本発明の積層体は、プラスチックフィルム(X)、ガスバリア性フィルム(Y)およびシーラントフィルム(Z)を有し、かつこれらのフィルムがこの順序で積層されてなる積層体である。
本発明において、プラスチックフィルム(X)を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミドMXD6、ポリアミド9T等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂、塩化ビニル、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等またはそれらの混合物が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち、包装袋を構成したときに、突刺し強力や耐衝撃性等に優れることから、ポリアミド樹脂が好ましく、中でもナイロン6が好ましい。また、耐熱性と経済性に優れることから、ポリエステル樹脂が好ましく、中でもポリエチレンテレフタレートが好ましい。
熱可塑性樹脂には、本発明の積層体を用いて包装材料を形成する場合、包装材としての強度を確保するために、補強材を添加してもよい。補強材としては、例えば、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、カーボン繊維、パルプ、コットン・リンター等の繊維補強材、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の粉末補強材またはガラスフレーク、アルミフレーク等のフレーク状補強材が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、併用してもよい。補強材の含有量は、プラスチックフィルム(X)中、1〜67質量%であることが好ましい。
熱可塑性樹脂には、必要に応じて、プラスチックフィルム(X)の性能に悪影響を与えない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、防腐剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の各種の添加剤を、1種または2種以上加えてもよい。
プラスチックフィルム(X)は、例えば、上記熱可塑性樹脂を、押出機で加熱溶融してTダイよりフィルム上に押出し延伸することにより製造することができる。
プラスチックフィルム(X)の厚みは、プラスチックフィルム(X)が必要とする機械強度に応じて、適宜選択できる。機械強度やハンドリングのしやすさの理由から、プラスチックフィルム(X)の厚みは、6〜100μmとすることが好ましく、9〜50μmとすることがより好ましい。
プラスチックフィルム(X)には、必要に応じてプライマー層、帯電防止層、易接着層、蒸着層等の機能性層が設けられていてもよい。蒸着層を設けることによって、得られる積層体のガスバリア性をさらに向上させることができる。また、プラスチックフィルム(X)には、コロナ処理、オゾン処理等の表面処理が施されていてもよい。
プラスチックフィルム(X)の引張弾性率は、白化及び水泡現象の原因であるガスバリア性フィルム(Y)の伸長を抑制するために、長さ方向(MD)、幅方向(TD)ともに3.0GPa以上であることが好ましく、3.5GPa以上であることがより好ましい。長さ方向(MD)、幅方向(TD)の引張弾性率の少なくとも一方が3.0GPa未満である場合、ガスバリア性フィルム(Y)の伸長を抑制することができず、白化や水泡現象が生じやすくなる。
本発明において、ガスバリア性フィルム(Y)は、プラスチック基材(I)とガスバリア層(II)から構成されるものである。そしてプラスチック基材(I)は、金属化合物を0.1〜70質量%含有する必要がある。
金属化合物を構成する金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1価の金属や、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、亜鉛、銅、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム等の2価以上の金属が挙げられる。中でも、カルボン酸と反応しやすいという観点から、イオン化傾向の高い金属が好ましく、ガスバリア性の観点から、1価や2価の金属であることが好ましい。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛であることが好ましく、マグネシウム、カルシウム、亜鉛であることがより好ましい。金属は単独で用いてもよいし、併用してもよい。
金属化合物は、上記金属を含有する化合物であり、化合物としては、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物や、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、硫酸塩等の無機塩や、酢酸塩、ギ酸塩、ステアリン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩等のカルボン酸塩や、スルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、酸化物、炭酸塩であることが好ましい。また、金属化合物として金属単体を用いてもよい。
上記の金属化合物のうち、好ましい例として、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛等を挙げることができ、ガスバリア性の観点からは、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム等のマグネシウム塩や炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、酸化亜鉛、酢酸亜鉛等の2価金属化合物が好ましく、ガスバリア性フィルム(Y)の透明性の観点からは、炭酸リチウムや炭酸水素ナトリウム等の1価の化合物や、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等のマグネシウム塩が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、併用してもよい。
