以下、本発明の積層フィルムについて詳細に説明する。
本発明の積層フィルムには、基材となるポリエステルフィルムを有し、そのポリエステルフィルムの少なくとも片面に、樹脂層が設けられている。
本発明において基材となるポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称である。好ましいポリエステルとしては、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、および1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成樹脂を主要構成樹脂とするものが挙げられる。これら構成樹脂は、1種のみ用いても2種以上併用してもよい。上述したポリエステルの極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gの範囲にあるのもが本発明を実施する上で好適である。
なお、ポリエステル中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤および架橋剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
また、上記のポリエステルフィルムとして、二軸配向ポリエステルフィルムを用いることが好ましい。ここで、「二軸配向」とは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。二軸配向ポリエステルフィルムは、一般に、未延伸状態のポリエステルシートをシート長手方向および幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸し、その後、熱処理を施すことにより得ることができる。
また、基材となるポリエステルフィルムは、2層以上の積層構造体であっても良い。積層構造体としては、例えば、内層部と表層部とを有する複合体フィルムであって、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部のみに粒子を含有させた層を設けた複合体フィルムを挙げることができる。また、内層部と表層部を構成するポリエステルが同種であっても異種であってもよい。
ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではなく、用途や種類に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、通常は好ましくは10〜500μm、より好ましくは38〜250μm、最も好ましくは75〜150μmである。また、ポリエステルフィルムは、共押出しによる複合フィルムであってもよいし、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせたフィルムであっても良い。
本発明の積層フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片側に樹脂層が設けられた積層フィルムであって、該樹脂層は、数平均粒子径が3nm以上50nm以下の金属酸化物粒子(A)と、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂(B)を少なくとも含有する積層フィルムである。
また、前記金属酸化物粒子(A)が、酸化チタン粒子(A1’)および/または酸化ジルコニウム粒子(A2’)であり、その表面にアクリル樹脂(C)を有し、さらに該アクリル樹脂(C)が、式(1)に表されるモノマー単位(b1)と、式(2)で表されるモノマー単位(b2)と、式(3)で表されるモノマー単位(b3)を有することがより好ましい。
また、本発明の積層フィルムは、前記金属酸化物粒子(A)の樹脂層中の含有量が30質量%以上70質量%以下である積層フィルムであることが好ましい。また前記ポリエステル樹脂中の酸成分のうち、ナフタレンジカルボン酸の割合が20モル%以上90モル%以下であることが好ましい。
さらに、前記ポリエステル樹脂(B)の樹脂層中の含有量が5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。また、前記樹脂層の厚みが5〜50nmであることが好ましい。
本発明の積層フィルムを得るためには、該樹脂層中に、少なくとも3nm以上50nm以下の金属酸化物粒子(A)と、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂(B)を少なくとも含有することが必要である。
3nm以上50nm以下の金属酸化物粒子(A)と、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂(B)を含むことで、該樹脂層中に金属酸化物粒子(A)を均一に存在させることが可能となる。その結果、高屈折率ハードコート層を積層した際の干渉斑を抑制させること、高屈折率ハードコート層との密着性を向上させること、高温高湿下における接着性(湿熱接着性)、さらには沸騰水へ浸漬させた際の接着性(煮沸接着性)を向上させることが可能となる。この理由は次のように考えている。3nm以上50nm以下の金属酸化物粒子(A)と、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂(B)を含むことで、該樹脂層中に金属酸化物粒子(A)が均一に存在でき、これにより、均一な厚みの樹脂層を形成し、樹脂層の反射率を一様に高めることが可能となる。その結果、基材であるポリエステルフィルム、樹脂層、高屈折率ハードコートの屈折率差がほぼ同一となり、干渉斑が抑制されるものと考えられる。
また、金属酸化物粒子(A)が、該樹脂層中に均一に存在すると、樹脂層表面にハードコート層との接着に有効なナフタレンジカルボン酸を酸成分として含むポリエステル樹脂(B)が表層に均一に存在できるため、高屈折率ハードコートとの接着性も向上させることが可能となる。さらに、3nm以上50nm以下の金属酸化物粒子(A)を含むことで、オリゴマーが析出する際の樹脂層中の拡散距離が長くなるためオリゴマーの析出が抑制される。またガラス転移温度の高いナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂(B)を含むことで樹脂層全体の熱運動性が抑制され、樹脂層からのオリゴマーの析出を抑制することが可能となる。
なお、本明細書内において、ナフタレンジカルボン酸を酸成分として含むとは、ポリエステル樹脂を加水分解して得られる最小単位としてナフタレンジカルボン酸を含むことをあらわす。
[ポリエステル樹脂(B)]
本発明の樹脂層に含有されるポリエステル樹脂(B)は、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含有することが重要である。
ナフタレンジカルボン酸としては、1、4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられるが、その中でも特に2,6−ナフタレンジカルボン酸が特に好ましい。
ポリエステル樹脂(B)中の上記ナフタレンカルボン酸の割合は酸成分として20モル%以上90モル%以下が好ましく、より好ましくは30モル%以上、80モル%以下、さらに好ましくは30モル%以上70モル%以下である。
ポリエステル樹脂中のナフタレンジカルボン酸の割合が、20モル%未満の場合は、室温、高温高湿下におけるハードコート層との接着性(湿熱接着性)、さらには沸騰水へ浸漬させた際のハードコート層との接着性(煮沸接着性)、オリゴマー抑制性が低下する場合がある。また、90モル%を超える場合は、特に煮沸接着性が低下する場合がある。また、本発明の効果を損ねない範囲であれば、ポリエステル樹脂(B)の酸成分には、ナフタレンジカルボン酸以外に、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸が使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p、p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。脂肪族及び脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など、及びそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
ポリエステル樹脂(B)のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロプレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1、3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4、4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−、m−、及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができる。
また、ポリエステル樹脂(B)を水系樹脂とした塗液として用いる場合、ポリエステル樹脂(B)の接着性を向上させるため、あるいはポリエステル樹脂(B)の水溶性化を容易にするため、カルボン酸塩基を含む化合物や、スルホン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましい。特に、湿熱接着性の要求される用途においては、塗布層を構成するポリエステル樹脂(B)としては、スルホン酸塩基に代表される強塩基性を示す化合物を共重合せずに、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合することが望ましい。
カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン、−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3−4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6、7−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2、2’、3、3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸など、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これらの限定されるものではない。
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えばスルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これらの限定されるものではない。
本発明において、樹脂層に用いられるポリエステル樹脂(B)の固有粘度は特に限定されないが、接着性の点で0.3dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.35dl/g以上、最も好ましくは0.4dl/g以上であることである。また、該水系ポリエステル樹脂の酸価は好ましくは20mgKOH/g以上、より好ましくは30mgKOH/g以上が接着性、特に耐湿接着性の点で好ましく用いられる。
本発明の積層フィルムは、ポリエステル樹脂(B)の樹脂層中の含有量が、5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。より好ましくは7質量%以上25質量%以下であり、更に好ましくは9質量%以上20質量%以下である。ポリエステル樹脂(B)の樹脂層中の含有量が、5質量%以上30質量%以下であると、積層体との接着性、特に耐湿熱接着性が良化するため好ましい。
[金属酸化物粒子(A)]
本発明の積層フィルムにおいては、樹脂層中に数平均粒子径3nm以上50nm以下の金属酸化物粒子(A)を含有することで、樹脂層の屈折率を高くすることができる。その結果、高屈折率ハードコート層積層時の干渉斑の抑制、さらには該金属酸化物粒子(A)の数平均粒子径が可視光の波長より十分小さいため、積層フィルムの透明性を高めること、また金属酸化物粒子(A)を含有することで樹脂層中のオリゴマーの拡散距離が長くなるためオリゴマー析出抑制性を高めることが可能となる。
本発明における金属酸化物粒子(A)とは、展性、延性に富み、電気および熱の良導体で、金属光沢をもつ元素、すなわち周期表において、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ヒ素(As)、テルル(Te)及びアスタチン(At)を結ぶ斜めの線より左に位置する元素の酸化物微粒子を指す。さらに、前記周期表にてアルカリ土類金属類(2族)よりも右に位置する元素の酸化物微粒子であることが好ましい。
このような金属酸化物微粒子としては、干渉斑の抑制の観点から、高屈折率の金属酸化物粒子、このましくは屈折率1.6以上の金属酸化物粒子であるものが好適である。この高屈折率金属酸化物粒子としては、TiO2、ZrO2、ZnO、CeO2、SnO2、Sb2O5、インジウムドープ酸化錫(ITO)、リンドープ酸化錫(PTO)、Y2O5、La2O3、Al2O3、などが挙げられる。
これらの金属酸化物粒子は1種を単独で用いても良く、2種以上を組合せて用いてもよい。分散安定性や屈折率の観点から、酸化チタン粒子(TiO2)(A1’)および/または酸化ジルコニウム粒子(ZrO2)(A2’)が特に好ましい。
ここで、該金属酸化物粒子(A)の数平均粒子径について説明する。ここで数平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)により求めた粒子径をいう。倍率は50万倍とし、その画面に存在する10個の粒子の外径を、10視野について合計100個の粒子を測定した数平均粒子径である。ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表し、内部に空洞を有する粒子の場合も同様に、粒子の最大の径を表す。
該金属酸化物粒子(A)の数平均粒子径が3nmよりも小さくなると、金属酸化物粒子同士のファンデルワールス力が非常に大きくなるため凝集しやすくなり、光が散乱する結果、透明性が低下することになるため好ましくないことがある。一方、該金属酸化物粒子(A)の数平均粒子径が50nmよりも大きくなると、透明性の観点からは、光が散乱する起点となりヘイズが上昇したり、反射率が低下したりするため好ましくない。該金属酸化物粒子(A)は、数平均粒子径が3nm以上50nm以下である。好ましくは10nm以上45nm以下、より好ましくは15nm以上40nm以下である。
また、金属酸化物粒子(A)は、その表面の一部または全部にアクリル樹脂(C)を有する粒子(AC)であることが、より好ましい(なお、粒子(AC)を含有する樹脂層は、金属酸化物粒子(A)とアクリル樹脂(C)を当然に含有することになる)。樹脂層が、かかる粒子(AC)を含有することにより、後述する樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する際に、乾燥過程における金属酸化物粒子(A)や粒子(AC)の凝集を抑制し、更に透明性を向上することが可能となるためである。
ここで、本発明において、金属酸化物粒子(A)が、その表面に前記アクリル樹脂(C)を有する、とは、金属酸化物粒子(A)の表面の一部または全部にアクリル樹脂(C)が、吸着・付着していることをさす。
粒子(AC)の製造方法は特に限定されるものではないが、金属酸化物粒子(A)をアクリル樹脂(C)で表面処理する方法などを挙げることができ、具体的には、以下の(i)〜(iv)の方法が例示される。なお、本発明において、表面処理とは、金属酸化物粒子(A)の表面の全部または一部にアクリル樹脂(C)を吸着・付着させる処理をいう。
(i)金属酸化物粒子(A)とアクリル樹脂(C)をあらかじめ混合した混合物を溶媒中に添加した後、分散する方法。
(ii)溶媒中に、金属酸化物粒子(A)とアクリル樹脂(C)を順に添加して分散する方法。
(iii)溶媒中に、金属酸化物粒子(A)とアクリル樹脂(C)をあらかじめ分散し、得られた分散体を混合する方法。
(iv)溶媒中に、金属酸化物粒子(A)を分散した後、得られた分散体に、アクリル樹脂(C)を添加する方法。
これらのいずれの方法によっても目的とする効果を得ることができる。
また、分散を行う装置としては、ディゾルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ミーダー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、SCミル、アニュラー型ミル、ピン型ミル等が使用できる。
また、分散方法としては、上記装置を用いて、回転軸を周速5〜15m/sで回転させる。回転時間は5〜10時間である。
また、分散時に、ガラスビーズ等の分散ビーズを用いることが分散性を高める点でより好ましい。ビーズ径は、好ましくは0.05〜0.5mm、より好ましくは0.08〜0.5mm、特に好ましくは0.08〜0.2mmである。
混合、攪拌する方法は、容器を手で振って行ったり、マグネチックスターラーや攪拌羽根を用いたり、超音波照射、振動分散などを行うことができる。
なお、金属酸化物粒子(A)の表面の全部または一部への、アクリル樹脂(C)の吸着・付着の有無は、次の分析方法により確認可能である。測定対象物(例えば、金属酸化物粒子(A)を含む樹脂組成物)を、日立卓上超遠心機(日立工機株式会社製:CS150NX)により遠心分離を行い(回転数3,0000rpm、分離時間30分)、金属酸化物粒子(A)(及び金属酸化物粒子(A)の表面に吸着したアクリル樹脂(C))を沈降させた後、上澄み液を除去し、沈降物を濃縮乾固する。濃縮乾固した沈降物をX線光電子分光法(XPS)により分析し、金属酸化物粒子(A)の表面におけるアクリル樹脂(C)の有無を確認する。金属酸化物粒子(A)の表面に、金属酸化物粒子(A)の合計100質量%に対して、アクリル樹脂(C)が1質量%以上存在することが確認された場合、金属酸化物粒子(A)の表面に、アクリル樹脂(C)が吸着・付着しているものとする。
また、積層フィルムの樹脂層における、粒子(AC)の含有の有無は、積層フィルムの樹脂層側からアルゴンイオンにより1nm/minのエッチング速度(SiO2換算)でエッチングしながらXPSを用いることにより、確認することができる。すなわち、金属酸化物粒子(A)の表面にアクリル樹脂(C)の存在が確認された場合、当該金属酸化物粒子(A)は粒子(AC)であることがわかる。
樹脂層における金属酸化物粒子(A)の含有量が、樹脂層全体に対して、30質量%以上70質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、35質量%以上65質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上60質量%以下である。金属酸化物粒子(A)の含有量を、樹脂層全体に対して、30質量%以上70質量%以下とすることで、該樹脂層の造膜性を損なうことなく、樹脂層の屈折率を向上することができる。その結果、所望の透明性、ハードコート層積層時の干渉斑抑制、オリゴマー抑制性を十分に発現させることが可能となる。
[アクリル樹脂(C)]
本発明の樹脂層に含有される金属酸化物粒子(A)は、その表面にアクリル樹脂(C)を有することが好ましい。このアクリル樹脂(C)は、式(1)で表されるモノマー単位(b1)と、式(2)で表されるモノマー単位(b2)と、式(3)で表されるモノマー単位(b3)を有する樹脂であることが好ましい。
(式(1)において、R1基は、水素原子またはメチル基を表す。またnは、9以上34以下の整数を表す。)。
(式(2)において、R2基は、水素原子またはメチル基を表す。また、R4基は、飽和の炭素環を2つ以上含む基を表す。)。
(式(3)において、R3基は、水素原子またはメチル基を表す。また、R5基は、水酸基、カルボキシル基、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、スルホン酸基、または、リン酸基を表す。)
ここで、本発明におけるアクリル樹脂(C)は、式(1)で表されるモノマー単位(b1)を有する樹脂であることが好ましい。
