以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のガスバリア積層体は、プラスチック基材(I)にガスバリア層(II)が積層されたものであり、プラスチック基材(I)は、金属化合物および耐屈曲性改良剤を含有する。
金属化合物を構成する金属としては、特に限定されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1価の金属や、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、亜鉛、銅、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム等の2価以上の金属が挙げられる。中でも、カルボン酸と反応しやすいという観点から、イオン化傾向の高い金属が好ましく、ガスバリア性の観点から、1価や2価の金属であることが好ましい。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛であることが好ましく、マグネシウム、カルシウム、亜鉛であることがより好ましい。金属の種類は1種に限定されず、2種以上でもよい。
本発明において金属化合物は、上記金属を含有する化合物であり、化合物としては、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物や、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、硫酸塩等の無機塩や、酢酸塩、ギ酸塩、ステアリン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩等のカルボン酸塩や、スルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、酸化物、炭酸塩であることが好ましい。また、金属化合物として金属単体を用いてもよい。
上記の金属化合物のうち、好ましい例として、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛等を挙げることができ、ガスバリア性の観点からは、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、酸化亜鉛の2価金属化合物が好ましく、プラスチック基材(I)の透明性の観点からは、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム等の1価の化合物や、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムが好ましい。これらは単独で用いてもよく、併用してもよい。
金属化合物は粉末状であることが好ましく、その平均粒径は、特に限定されないが、0.001〜10.0μmであることが好ましく、0.005〜5.0μmであることがより好ましく、0.01〜2.0μmがさらに好ましく、0.05〜1.0μmが特に好ましい。プラスチック基材(I)のヘイズを小さくすることができるので、金属化合物は、平均粒径が小さい方が好ましい。しかし、平均粒径が0.001μm未満の金属化合物は、表面積が大きいため凝集しやすく、粗大凝集物がフィルム中に散在し、基材の機械物性を低下させることがある。一方、平均粒径が10.0μmを超える金属化合物を含有するプラスチック基材(I)は、製膜する時に破断する頻度が高くなり、生産性が低下する傾向がある。
金属化合物は、無機処理や有機処理等の表面処理を施すことで、分散性や耐候性、熱可塑性樹脂との濡れ性、耐熱性、透明性等を向上させることができる。無機処理としては、アルミナ処理、シリカ処理、チタニア処理、ジルコニア処理、酸化錫処理、酸化アンチモン処理、酸化亜鉛処理等が挙げられる。有機処理としては、脂肪酸化合物、ペンタエリトリット、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物、トリエタノールアミン、トリメチロールアミン等のアミン化合物、シリコーン樹脂、アルキルクロロシラン等のシリコーン系の化合物を用いた処理が挙げられる。
プラスチック基材(I)中の金属化合物の含有量は、0.1〜70質量%であることが必要であり、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.2〜20質量%であることがより好ましく、0.2〜5質量%であることがさらに好ましい。ヘイズの観点からは5質量%未満であることが好ましい。プラスチック基材(I)中の金属化合物の含有量が、0.1〜70質量%であると、得られる積層体は、優れたガスバリア性を得ることができる。しかし、プラスチック基材(I)中の金属化合物の含有量が0.1質量%未満であると、ガスバリア層(II)のポリカルボン酸と反応して形成される架橋構造が少なくなり、得られる積層体は、ガスバリア性が低下する。一方、含有量が70質量%を超えるプラスチック基材(I)は、製膜時の延伸において破断する頻度が高くなり、生産性が低下しやすくなり、機械物性も低下しやすい。
耐屈曲性改良材は、フィルムの耐屈曲性を改良するために含有させる。耐屈曲性改良材としては、特に限定されず、ポリオレフィン、アイオノマー、熱可塑性エラストマーまたはこれらの混合物が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、オレフィンの単独重合体、オレフィンと他のモノマーとの共重合体およびこれらの混合物、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸類をグラフト重合したものが挙げられる。オレフィンの単独重合体としては、ポリエチレン(高密度、低密度)、ポリプロピレンが挙げられる。オレフィンと他のモノマーとの共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体が挙げられる。ポリオレフィンに不飽和カルボン酸類をグラフト重合したものに用いる不飽和カルボン酸類としては、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のカルボン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等の酸無水物が挙げられる。不飽和カルボン酸類は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