金属化合物は粉末状であることが好ましく、その平均粒径は、特に限定されないが、0.001〜10.0μmであることが好ましく、0.005〜5.0μmであることがより好ましく、0.01〜2.0μmがさらに好ましく、0.05〜1.0μmが特に好ましい。ガスバリア性フィルム(Y)のヘイズを小さくすることができるので、金属化合物は、平均粒径が小さい方が好ましい。しかし、平均粒径が0.001μm未満の金属化合物は、表面積が大きいため凝集しやすく、粗大凝集物がフィルム中に散在し、基材の機械物性を低下させることがある。一方、平均粒径が10.0μmを超える金属化合物を含有するガスバリア性フィルム(Y)は、製膜する時に破断する頻度が高くなり、生産性が低下する傾向がある。
金属化合物は、無機処理や有機処理等の表面処理を施すことで、分散性や耐候性、熱可塑性樹脂との濡れ性、耐熱性、透明性等を向上させることができる。無機処理としては、アルミナ処理、シリカ処理、チタニア処理、ジルコニア処理、酸化錫処理、酸化アンチモン処理、酸化亜鉛処理等が挙げられる。有機処理としては、脂肪酸化合物、ペンタエリトリット、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物、トリエタノールアミン、トリメチロールアミン等のアミン化合物、シリコーン樹脂、アルキルクロロシラン等のシリコーン系の化合物を用いた処理が挙げられる。
プラスチック基材(I)中の金属化合物の含有量は、0.1〜70質量%であることが必要であり、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.2〜20質量%であることがより好ましく、0.2〜15質量%であることがさらに好ましい。ヘイズの観点からは5質量%未満であることが好ましい。プラスチック基材(I)中の金属化合物の含有量を0.1〜70質量%とすることにより、得られるガスバリア性フィルム(Y)は、優れたガスバリア性を得ることができる。しかし、プラスチック基材(I)中の金属化合物の含有量が0.1質量%未満であると、ガスバリア層(II)のポリカルボン酸と反応して形成される架橋構造が少なくなり、得られるガスバリア性フィルム(Y)は、ガスバリア性が低下する。一方、含有量が70質量%を超えるガスバリア性フィルム(Y)は、製膜時の延伸において破断する頻度が高くなり、生産性が低下しやすくなり、機械物性も低下しやすい。
ガスバリア性フィルム(Y)のプラスチック基材(I)に金属化合物を含有させる方法は特に限定されず、その製造工程の任意の時点で、配合することができる。例えば、ガスバリア性フィルム(Y)のプラスチック基材(I)を構成する熱可塑性樹脂を重合するときに金属化合物を添加する方法や、熱可塑性樹脂と金属化合物とを押出機にて混練する方法や、金属化合物を高濃度に練り込んで配合したマスターバッチを製造しこれを熱可塑性樹脂に添加して希釈する方法(マスターバッチ法)等が挙げられる。本発明においてはマスターバッチ法が好ましく採用される。
ガスバリア性フィルム(Y)のプラスチック基材(I)を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミドMXD6、ポリアミド9T等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂、塩化ビニル、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等またはそれらの混合物が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち、包装袋を構成したときに、突刺し強力や耐衝撃性等に優れることから、ポリアミド樹脂が好ましく、中でもポリアミド6が好ましい。た、耐熱性と経済性に優れることから、ポリエステル樹脂が好ましく、中でもポリエチレンテレフタレートが好ましい。
熱可塑性樹脂には、必要に応じて、ガスバリア性フィルム(Y)の性能に悪影響を与えない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、防腐剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の各種の添加剤を、1種あるいは2種以上加えてもよい。
ガスバリア性フィルム(Y)のプラスチック基材(I)の厚みは、得られるガスバリア性フィルム(Y)が必要とする機械強度に応じて、適宜選択できる。機械強度やハンドリングのしやすさの理由から、のプラスチック基材(I)の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。ガスバリア性フィルム(Y)は、のプラスチック基材(I)の厚みが5μm未満であると十分な機械強度が得られず、突刺し強力が悪化する傾向がある。
プラスチック基材(I)は、単層構成のフィルムであっても、複層構成のフィルムであってもよい。金属化合物は、プラスチック基材(I)が単層フィルムである場合、その単層フィルムに、0.1〜70質量%含有することが必要である。複層フィルムである場合、その少なくとも1層に0.1〜70質量%含有することが必要である。
以下、複層フィルムの構成について説明する。なお、複層フィルムにおける金属化合物を含有する層を「金属含有層(M)」とし、それ以外の層を「樹脂層(R)」と称する。プラスチック基材(I)が複層フィルムである場合、得られるガスバリア性フィルムの構成としては、ガスバリア層(II)とプラスチック基材(I)の金属含有層(M)とが接触している、(R)/(M)/(II)や、(M)/(R)/(M)/(II)や、(II)/(M)/(R)/(M)/(II)などが好ましい。これらの構成は、ガスバリア層(II)と金属含有層(M)とが接触し、ガスバリア層(II)中のポリカルボン酸と金属含有層(M)中の金属化合物とが反応しやすいため、効率的にガスバリア性を得ることができる。その中でも、製造するための設備や操業性を考慮すると、(R)/(M)/(II)の構成が好ましい。
