JPH08104924A - 動力伝達部品の製造方法 - Google Patents
動力伝達部品の製造方法Info
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- JPH08104924A JPH08104924A JP26443294A JP26443294A JPH08104924A JP H08104924 A JPH08104924 A JP H08104924A JP 26443294 A JP26443294 A JP 26443294A JP 26443294 A JP26443294 A JP 26443294A JP H08104924 A JPH08104924 A JP H08104924A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 高強度な品質を確保しつつ、多様な寸法形状
の部品に対しても簡便で安定して動力伝達部品が得られ
る製造方法を提供する。 【構成】 機械構造用炭素鋼を所定形状に加工後、オー
ステナイト温度域に加熱し、浸炭性ガス雰囲気で所定時
間保持するとともに、前記所定時間保持終了時に前記オ
ーステナイト温度域から焼入れする。また、前記機械構
造用炭素鋼のC量が、0.25〜0.61重量%であ
る。さらに、前記加工される所定形状は、歯車形状でよ
い。この場合、焼入れは、金型で拘束して行う焼入れで
もよい。
の部品に対しても簡便で安定して動力伝達部品が得られ
る製造方法を提供する。 【構成】 機械構造用炭素鋼を所定形状に加工後、オー
ステナイト温度域に加熱し、浸炭性ガス雰囲気で所定時
間保持するとともに、前記所定時間保持終了時に前記オ
ーステナイト温度域から焼入れする。また、前記機械構
造用炭素鋼のC量が、0.25〜0.61重量%であ
る。さらに、前記加工される所定形状は、歯車形状でよ
い。この場合、焼入れは、金型で拘束して行う焼入れで
もよい。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、動力伝達部品の製造方
法に係り、特に高強度を要求される歯車等の動力伝達部
品に好適な製造方法に関する。
法に係り、特に高強度を要求される歯車等の動力伝達部
品に好適な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、曲げ強度、ねじり強度、耐面圧強
度など高い強度が要求される歯車等の動力伝達部品の製
造方法として、次のものが知られている。 (イ)肌焼鋼などC量の比較的少ない鋼材を、機械加工
等により所定形状に加工し、浸炭焼入れ処理を施してい
る。この浸炭処理焼入れは、加工物を高温な(一般的に
は900℃以上)浸炭炉に数時間〜数十時間保持するこ
とにより、加工物の表面近傍のC量を増大させた後、焼
入れを行い、表面部に高硬度な硬化層を形成する方法で
ある。この方法では、例えば歯車の場合、使用時には歯
元部表面に最大の曲げ応力が発生するが、この歯元表面
部が高硬度となっているので、歯元折損に対して有効で
ある。このように優れた品質が得られ、高強度が要求さ
れる動力伝達部品等、多方面で利用されている。
度など高い強度が要求される歯車等の動力伝達部品の製
造方法として、次のものが知られている。 (イ)肌焼鋼などC量の比較的少ない鋼材を、機械加工
等により所定形状に加工し、浸炭焼入れ処理を施してい
る。この浸炭処理焼入れは、加工物を高温な(一般的に
は900℃以上)浸炭炉に数時間〜数十時間保持するこ
とにより、加工物の表面近傍のC量を増大させた後、焼
入れを行い、表面部に高硬度な硬化層を形成する方法で
ある。この方法では、例えば歯車の場合、使用時には歯
元部表面に最大の曲げ応力が発生するが、この歯元表面
部が高硬度となっているので、歯元折損に対して有効で
ある。このように優れた品質が得られ、高強度が要求さ
れる動力伝達部品等、多方面で利用されている。
【0003】(ロ)C量0.55重量%の鋼を使用し
て、浸炭ガスとアンモニア分解ガス雰囲気にて、800
〜900℃で浸炭浸窒処理を行い、230〜300℃の
ソルトバスに焼き入れして所定時間保持し(オーステン
パ処理)、その後冷却している(例えば、特公昭61−
1500号公報参照)。これにより、短時間の熱処理サ
