を設けた場合、表面プラズモン共鳴による光取り出し効果を得やすく好ましい。
この場合、光学用基材は、例えば、誘電体からなるドット構造を有する光学用基材の表面上に金属膜を被覆して形成されることが好ましい。あるいは、誘電体等の表面にフラットな金属膜を形成し、その後、金属膜にパターニングする等の手法により得られるが、製法にはとくに限定しない。光学用基材が樹脂基材で構成されている場合には、ドット構造を有する樹脂基材の上に金属膜を被覆する方法で得られる。
光学用基材に適用される金属は、目的とする波長により適宜選択される。例えば、紫外光の発光素子に用いる場合には、電磁波の振動により金属の自由電子が追従できなくなる周波数(プラズマ周波数)の高いアルミニウムが好ましく、例えば380nm〜650nmの波長領域の発光素子に用いる場合は、可視の全波長域において高い反射率を示す銀、又はアルミニウムを用いることが好ましく、誘電率の実部の絶対率の小さい銀を用いることが特に好ましい。可視域の赤色、例えば580nm〜780nmの波長領域においては、その波長領域における反射率の高い銀又は金を用いることが好ましい。
有機EL発光素子からの発光が本発明の光学用基材を透過する発光素子の構成である場合、本発明の光学用基材は光透過性の材料で構成されていることが必要である。
また、基材と微細構造層が同じ材料で構成されていてもよく、異なる材料で構成されていてもよい。基材と微細構造層が異なる材料で構成されていると、各々に要求される特性を種々選択することが可能となり好ましい。
(基材の材質)
基材としては、樹脂、誘電体、半導体、及び金属のいずれかの材料を用いることができる。例えば、石英、ガラス、金属、シリコン、セラミック等の無機基材や、樹脂基材等を用いることができる。樹脂基材としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニリデン共重合体樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等の非晶性熱可塑性樹脂を用いることができる。また、樹脂基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等の結晶性熱可塑性樹脂を用いることができる。さらに、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系等の紫外線(UV)硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等を用いることができる。また、光学用基材として、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂と、ガラス等の無機基材、熱可塑性樹脂、トリアセテート樹脂等を組み合わせた複合基材を用いてもよい。
基材として樹脂基材を用いると、フレキシブルかつ軽い光学用基材が得られる。また、ロールツーロール方式の製造方法に容易に適用できる等、工業生産上の利点が多い。
(微細構造層の材質)
有機EL発光素子からの発光が、本発明の光学用基材に反射して、発光素子から発光する場合、少なくとも微細構造層は金属等の反射性材料であることが好ましい。微細構造層として、金属を用い、光学用基材上に有機EL発光素子を設けた場合、表面プラズモン共鳴による光取り出し効果を得やすく好ましい。また、誘電体等の金属以外の材料を使用した場合は、その表面を金属膜で被覆する。
この場合、微細構造層に適用される金属は、目的とする波長により適宜選択される。例えば、紫外光の発光素子に用いる場合には、電磁波の振動により金属の自由電子が追従できなくなる周波数(プラズマ周波数)の高いアルミニウムが好ましく、例えば380nm〜650nmの波長領域の発光素子に用いる場合は、可視の全波長域において高い反射率を示す銀、又はアルミニウムを用いることが好ましく、誘電率の実部の絶対率の小さい銀を用いることが特に好ましい。可視域の赤色、例えば580nm〜780nmの波長領域においては、その波長領域における反射率の高い銀又は金を用いることが好ましい。
(光透過性材料である微細構造層の材質)
有機EL発光素子からの発光が、本発明の光学用基材を透過する発光素子の構成である場合、本発明の光学用基材は、以下のような光透過性の材料で構成されていることが必要である。
さらに、微細構造層を構成する材料の屈折率と、基材を構成する材料の屈折率との差は、0.15以下であることが好ましい。屈折率差がこの範囲にあることにより、微細構造層側から基材側へと透過する光の、微細構造層と基材との界面での反射が抑制されるため、光取り出し効率が向上する。この効果をより一層発揮する観点から、屈折率差は0.1以下であるとより好ましい。最も好ましくは、微細構造層を構成する材料の屈折率と、基材を構成する材料の屈折率とが実質的に等しい、又は同等な場合である。
ここで、屈折率が実質的に等しいとは、界面における反射が、光取り出し効率に対して問題にならない程度の屈折率差を有する場合を含む。例えば、基材の屈折率が1.45である場合、光取り出し効率として問題にならない0.1%以下の界面反射率を実現するためには、界面における微細構造層を形成する材料の屈折率は、1.37以上1.54以下(屈折率差は、0.08〜0.09以下程度)である必要がある。このため、実質的に等しい屈折率としては、上述の範囲を含む。なお、上記屈折率が同等な範囲は、微細構造層を構成する材料の屈折率と、基材を構成する材料の屈折率が同じ場合(屈折率差が0)を含む。
微細構造層が、基材を直接加工し微細構造層を形成している場合は、微細構造層と基材との界面において、これらの屈折率が実質的に等しくなる。一方、基材上に別途微細構造層を形成する場合は、微細構造層を構成する材料の屈折率が、微細構造層と基材との界面において、これらの屈折率が実質的に等しくなるような材料を選定することが好ましい。この場合、微細構造層を構成する材料は、上記屈折率の範囲を満たせば特に限定されないが、例えば、種々の公知の有機樹脂、有機無機複合樹脂、無機前駆体、無機縮合体、金属酸化物フィラー、金属酸化物微粒子等、又はこれらを組み合わせた組成物を使用することができる。
微細構造層を構成する材料は、加熱処理後においても光学的に透明であると好ましい。ここで加熱処理温度は、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。加熱時間は10分以上が好ましい。また、加熱雰囲気は、低酸素環境下(例えば、真空状態、窒素置換状態等)が好ましい。
微細構造層を構成する材料に適用される無機物としては、例えば、ゾルゲル材料や無機フィラー(無機微粒子)を含むことができる。ゾルゲル材料や無機フィラー(無機微粒子)を含むことで、上記範囲において、屈折率を容易に調整可能であり、かつ、本実施の形態に係る光学用基材を発光素子として使用した場合の、微細構造層の劣化を抑制できるため好ましい。微細構造層を構成する材料は、上述したようにゾルゲル材料や無機フィラー(無機微粒子)を含むことができるが、ゾルゲル材料のみで構成されても、有機樹脂(光重合性樹脂や熱重合性樹脂、熱可塑性樹脂等)との有機無機ハイブリッド材料で構成されても、有機樹脂のみで構成されてもよい。特に、微細構造層の成形性・成形速度の観点から、光重合性樹脂を含むことが好ましい。
微細構造層に含まれる光重合性基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、エポキシ基、アリル基、オキセタニル基等が挙げられる。
また、微細構造層に含まれる金属元素としては、チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),クロム(Cr),亜鉛(Zn),スズ(Sn),ホウ素(B),インジウム(In),アルミニウム(Al),シリコン(Si)からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。特に、チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),シリコン(Si)であることが好ましい。
微細構造層に含まれる樹脂としては、光重合性と熱重合性の両方、又はいずれか一方の樹脂が挙げられる。例えば、ハードコート材料として使用される感光性樹脂や、ナノインプリントリソグラフィ用途で使用される光重合性樹脂及び熱重合性樹脂等が挙げられる。
微細構造層を形成する材料は、ゾルゲル材料を含むことが好ましい。ゾルゲル材料を含むことで、微細構造層の耐熱性が向上するため好ましい。ゾルゲル材料としては、単一の金属種を持つ金属アルコキシドのみを用いても、異なる金属種を持つ金属アルコキシドを併用してもよいが、金属種M1(ただし、M1は、Ti,Zr,Zn,Sn,Mg,Inからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素)を持つ金属アルコキシドと、金属種Siを持つ金属アルコキシドとの、少なくとも2種類の金属アルコキシドを含有することが好ましい。又は、これらのゾルゲル材料と、公知の光重合性樹脂とのハイブリッドも使用できる。
上述した屈折率範囲を満たす観点から、ゾルゲル材料は、金属種の異なる、少なくとも2種類の金属アルコキシドを含むことが好ましい。金属種の異なる2種類の金属アルコキシドの、金属種の組み合わせとしては、例えば、SiとTi、SiとSn、SiとZr、SiとZn、SiとIn、SiとMg、TiとZr、TiとZn、TiとMg等が挙げられる。特に、金属種の異なる2種の金属アルコキシドを含み、且つ一方の金属アルコキシドの金属種がSiの場合、Siを金属種に持つ金属アルコキシドのモル濃度(CSi)と、Si以外の金属種M1を持つ金属アルコキシドのモル濃度(CM1)との比率(CM1/CSi)は、0.2〜15であることが好ましい。微細構造層の成形性の観点から、(CM1/CSi)は0.5〜15であることが好ましく、(CM1/CSi)は5〜8であることがより好ましい。