複層フィルムを構成する金属含有層(M)と樹脂層(R)の厚み構成比率は、特に制限されず、金属含有層(M)の合計厚み(Mt)と、樹脂層(R)の合計厚み(Rt)の比率((Rt)/(Mt))は、1/1000〜1000/1であることが好ましく、それぞれの層の厚み制御が容易であるため、1/100〜100/1であることがより好ましく、1/10〜10/1であることがさらに好ましい。
ガスバリア性フィルム(Y)のガスバリア層(II)は、ポリカルボン酸を含有することが必要である。ガスバリア層(II)中のポリカルボン酸は、プラスチック基材(I)中の金属化合物と反応することによって、ガスバリア性を発現することができる。
ポリカルボン酸は、分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物や重合体であり、これらのカルボキシル基は、無水物の構造を形成していてもよい。ポリカルボン酸の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリマレイン酸、エチレン−マレイン酸共重合体等のオレフィン−マレイン酸共重合体、アルギン酸のように側鎖にカルボキシル基を有する多糖類、カルボキシル基含有のポリアミド、ポリエステル等を例示することができる。上記ポリカルボン酸は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
ポリカルボン酸が重合体である場合、その重量平均分子量は、1000〜1000000であることが好ましく、10000〜150000であることがより好ましく、15000〜110000であることがさらに好ましい。ポリカルボン酸の重量平均分子量が低すぎると、得られるガスバリア層(II)は脆弱になり、一方、分子量が高すぎると、ハンドリング性が損なわれ、場合によっては、後述するガスバリア層(II)を形成するための塗工液中で凝集し、得られるガスバリア層(II)は、ガスバリア性が損なわれる可能性がある。
上記ポリカルボン酸のうち、ポリアクリル酸やオレフィン−マレイン酸共重合体、特にエチレン−マレイン酸共重合体(以下、「EMA」と略称することがある。)が、ガスバリア性の観点から、好ましく用いられる。EMAは、無水マレイン酸とエチレンとを溶液ラジカル重合等の公知の方法で重合することにより得られる。オレフィン−マレイン酸共重合体中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造となりやすく、湿潤時や水溶液中では開環してマレイン酸構造となる。したがって、本発明においては、特記しない限り、マレイン酸単位と無水マレイン単位とを総称してマレイン酸単位という。EMA中のマレイン酸単位は、5モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがさらに好ましく、35モル%以上であることが最も好ましい。また、EMAの重量平均分子量は、1000〜1000000であることが好ましく、3000〜500000であることがより好ましく、7000〜300000であることがさらに好ましく、10000〜200000であることが特に好ましい。
ガスバリア層(II)は、ポリアルコールを含有することが好ましい。ポリアルコールを含有することによって、ガスバリア層(II)中のポリカルボン酸は、ガスバリア性フィルム(Y)中の金属化合物と反応することに加えて、ポリアルコールとも反応するので、ガスバリア性を向上することができる。ポリアルコールは、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物であり、低分子化合物としては、グリセリン、ペンタエリスリトール等の糖アルコール、グルコース等の単糖類、マルトース等の二糖類、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖が挙げられ、高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、でんぷん等の多糖類が挙げられる。上記ポリアルコールは、単独で用いてもよいし、併用してもよい。ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度は、95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがさらに好ましい。また、平均重合度は、50〜2000であることが好ましく、200〜1000であることがより好ましい。
ガスバリア層(II)における、ポリカルボン酸とポリアルコールとは、OH基とCOOH基のモル比(OH基/COOH基)が、0.01〜20となるように含有することが好ましく、0.01〜10となるように含有することがさらに好ましく、0.02〜5となるように含有することがより好ましく、0.04〜2となるように含有することが最も好ましい。
また、ガスバリア層(II)は、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミドまたはポリアミンを含有することも好ましい。これらの化合物を含有することによって、ガスバリア層(II)中のポリカルボン酸は、ガスバリア性フィルム(Y)中の金属化合物と反応することに加えて、これらの化合物とも反応するので、ガスバリア性を向上することができる。
