JP2015180597A - 化学強化用ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】溶融塩の交換の頻度を減らすことができる化学強化用ガラスの提供。
【解決手段】下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを61〜73%、Alを10.2〜18%、MgOを0〜15%、CaOを0〜0.5%、ZrOを0〜4%、NaOを11〜16%、KOを0〜1%ならびにBを3.4〜4.2%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が85%以下であり、MgOおよびCaOの含有量の合計が0〜15%であり、かつ、各成分の含有量を用いて下記式により算出されるR’が0.66以上である化学強化用ガラス。
R’=0.029×SiO+0.021×Al+0.016×MgO−0.004×CaO+0.016×ZrO+0.029×NaO+0×KO+0.028×B+0.012×SrO+0.026×BaO−2.002。
【選択図】図1

Description

本発明は、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等のモバイル機器、大型液晶テレビ、大型プラズマテレビなどの大型薄型テレビおよびタッチパネル等のディスプレイ装置のカバーガラス等に好適な化学強化用ガラスに関する。
近年、モバイル機器、液晶テレビやタッチパネルなどのディスプレイ装置に対しては、ディスプレイの保護ならびに美観を高めるためのカバーガラス(保護ガラス)が用いられることが多くなっている。
このようなディスプレイ装置に対しては、薄型デザインによる差異化や移動のための負担の減少のため、軽量・薄型化が要求されている。そのため、ディスプレイ保護用に使用されるカバーガラスも薄くすることが要求されている。しかし、カバーガラスの厚さを薄くしていくと強度が低下し、据え置き型の場合には物体の飛来や落下による衝撃などにより、携帯機器の場合には使用中の落下などによりカバーガラス自身が割れてしまいディスプレイ装置を保護するという本来の役割を果たすことができなくなるという問題があった。
上記問題を解決するためには、カバーガラスの強度を高めることが考えられ、その方法としてガラス表面に圧縮応力層を形成させる手法が一般的に知られている。
ガラス表面に圧縮応力層を形成させる手法としては、軟化点付近まで加熱したガラス板表面を風冷などにより急速に冷却する風冷強化法(物理強化法)と、ガラス転移点以下の温度でイオン交換によりガラス板表面のイオン半径が小さなアルカリ金属イオン(典型的にはLiイオン、Naイオン)をイオン半径のより大きいアルカリイオン(典型的にはKイオン)に交換する化学強化法が代表的である。
前述したようにカバーガラスの厚さは薄いことが要求されている。しかしながら、カバーガラスとして要求される、厚みが2mmを下回るような薄いガラス板に対して風冷強化法を適用すると、表面と内部の温度差がつきにくいために圧縮応力層を形成することが困難であり、目的の高強度という特性を得ることができない。そのため、後者の化学強化法によって強化されたカバーガラスが通常用いられている。
このようなカバーガラスとしてはソーダライムガラスを化学強化したものが広く用いられている(たとえば特許文献1参照)。
ソーダライムガラスは安価であり、また化学強化によってガラス表面に形成した圧縮応力層の表面圧縮応力Sを200MPa以上にできるという特徴があるが、圧縮応力層の厚みtを30μm以上にすることが容易ではないという問題があった。
そこで、ソーダライムガラスとは異なるSiO−Al−NaO系ガラスを化学強化したものがこのようなカバーガラスとして提案されている(たとえば特許文献2参照)。
前記SiO−Al−NaO系ガラスには前記Sを200MPa以上にできるだけでなく、前記tを30μm以上にすることも可能であるという特徴がある。
特開2007−11210号公報 米国特許出願公開第2008/0286548号明細書
先に述べたような用途などにおいては通常、化学強化のためのイオン交換処理はナトリウム(Na)を含有するガラスを溶融カリウム塩に浸漬して行われ、当該カリウム塩としては硝酸カリウムまたは硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合塩が使用される。
イオン交換処理ではガラス中のNaと溶融塩中のカリウム(K)のイオン交換が行われるので、同じ溶融塩を使用し続けながらイオン交換処理を繰り返すと溶融塩中のNa濃度が上昇する。
