JP2015171653A - 椅子及びその座部 - Google Patents

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Abstract

【課題】座の前部を下向きに巻き込み変形させるタイプの椅子において、支持強度と座り心地とを確保する。
【手段】座インナーシェル7の前部は多数のフロントスリット28を有する変形許容部7cになっている。固定アウターシェル9とスライドアウターシェル10とに分離構成されている。スライドアウターシェル10は板状の基部10aと左右のアーム部10bとから成っており、固定アウターシェル9に抜け不能で前後スライド自在に連結されている。座インナーシェル7のうち人の体圧の大部分を支えるメイン支持部7aは固定アウターシェル9のサイド支持部38で支えられており、スライドアウターシェル10のアーム部10aが座インナーシェル7で強く押されることはない。このため、人は着座したままでスライドアウターシェル10を軽快に前後スライドさせることができる。
【選択図】図6

Description

本願発明は、椅子及びこれを構成する座部に関するものである。
椅子において、座の前後長さ(前端の奥行き)を調節する技術として、例えば特許文献1〜3に開示されているように、座の前部を下側に巻き込む方式が提案されている。これらの従来技術では、座の前部を変形許容部と成して、変形許容部の前端を左右横長のフロントバーに固定し、フロントバーを前後動させることで変形許容部を巻き込んだり伸ばしたりしている。フロントバーの左右両端部には後ろ向きに延びるサイドバーが固定されており、サイドバーは受け部材で前後スライド自在に支持されている。
特公平07 −77567号公報 実用新案登録第3076862号公報 特表2010−516433号公報
座の前後長さを調節する操作方法としては、人が手で座の前端部に掴んで前後に押し引きしたり、或いは、別に設けた操作具でサイドバーを前後動させたりすることになるが、人が着座した状態では人の体圧がサイドバーに掛かることにより、着座した状態のままで前後長さを調節しにくくなり、そこで、座の前後長さを変えるに当たっては腰を浮かせた状態にせねばならないことがあり、このため座の前後長さの調節(奥行き調節)が面倒であるという問題があった。
また、座は着座した人の身体を支えるものであるから、その全体にわたって高い支持強度を有すべきであるが、従来は、変形許容部はその前端がフロントバーで支持されているに過ぎないため、身体の支持強度や支持安定性が必ずしも十分でないと言える。更に、着座した状態で大腿部を座の前端部に強く突っ張らせることがあるが、従来のように座の前端(変形許容部の前端)をフンロトバーに固定した構造では、フンロトバーで大腿部を突き上げる現象が生じて座り心地が悪くなるおそれもあった。
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、座の前後長さ(前端の奥行き)を調節できる座部において、支持強度や座り心地、前後長さ調節の容易性等を図ることを目的とするものである。
本願発明は座部と椅子とを含んでおり、座部は、クッションを張った座インナーシェルと、前記座インナーシェルを下から支持する座アウターシェルとを有しており、前記座インナーシェルの前部を下向きに巻き込み可能な変形許容部と成すことで前後長さを調節可能である、という基本構成になっている。
そして、請求項1の発明では、上記基本構成の下、前記座アウターシェルは、当該固定アウターシェルの少なくとも後ろ側半分を構成する固定アウターシェルと、前記固定アウターシェルの手前に突出した部分を有するスライドアウターシェルとで構成されており、前記スライドアウターシェルは前記固定アウターシェルに前後動自在に取り付けられてお
り、前記スライドアウターシェルの前端部に前記座インナーシェルの前端部を連結することにより、前記座インナーシェルの前部が下向きに巻き込まれることを可能ならしめている。
更に、前記スライドアウターシェルは、前記座インナーシェルを広い範囲にわたって支持し得るように面的な広がりを持っており、着座者の体圧が主として前記固定アウターシェルで支持した状態で、前記座インナーシェルの下向き押圧力が前記スライドアウターシェルに殆どかからないように設定している。
請求項2の発明は請求項1を具体化したもので、この発明では、前記スライドアウターシェルは、前記固定アウターシェルと同じ程度の左右横幅の基部と、前記基部の左右両側部から後ろ向きに突出したアーム部とを有しており、前記基部とアーム部とは前記固定アウターシェルに上から重なっており、前記基部は、第1ガイド手段により、前記固定アウターシェルに上向き抜け不能で前後スライド自在に連結されている一方、前記アーム部は、第2ガイド手段により、前記固定アウターシェルに上向き抜け不能で前後スライド自在に連結されている。
