JP2015167241A - 受光素子およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 暗電流を増大させることなく、近赤外の長波長側に受光感度を拡大することができる、受光素子等を提供する。【解決手段】本発明の受光素子は、InP基板1の上に位置し、InGaAs層3aとGaAsSb層3bとが交互に積層されたタイプ2の多重量子井戸構造の受光層3を備え、InGaAs層またはGaAsSb層の層内において上面または下面へと、そのInGaAsまたはGaAsSbのバンドギャップエネルギが小さくなるように、厚み方向に組成の勾配が付いて面のバンドギャップエネルギが平均組成のバンドギャップエネルギよりも小さくされており、該面でのタイプ2遷移が、平均組成でのタイプ2遷移よりも長波長化している。【選択図】 図2

Description

本発明は、受光素子およびその製造方法であって、より具体的には、近赤外域に受光感度を持つタイプ2の多重量子井戸構造(Multi-Quantum Well)において、暗電流を増大させることなく、より一層長波長域にまで受光感度を拡大することができる受光素子およびその製造方法に関するものである。
III−V族化合物のInP系半導体は、バンドギャップエネルギが近赤外域に対応することから、通信用、夜間撮像用などの受光素子の開発を目的に、多数の研究開発が行われている。
たとえばInP基板上に、InGaAs/GaAsSbのタイプ2のMQWを形成し、p型またはn型のエピタキシャル層によるpn接合によってカットオフ波長2.39μmのフォトダイオードが提案され、波長1.7μm〜2.7μmの感度特性が示されている(非特許文献1)。
また、InGaAs5nmとGaAsSb5nmとを1ペアとして150ペア積層したタイプ2MQWの受光層を備える受光素子の波長1μm〜3μmの感度特性(200K、250K、295K)が示されている(非特許文献2)。
R.Sidhu, et.al. "A Long-Wavelength Photodiode on InP Using Lattice-Matched GaInAs-GaAsSb Type-II Quantum Wells, IEEE Photonics Technology Letters, Vol.17, No.12(2005), pp.2715-2717 R.Sidhu, et.al. "A 2.3μm Cutoff Wavelength Photodiode on InP Using Lattice-Matched GaInAs-GaAsSb Type-II Quantum Wells", 2005 Intenational Conference on Indium Phosphide and Related Materials, pp.148-151
上記の半導体素子によるフォトダイオードでは、利用分野を広げるために、受光感度をできるだけ長波長側に拡大したい。しかしながら、タイプ1とタイプ2とを問わずバンドギャップエネルギが小さくなるほど暗電流は増大する傾向にある。とくに暗電流の主成分である拡散電流および生成再結合電流については、バンドギャップが小さくなるほど増大する解析解が得られている。このため、暗電流についてはバンドギャップエネルギ以外の要因を改良しながら、バンドギャップエネルギを小さくすることで受光感度の長波長化をはかる方針が追求されている。
本発明は、暗電流を増大させることなく、近赤外の長波長側に受光感度を拡大することができる、受光素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の受光素子は、III―V族半導体による受光素子である。この受光素子は、III―V族半導体基板の上に位置し、第1の半導体層と第2の半導体層とが交互に積層されたタイプ2の多重量子井戸構造の受光層を備え、第1の半導体層の層内において、第2の半導体層と接する上面または下面へと、その第1の半導体層のバンドギャップエネルギが小さくなるように厚み方向に組成の勾配が付いて前記面のバンドギャップエネルギが平均組成のバンドギャップエネルギよりも小さくされており、該面でのタイプ2遷移が、平均組成でのタイプ2遷移よりも長波長化していることを特徴とする。
上記の構成では、バンドギャップエネルギが小さくなる組成勾配が付いた層の端面(上面または下面)で、そのバンドギャップエネルギは最も小さくなる。すなわち価電子帯は最も高いエネルギ位置をとり伝導帯は最も低いエネルギ位置をとる。このため、第1の半導体層が、タイプ2の多重量子井戸構造において価電子帯が高いほうの層か、または価電子帯が低いほうの層か、に関係なく、タイプ2の遷移における遷移巾(タイプ2遷移におけるエネルギ差)は小さくなる。
すなわち、(1)第1の半導体層が、価電子帯が高いほうの層の場合は、受光の時、当該第1の半導体層の価電子帯の電子は、第2の半導体層の伝導帯へとタイプ2の遷移を行う。このとき当該第1の半導体層の価電子帯は、上述の組成の勾配によってエネルギ位置が高くなっているので、タイプ2の遷移におけるエネルギ差は小さくなる。結果、長波長側への受光感度の拡大がなされる。
また、(2)第1の半導体層が、価電子帯が低いほうの層の場合は、受光の時、当該第2の半導体層の価電子帯の電子が、第1の半導体層の伝導帯へとタイプ2の遷移を行う。このとき当該第1の半導体層の伝導帯は、上述の組成の勾配によってエネルギ位置が低くなっているので、タイプ2の遷移におけるエネルギ差は小さくなる。結果、長波長側への受光感度の拡大がなされる。
要は、第1の半導体層が、価電子帯が高いほうの層でもまたは価電子帯が低いほうの層でも、タイプ2の遷移におけるエネルギ差は小さくなり、感度の長波長化が実現する。
暗電流については次のとおりである。上記の第1の半導体層で最もバンドギャップが小さくなる端面と逆側の端面では、バンドギャップは最も大きくなる。第1の半導体層の平均組成に対応するバンドギャップがこの第1の半導体層における平均的なバンドギャップである。暗電流は、この平均的なバンドギャップエネルギで決まるので、たとえば、第1の半導体層の平均組成を基準として、暗電流を一定基準に保持しながら、一方の端面でのバンドギャップの最小化によって長波長化を実現することができる。