溶融塩中のNa濃度が高くなると化学強化されたガラスの表面圧縮応力Sが低下するので、化学強化ガラスのSが所望の値を下回らないように溶融塩中のNa濃度を厳しく管理し、また溶融塩の交換を頻繁に行う必要があるという問題があった。
このような溶融塩の交換の頻度は少しでも減らすことが求められており、本発明はこのような問題を解決できる化学強化用ガラスの提供を目的とする。
本発明の実施形態に係る化学強化用ガラスは、下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを61〜73%、Alを10.2〜18%、MgOを0〜15%、CaOを0〜0.5%、ZrOを0〜4%、NaOを11〜16%、KOを0〜1%ならびにBを3.4〜4.2%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が85%以下であり、MgOおよびCaOの含有量の合計が0〜15%であり、かつ、各成分の含有量を用いて下記式により算出されるR’が0.66以上であるものである。
R’=0.029×SiO+0.021×Al+0.016×MgO−0.004×CaO+0.016×ZrO+0.029×NaO+0×KO+0.028×B+0.012×SrO+0.026×BaO−2.002。
本発明者は、溶融カリウム塩にNa含有ガラスを浸漬して化学強化ガラスとするイオン交換を何度も繰り返すことにより溶融カリウム塩中のNa濃度が上昇し、それとともに化学強化ガラスの表面圧縮応力が小さくなっていく現象とNa含有ガラスの組成との間に関係があるのではないかと考え、次のような実験を行った。
まず、表1〜3にモル%表示で示す組成を有し、厚みが1.5mm、大きさが20mm×20mmであり、両面が酸化セリウムで鏡面研磨された29種のガラス板を用意した。
これらガラスのガラス転移点Tg(単位:℃)およびヤング率E(単位:GPa)を同表に示す。
なお、*を付しているものは組成から計算して求めたものである。
Tgは次のようにして測定した。すなわち、示差熱膨張計を用いて、石英ガラスを参照試料として室温から5℃/分の割合で昇温した際のガラスの伸び率を屈伏点まで測定し、得られた熱膨張曲線における屈曲点に相当する温度をガラス転移点とした。
Eは、厚さが5〜10mm、大きさが3cm×3cmのガラス板について超音波パルス法により測定した。
これら29種のガラス板を、KNOの含有割合が100%であり温度が400℃である溶融カリウム塩に10時間浸漬するイオン交換を行って化学強化ガラス板とし、その表面圧縮応力CS1(単位:MPa)を測定した。なお、ガラスA27はモバイル機器のカバーガラスに使用されているガラスである。
また、これら29種のガラス板を、KNOの含有割合が95%、NaNOの含有割合が5%であり温度が400℃である溶融カリウム塩に10時間浸漬するイオン交換を行って化学強化ガラス板とし、その表面圧縮応力CS2(単位:MPa)を測定した。なお、CS1、CS2は折原製作所社製表面応力計FSM−6000にて測定した。
CS1、CS2をそれらの比r=CS2/CS1とともに表1〜3の該当欄に示す。
Figure 2015180597
Figure 2015180597
Figure 2015180597
これらの結果から、前記式で算出したR(表1〜3に記載する。)と前記rとの間に高い相関があることを見出した。図1は、この点を明らかにするために横軸をR、縦軸をrとした作成した散布図であり、同図中の直線はr=1.033×R−0.0043、相関係数は0.97である。
なお、前記R’およびR”の値も表1〜3のRの欄の下に併記する。
本発明者が見出した前記相関から、次のようなことがわかる。すなわち、溶融塩の交換頻度を少しでも減らすためには溶融塩中のNa濃度増加による表面圧縮応力Sの低下割合が小さいガラスすなわち前記rが大きいガラスを用いればよいが、そのためにはガラスの前記Rを大きくすればよいことがわかる。
また、従来使用されているガラスA27のrは0.65であるから、Rを0.66以上とすることによりrが概ね0.68以上となってガラスA27よりも明らかに大きくなり、溶融塩の交換頻度が顕著に減少し、あるいは溶融塩の管理を大幅に緩くすることが可能になる。
化学強化ガラスの強度は表面圧縮応力に強く依存し、表面圧縮応力が小さいほど化学強化ガラスの強度が低くなる。このため、化学強化処理によって得られる表面圧縮応力が溶融塩中のNa濃度が0%のときの表面圧縮応力に比べて68%以上すなわちrが0.68以上である必要がある。このことから、溶融塩中のNa濃度をCとすると、使用可能なCの範囲は以下の式を満たす範囲である。