イクルで、高強度、耐面圧強度の高い歯車を得ている。 (ハ)Cr等の元素を添加すると共に、C量が0.1〜
0.4重量%の鋼を用い、歯車に成形加工後、所定範囲
内のカーボンポテンシャル雰囲気で浸炭処理を行って、
焼き入れを施し、その後歯車表面にショットピーニング
処理を行っている(例えば、特開平5−59432号公
報参照)。この方法では、焼き入れ後の歯車表面部に、
適正量の残留オーステナイトを生成させて、ショットピ
ーニングすることにより、大きな圧縮残留応力を得ると
共に、表面の硬度HVが700程度以上と高く、高い疲
労強度を得ている。
て、浸炭ガスとアンモニア分解ガス雰囲気にて、800
〜900℃で浸炭浸窒処理を行い、230〜300℃の
ソルトバスに焼き入れして所定時間保持し(オーステン
パ処理)、その後冷却している(例えば、特公昭61−
1500号公報参照)。これにより、短時間の熱処理サ
イクルで、高強度、耐面圧強度の高い歯車を得ている。 (ハ)Cr等の元素を添加すると共に、C量が0.1〜
0.4重量%の鋼を用い、歯車に成形加工後、所定範囲
内のカーボンポテンシャル雰囲気で浸炭処理を行って、
焼き入れを施し、その後歯車表面にショットピーニング
処理を行っている(例えば、特開平5−59432号公
報参照)。この方法では、焼き入れ後の歯車表面部に、
適正量の残留オーステナイトを生成させて、ショットピ
ーニングすることにより、大きな圧縮残留応力を得ると
共に、表面の硬度HVが700程度以上と高く、高い疲
労強度を得ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来技術には次のような問題点がある。上記(イ)におい
ては、浸炭処理は長時間を要し、製造コストが高いとい
う問題がある。また、浸炭の際、浸炭ガスに含まれる水
分や二酸化炭素により、加工物表面は浸炭されると同時
に酸化され、これにより粒界酸化層を生じる。この粒界
酸化層は、部品に負荷が加えられた場合、破壊起点にな
り易い問題がある。また、(ロ)では、オーステンパ処
理後、ベーナイトとマルテンサイトとの所定の混合組織
にする必要があるが、この組織は、オーステンパの温度
と時間、及び鋼の組成により影響され、種々の部品に対
して、目的とする組織を安定して得にくいという問題が
ある。さらに、(ハ)では、適正な残留オーステナイト
量を得るための浸炭処理条件が要求され、厳格な管理が
必要である。また、歯車等形状の異なる部品ごとにショ
ットピーニング条件を設定する必要があり、多くの工数
を必要とする問題がある。
来技術には次のような問題点がある。上記(イ)におい
ては、浸炭処理は長時間を要し、製造コストが高いとい
う問題がある。また、浸炭の際、浸炭ガスに含まれる水
分や二酸化炭素により、加工物表面は浸炭されると同時
に酸化され、これにより粒界酸化層を生じる。この粒界
酸化層は、部品に負荷が加えられた場合、破壊起点にな
り易い問題がある。また、(ロ)では、オーステンパ処
理後、ベーナイトとマルテンサイトとの所定の混合組織
にする必要があるが、この組織は、オーステンパの温度
と時間、及び鋼の組成により影響され、種々の部品に対
して、目的とする組織を安定して得にくいという問題が
ある。さらに、(ハ)では、適正な残留オーステナイト
量を得るための浸炭処理条件が要求され、厳格な管理が
必要である。また、歯車等形状の異なる部品ごとにショ
ットピーニング条件を設定する必要があり、多くの工数
を必要とする問題がある。
【0005】本発明は、上記従来技術の問題点に着目
し、高強度など高品質を確保しつつ、多様な寸法形状の
部品に対しても簡便で安定して動力伝達部品が得られる
製造方法を提供することを目的とする。
し、高強度など高品質を確保しつつ、多様な寸法形状の
部品に対しても簡便で安定して動力伝達部品が得られる
製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明に係る動力伝達部品の製造方法において、第
1発明は、機械構造用炭素鋼を所定形状に加工後、オー
ステナイト温度域に加熱し、浸炭性ガス雰囲気で所定時
間保持するとともに、前記所定時間保持終了時に前記オ
ーステナイト温度域から焼入れすることを特徴とする。
また、前記機械構造用炭素鋼のC量が、0.25〜0.
