JP2015167477A - 新規(r)−ヒドロキシニトリルリアーゼ - Google Patents

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Abstract

【課題】植物由来のヒドロキシニトリルリアーゼより安定性が高く、その遺伝子を用いて異種発現も可能な(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼおよび当該ヒドロキシニトリルリアーゼの製造方法の提供。【解決手段】特定のアミノ酸配列からなるヤンバルトサカヤスデ(Chamberlinius hualienensis)由来の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼとその変異体、及び、それらの遺伝子を含むベクターにより形質転換された形質転換体を培養した培養物から得る(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、植物由来のヒドロキシニトリルリアーゼより安定性に優れ、その遺伝子を用いて異種発現も可能である(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ、当該ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする遺伝子、および当該ヒドロキシニトリルリアーゼの製造方法に関するものである。
ヒドロキシニトリルリアーゼは、シアニドドナーの存在下、カルボニル化合物をシアノヒドリン(α−ヒドロキシニトリル)に変換する反応を触媒する酵素である。シアノヒドリンは、α−ヒドロキシ酸、α−ヒドロキシケトン、β−アミノアルコールなど様々な化合物に変換できることから、医薬分野や化学品分野などにおける中間体として重要である。従って、ヒドロキシニトリルリアーゼを大量に生産する方法の開発が望まれている。
ヒドロキシニトリルリアーゼは、(S)選択性および(R)選択性の2つのグループに分けられる。その中で(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼは、酸性条件下においてケトンまたはアルデヒドとシアン化合物から(R)−シアノヒドリンを生成する反応を触媒する。この反応の代表例として、ベンズアルデヒドとシアン化合物である青酸から、(R)−マンデロニトリルを生成する反応がある。また、(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼは、安価な基質から医薬および化成品中間体として利用価値の高い光学活性体を生産することのできる生体触媒としても使用されており、多くの分野において極めて有用である。
光学活性シアノヒドリンの工業的生産にヒドロキシニトリルリアーゼを利用するために、菌体あたりまたはタンパク質あたりの活性が高く立体選択性の高いヒドロキシニトリルリアーゼを大量に生産する方法の開発が望まれている。
ヒドロキシニトリルリアーゼは、シアン配糖体を有する植物においてのみ存在することが知られている。例えば、(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼとしてアーモンド(Prunus amygdalus)などのバラ科植物由来のものなどが知られている。また、(S)−ヒドロキシニトリルリアーゼとして、モロコシ(Sorghum bicolor)などのイネ科植物由来のものや、キャッサバ(Manihot esculenta)、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)、バリオスペルマム(Baliospermum)などのトウダイグサ科植物由来のものが知られている。しかし、これらの植物体からは微量のヒドロキシニトリルリアーゼしか抽出することができなかった。
そこで、ヒドロキシニトリルリアーゼを大量に得るために、遺伝子工学的な方法でヒドロキシニトリルリアーゼを得る試みがなされてきた(特許文献1〜9)。しかしながら、形質転換体を用いて異種タンパク質を発現させる場合には、同種タンパク質についての研究によって得た発現量や生化学的活性などの結果をそのままあてはめることができない場合がある。即ち、形質転換体を用いて異種タンパク質を発現させる場合には、形質転換体の挙動や発現量、目的タンパク質の生化学的活性などを予め予測することは容易ではない。
特表平11−508775号公報 特開2000−189159号公報 特開2000−189160号公報 特開2000−245486号公報 特開2002−330791号公報 国際公開第01/48178号パンフレット 特開2004−194550号公報 特開2004−194551号公報 特開2000−125886号公報
上述したように、ヒドロキシニトリルリアーゼは産業上非常に重要な酵素となり得るものであるので、工業的な利用のためにも安定供給が求められる。しかし、シアン配糖体を有する植物で見出されているヒドロキシニトリルリアーゼを植物体から精製する場合、わずかしか得られない。その一方で、ヒドロキシニトリルリアーゼは異種発現が難しいという問題があった。また、ヒドロキシニトリルリアーゼで光学活性化合物を生産する際には、酵素を過酷な条件にさらす必要があるので、安定性の高い酵素が望まれている。
そこで本発明は、植物由来のヒドロキシニトリルリアーゼより安定性が高く、その遺伝子を用いて異種発現も可能な(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ、当該ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする遺伝子、および当該ヒドロキシニトリルリアーゼの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、特定地域で周期的に大量発生するヤンバルトサカヤスデが産生する(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼが極めて安定性に優れることを見出して、本発明を完成した。
[1] 下記(1)〜(3)の何れかのアミノ酸配列を有する(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ。
(1) 配列番号3に示されるアミノ酸配列;
(2) 上記(1)に規定されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠損、置換および/または付加されたアミノ酸配列であり、且つ当該アミノ酸配列を有する(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼと比較して維持されているか或いは高いアミノ酸配列;
(3) 上記(1)に規定されるアミノ酸配列に対して少なくとも30%の相同性を有するアミノ酸配列であり、且つ当該アミノ酸配列を有する(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼと比較して維持されているか或いは高いアミノ酸配列。
[2] 上記(1)〜(3)の何れかのアミノ酸配列を有するサブユニットの二量体である上記[1]に記載の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ。
[3] キャンベルリニアス属(Chamberlinius)由来のものである上記[1]または[2]に記載の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ。
[4] ヤンバルトサカヤスデ(Chamberlinius hualienensis)由来のものである上記[3]に記載の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ。
[5] 下記(4)〜(6)の何れかの塩基配列を有する(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子。
(4) 配列番号2に示される塩基配列;
(5) 上記(4)に規定される塩基配列において、1または数個の塩基が欠損、置換および/または付加された塩基配列であり、且つ当該塩基配列によりコードされた(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が、配列番号2に示される塩基配列によりコードされた天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼと比較して維持されているか或いは高い塩基配列;