ポリアミンは、分子中にアミノ基として第一級、第二級から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を2個以上有するものであり、その具体例としては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、分岐状ポリエチレンイミン、線状ポリエチレンイミン、ポリリジン、キトサンのように側鎖にアミノ基を有する多糖類、ポリアルギニンのように側鎖にアミノ基を有するポリアミド類等が挙げられる。ポリアミンの重量平均分子量は、5000〜150000であることが好ましい。ポリアミンの重量平均分子量が低すぎると、得られるガスバリア層(II)は脆弱になり、一方、分子量が高すぎると、ハンドリング性が損なわれ、場合によっては、後述するガスバリア層(II)を形成するための塗工液中で凝集し、得られるガスバリア層(II)は、ガスバリア性が損なわれる可能性がある。
ガスバリア層(II)における、ポリアミンとポリカルボン酸との質量比(ポリアミン/ポリカルボン酸)は、12.5/87.5〜27.5/72.5であることが好ましい。ポリアミンの質量比がこれより低いと、ポリカルボン酸のカルボキシル基の架橋が不十分となり、逆に、ポリアミンの質量比がこれより高いと、ポリアミンのアミノ基の架橋が不十分となり、いずれの場合も、ガスバリア性に劣ることがある。
ガスバリア層(II)は、架橋剤を含有してもよい。架橋剤を含有することによって、ガスバリア性を高めることができる。ガスバリア層(II)における架橋剤の含有量は、ポリカルボン酸100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。
架橋剤としては、自己架橋性を有する化合物や、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物が挙げられ、ガスバリア層(II)がポリアルコールを含有する場合は、水酸基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物でもよい。具体的な架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、炭酸ジルコニウムアンモニウム等のジルコニウム塩化合物、金属アルコキシド等が好ましく挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
金属アルコキシドとは、アルコキシ基が結合した金属を含む化合物であり、一部のアルコキシ基の代わりにハロゲンやカルボキシル基との反応性を有する官能基で置換されたアルキル基が結合していてもよい。ここで、金属とは、シリカ、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等の原子が挙げられ、ハロゲンとは、塩素、ヨウ素、臭素等が挙げられ、カルボキシル基との反応性を有する官能基とは、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ウレイド基等が挙げられ、アルキル基とは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基等が挙げられる。このような化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラエトキシチタン等のアルコキシチタン化合物、トリイソプロポキシアルミニウム等のアルコキシアルミニウム化合物、テトライソプロポキシジルコニウム等のアルコキシジルコニウム化合物が挙げられる。
これらの金属アルコキシドは、その一部または全部が加水分解したもの、部分的に加水分解、縮合したもの、完全に加水分解しその一部が縮合したもの、あるいは、これらを組み合わせたものを用いることもできる。
上記の金属アルコキシドとポリカルボン酸とを混合すると、両者が反応して塗工することが困難になる場合があるので、予め、加水分解縮合物を形成させてから混合することが好ましい。加水分解縮合物を形成させる方法としては、公知のゾルゲル法で用いられている手法を適用することができる。
ガスバリア層(II)には、ガスバリア性を大きく損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤、防腐剤、消泡剤、濡れ剤、粘度調整剤等が添加されていてもよい。熱安定剤、酸化防止剤、劣化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらを混合して使用してもよい。強化材としては、例えば、クレー、タルク、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、ゼオライト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、フッ素雲母、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維、フラーレン(C60、C70等)、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
ガスバリア層(II)の厚みは、ガスバリア性フィルム(Y)のガスバリア性を十分高めるために、0.05μmより厚いことが好ましく、経済性の点から、5.0μmより薄いことが好ましい。
ガスバリア層(II)は、ガスバリア性フィルム(Y)上に、ガスバリア層(II)形成用塗工液を塗布、乾燥することによって、形成することができる。上記塗工液は、作業性の観点から水性であることが好ましいため、塗工液を構成するポリカルボン酸や、ポリアルコールやポリアミンは、水溶性または水分散性であることが好ましく、水溶性であることがより好ましい。
ポリカルボン酸とポリアルコールとを混合して水性の塗工液を調製する場合、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対して、0.1〜20当量%のアルカリ化合物を加えることが好ましい。ポリカルボン酸は、カルボキシル基の含有量が多いと親水性が高くなるので、アルカリ化合物を添加しなくても水溶液にすることができる。しかし、アルカリ化合物を適正量添加することにより、得られるガスバリア性フィルム(Y)のガスバリア性を格段に向上することができる。アルカリ化合物は、ポリカルボン酸のカルボキシル基を中和できるものであればよいが、中でも1価金属のアルカリ化合物とアンモニアが好ましく、1価金属のアルカリ化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムがさらに好ましい。これらの添加量は、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対して、0.1〜20モル%であることが好ましい。