アイオノマー重合体とは、ポリオレフィンとカルボキシル部分をもったα,β−エチレン型不飽和モノマーから構成され、該カルボキシル部分が原子価1〜3の金属イオンで中和されているものをいう。ポリオレフィンとしては、ポリエチレンまたはエチレンと炭素数が通常3〜8の少なくとも一種のα−オレフィンとジオレフィン、例えば1,4−ヘキサジエンとの共重合体が挙げられる。カルボキシル部分をもったα,β−エチレン型不飽和モノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸が挙げられる。金属イオンとしては、亜鉛イオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンが挙げられる。アイオノマー重合体は、α−オレフィンとカルボキシル部分をもつオレフィン単量体とを重合させる直接合成法、またはカルボキシル部分をもつ単量体をオレフィン骨格に付加するグラフト化による方法等により製造される。
熱可塑性エラストマーとしては、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系エラストマーとその水添物が挙げられる。
ポリアミド系エラストマーとしては、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエステルアミドが挙げられる。また、ポリアミド系エラストマーには、任意成分としてドデカンジカルボン酸、アジピン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸を共重合してもよい。
ポリエステル系エラストマーは、結晶性を有するハードセグメントと、柔軟性を有するソフトセグメントとから構成されるブロック共重合体のことをいう。中でも、環状ポリエステルからなるハードセグメントとポリアルキレンエーテルからなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体、環状ポリエステルからなるハードセグメントと鎖状脂肪族ポリエステルからなるソフトセグメントを有するブロック共重合体が好ましく、環状ポリエステル−ポリアルキレンエーテルブロック共重合体がより好ましい。なお、本発明において、「環状ポリエステル」とは、原料であるジカルボン酸又はそのアルキルエステルが環状構造を有するジカルボン酸またはそのアルキルエステルを含むものをいう。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、成形加工性の観点から、ジイソシアネート化合物と分子量約50〜500のグリコールとからなるハードセグメントと、ジイソシアネート化合物と長鎖グリコールからなるソフトセグメントとを有するものが挙げられる。前記長鎖グリコールとしては、分子量約500〜10000のポリアルキレングリコール等のポリエーテル系のもの、または、ポリアルキレンアジペート、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート等のポリエステル系のものが用いられる。また、ジイソシアネート化合物としては、フェニレンジイソシアネート、トリゲンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。なお、ジイソシアネート化合物は、ソフトセグメントとハードセグメントとのそれぞれにおいて、同一であっても、異なっていてもよい。
アクリル系熱可塑性エラストマーとしては、エチレン−アクリルエステル共重合体エラストマー、エチレン−メタアクリルエステル共重合体エラストマー、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルからなるアクリル系ABA型トリブロック共重合体が挙げられる。
ポリスチレン系エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴムが挙げられる。
耐屈曲性改良材の含有量は、プラスチック基材(I)を構成する熱可塑性樹脂に対して0.1〜20質量%であることが必要であり、0.3〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。プラスチック基材(I)中の耐屈曲性改良材の含有量が0.1質量%未満であると、耐屈曲ピンホール性の改善効果が少ない。一方、含有量が20質量%を超えると、得られるフィルムの透明性が損なわれ、さらには配合層の凝集破壊が発生する傾向がある。
プラスチック基材(I)に金属化合物や耐屈曲性改良材を含有させる方法は特に限定されず、その製造工程の任意の時点で、配合することができる。例えば、プラスチック基材(I)を構成する熱可塑性樹脂を重合するときに金属化合物や耐屈曲性改良材を添加する方法や、熱可塑性樹脂と耐屈曲性改良材と金属化合物とを押出機にて混練する方法や、金属化合物や耐屈曲性改良材を高濃度に練り込んで配合したマスターバッチを製造しこれを熱可塑性樹脂に添加して希釈する方法(マスターバッチ法)等が挙げられる。本発明においてはマスターバッチ法が好ましく採用される。