請求項3の発明は請求項1又は2を具体化したもので、前記固定アウターシェルは上向き凹状に形成されている一方、前記座インナーシェルは合成樹脂製であって前記変形許容部の後ろ側の部位は着座者の体圧で下向きに伸び変形可能であり、前記座インナーシェルを正面視で前記固定アウターシェルの左右サイド支持部に両端支持状態に取り付けることにより、座インナーシェルが着座者の体圧で下向きに沈み込み変形することが許容されており、かつ、前記スライドアウターシェルのアーム部を前記固定アウターシェルの左右サイド支持部の外側に配置することにより、着座者の体圧が前記座インナーシェルを介してスライドアウターシェルのアーム部にかかることを防止又は抑制している。
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれかにおいて、座インナーシェルの変形許容部には左右横長のスリットが前後多列に形成されており、前記スリットを挟んで前後に分かれた部分を側面視凸形のブリッジ部で連結することにより、前記変形許容部を前後方向に大きく伸ばし変形させることが許容されている。本願発明は椅子も含んでおり、この椅子は、請求項1〜4のうちのいずれかに記載した座部を有する椅子も有する。
本願発明では、スライドアウターを前後動させることで座の前後長さが変わるが、固定アウターシェルは少なくとも後ろ半分を構成しているため、例えば背中を背もたれに当てた通常の着座状態で、着座した人の体圧の大部分を固定アウターシェルで支持できる。そして、着座者の体圧を主として前記固定アウターシェルで支持した状態で座インナーシェルでスライドアウターシェルが上から押圧されることはないため、人が普通に腰掛けた状態ではスライドアウターシェルに荷重が作用することは全く又は殆どなく、その結果、着座した状態のままで座の前後長さを調節することができる。このため、操作性に優れていてユーザーフレンドリーである。
また、本願発明では、スライドアウターシェルは面的な広がりを持っているため、着座者の体圧が座の前部に作用しても、座インナーシェルは過度に変形することなくスライドアウターシェルでしっかりと支持される。このため、支持強度に優れている。また、座インナーシェルが着座した人の体圧で沈み込んでスライドアウターシェルに当たった場合、座インナーシェルはスライドアウターシェルによって広い面積で支持されるため、座インナーシェルが局部的に大きく変形して人の大腿部に突き上げ感を与えるような不具合はなく、このため座り心地に優れている。つまり、強度や座り心地を犠牲にすることなく座の前後長さを調節できる。
スライドアウターシェルを固定アウターシェルにスライド自在に取り付ける構造は種々採用できるが、請求項2の構成を採用すると、基部とアーム部とが固定アウターシェルに連結されているため、連結強度を向上させて固定アウターシェルとスライドアウターシェルとの一体性を向上できる。また、ガイド手段の数が多いため、こじれを無くしてスライドアウターシェルの動きを円滑化できる利点もある。
請求項3の構成を採用すると、座インナーシェルが着座者の体圧で沈むように変形するため、クッション性・フィット性に優れている。また、座インナーシェルのうちサイド支持部の外側に位置した部位は人が着座することで浮き勝手になるが、請求項3では、スライドアウターシェルのアーム部は固定アウターシェルのサイド支持部の外側に配置されているため、スライドアウターシェルのアーム部が座インナーシェルで押圧されることを的確に防止できる。その結果、スライドアウターシェルの前後移動(座の前後長さの調節)の操作性を的確に向上させることができる。
請求項4の構成を採用すると、座インナーシェルの変形許容部は前後方向に伸び変形するため、当該変形許容部を折り返すように変形させることを軽い力で容易に実現できる。つまり、スライドアウターシェルを後退させて変形許容部を曲げ変形させるにおいて、曲がりの曲率を大きくした状態で折り返す(巻き込む)ことができるため、折り返し(巻き込み)に対する抵抗が小さく、このため座の長さ調節を軽い力で行えるのである。