なお、第1の半導体層や第2の半導体層における、第1、第2は積層の順序などとは関係ない。たとえば「第1の」を「一方の」に、「第2の」を「他方の」に置き換えてもよい。また、第1の半導体層は、タイプ2の多重量子井戸構造のバンド構造において価電子帯が高いほうの層でも低いほうの層でもよい。
第2の半導体層内において、第1の半導体層でバンドギャップエネルギが小さくなる面に接する該第2の半導体層の面へと当該第2の半導体層のバンドギャップエネルギが小さくなるように厚み方向に組成の勾配を付けて第2の半導体層の面におけるバンドギャップエネルギが該第2の半導体層の平均組成のバンドギャップエネルギよりも小さくされていてもよい。
上記の構成によって、第2の半導体層においてもバンドギャップを小さくしてその最小化が実現する面を、第1の半導体層においてバンドギャップの最小化が実現している面と、接することができる。このバンドギャップ最小化が実現した面同士を接することで、当該界面では次のバンド構造が実現する。すなわち、価電子帯が高いほうの層におけるその価電子帯はエネルギ位置が高くなり、価電子帯が低いほうの層における伝導帯はエネルギ位置が低くなる。この結果、タイプ2の遷移を伴う受光が生じたとき、価電子帯が高いほうの層の価電子帯にいた電子は、価電子帯が低いほうの層の伝導帯に遷移して、エネルギ差の下限化が実現する。この界面をエネルギ差下限界面と呼ぶ。
第1および第2の半導体層において、上記下限界面と反対側の面では、組成勾配の付け方から、両方の層ともにバンドギャップは最大となる。この界面をエネルギ差上限界面と呼ぶ。エネルギ差下限界面とエネルギ差上限界面とは厚み方向に交互に位置する。
組成の勾配が付された、第1の半導体層および/または第2の半導体層において、バンドギャップが小さくなる極限位置の端面での組成は、それぞれの半導体層の平均組成に対して、格子定数の変化に換算して、格子不整合度が0.2%を超えるようにするのがよい。
これによって、受光素子の感度の範囲を長波長側に拡大しながら、暗電流を低く抑制することができる。
第1の半導体層および/または第2の半導体層における平均組成は、格子定数の変化に換算して、III―V族半導体基板との格子不整合度が±1%以内であるようにするのがよい。
これによって、各半導体層のIII―V族半導体基板に対する平均的な格子不整合度を一定の範囲内に制限することができ、厚み方向に組成勾配を付けながらミスフィット転位の発生を防ぐことができる。
第1の半導体層および第2の半導体層のうち、価電子帯のポテンシャルエネルギが高いほうの半導体層に、Ga、AsおよびSbのうち少なくとも一つを含むようにするのがよい。
これによって、タイプ2の多重量子井戸構造において、価電子帯の高いほうの半導体層にGaAsSbなどのIII−V族半導体を用いることができる。
第1の半導体層および第2の半導体層のうち、価電子帯のポテンシャルエネルギが低いほうの半導体層に、In、GaおよびAsのうち少なくとも一つを含むようにするのがよい。
これによって、タイプ2の多重量子井戸構造において、価電子帯の低いほうの半導体層にInGaAsなどのIII−V族半導体を用いることができる。
多重量子井戸構造において、InxGa1−xAs層における平均組成xaveを(0.38≦xave≦0.68)とし、GaAs1−ySb層における平均組成yaveを(0.36≦yave≦0.62)となるように形成するのがよい。
これによって、タイプ2の多重量子井戸構造を形成する際、InGaAs層およびGaAsSb層の基板に対する平均的な格子不整合度を一定の範囲内に収めることが可能になり、ミスフィット転位を導入することなく容易に厚み方向に上述の組成勾配を付けることができる。
なお、InxGa1−xAs層における平均組成xaveが(0.38≦xave≦0.68)とは、「InxGa1−xAsという化学式の表示を有する化合物半導体層において、その中のxはその化合物半導体層内で厚み方向に勾配が付いていて、当然ながら、厚み方向にわたる平均値xaveが存在するが、その平均値xave
の範囲が、0.38≦xave≦0.68、である。」ということを示している。GaAs1−ySb層のyaveについても同様である。
上記のInxGa1−xAs層の平均組成範囲、およびGaAs1−ySb層における平均組成範囲を、端から端まで全範囲を利用した場合、上記の端面において3元系の化合物半導体とならない場合が生じる。そのような場合、たとえば端面でGaAsSbが形成されずにGaSbが形成される場合であっても、端面においてGaSb層を積層することになったとしても、1原子層程度であればミスフィット転位を導入することなく半導体層を成長することができる。また、暗電流を増大させることもない。従って上記端面における半導体結晶については、幅広く柔軟に解釈すべきである。
III―V族半導体基板をInP基板とするのがよい。
これによって入手が容易な大口径のInP基板を用いて、効率よく受光素子を大量生産することができる。
本発明の受光素子の製造方法では、III―V族半導体による受光素子を製造する。この製造方法は、InP基板の上に、第1の半導体層と第2の半導体層とを交互に積層してタイプ2の多重量子井戸構造の受光層を形成する工程を備え、その多重量子井戸構造の形成工程では、第1の半導体層の層内において第2の半導体層と接する上面または下面へと、その第1の半導体層のバンドギャップエネルギが小さくなるように、厚み方向に組成の勾配を付け、前記面のバンドギャップエネルギを平均組成のバンドギャップエネルギよりも小さくして、該面でのタイプ2遷移を、平均組成でのタイプ2遷移よりも長波長化することを特徴とする。
この方法によって、暗電流はそのままにして(増大させることなく)、受光域を長波長側に拡大することができる。
