JP2015174132A - 金属板積層体のレーザ溶接構造、金属板積層体のレーザ溶接構造を備えた車両用ドアサッシュ、金属板積層体のレーザ溶接方法、及び金属板積層体のレーザ溶接方法を用いた車両用ドアサッシュの製造方法 - Google Patents
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ドアサッシュの断面形状は複雑であり、その一部は三枚の金属板を積層した構造となっている。しかしロール成形によってドアサッシュの形状を確定させた時点では、これら三枚の金属板は互いに接触しているだけであり、従って当該部分の機械的強度は脆弱である。
そのため特許文献1では、ロール成形によってドアサッシュの形状を確定させ後に、当該三枚の金属板どうしをレーザ溶接によって互いに固定している。
仮にレーザ溶接部(レーザ光)が、上記一方の外側金属板と中間金属板に対してのみ施され上記他方の外側金属板に到達しない場合は、中間金属板と他方の外側金属板が分離してしまう。その一方で、他方の外側金属板の表面にまでレーザ溶接部が到達すると、他方の外側金属板の表面には溶接による凹凸形状が形成される。しかし、他方の外側金属板の表面にこのような凹凸形状が形成されると、ドアサッシュの見栄えが低下したり、他方の外側金属板の表面に対する装着物(例えばウェザーストリップなど)が傷つくおそれがある(なお、レーザ光の入射面である一方の外側金属板の表面にも凹凸形状が形成されるが、この凹凸形状は比較的微細なので問題にはならない)。
このようなレーザ溶接を実現するためには、搬送装置による三枚の金属板(ドアサッシュ)の移送速度とレーザ光の強度が所定の関係となるように、移送速度及びレーザ光の強度を正確に設定する必要がある。
しかしレーザ光の強度を正確に微調整することは決して容易ではない。
さらに、搬送装置による移送速度が一定でない場合があり(断続的に速度を変える場合があり)、この場合に移送速度の変化に合わせてレーザ光の強度を的確に微調整するのは非常に難しい。
このように積層体の両面側からそれぞれレーザ溶接を行う場合は、各レーザ溶接部は中間金属板にまで到達すればよく、レーザ溶接の入射側と反対側の外側金属板の内部にまでレーザ溶接部を到達させる必要がない。
そのため、第一外側金属板と第二外側金属板の一方側から他方側に向かうレーザ光のみによって三枚以上の金属板からなる積層体をレーザ溶接する場合と比べて、レーザ光が積層体を貫通しない(レーザ光の入射側と反対側の金属板の表面にまでレーザ溶接部が及ばない)態様で金属板の積層体を容易に溶接できる。
さらにレーザ溶接を用いているので、積層体を(アーク溶接等と比べて)容易に溶接することが可能である。
図1は自動車の前部座席用の右側の側面ドア10を示している。ドア10は、仮想線で概略形状を示す金属製のドアパネル12と、ドアパネル12の上部に枠状に形成された金属製のドアサッシュ14と、ドアパネル12の上縁部とドアサッシュ14の内縁部とで囲まれた窓開口16内を昇降するドアガラス(図示略)と、を備えている。窓開口16に臨むドアサッシュ14の内周部には弾性材料からなるガラスランGRが設けてあり、ドアガラスの縁部がガラスランGRにより保持される。一方、ドアサッシュ14の外周部には弾性材料からなるウェザーストリップWSが設けてある。ドアサッシュ14は、その前縁部を構成するフロントサッシュ17と、ドア上縁部を形成するアッパサッシュ18と、ドアパネル12の後部から上方へ延設された立柱サッシュ27と、を備えている。フロントサッシュ17の上端部とアッパサッシュ18の前端部は溶接してあり、さらにアッパサッシュ18の後端部と立柱サッシュ27の上端部はドアコーナー部で溶接してある。
ドア10を図示を省略した車両ボディに対して閉じたとき、アッパサッシュ18は車両ボディのルーフパネルのドア開口部に沿って位置し、ウェザーストリップWSが弾性変形しながら当該ドア開口部の内周面に対して接触する。
フロントサッシュ17及びアッパサッシュ18は、車内側に位置し閉鎖断面形状とされた筒状部19と、筒状部19から外周側に延びる接続部20と、接続部20から車外側に延びる弾性部材保持部21と、を一体的に備えている。図2に示すように筒状部19の車外側部、接続部20、及び弾性部材保持部21によって囲まれ部分にガラスランGRを設けてあり、筒状部19の外周側部、接続部20、及び弾性部材保持部21の外周側部にウェザーストリップWSを設けてある。
