JP2015173034A - 非水電解質二次電池用の電極の製造方法および製造装置 - Google Patents

非水電解質二次電池用の電極の製造方法および製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】活物質層の剥離や崩落が生じ難い(高耐久な)電極を、短時間で製造すること。
【解決手段】かかる製造方法は、(1)活物質とバインダと溶媒とを含むペーストを調製すること;(2)上記ペーストを集電体の表面に塗布すること;(3)上記集電体上に塗布された上記ペーストから上記溶媒を乾燥除去すること;を包含する。上記溶媒の乾燥除去は、(i)材料予熱工程、(ii)定率乾燥工程、(iii)減率乾燥工程、を含む。そして、(iii)減率乾燥工程を行う際の雰囲気圧を、(i)材料予熱工程および(ii)定率乾燥工程を行う際の雰囲気圧よりも低く設定する。好適な一態様では、(iii)減率乾燥工程における乾燥速度を1.5mg/sec以上3mg/sec以下に調整する。
【選択図】図2

Description

本発明は、非水電解質二次電池に関する。詳しくは、該電池用の電極の製造方法およびその製造装置に関する。
リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池は、既存の電池に比べて軽量かつエネルギー密度が高いことから、車両搭載用の高出力電源やいわゆるポータブル電源等として好ましく利用されている。
一般に、非水電解質二次電池の電極は、集電体と該集電体上に形成された活物質層とを備えている。かかる電極は、通常、所定の液状媒体中に活物質とバインダとを含む原材料を分散させて活物質層形成用ペースト(スラリー、インクを包含する。以下同様。)を調製し、これを集電体の表面に塗布、乾燥することによって作製される。
上記乾燥工程では、集電体上のペースト(塗膜)を急激に乾燥させると活物質層の表面側にバインダが偏在(マイグレーション)する問題が知られている。すなわち、急激な乾燥によって溶媒が一気に蒸発すると、塗膜内に対流が生じる。これによって、活物質よりも粒子径が小さくかつ比重の軽いバインダが塗膜の表面近傍に移動し、かかる部位に偏在することがある。その結果、活物質層の剥離や崩落、あるいは電池特性(例えばサイクル特性)の低下といった不具合が生じ得る。
かかる問題に対処するための先行技術文献として、特許文献1〜5が挙げられる。例えば特許文献1には、上記乾燥工程の初期段階において30℃〜60℃程度の穏やかな温度環境下でゆっくりと(時間をかけて)乾燥させる技術が記載されている。
特開2013−101838号公報 特開2006−107780号公報 特開2004−071472号公報 特許第05325332号公報 特開2000−331675号公報
ところで近年、電極の製造においては生産性の向上が求められている。すなわち、マイグレーションを生じさせずに、従来よりも短時間でペーストを乾燥することが求められている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、活物質層の剥離や崩落が生じ難い(高耐久な)電極を、従来よりも短時間で製造する方法を提供することにある。関連する他の目的は、かかる電極を製造するための装置を提供することにある。
本発明者が検討を重ねた結果、マイグレーションは一連の乾燥工程の中の「定率乾燥工程」において発生することが判明した。このことについて以下に説明する。
図1は、一般的な乾燥工程における含溶媒率および塗膜温度の経時変化を表す模式図である。すなわち、湿り気を帯びた試料を定常状態にある乾燥炉内に配置して乾燥させる場合、図1に示すように、乾燥工程は大きく3つの段階に分けられる。段階(i)は、塗膜の表面が溶媒の蒸発温度(揮発温度)まで加熱される「材料予熱工程(材料予熱工程)」である。段階(ii)は、塗膜の表面から溶媒が蒸発(揮発)することで、塗膜中の含溶媒率がほぼ直線的に減少する「定率(恒率)乾燥工程」である。段階(iii)は、典型的には塗膜を構成する粒子間の細かい隙間から溶媒が穏やかに蒸発(換言すれば、塗膜中の含溶媒率が穏やかに変化)する「減率乾燥工程」である。
本発明者は、まず上記(i)〜(iii)のどの工程でマイグレーションが生じるのかを明らかにしようと試みた。具体的には、まず、活物質(黒鉛)とバインダ(スチレンブタジエンゴム(SBR))と増粘剤(カルボキシメチルセルロース(CMC))とを水系溶媒(イオン交換水)中に分散させてペーストを調製した。このペーストを銅箔(集電体)の表面に塗布して、該集電体上に塗膜を形成した。次に、上記塗膜付きの銅箔を、定常状態にある乾燥炉に投入して気密に密閉し、所定の乾燥条件(乾燥温度:150℃、雰囲気圧:−10Pa)で乾燥させた。そして、一連の乾燥工程における塗膜表面温度、電極重量、バインダ含有比率の推移を測定した。なお、電極表面温度の測定には放射温度計を使用した。また、電極重量の測定には天秤を使用した。また、バインダ含有比率の測定にはラマン分光法を用いた。ラマン分光法の測定方法については、後ほど詳述する。
図2は、その検討結果であり、(a)は塗膜の表面温度と電極重量の経時変化を、(b)はバインダ(SBR)含有比率の経時変化を、それぞれ表している。乾燥工程(i)〜(iii)は、図2の(a)の結果から判断した。これらの結果から、バインダ(SBR)の含有比率の変化は、(ii)定率乾燥工程の後半期で急激に生じることがわかった。すなわち、マイグレーションは一連の乾燥工程の中の(ii)定率乾燥工程において発生するという新たな知見を得た。
そこで、本発明者は、上記新たな知見に基づいて、マイグレーションが発生し難い(あるいはマイグレーションの発生に関係しない)工程の乾燥速度を上げることを考えた。そして、更なる鋭意検討を重ねた結果、本発明を創出するに至った。