多重量子井戸構造の形成工程では、第2の半導体層内において、第1の半導体層でバンドギャップエネルギが小さくなる面に接する該第2の半導体層の面へと当該第2の半導体層のバンドギャップエネルギが小さくなるように厚み方向に組成の勾配を付けて前記第2の半導体層の面におけるバンドギャップエネルギを該第2の半導体層の平均組成のバンドギャップエネルギよりも小さくするのがよい。
これによって、エネルギ差下限界面を簡単に形成することができ、タイプ2の遷移におけるエネルギ差を一層小さくすることができる。その場合、当然、エネルギ差上限界面も交互に形成される。このため平均組成は変化せず、実質的なバンドギャップエネルギも変化しないため、暗電流を低いままに維持することができる。
全有機金属気相成長法により多重量子井戸構造を形成し、第1の半導体層、もしくは第1の半導体層および第2の半導体層に、組成の勾配を付けるとき、全有機金属気相成長法の成長機構に組み込まれているマスフローコントローラ(MFC:Mass Flow Controller)を調節することで、組成の勾配を付けるのがよい。
全有機金属気相成長法を用いることで、成長温度を下げることができ、良質のエピタキシャル積層体を得ることができる。また全有機金属気相成長法では、マスフローコントローラによって第1および第2の半導体層の各成分の供給量を調整して組成を意図するように変化させる。マスフローコントローラによる供給量の調整は高精度で正確なので、安定して再現性よく上述の勾配を付けることができる。
本発明の受光素子等によれば、暗電流を低く保ちながら、近赤外の長波長側に受光感度を拡大することができる。
本発明の実施の形態における受光素子を示す図である。 MQWを構成するInGa1−xAs層およびGaAs1−ySb層の組成の勾配(傾斜)を説明するための図であり、(a)は半導体層、(b)はその半導体層内の組成の分布、を示す図である。 InGaAsおよびGaAsSbの両方ともに組成傾斜がついた場合のバンド構造を示す図である。 GaAsSbのみに組成傾斜がつきInGaAs組成はフラットな場合のバンド構造を示す図である。 全有機MOVPE法の成膜装置の配管系統等を示す図である。 受光素子50の製造方法のフローチャートである。
図1は、本発明の実施の形態における受光素子10を示す図である。受光素子10は、InP基板1の上に次の構成のInP系半導体積層構造(エピタキシャルウエハ)を有する。図1では、光はInP基板側から入射されるが、エピタキシャル側から入射してもよい。なお、多重量子井戸構造をMQW(Multi Quantum Well)と略記する。
(InP基板1/InPまたはInGaAsバッファ層2/タイプ2(InGaAs/GaAsSb)MQWの受光層3/InGaAs拡散濃度分布調整層4/InP窓層5)
InP窓層5から深さ方向に延びるp型領域6は、SiN膜の選択拡散マスクパターン36の開口部から、p型不純物のZnを選択拡散することで形成する。受光素子10の周縁部の内側に、平面的に周囲限定されて拡散導入されるという形態は、上記SiN膜の選択拡散マスクパターン36を用いて選択拡散することによって達せられる。p型領域6にはAuZnによるp側電極11が、またInP基板1の裏面にはAuGeNiのn側電極12が、それぞれオーミック接触するように設けられている。この場合、InP基板1にはn型不純物がドープされ、所定レベルの導電性を確保されている。InP基板1の裏面には、またSiONの反射防止膜35を設け、InP基板の裏面側から光を入射する構造となっている。タイプ2MQWの受光層3には、上記のp型領域6の境界フロントにpn接合が形成され、上記のp側電極11およびn側電極12間に逆バイアス電圧を印加することにより、n型不純物濃度が低い側(n型不純物バックグラウンド)により広く空乏層を生じる。MQWの受光層3におけるバックグラウンドは、n型不純物濃度(キャリア濃度)で5E15cm−3程度またはそれ以下である。そして、pn接合の位置は、多重量子井戸の受光層3のバックグラウンド(n型キャリア濃度)と、p型不純物のZnの濃度プロファイルとの交点で決まる。拡散濃度分布調整層4は、受光層3を構成するMQW内でのp型不純物の濃度分布を調整するために配置されるが、拡散濃度分布調整層4はなくてもよい。受光層3内では、Zn濃度は5E16cm−3以下にするのがよい。
図2は、受光層3におけるタイプ2のMQWを構成するInGa1−xAs層3aおよびGaAs1−ySb層3bの組成の勾配(傾斜)を説明するための図である。図2(a)は半導体層3a,3bを示し、(b)は半導体層3a,3b内の組成x,yの分布を示す図である。InGa1−xAs層3aの組成xは、図2(b)に示すように厚み中央で0.53であり、また、平均組成xaveは、0.53であり、InPと格子整合しているが、界面Kでは0.63近くに上昇している。InGa1−xAs層3aの逆側、すなわち界面Lではx=0.43付近に減少している。要するにInGa1−xAs層3aの層内で組成xは、界面Lにおける0.43付近から界面Kにおける0.63付近にまで上昇している。
一方、GaAs1−ySb層3bの組成yは、厚み中央でy=0.49付近であり、また、平均組成yaveは、0.49であり、InPと格子整合しているが、界面Kに向かって組成yは0.55付近にまで上昇する。GaAs1−ySb層3bの層内では、組成yは界面Lでの0.43から界面Kにおける0.55付近へと増大する。
なお、図2(a),(b)では、組成x,yともに厚み方向にリニアに変化するように描いており、厚み中央での組成と平均組成が一致しているが、組成勾配の線形性は必須ではなく、ステップ状に増大してもよいし、波打ちながらまたはリップルを伴いながらマクロ的に組成の勾配が認められればよい。よって、厚み中央での組成と平均組成は必ずしも一致する訳ではない。