本発明において、プラスチック基材(I)を構成する熱可塑性樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロンMXD6、ナイロン9T等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂、塩化ビニル、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体またはそれらの混合物が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち、包装用袋を構成したときに、突刺し強力や耐衝撃性等に優れることから、ポリアミド樹脂が好ましく、また、耐熱性と経済性に優れることから、ポリエステル樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂には、必要に応じて、プラスチック基材(I)の性能に悪影響を与えない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、防腐剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の各種の添加剤を、1種あるいは2種以上添加してもよい。また、熱可塑性樹脂には、プラスチック基材(I)のスリップ性を向上させる等の目的で、金属化合物以外の無機粒子や有機系滑剤を添加してもよく、中でも、シリカを添加することが好ましい。
プラスチック基材(I)の厚みは、得られる積層体が必要とする機械強度に応じて、適宜選択できる。機械強度やハンドリングのしやすさの理由から、プラスチック基材(I)の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。プラスチック基材(I)は、厚みが5μm未満であると十分な機械強度が得られず、突刺し強力が悪化する傾向がある。
プラスチック基材(I)は、単層構成のフィルムであっても、複層構成のフィルムであってもよい。金属化合物は、プラスチック基材(I)が単層フィルムである場合、その単層フィルムに、0.1〜70質量%含有することが必要であり、複層フィルムである場合、その少なくとも1層に0.1〜70質量%含有することが必要である。以下、複層フィルムにおける、金属化合物を0.1〜70質量%含有する層や、単層フィルムを「金属含有層(M)」と略称し、複層フィルムにおける「金属含有層(M)」以外の層を「樹脂層(R)」と略称することがある。一方、耐屈曲性改良材は、プラスチック基材(I)が単層フィルムの場合、その単層フィルムに0.1〜20質量%含有することが必要であり、プラスチック基材(I)が複層フィルムである場合、その少なくとも1層に0.1〜20質量%含有することが必要である。プラスチック基材(I)が複層フィルムの場合、耐屈曲性改良材と金属化合物は、同じ1層に含有してもよいし、異なる2層以上の層に別々に含有してもよいが、同じ1層に含有することが好ましい。また、耐屈曲性改良材と金属化合物は、異なる2層以上の層に異なる割合で含有してもよい。
プラスチック基材(I)が複層フィルムである場合、得られる積層体の構成としては、ガスバリア層(II)とプラスチック基材(I)の金属含有層(M)とが接触している、(R)/(M)/(II)や、(M)/(R)/(M)/(II)や、(II)/(M)/(R)/(M)/(II)等が挙げられる。これらの構成は、ガスバリア層(II)と金属含有層(M)とが接触し、ガスバリア層(II)中のポリカルボン酸と金属含有層(M)中の金属化合物とが反応しやすいため、効率的にガスバリア性を得ることができる。その中でも、製造するための設備や操業性を考慮すると、(R)/(M)/(II)の構成が好ましい。また、ガスバリア層(II)とプラスチック基材(I)の樹脂層(R)が接触している、(M)/(R)/(II)や、(R)/(M)/(R)/(II)や、(II)/(R)/(M)/(R)/(II)等が挙げられる。その中でも、製造するための設備や操業性を考慮すると、(M)/(R)/(II)の構成が好ましい。
複層フィルムを構成する金属含有層(M)と樹脂層(R)の厚み構成比率は、特に限定されず、金属含有層(M)の合計厚み(Mt)と、樹脂層(R)の合計厚み(Rt)の比率((Rt)/(Mt))は、1/1000〜1000/1であることが好ましく、それぞれの層の厚み制御が容易であるため、1/100〜100/1であることがより好ましく、1/10〜10/1であることがさらに好ましい。
樹脂層(R)を構成する熱可塑性樹脂にも、上記添加剤が添加されてもよく、積層体の最外層となる樹脂層(R)には、スリップ性を向上させる目的で、シリカ等を添加することが好ましい。
本発明の積層体を構成するガスバリア層(II)は、ポリカルボン酸を含有することが必要である。ガスバリア層(II)中のポリカルボン酸は、プラスチック基材(I)中の金属化合物と反応することによって、ガスバリア性を発現することができる。
本発明におけるポリカルボン酸は、分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物や重合体であり、これらのカルボキシル基は、無水物の構造を形成していてもよい。ポリカルボン酸の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリマレイン酸、エチレン−マレイン酸共重合体等のオレフィン−マレイン酸共重合体、アルギン酸のように側鎖にカルボキシル基を有する多糖類、カルボキシル基含有のポリアミド、ポリエステル等を例示することができる。上記ポリカルボン酸は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
ポリカルボン酸が重合体である場合、その重量平均分子量は、1000〜1000000であることが好ましく、10000〜150000であることがより好ましく、15000〜110000であることがさらに好ましい。ポリカルボン酸の重量平均分子量が低すぎると、得られるガスバリア層(II)は脆弱になり、一方、分子量が高すぎると、ハンドリング性が損なわれ、場合によっては、後述するガスバリア層(II)を形成するための塗工液中で凝集し、得られるガスバリア層(II)は、ガスバリア性が損なわれる可能性がある。
本発明において、上記ポリカルボン酸のうち、ポリアクリル酸やオレフィン−マレイン酸共重合体、特にエチレン−マレイン酸共重合体(以下、EMAと略称することがある)が、ガスバリア性の観点から、好ましく用いられる。EMAは、無水マレイン酸とエチレンとを溶液ラジカル重合等の公知の方法で重合することにより得られる。オレフィン−マレイン酸共重合体中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造となりやすく、湿潤時や水溶液中では開環してマレイン酸構造となる。したがって、本発明においては、特記しない限り、マレイン酸単位と無水マレイン単位とを総称してマレイン酸単位という。EMA中のマレイン酸単位は、5モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがさらに好ましく、35モル%以上であることが最も好ましい。また、EMAの重量平均分子量は、1000〜1000000であることが好ましく、3000〜500000 であることがより好ましく、7000〜300000であることがさらに好ましく、10000〜200000であることが特に好ましい。