微細構造層は、無機のセグメントと有機のセグメントを含むハイブリッドであってもよい。ハイブリッドとしては、例えば、無機微粒子(無機フィラー)と、光重合(あるいは熱重合)可能な樹脂の組み合わせや、無機前駆体と光重合(あるいは熱重合)可能な樹脂や、有機ポリマーと無機セグメントが共有結合にて結合した分子、無機微粒子(無機フィラー)と水素結合を形成するポリマー(PVP等)等が挙げられる。無機前駆体としてゾルゲル材料を使用する場合は、シランカップリング剤を含むゾルゲル材料の他に、光重合可能な樹脂を含むことを意味する。ハイブリッドの場合、例えば、金属アルコキシド、光重合性基を具備したシランカップリング剤、ラジカル重合系樹脂等を混合することができる。成形性をより向上させるために、これらにシリコーンを添加してもよい。また、微細構造層の成形性を向上させる観点から、ゾルゲル材料部分は、予め予備縮合を行いプレポリマー化してもよい。シランカップリング剤を含む金属アルコキシドと、光重合性樹脂の混合比率は、微細凹凸構造25の成形性の観点から、3:7〜7:3の範囲が好ましい。より好ましくは、3.5:6.5〜6.5:3.5の範囲である。ハイブリッドに使用する樹脂は、光重合可能であれば、ラジカル重合系でも、カチオン重合系でも特に限定されない。
微細構造層を構成する光重合可能なラジカル重合系の樹脂としては、例えば(メタ)アクリレート及び光重合開始剤の混合物である樹脂組成物を用いることができる。
(メタ)アクリレートとしては、硬化後のガラス転移温度が100℃以上であれば、より好ましくは120℃以上であれば特に限定されないが、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するモノマー、ビニル基を有するモノマー、アリル基を有するモノマーが好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するモノマーがより好ましい。ここで硬化後のガラス転移温度は、使用する(メタ)アクリレートの混合物の硬化物に対するガラス転移温度を意味する。即ち、例えば(メタ)アクリレートA、(メタ)アクリレートB、(メタ)アクリレートCを使用した場合に、硬化後の(メタ)アクリレートA、B、Cのガラス転移温度が夫々60℃、100℃、120℃の場合でも、それらの混合物((メタ)アクリレートA+(メタ)アクリレートB+(メタ)アクリレートC)の硬化後のガラス転移温度が105℃だとすれば、ガラス転移温度として105℃を採用するものとする。
重合性モノマーとしては、重合性基を複数具備した多官能性モノマーであることが好ましく、重合性基の数は、重合性に優れることから1〜6の整数が好ましい。また、2種類以上の重合性モノマーを混合して用いる場合、重合性基の平均数は2〜5が好ましい。単一モノマーを使用する場合は、重合反応後の架橋点を増やし、硬化物の物理的安定性(強度、耐熱性等)を得るため、重合性基の数が3以上のモノマーであることが好ましい。また、重合性基の数が1又は2であるモノマーの場合、重合性数の異なるモノマーと併用して使用することが好ましい。特に、屈折率調整の観点からスチレン部位(ベンゼン環部位)を具備することが好ましい。
(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、芳香族系の(メタ)アクリレート[フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート等]、炭化水素系の(メタ)アクリレート[ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタアエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等]を挙げることができる。
また、屈折率を調整する観点から、バインダー樹脂を含んでもよい。バインダー樹脂を含むことで屈折率の調整及び、耐熱性が向上するため好ましい。
バインダー樹脂は反応性バインダー樹脂であってもよい。バインダー樹脂の重量平均分子量は、成形性の観点から、5000〜500000であることが好ましい。前記効果をより一層発揮するため、5000〜100000であることがより好ましく、さらに好ましくは5000〜60000である。分散度(分子量分布と呼ぶこともある)は、(分散度)=(重量平均分子量)/(数平均分子量)で表される。分散度は概ね1〜6程度のものが用いられ好ましくは1〜4である。なお、分子量は、日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、(ポンプ:Gulliver、PU−1580型、カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、移動層溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準サンプルによる検量線使用)により重量平均分子量(ポリスチレン換算)として求められる。
バインダー樹脂としては、特に限定されないが、例えば、下記の2種類の単量体の中より、各々一種又はそれ以上の単量体を共重合させることにより得られる樹脂をバインダー樹脂として使用することができる。
第1の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート、フェニル基を有するビニル化合物(例えば、スチレン)等を用いることができる。
ベンジル(メタ)アクリレート或いはフェニル基を有するビニル化合物(例えばスチレン)を上記第2の単量体として用いることが好ましい。ベンジル(メタ)アクリレート或いはフェニル基を有するビニル化合物(例えばスチレン)はバインダー用樹脂1分子中に10質量%〜95質量%共重合されることが好ましい。特に、20質量%以上90質量%以下がより好ましい。
光重合開始剤としては、特に限定されないが、光学用基材を使用する環境において、使用波長に対する吸収が実質的にないことが好ましい。光重合開始剤は、光によりラジカル反応又はイオン反応を引き起こすものであり、ラジカル反応を引き起こす光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、下記の光重合開始剤が挙げられる。
アセトフェノン系の光重合開始剤として、アセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2’−フェニルアセトフェノン、2−アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン等が挙げられる。ベンゾイン系の光重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。ベンゾフェノン系の光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ペルフルオロベンゾフェノン等が挙げられる。
チオキサントン系の光重合開始剤としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジメチルチオキサントン等が挙げられる。
アントラキノン系の光重合開始剤としては、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等が挙げられる。
ケタール系の光重合開始剤としては、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
その他の光重合開始剤としては、α−アシルオキシムエステル、ベンジル−(o−エトキシカルボニル)−α−モノオキシム、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート等を挙げることができる。また、フッ素原子を有する光重合開始剤:ペルフルオロtert−ブチルペルオキシド、ペルフルオロベンゾイルペルオキシド等の公知慣用の光重合開始剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
市販されている開始剤の例としては、BASFジャパン(株)製の「Irgacure(登録商標)」(例えば、Irgacure(登録商標)651、184、500、2959、127、754、907、369、379、379EG、819、1800、784、O26E01、O26E02)や「Darocur(登録商標)」(例えば、Darocur(登録商標)1173、MBF、TPO、4265)等が挙げられる。
微細凹凸構造25を構成する光重合可能なカチオン重合系の樹脂は、少なくともカチオン硬化性モノマーと、光酸発生剤とを含む組成物を意味する。カチオン硬化性樹脂組成物におけるカチオン硬化性モノマーとは、カチオン重合開始剤の存在下で、例えば、UV照射や加熱等の硬化処理を行うことにより硬化物が得られる化合物である。カチオン硬化性モノマーとしては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、及びビニルエーテル化合物が挙げられ、エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、及びグリシジルエーテルが挙げられる。これらの中でも脂環式エポキシ化合物は、重合開始速度が向上し、オキセタン化合物は重合率の向上効果があるので、使用することが好ましく、グリシジルエーテルはカチオン硬化性樹脂組成物の粘度を低下させ、塗工性に効果があるので使用することが好ましい。より好ましくは、脂環式エポキシ化合物とオキセタン化合物とを併用することであり、さらに好ましくは脂環式エポキシ化合物とオキセタン化合物との重量比率が99:1〜51:49の範囲で併用することである。
