JP2015186019A - 振動子、振動子の製造方法及び電子部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】圧電薄膜及びこの圧電薄膜の上下に励振電極を備えた振動子において、励振電極同士の短絡を防止すること。【解決手段】基板11上に、下層側の励振電極13を形成した後、膜厚寸法dが数μmレベルとなるように、圧電薄膜12を例えばスパッタ法により成膜する。この圧電薄膜12には、膜厚寸法dが薄いことに伴ってピンホールなどの貫通孔が形成される。次いで、貫通孔を介して下層側の励振電極13をウエットエッチングすると、当該下層側の励振電極13には、平面で見た時に貫通孔の開口径よりも一回り大きな開口部が形成される。続いて、圧電薄膜12の上層側に励振電極13を形成する。【選択図】図12
Description
本発明は、圧電薄膜とこの圧電薄膜を振動させるための一対の励振電極とを備えた振動子、振動子の製造方法及び前記振動子を備えた電子部品に関する。
任意の周波数で発振(振動)する振動子として、例えば概略板状の基部と、この基部から各々伸び出す複数本の振動腕部とを備えた音叉型振動子が知られている。音叉型振動子では、例えばセラミックスなどからなる基板の上に、励振電極、酸化亜鉛(ZnO)などの圧電薄膜及び励振電極が下側からこの順番で積層されており、圧電薄膜や励振電極は例えば各々スパッタなどにより成膜される。
このような音叉型振動子において、共振抵抗は、圧電薄膜の厚みに反比例する。即ち、音叉型振動子の共振抵抗をできるだけ小さくするためには、圧電薄膜をなるべく薄くすることが好ましい。具体的には、目標となる規格値まで共振抵抗を下げようとすると、圧電薄膜の膜厚寸法は例えば数μm程度となる。
ところで、このように圧電薄膜の膜厚寸法を薄くしすぎると、成膜時の工程ばらつきなどにより、微少なピンホール(貫通孔)が形成されて不連続な膜となってしまう場合がある。そのため、圧電薄膜の上層側に励振電極を形成する時、この励振電極がピンホールを通過して下層側の励振電極に到達すると、これら励振電極同士が互いに電気的に接続されてショート(短絡)してしまう。
特許文献1、2には、圧電薄膜と励振電極との間に絶縁層を形成する技術について記載されているが、絶縁層によって励振電極同士が大きく離間してしまう。従って、例えば圧電薄膜の比誘電率がある程度高い場合には、励振電極間の電界効率が劣化するため、振動子の特性が悪くなってしまう。また、絶縁層の形成工程の分だけプロセス数が増加してコストアップに繋がってしまう。
特許文献3には、圧電薄膜の上下の励振電極同士を平面で見た時に互いに位置ずれさせる技術について記載されているが、圧電薄膜の面積よりも励振電極の形成面積が小さくなるので、共振抵抗が大幅に増加すると考えられる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電薄膜及びこの圧電薄膜の上下に励振電極を備えた振動子において、励振電極同士の短絡を防止できる技術を提供することにある。
本発明の振動子は、
基板と、
この基板上に配置された下層側励振電極と、
この下層側励振電極上に配置されると共に、上下方向に貫通する貫通孔が形成された圧電薄膜と、
この圧電薄膜上に配置された上層側励振電極と、を備え、
前記下層側励振電極には、平面で見た時に前記圧電薄膜の貫通孔に対応する位置に、当該貫通孔の開口径よりも大きな開口径の開口部が形成され、
前記上層側励振電極は、前記圧電薄膜の上層側から前記貫通孔の内壁面及び当該貫通孔の底面にまで亘って形成されると共に、前記下層側励振電極に対して離間していることを特徴とする。
基板と、
この基板上に配置された下層側励振電極と、
この下層側励振電極上に配置されると共に、上下方向に貫通する貫通孔が形成された圧電薄膜と、
この圧電薄膜上に配置された上層側励振電極と、を備え、
前記下層側励振電極には、平面で見た時に前記圧電薄膜の貫通孔に対応する位置に、当該貫通孔の開口径よりも大きな開口径の開口部が形成され、
前記上層側励振電極は、前記圧電薄膜の上層側から前記貫通孔の内壁面及び当該貫通孔の底面にまで亘って形成されると共に、前記下層側励振電極に対して離間していることを特徴とする。
また、本発明の別の振動子は、
基板と、
この基板上に配置された下層側励振電極と、
この下層側励振電極上に配置されると共に、上下方向に貫通する貫通孔が形成された圧電薄膜と、
この圧電薄膜上に配置された上層側励振電極と、を備え、