61重量%である。第2発明は、機械構造用炭素鋼を所
定の歯車形状に加工後、オーステナイト温度域に加熱
し、浸炭性ガス雰囲気で所定時間保持するとともに、前
記所定時間保持終了時に前記オーステナイト温度域から
焼入れすることを特徴とする。また、前記歯車は、内歯
歯車であるとともに、前記焼入れは、金型で拘束して行
う焼入れでもよい。
め、本発明に係る動力伝達部品の製造方法において、第
1発明は、機械構造用炭素鋼を所定形状に加工後、オー
ステナイト温度域に加熱し、浸炭性ガス雰囲気で所定時
間保持するとともに、前記所定時間保持終了時に前記オ
ーステナイト温度域から焼入れすることを特徴とする。
また、前記機械構造用炭素鋼のC量が、0.25〜0.
61重量%である。第2発明は、機械構造用炭素鋼を所
定の歯車形状に加工後、オーステナイト温度域に加熱
し、浸炭性ガス雰囲気で所定時間保持するとともに、前
記所定時間保持終了時に前記オーステナイト温度域から
焼入れすることを特徴とする。また、前記歯車は、内歯
歯車であるとともに、前記焼入れは、金型で拘束して行
う焼入れでもよい。
【0007】
【作用】上記構成による本発明の作用を説明する。ま
ず、第1発明において、機械加工などにより所定形状に
加工後、浸炭処理と焼入れを行うが、ここでの加熱温度
はオーステナイト温度域と同じである。したがって、浸
炭と焼入れのための加熱が、1工程で行われ、熱処理時
間を短縮して生産性の向上が得られるとともに、加熱炉
を小型化、低廉化できる。しかも、加熱温度が比較的低
温であり、その時間も短時間であるので、粒界酸化層の
形成が、抑制される。これにより、部品表面には硬化層
が形成され、動力伝達部品に要求される品質が確保され
る。また、機械構造用炭素鋼のC量を、従来の浸炭用肌
焼鋼より高くすることで、浸炭時間を短縮しても良好な
品質が得られる。
ず、第1発明において、機械加工などにより所定形状に
加工後、浸炭処理と焼入れを行うが、ここでの加熱温度
はオーステナイト温度域と同じである。したがって、浸
炭と焼入れのための加熱が、1工程で行われ、熱処理時
間を短縮して生産性の向上が得られるとともに、加熱炉
を小型化、低廉化できる。しかも、加熱温度が比較的低
温であり、その時間も短時間であるので、粒界酸化層の
形成が、抑制される。これにより、部品表面には硬化層
が形成され、動力伝達部品に要求される品質が確保され
る。また、機械構造用炭素鋼のC量を、従来の浸炭用肌
焼鋼より高くすることで、浸炭時間を短縮しても良好な
品質が得られる。
【0008】次に、第2発明においては、歯車を対象部
品とする場合であり、浸炭と焼入れのための加熱とが同
時に行われて、焼入れされるので、効率の良い熱処理に
より、歯車表面には均一に硬化層が形成される。これに
より、歯面表面は、外部負荷により生じる最大剪断応力
に耐え得るとともに、歯元部も硬化層を有し、歯元折損
が防止される。また、内歯歯車の焼入れの際、所謂プレ
スクエンチすることにより、焼入れ変形防止が良好に行
われ、特に、薄肉な内歯のリングギヤでは有効である。
品とする場合であり、浸炭と焼入れのための加熱とが同
時に行われて、焼入れされるので、効率の良い熱処理に
より、歯車表面には均一に硬化層が形成される。これに
より、歯面表面は、外部負荷により生じる最大剪断応力
に耐え得るとともに、歯元部も硬化層を有し、歯元折損
が防止される。また、内歯歯車の焼入れの際、所謂プレ
スクエンチすることにより、焼入れ変形防止が良好に行
われ、特に、薄肉な内歯のリングギヤでは有効である。
【0009】
【実施例】以下に、本発明に係る動力伝達部品の製造方
法の実施例につき、図面を参照しつつ詳述する。本発明
の一実施例となる製造工程概要を示す図1に基づいて説
明する。先ず使用した機械構造用炭素鋼の代表的な成分
(添加量:重量%)を、表1に示す。
法の実施例につき、図面を参照しつつ詳述する。本発明
の一実施例となる製造工程概要を示す図1に基づいて説
明する。先ず使用した機械構造用炭素鋼の代表的な成分
(添加量:重量%)を、表1に示す。
【0010】
【表1】
【0011】表1は、平均的C量が0.48%の中炭素