図3は、図2に示す組成x,yの勾配が付いたMQWのバンド構造を示す。InGa1−xAs層3aは成長方向(上面に向かう厚み方向)にIn組成xが減少している。これに対してGaAs1−ySb層3bでは成長方向にSb組成yが増大している。このような組成傾斜によって、図2および3に示すように、界面K,Lができる。界面Kでは、InGa1−xAs層3aの組成xも、またGaAs1−ySb層3bの組成yも、最大値をとる。この組成変化を受けて、図3に示すように、界面Kに向かって両側の半導体層のバンドギャップは減少する。タイプ2の遷移では、価電子帯が高いほうのGaAs1−ySb層3bの価電子帯の電子が、光のエネルギを吸収してInGa1−xAs層3aの伝導帯に遷移する。このタイプ2の遷移によって、GaAs1−ySb層3bの価電子帯には正孔が、またInGa1−xAs層3aの伝導帯には電子が、対をなすように生成する(正孔・電子対の生成)。この界面KにおけるGaAs1−ySb層3bの価電子帯と、InGa1−xAs層3aの伝導帯とのエネルギ差が最小エネルギΔEminであり、対応する光の波長は長波長の限界λmaxとなる。上記の界面Kを、エネルギ差下限界面と呼ぶことができる。また、これとは逆に界面Lをエネルギ差上限界面と呼ぶことができる。
上記したように、本発明の実施の形態におけるポイントをまとめると次のとおりである。
1.長波長化:
上記のMQWでは、半導体層においてバンドギャップエネルギが小さくなる組成勾配が付いた層の端面(上面または下面)で、そのバンドギャップエネルギは最も小さくなる。すなわち、その端面では、半導体層内で価電子帯は最も高いエネルギ位置をとり、かつ伝導帯は最も低いエネルギ位置をとる。このため、InGa1−xAs層3aおよびGaAs1−ySb層3bの両方のバンドギャップが小さくなる端面が接する界面Kでは、価電子帯と伝導帯とが最も接近する。GaAs1−ySb層3bの価電子帯は、InGa1−xAs層3aの価電子帯よりも高いエネルギ位置にあるので、上限の長波長の光を受光するとき、GaAs1−ySb層3bの価電子帯の電子がInGa1−xAs層3aの伝導帯へとタイプ2の遷移をしてGaAs1−ySb層3bの価電子帯には正孔が生じる。このときの最小エネルギ差ΔEminを図3に示す。GaAs1−ySb層3bにおいて価電子帯が最も高くなる位置に正孔が存在する確率は、バンドのポテンシャル上(正孔に対しては上下逆のポテンシャルになる)、GaAs1−ySb層3bの層内では大きく、かつInGa1−xAs層3aの伝導帯では最も低くなる位置に電子が位置する確率は、ポテンシャル上、InGa1−xAs層3aの層内では大きい。このため、受光によって正孔/電子のペアが生成する確率は高くなる。換言すればこのタイプ2の受光効率は高い。
MQWを形成する半導体層の層内全体のバンドギャップが一様に小さくならなくても、図3に示すように半導体層の端の面付近でバンドギャップエネルギが小さくなれば、カットオフ波長は長波長側に確実に拡大される。言い換えれば、受光素子の受光域を長波長側に拡大することができる。
2.暗電流
図3に、半導体層3a,3bの平均組成に対応する価電子帯および伝導帯を破線で示す。この破線は、InPに格子整合する組成の場合のバンド構造の価電子帯または伝導帯とみることができる。図3によれば、各半導体層で最もバンドギャップが小さくなる端面と逆側の端面(すなわち界面L)では、バンドギャップは最も大きくなる。上記のように界面Kではバンドギャップは最も小さくなる。半導体層の平均組成に対応するバンドギャップがこの半導体層における平均的なバンドギャップである。暗電流は、この平均的なバンドギャップエネルギに対応して決まる。このため、半導体層の平均組成を基準として、暗電流を一定基準に保持しながら、一方の端面(エネルギ差下限界面K)でのバンドギャップの最小化によって長波長化を実現することができる。
図4は、本発明の実施の形態1の受光層におけるバンド構造(図3)に対して変形した変形例を示す図である。この図4に示す変形例の受光層3を持つ受光素子も本発明の受光素子である。図3に示すバンド構造は、InGa1−xAs層3aおよびGaAs1−ySb層3bの両方の組成x,yが共に、界面Kに向かって増大する傾斜組成を有していた。しかし、図4の変形例では、GaAs1−ySb層3bの層内でのみ界面Kに向かって組成yが増大する傾斜組成をもち、InGa1−xAs層3aは層内に傾斜組成はない。この図4の場合、界面Kにおいて、GaAs1−ySb層3bの価電子帯は高くなるが、InGa1−xAs層3aの伝導帯はフラットなので、エネルギ差ΔEminは、図3に示す場合ほど小さくならない。しかし、両方の層3a3bともに傾斜組成がない場合に比べて、確実にタイプ2の遷移におけるエネルギ差を小さくでき、受光域の長波長化に寄与することができる。
図5に全有機気相金属成長法の成膜装置60の配管系統等を示す。反応室(チャンバ)63内に石英管65が配置され、その石英管65に、原料ガスが導入される。石英管65中には、基板テーブル66が、回転自在に、かつ気密性を保つように配置される。基板テーブル66には、基板加熱用のヒータ66hが設けられる。成膜途中のウエハ50aの表面の温度は、反応室63の天井部に設けられたウィンドウ69を通して、赤外線温度モニタ装置61によりモニタされる。このモニタされる温度が、成長するときの温度、または成膜温度もしくは基板温度等と呼ばれる温度である。本発明における製造方法における、温度400℃以上かつ560℃以下でMQWを形成する、というときの400℃以上および560℃以下は、この温度モニタで計測される温度である。石英管65からの強制排気は真空ポンプによって行われる。
原料ガスは、石英管65に連通する配管によって、供給される。全有機気相成長法は、原料ガスをすべて有機金属気体の形態で供給する点に特徴がある。このため傾斜組成を高い精度で形成することができる。図3では、不純物等の原料ガスは明記していないが、不純物も有機金属気体の形態で導入される。有機金属気体の原料は、恒温槽に入れられて一定温度に保持される。搬送ガスには、水素(H)および窒素(N)が用いられる。有機金属気体は、搬送ガスによって搬送され、また真空ポンプで吸引されて石英管65に導入される。搬送ガスの量は、MFC(Mass Flow Controller:流量制御器)によって精度よく調節される。多数の、流量制御器、電磁弁等は、マイクロコンピュータによって自動制御される。このためInGaAs層3aおよびGaAsSb層3bの傾斜組成の形成を精度良く行うことができる。