前記上層側励振電極は、前記圧電薄膜の上層側から、前記貫通孔の内壁面のうち深さ方向における途中位置までに亘って形成されると共に、前記下層側励振電極に対して離間していることを特徴とする。
基板と、
この基板上に配置された下層側励振電極と、
この下層側励振電極上に配置されると共に、上下方向に貫通する貫通孔が形成された圧電薄膜と、
この圧電薄膜上に配置された上層側励振電極と、を備え、
前記上層側励振電極は、前記圧電薄膜の上層側から、前記貫通孔の内壁面のうち深さ方向における途中位置までに亘って形成されると共に、前記下層側励振電極に対して離間していることを特徴とする。
本発明の振動子の製造方法は、
基板上に配置された下層側励振電極の上に、上下方向に貫通する貫通孔を備えた圧電薄膜を成膜する工程と、
次いで、前記圧電薄膜にエッチング液を供給することにより、前記貫通孔を介して前記下層側励振電極をウエットエッチングする工程と、
続いて、前記圧電薄膜上に上層側励振電極を積層する工程と、を含むことを特徴とする。
基板上に配置された下層側励振電極の上に、上下方向に貫通する貫通孔を備えた圧電薄膜を成膜する工程と、
次いで、前記圧電薄膜にエッチング液を供給することにより、前記貫通孔を介して前記下層側励振電極をウエットエッチングする工程と、
続いて、前記圧電薄膜上に上層側励振電極を積層する工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の別の振動子の製造方法は、
基板上に配置された下層側励振電極の上に、上下方向に貫通する貫通孔を備えた圧電薄膜を成膜する工程と、
次いで、前記圧電薄膜の表面から垂直に伸びる軸に対して交差する方向且つ当該圧電薄膜の上方側から成膜用の流体を前記圧電薄膜に供給して、圧電薄膜の表面に上層側励振電極を積層する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の電子部品は、
既述の振動子を備えたことを特徴とする。
基板上に配置された下層側励振電極の上に、上下方向に貫通する貫通孔を備えた圧電薄膜を成膜する工程と、
次いで、前記圧電薄膜の表面から垂直に伸びる軸に対して交差する方向且つ当該圧電薄膜の上方側から成膜用の流体を前記圧電薄膜に供給して、圧電薄膜の表面に上層側励振電極を積層する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の電子部品は、
既述の振動子を備えたことを特徴とする。
本発明は、下層側励振電極及び上層側励振電極により圧電薄膜を上下方向から挟む構成を基板上に形成するにあたり、圧電薄膜に形成された貫通孔を介して上層側励振電極が下層側励振電極に電気的に接触しないようにしている。具体的には、上層側励振電極を積層する前に貫通孔を介して下層側励振電極をウエットエッチングしておくか、あるいは貫通孔の長さ方向に対して傾斜した方向から上層側励振電極を成膜するための流体を圧電薄膜に供給している。そのため、励振電極同士の短絡を防止できる。
本発明に係る実施の形態の音叉型振動子の一例について、図1〜図6を参照して説明する。この音叉型振動子は、図1に示すように、基部1と、この基部1から互いに離間するように上方側(Z方向)に向かって各々伸び出す複数本この例では4本の振動腕部2とにより構成されている。この音叉型振動子は、後述するように、基板11上に、圧電体からなる薄膜(圧電薄膜12)及びこの圧電薄膜12を振動(伸縮)させるための一対の励振電極13を当該圧電薄膜12の上下面にアルミニウム(Al)膜として配置した構成を採っている。この例では、圧電薄膜12をスパッタ法により成膜しており、従って圧電薄膜12には、後述の図9に示すように、当該圧電薄膜12を膜厚方向に貫通する貫通孔16が形成されている。尚、図2〜図4は、図1におけるA−A線、B−B線及びC−C線にて音叉型振動子を切断した横断面を示している。
基板11は、この例では水晶により構成されており、概略板状に形成された支持部14と、この支持部14から上方側に伸び出す4本の腕部15とを備えている。図1中3、4は、支持部14上にて互いに左右方向(X方向)に離間するように配置された電極パッドであり、電極パッド3及び電極パッド4は、夫々左側及び右側に配置されている。
ここで、4本の振動腕部2について、左側から右側に向かって夫々「第1の振動腕部2a」、「第2の振動腕部2b」、「第3の振動腕部2c」及び「第4の振動腕部2d」と呼ぶものとする。4本の振動腕部2a〜2dのうち始めに第1の振動腕部2aについて説明すると、図2に示すように、この第1の振動腕部2aにおける腕部15の上面側には、例えばアルミニウム(Al)などからなる励振電極13、例えば酸化亜鉛などの圧電薄膜12及び励振電極13が下側からこの順番で積層されている。圧電薄膜12は、当該圧電薄膜12に対して板厚方向から電圧を印可すると、振動腕部2の長さ方向に伸縮するように切断カットが調整されている。