本発明により、非水電解質二次電池用の電極の製造方法が提供される。かかる製造方法は、以下の工程:(1)活物質とバインダと溶媒とを含むペーストを調製すること;(2)上記ペーストを集電体の表面に塗布すること;(3)上記集電体上に塗布された上記ペーストから上記溶媒を乾燥除去すること;を包含する。上記溶媒の乾燥除去は、(i)材料予熱工程、(ii)定率乾燥工程、(iii)減率乾燥工程、を含んでいる。そして、(iii)減率乾燥工程を行う際の雰囲気圧を、(i)材料予熱工程および(ii)定率乾燥工程を行う際の雰囲気圧よりも低く設定する。換言すれば、(i)材料予熱工程および(ii)定率乾燥工程を行う際の雰囲気圧を、(iii)減率乾燥工程を行う際の雰囲気圧よりも高く設定する。
減率乾燥工程の雰囲気圧を低く設定することで、該工程の乾燥速度を速めることができる。このため、従来に比べて乾燥時間(減率乾燥工程の所要時間)を短縮することができ、生産性を向上することができる。また、本発明者の上記検討結果によれば、減率乾燥工程ではマイグレーションが発生し難い。このため、減率乾燥工程の乾燥速度を速めても、活物質層表面のバインダの偏在度合には影響が無い(影響が非常に小さい)。したがって、ここに開示される製造方法によれば、活物質層の剥離や崩落が生じ難い電極を従来に比べて短時間で製造することができる。その結果、該電極を用いた電池では高い耐久性(例えばサイクル特性)を実現することができる。
なお、本明細書において「雰囲気圧」とは、集電体上に形成されたペーストからなる塗膜の周辺の気圧をいう。ここでは、大気圧に対する相対圧、すなわち実際の圧力(絶対圧)から大気圧(凡そ0.1MPa)を差し引いた値を指すものとする。
ところで、マイグレーションの発生を抑制するためには、例えば(a)バインダの材料物性を調整すること、(b)ペーストの粘度を増加させること、(c)乾燥工程の乾燥温度を下げること、等も考えられる。しかしながら、(a)や(b)の場合は、電池特性を低下させる虞がある。また、(c)の場合は、生産性が低下する虞がある。
ここに開示される製造方法の好適な一態様では、上記減率乾燥工程における乾燥速度を1.5mg/sec以上3mg/sec以下に調整する。
乾燥速度を上記範囲内とすることで、バインダの偏在を増大させずに減率乾燥工程に要する時間を顕著に(例えば、従来に比べて20%程度)低減することができる。
なお、本明細書において「減率乾燥工程の乾燥速度」とは、該工程における溶媒の平均蒸発速度(mg/sec)をいう。具体的には、減率乾燥工程終了時の電極の重量W2(mg)から減率乾燥工程開始時の電極の重量W1(mg)を差し引いた値(W2−W1)を、減率乾燥工程の所要時間T(sec)で除した値((W2−W1)/T)を指すものとする。
ここに開示される製造方法の好適な一態様では、上記減率乾燥工程の雰囲気圧を−30Pa以上−20Pa以下に設定し、上記材料予熱工程および上記定率乾燥工程の雰囲気圧を−15Pa以上−5Pa以下に設定する。
各乾燥工程の雰囲気圧を上記範囲とすることで、例えば単位面積当たりのペーストの塗布量を比較的多くする、および/または、比較的厚めの塗膜(活物質層)を形成する場合であっても、乾燥を短時間で完了させることができる。また、圧力の負荷(減圧)を必要最小限に抑えることで、製造コストを抑えることもできる。
ここに開示される製造方法の好適な一態様では、上記材料予熱工程、上記定率乾燥工程および上記減率乾燥工程の乾燥温度を、いずれも140℃以上160℃以下に設定する。
乾燥工程全体に渡って乾燥温度を140℃以上に設定することで、例えば比較的沸点の高い溶媒(典型的には水系溶媒)を用いる場合であっても、乾燥時間を短縮することができる。また、乾燥工程全体に渡って乾燥温度を160℃以下に設定することで、集電体(金属箔)の表面に酸化被膜が形成されて電極の導電性が低下することを防止することができる。したがって、本発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
また、本発明の他の側面として、非水電解質二次電池用の電極を製造する装置が提供される。かかる製造装置は、集電体を搬送する搬送機構と;上記搬送機構によって搬送された上記集電体の表面に、活物質とバインダと溶媒とを含むスラリーを塗布する塗布装置と;上記搬送機構において上記塗布装置よりも下流側に配置され、上記集電体上に塗布された上記スラリーから上記溶媒を乾燥除去する乾燥炉と;を備えている。上記乾燥炉は、上流側から、材料予熱部、定率乾燥部および減率乾燥部に区分される。そして、上記減率乾燥部の雰囲気圧が、上記材料予熱部および上記定率乾燥部の雰囲気圧よりも低く設定されている。
かかる電極製造装置によれば、活物質層の剥離や崩落が生じ難い(高耐久な)電極を、短時間で効率よく製造することができる。
ここに開示される製造装置の好適な一態様では、上記減率乾燥部における乾燥速度が1.5mg/sec以上3mg/sec以下に調整されている。また、ここに開示される製造装置の他の好適な一態様では、上記減率乾燥部の雰囲気圧が−30Pa以上−20Pa以下に設定されており、上記材料予熱部および上記定率乾燥部の雰囲気圧が−15Pa以上−5Pa以下に設定されている。また、ここに開示される製造装置の他の好適な一態様では、上記材料予熱部、上記定率乾燥部および上記減率乾燥部の乾燥温度が、いずれも140℃以上160℃以下に設定されている。
塗膜中の含溶媒率および塗膜温度の経時変化を模式的に表すグラフである。 (a)は、一例に係る塗膜表面温度と電極重量の経時変化を表すグラフであり、(b)は、一例に係る電極内におけるバインダ(SBR)含有比率の経時変化を表すグラフである。 一実施形態に係る電極の製造装置を模式的に表す図である。 一実施形態に係る乾燥炉を模式的に表す図である。 一試験例に係る負極活物質層の断面観察画像である。 負極活物質層断面の集電体(bottom)からの距離と、バインダ(SBR)の濃度分布を表すグラフである。 各試験例のマイグレーション度を比較したグラフである。 乾燥炉内圧力を変化させた場合の、乾燥速度とマイグレーション度および導電率との関係を表すグラフである。 乾燥温度を変化させた場合の、乾燥速度とマイグレーション度および導電率との関係を表すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