上記塗工液の調製は、撹拌機を備えた溶解釜等を用いて、公知の方法で行うことができ、例えば、ポリカルボン酸とポリアルコールとを別々に水溶液とし、塗工前に混合する方法が好ましい。この時、上記アルカリ化合物をポリカルボン酸の水溶液に加えておくと、その水溶液の安定性を向上させることができる。
また、ポリカルボン酸とポリアミンとを混合して水性の塗工液を調製する場合、ゲル化を抑制するために、ポリカルボン酸に塩基を添加しておくことが好ましい。塩基は、得られるガスバリア性フィルム(Y)のガスバリア性を阻害しないものであればよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の無機物や、アンモニア、メチルアミン、ジエタノールアミン等の有機物が挙げられ、乾燥、熱処理で揮発しやすいことから、アンモニアであることが好ましい。塩基の添加量は、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対して、0.6当量以上であることが好ましく、0.7当量以上であることがより好ましく、0.8当量以上であることがさらに好ましい。塩基の添加量が少ないと、塗工液は塗工中にゲル化し、ガスバリア性フィルム(Y)上にガスバリア層(II)を形成することが困難となることがある。
ガスバリア層(II)形成用塗工液をプラスチック基材(I)に塗布する方法は特に限定されず、エアーナイフコーター、キスロールコーター、メタリングバーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディップコーター、ダイコーター等、あるいはこれらを組み合わせた方法を用いることができる。
ガスバリア層(II)形成用塗工液をプラスチック基材(I)に塗布後、直ちに加熱処理を行い、乾燥皮膜の形成と加熱処理を同時に行ってもよいし、また塗布後、ドライヤー等による熱風の吹き付けや赤外線照射等により水分等を蒸発させて乾燥皮膜を形成させた後に、加熱処理を行ってもよい。ガスバリア層(II)の状態やガスバリア性等の物性に特に障害が生じない限り、塗布後、直ちに加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理方法としては特に限定されず、オーブン等の乾燥雰囲気下で加熱処理を行う方法が挙げられる。工程の短縮化等を考慮すると、ガスバリア層(II)形成用塗工液を塗布した後でプラスチック基材(I)の延伸を行うのが好ましい。上記のいずれの場合においても、ガスバリア層(II)を形成したプラスチック基材(I)を、100℃以上の加熱雰囲気中で5分間以下の熱処理を施すことが好ましい。
ガスバリア層(II)が、ポリカルボン酸とポリアルコールとを含有する場合においては、それらの比率や、添加成分の有無やその含有量等によっても影響を受け得るので、塗工液を塗布後の加熱処理温度は、一概には言えないが、100〜300℃であることが好ましく、120〜250℃であることがより好ましく、140〜240℃であることがさらに好ましく、160〜220℃であることが特に好ましい。熱処理温度が低過ぎると、ポリカルボン酸とポリアルコールとの架橋反応を十分に進行させることができず、十分なガスバリア性を有するガスバリア性フィルム(Y)を得ることが困難になることがあり、一方、高過ぎると、ガスバリア層(II)等が脆化するおそれ等がある。また、熱処理時間は、5分間以下であることが好ましく、1秒間〜5分間であることがより好ましく、3秒間〜2分間であることがさらに好ましく、5秒間〜1分間であることが特に好ましい。熱処理時間が短すぎると、上記架橋反応を十分に進行させることができず、ガスバリア性を有するガスバリア性フィルム(Y)を得ることが困難になり、一方、長すぎると生産性が低下する。
また、プラスチック基材(I)に塗布されたガスバリア層(II)形成用塗工液は、上記乾燥の前後に、必要に応じて、紫外線、X線、電子線等の高エネルギー線照射が施されてもよい。このような場合には、高エネルギー線照射により架橋または重合する成分が配合されていてもよい。
本発明に用いるガスバリア性フィルム(Y)は、以下のような方法により製造することができる。
単層構成のフィルムからなるプラスチック基材(I)は、例えば、金属化合物を混合した熱可塑性樹脂を、押出機で加熱溶融してTダイよりフィルム状に押出し、エアーナイフキャスト法、静電印加キャスト法等の公知のキャスティング法により回転する冷却ドラム上で冷却固化して、未延伸状態のプラスチック基材(I)のフィルムを得る。
また、複層構成のフィルムからなるプラスチック基材(I)は、例えば、金属化合物を混合した熱可塑性樹脂を押出機Aで加熱溶融し、また熱可塑性樹脂を押出機Bで加熱溶融し、それぞれ溶融した2種の樹脂をダイス中で重ね合わせて、例えば、金属含有層(M)/樹脂層(R)の2層構成のフィルムをTダイから押出し、上記同様、冷却固化することによって、未延伸状態で得ることができる。
このような方法で、プラスチック基材(I)に金属化合物を含有させることにより、従来行われていた、金属化合物を含む層を基材に積層する工程を省略することができる。
得られた単層や複層の未延伸フィルムに、前述の方法でガスバリア層(II)形成用塗工液を塗布してガスバリア層(II)を形成し、テンター式同時二軸延伸機にて、MDおよびTDに同時二軸延伸を施すことで、同時二軸延伸されたガスバリア性フィルム(Y)を得ることができる。また得られた未延伸フィルムをMDに延伸したのち、前述の方法でガスバリア層(II)形成用塗工液を塗布してガスバリア層(II)を形成し、次いでTDに延伸を施すことで、逐次二軸延伸されたガスバリア性フィルム(Y)を得ることができる。なお、未延伸フィルムが配向していると、後工程で延伸性が低下することがあるため、未延伸フィルムは、実質的に無定形、無配向の状態であることが好ましい。
熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を用いる場合は、未延伸フィルムを、80℃を超えないように温調した水槽に移送し、5分間以内で浸水処理を施し、0.5〜15%吸湿処理することが好ましい。また、フィルムの延伸倍率は、一軸延伸の場合は1.5倍以上であることが好ましく、縦横二軸延伸の場合も、縦横に各々1.5倍以上であることが好ましく、面積倍率で、通常3倍以上であることが好ましく、6〜20倍であることがより好ましく、6.5〜13倍であることがさらに好ましい。延伸倍率がこの範囲であると、優れた機械物性のガスバリア性フィルム(Y)を得ることが可能となる。延伸処理工程を経たフィルムは、延伸処理が行われたテンター内において150〜300℃の温度で熱固定され、必要に応じて0〜10%、好ましくは2〜6%の範囲で、MDおよび/またはTDの弛緩処理が施される。熱収縮率を低減するためには、熱固定時間の温度および時間を最適化するだけでなく、熱弛緩処理を熱固定処理の最高温度より低い温度で行うことが望ましい。
延伸方法は特に限定されないが、同時二軸延伸方法を用いる方が好ましい。同時二軸延伸方法は、一般に、機械的特性、光学特性、熱寸法安定性、耐ピンホール性等の実用特性を兼備させることができる。このほか、縦延伸の後に横延伸を行う逐次二軸延伸方法では、縦延伸時にフィルムの配向結晶化が進行して横延伸時の熱可塑性樹脂の延伸性が低下することにより、金属化合物の配合量が多い場合にフィルムの破断頻度が高くなる傾向がある。このため、本発明においては、吸水処理を施し、同時二軸延伸方法を採ることが好ましい。
本発明に用いるガスバリア性フィルム(Y)は、ガスバリア性を高める目的で、製造した後に加湿された雰囲気下で処理することもできる。加湿処理により、プラスチック基材(I)の金属化合物とガスバリア層(II)のポリカルボン酸との作用を、より促進することができる。このような加湿処理は、高温、高湿度下の雰囲気において積層体を放置してもよいし、高温の水に直接積層体を接触させてもよい。加湿処理条件は種々目的により異なるが、高温高湿の雰囲気下で放置する場合は、温度30〜130℃、相対湿度50〜100%が好ましい。高温の水に接触させる場合も、温度30〜130℃程度(100℃以上は加圧下)が好ましい。加湿処理時間は処理条件により異なるが、一般に数秒から数百時間の範囲が選ばれる。
本発明に用いるガスバリア性フィルム(Y)には、必要に応じて、コロナ放電処理等の表面処理を施してもよい。
次に、本発明において、シーラントフィルム(Z)を構成する熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸/メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いても、他の樹脂や成分と共重合や溶融混合して用いても、また酸変性等が施されていてもよい。また、前記の樹脂成分を多層に用いてもよい。中でも、ヒートシール強度や材質そのものの強度が高いことから、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂が好ましい。
上記樹脂から構成されるシーラントフィルム(Z)は、未延伸状態であっても、低倍率の延伸状態でもよいが、実用的な観点から、未延伸状態のフィルムが好ましい。シーラントフィルム(Z)は、上記樹脂を押出機で加熱、溶融してTダイより押出し、冷却ロール等で冷却固化するテンター法や、円形ダイより押出して水冷あるいは空冷により冷却固化させるチューブラー法等を用いて製造することができる。
シーラントフィルム(Z)の厚みは、20〜160μmであることが好ましく、40〜100μmであることがより好ましい。
本発明の積層体は、プラスチックフィルム(X)、ガスバリア性フィルム(Y)およびシーラントフィルム(Z)を有し、この順序で積層されている必要がある。ガスバリア性フィルム(Y)、プラスチックフィルム(X)、シーラントフィルム(Z)がこの順序で積層された積層体からなる包装袋にアルコール系内容物を充填し熱水処理した場合には、白化や水泡現象のような外観不良の発生を抑制することができない。ガスバリア性フィルム(Y)のガスバリア層(II)は、プラスチックフィルム(X)側にあってもよいし、シーラントフィルム(Z)側にあってもよい。
本発明の積層体は、上記したように、プラスチックフィルム(X)、ガスバリア性フィルム(Y)およびシーラントフィルム(Z)を有し、この順序で積層されている構成(X/Y/Z)を有していれば、これら以外のフィルム層を有するものであってもよいし、これらのフィルムをさらに有するもの(例えば、X/X/Y/Z、Y/X/Y/Z、Z/X/Y/Zなど)であってもよい。
本発明の積層体の製造方法としては、プラスチックフィルム(X)、ガスバリア性フィルム(Y)、シーラントフィルム(Z)が、直にまたは印刷インキ層を介して、ラミネート接着剤により順次ラミネートされる方法が挙げられる。
ラミネート接着剤としては、公知のものが使用される。例えば、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系が挙げられる。中でも、密着性、耐熱性、耐水性の観点から、イソシアネート系、ポリウレタン系、またはポリエステル系のものが好ましく、中でも、イソシアネート化合物、ポリウレタンおよびウレタンプレポリマーの1種または2種以上の混合物およびその反応生成物、ポリエステル、ポリオールおよびポリエーテルの1種または2種以上とイソシアネートとの混合物およびその反応生成物、またはこれらの溶液または分散液であることがより好ましい。ラミネート接着剤の厚みは、0.1μm以上とすることが好ましく、生産性の観点から10μm以下とすることが好ましい。