0.68≦(r−1)×C/5+1
すなわち、C≦1.6/(1−r)でなければならない。
rが0.68未満では、溶融塩中のNa濃度上昇による化学強化ガラスの表面圧縮応力Sの低下割合が大きいので、Na濃度が5.0%未満までの狭い範囲でしか使用できないため、交換頻度が多くなる。rが0.75、0.79および0.81の場合にはそれぞれNa濃度が6.4%以下、7.6%以下および8.4%以下のNa濃度の広い範囲で使用可能となり、rが0.75、0.79および0.81の場合には、rが0.68の場合に比べて交換頻度をそれぞれ78%、66%および59%に抑えることができる。したがって、rは好ましくは0.70以上、より好ましくは0.75以上、さらに好ましくは0.79以上、特に好ましくは0.81以上である。
また、rが0.68未満では溶融塩中のNa濃度変化による化学強化ガラスの表面圧縮応力Sの変化が大きいので、表面圧縮応力の調整が難しくなり、溶融塩中のNa濃度の管理が厳しくなる。
また、29種のガラスの中で最もrが大きいガラス1、ガラス2を他の27種のガラスと比べるとKOを含有しないという点で共通する。一方、Rを算出する前記式におけるKOに係る係数は0であり、同じアルカリ金属酸化物であるNaOに係る係数0.029に比べて著しく小さいことからこの点を説明することが可能である。
本発明はこのような経緯により想到したものである。
本発明によれば、溶融塩中のNa濃度上昇による化学強化ガラスの表面圧縮応力Sの低下割合を小さくできるので、溶融塩中のNa濃度の管理を緩やかにし、溶融塩の交換頻度を低減することができる。
また、最初のイオン交換処理で得られた化学強化ガラスのSに対する溶融塩交換直前での化学強化ガラスのSの低下割合が小さくなり、Sのロット間ばらつきを小さくできる。
ガラス組成から計算して求めたRと、溶融カリウム塩中のNa濃度増加による表面圧縮応力の低下割合rとの関係を示す図である。 ガラス組成から計算して求めたR’と、溶融カリウム塩中のNa濃度増加による表面圧縮応力の低下割合rとの関係を示す図である。図中の直線はr=1.048×R’−0.0135、相関係数は0.98である。なお、この図の作成に用いたガラスは、表1〜3の29種のガラス、後述の表4、5の20種のガラス、後述の表6の7種のガラス23〜29、後述の表7の5種のガラス36〜40、後述の表8の6種のガラス41〜46、合計67種のガラスである。 ガラス組成から計算して求めたR”と、溶融カリウム塩中のNa濃度増加による表面圧縮応力の低下割合rとの関係を示す図である。図中の直線はr=1.014×R”+0.0074、相関係数は0.95である。なお、この図の作成に用いたガラスは、表1〜3の29種のガラス、後述の表4、5の20種のガラス、後述の表6の7種のガラス23〜29、後述の表7の5種のガラス36〜40、後述の表8の6種のガラス41〜46、後述の表9の8種のガラス49、51〜55、57、58、後述の表10の8種のガラス59〜64、66、68、後述の表11の5種のガラス69、73、74、77、78、後述の表12の6種のガラス79〜82、84、85の合計94種のガラスである。
本発明の化学強化ガラスの表面圧縮応力Sは典型的には200MPa以上であるが、カバーガラスなどにおいては400MPa以上であることが好ましく、より好ましくは550MPa以上、特に好ましくは700MPa超である。また、典型的にはSは1200MPa以下である。
本発明の化学強化ガラスの圧縮応力層厚みtは典型的には10μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは40μm超である。また、典型的にはtは70μm以下である。
本発明における溶融塩は、ガラス表層のNaと溶融塩中のKとをイオン交換できるものであれば特に限定されないが、たとえば溶融硝酸カリウム(KNO)が挙げられる。
溶融塩は前記イオン交換を行えるようにするためにはKを含有する溶融塩でなければならないが、本発明の目的を損なわないものであればそれ以外の制約はない。溶融塩としては先に述べた溶融KNOが通常使用されるが、KNO以外にNaNOを5%程度以下含有するものも一般的である。なお、Kを含有する溶融塩のKイオンの、陽イオン中の割合はモル比で0.7以上が典型的である。
ガラスに所望の表面圧縮応力を有する化学強化層(圧縮応力層)を形成するためのイオン交換処理条件はガラス板であればその厚みなどによっても異なるが、350〜550℃の溶融KNOに2〜20時間ガラス基板を浸漬させることが典型的である。経済的な観点からは350〜500℃、2〜16時間の条件で浸漬させることが好ましく、より好ましい浸漬時間は2〜10時間である。