式(1)において、nが9以上34以下のモノマー単位を有するアクリル樹脂を用いると、水系溶媒(水系溶媒の詳細については、後述する。)中における金属酸化物粒子(A)の分散性が安定となるため好ましい。後述するように、本発明では、表面にアクリル樹脂(C)を有する3nm以上50nm以下の金属酸化物粒子、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂(B)、および水系溶媒を有してなる樹脂組成物を、基材となるポリエステルフィルム上に塗布し、乾燥することによって、樹脂層が形成されることが好ましい。そのため、式(1)におけるnが9以上34以下のモノマー単位を有するアクリル樹脂を用いると、樹脂組成物中において金属酸化物粒子(A)が凝集または沈降したりすることを抑制できるため好ましい。また、乾燥工程において金属酸化物粒子(A)の凝集を抑制することができるため好ましい。その結果、透明性の良好な積層フィルム、さらには高屈折率ハードコート層積層時の干渉斑、オリゴマー抑制性が良好となるため好ましい。式(1)におけるnが9未満または34を超えるモノマー単位を有するアクリル樹脂を用いた場合は、水系溶媒中においてアクリル樹脂、金属酸化物粒子(A)の凝集が起こる場合がある。かかる凝集体は、可視光の波長より大きいため、透明性の良好な積層フィルムを得ることができなくなる場合や高屈折率ハードコート層積層時の干渉斑、煮沸後視認性が不良となる場合やオリゴマー抑制性が不良となる場合がある。また、凝集体は樹脂層の均一な形成を阻害するため、ハードコート層との接着性が低下することがある。
本発明におけるアクリル樹脂(C)が、式(1)で表されるモノマー単位(b1)を有するためには、次の式(4)で表される(メタ)アクリレートモノマー(b1’)を原料として用い、重合することがより好ましい。
該(メタ)アクリレートモノマー(b1’)としては、式(4)におけるnが9以上34以下の整数で表される(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、より好ましくは11以上32以下の(メタ)アクリレートモノマー、更に好ましくは13以上30以下の(メタ)アクリレートモノマーである。
(メタ)アクリレートモノマー(b1’)は、式(4)におけるnが9以上34以下である(メタ)アクリレートモノマーであれば特に制限されないが、具体的にはデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、1−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート、トリアコンチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、特にドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは1種で使用してもよく、2種以上の混合物を使用してもよい。
また、本発明におけるアクリル樹脂(C)は、前記式(2)で表されるモノマー単位(b2)を有する樹脂であることが重要である。
式(2)において、飽和の炭素環を2つ以上含むモノマー単位を有するアクリル樹脂を用いると、立体障害としての機能が有効に作用し、金属酸化物粒子(A)が凝集または沈降を抑制でき、さらに乾燥工程において金属酸化物粒子(A)の凝集を抑制できるため好ましい。
その結果、透明性、オリゴマー抑制性の良好な積層フィルム、高屈折率ハードコート層積層時の干渉斑、煮沸視認性が良好となり、またハードコート層との接着性が良好となるため好ましい。
本発明におけるアクリル樹脂(C)が、式(2)で表されるモノマー単位(b2)を有するためには、次の式(5)で表される(メタ)アクリレートモノマー(b2’)を原料として用い、重合することが好ましい。
式(5)で表される(メタ)アクリレートモノマー(b2’)としては、架橋縮合環式(2つまたはそれ以上の環がそれぞれ2個の原子を共有して、結合した構造を有する)、スピロ環式(1個の炭素原子を共有して、2つの環状構造が結合した構造を有する)などの各種環状構造、具体的には、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ基などを有する化合物が例示でき、その中でも特にバインダーとの相溶性の観点から、ビシクロ基を含有する(メタ)アクリレートが好ましい。
上記ビシクロ基を含有する(メタ)アクリレートとしては、イソボニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、ジシロクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、特にイソボニル(メタ)アクリレートが好ましい。
さらに、本発明におけるアクリル樹脂(C)は、前記式(3)で表されるモノマー単位(b3)を有する樹脂であることが好ましい。
式(3)におけるR5基が、水酸基、カルボキシル基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、スルホン酸基、リン酸基、のモノマー単位を有するアクリル樹脂を用いると、アクリル樹脂の水系溶媒中への相溶性が良化し、樹脂組成物中において、アクリル樹脂(C)や、金属酸化物粒子(A)の水系溶媒中における均一分散が可能となり、さらに乾燥工程において金属酸化物粒子(A)の凝集を抑制できるため好ましい。
本発明におけるアクリル樹脂(C)が、次の式(6)で表されるモノマー単位(b3)を有するためには、式(6)で表される(メタ)アクリレートモノマー(b3’)を原料として用い、重合することが必要である。
式(6)で表される(メタ)アクリレートモノマー(b3’)として次の化合物が例示される。
水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2、3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物、あるいは、該モノエステル化物にε−カプロラプトンを開環重合した化合物などが挙げられ、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸などのα、β−不飽和カルボン酸、あるいは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと酸無水物とのハーフエステル化物などが挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
3級アミノ基含有モノマーとしては、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、などのN、N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのN、N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、特にN、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
4級アンモニウム塩基含有モノマーとしては、上記3級アミノ基含有モノマーにエピハロヒドリン、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アルキルなどの4級化剤を作用させたものが好ましく、具体的には、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、2−(メタクリロイオキシ)エチルトリメチルアンモニウムジメチルホスフェートなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムブロマイドなどの(メタ)アクリロイルアミノアルキルトリアルキルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム(メタ)アクリレートなどのテトラアルキル(メタ)アクリレート、トリメチルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレートなどのトリアルキルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレートなどが挙げられ、特に2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドが好ましい。
スルホン酸基含有モノマーとしては、ブチルアクリルアミドスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの(メタ)アクリルアミド−アルカンスルホン酸、あるいは、2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、特に2−スルホエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
リン酸基含有アクリルモノマーとしては、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、特にアシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
本発明の積層フィルムを製造する際には、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに、水系溶媒を含む樹脂組成物を塗布し、延伸、熱処理により結晶配向を完了させる方法が、好適に用いられる。高温での熱処理が可能であり、基材と樹脂層との接着力が向上することや、より均一で薄膜の樹脂層を設けることができるためである。この方法によって樹脂層を形成する場合には、アクリル樹脂(C)は水系溶媒に溶解、乳化、あるいは懸濁し得る水系のものが環境汚染や防爆性の点で好ましい。このような、水に溶解、乳化または懸濁が可能なアクリル樹脂は、親水性基を有するモノマー(アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、ビニルスルホン酸およびその塩等)との共重合や反応性乳化剤や界面活性剤を用いた乳化重合、懸濁重合、ソープフリー重合等の方法によって作製することができる。