実施形態に係る椅子を示しており、(A)は前方から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図、(C)は分離側面図である。 座及びその支持機構を上から見た分離斜視図である。 座と中間金具とを下方から見た分離斜視図である。 (A)は座を裏返した状態での分離斜視図、(B)は座アウターシェルと中間金具との分離斜視図、(C)は座アウターシェルの部分拡大斜視図である。 座の分離斜視図である。 座の分離斜視図である。 (A)は要部の平面図、(B)は(A)の一部を側方から見た断面斜視図である。 (A)は図7(A)の VIIIA-VIIIA視断面図、(B)は図7(A)をB−B視方向から見た断面斜視図、(C)は図7(A)をC−C視方向から見た断面斜視図である。 (A)は図7(A)の IXA-IXA視断面図、(B)は図7(A)の IXB-IXB視断面図である。 (A)は図7(A)をXA−XA視方向から見た断面斜視図、(A)は図7(A)をXB−XB視方向から見た断面斜視図、(C)は図7(A)をXC−XC視方向から見た断面斜視図である。 (A)は座調節用操作レバーが装着されている部分を上から見た斜視図、(B)は座調節用操作レバーと座アウターシェルとの分離斜視図である。 (A)は座調節用操作レバーとスライドアウターシェルとの分離斜視図、(B)は座調節用操作レバーの分離斜視図、(C)は座調節用操作レバーが装着されている部分を上から見た斜視図である。
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用するが、この前後左右の文言は着座した人を基準にしている。正面視方向は着座した人と対峙した方向であり、従って、正面視での左右と着座
した人から見た左右とは逆になる。
(1).椅子の概略
まず、椅子を概要を主として図1〜図3に基づいて説明する。本実施形態は事務用等に多用されている回転椅子に適用しており、椅子は、脚支柱1(図1(C)参照)のみを表示している脚装置と、脚支柱1の上端に固定したベース2と、ベース2の上に配置した座3と、着座した人がもたれ掛かり得る背もたれ4とを有している。ベース2は上向きに開口した箱状に形成されている。座3の平面視形状は、4つのコーナー部を丸めた略四角形に形成されている。
例えば図2に示すように、ベース2の上に金属板製の中間金具(座受け金具)5が配置されており、この中間金具5に樹脂製の座アウターシェル6が取り付けられている。中間金具5を使用せずに、座アウターシェル6をベース2に連結することも可能である。
座3は、樹脂製の座インナーシェル(座板)7とその上面に重ね配置した座クッション材8とを有しており、座クッション材8はクロス等の表皮材(図示せず)で上から覆われている。座アウターシェル6は、中間金具5に固定された固定アウターシェル9とその手前に突出したスライドアウターシェル10とで構成されており、スライドアウターシェル10は固定アウターシェル9に前後動自在に取り付けられている。
また、座インナーシェル7のうち前側寄り部位は、側面視で下向きに容易に曲がり変形する変形許容部7cになっており、変形許容部7cの前端部がスライドアウターシェル10の前端部に連結されている。このため、スライドアウターシェル10を前後スライドさせると座インナーシェル7の変形許容部7aが前向きに伸びたり下向きに巻き込まれたりする。これにより、座3の前後長さ(或いは座3の前端位置)を調節できる。
例えば図2に示すように、ベース2には第1背フレーム11が後傾動自在に連結されていると共に、第1背フレーム11にはその後ろに位置した第2背フレーム12が固定されており、第2背フレーム12に背もたれ4が取り付けられている。例えば図2に示すように、第1背フレーム11はベース2の外側位置で前向きに延びるアーム部11aとを有しており、左右アーム部11aの前端部が左右横長の第1軸13でベース2に連結されている。従って、背もたれ4は第1軸13の軸心回りに傾動する。
本実施形態の椅子は、背もたれ4の後傾に連動して座3が後退しつつ後傾するシンクロタイプの椅子であり、そこで、図2から理解できるように、中間金具5の前部をベース2に設けた受け部材14に前後動自在に装着する一方、中間金具5の後部は、第1背フレーム11に上向き突設したブラケット部15に左右横長の第2軸16で連結されている。ベース2の内部には、背もたれ4の後傾動を弾性的に支持する反力ユニットや、背もたれ4の傾動を制御するロック用ガスシリンダ等が配置されているが、本願発明との直接の関係はないので詳細は省略する。
(2).中間金具と座アウターシェルとの関係
以下、主として図4以降の図面も参照して各部位の詳細を説明する。まず、中間金具5と座アウターシェル6との関係を説明する。例えば図3に示すように、中間金具5は概ね平面視四角形に近い形状であり、上板5aと左右側板5bとを有している。第2軸16は側板5bに貫通している。