InP基板1上に受光層3を含む半導体積層構造を形成する方法について説明する。まず、Sドープn型InP基板1に、n型InPバッファ層2を、膜厚150nmに、エピタキシャル成長させる。n型のドーピングには、TeESi(テトラエチルシラン)を用いるのがよい。このときの原料ガスには、TMIn(トリメチルインジウム)およびTBP(ターシャリーブチルホスフィン)を用いる。このInPバッファ層2の成長には、無機原料のPH(ホスフィン)を用いて行っても良い。このInPバッファ層2の成長では、成長温度を600℃程度あるいは600℃程度以下で行っても、下層に位置するInP基板の結晶性は600℃程度の加熱で劣化することはない。しかし、同じくPを含むInP窓層5を形成するときには、下層にGaAs0.57b.43を含むMQWが形成されているので、基板温度は、たとえば温度400℃以上かつ560℃以下の範囲に厳格に維持する必要がある。その理由として、600℃程度に加熱すると、GaAsSbが熱のダメージを受けて結晶性が大幅に劣化すること、および、400℃未満の温度としてInP窓層を形成すると、原料ガスの分解効率が大幅に低下するため、InP層内の不純物濃度が増大し高品質なInP窓層5を得られないこと、をあげることができる。
バッファ層2は、InP層だけでもよいが、所定の場合には、そのInPバッファ層の上に、n型ドープしたIn0.53Ga0.47As層を、膜厚0.15μm(150nm)に成長してもよい。このIn0.53Ga0.47As層も図1中ではバッファ層2に含まれる。
次いで、傾斜組成の付いたInGaAs3a/GaAsSb3b、を量子井戸のペアとするタイプ2のMQWの受光層3を形成する。量子井戸におけるInGaAs3aおよびGaAsSb3bの膜厚は、たとえば3nm以上10nm以下とするのがよい。図1では、50ペア〜300ペアと表示してあるが、タイプ2の遷移を重視するので200〜250ペア程度とするのがよい。GaAsSb3bの成膜では、トリエチルガリウム(TEGa)、ターシャリーブチルアルシン(TBAs)およびトリメチルアンチモン(TMSb)を用いる。組成yの勾配は、当該GaAsSb3bの成長につれて、TBAsを減少させつつTMSbを補うように増やすことで付けることができる。MFCによって流量を時間に沿って精度よく調整できるので組成勾配の形成は容易である。
また、InGaAs3aについては、TEGa、TMIn、およびTBAsを用いることができる。In組成xの勾配付与は、TEGaとTMInとを相補的に経時的に増減させて行うことができる。
これらの原料ガスは、すべて有機金属気体であり、化合物の分子量は大きい。このため、400℃以上かつ560℃以下の比較的低温で完全に分解して、結晶成長に寄与することができる。この結果、成膜温度から室温までの温度差を小さくすることができ、受光素子10内の各材料の熱膨張差に起因する歪を小さくでき、格子欠陥密度を小さく抑えることができる。これは暗電流の抑制に有効である。
Ga(ガリウム)の原料としては、TEGa(トリエチルガリウム)でもよいし、TMGa(トリメチルガリウム)でもよい。In(インジウム)の原料としては、TMIn(トリメチルインジウム)でもよいし、TEIn(トリエチルインジウム)でもよい。As(砒素)の原料としては、TBAs(ターシャリーブチルアルシン)でもよいし、TMAs(トリメチル砒素)でもよい。Sb(アンチモン)の原料としては、TMSb(トリメチルアンチモン)でもよいし、TESb(トリエチルアンチモン)でもよい、また、TIPSb(トリイソプロピルアンチモン)、また、TDMASb(トリジメチルアミノアンチモン)でもよい。これらの原料を用いることによって、MQWの不純物濃度が小さく、その結晶性に優れた半導体素子を得ることができる。この結果、たとえば受光素子等に用いた場合、暗電流の小さい、かつ、感度が大きい受光素子を得ることができる。
次に、全有機金属気相成長法によって、多重量子井戸構造3を形成するときの原料ガスの流れ状態について説明する。原料ガスは、配管を搬送されて、石英管65に導入されて排気される。原料ガスは、何種類でも配管を増やして石英管65に供給させることができる。たとえば十数種類の原料ガスであっても、電磁バルブの開閉によって制御される。
原料ガスは、流量の制御は、図5に示す流量制御器(MFC)によって制御された上で、石英管65への流入を電磁バルブの開閉によってオンオフされる。そして、石英管65からは、真空ポンプによって強制的に排気される。原料ガスの流れに停滞が生じる部分はなく、円滑に自動的に行われる。よって、量子井戸のペアを形成するときの組成の切り替えは、迅速に行われる。
傾斜組成を付ける場合、MFCを、成長途中の膜厚に応じて制御することで容易に実現できる。たとえばInGa1−xAs3aの成長では、MFCの制御は、たとえば、TEIn(トリエチルインジウム)と、TEGa(トリエチルガリウム)とを、一方のTEInは時間当たり一定割合で減らしながら、他方のTEGaはそれに応じて増やしながら、両者の和は一定を保つようにしてもよいし、一方の原料のみを増加または減少させるようにしてもよい。また、GaAs1−ySb3bの成長では、たとえば、TBAs(ターシャリーブチルアルシン)と、TIPSb(トリイソプロピルアンチモン)とを、一方のTIPSbは時間当たり一定割合で増やしながら、他方のTBAsはそれに応じて減らしながら、両者の和は一定を保つように、MFCを制御してもよいし、一方の原料のみを増加または減少させるように制御してもよい。
図5に示すように、基板テーブル66は回転するので、原料ガスの温度分布は、原料ガスの流入側または出口側のような方向性をもたない。また、ウエハ50aは、基板テーブル66上を公転するので、ウエハ50aの表面近傍の原料ガスの流れは、乱流状態にあり、ウエハ50aの表面近傍の原料ガスであっても、ウエハ50aに接する原料ガスを除いて導入側から排気側への大きな流れ方向の速度成分を有する。したがって、基板テーブル66からウエハ50aを経て、原料ガスへと流れる熱は、大部分、常時、排気ガスと共に排熱される。このため、ウエハ50aから表面を経て原料ガス空間へと、垂直方向に大きな温度勾配または温度段差が発生する。