本発明の化学強化ガラスの製造方法においては典型的には、ガラスを溶融塩に浸漬するイオン交換処理を行って化学強化ガラスとした後その化学強化ガラスを溶融塩から取り出し、次に、別のガラスを溶融塩に浸漬して化学強化ガラスとした後その化学強化ガラスを溶融塩から取り出す、というようにイオン交換処理を繰り返す。
これら厚みが0.4〜1.2mmであり本発明のガラスからなるガラス板を化学強化したものの圧縮応力層の厚みtは30μm以上、表面圧縮応力Sは550MPa以上であることが好ましく、典型的にはtは40〜60μm、Sは650〜820MPaである。
本発明のディスプレイ装置用ガラス板は通常、本発明のガラスからなるガラス板について切断、穴あけ、研磨などの加工をして得られたガラス板を化学強化して得られる。
本発明のディスプレイ装置用ガラス板の厚みは典型的には0.3〜2mmであり、通常は0.4〜1.2mmである。
本発明のディスプレイ装置用ガラス板は典型的にはカバーガラスである。
前記本発明のガラスからなるガラス板の製造方法は特に限定されないが、たとえば種々の原料を適量調合し、約1400〜1700℃に加熱し溶融した後、脱泡、攪拌などにより均質化し、周知のフロート法、ダウンドロー法、プレス法などによって板状に成形し、徐冷後所望のサイズに切断して製造される。
本発明のガラスのガラス転移点Tgは400℃以上であることが好ましい。400℃未満ではイオン交換時に表面圧縮応力が緩和してしまい、十分な応力を得られないおそれがある。典型的には570℃以上である。
本発明のガラスのヤング率Eは66MPa以上であることが好ましい。66MPa未満では破壊靭性値が低くなり、ガラスが割れやすくなる。本発明のディスプレイ装置用ガラス板の製造に用いる場合などには本発明のガラスのEは67MPa以上であることが好ましく、より好ましくは68MPa以上、さらに好ましくは69MPa以上、特に好ましくは70MPa以上である。
次に、本発明のガラスの組成について、特に断らない限りモル%表示含有量を用いて説明する。
SiOはガラスの骨格を構成する成分であり必須である。61%未満では、KNO溶融塩中のNaNO濃度による表面圧縮応力の変化が大きくなる、ガラス表面に傷がついた時にクラックが発生しやすくなる、耐候性が低下する、比重が大きくなる、または液相温度が上昇しガラスが不安定になる。好ましくは62%以上、典型的には63%以上である。なお、本発明の第4のガラスではSiOは62%以上である。
SiOが77%超では粘度が10dPa・sとなる温度T2または粘度が10dPa・sとなる温度T4が上昇しガラスの溶解または成形が困難となる、または耐候性が低下する。好ましくは76%以下、より好ましくは75%以下、さらに好ましくは74%以下、特に好ましくは73%以下である。
Alはイオン交換性能および耐候性を向上させる成分であり必須である。1%未満ではイオン交換により所望の表面圧縮応力S、圧縮応力層厚みtが得られなくなる、または耐候性が低下する。好ましくは3%以上、より好ましくは4%以上、さらに好ましくは5%以上、特に好ましくは6%以上、典型的には7%以上である。18%超では、KNO溶融塩中のNaNO濃度による表面圧縮応力の変化が大きくなる、T2もしくはT4が上昇しガラスの溶解もしくは成形が困難となる、または液相温度が高くなり失透しやすくなる。好ましくは12%以下、より好ましくは11%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは9%以下、典型的には8%以下である。
KNO溶融塩中のNaNO濃度による表面圧縮応力の変化を特に小さくしたい場合Alは6%未満であることが好ましい。
SiOおよびAlの含有量の合計は典型的には66〜83%である。
MgOは溶融性を向上させる成分であり必須である。3%未満では溶融性またはヤング率が低下する。好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは6%以上である。溶融性を特に高めたい場合MgOは7%超であることが好ましい。
MgOが15%超ではKNO溶融塩中のNaNO濃度による表面圧縮応力の変化が大きくなる、液相温度が上昇し失透しやすくなる、またはイオン交換速度が低下する。好ましくは12%以下、より好ましくは11%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは8%以下、典型的には7%以下である。