印刷インキ層とは、インキにより形成される文字、絵柄等を含む層である。インキとしては、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等のインキバインダー樹脂に、各種顔料、体質顔料、および可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤等が添加されてなる任意のインキを用いることができる。印刷インキ層の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアーコート等の周知の塗布方式を採用することができる。
本発明の積層体は、上記の構成を有するため、ガスバリア性に優れている。そのため、積層体を、95℃、30分の熱水処理後、20℃、相対湿度90%の雰囲気下で測定した酸素透過度は、300mL/(m2・day・MPa)以下とすることができる。酸素透過度は、0.01〜300mL/(m2・day・MPa)であることが好ましく、0.01〜200mL/(m2・day・MPa)であることがより好ましく、0.01〜100mL/(m2・day・MPa)であることがさらに好ましい。
本発明の積層体は、上記のようなガスバリア性を有しているため、包装袋としてアルコール系内容物を充填し熱水処理した場合に、白化や水泡現象のような外観不良の発生を抑制することができる。
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1.測定方法
下記の実施例、比較例において用いた測定方法を以下に示す。
(1)平均粒径
レーザー式粒度分析計「マイクロトラック HRA」(日機装社製)にて測定した粒径分布(体積分布)カーブにおける50%の累積パーセントの値を求めた。平均粒径測定用の試料は、金属化合物0.5gに対して50gのイソプロパノールを加え、超音波分散処理を3分間行なって調製した。
(2)各層厚み
得られた積層体を23℃、50%RHの環境下に2時間以上放置してから、走査型電子顕微鏡(SEM)によりフィルム断面観察を行い、各層の厚みを測定した。
(3)酸素透過度
得られた積層体をレトルト処理(熱水シャワー式、120℃、1.8気圧で30分間)した後、20℃、90%RHの環境下に24時間以上放置してから、モコン社製酸素バリア測定器(OX−TRAN 2/20)を用いて、温度20℃、相対湿度90%の雰囲気下における酸素透過度を測定した。単位はmL/(m2・day・MPa)である。
(4)プラスチックフィルム(X)の引張弾性率
島津製作所社製AG−1S型オートグラフを使用し、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下にて、JIS K7127に準じて、フィルムのMD、TDについて各5点を測定し、測定値5点の平均値をそれぞれ用いた。
(5)耐アルコール性
得られた積層体で作製した三方袋(外寸:MD200mm×TD150mm、シール幅:10mm)に、下記構成の内容物100mLを充填密封後、レトルト処理(熱水シャワー式、120℃、1.8気圧で30分間)を実施し、処理後の三方袋について外観評価を行った。白化および水泡現象の両方がいずれも発生しなかった場合を「○」、白化または水泡現象のいずれかが発生した場合を「△」、白化および水泡現象のいずれもが発生した場合を「×」とした。三方袋に充填する内容物は、濃度が、それぞれ、0質量%、2.0質量%、5.0質量%であるエタノール水溶液を使用した。
2.原料
実施例、比較例において、プラスチックフィルム(X)、ガスバリア性フィルム(Y)、シーラントフィルム(Z)、ラミネート接着剤として、下記のものを使用した。
<1>プラスチックフィルム(X)
・ポリエステルフィルム:ユニチカ社製エンブレットPET、厚み12μm
・ポリアミドフィルム1:ユニチカ社製ナイロン9Tフィルム 厚み15μm
・ポリアミドフィルム2:ユニチカ社製エンブレムON、厚み15μm
<2>ガスバリア性フィルム(Y)
(1)プラスチック基材(I)構成用の熱可塑性樹脂
・PA6:ユニチカ社製ポリアミド6樹脂 A1030BRF、相対粘度3.0
・PET:ユニチカ社製ポリエチレンテレフタレート樹脂 UT−CBR、極限粘度0.62
(2)プラスチック基材(I)構成用の金属化合物
・MgO:タテホ化学工業社製酸化マグネシウム、PUREMAG FNM−G、平均粒径0.4μm
(3)プラスチック基材(I)構成用の金属化合物マスターチップ
・マスターチップ1
ポリアミド6樹脂の85質量部と、MgOの15質量部とを混練して得たマスターチップ。金属化合物の含有量が15質量%未満の金属含有層(M)を調製する際に使用した。
・マスターチップ2
ポリアミド6樹脂の25質量部と、MgOの75質量部とを混練して得たマスターチップ。金属化合物の含有量が15質量%を超える金属含有層(M)を調製する際に使用した。
(4)ガスバリア層(II)形成用塗工液のポリカルボン酸成分
・EMA水溶液:
EMA(重量平均分子量60000)と水酸化ナトリウムとを水に加え、加熱溶解後、室温に冷却して調製した、EMAのカルボキシル基の10モル%が水酸化ナトリウムにより中和された、固形分15質量%のEMA水溶液。
(5)ガスバリア層(II)形成用塗工液の他の樹脂成分
・PVA水溶液:
ポリビニルアルコール(クラレ社製 ポバール105、ケン化度98〜99%、平均重合度約500)を水に加え、加熱溶解後、室温に冷却することにより調製した、固形分15質量%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液。
<3>シーラントフィルム(Z)
・CPP:三井化学東セロ社無延伸ポリプロピレンフィルム RXC−22、厚み50μm
<4>接着剤
・ポリウレタン系接着剤:DICグラフィックス社製 ディックドライ LX−500/KR−90S
実施例1
[ガスバリア性フィルムの製造]
ポリアミド6樹脂とマスターチップ1とを、酸化マグネシウムの含有量が0.1質量%となるように混合した。この混合物を押出機に投入し、270℃のシリンダー内で溶融した。溶融物をTダイオリフィスよりシート状に押出し、10℃に冷却した回転ドラムに密着させて急冷することで、厚さ150μmの未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを50℃の温水槽に送り、2分間の浸水処理を施した。