≪電極の製造方法≫
ここに開示される非水電解質二次電池用の電極の製造方法は、大まかに言って、以下の3つの工程:(1)ペーストの調製;(2)ペーストの塗布;(3)溶媒の乾燥除去;を包含する。そして、(3)溶媒の乾燥除去は、(i)材料予熱工程、(ii)定率乾燥工程、(iii)減率乾燥工程の3つの工程を含み、(iii)減率乾燥工程を行う際の雰囲気圧を(i)材料予熱工程および(ii)定率乾燥工程を行う際の雰囲気圧よりも低く設定することによって特徴づけられる。したがって、その他の工程については特に限定されず、種々の基準に照らして任意に決定することができる。以下、各工程を順に説明する。
<1.ペーストの調製>
ペーストの調製では、活物質とバインダと溶媒とを混合してペーストを調製する。ペーストの調製には、例えば、ボールミル、ロールミル、ニーダ、ホモジナイザー等の従来公知の攪拌・混合装置を用いることができる。また、上記材料を混合する順序は特に限定されず、例えば一度に全ての材料を溶媒中に投入してもよく、何度かに分けて行ってもよい。例えば、溶媒中に活物質を添加して均質に分散させた後、この溶液にバインダを添加して分散させるとよい。
例えば負極活物質層形成用ペーストを調製する場合には、負極活物質とバインダと増粘剤とを適当な溶媒中で混合し、塗布に適した性状(例えば粘度)に調整するとよい。
負極活物質としては、平均粒子径が1μm〜50μm(例えば5μm〜10μm)程度の粒子状の炭素材料、例えば、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)等を好ましく用いることができる。バインダとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を好ましく用いることができる。増粘剤としては、重量平均分子量(Mw)が1万〜100万(例えば5万〜50万)の高分子化合物、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)やメチルセルロース(MC)等のセルロース系材料を好ましく用いることができる。溶媒としては、水系溶媒(例えば、イオン交換水)あるいは有機溶剤(例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP))のいずれも使用可能である。環境負荷の軽減や廃棄物減量等の観点からは、水系溶媒を好ましく用いることができる。また、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、ペーストには上記以外の成分(例えば各種添加剤)を適宜含有させることもできる。
あるいは、正極活物質層形成用ペーストを調製する場合には、正極活物質とバインダと導電材とを適当な溶媒中で混合し、塗布に適した性状(例えば粘度)に調整するとよい。
正極活物質としては、例えば、リチウムニッケル系酸化物、リチウムコバルト系酸化物、リチウムマンガン系酸化物、リチウム鉄系酸化物等の、リチウム元素と遷移金属元素とを含む層状構造またはスピネル構造の酸化物や、リン酸マンガンリチウム、リン酸鉄リチウム等の、リチウム元素と遷移金属元素とを含むオリビン構造のリン酸塩を好ましく用いることができる。バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)やポリエチレンオキサイド(PEO)等を好ましく用いることができる。導電材としては、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラックやケッチェンブラック)等の炭素材料を好ましく用いることができる。また、ペーストの調整に各種溶媒を使用し得ることや、ペースト中に各種添加剤を含有させ得ることは、上記負極活物質層形成用ペーストと同様である。
ペーストの固形分全体に占める活物質の割合は、エネルギー密度の観点から、凡そ50質量%以上とするとよく、通常は70質量%〜99質量%(例えば75質量%〜95質量%)とすることが好ましい。また、ペーストの固形分全体に占めるバインダの割合は、機械的強度や耐久性の観点から、凡そ0.1質量%〜30質量%とするとよく、通常は1質量%〜25質量%とすることが好ましい。また、増粘剤等の各種添加剤を含ませる場合、ペーストの固形分全体に占める添加剤の割合は、通常は5質量%以下(例えば0.1質量%〜3質量%)とすることが好ましい。
ペーストの固形分濃度は、ペーストの塗布を安定的に行う観点から、70質量%以下(典型的には60質量%以下、例えば55%質量以下)に調整するとよい。また、後の乾燥工程に要する時間を短縮する観点からは、30質量%以上(典型的には40質量%以上、例えば45質量%以上)に調整するとよい。
ペーストの粘度は、塗布性や取扱い性、作業容易性の観点から、例えば、液温:25℃において、E型粘度計を用いてロータ回転数1rpmで測定したときの値が、1000mPa・sec〜10000mPa・sec(例えば1000mPa・sec〜5000mPa・sec)程度となるよう調整するとよい。
<2.ペーストの塗布>
ペーストの塗布では、上記調製したペーストを集電体の表面に塗布する。これにより、集電体の表面に、活物質とバインダと溶媒とを含む塗膜が形成される。ペーストの塗布には、例えば、ダイコーター、スリットコーター、グラビアコーター、ディップコーター等の従来公知の塗布装置を用いることができる。また、集電体としては、導電性の良好な金属(例えば銅やアルミニウム)からなる導電性材料を好ましく用いることができる。
集電体の単位面積当たりのペーストの塗布量(目付量)は、2mg/cm〜40mg/cm(典型的には5mg/cm〜20mg/cm)程度とするとよい。また、ペーストの塗布厚みは、20μm以上(典型的には50μm以上)であって、例えば200μm以下(典型的には150μm以下)とするとよい。これにより、高エネルギー密度と高出力密度とを兼ね備えた電池を実現することができる。また、上記目付量が比較的多い、および/または、比較的厚めの塗膜(活物質層)は、乾燥に長い時間を要する。このため、本発明の適用がより効果を奏する。