CaOは高温での溶融性を向上させる、または失透を起こりにくくするために5%まで含有してもよいが、KNO溶融塩中のNaNO濃度による表面圧縮応力の変化が大きくなる、またはイオン交換速度もしくはクラック発生に対する耐性が低下するおそれがある。CaOを含有する場合その含有量は、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1%以下、最も好ましくは0.5%以下、典型的にはCaOを含有しない。
CaOを含有する場合、MgOおよびCaOの含有量の合計は15%以下であることが好ましい。15%超ではKNO溶融塩中のNaNO濃度による表面圧縮応力の変化が大きくなる、またはイオン交換速度もしくはクラック発生に対する耐性が低下するおそれがある。好ましくは14%以下、より好ましくは13%以下、さらに好ましくは12%以下、特に好ましくは11%以下である。
NaOはKNO溶融塩中のNaNO濃度による表面圧縮応力の変化を小さくする、イオン交換により表面圧縮応力層を形成させる、またはガラスの溶融性を向上させる成分であり、必須である。8%未満ではイオン交換により所望の表面圧縮応力層を形成することが困難となる、または、T2もしくはT4が上昇しガラスの溶解もしくは成形が困難となる。好ましくは9%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは11%以上、特に好ましくは12%以上である。NaOが18%超では耐候性が低下する、または圧痕からクラックが発生しやすくなる。好ましくは17%以下、より好ましくは16%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは14%以下である。
Oは必須ではないがイオン交換速度を増大させる成分であり、6%まで含有してもよい。6%超ではKNO溶融塩中のNaNO濃度による表面圧縮応力の変化が大きくなる、圧痕からクラックが発生しやすくなる、または耐候性が低下する。好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.9%以下、特に好ましくは1%以下、典型的にはKOを含有しない。なお、本発明の第4のガラスはKOを含有しない。
Oを含有する場合NaOおよびKOの含有量の合計ROは8.5〜20%であることが好ましい。20%超では耐候性が低下する、または圧痕からクラックが発生しやすくなる。好ましくは19%以下、より好ましくは18%以下、さらに好ましくは17%以下、特に好ましくは16以下である。また、ROが8.5%未満ではガラスの溶融性が低下する。好ましくは9%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは11%以下、特に好ましくは12%以上である。
ZrOは必須成分ではないが、表面圧縮応力を大きくする、または耐候性を向上させる等のため、4%まで含有してもよい。4%超ではKNO溶融塩中のNaNO濃度による表面圧縮応力の変化が大きくなる、またはクラック発生に対する耐性が低下する。好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下、典型的にはZrOを含有しない。
本発明のガラスは本質的に以上で説明した成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下、典型的には1.5%未満である。以下、このような成分について例示的に説明する。
SrOは高温での溶融性を向上させる、または失透を起こりにくくするために含有してもよいが、KNO溶融塩中のNaNO濃度による表面圧縮応力の変化が大きくなる、または、イオン交換速度もしくはクラック発生に対する耐性が低下するおそれがある。SrOの含有量は、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、典型的にはSrOを含有しない。
BaOは高温での溶融性を向上させる、または失透を起こりにくくするために含有してもよいが、KNO溶融塩中のNaNO濃度による表面圧縮応力の変化が大きくなる、またはイオン交換速度もしくはクラック発生に対する耐性が低下するおそれがある。BaOの含有量は、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、典型的にはBaOを含有しない。
MgO、CaO、SrOおよびBaOの含有量の合計ROは15%以下であることが好ましい。15%超ではKNO溶融塩中のNaNO濃度による表面圧縮応力の変化が大きくなる、またはイオン交換速度もしくはクラック発生に対する耐性が低下するおそれがある。好ましくは14%以下、より好ましくは13%以下、さらに好ましくは12%以下、特に好ましくは11%以下である。