重合開始剤としては特に限定されるものではないが一般的なラジカル重合開始剤、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の水溶性過酸化物、または過酸化ベンゾイルやt−ブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性過酸化物、あるいはアゾジイソブチロニトリル等のアゾ化合物が使用できる。
本発明における積層フィルムの樹脂層は、ポリエステルフィルムの少なくとも片側に樹脂層が設けられた積層フィルムであって、数平均粒子径が3nm以上50nm以下の金属酸化物粒子(A)と、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂(B)を少なくとも含有することが好ましい。
また、式(1)で表されるモノマー単位(b1)と式(2)で表されるモノマー単位(b2)と式(3)で表されるモノマー単位(b3)を有するアクリル樹脂(C)の含有量は、樹脂層全体に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、2質量%以上9質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上8質量%以下である。上記範囲とすることで、金属酸化物粒子(A)同士の凝集をさらに抑制することが可能となり、その結果、樹脂層の屈折率、透明性の向上、オリゴマー抑制性、更には、ハードコート層積層時の干渉斑抑制、煮沸視認性を十分に発現させることが可能となるため好ましい。
[オキサゾリン系化合物に由来する成分(D)]
本発明の積層フィルムの樹脂層は、さらにオキサゾリン系化合物に由来する成分(D)を含むことがより好ましい。本発明におけるオキサゾリン系化合物に由来する成分(D)とは、次に述べるオキサゾリン系化合物(D’)のみならず、オキサゾリン系化合物(D’)がアクリル樹脂(C)や、メラミン系化合物(E’)などと架橋構造を形成する場合は、オキサゾリン系化合物(D’)に由来する成分(例えば残基など)を含む。
オキサゾリン系化合物(D’)としては、オキサゾリン基またはオキサジン基を1分子当たり少なくとも1つ以上有するものであれば特に限定されないが、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーを単独で重合、もしくは他のモノマーとともに重合した高分子型が好ましい。
付加重合性オキサゾリン基含有モノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンを挙げることができる。これらは、1種で使用してもよく、2種以上の混合物を使用してもよい。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2ーエチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)クリル酸エステル類やアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたもの等のビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα、β−不飽和モノマー類、スチレン、α−メチルスチレン、等のα、β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
このようなオキサゾリン系化合物(D’)を用いると、前述のように、樹脂組成物を乾燥する過程において、金属酸化物粒子の凝集をさらに抑制でき、樹脂層の透明性、反射率、オリゴマー抑制性を高めることができ、その結果、ハードコートを積層した際に、透明性、接着性、視認性に優れ、さらには煮沸後の接着性、煮沸視認性に優れた積層フィルムを得ることができるため好ましい。
[メラミン系化合物に由来する成分(E)]
本発明における積層フィルムの樹脂層は、さらにメラミン系化合物に由来する成分(E)を含むことがより好ましい。
本発明におけるメラミン系化合物に由来する成分(E)とは、次に述べるメラミン系化合物(E’)のみならず、メラミン系化合物(E’)がアクリル樹脂(C)や、オキサゾリン系化合物(D’)などと架橋構造を形成する場合は、メラミン系化合物(E’)に由来する成分(例えば残基など)を含む。
メラミン系化合物(E’)としては、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、トリアジンとメチロール基を有する化合物が特に好ましい。またメラミン系化合物としては単量体、2量体以上の多量体からなる縮合物にいずれでもよく、これらの混合物でもよい。エーテル化に用いられる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを用いることができる。基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである。その中でもメチロール化メラミン樹脂が最も好ましい。更に、メラミン系化合物の熱硬化を促進するため、例えばp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いてもよい。
このようなメラミン系化合物(E’)を用いると、前述のように、樹脂組成物を乾燥する過程において、金属酸化物粒子の凝集をさらに抑制でき、樹脂層の透明性、反射率、オリゴマー抑制性を高めることができ、その結果、ハードコートを積層した際に、透明性、接着性、視認性に優れ、さらには煮沸後の接着性、煮沸視認性に優れた積層フィルムを得ることができるため好ましい。
本発明において、オキサゾリン系化合物に由来する成分(D)および/またはメラミン系化合物に由来する成分(E)は、金属酸化物粒子(A)と、アクリル樹脂(C)の効果を損なわなければ任意の量を用いることが可能である。
オキサゾリン系化合物に由来する成分(D)の原料であるオキサゾリン系化合物(D’)、またメラミン系化合物に由来する成分(E)の原料であるメラミン系化合物(E’)の量は、金属酸化物粒子(A)100質量部に対して20〜60質量部が好ましく、より好ましくは30〜50質量部である。20質量部以上とすることで、樹脂層中において、オキサゾリン系化合物に由来する成分(D)および/またはメラミン系化合物に由来する成分(E)の効果を発現することが可能となる。
またオキサゾリン系化合物に由来する成分(D)および/またはメラミン系化合物に由来する成分(E)に加え、他の化合物、例えば、カルボジイミド系化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、アミドエポキシ化合物、チタンキレートなどのチタネート系カップリング剤、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系化合物、アクリルアミド系化合物などを任意で用いることもできる。
[樹脂層の樹脂組成物およびその調製方法]
本発明における樹脂層の樹脂組成物は、少なくとも数平均粒子径が3nm以上50nm以下の金属酸化物粒子(A)と、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂(B)を有してなる組成物である。
必要に応じて、アクリル樹脂(C)、オキサゾリン系化合物(D’)、メラミン系化合物(E’)、またその他の化合物、例えば、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、アミドエポキシ化合物、チタンキレートなどのチタネート系カップリング剤、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系化合物、アクリルアミド系化合物などを含んでいてもよい。
また、各種添加剤、例えば、有機系易滑剤、有機又は無機の微粒子、帯電防止剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
水系溶媒を用いた樹脂組成物は、少なくとも数平均粒子径が3nm以上50nm以下の金属酸化物粒子(A)と、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂(B)、さらには必要に応じてアクリル樹脂(C)を、(A)、(C)、(B)の順に添加し一度分散を行い、金属酸化物粒子(A)の表面に、アクリル樹脂(C)を吸着させた後、ポリエステル樹脂(B)を添加し、水系溶媒を所望の質量比で混合、攪拌することで作製することができる。次いで、必要に応じてオキサゾリン系化合物(D’)やメラミン系化合物 (E’)、各種添加剤(易滑剤、無機粒子、有機粒子、界面活性剤、酸化防止剤など)を、上記樹脂組成物に所望の質量比で混合、攪拌することで作製することができる。
該金属酸化物粒子(A)にアクリル樹脂(C)を加え、分散を行う方法としては、ペイントシェーカー、SCミル、アニュラー型ミル、ピン型ミル等を用いて通常周速5〜15m/sで回転させる。回転時間は5〜10時間である。分散時に、ガラスビーズ等の分散ビーズを用いることが分散性を高める点で好ましい。ビーズ径は、好ましくは0.05〜0.5mm、より好ましくは0.08〜0.5mm、特に好ましくは0.08〜0.2mmである。
混合、撹拌する方法は、容器を手で振って行ったり、マグネチックスターラーや撹拌羽根を用いたり、超音波照射、振動分散などを行うことができる。
水分散化または水溶化したアクリル樹脂(C)は、アクリル樹脂と、親水性基を有するモノマー(アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、ビニルスルホン酸およびその塩等)との共重合、反応性乳化剤や界面活性剤を用いた乳化重合、懸濁重合、ソープフリー重合等の方法によって作製することができる。
重合開始剤としては特に限定されるものではないが一般的なラジカル重合開始剤、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の水溶性過酸化物、または過酸化ベンゾイルやt−ブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性過酸化物、あるいはアゾジイソブチロニトリル等のアゾ化合物が使用できる。