図4に示すように、固定アウターシェル9には、中間金具5にすっぽり嵌まり込む凹所18が形成されている。そして、中間金具5の上面の前端に左右一対の前向きストッパー部19を設けている一方、固定アウターシェル9における凹所18の前端部には、前向き
ストッパー部19が後ろから嵌まるトンネル形の受け部20を一体に形成している。
更に、中間金具5における上板5aの後端部に、左右横長で角形のロック穴21を空けている一方、固定アウターシェル9における凹所18の後端部に、ロック穴21に嵌まるロック爪22を下向きに突設している。ロック爪22は弾性変形してからロック穴21に嵌まり込む。これにより、固定アウターシェル9は中間金具5に抜け不能に取り付けられる。つまり、固定アウターシェル9を中間金具5にワンタッチ的に取り付けることができる。第2軸16は固定アウターシェル9の凹所18に入り込んでいるため、スナップリング等の部材を使用しなくても抜け止めすることができる。
(3).座インナーシェル
座インナーシェル7はPP等の樹脂を材料にした成形品であり、例えば図6,7に明示するように、着座者の体圧が強く作用するメイン支持部7aと、メイン支持部7aの後ろに位置したリア支持部7bと、メイン支持部7aの手前に位置した既述の変形許容部7cとで構成されている。大雑把には、メイン支持部7aは前後長さのうちの半分弱を占め、リア支持部7bと変形許容部7cとは1/4強程度の範囲を占めている。
座インナーシェル7は正面視では上向き凹状に緩く湾曲しており、縦断側面視ではリア支持部7bが後ろに行くにしたがって高さが高くなるように緩く傾斜している。また、リア支持部7bの上面には剛性を高くするため、縦横に延びるリブの群を上向きに突設している。
座インナーシェル7のメイン支持部7aには、左右中間部に位置して前後に長いセンタースリット24の群、その外側に形成された平面視弧状の中間スリット25の群、中間スリット25の外側に位置して前後方向に長く伸びるサイドスリット26の群とが形成されている。かつ、メイン支持部7aとリア支持部7bとは左右側部のみが連結されていて両者の間には左右横長の抜き溝27が形成されている。このため、メイン支持部7aは着座者の体圧で下向きに伸び変形することが許容されている。
例えば図6,7に示すように、座インナーシェル7の変形許容部7cには横長のフロントスリット28が左右方向に3列で前後方向に多列(多段)に形成されており、これらフロントスリット28の群の存在により、変形許容部7cは側面視で直線状に延びた姿勢から下向きに巻き込まれて折り返された姿勢に変形することが許容されている。
変形許容部7cの左右中間部と左右端部とには、側面視逆U形のブリッジ部29が形成されており、フロントスリット28を挟んで前後に分断された帯板状の部分はブリッジ部29で繋がっている。この逆U形のブリッジ部29の存在により、変形許容部7cは前後方向に大きく引き伸ばすことが可能になるため、巻き込み変形させることを抵抗なく確実に行える。従って、ブリッジ部29は伸長部と呼ぶことも可能である。なお、左右外側に位置したフロントスリット28は変形許容部7cの側方に開口している。
図3に示すように、クッション8のうち変形許容部7cに重なる部分は他の部分に比べてやや薄くなっており、このため、クッション8の前部を容易に変形する。本実施形態のクッション8は成形品であるが、シート材のカット品を使用することも可能である。
(4).座アウターシェル
座アウターシェル6を構成する固定アウターシェル9とスライドアウターシェル10とは、PP等の樹脂を素材にした成形品である。例えば図8(A)から理解できるように、固定アウターシェル9の前端は座インナーシェル7における変形許容部7cの後部まで伸びている(なお、図8(A)ではスリットは省略している。)。すなわち、固定アウター
シェル9は、平面視で座インナーシェル7のメイン支持部7a及びリア支持部7bの全体に重なると共に、座インナーシェル7における変形許容部7cの後部に部分的に重なる前後長さになっている。
例えば図6から把握できるように、固定アウターシェル9は正面で上向きに凹となるように緩く湾曲しており、後部は後ろ上がりに傾斜している。また、固定アウターシェル9の上面には剛性を高めるために多数のリブを形成している。固定アウターシェル9には、座インナーシェル7のメイン支持部7aが大きく沈み込むことを許容する抜き穴30が形成されている。