ZnOはガラスの高温での溶融性を向上するために含有してもよい場合があるが、その場合における含有量は好ましくは1%以下である。フロート法で製造する場合には0.5%以下にすることが好ましい。0.5%超ではフロート成型時に還元し製品欠点となるおそれがある。典型的にはZnOは含有しない。
は溶融性向上のために5%以下であることが好ましい。5%超では均質なガラスを得にくくなり、ガラスの成型が困難になるおそれがある。好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.7%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下、典型的にはBは含有しない。
SrO、BaOまたはBを含有する場合前記R’が0.66以上であることが好ましい。
なお、本発明の第2のガラスはB、SrOおよびBaOのいずれか1成分以上を含有する。
TiOはガラス中に存在するFeイオンと共存することにより、可視光透過率を低下させ、ガラスを褐色に着色するおそれがあるので、含有するとしても1%以下であることが好ましく、典型的には含有しない。
LiOは歪点を低くして応力緩和を起こりやすくし、その結果安定した表面圧縮応力層を得られなくする成分であるので4.3%以下であることが好ましい。より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下、典型的にはLiOを含有しない。
SnOは耐候性の向上等のために含有してもよいが、その場合でも含有量は3%以下であることが好ましい。より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下、典型的にはSnOを含有しない。
なお、本発明の第3のガラスはB、SrO、BaO、ZnO、LiOおよびSnOのいずれか1成分以上を含有する。
ガラスの溶融の際の清澄剤として、SO、塩化物、フッ化物などを適宜含有してもよい。ただし、タッチパネルなどディスプレイ装置の視認性を上げるためには、可視域に吸収をもつFe、NiO、Crなど原料中の不純物として混入するような成分はできるだけ減らすことが好ましく、各々質量百分率表示で0.15%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下、特に好ましくは0.05%以下である。
本発明の第1のガラスにおいて前記Rは0.66以上とされるが、B、SrO、BaO、ZnO、LiOおよびSnOのいずれか1以上の成分を含有するときはこれら成分の含有量の合計は5モル%以下であることが好ましい。より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下であり、典型的には1.5%未満である。
本発明の第2のガラスにおいて前記R’は0.66以上とされるが、ZnO、LiOおよびSnOのいずれか1以上の成分を含有するときはこれら成分の含有量の合計は5モル%以下であることが好ましい。より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下であり、典型的には1.5%未満である。
本発明の第3のガラスにおいて前記R”は0.66以上とされるが、SiO、Al、MgO、CaO、ZrO、NaO、KO、B、SrO、BaO、ZnO、LiOおよびSnOの含有量の合計は95モル%超であることが好ましい。より好ましくは96%超、さらに好ましくは97%超、特に好ましくは98%超であり、典型的には98.5%以上である。
本発明においてガラスのイオン交換処理を繰り返す方法は特に限定されないが、たとえば次のようにして行う。すなわち、150〜600cmの大きさのNa含有ガラス板100枚を各ガラス板同士が接触しないように、スリットの付いた籠の各スリット間の隙間に1枚ずつガラス板を置く。400℃の溶融カリウム塩で満たした100000cmの大きさの槽に前記籠を8時間浸漬してイオン交換処理を行った後、その籠を取り出す。この後、別のガラス板を入れた籠を前記槽に浸漬してイオン交換処理を繰り返す。
表1のガラス1、2および表3のガラスA21は本発明のガラスの例であり、次のようにして作製した。すなわち、各成分の原料を表のSiOからKOまでの欄にモル%表示で示した組成となるように調合し、白金るつぼを用いて1550〜1650℃の温度で3〜5時間溶解した。溶解にあたっては、白金スターラを溶融ガラス中に挿入し、2時間撹拌してガラスを均質化した。次いで溶融ガラスを流し出して板状に成形し、毎分1℃の冷却速度で室温まで徐冷した。