(6) 上記(4)に規定される塩基配列に対して少なくとも30%の相同性を有する塩基配列であり、且つ当該塩基配列によりコードされた(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が、配列番号2に示される塩基配列によりコードされた天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼと比較して維持されているか或いは高い塩基配列。
[6] 配列番号1に示される塩基配列を有する上記[5]に記載の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子。
[7] 上記[5]または[6]に記載の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を含むことを特徴とするベクター。
[8] 上記[7]に記載のベクターにより形質転換されたものであることを特徴とする形質転換体。
[9] (R)−ヒドロキシニトリルリアーゼを製造するための方法であって、
上記[8]に記載の形質転換体を培養して培養物を得る工程、および、
上記培養物から(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼを精製する工程
を含むことを特徴とする方法。
本発明の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼはヤンバルトサカヤスデ個体中に含まれるが、その量は少ないといえる。しかし、ヤンバルトサカヤスデは周期的に局地で大量発生するため、酵素精製の出発材料として比較的大量かつ容易に得ることができる。即ち、本発明の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼの精製の困難さは、出発原料であるヤンバルトサカヤスデの量により克服することができる。また、本発明の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼは安定性に優れており、例えば、合成中間体として重要なシアノヒドリンの製造に適用することができる。よって本発明の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼは、産業上非常に有用である。
図1は、本発明酵素を単離したヤンバルトサカヤスデ(Chamberlinius hualienensis)の写真である。(A)は捕獲した際の比較的大型のヤンバルトサカヤスデの写真であり、(B)は比較的小型のヤンバルトサカヤスデの拡大写真である。 図2は、ヤンバルトサカヤスデから精製した(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼをSDS−PAGEで分析した結果を示すゲルの写真である。(A)は分子量マーカーを用いて分子質量を求めるためのゲルの写真であり、(B)は糖鎖の有無を確認するために染色したゲルの写真である。 図3(A)〜(C)は、それぞれ、ヤンバルトサカヤスデから精製した(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼの紫外・可視・近赤外スペクトル、赤外スペクトル、または円偏光二色性スペクトルの測定結果である。 図4は、ヤンバルトサカヤスデから精製した(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼのcDNA、推定アミノ酸配列およびプライマーのアニーリングサイトを示す。 図5(A)と(B)は、それぞれ、ヤンバルトサカヤスデから精製した(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼの反応pHと比活性または残存活性との関係を示すグラフである。 図6(A)と(B)は、それぞれ、ヤンバルトサカヤスデから精製した(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼの反応温度と比活性または残存活性との関係を示すグラフである。 図7(A)と(B)は、それぞれ、ヤンバルトサカヤスデから精製した(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼと組換え型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼの反応pHまたは反応温度と残存活性との関係を示すグラフである。
以下、先ず、本発明に係る(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼについて説明する。
<(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ>
本発明に係る(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼは、上記(1)〜(3)の何れかのものである。
上記(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼにおいて、「配列番号3に示すアミノ酸配列」は、ヤンバルトサカヤスデ(Chamberlinius hualienensis)由来の天然型ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列である。ヤンバルトサカヤスデは、特に鹿児島県で周期的に異常発生し列車を止めるなどする一方で、駆除しようとするとシアン化水素を含むガスを放出して健康被害を及ぼすなど問題になっている。本発明者らは、ヤンバルトサカヤスデがシアン化水素を産生することに注目し、ヒドロキシニトリルリアーゼを有するのではと考えて実験を進めたところ、本発明に係る(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼの単離精製に成功したものである。また、本発明に係る(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼは、異常発生する一方で駆除方法が確立していないヤンバルトサカヤスデから単離精製できることから、本発明は、ヤンバルトサカヤスデの処理方法としても価値が高い。
その他、ヤンバルトサカヤスデと同じくオビヤスデ目(Polydesmida)に分類されるタンバアカヤスデ(Nedyopus tambanus tambanus)、ミドリババヤスデ(Parafontaria tonominea)、エパネルコデウス属(Epanerchodus sp.)、エパネルコデウス フルヴス(Epanerchodus fulvus Haga)、キシャヤスデ(Parafontaria laminate armigera)、ヤケヤスデ(Oxidus gracilis)、オオギヤスデ属(Cryptocorypha sp.)、ヤマトオビヤスデ(Epanerchodus japonicas Carl)、アマビコヤスデ(Riukiaria semicircularis semicircularis)、ヤマトアカヤスデ(Nedyopus patrioticus patrioticus)も、シアン化水素やマンデロニトリルなどを防御物質として産生する(Kuwabaraら,J.Chem.Ecol.,37,pp.232−238(2011))。また、本発明者らによる予備実験により、ミドリババヤスデとアマビコヤスデの摩砕物は、ベンズアルデヒドからマンデロニトリルを合成する(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ活性を、それぞれ4.23U/mgおよび6.35U/mg有することが確認されている。よって、上記ヤスデも本発明に係る(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼを産生し、本発明に係る(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼはこれらヤスデからも精製できると考えられる。
本発明において「ヒドロキシニトリルリアーゼ活性」とは、シアン化合物とケトン化合物またはアルデヒド化合物からシアノヒドリンを生成する反応を触媒する活性(以下、「合成活性」と呼ぶ)と、その逆反応を触媒する活性(以下、「分解活性」と呼ぶ)のいずれをも意味する。本発明においては、例えば、合成活性は、ベンズアルデヒドからの(R)−マンデロニトリルの生成量を測定することにより算出することができる。マンデロニトリルの生成量は、例えばHPLCで定量することができる。また、分解活性は、基質であるマンデロニトリルからのベンズアルデヒドの生成量を測定することにより算出することができる。ベンズアルデヒドの生成量は、例えば、クエン酸ナトリウム緩衝液に、ヒドロキシニトリルリアーゼとラセミ体マンデロニトリルを添加したときの波長280nmにおける吸光値の増加を計測することで定量することができる。