本発明においてガスバリア層(II)は、ポリアルコールを含有することが好ましい。ポリアルコールを含有することによって、ガスバリア層(II)中のポリカルボン酸は、プラスチック基材(I)中の金属化合物と反応することに加えて、ポリアルコールとも反応するので、ガスバリア性を向上することができる。ポリアルコールは、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物であり、低分子化合物としては、グリセリン、ペンタエリスリトール等の糖アルコール、グルコース等の単糖類、マルトース等の二糖類、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖が挙げられ、高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、でんぷん等の多糖類が挙げられる。上記ポリアルコールは、単独で用いてもよいし、併用してもよい。ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度は、95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがさらに好ましい。また、平均重合度は、50〜2000であることが好ましく、200〜1000であることがより好ましい。
ガスバリア層(II)における、ポリカルボン酸とポリアルコールとは、OH基とCOOH基のモル比(OH基/COOH基)が、0.01〜20となるように含有することが好ましく、0.01〜10となるように含有することがさらに好ましく、0.02〜5となるように含有することがより好ましく、0.04〜2となるように含有することが最も好ましい。
また、本発明においてガスバリア層(II)は、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミドまたはポリアミンを含有することも好ましい。これらの化合物を含有することによって、ガスバリア層(II)中のポリカルボン酸は、プラスチック基材(I)中の金属化合物と反応することに加えて、これらの化合物とも反応するので、ガスバリア性を向上することができる。
ポリアミンは、分子中にアミノ基として第一級、第二級から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を2個以上有するものであり、その具体例としては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、分岐状ポリエチレンイミン、線状ポリエチレンイミン、ポリリジン、キトサンのように側鎖にアミノ基を有する多糖類、ポリアルギニンのように側鎖にアミノ基を有するポリアミド類等が挙げられる。ポリアミンの重量平均分子量は、5000〜150000であることが好ましい。ポリアミンの重量平均分子量が低すぎると、得られるガスバリア層(II)は脆弱になり、一方、分子量が高すぎると、ハンドリング性が損なわれ、場合によっては、後述するガスバリア層(II)を形成するための塗工液中で凝集し、得られるガスバリア層(II)は、ガスバリア性が損なわれる可能性がある。
ガスバリア層(II)における、ポリアミンとポリカルボン酸との質量比(ポリアミン/ポリカルボン酸)は、12.5/87.5〜27.5/72.5であることが好ましい。ポリアミンの質量比がこれより低いと、ポリカルボン酸のカルボキシル基の架橋が不十分となり、逆に、ポリアミンの質量比がこれより高いと、ポリアミンのアミノ基の架橋が不十分となり、いずれの場合も、得られる積層体は、ガスバリア性に劣ることがある。
本発明におけるガスバリア層(II)は、架橋剤を含有してもよい。架橋剤を含有することによって、ガスバリア性を高めることができる。ガスバリア層(II)における架橋剤の含有量は、ポリカルボン酸100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。
架橋剤としては、自己架橋性を有する化合物や、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物が挙げられ、ガスバリア層(II)がポリアルコールを含有する場合は、水酸基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物でもよい。具体的な架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、炭酸ジルコニウムアンモニウム等のジルコニウム塩化合物、金属アルコキシド等が好ましく挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
金属アルコキシドとは、アルコキシ基が結合した金属を含む化合物であり、一部のアルコキシ基の代わりにハロゲンやカルボキシル基との反応性を有する官能基で置換されたアルキル基が結合していてもよい。ここで、金属とは、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等の原子が挙げられ、ハロゲンとは、塩素、ヨウ素、臭素等が挙げられ、カルボキシル基との反応性を有する官能基とは、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ウレイド基等が挙げられ、アルキル基とは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基等が挙げられる。このような化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラエトキシチタン等のアルコキシチタン化合物、トリイソプロポキシアルミニウム等のアルコキシアルミニウム化合物、テトライソプロポキシジルコニウム等のアルコキシジルコニウム化合物が挙げられる。