例えば図6に示すように、スライドアウターシェル10は、固定アウターシェル9と略同じ左右横幅で面的な広がりを持つ基部10aと、基部10aの左右両側部から後ろ向きに突出したアーム部10bとを有している。基部10aは前進させ切った状態でも後部は常に固定アウターシェル9に上から重なっており、後退させ切ると、基部10aの殆ど全体が固定アウターシェル9に重なる。アーム部10bは、常に固定アウターシェル9に上から重なっている。
スライドアウターシェル10の基部10aは基本的には板状であり(格子状でもよい)、上面に補強用のリブが縦横に延びるように形成されている。そして、図6や図9(A)等に示すように、固定アウターシェル9の前端寄り部位に、頭を有する正面視T型の第1ガイド突起31を複数個突設する一方、スライドアウターシェル10の基部10aには、第1ガイド突起31が抜け不能で前後動自在に嵌まる前後長手のガイド長穴32を形成している。第1ガイド突起31とガイド長穴32とで請求項に記載した第1ガイド手段が構成されている。第1ガイド突起31とガイド長穴32とは左右方向に飛び飛びに4個ずつ形成しているが、個数や位置は任意に設定できる。
図6から理解できるように、各ガイド長穴32の後端部は第1ガイド突起31の頭が嵌脱する広幅部32aになっている。このため、広幅部32aの箇所からガイド長穴32を第1ガイド突起31に嵌め込み、次いでスライドアウターシェル10を後ろにスライドさせることにより、スライドアウターシェル10の基部10aは抜け不能に保持される。
図9(B)(図6も参照)に示すように、スライドアウターシェル10のアーム部10bには、正断面視で下向きと上向きとに開口したクランク形で前後長手のガイド溝33が形成されている一方、固定アウターシェル9には、ガイド溝33に抜け不能に嵌まる略逆L形の第2ガイド突起34を一体に設けている。第2ガイド突起34とガイド溝33とは請求項に記載した第2ガイド手段の一例を構成している。ガイド溝33は、下向き開口位置と上向き開口位置とを左右にずらすことにより、左右外向きに突出した支持部33aを形成しており、他方、第2ガイド突起34は支持部33aの上に位置する内向き鉤部34a形成している。図12に示すように、ガイド溝33の後端部は、第2ガイド突起34の嵌め込みを許容するための広幅部33bになっている。
図9に示すように、アーム部10bの下端には細幅の凸レール部35が形成されている一方、固定アウターシェル9には、凸レール部35がスライド自在に嵌まる凹レール部36が形成されており、これらレール部35,36が嵌まり合っていることにより、スライドアウターシェル10の左右位置が規制されている。凸レール部35は固定アウターシェル9の前端近くまで延びており、凹レール部36がスライドアウターシェル10の前端近くまで延びている。
(5).座インナーシェルと座アウターシェルとの関係
座インナーシェル7は、座アウターシェル6の固定アウターシェル9とスライドアウタ
ーシェル10との両方に連結されている。この点を次に説明する。
図6や図10(B)に示すように、固定アウターシェル9のうち左右両側縁寄りの部位でかつ略後半部には、前後に長いレール状のサイド支持部(サイド突条)38を形成しており、このサイド支持部38に座インナーシェル7の支持リブ39が載っている。また、図10(B)に示すように、座インナーシェル7におけるメイン支持部7aのうち支持リブ39の外側には水平状の段部40が形成されており、段部40の下側にスライドアウターシェル10のアーム部10bが配置されていると共に、段部40の内側壁の部位に内向きのストッパー片41を形成している。ストッパー片41は上下に開口した抜き穴42で三方から囲われている。
そして、固定アウターシェル9の突条38に、ストッパー片41に上から被さる抑止片43を一体に設けている。すなわち、座インナーシェル7におけるメイン支持部7aの左右両端部は内向き移動不能に保持されており、このため、メイン支持部7aは着座した人の荷重によって下向きに沈むように変形する。また、メイン支持部7aの左右両側部はサイド支持部38で下降不能に保持されているため、人が着座してもスライドアウターシェル10のアーム部10bが座インナーシェル7のメイン支持部7aで下向きに押されることはない。従って、着座した状態で、スライドアウターシェル10のアーム部10bが容易に前後スライドし得る。
抜き穴42はストッパー片41の後方にはみ出ており、このため、座インナーシェル7を所定位置よりもやや手前に位置させてから固定アウターシェル9に重ねることにより、抑止片43を抜き穴42の後部に嵌め込むことができる。その状態で座インナーシェル7を後ろにずらすと、抑止片43がストッパー片41の上に位置する。