さらに、本発明の実施の形態では、基板温度を400℃以上かつ560℃以下という低温域に加熱される。このような低温域の基板表面温度でTBAsなどを原料とした全有機金属気相成長法を用いる場合、その原料の分解効率が良いので、ウエハ50aにごく近い範囲を流れる原料ガスで多重量子井戸構造の成長に寄与する原料ガスは、成長に必要な形に効率よく分解したものに限られる。
ウエハ50aの表面はモニタされる温度とされているが、ウエハ表面から少し原料ガス空間に入ると、上述のように、急激に温度低下または大きな温度段差が生じる。このため分解温度がT1℃の原料ガスの場合、基板表面温度は、(T1+α)に設定し、このαは、温度分布のばらつき等を考慮して決める。ウエハ50a表面から原料ガス空間にかけて急激で大きな温度降下または温度段差がある状況において、大サイズの有機金属分子がウエハ表面をかすめて流れるとき、分解して結晶成長に寄与する化合物分子は表面に接触する範囲、および表面から数個分の有機金属分子の膜厚範囲、のものに限られると考えられる。したがって、ウエハ表面に接する範囲の有機金属分子、および、ウエハ表面から数個分の有機金属分子の膜厚範囲以内に位置する分子、が、主として、結晶成長に寄与して、それより外側の有機金属分子は、ほとんど分解せずに石英管65の外に排出される、と考えられる。ウエハ50aの表面付近の有機金属分子が分解して結晶成長したとき、外側に位置する有機金属分子が補充に入る。
逆に考えると、ウエハ表面温度を有機金属分子が分解する温度よりほんのわずかに高くすることで、結晶成長に参加できる有機金属分子の範囲をウエハ50a表面上の薄い原料ガス層に限定することができる。
上記のことから、真空ポンプで強制排気しながら上記ペアの化学組成に適合した原料ガスを電磁バルブで切り替えて導入するとき、わずかの慣性をもって先の化学組成の結晶を成長させたあとは、先の原料ガスの影響を受けず、切り替えられた化学組成の結晶を成長させることができる。その結果、ヘテロ界面での組成変化を急峻にすることができる。これは、先の原料ガスが、石英管65内に実質的に残留しないことを意味しており、ウエハ50aにごく近い範囲を流れる原料ガスで多重量子井戸構造の成長に寄与する原料ガスは、成長に必要な形に効率よく分解したものに限られることに起因する。すなわち、量子井戸の一方の層を形成させたあと、真空ポンプで強制排気しながら電磁バルブを開閉して、他方の層を形成する原料ガスを導入したとき、少しの慣性をもって結晶成長に参加する有機金属分子はいるが、その補充をする一方の層の分子はほとんど排気されて、なくなっている。ウエハ表面温度を、有機金属分子の分解温度に近づけるほど、結晶成長に参加する有機金属分子の範囲(ウエハ表面からの範囲)は小さくなる。
この多重量子井戸構造を形成する場合、600℃程度の温度範囲で成長すると多重量子井戸構造のGaAsSb層に相分離が起こり、清浄で平坦性に優れた多重量子井戸構造の結晶成長表面、および、優れた周期性と結晶性を有する多重量子井戸構造を得ることができない。このことから、成長温度を400℃以上かつ560℃以下という温度範囲にするが、この成膜法を全有機金属気相成長法にして、原料ガスすべてを分解効率の良い有機金属気体にすることが重要である。
<受光素子の製造方法>
図6は、受光素子の製造方法のフローチャートである。図1に示した受光素子10では、タイプ2MQWの受光層3の上には、InPに格子整合するIn0.53Ga0.47As拡散濃度分布調整層4が位置し、そのIn0.53Ga0.47As拡散濃度分布調整層4の上にInP窓層5が位置している。InP窓層5の表面に設けた選択拡散マスクパターン36の開口部からp型不純物のZnが選択拡散されてp型領域6が設けられる。そのp型領域6の先端部にpn接合またはpi接合が形成される。このpn接合またはpi接合に、逆バイアス電圧を印加して空乏層を形成して、光電子変換による電荷を捕捉して、電荷量に画素の明るさを対応させる。p型領域6またはpn接合もしくはpi接合は、画素を構成する主要部である。p型領域6にオーミック接触するp側電極11は画素電極であり、接地電位にされるn側電極12との間で、上記の電荷を画素ごとに読み出す。p型領域6の周囲の、InP窓層表面には、上記の選択拡散マスクパターン36がそのまま残される。さらに図示しないSiON等の保護膜が被覆される。選択拡散マスクパターン36をそのまま残すのは、p型領域6を形成したあと、これを除いて大気中に暴露すると、コンタクト層表面のp型領域との境界に表面準位が形成され、暗電流が増大するからである。
上述のようにMQWを形成したあと、InP窓層5の形成まで、全有機金属気相成長法によって同じ成膜室または石英管65の中で成長を続けることが、一つのポイントになる。すなわち、InP窓層5の形成の前に、成膜室からウエハ50aを取り出して、別の成膜法によってInP窓層5を形成することがないために、再成長界面を持たない点が一つのポイントである。すなわち、InGaAs拡散濃度分布調整層4とInP窓層5とは、石英管65内において連続して形成されるので、界面16,17は再成長界面ではない。このため、酸素および炭素の濃度がいずれも所定レベル以下であり、とくにp型領域6と界面17との交差線において電荷リークが生じることはない。また界面16においても格子欠陥密度は低く抑えられる。
本実施の形態では、MQWの受光層3の上に、たとえば膜厚1.0μmのノンドープIn0.53Ga0.47As拡散濃度分布層4を形成する。このIn0.53Ga0.47As拡散濃度分布層4は、InP窓層5を形成したあと、選択拡散法によってInP窓層5からp型不純物のZnをMQWの受光層3に届くように導入するとき、高濃度のZnがMQWに進入すると、結晶性を害するので、その調整のために設ける。このIn0.53Ga0.47As拡散濃度分布調整層4は、上記のように配置してもよいが、なくてもよい。