これらの金属アルコキシドは、その一部または全部が加水分解したもの、部分的に加水分解、縮合したもの、完全に加水分解しその一部が縮合したもの、あるいは、これらを組み合わせたものを用いることもできる。
上記の金属アルコキシドとポリカルボン酸とを混合すると、両者が反応して塗工することが困難になる場合があるので、予め、加水分解縮合物を形成させてから混合することが好ましい。加水分解縮合物を形成させる方法としては、公知のゾルゲル法で用いられている手法を適用することができる。
本発明におけるガスバリア層(II)には、ガスバリア性や、プラスチック基材(I)との接着性を大きく損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤、防腐剤、消泡剤、濡れ剤、粘度調整剤等が添加されていてもよい。
熱安定剤、酸化防止剤、劣化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらを混合して使用してもよい。
強化材としては、例えば、クレー、タルク、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、ゼオライト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、フッ素雲母、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維、フラーレン(C60、C70等)、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
本発明においてプラスチック基材(I)上に積層される上記ガスバリア層(II)の厚みは、積層体のガスバリア性を十分高めるために、0.05μmより厚いことが好ましく、経済性の観点から、5.0μmより薄いことが好ましい。
本発明におけるガスバリア層(II)は、プラスチック基材(I)上に、ガスバリア層(II)形成用塗工液を塗布、乾燥することによって、形成することができる。上記塗工液は、作業性の面から水性であることが好ましいため、塗工液を構成するポリカルボン酸や、ポリアルコールやポリアミンは、水溶性または水分散性であることが好ましく、水溶性であることがより好ましい。
本発明において、ポリカルボン酸とポリアルコールとを混合して水性の塗工液を調製する場合、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対して、0.1〜20当量%のアルカリ化合物を加えることが好ましい。ポリカルボン酸は、カルボキシル基の含有量が多いと親水性が高くなるので、アルカリ化合物を添加しなくても水溶液にすることができる。しかし、アルカリ化合物を適正量添加することにより、得られる積層体のガスバリア性を格段に向上することができる。アルカリ化合物は、ポリカルボン酸のカルボキシル基を中和できるものであればよく、その添加量は、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対して、0.1〜20モル%であることが好ましい。
上記塗工液の調製は、撹拌機を備えた溶解釜等を用いて、公知の方法で行うことができ、例えば、ポリカルボン酸とポリアルコールとを別々に水溶液とし、塗工前に混合する方法が好ましい。この時、上記アルカリ化合物をポリカルボン酸の水溶液に加えておくと、その水溶液の安定性を向上させることができる。
また本発明において、ポリカルボン酸とポリアミンとを混合して水性の塗工液を調製する場合、ゲル化を抑制するために、ポリカルボン酸に塩基を添加しておくことが好ましい。塩基は、得られる積層体のガスバリア性を阻害しないものであればよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の無機物や、アンモニア、メチルアミン、ジエタノールアミン等の有機物が挙げられ、乾燥、熱処理で揮発しやすいことから、アンモニアであることが好ましい。塩基の添加量は、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対して、0.6当量以上であることが好ましく、0.7当量以上であることがより好ましく、0.8当量以上であることがさらに好ましい。塩基の添加量が少ないと、塗工液は塗工中にゲル化し、プラスチック基材(I)上にガスバリア層(II)を形成することが困難となることがある。
ガスバリア層(II)形成用塗工液をプラスチック基材(I)に塗布する方法は特に限定されず、エアーナイフコーター、キスロールコーター、メタリングバーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディップコーター、ダイコーター等、あるいはこれらを組み合わせた方法を用いることができる。
ガスバリア層(II)形成用塗工液をプラスチック基材(I)に塗布後、直ちに加熱処理を行い、乾燥皮膜の形成と加熱処理を同時に行ってもよいし、また塗布後、ドライヤー等による熱風の吹き付けや赤外線照射等により水分等を蒸発させて乾燥皮膜を形成させた後に、加熱処理を行ってもよい。ガスバリア層(II)の状態やガスバリア性等の物性に特に障害が生じない限り、塗布後、直ちに加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理方法としては特に限定されず、オーブン等の乾燥雰囲気下で加熱処理を行う方法が挙げられる。工程の短縮化等を考慮すると、ガスバリア層(II)形成用塗工液を塗布した後でプラスチック基材(I)の延伸を行うのが好ましい。上記のいずれの場合においても、ガスバリア層(II)を形成したプラスチック基材(I)を、100℃以上の加熱雰囲気中で5分間以下の熱処理を施すことが好ましい。