次に、PVAとEMAの質量比(固形分)が5/5になるように、PVA水溶液とのEMA水溶液とを混合して、固形分10質量%のガスバリア層(II)形成用塗工液を得た。この塗工液を、浸水処理を施した未延伸フィルムの片面に塗布した後、乾燥した。
フィルムの端部を、テンター式同時二軸延伸機のクリップに保持させ、180℃で、MD、TDにそれぞれ3.3倍に延伸した。その後、TDの弛緩率を5%として、210℃で4秒間の熱処理を施し、室温まで徐冷して、厚みが15μmのフィルムに、厚みが0.3μmのガスバリア層を積層したガスバリア性フィルムを得た。
[積層体の製造]
ポリエステルフィルムのコロナ処理面に、ポリウレタン系接着剤を塗布量が5g/m2となるように塗布し、塗布したフィルムを80℃の熱風乾燥機で10秒間乾燥した。その塗布面と、ガスバリア性フィルムのガスバリア層をニップロールにて貼り合わせて(ニップ条件;50℃)、積層体を得た。
前記積層体のガスバリア性フィルム面に、ポリウレタン系接着剤を塗布量が5g/m2となるように塗布し、塗布したフィルムを80℃の熱風乾燥機で10秒間乾燥した。その塗布面と、シーラントフィルム(CPP)のコロナ処理面をニップロールにて貼り合わせて(ニップ条件;50℃)、40℃の雰囲気下、72時間エージングし、ポリエステルフィルム/ガスバリア性フィルム/シーラントフィルムからなる積層体を得た。
実施例2〜4
ガスバリア性フィルム中の金属化合物を表1に記載の含有量となるように、ポリアミド6樹脂とマスターチップとを適宜用いた以外は、実施例1と同様にして、未延伸ガスバリア性フィルムを製造し、浸水処理を施し、塗工液を塗布乾燥し、同時二軸延伸をおこなってガスバリア性フィルムを得た。
得られたガスバリア性フィルムを用いて、表1に記載の構成になるように、実施例1と同様にして積層体を得た。
実施例5
ポリエステルフィルムのコロナ処理面に、ポリウレタン系接着剤を塗布量が5g/m2となるように塗布し、塗布したフィルムを80℃の熱風乾燥機で10秒間乾燥した。その塗布面と、実施例2で得られたガスバリア性フィルムのプラスチック基材面をニップロールにて貼り合わせて(ニップ条件;50℃)、積層体を得た。
前記積層体を用いて、実施例1と同様にして、シーラントフィルムを貼り合わせて、ポリエステルフィルム/ガスバリア性フィルム/シーラントフィルムからなる積層体を得た。
実施例6
プラスチックフィルムとして、ポリエステルフィルムの代わりに、ポリアミドフィルム1を使用した以外は、実施例2と同様にして、ポリアミドフィルム/ガスバリア性フィルム/シーラントフィルムからなる積層体を得た。
実施例7
プラスチックフィルムとして、ポリエステルフィルムの代わりに、ポリアミドフィルム2を使用した以外は、実施例2と同様にして、ポリアミドフィルム/ガスバリア性フィルム/シーラントフィルムからなる積層体を得た。
比較例1
実施例2で得られたガスバリア性フィルムのプラスチック基材面に、ポリウレタン系接着剤を塗布量が5g/m2となるように塗布し、塗布したフィルムを80℃の熱風乾燥機で10秒間乾燥させた。その塗布面と、シーラントフィルムのコロナ処理面をニップロールにて貼り合わせて(ニップ条件;50℃)、40℃の雰囲気で72時間エージングし、ガスバリア性フィルム/シーラントフィルムからなる積層体を得た。
比較例2
ガスバリア性フィルムとして、実施例4で得られたガスバリア性フィルムを用いる以外は、比較例1と同様にして、ガスバリア性フィルム/シーラントフィルムからなる積層体を得た。
比較例3
ポリアミド6樹脂とマスターチップ1とを、酸化マグネシウムの含有量が0.05質量%となるように混合した混合物を用いる以外は、実施例1と同様にして、ガスバリアフィルムを製造し、その後、比較例1と同様にして、ガスバリア性フィルム/シーラントフィルムからなる積層体を得た。
比較例4
ポリアミド6樹脂とマスターチップ2とを、酸化マグネシウムの含有量が75質量%となるように混合した混合物を用いる以外は、実施例1と同様にして、未延伸ガスバリア性フィルムを製造し、浸水処理を施し、塗工液を塗布乾燥し、同時二軸延伸をおこなおうとしたが、延伸時に破断し、ガスバリア性フィルムを得ることができなかった。
比較例5
実施例2で得られたガスバリア性フィルムのガスバリア層に接着剤を塗布した以外は、比較例1と同様にして、ガスバリア性フィルム/シーラントフィルムからなる積層体を得た。
比較例6
ポリエステルフィルムのコロナ処理面に、ポリウレタン系接着剤を塗布し、塗布したフィルムを80℃の熱風乾燥機で10秒間乾燥させて、接着剤塗布量が5g/m2となるようにした。その接着剤塗布面と、実施例2で得られたガスバリア性フィルムのガスバリア層をニップロールにて貼り合わせて(ニップ条件;50℃)、ポリエステルフィルム/ガスバリア性フィルムからなる積層体を得た。
得られた積層体のポリエステルフィルム面に、接着剤を塗布し、塗布したフィルムを80℃の熱風乾燥機で10秒間乾燥させて、接着剤塗布量が5g/m2となるようにした。その接着剤塗布面と、シーラントフィルムのコロナ処理面をニップロールにて貼り合わせて(ニップ条件;50℃)、40℃の雰囲気で72時間エージングし、ガスバリア性フィルム/ポリエステルフィルム/シーラントフィルムの3層からなる積層体を得た。
実施例1〜7、比較例1〜6で得られた積層体の構成およびその評価結果を表1に示す。
実施例1〜7の積層体は、耐アルコール性とともに、十分なガスバリア性を有していた。
比較例1、2、5、6の積層体は、十分なガスバリア性があるにもかかわらず、最外層にプラスチックフィルムを設けていなかったため、ガスバリア層の伸長を抑制することができず、アルコールの内容物濃度が2%、5%の場合に外観不良が発生した。
比較例3の積層体は、ガスバリア性フィルムに含まれる金属化合物が0.1質量%未満であったため、十分なガスバリア性を有していなかった。