上記の選択拡散によってp型領域6が形成され、その先端部にpn接合またはpi接合が形成される。In0.53Ga0.47As拡散濃度分布調整層4を挿入した場合であっても、In0.53Ga0.47Asはバンドギャップが小さいのでノンドープであっても受光素子の電気抵抗を低くすることができる。電気抵抗を低くすることで、応答性を高めて良好な画質の動画を得ることができる。
In0.53Ga0.47As拡散濃度分布調整層4の上に、同じ石英管65内にウエハ50aを配置したまま連続して、アンドープのInP窓層5を、全有機金属気相成長法によってたとえば膜厚0.8μmにエピタキシャル成長するのがよい。原料ガスには、上述のように、トリメチルインジウム(TMIn)およびターシャリーブチルホスフィン(TBP)を用いる。この原料ガスの使用によって、InP窓層5の成長温度を400℃以上かつ560℃以下に、さらには535℃以下にすることができる。この結果、InP窓層5の下に位置するMQWのGaAsSbが熱のダメージを受けることがなく、MQWの結晶性が害されることがない。InP窓層5を形成するときには、下層にGaAsSbを含むMQWが形成されているので、基板温度は、たとえば温度400℃以上かつ560℃以下の範囲に厳格に維持する必要がある。その理由として、600℃程度に加熱すると、GaAsSbが熱のダメージを受けて結晶性が大幅に劣化する点、および、400℃未満の温度としてInP窓層を形成すると、原料ガスの分解効率が大幅に低下するため、InP窓層5内の不純物濃度が増大し高品質なInP窓層5を得られない点があげられる。
上記したように、従来は、MQWをMBE法によって形成する必要があった。ところが、MBE法によってInP窓層を成長するには、燐原料に固体の原料を用いる必要があり、安全性などの点で問題があった。また製造能率という点でも改良の余地があった。
本発明前は、In0.53Ga0.47As拡散濃度分布調整層とInP窓層との界面は、いったん大気に露出された再成長界面であった。再成長界面は、二次イオン質量分析によって、酸素濃度が1E17cm−3以上、および、炭素濃度が1E17cm−3以上、のうち、少なくとも一つを満たすことによって特定することができる。再成長界面は、p型領域と交差線を形成し、交差線で電荷リークを生じて、画質を著しく劣化させる。
また、たとえばInP窓層を単なるMOVPE法(全有機ではない有機金属気相成長法)によって成長すると、燐の原料にホスフィン(PH)を用いるため、分解温度が高く、下層に位置するGaAsSbの熱によるダメージの発生を誘起してMQWの結晶性を害することとなる。
バンド構造の計算機シミュレーションによって、図2〜図4に示す傾斜組成によって、どの程度の長波長化が実現されるか検証した。検証したケースは、表1に示すように、次の3つのケースである。
(ケース1:表1の最上段):
GaAs1−ySb層3bに傾斜組成、しかし、InGa1−xAs層3aはInPに格子整合するフラットな組成。本発明の実施の形態の説明における図4の構成に相当する。In0.53Ga0.47Asが、格子不整合度ゼロの組成である。
(ケース2:表1の中段):
GaAs1−ySb層3bおよびInGa1−xAs層3aの両方に傾斜組成。ただしInGa1−xAs層3aの層内におけるxのレンジは、0.48/0.58と控えめとした。このときのInGaAsの格子不整合度は±0.40%である。
(ケース3:表1の最下段):
GaAs1−ySb層3bおよびInGa1−xAs層3aの両方に傾斜組成。ただしInGa1−xAs層3aの層内におけるxのレンジは、0.43/0.63と大きくした。このときのInGaAsの格子不整合度は±0.66%である。
上記の3つのケースについて、受光域の波長上限(カットオフ波長=λmax)の長波長化の度合いを求めた。
結果を表1に示す。
Figure 2015167241
表1によれば、上記実施の形態の図4に対応するバンド構造を有するケース1において、受光域が100nm程度長波長側に拡大する。また、ケース3では、受光域は200nm程度長波長側に拡大する。たとえば、InPに格子整合するInGaAs/GaAsSbのタイプ2のMQWによって上限波長2μmまで受光できていたものを、本発明に属するケース3の適用によって、上限波長2.2μmまで拡大することができる。このような上限波長の拡大は、検査対象における吸収帯の波長によっては有用性を飛躍的に増大することができる。
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
本発明の受光素子によれば、暗電流を増大させることなく、近赤外の長波長側に受光感度を拡大することができ、検査対象によっては有用性の飛躍的な増大の原動力になりうる。
1 InP基板、2 バッファ層(InPおよび/またはInGaAs)、3タイプ2MQW受光層、3a InGaAs層、3b GaAsSb層、4 InGaAs層(拡散濃度分布調整層)、5 InP窓層、6 p型領域、10 受光素子、11 p側電極(画素電極)、12 グランド電極(n側電極)、16 MQWとInGaAs層との界面、17 InGaAs層とInP窓層との界面、20 赤外線温度モニタ装置、21 反応室の窓、30 反応室、35 AR(反射防止)膜、36 選択拡散マスクパターン、39 接合バンプ、43 保護膜(SiON膜)、50 受光素子(受光素子アレイ)、50a ウエハ(中間製品)、60 全有機金属気相成長法の成膜装置、61 赤外線温度モニタ装置、63 反応室、65 石英管、69 反応室の窓、66 基板テーブル、66h ヒータ、K エネルギ差下限(最小)界面、L エネルギ差上限(最大)界面。
本発明の受光素子は、III―V族半導体による受光素子である。この受光素子は、III―V族半導体基板の上に位置し、第1の半導体層と第2の半導体層とが交互に積層されたタイプ2の多重量子井戸構造の受光層を備え、第1の半導体層の層内において第2の半導体層と接する上面または下面へと、その第1の半導体層のバンドギャップエネルギが小さくなるように厚み方向に組成の勾配が付いて前記面のバンドギャップエネルギが平均組成のバンドギャップエネルギよりも小さいことを特徴とする。