ガスバリア層(II)が、ポリカルボン酸とポリアルコールとを含有する場合においては、それらの比率や、添加成分の有無やその含有量等によっても影響を受け得るので、塗工液を塗布後の加熱処理温度は、一概には言えないが、100〜300℃であることが好ましく、120〜250℃であることがより好ましく、140〜240℃であることがさらに好ましく、160〜220℃であることが特に好ましい。熱処理温度が低過ぎると、ポリカルボン酸とポリアルコールとの架橋反応を十分に進行させることができず、十分なガスバリア性を有する積層体を得ることが困難になることがあり、一方、高過ぎると、ガスバリア層(II)等が脆化するおそれ等がある。また、熱処理時間は、5分間以下であることが好ましく、1秒間〜5分間であることがより好ましく、3秒間〜2分間であることがさらに好ましく、5秒間〜1分間であることが特に好ましい。熱処理時間が短すぎると、上記架橋反応を十分に進行させることができず、ガスバリア性を有する積層体を得ることが困難になり、一方、長すぎると生産性が低下する。
また、プラスチック基材(I)に塗布されたガスバリア層(II)形成用塗工液は、上記乾燥の前後に、必要に応じて、紫外線、X線、電子線等の高エネルギー線照射が施されてもよい。このような場合には、高エネルギー線照射により架橋または重合する成分が配合されていてもよい。
本発明の積層体は、上記の構成を有するため、ガスバリア性に優れるものであり、95℃、30分の熱水処理した積層体は、20℃、相対湿度65%の雰囲気下で測定した酸素透過度を、300mL/(m2・day・MPa)以下とすることができ、酸素透過度は、1×10−2〜300mL/(m2・day・MPa)であることが好ましく、1×10−2〜200mL/(m2・day・MPa)であることがより好ましく、1×10−2〜100mL/(m2・day・MPa)であることがさらに好ましい。
本発明の積層体は、引張強度が150MPa以上であることが好ましく、180MPa以上であることがより好ましい。引張強度が150MPa未満であると、機械強度が充分ではなく、突刺し強力が低下する傾向がある。また、引張伸度は、引張強度と同様の観点から、60%以上が好ましく、80%以上であることがより好ましい。
本発明の積層体は、20℃×65%RH環境下で5000回屈曲を与えた後のピンホール数が、20個以下であることが好ましく、10個以下であることがより好ましい。上記ピンホール数は、具体的には、MIL−B−131Fに示されるFed.Test Method Std. 101CのMethod 2017に従い、縦方向(MD)300mm×横方向(TD)200mmのサイズの積層体を直径89mm(3.5インチ)の円筒状に把持し、初期把持間隔178mm(7インチ)、最大屈曲時の把持間隔25mm(1インチ)として、ゲルボテスター(理学工業社製)を用いて、20℃×65%RH環境下、5000回屈曲を与えた後のピンホール数を計数し評価した
本発明の積層体の透明性は、ヘイズが70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、15%以下であることが特に好ましく、10%以下であることが最も好ましい。ただし、用途によっては、透明性を必要としない場合があるため、この限りではない。
本発明の積層体は、以下のような方法により製造することができる。
単層構成のフィルムからなるプラスチック基材(I)は、例えば、金属化合物と耐屈曲性改良材を混合した熱可塑性樹脂を、押出機で加熱溶融してTダイよりフィルム状に押出し、エアーナイフキャスト法、静電印加キャスト法等の公知のキャスティング法により回転する冷却ドラム上で冷却固化して、未延伸状態のプラスチック基材(I)のフィルムを得る。
また、複層構成のフィルムからなるプラスチック基材(I)は、例えば、金属化合物と耐屈曲性改良材を混合した熱可塑性樹脂を押出機Aで加熱溶融し、また熱可塑性樹脂を押出機Bで加熱溶融し、それぞれ溶融した2種の樹脂をダイス中で重ね合わせて、例えば、金属含有層(M)/樹脂層(R)の2層構成のフィルムをTダイから押出し、上記同様、冷却固化することによって、未延伸状態で得ることができる。
このような方法でプラスチック基材(I)に金属化合物と耐屈曲性改良材を含有させることにより、従来行われていた、金属化合物を含む層を基材に積層する工程を省略することができる。
得られた単層や複層の未延伸フィルムに、前述の方法でガスバリア層(II)形成用塗工液を塗布してガスバリア層(II)を形成し、テンター式同時二軸延伸機にて、MDおよびTDに同時二軸延伸を施すことで、同時二軸延伸された積層体を得ることができる。また得られた未延伸フィルムをMDに延伸したのち、前述の方法でガスバリア層(II)形成用塗工液を塗布してガスバリア層(II)を形成し、次いでTDに延伸を施すことで、逐次二軸延伸された積層体を得ることができる。なお、未延伸フィルムが配向していると、後工程で延伸性が低下することがあるため、未延伸フィルムは、実質的に無定形、無配向の状態であることが好ましい。
熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を用いる場合は、未延伸フィルムを、80℃を超えないように温調した水槽に移送し、5分間以内で浸水処理を施し、0.5〜15%吸湿処理することが好ましい。
また、フィルムの延伸倍率は、一軸延伸の場合は1.5倍以上であることが好ましく、縦横二軸延伸の場合も、縦横に各々1.5倍以上であることが好ましく、面積倍率で、通常3倍以上であることが好ましく、6〜20倍であることがより好ましく、6.5〜13倍であることがさらに好ましい。延伸倍率がこの範囲であると、優れた機械物性の積層体を得ることが可能となる。
延伸処理工程を経たフィルムは、延伸処理が行われたテンター内において150〜300℃の温度で熱固定され、必要に応じて0〜10%、好ましくは2〜6%の範囲で、MDおよび/またはTDの弛緩処理が施される。熱収縮率を低減するためには、熱固定時間の温度および時間を最適化するだけでなく、熱弛緩処理を熱固定処理の最高温度より低い温度で行うことが望ましい。