圧電薄膜12の裏面側における励振電極13には、図3〜図5に示すように、上下方向に伸びる引き回し電極16aの一端側が接続されており、この引き回し電極16aの他端側は、支持部14側(下側)に向かって伸び出して、既述の電極パッド3に接続されている。また、支持部14における引き回し電極16aの途中部位は、第2の振動腕部2bに向かって右側に分岐している。
第1の振動腕部2aにおける圧電薄膜12の上層側の励振電極13は、図1に示すように、支持部14において圧電薄膜12の露出面に沿って右方向に伸び出しており、当該支持部14上を左右方向に伸びる引き回し電極16bによって電極パッド4に接続されている。図1、図4及び図5における17は、支持部14において引き回し電極16a、16bの近傍位置に配置された接続用電極である。尚、図5は、音叉型振動子を製造する一連の工程のうち途中の工程を示しており、基板11上に励振電極13、引き回し電極16a、16b、接続用電極17及び電極パッド3、4をパターニングした状態を示している。
次いで、第2の振動腕部2bについて説明すると、この第2の振動腕部2bにおける圧電薄膜12の下層側の励振電極13は、図3〜図5に示すように、既述の第1の振動腕部2aにおける圧電薄膜12の上層側の励振電極13と共に、引き回し電極16bを介して電極パッド4に接続されている。また、第2の振動腕部2bでは、圧電薄膜12の上層側における励振電極13は、図1及び図3に示すように、第1の振動腕部2aにおける圧電薄膜12の下層側の励振電極13と共に、電極パッド3に接続されている。
第3の振動腕部2cは、第2の振動腕部2bとほぼ同様に構成されている。具体的には、圧電薄膜12の下層側における励振電極13及び上層側における励振電極13は、夫々電極パッド4及び電極パッド3に接続されている。
第4の振動腕部2dは、既述の第1の振動腕部2aの左右を反転させた構成となっている。即ち、圧電薄膜12の下層側における励振電極13及び上層側における励振電極13は、夫々電極パッド3及び電極パッド4に接続されている。
第4の振動腕部2dは、既述の第1の振動腕部2aの左右を反転させた構成となっている。即ち、圧電薄膜12の下層側における励振電極13及び上層側における励振電極13は、夫々電極パッド3及び電極パッド4に接続されている。
こうして以上説明した各振動腕部2a〜2dは、各電極パッド3、4に対して、図6のように配線されている。即ち、電極パッド3に対して、第1の振動腕部2a及び第4の振動腕部2dにおける圧電薄膜12の下層側の励振電極13、第2の振動腕部2b及び第3の振動腕部2cにおける圧電薄膜12の上層側の励振電極13が各々接続されている。また、電極パッド4に対しては、第1の振動腕部2a及び第4の振動腕部2dにおける圧電薄膜12の上層側の励振電極13、第2の振動腕部2b及び第3の振動腕部2cにおける圧電薄膜12の下層側の励振電極13が各々接続されている。
従って、各々の振動腕部2a〜2dでは、振動腕部2a〜2dのうち左端及び右端の振動腕部2a、2dは同相で振動し、一方中央側の振動腕部2b、2dは前記左端及び右端の振動腕部2a、2dに対して逆相で振動するように構成されている。具体的には、図7に示すように、各振動腕部2a〜2dに電圧を印可しているある瞬間を見ると、第1の振動腕部2a及び第4の振動腕部2dでは、圧電薄膜12が各々の振動腕部2a、2dの長さ方向に伸長しており、一方第2の振動腕部2b及び第3の振動腕部2cは、圧電薄膜12が各々振動腕部2b、2cの長さ方向に縮退している。
また、各振動腕部2a〜2dに電圧を印加している別の瞬間では、図8に示すように、第1の振動腕部2a及び第4の振動腕部2dでは、圧電薄膜12が振動腕部2a、2dの長さ方向に各々縮退しており、一方第2の振動腕部2b及び第3の振動腕部2cの圧電薄膜12は、振動腕部2b、2cの長さ方向に各々伸長している。従って、各振動腕部2a〜2dでは、図1におけるY方向に倒れるように屈曲振動が起こる。音叉型振動子の具体的な振動周波数は、32kHzである。尚、図7及び図8では、基板11(腕部15)の描画を省略している。