図10(C)に示すように、座インナーシェル7におけるメイン支持部7aの左右両側端部には、スライドアウターシェル10のアーム部10bに向いて内向き突出した支持片44を前後方向に隔てて複数個形成している。支持片44は、表皮材を取り付けるためのものであるが、座インナーシェル7の支持機能を保持させることも可能である。なお、座インナーシェル7の左右縁部が内向きにずれ移動することを阻止するサイドリブを別に設けてもよい。
図10(A)に示すように、固定アウターシェル9の左右後部には上部を二股に形成した鉤形のリア係合爪45を設けている一方、座インナーシェル7のリア支持部7bには、リア係合爪45に上から嵌まり係合するリア係合穴46を形成している。このリア係合穴46も、いったん座インナーシェル7を固定アウターシェル9に重ねてから後ろにずらすことで、リア係合爪45に係合する。
図8(D)に示すように、座インナーシェル7におけるリア支持部7bの左右中間部には、前端を自由端として下向きに突出させたセンター係止片47を設けている一方、固定アウターシェル9には、センター係止片47が前向き動不能に嵌まるセンター受け部48を凹み形成している。センター係止片47はその付け根を除いた3方がスリットで囲われており、このためセンター係止片47は付け根を支点にして上下に回動し得る。また、センター受け部48には穴49が開口している。従って、センター係止片47は例えばドライバーのような道具で上向きに突き上げることで、センター受け部48から離脱させることができる。
図7に示すように、固定アウターシェル9のうちセンター受け部48の左右外側の部位には、平面視四角形のサイド係合部49を形成し、このサイド係合部49に、座インナーシェル7のリア支持部7bに設けたサイド係合穴50が嵌まっている。これにより、座イ
ンナーシェル7の後ろ向き移動が規制されている。結局、座インナーシェル7は、センター係止片47とサイド係合部49とで前後ずれ不能に保持されている。
サイド係合部49の箇所に、中間金具5に取り付けるためのロック爪22(図4参照)を設けている。ロック爪22には上向きに突出する指掛け片22aを設けている。このため、座3を取り外して指掛け片22aを手前に引くことで、ロック爪22を中間金具5から係合解除できる。
座インナーシェル7の前端部の連結構造は図8(B)に示している。すなわち、座インナーシェル7における変形許容部7cのうち中心線を挟んだ左右両側の2カ所に、左右の下向きブラケット部片53を介して支軸54を一体に形成する一方、スライドアウターシェル10の前端には、支軸54が上から嵌まる軸受け部55を一体に設けている。支軸54と軸受け部55とは相対回転し得る。
従って、スライドアウターシェル10を後退させると変形許容部7cの前端は後ろに引かれ、このため、変形許容部7cは折り返されたような状態で下に巻き込まれる。これにより、座3の前端位置を変更して前後長さ(前端の奥行き)を調節できる。支軸64及び軸受け部55の対の配置位置は左右2カ所には限らず、中間部と左右両側との3カ所に設けるなど、個数と配置位置は任意に設定できる。また、支軸54をスライドアウターシェル10に設けて軸受け部55を座インナーシェル6の変形許容部に設けることも可能であり、更に、他の連結手段を採用してもよい。
図8(C)に示すように、座インナーシェル7における変形許容部7cの前端には後ろ向きに突出したフロントストッパー56を設けている。これは、座クッション8を覆う表皮材を取り付けるためものである。
(6).座の長さ調節(奥行き調節)操作機構
次に、座3の前後座長さ調節の操作装置を主として図11,12に基づいて説明する。例えば図12(B)に示すように、操作装置は、スライドアウターシェル10の右側部に前後動自在に装着した指当てレバー58と、指当てレバー58の前後動によって左右スライドするロック部材59と、ロック部材59をロック姿勢に付勢するばね(圧縮コイルばね)60とを有する。指当てレバー58とロック部材59とは樹脂製である。
図12(A)(C)に明瞭に示すように、スライドアウターシェル10の左右側部の下面は内側に向けて低くなるように傾斜しており、この傾斜した下面に底面がフラットな凹所61を形成し、この凹所61に指当てレバー58が前後動自在に配置されている。指当てレバー58は凹所61の底面に重なる上板58aとこの上板58aから下向きに突出した摘まみ部58bとを有しており、上板58aに、スライドアウターシェル10の上に露出する正面視T形の係合突起63を一体に形成している。スライドアウターシェル10には、係合突起63が抜け不能に嵌まる前後長手の取り付け穴64を形成している。取り付け穴64の前端には、係合突起63が嵌脱自在な幅広部64aを形成している。