<3.溶媒の乾燥除去>
溶媒の乾燥除去では、上記集電体上に塗布された上記ペースト(塗膜)から、溶媒を乾燥除去する。乾燥手段としては、圧力を調節する機能を備えるものであれば従来公知の乾燥装置を適宜用いることができる。典型例として真空乾燥装置が挙げられる。
一般に、塗膜の乾燥は(i)材料予熱工程、(ii)定率乾燥工程および(iii)減率乾燥工程の3つの工程を含む。ここに開示される製造方法では、上記減率乾燥工程の雰囲気圧を、上記材料予熱工程および上記定率乾燥工程の雰囲気圧よりも低く設定する。これにより、マイグレーションを増大させずに乾燥(具体的には減率乾燥工程)に要する時間を短縮することができる。なお、雰囲気圧の調整は、例えば圧力調節機能付きの乾燥炉に上記塗膜付きの集電体を投入して、炉内を気密に密閉し、工程ごとに炉内圧力を調節することで行うことができる。
(i)材料予熱工程
材料予熱工程は、(典型的には室温環境下にある)塗膜を、溶媒の蒸発温度まで加熱する工程である。ここに開示される製造方法では、本工程を行う際の雰囲気圧を、後述する(iii)減率乾燥工程を行う際の雰囲気圧よりも高く設定する。本工程の具体的な雰囲気圧は特に限定されないが、一般に、本工程の段階では塗膜中に多くの溶媒が含まれる。このため、雰囲気圧を極端に低く設定して乾燥速度を高めすぎると、生産性向上の背反として、塗膜の表面が一気に収縮して塗膜割れが発生することがある。かかる観点から、後述する乾燥温度によっても異なり得るが、本工程の雰囲気圧は、凡そ−30Pa以上に設定するとよい。また、生産性向上と生産コストを低減する観点からは、本工程の雰囲気圧を通常−20Pa以上(例えば−15Pa以上)であって、大気圧以下(例えば−5Pa以下)に設定するとよい。
本工程における乾燥温度は特に限定されないが、乾燥の初期段階、すなわち本工程から比較的高い温度に設定することが好ましい。具体的な設定温度は、例えば使用する溶媒の種類等によっても異なり得るため特に限定されないが、通常は50℃以上(典型的には80℃以上、例えば100℃以上)に設定するとよい。特に沸点の比較的高い溶媒(例えば水系溶媒)を使用する場合には、120℃以上(例えば140℃以上)に設定するとよい。これにより、本工程を短時間のうちに完了させることができ、生産性を高めることができる。乾燥温度の上限値は特に限定されないが、上記塗膜割れを防止する観点や生産コストを低減する観点から、通常は200℃以下(典型的には180℃以下、例えば160℃以下)に設定するとよい。
本工程の乾燥速度(溶媒の蒸発速度)は特に限定されないが、生産性向上や塗膜割れの発生を防止する観点から、通常は3mg/sec以上(好ましくは5mg/sec以上)であって、12mg/sec以下(好ましくは10mg/sec以下)に調整するとよい。これにより、例えば単位面積当たりのペーストの塗布量を比較的多くする、および/または、比較的厚めの塗膜(活物質層)を形成する場合であっても、本工程を15秒以内(例えば10秒〜15秒)で完了することができる。
なお、乾燥速度は、例えば雰囲気圧(乾燥炉内の圧力)や乾燥温度によって調整することができる。一般に、その他の条件が同等であれば、雰囲気圧が低いほど、および/または、乾燥温度が高いほど、乾燥速度が速まる傾向にある。例えば、雰囲気圧を制御することにより、乾燥速度を上記好適な範囲に調整することができる。
(ii)定率乾燥工程
定率乾燥工程は、塗膜の表面から溶媒が蒸発することで乾燥が進み、塗膜中の含溶媒率がほぼ直線的に減少する工程である。ここに開示される製造方法では、本工程を行う際の雰囲気圧を後述する(iii)減率乾燥工程を行う際の雰囲気圧よりも高く設定する。つまり、本発明者の検討から、本工程の後半期ではマイグレーションが発生し易いことが明らかとなっている。このため、かかる後半期の雰囲気圧を大きく低下させない(ここでは、(iii)減率乾燥工程の雰囲気圧よりも高めに設定する)ことで、乾燥速度を緩慢に(マイルドに)し、マイグレーションの発生を防止するものである。本工程の具体的な雰囲気圧は特に限定されないが、生産性向上とマイグレーション防止の観点から、通常は−20Pa以上(例えば−15Pa以上)であって、大気圧以下(例えば−5Pa以下)に設定するとよい。
なお、(i)材料予熱工程の雰囲気圧と本工程の雰囲気圧とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。好適な一態様では、本工程の雰囲気圧を、(i)材料予熱工程の雰囲気圧と概ね同等(例えば(i)材料予熱工程の雰囲気圧±1Pa)に設定する。これによって、良質な電極をより安定的に製造することができる。
本工程における乾燥温度は特に限定されないが、生産性向上とマイグレーション防止の観点から、通常は50℃以上(典型的には80℃以上、例えば100℃以上)であって、200℃以下(典型的には180℃以下、例えば160℃以下)に設定するとよい。また、(i)材料予熱工程の乾燥温度と本工程の乾燥温度とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。好適な一態様では、本工程の乾燥温度を、(i)材料予熱工程の乾燥温度と概ね同等(例えば(i)材料予熱工程の設定温度±1℃)に設定する。乾燥温度を一定に保つことによって、良質な電極(活物質層の剥離や崩落が生じ難い電極)をより安定的に製造することができる。
本工程の乾燥速度(溶媒の蒸発速度)は特に限定されないが、生産性向上とマイグレーション防止の観点から、0.5mg/sec以上(好ましくは1mg/sec以上)であって、5mg/sec以下(好ましくは3mg/sec以下)に調整するとよい。これにより、例えば単位面積当たりのペーストの塗布量を比較的多くする、および/または、比較的厚めの活物質層を形成する場合であっても、本工程を45秒以内(例えば40秒〜45秒)に完了することができる。
(iii)減率乾燥工程