続いて、以上説明した音叉型振動子の製造方法について図9〜図11を参照して説明する。始めに、例えばウエハ状の水晶基板を矩形に切断すると共に、各腕部15、15間の領域を例えばウエットエッチングにより除去して、基板11を形成する。次いで、例えばアルミニウム(Al)などの金属材料のスパッタ、レジストマスクの形成及びドライエッチングを行うことにより、基板11の表面側に、各励振電極13、引き回し電極16a、16b、接続用電極17及び電極パッド3、4を形成する。
次に、励振電極13の表面に、例えばスパッタ法を用いて、膜厚寸法dが0.3μm〜3μmとなるようにモリブデン膜からなる圧電薄膜12を形成する。具体的には、励振電極13、引き回し電極16a、16b、接続用電極17及び電極パッド3、4を覆うように圧電材料からなる薄膜を形成し、次いでリソグラフィ法により励振電極13の上方側の薄膜が残るように他の部位をドライエッチングする。その後、不要なレジストマスクを除去する。このように膜厚寸法dが薄い場合において、圧電薄膜12には、図9に示すように、例えばいわゆるピンホールなどと呼ばれる貫通孔16が形成される。従って、貫通孔16の底面では、圧電薄膜12の下層側の励振電極13は、露出したままとなっている。貫通孔16の開口径は、0.05μm〜1μmである。尚、図9では、4本の腕部15のうちいずれかの腕部15を図1中左右方向(X方向)に切断した横断面を示しており、貫通孔16の開口径を模式的に大きく描画している。また、励振電極13にもこのような貫通孔16が形成される場合もあるが、ここでは説明を省略している。
その後、水酸化カリウム(KOH)などのアルカリ水溶液に励振電極13や圧電薄膜12が形成された基板11を浸漬すると、あるいは前記アルカリ水溶液を基板11上に図示しないノズルなどから供給すると、図10に示すように、当該アルカリ水溶液が圧電薄膜12の表面だけでなく貫通孔16の内部にも満たされる。そのため、圧電薄膜12の下層側における励振電極13がアルカリ水溶液に接触するので、貫通孔16の底面では、当該励振電極13が溶出することにより、この励振電極13の下側の基板11が露出して開口部18が形成される。開口部18は、平面で見た時に貫通孔16と同じ位置(対応する位置)に形成される。
そして、更に励振電極13のウエットエッチングを続けると、アルカリ水溶液は、開口部18から周方向に亘って外側に広がっていこうとする。そのため、開口部18の外側における励振電極13についてもアルカリ水溶液に溶出して、図11に示すように、開口部18は、平面で見た時に貫通孔16の開口径よりも一回り大きくなるように形成される。
しかる後、基板11を洗浄してアルカリ水溶液を取り除いた後、圧電薄膜12の下層側の励振電極13と同様にスパッタにより上層側の励振電極13の成膜(スパッタ、リソグラフィ及びエッチング)を行うと、この励振電極13は、図12に示すように、圧電薄膜12の上層側だけでなく、貫通孔16の内周面や底面にも形成される。この上層側の励振電極13は、既述のように開口部18の開口径が貫通孔16の開口径よりも一回り大きいことから、下層側の励振電極13に対して離間するように形成される。従って、圧電薄膜12の上層側の励振電極13は、圧電薄膜12の下層側の励振電極13に対して電気的に絶縁された状態で成膜される。尚、励振電極13をモリブデン(Mo)により構成した場合には、この励振電極13をエッチングするエッチャントとしては、硝酸とリン酸との混合液が使用される。
上述の実施の形態によれば、基板11上に励振電極13、圧電薄膜12及び励振電極13を下側からこの順番で積層するにあたり、圧電薄膜12の上層側の励振電極13を成膜する前に、圧電薄膜12を介して下層側の励振電極13をウエットエッチングしている。そのため、圧電薄膜12にピンホールなどの貫通孔16が形成されていても、下層側の励振電極13には平面で見た時に当該貫通孔16と同じ位置にて当該貫通孔16の開口径よりも大きな開口部18を形成できる。従って、圧電薄膜12の上層側に励振電極13を形成した場合に、当該励振電極13が貫通孔16の内部に入り込んでも、上層側の励振電極13が圧電薄膜12の下層側の励振電極13に接触(短絡)することを防止できる。
そして、このように圧電薄膜12の上下層の励振電極13、13の短絡を防止するにあたって、圧電薄膜12と励振電極13との間に不要な絶縁膜を介在させる必要がないし、また上下層の励振電極13、13のレイアウトを調整する必要もない。従って、前記上下層の励振電極13、13の短絡を防止しながら、音叉型振動子の特性の劣化を抑制できる。