本発明に係る(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼは、特に広いpH範囲や温度範囲において活性を維持するという高い安定性を有する。
本発明において酵素が「(特定の)アミノ酸配列を有する」とは、その酵素のアミノ酸配列が特定されたアミノ酸配列を含んでいればよく、且つ、その酵素の機能が維持されていることを意味する。その酵素において特定されたアミノ酸配列以外の配列としては、ヒスチジンタグや固定化のためのリンカー配列の他、ジスルフィド結合などの架橋構造などが挙げられる。また、特定のアミノ酸配列を有していれば、糖鎖を有していてもよいものとする。
本発明の上記アミノ酸配列(2)において、「1または数個のアミノ酸が欠損、置換および/または付加されたアミノ酸配列」における「1から数個」の範囲は、欠失等を有する(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼが、上記アミノ酸配列(1)を有する天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼを有する天然型ヒドロキシニトリルリアーゼと同等またはより優れるヒドロキシニトリルリアーゼ活性を有する限り特に限定されるものではない。前記「1から数個」の範囲は、例えば1個以上、30個以下とすることができ、好ましくは1個以上、20個以下、より好ましくは1個以上、10個以下、さらに好ましくは1個以上、7個以下、一層好ましくは1個以上、5個以下、特に好ましくは1個以上、3個以下、1個以上、2個以下、1個程度であることができる。
本発明の上記アミノ酸配列(3)において、「上記(1)に規定されるアミノ酸配列に対して少なくとも30%の相同性を有するアミノ酸配列」における「配列同一性」は、当該アミノ酸配列の相同性を有する(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼが、配列番号3のアミノ酸配列を有する天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼと同等またはより高いヒドロキシニトリルリアーゼ活性を有する酵素である限り、特に限定されない。前記アミノ酸配列の相同性は30%以上であれば特に限定されないが、好ましくは30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上または80%以上であり、より好ましくは90%以上、92%以上、94%以上または95%以上であり、さらに好ましくは96%以上、98%以上、99%以上または99.5%以上であり、特に好ましくは99.8%以上である。本発明において「配列の相同性」という語は、2以上のアミノ酸配列の互いに対するアミノ酸の同一性の程度を指す。従って、ある二つのアミノ酸配列の同一性が高い程、それらの配列の同一性ないし類似性は高い。2種類のアミノ酸配列が特定の相同性を有するか否かは、配列の直接の比較によって解析することが可能であり、具体的には、市販の配列解析ソフトウェア等を用いて解析することができる。
なお、Blastpを用いた本発明者らによる検索によれば、本発明の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼと相同性のある既知タンパク質は見付かっていない。具体的には、Blastp検索で見出されたタンパク質は5種類のみであり、その中で、BAD30832 hypothetical protein[Oryza sativa Japonica Group]に対して最も高い相同性が示されている。但し、その相同性値は44%に過ぎない。しかも、この相同性値は29アミノ酸残基からなる部分配列と比較した結果であり、当該タンパク質全体のアミノ酸配列を比較した場合、相同性値ははるかに小さな値になるはずである。即ち、本発明の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼは、これまでの既知タンパク質とは全く相同性を有さない新規なものであるといえる。
上記アミノ酸配列(2)および(3)において、「(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼと比較して維持されているか或いは高い」とは、対象となるタンパク質のヒドロキシニトリルリアーゼ活性が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼと比較して相対的に同等か或いは高いことをいう。具体的には、比較すべき2以上の酵素について同一条件で上記の合成反応または分解反応を行い、生成物量を比較し、上記アミノ酸配列(2)および(3)を有する酵素の活性が上記天然型酵素に比べて高ければよい。
<遺伝子とベクター>
本発明に係る遺伝子は、上記(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼをコードするものである。
上記遺伝子(4)は、ヤンバルトサカヤスデ(Chamberlinius hualienensis)から単離精製された天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする遺伝子である。よって、上記遺伝子(4)も、ヤンバルトサカヤスデから調製したcDNAを鋳型としたPCRなどにより得てもよい。
本発明に係る遺伝子の塩基配列(5)および(6)は、上記(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ(2)または(3)のアミノ酸配列をコードするものとしてデザインすることができる。
本発明の遺伝子は、例えば、配列番号1または配列番号2の塩基配列を有する(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子DNAもしくはその相補配列、またはこれらの断片をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、cDNAライブラリーから得ることができる。また、公知の方法による遺伝子合成により、配列番号1または配列番号2の塩基配列を持つDNAを合成しても良い。
本発明において「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄時の条件であって塩濃度が300mM以上、2000mM以下、温度が40℃以上、75℃以下、好ましくは塩濃度が600mM以上、900mM以下、温度が65℃の条件を意味する。例えば、2×SSCで50℃等の条件を挙げることができる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度や温度などの条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を加味し、本発明の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする核酸を得るための条件を設定することができる。
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、「Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.」Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等を参照することができる。ハイブリダイズする核酸としては、例えば、配列番号1または配列番号2の塩基配列に対して少なくとも40%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは90%以上の同一性を有する塩基配列を含む核酸またはその部分断片が挙げられる。
本発明において、(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子の調製を行う方法は特に制限されず、通常は、公知の方法で行うことができる。例えば、天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を基に、市販のキットを利用して部位特異的な置換を生じさせる方法や、遺伝子DNAを選択的に開裂し、次いで選択されたオリゴヌクレオチドを除去・付加し連結する方法等が挙げられる。