カチオン硬化性モノマーの具体例としては、以下のものが挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、例えば、3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボン酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボン酸−3,4−エポキシ−6’−シクロヘキシルメチル、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。
グリシジルエーテルとしては、例えば、ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールFグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
オキセタン化合物としては、例えば、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3アリルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン等が挙げられる。
ビニルエーテルとしては、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル等が挙げられる。
光酸発生剤は、光照射により光酸を発生すれば、特に限定されるものではない。例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩といった芳香族オニウム塩が挙げられる。光酸発生剤としては、例えば、スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾイントシレート、アデカオプトマー(登録商標)sp−170(ADEKA社製)、アデカオプトマー(登録商標)sp−172(ADEKA社製)、WPAG−145(和光純薬工業社製)、WPAG−170(和光純薬工業社製)、WPAG−199(和光純薬工業社製)、WPAG−281(和光純薬工業社製)、WPAG−336(和光純薬工業社製)、WPAG−367(和光純薬工業社製)、CPI−100P(サンアプロ社製)、CPI−101A(サンアプロ社製)、CPI−200K(サンアプロ社製)、CPI−210S(サンアプロ社製)、DTS−102(みどり化学社製)、TPS−TF(東洋合成工業社製)、DTBPI−PFBS(東洋合成工業社製)等が挙げられる。
(透明誘電体層の材質)
上記したように、本実施の形態に係る光学用基材の表面には透明誘電体層を具備していてもよい。
透明誘電体層の屈折率は、1.7以上2.4以下であることが好ましい。これにより、光学用基材を使用して、有機EL発光素子内部で導波モードとなり発光素子内部に閉じ込められた発光光をより効果的に取り出すことができる。特に、透明誘電体層における微細構造層とは反対側の面と、面上に積層された層との界面において、透明誘電体層を構成する材料の屈折率と面上に積層された層を構成する材料との屈折率が実質的に等しいことが好ましい。特に、面上に積層された層が、透明導電膜であると、発光素子としての機能を発現するため、好ましい。以上より、透明誘電体層の屈折率は、上記範囲において、使用される発光素子の特性に応じ、適宜選択することができる。
透明誘電体層を構成する材料は、上述した屈折率範囲を満たせば、特に限定されないが、種々の公知の有機樹脂、無機前駆体、無機縮合体、金属酸化物フィラー、金属酸化物微粒子等を使用できる。上述した屈折率範囲を満たすこと、ならびに、微細構造層と反対側の面の平坦化及び光学用基材の耐環境性の観点から、透明誘電体層を構成する材料は、無機前駆体、無機縮合体、無機前駆体又は無機縮合体及び金属フィラー、無機前駆体又は無機縮合体及び有機樹脂から構成される有機無機ハイブリッド、あるいは、無機前駆体又は無機縮合体ならびに金属フィラー及び有機樹脂から構成される有機無機ハイブリッドであることが好ましい。特に、透明誘電体層を構成する材料中に、In,Sn,Ti,Zr,Zn,Mgかなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属元素が含まれると、屈折率の範囲を満たす調整が容易であるため好ましい。
透明誘電体層を構成する材料は、加熱処理後においても光学的に透明であると好ましい。ここで加熱処理温度は、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。
なお、有機無機ハイブリッド材料中に含まれる有機樹脂は、屈折率調整及び耐環境性の観点から、熱重合性樹脂、熱可塑性樹脂、あるいは光重合可能な光重合性基と熱重合可能な重合性基の両方、又はいずれか一方を含むと特に好ましい。また、無機前駆体、無機縮合体、無機フィラーから選択される少なくとも1つの無機物と、水素結合を形成する部位を有することが好ましい。
透明誘電体層を構成する材料に含まれる無機物には、例えば、ゾルゲル材料を含むことができる。ゾルゲル材料を含むことで、上記範囲において、屈折率を容易に調整可能であり、かつ、本実施の形態に係る光学用基材を有機EL発光素子として使用した場合の、微細構造層の劣化を抑制できるため好ましい。微細構造層を構成する材料は、上述したようにゾルゲル材料を含むことができるが、ゾルゲル材料のみで構成されても、ゾルゲル材料に金属酸化物微粒子(フィラー)を含有しても、また、ゾルゲル材料と有機樹脂との有機無機ハイブリッド材料で構成されてもよい。
また、ゾルゲル材料としては、モノマー(単分子)や2量体のみでなく、部分硬化体(プレポリマー)を用いることもできる。ゾルゲル材料、特に、金属アルコキシドが部分的に縮合することで、金属種が酸素元素を介し連なったプレポリマーを得ることができる。つまり、部分的に縮合することで、分子量の大きなプレポリマーを作ることができる。これにより、未反応の官能基数が減少し、高密度化する。このため、屈折率をより高い方向へと変化させることができる。さらに、部分縮合により、未反応官能基が減少するとともに粘度が上昇し、水蒸気等と反応する官能基数が減少するため、安定性が向上する。さらに、透明誘電体の微細構造層とは反対側の面の平坦性が向上する。
ゾルゲル材料とは、熱や触媒の作用により、加水分解重縮合が進行し、硬化する化合物群である。例えば、金属アルコキシド(金属アルコラート)、シルセスキオキサン化合物、金属キレート化合物、ハロゲン化金属、ハロゲン化シラン、液状ガラス、スピンオングラス、シランカップリング剤、又は、これらの反応物、さらには、これらに硬化を促進させる触媒を含ませたものである。これらは、要求される物性に応じて、単独で用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。また、ゾルゲル材料に、シリコーンをはじめとするシロキサン材料や、反応抑制剤等を含ませてもよい。
透明誘電体層を構成する材料としてのゾルゲル材料は、屈折率を高く調整する観点及び面の平坦性の観点から、金属種M1(但し、M1は、In,Sn,Ti,Zr,Zn,Mgからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素)を持つ金属アルコキシドを含むことが好ましい。さらに、これら金属種M1を有する金属アルコキシドと、金属種Siを有する金属アルコキシドの、少なくとも2種類の金属アルコキシドを含有してもよい。金属種M1を有する金属アルコキシドを含むことにより、屈折率を調整可能となる。また、金属種Siを有する金属アルコキシドを含むことにより、透明誘電体層を構成する材料の水蒸気に対する安定性が向上する。金属種M1を有する金属アルコキシドを2成分以上用いても、金属種Siを有する金属アルコキシドを2成分以上用いてもよい。また、金属種M1を有する金属アルコキシドと金属種Si有する金属アルコキシドの他に、金属種M2(但し、M2≠M1、かつM2≠Si)を有する金属アルコキシドを用いてもよい。同様に、金属種M3(但し、M3≠M2、M3≠M1、かつM3≠Si)を有する金属アルコキシドを用いてもよい。
金属種の異なる2種類の金属アルコキシドの、金属種の組み合わせとしては、例えば、SiとTi、SiとZr、SiとZn、SiとSn、SiとIn、SiとMg、TiとZr、TiとZn、TiとMg、InとSn、ZnとMg、ZnとZr、ZnとSn等が挙げられる。特に、金属種の異なる2種の金属アルコキシドを含み、且つ一方の金属アルコキシドの金属種がSiの場合、Siを金属種に持つ金属アルコキシドのモル濃度(CSi)と、Si以外の金属種M1を持つ金属アルコキシドのモル濃度(CM1)との比率(CM1/CSi)は、0.2〜15であることが好ましい。微細凹凸構造25の成形性の観点から、(CM1/CSi)は0.5〜15であることが好ましく、(CM1/CSi)は5〜8であることがより好ましい。例えば、金属種の異なる3種類の金属アルコキシドの、金属種の組み合わせとしては、SiとTiとZn、SiとTiとMg、SiとTiとZr、SiとTiとIn、SiとTiとSn、SiとZrとZn、SiとZrとIn、SiとZrとMg、SiとInとSn、SiとZnとSn、TiとZnとZr、TiとZnとMg、ZnとMgとZr等が挙げられる。