延伸方法は特に限定されないが、同時二軸延伸方法を用いる方が好ましい。同時二軸延伸方法は、一般に、機械的特性、光学特性、熱寸法安定性、耐ピンホール性等の実用特性を兼備させることができる。このほか、縦延伸の後に横延伸を行う逐次二軸延伸方法では、縦延伸時にフィルムの配向結晶化が進行して横延伸時の熱可塑性樹脂の延伸性が低下することにより、金属化合物の配合量が多い場合にフィルムの破断頻度が高くなる傾向がある。このため、本発明においては、吸水処理を施し、同時二軸延伸方法を採ることが好ましい。
本発明の積層体は、ガスバリア性を高める目的で、積層体を製造した後に加湿された雰囲気下で処理することもできる。加湿処理により、プラスチック基材(I)の金属化合物とガスバリア層(II)のポリカルボン酸との作用を、より促進することができる。このような加湿処理は、高温、高湿度下の雰囲気において積層体を放置してもよいし、高温の水に直接積層体を接触させてもよい。加湿処理条件は種々目的により異なるが、高温高湿の雰囲気下で放置する場合は、温度30〜130℃、相対湿度50〜100%が好ましい。高温の水に接触させる場合も、温度30〜130℃程度(100℃以上は加圧下)が好ましい。加湿処理時間は処理条件により異なるが、一般に数秒から数百時間の範囲が選ばれる。
本発明の積層体には、必要に応じて、コロナ放電処理等の表面処理を施してもよい。
本発明の積層体は、シーラント等樹脂層を積層することにより、種々の積層フィルムとすることができる。
シーラントとして用いる樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸/メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂等が挙げられ、ヒートシール強度や材質そのものの強度が高いポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂が好ましい。これらの樹脂は、単独で用いても、また他の樹脂と共重合や溶融混合して用いても、さらに酸変性等が施されていてもよい。
シーラント層を積層体に形成方法する方法としては、シーラント樹脂からなるフィルムまたはシートを、接着剤を介して、積層体にラミネートする方法や、シーラント樹脂を積層体に押出ラミネートする方法等が挙げられる。前者の方法においては、シーラント樹脂からなるフィルムまたはシートは、未延伸状態であっても低倍率の延伸状態でもよいが、実用的には、未延伸状態であることが好ましい。
シーラント層の厚みは、特に限定されないが、20〜100μmであることが好ましく、40〜70μmであることがより好ましい。
本発明の積層体を用いて包装用袋を作製することができ、この包装用袋は、例えば、飲食品、果物、ジュ−ス、飲料水、酒、調理食品、水産練り製品、冷凍食品、肉製品、煮物、餅、液体ス−プ、調味料、その他の各種の飲食料品、液体洗剤、化粧品、化成品といった内容物を充填包装することができる。
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.測定方法
(1)平均粒径
レーザー式粒度分析計「マイクロトラック HRA」(日機装社製)にて測定した粒径分布(体積分布)カーブにおける50%の累積パーセントの値を求めた。平均粒径測定用の試料は、金属化合物0.5gに対して50gのイソプロパノールを加え、超音波分散処理を3分間行なって調製した。
(2)厚み
得られた積層体を23℃、50%RHの環境下に2時間以上放置してから、走査型電子顕微鏡(SEM)によりフィルム断面観察を行い、各層の厚みを測定した。
(3)ピンホール数
MD300mm×TD200mmのサイズの積層体を直径89mm(3.5インチ)の円筒状に把持し、初期把持間隔178mm(7インチ)、最大屈曲時の把持間隔25mm(1インチ)として、ゲルボテスター(理学工業社製)を用いて、20℃×65%RH環境下、5000回屈曲を与えた後のピンホール数を計数した。
(4)酸素透過度
得られた積層体を95℃、30分の条件で熱水処理した後、23℃、50%RHの環境下に2時間以上放置してから、モコン社製酸素バリア測定器(OX−TRAN 2/20)を用いて、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下における酸素透過度を測定した。単位はmL/(m2・day・MPa)である。
(5)ヘイズ
日本電色社製ヘイズメーター(NDH 4000)を用い、JIS K 7136に準じて、積層体の全光線透過率(Tt)、拡散透過率(Td)の測定を行い、下記式に基づいて、ヘイズを計算した。
ヘイズ(%)=(Td/Tt)×100
2.原料
下記の実施例・比較例において使用した原料は、以下のとおりである。
(1)プラスチック基材(I)構成用の熱可塑性樹脂
・PA6:ユニチカ社製 A1030BRF、ナイロン6樹脂、相対粘度3.0
・PET:ユニチカ社製 UT−CBR、ポリエチレンテレフタレート樹脂、極限粘度0.62
(2)プラスチック基材(I)構成用の金属化合物
・MgO:タテホ化学工業社製 PUREMAG FNM−G、酸化マグネシウム、平均粒径0.4μm
・CaCO3:白石工業社製 Vigot15、炭酸カルシウム、平均粒径0.5μm
・ZnO:堺化学工業社製 FINEX−50、酸化亜鉛、平均粒径0.02μm
(3)プラスチック基材(I)構成用の金属化合物マスターチップ
・マスターチップ1
PA6の55質量部と、MgOの45質量部とを混練してマスターチップを作製し、金属化合物の含有量が15〜45質量%である金属含有層(M)を調製する際に使用した。
・マスターチップ2
PA6の20質量部と、MgOの80質量部とを混練してマスターチップを作製し、金属化合物の含有量が45質量%を超える金属含有層(M)を調製する際に使用した。
・マスターチップ3
PETの85質量部と、MgOの15質量部とを混練して作製し、金属化合物の含有量が15質量%未満の金属含有層(M)を調製する際に使用した。
・マスターチップ4
PA6の85質量と、CaCO3の15質量部とを混練して作製した。
・マスターチップ5
PA6の85質量部と、ZnOの15質量部とを混練して作製した。
(4)プラスチック基材(I)構成用の耐屈曲性改良材
・改良材A
三井化学社製 LLDPE−g−MAH NF536、ポリオレフィン
・改良材B
日本合成化学社製 ソアブレンBH、エチレン−酢酸ビニル共重合体