減率乾燥工程は、典型的には塗膜を構成する粒子間の細かい隙間から溶媒が穏やかに蒸発し、塗膜中の含溶媒率の変化が緩慢になる工程である。ここに開示される製造方法では、本工程を行う際の雰囲気圧を、(i)材料予熱工程および(ii)定率乾燥工程を行う際の雰囲気圧よりも低く設定する。これにより、本工程に要する時間を短縮することができ、従来に比べて短時間で、活物質層の剥離や崩落が生じ難い(例えば剥離強度の高い)電極を製造することができる。
本工程の具体的な雰囲気圧は特に限定されないが、例えば目付量が比較的多い、および/または、比較的厚めの塗膜(活物質層)を形成する場合には、凡そ−10Pa以下、典型的には−15Pa以下、例えば−20Pa以下に設定するとよい。これにより、乾燥速度を効果的に高めることができ、本工程に要する時間を効果的に低減することができる。
また、生産コストを低減する観点からは、本工程の雰囲気圧を凡そ−50Pa以上、典型的には−40Pa以上、例えば−30Pa以上に設定するとよい。
本工程の乾燥温度は特に限定されないが、生産性向上の観点から、通常は50℃以上(典型的には80℃以上、例えば100℃以上)に設定するとよい。また、本工程では、乾燥に伴う塗膜の収縮はほぼ終了しているため、塗膜割れ等の性状変化に対する不具合が生じ難いが、その反面、塗膜中に溶媒を殆ど含まないことから、電極自身が高温になり易い傾向にある。したがって、乾燥温度を上げ過ぎると、生産性向上の背反として、集電体(金属箔)が焼き付き、該金属の表面に酸化被膜が形成されることによって電極の電子伝導性が低下することがある。かかる観点から、通常は200℃以下(典型的には180℃以下、例えば160℃以下)に設定するとよい。これにより、抵抗が低減された電極を短時間で安定的に製造することができる。なお、本工程の乾燥温度と、(i)材料予熱工程の乾燥温度、および/または、(ii)定率乾燥工程の乾燥温度とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。好適な一態様では、本工程の乾燥温度を(i)材料予熱工程および(ii)定率乾燥工程の乾燥温度と概ね同等(例えば(i)材料予熱工程および(ii)定率乾燥工程の設定温度±1℃)に設定する。なかでも、(i)材料予熱工程、(ii)定率乾燥工程および(iii)減率乾燥工程の乾燥温度を、いずれも140℃以上160℃以下(例えば150℃±5℃)に設定することが好ましい。乾燥工程全体に渡って乾燥温度を一定に保つことで、集電体表面の酸化を防止しつつ良質な電極を安定的に製造することができる。
本工程の乾燥速度(溶媒の蒸発速度)は特に限定されないが、生産性向上の観点から、通常は1mg/sec以上(典型的には1.5mg/sec以上、好ましくは2mg/sec以上)に調整するとよい。また、集電体表面の酸化を防止する観点等から、通常は5mg/sec以下(典型的には3mg/sec以下、好ましくは2.8mg/sec以下)に調整するとよい。乾燥速度を上記範囲内とすることで、導電性低下等の不具合を防止しつつ本工程に要する時間を顕著に(例えば、従来に比べて20%程度)低減することができる。これにより、例えば単位面積当たりのペーストの塗布量を比較的多くする、および/または、比較的厚めの塗膜(活物質層)を形成する場合であっても、本工程を70秒以内(例えば60秒〜70秒)に完了することができる。
このようにして、集電体上に活物質層を備える電極を製造することができる。かかる電極では、活物質層内にバインダが均質に含まれているため、機械的強度に優れ、活物質層の剥離や崩落が生じ難いことを特徴とする。したがって、高い耐久性(例えばサイクル特性)を要求され得る非水電解質二次電池に好ましく用いることができる。
≪電極の製造装置≫
また、ここに開示される技術によれば、電極を製造する装置が提供される。図3は、一実施形態に係る電極の製造装置100を模式的に表す図である。製造装置100は、非水電解質二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)の正極シートや負極シートを製造するために好適に用いることができる。図3に示す電極製造装置100は、大まかに言って、集電体を搬送する搬送機構12と、上記搬送機構によって搬送された集電体12aの表面に活物質とバインダと溶媒とを含む活物質層形成用ペースト40aを塗布する塗布装置40と、上記搬送機構において上記塗布装置よりも下流側に配置され、集電体12a上に塗布された活物質層形成用ペースト40aから溶媒を乾燥除去する乾燥炉50と、を備えている。
<搬送機構12>
搬送機構12は、集電体12aを走行させる経路である。この実施形態では、集電体12aを走行させる所定の経路に沿って、搬送機構12に複数のガイド12bが配置されている。なお、図示は省略するが、搬送機構12には、集電体12aに適当な張力が作用するように張力を調整する機構(例えば、ダンサローラ)が必要に応じて適宜に配置されている。また、搬送機構12は、集電体12aの幅方向の位置を調整する位置調整機構が必要に応じて適宜に配置されているとよい。位置調整機構には、例えばエッジ検知装置(エッジセンサー)と位置補正機構(ポジションコントローラ)とを組み合わせた、いわゆるEPC(edge position control)を好適に採用することができる。
<集電体供給部14>
この実施形態では、搬送機構12に集電体12aを供給するための集電体供給部14が該搬送機構の始端に配置されている。すなわち、集電体供給部14には、予め巻き芯14aに巻き取られた集電体12aが配置されており、適宜に適当な量の集電体12aが集電体供給部14から搬送機構12に供給されるようになっている。集電体12aとしては、上述のような導電性の良好な金属(例えば銅やアルミニウム)からなる箔状の導電性部材(金属箔)が好ましく用いられる。
<電極回収部16>
この実施形態ではまた、搬送機構12から集電体12aを回収するための電極回収部16が、該搬送機構の終端に配置されている。すなわち、電極回収部16は、搬送機構12の途中で所定の処理が施された集電体12aを巻き芯16aに巻き取る。電極回収部16は、例えば、制御部16bと、該制御部に設定されたプログラムに従って駆動するモータ16cと、を備えている。集電体12aは、モータ16cによって操作された巻き芯16aによって適宜巻き取られる。