ロール成形によって弾性部材保持部21(中間部22、外周面構成部23、内周面構成部24)の形状を確定させた時点では、これら三枚の平板状部は互いに単に接触しているだけである。そこでロール成形中(上記曲げ加工前)に上記搬送装置によって(図2の断面形状に加工した)直線状の長尺部材を移送しながら、長尺部材の外周側に固定状態で配設した第一レーザ光出射部LW1(トーチ)と長尺部材の内周側に固定状態で配設した第二レーザ光出射部LW2(トーチ)からレーザ光を同時に出射して、このレーザ光を利用して弾性部材保持部21をレーザ溶接する。
本実施形態では円を描くように首振りする第一レーザ光出射部LW1及び第二レーザ光出射部LW2からレーザ光を上記長尺部材の外周面構成部23と内周面構成部24に対して連続的に照射する。そのため、図3に示すように第一レーザ光出射部LW1によって第一レーザ溶接部W1が外周面構成部23に対して(全体として略直線状に延びるように)スピン溶接され、第二レーザ光出射部LW2によって第二レーザ溶接部W2が内周面構成部24に対して(全体として略直線状に延びるように)スピン溶接される(図3に描かれている輪状の部位が肉眼では殆ど認識できない程小さくなるようにスピン溶接を行ってもよい)。
そしてレーザ発振器によってレーザ光の強度を調整することにより、第一レーザ溶接部W1が外周面構成部23を板厚方向に貫通すると共に中間部22の板厚方向の中間部にまで到達し、かつ、第二レーザ溶接部W2が内周面構成部24を板厚方向に貫通すると共に中間部22の板厚方向の中間部にまで到達するようにしている(図4参照)。別言すると、第一レーザ溶接部W1は内周面構成部24には到達せずかつ第二レーザ溶接部W2は外周面構成部23には到達しないようにしている。このように、第一レーザ溶接部W1によって外周面構成部23と中間部22を強固に接合しかつ第二レーザ溶接部W2によって内周面構成部24と中間部22を強固に接合しつつ、第一レーザ溶接部W1と第二レーザ溶接部W2を共に中間部22にまで到達させているので、第一レーザ溶接部W1と第二レーザ溶接部W2によって中間部22、外周面構成部23、及び内周面構成部24が互いに強固に固定される。
しかもロール成形中に上記搬送装置によって直線状の長尺物を搬送しながら第一レーザ溶接部W1と第二レーザ溶接部W2を同時に施すので、弾性部材保持部21の溶接作業を(アーク溶接等と比べて)短時間かつ容易に行うことが可能である。
図5の変形例は第一レーザ溶接部W1を外周面構成部23及び中間部22に対して(全体として略直線状に延びるように)波状に施し、第二レーザ溶接部W2を内周面構成部24及び中間部22に対して(全体として略直線状に延びるように)波状に施した例である。この第一レーザ溶接部W1と第二レーザ溶接部W2は、第一レーザ光出射部LW1及び第二レーザ光出射部LW2をフロントサッシュ17及びアッパサッシュ18の幅方向(図5の上下方向)に首振りさせながらレーザ光を上記長尺部材の外周面構成部23と内周面構成部24に対して連続的に照射することにより得られる。この変形例の場合も上記実施形態(スピン溶接の場合)と同様の作用効果を発揮可能である。
なお上記実施形態、図5の変形例、及び図6の変形例において、第一レーザ溶接部W1及び第二レーザ溶接部W2を非連続の(所定間隔で連続性が途切れる)線状に形成してもよい。但し、このように非連続に形成する場合は第一レーザ溶接部W1及び第二レーザ溶接部W2のレーザ光の入射面(第一レーザ溶接部W1にとっての表面23a、第二レーザ溶接部W2にとっての表面24a)が波打つおそれが高いので、連続的に形成する方が好ましい。
なお図7、図8の変形例において、搬送装置による直線状長尺物の移送を一時停止させずに、搬送装置による直線状長尺物の移送速度と同期させながら第一レーザ光出射部LW1及び第二レーザ光出射部LW2を直線状長尺物と一緒に直線状長尺物と平行方向に移動させ、第一レーザ光出射部LW1及び第二レーザ光出射部LW2からレーザ光を断続的に照射してもよい。
図9は4枚の金属板30、31、32、33(30が「第一外側金属板」、31及び32が「中間金属板」、33が「第二外側金属板」)からなる積層体を第一レーザ溶接部W1と第二レーザ溶接部W2によって接合した例である。この例では、第一レーザ溶接部W1は金属板30の表面30a側から金属板30、31、32に及んでおり、第二レーザ溶接部W2は金属板33の表面33a側から金属板33、32、31に及んでいる。この例では第一レーザ溶接部W1及び第二レーザ溶接部W2が共に金属板31及び金属板32に及んでいるので、第一レーザ溶接部W1と第二レーザ溶接部W2によって金属板30、31、32、33を強固に固定できる。