金属種M1を有する金属アルコキシドのモル濃度(CM1)と、金属種Siを有する金属アルコキシドのモル濃度(CSi)との間の比を変えることで原子間距離を変化でき、その結果、屈折率を変化させることができる。CM1とCSiとの間の比は、0.2≦(CM1/CSi)≦25を満たす範囲内で選択することができるため、屈折率を柔軟に変化可能である。ここで、金属種Siを有する金属アルコキシドのモル濃度(CSi)とは、透明誘電体層を構成する材料に含まれる金属種Siを有する金属アルコキシドの全濃度を意味する。
一方で、金属種M1を有する金属アルコキシドのモル濃度(CM1)とは、透明誘電体層を構成する材料に含まれる金属種Siを有する金属アルコキシド以外の、金属種を持つ金属アルコキシド全てのモル濃度の合計を意味する。例えば、金属種Ti、金属種Zr、金属種Mgを持つ金属アルコキシドが、夫々CTi,CZr,CMgのモル濃度で存在していた場合、CM1は、CTi+CZr+CMgとなる。
金属種M1としては、In,Sn,Ti,Zr,Zn,Mgからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが、屈折率可変性の観点から好ましい。どの金属種の金属アルコキシドを使用するかは、ハンドリングや発光素子の層構成といった観点で、選定すればよい。
また、透明誘電体層を構成する材料中に、バインダーポリマー、反応性希釈剤、及び重合開始剤を含んでもよい。これらを含むことにより、トップエミッション型発光素子に使用する際の貼合性が向上する。バインダーポリマーとしては、微細構造層を構成する一材料として記載したバインダー樹脂を使用することができる。反応性希釈剤としては、微細構造層を構成する一材料として記載した光重合可能なラジカル重合系の樹脂、光重合可能なカチオン重合系の樹脂又はそれらの混合物を使用することができる。重合開始剤としては、微細構造層を構成する一材料として記載した光重合開始剤又は光酸発生剤を使用することができる。
本実施の形態に係る光学用基材は、微細凹凸構造のサイズがナノスケールであるため、光学用基材を使用した有機EL発光素子を作製する際に、透明誘電体層と透明導電膜層との界面を容易に平坦化することが可能である。
本発明の光学用基材は、基材と微細構造層との界面位置、又は基材の微細構造層とは反対側の面上にバリア層を設けてもよい。バリア層を設けることにより、有機EL発光素子に本発明の光学用基材を適用した際の、有機EL発光素子の信頼性が向上するため好ましい。バリア層は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素等の無機酸化物や無機窒化物、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等で形成することができる。ガスバリア層は多層であるとより好ましい。十分なガスバリア性を発揮するためには、ガスバリア層の厚みは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは50nm以上とする。逆に厚くしすぎるとガスバリア層にクラックが入る等の不具合も生じるため、ガスバリア層の厚みは10μm以下、さらには1μm以下であることが好ましい。
(光拡散性基材)
また、本実施の形態に係る光学用基材を用いた有機EL発光素子においては、光拡散性基材を配置してもよい。光拡散性基材は、光拡散機能を有するシート(板状体)又は光拡散機能を有するフィルムで形成することができる。具体的には、光拡散性基材としては、光拡散材がシート又はフィルム内に分散されたもの、光拡散性を有する構造がシート又はフィルム表面に形成されたもの、拡散材と光拡散性を有する構造を組み合わせたもの等を用いることができる。これらの中から発光素子で適用する波長の指向性等を考慮して適用すればよい。
光拡散材がシート又はフィルム内に分散された光拡散性基材の一例としては、恵和株式会社製のオルパスを適用できる。光拡散性を有する構造がシート又はフィルム表面に形成された光拡散性基材の一例としては、Luminit社製のLIGHT SHAPING DIFFUSER(登録商標)を適用することができる。
光拡散性基材を構成するシート又はフィルムとしては、ガラスや樹脂等を用いることができるが、加工性の良さや軽量であること等から樹脂を用いることが好ましい。また、光拡散材としては空気等の低屈折率材料、酸化チタン等の高屈折率材料を用いることができる。
光拡散性基材の界面反射を減らすことにより光の取り出し効率が上がるため、光拡散能を有するシート又はフィルムを粘着剤又は接着剤を用いて貼り付けることが好ましい。また、ガスバリア性の観点からも、光拡散能を有するシート又はフィルムを粘着剤又は接着剤を用いて貼り付けることにより空気層を設けない構成とすることが好ましい。
(有機EL発光素子の構成)
図12は、本発明の有機EL発光素子の一例を示す断面模式図である。図12に示すように、有機EL発光素子40は、光学用基材1を少なくとも1つ有し、発光層は、光学用基材1の微細凹凸構造25に対向して配置される。有機EL発光素子40は、微細凹凸構造25を有する光学用基材1上に順次積層された発光部42、及び透明導電膜層43(ITO層に代表されるTCO層)から構成される。光学用基材1を構成する材料に限定はなく、誘電体、半導体、金属等の材料を用いることができる。有機EL発光素子40において、発光部42と接している透明導電膜層43の他の主面に光拡散性基材を設けてもよい。この場合、光拡散性基材は、発光部42からの射出光及び光学用基材1を反射した光を拡散し、光の回折に起因するカラーシフトをさらに低減することができる。
ここで発光部42は、陰極(金属電極)、電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層、ホール注入層、陽極(透明導電膜層)を順次積層することで作製され、少なくとも、陰極、発光層、陽極の3層とで構成され、発光層は1層以上の有機層とする。この場合、光学用基材1の表面が金属面で存在する場合は、光学用基材1を陰極とし、発光部42の陰極形成を省略してもよい。電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層、ホール注入層については、一つの層が二つ以上の機能を兼ねてもよいし、ホール輸送層や電子輸送層は省略しても良い。ホールと電子が出会う場所として発光層は必要である。最も単純な系としては、陽極導電層と陰極導電層に挟まれた発光層だけがあれば良い。
なお図12では、微細凹凸構造25を凸部で形成したが凹部で形成してもよい。図13ないし図15においても同様である。
図12に示すように、光学用基材1を反射型とする場合には、光学用基材1を誘電体や半導体、又は、これらと金属との組み合わせで形成することができる。
本発明の実施の形態に係る発光部42は、光学用基材1上に作成した微細凹凸構造(微細構造層の表面)25がEL発光した光の回折光を生じ、陰極の表面プラズモンと共鳴状態を作るようにする。有機EL発光素子から発光した光は、光取り出し面の方向に進むものと、取り出せない陰極の金属面に進むものがあるが、陰極表面の金属膜の凹凸により光は、表面プラズモンのエネルギーに一時的に変換され、後に、高強度の放射光として陰極表面から取り出し面側に向かって放射される。陰極表面から放射される放射光は指向性が高く、光の取り出し効率を向上することができる。この目的のために、陰極の材料は電子の輸率が高くロスの少ない材料(仕事関数の低い材料)が適するので、Ag、Au等を選択するか、一般的に選択されるAl等との共蒸着(Al/Ag等)を用いてもよいが、材料選択はかならずしもこれらに限定されない。
下面発光型有機EL発光素子の場合は、光学用基材1上に、最初に陽極(透明導電膜)を形成し、続いて、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極を順次積層して完成する。この操作によって、光学用基材1の微細凹凸構造の形状は、陰極まで伝わり、陰極が表面プラズモン共鳴状態を作るようになる。形状が伝わるためには各層の厚さは極力薄い必要があるが、通常有機EL発光素子のこれらの各層はおおよそ20〜100nm程度で形成するため問題ない。
図13は、本発明の有機EL発光素子の一例を示す断面模式図である。図13に示すように、有機EL発光素子60は、微細凹凸構造25を有する光学用基材1上に、透明誘電体層62を介して、透明導電膜層63を形成し、透明導電膜層63上に発光部64を積層している。
ここで発光部64は、陽極(透明導電膜層)、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極(金属電極)を順次積層することで作成され、少なくとも、陽極、発光層、陰極の3層とで構成され、発光層は1層以上の有機層とする。透明導電膜層63を形成するので、発光部64の陽極形成を省略してもよい。ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層については、一つの層が二つ以上の機能を兼ねてもよいし、ホール輸送層や電子輸送層は省略してもよい。ホールと電子が出会う場所として発光層は必要である。もっとも単純な系としては、発光層と陰極だけがあればよい。
本発明で用いる陽極、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極の作製法は特に限定しないが、一般的な下面発光型有機EL発光素子を例にとり説明すると以下のようになる。すなわち、陽極(透明導電膜層)及び陰極は真空蒸着法又はスパッタリング法等によって行い、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子移動層、電子注入層は有機蒸着法又は薄膜塗工法によって行う。