鋼であり、Ni等の合金元素がほとんど添加されていな
い低合金炭素鋼である。なお、本実施例では前記C量の
鋼を使用したが、本発明は、浸炭時間の短縮が図れる炭
素鋼、すなわち従来の浸炭用肌焼鋼のC量より高いレベ
ルの鋼であればよいので、C量を0.25%以上として
いる。また、C量が0.61%を越えると、焼入れ硬度
の大幅な向上は難しく、上限を0.61%としている。
したがって、本発明に使用される機械構造用炭素鋼のC
量は、0.25〜0.61%がよい。このC以外の合金
元素については、表1の添加量に限定するものではな
く、必要に応じて、添加量の増減或いは他の合金元素を
添加してよい。
鋼であり、Ni等の合金元素がほとんど添加されていな
い低合金炭素鋼である。なお、本実施例では前記C量の
鋼を使用したが、本発明は、浸炭時間の短縮が図れる炭
素鋼、すなわち従来の浸炭用肌焼鋼のC量より高いレベ
ルの鋼であればよいので、C量を0.25%以上として
いる。また、C量が0.61%を越えると、焼入れ硬度
の大幅な向上は難しく、上限を0.61%としている。
したがって、本発明に使用される機械構造用炭素鋼のC
量は、0.25〜0.61%がよい。このC以外の合金
元素については、表1の添加量に限定するものではな
く、必要に応じて、添加量の増減或いは他の合金元素を
添加してよい。
【0012】上記鋼材を用いて、機械加工などの加工を
行い、所定の動力伝達部品形状、例えば歯車形状に成形
する。なお、必要に応じて、この加工の前工程として、
硬度及び組織の調整、或いは残留応力除去を目的とす
る、焼鈍、焼準等の調質を行ってもよい。
行い、所定の動力伝達部品形状、例えば歯車形状に成形
する。なお、必要に応じて、この加工の前工程として、
硬度及び組織の調整、或いは残留応力除去を目的とす
る、焼鈍、焼準等の調質を行ってもよい。
【0013】所定形状に加工後、この加工品を加熱炉に
投入し、所定温度で加熱する。この加熱温度はオーステ
ナイト温度域でよいが、本実施例では、上記鋼材成分を
考慮して約850℃としてある。すなわち、この加熱温
度は、主として鋼材のC量により求められる適切な温度
である。例えば適切温度より高温に設定する場合、焼き
入れ時の歪みが大きくなるとともに、残留オーステナイ
トが増大して、焼入れ変態により生じる表面の圧縮残留
応力が低下し、場合によっては引張残留応力が生じて、
焼割れを生じやすくなる。一方、適切温度より低すぎる
場合、均一なオーステナイト組織が得にくくなり、焼入
れしてもマルテンサイト変態が起こらず、加工品表面に
は硬化層が形成されない。また、浸炭ガス雰囲気下で、
加工品表面へのC拡散を活発にして、表面をより短時間
で高C量とするためには、ある程度高い温度が望まし
い。以上より、本発明における加熱温度は、800℃以
上で、900℃未満が好ましい。
投入し、所定温度で加熱する。この加熱温度はオーステ
ナイト温度域でよいが、本実施例では、上記鋼材成分を
考慮して約850℃としてある。すなわち、この加熱温
度は、主として鋼材のC量により求められる適切な温度
である。例えば適切温度より高温に設定する場合、焼き
入れ時の歪みが大きくなるとともに、残留オーステナイ
トが増大して、焼入れ変態により生じる表面の圧縮残留
応力が低下し、場合によっては引張残留応力が生じて、
焼割れを生じやすくなる。一方、適切温度より低すぎる
場合、均一なオーステナイト組織が得にくくなり、焼入
れしてもマルテンサイト変態が起こらず、加工品表面に
は硬化層が形成されない。また、浸炭ガス雰囲気下で、
加工品表面へのC拡散を活発にして、表面をより短時間
で高C量とするためには、ある程度高い温度が望まし
い。以上より、本発明における加熱温度は、800℃以
上で、900℃未満が好ましい。
【0014】オーステナイト温度域となる約850℃に
保持しつつ、加熱炉にブタン系の浸炭性ガスを導入し
て、加工品表面に浸炭処理を施す。本実施例では、鋼材
のC量が高いレベルにあり、浸炭性ガスのカーボンポテ
ンシャルにより差はあるものの、短かい浸炭時間、例え
ば1、2時間で、表面C量を0.6%或いはそれ以上に