<塗布装置40>
塗布装置40は、集電体12aの搬送機構12に配置されており、活物質層形成用ペースト40aを、集電体12a上に塗布する部位である。かかる塗布装置40は、例えばバックロール41と、塗布部42とを備えている。
バックロール41は、搬送機構12に沿って配置されており、集電体12aを支持するローラである。塗布部42は、活物質層形成用ペースト40aを吐出する吐出口を有する。塗布部42には、例えば、スリットコーター、グラビアコーター、ダイコーター、コンマコーター等を用いることができる。図3に示す形態では、塗布部42にダイコーターが採用されている。塗布部42は、所定の目付量や厚みで活物質層形成用ペースト40aを集電体12a上に塗布する。この実施形態では、搬送機構12に沿って集電体12aを走行させながら、バックロール41に支持された集電体12aに対して、連続して活物質層形成用ペースト40aを供給することができる。
<ペースト供給部20>
この実施形態では、塗布装置40に活物質層形成用ペースト40aを供給するためのペースト供給部20が、該塗布装置の上流側に配置されている。かかるペースト供給部20は、ペーストを貯留する貯留タンク22と、ポンプ24と、濾過部30とを備えている。
貯留タンク22は、濾過前のペーストを貯留する容器である。ここに示す形態では、縦長の円筒形状を有しており、ポンプ24と配管で接続されている。貯留タンク22の内壁は、貯留するペーストに対して耐腐食性に優れた材質であることが好ましい。このような材質としては、例えばステンレスが挙げられる。ポンプ24は、貯留タンク22から濾過部30(ひいては塗布装置40)にペーストを移送する移送機関である。貯留タンク22に貯留されたペーストは、ポンプ24によって該貯留タンクの排出口から一定の流速で吸い上げられ、濾過部30に送られる。濾過部30では、活物質層形成用ペースト中に含まれ得る凝集物(例えば活物質粒子の凝集物)や異物(例えば金属異物)をフィルタによって除去する。
<乾燥炉50>
乾燥炉50は、集電体12aの搬送機構12おいて塗布装置40よりも下流側に配置されており、活物質層形成用ペースト40aの塗布後に該ペーストからなる塗膜中の溶媒を乾燥除去する装置である。
図4は、一実施形態に係る乾燥炉50を模式的に表す図である。図4に示す実施形態では、向かって左手側(矢印の始端側)から複数のガイド12bに沿って塗膜付きの集電体12aが搬送されてくる。かかる乾燥炉50は、塗膜表面の温度を調整するための温度調節機構60と、乾燥炉内の圧力(雰囲気圧)を調整するための圧力調節機構62と、を備えている。温度調節機構60としては、例えば熱風乾燥炉(本実施形態)、赤外線乾燥炉等を使用することができる。熱風乾燥炉は、例えば適当な熱源(例えば加熱ヒータ)によって加熱されたガスを吹き付ける形態のものであり得る。吹き付けるガスの種類は特に制限されず、例えば空気であってもよいし、窒素ガスやヘリウムガスのような不活性ガスであってもよい。圧力調節機構62としては、例えば圧力調整弁62aとポンプ62bを組み合せて用いることができる。圧力調整弁62aとしては、例えばゲート弁、グローブ弁、バタフライ弁、ダイヤフラム弁、電動弁、電磁弁等を使用することができる。ポンプ62bとしては、例えば真空ポンプを用いることができる。
乾燥炉50は、上流側(矢印の始端側)から順に、材料予熱部52、定率乾燥部54、減率乾燥部56の3つの領域に区分され、各領域がそれぞれ半気密に保たれている。材料予熱部52は、典型的には室温環境下にある塗膜を溶媒の蒸発温度まで加熱する領域である。定率乾燥部54は、塗膜の表面から溶媒を蒸発させ、塗膜中の含溶媒率をほぼ直線的に減少させる領域である。減率乾燥部56は、典型的には塗膜を構成する粒子間の細かい隙間から穏やかに溶媒を蒸発させる領域である。
乾燥炉50を通過した集電体12aは、上述の電極回収部16において巻き芯16aに巻き取られ、非水電解質二次電池の製造に供される。
ここに開示される製造装置では、減率乾燥部56の雰囲気圧が、材料予熱部52および定率乾燥部54の雰囲気圧よりも低く設定されている。これにより、マイグレーションの発生を防止しつつ、減率乾燥時間を短縮することができる。つまり、減率乾燥部56の搬送距離を従来よりも短くすることができる。
材料予熱部52の雰囲気圧は、生産性向上と塗膜割れ防止の観点から、通常は−20Pa以上(例えば−15Pa以上)であって、大気圧以下(例えば−5Pa以下)に設定するとよい。定率乾燥部54の雰囲気圧は、生産性向上とマイグレーション防止の観点から、通常は−20Pa以上(例えば−15Pa以上)であって、大気圧以下(例えば−5Pa以下)に設定するとよい。なお、材料予熱部52と定率乾燥部54の雰囲気圧は、同じであってもよく、異なっていてもよい。好適な一態様では、材料予熱部52および定率乾燥部54の雰囲気圧を概ね同等に設定する。
減率乾燥部56の雰囲気圧は、材料予熱部52および定率乾燥部54の雰囲気圧よりも低くすること以外は特に限定されないが、乾燥速度を高める観点から、凡そ−10Pa以下、典型的には−15Pa以下、例えば−20Pa以下に設定するとよい。また、生産コストを低減する観点から、凡そ−50Pa以上、典型的には−40Pa以上、例えば−30Pa以上に設定するとよい。
乾燥炉50の乾燥温度は、材料予熱部52、定率乾燥部54および減率乾燥部56で同じであってもよく、異なっていてもよい。好適な一態様では、3つの領域で乾燥温度をほぼ一定(例えば設定温度±1℃)に保つ。これにより、良質な電極(活物質層の剥離や崩落が生じ難い電極)をより安定的に製造することができる。生産性を高める観点からは、乾燥温度を50℃以上(典型的には80℃以上、例えば100℃以上)に設定するとよい。特に沸点の比較的高い溶媒(例えば水系溶媒)を使用する場合には、120℃以上(例えば140℃以上)に設定するとよい。また、塗膜割れや集電体(金属箔)の酸化を防止する観点からは、200℃以下(典型的には180℃以下、例えば160℃以下)に設定するとよい。なかでも、材料予熱部52、定率乾燥部54および減率乾燥部56の乾燥温度を、いずれも140℃以上160℃以下(例えば150℃±5℃)に設定することが好ましい。