[樹脂層の形成方法および積層フィルムの製造方法]
本発明では、少なくとも数平均粒子径が3nm以上50nm以下の金属酸化物粒子(A)と、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂(B)を含有する樹脂組成物をポリエステルフィルム上へ塗布し、樹脂組成物が溶媒を含む場合には、溶媒を乾燥させることによって、ポリエステルフィルム上に樹脂層を形成することができる。
また本発明において、樹脂組成物に溶媒を含有せしめる場合は、溶媒として水系溶媒を用いることが好ましい。水系溶媒を用いることで、乾燥工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一な組成物層を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れているためである。
ここで、水系溶媒とは、水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など水に可溶である有機溶媒が任意の比率で混合させているものを指す。
樹脂組成物のポリエステルフィルムへの塗布方法はインラインコート法であるのが重要である。インラインコート法とは、ポリエステルフィルムの製造の工程内で塗布を行う方法である。具体的には、ポリエステル樹脂を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱処理して巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法を指し、通常は、溶融押出し後・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)ポリエステルフィルム(Aフィルム)、その後に長手方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)ポリエステルフィルム(Bフィルム)、またはさらに幅方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)ポリエステルフィルム(Cフィルム)の何れかのフィルムに塗布する。
本発明では、結晶配向が完了する前の上記Aフィルム、Bフィルム、の何れかのポリエステルフィルムに、樹脂組成物を塗布し、その後、ポリエステルフィルムを一軸方向又は二軸方向に延伸し、溶媒の沸点より高い温度で熱処理を施しポリエステルフィルムの結晶配向を完了させるとともに樹脂層を設ける方法を採用することが好ましい。この方法によれば、ポリエステルフィルムの製膜と、樹脂組成物の塗布乾燥(すなわち、樹脂層の形成)を同時に行うことができるために製造コスト上のメリットがある。また、塗布後に延伸を行うために樹脂層の厚みをより薄くすることが容易である。
中でも、長手方向に一軸延伸されたフィルム(Bフィルム)に、樹脂組成物を塗布し、その後、幅方向に延伸し、熱処理する方法が優れている。未延伸フィルムに塗布した後、二軸延伸する方法に比べ、延伸工程が1回少ないため、延伸による組成物層の欠陥や亀裂が発生しづらく、透明性や平滑性に優れた組成物層を形成できるためである。
本発明において該樹脂層は、上述した種々の利点から、インラインコート法により設けられることが重要である。ここで、ポリエステルフィルムへの樹脂組成物の塗布方式は、公知の塗布方式、例えばバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法等の任意の方式を用いることができる。
したがって、本発明において最良の樹脂層の形成方法は、水系溶媒を用いた樹脂組成物を、ポリエステルフィルム上にインラインコート法を用いて塗布し、乾燥、熱処理することによって形成する方法である。またより好ましくは、一軸延伸後のBフィルムに樹脂組成物をインラインコートする方法である。本発明の積層フィルムの製造方法において、乾燥は樹脂組成物の溶媒の除去を完了させるために、80〜130℃の温度範囲で実施することができる。また、熱処理はポリエステルフィルムの結晶配向を完了させるとともに樹脂組成物の熱硬化を完了させ樹脂層の形成を完了させるために、160〜240℃の温度範囲で実施することができる。
さらに樹脂組成物の固形分濃度は10質量%以下であることが好ましい。固形分濃度が10質量%以下とすることにより、樹脂組成物に良好な塗布性を付与でき、透明かつ均一な組成物層を設けた積層フィルムを製造することができる。
なお、固形分濃度とは、樹脂組成物の質量に対して、樹脂組成物の質量から溶媒の質量を除いた質量が占める割合を表す(すなわち、[固形分濃度]=[(樹脂組成物の質量)−(溶媒の質量)]/[樹脂組成物の質量]である)。
次に、本発明の積層フィルムの製造方法について、ポリエステルフィルムとしてポリエチレンテレフタレート(以下、PET)フィルムを用いた場合を例にして説明するが、これに限定されるものではない。まず、PETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化せしめて未延伸(未配向)PETフィルム(Aフィルム)を作製する。このフィルムを80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して一軸配向PETフィルム(Bフィルム)を得る。このBフィルムの片面に所定の濃度に調製した本発明の樹脂組成物を塗布する。
この時、塗布前にPETフィルムの塗布面にコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、樹脂組成物のPETフィルムへの濡れ性が向上し、樹脂組成物のはじきを防止し、均一な塗布厚みの樹脂層を形成することができる。塗布後、PETフィルムの端部をクリップで把持して80〜130℃の熱処理ゾーン(予熱ゾーン)へ導き、樹脂組成物の溶媒を乾燥させる。乾燥後幅方向に1.1〜5.0倍延伸する。引き続き160〜240℃の熱処理ゾーン(熱固定ゾーン)へ導き1〜30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。
この熱処理工程(熱固定工程)で、必要に応じて幅方向、あるいは長手方向に3〜15%の弛緩処理を施してもよい。かくして得られた積層フィルムは透明かつ反射防止性に優れた積層フィルムとなる。
本発明における該樹脂層の厚みとしては、5nm以上50nm以下であることが好ましい。より好ましくは、7nm以上45nm以下であり、さらに好ましくは10nm以上40nm以下である。該樹脂層の厚みを、5nm以上50nm以下とすることにより、ハードコート層を積層した際の干渉斑の抑制を十分に発現させることが可能となる。またこの膜厚を15nm未満とすることにより、金属酸化物粒子の凝集抑制が更に可能となり、更なる反射率の向上も可能となることを見出した。この詳細なメカニズムは不明であるが、塗膜の薄膜化により乾燥過程での粒子の接触確率が低減し、それにより粒子凝集が抑制され、塗膜表面の粗さが低減する。この結果、塗膜表面の拡散光が低減したことで反射率が向上すると推定している。さらに膜厚を5nm以上15nm以下とすることにより、基材であるポリエステルフィルム上に樹脂層を積層した場合に、塗布外観(塗布ムラ抑制性)に加え、搬送工程における耐削れ性(耐汚染性)が良化することを見出した。このメカニズムとしては、上記と同様に塗膜の薄膜化により乾燥過程での粒子の接触確率が低減し、それにより粒子凝集が抑制され、塗膜表面がより平滑になるためと考えている。このため良好な塗布外観を形成でき、さらには削れの起点となる凹凸構造が減少するため耐削れ性も良化すると考えている。また煮沸視認性に優れることを見出した。このメカニズムとしては、上記と同様に塗膜の薄膜化により乾燥過程での粒子の接触確率が低減し、粒子凝集が抑制され、粒子と粒子の間にバインダーが秩序良く存在できるようになる。そのため沸騰水が塗膜中に浸透しにくくなる結果、塗樹脂層の屈折率を変化させることなく初期の状態を維持することができ、煮沸後の干渉斑抑制性も良化すると考えている。
また、本発明の樹脂層は、樹脂層表面の算術平均粗さが、0.5nm以上10nm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5nm以上5nm以下、さらに好ましくは0.5nm以上2.5nm以下である。樹脂層表面の算術平均粗さが上記の範囲であると、樹脂層表面の凹凸構造が減少されるため、樹脂層表面における光散乱の起点が少なくなるため樹脂層の塗布外観が良化する。さらには、搬送工程における樹脂層表面の耐削れが良化する。樹脂層表面の算術平均粗さを上記の範囲とする方法としては、樹脂層の膜厚を15nm以下とすることが好ましく、より好ましくは10nm以下、さらに好ましくは5nm以下である。薄膜化するためには、樹脂組成物の固形分濃度を低減することを意味する。樹脂組成物の固形分濃度を低減することにより、乾燥過程において金属酸化物粒子同士の接触確率が低減し、その結果金属酸化物粒子同士の凝集が抑制される。樹脂層表面において、金属酸化物粒子の凝集が起因となる凹凸構造が抑制され、その結果、上記樹脂層表面を形成することが可能となる。
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)初期ヘイズ評価
初期ヘイズの測定は、常態(23℃、相対湿度50%)において、積層フィルムサンプルを40時間放置した後、日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、初期ヘイズの測定はJIS K 7136「透明材料のヘイズの求め方」(2000年版)に準ずる方式で行った。なお、サンプルの樹脂層が積層された面側から光を照射して測定した。サンプルは一辺50mmの正方形のものを10サンプル準備し、それぞれ1回ずつ、合計10回測定した平均値をサンプルのヘイズ値とした。透明性はヘイズ値を用いて、4段階評価を行なった。Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、AとSのものは良好とした。