ここで、圧電薄膜12を成膜した後に下層側の励振電極13のウエットエッチングを行わずに上層側の励振電極13を成膜した場合しようとすると、貫通孔16の底面には、当該下層側の励振電極13が位置している。従って、上層側の励振電極13を成膜すると、図13に示すように、圧電薄膜12の上下の励振電極13、13同士が互いに接触して短絡してしまう。そのため、以上説明した本発明の手法は、貫通孔16が形成されてしまうまでの膜厚寸法dの小さい圧電薄膜12を成膜するにあたって、言い換えると共振抵抗ができるだけ小さい圧電薄膜12を成膜するにあたって極めて有効な手法である。
続いて、本発明の他の実施の形態について図14を参照して説明する。この他の実施の形態では、圧電薄膜12をスパッタ法により成膜した後、下層側の励振電極13のウエットエッチングを行わずに上層側の励振電極13を成膜しており、このような成膜方法であっても、上下の励振電極13、13同士の短絡を防止している。具体的には、圧電薄膜12を成膜した後、図14に示すように、上層側の励振電極13を成膜するためのスパッタ源(ターゲット)に対して、基板11を傾斜させる。即ち、基板11の表面から垂直に伸びる軸に対する、スパッタ源から供給される金属源の流路がなす傾斜角度θについて、45°以上好ましくは45°〜89°となるようにしている。言い換えると、基板11に対してできるだけ寝た方向から金属源が供給されるようにしている。
そのため、スパッタ源の金属源(成膜用の流体)は、圧電薄膜12の貫通孔16の長さ方向に対して交差する方向(傾斜した方向)から基板11に供給されるので、圧電薄膜12の上層側の励振電極13は、貫通孔16の底面には到達しない。具体的には、圧電薄膜12の上層側の励振電極13は、圧電薄膜12の上層側から、貫通孔16の内壁面のうち深さ方向における途中位置までに亘って形成される。また、基板11に対して金属源が一方向から供給されるので、貫通孔16の内壁面には、圧電薄膜12の上層側の励振電極13が形成された部位と、当該部位に対向する位置にて励振電極13が形成されずに圧電薄膜12(貫通孔16の内壁面)が露出した部位とが形成される。この実施の形態においても、既述の例と同様の効果が得られる。
ここで、基板11に対して傾斜した角度からスパッタを行う装置の一例について、図15を参照して説明する。この装置には、基板11を載置する載置台31と、この載置台31を気密に収納する処理容器32とが設けられている。載置台31に対向する位置における処理容器32の天井面にはスパッタ源33が設けられており、図示しないエネルギー供給源により、このスパッタ源33から金属源が載置台31上に供給されるように構成されている。
また、載置台31の底面の端部には、当該端部を昇降させるための昇降軸34の一端側が接続されており、この昇降軸34の他端側は昇降機構35に接続されている。図15中36は処理容器32と昇降機構35との間を気密に接続するためのベローズであり、37は基板11の搬送口、38は排気口である。
このような装置において圧電薄膜12の上層側に励振電極13を成膜する時には、載置台31上に基板11を載置した後、昇降軸34を介して載置台31をスパッタ源33に対して傾斜させ、次いでスパッタ源33から金属源を基板11に供給する。尚、基板11を水平に保持すると共に、スパッタ源33を当該基板11に対して傾斜した位置にて保持して成膜を行っても良い。
このような装置において圧電薄膜12の上層側に励振電極13を成膜する時には、載置台31上に基板11を載置した後、昇降軸34を介して載置台31をスパッタ源33に対して傾斜させ、次いでスパッタ源33から金属源を基板11に供給する。尚、基板11を水平に保持すると共に、スパッタ源33を当該基板11に対して傾斜した位置にて保持して成膜を行っても良い。
本発明の音叉型振動子を電子部品として適用する場合の構成例について、当該音叉型振動子に「40」の符号を付して以下に説明する。音叉型振動子40は、図16に示すように、上方側が開口する概略箱型の筐体41と、この筐体41における上面側開口部を塞ぐ蓋体42とにより構成されるパッケージ内に気密に収納されている。そして、音叉型振動子40は、導電性接着剤43により各電極パッド3、4を介して片持ちの状態で筐体41の底面に各々固定されると共に、当該底面を貫通するように形成された導電路44、44を介して各電極パッド3、4がパッケージの外側に配線されるように配置されている。図16中45は、パッケージの外側にて導電路44、44の端部に設けられた電極部である。尚、図16では音叉型振動子40について簡略化して描画している。