各層の積層は基材に近い層から順に行われるので、最初に陽極(透明導電膜層)が形成される。下面発光型の有機EL発光素子の場合、陽極導電層は透明でなければならないので、材質はITO(Indium Tin Oxide)やZnO(Zinc Oxide)、ZTO(Zinc Tin Oxide)等の透明導電材料(TCO)が選択される。
次にホール注入・移動層として、芳香族アミン化合物等を成膜する。α−NPDやCuPc等の芳香族アミン化合物は、イオン化ポテンシャルとホール輸送特性が適切であり、電気化学的に可逆であるため、ホール輸送材料として最も多く使用される。次に発光層を積層する。発光層に単独で用いられる材料は蛍光性色素化合物であるBBAやDTE等が挙げられるが、ホールや電子輸送化合物に蛍光性色素化合物をドープしてもよい。蛍光発光性材料の置き換えで、りん光発光性材料を用いると、理論変換効率が約25%から約100%に向上するため好ましい。
次に、電子輸送層を積層する。電子輸送層としては、オキサジオール系(PBD等)、トリアゾール系(TAZ)等が使用される。金属錯体系(Alq3等)の物質を用いると、電子輸送層と発光層を兼ねることができ便利である。
最後に陰極導電層を積層する。陰極導電層の材料は一般にLiFやLi系化合物等をごく少量付けた後、Al、AgやAl/Ag合金等を積層する方法が一般的である。
発光素子60において、透明誘電体層62と透明導電膜層63との間に、図示しない光拡散層を設けてもよい。この場合には、カラーシフトをより抑制することができる。
また、発光素子60において、透明導電膜層63と接している発光部64の主面と反対側の主面上に、図示しない光反射層を設けてもよい。この場合には、光学用基材1へ到達する光強度を向上させることができる。
ここで本実施の形態に係る光学用基材の表面に設ける誘電体層について、さらに詳細に説明する。図14に示すように、本実施の形態に係る光学用基材1は、微細凹凸構造25のドット面上に、ドット形状又はライン形状に対応する形状を有した透明誘電体層72を具備していてもよい。さらに、透明誘電体層72における、微細凹凸構造25と反対側の主面73が平坦化されていることが好ましい。なお、ドット形状又はライン形状に対応する形状とは、透明誘電体層72の有するドット形状又はライン形状と、微細凹凸構造25の有するドット形状又は、ライン形状とが、転写形状の関係にあることを意味する。すなわち、微細凹凸構造25の微細構造は、透明誘電体層72により充填されていることを意味する。
透明誘電体層72における微細凹凸構造25と反対側の主面73が平坦化されていることにより、有機EL発光素子として使用した場合に、有機EL発光素子の電流短絡を抑制でき、信頼性の向上に繋がる。平坦化の程度は、使用される発光素子の特性に合わせて適宜選択することができる。例えば、短絡を抑制するという観点から、Ra≦10nmであることが好ましく、Ra≦5nmがより好ましく、Ra≦2nmがさらに好ましく、最も好ましくはRa≦1nmである。なお、Raは原子間力顕微鏡(AFM)にて測定可能であり、Raを算出する際のAFM測定の範囲は、5μm×5μmとして測定される。
図15は、本発明の有機EL発光素子の一例を示す断面模式図である。図15に示すように、有機EL発光素子50は、発光部54上に透明導電膜層53を積層し、透明導電膜層53上に透明誘電体層52を介して光学用基材1を貼り付けて構成される。このとき、光学用基材1における透明誘電体層52側が、透明導電膜層53に接するように配置される。すなわち、光学用基材1における基材の露出する面が、発光部54から最も離れて配置される。
有機EL発光素子50において、発光部54の透明導電膜層53と接している主面と反対側の主面上に、図示しない光拡散層を設けてもよい。この場合には、カラーシフトをより抑制することができる。また、発光素子50において、発光部54の透明導電膜層53と接している主面と反対側の主面上に、図示しない光反射層を設けてもよい。この場合には、光学用基材1へ到達する光強度を向上させることができる。
なお、図15に示した有機EL発光素子50に場合、光学用基材1における基材は、有機EL発光素子50上に配置したままでもよいし、透明導電膜層53上に光学用基材1を貼り付けた後に除去してもよい。さらに、透明導電膜層53上に光学用基材1を貼り付けた後に、基材及び微細凹凸構造25を除去してもよい。
本実施の形態における光学用基材を用いることで、基板表面へのマイクロレンズ等の光取り出し層の設置がなくとも高効率な光取り出しが可能となる。本発明では、ナノオーダーピッチの通常配列と比較し、光波長より長い波長の屈折率変動効果を持つため回折効果が高い。そして、基材内部でより出射角の低く基材内面での全反射臨界角以内の光成分が増大するため、高効率な光取り出しが可能なったと推定される。
また、本実施の形態によれば、図5に示すように各ドット集合体を、図2のドット集合体の格子点位置(図5に示す破線円)から、所定範囲内にてランダムに移動配置することで、光取り出し効率の向上ととともにギラツキ発生を防止することができる。
ここで「ギラツキ」について説明すると、周期構造に基づく光の回折を利用して導波モードを乱す例えば特許文献2に記載の方法では、発光素子から取り出された光に周期構造に基づく、光の回折特有のギラツキが生じる。ギラツキとは、特定角度で特定波長の光が点状の輝点として観察される現象を指し、カラーシフトを伴った輝点状の発光である。
なお上記に挙げた先行技術のうち、発光部近傍に金属の周期格子構造を導入し、表面プラズモン共鳴を利用した発光素子からの光取り出しにおいては、素子面全面にわたって実質的に均一な周期格子構造を設ける必要があり、また、その周期が可視光の光を回折するサイズであったため、観察方向を変えると光の回折に起因する急峻なカラーシフトが生じるという問題もあった。
素子全体としての光取り出し効率は向上しても、ギラツキやカラーシフトの発生が問題となる。このように、回折構造を利用した場合、光取り出し効率とカラーシフト及びギラツキの発光特性とは、相反するものであった。また、発光面の観察方向による輝度斑が発生する問題があった。
これに対して本実施の形態では、光取り出し効率の向上ととともにギラツキ発生を抑制することができる。超格子の効果は、回折効果によるため光取り出し効果が増大する反面、光の出光角度による輝度変動が大きく効果の波長依存性が高い。したがって発光側からの観察位置により着色を伴った輝度の変動が観察されるが、ドット集合体の位置の変位により、干渉効果が相殺され平均的に出光角が低くかつ輝度の変動が低減されるため、ギラツキ発生を抑制できたと推定される。
次に、本発明の光学用基材の製造方法について説明する。ただし、以下に示す製造方法は一例であって、光学用基材の製造方法は、これに限定されるものではない。
本実施の形態に係る光学用基材は、ナノインプリント、EB描画、フォトリソグラフィー、干渉露光等により作成することができる。
図16は、光学用基材の製造方法の一例を示す説明図である。図16では、ロールの周方向(紙面縦方向)を配列のX方向、又はY方向に一致させることが必要である。以下、図16を用いて光学用基材の製造方法を具体的に説明する。図16に示すように、露光装置400は、レジスト層が被覆されたロール状部材401を図示しないロール把持部により把持しており、回転制御部402と、加工ヘッド部403と、移動機構部404と、露光制御部405と、を備えている。回転制御部402は、ロール状部材401の中心を軸として、ロール状部材401を回転させる。加工ヘッド部403は、レーザ光を照射して、ロール状部材401のレジスト層を露光する。移動機構部404は、加工ヘッド部403をロール状部材401の長軸方向に沿って、制御速度で移動させる。露光制御部405は、回転制御部402によるロール状部材401の回転と同期した基準信号に基づいて、加工ヘッド部403によるレーザ露光のパルス信号を制御する。
露光装置400によるロール状部材401の加工は、ロール状部材401を回転させた状態で、加工ヘッド部403からパルスレーザを照射することにより行う。加工ヘッド部403は、パルスレーザを照射しながら、移動機構部404によって、ロール状部材401の長軸方向に沿って移動する。ロール状部材401の回転数及びパルスレーザの周波数から、回転方向におけるロール状部材401の外周面のレジスト層に任意のピッチでパターン406が記録される。これが、ロールツーロールナノインプリントモールドにおける第2方向のピッチPyとなる。パターン406は、図1ないし図7で示した六方格子パターンである。
さらに、ロール状部材401の長軸方向に沿って走査しているため、任意の位置からロール状部材401が1周すると、加工ヘッド部403が長軸方向にずれることになる。これがロールツーロールナノインプリントモールドにおける第1方向のピッチPxとなる。ロール状部材401の周長に比較して、パターン406のピッチPy,Pxは、ナノオーダーと非常に小さいので、第2方向のピッチPyを維持しながら、長軸方向でみると第1方向のシフト量がずれた列状パターンを形成することができる。さらに、上述したように、パターン406のピッチPy,Pxは、ロール状部材401の周長に比較して非常に小さいので、第1方向と第2方向は実質的に直交する。
ロール状部材401は、円筒状に形成された部材に回転軸が備えられているものであり、材質としては、金属、カーボンコア、ガラス、石英等が適用できる。ロール状部材401は、高回転が可能な加工精度が必要とされることから、材質は、金属、カーボンコア等が好ましい。さらに、レーザ露光される円筒表面部のみ、異なる材料で被覆することもできる。特に、熱反応型レジストを使用するときは、断熱効果を高めるために金属よりも熱伝導率が低い材料を適用することが好ましく、ガラス、石英、酸化物、窒化物等が挙げられる。円筒表面に被覆した層を、後述するレジスト層をマスクとしてエッチングするエッチング層として、使用することも可能である。