S:1.0%未満
A:1.0%以上2.0%未満
B:2.0%以上3.0%未満
C:3.0%以上4.0%未満。
(2)反射率
A4カットサイズに裁断したフィルムシートを縦横それぞれ3分割し、合計9点を測定サンプルとして用いた。長辺側を長手方向とした。分光反射率の測定は、測定面(該樹脂層)の裏面に50mm幅の黒色光沢テープ(ヤマト(株)製、ビニ−ルテープNo.200−50−21:黒)を、気泡を噛みこまないようにサンプルとテープの長手方向を合わせて貼り合わせた後、約4cm角のサンプル片に切り出し、分光光度計((株)島津製作所製、UV2450)に入射角5°での分光反射率を測定した。サンプルを測定器にセットする方向は、測定器の正面に向かって前後の方向にサンプルの長手方向を合わせた。なお反射率を基準化するため、標準反射板として付属のAl2O3板を用いた。反射率は、波長550nmにおける樹脂層側の反射率を求めた。なお、測定値には、10点の平均値を用いた。
(3)ハードコート層との初期接着性
積層フィルムの樹脂層側に、下記の割合で混合したUV硬化型樹脂を、バーコーターを用いて硬化後の膜厚が2μmとなるように均一に塗布した。
・ハードコート剤の調整
・二酸化チタン微粒子(石原産業(株)製、TTO−55B):30質量部
・カルボン酸基含有モノマー(東亜合成(株)製、アロニックスM−5300):4.5質量部
・シクロヘキサノン:65.5質量部
上記混合物を、サンドグラインダーミルにより分散し、平均粒子径が55nmの二酸化チタン微粒子の分散液を調整した。
前記の二酸化チタン微粒子の分散液に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、DPHA)と、光開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア184)をモノマーの合計量(ジペンタエリスリト−ルヘキサアクリレートとアニオン性モノマーの合計量)に対し5質量%添加し、混合し、ハードコート層の屈折率が1.65になるように調整した。
次いで、UV硬化樹脂層を積層した面から9cmの高さにセットした120W/cmの照射強度を有する集光型高圧水銀灯(アイグラフィックス(株)製、H03−L31)で、積算照射強度が300mJ/cm2となるように紫外線を照射し、硬化させ、積層ポリエステルフィルム上にハードコート層が積層されたハードコート積層ポリエステルフィルムを得た。なお、紫外線の積算照射強度測定には工業用UVチェッカー(日本電池(株)製、UVR−N1)を用いた。得られたハードコート積層ポリエステルフィルムについて、得られたハードコート積層ポリエステルフィルムのハードコート積層面に、1mm2のクロスカットを100個入れ、“セロテープ”(登録商標)(ニチバン(株)製、CT405AP)を貼り付け、ハンドローラーで1.5kg/cm2の荷重で押しつけた後、ハードコート積層ポリエステルフィルムに対して90度方向に急速に剥離した。接着性は残存した格子の個数により、4段階評価を行った。測定は10回実施し、その平均値を用いて評価を行なった。Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、AとSのものは良好とした。
S:90個以上100個以下残存
A:80個以上90個未満残存
B:50個以上80個未満残存
C:0個以上50個未満残存。
(4)湿熱接着性
積層ポリエステルフィルムの樹脂層側に、(3)と同様の方法で、ハードコート層を積層し、ハードコート積層ポリエステルフィルムを得た。さらに、得られたハードコート積層ポリエステルフィルムを、温度70℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽中に240時間放置し、湿熱接着試験用サンプルを得た。得られた湿熱接着試験用サンプルについて、(3)と同様の方法で、接着性試験を行い、残存した格子の個数により4段階評価を行った。測定は10回実施し、その平均値を用いて評価を行なった。
Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、AとSのものは良好とした。
S:90個以上100個以下残存
A:80個以上90個未満残存
B:50個以上80個未満残存
C:0個以上50個未満残存。
(5)煮沸接着性
上記UV硬化樹脂を(3)の評価と同様に積層ポリエステルフィルムの樹脂層表面に塗布、硬化させ耐煮沸接着性評価サンプルを得た。次に耐煮沸接着性評価サンプルを10cm×10cmの大きさに切り出し、それぞれクリップに固定し吊り下げた状態にした後、ビーカーに準備した純水からなる沸騰した湯(100℃)の中に積層ポリエステルフィルム全面が浸漬する状態で24時間入れた。その後、耐煮沸接着性評価サンプルを取り出し常態(23℃、相対湿度65%)にて1時間乾燥させ、煮沸接着性試験用ハードコート積層サンプルを得た。得られた煮沸接着性試験用ハードコート積層サンプルについて、(3)と同様の方法で接着性評価を行い、4段階評価を行った。Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、SとAのものは良好とした。
(6)数平均粒子径
金属酸化物粒子(A)の数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により積層フィルムの断面構造を観察することにより求めた。倍率を50万倍とし、その画面内に存在する10個の粒子の外径を、10視野について合計100個の粒子を測定し、その平均粒子径を求めた。画面内に10個の粒子が存在しない場合は、同じ条件で別の箇所を観察し、その画面内に存在する粒子の外径を測定して、合計で100個の粒子の外径を測定して平均値とした。ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表し、内部に空洞を有する粒子の場合も同様に、粒子の最大の径を表す。
(7)樹脂層の膜厚
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、ポリエステルフィルム上の樹脂層の厚みを測定した。樹脂層の厚みは、TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から樹脂層の厚みを読み取った。合計で20点の樹脂層厚みを測定して平均値とした。
(8)視認性(干渉斑)
(3)と同様の方法にて、積層ポリエステルフィルム上に厚み2μmのハードコート層(屈折率1.65)が積層されたハードコート積層ポリエステルフィルムを得た。
次いで、得られた積層ポリエステルフィルムから、8cm(積層ポリエステルフィルム幅方向)×10cm(積層ポリエステルフィルム長手方向)の大きさのサンプルを切り出し、ハードコート層の反対面に黒色光沢テープ(ヤマト(株)製、ビニ−ルテープNo.200−50−21:黒)を、気泡を噛み込まないように貼り合わせた。
このサンプルを暗室にて3波長蛍光灯(パナソニック(株)製、3波長形昼白色(F・L 15EX−N 15W))の直下30cmに置き、視角を変えながら目視により干渉斑の程度を観察し、以下の評価を行った。A以上のものを良好とした。
S:干渉斑がほぼ見えない
A:干渉斑がわずかに見える
B:弱い干渉斑が見える。
C:干渉斑が強い。
(9)樹脂層の組成分析
樹脂層の組成分析は、積層フィルムの表面について、X線光電子分光分析装置(ESCA)、フーリエ赤外分光光度計(FT−IR)ATR法、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)により行った。また、樹脂層を溶剤にて溶解抽出し、クロマトグラフィーで分取した後、プロトン核磁気共鳴分光法(1H−NMR)、カーボン核磁気共鳴分光法(13C−NMR)、フーリエ赤外分光光度計(FT−IR)により構造を解析し、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)を行い樹脂層の組成分析を行った。
上記方法により、樹脂層中における金属酸化物粒子(A)、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂(B)、アクリル樹脂(C)、オキサゾリン系化合物(D’)、オキサゾリン系化合物に由来する成分(D)、メラミン系化合物(E’)、メラミン系化合物に由来する成分(E)の有無を確認した。
樹脂層中に、上記化合物を含有する場合はA、含有しない場合はBとした。
(10)加熱処理評価(加熱処理後Δヘイズ)
積層フィルムサンプルを金属枠に4辺で固定し、150℃(風量ゲージ「7」)に設定したエスペック(株)製熱風オーブン「HIGH−TEMP−OVEN PHH−200」に金属枠に固定したサンプルを熱風オーブン内の床に対して立てて入れ1時間加熱し、その後室温にて1時間放置した。ここでポリエステルフィルムの片側にのみ樹脂層を形成させた積層フィルムサンプルは、樹脂層と反対面にあるポリエステルフィルムの面を、アセトンを含ませた不織布(小津産業(株)性、ハイゼガーゼNT−4)にて拭き取り、さらにアセトンで流し常態で40時間放置乾燥させ、樹脂層とは反対にあるポリエステルフィルム面から析出したオリゴマーを除去した。その後、サンプルを前項(1)に記載の初期ヘイズ評価方法により加熱後のヘイズ値を測定し、熱処理前後の樹脂層片面のヘイズ値の差(Δ)をΔヘイズ値として評価した。またポリエステルフィルム両面に樹脂層を形成させた積層フィルムサンプルは熱風オーブンでの加熱後、サンプルを常態で40時間放置したのち前項(1)に記載の初期ヘイズ評価方法により加熱後のヘイズ値を測定し、熱処理前後のヘイズ値の差を半分(50%)にした値を樹脂層片面のヘイズ値の差(Δ)とし、これをΔヘイズ値として評価した。測定は、合計10回測定した平均値をサンプルのヘイズ値とした。
<Δヘイズ値>
S:2.0%未満
A:2.0%以上2.5%未満
B:2.5%以上〜3.0%未満
C:3.0%以上
なお、加熱処理評価はA以上を良好とした。
(11)算術平均粗さ測定
BRUKER製原子間力顕微鏡「Dimension Icon ScanAsyst」のScanAsyst Airモードにて、積層フィルムの樹脂層側を測定範囲10μm×10μm、測定ライン数512本、測定レート1.0Hzで測定し、得られた表面情報から、JIS−B−0601−1994に定められた方法にて算術平均粗さを算出した。