また、表4〜8のSiOからKOまでの欄にモル%表示で示した組成を有する例3〜29、36〜46のガラスおよび表9〜12のSiOからSnOまでの欄にモル%表示で示した組成を有する例49〜82、84、85のガラスを、前記ガラス1、2、A21を作製したのと同様にして作製した。
これらガラスのTg(単位:℃)、ヤング率E(単位:MPa)、R、R’、R”、CS1(単位:MPa)、CS2(単位:MPa)、rを表に示す。なお、例13〜17、36〜38、41〜46、61、63、75、77〜82、84のTgおよび例13〜18、20、23〜25、28、36〜40、43〜46、79〜82のEは組成から計算または推定して求め、また例50、56、65、67、70〜72、75、76についてはCS1、CS2、rは正確には測定できず組成から計算または推定して求めた。例41、42のガラスは本発明のガラスではなくMgOが3%未満であり、ヤング率も低く、破壊強度が小さいおそれがある。
表6、7の例30〜35、表8の例47、48、表12の例83のガラスについては先に述べたような溶解は行わず、これらの表に示すTg、E、CS1、CS2、rは組成から計算または推定して求めた。
例53、62、73は本発明の実施例である。なお、例41、42、56〜78は第1の発明の参考例、例16、35、42、79、80は第4の発明の参考例である。
例31、37〜40、43〜46、48、82、83は本発明の比較例、例3〜30、32〜36、41、42、47、49〜52、54〜58、60、63〜72、74〜78、80、81、84、85は参考例である。
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ディスプレイ装置のカバーガラスなどに利用できる。また、太陽電池基板や航空機用窓ガラスなどにも利用することができる。

Claims (11)

  1. 下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを61〜73%、Alを10.2〜18%、MgOを0〜15%、CaOを0〜0.5%、ZrOを0〜4%、NaOを11〜16%、KOを0〜1%ならびにBを3.4〜4.2%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が85%以下であり、MgOおよびCaOの含有量の合計が0〜15%であり、かつ、各成分の含有量を用いて下記式により算出されるR’が0.66以上である化学強化用ガラス。
    R’=0.029×SiO+0.021×Al+0.016×MgO−0.004×CaO+0.016×ZrO+0.029×NaO+0×KO+0.028×B+0.012×SrO+0.026×BaO−2.002
  2. NaOが13.6%以上である請求項1に記載の化学強化用ガラス。
  3. Feを質量百分率表示で0.15%以下含有する請求項1または2に記載の化学強化用ガラス。
  4. MgOが9.1%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
  5. SrOが0.5%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
  6. ZnOが0.5%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
  7. NaOが14.6%以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
  8. SiO、Al、MgO、CaO、ZrO、NaO、KO、B、SrOおよびBaOの含有量の合計が98.5%以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
  9. 厚さが0.4〜1.2mmである請求項1〜8のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
  10. SO、塩化物、フッ化物を質量百分率表示で0.15%以下含有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
  11. ディスプレイ装置のカバーガラスに用いられる請求項1〜10のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
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