溶媒の蒸発速度(乾燥速度)は、上述の雰囲気圧(乾燥炉内の圧力)や乾燥温度によって調整することができる。一般に、他の条件が同等であれば、雰囲気圧が低いほど、および/または、乾燥温度が高いほど、乾燥速度が速まる傾向にある。
減率乾燥部56の乾燥速度は、減率乾燥を短時間で完了させる観点から、通常は1mg/sec以上(典型的には1.5mg/sec以上、好ましくは2mg/sec以上)に調整するとよい。また、集電体表面の酸化を防止する観点から、通常は5mg/sec以下(典型的には3mg/sec以下、好ましくは2.8mg/sec以下)に調整するとよい。
このように塗膜付きの集電体12aを乾燥雰囲気に曝すことによって、集電体12aの表面に塗布されたペースト(塗膜)から溶媒が蒸発(揮発)して取り除かれ、集電体12a上に活物質層を備えた電極を製造することができる。
≪非水電解質二次電池≫
上記のように作製した電極は、非水電解質二次電池の製造に用いることができる。すなわち、ここに開示される技術によれば、上記作製された正極および/または負極と、非水電解質とを電池ケース内に収容してなる非水電解質二次電池が提供される。
電池ケースとしては、例えばアルミニウム等の軽量な金属材料からなるものが好適に用いられる。非水電解質は、典型的には非水溶媒と支持塩とを含有する。非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非プロトン性溶媒が好適に用いられる。なかでも、カーボネート類、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等が好ましい。支持塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等を好適に用いることができ、なかでもLiPF、LiBF等のリチウム塩が好ましい。
ここに開示される非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)は、電極の耐久性(例えば活物質層の剥離強度)が従来品に比べて向上していることを特徴とする。例えば、充放電を繰り返しても容量低下の少ないものであり得る。したがって、かかる特徴を活かして、例えば車両の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えばプラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、電気トラック、原動機付自転車、電動アシスト自転車、電動車いす、電気鉄道等が挙げられる。なお、かかる非水電解質二次電池は、それらの複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態で使用されてもよい。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
≪I.乾燥工程の雰囲気圧の検討≫
ここでは、乾燥工程の雰囲気圧のみを変更して3種類の負極を作製し、乾燥に要した時間とマイグレーションの程度について評価した。
すなわち、まず負極活物質としての球状黒鉛(平均粒子径:8μm)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR、平均粒子径:100nm)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC、重量平均分子量:10万〜30万)と、溶媒としてのイオン交換水とを用意した。次に、球状黒鉛とCMCとイオン交換水とを、100:1:160の質量比率で秤量し、ホモジナイザーを用いて混練した。次に、球状黒鉛100質量部に対してSBRを30質量部添加して撹拌することにより、負極活物質層形成用ペーストを調製した(ペーストの調製)。
次に、上記調製したペーストを、負極集電体としての銅箔(厚み10μm)上に、アプリケーターを用いて100μmの厚みで塗布した(ペーストの塗布)。
次に、上記ペーストを塗布した集電体を、150℃の乾燥温度に設定した熱風乾燥炉に入れて、乾燥炉内の圧力を表1に示す値に設定して乾燥させた(溶媒の乾燥除去)。このときの各工程の所要時間を表1の該当欄に示す。
これによって、負極集電体の片側の表面に負極活物質層を備える負極(例1〜例3)を作製した。なお、例1は、全ての乾燥工程の炉内圧力を−10Pa(一定)としたものである。例2は、減率乾燥工程の炉内圧力を下げて、該減率乾燥工程の乾燥速度(乾燥能力)を上げたものである。例3は、全ての乾燥工程の炉内圧力を下げて、全乾燥工程の乾燥速度を上げたものである。
<負極活物質層断面のラマン分光法測定>
負極活物質層内のバインダ濃度の分布を確認するため、ラマン分光法を用いて例1〜例3の負極活物質層断面を観察した。具体的には、まず負極を包埋研磨して、負極活物質層の断面出しを行った。図5には、一試験例に係る負極活物質層の断面観察画像を表している。次に、図5中に黒塗りの菱形(◆)で示される5点について、顕微ラマン分光光度計を用いて負極活物質層の厚み方向のバインダ(SBR)の濃度分布を測定した。
一試験例に係る結果を、図6に示す。図6は、横軸に負極活物質層断面の集電体(図5中のbottom)からの距離をとり、縦軸にバインダ(SBR)の濃度分布を表している。ここでは、この5点を最小二乗法によって直線近似して、得られた近似式の傾きをマイグレーション度合いの指標(マイグレーション度)とした。結果を図7に示す。なお、マイグレーション度は、値が小さいほどマイグレーションが抑制され、活物質層内にバインダが均質に含まれていることを表している。