(12)樹脂層の塗布外観(塗布ムラ抑制性)
暗室にて、積層ポリエステルフィルムを樹脂層側が上側になるように3波長傾向灯(松下電器産業(株)製3波長形昼白色(F・L15EX−N15W))の直下30cmに置き、視角を変えながらも目視により該樹脂層の塗布外観の程度を観察し、以下の評価を行なった。B以上のものは合格レベルと判定した。
S:場所による塗布ムラが観察されない。
A:ほとんど塗布ムラが観察されない。
B:一部塗布ムラが観察される。
C:全面に塗布ムラが観察される。
(13)樹脂層の耐削れ性(耐汚染性)
本光製作所製消しゴム磨耗試験機の先端(先端部面積1cm2)に、ネル布[興和(株)製]を取り付け、500gの荷重をかけて積層フィルムの樹脂層上5cmの距離を、500回往復し、以下の評価を行なった。B以上のものは合格レベルと判定した。
S:樹脂層の剥離が観察されない。
A:樹脂層の剥離面積の合計が試験部分の5%未満。
B:樹脂層の剥離面積の合計が試験部分の5%以上10%未満。
C:樹脂層の剥離面積の合計が試験部分の11%以上50%未満。
D:樹脂層の剥離面積の合計が試験部分の50%以上。
(14)煮沸視認性(干渉斑)
(3)と同様の方法にて、積層ポリエステルフィルム上に厚み2μmのハードコート層(屈折率1.65)が積層されたハードコート積層ポリエステルフィルムを得た。
次いで、得られた積層ポリエステルフィルムから、8cm(積層ポリエステルフィルム幅方向)×10cm(積層ポリエステルフィルム長手方向)の大きさのサンプルを切り出した。
次に本サンプルをクリップに固定し吊り下げた状態にした後、ビーカーに準備した純水からなる沸騰した湯(100℃)の中に積層ポリエステルフィルム全面が浸漬する状態で24時間入れた。その後、サンプルを取り出し常態(23℃、相対湿度65%)にて1時間乾燥させ、ハードコート層の反対面に黒色光沢テープ(ヤマト(株)製、ビニ−ルテープNo.200−50−21:黒)を、気泡を噛み込まないように貼り合わせ、煮沸干渉斑試験用サンプルを得た。得られたサンプルについて、(8)と同様の方法で煮沸干渉斑評価を行い、4段階評価を行った。A以上のものを良好とした。
S:干渉斑がほぼ見えない
A:干渉斑がわずかに見える
B:弱い干渉斑が見える。
C:干渉斑が強い。
なお、以下の実施例や比較例にて得られた積層フィルムの特性等を、表1〜表4に示した。
<実施例1>
はじめに、樹脂組成物1を次の通り調製した。
・金属酸化物粒子(A):
金属酸化物粒子である酸化ジルコニウム分散液SZR−CW(堺化学工業(株)製、酸化ジルコニウム粒子:数平均粒子径20nm)を用いた。
・ポリエステル樹脂(B)
(ポリエステル樹脂(B)の重合)
ジメチルナフタレート381質量部、ジメチルテレフタレート58質量部、ジメチル−5−ナトリウムスルホイソフタレート42質量部、ジエチレングリコール47質量部、エチレングリコール245.8質量部、およびテトラ−n−ブチルチタネート0.5質量部を、攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行なった。ついで255℃まで昇温し、反応系を除々減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、ポリエステル樹脂(B)を得た。得られたポリエステル樹脂は、淡黄色透明であった。
・樹脂組成物1:
水系溶媒(純水)に、上記の金属酸化物粒子(A)とポリエステル樹脂(B)、オキサゾリン系化合物(D’)、メラミン系化合物(E’)の混合体をこの順に添加し、混合し、樹脂組成物を得た。(樹脂組成物における、粒子(AB)とポリエステル樹脂(B)、オキサゾリン系化合物(D’)、メラミン系化合物(E’)の質量比は、(A)/(B)/(D’)/(E’)=50/10/20/20である)。
・オキサゾリン系化合物(D’):
メチルメタクリレート:50質量部
エチルアクリレート:25質量部
スチレン:5質量部
2−イソプロペニル−2−オキサゾリン:20質量部
上記組成で共重合したオキサゾリン基含有樹脂組成物を、プロピレングリコールモノメチルエーテルと水との混合溶媒(20/80(質量比))に希釈した塗料。
・メラミン系化合物(E’):
“ベッカミン”(登録商標)APM(大日本インキ化学工業(株)製)を水で希釈した塗料。
・積層フィルム
次いで、実質的に粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.4倍延伸し、一軸延伸フィルム(Bフィルム)とした。
次に樹脂組成物1を一軸延伸フィルムのコロナ放電処理面にバーコートを用いて塗布厚み約6μmで塗布した。樹脂組成物を塗布した一軸延伸フィルムの幅方向両端部をクリップで把持して予熱ゾーンに導き、雰囲気温度75℃とした後、引き続いてラジエーションヒーターを用いて雰囲気温度を110℃とし、次いで雰囲気温度を90℃として、樹脂組成物を乾燥させ、樹脂層を形成せしめた。引き続き連続的に120℃の加熱ゾーン(延伸ゾーン)で幅方向に3.5倍延伸し、続いて230℃の熱処理ゾーン(熱固定ゾーン)で20秒間熱処理を施し、結晶配向の完了した積層フィルムを得た。得られた積層フィルムにおいてPETフィルムの厚みは100μm、樹脂層の厚みは約0.02μmであった。
得られた積層フィルムの特性等を表1、表3に示す。初期ヘイズが低く、反射率が高く、透明性、塗布外観、耐削れ性、視認性、煮沸視認性、初期接着性、オリゴマー抑制性が良好であり、湿熱接着性に優れるものであった。
<実施例2〜4>
金属酸化物粒子(A)の数平均粒子径を3nm(実施例2)、30nm(実施例3)、50nm(実施例4)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
実施例1と比較して、初期ヘイズが若干高く、反射率が若干低くなったものの良好であり、積層体との初期接着性が若干劣るものの良好であり、同等の透明性、塗布外観、耐削れ性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性、視認性、煮沸視認性を示した。
<実施例5>
アクリル樹脂(C)を添加した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。実施例1と比較して、初期ヘイズが若干低く、反射率が若干高く良好であり、積層体との初期接着性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性にも優れ、同等の透明性、塗布外観、耐削れ性、視認性、煮沸視認性を示した。
なおアクリル樹脂(C)は、以下の方法で製造したものを用いた。
・アクリル樹脂(C):
攪拌機、温度計、還流冷却管の備わった通常のアクリル樹脂反応槽に、溶剤としてイソプロピルアルコール100部を仕込み、加熱攪拌して100℃に保持した。この中に、(メタ)アクリレート(b1’)として、n=19のノナデシルメタクリレート40部、(メタ)アクリレート(b2’)として、2個の環を有するイソボニルメタクリレート40部、その他水酸基を有する(メタ)アクリレート(b3’)として、2−ヒドロキシエチルアクリレート20部からなる混合物を3時間かけて滴下した。そして、滴下終了後、100℃で1時間加熱し、次にt−ブチルパーオキシ2エチルヘキサエート1部からなる追加触媒混合液を仕込んだ。次いで、100℃で3時間加熱した後冷却し、アクリル樹脂(C)を得た。得られたアクリル樹脂(C)の構造式を以下に示す。(但し、この構造式は、その化学構造中にb1’、b2’、b3’を有することを単に表しており、各構造単位の順序や数を規定するものではない。)
・水系溶媒:純水。
・粒子(AC)とアクリル樹脂(C)の混合体:
水系溶媒中に、上記金属酸化物粒子(A)と上記アクリル樹脂(C)を順に添加し、以下の方法で分散せしめ、金属酸化物粒子(A)とアクリル樹脂(C)の混合体を得た。(前記(ii)の方法。)分散処理は、ホモミキサーを用いて行い、周速10m/sで5時間回転させることによって行った。
なお、得られた粒子(AC)を、日立卓上超遠心機(日立工機(株)製:CS150NX)により遠心分離を行い(回転数3,000rpm、分離時間30分)、金属酸化物粒子(A)(及び金属酸化物粒子(A)の表面に吸着したアクリル樹脂(C))を沈降させた後、上澄み液を除去し、沈降物を濃縮乾固させた。濃縮乾固した沈降物をX線光電子分光法(XPS)により分析した結果、金属酸化物粒子(A)の表面にアクリル樹脂(C)が存在することが確認された。つまり、金属酸化物粒子(A)の表面には、アクリル樹脂(C)が吸着・付着しており、得られた粒子(AC)が金属酸化物粒子(A)の表面にアクリル樹脂(C)を有する粒子に該当することが判明した。
<実施例6〜9>
アクリル樹脂(C)の添加量を1質量%(実施例6)、5質量%(実施例7)、10質量%(実施例8)、15質量%(実施例9)と変化させた以外は、実施例5と同様の方法で積層フィルムを得た。実施例5と比較して、初期ヘイズが若干低く、反射率が若干高く良好であり、積層体との初期接着性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性にも優れ、同等の透明性、塗布外観、耐削れ性、視認性、煮沸視認性を示した。
<実施例10〜11>
金属酸化物粒子(A)の添加量を70質量%(実施例10)、80質量%(実施例11)と変化させた以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。実施例7と比較して、初期ヘイズが若干高く、湿熱接着性、オリゴマー抑制性が若干劣るものの良好であり、同等の反射率、透明性、塗布外観、耐削れ性、視認性、煮沸視認性を示した。
<実施例12〜13>
金属酸化物粒子(A)の添加量を30質量%(実施例12)、20質量%(実施例13)と変化させた以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。実施例7と比較して、初期ヘイズが若干高く、反射率が若干低く、オリゴマー抑制性、視認性、煮沸視認性が若干劣るものの良好であり、同等の初期接着性、湿熱接着性を示した。