これらの部位特異的変異誘発法は「Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.」Cold Spring Harbor Press(1989)、「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley & Sons(1987−1997)、Kunkel,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,pp.488−92(1985)、Kramer and Fritz Method.Enzymol.,154,pp.350−67(1987)、Kunkel,Method.Enzymol.,85,pp.2763−6(1988)等に記載されている。近年では、Kunkel法やGapped duplex法を基にした部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuikChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site−Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site−Directed Mutagenesis System(Mutan−K、Mutan−Super Express Km等:タカラバイオ(株)社製)等を用いて行うことができる。
また、目的とする変異導入箇所が、対象遺伝子配列において消化・連結が容易な制限酵素部位の近隣に存在する場合、目的変異を導入したプライマー(合成オリゴDNA)を用いてPCRを行うことで、目的変異が導入された遺伝子DNA断片を容易に得ることができる。さらには、合成オリゴDNAを組み合わせたPCR法(assembly PCR)で伸長させて合成遺伝子として得ることもできる。
また、ヒドロキシルアミンや亜硝酸等の変異源となる薬剤を接触・作用させる方法、紫外線照射により変異を誘発する方法、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を用いてランダムに変異を導入する方法などのランダムな変異導入法によっても、天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子から所望の変異型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を得ることができる。
上記の方法によって得た本発明の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を宿主で発現させるために、遺伝子の上流に転写プロモーターを、下流にターミネーターを挿入して発現カセットを構築し、このカセットを発現ベクターに挿入することができる。或いは、当該改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を導入する発現ベクターに転写プロモーターとターミネーターがすでに存在する場合には、発現カセットを構築することなく、ベクター中のプロモーターとターミネーターを利用してその間に当該変異遺伝子を挿入すればよい。ベクターに当該改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を挿入するには、制限酵素を用いる方法、トポイソメラーゼを用いる方法等を利用する。また、挿入の際に必要であれば、適当なリンカーを付加してもよい。なお、本発明においては、このような組み込み操作を、(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子の調製操作と兼ねて行うこともできる。即ち、他のアミノ酸をコードする塩基配列に置換した塩基配列を有するプライマーを用い、天然型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子がクローニングされた組換えベクターを鋳型としてPCRを行い、得られた増幅産物をベクターに組み込むことができる。
プロモーターの種類は宿主において適切な発現を可能にするものであれば特に限定されるものではないが、例えば、大腸菌由来のトリプトファンオペロンのtrpプロモーター、ラクトースオペロンのlacプロモーター、ラムダファージ由来のPLプロモーターおよびPRプロモーターや、枯草菌由来のグルコン酸合成酵素プロモーター(gnt)、アルカリプロテアーゼプロモーター(apr)、中性プロテアーゼプロモーター(npr)、α−アミラーゼプロモーター(amy)等が挙げられる。また、tacプロモーター、trcプロモーターのように改変、設計された配列も利用できる。
ターミネーターは必ずしも必要ではなく、その種類も特段限定されるものではなく、例えばρ因子非依存性のもの、例えばリポプロテインターミネーター、trpオペロンターミネーター、rrnBターミネーター等が挙げられる。
また、アミノ酸への翻訳にとって重要な塩基配列として、SD配列やKozak配列などのリボソーム結合配列が知られており、これらの配列を変異遺伝子の上流に挿入することもできる。原核生物を宿主に用いるときにはSD配列を、真核細胞を宿主に用いるときにはKozak配列をPCR法などにより付加してもよい。SD配列としては、大腸菌由来または枯草菌由来の配列などが挙げられるが、大腸菌や枯草菌等の所望の宿主内で機能する配列であれば特に限定されるものではない。たとえば、16SリボゾームRNAの3’末端領域に相補的な配列が4塩基以上連続したコンセンサス配列をDNA合成により作製して利用してもよい。
一般に、ベクターには目的とする形質転換体を選別するための因子(選択マーカー)が含まれる。選択マーカーとしては、薬剤耐性遺伝子や栄養要求性相補遺伝子、資化性付与遺伝子などが挙げられ、目的や宿主に応じて選択されうる。例えば大腸菌で選択マーカーとして用いられる薬剤耐性遺伝子としては、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
本発明において使用されるベクターは、上記の変異遺伝子を保持するものであれば特に限定されず、それぞれの宿主に適したベクターを使用することができる。ベクターとしては、例えば、プラスミドDNA、バクテリオファージDNA、レトロトランスポゾンDNA、人工染色体DNAなどが挙げられる。例えば、大腸菌を宿主とする場合には、大腸菌中での自律複製可能な領域を有しているpTrc99A(Centraalbureau voor Schimmelcultures(CBS)、オランダ;http://www.cbs.knaw.nl/)、pUC19(タカラバイオ社、日本)、pKK233−2(Centraalbureau voor Schimmelcultures(CBS)、オランダ;http://www.cbs.knaw.nl/)、pET−12(Novagen社、ドイツ)、pET−26b(Novagen社、ドイツ)などを用いることができる。また、必要に応じてこれらベクターを改変したものも用いることができる。また、発現効率の高い発現ベクター、例えばtrcプロモーター、lacオペレーターを有する発現ベクターpTrc99AまたはpKK233−2などを用いることもできる。
上記の改良型ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を含む組換えベクターは、本発明の範囲に含まれる。
<形質転換体>
本発明の組換えベクターを宿主に形質転換または形質導入することで、形質転換体を作製することができる。当該形質転換体も本発明の範囲に含まれる。
本発明において使用する宿主は、上記組換えベクターが導入された後、目的の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼを発現することができる限り特に限定されるものではない。宿主としては、例えば大腸菌、枯草菌などの細菌;ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などのピキア属(Pichia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)などの真菌;HEK293細胞などの動物細胞;Sf9細胞、Sf21細胞、High Five(BTI−TN−5B1−4)細胞などの昆虫細胞;植物細胞などが挙げられる。
<(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼの製造方法>
本発明の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼは、上記形質転換体を培養し、得られる培養物から精製することにより製造することができる。
本発明において「培養物」とは、培養上清、培養細胞、培養菌体、または細胞もしくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。本発明の形質転換体を培養して得られる培養物は、本発明の範囲に含まれる。
本発明の形質転換体の培養は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。目的の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼは、上記培養物中に蓄積される。