図7に示すように、例1と例2では、マイグレーション度が0.45以下(特には0.4以下)と相対的に小さく抑えられていた。例3は、例1および例2に比べてマイグレーション度が相対的に大きかった。この理由としては、例3では定率乾燥工程(および/または減率乾燥工程)の乾燥速度を速めたことで、負極活物質層の表層部分にバインダが偏在したことが考えられる。
また、表1の乾燥時間の欄に示すように、例2では例1に比べて減率乾燥工程の乾燥時間を凡そ2割も短縮することができた。
以上の通り、ここに開示される技術によれば、マイグレーション度を低く抑え、かつ乾燥時間を最小限に抑えられるとわかった。すなわち、活物質層の剥離や崩落が生じ難い電極を、従来に比べて短時間で製造することができるとわかった。かかる結果は、本発明の技術的意義を表すものである。
≪II.減率乾燥工程の乾燥速度の検討≫
ここでは、乾燥速度をコントロールする変動因子を異ならせて、特性を比較した。具体的には、乾燥炉内圧力または乾燥温度のいずれかを異ならせることで、減率乾燥工程の乾燥速度を異ならせた8種類の負極を作製し、マイグレーションの度合いと導電率について評価した。
すなわち、まず上記I.と同様にペーストの調製と塗布を行った。次に、減率乾燥工程の乾燥速度を、炉内圧力または乾燥温度の設定を変更することによって、1.5mg/sec〜3mg/secの4段階に調整したこと以外は上記例2と同様に、溶媒の乾燥除去を行った。これによって、負極集電体の片側の表面に負極活物質層を備える負極を作製した。作製した負極について、マイグレーション度と導電率を確認した。なお、マイグレーション度の測定方法は上記I.と同様である。また、導電率は、一般的な抵抗率計を用いて4端子法で測定した。具体的には、低抵抗率計(型式「ロレスタGP」、株式会社三菱化学アナリテック製)を用いて、10cm四方の負極サンプルの表面に端子を乗せ、4端子4探針法で抵抗を測定した。図8には炉内圧力により減率乾燥工程の乾燥速度を制御した場合の結果を、図9には炉内温度により減率乾燥工程の乾燥速度を制御した場合の結果を、それぞれ示す。
図8に示すように、この実施形態(例えば乾燥温度を150℃とする実施形態)では、減率乾燥工程における乾燥速度を1.5mg/sec〜3mg/sec(例えば1.5mg/sec〜2.8mg/sec)に調整することで、マイグレーション度を上げずに、かつ負極の抵抗を増大させずに、減率乾燥工程を短縮できることがわかった。
また、図9に示すように、乾燥温度の設定変更により乾燥速度を上げると、導電率が低下することがわかった。この理由としては、集電体(銅箔)の表面に酸化被膜が形成され、抵抗が増大したことが考えられる。したがって、乾燥速度をコントロール場合は、雰囲気圧(乾燥炉内の圧力)を調節することが好ましいことがわかった。
以上、本発明を詳細に説明したが、上記実施形態および実施例は例示にすぎず、ここに開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
12 搬送機構
12a 集電体(金属箔)
12b ガイド
14 集電体供給部
14a 巻き芯
16 電極回収部
16a 巻き芯
16b 制御部
16c モータ
20 ペースト供給部
22 貯留タンク
24 ポンプ
30 濾過部
40 塗布装置
40a 活物質層形成用ペースト
41 バックロール
42 塗布部(ダイコーター)
50 乾燥炉
52 材料予熱部
54 定率乾燥部
56 減率乾燥部
60 温度調節機構
62 圧力調節機構
62a 圧力調整弁
62b ポンプ
100 電極製造装置

Claims (8)

  1. 非水電解質二次電池用の電極を製造する方法であって、
    活物質とバインダと溶媒とを含むスラリーを調製すること;
    前記スラリーを集電体の表面に塗布すること;および、
    前記集電体上に塗布された前記スラリーから前記溶媒を乾燥除去すること;
    を包含し、
    前記溶媒の乾燥除去は、材料予熱工程、定率乾燥工程および減率乾燥工程を含み、
    前記減率乾燥工程を行う際の雰囲気圧を、前記材料予熱工程および前記定率乾燥工程を行う際の雰囲気圧よりも低く設定する、電極製造方法。
  2. 前記減率乾燥工程における乾燥速度を1.5mg/sec以上3mg/sec以下に調整する、請求項1に記載の電極製造方法。
  3. 前記減率乾燥の雰囲気圧を−30Pa以上−20Pa以下に設定し、
    前記材料予熱工程および前記定率乾燥工程の雰囲気圧を−15Pa以上−5Pa以下に設定する、請求項1または2に記載の電極製造方法。
  4. 前記材料予熱工程、前記定率乾燥工程および前記減率乾燥工程の乾燥温度を、いずれも140℃以上160℃以下に設定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電極製造方法。
  5. 非水電解質二次電池用の電極を製造する装置であって、
    集電体を搬送する搬送機構と、
    前記搬送機構によって搬送された前記集電体の表面に、活物質とバインダと溶媒とを含むスラリーを塗布する塗布装置と、
    前記搬送機構において前記塗布装置よりも下流側に配置され、前記集電体上に塗布された前記スラリーから前記溶媒を乾燥除去する乾燥炉と、を備え、
    前記乾燥炉は、上流側から、材料予熱部、定率乾燥部および減率乾燥部に区分され、
    前記減率乾燥部の雰囲気圧が、前記材料予熱部および前記定率乾燥部の雰囲気圧よりも低く設定されている、電極製造装置。
  6. 前記減率乾燥部における乾燥速度が1.5mg/sec以上3mg/sec以下に調整されている、請求項5に記載の電極製造装置。
  7. 前記減率乾燥部の雰囲気圧が−30Pa以上−20Pa以下に設定されており、
    前記材料予熱部および前記定率乾燥部の雰囲気圧が−15Pa以上−5Pa以下に設定されている、請求項5または6に記載の電極製造装置。
  8. 前記材料予熱部、前記定率乾燥部および前記減率乾燥部の乾燥温度が、いずれも140℃以上160℃以下に設定されている、請求項5から7のいずれか1項に記載の電極製造装置。
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