ロック部材59は左右長手のロッド状の形態であり、スライドアウターシェル10の下面に設けた左右長手のガイド溝65にスライド自在に嵌まっている。ガイド溝65と凹所61とは一体に連続している。また、ガイド溝65は凸レール部35を分断した状態で形成されている。
図12(B)に示すように、ロック部材59のうち指当てレバー58に向いた外側端部は底面視U型の当接部59aになっている一方、指当てレバー58には、ロック部材59の当接部59aを下方から覆う凹所66が形成されており、凹所66の内側面を底面視V
字状の傾斜面66aと成している。すなわち、凹所66の内側面を、ロック部材59の方向に向いて間隔が広がるように傾斜した前後2つの傾斜面66aと成している。
ロック部材59の上面にはばね60が嵌まる溝67が形成されており、ばね60の一端はガイド溝65の内側面65aに当接している。従って、ロック部材59は外向きに(指当てレバー58に向いた方向に)付勢されている。そして、指当てレバー58の凹所66はV形になっているので、指当てレバー58に外力が作用していない場合は、ロック部材59は外側に後退して当接部59aが凹所66の深い位置に嵌まり、安定した状態に保持されている。他方、指当てレバー58を前後いずれかにスライドさせると、傾斜面66aのガイド作用によってロック部材59が内側に前進動する。
ロック部材59の内端部には固定アウターシェル9に向いて下向き突出したストッパー突起68を一体に設けている。他方、固定アウターシェル9には、ロック部材59が左右動するとストッパー突起68が嵌脱するストッパー受け部69を設けている。ストッパー受け部69は前後長手の縦リブ70に内向きリブを飛び飛びに設けることで構成されており、本実施形態では5つのストッパー受け部69を前後に並べて形成されている。従って、座3の前後長さは5段階に調節できる。ストッパー受け部69を形成している縦リブ70は、座インナーシェル7のメイン支持部7a及びリア支持部7bが載るサイド支持部38と一体に繋がっており、縦リブ70はサイド支持部38から段落ちした状態になっている。
例えば図3に示すように、スライドアウターシェル10のうちスライド式の指当てレバー58と左右対称の位置には、スライド式の指当てレバー58と同じ形状の指当て突起71を一体に形成している。このため、座3の前後調節を、こじれのない状態でスムースに行える。スライド式の指当てレバー58をスライドアウターシェル10の左右両側部に設けることも可能である。スライド式の指当てレバー58を左右に設けた場合、ロック部材59を左右に設けることも可能であるし、ロック部材59は片側だけに設けて片方のスライド式の指当てレバー58はダミーとすることも可能である。
(7).まとめ
既に説明したように、着座した人は指当てレバー58及び指当て突起71に指先を当てて(或いは摘んで)、指当てレバー58及び指当て突起71を前後動させるとスライドアウターシェル10が前後動し、これにより、座インナーシェル7の変形許容部7cが巻き込み変形したり伸び変形したりして、座3の前端の位置(座3の前後長さ)を調節することができる。
そして、既述のように、座インナーシェル7におけるメイン支持部7aの左右両側部がサイド支持部38に載った状態に保持されていることにより、スライドアウターシェル10のアーム部10aに着座者の体圧が全く又は殆ど作用しないため、座3の前後調節を着座したままで軽快に行うことができる。なお、着座者の大腿部が座インナーシェル7の変形許容部7cに上から当たっていることは有り得るが、変形許容部7cは伸びたり巻き込まれたり変形するに過ぎず、前後移動するものではないため、着座者の大腿部が座インナーシェル7に当たっていることは、座3の前後調節の抵抗にはならない。
さて、座の前後調節や奥行き調節のために操作レバーを設ける場合、例えばレバーを上向きに回動させてからロックを解除し、それからレバー又は座を前後いずれかの方向に移動させるという手順を取っている。すなわち、人の手の動きを見ると、方向が異なる2つの動きをしている。
これに対して本実施形態では、指当てレバー58を前後いずれの方向に移動させてもロ
ック部材59はストッパー受け部69から離脱し、ロックが解除されてそのままスライドアウターシェル10を前後動させることができる。従って、人は、座3の奥行き調節に当たっては、スライドアウターシェル10を動かしたい方法に指当てレバー58を動かすことでロックか解除されるため、ロック解除とスライドアウターシェル10の移動とをワンアクションで行うことができる。従って、操作性がよい。