することが可能である。所定時間保持後、前記850℃
から油冷等により焼入れを行うことで、加工品表面には
硬化層が形成される。この焼入れの際、薄肉部を有する
加工品は変形を生じやすいので、例えば、内歯のリング
ギヤの場合、金型等により拘束した状態での焼入れ、所
謂プレスクエンチを行っても良い。これにより、焼き入
れ後の変形量が、大幅に低減される。これらの焼入れに
より動力伝達部品が得られるが、必要に応じて、焼戻し
処理、研磨等の後加工を行ってもよい。
保持しつつ、加熱炉にブタン系の浸炭性ガスを導入し
て、加工品表面に浸炭処理を施す。本実施例では、鋼材
のC量が高いレベルにあり、浸炭性ガスのカーボンポテ
ンシャルにより差はあるものの、短かい浸炭時間、例え
ば1、2時間で、表面C量を0.6%或いはそれ以上に
することが可能である。所定時間保持後、前記850℃
から油冷等により焼入れを行うことで、加工品表面には
硬化層が形成される。この焼入れの際、薄肉部を有する
加工品は変形を生じやすいので、例えば、内歯のリング
ギヤの場合、金型等により拘束した状態での焼入れ、所
謂プレスクエンチを行っても良い。これにより、焼き入
れ後の変形量が、大幅に低減される。これらの焼入れに
より動力伝達部品が得られるが、必要に応じて、焼戻し
処理、研磨等の後加工を行ってもよい。
【0015】次に、上記実施例により得られる動力伝達
部品の品質について説明する。動力伝達部品の一例とな
る内歯のリングギヤは、表1に示す組成の中炭素鋼を使
用し、機械加工後に加熱炉にて850℃で1H浸炭を行
い、この850℃からオイルバス中にプレスクエンチし
て、表面に硬化層を形成したものである。このリングギ
ヤ10の断面硬度分布測定箇所を、図2に示す。ピッチ
円部10aの硬度分布測定方向L1 は、ピッチ円接線に
対して直角方向であり、歯元部10bの硬度分布測定方
向L1 は、歯の中心線と30°をなす直線が歯底近傍で
接する位置において、この直線に対して直角方向(30
°接線法)である。これらピッチ円部10a及び歯元部
10bのマイクロビッカース硬度mHVによる硬度分布
を、図3及び図4に示す。これらの図から明らかなよう
に、ピッチ円部10a、歯元部10bは、共に表面硬度
が上昇しており、良好な硬化層を形成している。このこ
とから、短時間浸炭でも表面のC量が上昇していること
が分かる。
部品の品質について説明する。動力伝達部品の一例とな
る内歯のリングギヤは、表1に示す組成の中炭素鋼を使
用し、機械加工後に加熱炉にて850℃で1H浸炭を行
い、この850℃からオイルバス中にプレスクエンチし
て、表面に硬化層を形成したものである。このリングギ
ヤ10の断面硬度分布測定箇所を、図2に示す。ピッチ
円部10aの硬度分布測定方向L1 は、ピッチ円接線に
対して直角方向であり、歯元部10bの硬度分布測定方
向L1 は、歯の中心線と30°をなす直線が歯底近傍で
接する位置において、この直線に対して直角方向(30
°接線法)である。これらピッチ円部10a及び歯元部
10bのマイクロビッカース硬度mHVによる硬度分布
を、図3及び図4に示す。これらの図から明らかなよう
に、ピッチ円部10a、歯元部10bは、共に表面硬度
が上昇しており、良好な硬化層を形成している。このこ
とから、短時間浸炭でも表面のC量が上昇していること
が分かる。
【0016】また、リングギヤ10のピッチ円部10a
及び歯元部10bにおける残留応力分布を、図5に示
す。この測定は、上記硬度分布測定と同様な測定方向で
ある。図から分かるように、ピッチ円部10a、歯元部
10bいずれも、表面から0.1mm程度まで高い圧縮
残留応力が発生している。これは、本実施例の中炭素鋼
の焼入れ性が低いためであり、リングギヤ10の表面部
と内部とで硬度差を生じることに起因する。すなわち、
焼入れ性が低い鋼材では、焼き入れ時に、表面部はマル
テンサイト変態により体積膨張するのに対して、内部は
マルテンサイト変態を生じない、又は変態量が少ない。
このために、表面部の膨張が相対的に大きくなり、表面
部に圧縮残留応力を生成させる。以上のように、リング