・改良材C
三井デュポンポリケミカル社製 ハイミラン 1517、アイオノマー
・改良材D
三菱化学社製 プリマロイ GQ430、ポリエステル系エラストマー
・改良材E
BASF社製 エラストラン、ポリウレタン系エラストマー
・改良材F
クラレ社製 クラリティ、アクリル系エラストマーのアクリル系ABA型トリブロック共重合体
・改良材G
クレイトンポリマー社製 Kraton G1641、スチレン系エラストマー(スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体)の水添物
(5)ガスバリア層(II)形成用塗工液
・塗工液A
EMA(重量平均分子量60000)と水酸化ナトリウムとを水に加え、加熱溶解後、室温に冷却して調製した、EMAのカルボキシル基の10モル%が水酸化ナトリウムにより中和された、固形分15質量%のEMA水溶液を作製し、ポリビニルアルコール(クラレ社製 ポバール105、ケン化度98〜99%、平均重合度約500)を水に加え、加熱溶解後、室温に冷却することにより調製した、固形分15質量%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液を作製した。そして、PVAとEMAの質量比(固形分)が50/50になるように、PVA水溶液とのEMA水溶液とを混合して、固形分10質量%のガスバリア層(II)形成用塗工液Aを得た。
・塗工液B
ポリビニルアルコール(クラレ社製 ポバール105、ケン化度98〜99%、平均重合度約500)を水に加え、加熱溶解後、室温に冷却することにより調製した、固形分15質量%のガスバリア層(II)形成用塗工液Bを得た。
実施例1
ナイロン6樹脂とマスターチップ、改良材Aを、酸化マグネシウムの含有量が0.1質量%、改良材Aの含有量が2質量%となるように混合した。この混合物を押出機に投入し、270℃のシリンダー内で溶融した。溶融物をTダイオリフィスよりシート状に押出し、10℃に冷却した回転ドラムに密着させて急冷することで、厚さ150μmの未延伸プラスチック基材(I)フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを50℃の温水槽に送り、2分間の浸水処理を施した。
次に、塗工液Aを、浸水処理を施した未延伸フィルムの片面に塗布した後、乾燥した。
フィルムの端部を、テンター式同時二軸延伸機のクリップに保持させ、180℃で、MD、TDにそれぞれ3.3倍に延伸した。その後、TDの弛緩率を5%として、210℃で4秒間の熱処理を施し、室温まで徐冷して、厚みが15μmのプラスチック基材(I)に、厚みが0.3μmのガスバリア層(II)を積層した積層体を得た。
実施例2〜12、15、比較例1〜6、参考例1〜2
表1に記載の金属化合物含有量、耐屈曲性改良材含有量になるように、ナイロン6樹脂とマスターチップ、耐屈曲性改良材を混合し、また、延伸後の厚みが表1に記載の厚みになるようにした以外は、実施例1と同様にして、未延伸プラスチック基材(I)フィルムを得て、浸水処理を施した。
実施例15では、熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を使用したのにともない、さらに、次のように条件を変更した。すなわち、シリンダー温度を280℃として未延伸フィルムを作製し、得られた未延伸フィルムの浸水処理を施さなかった。また、同時二軸延伸における温度を90℃とし、熱処理の温度を230℃とした。
比較例5では、塗工液として塗工液Bを用いた。
実施例16
ナイロン6樹脂とマスターチップ、耐屈曲性改良材を、酸化マグネシウムの含有量が50質量%、耐屈曲性改良材の含有量が5質量%となるように混合した。この混合物を押出機Aに投入し、260℃で溶融押出した。一方、ナイロン6樹脂を押出機Bに投入し260℃で溶融押出した。
押出機A、押出機Bでそれぞれ溶融した2種の樹脂をダイス中で重ね合わせて、金属含有層(M)/樹脂層(R)の2層構成のシートをTダイから押し出し、表面温度20℃の冷却ロールに密着させて、(M)/(R)=5/145μmとなる厚み150μmの未延伸の複層フィルムを得た。得られた未延伸の複層フィルムを50℃の温水槽に送り、2分間の浸水処理を施した。
次に、実施例1と同様にして調製した塗工液Aを、未延伸複層フィルムの金属含有層(M)面に塗布した後、乾燥した。
実施例1と同様にして、同時二軸延伸、熱処理を施して、厚みが0.5μmの金属含有層(M)と厚みが14.5μmの樹脂層(R)とからなる、厚みが15μmのプラスチック基材(I)の金属含有層(M)に、厚みが0.3μmのガスバリア層(II)を積層した積層体を得た。
実施例17〜26、比較例7、8
表2に記載の組成になるように、ナイロン6樹脂とマスターチップ、耐屈曲性改良材を混合し、また、延伸後の厚みが表3に記載の厚みになるように、押出機A、Bの押出量を変更した以外は実施例16と同様にして、未延伸の複層フィルムを得て、浸水処理を施した。
次に、塗工液Aを用いて、延伸後の厚みが表2記載の厚みになるようにした以外は、実施例1と同様にして、未延伸フィルムに塗布、乾燥後、同時二軸延伸して積層体を得た。
実施例22は、耐屈曲性改良材を金属含有層(M)ではなく、樹脂層(R)に配合した。
実施例、比較例で得られた積層体の構成や、酸素透過度を測定した結果を表1〜2に示す。
実施例1〜12、15〜26では、いずれも、ピンホール数が20個以下で、酸素透過率が300mL/(m2・day・MPa)以下であった。
比較例1、3、7、8は、プラスチック基材(I)に含まれる耐屈曲性改良材が0.1質量%未満であったため、ピンホール数が20個以上であった。
比較例2、6は、プラスチック基材(I)に含まれる金属化合物が0.1質量%未満であったため、酸素透過率が150mL/(m2・day・MPa)未満であった。
比較例4は、プラスチック基材(I)に含まれる耐屈曲性改良材が20質量%を超えていたため、製膜時の延伸において破断し、積層体が得られなかった。
比較例5は、プラスチック基材(I)に含まれる金属化合物が70質量%を超えていたため、製膜時の延伸において破断し、積層体が得られなかった。