JP2015172229A - 段付き環状部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本実施形態による段付き環状部材1の製造方法は、環状の厚肉部2と、厚肉部2の端面上に厚肉部と同軸に配置され、厚肉部よりも肉厚が薄い環状の薄肉部3とを備えた段付き環状部材1に対して浸炭処理を実施する工程と、浸炭処理後の段付き環状部材1を、薄肉部側3から冷却液10に浸漬させ、薄肉部3及び厚肉部2の途中までが冷却液10に浸漬し、厚肉部2の残りの部分が冷却液10に浸漬していない状態で段付き環状部材1を所定時間保持して焼入れする第1焼入れ工程と、所定時間経過後、段付き環状部材1全体を冷却液10に浸漬して焼入れする第2焼入れ工程とを含む。
【選択図】図10B
Description
温度Tに保持した場合の組織Iにおける相変態開始後の時間τI、変態率ξIの関係は、次の式(1)〜式(3)で定義される。
組織Iの密度ρIは式(9)〜式(11)に基づいて計算できる。式中のI=γはオーステナイトを意味する。
相変態を考慮する場合、通常の熱弾塑性解析における弾性歪、塑性歪、熱歪の他に変態歪と変態塑性歪とを計算する必要がある。
図3は、Ac3点以上まで加熱した後、冷却時に一定の応力を負荷した場合の温度と歪との関係を示す図である。図3を参照して、変態の進行時に応力が負荷されている場合、非弾性の歪が発生する。この歪が変態塑性歪である。変態塑性歪は、偏差応力に比例して発生する。変態塑性歪増分dεTRは以下の式で計算される。
従来の段付き環状部材の浸炭焼入れ方法は次のとおりである。段付き環状部材に対して、浸炭処理を実施する。続いて、浸炭処理された段付き環状部材に対して、均熱処理を実施する。均熱処理温度は、浸炭処理温度よりも低い。均熱処理後、段付き環状部材を冷却液浴に一定速度で浸漬して段付き環状部材全体を冷却液中に浸漬する。これにより段付き環状部材を急冷する。冷却液はたとえば、水、油等である。
図9A及び図9Bを参照して、従来の浸炭焼入れでは、図9A及び図9Bのグラフ上部に記載された期間1〜期間5において、次の変形機構が現れる。
期間1では、段付き環状部材1(以下、単に部材という)の表層部分は、冷却液(油)との接触により温度が下がり、体積が減少する。一方、部材の内部は表層部分と比べると、あまり温度が変化しない。したがって、表層部分は、内部の拘束を受ける。そのため、表層部分には引張応力が発生し、内部には圧縮応力が発生する(図中のA)。温度が低下した部分(表層部分)は降伏応力が上昇する。そのため、温度があまり変化しておらず、降伏応力が低い内部において、塑性変形が生じ、圧縮塑性歪が発生する(図中のB)。
期間2では、内部においても温度が低下して体積の減少が生じる。上述のとおり、内部では圧縮塑性歪が生じて周長が減少している。そのため、先に冷却された表層部分に拘束されて、内部には引張応力が生じる(図中のC)。一方で、冷却速度の速い表層部分では圧縮応力が発生する。
期間3では、内部において相変態が生じる。図中において、ベイナイト変態開始点イ及びマルテンサイト変態開始点ロを示す。変態により、体積が膨張する。そのため、引張応力が減少する(図中のD)。相変態が開始した時点から変態塑性歪が発生する。このとき、内部には引張応力が負荷されている。そのため、引張方向に変態塑性歪が増加する(図中のE)。
期間4では、相変態がさらに進行する。相変態の進行に伴い、内部応力が負になる。つまり、圧縮応力に変わる(図中のF)。そのため、引張方向の変態塑性歪が減少し圧縮方向に変化する(図中のG)。
相変態の進行が停止する。このとき、変態塑性歪みはほとんど変化しない(図中のH)。そして、温度低下による熱収縮により、内部の引張応力が徐々に増加する。
そこで、本発明による段付き環状部材の製造方法では、浸炭焼入れ処理において、薄肉部3と厚肉部2との冷却工程を変更する。これにより、薄肉部3と厚肉部2との永久歪の差分を減少させ、テーパ形状の発生を抑制する。
図9Aで示したとおり、期間1において、表層部分と内部との冷却速度差によって発生した圧縮塑性歪により、厚肉部2内部の周長は減少する。そして、先に冷却され圧縮塑性歪があまり発生していない表層部分からの拘束を受け、ベイナイト発生直前において厚肉部2の内部では引張応力が発生する。
ベイナイト発生直前における薄肉部3の引張応力は、薄肉部3の表層部分と内部との冷却速度差によって発生した圧縮塑性歪によって発生する他、薄肉部3の内部と厚肉部2の内部との冷却速度差により、相対的に薄肉部の周長が短くなることによっても発生する。
図10A〜図10Cに示すとおり、図5の段付き環状部材(厚肉部2の高さ15mm、薄肉部3の高さ15mmの段付き環状部材)を薄肉部3側から冷却液に向かって50mm/sで冷却液に浸漬させた。そして、図10Bに示すとおり、厚肉部2の途中まで浸漬した位置で段付き環状部材1を停止し、保持した(第1焼入れ工程)。
図11は、各試験番号1〜7及び従来法(試験番号8)での内径差を示す図である。図11を参照して、本発明例である試験番号2〜7では、試験番号1及び試験番号8と比較して、内径差が小さかった。したがって、本発明の浸炭焼入れ処理により、段付き環状部材の内周面の寸法精度が向上した。
図12は、本発明例である試験番号3と、従来法である試験番号8とでの、焼入れ完了後の塑性歪と変態塑性歪との和の分布を示す図である。図12を参照して、本発明例では、塑性歪と変態塑性歪の和の薄肉部3における値が増加し、厚肉部2における値は減少した。その結果、本発明例では、焼入れ後の塑性歪と変態塑性歪の和が、従来法と比較して、被熱処理部材内で均一になった。そのため、薄肉部3と厚肉部2における周長変化量の差が減少し、内周面のテーパが低減された。
表面部分の硬さ分布及び有効硬化深さはほぼ一致していた。
表1に、最表面における硬さ(ビッカース硬さ、HV)を示す。
2 厚肉部
3 薄肉部
Claims (3)
- 環状の厚肉部と、前記厚肉部の端面上に前記厚肉部と同軸に配置され、前記厚肉部よりも肉厚が薄い環状の薄肉部とを備えた段付き環状部材に対して浸炭処理を実施する工程と、
浸炭処理後の前記段付き環状部材を、前記薄肉部側から冷却液に浸漬させ、前記薄肉部及び前記厚肉部の途中までが前記冷却液に浸漬し、前記厚肉部の残りの部分が前記冷却液に浸漬していない状態で前記段付き環状部材を所定時間保持して焼入れする第1焼入れ工程と、
前記所定時間経過後、前記段付き環状部材全体を前記冷却液に浸漬して焼入れする第2焼入れ工程とを含む、段付き環状部材の製造方法。 - 請求項1に記載の製造方法であって、
前記第1焼入れ工程では、前記厚肉部の高さ中央よりも前記薄肉部側の任意の位置まで前記冷却液に浸漬した状態で、前記段付き環状部材を保持する、製造方法。 - 請求項1又は請求項2に記載の製造方法であって、
前記段付き環状部材は機械構造用合金鋼鋼材からなる、製造方法。
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