ロール状部材401を被覆するレジストは、レーザ光により露光されるものであれば、特に限定されるものではなく、光硬化型レジスト、光増幅型レジスト、熱反応型レジスト等が適用できる。特に、熱反応型レジストは、レーザ光の波長よりも小さい波長でパターン形成できるので好ましい。
熱反応型レジストは、有機レジスト又は無機レジストであることが好ましい。これらのレジストにより形成されたレジスト層は、単層構造であっても、複数のレジスト層を組み合わせた多層構造であってもよい。なお、どのようなレジストを選択するかは、工程や要求加工精度等によって適宜変更することができる。例えば、有機レジストは、ロール状部材401を被覆するレジスト層を形成する際に、ロールコーター等で塗布できるため工程が簡便となる。ただし、スリーブ上に塗布するためレジストの粘性に制限があり、塗布厚精度や制御あるいは多層にコーティングすることは難しい。
有機レジストとしては、(株)情報機構発刊 「最新レジスト材料ハンドブック」や(株)工業調査会 「フォトポリマーハンドブック」にあるように、ノボラック樹脂又はノボラック樹脂とジアゾナフトキンとの混合物、メタクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられる。
一方、無機レジストは、ロール状部材401を被覆するレジスト層を、抵抗加熱蒸着法や電子ビームスパッタ法、CVD法等の気相法等によって設けることが好適である。これらの方法は、基本的に真空プロセスになるため、スリーブ上に形成するには工数が掛かるが、膜厚が精度良く制御でき、また、多層に積層することが容易である。
無機レジスト材料は、反応させる温度によって種々選択することができる。例えば、無機レジスト材料としては、Al,Si,P,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,As,Se,In,Sn,Sb,Te,Pb,Bi,Ag,Au及びこれらの合金が挙げられる。また、無機レジスト材料は、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,As,Se,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Pd,Ag,In,Sn,Sb,Te,Ba,Hf,Ta,W,Pt,Au,Pb,Bi,La,Ce,Sm,Gd,Tb,Dyの酸化物、窒化物、窒酸化物、炭化物、硫化物、硫酸化物、フッ化物、塩化物や、これらの混合物を適用してもよい。
ロール状部材401を被覆するレジストとして熱反応型レジスト材料を使用した場合、下記のパターンを形成する露光前に、レジストをパターン形成時よりも低い温度で処理する予備加熱を施してもよい。予備加熱を加えることで、パターン形成時のパターン分解能を向上させることが可能となる。予備加熱によりパターン分解能が向上するメカニズムの詳細は不明だが、熱反応型レジスト材料の熱エネルギーによるレジスト層を形成する材料の変化が複数の反応に基づく場合、予備加熱により、パターン形成時の反応以外を事前に終了させることで、パターン形成反応が単純となり、パターン分解能が向上すると推測される。
ロール状部材401を被覆するレジストを予備加熱する方法としては、特に制限されるものではなく、ロール状部材全体を加熱する方法や、ロール状部材401にレーザでパターニングするよりも低い出力でロール表面全体を走査し、レジストに熱エネルギーを照射する方法等が挙げられる。
ロール状部材401を被覆するレジストとして、熱反応型レジストを使用すると、後述する回転と同期した基準信号に基づいて位相変調させたパルス信号で露光する場合、パターンを形成するドットの各々の直径が、ピッチPy及び/又はピッチPxに対応して増減するため好ましい。
また、ロール状部材401を被覆するレジストとして、熱反応型レジストを使用し、後述するエッチング層を設け、パターンの加工深さを制御すると、前記したのと同様、回転と同期した基準信号に基づいて位相変調させたパルス信号で露光する場合、パターンを形成するドットの各々の高さが、ピッチPy及び/又はピッチPxに対応して増減するため好ましい。
すなわち、ナノオーダーのパターニングにおいて、ドット径に応じて、エッチング深さが増減し、ドット径が広くなるとエッチング深さは深くなり、ドット径が狭くなるとエッチング深さが浅くなる傾向がある。特に、エッチング手法がドライエッチングにおいて顕著である。
前記したように、熱反応型レジストを使用すると、ドット間距離が広いとドット径が小さくなり、ドット間距離が狭いと、ドット径が大きくなる。ドット径に応じて、エッチング深さが増減する傾向があるため、結果として、ドット間距離が広いと、ドット深さは浅くなり、ドット間距離が狭いと、ドット深さが深くなる。
以上ドット間距離と、ドット径、ドット深さの増減の影響は、平均ピッチが小さくなると顕著である。
本発明においては、ロール状部材401を被覆するレジスト層を利用してそのままロールツーロールナノインプリントモールドとして適用してもよく、また、レジスト層をマスクとして、ロール状部材401の表面基材をエッチングすることによりパターンを形成してもよい。
ロール状部材401にエッチング層を設けることで、パターンの加工深さを自由に制御でき、かつ、熱反応レジスト層の厚みを加工に最適な膜厚に選択することができる。すなわち、エッチング層の厚みを制御することで、加工深さを自由に制御できる。また、加工深さはエッチング層で制御できることから、熱反応型レジスト層は露光や現像が容易な膜厚を選択すればよい。
露光を行う加工ヘッド部403に用いるレーザは、波長150nm以上550nm以下が好ましい。また、波長の小型化及び入手の容易さから、半導体レーザを使用することが好ましい。半導体レーザの波長は、150nm以上550nm以下であることが好ましい。波長が150nmより短い場合には、レーザの出力が小さくなり、ロール状部材401を被覆するレジスト層を露光することが困難なためである。一方、波長が550nmより長い場合には、レーザのスポット径を500nm以下にすることができず、小さな露光部を形成することが困難なためである。
一方、スポットサイズが小さな露光部を形成するためには、加工ヘッド部403に用いるレーザとして、ガスレーザを使用することが好ましい。特に、XeF、XeCl、KrF、ArF、F2のガスレーザは、波長が351nm、308nm、248nm、193nm、157nmと短く、非常に小さなスポットサイズに集光することができるため好ましい。
また、加工ヘッド部403に用いるレーザとして、Nd:YAGレーザの2倍波、3倍波、4倍波を用いることができる。Nd:YAGレーザの2倍波、3倍波、4倍波の波長は、夫々532nm、355nm、266nmであり、小さなスポットサイズを得ることができる。
ロール状部材401の表面に設けられたレジスト層に微細パターンを露光により形成する場合、ロール状部材401の回転位置精度が非常に高く、初めに焦点深度内に部材表面があるようにレーザの光学系を調整しておけば製造は容易である。しかしながら、ナノインプリントに適合するほどのロール寸法精度、回転精度を保持することは非常に困難である。そのため、露光に用いるレーザは対物レンズにより収束されロール状部材401表面が焦点深度の中に常に存在するようにオートフォーカスがかけられていることが好ましい。
回転制御部402は、ロール状部材401をロールの中心を軸に回転させる機能を有する装置であれば特に制限されるものではなく、例えば、スピンドルモーター等が好適である。
加工ヘッド部403をロール状部材401の長軸方向に移動させる移動機構部404としては、制御された速度で加工ヘッド部403を移動できれば特に制限されるものではなく、リニアサーボモーター等が好適に挙げられる。
図16に示す露光装置400では、ロール状部材401の表面上に形成される露光パターンが回転制御部402の回転(例えば、スピンドルモーターの回転)と同期した基準信号に基づいて、位相変調させたパルス信号により露光制御部405で露光部の位置を制御している。基準信号としては、スピンドルモーターの回転に同期したエンコーダーからの出力パルスを用いることができる。
回転と同期した基準信号に基づいて位相変調させたパルス信号は、例えば、次のように制御することができる。
スピンドルモーターのZ相信号と、基準パルス信号、変調パルス信号との関係を説明する。Z相信号を基準とし、そのm倍(m>2の整数)の周波数のパルス信号が基準パルス信号であり、n倍(m/n>kかつk>1の整数)の周波数のパルス信号が変調パルス信号となる。基準パルス信号、変調パルス信号のいずれも、Z相信号の周波数の整数倍であるために、ロール状部材401が中心軸周りに1回転する時間内に整数のパルス信号が存在することになる。
基準パルス信号と変調パルス信号、位相変調パルス信号との関係を説明する。基準パルス信号の位相を変調パルス信号の波長で周期的に増減させると、位相変調パルス信号となる。例えば、基準パルス周波数fY0を次の式(1)で表わし、変調周波数fYLを次の式(2)で表わすと、周波数変調させた変調パルス信号fYは次の式(3)で表せられる。
fY0=Asin(ω0t+φ0) (1)
fYL=Bsin(ω1t+φ1) (2)
fY=Asin(ω0t+φ0+Csin(ω1t)) (3)
また、次の式(4)で表わすように、基準パルス周波数fY0に、変調パルス信号から得られるサイン波を加算することでも位相変調パルス信号fY´を得ることができる。
fY´=fY0+C´sin(t・fYL/fY0×2π) (4)