図10は5枚の金属板40、41、42、43、44(40が「第一外側金属板」、41−43が「中間金属板」、44が「第二外側金属板」)からなる積層体を第一レーザ溶接部W1と第二レーザ溶接部W2によって接合した例である。この例では、第一レーザ溶接部W1は金属板40の表面40a側から金属板40、41、42に及んでおり、第二レーザ溶接部W2は金属板44の表面44a側から金属板44、43、42に及んでいる。この例では第一レーザ溶接部W1及び第二レーザ溶接部W2が共に金属板42に及んでいるので、第一レーザ溶接部W1と第二レーザ溶接部W2によって金属板40、41、42、43、44を強固に固定できる。
なお図9の変形例において、第一レーザ溶接部W1と第二レーザ溶接部W2が共に溶接される板材を一枚のみ(例えば金属板31のみ)としてもよい。同様に図10の変形例において、第一レーザ溶接部W1と第二レーザ溶接部W2が共に溶接される板材を複数(例えば金属板41と金属板42)としてもよい。
12 ドアパネル
14 ドアサッシュ
16 窓開口
17 フロントサッシュ
18 アッパサッシュ
19 筒状部
20 接続部
21 弾性部材保持部
22 中間部(中間金属板)
23 外周面構成部(第一外側金属板)
23a 表面
24 内周面構成部(第二外側金属板)
24a 表面
27 立柱サッシュ
30 金属板(第一外側金属板)
30a 表面
31 32 金属板(中間金属板)
33 金属板(第二外側金属板)
33a 表面
40 金属板(第一外側金属板)
40a 表面
41 42 43 金属板(中間金属板)
44 金属板(第二外側金属板)
44a 表面
G ドアガラス
LW1 第一レーザ光出射部
LW2 第二レーザ光出射部
GR ガラスラン
W1 第一レーザ溶接部
W2 第二レーザ溶接部
WS ウェザーストリップ
Claims (9)
- 第一外側金属板と、
第二外側金属板と、
上記第一外側金属板と上記第二外側金属板との間に位置し上記第一外側金属板及び上記第二外側金属板と積層体を構成する中間金属板と、
上記第一外側金属板の表面側から施した、上記中間金属板に到達しかつ上記第二外側金属板の表面には到達しない第一レーザ溶接部と、
上記第二外側金属板の表面側から施した、上記中間金属板に到達しかつ上記第一外側金属板の表面には到達しない第二レーザ溶接部と、
を備えることを特徴とする金属板積層体のレーザ溶接構造。 - 請求項1記載の金属板積層体のレーザ溶接構造において、
複数の上記中間金属板を有し、
上記第一レーザ溶接部及び上記第二レーザ溶接部が共通の上記中間金属板に到達している金属板積層体のレーザ溶接構造。 - 請求項1または2記載の金属板積層体のレーザ溶接構造において、
上記第一レーザ溶接部及び上記第二レーザ溶接部が、全体として線状に延びるスピン溶接である金属板積層体のレーザ溶接構造。 - 請求項1から3のいずれか1項記載の金属板積層体のレーザ溶接構造において、
上記第一外側金属板、上記第二外側金属板、及び上記中間金属板が、車両ドアのドアサッシュの一部を構成する金属板積層体のレーザ溶接構造を備えた車両用ドアサッシュ。 - 第一外側金属板と、
第二外側金属板と、
上記第一外側金属板と上記第二外側金属板との間に位置し上記第一外側金属板及び上記第二外側金属板と積層体を構成する中間金属板と、
を備える金属板積層体どうしをレーザ溶接する方法であって、
上記第一外側金属板の表面側から上記第二外側金属板側に向けて、上記中間金属板に到達しかつ上記第二外側金属板の表面には到達しない第一レーザ溶接部を施すステップ、及び
上記第二外側金属板の表面側から上記第一外側金属板側に向けて、上記中間金属板に到達しかつ上記第一外側金属板の表面には到達しない第二レーザ溶接部を施すステップ、
を有することを特徴とする金属板積層体のレーザ溶接方法。 - 請求項5記載の金属板積層体のレーザ溶接方法において、
複数の上記中間金属板を有し、
上記第一レーザ溶接部及び上記第二レーザ溶接部が共通の上記中間金属板に到達している金属板積層体のレーザ溶接方法。 - 請求項5または6記載の金属板積層体のレーザ溶接方法において、
上記第一レーザ溶接部及び上記第二レーザ溶接部が、全体として線状に延びるスピン溶接である金属板積層体のレーザ溶接方法。 - 請求項5から7のいずれか1項記載の金属板積層体のレーザ溶接方法において、
上記第一外側金属板、上記第二外側金属板、及び上記中間金属板が、車両ドアのドアサッシュの一部を構成する金属板積層体のレーザ溶接方法を用いた車両用ドアサッシュの製造方法。 - 請求項8記載の金属板積層体のレーザ溶接方法において、
上記ドアサッシュをロール成形により構成し、
上記第一レーザ溶接部及び上記第二レーザ溶接部を上記ロール成形中に行う金属板積層体のレーザ溶接方法を用いた車両用ドアサッシュの製造方法。
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