本実施形態ではスライドアウターシェル10の基部10aは基本的には板状であるため、座インナーシェル7の変形許容部7cを広い範囲で支持することができる。このため、人の大腿部が座3の前部に強く当たっても突き上げ感はなく、巻き込み式の座でありながら座り心地に優れている。
既述のとおり、本実施形態では、スライドアウターシェル10は固定アウターシェル9に重ねてから後ろにずらすという手順により、固定アウターシェル9に抜け不能に取り付けることができる。他方、座インナーシェル7の先端の支軸54をスライドアウターシェル10の軸受け55に嵌め込むことは、スライドアウターシェル10が固定アウターシェル9から上向き離反不能に保持されている状態で行われる。このため、座アウターシェル6の組み立てや座インナーシェル7の取り付けを簡単に行える(すなわち、椅子の組み立ての作業性に優れている。)。
本実施形態ではスライドアウターシェル10は固定アウターシェル9に上から重なっているため、例えば座3の前部に体圧が強く掛かった場合でも、スライドアウターシェル10は固定アウターシェル9に密着するように作用する。つまり、体圧が強くかかるほど、スライドアウターシェル10を座アウターシェル9に一体化する傾向を呈する。このため、スライドアウターシェル10が人の体圧によって固定アウターシェル9から離れることはない。従って、支持強度・支持安定性に優れている。
本実施形態では、スライドアウターシェル10のアーム部10bはサイド支持部38の外側に配置されているため、座インナーシェル7でアーム部10bが押されることを的確に防止できる。すなわち、座インナーシェル7のメイン支持部7aはサイド支持部38に載っているため、座インナーシェル7のうちサイド支持部38の外側に位置した部分は着座者の体圧で上に浮く傾向を呈するのであり、このため、座インナーシェル7でスライドアウターシェル10が押さえられることを防止して、スライドアウターシェル10を軽快に前後動させることができる。
本実施形態のように、アーム部10aの下端に設けた凸レール部35と固定アウターシェル9に設けた凹レール部36とを嵌合させると、スライドアウターシェル10のガタ付きを無くすことができて好適である。
(8).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、適用対象は移動自在な回転椅子には限らず、劇場用椅子のような固定式の椅子にも適用できる。座インナーシェルに変形許容部を設ける手段としては必ずしも実施形態のようにスリットを形成する必要はなく、多数の折目を形成したり、全体的に変形する材料を使用したりすることも可能である。
座アウターシェルを構成する固定アウターシェルとスライドアウターシェルとの形態も、必要に応じて様々に具体化できる。例えばアーム部を3本以上設けることも可能である。
本願発明は椅子に具体化することができる。従って、産業上利用できる。
3 座
4 背もたれ
5 中間金具(座受け部材)
6 座アウターシェル
7 座インナーシェル
7a メイン支持部
7b リア支持部
7c 変形許容部(フロント支持部)
8 クッション
9 固定アウターシェル
10 スライドアウターシェル
10a 基部
10b アーム部
31 第1ガイド手段を構成する第1ガイド突起
32 第1ガイド手段を構成するガイド長穴
33 第2ガイド手段を構成するガイド溝
34 第2ガイド手段を構成する第2ガイド突起34
38 サイド支持部の一例としてサイド支持部

Claims (1)

  1. クッションを張った座インナーシェルと、前記座インナーシェルを下から支持する座アウターシェルとを有しており、前記座インナーシェルの前部を下向きに巻き込み可能な変形許容部と成すことで前後長さを調節可能な座であり、
    前記座アウターシェルは、当該固定アウターシェルの少なくとも後ろ側半分を構成する固定アウターシェルと、前記固定アウターシェルの手前に突出した部分を有するスライドアウターシェルとで構成されており、前記スライドアウターシェルは前記固定アウターシェルに前後動自在に取り付けられており、前記スライドアウターシェルの前端部に前記座インナーシェルの前端部を連結することにより、前記座インナーシェルの前部が下向きに巻き込まれることを可能ならしめている構成において、
    前記スライドアウターシェルは、前記座インナーシェルを広い範囲にわたって支持し得るように面的な広がりを持っており、着座者の体圧が主として前記固定アウターシェルで支持した状態で、前記座インナーシェルの下向き押圧力が前記スライドアウターシェルに殆どかからないように設定している、
    椅子用の座部。
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