さらには、基準パルスのパルス波長LY0に、変調パルス信号の波長LYLから得られるサイン波を加算することで、位相変調パルス信号の波長LYを得ることができる。
このようにして得られる位相変調パルス信号は、変調パルス信号の信号間隔に応じて、基準パルス信号のパルス間隔が周期的に増減した信号となる。
また、露光装置400においては、位相変調したパルス信号によらず、一定周波数の基準パルス信号を用いて加工ヘッド部403によるレーザ露光のパルス信号を制御し、移動機構部404による加工ヘッド部403の移動速度を周期的に増減させる構成としてもよい。この場合には、加工ヘッド部403の移動速度を周期的に増減する。この移動速度は、ロール状部材401の回転と同期させることが好ましい。
以上は、パターン406が周期的な位相変調で制御された場合であるが、周期的でなくランダムな位相変調によってパターン406を形成することもできる。例えばD1方向においては、ピッチPyは、パルス周波数に反比例するので、パルス周波数に、最大位相ずれが1/10になるようにランダム周波数変調を行うと、ピッチPyは、ピッチPyの1/10の最大変動幅δ1を有し、ランダムにピッチPyが増減したパターンを得ることができる。
回転と同期した基準信号の制御頻度については、ロール1周毎等複数回以上の頻度による基準信号により、変調パルス信号を制御してもよく、露光初期に設定した初期の基準信号のみで制御してもよい。
露光装置400により、表面に設けられたレジスト層が露光されたロール状部材401を現像し、現像したレジスト層をマスクとして、ドライエッチングによりエッチング層をエッチングする。エッチング後、残渣のレジスト層を除去すると、ロールツーロールナノインプリントモールドを得ることができる。
上記のように得られたパターン406を、所定の基材に転写し、本実施の形態に係る光学用基材を得る方法としては特に限定されるものではなく、例えば、ナノインプリントリソグラフィ法により所定の基材表面にパターンを転写し、転写パターン部分をマスクとして、ドライエッチングにより基材をエッチングすることでパターン406を基材に転写することができる。具体的には、パターン406を形成したロール状部材401を円筒型モールド(ロールツーロールナノインプリントモールド)として用いる。基材の表面側に有機材料からなるレジスト層を形成し、このレジスト層に円筒型モールドを押し付けて、パターン406をレジスト層に転写した後、レジスト層及び基材を表面側からエッチングすることで基材の表面側に微細凹凸構造を形成し、本発明の光学用基材とすることができる。
また、円筒型モールド(ロール状部材401)からパターン406を直接基材に転写するのではなく、パターン406を一度フィルムに転写し、樹脂モールドを形成してから、この樹脂モールドによるナノインプリントリソグラフィ法により基材上にパターンを形成し、本実施の形態に係る光学用基材を得る方法も挙げられる。この方法によれば、モールドの利用効率を高めて、基材の平坦性を吸収できるため、パターンを基材に転写する方法としては、樹脂モールドによるナノインプリントリソグラフィ法がより好ましい。
円筒型モールドから樹脂モールドにパターン406を転写する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、直接ナノインプリント法が適用できる。直接ナノインプリント法としては、所定温度で加熱しながら円筒型モールドのパターン406に熱硬化性樹脂を充填し、円筒型モールドを冷却してから硬化した熱硬化性樹脂を離型して転写する熱ナノインプリント法や、円筒型モールドのパターン406に充填した光硬化性樹脂に所定の波長の光を照射し、光硬化性樹脂を硬化させてから、円筒型モールドから硬化した光硬化性樹脂を離型して転写する光ナノインプリント法が挙げられる。
円筒型モールド(ロール状部材401)は、シームレスの円筒状モールドであるため、特に、ロールツーロールナノインプリントにより樹脂モールドを連続転写することに好適である。
また、パターン406を転写した樹脂モールドから電鋳により電鋳モールドを作成し、この電鋳モールドによりナノインプリントリソグラフィ法によりパターンを形成する方法も挙げられる。電鋳モールドを形成した場合は、元型となる円筒型モールドの寿命を延ばす点で好ましく、電鋳モールドを一度形成する方式においても、基材の平坦性を吸収できるため、さらに樹脂モールドを形成する方法が好ましい。
さらに、樹脂モールド法においては、繰り返し転写が容易であるため好ましい。ここでの「繰り返し転写」とは、(1)凸凹パターン形状を有する樹脂モールド(+)から、転写反転した凹凸パターン転写物を複数製造すること、又は、(2)特に硬化性樹脂組成物を転写剤として用いる場合において、樹脂モールド(+)から反転した転写体(−)を得て、次に転写体(−)を樹脂モールド(−)として、反転転写した転写体(+)を得て、凸凹/凹凸/凸凹/凹凸/・・・/を繰り返しパターン反転転写することのいずれか一方、あるいは両方を意味する。
以上のように得られたパターン406を、基材に転写することで、本実施の形態に係る光学用基材1を得ることができる。転写方法としては特に限定されるものではなく、例えば、ナノインプリントリソグラフィ法により基材表面に樹脂によりパターンを転写し、転写パターン部分をマスクとして、ドライエッチングにより基材をエッチングし、パターン406を具備した光学用基材1(1a)を得る方法や、ナノインプリント法により基材表面にパターン406の反転構造を転写する方法等が挙げられる。
なお本発明においての光学用基材は、有機EL素子のみならず、発光ダイオード等の様々な発光素子の基材として適用可能である。
(実施例)
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例をもとに本発明をより詳細に説明する。なお、下記実施の形態における材料、使用組成、処理工程等は例示的なものであり、適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、適宜変更して実施することが可能である。そのため、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(円筒状金型作製(樹脂モールド作製用鋳型の作製))
円筒状金型の基材としては、直径80mm、長さ50mmの円筒型石英ガラスロールを用いた。この円筒型石英ガラスロール表面に、次の方法により半導体パルスレーザを用いた直接描画リソグラフィ法により微細凹凸構造を形成した。
まず、この石英ガラス表面の微細凹凸構造上にスパッタリング法によりレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲット(レジスト層)として、CuO(8atm%Si含有)を用いて、RF100Wの電力で実施した。成膜後のレジスト層の膜厚は20nmであった。以上のように作製した円筒状金型を線速度s=1.0m/secで回転させながら、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザ波長:405nm
露光レーザパワー:3.5mW
また、超格子配列構造を形成するための基本となる各ドットの基本重心位置を以下のように設定した。
第1方向ピッチPx:700nm
第1方向ピッチPxに対する変動幅δ2:0nm
第2方向ピッチPy:606nm
第2方向ピッチPyに対する変動幅δ1:0nm
ここで、第2方向ピッチPyは次のように決定される。スピンドルモーターのZ相信号を基準に、1周に要する時間Tが測定され、線速度sから周長Lが計算され、次の式(5)が得られる。
L=T×s (5)
目標ピッチをPyとして、L/Pyが整数+1/2になるように目標ピッチPyの0.1%以下の値を足して調整し、実効ピッチPy’を次の式(6)によって得る。
L/Py’=m+1/2 (mは整数) (6)
目標ピッチPyと実効ピッチPy’とは、厳密にはPy≠Py’であるが、L/Py≒107であるので、Py/Py’≒10−7となり、実質的に等しいものとして扱うことができる。
同様に、長周期PyLは、L/PyLが整数になるように実効長周期PyL’を次の式(7)によって得る。
L/PyL’=n (nは整数) (7)
この場合も、厳密にはPyL≠PyL’であるが、L/PyL≒105であるので、PyL/PyL’≒10−5となり、実質的に等しいものとして扱うことができる。
次に実効ピッチPy’から、式(8),式(9)により、基準パルス周波数fy0、変調周波数fyLが算出される。
fy0=s/Py’ (8)
fyL=s/PyL’ (9)
最後に、式(8)、式(9)から、スピンドルモーターのZ相信号からの経過時間tにおけるパルス周波数fyが、式(10)のように決定される。
fy=fy0+δ1×sin(t×(fyL/fy0)×2π) (10)
ここで、特にδ1=0としてY方向の変調なしの構造が得られる。第1方向の軸送り速度は次のように決定される。
スピンドルモーターのZ相信号を基準に、1周に要する時間Tが測定され、第1方向ピッチPxから、軸方向の基準送り速度Vx0が次の式(11)のように決定される。
Vx0=Px/T*(√3)/2 (11)
第1方向の長周期PxLから、時刻tにおける軸送り速度Vxを次の式(12)で決定し、スキャンする。
Vx=Vx0+Vδ2・sin(Px/PxL×t×2π) (12)
ここで、Vδ2は、第1方向の長周期PxLにおける速度変動幅であり、長周期PxLのピッチ変動幅δ2,Px,Vx0により、次の式(13)で示される。
Vδ2=δ2×Vx0/Px (13)
ここで特に、Vδ2=0として第1方向変調なしの配列が得られる。以上のように決定されるドット基本重心位置におけるパルス発生パターンを基本として、パルスコントローラーによりパルス列ON、OFFを以下の周期でパルスコントローラーにより制御することにより超格子配列構造を作製した。