ギヤ10の歯元には、高い圧縮残留応力が発生し、この
圧縮応力が外部負荷による曲げ応力への抵抗力となる。
したがって、歯元に生じる引張応力が小さくなるので、
曲げ折損等に対して有効である。なお、焼入れ性が高い
鋼材の場合、表面部及びその近傍を含む広い領域で、マ
ルテンサイト変態して膨張するので、表面部には高い圧
縮残留応力が生成しにくい。この場合、特に小歯車等小
物部品では、焼入れにより歯部全体が硬化、所謂スルー
ハードとなり易く、表面部に圧縮残留応力生成を期待す
るのは難しい。
及び歯元部10bにおける残留応力分布を、図5に示
す。この測定は、上記硬度分布測定と同様な測定方向で
ある。図から分かるように、ピッチ円部10a、歯元部
10bいずれも、表面から0.1mm程度まで高い圧縮
残留応力が発生している。これは、本実施例の中炭素鋼
の焼入れ性が低いためであり、リングギヤ10の表面部
と内部とで硬度差を生じることに起因する。すなわち、
焼入れ性が低い鋼材では、焼き入れ時に、表面部はマル
テンサイト変態により体積膨張するのに対して、内部は
マルテンサイト変態を生じない、又は変態量が少ない。
このために、表面部の膨張が相対的に大きくなり、表面
部に圧縮残留応力を生成させる。以上のように、リング
ギヤ10の歯元には、高い圧縮残留応力が発生し、この
圧縮応力が外部負荷による曲げ応力への抵抗力となる。
したがって、歯元に生じる引張応力が小さくなるので、
曲げ折損等に対して有効である。なお、焼入れ性が高い
鋼材の場合、表面部及びその近傍を含む広い領域で、マ
ルテンサイト変態して膨張するので、表面部には高い圧
縮残留応力が生成しにくい。この場合、特に小歯車等小
物部品では、焼入れにより歯部全体が硬化、所謂スルー
ハードとなり易く、表面部に圧縮残留応力生成を期待す
るのは難しい。
【0017】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成され
ているので、以下に記載されるような効果を奏する。浸
炭処理と焼入れのための加熱を、オーステナイト温度域
で同時に行うことにより、1工程の作業となり、熱処理
時間が短縮されて生産性が向上するとともに、加熱炉を
小型化、低廉化できる。しかも、鋼材のC量を、従来の
浸炭用肌焼鋼より高くすることで、より浸炭時間が短縮
可能となる。また焼入れにより、部品表面には均一に硬
化層が形成されるとともに、高い圧縮残留応力が発生
し、高強度な動力伝達部品が得られる。これらの品質
は、中炭素系機械構造用鋼の使用と上述熱処理により得
られるので、部品の寸法形状が多種多様であっても、容
易に適用できて簡便な製造方法である。
ているので、以下に記載されるような効果を奏する。浸
炭処理と焼入れのための加熱を、オーステナイト温度域
で同時に行うことにより、1工程の作業となり、熱処理
時間が短縮されて生産性が向上するとともに、加熱炉を
小型化、低廉化できる。しかも、鋼材のC量を、従来の
浸炭用肌焼鋼より高くすることで、より浸炭時間が短縮
可能となる。また焼入れにより、部品表面には均一に硬
化層が形成されるとともに、高い圧縮残留応力が発生
し、高強度な動力伝達部品が得られる。これらの品質
は、中炭素系機械構造用鋼の使用と上述熱処理により得
られるので、部品の寸法形状が多種多様であっても、容
易に適用できて簡便な製造方法である。
【図1】本発明に係る一実施例と従来例との製造工程概
要を示す図である。
要を示す図である。
【図2】本発明に係る動力伝達部品の一例である内歯の
リングギヤ要部断面の硬度分布測定を説明する図であ
る。
リングギヤ要部断面の硬度分布測定を説明する図であ
る。
【図3】本発明に係るリングギヤのピッチ円部の断面硬
度分布を示す図表である。
度分布を示す図表である。
【図4】本発明に係るリングギヤの歯元部の断面硬度分
布を示す図表である。
布を示す図表である。
【図5】本発明に係るリングギヤのピッチ円部と歯元部
の残留応力分布を示す図表である。
の残留応力分布を示す図表である。
10 リングギヤ、10a ピッチ円、10b 歯元。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 澤田 泰徳 大阪府枚方市上野3−1−1 株式会社小 松製作所大阪工場内