そして、この音叉型振動子40は、パッケージ内に収納された状態で電子部品に適用される。図17は、このような電子部品として発振器を例に挙げており、互いに直列に接続された2つのコンデンサC、Cとトランジスタ101とからなるコルピッツ回路を備えた電気回路を示している。トランジスタ101のベース端子には、本発明の音叉型振動子40と可変コンデンサC1とからなる直列回路が接続されている。これらベース端子と音叉型振動子40との間の接続点には、入力ポート102が接続されており、トランジスタ101のコレクタ端子には、電気信号を取り出すための出力ポート103が接続されている。図17中104は抵抗、105はインダクタンスである。尚、図17では音叉型振動子40について簡略化している。
本発明の振動子としては、既述の音叉型振動子40に代えて、FBAR(Firm Bulk Acoustic Resonator)であっても良い。図18は、このようなFBARの具体的な一例を示している。FBARは、セラミックスなどの絶縁体からなる基板51上に、励振電極52、圧電薄膜53及び励振電極54を下側からこの順番で積層して構成されており、例えば概略板状体をなしている。そして、これら励振電極52、圧電薄膜53及び励振電極54からなる積層体は、一端側が片持ちの状態で基板51上に支持されており、他端側が基板11から浮いている。
このような積層体を形成する手法について簡単に説明すると、基板51の表面に例えばエッチングにより凹部55を形成した後、基板51よりもエッチングされやすい材料(例えば金属や樹脂など)を当該凹部55内に犠牲膜として埋め込む。次いで、基板51上に金属膜を形成して、この金属膜の一部が凹部55の上方側に残るように、且つ当該金属膜の別の部位が凹部55の上方側から外れた領域にも残るようにパターニングして、励振電極52を形成する。続いて、この励振電極52の上に例えばスパッタ法により圧電薄膜53を形成した後、既述の手法により励振電極54を積層する。その後、凹部55内に残る犠牲膜をエッチングすると、図18に示す振動子が得られる。
以上の各例において、圧電薄膜12、53、励振電極13、54の成膜方法としては、スパッタ法に代えて、互いに反応する2種類のガスを用いる手法であるCVD(Chemical Vapor Deposition)法であっても良い。圧電薄膜12、53を構成する材料としては、既述の酸化亜鉛の他に、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)あるいはニオブ酸カリウム(KNbO3)などであっても良い。振動腕部2の本数としては、複数本例えば2本以上であっても良い。
1 基部
2 振動腕部
3 電極パッド
4 電極パッド
11 基板
12 圧電薄膜
13 励振電極
16 貫通孔
18 開口部
2 振動腕部
3 電極パッド
4 電極パッド
11 基板
12 圧電薄膜
13 励振電極
16 貫通孔
18 開口部
Claims (15)
- 基板と、
この基板上に配置された下層側励振電極と、
この下層側励振電極上に配置されると共に、上下方向に貫通する貫通孔が形成された圧電薄膜と、
この圧電薄膜上に配置された上層側励振電極と、を備え、
前記下層側励振電極には、平面で見た時に前記圧電薄膜の貫通孔に対応する位置に、当該貫通孔の開口径よりも大きな開口径の開口部が形成され、
前記上層側励振電極は、前記圧電薄膜の上層側から前記貫通孔の内壁面及び当該貫通孔の底面にまで亘って形成されると共に、前記下層側励振電極に対して離間していることを特徴とする振動子。 - 基板と、
この基板上に配置された下層側励振電極と、
この下層側励振電極上に配置されると共に、上下方向に貫通する貫通孔が形成された圧電薄膜と、
この圧電薄膜上に配置された上層側励振電極と、を備え、
前記上層側励振電極は、前記圧電薄膜の上層側から、前記貫通孔の内壁面のうち深さ方向における途中位置までに亘って形成されると共に、前記下層側励振電極に対して離間していることを特徴とする振動子。 - 前記貫通孔の内壁面には、前記上層側励振電極が形成された部位と、当該部位に対向する位置にて当該上層側励振電極が形成されずに前記圧電薄膜が露出した部位と、が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の振動子。
- 前記基板は、基部と、この基部から互いに離間して伸び出す複数本の腕部とにより構成されると共に、板厚方向に振動するように構成され、
前記下層側励振電極、前記圧電薄膜及び前記上層側励振電極は、前記腕部に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の振動子。 - 前記腕部は横並びに4本形成され、