<実施例14>
金属酸化物粒子(A)を、表1に記載の酸化チタン粒子である“NanoTek”TiO2スラリー(シーアイ化成(株)、数平均粒子径20nm)に変更した以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。
実施例7と比較して、屈折率の高い酸化チタン粒子を用いたことで、初期ヘイズは同等で、反射率は若干上昇し良好であり、同等の透明性、塗布外観、耐削れ性、初期接着性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性、視認性、煮沸視認を示した。
<実施例15〜17>
金属酸化物粒子(A)を、表1に記載の酸化亜鉛粒子であるFINEX−50(堺化学工業(株)製、数平均粒子径20nm)(実施例15)、インジウムドープ酸化錫である“NanoTek”ITOスラリー(シーアイ化成(株)製、数平均粒子径20nm)(実施例16)、酸化イットリウムである“NanoTek”Y2O3スラリー(シーアイ化成(株)製、数平均粒子径20nm)(実施例17)に変更した以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。
実施例7と比較して、初期ヘイズが若干高く、反射率が若干低くなったものの良好であり、透明性、塗布外観、耐削れ性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性、視認性、煮沸視認性が若干劣るものの良好であり、同等の初期接着性を示した。
<実施例18〜21>
ポリエステル樹脂中の酸成分のうち、ナフタレンジカルボン酸の割合を低くした(20モル%:実施例18、15モル%:実施例20)以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。
実施例7と比較して、初期接着性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性が若干劣るものの良好であり、同等のヘイズ、反射率、透明性、視認性、煮沸視認性を示した。また、実施例18では良好な塗布外観、耐削れ性を示した。実施例20は塗布外観、耐削れ性に若干劣るものであった。
ポリエステル樹脂中の酸成分のうち、ナフタレンジカルボン酸の割合を高くした(90モル%:実施例19、95モル%:実施例21)以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。
実施例7と比較して、初期接着性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性が若干劣るものの良好であり、同等のヘイズ、反射率、塗布外観、耐削れ性、透明性、視認性、煮沸視認性を示した。
<実施例22〜23>
ポリエステル樹脂(B)の添加量を3質量%(実施例22)、5質量%(実施例23)とした以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。
実施例7と比較して、ヘイズが若干高く、反射率が若干低く、初期接着性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性が若干劣るもの良好であり、同等の塗布外観、耐削れ性、視認性、煮沸視認性を示した。
<実施例24〜25>
ポリエステル樹脂(B)の添加量を30質量%(実施例24)、40質量%(実施例25)とした以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。
実施例7と比較して、ヘイズ、反射率、初期接着性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性、視認性、煮沸視認性、塗布外観、耐削れ性、ともに同等であり良好であった。
<実施例26〜27>
(メタ)アクリレートモノマー(b1’)を、表1に記載のn=9のデシルメタクリレート(実施例26)、n=34のペンタトリアコンチルメタクリレート(実施例27)に変更した以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。
実施例7と比較して、初期ヘイズが若干高く、反射率が若干低いものの良好であり、初期接着性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性、視認性、煮沸視認性に若干劣るものの良好であった。さらに塗布外観、耐削れ性は、同等であり良好であった。
<実施例28〜32>
実施例28、31は、樹脂層の膜厚を実施例7よりも薄くした(5nm:実施例28、3nm:実施例31)以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。実施例7と比較して、初期ヘイズが若干低く、反射率が若干高く良好であり、初期接着性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性が若干劣るものの、視認性、煮沸視認性に優れるものであった。実施例28は、塗布外観、耐削れ性ともに優れるものであった。実施例31は、塗布外観に優れ、耐削れ性は若干劣るものの良好であった。
実施例29、30、32は、樹脂層の膜厚を実施例7よりも厚くした(50nm:実施例29、30nm:実施例30、60nm:実施例32)以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。実施例7と比較して、初期ヘイズが若干高く、反射率が若干低いものの良好であり、オリゴマー抑制性、視認性、煮沸視認製、塗布外観、耐削れ性、に若干劣るものの、初期接着性、湿熱接着性に優れるものであった。
<比較例1>
実施例7における金属酸化物粒子(A)を、シリカ粒子である“スノーテックス”(登録商標)CM(日産化学工業(株)製、数平均粒子径20nm)に変更した以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。
実施例7と比較して、シリカ粒子を用いたことで、初期ヘイズは同等であるものの、塗布外観、耐削れ性に若干劣り、反射率が大幅に低下し、透明性、初期接着性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性は良好であったものの、視認性、煮沸視認性に欠けるものであった。
<比較例2〜3>
実施例7における金属酸化物粒子(A)を、MgF2粒子である“NanoTek”MgF2スラリー(シーアイ化成(株)製、数平均粒子径20nm)(比較例2)、中空のシリカ粒子である“スルーリア”(登録商標)TR112(日揮触媒化成(株)製、数平均粒子径20nm)(比較例3)に変更した以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。
実施例7と比較して、MgF2粒子(比較例2)、中空のシリカ粒子(比較例3)、を用いたことで、初期ヘイズは同等であるものの、塗布外観、耐削れ性に若干劣り、反射率が大幅に低下し、透明性、初期接着性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性は良好であったものの、視認性、煮沸視認性に欠けるものであった。
<比較例4〜6>
実施例7における金属酸化物粒子(A)の粒子径をそれぞれ、2nm(比較例4)、70nm(比較例5)、150nm(比較例6)にそれぞれ変更した以外は、実施例7と同様の方法で、積層フィルムを得た。
実施例7と比較して、数平均粒子径2nm、70nm、150nmの酸化ジルコニウム粒子を用いたことで、オリゴマー抑制性は良好であったものの、ヘイズが上昇し、反射率が低下し、透明性、塗布外観、耐削れ性、初期接着性、湿熱接着性、視認性、煮沸視認性に欠けるものであった。
<比較例7>
実施例7における金属酸化物粒子(A)を用いずに塗液中の樹脂組成物の組成を表のとおりとした以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。
実施例7と比較して、金属酸化物粒子(A)を用いなかったことで、透明性、初期接着性、湿熱接着性は良好なものの、オリゴマー抑制性、視認性、煮沸視認性、塗布外観、耐削れ性、に欠けるものであった。
<比較例8>
実施例7におけるポリエステル樹脂(B)を用いずに塗液中の樹脂組成物の組成を表のとおりとした以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。
実施例7と比較して、ポリエステル樹脂(B)を用いなかったことで、透明性、初期接着性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性、視認性、煮沸視認性、塗布外観、耐削れ性、に欠けるものであった。
<比較例9>
実施例7における金属酸化物粒子(A)およびポリエステル樹脂(B)を用いずに塗液中の樹脂組成物の組成を表のとおりとした以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。
実施例7と比較して、金属酸化物粒子(A)およびポリエステル樹脂(B)を用いなかったことで、塗布外観、耐削れ性は良好なものの、透明性、初期接着性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性、視認性、煮沸視認性に欠けるものであった。
<比較例10>
実施例7におけるポリエステル樹脂(B)を用いずに下記ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例7と同様の方法で積層フィルムを得た。
実施例7と比較して、ポリエステル樹脂(B)を用いなかったことで、透明性、初期接着性、湿熱接着性、オリゴマー抑制性、視認性、煮沸視認性、塗布外観、耐削れ性、に欠けるものであった。
・ポリエステル樹脂:
下記共重合組成から構成されたポリエステル樹脂(Tg:80℃)
<酸成分>
テレフタル酸 88モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 12モル%
<グリコール成分>
エチレングリコール 95モル%
ジエチレングリコール 5モル%