実施例では、通常周期的なパルスレーザ照射により基本六方格子配列を作製する操作を、部分的にパルスレーザ照射を休止する操作に変更することにより六方超格子配列を作製した。そのようなパルスシーケンスを以下のように文字列で表示する。すなわち、M、Sの前の数字により、夫々ON、OFFとするドットの連続する個数を表す。例えば、「3M1S2M4S2M1S」は、計13個分のドット列について「3ドット分の照射を実行、1ドット分の照射を休止、2ドット分の照射を実行、4ドット分の照射を休止、2ドット分の照射を実行、1ドット分の照射を休止」のように制御することを意味する。本実施例では、上記のドット基本重心位置のON、OFF制御シーケンスを「3M1S2M4S2M1S」からなる13ドット分を周期的繰り返し制御として露光するシーケンスを適用した。
[実施例1]
超格子配列を形成するための基本となる各ドットの基本重心位置を以下のように設定した。
第1方向ピッチPx:700nm
第1方向ピッチPxに対する変動幅δ2:0nm
第2方向ピッチPy:606nm
第2方向ピッチPyに対する変動幅δ1:0nm
また、ロールの1回転のドット数を調整することによりロール周回後のドットパターンを整合させて継ぎ目のないロール上の配列パターンを作製した。円筒一周のドット数が2800000011.5となるようにピッチPxの微調整を行った。この数は整数部を2800000011=13×215384616+3であり本実施例の超格子パターンにより決まる固有の周期13と剰余3と整合するように選択し、小数点以下の0.5は六方格子を作製するために必要な1周期当たりのピッチ調整値として選択した数である。
次に、レジスト層を現像した。レジスト層の現像は、0.03wt%のグリシン水溶液を用いて、処理時間240秒の条件で実施した。次に、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングによるエッチング層のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF6を用い、処理ガス圧1Pa、処理電力300W、処理時間5分の条件で実施した。次に、表面に微細構造が付与された円筒状金型から、残渣のレジスト層のみをpH1の塩酸で6分間の条件で剥離して円筒モールド(転写用モールド)を作製した。
(樹脂モールドの作製)
得られた円筒状の石英ガラスロール表面(転写用モールド)に対し、デュラサーフ(登録商標)HD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置、固定化した。その後、デュラサーフ(登録商標)HD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、離型処理を施した。
次に、得られた円筒モールドからリール状樹脂モールドを作製した。OPTOOL(登録商標)DAC HP(ダイキン工業社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)及びIrgacure(登録商標)184(Ciba社製)を重量部で10:100:5の割合で混合して光硬化性樹脂を調製した。次に、この光硬化性樹脂をPETフィルム(A4100、東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚6μmになるように塗布した。
次いで、円筒モールド(円筒状金型)に対し、光硬化性樹脂を塗布したPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm2となるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射して連続的に光硬化を実施して、表面に微細構造が反転転写されたリール状透明樹脂モールド(長さ200m、幅300mm)を得た。
樹脂モールドを下記の走査型電子顕微鏡で観察したところ、断面形状がφ540nm±40nm、H(高さ)710nm±80nmの凸部からなる複数のドット集合体が形成されていた。
(電子顕微鏡)
装置;HITACHI s−5500
加速電圧;10kV
MODE;Normal
(反転樹脂モールドの作製)
次に、OPTOOL(登録商標)DAC HP(ダイキン工業社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)、及びIrgacure(登録商標)184(Ciba社製)を重量部で10:100:5の割合で混合して光硬化性樹脂を調製した。この光硬化性樹脂をPETフィルム(A4100、東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚2μmになるように塗布した。
次いで、上記リール状樹脂モールドに、光硬化性樹脂を塗布したPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm2となるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射して連続的に光硬化を実施して、表面に微細構造が反転転写された透明樹脂モールドシート(長さ200mm、幅300mm)を得た。
得られたドット集合体の配置は図1と同じであった。なお図1において、実線で囲まれた円が実在するドットを表し、破線で囲まれた円は、その位置にドットが存在しないことを表す。
(有機EL素子用基材の作製)
SR−833、3−APTMS、TEOS、I184、CPI−100P、PGMEを重量部で1:1:1:0.04:0.04:3の割合の混合液を、無アルカリガラス基板上にスピンコーターにより塗布した後、ホットプレート上100℃、30秒加熱した。
続いて透明樹脂モールドシートをハンドローラーにて押し付け、UV照射装置にてUV照射を行い樹脂を硬化後、透明樹脂モールドシートを剥離させた。その後150℃、30分加熱し微細凹凸構造層が形成された基板を作製した。
次に、日産化学工業株式会社製UR−501をスピンコーターにて塗布した後200℃、30分加熱処理を行い有機EL素子用ガラス基板を得た。
断面の走査型電子顕微鏡観察により樹脂モールドシートと同形状の微細凹凸構造が維持されている事が確認された。
(有機EL素子の作製)
有機EL素子用基材の微細凹凸構造層を含む層を形成した面上に下記の順に有機EL素子層を作製した。
ITO 150nm スパッタリング
HAT−CN 60nm 真空蒸着
α−NPD 20nm 真空蒸着
CBP:Ir(ppy)3[6%] 30nm 真空蒸着
BAlq 10nm 真空蒸着
Alq3 30nm 真空蒸着
LiF 1.6nm 真空蒸着
Al 150nm 真空蒸着
有機EL層上をガラス板により封止して有機EL素子を得た。比較用として有機EL素子用基材をガラス基板に変えて同様に有機EL素子を得た。
(発光特性)
有機EL素子の発光効率特性を25cm積分球による全光束測定法により測定し、パターンを設けない同構成の素子の全光束値1.0に対する比率を表1に示した。
(ギラツキの評価)
有機EL素子を発光させた状態で目視観察し、ギラツキが緩和された状態を○、ギラツキが観察された状態を×として表1に示した。
(輝度斑の評価)
有機EL素子を発光させた状態で目視観察し、観察方向によって輝度の変動が観察されない状態を○、輝度斑が観察された状態を×として表1に示した。
[実施例2〜7]
実施例1と同様の方法でパラメーター、ドット基本重心位置のON、OFF制御シーケンスを変更することにより、種々のドット集合体パターンを有する樹脂反転モールドを作製した。
得られた複数のドット集合体の配置は図2〜図7と同じであった。すなわち図2が実施例2、図3が実施例3、図4が実施例4、図5が実施例6、図7が実施例7の配置を示す。そして、実施例1と同様に有機EL素子を作製し、各実施例の発光特性、ギラツキの評価及び輝度班の評価を行った。その結果を表1に示す。なお図2〜図7において、実線で囲まれた円は実在するドットを表し、破線で囲まれた円は、その位置にドットが存在しないことを表す。
[比較例1〜2]
実施例と同様の方法でパラメーターを設定し、ドット基本重心位置のON、OFF制御をすべてONとすることにより(すなわち実施例におけるOFF制御の部分を全てON制御に切り替えることにより)、種々の通常の格子パターンを有する樹脂反転モールドを作製した。
得られた格子パターンの模式図を図17、図18に示し、実施例1と同様に有機EL素子を作製した。そして、各比較例の発光特性、ギラツキの評価及び輝度班の評価を行った。その結果を表1に示す。
表1から、実施例1〜実施例7の有機EL素子では比較例と比較して全光束値が上昇し、基板表面への光取り出し効率が向上したことがわかった。六方格子構造の位置を基本位置からランダムに変異させた実施例5、7では、ギラツキの低減効果が大きいことが分かった。また、第1方向(X方向)においては一定間隔のピッチPxでドットを形成し、第2方向(Y方向)においては、不定間隔のピッチPyでドットを形成した実施例6、7(位相変調あり)では、輝度班の低減効果が大きいことがわかった。
このように、本発明の光学用基材を用いることで、輝度を向上させ、基板表面への光取り出し効率が向上するとともに、ギラツキを低減させた発光素子を作製できることがわかった。したがって、本発明の光学用基材及び発光素子は、高い発光効率で良好な実用性の高い発光素子が実現し、電力の有効活用、省エネルギーに大きく貢献できることがわかった。
本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。