本発明の形質転換体を培養する培地は、宿主が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類などを含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、ガラクトース、フラクトース、スクロース、ラフィノース、デンプン等の炭水化物;酢酸、プロピオン酸等の有機酸;エタノール、プロパノール等のアルコール類が挙げられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩またはその他の含窒素化合物が挙げられる。その他、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカー、各種アミノ酸等を用いてもよい。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。また、必要に応じ、培養中の発泡を防ぐために消泡剤を添加してもよい。また、ビタミン等を必要に応じて適宜添加してもよい。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
培養中、ベクターおよび目的遺伝子の脱落を防ぐために選択圧を掛けた状態で培養してもよい。即ち、選択マーカーが薬剤耐性遺伝子である場合に相当する薬剤を培地に添加してもよく、選択マーカーが栄養要求性相補遺伝子である場合に相当する栄養因子を培地から除いてもよい。また、選択マーカーが資化性付与遺伝子である場合は、相当する資化因子を必要に応じて唯一因子として添加することができる。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を含むベクターで形質転換した大腸菌を培養する場合、培養中に、必要に応じてアンピシリンを培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)で誘導可能なプロモーターを有する発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときには、IPTG等を培地に添加することができる。また、インドール酢酸(IAA)で誘導可能なtrpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときには、LAA等を培地に添加することができる。
形質転換体の培養条件は、目的の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼの生産性および宿主の生育が妨げられない条件であれば特段限定されるものではないが、通常、培養温度は10℃以上、45℃以下、好ましくは10℃以上、40℃以下、さらに好ましくは15℃以上、40℃以下、さらにより好ましくは20℃以上、37℃以下で行い、必要に応じて、培養中に温度を変更してもよい。培養時間は5時間以上、120時間以下程度とすることができ、好ましくは5時間以上、100時間以下、さらに好ましくは10時間以上、100時間以下、さらにより好ましくは15時間以上、80時間以下程度行う。pHの調整は、無機または有機酸、アルカリ溶液等を用いて行い、大腸菌であれば6以上、9以下に調整する。培養方法としては、固体培養、静置培養、振盪培養、通気攪拌培養などが挙げられる。
培養のための培地の初発pHは7以上、9以下に調整するのが適当である。また、培養は、5℃以上、40℃以下、好ましくは10℃以上、37℃以下で5時間以上、100時間以下行う。通気攪拌深部培養、振盪培養、静置培養、流加培養等により実施するのが好ましい。
本発明に係る(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼは、上記培養物から精製されるが、その精製度合いは特に制限されない。例えば、上記培養物をホモジェナイズし、濾過や遠心分離などにより不溶物を除去した溶液をそのまま用いてもよいし、さらに、カラムクロマトグラフィなどにより精製して、粗酵素液や酵素液を得てもよい。
<酵素反応>
(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼは、シアニドドナー存在下でアルデヒドやケトンをシアノヒドリンに変換する合成反応を触媒し、また、その逆反応であるシアノヒドリンの分解反応を触媒する酵素である。
本発明では、ヒドロキシニトリルリアーゼ活性の測定方法として、例えば、シアン化カリウム存在下でベンズアルデヒドを基質とし、マンデロニトリルの生成量をHPLCにて測定する方法を挙げることができる。或いは、ラセミ体マンデロニトリルを基質とし、その分解を吸光度計にて吸収波長280nmを測定することで検出する方法も挙げられる。溶媒としては、シアノヒドリンの安定性などから中性より酸性とするため、クエン酸ナトリウム緩衝液を用いることが好ましい。合成反応はpH4.0以上、4.2以下程度、分解反応はpH5以上、5.5以下程度で行うことが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1: 天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼの取得
(1) (R)−ヒドロキシニトリルリアーゼの精製
ヤンバルトサカヤスデ(Chamberlinius hualienensis)を、鹿児島県にて、その異常発生が認められた2010年11月、2011年11月および2012年8月に捕獲した。捕獲したヤスデは、ドライアイスを入れた容器中で冷却し、使用するまで−80℃で保管した。図1は、生きているヤンバルトサカヤスデの写真である。
冷凍保存されていた上記ヤンバルトサカヤスデ(合計2kg)を、液体窒素中、乳鉢と乳棒を使って磨り潰した。得られた微粒子を、氷冷しつつ、20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中で3時間以上撹拌することによって懸濁した。得られた懸濁液を多層に重ねた綿ガーゼに注意深く通すことで、固形物を除去した。得られた溶液をサケ精液から得られた硫酸プロタミン(ナカライテスク社製)で30分間処理した後、4℃、28500×gで30分間遠心分離した。得られた上清から、以下に示す条件により酵素を精製した。なお、以下の操作は、0〜4℃で行った。
先ず硫安分画を行い、次いでカラムクロマトグラフィにより、上記上清から(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼを精製した。カラムクロマトグラフィでは、DEAE樹脂(TOSOH社製,「DEAE−TOYOPEARL(登録商標)−650M」)、疎水性樹脂(TOSOH社製,「Butyl−TOYOPEARL(登録商標)」−650M)、陰イオン交換カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製,「Q−Sepharose FF」)、強陰イオン交換カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製,「MonoQTM 5/50 GL」)、およびゲルろ過クロマトグラフィカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製,「Superdex 75」および「Superdex 200 10/300GL」)を用いた。また、精製工程毎に、以下に示す条件で酵素活性を測定した。以下、(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼを「R−ChHNL」と略記する。
(2) 酵素活性の測定
ヒドロキシニトリルリアーゼの酵素活性は、ベンズアルデヒドを基質とし、以下のとおりにして測定した。即ち、400mMクエン酸緩衝液(pH4.2,760μL)に、基質としてベンズアルデヒドの1.25M DMSO溶液(40μL)、適量の酵素液(最大100μL)を混合した。次に1M KCN(100μL)を加えて合成反応を開始し、22℃で5分間反応させた。反応後、反応液100μLを回収し、n−ヘキサン:2−プロパノール=85:15の混合液を加えて激しく撹拌し、4℃、16000gで3分間遠心分離した。有機層(500μL)を回収した。
得られた有機層(5μL)を、下記条件のHPLCで分析した。
カラム: キラルOJ−Hカラム(Daicel社製)
溶離液: n−ヘキサン:2−プロパノール=85:15
流速: 1mL/min
カラムオーブン温度: 30℃
検出: 254nm
保持時間: ベンズアルデヒド − 5.5分
(R)−マンデロニトリル − 12分
(S)−マンデロニトリル − 14分
また、基質であるベンズアルデヒドの消費は、280nmの吸光度測定によりモニターした。表1に、精製工程毎の酵素データを示す。