前記基部には、前記腕部のうち中央の2本の腕部が互いに同相で振動し、他の2本の腕部が互いに同相且つ前記中央の2本の腕部に対して逆相で振動するように配線された引き回し電極が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の振動子。 - 前記圧電薄膜及び前記上層側励振電極は、各々スパッタにより形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の振動子。
- 前記圧電薄膜の膜厚寸法は、0.3μm〜3μmであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の振動子。
- 前記貫通孔の開口径は、0.05μm〜1μmであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の振動子。
- 基板上に配置された下層側励振電極の上に、上下方向に貫通する貫通孔を備えた圧電薄膜を成膜する工程と、
次いで、前記圧電薄膜にエッチング液を供給することにより、前記貫通孔を介して前記下層側励振電極をウエットエッチングする工程と、
続いて、前記圧電薄膜上に上層側励振電極を積層する工程と、を含むことを特徴とする振動子の製造方法。 - 基板上に配置された下層側励振電極の上に、上下方向に貫通する貫通孔を備えた圧電薄膜を成膜する工程と、
次いで、前記圧電薄膜の表面から垂直に伸びる軸に対して交差する方向且つ当該圧電薄膜の上方側から成膜用の流体を前記圧電薄膜に供給して、圧電薄膜の表面に上層側励振電極を積層する工程と、を含むことを特徴とする振動子の製造方法。 - 前記上層側励振電極を積層する工程は、前記軸に対する傾斜角度が45°以上の向きから前記流体を供給する工程であることを特徴とする請求項10に記載の振動子の製造方法。
- 前記上層側励振電極を積層する工程は、金属材料のスパッタを行う工程であることを特徴とする請求項9ないし11のいずれか一つに記載の振動子の製造方法。
- 前記圧電薄膜を積層する工程は、圧電材料のスパッタを行う工程であることを特徴とする請求項9ないし12のいずれか一つに記載の振動子の製造方法。
- 前記圧電薄膜の膜厚寸法は、0.3μm〜3μmであることを特徴とする請求項9ないし13のいずれか一つに記載の振動子の製造方法。
- 請求項1ないし8のいずれか一つに記載の振動子を備えたことを特徴とする電子部品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014060524A JP2015186019A (ja) | 2014-03-24 | 2014-03-24 | 振動子、振動子の製造方法及び電子部品 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
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JP2015186019A true JP2015186019A (ja) | 2015-10-22 |
Family
ID=54352128
Family Applications (1)
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JP2014060524A Pending JP2015186019A (ja) | 2014-03-24 | 2014-03-24 | 振動子、振動子の製造方法及び電子部品 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPWO2021215036A1 (ja) * | 2020-04-22 | 2021-10-28 |
-
2014
- 2014-03-24 JP JP2014060524A patent/JP2015186019A/ja active Pending
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JPWO2021215036A1 (ja) * | 2020-04-22 | 2021-10-28 | ||
WO2021215036A1 (ja) * | 2020-04-22 | 2021-10-28 | 株式会社村田製作所 | 共振子および共振装置 |
JP7400955B2 (ja) | 2020-04-22 | 2023-12-19 | 株式会社村田製作所 | 共振子および共振装置 |
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