Claims (4)
- 【請求項1】 機械構造用炭素鋼を所定形状に加工後、
オーステナイト温度域に加熱し、浸炭性ガス雰囲気で所
定時間保持するとともに、前記所定時間保持終了時に前
記オーステナイト温度域から焼入れすることを特徴とす
る動力伝達部品の製造方法。 - 【請求項2】 前記機械構造用炭素鋼のC量が、0.2
5〜0.61重量%であることを特徴とする請求項1記
載の動力伝達部品の製造方法。 - 【請求項3】 機械構造用炭素鋼を所定の歯車形状に加
工後、オーステナイト温度域に加熱し、浸炭性ガス雰囲
気で所定時間保持するとともに、前記所定時間保持終了
時に前記オーステナイト温度域から焼入れすることを特
徴とする動力伝達部品の製造方法。 - 【請求項4】 前記歯車は、内歯歯車であるとともに、
前記焼入れは、金型で拘束して行う焼入れであることを
特徴とする請求項3記載の動力伝達部品の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26443294A JPH08104924A (ja) | 1994-10-05 | 1994-10-05 | 動力伝達部品の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26443294A JPH08104924A (ja) | 1994-10-05 | 1994-10-05 | 動力伝達部品の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08104924A true JPH08104924A (ja) | 1996-04-23 |
Family
ID=17403110
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP26443294A Pending JPH08104924A (ja) | 1994-10-05 | 1994-10-05 | 動力伝達部品の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH08104924A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7422643B2 (en) | 2003-03-11 | 2008-09-09 | Komatsu Ltd. | Rolling element and method of producing the same |
US7544255B2 (en) | 2003-03-04 | 2009-06-09 | Komatsu Ltd. | Rolling element |
-
1994
- 1994-10-05 JP JP26443294A patent/JPH08104924A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7544255B2 (en) | 2003-03-04 | 2009-06-09 | Komatsu Ltd. | Rolling element |
US7691212B2 (en) | 2003-03-04 | 2010-04-06 | Komatsu Ltd. | Rolling element and method of producing the same |
US7422643B2 (en) | 2003-03-11 | 2008-09-09 | Komatsu Ltd. | Rolling element and method of producing the same |
US7691213B2 (en) | 2003-03-11 | 2010-04-06 | Komatsu Ltd. | Case hardened gear and method of producing the same |
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