また、ラセミ体マンデロニトリルからベンズアルデヒドへの分解反応の活性は、以下のように測定した。2mMのラセミ体マンデロニトリルを含む100mMクエン酸緩衝液(pH5.0−5.5)に酵素溶液を添加し、緩やかに撹拌し、22℃で1〜2分間反応させ、ベンズアルデヒドの生成量を280nmの吸光度で測定した。ベンズアルデヒドの分子吸光係数としては、ε280=1.4mM-1cm-1を適用した。精製酵素のシアノヒドリン合成方向への活性は、シアノヒドリン分解方向の活性より2.6倍高かった。
実施例2: 天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼの構造の分析
(1) 分子質量と4次構造の分析
上記実施例1で精製されたR−ChHNLの単量体サブユニットのサイズを、分子量マーカー(Bio−Rad社製)を用いたSDS−PAGEにより分析した。分子量と4次構造は、GEヘルスケア社製のSuperdex 10/300GLを用いたゲルろ過クロマトグラフィにより求めた。詳細は、Dadashipourら,Journal of Biotechnology,153, pp.100−110(2011)(以下、当該文献を「Dadashipourら(2011)と略記する)を参照した。SDS−PAGEの結果を図2(A)に示す。図2(A)中、1は、上から97.4kDa、66.2kDa、45kDa、31kDa、21.5kDaおよび14.4kDaの分子量マーカーのレーンであり、2は精製R−ChHNLのレーンである。
SDS−PAGEとゲルろ過の結果から、R−ChHNLの分子質量は47.3kDaであり、分子質量24.8kDaのサブユニットのホモダイマーであることが明らかになった。
(2) 糖鎖の有無
糖鎖の有無は、Pierce Glycoprotein Staining kit(Thermo Scientific社製)を用いて確認した。詳しくは、SDS−PAGEゲルにおいて、グリコプロテインに含まれるcis−ジオールを過ヨウ素酸によりアルデヒドに酸化し、生成したアルデヒド基をシッフ塩基に変換して赤紫色に発色させ、糖鎖の有無を確認した。かかる反応でR−ChHNLの糖鎖の有無を確認した結果を、代表的なグリコプロテインである西洋ワサビペルオキシダーゼの結果と共に図2(B)に示す。図2(B)中、1はR−ChHNLのレーンであり、2は西洋ワサビペルオキシダーゼのレーンである。
(3) 分光分析
R−ChHNLを20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に溶解し、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製,「UV2600」)で210〜600nmの範囲で測定することにより、補欠分子族を検出した。また、R−ChHNLを、室温、pH7.0で、分光計(Jasco社製,「720 Circular Dichroism Spectrophotometer)により170〜300nmの範囲で分析した。さらに、赤外分光光度計(Waltham社製,「Perkin−Elmer IR Spectrum 100」)を用い、精製酵素の二次構造を推定した。R−ChHNLの紫外・可視・近赤外スペクトル、赤外スペクトル、および円偏光二色性スペクトルを測定した。それぞれの結果を図3(A)〜(C)に示す。
紫外・可視・近赤外スペクトルの測定結果(図3(A))によれば、R−ChHNLは補酵素FADを含まない。また、赤外スペクトルの測定結果(図3(B))によれば、1645/cmのピークから、R−ChHNLはβ−リッチなタンパク質であることが分かる。さらに、円偏光二色性スペクトルの測定結果(図3(C))によれば、222nmの円二色性から、R−ChHNLはα−リッチではないことが明らかとなった。
実施例3: 組換え型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼの製造
(1) R−ChHNLをコードするcDNAのクローニング:
ヤンバルトサカヤスデを氷温麻酔し、ピンセットを用いてその体節側方突起を集めた。取得された組織をtotal RNA分離用試薬(インビトロゲン社製,「TRIzol Reagent」)に添加し、ディスポーザブルホモジナイザー(Nippi社製,「BioMasher II」)を使ってホモジェナイズした。指示書に基づいてRNAを抽出した。5’/3’−RACEのためのcDNAを、Clontech Laboratories社製のSMART RACE cDNA Amplification KitとSMARTScribe Reverse Transcriptaseを使って合成し、RNase H(タカラバイオ社製)で処理した。
(2) プライマーの設計
in−gel digestion法(APROライフサイエンス研究所)を用いて若しくは用いずに、エドマン分解法により精製したR−ChHNLのアミノ酸配列を決定した。決定されたアミノ酸配列に基づいて、以下の縮重プライマーを設計した。
PKAAINPIQEf: 5'-CC(A/C/G/T)AA(A/G)GC(A/C/G/T)GC(A/C/G/T)AT(A/T/C)AA(C/T)CC(A/C/G/T)AT(A/T/C)CA(A/G)GA-3'(配列番号4)
APTALDIKf1: 5'-GC(A/C/G/T)CC(A/C/G/T)AC(A/C/G/T)GC(A/C/G/T)TT(A/G)GA(C/T)AT(A/C/T)AA-3'(配列番号5)
APTALDIKf2: 5'-GC(A/C/G/T)CC(A/C/G/T)AC(A/C/G/T)GC(A/C/G/T)CT(A/C/G/T)GA(C/T)AT(A/C/T)AA-3'(配列番号6)
APTALDIKr1: 5'-TT(A/G/T)AT(A/G)TC(C/T)AA(A/C/G/T)GC(A/C/G/T)GT(A/C/G/T)GG(A/C/G/T)GC-3'(配列番号7)
APTALDIKr2: 5'-TT(A/G/T)AT(A/G)TC(A/C/G/T)AG(A/C/G/T)GC(A/C/G/T)GT(A/C/G/T)GG(A/C/G/T)GC-3'(配列番号8)
AAINPIQEf: 5'-GC(A/C/G/T)GC(A/C/G/T)AT(A/C/T)AA(C/T)CC(A/C/G/T)AT(A/C/T)CA(A/G)GA-3'(配列番号9)
ATINPIQEf: 5'-GC(A/C/G/T)AC(A/C/G/T)AT(A/C/T)AA(C/T)CC(A/C/G/T)AT(A/C/T)CA(A/G)GA-3'(配列番号10)
LAINPIQEf1: 5'-TT(A/G)GC(A/C/G/T)AT(A/C/T)AA(C/T)CC(A/C/G/T)AT(A/C/T)CA(A/G)GA-3'(配列番号11)
LAINPIQEf2: 5'-CT(A/C/G/T)GC(A/C/G/T)AT(A/C/T)AA(C/T)CC(A/C/G/T)AT(A/C/T)CA(A/G)GA-3'(配列番号12)
LTINPIQEf1: 5'-TT(A/G)AC(A/C/G/T)AT(A/C/T)AA(C/T)CC(A/C/G/T)AT(A/C/T)CA(A/G)GA-3'(配列番号13)
LTINPIQEf2: 5'-CT(A/C/G/T)AC(A/C/G/T)AT(A/C/T)AA(C/T)CC(A/C/G/T)AT(A/C/T)CA(A/G)GA-3'(配列番号14)
AAINPIQEr: 5'-TC(C/T)TG(A/G/T)AT(A/C/G/T)GG(A/G)TT(A/G/T)AT(A/C/G/T)GC(A/C/G/T)GC-3'(配列番号15)
ATINPIQEr: 5'-TC(C/T)TG(A/G/T)AT(A/C/G/T)GG(A/G)TT(A/G/T)AT(A/C/G/T)GT(A/C/G/T)GC-3'(配列番号16)
LAINPIQEr1: 5'-TC(C/T)TG(A/G/T)AT(A/C/G/T)GG(A/G)TT(A/G/T)AT(A/C/G/T)GC(C/T)AA-3'(配列番号17)
LAINPIQEr2: 5'-TC(C/T)TG(A/G/T)AT(A/C/G/T)GG(A/G)TT(A/G/T)AT(A/C/G/T)GC(A/C/G/T)AG-3'(配列番号18)
LTINPIQEr1: 5'-TC(C/T)TG(A/G/T)AT(A/C/G/T)GG(A/G)TT(A/G/T)AT(A/C/G/T)GT(C/T)AA-3'(配列番号19)
LTINPIQEr2: 5'-TC(C/T)TG(A/G/T)AT(A/C/G/T)GG(A/G)TT(A/G/T)AT(A/C/G/T)GT(A/C/G/T)AG-3'(配列番号20)
NCPETHGCFAFf: 5'-AA(C/T)TG(C/T)CC(A/C/G/T)GA(A/G)AC(A/C/G/T)CA(C/T)GG(A/C/G/T)TG(C/T)TT(C/T)GC(A/C/G/T)TT-3'(配列番号21)