本発明の受光素子の製造方法では、III―V族半導体による受光素子を製造する。この製造方法は、InP基板の上に、第1の半導体層と第2の半導体層とを交互に積層してタイプ2の多重量子井戸構造の受光層を形成する工程を備え、その多重量子井戸構造の形成工程では、第1の半導体層の層内において第2の半導体層と接する上面または下面へと、その第1の半導体層のバンドギャップエネルギが小さくなるように、厚み方向に組成の勾配を付け、前記面のバンドギャップエネルギを平均組成のバンドギャップエネルギよりも小さくすることを特徴とする。

Claims (13)

  1. III―V族半導体による受光素子であって、
    III―V族半導体基板の上に位置し、第1の半導体層と第2の半導体層とが交互に積層されたタイプ2の多重量子井戸構造の受光層を備え、
    前記第1の半導体層の層内において、第2の半導体層と接する上面または下面へと、その第1の半導体層のバンドギャップエネルギが小さくなるように厚み方向に組成の勾配が付いて前記面のバンドギャップエネルギが平均組成のバンドギャップエネルギよりも小さくされており、該面でのタイプ2遷移が、平均組成でのタイプ2遷移よりも長波長化していることを特徴とする、受光素子。
  2. 前記第1の半導体層の平均組成のバンドギャップエネルギよりも小さくされた面における第2の半導体層とのタイプ2遷移の波長が、平均組成でのタイプ2遷移の波長よりも100nm以上長波長化していることを特徴とする、請求項1に記載の受光素子。
  3. 前記第2の半導体層内において、前記第1の半導体層でバンドギャップエネルギが小さくなる面に接する該第2の半導体層の面へと当該第2の半導体層のバンドギャップエネルギが小さくなるように厚み方向に組成の勾配が付いて前記第2の半導体層の面におけるバンドギャップエネルギが該第2の半導体層の平均組成のバンドギャップエネルギよりも小さくされていることを特徴とする、請求項1に記載の受光素子。
  4. 前記第1の半導体層の平均組成のバンドギャップエネルギよりも小さくされた面と、前記第2の半導体層の平均組成のバンドギャップエネルギよりも小さくされた面との界面でのタイプ2遷移の波長が、平均組成の第1の半導体層と平均組成の第2の半導体層とのタイプ2遷移の波長よりも100nm以上長波長化していることを特徴とする、請求項3に記載の受光素子。
  5. 前記組成の勾配が付された、第1の半導体層および/または第2の半導体層において、前記バンドギャップエネルギが小さくなる極限位置の端面での組成は、それぞれの半導体層の平均組成に対して、格子定数の変化に換算して、格子不整合度が0.2%を超えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の受光素子。
  6. 前記第1の半導体層および/または第2の半導体層における平均組成は、格子定数の変化に換算して、前記III―V族半導体基板との格子不整合度が±1%以内であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の受光素子。
  7. 前記第1の半導体層および第2の半導体層のうち、価電子帯のポテンシャルエネルギが高いほうの半導体層に、Ga、AsおよびSbのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の受光素子。
  8. 前記第1の半導体層および第2の半導体層のうち、価電子帯のポテンシャルエネルギが低いほうの半導体層に、In、GaおよびAsのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の受光素子。
  9. 前記多重量子井戸構造が、InxGa1−xAsとGaAs1−ySbとで形成されており、前記InxGa1−xAs層における平均組成xaveは(0.38≦xave≦0.68)であり、前記GaAs1−ySb層における平均組成yaveは(0.36≦yave≦0.62)であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の受光素子。
  10. 前記III―V族半導体基板がInP基板であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の受光素子。
  11. III―V族半導体による受光素子の製造方法であって、
    InP基板の上に、第1の半導体層と第2の半導体層とを交互に積層してタイプ2の多重量子井戸構造の受光層を形成する工程を備え、
    前記多重量子井戸構造の形成工程では、前記第1の半導体層の層内において第2の半導体層と接する上面または下面へと、その第1の半導体層のバンドギャップエネルギが小さくなるように、厚み方向に組成の勾配を付け、前記面のバンドギャップエネルギを平均組成のバンドギャップエネルギよりも小さくして、該面でのタイプ2遷移を、平均組成でのタイプ2遷移よりも長波長化することを特徴とする、受光素子の製造方法。
  12. 前記多重量子井戸構造の形成工程では、前記第2の半導体層内において、前記第1の半導体層でバンドギャップエネルギが小さくなる面に接する該第2の半導体層の面へと当該第2の半導体層のバンドギャップエネルギが小さくなるように厚み方向に組成の勾配を付けて前記第2の半導体層の面におけるバンドギャップエネルギを該第2の半導体層の平均組成のバンドギャップエネルギよりも小さくすることを特徴とする、請求項11に記載の受光素子の製造方法。
  13. 全有機金属気相成長法により前記多重量子井戸構造を形成し、前記第1の半導体層、もしくは第1の半導体層および第2の半導体層に、前記組成の勾配を付けるとき、前記全有機金属気相成長法の成長機構に組み込まれているマスフローコントローラ(MFC:Mass Flow Controller)を調節することで、前記組成の勾配を付けることを特徴とする、請求項11または12に記載の受光素子の製造方法。
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