NCPETHGCFAFr: 5'-AA(A/C/G/T)GC(A/G)AA(A/G)CA(A/C/G/T)CC(A/G)TG(A/C/G/T)GT(C/T)TC(A/C/G/T)GG(A/G)CA(A/G)TT-3'(配列番号22)
なお、配列の前の記号は、縮重プライマーを設計するもとになったアミノ酸配列と、最後のfとrはcDNA塩基配列に対応するプライマーアニーリングの方向を示す。
(3) PCR
上記縮重プライマーとポリメラーゼ(Thermo Fisher Scientific社製,「Dream Taq DNA polymerase」,および,Clontec Laboratories製,「Advantage GC2 Polymerase Mix」)を用い、PCRを行った。反応は、94℃で3分間の後、(i)94℃で1分間、(ii)40℃で1分間、(iii)72℃で1分間の(i)〜(iii)のサイクルを70回繰返して行った。次いで、ゲル(Promega社製,「Wizard SV PCR and Gel Clean−Up System」)を使ってPCR産物を精製し、ベクター(Agilent Technologies社製,「pBluescript II SK (+)」)のEco RV認識部位にライゲーションした。DNA配列を、遺伝子解析器(Applied Biosystems社製,「3500Genetic Analyzer」)を使って決定した。得られた配列をアッセンブルし、シーケンスアセンブリソフトウェア(Genetyx社製,「ATGC and Genetyx」)を使って解析した。
得られたDNA配列に基づいて、以下の遺伝子特異的プライマーを設計した。
R-ChHNL-1:5'-CTGACTGAAACCTTCGAATGCACCACTCG-3'(配列番号23)
R-ChHNL-2:5'-GGCATAATGAATCTTGTCGCCGTTTGGAAC-3'(配列番号24)
R-ChHNL-3:5'-TTTGGTAGTGGACCAGCGAGCAGGTTGCAC-3'(配列番号25)
R-ChHNL-4:5'-ATAATCCCTTTAAAGTTCAGGTGCAATTAG-3'(配列番号26)
R-ChHNL-5:5'-ATACCAACACATCAAACTTACCAAGCTTAG-3'(配列番号27)
R-ChHNL-6:5'-ATTATGGCTTACGATTTCGTCGGTGGTCC-3'(配列番号28)
上記プライマーとDNAポリメラーゼ(東洋紡社製,「KOD plus neo」)を使い、PCRを行った。鋳型としては、SMART RACE cDNA Amplification Kitで作製した上記のcDNAを用いた。反応は、94℃で2分間の後、(i)98℃で10秒間および(ii)68℃で1分間のサイクルを35回繰返して行った。PCR産物は、ベクター(Agilent Technologies社製,「pBluescript II SK (+)」)にライゲーションし、配列を決定した。その他のプロトコールは、上記と同様にした。全長cDNA配列は、エラーを避けるため、18の独立したクローンを用いて決定した。
得られたcDNAの塩基配列と推定アミノ酸配列を図4に示す。図4中、アスタリスクは終止コドンを示し、シグナルペプチドはイタリック体で記載しており、矢印はプライマーのアニーリングサイトを示し、アミノ酸残基の下線は決定されたアミノ酸配列を示す。以上のとおり、ヤンバルトサカヤスデ由来の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ(R−ChHNL)をコードするcDNAをクローニングした。推定アミノ酸配列は、Blastp searchでのいかなるタンパク質とも相同性を示さなかった。
(4) 酵母系発現ベクターの構築
遺伝子特異的プライマーであるChHNL−4およびChHNL−5と、DNAポリメラーゼ(Agilent Technologies社製,「PfuUltra II fusion HS DNA polymerase」)を用い、cDNA全長を増幅した。PCRは、95℃で2分間の後、(i)95℃で20秒間、(ii)40℃で20秒間、(iii)72℃で1分間のサイクルを30回繰返し、最後に72℃で3分間反応させた。反応液を制限酵素(New England Biolabs社製,「Dpn I」)で、37℃で1時間処理した。DNA断片をゲルで精製し、ベクター(Stratagene社製,「pBluescript II SK (+)」)にライゲーションし、上記と同様に配列を決定した。
成熟ChHNLをコードするcDNA断片をプラスミドベクターpPICZαA(Life technologies社)へ挿入するために、以下の制限酵素認識サイトを含むプライマーを設計した。
XhoIkex2-mChuaHNL:5'-GCGCTCGAGAAAAGACTGACTTGTGATCAACTTCCC-3'(配列番号29)
ChuaHNLstop-XbaI:5'-CGCTCTAGATTAGTAAAAAGCAAAGCAACCGTGGGTTTC-3'(配列番号30)
上記プライマーを用いて上記と同様にPCRを行い、得られたPCR複製物をベクター(Stratagene社製,「pBluescript II SK (+)」)にライゲーションして塩基配列を確認した後、挿入配列をプラスミドベクター(Life Technologies社製,「pPICZαA」)の制限酵素認識部位にライゲーションした。
(5) 形質転換体の作製と組換え型R−ChHNLの精製
作製されたプラスミドベクターを、制限酵素SacIを用いて37℃で3〜4時間消化した。陽性の酵母クローンを得るため、EasySelect Pichia Expression Kit(Life technologies社)と、GS115系統のピキア・パストリス(Pichia pastoris)酵母を使用した。Pichiaコンピテント細胞の調製法は、Joan Lin−Cereghinoら,BioTechniques,38,pp.44−48(2005)の方法に従った。形質転換体をヒスチジン添加最少グリセロール培地で培養した後、タンパク質の発現を誘導するために、さらにヒスチジン添加最少メタノール(0.5%)培地4L中、30℃で4日間培養した。
培地をタンジェントフォロー・フィルトレーションシステムで濃縮し、陰イオン交換樹脂カラム(DEAE−TOYOPEARL(登録商標)−650M,カラム体積:25mL)に添加した。非吸着画分を疎水性相互作用クロマトグラフィ(Butyl−TOYOPEARL(登録商標)−650M)で分離し、さらにSuperdex 10/300GLでR−ChHNLを精製した。
実施例4: R−ChHNLの基質
R−ChNHLの基質を、シアノヒドリン合成反応によりスクリーニングした。R−ChNHLの基質を決定するために、酵素試料として強陰イオン交換カラム画分(25μL,表1)を2.5U用い、ブランクとしては、酵素試料の代わりに再蒸留水を用いた。300μmolのクエン酸ナトリウム緩衝液(pH4.2)、酵素試料、50mMのカルボニル化合物および100mMのKCNを混合し(総量:1mL)、25℃で5分間反応させた。結果は、検出波長を254nmとするOJ−Hキラルカラムを用いたHPLCでモニターし、反応生成物を検出することにより活性の有無を決定した。
但し、ベンズアルデヒド以外の芳香族被検化合物は、50mM DMSO溶液(4μL)として反応させた。被検化合物4−ブロモベンズアルデヒドのための抽出溶媒は、n−へキサン:2−プロパノール=19:1の混合溶媒を用いた。被検化合物が水に溶解しない場合には、30℃、1000〜1500rpmで撹拌した。また、脂肪族の被検化合物の場合、反応時間を2時間とした。反応後、反応液400μLにジイソプロピルエーテル600μLを加え、激しく撹拌し、16000gで5分間遠心分離した。上清400μLに、無水酢酸20μL、ピリジン10μL、4−ジメチルアミノピリジン2〜3mgを加え、37℃で一晩反応させた。引き続き、シアノヒドリン化合物と4−ジメチルアミノピリジンの気化のため、60℃で2〜4時間反応させた。さらに水100μLとエチルアセテート400μLを加え、遠心後、上清150μLを試料とした(Effenberger,Stelzer,Tetrahedron: Asymmetry,6,pp.283−286(1995)を参照)。生成化合物の検出には、Supelco β−Dex 325カラムを接続したガスクロマトグラフィ(Shimadzu社製「GC−2014」)を用い、キャリアガスとしてはヘリウムを使用した。活性が認められた化合物を表2に示す。
表2に示す結果のとおり、R−ChNHLは、一般的な天然NHLが基質とするベンズアルデヒドのみならず、様々なカルボニル化合物を基質とすることが明らかとなった。
実施例5: R−ChHNLの動力学的分析
基質として様々なアルデヒド化合物またはマンデロニトリルのラセミ体を用い、上記と同様の条件で酵素反応を行った。但し、基質としてベンズアルデヒドを用いた場合には、反応条件をpH5.2で且つ22℃、またはpH5.8で且つ35℃とした。基質として様々な濃度のベンズアルデヒドを使い、酵素活性測定はそれぞれ3回行い、その平均値を算出して基質飽和曲線を作成し、Vmax、Kmおよびkcatの値を求めるためHanes−Woolfプロットした。結果を表3に示す。なお、表3中の「S.A.」は比活性であり、相対比活性は、基質としてベンズアルデヒドを用いてpH5.2,22℃で反応させた場合に対する比活性である。また、基質としてマンデロニトリルラセミ体を用いた場合は分解反応になるので、比活性は算出できない。
表3に示す結果のとおり、R−ChNHLは、これまで知られているHNLに比べても、補酵素としてFADを利用しないにもかかわらず最も高いkcat/Km値を示した。
実施例6: R−ChHNLの温度およびpHに対する安定性
上記実施例1で得た天然型R−ChHNLまたは上記実施例3で得た組換え型R−ChHNLについて、最終濃度400mMのクエン酸塩緩衝液と基質としてベンズアルデヒドを用い、上記と同様の酵素反応条件により温度とpHに対する安定性を試験した。温度による安定性は、pH7.0の反応液中、0〜70℃の温度範囲で1時間反応させることにより測定した。また、反応温度を20℃に設定し、pHを3〜11に変更して同様に反応を行った。この際、pH3〜8ではクエン酸−リン酸緩衝液を用い、pH8〜11ではグリシン−NaOH緩衝液を用いた。酵素活性は、Dadashipourら(2011)に記載の方法に従って測定した。天然型R−ChHNLの反応pHと比活性および残存活性との関係をそれぞれ図5(A)と図5(B)に示し、反応温度と比活性および残存活性との関係をそれぞれ図6(A)と図6(B)に示す。また、両R−ChHNLの反応温度および反応pHと残存活性との関係をそれぞれ図7(A)と図7(B)に示す。
図5のとおり、天然由来R−ChHNLはpH5.8で最大活性を示し、pH4でも最大活性値の約10%の活性を示す。この至適pHは、他の植物由来HNLの至適pHである5.1より高い。また、図5(B)のとおり、天然由来R−ChHNLは広いpH範囲において安定性を示すことが分かる。
また、図5のとおり、天然由来R−ChHNLは、0〜70℃という広い温度範囲で活性を示し、35℃が至適温度であり、60℃以下で高い活性を示すことが明らかとなった。なお、既知の植物由来HNLの中で最も安定なのは、アーモンド由来のHNLであり、60℃で1時間保持しても安定であると記載されている(Woker,Rら,Methods Enzymol.,228,pp.584−590(1994);Jansen,I.ら,Biotechnol.Appl.Biochem.,15,pp.90−99(1992))。しかし、最も安定なアーモンド由来のHNLでも、75℃では30分間で完全に失活する。それに対して本発明に係るR−ChHNLの活性は、図5のとおり60℃では1時間超の保持でも維持されることが予想され、75℃で1時間保持しても20%の活性が維持されている。このように本発明に係るR−ChHNLは、既知のHNLに比べて安定性が高いといえる。
さらに、図6のとおり、組換え型R−ChHNLは、天然由来R−ChHNLほどpHや温度に対して安定ではないものの、一般的な酵素に比べれば十分に高い安定性を有することが示された。
実施例6: R−ChHNLの活性阻害剤の検討
R−ChHNLについて、活性阻害剤につき実験した。上記と同様の酵素反応条件において、実施例1で得た天然由来R−ChHNLを用い、1mMまたは0.1mMの濃度の被検化合物を反応液に加え、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中、20℃で60分間反応を行った。残存活性を3回測定した。その平均値を表4に示す。
表4に示す結果のとおり、試験した被検化合物のうち、阻害活性を示すものはわずかしかなかった。例えばスルフヒドリル試薬であるヨード酢酸とヨードアセトアミドは、10mMまで濃度を上げた場合にR−ChHNLの活性を阻害した。同じ傾向は、有名なセリンプロテアーゼ阻害剤であるPMSFでも認められた。チオシアン酸アンモニウムは、トウダイグサ科植物であるパラキノゴムおよびバリオスペルマムに由来するS−HNLを強く阻害するが、本発明に係るR−ChHNLは阻害しなかった。金属の中では、水銀イオンと銀イオンが30〜40%の阻害活性を示したのみであった。以上の結果のとおり、本発明に係るR−ChHNLは、従来酵素に対する様々な活性阻害剤の存在下でも安定した活性を示すことが明らかとなった。

Claims (9)

  1. 下記(1)〜(3)の何れかのアミノ酸配列を有する(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ。
    (1) 配列番号3に示されるアミノ酸配列;
    (2) 上記(1)に規定されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠損、置換および/または付加されたアミノ酸配列であり、且つ当該アミノ酸配列を有する(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼと比較して維持されているか或いは高いアミノ酸配列;
    (3) 上記(1)に規定されるアミノ酸配列に対して少なくとも30%の相同性を有するアミノ酸配列であり、且つ当該アミノ酸配列を有する(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼと比較して維持されているか或いは高いアミノ酸配列。
  2. 上記(1)〜(3)の何れかのアミノ酸配列を有するサブユニットの二量体である請求項1に記載の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ。
  3. キャンベルリニアス属(Chamberlinius)由来のものである請求項1または2に記載の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ。
  4. ヤンバルトサカヤスデ(Chamberlinius hualienensis)由来のものである請求項3に記載の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ。
  5. 下記(4)〜(6)の何れかの塩基配列を有する(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子。
    (4) 配列番号2に示される塩基配列;
    (5) 上記(4)に規定される塩基配列において、1または数個の塩基が欠損、置換および/または付加された塩基配列であり、且つ当該塩基配列によりコードされた(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が、配列番号2に示される塩基配列によりコードされた天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼと比較して維持されているか或いは高い塩基配列;
    (6) 上記(4)に規定される塩基配列に対して少なくとも30%の相同性を有する塩基配列であり、且つ当該塩基配列によりコードされた(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼのヒドロキシニトリルリアーゼ活性が、配列番号2に示される塩基配列によりコードされた天然型(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼと比較して維持されているか或いは高い塩基配列。
  6. 配列番号1に示される塩基配列を有する請求項5に記載の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子。
  7. 請求項5または6に記載の(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子を含むことを特徴とするベクター。
  8. 請求項7に記載のベクターにより形質転換されたものであることを特徴とする形質転換体。
  9. (R)−ヒドロキシニトリルリアーゼを製造するための方法であって、
    請求項8に記載の形質転換体を培養して培養物を得る工程、および、
    上記培養物から(R)−ヒドロキシニトリルリアーゼを精製する工程
    を含むことを特徴とする方法。
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